X線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法。
【課題】本発明はX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法に関し、X線画像の分解能を向上させることができるX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法を提供することを目的としている。
【解決手段】電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜11と、該薄膜11の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜11から発生するX線13を検出するX線検出手段8とを有し、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出するように構成する。
【解決手段】電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜11と、該薄膜11の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜11から発生するX線13を検出するX線検出手段8とを有し、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法に関し、更に詳しくは試料とX線源を接近させることで分解能を向上させることができるようにしたX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は従来装置の構成例を示す図である。電子銃1から照射された電子ビーム(電子線ともいう)EBは、続く集束レンズ2で集束された後、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調節し、X線源4に入射させる。これにより、X線源4から発生したX線5を試料台6に載せられた試料7に照射させる。
【0003】
試料7を透過したX線5を後方に配置されているX線検出器8にて検出し、検出したX線画像に所定の画像処理を施して透過像を得ることができる。図中の10は電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3をその内部にもつチャンバ(鏡筒ともいう)であり、該チャンバ10内に前記した各構成要素が取り付けられる。10aは、真空排気用の開口である。この開口10aからイオンポンプ等でチャンバ10内を排気して、所定の圧力の真空状態を作り出す。
【0004】
従来のこの種の装置としては、超高分解能で且つ非常に短時間での非破壊検査が可能であると共に、高精度の電子プローブ制御機能、CT機能、元素分析機能、ターゲット切り替え機能などの優れた機能を搭載したX線顕微検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、試料表面に形成したX線ターゲットに微小走査電子ビームを照射し、発生したX線を試料を透過させ、透過したX線を2次元のX線検出器で検知し、画像化するようにしたX線顕微鏡が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3998556号公報(段落0031〜0040、図4)
【特許文献2】WO2007/141868号公報(段落0007、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線顕微鏡を高分解能化するためには、以下の工夫が必要になる。
1)発生領域が小さく、高強度のX線が必要である。
2)試料とX線源との距離を近付ける。
【0008】
これに対して1)は電子ビームを集束させて薄膜のX線源に照射することで実現される。そのため、現状では、試料とX線源との距離をどれだけ近付けることができるかにより分解能が決まる。
【0009】
特許文献2では試料にX線源を蒸着することで、試料とX線源接触させて高分解能化を可能にしている。ところが、X線源を蒸着して作るという前処理が必要なため、観察するためには手間がかかるという問題がある。更に、試料の雰囲気を真空保持しなければならないため、生体試料を観察する場合は当該試料が蒸着工程を経て真空中に曝露しているため、本来のものとは異なる状態を観察することになる。
【0010】
これに対して、特許文献1では、大気中での試料観察が可能であるが、電子ビーム側の真空はX線源のついた基板で保持しており、さらに試料は検体保持フィルムに載せてある。そのため、X線源を保持している基板の厚みと、基板から離れた位置に試料が配置してあるため、X線源と試料との距離が離れてしまっている。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料とX線源とを接近させることで分解能を上げることができるX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明は以下のような構成をとっている。
【0013】
(1)請求項1記載の発明は、電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜と、該薄膜の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段とを有し、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とする。
【0014】
(2)請求項2記載の発明は、電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜と、該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段と、前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜とを有し、前記第1及び第2の薄膜の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とする。
【0015】
(3)請求項3記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜は、試料中での顕微対象物を構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことを特徴とする。
【0016】
(4)請求項4記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造となっており、該積層中の少なくとも1層がX線発生層となっていることを特徴とする。
【0017】
(5)請求項5記載の発明は、前記X線検出手段と試料との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能であることを特徴とする。
【0018】
(6)請求項6記載の発明は、集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段は複数の検出素子が配列されてなる検出器を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と該検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することを特徴とする。
【0019】
(7)請求項7記載の発明は、集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と前記X線検出手段によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【0020】
(8)請求項8記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【0021】
(9)請求項9記載の発明は、電子ビームの加速エネルギーが、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高いことを特徴とする。
【0022】
(10)請求項10記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上であることを特徴とする。
【0023】
(11)請求項11記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームが試料に到達し、これにより試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする。
【0024】
(12)請求項12記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする。
【0025】
(13)請求項13記載の発明は、X線発生源となる薄膜の第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とする。
【0026】
(14)請求項14記載の発明は、X線発生源となる第1の薄膜における第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とする。
【0027】
(15)請求項15記載の発明は、X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームを走査させ、当該走査情報とX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以下に示すような効果を有する。
【0029】
(1)請求項1記載の発明によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0030】
(2)請求項2記載の発明によれば、第1の薄膜と第2の薄膜との間に試料を入れた空間を作り、その空間の雰囲気を例えば大気圧とすることにより、例えば生物試料を最も好ましい状態で配置することができ、正確なX線像を得ることができる。
【0031】
(3)請求項3記載の発明によれば、検出されるX線量は試料の厚みによって変化するので、透過像にコントラストをつけることができる。
【0032】
(4)請求項4記載の発明によれば、2層以上の積層構造の薄膜を用いて、X線発生源を得ることができる。
【0033】
(5)請求項5記載の発明によれば、X線検出手段と試料との間を調整可能とすることにより、倍率又は分解能を可変することができる。
【0034】
(6)請求項6記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することができる。
【0035】
(7)請求項7記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と検出器によるX線の検出情報とから、試料の走査透過像を取得することができる。
【0036】
(8)請求項8記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜を電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させることにより、試料の走査透過像を取得することができる。
【0037】
(9)請求項9記載の発明によれば、電子ビームの加速エネルギーがX線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーのほぼ3倍高くなるようにすることにより、X線の発生効率を向上させることができる。
【0038】
(10)請求項10記載の発明によれば、薄膜の熱伝導率を、200[W/(m・k)]以上にすることで、試料が熱上昇するのを抑制することができる。
【0039】
(11)請求項11記載の発明によれば、試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることにより、これらの電子像を得ることができる。
【0040】
(12)請求項12記載の発明によれば、薄膜から発生する2次電子又は反射電子像を得ることができる。
【0041】
(13)請求項13記載の発明によれば、試料の透過像を取得することができる。
【0042】
(14)請求項14記載の発明によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0043】
(15)請求項15記載の発明によれば、試料の走査透過像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】X線発生部の移動による試料影の移動を示す図である。
【図3】観察対象の位置の求め方の説明図である。
【図4】電子ビームの走査による試料影の移動を示す図である。
【図5】X線透過率特性を示す図である。
【図6】電子検出器を使用した装置の説明図である。
【図7】2層構造の薄膜(X線源)の説明図である。
【図8】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図9】密閉型の試料容器の説明図である。
【図10】開放型の試料容器の説明図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示す構成図である。
【図12】密閉型試料容器の他の構成例を示す図である。
【図13】従来装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の構成原理図である。図6と同一のものは同一の符号を付して示す。図に示す装置は、図13に示す装置と比較して倒立型となっているが、倒立型である必要はない。図において、10はチャンバ、10aは該チャンバ10に設けられた真空排気用の開口である。
【0046】
1は電子銃、2は該電子銃1が放射された電子ビームEBを集束する集束レンズ、3は電子ビームEBを偏向する偏向コイル、11はチャンバ10の上部に設けられたX線源、7は該X線源11の上部に載置された試料、8はX線源11から放射され試料7を透過したX線を検出するX線検出器である。12はX線源11を兼ねる窓材である。この装置は電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3,窓材12,試料7及びX線検出器8を備えている。
【0047】
電子銃1から窓材12までは、真空排気されており、窓材12は例えばシリコンナイトライドの薄膜を用い、Oリング(図示せず)で電子銃側の真空を保持している。前述したように、窓材12はX線源11を兼ねており、窓材12によってX線源11が構成される。試料7は窓材12の大気側に載せられている。即ち、X線源11と試料7とは接して配置されている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0048】
電子銃1から引き出された電子ビームEBを少なくとも1段の集束レンズ2で集束し、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調節し、X線源11の薄膜に入射させる。電子ビームEBの入射によってX線源11から発生したX線13は、試料7に到達して照射され、試料7を透過したX線をX線検出器8で検出する。該X線検出器8で検出されたX線に基づくX線像は、図示しない画像処理部によって所定の画像処理された後、透過X線像として取得される。
【0049】
ここで、電子ビームEBの真空は窓材12で保持されており、試料7は大気側に配置されるので、大気中での観察や、試料を液体に浸して観察することも可能である。そのため、生体試料は、乾燥することなく観察でき、液中であれば生体試料が生きたままの観察もできる。このように、第1の実施例によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0050】
透過X線像の取得方法は、X線検出器8として、X線CCDカメラのような2次元配列の検出器を用いれば、各画素の信号量から透過像を得ることができる。また、試料7とX線CCDカメラ8の距離を調節すれば像の倍率が変化する。即ちX線検出手段としてのX線CCDカメラ8と試料7との間を調整可能とすることにより、倍率又は分解能を可変することができる。
【0051】
また、集束された電子ビームEBの走査に基づいて、窓材12(X線源11)内部におけるX線発生部が移動すると、試料7の影は移動するが、この移動量は試料7と当該X線発生部との距離によって変化する。図2はX線源11(即ち窓材12)内部でのX線発生部の移動による試料影の移動を示す図である。上段はX線発生部11aの移動の様子を、下段はその時のCCD検出器8で得られた透過像を示す図である。この図は観察対象が分布している試料中に、それぞれの位置からX線が照射された時の影の方向を示している。
【0052】
集束電子ビームEBの走査に基づき、X線源11内部でX線発生部11aが(a)〜(e)と移動するにつれて、影の移動量が変化していることが分かる。17aは試料中の下にある観察対象7aによる影を、17bは試料中の上にある観察対象7bによる影を示している。
【0053】
図2より明らかなように、試料7中の観察対象と窓材12とが接している場合、X線発生部11aの移動量に対して当該観察対象の影の移動量は大きくなるが、試料7中の観察対象と窓材12とが離れてくると、X線発生部11aの移動量に対して当該観察対象の影の移動量は小さくなる。
【0054】
このように、試料中に観察対象が分布している時、窓材12に近い位置にある観察対象7aと、窓材12から離れた位置にある観察対象7bでは、X線発生部11aの位置によって、それぞれ対応する影17a,17bのできる位置が異なる。そこで、検出器8の受光面の中心に観察対象の影がある時のX線発生部11aの位置と、検出器8の受光面の端に観察対象の影があるときのX線発生部11aの位置から、窓材12に対する各観察対象の位置を求めることができる。このように、電子ビームの走査量に応じて順次X線CCD検出器8により取得された複数の像から、影の移動量を求めることによって、試料7の内部に分布する各部位の位置関係を3次元的に調べることができる。
【0055】
ここで、図3は観察対象の距離の求め方の説明図である。観察対象の影中心が検出器受光面の中心にある時のX線発生部11aの位置と、影中心が検出器受光面の端にある時のX線発生部11aの位置の差をxとして、窓材12と検出器8の受光面の距離をLとし、検出器8の受光面の幅をDとし、窓材12と観察対象7cの中心までの距離をL’とする。図において、7は試料、17cは観察対象、12はX線発生源を構成する窓材、11aはX線発生部である。この時、距離L’は以下の式で表わすことができる。
【0056】
【数1】
【0057】
D,Lは装置の構成から決まり、xは電子ビームの走査量から求まるので、L’を計算して求めることができる。他にも、X線発生部11aを一定距離移動させ、観察対象の影位置から観察対象7cの位置を求めることも可能である。
【0058】
また、図2内での2つの観察対象は粒形状を有し、ほぼ同じ大きさであるが、X線発生部11aに近い観察対象は大きく見えてしまう。上の方法で窓材12から観察対象までの距離が求まれば、影の開き角を求めることができるので、得られた観察対象の像の大きさを補正して、観察対象17の位置が異なっても試料の大きさが同じなら、同じ大きさで表示することも可能になる。
【0059】
この方法以外にも透過X線像の取得方法として、CCDのような配列型の検出器ではなく、シリコンドリフト検出器(SDD)、比例計数管、マイクロカロリメトリー検出器など、検出器に入射するX線量を測定する単一の検出器でも像取得は可能である。
【0060】
例えば、試料7とX線検出器8の位置関係を固定しておき、電子ビームEBを窓材12上で走査させればX線発生部11aが移動するので、試料7に入射するX線13の角度が変化し、これにより透過X線像が移動するので、検出器8に入射するX線量が変化する。図4は電子ビームの走査による試料影の移動を示す図である。電子ビームのEBの位置により、X線検出器8に到達する透過像の量が変化している。
【0061】
そこで、電子ビームEBの走査量と検出したX線量を用いて画像化することにより、透過像を得ることができる。また、電子ビームEBとX線検出器8を固定しておき、X線源11を構成する窓材12を試料7と共に移動させながらX線量を測定し、透過像を作成することも可能である。この場合は、試料7の移動量とX線の検出量を用いて画像化する。
【0062】
更に、X線検出器8にシリコンドリフト(SDD)検出器、マイクロカロリメトリー検出器を使用した場合、透過X線のスペクトルから試料7の組成分析もできる。例として、炭素の分析方法を示す。図5は黒鉛1[μm]の吸収X線の特性である。横軸はX線エネルギー[eV]、縦軸はX線透過率である。黒鉛に限らず、炭素からなる物質は284.2[eV]に吸収端を持つので、この付近のエネルギー帯を検出すれば、試料中の炭素の分布を調べることができる。
【0063】
図5において、炭素の特性X線エネルギーは277.0[eV]、炭素の吸収端エネルギーは284.2[eV]、窒素の吸収端エネルギーは409.9[eV]である。
【0064】
図6は電子検出器を備えた装置の説明図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図に示すように、半導体の電子検出器20を配置し、電子ビームEBを走査させながら検出される2次電子又は反射電子の検出量を求め、走査量と電子検出量とに基づいて画像化すれば、薄膜の状態を観察したり、ビームの加速電圧を高く(例えば30[kV])し、試料7からの反射電子を検出して反射電子像を得ることもできる。即ち、電子検出器20で検出された反射電子は、図示しない後段の画像処理回路により画像処理された後、反射電子像として取得することができる。
【0065】
次に、図7に示すように電子ビームEB側にX線発生層31、試料7側に真空保持のための支持層32を備える薄膜(X線源)33を使用した例を示す。例えばX線発生層31に銀、支持層32にシリコンナイトライドを使用し、生体試料7を観察する。銀のMζの特性X線は311.7[eV]で、生体試料に多く含まれる炭素の吸収端エネルギー284.2[eV]より高いため、炭素で吸収されやすい。
【0066】
一方、支持層32に使用するシリコンナイトライドに含まれる窒素の吸収端エネルギー409.9[eV]より低いので、支持層32では吸収されにくい。そのため、X線検出器8で検出されるX線量は試料7の厚みによって変化するので、透過像にコントラストがつく。また、X線源となる薄膜の熱伝導率が高いものを使用すると、電子ビームの入射によって発生した熱を薄膜に沿って鏡筒(チャンバ)10などに逃がすことにより、試料が暖まるのを防ぐことも可能である。具体的には薄膜の熱伝導率を、200[W/(m・k)]以上にするとよい。
【0067】
X線源11となる薄膜に入射する電子ビームEBのエネルギーは、X線源11となる薄膜で発生する特性X線のエネルギーの約3倍にすると、効率がよくなる。X線源11となる薄膜が銀の場合で、Mζの特性X線を使用する場合は、311.7[eV]の3倍の約0.9[keV]の電子ビームEBを入射させるとよい。
【0068】
図8は本発明の第2の実施例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8に示す第2の実施例は、図1に示す第1の実施例よりも単純な構成にしたものである。電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3,試料容器25,試料7,X線検出器8からなる。電子銃1からX線検出器8まではチャンバ10内に配置され、真空排気されている。
【0069】
試料7は図9に示すように、上下が窓材A,Bの試料容器25に入れられ、該試料容器25はOリング27で密閉されている。電子ビームEBが入射する側の窓材AはX線源11を兼ねている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0070】
電子銃1から引き出された電子ビームを少なくとも1段の集束レンズ2で集束し、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調整し、X線源11に入射させる。電子ビームEBの入射によってX線源11(窓材A)から発生したX線13は試料7に照射され、試料7を透過したX線は試料容器25の窓材Bを抜け、X線検出器8で検出し、透過X線像を得る。
【0071】
透過X線像の取得方法や、試料7の組成分析については、第1の実施例と同様である。第1の実施例では、X線検出器8が大気中にあるため、大気中の分子によって透過X線が減衰するが、第2の実施例の場合はX線検出器8が真空中にあるためデータ透過X線像が第1の実施例に比べて減衰しにくいという特徴がある。
【0072】
試料容器25は密閉されているので、試料7の雰囲気を液中にしたり大気にしたりすることが可能である。そのため、大気圧であれば生体試料の乾燥を防いで観察したり、生きた試料の場合は液中で生きたまま観察することが可能になる。
【0073】
また、試料容器25の前方又は後方に電子検出器を光軸上に挿入することができるようにすれば、透過電子や散乱電子を検出し、電子像を取得し、X線像と比較することができる。
【0074】
金属や半導体など、真空中でも観察可能な試料の場合には、図10に示すように開放型の容器を使用し、X線透過像を取得することも可能である。真空中で観察することによって、大気中や液中で観察する時に比べ、試料以外でのX線の減衰量が少ないので、コントラストが得やすくなる。また、試料付近にシンチレータ検出器を配置し、2次電子像を取得したり、試料後方に半導体検出器配置して透過電子或いは散乱電子を検出し、走査透過像や透過像を取得するようにすることもできる。
【0075】
図11は本発明の第3の実施例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施例では、チャンバ10内に2次電子検出器28と透過電子検出器29を設けている例を示す。
【0076】
また、第1の実施例と同様に、図12に示すように支持層としての窓材AにX線源となるX線源薄膜30を部分的に設置するようにしてもよい。
【0077】
以上のように本発明のX線顕微鏡は、電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームEBの照射に応じてX線発生源となる薄膜11と、該薄膜11の第1の面に照射された集束電子ビームEBによって該薄膜11から発生するX線13を検出するX線検出手段8とを有し、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出することができる。
【0078】
また、本発明の他のX線顕微鏡は、電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームEBの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜(窓材A)と、該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームEBによって該薄膜から発生するX線13を検出するX線検出手段8と、前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜(窓材B)とを有し、前記第1及び第2の薄膜(窓材A及び窓材B)の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料7を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出することができる。
【0079】
また、前記X線発生源となる薄膜(薄膜11又は窓材A)は、試料7中での顕微対象物7a,7bを構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことができる。
【0080】
また、前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造(X線発生層31及び支持層32)となっており、該積層31,32中の少なくとも1層がX線発生層とすることができる。
【0081】
また、前記X線検出手段8と試料7との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能である。
【0082】
また、集束電子ビームEBを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段8は複数の検出素子が配列されてなる検出器8を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームEBの走査情報と該検出器8によるX線の検出情報とから、試料7中における3次元情報を取得することができる。
【0083】
また、集束電子ビームEBを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームEBの走査情報と前記X線検出手段8によるX線の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【0084】
また、前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器8によるX線13の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【0085】
また、電子ビームEBの加速エネルギーは、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高くすることができる。
【0086】
また、前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上とすることができる。
【0087】
また、前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームEBが試料7に到達し、これにより試料7を透過又は散乱(後方散乱(反射)を含む)した電子、或いは試料7から発生した2次電子を検出するための電子検出器20,28,29を備えることができる。
【0088】
また、前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器20を備えることができる。
【0089】
また、本発明の顕微方法では、X線発生源となる薄膜11の第1の面に、集束された電子ビームEBを照射してX線13を発生させ、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することができる。
【0090】
また、X線発生源となる第1の薄膜(窓材A)における第1の面に、集束された電子ビームEBを照射してX線13を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料7を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜(窓材B)を透過したX線13を検出することにより、試料7の透過像を取得することができる。
【0091】
また、X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームEBを走査させ、当該走査情報とX線13の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電子銃
2 集束レンズ
3 偏向コイル
7 試料
8 X線検出器
10 チャンバ
10a 開口
11 X線源
12 窓材
13 X線
EB 電子ビーム
【技術分野】
【0001】
本発明はX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法に関し、更に詳しくは試料とX線源を接近させることで分解能を向上させることができるようにしたX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は従来装置の構成例を示す図である。電子銃1から照射された電子ビーム(電子線ともいう)EBは、続く集束レンズ2で集束された後、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調節し、X線源4に入射させる。これにより、X線源4から発生したX線5を試料台6に載せられた試料7に照射させる。
【0003】
試料7を透過したX線5を後方に配置されているX線検出器8にて検出し、検出したX線画像に所定の画像処理を施して透過像を得ることができる。図中の10は電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3をその内部にもつチャンバ(鏡筒ともいう)であり、該チャンバ10内に前記した各構成要素が取り付けられる。10aは、真空排気用の開口である。この開口10aからイオンポンプ等でチャンバ10内を排気して、所定の圧力の真空状態を作り出す。
【0004】
従来のこの種の装置としては、超高分解能で且つ非常に短時間での非破壊検査が可能であると共に、高精度の電子プローブ制御機能、CT機能、元素分析機能、ターゲット切り替え機能などの優れた機能を搭載したX線顕微検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、試料表面に形成したX線ターゲットに微小走査電子ビームを照射し、発生したX線を試料を透過させ、透過したX線を2次元のX線検出器で検知し、画像化するようにしたX線顕微鏡が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3998556号公報(段落0031〜0040、図4)
【特許文献2】WO2007/141868号公報(段落0007、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線顕微鏡を高分解能化するためには、以下の工夫が必要になる。
1)発生領域が小さく、高強度のX線が必要である。
2)試料とX線源との距離を近付ける。
【0008】
これに対して1)は電子ビームを集束させて薄膜のX線源に照射することで実現される。そのため、現状では、試料とX線源との距離をどれだけ近付けることができるかにより分解能が決まる。
【0009】
特許文献2では試料にX線源を蒸着することで、試料とX線源接触させて高分解能化を可能にしている。ところが、X線源を蒸着して作るという前処理が必要なため、観察するためには手間がかかるという問題がある。更に、試料の雰囲気を真空保持しなければならないため、生体試料を観察する場合は当該試料が蒸着工程を経て真空中に曝露しているため、本来のものとは異なる状態を観察することになる。
【0010】
これに対して、特許文献1では、大気中での試料観察が可能であるが、電子ビーム側の真空はX線源のついた基板で保持しており、さらに試料は検体保持フィルムに載せてある。そのため、X線源を保持している基板の厚みと、基板から離れた位置に試料が配置してあるため、X線源と試料との距離が離れてしまっている。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料とX線源とを接近させることで分解能を上げることができるX線顕微鏡及びX線を用いた顕微方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明は以下のような構成をとっている。
【0013】
(1)請求項1記載の発明は、電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜と、該薄膜の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段とを有し、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とする。
【0014】
(2)請求項2記載の発明は、電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜と、該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段と、前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜とを有し、前記第1及び第2の薄膜の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とする。
【0015】
(3)請求項3記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜は、試料中での顕微対象物を構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことを特徴とする。
【0016】
(4)請求項4記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造となっており、該積層中の少なくとも1層がX線発生層となっていることを特徴とする。
【0017】
(5)請求項5記載の発明は、前記X線検出手段と試料との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能であることを特徴とする。
【0018】
(6)請求項6記載の発明は、集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段は複数の検出素子が配列されてなる検出器を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と該検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することを特徴とする。
【0019】
(7)請求項7記載の発明は、集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と前記X線検出手段によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【0020】
(8)請求項8記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【0021】
(9)請求項9記載の発明は、電子ビームの加速エネルギーが、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高いことを特徴とする。
【0022】
(10)請求項10記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上であることを特徴とする。
【0023】
(11)請求項11記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームが試料に到達し、これにより試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする。
【0024】
(12)請求項12記載の発明は、前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする。
【0025】
(13)請求項13記載の発明は、X線発生源となる薄膜の第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とする。
【0026】
(14)請求項14記載の発明は、X線発生源となる第1の薄膜における第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とする。
【0027】
(15)請求項15記載の発明は、X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームを走査させ、当該走査情報とX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以下に示すような効果を有する。
【0029】
(1)請求項1記載の発明によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0030】
(2)請求項2記載の発明によれば、第1の薄膜と第2の薄膜との間に試料を入れた空間を作り、その空間の雰囲気を例えば大気圧とすることにより、例えば生物試料を最も好ましい状態で配置することができ、正確なX線像を得ることができる。
【0031】
(3)請求項3記載の発明によれば、検出されるX線量は試料の厚みによって変化するので、透過像にコントラストをつけることができる。
【0032】
(4)請求項4記載の発明によれば、2層以上の積層構造の薄膜を用いて、X線発生源を得ることができる。
【0033】
(5)請求項5記載の発明によれば、X線検出手段と試料との間を調整可能とすることにより、倍率又は分解能を可変することができる。
【0034】
(6)請求項6記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することができる。
【0035】
(7)請求項7記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と検出器によるX線の検出情報とから、試料の走査透過像を取得することができる。
【0036】
(8)請求項8記載の発明によれば、X線発生源となる薄膜を電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させることにより、試料の走査透過像を取得することができる。
【0037】
(9)請求項9記載の発明によれば、電子ビームの加速エネルギーがX線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーのほぼ3倍高くなるようにすることにより、X線の発生効率を向上させることができる。
【0038】
(10)請求項10記載の発明によれば、薄膜の熱伝導率を、200[W/(m・k)]以上にすることで、試料が熱上昇するのを抑制することができる。
【0039】
(11)請求項11記載の発明によれば、試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることにより、これらの電子像を得ることができる。
【0040】
(12)請求項12記載の発明によれば、薄膜から発生する2次電子又は反射電子像を得ることができる。
【0041】
(13)請求項13記載の発明によれば、試料の透過像を取得することができる。
【0042】
(14)請求項14記載の発明によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0043】
(15)請求項15記載の発明によれば、試料の走査透過像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】X線発生部の移動による試料影の移動を示す図である。
【図3】観察対象の位置の求め方の説明図である。
【図4】電子ビームの走査による試料影の移動を示す図である。
【図5】X線透過率特性を示す図である。
【図6】電子検出器を使用した装置の説明図である。
【図7】2層構造の薄膜(X線源)の説明図である。
【図8】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図9】密閉型の試料容器の説明図である。
【図10】開放型の試料容器の説明図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示す構成図である。
【図12】密閉型試料容器の他の構成例を示す図である。
【図13】従来装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の構成原理図である。図6と同一のものは同一の符号を付して示す。図に示す装置は、図13に示す装置と比較して倒立型となっているが、倒立型である必要はない。図において、10はチャンバ、10aは該チャンバ10に設けられた真空排気用の開口である。
【0046】
1は電子銃、2は該電子銃1が放射された電子ビームEBを集束する集束レンズ、3は電子ビームEBを偏向する偏向コイル、11はチャンバ10の上部に設けられたX線源、7は該X線源11の上部に載置された試料、8はX線源11から放射され試料7を透過したX線を検出するX線検出器である。12はX線源11を兼ねる窓材である。この装置は電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3,窓材12,試料7及びX線検出器8を備えている。
【0047】
電子銃1から窓材12までは、真空排気されており、窓材12は例えばシリコンナイトライドの薄膜を用い、Oリング(図示せず)で電子銃側の真空を保持している。前述したように、窓材12はX線源11を兼ねており、窓材12によってX線源11が構成される。試料7は窓材12の大気側に載せられている。即ち、X線源11と試料7とは接して配置されている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0048】
電子銃1から引き出された電子ビームEBを少なくとも1段の集束レンズ2で集束し、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調節し、X線源11の薄膜に入射させる。電子ビームEBの入射によってX線源11から発生したX線13は、試料7に到達して照射され、試料7を透過したX線をX線検出器8で検出する。該X線検出器8で検出されたX線に基づくX線像は、図示しない画像処理部によって所定の画像処理された後、透過X線像として取得される。
【0049】
ここで、電子ビームEBの真空は窓材12で保持されており、試料7は大気側に配置されるので、大気中での観察や、試料を液体に浸して観察することも可能である。そのため、生体試料は、乾燥することなく観察でき、液中であれば生体試料が生きたままの観察もできる。このように、第1の実施例によれば、薄膜の面に接して配置された試料を透過したX線をX線検出手段により検出するので、分解能の高いX線像を得ることができる。
【0050】
透過X線像の取得方法は、X線検出器8として、X線CCDカメラのような2次元配列の検出器を用いれば、各画素の信号量から透過像を得ることができる。また、試料7とX線CCDカメラ8の距離を調節すれば像の倍率が変化する。即ちX線検出手段としてのX線CCDカメラ8と試料7との間を調整可能とすることにより、倍率又は分解能を可変することができる。
【0051】
また、集束された電子ビームEBの走査に基づいて、窓材12(X線源11)内部におけるX線発生部が移動すると、試料7の影は移動するが、この移動量は試料7と当該X線発生部との距離によって変化する。図2はX線源11(即ち窓材12)内部でのX線発生部の移動による試料影の移動を示す図である。上段はX線発生部11aの移動の様子を、下段はその時のCCD検出器8で得られた透過像を示す図である。この図は観察対象が分布している試料中に、それぞれの位置からX線が照射された時の影の方向を示している。
【0052】
集束電子ビームEBの走査に基づき、X線源11内部でX線発生部11aが(a)〜(e)と移動するにつれて、影の移動量が変化していることが分かる。17aは試料中の下にある観察対象7aによる影を、17bは試料中の上にある観察対象7bによる影を示している。
【0053】
図2より明らかなように、試料7中の観察対象と窓材12とが接している場合、X線発生部11aの移動量に対して当該観察対象の影の移動量は大きくなるが、試料7中の観察対象と窓材12とが離れてくると、X線発生部11aの移動量に対して当該観察対象の影の移動量は小さくなる。
【0054】
このように、試料中に観察対象が分布している時、窓材12に近い位置にある観察対象7aと、窓材12から離れた位置にある観察対象7bでは、X線発生部11aの位置によって、それぞれ対応する影17a,17bのできる位置が異なる。そこで、検出器8の受光面の中心に観察対象の影がある時のX線発生部11aの位置と、検出器8の受光面の端に観察対象の影があるときのX線発生部11aの位置から、窓材12に対する各観察対象の位置を求めることができる。このように、電子ビームの走査量に応じて順次X線CCD検出器8により取得された複数の像から、影の移動量を求めることによって、試料7の内部に分布する各部位の位置関係を3次元的に調べることができる。
【0055】
ここで、図3は観察対象の距離の求め方の説明図である。観察対象の影中心が検出器受光面の中心にある時のX線発生部11aの位置と、影中心が検出器受光面の端にある時のX線発生部11aの位置の差をxとして、窓材12と検出器8の受光面の距離をLとし、検出器8の受光面の幅をDとし、窓材12と観察対象7cの中心までの距離をL’とする。図において、7は試料、17cは観察対象、12はX線発生源を構成する窓材、11aはX線発生部である。この時、距離L’は以下の式で表わすことができる。
【0056】
【数1】
【0057】
D,Lは装置の構成から決まり、xは電子ビームの走査量から求まるので、L’を計算して求めることができる。他にも、X線発生部11aを一定距離移動させ、観察対象の影位置から観察対象7cの位置を求めることも可能である。
【0058】
また、図2内での2つの観察対象は粒形状を有し、ほぼ同じ大きさであるが、X線発生部11aに近い観察対象は大きく見えてしまう。上の方法で窓材12から観察対象までの距離が求まれば、影の開き角を求めることができるので、得られた観察対象の像の大きさを補正して、観察対象17の位置が異なっても試料の大きさが同じなら、同じ大きさで表示することも可能になる。
【0059】
この方法以外にも透過X線像の取得方法として、CCDのような配列型の検出器ではなく、シリコンドリフト検出器(SDD)、比例計数管、マイクロカロリメトリー検出器など、検出器に入射するX線量を測定する単一の検出器でも像取得は可能である。
【0060】
例えば、試料7とX線検出器8の位置関係を固定しておき、電子ビームEBを窓材12上で走査させればX線発生部11aが移動するので、試料7に入射するX線13の角度が変化し、これにより透過X線像が移動するので、検出器8に入射するX線量が変化する。図4は電子ビームの走査による試料影の移動を示す図である。電子ビームのEBの位置により、X線検出器8に到達する透過像の量が変化している。
【0061】
そこで、電子ビームEBの走査量と検出したX線量を用いて画像化することにより、透過像を得ることができる。また、電子ビームEBとX線検出器8を固定しておき、X線源11を構成する窓材12を試料7と共に移動させながらX線量を測定し、透過像を作成することも可能である。この場合は、試料7の移動量とX線の検出量を用いて画像化する。
【0062】
更に、X線検出器8にシリコンドリフト(SDD)検出器、マイクロカロリメトリー検出器を使用した場合、透過X線のスペクトルから試料7の組成分析もできる。例として、炭素の分析方法を示す。図5は黒鉛1[μm]の吸収X線の特性である。横軸はX線エネルギー[eV]、縦軸はX線透過率である。黒鉛に限らず、炭素からなる物質は284.2[eV]に吸収端を持つので、この付近のエネルギー帯を検出すれば、試料中の炭素の分布を調べることができる。
【0063】
図5において、炭素の特性X線エネルギーは277.0[eV]、炭素の吸収端エネルギーは284.2[eV]、窒素の吸収端エネルギーは409.9[eV]である。
【0064】
図6は電子検出器を備えた装置の説明図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図に示すように、半導体の電子検出器20を配置し、電子ビームEBを走査させながら検出される2次電子又は反射電子の検出量を求め、走査量と電子検出量とに基づいて画像化すれば、薄膜の状態を観察したり、ビームの加速電圧を高く(例えば30[kV])し、試料7からの反射電子を検出して反射電子像を得ることもできる。即ち、電子検出器20で検出された反射電子は、図示しない後段の画像処理回路により画像処理された後、反射電子像として取得することができる。
【0065】
次に、図7に示すように電子ビームEB側にX線発生層31、試料7側に真空保持のための支持層32を備える薄膜(X線源)33を使用した例を示す。例えばX線発生層31に銀、支持層32にシリコンナイトライドを使用し、生体試料7を観察する。銀のMζの特性X線は311.7[eV]で、生体試料に多く含まれる炭素の吸収端エネルギー284.2[eV]より高いため、炭素で吸収されやすい。
【0066】
一方、支持層32に使用するシリコンナイトライドに含まれる窒素の吸収端エネルギー409.9[eV]より低いので、支持層32では吸収されにくい。そのため、X線検出器8で検出されるX線量は試料7の厚みによって変化するので、透過像にコントラストがつく。また、X線源となる薄膜の熱伝導率が高いものを使用すると、電子ビームの入射によって発生した熱を薄膜に沿って鏡筒(チャンバ)10などに逃がすことにより、試料が暖まるのを防ぐことも可能である。具体的には薄膜の熱伝導率を、200[W/(m・k)]以上にするとよい。
【0067】
X線源11となる薄膜に入射する電子ビームEBのエネルギーは、X線源11となる薄膜で発生する特性X線のエネルギーの約3倍にすると、効率がよくなる。X線源11となる薄膜が銀の場合で、Mζの特性X線を使用する場合は、311.7[eV]の3倍の約0.9[keV]の電子ビームEBを入射させるとよい。
【0068】
図8は本発明の第2の実施例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8に示す第2の実施例は、図1に示す第1の実施例よりも単純な構成にしたものである。電子銃1,集束レンズ2,偏向コイル3,試料容器25,試料7,X線検出器8からなる。電子銃1からX線検出器8まではチャンバ10内に配置され、真空排気されている。
【0069】
試料7は図9に示すように、上下が窓材A,Bの試料容器25に入れられ、該試料容器25はOリング27で密閉されている。電子ビームEBが入射する側の窓材AはX線源11を兼ねている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0070】
電子銃1から引き出された電子ビームを少なくとも1段の集束レンズ2で集束し、偏向コイル3で電子ビームEBの入射位置を調整し、X線源11に入射させる。電子ビームEBの入射によってX線源11(窓材A)から発生したX線13は試料7に照射され、試料7を透過したX線は試料容器25の窓材Bを抜け、X線検出器8で検出し、透過X線像を得る。
【0071】
透過X線像の取得方法や、試料7の組成分析については、第1の実施例と同様である。第1の実施例では、X線検出器8が大気中にあるため、大気中の分子によって透過X線が減衰するが、第2の実施例の場合はX線検出器8が真空中にあるためデータ透過X線像が第1の実施例に比べて減衰しにくいという特徴がある。
【0072】
試料容器25は密閉されているので、試料7の雰囲気を液中にしたり大気にしたりすることが可能である。そのため、大気圧であれば生体試料の乾燥を防いで観察したり、生きた試料の場合は液中で生きたまま観察することが可能になる。
【0073】
また、試料容器25の前方又は後方に電子検出器を光軸上に挿入することができるようにすれば、透過電子や散乱電子を検出し、電子像を取得し、X線像と比較することができる。
【0074】
金属や半導体など、真空中でも観察可能な試料の場合には、図10に示すように開放型の容器を使用し、X線透過像を取得することも可能である。真空中で観察することによって、大気中や液中で観察する時に比べ、試料以外でのX線の減衰量が少ないので、コントラストが得やすくなる。また、試料付近にシンチレータ検出器を配置し、2次電子像を取得したり、試料後方に半導体検出器配置して透過電子或いは散乱電子を検出し、走査透過像や透過像を取得するようにすることもできる。
【0075】
図11は本発明の第3の実施例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施例では、チャンバ10内に2次電子検出器28と透過電子検出器29を設けている例を示す。
【0076】
また、第1の実施例と同様に、図12に示すように支持層としての窓材AにX線源となるX線源薄膜30を部分的に設置するようにしてもよい。
【0077】
以上のように本発明のX線顕微鏡は、電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームEBの照射に応じてX線発生源となる薄膜11と、該薄膜11の第1の面に照射された集束電子ビームEBによって該薄膜11から発生するX線13を検出するX線検出手段8とを有し、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出することができる。
【0078】
また、本発明の他のX線顕微鏡は、電子ビームEBを集束して照射する電子ビーム照射手段と、該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームEBの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜(窓材A)と、該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームEBによって該薄膜から発生するX線13を検出するX線検出手段8と、前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜(窓材B)とを有し、前記第1及び第2の薄膜(窓材A及び窓材B)の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料7を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線13を前記X線検出手段8により検出することができる。
【0079】
また、前記X線発生源となる薄膜(薄膜11又は窓材A)は、試料7中での顕微対象物7a,7bを構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことができる。
【0080】
また、前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造(X線発生層31及び支持層32)となっており、該積層31,32中の少なくとも1層がX線発生層とすることができる。
【0081】
また、前記X線検出手段8と試料7との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能である。
【0082】
また、集束電子ビームEBを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段8は複数の検出素子が配列されてなる検出器8を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームEBの走査情報と該検出器8によるX線の検出情報とから、試料7中における3次元情報を取得することができる。
【0083】
また、集束電子ビームEBを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームEBの走査情報と前記X線検出手段8によるX線の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【0084】
また、前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器8によるX線13の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【0085】
また、電子ビームEBの加速エネルギーは、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高くすることができる。
【0086】
また、前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上とすることができる。
【0087】
また、前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームEBが試料7に到達し、これにより試料7を透過又は散乱(後方散乱(反射)を含む)した電子、或いは試料7から発生した2次電子を検出するための電子検出器20,28,29を備えることができる。
【0088】
また、前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器20を備えることができる。
【0089】
また、本発明の顕微方法では、X線発生源となる薄膜11の第1の面に、集束された電子ビームEBを照射してX線13を発生させ、前記薄膜11の第2の面に接して配置された試料7を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することができる。
【0090】
また、X線発生源となる第1の薄膜(窓材A)における第1の面に、集束された電子ビームEBを照射してX線13を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料7を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜(窓材B)を透過したX線13を検出することにより、試料7の透過像を取得することができる。
【0091】
また、X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームEBを走査させ、当該走査情報とX線13の検出情報とから試料7の走査透過像を取得することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電子銃
2 集束レンズ
3 偏向コイル
7 試料
8 X線検出器
10 チャンバ
10a 開口
11 X線源
12 窓材
13 X線
EB 電子ビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、
該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜と、
該薄膜の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段とを有し、
前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とするX線顕微鏡。
【請求項2】
電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、
該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜と、
該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段と、
前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜とを有し、
前記第1及び第2の薄膜の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とするX線顕微鏡。
【請求項3】
前記X線発生源となる薄膜は、試料中での顕微対象物を構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のX線顕微鏡。
【請求項4】
前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造となっており、該積層中の少なくとも1層がX線発生層となっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項5】
前記X線検出手段と試料との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項6】
集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段は複数の検出素子が配列されてなる検出器を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と該検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項7】
集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と前記X線検出手段によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項8】
前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項9】
電子ビームの加速エネルギーが、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高いことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項10】
前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項11】
前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームが試料に到達し、これにより試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項12】
前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項13】
X線発生源となる薄膜の第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とするX線を用いた顕微方法。
【請求項14】
X線発生源となる第1の薄膜における第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とするX線を用いた顕微方法。
【請求項15】
X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームを走査させ、当該走査情報とX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項13又は14記載のX線を用いた顕微方法。
【請求項1】
電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、
該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる薄膜と、
該薄膜の第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段とを有し、
前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とするX線顕微鏡。
【請求項2】
電子ビームを集束して照射する電子ビーム照射手段と、
該電子ビーム照射手段からの集束電子ビームの照射に応じてX線発生源となる第1の薄膜と、
該第1の薄膜における第1の面に照射された集束電子ビームによって該薄膜から発生するX線を検出するX線検出手段と、
前記第1の薄膜における第2の面に対向して配置された第2の薄膜とを有し、
前記第1及び第2の薄膜の間隙において第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過し、かつ第2の薄膜を透過したX線を前記X線検出手段により検出することを特徴とするX線顕微鏡。
【請求項3】
前記X線発生源となる薄膜は、試料中での顕微対象物を構成する元素のX線吸収端のエネルギー値以上のエネルギー値を有する特性X線を放出する元素を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のX線顕微鏡。
【請求項4】
前記X線発生源となる薄膜は、2層以上の積層構造となっており、該積層中の少なくとも1層がX線発生層となっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項5】
前記X線検出手段と試料との間の距離が調整可能となっており、これにより倍率又は分解能の調節が可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項6】
集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、前記X線検出手段は複数の検出素子が配列されてなる検出器を備え、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と該検出器によるX線の検出情報とから、試料中における3次元情報を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項7】
集束電子ビームを走査する走査手段を更に有し、X線発生源となる薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報と前記X線検出手段によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項8】
前記X線発生源となる薄膜を集束電子ビームの進行方向に対して直交する方向に移動させる手段を更に有し、該移動に基づく該薄膜の第1の面における集束電子ビームの走査情報とX線検出器によるX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項9】
電子ビームの加速エネルギーが、X線発生源となる薄膜から発生するX線のエネルギーよりもほぼ3倍高いことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項10】
前記X線発生源となる薄膜の熱伝導率は、200[W/(m・K)]以上であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項11】
前記X線発生源となる薄膜を通過した電子ビームが試料に到達し、これにより試料を透過又は散乱した電子、或いは試料から発生した2次電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項12】
前記X線発生源となる薄膜から発生する2次電子又は反射電子を検出するための電子検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のX線顕微鏡。
【請求項13】
X線発生源となる薄膜の第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、前記薄膜の第2の面に接して配置された試料を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とするX線を用いた顕微方法。
【請求項14】
X線発生源となる第1の薄膜における第1の面に、集束された電子ビームを照射してX線を発生させ、第1の薄膜における第2の面に接して配置された試料を透過するとともに、前記第1の薄膜における第2の面に対向されて配置された第2の薄膜を透過したX線を検出することにより、試料の透過像を取得することを特徴とするX線を用いた顕微方法。
【請求項15】
X線発生源となる薄膜の第1の面において集束電子ビームを走査させ、当該走査情報とX線の検出情報とから試料の走査透過像を取得することを特徴とする請求項13又は14記載のX線を用いた顕微方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−209118(P2011−209118A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77264(P2010−77264)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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