説明

X線診断装置

【課題】超音波断層映像の撮像時に操作者が被ばくすることがなく、一人の操作者がX線
と超音波プローブを操作できるX線診断装置を提供する。
【解決手段】プローブを把持し、遠隔操作によって駆動するプローブアームを可動アームに備える。プローブはX線画像上を位置操作部によって指定することにより、移動させることができる。さらに、プローブの位置を記憶し、その位置にプローブを再び移動する。また、画像位置情報記憶部にX線画像データとプローブ位置情報とを関連付けて格納する。格納されたプローブ位置情報を読み出し、再度その位置にプローブを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて被検体を撮像するX線診断装置に係り、特に超音波診断装置を備え、その超音波診断装置のプローブを把持する遠隔操作可能なアームを有するX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血管壁の治療などにおいては、X線によって血管位置を確認し、さらにその位置における血管の超音波断層映像を得ることが、効果的な治療に不可欠となる。このため、超音波診断装置を備えるX線診断装置が開発されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、経皮的に超音波プローブを血管内に挿入しなければならず、患者にとって負担となるという問題点があった。
【0004】
このため、従来は超音波プローブを手に持って、非経皮的に血管の断層映像を撮像していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−64638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法によっては超音波プローブを持つ手がX線に被ばくしてしまうという問題点があった。また、X線の操作者のほかに超音波プローブを操作する操作者が必要となるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、超音波断層映像の撮像時に操作者が被ばくすることがなく、一人の操作者がX線と超音波プローブを操作できるX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明は、被検体にX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、X線検出部の出力からX線画像データを生成して出力するX線画像データ生成部と、を有するX線診断部と、被検体に超音波を照射し、被検体が反射した超音波を受信するプローブと、プローブの出力から超音波画像データを生成して出力する超音波画像データ生成部と、を有する超音波診断部と、プローブを把持し、X線照射部とX線検出部を有する可動アームに駆動可能に取り付けられた、遠隔操作によって駆動するプローブアームと、を備えるX線診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波断層映像の撮像時に操作者が被ばくすることがなく、一人の操作者がX線とプローブを操作できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】操作機構の外観斜視図である。
【図2】プローブアームの外観斜視図である。
【図3】X線診断装置の概要を示す構成図である。
【図4】X線画像とカーソルを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるX線診断装置の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0012】
<構成の説明>
本実施形態のX線診断装置は、被検体のX線画像を撮像するX線診断部と、被検体の超音波画像を撮像する超音波診断部と、遠隔操作によって駆動される各種機器からなる操作機構と、これらの機器から情報を入力し、これらの機器の一部を制御する制御部とを備える。
【0013】
図1は本実施形態のX線診断装置における操作機構の外観斜視図である。図1に示すように、本実施形態のX線診断装置における操作機構は、遠隔操作される可動アーム11と、この可動アーム11を支持する支持アーム12と、を含む。
【0014】
可動アーム11は、被検体にX線を照射するX線照射部14と、被検体を透過したX線を検出するX線検出部15と、被検体に超音波を照射し、前記被検体が反射した前記超音波を受信するプローブを把持し、遠隔操作によって駆動するプローブアーム13と、を備える。
【0015】
プローブアーム13は、伸縮することにより、プローブをX線照射部14とX線検出部15の間に出し入れすることができる。
【0016】
図2は、本実施形態のX線診断装置におけるプローブアーム13の外観斜視図である。図2に示すように、本実施形態のX線診断装置におけるプローブアーム13は、先端にプローブ25を有し、プローブ25は複数の連結アーム24を介して係止アーム23に連結される。
【0017】
さらに係止アーム23は可動係止部22に矢印X方向に、スリット22S内に可動に支持される。また、可動係止部22は可動アーム11に、矢印Xと垂直である矢印Y方向に、スリット21S内に可動に支持される。
【0018】
連結アーム24の連結部には、矢印Xに回転軸が平行な、複数の駆動モータ24Mxと、矢印Yに回転軸が平行な、少なくとも一つの駆動モータ24Myとを有する。
【0019】
プローブ25の矢印x方向を軸とした回転と、プローブアーム13の伸縮は駆動モータ24Mxが回転することによって行われる。プローブ25の矢印y方向を軸とした回転は駆動モータ24Myの回転によって行われる。
【0020】
駆動モータ24Mx、24My、及び係止アーム23を駆動させるモータ、及び可動係止部22を駆動させるモータにはエンコーダが取り付けられており、このエンコーダの出力は制御部に出力され、制御部はこのエンコーダからの出力からプローブ25の位置を算出する。
【0021】
図3は、本実施形態のX線診断装置の概要を示す構成図である。図3に示すように、本実施形態のX線診断装置は、超音波診断部30と、X線診断部40と、制御部50と、操作機構60と、入出力装置と、を含む。
【0022】
超音波診断部30は、プローブ25から入力した信号から超音波画像データを生成する超音波画像データ生成部31と、生成された超音波画像データを記憶する超音波画像データ記憶部32と、超音波画像データをディスプレイ34に表示させる超音波画像表示部33と、を備える。
【0023】
X線診断部40は、制御部50の指示に従ってX線の生成の制御をおこなうX線制御部43と、X線制御部43の制御に従って、X線を発生し、被検体に照射するX線照射部14と、被検体を透過したX線を検出するX線検出部15と、X線検出部15の出力からX線画像データを生成して出力するX線画像データ生成部41と、生成されたX線画像データを記憶するX線画像データ記憶部42と、X線画像データをディスプレイ45に表示させるX線画像表示部44と、を備える。
【0024】
制御部50は、X線画像データ生成部41からX線画像データを入力し、画像と座標との関連付けを行う画像データ解析部52と、システム制御部53と、操作機構位置情報記憶部54と、画像位置情報記憶部55と、操作機構制御部51と、を備える。
【0025】
なお、位置操作部47は、例えばディスプレイ45のタッチパネル及びマウスのようなポインティングディバイスを含むものとする。しかし、位置操作部47はこれらに限られるものではなく、またこれらのうちいずれかを省略することができる。
【0026】
操作機構60は、可動アーム11を駆動させる可動アーム駆動機構61と、プローブアーム13を駆動させるプローブアーム駆動機構63と、被検体を載置する寝台16を駆動させる寝台駆動機構62と、を有する。
【0027】
可動アーム駆動機構61及び寝台駆動機構62及びプローブアーム駆動機構63は、操作機構制御部51によって制御される。
【0028】
<動作の説明>
(プローブ25の遠隔操作)
システム制御部53は、位置操作部47からの入力に従い、駆動信号を操作機構制御部51に出力する。
【0029】
位置操作部47はジョイスティック又はプッシュスイッチの動作を検出してシステム制御部53に出力する。システム制御部53はこの情報を操作機構制御部51に出力する。操作機構制御部51は入力した信号を駆動信号に変換する。駆動信号はたとえば方向と時間である。操作機構制御部51はこの駆動信号から、駆動モータなどの各駆動機構の動きに変換し、各駆動機構を制御する。
【0030】
例えば、プローブ25をX線照射部14とX線検出部15との間に伸ばすときは、操作機構制御部51は、駆動モータ24Mxを所定の方向に所定の角度だけ回転するように制御する。
【0031】
また、プローブ25の角度を変化させるときは、操作機構制御部51は、同時にプローブアーム13を伸縮させるように駆動モータ24Mxを制御し、必要に応じて可動係止部22を摺動させるようにモータを制御する。
【0032】
このように、本実施形態のX線診断装置においてはプローブ25の位置を遠隔操作することができる。このため、超音波診断部30とX線診断部40とを一人で操作することが可能となる。また、エンコーダからの入力に基づいて、プローブ位置情報を算出することができる。プローブ位置情報はシステム制御部53のメモリに格納され、一定時間ごとに更新される。また、操作者が記憶を指示したとき、システム制御部53はこのプローブ位置情報を操作機構位置情報記憶部54に格納する。
【0033】
(寝台16の遠隔操作)
システム制御部53は、位置操作部47からの入力に従い、寝台16の動作に関する駆動信号を操作機構制御部51に出力する。
【0034】
操作機構制御部51は、駆動信号を寝台16の位置を変化させる寝台駆動機構62に出力するための信号に変換して寝台駆動機構62に出力する。寝台駆動機構62に含まれる駆動モータにはエンコーダが取り付けられており、このエンコーダからの出力はシステム制御部53に入力される。
【0035】
このように、本実施形態のX線診断装置においては寝台16の位置を遠隔操作することができる。また、エンコーダからの入力に基づいて、寝台位置情報を算出することができる。この寝台位置情報は操作機構位置情報記憶部54に格納される。
【0036】
(プローブ25及び寝台16の位置の再現)
システム制御部53は、プローブ25及び寝台16の位置の再現の指示を入力したとき、操作機構位置情報記憶部54からプローブ位置情報を読み出し、読みだしたプローブ位置情報に従ってプローブアーム13を駆動させることにより、プローブ25を移動させ、操作機構位置情報記憶部54から前記寝台位置情報を読み出し、読みだした前記寝台位置情報に従って寝台16を駆動させる。
【0037】
このようにして、本実施形態のX線診断装置は、記憶したプローブ25と寝台16の位置を再現する。
【0038】
(X線画像上でのプローブ25の位置指定)
システム制御部53は、位置操作部47によって指定された画像位置情報を移動目標に変換し、操作機構制御部51に出力する。操作機構制御部51はプローブ位置情報を各駆動モータの動作に変換し、操作機構60を制御する。
【0039】
図4は、X線画像70とカーソル71を表した図である。マウスを移動させるとカーソル71はそれに従って移動する。マウスをダブルクリック、又はプローブ25と寝台16の位置の再現を指示するスイッチである再現ボタンを押下すると、位置操作部47は座標を画像データ解析部52に出力する。
【0040】
画像データ解析部52は、X線画像上における指定位置である画像位置情報を解析し、現在の各軸との位置関係を解析する。すなわち、画像データ解析部52は、入力した座標をプローブ位置情報の座標軸に基づいて変換して画像位置情報を算出し、システム制御部53に出力する。システム制御部53は画像位置情報をプローブ位置情報の座標軸に基づいて移動目標に変換し、操作機構制御部51に出力する。
【0041】
例えば、プローブ位置情報が(Px,Py,Pz)であり、移動目標が(Gx,Gy,Gz)のとき、操作機構制御部51は各駆動モータをプローブ25が(Gx−Px,Gy−Py,Gz−Pz)だけ移動するように制御する。
【0042】
このようにして、本実施形態のX線診断装置は、画像位置情報、すなわち位置操作部47による指定に従ってプローブ25と寝台16の位置を移動する。このため、X線診断部30が表示する画像上において指定された位置にプローブ25を迅速に移動でき、また、X線画像における位置とプローブの位置の関係を容易に把握することができる。
【0043】
(プローブ位置情報と寝台位置情報の格納と読み出し)
システム制御部53は、画像位置情報記憶部55にX線画像データとプローブ位置情報とを関連付けて格納する。
【0044】
画像位置情報記憶部55はハードディスクドライブであっても磁気テープであっても、また他のリムーバブルディバイスであってもよい。X線画像データごとに複数のプローブ位置情報を関連付けて格納することもできる。また、X線画像データごとに、超音波画像データとその超音波画像データを得たプローブ位置情報とを関連付けて格納することもできる。さらに、寝台位置情報を関連付けて格納することもできる。
【0045】
関連付けの方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、同じフォルダに格納したり、ファイル名の一部を共通化したり、ポインタで結ぶなどの方法がある。
【0046】
格納したこれらの情報は、任意の再生装置において画像データが再生されるだけではなく、本実施形態のX線診断装置において再生できる。
【0047】
すなわち、システム制御部53が、画像位置情報記憶部55からプローブ位置情報を読み出し、読みだしたプローブ位置情報に従ってプローブアーム13を駆動させることにより、プローブ25を移動させる。このため、X線診断部30のX線画像から、その画像を撮像したときのプローブ25、及び寝台16の位置を容易に再現できる。
【0048】
<本実施形態の効果>
以上述べたように、本実施形態のX線診断装置は、プローブ25を把持し、遠隔操作によって駆動するプローブアーム13を可動アーム11に備える。このため、超音波断層映像の撮像時に操作者が被ばくすることがなく、一人の操作者がX線とプローブ25を操作できるという効果がある。
【0049】
さらに、本実施形態のX線診断装置は、プローブ25の位置を記憶し、その位置にプローブを再び移動する。このため、プローブ25を他の位置に移動した後であっても、記憶した位置から素早く診断を開始することができるという効果がある。
【0050】
<本発明の具体化における可能性>
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11:可動アーム、
12:支持アーム、
13:プローブアーム、
14:X線照射部、
15:X線検出部、
25:プローブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記被検体を透過した前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線照射部と前記X線検出部とを保持するアーム部と、
一端が前記アーム部に駆動可能に取り付けられ、他端に超音波を照射するための超音波プローブを有するプローブアームと、
前記アーム部及び前記プローブアームを操作するための操作部と、
前記操作に基づいて、前記超音波プローブの角度の変更、及び前記超音波プローブの3次元的変位を可能に制御する制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブの位置を示すプローブ位置情報を記憶する操作機構位置情報記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記操作機構位置情報記憶部から前記プローブ位置情報を読み出し、読み出した前記プローブ位置情報に基づいて前記プローブアームを駆動させることにより、前記超音波プローブを移動させる請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記被検体を載置し、遠隔操作可能な寝台をさらに備え、
前記操作機構位置情報記憶部が前記寝台の位置を示す寝台位置情報をさらに記憶し、
前記制御部は、
前記操作機構位置情報記憶部から前記寝台位置情報を読み出し、読み出した前記寝台位置情報に基づいて前記寝台を駆動させる請求項2記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記X線検出部によって検出されたX線に基づいてX線画像を生成するX線画像生成部と、
生成された前記X線画像内の位置である画像位置情報を指定する位置操作部と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記位置操作部によって指定された画像位置情報に基づいて前記プローブアームを駆動させることにより前記プローブを移動させる請求項2又は請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記X線画像と、前記プローブ位置情報と、を格納する画像位置情報記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像位置情報記憶部に前記X線画像と前記プローブ位置情報とを関連付けて格納する請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記画像位置情報記憶部から前記プローブ位置情報を読み出し、読み出した前記プローブ位置情報に従って前記プローブアームを駆動させることにより、前記プローブを移動させる請求項5に記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−90968(P2013−90968A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−28956(P2013−28956)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2007−286174(P2007−286174)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】