説明

X線透過法を用いた二層膜シートの測定装置および測定方法

【課題】X線透過法を用いて走行状態の二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを精度良く簡単に測定する。
【解決手段】二層膜シート10の走行状態において二層膜シートの各層10a,10bを測定する際、高エネルギーのX線源11と低エネルギーのX線源12を用いて二層膜シートのほぼ同一部分の透過X線量を測定し、各測定出力を演算部30でデータ処理して各層の単位面積当たり重量および/または厚みをほぼ連続的に算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透過法を用いた二層膜シートの測定装置および測定方法に係り、特に二層膜シートの各層の単位面積当たりの重量および/または厚みを測定する装置および方法に関するもので、例えば高分子膜上、金属膜上などに塗工膜が形成された塗工シート、2枚のシートがラミネートされたラミネートシートの走行状態においてほぼ連続的に測定する際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
シート状の金属フォイルや鋼材を製造するラインでは、金属フォイル等の被測定部材に照射したX線等の放射線の透過量によって被測定部材の厚さを測定する放射線厚さ計が広く用いられている(特許文献1参照)。この放射線厚さ計は、所定の方向に定速度で移動する被測定部材を囲むように設けられたC型あるいはO型フレームを有し、被測定部材の移動方向と直角方向に測定装置を走査させ、被測定部材の各位置における放射線の透過量を測定することにより厚さを計るものである。
【0003】
ところで、上記した従来の放射線厚さ計により基材シート上に塗工膜が形成された塗工シートの各層の厚さを製造ライン中で測定する場合には、塗工前の基材の厚さおよび塗工後の塗工シートの厚さを2台の厚さ計で別々に測定し、各測定値の差分を算出する必要がある。しかし、2台の厚さ計を必要とするので、コストが高くなる。また、従来のように1台の厚さ計で測定する場合は、塗工後の塗工シートの全体の総合した厚さを測定することができたとしても、塗工膜の厚さを正確に測定することは困難である。特に、走行状態における塗工シートの基材の厚みが変動する場合には、塗工膜の厚さを正確に測定することが困難であった。
【特許文献1】特開平11−142128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記した従来の問題点を解決すべくなされたもので、二層膜シートの各層について単位面積当たり重量および/または厚みを精度良く簡単に測定し得るX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置の第1の態様は、高エネルギーのX線を発生する第1のX線源およびそれに対向する第1のX線検出器と、低エネルギーのX線を発生する第2のX線源およびそれに対向する第2のX線検出器と、走行状態または停止状態の二層膜シートの実質的に同一部分に前記第1のX線源から高エネルギーのX線および前記第2のX線源から低エネルギーのX線をそれぞれ透過させた際の第1のX線検出器および第2のX線検出器の各出力をデータ処理し、前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを測定する演算部とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置の第2の態様は、二層膜シートの走行パスの第1の位置に向けて第1のエネルギーを有する第1のX線ビームを照射する第1のX線源と、前記走行パスの第1の位置を挟んで前記第1のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第1のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第1のX線検出器と、前記第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有する第2のX線ビームを前記走行パスの第1の位置に向けて前記第1のX線ビームとは異なる方向から照射する第2のX線源と、前記走行パスの第1の位置を挟んで前記第2のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第2のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第2のX線検出器と、前記第1のX線検出器の検出出力および前記第2のX線検出器の検出出力をデータ処理し、所定の式から前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを算出する演算部とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置の第3の態様は、二層膜シートの走行パスの第1の位置に向けて第1のエネルギーを有する第1のX線ビームを照射する第1のX線源と、前記走行パスの任意の位置を挟んで前記第1のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第1のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第1のX線検出器と、前記第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有する第2のX線ビームを前記走行パスの第1の位置よりも二層膜シートの走行方向の前方側あるいは後方側の第2の位置に向けて照射する第2のX線源と、前記走行パスの第2の位置を挟んで前記第2のX線ビームに対向し、前記走行パスの第2の位置における前記二層膜シートを前記第2のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第2のX線検出器と、前記第1のX線検出器の検出出力および前記第2のX線検出器の検出出力をデータ処理し、所定の式から前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを算出する演算部とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明のX線透過法を用いた二層膜シートの測定方法は、高エネルギーのX線を発生する第1のX線源およびそれに対向する第1のX線検出器と、低エネルギーのX線を発生し、前記第1のX線源とほぼ同一部分を照射する第2のX線源およびそれに対向する第2のX線検出器と、これらのX線源およびX線検出器の相対位置を維持して二層膜シートの走行パスの幅方向に往復走査させる走査手段とを有する測定装置を用い、二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを測定する際、前記二層膜シートの各層について、高エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数および/または質量吸収係数、ならびに、低エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数および/または質量吸収係数をパラメータとして与える第1のステップと、前記X線源から照射されるX線が前記走行パスの外側にずれた位置になった状態の時に、前記第1のX線源からの高エネルギーのX線および前記第2のX線源からの低エネルギーのX線を前記第1のX線検出器および前記第2のX線検出器で検出した各出力に基づいて、高エネルギー側の照射X線強度および低エネルギー側の照射X線強度を自動的に測定し、経時的に変化した照射強度を補正する第2のステップと、走行状態の前記二層膜シートの実質的に同一部分に前記第1のX線源から高エネルギーのX線および前記第2のX線源から低エネルギーのX線を透過させた時の前記第1のX線検出器および前記第2のX線検出器の各出力に基づいて、高エネルギー側の透過X線強度および低エネルギー側の透過X線強度を自動的に測定させる第3のステップと、前記各ステップで得られた規定値および実測値を用いて所定の計算式に基づいて前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを自動的に算出させる第4のステップとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置および測定方法によれば、高分子膜、金属膜などの基材シート上に塗工膜を有する塗工シートを連続的に製造する設備とか、二枚のシートがラミネートされたラミネートシートを連続的に製造する設備などに適用して、インラインで二層膜シートの各層の厚みを分離して正確に測定することができる。この際、二層膜シートの下層(例えば基材)の厚みむらが存在したとしても、上層(例えば塗工膜)の厚みを正確に測定することが可能となり、上層の厚み制御および品質管理を正確かつ容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。この説明に際して、全図にわたり共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す側面図である。
【0012】
本実施形態の測定装置は、二層膜シート10の走行パスの第1の位置に向けて第1のエネルギーを有する第1のX線ビームを照射する第1のX線源11と、走行パスの第1の位置を挟んで第1のX線ビームに対向し、走行パスの第1の位置における二層膜シート10を第1のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第1のX線検出器21とを有する。また、第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有する第2のX線ビームを走行パスの第1の位置に向けて第1のX線ビームとは異なる方向から照射する第2のX線源12と、走行パスの第1の位置を挟んで第2のX線ビームに対向し、走行パスの第1の位置における二層膜シート10を第2のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第2のX線検出器22とを有する。なお、2つのX線源11,12は、一方の照射エリアが他方の照射エリアに干渉しないようにコリメータ13で制限を行うことが好ましい。
【0013】
さらに、第1のX線検出器21および第2のX線検出器22の各検出出力(透過X線量)を適宜増幅する増幅器(図示せず)と、この増幅器の出力を電流値データに変換するアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)23と、このADC23から入力される電流値データをデータ処理し、所定の計算式から二層膜シート10の上下各層10a,10bの単位面積当たり重量および/または厚みを算出する演算部30を有する。
【0014】
演算部30は、例えばパーソナルコンピュータが用いられており、その一例は、装置全体を統括するとともに各種演算処理を実行するCPU(中央処理装置)31と、プログラム記憶用のROM32と、データメモリ用のRAM33と、パラメータ記憶部34などを有し、パラメータ設定部35、ディスプレイ等で構成された表示部36などが接続されている。前記パラメータ設定部35は、後述する計算式に関連するパラメータを演算部30に入力する機能を有する。前記パラメータ記憶部34は、パラメータ設定部35から入力されたパラメータ、あるいは、予め本例の測定装置を用いて実測されたパラメータを、例えばデータテーブル形式で記憶している。
【0015】
上記演算部30において、CPU31は、ADC23から入力される電流値データを測定位置データとセットにしてRAM33に格納し、ROM32に格納されているプログラムに基づいてデータ処理を行い、二層膜シート10の各層10a,10bの単位面積当たり重量および/または厚みを算出し、演算結果をRAM33に格納するとともに表示装置36で表示させる。
【0016】
さらに、前記2つのX線源11,12および2つのX線検出器21,22を互いに同期して走行パスの幅方向(塗工シート10の走行方向と直角方向)に定速度で往復駆動させるために、モータ等を含む駆動機構を用いた走査手段24が設けられている。この走査手段24は、X線源11,12から照射されるX線が走行パスの幅方向外側に少しずれた位置まで突出するように走査領域の一端を設定している。ここで、二層膜シートの走行方向と、測定器の走査方向と、測定位置の軌跡の一例との関係を図2に示す。
【0017】
上記したように本例の測定装置においては、互いに異なるエネルギーを用いる2つのX線測定器を、走行状態の二層膜シート10の実質的に同一部分に対して2つの透過X線がクロスするように配置し、走行状態の二層膜シート10の同一部分を同時に測定することを可能としている。即ち、高エネルギーの第1のX線源11およびそれに対向する第1のX線検出器21と、低エネルギーの第2のX線源12およびそれに対向する第2のX線検出器22とを用い、走行状態の二層膜シート10の同一部分に高エネルギーのX線および低エネルギーのX線を透過させる(X線の一部は二層膜シート10で吸収されるが、他の一部は直進する)。そして、高エネルギー側の透過X線および低エネルギー側のX線透過を2つのX線検出器21,22で検出する。
【0018】
上記二層膜シート10の各層の元素構成が異なる場合、例えば基材上に塗工膜が塗工された塗工シートである場合、塗工シートの実質的に同一部分に2つのX線源11,12から異なる2つのX線エネルギー(塗工膜または基材に含まれる元素の吸収端波長両側のX線エネルギー)を照射して透過させることで、後述するような測定原理により、塗工シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを正確に測定することが可能となる。
【0019】
なお、吸収端波長両側(前後)のエネルギーは元素に依存し、K核吸収端の概算のエネルギーは、Ti;5.0keV、Cr;6.0keV、Fe;7.1keV、Co;7.7keV、Cu;9.0keVである。
【0020】
次に、本例の測定装置および測定方法の測定原理を詳細に説明する。一般に、X線透過法による基本式は以下のように示される。
【0021】
I=Io exp −{(μ/ρ)×ρ×t} …(1)
=Io exp −(μ/ρ)×W …(2)
=Io exp −(μ×t) …(3)
ここで、I:透過X線の強度(透過X線量)
Io :透過前X線の強度(照射X線量)
μ:測定材のX線吸収係数 [1/cm]
ρ:測定材の密度 [g/cm3 ]
(μ/ρ):測定材の質量吸収係数[cm2 /g]
t:測定材の厚み [cm]
W:測定材の単位面積当たり重量 [g/cm2 ]
である。前式(2)は測定材の単位面積当たり重量Wに着目したもの、前式(3)は測定材の厚みtに着目したものである。X線吸収係数μは、同一物質であっても密度ρが異なると変化する。したがって、前式(1)は、X線吸収係数μを密度ρで割った質量吸収係数(μ/ρ)を用いている。
【0022】
なお、前記測定材が、基材上に塗工膜が塗工された二層膜シートであり、各層(基材と塗工膜)を区別せずに取り扱う場合には、前式(1)〜(3)中のμは基材と塗工膜の総厚のX線吸収係数、(μ/ρ)は基材と塗工膜の総厚の質量吸収係数を表わす。
【0023】
また、前記測定材が、基材上に塗工膜が塗工された二層膜シートであり、単一のX線源とX線検出器を用いて二層膜シートを各層(基材と塗工膜)に分離して取り扱う場合には、X線透過法による基本式は以下のように示される。なお、表記の都合上、EXP 記号に続く指数部を括弧で括ってEXP 記号と同一行に記載する。
【0024】
I=Io EXP [−{(μ/ρ)C ×ρC ×tC +(μ/ρ)B ×ρB ×tB }]
…(4)
=Io EXP [−{(μ/ρ)C ×WC +(μ/ρ)B ×WB }]
=Io EXP [−(μ/ρ)C ×{WC +WB ×(μ/ρ)B /(μ/ρ)C }]
…(5)
=Io EXP [−(μC ×tC +μB ×tB )]
=Io EXP [−μC ×{tC +(tB ×μB /μC )}] …(6)
但し I:透過X線の強度
Io :透過前X線の強度
(μ/ρ)C :塗工材の質量吸収係数
(μ/ρ)B :基材の質量吸収係数
μC :塗工材の吸収係数
μB :基材の吸収係数
ρC :塗工材の密度
ρB :基材の密度
C :塗工材の厚み
B :基材の厚み
C :塗工材の単位面積当たり重量
B :基材の単位面積当たり重量
である。ここで、前式(5)は測定材の単位面積当たり重量Wに着目したもの、前式(6)は測定材の厚みtに着目したものである。
【0025】
ところで、本実施形態では、エネルギーが異なる2つのX線源を用いて塗工シートを上層(塗工膜)と下層(基材)に分離して取り扱う。この際、高エネルギー側のX線透過法による基本式は以下に示される。
【0026】
H =IHoEXP [−{(μ/ρ)CH×ρC ×tC +(μ/ρ)BH×ρB ×tB }]
…(7)
=IHoEXP [−{(μ/ρ)CH×WC +(μ/ρ)BH×WB }] …(8)
=IHoEXP [−(μCH×tC+μBH×tB )] …(9)
但し IH ;高エネルギー側における透過X線強度
Ho;高エネルギー側における照射X線強度
μCH;高エネルギー側における塗工シートの塗工材の吸収係数
μBH;高エネルギー側における塗工シートの基材の吸収係数
(μ/ρ)CH;高エネルギー側における塗工シートの塗工材の質量吸収係数
(μ/ρ)BH;高エネルギー側における塗工シートの基材の質量吸収係数
である。これに対して、低エネルギー側のX線透過法による基本式は以下に示される。
【0027】
L =ILoEXP [−{(μ/ρ)CL×ρC ×tC +(μ/ρ)BL×ρB ×tB }]
…(10)
=ILoEXP [−{(μ/ρ)CL×WC +(μ/ρ)BL×WB }] …(11)
=ILoEXP [−(μCL×tC +μBL×tB )] …(12)
但し IL ;低エネルギー側における透過X線強度
Lo;低エネルギー側における照射X線強度
μCL;低エネルギー側における塗工シートの塗工材の吸収係数
μBL;低エネルギー側における塗工シートの基材の吸収係数
(μ/ρ)CL;低エネルギー側における塗工シートの塗工材の質量吸収係数
(μ/ρ)BL;低エネルギー側における塗工シートの基材の質量吸収係数
である。次に、前式(9)、(12)から塗工シートの上層(塗工材)の厚みtC および下層(基材)の厚みtB を求める。
【0028】
H /IHo=EXP [−(μCH×tC+μBH×tB )] …(13)
L /ILo=EXP [−(μCL×tC +μBL×tB )] …(14)
Ln(IH /IHo)=−(μCH×tC +μBH×tB ) …(15)
Ln(IL /ILo)=−(μCL×tC +μBL×tB ) …(16)
上式(15)、(16)から
C =−{μBL×Ln(IH /IHo)−μBH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH) …(17)
B ={μCL×Ln(IH /IHo)−μCH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH) …(18)
但し IH ;高エネルギー側における透過X線強度
Ho;高エネルギー側における照射X線強度
L ;低エネルギー側における透過X線強度
Lo;低エネルギー側における照射X線強度
μCH;高エネルギー側における塗工シートの塗工材の吸収係数
μBH;高エネルギー側における塗工シートの基材の吸収係数
μCL;低エネルギー側における塗工シートの塗工材の吸収係数
μBL;低エネルギー側における塗工シートの基材の吸収係数
である。また、前式(8)、(11)から塗工シートの上層(塗工材)の単位面積当たり重量WC および下層(基材)の単位面積当たり重量WB を求める。
【0029】
H /IHo=EXP [−{(μ/ρ)CH×WC +(μ/ρ)BH×WB }] …(19)
L /ILo=EXP [−{(μ/ρ)CL×WC +(μ/ρ)BL×WB }] …(20)
Ln(IH /IHo)=−{(μ/ρ)CH×WC +(μ/ρ)BH×WB )} …(21)
Ln(IL /ILo)=−{(μ/ρ)CL×WC +(μ/ρ)BL×WB )} …(22)
上式(21)、(22)から
C =−{(μ/ρ)BL×Ln(IH /IHo)−(μ/ρ)BH×Ln(IL /ILo)}
/{(μ/ρ)CH×(μ/ρ)BL−(μ/ρ)CL×(μ/ρ)BH} …(23)
B ={(μ/ρ)CL×Ln(IH /IHo)−(μ/ρ)CH×Ln(IL /ILo)}
/{(μ/ρ)CH×(μ/ρ)BL−(μ/ρ)CL×(μ/ρ)BH} …(24)
但し IH ;高エネルギー側における透過X線強度
Ho;高エネルギー側における照射X線強度
L ;低エネルギー側における透過X線強度
Lo;低エネルギー側における照射X線強度
(μ/ρ)CH;高エネルギー側における塗工シートの塗工材の質量吸収係数
(μ/ρ)BH;高エネルギー側における塗工シートの基材の質量吸収係数
(μ/ρ)CL;低エネルギー側における塗工シートの塗工材の質量吸収係数
(μ/ρ)BL;低エネルギー側における塗工シートの基材の質量吸収係数
である。
【0030】
前式(17)、(18)、(23)、(24)において、IHo、ILoは、X線源とX線検出器との間に塗工シートが走行していない(存在しない)状態、本例では、X線源から照射されるX線が走行パスの外側にずれた位置に走査されている状態で、X線源から対向するX線検出器にX線が直接に照射された照射X線の値を測定し、その結果に基づいて補正された照射X線の値が使用される。IH 、IL は、X線源とX線検出器との間に塗工シートが走行している(存在する)状態の時に測定された値である。その他のμCH、μBH、μCL、μBL、(μ/ρ)CH、(μ/ρ)BH、(μ/ρ)CL、(μ/ρ)BLは、材質、X線エネルギーに応じて定まる規定値であり、この値は図1中のパラメータ記憶部34から供給される。
【0031】
上記したような本例の測定原理を利用し、走行状態の連続した塗工シートに対して横方向に2つの測定器を走行させながら塗工シートの幅方向の測定を行う場合には、実質的に同一部分を測定する必要がある。その理由は、測定点の移動に伴う基材の測定位置の厚みむらの変化を予測できないので、実質的に同一部分を異なったX線エネルギーで測定したデータでなければ正確に測定したことにならないからである。
【0032】
次に、上記したような測定原理を用いる本実施形態の測定方法の一例について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、高エネルギーのX線を発生する第1のX線源11およびそれに対向する第1のX線検出器21と、低エネルギーのX線を発生し、第1のX線源11とほぼ同一部分を照射する第2のX線源21およびそれに対向する第2のX線検出器22と、これらのX線源およびX線検出器の相対位置を維持して二層膜シートの走行パスの幅方向に往復走査させる走査手段とを有する測定装置を用いる。 第1のステップS1では、二層膜シートの各層について、高エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数μCH,μBHおよび/または質量吸収係数(μ/ρ)CH,(μ/ρ)BH、ならびに、低エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数μCL,μBLおよび/または質量吸収係数(μ/ρ)CL,(μ/ρ)BLをパラメータとして設定し、パラメータ記憶部に記憶させる。
【0033】
第2のステップS2では、X線源から照射されるX線が走行パスの外側にずれた位置になった状態の時に、高エネルギーのX線および低エネルギーのX線を各X線検出器で検出した出力に基づいて、高エネルギー側の照射X線強度および低エネルギー側の照射X線強度IHo,ILoを測定し、補正されたIHo,ILoを求める。
【0034】
第3のステップS3では、走行状態の二層膜シートの実質的に同一部分に高エネルギーのX線およ低エネルギーのX線を透過させた時の各X線検出器の出力に基づいて、高エネルギー側の透過X線強度IH および低エネルギー側の透過X線強度IL を自動的に測定させる。
【0035】
第4のステップS4では、各ステップS1〜S3で得られた規定値および実測値を用いて所定の計算式に基づいて二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを自動的に算出させ、結果の記録、表示を行わせる。この際、塗工シートの上層(塗工材)の厚みtC および下層(基材)の厚みtB を求める場合には前式(17)、(18)を使用し、塗工シートの上層(塗工材)の単位面積当たり重量WC および下層(基材)の単位面積当たり重量WB を求める場合には前式(23)、(24)を使用する。そして、測定を継続する期間中は、第3のステップS3および第4のステップS4のループ処理を繰り返す。
【0036】
以上述べたような本実施形態の測定装置および測定方法を、基材上に塗工材を塗工する製造ライン中の塗工シートの搬送ラインの一部にインライン方式で適用することにより、基材の厚みと塗工膜の厚みを分離して正確に測定することができる。この際、基材の厚みむらが存在したとしても塗工膜の厚みを正確に測定することが可能となり、塗工膜の厚み制御および品質管理を正確かつ容易に行うことが可能になる。また、従来例のように製造ラインに2台の厚さ計を組み込む必要がある場合に比べて、約60%程度にコストダウンが可能になる。
【0037】
なお、上記したような本例の測定原理は、停止状態の二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを測定する場合にも適用可能であることはいうまでもない。 図4は、図1の測定装置の一具体例を概略的に示す斜視図である。
【0038】
図4において、例えばO型フレーム中の左右一対のフレーム41、41の間に、上下一対のレール42,43が隙間をあけて水平に取付けられている。上下一対のレール42,43間は、帯状の細長い二層膜シート10が図示矢印方向に走行する走行パスの一部となっている。
【0039】
一方のレール(本例では上側のレール42)には、図1中に示したような第1のX線源11および第2のX線源12がレール長手方向に摺動可能に取付けられており、各X線源11,12は、相対位置を維持したままレール長手方向に往復移動が可能である。ここで、各X線源11,12は、例えばX線管カバーの内部に、X線管のX線照射口を下向きにして内蔵しており、X線管カバーの下部にはX線が通り抜ける通光孔が形成されている。上記X線源11,12は、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成する。このX線としては、X線透過法による測定に適したエネルギーのX線を用いており、X線のエネルギー分布は連続X線であっても特定X線であってもよい。
【0040】
他方のレール(本例では下側のレール43)には、図1中に示したような第1のX線検出器21および第2のX線検出器22がレール長手方向に摺動可能に取付けられており、各X線検出器21,22は、相対位置を維持したままレール長手方向に往復移動が可能である。ここで、各X線検出器21,22は、入射したX線を例えばイオンチャンバーで受けて入射したX線信号に比例した電流信号に変換するか、または、シンチレータで受けて光に変換し、例えばフォトマルチプライアやフォトダイオードによって入射したX線信号に比例した電流信号に変換する(シンチレーション検出器)。
【0041】
さらに、図1中に示したように2つのX線源11,12および2つのX線検出器21,22を互いに同期して走行パスの幅方向(レール長手方向)に定速度で往復駆動させるために、モータ等を含む駆動機構を用いた走査手段(図示せず)が測定装置に内蔵されている。この走査手段は、走査領域の一端が、X線源11,12から照射されるX線が走行パスの幅方向外側に少しずれた位置になるように走査駆動する。また、例えばフレーム41の前面には、装置の操作部44が設けられている。
【0042】
上記構成により、2つのX線源11,12および2つのX線検出器21,22がレール長手方向のどの位置に移動しても、第1のX線源11から照射されたX線は第1のX線検出器21で検出され、第2のX線源12から照射されたX線は第2のX線検出器22で検出される。各X線検出器21,22で検出されたX線量は電流値に変換され、図1を参照して前述したようにA/Dコンバータ23により電流値データに変換された後に演算部30に入力される。
【0043】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す平面図である。
【0044】
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態と比べて、2つのX線測定器(2つのX線源11,12と2つのX線検出器21,22)を走行状態の塗工シート10の同一部分と見なせる直ぐ近傍の2つの位置にそれぞれ対向して配置することで、走行状態の塗工シートの実質的に同一部分を2つのX線測定器で実質的に同時に測定する点が異なり、その他は同じである。ここで、上記2つの位置は、走行パスの第1の位置と、この走行パスの第1の位置よりも塗工シートの走行方向の前方側あるいは後方側の第2の位置である。なお、2つのX線測定器の2つのX線源11,12は、一方の照射エリアが他方の照射エリアに干渉しないようにコリメータ13で制限を行うことが好ましい。
【0045】
図6は、図5中の2つのX線測定器の各測定部分が実質的に同一部分と見なせることを説明するために示す平面図である。図6において、2つのX線ビームの間隔は例えば約40mm、塗工シートの走行速度(通常は20〜120m/minである)は、例えば60m/min(1000mm/sec)とし、2つのX線測定器は塗工シートの走行方向に対して横方向(幅方向)に5mm/secで走査しながら1mm毎(200msec毎)に測定を行う場合を想定する。この場合、2つのX線測定器の200msec毎に測定を行う間に塗工シートは200mm移動することになる。この時の測定面積は、塗工シートの走行方向が10mm程度、塗工シートの幅方向が15mm程度であるので、2つのX線測定器の各測定部分の大半はオーバーラップすることになる。この場合、オーバーラップの量は、約(14/15)×160/200=0.75(75%)となり、2つのX線測定器がほぼ同一部分を測定したものと見なせる。なお、2つのX線測定器を走査させないで(一定位置に停止させて)測定する場合にも、シートが走行しているので、2つのX線測定器の各測定部分の大半はオーバーラップすることになる。
【0046】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す平面図である。
【0047】
前述した第2の実施形態において、塗工シートの走行速度が高速になると、2つのX線測定器の各測定部分のオーバーラップの量が少なくなり、2つのX線測定器がほぼ同一部分を測定したものと見なせなくなるという問題が発生する。この問題を解決するためには、図7に示すように、2つのX線測定器のうちで塗工シートの走行方向の下流側に位置する一方の測定器の位置を上流側に位置する他方の測定器の位置よりも塗工シート幅方向に所定距離Lだけ走査方向に遅らせるようにずらせることで対処することができる。この場合、塗工シートの走行速度をVymm/sec、2つのX線測定器の塗工シート幅方向の走行(走査)速度をVxmm/sec、2つのX線ビームの間隔を約40mmとすれば、L=(40/Vy)×Vxmmである。例えばVy=1000mm/sec、Vx=100mm/secとすると、L=(40/1000)×100=4mmだけ2つのX線測定器を走査方向にずらせた状態で同時に走査させればよい。
【実施例】
【0048】
本実施形態のX線透過法を用いた測定装置は、ポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルム、紙、非鉄金属箔等のベースに、セラミック材、磁気を帯びた磁性体やフィラー、チタン、鉛等の粉体が塗布された帯状の各種の塗工シートを測定することが可能であり、以下、具体例を説明する。
【0049】
[実施例1] セラミックコンデンサは、PETフィルムを基材として、セラミック材(BaTiO2 等)を必要な厚みに塗工し、焼成を行い、コンデンサ用の誘電体として作成される。このセラミック材を塗工する過程で塗工膜の単位面積当たり重量および/または厚さを測定する場合に、本発明の測定装置を用いる。
【0050】
通常、基材(PETフィルム)は、20〜50μm程度の厚さを有し、塗工膜(セラミック材)は2〜50μm程度の厚さを有する。本例では、基材が厚さ38μmのPETフィルム、塗工膜が厚さ2μmのセラミック材とする。
【0051】
X線透過法を用いた測定装置では、通常は、Wターゲットを用いた連続X線をX線源として用い、その印加電圧を変えて測定を行う。本例ではセラミックコンデンサ用の塗工シートの塗工膜の厚みを、基材シートの厚みむらを補正して測定する場合、各層の測定を行うことで補正が可能となる。本例では、タングステン(W)ターゲットを用いたX線管の印加電圧を例えば9.5KVに設定した時に照射される第1のエネルギーを高エネルギ−、7KVに設定した時に照射される第2のエネルギーを低エネルギ−として用いている。
【0052】
タングステン(W)ターゲットを用いたX線管から高エネルギ−が照射された場合の基材の吸収係数μBHおよび塗工膜の吸収係数μCH、低エネルギ−が照射された場合の基材の吸収係数μBLおよび塗工膜の吸収係数μCLはほぼ以下に示す値である。
【0053】
μBL=0.004 μm-1、μBH=0.002 μm-1
μCL=0.08 μm-1、μCH=0.08 μm-1
これらの値および前式(17)、(18)に基づき、基材の厚みtB および塗工膜の厚みtC を求めると、以下のようになる。
【0054】
C =−{μBL×Ln(IH /IHo)−μBH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH
=−{0.004 ×Ln(IH /IHo)−0.002 ×Ln(IL /ILo)}
/(0.08×0.004 −0.08×0.002 )
=−{25×Ln(IH /IHo)−12.5×Ln(IL /ILo)}
B ={μCL×Ln(IH /IHo)−μCH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH
={0.08×Ln(IH /IHo)−0.08Ln(IL /ILo)}
/(0.08×0.004 −0.08×0.002 )
={500×Ln(IH /IHo)−500×Ln(IL /ILo)}
なお、低エネルギ−側のX線源としてチタン(Ti)ターゲットを用いると、タングステン(W)ターゲットに比べて低エネルギ−側の塗工膜の透過率が良くなり、より正確に二層膜の測定が可能になる。低エネルギ−側のX線源としてチタン(Ti)ターゲットを用いた場合は、μCL=0.06 μm-1程度であり、基材の厚みtB および塗工膜の厚みtC は前式(17)、(18)に基づいて以下のように求められる。
【0055】
C =−{0.004 ×Ln(IH /IHo)−0.002 ×Ln(IL /ILo)}
/(0.08×0.004 −0.06×0.002 )
=−{20×Ln(IH /IHo)−10×Ln(IL /ILo)}
B ={0.06×Ln(IH /IHo)−0.08Ln(IL /ILo)}
/(0.08×0.004 −0.06×0.002 )
={300×Ln(IH /IHo)−400×Ln(IL /ILo)}
[実施例2] 磁気カード用の塗工シートの塗工膜として酸化鉄が用いられている場合には、鉄ターゲットと銅ターゲットのX線管を採用すれば、鉄の吸収端波長両側(前後)のエネルギーの特性X線を用いることができる。
【0056】
[実施例3] リチュームイオン電池の陽極用の塗工シートとして、例えばアルミ基板にコバルト酸リチュームが塗工されており、リチュームイオン電池の負極用の塗工シートとして、例えば銅基板にカーボンが塗工されている。これらの塗工シートの各層を測定する場合には、Wターゲットを用いたX線源を用い、高エネルギー側のX線管は例えば15KV、低エネルギー側のX線管は例えば7.5KVを印加することで、高エネルギーのX線、低エネルギーのX線を照射させて測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す側面図。
【図2】図1の測定装置において二層膜シートの走行方向と測定器の走査方向と測定位置の軌跡の一例との関係を示す平面図。
【図3】図1の測定装置を用いた測定方法の一例を示すフローチャート。
【図4】図1の測定装置の一具体例を概略的に示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す平面図。
【図6】図5中の2つのX線測定器の各測定部分が実質的に同一部分と見なせることを説明するために示す平面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る二層膜シートの測定装置の基本構成を示す平面図。
【符号の説明】
【0058】
10…二層膜シート、10a…二層膜シートの上層、10b…二層膜シートの下層、11…第1のX線源、12…第2のX線源、13…コリメータ、21…第1のX線検出器、22…第2のX線検出器、23…A/Dコンバータ、24…走査手段、30…演算部、31…CPU、32…プログラム記憶部用ROM、33…データメモリ用RAM、34…パラメータ記憶部、35…パラメータ設定部、36…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギーのX線を発生する第1のX線源およびそれに対向する第1のX線検出器と、低エネルギーのX線を発生する第2のX線源およびそれに対向する第2のX線検出器と、走行状態または停止状態の二層膜シートの実質的に同一部分に前記第1のX線源から高エネルギーのX線および前記第2のX線源から低エネルギーのX線をそれぞれ透過させた際の第1のX線検出器および第2のX線検出器の各出力をデータ処理し、所定の計算式に基づいて前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを測定する演算部とを具備することを特徴とするX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
【請求項2】
二層膜シートの走行パスの第1の位置に向けて第1のエネルギーを有する第1のX線ビームを照射する第1のX線源と、前記走行パスの第1の位置を挟んで前記第1のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第1のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第1のX線検出器と、前記第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有する第2のX線ビームを前記走行パスの第1の位置に向けて前記第1のX線ビームとは異なる方向から照射する第2のX線源と、前記走行パスの第1の位置を挟んで前記第2のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第2のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第2のX線検出器と、前記第1のX線検出器の検出出力および前記第2のX線検出器の検出出力をデータ処理し、所定の計算式に基づいて前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを算出する演算部とを具備することを特徴とするX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
【請求項3】
二層膜シートの走行パスの第1の位置に向けて第1のエネルギーを有する第1のX線ビームを照射する第1のX線源と、前記走行パスの第1の位置を挟んで前記第1のX線ビームに対向し、前記走行パスの第1の位置における前記二層膜シートを前記第1のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第1のX線検出器と、前記第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有する第2のX線ビームを前記走行パスの第1の位置よりも二層膜シートの走行方向の前方側あるいは後方側の第2の位置に向けて照射する第2のX線源と、前記走行パスの第2の位置を挟んで前記第2のX線ビームに対向し、前記走行パスの第2の位置における前記二層膜シートを前記第2のX線ビームが透過した透過X線の強さを検出する第2のX線検出器と、前記第1のX線検出器の検出出力および前記第2のX線検出器の検出出力をデータ処理し、所定の計算式に基づいて前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを算出する演算部とを具備することを特徴とするX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
【請求項4】
前記演算部は、二層膜シートの上層の厚みtC および下層の厚みtB を以下の計算式に基づいて算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
C =−{μBL×Ln(IH /IHo)−μBH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH
B ={μCL×Ln(IH /IHo)−μCH×Ln(IL /ILo)}
/(μCH×μBL−μCL×μBH
但し IH ;高エネルギー側における透過X線強度
Ho;高エネルギー側における照射X線強度
L ;低エネルギー側における透過X線強度
Lo;低エネルギー側における照射X線強度
μCH;高エネルギー側における二層膜シートの上層の吸収係数
μBH;高エネルギー側における二層膜シートの下層の吸収係数
μCL;低エネルギー側における二層膜シートの上層の吸収係数
μBL;低エネルギー側における二層膜シートの下層の吸収係数
【請求項5】
前記演算部は、二層膜シートの上層の位面積当たり重量WC および下層の位面積当たり重量WB を、以下の計算式に基づいて算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
C =−{(μ/ρ)BL×Ln(IH /IHo)−(μ/ρ)BH×Ln(IL /ILo)}
/{(μ/ρ)CH×(μ/ρ)BL−(μ/ρ)CL×(μ/ρ)BH
B ={(μ/ρ)CL×Ln(IH /IHo)−(μ/ρ)CH×Ln(IL /ILo)}
/{(μ/ρ)CH×(μ/ρ)BL−(μ/ρ)CL×(μ/ρ)BH
但し IH ;高エネルギー側における透過X線強度
Ho;高エネルギー側における照射X線強度
L ;低エネルギー側における透過X線強度
Lo;低エネルギー側における照射X線強度
(μ/ρ)CH;高エネルギー側における二層膜シートの上層の質量吸収係数
(μ/ρ)BH;高エネルギー側における二層膜シートの下層の質量吸収係数
(μ/ρ)CL;低エネルギー側における二層膜シートの上層の質量吸収係数
(μ/ρ)BL;低エネルギー側における二層膜シートの下層の質量吸収係数
【請求項6】
前記第1のX線源、第1のX線検出器、第2のX線源および第2のX線検出器の相対位置を維持して前記走行パスの幅方向に往復走査を繰り返す走査手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のX線透過法を用いた二層膜シートの測定装置。
【請求項7】
高エネルギーのX線を発生する第1のX線源およびそれに対向する第1のX線検出器と、低エネルギーのX線を発生し、前記第1のX線源とほぼ同一部分を照射する第2のX線源およびそれに対向する第2のX線検出器と、これらのX線源およびX線検出器の相対位置を維持して二層膜シートの走行パスの幅方向に往復走査させる走査手段とを有する測定装置を用い、走行状態の二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを測定する際、
前記二層膜シートの各層について、高エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数および/または質量吸収係数、ならびに、低エネルギーのX線が照射された場合のX線吸収係数および/または質量吸収係数をパラメータとして与える第1のステップと、
前記X線源から照射されるX線が前記走行パスの外側にずれた位置になった状態の時に、前記第1のX線源からの高エネルギーのX線および前記第2のX線源からの低エネルギーのX線を前記第1のX線検出器および前記第2のX線検出器で検出した各出力に基づいて、高エネルギー側の照射X線強度および低エネルギー側の照射X線強度を自動的に測定し、経時的に変化した照射強度を補正する第2のステップと、
走行状態の前記二層膜シートの実質的に同一部分に前記第1のX線源から高エネルギーのX線および前記第2のX線源から低エネルギーのX線を透過させた時の前記第1のX線検出器および前記第2のX線検出器の各出力に基づいて、高エネルギー側の透過X線強度および低エネルギー側の透過X線強度を自動的に測定させる第3のステップと、
前記各ステップで得られた規定値および実測値を用いて所定の計算式に基づいて前記二層膜シートの各層の単位面積当たり重量および/または厚みを自動的に算出させる第4のステップと、
を具備することを特徴とするX線透過法を用いた二層膜シートの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−64580(P2006−64580A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248913(P2004−248913)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(591114641)株式会社ヒューテック (19)
【Fターム(参考)】