説明

X線CT装置

【課題】経過観察時のスキャン断面位置を、診断時のボリュームデータを基に設定された断面位置に正確に位置合わせできるX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置1は、診断時のスキャノ画像を生成する診断時スキャノ画像生成部62と、スキャノ画像を基にスキャン条件を設定しボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部64と、断面位置設定部65によりボリュームデータを基に設定された断面位置を記憶装置に記録する断面位置記録部66と、経過観察時のスキャノ画像を生成する経過観察時スキャノ画像生成部69と、天板を移動し経過観察時のスキャノ画像と診断時のスキャノ画像を位置合わせする位置合わせ部70と、記憶装置から断面位置を取得する断面位置取得部71と、経過観察時のスキャノ画像を基にスキャン条件を設定し取得された断面位置の画像を生成する経過観察時断面データ生成部73と、画像を表示する表示装置45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、X線を被検体に照射して得られるデータを基に画像を再構成するX線CT(computerized tomography)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を透過したX線の強度に基づいて、被検体についての情報を画像により提供するものであり、疾病の診断・治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。
【0003】
X線CT装置によって肺野を含む領域をスキャンして取得されたデータは、肺気腫解析アプリケーションを用いた解析に用いられる。肺気腫解析アプリケーションを用いた解析を行なうために、まず、X線CT装置によって肺野を含む領域をスキャンして肺野を含む領域のボリュームデータが取得される。そして、そのボリュームデータを用いて症状が診断される。続いて、その症状の経過観察を行なうために、X線CT装置によって肺野を含む領域がスキャンされる。経過観察のためのスキャンは、疾患によってはボリュームスキャンではなく、断面スキャンで事足りる場合が多くある。
【0004】
よって、医師や検査技師等の操作者は、経過観察のためのスキャンを行なうにあたって、どの断面をスキャンするのかを、診断用のボリュームデータを基に設定するか、又は、経過観察の断面スキャンに先立つスキャノ画像を基に設定していた。
【0005】
なお、本発明に関連する特許文献として、次の特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2009−148344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術によると、経過観察時の断面スキャンの断面位置が、診断時のボリュームデータを基に設定された断面画像の断面位置からずれることがあった。また、断面スキャン時の設定を手動で行なうので、検査者の作業効率が悪かった。
【0008】
また、断面スキャン時の断面と、診断用のボリュームデータを基に設定した断面とのずれが大きいと断面スキャンのやり直しが発生するので、患者に過剰な被曝を与えることにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態のX線CT装置は、上述した課題を解決するために、撮影位置設定用画像を用いて撮影位置の設定を行なうX線CT装置において、肺の画像解析アプリケーションで設定された、診断に用いられた位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報に基づいて、前記撮影位置設定用画像上に撮影位置を設定する撮影位置設定手段と、前記設定された撮影位置に基づいて、断層撮影を行なうスキャン制御手段と、を有する。
【0010】
また、本実施形態のX線CT装置は、上述した課題を解決するために、X線源と、X線検出器と、被検体を載置する載置手段とを備えるスキャン実行手段と、前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体の第1の撮影位置設定用画像のデータを生成する第1撮影位置設定用画像生成手段と、前記第1の撮影位置設定用画像を基に前記被検体のボリュームスキャンを行なうためのボリュームスキャン条件を設定し、前記ボリュームスキャン条件を基に前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体のボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータを基に断面位置を設定する断面位置設定手段と、前記断面位置を記憶装置に記録する記録手段と、前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体の第2の撮影位置設定用画像のデータを生成する第2撮影位置設定用画像生成手段と、前記第2の撮影位置設定用画像を、前記第1の撮影位置設定用画像に位置合わせすることで、前記第2の撮影位置設定用画像の移動に従って前記載置手段を移動させる位置合わせ手段と、前記記憶装置から前記断面位置を取得する取得手段と、前記第2の撮影位置設定用画像を基に、前記取得された断面位置の断面スキャンを行なうための断面スキャン条件を設定し、前記断面スキャン条件を基に前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記取得された断面位置の断面画像のデータを生成する断面データ生成手段と、前記生成された断面画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のX線CT装置を示すハードウェア構成図。
【図2】本実施形態のX線CT装置の機能を示すブロック図。
【図3】表示装置に表示される3次元画像と、3つの断面位置との関係を示す図。
【図4】本実施形態のX線CT装置を用いた診断時の動作を示すフローチャート。
【図5】本実施形態のX線CT装置を用いた経過観察時の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のX線CT装置及び医用画像処理装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態のX線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0013】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。
【0014】
加えて、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本実施形態のX線CT装置は、従来からの一管球型のX線CT装置であっても、多管球型のX線CT装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型のX線CT装置として説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のX線CT装置1を示すハードウェア構成図である。
【0016】
図1は、本実施形態のX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、大きくは、スキャナ装置11及び画像処理装置(コンソール)12によって構成される。X線CT装置1のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、患者Oに関するX線の透過データを生成するために構成される。一方、画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
【0017】
X線CT装置1のスキャナ装置11は、X線管(X線源)21、絞り22、X線検出器23、DAS(data acquisition system)24、回転部25、高電圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、天板30、天板駆動装置31、及びコントローラ32を設ける。
【0018】
X線管21は、高電圧電源26から供給された管電圧に応じて金属製のターゲットに電子線を衝突させることでX線を発生させ、X線検出器23に向かって照射する。X線管21から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。X線管21は、高電圧電源26を介したコントローラ32による制御によって、X線の照射に必要な電力が供給される。
【0019】
絞り22は、絞り駆動装置27によって、X線管21から照射されるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置27によって絞り22の開口を調整することによって、スライス方向のX線照射範囲を変更できる。
【0020】
X線検出器23は、チャンネル方向に複数、及び列(スライス)方向に単数の検出素子を有する1次元アレイ型の検出器である。又は、X線検出器23は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数、及び列方向に複数の検出素子を有する2次元アレイ型の検出器(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出器23は、X線管21から照射され、患者Oを透過したX線を検出する。
【0021】
DAS24は、X線検出器23の各X線検出素子が検出する透過データの信号を増幅してデジタル信号に変換する。DAS24の出力データは、スキャナ装置11のコントローラ32を介して画像処理装置12に供給される。
【0022】
回転部25は、X線管21、絞り22、X線検出器23、及びDAS24を一体として保持する。回転部25は、X線管21とX線検出器23とを対向させた状態で、X線管21、絞り22、X線検出器23、及びDAS24を一体として患者Oの周りに回転できるように構成されている。なお、回転部25の回転中心軸と平行な方向をz軸方向、そのz軸方向に直交する平面をx軸方向、y軸方向で定義する。
【0023】
高電圧電源26は、コントローラ32による制御によって、X線の照射に必要な電力をX線管21に供給する。
【0024】
絞り駆動装置27は、コントローラ32による制御によって、絞り22におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する機構を有する。
【0025】
回転駆動装置28は、コントローラ32による制御によって、回転部25がその位置関係を維持した状態で空洞部の周りを回転するように回転部25を回転させる機構を有する。
【0026】
天板30は、患者Oを載置可能である。
【0027】
天板駆動装置31は、コントローラ32による制御によって、天板30をy軸方向に沿って昇降動させると共に、z軸方向に沿って進入/退避動させる機構を有する。回転部25の中央部分は開口を有し、その開口部の天板30に載置された患者Oが挿入される。
【0028】
コントローラ32は、CPU(central processing unit)、及びメモリによって構成される。コントローラ32は、X線検出器23、DAS24、高電圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、及び天板駆動装置31等の制御を行なってスキャンを実行させる。
【0029】
X線CT装置1の画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、ネットワーク(local area network)Nと相互通信可能である。画像処理装置12は、大きくは、CPU41、メモリ42、HDD(hard disc drive)43、入力装置44、及び表示装置45等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、画像処理装置12を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、画像処理装置12は、記憶媒体ドライブ46を具備する場合もある。
【0030】
CPU41は、半導体で構成された電子回路が複数の端子を持つパッケージに封入されている集積回路(LSI)の構成をもつ制御装置である。医師や検査技師等の操作者によって入力装置44が操作等されることにより指令が入力されると、CPU41は、メモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HDD43に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されてHDD43にインストールされたプログラム、又は記憶媒体ドライブ46に装着された記憶媒体から読み出されてHDD43にインストールされたプログラムを、メモリ42にロードして実行する。
【0031】
メモリ42は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備える構成をもつ記憶装置である。メモリ42は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いられたりする。
【0032】
HDD43は、磁性体を塗布又は蒸着した金属のディスクが着脱不能で内蔵されている構成をもつ記憶装置である。HDD43は、画像処理装置12にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、投影データや画像データを記憶する記憶装置である。また、OSに、操作者に対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置44によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0033】
入力装置44は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0034】
表示装置45は、図示しない画像合成回路、VRAM(video random access memory)、及びディスプレイ等を含んでいる。画像合成回路は、画像データに種々のパラメータの文字データ等を合成した合成データを生成する。VRAMは、合成データを、ディスプレイに表示する表示画像データとして展開する。ディスプレイは、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成され、表示画像データを表示画像として順次表示する。
【0035】
記憶媒体ドライブ46は、記憶媒体の着脱が可能となっており、記憶媒体に記憶されたデータ(プログラムを含む)を読み出してバス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記憶媒体に書き込む。このような記憶媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0036】
画像処理装置12は、スキャナ装置11のDAS24から入力された生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理(前処理)を行なって投影データを生成してHDD43等の記憶装置に記憶させる。また、画像処理装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。画像処理装置12は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。画像処理装置12は、補正された投影データを基にセグメント再構成することで画像データを生成してHDD43等の記憶装置に記憶させる。
【0037】
図2は、本実施形態のX線CT装置1の機能を示すブロック図である。
【0038】
図1に示すCPU41(又は、コントローラ32)がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、図2に示すように、診断時スキャノスキャン制御部61、診断時スキャノ画像生成部62、ボリュームスキャン制御部63、ボリュームデータ生成部64、断面位置設定部65、断面位置記録部66、診断時断面データ生成部67、経過観察時スキャノスキャン制御部68、経過観察時スキャノ画像生成部69、位置合わせ部70、断面位置取得部71、断面スキャン制御部72、及び経過観察時断面データ生成部73として機能する。なお、X線CT装置1を構成する各構成要素61乃至73は、CPU41がプログラムを実行することによって機能するものとするが、その場合に限定されるものではない。X線CT装置1を構成する各構成要素61乃至73の全部又は一部をハードウェアとしてX線CT装置1に設ける場合であってもよい。
【0039】
診断時スキャノスキャン制御部61は、患者Oの診断時において、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、天板30上の患者Oをスキャノスキャン(撮影位置設定用画像を生成するためのスキャン)する機能を有する。
【0040】
診断時スキャノ画像生成部62は、患者Oの診断時において、診断時スキャノスキャン制御部61のスキャノスキャンによって取得されたデータを基に、診断時のスキャノ画像(診断時の撮影位置設定用画像)のデータを生成する機能を有する。診断時スキャノ画像生成部62によって生成されたスキャノ画像は、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0041】
ボリュームスキャン制御部63は、患者Oの診断時において、診断時スキャノ画像生成部62によって生成されたスキャノ画像を基に患者Oの診断部位(検査部位)、例えば肺を含む領域のボリュームスキャンを行なうためのボリュームスキャン条件(撮影条件)を設定する機能と、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、ボリュームスキャン条件に従って天板30上の患者Oの肺を含む領域をボリュームスキャンする機能とを有する。
【0042】
ボリュームデータ生成部64は、患者Oの診断時において、ボリュームスキャン制御部63のボリュームスキャンによって取得されたデータを再構成することによって、ボリュームデータを生成する機能を有する。ボリュームデータ生成部64によって生成されたボリュームデータは、3次元画像として表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0043】
断面位置設定部65は、患者Oの診断時において、ボリュームデータ生成部64によって生成される(又は記憶装置から取得される)ボリュームデータを基に、断面位置を設定する機能を有する。以下、断面位置設定部65によって設定される断面位置を、3つのアキシャル断面とする場合を説明するが、その場合に限定されるものではない。断面位置設定部65によって設定される断面位置は、コロナル断面やサジタル断面等であってもよいし、また、3つの断面位置に限定されるものでもない。
【0044】
患者Oの肺気腫の診断を行なう場合、肺気腫解析アプリケーション(肺気腫の画像解析アプリケーション)が利用される。肺気腫解析アプリケーションは、肺全体や肺気腫部分の面積、体積、及びこれらの比率等の画像解析値を求めるものである。患者Oの肺気腫の診断を行なう場合、肺気腫解析アプリケーションを利用して、ボリュームデータを基に、画像処理における肺気腫診断のガイドラインにより決められた、(1)大動脈弓上縁の断面位置と、(2)気管支左右分岐の断面位置と、(3)右横隔膜上10−30mmの断面位置との3つの断面画像を用いる必要がある。よって、断面位置設定部65は、大動脈弓上縁の断面位置と、気管支左右分岐の断面位置と、右横隔膜上10−30mmの断面位置とを設定する。なお、断面位置設定部65は、肺気腫診断のガイドラインにより決められた3つの断面位置を自動的に設定する場合もあるし、GUIを利用して半自動的に設定する場合もある。
【0045】
図3は、表示装置45に表示される3次元画像と、3つの断面位置との関係を示す図である。
【0046】
図3は、患者Oの肺を含む領域のボリュームデータがレンダリングされた3次元画像と、3つの断面位置である大動脈弓上縁の断面位置P1と、気管支左右分岐の断面位置P2と、右横隔膜上10−30mmの断面位置P3とを示す。図3に示す患者Oの肺野には、肺気腫が点在している。
【0047】
図2に示す断面位置記録部66は、患者Oの診断時において、断面位置設定部65によって設定された、断面位置P1,P2,P3を、z軸方向の座標としてHDD43等の記憶装置に記録する機能を有する。
【0048】
診断時断面データ生成部67は、ボリュームデータ生成部64によって生成されたボリュームデータを基に、断面位置設定部65によって設定された3つの断面位置P1,P2,P3の断面画像のデータを生成する機能を有する。診断時断面データ生成部67によって生成された断面画像は、表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0049】
診断を行なう操作者は、ボリュームデータ生成部64によって生成されたボリュームデータに基づく3次元画像や、診断時断面データ生成部67によって生成された3つの断面位置P1,P2,P3における3つの断面画像等を観察し、診断、すなわち、肺野に占める肺気腫の量に基づくスコアリングを実施する。
【0050】
経過観察時スキャノスキャン制御部68は、患者Oの診断後の経過観察時において、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、天板30上の患者Oをスキャノスキャンする機能を有する。
【0051】
経過観察時スキャノ画像生成部69は、患者Oの経過観察時において、経過観察時スキャノスキャン制御部68のスキャノスキャンによって取得されたデータを基に、経過観察時のスキャノ画像(経過観察時の撮影位置設定用画像)のデータを生成する機能を有する。経過観察時スキャノ画像生成部69によって生成されたスキャノ画像は、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0052】
位置合わせ部70は、患者Oの経過観察時において、経過観察時スキャノ画像生成部69によって生成された経過観察時のスキャノ画像を、診断時スキャノ画像生成部62によって生成された診断時のスキャノ画像に位置合わせすることで、経過観察時のスキャノ画像の移動に従って天板30を移動させる機能を有する。位置合わせ部70による経過観察時のスキャノ画像の位置合わせは、両スキャノ画像中の基準点を合わせる自動的な位置合わせであってもよいし、GUIを利用した手動的な位置合わせであってもよい。
【0053】
断面位置取得部71は、患者Oの経過観察時において、断面位置記録部66によって記録された3つの断面位置P1,P2,P3のz軸方向の座標を、記憶装置から取得する(読み出す)機能を有する。
【0054】
断面スキャン制御部72は、経過観察時スキャノ画像生成部69によって生成されたスキャノ画像を基に、断面位置取得部71によって取得された3つの断面位置P1,P2,P3のz軸座標の断面スキャンを行なうための断面スキャン条件(撮影条件)を設定する機能と、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、断面スキャン条件に従って天板30上の患者Oの3つの断面位置P1,P2,P3を断面スキャンする機能とを有する。
【0055】
経過観察時断面データ生成部73は、患者Oの経過観察時において、断面スキャン制御部72の断面スキャンによって取得されたデータを再構成することによって、断面画像のデータを生成する機能を有する。経過観察時断面データ生成部73によって生成された断面画像は、表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0056】
診断を行なう操作者は、経過観察時断面データ生成部73によって生成された、3つの断面位置P1,P2,P3相当の3つの断面位置における3つの断面画像等を観察し、診断、すなわち、肺野に占める肺気腫の量に基づくスコアリングを実施する。また、診断を行なう操作者は、3つの断面位置における3つの断面画像や、肺気腫の量に基づくスコアリングの結果を基にレポートを作成する。
【0057】
続いて、本実施形態のX線CT装置1を用いた診断時の動作を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0058】
まず、X線CT装置1は、患者Oの診断時において、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、天板30上の患者Oをスキャノスキャンする(ステップST1)。X線CT装置1は、患者Oの診断時において、ステップST1のスキャノスキャンによって取得されたデータを基に、診断時のスキャノ画像のデータを生成する(ステップST2)。ステップST2によって生成されたスキャノ画像は、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0059】
X線CT装置1は、患者Oの診断時において、ステップST2によって生成されたスキャノ画像を基に患者Oの肺を含む領域のボリュームスキャンを行なうためのボリュームスキャン条件を設定し、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、ボリュームスキャン条件に従って天板30上の患者Oの肺を含む領域をボリュームスキャンする(ステップST3)。X線CT装置1は、患者Oの診断時において、ステップST3のボリュームスキャンによって取得されたデータを再構成することによって、ボリュームデータを生成する(ステップST4)。ステップST4によって生成されたボリュームデータは、3次元画像として表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0060】
X線CT装置1は、患者Oの診断時において、ボリュームデータ生成部64(又は記憶装置)から取得されるボリュームデータを基に、3つの断面位置を設定する(ステップST5)。患者Oの肺気腫の診断を行なう場合、ボリュームデータを基に、画像処理における肺気腫診断のガイドラインにより決められた、(1)大動脈弓上縁の断面位置と、(2)気管支左右分岐の断面位置と、(3)右横隔膜上10−30mmの断面位置との3つの断面画像を用いる必要がある。よって、ステップST5では、大動脈弓上縁の断面位置と、気管支左右分岐の断面位置と、右横隔膜上10−30mmの断面位置(図3に図示)とを設定する。
【0061】
X線CT装置1は、患者Oの診断時において、断面位置設定部65によって設定された、断面位置P1,P2,P3を、z軸方向の座標としてHDD43等の記憶装置に記録する(ステップST6)。
【0062】
X線CT装置1は、ステップST4によって生成されたボリュームデータを基に、ステップST5によって設定された3つの断面位置P1,P2,P3の断面画像のデータを生成する(ステップST7)。ステップST7によって生成された断面画像は、表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0063】
診断を行なう操作者は、ステップST4によって生成されたボリュームデータに基づく3次元画像や、ステップST7によって生成された3つの断面位置P1,P2,P3における3つの断面画像等を観察し、診断、すなわち、肺野に占める肺気腫の量に基づくスコアリングを実施する。
【0064】
続いて、本実施形態のX線CT装置1を用いた経過観察時の動作を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0065】
まず、X線CT装置1は、患者Oの診断後の経過観察時において、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、天板30上の患者Oをスキャノスキャンする(ステップST11)。X線CT装置1は、患者Oの経過観察時において、ステップST11のスキャノスキャンによって取得されたデータを基に、経過観察時のスキャノ画像のデータを生成する(ステップST12)。ステップST12によって生成されたスキャノ画像は、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0066】
X線CT装置1は、患者Oの経過観察時において、ステップST12によって生成された経過観察時のスキャノ画像を、ステップST2によって生成された診断時のスキャノ画像に位置合わせすることで、経過観察時のスキャノ画像の移動に従って天板30を移動させる(ステップST13)。
【0067】
X線CT装置1は、患者Oの経過観察時において、ステップST6によって記録された3つの断面位置P1,P2,P3のz軸方向の座標を、記憶装置から取得する(読み出す)(ステップST14)。
【0068】
X線CT装置1は、ステップST12によって生成されたスキャノ画像を基に、ステップST14によって取得された3つの断面位置P1,P2,P3のz軸座標の断面スキャンを行なうための断面スキャン条件を設定し、スキャナ装置11のコントローラ32を制御して、断面スキャン条件に従って天板30上の患者Oの3つの断面位置P1,P2,P3を断面スキャンする(ステップST15)。X線CT装置1は、患者Oの経過観察時において、ステップST15の断面スキャンによって取得されたデータを再構成することによって、断面画像のデータを生成する(ステップST16)。経過観察時断面データ生成部73によって生成された断面画像は、表示装置45に表示されたり、HDD43等の記憶装置に記憶される。
【0069】
診断を行なう操作者は、ステップST16によって生成された、3つの断面位置P1,P2,P3相当の3つの断面位置における3つの断面画像等を観察し、診断、すなわち、肺野に占める肺気腫の量に基づくスコアリングを実施する。また、診断を行なう操作者は、3つの断面位置における3つの断面画像や、肺気腫の量に基づくスコアリングの結果を基にレポートを作成する。
【0070】
なお、図5に示すフローチャートを用いて説明した、X線CT装置1を用いた経過観察時の動作は、経過観察の都度行なわれる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態のX線CT装置1によると、経過観察時のスキャン断面の断面位置を、診断時のボリュームデータを基に設定された断面画像の断面位置に正確に精度よく位置合わせすることができる。これにより、本実施形態のX線CT装置1によると、経過観察時のスキャン断面の断面位置の、診断時のボリュームデータを基に設定された断面画像の断面位置からの位置のずれを大幅に縮小することができる。もって、位置ずれに基づく患者Oの再スキャンを回避でき、患者Oに対する過剰な被曝を回避することができる。また、本実施形態のX線CT装置1によると、経過観察時におけるスキャン断面の断面位置を設定する際の作業性を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態のX線CT装置1は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、本実施形態のX線CT装置1に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0073】
1 X線CT装置
11 スキャナ装置
12 画像処理装置
32 コントローラ
41 CPU
44 入力装置
45 表示装置
61 診断時スキャノスキャン制御部
62 診断時スキャノ画像生成部
63 ボリュームスキャン制御部
64 ボリュームデータ生成部
65 断面位置設定部
66 断面位置記録部
67 診断時断面データ生成部
68 経過観察時スキャノスキャン制御部
69 経過観察時スキャノ画像生成部
70 位置合わせ部
71 断面位置取得部
72 断面スキャン制御部
73 経過観察時断面データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影位置設定用画像を用いて撮影位置の設定を行なうX線CT装置において、
肺の画像解析アプリケーションで設定された、診断に用いられた位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記撮影位置設定用画像上に撮影位置を設定する撮影位置設定手段と、
前記設定された撮影位置に基づいて、断層撮影を行なうスキャン制御手段と、
を有するX線CT装置。
【請求項2】
X線源と、X線検出器と、被検体を載置する載置手段とを備えるスキャン実行手段と、
前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体の第1の撮影位置設定用画像のデータを生成する第1撮影位置設定用画像生成手段と、
前記第1の撮影位置設定用画像を基に前記被検体のボリュームスキャンを行なうためのボリュームスキャン条件を設定し、前記ボリュームスキャン条件を基に前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体のボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータを基に断面位置を設定する断面位置設定手段と、
前記断面位置を記憶装置に記録する記録手段と、
前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記被検体の第2の撮影位置設定用画像のデータを生成する第2撮影位置設定用画像生成手段と、
前記第2の撮影位置設定用画像を、前記第1の撮影位置設定用画像に位置合わせすることで、前記第2の撮影位置設定用画像の移動に従って前記載置手段を移動させる位置合わせ手段と、
前記記憶装置から前記断面位置を取得する取得手段と、
前記第2の撮影位置設定用画像を基に、前記取得された断面位置の断面スキャンを行なうための断面スキャン条件を設定し、前記断面スキャン条件を基に前記スキャン実行手段の動作を制御して、前記取得された断面位置の断面画像のデータを生成する断面データ生成手段と、
前記生成された断面画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、
を有するX線CT装置。
【請求項3】
前記ボリュームデータに基づく3次元画像のデータと、前記ボリュームデータに基づく、前記設定された断面位置の断面画像のデータとをそれぞれ生成し、前記3次元画像及び前記断面画像を前記表示装置に表示させる手段をさらに有する請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記ボリュームデータ生成手段は、前記被検体として、肺を含む領域のボリュームデータを生成する構成とする請求項2又は3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記断面位置設定手段は、前記断面位置として、大動脈弓上縁のアキシャル断面位置と、気管支左右分岐のアキシャル断面位置と、右横隔膜上10−30mmのアキシャル断面位置とをそれぞれ設定する構成とする請求項4に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−217508(P2012−217508A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83574(P2011−83574)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】