説明

X線診断治療装置

【課題】バルーンカテーテルを用いた治療において、患者や術者のX線被曝量の低減を図るX線診断治療装置を提供する。
【解決手段】バルーン拡張器17は、バルーンカテーテル16に設置されたバルーンを加圧又は減圧し、圧力計18はバルーン内の圧力を計測する。拡張状態判断部19は、バルーン内の圧力値及び/又は圧力変化値に基づいて、バルーンの状態が非拡張維持状態か拡張維持状態かを判断する。拡張維持状態においては、主制御部27は、非拡張維持状態におけるパルスレートよりも低いパルスレート、非拡張維持状態におけるX線線量よりも少ないX線線量、又は/及び、非拡張維持状態における照射野よりも狭い照射野の条件に従って、X線発生部2にX線を照射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルーンカテーテルを用いた治療に用いられるX線診断治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルを用いた経皮的血管形成術は、血管内腔の狭窄部や閉塞部などを拡張治療し、冠動脈や末梢血管などの血流の回復を目的として使用されている。一般的なバルーンカテーテルは、カテーテルシャフトの先端部に、内圧の調整により拡張又は収縮するバルーンが設置されている。カテーテルシャフトの内部には、ガイドワイヤが挿通される内腔と、バルーンの内圧調整用の圧力流体を供給する内腔とが、カテーテルシャフトの長軸方向に沿って設けられている。
【0003】
PCI(Percutaneous Coronary Intervention)(経皮的冠動脈形成術)に代表される狭窄血管の治療においては、POBA(Plain Old Balloon Atherectomy)(バルーン拡張による血管形成術)やステントの植え込みによる狭窄部位の拡張治療が行われている。また、治療の効果を向上させるために、ステントの植え込みの実施率がPOBAの実施率よりも高くなっている。ここで、PCIは、カテーテルを冠動脈に挿入し、POBAやステント植え込みによって狭窄部位を広げるインターベンションである。また、ステントは、血管の狭窄部位に設置して、狭くなった冠動脈を広げる治療を行うときに使用する金属網目状の筒である。ステントは、カテーテルの先端に設置されており、カテーテルの先端を狭窄部位まで移動させてステントを広げることで、細くなった血管を広げる。バルーンは、例えばシリンジからなるバルーン拡張器(インデフレータ)によって拡張される。このバルーン拡張器を用いて圧力流体をバルーンに供給することでバルーン内部を加圧してバルーンを拡張させて、狭窄部位の拡張治療を行う。また、狭窄部位を拡張治療した後は、バルーン拡張器を用いてバルーンから圧力流体を吸引することでバルーン内部を減圧してバルーンを収縮させて、バルーンを体外へ抜き出す。
【0004】
ステントは、最初は低めの圧力で拡張し、その後徐々に圧力を高くして拡張し、留置する位置を調整しながら、何回かに分けて正常な血管径まで拡張させる。また、ステントの遠位側の血管径と近位側の血管径とに差がある場合には、ステントに対するバルーンの位置(遠位又は近位)によって、圧力を変えて血管に合うように拡張させる場合もある。
【0005】
バルーンによる血管及びステントの拡張中には、バルーンの破裂やステントの移動などを防止するために、バルーン拡張中の状態をX線診断装置のX線透視により観察することが行われている(例えば特許文献1)。また、バルーン拡張中には、治療記録を残す目的でX線撮影、バルーン拡張圧の記録、拡張終了時間の監視、及び拡張時間の記録など、様々な記録や監視作業が行われている。例えば従来においては、バルーン拡張中に、術者による操作によって拡張時間を測定し、その測定結果に基づいて拡張終了のタイミングを監視している。そして、バルーン拡張の圧力値や拡張時間などの情報は、治療記録として術者がカルテなどに記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−245761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、バルーンカテーテルを用いた治療においては、X線診断装置によるX線透視の下で治療が行われる。上述したように、1箇所に対するインターベンションであっても、複数回のバルーン拡張が行われる。1回のバルーン拡張が数十秒であっても、治療全体を考慮すると、患者及び術者のX線被曝量が増大する問題がある。
【0008】
また、バルーンカテーテルを用いた治療においては、バルーン拡張の圧力値の確認、加圧時間の計測開始、加圧時間の監視・記録、X線画像の撮影など、高度な連携作業が必要となるため、熟練した多くの術者が必要になる。そのため、バルーンカテーテルを用いた治療に関わる一連の作業の簡便化が望まれていた。
【0009】
この発明は上記の問題を解決するものであり、バルーンカテーテルを用いた治療において、患者や術者のX線被曝量の低減を図るX線診断治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、所定の照射野でX線を照射するX線発生手段と、被検体を間にして前記X線発生手段と対向して配置され、前記X線発生手段から照射されて前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段からの出力に基づいてX線画像データを生成するX線画像生成手段と、前記X線画像データに基づくX線画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、カテーテルシャフトの先端部に内圧の調整により拡張又は収縮するバルーンが設置されたバルーンカテーテルと、前記バルーン内を加圧又は減圧する加圧手段と、前記バルーン内に供給する圧力を検出する圧力検出手段と、前記X線照射の時間間隔が第1時間間隔である照射間隔条件と、前記X線照射のX線線量が第1X線線量であるX線線量条件と、前記照射野が第1照射野である照射野条件とを含む第1照射条件に従って、前記X線発生手段に前記X線を照射させ、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が予め設定された第1圧力閾値よりも高くなった場合に、前記第1照射条件に含まれる前記照射間隔条件、前記X線線量条件、及び前記照射野条件のうち少なくとも1つの条件を変えた、前記X線照射の時間間隔が前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔である前記照射間隔条件、前記X線照射のX線線量が前記第1X線線量よりも少ない第2X線線量である前記X線線量条件、又は前記照射野が前記第1照射野よりも狭い第2照射野である前記照射野条件を含む第2照射条件に従って、前記X線発生手段に前記X線を照射させる制御手段と、を有することを特徴とするX線診断治療装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、バルーンカテーテルのバルーン内の圧力を検出し、圧力が第1圧力閾値より高くなった場合に、X線照射の時間間隔が比較的長い第2時間間隔である照射間隔条件、X線線量が比較的少ない第2X線線量であるX線線量条件、又は照射野が比較的狭い第2照射野である照射野条件を含む第2照射条件に従ってX線を照射することで、バルーンの状態が拡張維持状態になった場合に、患者及び術者のX線被曝量の低減を図ることが可能となる。バルーンの状態が拡張維持状態のときには、バルーンカテーテルの移動を停止させる場合が多いため、拡張状態を監視できる程度の条件でX線を照射すれば良い。この発明によると、バルーン内の圧力が第1圧力閾値よりも高くなった場合には、バルーンの状態が拡張維持状態であるとして、第2照射条件に従ってX線を照射することで、拡張維持状態における患者及び術者のX線被曝量の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態に係るX線診断治療装置を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態に係るX線診断治療装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態に係るX線診断治療装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0014】
X線発生部2とX線検出部5とは、保持部9(Cアーム)によって支持されて、寝台天板8を挟むように対向配置されている。X線発生部2は、X線を発生するX線管3と、X線の照射野を成形するX線絞り器4とを備えている。X線管3には高電圧発生部1が接続されており、高電圧発生部1は高電圧制御部28の制御の下、X線管3に管電圧を印加し、管電流を供給する。これによりX線管3からX線が発生される。X線管3から照射されたX線は、X線絞り器4で所定のビーム幅に形成されて、寝台天板8に載置された被検体Pに照射される。寝台天板8は、被検体Pを載置するためのベッドであり、図示しない保持部によって被検体Pの長手方向や横手方向に移動させられる。また、保持部9(Cアーム)は、図示しない機構部によって寝台天板8の周りを回転させられる。なお、X線発生部2が、この発明の「X線発生手段」の1例に相当し、X線検出部5が、この発明の「X線検出手段」の1例に相当する。
【0015】
主制御部27は、ユーザインタフェース29に接続されている。操作者がユーザインタフェース29を用いてX線照射指示を与えると、そのX線照射指示はユーザインタフェース29から主制御部27に出力される。主制御部27は、X線照射指示に従って、X線発生トリガ信号を継続的に発生する。高電圧制御部28は、主制御部27からX線発生トリガ信号を受けている期間中、高電圧発生部1からX線管3に対してパルス状の管電圧を繰り返し印加するための制御信号を発生する。すなわち、高電圧制御部28は、X線発生トリガ信号を受けている期間中、X線照射の時間間隔を示すパルスレートを含む制御信号を発生する。高電圧発生部1は、高電圧制御部28から出力された制御信号が示すパルスレートに従って、管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、パルスレートに従って一定の周期でX線を照射し、複数フレームのX線画像データが生成される。例えば、被検体の動きが速い場合には、パルスレートを高く設定することで、被検体の動きに追従した複数フレームの画像データが生成される。また、被検体の動きが遅い又は動きがないため、高パルスレートを必要としない場合には、パルスレートを低く設定すれば良い。
【0016】
被検体Pを透過したX線は、X線検出部5のX線検出器6にて検出される。X線検出器6には、例えば、検出器が2次元的に配列されたX線平面検出器、又はX線I.I.(イメージ・インテンシファイア)が用いられる。主制御部27は、X線の発生と同期して、X線検出器6及びデータ変換部7の制御を行う。データ変換部7は、X線管3によるX線の照射に同期して、検出結果を順次デジタルデータに変換する。これにより、X線の1照射に対して1フレームのX線画像データを生成する。データ変換部7は、X線画像データを画像処理部10に出力する。
【0017】
画像処理部10は、画像記憶部11と、画像演算部12と、表示画像処理部13と、D/A変換部14とを備えている。画像記憶部11は、データ変換部7から出力されたX線画像データを記憶する。画像演算部12は、X線画像データに対して空間フィルタなどの画像処理を行う。表示画像処理部13は、X線画像データに対して表示階調処理を施す。D/A変換部14は、X線画像データをビデオ信号に変換して表示制御部30に出力する。表示制御部30は、画像処理部10からの出力に基づいてX線画像を表示部31に表示させる。表示部31は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されており、X線画像を表示する。なお、データ変換部7と画像処理部10とによって、この発明の「X線画像生成手段」の1例を構成し、表示制御部30が、この発明の「表示制御手段」の1例に相当する。
【0018】
この実施形態では、バルーンカテーテル16が用いられる。バルーンカテーテル16は、公知のバルーンカテーテルが用いられる。例えば、バルーンカテーテル16は、カテーテルシャフトの先端部に、内圧の調整により拡張又は収縮するバルーンが設置されている。カテーテルシャフトの内部には、ガイドワイヤが挿通される内腔と、バルーンの内圧調整用の圧力流体を供給する内腔とが、カテーテルシャフトの長軸方向に沿って設けられている。なお、バルーンカテーテル16が、この発明の「バルーンカテーテル」の1例に相当する。
【0019】
バルーン拡張器17(インデフレータ)は、例えばシリンジを有し、圧力流体をバルーンカテーテル16のバルーンに供給することでバルーン内部を加圧してバルーンを拡張させる。また、バルーン拡張器17は、バルーンから圧力流体を吸引することでバルーン内部を減圧してバルーンを収縮させる。バルーン拡張器17には、圧力計18が接続されている。この圧力計18により、バルーン拡張器17から供給される圧力流体の圧力(バルーンカテーテル16のバルーン内に作用する圧力)を検出する。圧力計18にて検出された圧力値は、拡張状態判断部19の圧力値検出部20と圧力変化値算出部21とに出力される。なお、バルーン拡張器17が、この発明の「加圧手段」の1例に相当し、圧力計18が、この発明の「圧力検出手段」の1例に相当する。
【0020】
(拡張状態判断部19)
拡張状態判断部19は、圧力値検出部20と、圧力変化値算出部21と、判断部22と、判断条件記憶部23とを有している。圧力値検出部20は、圧力計18から出力された圧力値を受けて、その圧力値を判断部22に出力する。圧力変化値算出部21は、圧力計18から出力された圧力値を受けて、例えば、単位時間あたりの圧力値の変化(圧力変化値)を求める。1例として、圧力変化値算出部21は、毎秒の圧力値の差(圧力変化値)を求める。圧力変化値算出部21は、圧力変化値を判断部22に出力する。
【0021】
判断部22は、圧力値検出部20から出力された圧力値に基づいて、バルーンカテーテル16に設置されたバルーンが拡張されていない状態(非拡張維持状態)であるか、拡張された状態(拡張維持状態)であるかを判断する。または、判断部22は、圧力値検出部20から出力された圧力値と、圧力変化値算出部21から出力された圧力変化値とに基づいて、バルーンが非拡張維持状態であるか、拡張維持状態であるかを判断しても良い。そして、判断部22は、バルーンの状態を示す状態情報をバルーン拡張制御部24に出力する。すなわち、判断部22は、バルーンが非拡張維持状態である場合には、非拡張維持状態を示す状態情報をバルーン拡張制御部24に出力し、バルーンが拡張維持状態である場合には、拡張維持状態を示す状態情報をバルーン拡張制御部24に出力する。
【0022】
判断部22の具体的な処理について、図2を参照して説明する。まず、バルーンカテーテル16のバルーンを拡張する前の状態(初期状態)では、バルーンの圧力値は低く、かつ、圧力の変化も無い。初期状態では、バルーンカテーテル16のバルーンは、拡張されていない状態(非拡張維持状態)であると判断される。具体的には、判断部22は、圧力値検出部20から出力された圧力値が予め設定された第1圧力閾値以下の場合に、バルーンの状態を「非拡張維持状態」であると判断する。第1圧力閾値は、バルーンの状態が、非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移したか否かを判断する基準である。判断部22は、バルーンの状態を示す状態情報を保持する。この場合、判断部22は、非拡張維持状態を示す状態情報を、バルーンの状態を示す状態情報として保持する。また、判断部22は、非拡張維持状態を示す状態情報をバルーンの拡張状態を示す状態情報としてバルーン拡張制御部24に出力する。
【0023】
(第1条件)
そして、判断部22は、非拡張維持状態において、圧力値検出部20から出力された圧力値が、予め設定された第1圧力閾値よりも高くなった場合に、バルーンの状態が「非拡張維持状態」から「拡張維持状態」(バルーンが拡張された状態)に遷移したと判断する。すなわち、判断部22は、図2に示すように、圧力値検出部20から出力された圧力値が第1条件(圧力値>第1圧力閾値)を満たす場合に、バルーンの状態が「非拡張維持状態」から「拡張維持状態」に遷移したと判断する。
【0024】
(第2条件)
または、判断部22は、圧力値と圧力変化値とに基づいてバルーンの状態を判断しても良い。バルーンが拡張しつつある状態では、圧力の変化が大きくなる。一方、バルーンを拡張させてその拡張を維持した状態では、圧力の変化は小さくなる。すなわち、バルーンを拡張させた後、バルーンへの圧力流体の供給を増加させずに拡張を維持した状態では、圧力の変化は小さくなる。判断部22は、この圧力変化を条件に加えて、バルーンの状態を判断しても良い。具体的には、判断部22は、非拡張維持状態において、圧力値検出部20から出力された圧力値が第1圧力閾値よりも高くなり、さらに、圧力変化値算出部21から出力された圧力変化値が第1圧力変化閾値よりも低くなった場合に、バルーンの状態が「非拡張維持状態」から「拡張維持状態」に遷移したと判断する。すなわち、判断部22は、図2に示すように、圧力値が「圧力値>第1圧力閾値」の関係を満たし、さらに、圧力変化値が「圧力変化値<第1圧力変化閾値」の関係を満たす場合に、バルーンの状態が「非拡張維持状態」から「拡張維持状態」に遷移したと判断する(第2条件)。なお、第1圧力変化閾値は、バルーンの状態が、非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移したか否かを判断する基準の1つである。
【0025】
判断部22は、上記の第1条件又は第2条件のいずれかの条件に従ってバルーンの状態を判断すれば良い。判断部22は、拡張維持状態を示す状態情報を、バルーンの状態を示す状態情報として保持する。また、判断部22は、拡張維持状態を示す状態情報をバルーンの状態を示す状態情報としてバルーン拡張制御部24に出力する。
【0026】
(第3条件)
また、判断部22は、拡張維持状態において、圧力値検出部20から出力された圧力値が、予め設定された第2圧力閾値よりも低くなった場合に、バルーンの状態が「拡張維持状態」から「非拡張維持状態」に遷移したと判断する。第2圧力閾値は、バルーンの状態が、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したか否かを判断する基準である。圧力値が第2圧力閾値よりも低くなった場合には、バルーンが収縮を始めたと判断できるため、判断部22は、バルーンの状態が「非拡張維持状態」に遷移したと判断する。判断部22には、図2に示すように、圧力値検出部20から出力された圧力値が第3条件(圧力値<第2圧力閾値)を満たす場合に、バルーンの状態が「拡張維持状態」から「非拡張維持状態」に遷移したと判断する。
【0027】
(第4条件)
または、判断部22は、圧力変化値に基づいてバルーンの状態を判断しても良い。バルーンが収縮しつつある状態では、圧力の変化が大きくなる。判断部22は、この圧力変化を条件にして、バルーンの状態を判断しても良い。具体的には、判断部22は、拡張維持状態において、圧力変化値算出部21から出力された圧力変化値が第2圧力変化閾値よりも大きくなった場合に、バルーンの状態が「拡張維持状態」から「非拡張維持状態」に遷移したと判断する。すなわち、判断部22は、図2に示すように、圧力変化値算出部21から出力された圧力変化値が第4条件(圧力変化値>第2圧力変化閾値)を満たす場合に、バルーンの状態が「拡張維持状態」から「非拡張維持状態」に遷移したと判断する。なお、第2圧力変化閾値は、バルーンの状態が、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したか否かを判断する基準である。
【0028】
判断部22は、上記の第3条件又は第4条件のいずれかの条件に従ってバルーンの状態を判断すれば良い。判断部22は、非拡張維持状態を示す状態情報を、バルーンの状態を示す状態情報として保持する。また、判断部22は、非拡張維持状態を示す状態情報をバルーンの状態を示す状態情報としてバルーン拡張制御部24に出力する。
【0029】
なお、上記の第1圧力閾値、第1圧力変化閾値、第2圧力閾値、及び第2圧力変化閾値は、判断条件記憶部23に記憶されている。判断部22は、判断条件記憶部23に記憶されている閾値に従って、バルーンの状態を判断する。
【0030】
そして、拡張状態判断部19は、図2に示すように、保持しているバルーンの状態情報(拡張維持状態又は非拡張維持状態)と、圧力値及び又は圧力変化値とに基づいて、バルーンの状態(拡張維持状態、非拡張維持状態)を判断する。
【0031】
(バルーン拡張制御部24)
バルーン拡張制御部24は、拡張状態判断部19から出力されたバルーンの状態情報が示すバルーンの状態に従って、撮影又は透視の照射条件(X線照射のパルスレート、X線線量、又はX線照射野)を設定する。すなわち、バルーン拡張制御部24は、バルーンが「非拡張維持状態」である場合には、非拡張維持状態における撮影又は透視の第1照射条件(X線照射の第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野)を設定する。また、バルーン拡張制御部24は、バルーンが「拡張維持状態」である場合には、第1照射条件に含まれる第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野のうち、1つ又は複数の条件を変えることで、拡張維持状態における撮影又は透視の第2照射条件を設定する。例えば、バルーン拡張制御部24は、X線照射の時間間隔が第1パルスレートとは異なる第2パルスレートに変えたり、X線線量が第1X線線量とは異なる第2X線線量に変えたり、照射野が第1X線照射野とは異なる第2X線照射野に変えたりすることで、第2照射条件に設定する。バルーン拡張制御部24は、パルスレート、X線線量、及びX線照射野のすべての条件を変えることで第2照射条件としても良いし、1つ又は複数の条件を変えることで第2照射条件としても良い。なお、非拡張維持状態におけるX線照射のパルスレートを「第1パルスレート」とし、非拡張維持状態におけるX線線量を「第1X線線量」とし、非拡張維持状態におけるX線照射野を「第1X線照射野」とする。また、拡張維持状態におけるX線照射のパルスレートを「第2パルスレート」とし、拡張維持状態におけるX線線量を「第2X線線量」とし、拡張維持状態におけるX線照射野を「第2X線照射野」とする。
【0032】
X線線量は、具体的には、X線管3に印加する管電圧と管電流とによって規定される。管電圧を高くすることでX線線量が多くなり、管電圧を低くすることでX線線量は少なくなる。また、X線線量は、管電流を大きくすることで多くなり、管電流を小さくすることで少なくなる。さらに、X線線量は、X線パルス幅を大きくすることで多くなり、X線パルス幅を小さくすることで少なくなる。また、X線照射野は、X線絞り器4の絞り羽根の幅によって規定される。絞り羽根の幅を広げることでX線照射野は広くなり、絞り羽根の幅を狭めることでX線照射野は狭くなる。
【0033】
拡張維持状態における第2パルスレートは、非拡張維持状態における第1パルスレートよりも低い(第2パルスレート<第1パルスレート)。また、拡張維持状態における第2X線線量は、非拡張維持状態における第1X線線量よりも少ない(第2X線線量<第1X線線量)。また、拡張維持状態における第2X線照射野は、非拡張維持状態における第1X線照射野よりも狭い(第2X線照射野<第1X線照射野)。
【0034】
非拡張維持状態における撮影又は透視の第1照射条件(X線照射の第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野)を示す情報と、拡張維持状態における撮影又は透視の第2照射条件(X線照射の第2パルスレート、第2X線線量、及び第2X線照射野)を示す情報とは、制御条件記憶部25に記憶されている。
【0035】
なお、第1パルスレートが、この発明の「第1時間間隔」の1例に相当し、第1X線線量が、この発明の「第1X線線量」の1例に相当し、第1X線照射野が、この発明の「第1照射野」の1例に相当する。また、第2パルスレートが、この発明の「第2時間間隔」の1例に相当し、第2X線線量が、この発明の「第2X線線量」の1例に相当し、第2X線照射野が、この発明の「第2照射野」の1例に相当する。
【0036】
(初期状態における撮影又は透視の照射条件)
治療開始時(初期状態)においては、バルーンカテーテル16のバルーンを拡張させずに非拡張維持状態で、術者は、バルーンカテーテル16を血管内部の治療対象部位まで移動させる。この段階では、主制御部27は、第1照射条件に従って撮影又は透視の制御を行う。すなわち、主制御部27は、第1照射条件(第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野)に従って、第1パルスレート及び第1X線線量を示す情報を高電圧制御部28に出力する。また、主制御部27は、第1X線照射野(第1の幅)に従って、X線絞り器4を制御することで、X線絞り器4の絞り羽根の幅を第1の幅に設定する。高電圧制御部28は、第1パルスレートと第1X線線量(第1管電圧)とを含む制御信号を発生し、高電圧発生部1は、その制御信号が示す第1パルスレート及び第1X線線量(第1管電圧)に従って、管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、第1パルスレート及び第1X線線量(第1管電圧)に従って一定の周期でX線を照射する。そして、X線管3から照射されたX線は、X線絞り器4によって第1の幅のビーム幅に形成されて、寝台天板8に載置された被検体Pに照射される。そして、データ変換部7及び画像処理部10は、X線検出部5からの出力に基づいてX線画像データを生成し、表示制御部30は、画像処理部10から出力されたX線画像データに基づくX線画像を表示部31に表示させる。なお、ここでは、X線線量を管電圧によって制御する場合について説明した。
【0037】
(非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移したときの撮影又は透視の照射条件)
拡張維持状態においては、ステントを挿入してバルーンを拡張した状態で時間経過を待っている状態である。拡張維持状態にて実施されるX線透視においては、術者が拡張状態を観察できる程度のX線線量で足りる。また、拡張維持状態にて実施されるX線撮影においては、拡張状態を治療記録として残せる程度のX線線量で足りる。従って、バルーンの状態が、非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移した場合には、X線照射のパルスレートを比較的低くしたり、1パルスあたりのX線線量を比較的少なくしたり、X線照射野を比較的狭くしたりすることで、被検体のX線被曝量の低減を図る。すなわち、拡張維持状態においては、X線照射のパルスレートを、非拡張維持状態におけるX線照射のパルスレートよりも低くすることで、被検体のX線被曝量の低減を図る。または、拡張維持状態においては、1パルスあたりのX線線量を、非拡張維持状態におけるX線線量よりも少なくすることで、被検体のX線被曝量の低減を図る。または、拡張維持状態においては、X線照射野を、非拡張維持状態におけるX線照射野よりも狭くすることで、被検体のX線被曝量の低減を図る。
【0038】
具体的には、バルーン拡張制御部24は、拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、パルスレートが比較的低い第2パルスレートを示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第2パルスレートを示す情報を高電圧制御部28に出力する。高電圧制御部28は、第2パルスレートを含む制御信号を発生し、高電圧発生部1は、その制御信号が示す第2パルスレートに従って、管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、第2パルスレートに従って一定の周期でX線を照射する。
【0039】
または、バルーン拡張制御部24は、拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、X線線量が比較的少ない第2X線線量を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。例えば、バルーン拡張制御部24は、第2X線線量を得るための管電圧(第2管電圧)を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第2X線線量(第2管電圧)を示す情報を高電圧制御部28に出力する。高電圧制御部28は、第2X線線量(第2管電圧)を含む制御信号を発生し、高電圧発生部1は、その制御信号が示す第2管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、第2管電圧に従ってX線を照射する。なお、ここでは、X線線量を管電圧で制御する場合について説明した。
【0040】
または、バルーン拡張制御部24は、拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、X線照射野が比較的狭い第2X線照射野を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。例えば、バルーン拡張制御部24は、第2X線照射野を得るためのX線絞り器4の絞り羽根の幅(第2の幅)を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第2X線照射野(第2の幅)に従って、X線絞り器4を制御することで、X線絞り器4の絞り羽根の幅を第2の幅に変える。これにより、X線管3から照射されたX線は、X線絞り器4によって第2の幅のビーム幅に形成されて、寝台天板8に載置された被検体Pに照射される。
【0041】
以上のように、バルーンカテーテル16のバルーンの状態が非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移した場合に、第2パルスレート、第2X線線量、又は第2X線照射野に従って撮影又は透視を行うことで、被検体及び術者のX線被曝量を低減させることが可能となる。なお、バルーン拡張制御部24は、パルスレート、X線線量、及びX線照射野のうち、1つの条件を第2照射条件に変えても良いし、複数の条件を第2照射条件に変えても良い。例えば、バルーン拡張制御部24は、パルスレートのみを第1パルスレートから第2パルスレートに変えても良いし、パルスレート、X線線量、及びX線照射野のすべてを、第2パルスレート、第2X線線量、及び第2X線照射野に変えても良い。
【0042】
(拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したときの撮影又は透視の照射条件)
バルーンの状態が、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移した場合、バルーンカテーテル16を移動させる場合があるため、術者がバルーンカテーテル16の動きを詳細に観察できる程度に撮影又は透視を行う。例えば、フレームレートを高くして撮影又は透視を行うことで、バルーンカテーテル16の動きに追従した複数フレームのX線画像データを取得する。従って、バルーンの状態が、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移した場合には、拡張維持状態における第2照射条件を、非拡張維持状態における第1照射条件に戻して、撮影又は透視を行う。具体的には、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したときには、第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野に従って撮影又は透視を行う。
【0043】
例えば、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したときに、パルスレートを第2パルスレートから第1パルスレートに変更した場合には、バルーン拡張制御部24は、非拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、パルスレートが比較的高い第1パルスレートを示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第1パルスレートを示す情報を高電圧制御部28に出力する。高電圧制御部28は、第1パルスレートを含む制御信号を発生し、高電圧発生部1は、その制御信号が示す第1パルスレートに従って、管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、第1パルスレートに従って一定の周期でX線を照射する。
【0044】
また、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したときに、X線線量を第2X線線量から第1X線線量に変更した場合には、バルーン拡張制御部24は、非拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、X線線量が比較的多い第1X線線量を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。例えば、バルーン拡張制御部24は、第1X線線量を得るための管電圧(第1管電圧)を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第1X線線量(第1管電圧)を示す情報を高電圧制御部28に出力する。高電圧制御部28は、第1X線線量(第1管電圧)を含む制御信号を発生し、高電圧発生部1は、その制御信号が示す第1管電圧をX線管3に印加する。これにより、X線管3は、第1管電圧に従ってX線を照射する。
【0045】
また、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移したときに、X線照射野を第2X線照射野から第1X線照射野に変更した場合には、バルーン拡張制御部24は、非拡張維持情報を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、X線照射野が比較的広い第1X線照射野を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。例えば、バルーン拡張制御部24は、第1X線照射野を得るためのX線絞り器4の絞り羽根の幅(第1の幅)を示す情報を制御条件記憶部25から取得して主制御部27に出力する。主制御部27は、第1X線照射野(第1の幅)に従って、X線絞り器4を制御することで、X線絞り器4の絞り羽根の幅を第1の幅に変える。これにより、X線管3から照射されたX線は、X線絞り器4によって第1の幅のビーム幅に形成されて、寝台天板8に載置された被検体Pに照射される。
【0046】
以上のように、バルーンカテーテル16のバルーンの状態が拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移した場合には、第1照射条件(第1パルスレート、第1X線線量、及び第1X線照射野)に従って撮影又は透視を行う。これにより、術者は、バルーンカテーテル16の動きを詳細に観察することが可能となる。
【0047】
(拡張維持状態への遷移時から計時開始)
この実施形態では、バルーンを拡張させた時点から所定時間経過後にバルーンを収縮させるために、バルーンを拡張させている時間を計測する。バルーン拡張制御部24は、拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、計時開始指示を計時部26に出力する。計時部26は、計測開始指示をバルーン拡張制御部24から受けると、計時機能を実行して時間を計測し、時間を示す時間情報を表示制御部30に出力する。表示制御部30は、X線画像を表示部31に表示させるとともに、計時部26によって計測された時間を表示部31に表示させる。術者は、表示部31に表示されている時間を参照することで、バルーンを収縮させるタイミングを計ることが可能となる。また、計時部26は、時間を計測し始めた時点から所定時間経過後に、所定時間経過したことを術者に報知するための報知指示を、図示しない報知部に出力しても良い。報知部は報知指示を受けると、例えばブザーを鳴らす。この所定時間は、拡張維持状態を継続させる時間の長さである。これにより、術者は、拡張維持状態になった時点から所定時間経過し、バルーンを収縮させる時間であることを認知することが可能となる。この所定時間を示す情報は、例えば制御条件記憶部25に記憶させておく。所定時間は、操作者がユーザインタフェース(UI)29を用いて変更できるようにしても良い。なお、計時部26が、この発明の「計時手段」の1例に相当する。
【0048】
バルーン拡張制御部24は、非拡張維持状態を示す状態情報を拡張状態判断部19から受けると、計時終了指示を計時部26に出力する。計時部26は、計時終了指示をバルーン拡張制御部24から受けると、計時機能を終了する。なお、計時部26は、公知のラップ時間計測機能を有していても良い。すなわち、計時部26は、再度計測開始した場合に、累積して時間を計測しても良い。
【0049】
具体的には、計時部26は、バルーン内の圧力が第1圧力閾値よりも高くなった時点(拡張維持状態に遷移した時点)から時間を計測し、バルーン内の圧力が第2圧力閾値よりも低くなった時点(非拡張維持状態に遷移した時点)で、計時機能を終了する。または、計時部26は、バルーン内の圧力が第1圧力閾値よりも高くなり、かつ、圧力変化値が第1圧力変化閾値よりも低くなった時点(拡張維持状態に遷移した時点)から時間を計測し、バルーン内の圧力が第2圧力閾値よりも低くなった時点(非拡張維持状態に遷移した時点)、又は、圧力変化値が第2圧力変化値よりも高くなった時点(非拡張維持状態に遷移した時点)で、計測機能を終了する。
【0050】
(X線画像への情報付帯)
また、バルーンの状態が拡張維持状態の場合に、圧力値と、計時部26が計測した拡張維持状態の時間の長さとを、治療記録として、X線画像データに付帯させても良い。具体的には、バルーン拡張制御部24は、拡張維持状態において、圧力値検出部20から出力された圧力値を受けて、その圧力値を画像処理部10に出力する。また、計時部26は、拡張維持状態の時間の長さを画像処理部10に出力する。主制御部27は、圧力値と、拡張維持状態の時間の長さとを付帯情報としてX線画像データに付帯させて、画像記憶部11に記憶させる。例えば、表示制御部30は、画像記憶部11に記憶されているX線画像データに基づくX線画像を表示部31に表示させ、さらに、そのX線画像データに付帯されている圧力値や拡張維持状態の時間の長さを表示部31に表示させる。
【0051】
(表示サイズの変更)
X線照射野を狭めてX線を照射する場合には、X線画像の表示サイズを拡大させて表示部31に表示させても良い。すなわち、バルーンの状態が非拡張維持状態から拡張維持状態に遷移した場合であって、第2X線照射野(第2の幅)に従ってX線絞り器4の絞り羽根の幅を第2の幅に変える場合には、X線画像の表示サイズを初期状態の表示サイズから所定の表示サイズに拡大させて表示部31に表示させる。第2X線照射野(第2の幅)でX線を照射する場合、バルーン拡張制御部24は、X線画像の表示サイズ拡大の指示を表示制御部30に出力する。表示制御部30は、表示サイズ拡大の指示をバルーン拡張制御部24から受けて、画像処理部10から出力されたX線画像データに基づくX線画像を所定の表示サイズに拡大させて表示部31に表示させる。所定の表示サイズを示す情報は、表示制御部30に予め設定しておけば良い。このように、X線照射野がより狭い第2X線照射野の条件に従ってX線を照射する場合には、その照射によって取得されたX線画像の表示サイズを拡大して表示することで、表示部31の画面を有効に利用してX線画像を表示することが可能となる。
【0052】
さらに、拡張維持状態から非拡張維持状態に遷移した場合であって、第1X線照射野(第1の幅)に従ってX線絞り器4の絞り羽根を第1の幅に戻す場合には、X線画像の表示サイズを初期状態の表示サイズに縮小させて表示部31に表示させる。第1X線照射野(第1の幅)でX線を照射する場合、バルーン拡張制御部24は、X線画像の表示サイズ縮小の指示を表示制御部30に出力する。表示制御部30は、表示サイズ縮小の指示をバルーン拡張制御部24から受けて、画像処理部10から出力されたX線画像データに基づくX線画像を初期状態の表示サイズに縮小させて表示部31に表示させる。すなわち、第1X線照射野の条件に従ってX線を照射する場合には、表示制御部30は、表示サイズを拡大する前のサイズに戻してX線画像を表示部31に表示させる。このように、X線照射野がより広い第1X線照射野の条件に従ってX線を照射する場合には、その照射によって取得されたX線画像の表示サイズを縮小して表示することで、X線が照射された領域におけるX線画像を表示部31に表示させることが可能となる。
【0053】
なお、ユーザインタフェース(UI)29は、図示しない操作部を備えている。操作部は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、又はキーボードなどで構成されている。操作者は、ユーザインタフェース(UI)29を用いてX線照射指示を与える。
【0054】
また、主制御部27は、上述したように、この実施形態に係るX線診断治療装置の各部を制御する。なお、拡張状態判断部19、バルーン拡張制御部24、及び主制御部27によって、この発明の「制御手段」の1例を構成する。
【0055】
なお、拡張状態判断部19、バルーン拡張制御部24、主制御部27、及び表示制御部30は、1例として、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの図示しない記憶装置とによって構成されていても良い。記憶装置には、拡張状態判断部19の機能を実行するための拡張状態判断プログラム、バルーン拡張制御部24の機能を実行するためのバルーン拡張制御プログラム、主制御部27の機能を実行するための主制御プログラム、及び表示制御部30の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。また、拡張状態判断プログラムには、圧力値検出部20の機能を実行するための圧力検出プログラムと、圧力変化値算出部21の機能を実行するための圧力変化値算出プログラムと、判断部22の機能を実行するための判断プログラムとが含まれている。そして、CPUが、各プログラムを実行することで、各部の機能が実行される。
【0056】
以上のように、この実施形態に係るX線診断治療装置によると、バルーンカテーテル16のバルーンを拡張させている状態において、患者及び術者のX線被曝量の低減を図ることが可能となる。また、バルーンの拡張終了に伴う減圧や、バルーンの破裂などのときには、バルーンを詳細に観察するための第1照射条件(透視条件、撮影条件)に従った透視又は撮影に自動的に切り替えることが可能となる。また、圧力値と拡張維持状態の時間とを付帯状態としてX線画像データに付帯させているため、バルーン拡張又は収縮に伴う一連の作業を簡略化することができ、また、一連の作業に関与する術者の数の削減を図ることが可能となる。すなわち、バルーンカテーテル16を用いて治療において、加圧時間の計測開始や加圧時間の記録などが自動的に行われるため、治療における一連の作業を簡便化することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 高電圧発生部
2 X線発生部
3 X線管
4 X線絞り器
5 X線検出部
6 X線検出器
7 データ変換部
8 寝台天板
9 保持部(Cアーム)
10 画像処理部
11 画像記憶部
12 画像演算部
13 表示画像処理部
14 D/A変換部
16 バルーンカテーテル
17 バルーン拡張器
18 圧力計
19 拡張状態判断部
20 圧力値検出部
21 圧力変化値算出部
22 判断部
23 判断条件記憶部
24 バルーン拡張制御部
25 制御条件記憶部
26 計時部
27 主制御部
28 高電圧制御部
29 ユーザインタフェース
30 表示制御部
31 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照射野でX線を照射するX線発生手段と、
被検体を間にして前記X線発生手段と対向して配置され、前記X線発生手段から照射されて前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段からの出力に基づいてX線画像データを生成するX線画像生成手段と、
前記X線画像データに基づくX線画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
カテーテルシャフトの先端部に内圧の調整により拡張又は収縮するバルーンが設置されたバルーンカテーテルと、
前記バルーン内を加圧又は減圧する加圧手段と、
前記バルーン内に供給する圧力を検出する圧力検出手段と、
前記X線照射の時間間隔が第1時間間隔である照射間隔条件と、前記X線照射のX線線量が第1X線線量であるX線線量条件と、前記照射野が第1照射野である照射野条件とを含む第1照射条件に従って、前記X線発生手段に前記X線を照射させ、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が予め設定された第1圧力閾値よりも高くなった場合に、前記第1照射条件に含まれる前記照射間隔条件、前記X線線量条件、及び前記照射野条件のうち少なくとも1つの条件を変えた、前記X線照射の時間間隔が前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔である前記照射間隔条件、前記X線照射のX線線量が前記第1X線線量よりも少ない第2X線線量である前記X線線量条件、又は前記照射野が前記第1照射野よりも狭い第2照射野である前記照射野条件を含む第2照射条件に従って、前記X線発生手段に前記X線を照射させる制御手段と、
を有することを特徴とするX線診断治療装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2照射条件に従って前記X線発生手段に前記X線を照射させている場合であって、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が前記第1圧力閾値とは異なる第2圧力閾値よりも低くなった場合に、照射条件を前記第2照射条件から前記第1照射条件に変えて、前記X線発生手段に前記X線を照射させることを特徴とする請求項1に記載のX線診断治療装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力を受けて、単位時間あたりの圧力値の変化を求め、前記圧力が前記第1圧力閾値よりも高くなり、かつ、前記圧力値の変化が予め設定された第1圧力変化閾値よりも低くなった場合に、前記第1照射条件に含まれる前記第1照射間隔、前記第1X線線量、及び前記第1照射野のうち少なくとも1つの条件を変えた前記第2照射条件に従って、前記X線発生手段に前記X線を照射させることを特徴とする請求項1に記載のX線診断治療装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2照射条件に従って前記X線発生手段に前記X線を照射させている場合であって、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が前記第1圧力閾値とは異なる第2圧力閾値よりも低くなった場合、又は、前記圧力値の変化が前記第1圧力変化閾値とは異なる第2圧力変化閾値よりも高くなった場合に、照射条件を前記第2照射条件から前記第1照射条件に変えて、前記X線発生手段に前記X線を照射させることを特徴とする請求項3に記載のX線診断治療装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記制御手段が前記照射野を前記第1照射野から前記第2照射野に変えて前記X線発生手段に前記X線を照射させた場合に、前記X線画像データに基づく前記X線画像の表示サイズを拡大させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1又は請求項3のいずれかに記載のX線診断治療装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記制御手段が前記照射野を前記第1照射野から前記第2照射野に変えて前記X線発生手段に前記X線を照射させた場合に、前記X線画像データに基づく前記X線画像の表示サイズを拡大させて前記表示手段に表示させ、その後、前記制御手段が前記照射野を前記第2照射野から前記第1照射野に変えて前記X線発生手段に前記X線を照射させた場合に、前記X線画像データに基づく前記X線画像の表示サイズを前記拡大させる前のサイズに戻して前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2又は請求項4のいずれかに記載のX線診断治療装置。
【請求項7】
前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が前記第1圧力閾値よりも高くなった時から時間を計測し、前記バルーン内の圧力が前記第2圧力閾値よりも低くなった時に、前記計測を停止する計時手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記X線画像とともに、前記計時手段によって計測された時間を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載のX線診断治療装置。
【請求項8】
前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力が前記第1圧力閾値よりも高くなり、かつ、前記圧力値の変化が前記第1圧力変化閾値よりも低くなった時から時間を計測し、前記バルーン内の圧力が前記第2圧力閾値よりも低くなった時、又は、前記圧力値の変化が前記第2圧力変化閾値よりも高くなった時に、前記計測を停止する計時手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記X線画像とともに、前記計時手段によって計測された時間を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項4に記載のX線診断治療装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記圧力検出手段によって検出された前記バルーン内の圧力の値と、前記計時手段が計測した時間の長さとを、前記X線画像データに付帯させて画像記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項7又は請求項8のいずれかに記載のX線診断治療装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−193956(P2010−193956A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39430(P2009−39430)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】