説明

X線CT装置及びその制御方法

【課題】簡単かつ規模の小さい構成で、回生抵抗に蓄積された回生エネルギーを有効利用することができるX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置は、寝台と、寝台駆動手段と、X線発生手段と、X線検出手段と、回転体と、駆動手段と、昇圧手段と、変換手段と、制御手段とを備える。駆動手段は、回転体を回転駆動させる。昇圧手段は、外部から入力される交流電圧を昇圧する。変換手段は、回転体を回転駆動させる場合、昇圧された交流電圧を直流電圧に変換し駆動手段に送る。また、変換手段は、回転体が減速する場合、回転体の減速時において発生する回生電力を交流電圧に変換して寝台駆動手段及びコンソールの少なくとも一方に電力を供給する。制御手段は、変換手段に送られてきた回生電力の電圧の位相を外部から入力される交流電圧の位相とあわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生エネルギーを再利用するX線CT装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を利用して被検体の断層撮影像を行うX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)の分野においては、多機能化、高性能化、それに撮影時間の短縮化を等、様々な方面での努力が日々費やされている。しかし、装置の性能や機能を向上させるに従い、放出すべき熱量は増加してしまう。
【0003】
このような技術革新が進行する中、装置内部で副次的に発生してしまう熱をいかにして外部に放出するか、という課題が常に考慮されてきた。
【0004】
X線CT装置内部で発生する熱として代表的なものに回生抵抗に起因するものがある。回生抵抗は、回転しながら被検体の断層撮影を行う回転体を駆動するためのモータ(例えば、ダイレクトドライブモータなど。)の回転を減速するときに発生する逆起電力のエネルギーを熱エネルギーに変換するために設けられる抵抗部材である。したがって、モータの加減速を頻繁に行う場合、例えば、大人数を連続して撮影する場合や、サービスエンジニアがメンテナンスなどを行う場合などには、回生抵抗はかなりの温度に到達してしまうこともある。このような状況に対応するための構成としては、単に回生抵抗の個数を増やしたものの他にも、例えば次のようなものが公知となっている。
【0005】
一部のX線CT装置では、架台上部に回生抵抗を設けて熱が装置外部に放出され易いよう配置しつつ、回生抵抗を架台内の金属部分に接触させて、その金属部分から熱を逃がす構成が採用されていることが多い。
【0006】
また他方、架台上部に回生抵抗を配置するだけの十分なスペースを確保することが困難であるX線CT装置では、装置側部に回生抵抗が設けられていることが多い。
【0007】
上記のようなX線CT装置においては、回生抵抗が生成した熱を外部に案内するためのファンなどを付加的構成としているものも公知となっている。例えば、下記の特許文献1には、撮影口上部に吸い込み口を、装置上部に冷却用ファンをそれぞれ設けて、装置内部に空気流を発生させることで熱放出を行うX線CT装置が開示されている。
【0008】
また、支持部材に複数の羽根部材を架台回転部とともに回転させて送風を行うことにより装置内部の放熱を行うよう構成されたX線CT装置(X線コンピュータ断層撮影装置)(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。これも、特許文献1に記載された構成と同様に、装置内の通風を良好に保つことにより熱を放出しようとするものである。
【0009】
さらに、架台(X線CT装置)の内部に設けられた回生抵抗装置と、この回生抵抗装置が発生する熱を、被検体を載置する搬送装置の天板に伝える送風ファンとを備えたX線CTスキャンシステム(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。このX線CTスキャンシステムによれば、天板を暖めることにより被検体に対する暖房作用をそうすることができる。これもやはり、空気流を利用して回生抵抗を冷却する方法を採っている。
【0010】
また、回生エネルギーをそのままコンデンサに蓄え、それを再利用する技術(例えば、特許文献4参照。)も提案されている。
【0011】
ここで、一例として、回生抵抗によって放熱を行なう構成を有する従来のX線CT装置について、図6を参照して以下に説明する。図6は、従来のX線CT装置の構成の概略を示す正面透視図である。また、図7は、従来のX線CT装置の構成を示すブロック図である。図6に示すように、X線CT装置1は被検体をスキャンしながらX線を照射し、その透過X線を検出するための装置である。このX線CT装置1は、天板に載置された被検体を撮影位置(下記の撮影口)に搬送するための寝台や、X線CT装置1の検出データを解析してX線断層像を再構成し表示するコンピュータなど(いずれも図示せず)とともにX線断層像撮影システムを構成し使用している。
【0012】
X線CT装置1の筐体2の中央付近に設けられた開口は、上記の天板に載置された被検体を挿入するための撮影口3を形成している。筐体2には、X線を被検体に様々な方向から照射し、被検体を通過したX線を検出するための各種の機器が格納されており、ダイレクトドライブモータなどのモータ4、回転体5、インバータ部6などがこれに含まれる。また、インバータ部6には回生抵抗7が接続されている。
【0013】
回転体5は、撮影口3を囲むように配置された枠体で、モータ4により回転駆動される。回転体5(支持ユニット)には、X線を出力するX線管8(X線発生ユニット)と、このX線管8から出力されたX線を検出する検出器9(検出ユニット)とが対向配置で支持されている。また、回転体5には、X線管8や検出器9に電源を供給するAC/DC変換器10や、検出器9の検出結果の処理を行う信号処理装置11などが取り付けられている。
【0014】
インバータ部6は、IGBT12などで構成されている。インバータ部6は、制御部(制御ユニット)から送信される信号に基づいてモータ4に供給する電源の電圧や周波数を調整し、モータ4の駆動や停止、回転速度などを制御する。なお、モータ4とインバータ部6とは、本発明でいう駆動ユニットを構成している。
【0015】
回生抵抗7は、モータ4の減速時に生成されインバータ部6に逆流してくる電気エネルギー(回生エネルギー)を熱エネルギーに変換して消費するための部材である。なお、インバータ部6内にも回生抵抗が設けられているが、この内蔵された回生抵抗では処理しきれない回生エネルギーを消費するために利用されるのが回生抵抗7である。ここで、回生抵抗7は、従来と同様、例えば、X線CT装置1の筐体2の側面上部に配置され、放熱部材などと熱的に接続されて外部に放熱する構造となっている。
【0016】
このように配置された各部材は、図7に示すような構成がなされている。図7に示すように、AC/DC変換器10はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;ゲート隔離型バイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子よりなるインバータ部6を介してモータ4に接続されている。AC/DC変換器10とIGBTとの間の伝送路は回生抵抗7が介入されており、モータ4が減速するときには発生した回生エネルギーを、放熱部材に接続された回生抵抗7に送って熱に変換していた。
【0017】
このような構成のX線CT装置では、まず、X線CT装置1を含むX線断層像撮影システムによる撮影処理は、端的には次のようなプロセスで実行される。X線CT装置1は、インバータ部6からモータ4に電源を供給して回転体5を回転させるとともに、X線管8からX線を照射し、撮影口3に挿入された被検体を透過したX線を検出器9によって検出する。このとき、X線管8及び検出器9は、AC/DC変換器10から電源の供給を受けて動作している。検出器9により検出された透過X線は、信号処理装置11により処理されて画像データ化された後上述したコンピュータに送信される。そして、このコンピュータによって、画像データを画像に再構成し被検体の断層像を表示する。
【0018】
以上のような撮影処理が繰り返し行われると、モータ4の減速時(制御部100が自ら検出)における逆起電力に基づくエネルギー、つまり回生エネルギーが大量に発生する。この回生エネルギーは、制御部100によって、スイッチSW1がONされることによって、回生抵抗7に送られて、その回生抵抗7に熱的に接続された放熱部材によって放熱されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−276262号公報
【特許文献2】特開平9−56710号公報
【特許文献3】特開2002−336236号公報
【特許文献4】特開2006−289066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、現在X線CTは撮影時間の短縮を図ることにより被検者にかかる負担を軽減することが進められている。そして、撮影時間を短縮するには、スキャン時間の短縮が必要である。すなわち、回転体をより高速で回転させること、つまり高速回転下におけるモータの制御が要求される。ただし、それを実現するためにはモータの急激な加減速を行わなければならないため、従来と比較して大量の回生エネルギーの発生が伴い、発生した大量の回生エネルギーを効率よく熱エネルギーに変換する技術が要求される。すなわち、特許文献1乃至3に記載されたいわば空冷式の放熱機能は、回転体の回転の高速化によって増大する熱エネルギーの放出に対応した場合、容量の大きな回生抵抗が必要となり、構成の簡素化や製造コストの削減を実現することは困難である。
【0021】
また、特許文献4に記載の技術では、回生エネルギーをそのまま蓄積するため蓄積する部分の容量が大きくなってしまい、X線CT装置の規模を小さくすることは困難であった。
【0022】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単かつ規模の小さい構成で、回生抵抗に蓄積された回生エネルギーを有効利用することができるX線CT装置及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1に記載のX線CT装置は、被検体を載置する寝台と、前記寝台を駆動させる寝台駆動手段と、X線を被検体に向けて曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線発生手段が配置され、前記被検体の周囲を回転する回転体と、前記回転体を回転駆動させる駆動手段と、外部から入力される交流電圧を昇圧する昇圧手段と、前記回転体を回転駆動させる場合、昇圧された前記交流電圧を直流電圧に変換し前記駆動手段に送り、前記回転体が減速する場合、前記回転体の減速時において発生する回生電力を交流電圧に変換して少なくとも前記寝台駆動手段又はコンソールの少なくとも一方に電力を供給する変換手段と、前記AC/DC変換手段に送られてきた回生電力の電圧の位相を外部から入力される交流電圧の位相とあわさせる制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
請求項3に記載のX線CT装置の制御方法は、外部から入力される交流電圧を昇圧する昇圧段階と、昇圧された前記交流電圧を直流電圧に変換し回転体を回転駆動させる駆動手段に送る段階と、前記駆動手段により被検体の周囲で前記回転体を回転駆動させる段階と、前記回転体に配置されたX線発生手段からX線を前記被検体に向けて曝射するX線発生段階と、前記回転体に配置されたX線検出手段により前記被検体を透過したX線を検出するX線検出段階と、前記回転体の減速時において発生する回生電力を交流電圧に変換する段階と、前記交流電圧に変換された前記回生電力の電圧の位相を前記外部から入力される交流電圧の位相と一致させる制御段階と、前記位相を一致させた交流電圧を、寝台を駆動させる寝台駆動手段又はコンソールの少なくとも一方に供給する段階と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載のX線CT装置及び請求項3に記載のX線CT装置の制御方法によると、回生エネルギーをそのままX線CT装置内の他の機構、例えば寝台駆動部やコンソールに用いることができる。これにより、回生エネルギーを蓄積する必要がなくなり、規模を小さくすることが可能となる。また、回生エネルギーを他の機構に使用するため、エネルギーの再利用ができ、省エネに寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係るX線CT装置のブロック図
【図2】第1の実施形態に係るX線CT装置における回生電力の充電及び放出のフローチャートの図
【図3】第2の実施形態に係るX線CT装置のブロック図
【図4】第2の実施形態に係るX線CT装置におけるAC/DC変換器及びインバータ部の詳細を模式的に表わした図
【図5】第2の実施形態に係るX線CT装置における回生電力の利用のフローチャートの図
【図6】従来のX線CT装置の構成の概略を表わす正面透視図
【図7】従来のX線CT装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係るX線CT装置について説明する。図1は本実施形態に係るX線CT装置の機能を表すブロック図である。操作者はコンソール(不図示)等を使用してX線曝射の設定などを行なう。
【0028】
AC/DC変換器10は、インバータ部6を介してモータ4に接続されている。AC/DC変換器10は、商用電源の3相のAC電圧(交流電圧)の電力をDC電圧(直流電圧)の電力に変換してインバータ部6に送る。ここで、このAC/DC変換器10が本発明における「電源」にあたる。
【0029】
インバータ部6は、IGBT等のスイッチング素子から構成される。回転体5を回転駆動させる場合には、切替部110からの制御信号に基づいてAC/DC変換器10側から電力を供給するようにスイッチング素子が制御される。これにより、インバータ部6は、AC/DC変換器10から受けたDC電圧をモータ4に送信する。
【0030】
また、回転体5の減速時には、制御部100からの指示を受けて、切替部110からの制御信号に基づいて電気二重層キャパシタ101側に電力を供給するようにスイッチング素子が制御され、インバータ部6はモータ4から送られてくる回生電力を降圧チョッパ102に送る。このとき、インバータ部6からモータ4に送られる電圧は数百ボルトの高電圧である。
【0031】
さらに、電気二重層キャパシタ101への充電終了後、制御部100からの指示を受けて回転体5を回転させる場合には、インバータ部6は、昇圧チョッパ103から送られてきた電力をモータ4に送る。
【0032】
モータ4は、回転体5の回転駆動させる場合には、インバータ部6から受けたDC電圧の電力を用いて回転体5を駆動する。また、回転体5の減速時にはモータ4はAC電圧の回生電力を発生する。モータ4は発生したAC電圧をインバータ部6に送り、インバータ部6でDC電圧に変換して降圧チョッパ102に送る。
【0033】
ここで、インバータ部6及びモータ4を含めたものが本発明における「駆動手段」にあたる。
【0034】
回転体5が回転駆動することにより、回転体5に取り付けられているX線発生手段(図示せず)及びX線発生手段(図示せず)が被検体の周囲を回転する。この回転した状態でX線発生手段から寝台に載置された被検体に向けて、X線の曝射が行われる。さらに、X線検出手段により、被検体を通過したX線の検出が行われる。また、寝台は寝台駆動手段により駆動させられる。このX線の曝射による撮影が終わると、回転体5は減速を開始する。
【0035】
降圧チョッパ102は、インバータ部6から送られてくる回生電力を受けて、この電力の電圧を降圧する。この降圧は、例えば、降圧チョッパ102は、インバータ部6から受けたDC電圧をパルス波形に変換した後、トランスなどを使用して降圧し、再度DC電圧に戻すことで電力の電圧の降圧を行う。降圧チョッパ102で降圧した電力は、電気二重層キャパシタ101に充電される。この降圧チョッパ102が本発明における「降圧手段」にあたる。ここで本実施形態では、降圧する前の電圧であることや、電気二重層キャパシタ101の耐圧を低く抑えるために降圧しているが、この降圧の程度は降圧する前の電圧や電気二重層キャパシタ101の容量にあわせて降圧後の電圧を算出することが望ましい。
【0036】
電気二重層キャパシタ101は、コンデンサ、特にキャパシタで構成されており、その容量分だけ電圧が充電される。そこで、この電気二重層キャパシタ101の容量は、回転体の回転スピード、使用する電圧、及び降圧する割合などを基に算出された容量に対し、十分な容量を有するように構成されている。このため、電気二重層キャパシタ101は回生電力を飽和することなく充電することが可能である。また、充電される電力の電圧は降圧により低くなっているため、電気二重層キャパシタ101の耐圧が小さくてすむ。この電気二重層キャパシタ101は単純なコンデンサに比べ充電速度及び放電速度が速い、そのため送られてくる電力を全て充電でき、また必要な電力に対して十分な放電を行える。この電気二重層キャパシタ101は本発明における「蓄積手段」にあたる。
【0037】
制御部100は、CPU及びメモリなどの記憶手段で構成されており、さらに切替部110を有する。制御部100の記憶手段の中には予め電気二重層キャパシタ101における電源供給経路の切替の基準となる電圧の所定値(以下では「最低電圧」という。)を記憶している。制御部100は、コンソール(不図示)などからのX線撮影(X線CTスキャン)開始の入力を受けて、インバータ部6及びモータ4に回転体5の回転開始の指示を送る。そして、制御部100は、検出器より回転体5の回転速度を常時取得している。制御部100がX線撮影開始の入力を受けると、切替部110は、電気二重層キャパシタ101の電圧が最低電圧を下回っている場合には、インバータ部6及びモータ4への電力供給の経路を商用電源側、すなわちAC/DC変換手段10から電力供給を受ける経路にスイッチング素子の動作を切換える。また、切替部110は、電気二重層キャパシタ101の電圧が最低電圧」を上回っている場合、インバータ部6及びモータ4への電源供給の経路を電源二重層キャパシタから電力供給を受ける経路にスイッチング素子の動作を切り替える。ここで制御部100は本発明における「制御手段」にあたる。また、切替部110は本発明における「切替制御手段」にあたる。
【0038】
次に、制御部100は、コンソールなどからあらかじめ設定されたX線診断の終了のタイミングになると、回転体5を停止する指示をインバータ部6及びモータ4に送信する。回転体5は、制御部100は回転体5の回転数が0、すなわち回転体5が停止すると、昇圧チョッパ103を電力供給経路に接続させる。さらに、切替部110は、電気二重層キャパシタ101の電圧が際定電圧を下回ると、昇圧チョッパ103を電源供給ラインから切断し、商用電源側、すなわちAC/DC変換器10側の電源供給経路にスイッチング素子を切り替える。
【0039】
昇圧チョッパ103は、電気二重層キャパシタ101から送られてくる電圧を昇圧する。この昇圧は、例えば、昇圧チョッパ103は、電気二重層キャパシタ101から受けたDC電圧をパルス波形などの交流電圧に変換した後、トランスなどを使用して昇圧し、再度DC電圧に戻すことを行う。さらに、昇圧チョッパ103は昇圧した電圧をインバータ部6に送る。この昇圧チョッパ103が本発明における「昇圧手段」にあたる。
【0040】
次に、図2を参照して本実施形態に係るX線CT装置における、充電及び放電の動作について説明する。図2は本実施形態に係るX線CT装置における充電及び放電のフローチャートの図である。
【0041】
ステップS001:AC/DC変換器10は、入力されたAC電圧をDC電圧に変換する。
【0042】
ステップS002:インバータ部6は、制御部100に含まれる切替部110からの指示を受けて、モータ4側への電力供給路が形成されるようにスイッチング素子の動作を切替え、AC/DC変換器10から送られてきたDC電圧を、例えばPWM制御を行いAC電圧に変換してモータ4に送る。
【0043】
ステップS003:モータ4は、インバータ部6から送られてきたAC電圧を使用して回転体5を回転駆動させる。
【0044】
ステップS004:制御部100は、所定のタイミングに達したと判断したとき(X線撮影が終わったとき)に、インバータ部6及びモータ4に回転体5の停止の指示を送信する。これにより、回転体5は減速する。この減速によりモータ4において回生電力が発生する。
【0045】
ステップS005:切替部110は、降圧チョッパ102側への電力供給路が形成されるようにスイッチング素子の動作を切り替えて、インバータ部6は、モータ4から送られてくる回生電力を降圧チョッパ102に送る。
【0046】
ステップS006:降圧チョッパ102は、インバータ部6から送られてきた電力の電圧を降圧して電気二重層キャパシタに供給し、電気二重層キャパシタ101はこの電力を充電する。
【0047】
ステップS007:制御部100は、回転体5の回転速度が0、すなわち回転体5が停止した、又は所定の回転速度より低くなった場合は、ステップS008に進む。
【0048】
ステップS008:制御部100は、モータ4から降圧チョッパ102への電力供給経路が切断されて電力の供給が停止するように、インバータ部6のスイッチング素子の動作を切り替える。また、それと共に、制御部100は、電気二重層キャパシタ101に充電されている電力でモータ4を駆動するため、当該電力が昇圧チョッパ103を介してインバータ部6に供給されるように、昇圧チョッパ103及びインバータ部6のスイッチング素子の動作を切り替える。
【0049】
ステップS009:回転停止後に、回転体5を回転させる指示があったときは、昇圧チョッパ103で昇圧された直流電圧の電力をモータ4へ供給するため、降圧チョッパ102側への電力供給経路が形成されるようにインバータ部6内のスイッチング素子を駆動する。昇圧チョッパ103からモータ4への電力供給経路を介して電力供給が行われるが、その途中でDC電圧の電力はモータ駆動用にAC電圧の電力に変換される。モータ4はその送られてきた電力により回転体5を回転駆動する。
【0050】
ステップS010:制御部100は、電気二重層キャパシタ101の電圧が予め記憶している所定値を下回ったか否かを判断する。電気二重層キャパシタ101の電圧が所定値を下回っている場合にはステップS011に進む。
【0051】
ステップS011:制御部100に含まれる切替部110は、昇圧チョッパ103からの電力供給を停止し、商用電源側から電力の供給を受けるようにスイッチング素子の動作を切換える。
【0052】
以上で説明したように、本実施形態に係るX線CT装置は、回転体の減速により発生した回生電力の電圧を降圧した後、電気二重層キャパシタに充電している。これにより、電気二重層キャパシタの耐圧を小さく抑えることができる。また充電用のコンデンサとして電気二重層キャパシタを使用しているため、充電時間及び放電時間を短縮することができる。さらに、充電した電力を回転体の回転駆動に再利用するため省エネルギー化を測ることができる。
【0053】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係るX線CT装置について説明する。図3は本実施形態に係るX線CT装置の機能を表すブロック図である。ここで、図3において、図1と同一番号で表わされるものは同一の機能を有するものとする。操作者はコンソール(不図示)等を使用してX線曝射条件、スキャン条件、画像処理条件の設定などを行なう。
【0054】
昇圧手段201は、トランスなどで構成されている。昇圧手段201は、入力された電圧を所定の電圧に昇圧する。昇圧手段201は昇圧した電圧の電力をAC/DC変換器10に送る。
【0055】
AC/DC変換器10は、回転体5を回転駆動させる場合、昇圧手段201から送られてきたAC電圧をDC電圧に変換する。そして、AC/DC変換器10は、DC電圧をインバータ部6に送る。また、回転体5の減速時には、AC/DC変換器10はインバータ部6から送られてくるDC電圧の電力をAC電圧の電力に変換する。さらに、AC/DC変換器10は、変換し制御部200により位相の調整及びリップの除去などが行われたAC電圧を寝台駆動部やコンソールなどのその他機器203に送る。すなわち、ここで説明するAC/DC変換器10は、一方からAC電圧が送られてくるとDC電圧に変換して他方へ出力し、他方からDC電圧が送られてくるとAC電圧に変換して一方へ出力するものを指す。
【0056】
インバータ部6は、IGBTから構成される。インバータ部6は、AC/DC変換器10から送られてくるDC電圧をモータ駆動用のAC電圧の電力に変換してモータ4に送る。また、回転体5の減速時には、インバータ部6は、モータ4から発生した回生電力をAC/DC変換器10に送る。
【0057】
ここで、AC/DC変換器10とインバータ部6をさらに詳細に説明する。図4はAC/DC変換器10及びインバータ部6の詳細を模式的に表わした図である。図4のAC/DC変換器10では、昇圧手段201から送られてくるAC電圧を、ダイオードにより構成された整流回路部でDC電圧に変換する。インバータ部6は、トランジスタなどのスイッチング素子をスイッチング動作させることにより、AC/DC変換器10から送られてきたDC電圧をAC電圧の電力に変換してモータへ送る。これは一般的なモータ制御(PWM制御等)を用いる。また、インバータ部6は、モータ4から送られてくる回生電力の電圧が一定の電圧以上になった場合に、DC電圧ライン側の電力をAC電圧側のラインへ供給するように、AC/DC変換器10内のスイッチング素子の動作を切り替える。これにより、AC/DC変換器10は、インバータ部6から入力されたDC電圧をAC電圧に変換し、制御部200の制御を受けて入力波形の位相にあわせるようにスイッチングを行ない、その後AC電圧を入力ラインに戻す。このAC/DC変換器10が本発明における「変換手段」にあたる。
【0058】
モータ4は、インバータ部6から送られてくる電力を利用して回転体5を寝台に寝ている被検体を中心に回転駆動させる。さらに、回転体5の減速時には、モータ4は回生電力を発生し、該回生電力をインバータ部6に送る。この回生電力は回転体5を回転駆動させたときの電圧と同じ電圧の回生電力が発生する。このモータ4及びインバータ部6が本発明の「駆動手段」にあたる。
【0059】
回転体5が回転駆動するとともに、X線発生手段(不図示)から寝台に載置された被検体に向けて、X線の曝射が行われる。さらに、X線検出手段(不図示)により、被検体を通過したX線の検出が行われる。また、寝台は寝台駆動手段により駆動させられる。このX線の曝射による診断が終わると、回転体5は減速を開始する。
【0060】
位相検出器202は、昇圧手段201に送られるAC電圧の位相(以下、「第1位相」という)、及び、インバータ部6から送られAC/DC変換器10によってAC電圧に変換された電圧の位相(以下、「第2位相」という)を、それぞれ検出する。
【0061】
制御部200は、コンソール(不図示)などからの開始の入力を受けて、インバータ部6及びモータ4に回転体5の回転開始の指示を送る。そして、制御部200は、回転体検出器により回転体5の回転速度を常時検出している。
【0062】
次に、制御部200は、あらかじめ設定されているタイミングになると、回転体5を停止する指示をインバータ部6及びモータ4に送信する。さらに、制御部200は、位相検出器202によって検出された第1位相及び第2位相を受けて、それぞれの位相差が0になるように、AC/DC変換器10内のスイッチング素子の動作タイミングを変えることにより、出力されるAC電圧の第2位相を制御する。さらに、制御部200は、AC/DC変換器10でAC電圧に変換された第2位相のリップルを取り除く。この制御部200が本発明における「制御手段」にあたる。
【0063】
図3における、寝台駆動部及びコンソールを含むその他機器203は、図3に示されているモータ4や回転体5以外の電力を使用して駆動する機器を示す。このその他機器203は、通常は外部から入力された電圧をそのまま使用して駆動する。そして、回転体5が減速しモータ4で回帰電圧が発生した場合、AC/DC変換器10でAC電圧に変換され、制御部200で位相が第1位相に合わされた電圧が、外部から入力された電力とともに、その他機器203に送られる。この場合AC/DC変換器10から送られてくる電力は外部から入力された電圧よりも高いため、優先的にその他機器203を駆動することに使用される。
【0064】
次に、図5を参照して本実施形態に係るX線CT装置における、回生電力の利用の動作について説明する。図5は本実施形態に係るX線CT装置における回生電力の利用のフローチャートの図である。
【0065】
ステップS101:昇圧手段201は、外部から入力されたAC電圧を昇圧する。
【0066】
ステップS102:AC/DC変換器10は、昇圧されたAC電圧をDC電圧に変換する。
【0067】
ステップS103:制御部200からの回転体5を回転させる指示を受けて、AC/DC変換器10からインバータ部6を介して送られてくるDC電圧を使用して、モータ4は回転体5を回転駆動させる。
【0068】
ステップS104:制御部200は、撮影終了時などの所定タイミングに達すると、インバータ部6及びモータ4に回転体5の停止の指示を出す。
【0069】
ステップS105:回転体5が減速し、モータ4が回生電力を発生する。
【0070】
ステップS106:AC/DC変換器10は、回生電力のDC電圧を、AC電圧に変換する。
【0071】
ステップS107:制御部200は、変換されたAC電圧の位相と入力されたAC電圧の位相のずれをなくし、さらに、該AC電圧のリップルを取る。
【0072】
ステップS108:AC/DC変換器10は、寝台駆動手段やコンソールなどのその他の機器203に位相が調整されリップが取られたAC電圧を送り、その他の機器203を駆動する。
【0073】
ステップS109:制御部200は、回転体5の回転が止まったか否かを判断する。回転が止まった場合にはステップS110に進む。
【0074】
ステップS110:制御部200は、AC/DC変換器10に対しDC電圧からAC電圧への変換を停止させる制御を行う。
【0075】
以上で説明したように、本実施形態に係るX線CT装置は、回転体の減速により発生した回生電力を、その他の機器の駆動に使用することができる。これにより、回生電力を充電するための蓄積手段を設ける必要がなくなり、X線CT装置の大きさを小さくすることができる。また、他の寝台駆動手段やコンソールなどに回生電力を使用することができるため、効率よく発生した電力を利用でき、より省エネに寄与することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 X線CT装置
2 筐体
3 撮影口
4 モータ
5 回転体
6 インバータ部
7 回生抵抗
8 X線管
9 検出器
10 AC/DC変換器
11 信号処理装置
100 制御部
101 電気二重層キャパシタ
102 降圧チョッパ
103 昇圧チョッパ
110 切替部
200 制御部
201 昇圧手段
202 位相検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載置する寝台と、
前記寝台を駆動させる寝台駆動手段と、
X線を前記被検体に向けて曝射するX線発生手段と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線発生手段が配置され、前記被検体の周囲を回転する回転体と、
前記回転体を回転駆動させる駆動手段と、
外部から入力される交流電圧を昇圧する昇圧手段と、
前記回転体を回転駆動させる場合、昇圧された前記交流電圧を直流電圧に変換し前記駆動手段に送り、前記回転体が減速する場合、前記回転体の減速時において発生する回生電力を交流電圧に変換して前記寝台駆動手段及びコンソールの少なくとも一方に電力を供給する変換手段と、
前記変換手段に送られてきた回生電力の電圧の位相を前記外部から入力される交流電圧の位相とあわせる制御手段と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転体の回転数を検出し、前記回転体の回転が止まった後に、前記変換手段から少なくとも前記寝台駆動手段及び前記画像処理手段への電力の供給を切断することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
外部から入力される交流電圧を昇圧する昇圧段階と、
昇圧された前記交流電圧を直流電圧に変換し回転体を回転駆動させる駆動手段に送る段階と、
前記駆動手段が被検体の周囲で前記回転体を回転駆動させる段階と、
前記回転体に配置されたX線発生手段からX線を前記被検体に向けて曝射するX線発生段階と、
前記回転体に配置されたX線検出手段により前記被検体を透過したX線を検出するX線検出段階と、
前記回転体の減速時において発生する回生電力を交流電圧に変換する段階と、
前記交流電圧に変換された前記回生電力の電圧の位相を前記外部から入力される交流電圧の位相と一致させる制御段階と、
前記位相を一致させた交流電圧を、寝台を駆動させる寝台駆動手段及びコンソールの少なくとも一方に供給する段階と、
を有することを特徴とするX線CT装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−143655(P2012−143655A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109137(P2012−109137)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2007−225213(P2007−225213)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】