説明

X線診断装置、画像データ処理装置及び画像データ処理方法

【課題】 治療前後の被検体に対するX線撮影によって得られた画像データに基づいて定量的な治療効果の判定を行なう。
【解決手段】 X線発生部1及びX線検出部2は、治療前及び治療後の被検体に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の画像データを生成し、Mモードデータ生成部6は、これらの画像データに設定した関心領域に基づいて同一部位の画素における画素情報の時間的変化(Mモードデータ)を生成する。次いで、表示部8は、得られた治療前及び治療後のMモードデータを比較表示し、特徴量計測部7は、表示されたこれらのMモードデータにおける特徴量の計測を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線診断装置に係り、特にX線撮影によって時系列的に得られた複数枚の画像データに基づいて機能診断を行なうX線診断装置、画像データ処理装置及び画像データ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やMRI装置、あるいはX線CT装置などを用いた医用画像診断技術は、1970年代のコンピュータ技術の発展に伴い急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
X線診断は、近年ではカテーテル手技の発展に伴い循環器分野を中心に進歩を遂げている。循環器領域におけるX線診断は心血管系をはじめ、全身の動静脈の診断を対象としており、血管内に造影剤を注入した状態でX線透過像を撮影する場合が多い。循環器診断用のX線診断装置は、通常、X線発生部とX線検出部、これらを保持する保持機構と、寝台(天板)及び信号処理部を備えている。そして、保持機構はCアームあるいはΩアームが用いられ、天板片持ち方式の寝台と組み合わせることによって患者(以下、被検体と呼ぶ。)に対して最適な位置や方向からのX線撮影を可能にしている。
【0004】
X線診断装置のX線検出部に用いられる検出器として通常X線I.I.(イメージ・インテンシファイア)が使用されている。このX線I.I.を用いた撮影方法では、X線発生部のX線管から発生したX線によって被検体を照射し、このとき被検体を透過して得られるX線の画像情報(投影データ)は、X線I.I.において光学画像に変換され、更に、この光学画像はX線TVカメラによって撮影されて電気信号に変換される。そして、電気信号に変換されたX線画像情報はA/D変換後、モニタに表示される。このため、X線I.I.を用いた撮影方法は、フィルム方式では不可能であったリアルタイム撮影を可能とし、又、デジタル信号で画像データの収集ができるため、種々の画像処理が可能となっている。尚、前記X線I.I.に替わるものとして、近年、2次元配列のX線平面検出器が注目を集め、その一部は既に実用の段階に入っている。
【0005】
循環器用のX線診断では、カテーテル等を用いた治療と併用する所謂IVR(Interventional radiology)が行なわれる場合が多い。この場合、医師(以下、操作者と呼ぶ。)は、X線診断装置に設けられたモニタ上に表示される被検体患部のX線画像データを観察しながら治療用カテーテルを所望部位に挿入して治療することが可能となったため、治療における安全性が飛躍的に向上した。このようなIVRによる治療では、治療前及び治療後において撮影されたX線画像データの比較観察による治療効果の判定が可能となってきている。
【0006】
一方、前記IVRでは通常造影剤が使用され、被検体に対するX線照射量を低減するために、低X線量の準備撮影にて被検体内に注入された造影剤が患部に到達するタイミングを検出し、このタイミングに合わせて診断用画像データを収集するための本撮影を行なっている。この場合、準備撮影で予め得られたX線画像データの血管位置に複数の関心領域を設定し、この関心領域において計測されるX線の時間濃度曲線(TDC:time density curve)によって造影剤到達タイミングの検出が行なわれているが、このTDCによって血流の速度情報を得ることも可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
又、超音波診断の分野においては、心機能等の定量化を行なうために、従来よりMモード法(motion mode 法)が用いられている。このMモード法では、被検体の体表に配置された超音波プローブから体内の複数方向に対して超音波送受波を行なってBモード画像データを収集すると共に、前記複数方向の中から選択された所定方向に対する超音波送受波によってMモードデータを収集する。このとき、Mモードデータの収集位置(収集方向)は、Bモード画像データ上にマーカとして表示され、この位置で得られるMモードデータでは、前記超音波プローブから反射体までの距離と反射強度の時間的変化が時系列的に表示される。そして、このような方法によって得られるBモード画像データとMモード画像データの同時表示によりMモードデータの収集位置を最適化することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−237924号公報(第3−4頁、第1−4図)
【特許文献2】特開昭53−18281号公報(第2−4頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載されているTDCの方法によれば、造影剤の到達タイミングから血流速度を推定することができるが、このとき設定される関心領域は離散的であるため正確な速度分布を得ることは不可能である。しかも、この方法は血流速度の評価に限定され、心臓壁などの組織に対する機能診断に適用することはできない。
【0009】
一方、特許文献2の超音波診断装置に備えられた超音波プローブは、その位置を正確に固定することは容易ではなく、例えば、治療前及び治療後の被検体に対して同一部位(患部)におけるMモードデータを収集することは多大の時間を要し極めて困難となる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体に対して連続的に得られた画像データの各々に所定の関心領域を設定し、この関心領域に対応した前記画像データの画素における画素値情報の時間的変化を得ることによって、前記被検体に対する正確な機能診断を可能としたX線診断装置、画像データ処理装置及び画像データ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に係る本発明のX線診断装置は、被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、この画像データ生成手段によって生成された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記画像データ生成手段によって時系列的に生成された複数枚の前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、生成された前記Mモードデータを表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
又、請求項2に係る本発明のX線診断装置は、治療前及び治療後における被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、この画像データ生成手段によって時系列的に生成された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記画像データ生成手段によって生成された前記治療前及び治療後の画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療前及び治療後のMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、生成された前記治療前及び治療後のMモードデータを比較表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項9に係る本発明の画像データ処理装置は、被検体の診断対象部位に対して生成された時系列的な複数枚の画像データを保存する画像データ記憶手段と、この画像データ記憶手段によって保存された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記画像データ記憶手段によって保存された時系列的な複数枚の前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、生成した前記Mモードデータを表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
一方、請求項11に係る本発明の画像データ処理方法は、被検体に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の画像データを生成するステップと、前記画像データに基づいて関心領域を設定するステップと、前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するステップと、前記Mモードデータを表示するステップを有することを特徴としている。
【0015】
又、請求項12に係る本発明の画像データ処理方法は、治療前における被検体の所定部位に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の治療前画像データを生成するステップと、前記治療前画像データに基づいて関心領域を設定するステップと、前記治療前画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療前Mモードデータを生成するステップと、治療後における前記被検体の所定部位に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の治療後画像データを生成するステップと、前記治療後画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療後Mモードデータを生成するステップと、前記治療前Mモードデータと前記治療前Mモードデータを比較表示するステップを有することを特徴としている。
【0016】
更に、請求項14に係る本発明のX線診断装置は、被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて第1の画像データを生成する第1の画像データ生成手段と、前記第1画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記設定された関心領域における前記第1の画像データの画素値に基づいて第1のMモードデータを生成する第1のMモードデータ生成手段と、前記設定された関心領域を記憶する関心領域記憶手段と、前記被検体の撮影対象部位に照射されたX線から検出されたX線情報に基づいて第2の画像データを生成する第2の画像データ生成手段と、前記記憶された関心領域における前記第2の画像データの画素値に基づいて第2のMモードデータを生成する第2のMモードデータ生成手段と、前記生成された前記第1のMモードデータと前記第2のMモードデータを表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検体に対して連続的に得られた画像データの各々に所定の関心領域を設定し、この関心領域に対応した前記画像データの画素における画素値情報の時間的変化を得ることによって、前記被検体に対する正確な機能診断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
以下に示す本発明の第1の実施例では、虚血性心疾患の被検体に対しX線画像観察下にてカテーテル治療を行なう際、治療前及び治療後の被検体に対するX線撮影によって時系列的な複数枚の画像データを生成し、これらの画像データに基づいて同一部位におけるMモードデータを生成する。次いで、得られた治療前及び治療後のMモードデータを比較観察するとともに、これらのMモードデータにおける特徴量を計測することによって治療効果の判定を行なう。
【0020】
(装置の構成)
本発明の第1の実施例におけるX線診断装置の構成につき図1乃至図5を用いて説明する。尚、図1は、前記X線診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、このX線診断装置に設けられたMモードデータ生成部の更に詳細な構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示したX線診断装置100は、被検体150に対してX線を照射するためのX線発生部1と、このX線発生部1におけるX線照射に必要な高電圧を供給する高電圧発生部4と、被検体150を透過したX線を検出するX線検出部2と、X線発生部1及びX線検出部2を保持するCアーム13と、前記X線発生部1及びX線検出部2の回動や移動、更には、被検体150を載置した天板17の移動を行なう機構部3を備えている。
【0022】
又、X線診断装置100は、X線検出部2で生成されたX線画像データ(以下、画像データと呼ぶ。)を保存する画像データ記憶部5と、この画像データからMモードデータを生成するMモードデータ生成部6と、得られたMモードデータに基づいて生体組織の運動情報や血流情報(以下では、特徴量と呼ぶ。)を計測する特徴量計測部7を備え、更に、上述の画像データ、Mモードデータ及び特徴量計測値を表示する表示部8と、被検体情報や各種コマンドの入力、撮影条件、表示条件等の設定を行なう操作部9と、被検体の心電波形(以下では、ECG信号と呼ぶ。)を計測する生体信号計測部11と、上述の各ユニットを統括して制御するシステム制御部10を備えている。
【0023】
X線発生部1は、被検体150に対しX線を照射するX線管15と、X線管15から照射されたX線に対してX線錘(コーンビーム)を形成するX線絞り器16を備えている。X線管15は、X線を発生する真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された電子を高電圧によって加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生する。又、X線絞り器16は、X線管15と被検体150の間に位置し、X線管15から照射されたX線ビームをX線検出部2における所定サイズの照射範囲に絞り込む機能を有している。
【0024】
尚、X線検出部2には、既に述べたX線I.I.を用いた方式やX線検出器を2次元配列した、所謂X線平面検出器を用いた方式等がある。以下では、X線I.I.を用いた方式について述べるが、この方式に限定されるものではなく、例えばX線平面検出器等他の方式であっても構わない。
【0025】
即ち、X線検出部2は、X線I.I.21と、X線テレビカメラ22と、A/D変換器23を備えている。そして、X線I.I.21は、被検体150を透過したX線を可視光に変換し、更に、光−電子−光変換の過程で輝度の増倍を行なって感度のよい投影データを形成する。一方、X線テレビカメラ22は、CCD撮像素子を用いて上述の光学的な投影データを電気信号に変換し、A/D変換器23は、X線テレビカメラ22から出力された時系列的な電気信号(ビデオ信号)をデジタル信号に変換する。
【0026】
次に、機構部3は、被検体150を体軸方向(図1の紙面に垂直な方向)及び上下方向(図1における上下方向)に移動させるために、被検体150を載置した天板17を上述の方向に移動する天板移動機構32と、X線発生部1及びX線検出部2がその端部近傍に保持されたCアーム13を被検体150の周囲にて回動すると共に、被検体150の体軸方向に移動する撮像系移動機構31と、これらの移動機構を制御する機構制御部33を備えている。
【0027】
そして、機構制御部33は、システム制御部10から供給される制御信号に従がって撮像系移動機構31や天板移動機構32を制御し、X線発生部1及びX線検出部2の回動/移動や天板17の移動における方向、大きさ、速度などを設定すると共に、回動/移動後の位置情報を図示しない記憶回路に保存する。
【0028】
又、高電圧発生部4は、X線管15の陰極から発生する熱電子を加速するために陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させる高電圧発生器42と、システム制御部10からの指示信号に従い、高電圧発生器42における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件の制御を行なう高電圧制御回路41を備えている。一方、画像データ記憶部5は、X線検出部2のA/D変換器23より供給される電気信号を順次保存して時系列的な複数枚の画像データを生成する。
【0029】
次いで、Mモードデータ生成部6は、図2に示すように関心領域座標データ記憶回路61と、画素値抽出回路62と、Mモードデータ記憶回路63を備えており、関心領域座標データ記憶回路61には、操作者が操作部9の入力デバイスを用いて前記画像データの所定位置に設定した関心領域の位置情報が保存される。
【0030】
又、画素値抽出回路62は、関心領域座標データ記憶回路61に保存されている関心領域の位置情報を読み出し、次いで、画像データ記憶部5に保存されている時系列的な複数枚の画像データの各々から前記関心領域の位置情報に対応した画素の画素値を読み出す。そして、得られた画素値をMモードデータ記憶回路63に順次保存してMモードデータを生成する。
【0031】
図1に戻って、特徴量計測部7は、Mモードデータ生成部6によって生成された一連のMモードデータの中から所望期間のMモードデータを読み出し、このMモードデータを用いて治療前後における患部の機能評価を目的とした特徴量の算出を行なう。この場合の特徴量として、例えば、心臓壁の移動距離、移動速度、移動(拍動)周期等がある。尚、Mモードデータの生成方法と特徴量の算出方法についての詳細は後述する。
【0032】
次に、表示部8は、画像データ記憶回路7に保存されている画像データ、Mモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63に保存されているMモードデータ、更には、特徴量計測部7にて計測された特徴量計測値を表示するためのものであり、これらのデータやその付帯情報を合成して表示用画像データを生成する表示用データ生成回路81と、表示用画像データに対してD/A変換とTVフォーマット変換を行なって映像信号を生成する変換回路82と、この映像信号を表示するモニタ83を備えている。
【0033】
一方、操作部9は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力デバイスや表示パネル、更には、各種スイッチや選択ボタン等を備えたインターラクティブなインターフェイスである。
【0034】
そして、操作部9において、被検体情報の入力、診断部位の選択、X線発生部1及びX線検出部2の回動角度やX線検出部2及び天板17の移動距離の設定、診断部位に最適なX線照射条件の設定、画像データの表示モードの選択、Mモード用関心領域やMモードデータの表示範囲、更には、Mモードデータにおける特徴量計測用カーソルの設定、そして、各種コマンドの入力等が行なわれる。尚、本実施例では、診断部位として心臓左心室が選択され、この診断部位に最適なX線照射条件が設定される。
【0035】
更に、操作部9では、画像データの表示モードとしてのリアルタイム表示モードあるいはループ表示モードの何れかが選択され、ループ表示モードの表示期間Txの設定も同時に行なわれる。更に、心臓壁運動における移動距離、移動速度、移動(拍動)周期の計測を行なうための特徴量計測用カーソルがMモードデータ上に設定される。
【0036】
一方、生体情報計測部11は、被検体150に装着された図示しない電極から検出されるECG信号を受信し、デジタル信号に変換する。
【0037】
(Mモードデータの生成と特徴量の計測)
次に、心臓左心室内に造影剤を注入して得られた画像データに対してMモードデータを生成する場合を例に、Mモードデータの生成方法について述べる。図3(a)は、左室内112にその先端部が挿入されたカテーテル111を介して造影剤を注入しX線撮影を行なった場合の画像データ121と、この画像データ121に対して設定されたMモード用関心領域113を示しており、図3(b)は、Mモード用関心領域113に対応した画像データ121の画素値に基づいて生成されたMモードデータ122を示している。
【0038】
先ず、表示部8のモニタ83にリアルタイム表示されている図3(a)の画像データ121に対し、操作者は操作部9の入力デバイスを用いてMモードデータを収集するための関心領域113を設定する。このとき、モニタ83では、設定された関心領域113と画像データ記憶部5から順次供給される所定期間Txの時系列的な複数枚の画像データが重畳表示される。一方、Mモードデータ生成部6の画素値抽出回路62は、これら複数枚の画像データの各々から前記関心領域113と同一座標の画素における画素値を抽出してMモードデータを生成し、Mモードデータ記憶回路63に保存する。
【0039】
図4は、画像データ121に対して設定された関心領域113とMモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63に保存されるMモードデータ123の関係を模式的に示したものであり、例えば、画像データ121に対して位置aa及び位置abを両端とする直線状の関心領域113が設定された場合、時相t=t1における画像データ121−1の関心領域113に対応した画素p1乃至pmの画素値p11乃至p1mがMモードデータ記憶回路63の第1列に保存される。
【0040】
同様にしてt=t2、t3、・・・tnの各時相で生成される画像データ121−2乃至121−nの前記関心領域113に対応した画素p1乃至pmの画素値p21乃至p2m、p31乃至p3m、・・・pn1乃至pnmがMモードデータ記憶回路63の第2列乃至第n列に保存される。
【0041】
図5(a)は、上述のMモードデータ記憶回路63に保存されたMモードデータ123を、又、図5(b)は、表示部8のモニタ83に表示されたMモードデータ122を示している。
【0042】
この図5(b)に示したMモードデータ122の横軸は、連続したn枚の画像データ121−1乃至121−nが生成される時相t1乃至tnに対応し、縦軸は、これらの画像データ121−1乃至121−nの各々における関心領域113に対応した画素p1乃至pmの位置に対応している。そして、このように形成されたm×nの画素値表示領域では、画素値pi1乃至pim(i=1乃至n)に基づいて輝度変調されたMモードデータ122が表示される。
【0043】
次に、前記Mモードデータ122に対して行なわれる特徴量の計測方法につき、図6を用いて説明する。特徴量の計測において、操作者は、操作部9において計測しようとする特徴量、即ち、心臓壁の移動距離、移動速度、移動周期、時相差等を選択する。次いで、表示部8のモニタ83に表示されるMモードデータ122を静止させた後、操作部9の入力デバイスを用いて、静止表示されているMモードデータ122の所定位置に特徴量計測用カーソルを設定する。
【0044】
図6(a)は、カテーテル111を介して造影剤が注入された心臓左心室110における画像データ121を示しており、図6(b)は、画像データ121における左心室画像の長軸方向に設定された関心領域112に基づいて得られたMモードデータ122を示している。
【0045】
このMモードデータ122に対して、例えば、心尖部の最大変位量(移動距離)L0(mm)を計測するためのカーソルC1、移動周期T0(sec)を計測するためのカーソルC2、そして、移動速度α0(mm/sec)を計測するためのカーソルC3が、操作者によって設定される。
【0046】
そして、カーソルC1乃至C3の位置情報が操作部9よりシステム制御部10を介して供給された特徴量計測部7は、これらの位置情報に基づいて上述の最大変位量L0や移動周期T0、更には移動速度α0を算出する。尚、移動速度α0は、カーソルC3の勾配を算出することによって求めることができる。
【0047】
尚、上述の実施例では、Mモードデータに対するカーソルC1乃至C3の設定は、操作者が手動によって行なう場合について述べたが、自動的に設定することも可能である。例えば、特徴量計測部7は、Mモードデータ生成部6が生成したMモードデータを画像処理することによって図7に示すような輪郭を抽出し、この輪郭に対してカーソルC1乃至C3を自動設定する。そして、設定されたカーソルに基づいて上述の特徴量を計測する。
【0048】
(Mモードデータの生成手順及び特徴量の計測手順)
次に、本実施例におけるMモードデータの生成手順と、このMモードデータにおける特徴量の計測手順につき図8乃至図9を用いて説明する。尚、図8は、Mモードデータの生成手順と特徴量の計測手順を示すフローチャートである。
【0049】
操作者は、ECG信号を収集するために生体信号計測部11のECG電極を被検体150の所定部位に装着した後、操作部9において被検体150に関する被検体情報の入力、診断部位の選択、X線照射条件の設定、表示モード等の設定を行なう(図8のステップS1)。
【0050】
この場合、X線照射条件として、治療前及び治療後の被検体150に対する診断用画像データの生成を目的としたX線撮影(以下では本撮影と呼ぶ。)におけるX線照射条件と、造影剤注入用カテーテルの挿入位置の確認を目的としたX線撮影(以下では、準備撮影と呼ぶ。)におけるX線照射条件が夫々設定され、表示モードとしてリアルタイム表示モードが選択される。尚、準備撮影におけるX線照射量は、本撮影の場合より小さくなるようにX線照射条件が設定される。そして、これらの初期設定情報はシステム制御部10の図示しない記憶回路に保存される。
【0051】
これらの初期設定が終了したならば、操作者は、操作部9において準備撮影のための撮影開始コマンドを入力する。そして、このコマンド信号がシステム制御部10に供給されることによって準備撮影が開始される(図8のステップS2)。
【0052】
準備撮影の開始コマンド信号を受信したシステム制御部10は、高電圧発生部4の高電圧制御回路41に対して準備撮影用の第1の駆動信号を供給し、高電圧制御回路41は、既に設定されている準備撮影用のX線照射条件に基づいて高電圧発生器42を制御し高電圧をX線発生部1のX線管15に印加する。次いで、高電圧が印加されたX線管15は、X線絞り器16を介して被検体150にX線を照射し、被検体150を透過したX線は、その後方に設けられたX線検出部2のX線I.I.21に投影される。
【0053】
一方、X線I.I.21は、被検体150を透過したX線を光学画像に変換し、更に、X線テレビカメラ22は、前記光学画像を電気信号(ビデオ信号)に変換する。そして、X線テレビカメラ22から時系列的に出力されるビデオ信号は、A/D変換器23にてデジタル信号に変換された後、画像データ記憶部5に順次保存されて画像データが生成される。
【0054】
次いで、画像データ記憶部5に保存された画像データは表示部8の表示用データ生成回路81に供給され、表示用データ生成回路81は、この画像データとシステム制御部10から供給される前記画像データの付帯情報を合成して表示用画像データを生成する。次いで、変換回路82は、前記表示用画像データに対してD/A変換とTVフォーマット変換を行なって映像信号を生成しモニタ83に表示する。
【0055】
以下同様にして、準備撮影用の第2、第3、・・・の駆動信号がシステム制御部10から高電圧発生部4の高電圧制御回路41に対して供給され、これらの駆動信号に基づいて、X線発生部1、X線検出部2、画像データ記憶部5及び表示部8は、上述と同様の動作を繰り返すことによって被検体150に対する準備撮影を行なう。そして、上述の駆動信号によって時系列的に得られる複数枚の画像データは表示部8のモニタ83においてリアルタイム表示される(図8のステップS3)。
【0056】
そして、操作者は、モニタ83に表示された画像データを観察し、撮影方向や撮影位置が適当でない場合には、操作部9より機構部3の機構制御部33に対してX線発生部1及びX線検出部2の回動角度や移動量、あるいは天板17の移動量を更新するためのコマンド信号を供給する。このコマンド信号に基づいて機構制御部33は、撮像系移動機構31あるいは天板移動機構32に駆動信号を供給してX線発生部1及びX線検出部2や天板17の位置を更新し、被検体150に対して最適な撮影位置及び撮影方向を設定する。
【0057】
次いで、操作者は、更新された撮影位置及び撮影方向において撮影され表示部8のモニタ83にリアルタイム表示された画像データを観察しながら被検体の鼠ケイ部(足の付け根部)の血管より造影剤注入用のカテーテルを挿入し(図8のステップS4)、その先端部が心臓左心室内に到達したならば、操作部9にて本撮影のための撮影開始コマンドを入力する(図8のステップS5)。
【0058】
前記コマンド信号を操作部9から受信したシステム制御部10は、高電圧発生部4の高電圧制御回路41に対し駆動信号を供給し、既に設定されている準備撮影用のX線照射条件を本撮影用のX線照射条件に更新し、X線発生部1のX線管15は、新たに設定されたX線照射条件に基づいて被検体150にX線を照射する。
【0059】
以下、システム制御部10は、各ユニットを制御して上述の準備撮影における画像データの生成及び表示と同様の手順によって本撮影における画像データ(以下では、治療前画像データと呼ぶ。)の生成と表示を行なう。一方、操作者は、モニタ83にリアルタイム表示される治療前画像データの観察下にて、図示しない造影剤インジェクタを用い被検体150の左心室内に造影剤を注入する(図8のステップS6)。
【0060】
そして、造影剤注入前後の所定期間Tx(例えば、10秒間)において時系列的に生成される複数枚の治療前画像データは、画像データ記憶部5に保存されると共に表示部8のモニタ83にリアルタイム表示される(図8のステップS7)。尚、治療前画像データの各々には、生体信号計測部11から供給されるECG信号の時相が付帯情報として付加される。又、このときのX線発生部1及びX線管検出部2の位置情報は機構部3の機構制御部33における図示しない記憶回路に保存される。
【0061】
上述の方法によって治療前画像データの生成と保存が終了したならば、操作者は、操作部9においてリアルタイム表示モードをループ表示モードに変更する。次いで、ループ表示モードの制御信号を、システム制御部10を介して供給された表示部8の表示用データ生成回路81は、画像データ記憶部5に保存されている所定期間Txの治療前画像データを読み出し、表示部8のモニタ83においてループ表示する(図8のステップS8)。
【0062】
次いで、操作者は、操作部9に備えられたマウス等の入力デバイスを用い、モニタ83に表示された治療前画像データに対してMモード用の関心領域を設定する。このとき、操作部9において設定された関心領域の座標データは、システム制御部10を介して図2に示したMモードデータ生成部6の関心領域座標データ記憶回路61に保存される(図8のステップS9)。
【0063】
一方、画素値抽出回路62は、関心領域座標データ記憶回路61に保存された関心領域の座標データと、画像データ記憶部5に保存されている所定期間Txの治療前画像データを読み出し、座標データに対応した治療前画像データの画素における画素値を抽出する。そして、関心領域に対応した複数枚の治療前画像データの画素から抽出した画素値をECG信号の時相に基づいてMモードデータ記憶回路63に順次保存し治療前Mモードデータを生成する。
【0064】
次いで、表示部8の表示用データ生成回路81は、Mモードデータ記憶回路63に保管されている治療前Mモードデータを読み出し、既にループ表示されている治療前画像データと合成して表示用画像データを生成した後、モニタ83に表示する(図8のステップS10)。
【0065】
次に、操作者は、画像データ観察下で造影剤注入用カテーテルを治療用カテーテル(例えば、PTCA用のバルーンカテーテル)に置換え、その先端部を冠状動脈の狭窄部に配置する(図8のステップS11)。そして、この治療用カテーテルを用いて所定の治療を行なった後、前記治療用カテーテルを造影剤注入用カテーテルに再度置換える。(図8のステップS12乃至S13)。
【0066】
カテーテルの置換えが終了したならば、被検体の左心室内への造影剤注入を開始し(図8のステップS14)、治療前画像データの場合と同様なX線照射条件及び手順によって所定期間Txにおける治療後画像データを生成する(図8のステップS15)。この場合、機構部3の機構制御部33における記憶回路に保存されている治療前画像データ生成時のX線発生部1及びX線検出部2の位置情報に基づいて治療後画像データ生成時のX線発生部1及びX線検出部2の位置が設定される。
【0067】
次いで、Mモードデータ生成部6の画素値抽出回路62は、治療前画像データに対して設定した関心領域の座標データを関心領域座標データ記憶回路61から再度読み出す。更に、画像データ記憶部5に保存された所定期間Txにおける複数の治療後画像データを読み出し、これらの画像データの前記座標データに対応した画素における画素値をMモードデータ記憶部63に順次保存することによって治療後Mモードデータを生成する(図8のステップS16)。
【0068】
一方、表示部8の表示用データ生成回路81は、上述の治療後画像データと治療後Mモードデータを合成し、変換回路82を介してモニタ83に表示する。
【0069】
又、表示部8の表示用データ生成回路81は、画像データ記憶部5から所定期間Txの治療前画像データと治療後画像データを読み出し、更に、Mモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63から同じ期間Txにおける治療前Mモードデータと治療後Mモードデータを読み出す。そして、読み出したこれらの画像データとMモードデータを用い、例えば、後述の図9に示すような表示フォーマットの表示用画像データを生成してモニタ83に表示する。この表示方法によれば、治療前及び治療後における画像データとMモードデータを比較表示することが容易となる(図8のステップS17)。尚、この比較表示における治療前及び治療後のMモードデータの各々は、生体信号計測部11から得られるECG信号の時相に合わせて表示されることが望ましい。
【0070】
次に、特徴量の算出と表示に際して、操作者は、表示部8のモニタ83にループ表示されている画像データとMモードデータを操作部9に設けられた静止ボタンによって静止させる。次いで、操作部9の例えば表示パネルに表示されている種々の特徴量の中から所望の特徴量、即ち、移動距離、移動速度、移動周期、時相差等を選択した後、モニタ83に静止表示された治療前あるいは治療後のMモードデータに対し入力デバイスを用いて特徴量計測用のカーソルを設定する(図8のステップS18)。
【0071】
一方、特徴量計測部7は、操作部9からシステム制御部10を介して供給されるカーソルの座標データと、Mモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63に保存されているMモードデータに基づいて治療前及び治療後の心臓壁における移動変位や移動速度、移動周期、更には時相差を計測し、これらの計測値を表示部8の表示用データ生成回路81に供給する。
【0072】
そして、表示用データ生成回路81は、特徴量計測部7において計測された特徴量の値と治療前後の画像データ及びMモードデータを合成し、例えば、図9に示した表示フォーマットにてモニタ83に表示する。尚、このとき、前記特徴量に対して予め設定されている正常範囲あるいは許容範囲等の情報もモニタ83に表示する(図8のステップS19)。
【0073】
図9は、本実施例における治療前後の画像データ、Mモードデータ及び特徴量計測値の表示方法の具体例を示したものであり、例えば、表示部8におけるモニタ83の画像データ表示領域501には、所定間隔Txにおける治療前及び治療後の画像データがループ表示され、これらの画像データに対応したMモードデータがMモードデータ表示領域502に表示される。
【0074】
特徴量の計測において、操作者は、画像データ表示領域501にループ表示されている画像データとMモードデータ表示領域502にループ表示されているMモードデータを一旦静止させ、この静止Mモードデータに対してカーソルC1a乃至C3a及びC1b乃至C3bを設定する。次いで、特徴量計測部7は、設定されたカーソルC1a乃至C3a及びC1b乃至C3bに基づいて心臓壁における移動変位L0a及びL0b,移動速度α0a及びα0b、更には移動周期T0a及びT0bの計測を行なう。
【0075】
そして、表示部8の表示用データ生成回路81は、計測された特徴量の値を、画像データ表示領域501及びMモードデータ表示領域502の下方に設けられた特徴量計測値表示領域503に表示する。このとき、当該診断部位に対しシステム制御部10の記憶回路に予め保管されている前記特徴量の正常範囲の値も特徴量計測値表示領域503に表示される。
【0076】
尚、特徴量の計測は、上述のように画像データとMモードデータを所定時相で静止した状態で行なわれるが、このとき、画像データ表示領域501に表示された静止画像データの時相を示すカーソルC4がMモードデータ表示領域502のMモードデータに重畳表示される。そして、このカーソルC4の位置(時相)を操作部9の入力デバイスを用いて更新することにより、画像データ表示領域501の画像データも更新後の時相に対応した画像データに更新される。
【0077】
以上述べた本実施例によれば、被検体の診断部位に対する連続的なX線撮影によって得られた複数枚の画像データに所定の関心領域を設定し、この関心領域に対応した前記画像データの画素におけるX線情報の時間的変化をMモードデータとして得ることによって、前記診断部位に対する正確な機能診断が可能となる。
【0078】
又、前記Mモードデータにおける種々の特徴量を計測することによって前記診断部位に対する機能診断を定量的に行なうことができるため、診断精度が向上する。
【0079】
更に、前記実施例によれば、治療前の撮影部位と治療後の撮影部位を正確に一致させることができるため、同一診断部位における治療前Mモードデータと治療後Mモードデータの比較が容易となり、前記Mモードデータ、あるいはこれらのMモードデータから得られる特徴量を比較することによって治療効果の判定を効率よく行なうことが可能となる。
【0080】
又、超音波画像データから生成されるMモードデータは、走査に要する時間の分だけ時間的誤差を有しているが、上述の実施例によって得られるMモードデータは瞬時に撮影されたX線画像データに基づいて生成されているため時間的な精度に優れている。
【0081】
更に、血管等のように同一平面内に存在しないような臓器に対してMモードデータを生成する場合、断層像である超音波画像データからは連続したMモードデータを得ることは不可能であるが、透過像であるX線画像データによれば連続したMモード画像を容易に得ることが可能となる。
【実施例2】
【0082】
次に、本発明の第2の実施例における画像データ処理装置につき図2、図10及び図11を用いて説明する。この第2の実施例では、被検体に対して予め得られた治療前及び治療後の時系列的な画像データに基づいて同一部位におけるMモードデータを生成する。次いで、得られた治療前及び治療後のMモードデータを比較観察するとともに、これらのMモードデータにおける特徴量を計測することによって治療効果の判定を行なう。
【0083】
(装置の構成)
以下に、本発明の第2の実施例における画像データ処理装置の構成につき、図2及び図10のブロック図を用いて説明する。尚、図10は、本実施例における画像データ処理装置の全体構成を示すブロック図であり、この図10において、図1の第1の実施例と同様の機能を有するユニットは、同一番号で示し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
即ち、図10の画像データ処理装置200は、別途設けられたX線診断装置やX線CT装置、更にはMRI装置等の画像診断装置において生成され、ネットワークあるいは記憶媒体を介して供給された当該患者の治療前及び治療後における画像データを保管する画像データ記憶部5と、この画像データからMモードデータを生成するMモードデータ生成部6と、得られたMモードデータに基づいて種々の特徴量を計測する特徴量計測部7を備え、更に、上述の画像データ、Mモードデータ及び特徴量計測値を表示する表示部8と、被検体情報や各種コマンドの入力、撮影条件、表示条件等の設定を行なう操作部9と、これらの各ユニットを統括して制御するシステム制御部10を備えている。
【0085】
そして、前記Mモードデータ生成部6は、図2に示すように関心領域座標データ記憶回路61と、画素値抽出回路62と、Mモードデータ記憶回路63を備えている。
【0086】
(Mモードデータの生成手順と特徴量の計測手順)
次に、図11のフローチャートを用いて本実施例におけるMモードデータの生成手順と特徴量の計測手順を説明する。
【0087】
先ず、画像データ処理装置200の操作者は、操作部9にて診断対象の被検体IDを入力した後、ループ表示モードを選択しMモードデータの生成開始コマンドを入力する(図11のステップ31)。システム制御部10を介してこのコマンド信号を受信した表示部8の表示用データ生成回路81は、画像データ記憶部5に保管されている治療前画像データの中から所定期間Txの治療前画像データを読み出し、表示部8のモニタ83においてループ表示する(図11のステップS32)。
【0088】
次いで、操作者は、モニタ83に表示された治療前画像データに対してMモードデータを生成するための関心領域を設定する。そして、このとき設定された関心領域の座標データは、図2に示したMモードデータ生成部6の関心領域座標データ記憶回路61に保存される(図11のステップS33)。
【0089】
一方、Mモードデータ生成部6の画素値抽出回路62は、関心領域座標データ記憶回路61に保存された前記関心領域の座標データと、画像データ記憶部5に保存されている所定期間Txの治療前画像データを読み出し、座標データに対応した治療前画像データの画素における画素値をMモードデータ記憶回路63に順次保存して治療前Mモードデータを生成する(図11のステップS34)。
【0090】
次いで、画素値抽出回路62は、画像データ記憶部5に保存されている所定期間Txの治療後画像データを読み出し、前記関心領域の座標データに対応した治療後画像データの画素における画素値をMモードデータ記憶回路63に順次保存して治療後Mモードデータを生成する(図11のステップS35)。
【0091】
一方、表示部8の表示用データ生成回路81は、画像データ記憶部5から所定期間Txの治療前画像データと治療後画像データを読み出し、更に、Mモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63から同じ期間Txにおける治療前Mモードデータと治療後Mモードデータを読み出す。そして、読み出したこれらの画像データとMモードデータを用いて表示用画像データを生成し、モニタ83にループ表示する(図11のステップS36)。
【0092】
次に、操作者は、表示部8のモニタ83にループ表示されている画像データとMモードデータを操作部9に設けられた静止ボタンによって静止させる。次いで、操作部9の例えば表示パネルに表示されている種々の特徴量の中から所望の特徴量を選択した後、モニタ83に静止表示された治療前及び治療後のMモードデータに対し入力デバイスを用いて特徴量計測用のカーソルを設定する(図11のステップS37)。
【0093】
一方、特徴量計測部7は、操作部9からシステム制御部10を介して供給されたカーソルの座標データと、Mモードデータ生成部6のMモードデータ記憶回路63に保存されているMモードデータに基づいて治療前及び治療後の特徴量を計測し、これらの計測値を表示部8の表示用データ生成回路81に供給する。
【0094】
そして、表示用データ生成回路81は、上述の特徴量計測値と治療前後の画像データ及びMモードデータを合成してモニタ83に表示する。尚、このとき、予め設定されている前記特徴量の正常範囲等の情報も同一モニタ上に表示する(図11のステップS38)。
【0095】
以上述べた第2の実施例によれば、被検体の診断部位に対して得られた時系列的な複数枚の画像データに所定の関心領域を設定し、この関心領域に対応した前記画像データの画素における画素情報の時間的変化をMモードデータとして得ることによって、前記診断部位に対する正確な機能診断が可能となる。
【0096】
又、前記Mモードデータにおける種々の特徴量を計測することによって前記診断部位に対する機能診断を定量的に行なうことができるため、診断精度が向上する。
【0097】
更に、本実施例における画像データ処理装置は、画像データの生成を行なう画像診断装置に対して独立な構成となっているため、X線診断装置のみならずX線CT装置やMRI装置等のように治療前後の同一部位における画像データを容易に収集可能な医用画像診断装置によって生成された画像データに対しても上述の効果を得ることができる。
【0098】
又、上述の実施例における図9の表示方法では、画像データの時相を示すカーソルがMモードデータに重畳表示され、このカーソルの位置(時相)を操作部の入力デバイスを用いて更新することにより、前記画像データも更新後の時相に対応した画像データに更新される。このため、拡張末期あるいは収縮末期等の正確な時相における画像データを表示することができ、この画像データを用いて左心室面積(LVA)等の計測を精度よく行なうことが可能となる。
【0099】
即ち、上述の方法によれば、脳や下肢全体など超音波診断装置では従来撮影困難であった部位に対してもX線診断装置では容易に画像データを得ることができるため、X線診断装置でMモードデータを生成/表示することは臨床上極めて有効である。
【0100】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上述の実施例に限定されるものでは無く、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、治療前あるいは治療後の画像データに対して1つの関心領域を設定する場合について述べたが、図12(a)に示すように複数の関心領域(例えば、関心領域113a及び113b)を同時設定してもよい。この場合、操作者によって任意に設定された関心領域の基準点aaを中心として複数の関心領域113a、113b、・・・を自動的に設定することも可能である。そして、これらの関心領域113a、113b、・・・に対応して得られたMモードデータ122a及び122b、・・・は図12(b)に示すように並列表示される。
【0101】
又、画像データに設定される関心領域は、上述の実施例にて示したように直線であってもよいが、任意の形状を有する曲線であってもよく、又、前記線状の関心領域の代りに有限な幅を有した関心領域であってもよい。この場合、Mモードデータの値として、この関心領域に対応した幅方向における複数の画素値の平均値や最大値などが用いられる。
【0102】
更に、上述の実施例では、造影剤を注入して得られた画像データを用いてMモードデータを生成する場合について述べたが、造影剤を用いずに得られた画像データや造影剤注入前後の画像データのサブトラクションによって得られたDSA画像を用いてMモードデータを生成してもよい。
【0103】
一方、前記実施例では、左心房の壁運動をMモードデータで観測することによって、その機能診断を行なう場合について述べたが、これに限定されるものではなく、造影剤注入時におけるMモードデータによって血流速度を計測することも可能である。図13は、造影剤注入直後の大腿動脈の画像データ115に対して、この血管の走行に沿った関心領域114を自動あるいは手動によって設定した場合のMモードデータを示したものであり、造影剤のフロントエッジが表示されているMモードデータの傾斜角度α1を計測することによって大腿動脈115の血流速度、流入時間、流出時間、滞留時間を推定することができる。
【0104】
このような計測を、治療前後の血管に対して行なうことにより治療効果を判定することができる。この場合、造影剤インジェクタによる注入タイミングPJをMモードデータに表示することが望ましい。又、画像データにおける血管画像をトラッキングしながら関心領域を設定することによって、拍動する血管においてもその血流情報を安定して得ることができる。
【0105】
更に、上述の実施例では、同一のモニタにおいて治療前後の画像データやMモードデータの表示を行なったが、これらのデータを複数個のモニタにて表示してもよい。又、治療前後のMモードデータを並列表示する方法について述べたが、これらを重畳表示してもよい。尚、表示部に表示される画像データやMモードデータは、拡大縮小が自在であり表示されていない部分に対してはオフセット調節を行なうことができる。
【0106】
又、前記実施例におけるMモードデータの生成手順では、治療前画像データのループ表示(図8のステップS8)、Mモード用関心領域の設定(図8のステップS9)及び治療前Mモードデータの生成と表示(図8のステップS10)は、図8のステップS12のカテーテル治療の前に行なったが、図14に示すように、治療後において纏めて行なってもよい。
【0107】
ところで、本発明によるMモードデータの生成に先立って、寸法が予め判明している基準ファントームを使用した画像データ及びMモードデータを生成し、得られたこれらのデータに基づいて寸法キャリブレーションを行なうことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施例におけるX線診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例のX線診断装置に設けられたMモードデータ生成部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施例における表示部に表示される画像データとMモードデータを示す図。
【図4】同実施例における画像データに設定された関心領域とMモードデータの関係を模式的に示す図。
【図5】同実施例におけるMモードデータ記憶回路に保存されるMモードデータと表示部に表示されるMモードデータの関係を示した図。
【図6】同実施例における特徴量の計測方法を示す図。
【図7】同実施例における特徴量計測方法の変形例を示す図。
【図8】同実施例におけるMモードデータの生成手順と特徴量の計測手順を示すフローチャート。
【図9】同実施例における画像データ、Mモードデータ及び特徴量計測値の表示方法を示す図。
【図10】本発明の第2の実施例における画像データ処理装置の全体構成を示すブロック図。
【図11】同実施例におけるMモードデータの生成手順と特徴量の計測手順を示すフローチャート。
【図12】本発明の第1の実施例及び第2の実施例における関心領域設定方法の変形例を示す図。
【図13】本発明の第1の実施例及び第2の実施例における診断部位の変形例を示す図。
【図14】本発明の第1の実施例におけるMモードデータの生成手順と特徴量の計測手順の変形例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0109】
1…X線発生部
2…X線検出部
3…機構部
4…高電圧発生部
5…画像データ記憶部
6…Mモードデータ生成部
7…特徴量計測部
8…表示部
9…操作部
10…システム制御部
11…生体信号計測部
13…Cアーム
15…X線管
16…X線絞り器
17…天板
21…X線I.I.
22…X線テレビカメラ
23…A/D変換器
31…撮像系移動機構
32…天板移動機構
33…機構制御部
41…高電圧制御回路
42…高電圧発生器
61…関心領域座標データ記憶回路
62…画素値抽出回路
63…Mモードデータ記憶回路
81…表示用データ生成回路
82…変換回路
83…モニタ
100…X線診断装置
150…被検体
200…画像データ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、
このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
この画像データ生成手段によって生成された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記画像データ生成手段によって時系列的に生成された複数枚の前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、
生成された前記Mモードデータを表示する表示手段を
備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
治療前及び治療後における被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、
このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
この画像データ生成手段によって時系列的に生成された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記画像データ生成手段によって生成された前記治療前及び治療後の画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療前及び治療後のMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、
生成された前記治療前及び治療後のMモードデータを比較表示する表示手段を
備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項3】
特徴量計測手段を備え、この特徴量計測手段は、前記Mモードデータに基づいて、少なくとも前記撮影対象部位における移動変位、移動速度、移動周期、時相差の何れかを計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したX線診断装置。
【請求項4】
前記Mモードデータ生成手段は、所定期間にて生成された複数枚の前記画像データに基づいて前記Mモードデータを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したX線診断装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記Mモードデータと前記画像データを時相合わせして表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したX線診断装置。
【請求項6】
前記表示手段は、所定期間の前記Mモードデータと前記画像データをループ表示することを特徴とする請求項5記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記特徴量計測手段が計測した前記特徴量の計測値を前記Mモードデータ及び前記画像データと共に表示することを特徴とする請求項3記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記関心領域設定手段は、前記治療前の画像データに対して所望の関心領域を設定することを特徴とする請求項2記載のX線診断装置。
【請求項9】
被検体の診断対象部位に対して生成された時系列的な複数枚の画像データを保存する画像データ記憶手段と、
この画像データ記憶手段によって保存された前記画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記画像データ記憶手段によって保存された時系列的な複数枚の前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するMモードデータ生成手段と、
生成した前記Mモードデータを表示する表示手段を
備えたことを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項10】
特徴量計測手段を備え、この特徴量計測手段は、前記Mモードデータに基づいて、少なくとも前記撮影対象部位における移動変位、移動速度、移動周期、時相差の何れかを計測することを特徴とする請求項9記載の画像データ処理装置。
【請求項11】
被検体に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の画像データを生成するステップと、
前記画像データに基づいて関心領域を設定するステップと
前記画像データの前記関心領域における画素値に基づいてMモードデータを生成するステップと、
前記Mモードデータを表示するステップを
有することを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項12】
治療前における被検体の所定部位に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の治療前画像データを生成するステップと、
前記治療前画像データに基づいて関心領域を設定するステップと
前記治療前画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療前Mモードデータを生成するステップと、
治療後における前記被検体の所定部位に対してX線撮影を行なって時系列的な複数枚の治療後画像データを生成するステップと、
前記治療後画像データの前記関心領域における画素値に基づいて治療後Mモードデータを生成するステップと、
前記治療前Mモードデータと前記治療前Mモードデータを比較表示するステップを
有することを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項13】
生成された前記Mモードデータの特徴量を計測するステップと、
計測された前記特徴量の値を表示するステップを
有することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載した画像データ処理方法。
【請求項14】
被検体の撮影対象部位に対してX線を照射するX線発生手段と、
このX線発生手段によって照射され前記撮影対象部位を透過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段によって検出されたX線情報に基づいて第1の画像データを生成する第1の画像データ生成手段と、
前記第1の画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記設定された関心領域における前記第1の画像データの画素値に基づいて第1のMモードデータを生成する第1のMモードデータ生成手段と、
前記設定された関心領域を記憶する関心領域記憶手段と、
前記被検体の撮影対象部位に照射されたX線から検出されたX線情報に基づいて第2の画像データを生成する第2の画像データ生成手段と、
前記記憶された関心領域における前記第2の画像データの画素値に基づいて第2のMモードデータを生成する第2のMモードデータ生成手段と、
生成された前記第1のMモードデータと前記第2のMモードデータを表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とするX線診断装置。
【請求項15】
前記第1の画像データを生成する際の前記X線発生手段又は前記X線検出手段の位置を記憶する位置記憶手段をさらに備え、
前記第2の画像データ生成手段は、前記記憶された位置に基づいて前記第2の画像データを生成することを特徴とする請求項14記載のX線診断装置。
【請求項16】
前記関心領域設定手段は、略直線状の関心領域を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載したX線診断装置。
【請求項17】
前記関心領域設定手段は、前記画像データ上に1点の中心点と前記中心点を中心として複数の方向に広がる複数の略直線状の関心領域を設定することを特徴とする請求項16記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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