説明

X線CT装置

【課題】撮影データ量の大幅な低減と、医用画像の高精細化が可能なX線CT装置を提供すること。
【解決手段】実施形態のX線CT装置は、X線管が被検体を中心に回転可能に配置された回転部と、前記回転部の回転を制御する回転制御部と、前記回転部の回転運動を支える固定部と、固定部と回転部が相互通信可能にLEDとPDが配置された光送受信部と、前記光受信部の通信テストスケジュールを実行する固定部側制御部および回転部側制御部と、前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の送信出力を規定の範囲内で可変するLED駆動電流可変部と、前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の受信感度を規定の範囲内で可変するPDアンプ増幅率可変部と、前記通信テストで前記光送受信部の通信エラーを検出する通信異常検出部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のX線CT装置は、高精細な医用画像を取得するために、ガントリの高速回転化が進んでいる。このためX線検出器から再構成ユニットに送信する撮影データ量が飛躍的に増加している。X線CT装置は、X線管と対向するX線検出部が回転する回転部で撮影データを収集し、この撮影データを再構成ユニットのある固定部へ送信するために、光を用いた非接触データ伝送装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この非接触データ伝送装置は、一般的に送信にLED(Light Emitting Diode)、受信にPD(Photodiode)を使用しているが、塵、埃などの汚れにより発光性能、受光性能が劣化する。またレンズ系に結露などの症状をもたらす場合もある。塵、埃などによる性能劣化は、病院の設置環境と使用期間など依存するため、単純に予測できないという問題がある。また、LED、PDの光部品自体の劣化も当然生じうる。
【0004】
従来は、通信エラーが生じてから部品の交換などのメインテナンスを行っていたが、そでは装置がシステムダウンして使用不可となるため、緊急時の患者などでCT検査ができないという致命的な問題を生じてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−75489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記課題を解決し、システムダウンが生じる前に通信部品の性能劣化判定が行えるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態のX線CT装置は、X線管が被検体を中心に回転可能に配置された回転部と、前記回転部の回転を制御する回転制御部と、前記回転部の回転運動を支える固定部と、固定部と回転部が相互通信可能にLEDとPDが配置された光送受信部と、前記光受信部の通信テストスケジュールを実行する固定部側制御部および回転部側制御部と、前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の送信出力を規定の範囲内で可変するLED駆動電流可変部と、前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の受信感度を規定の範囲内で可変するPDアンプ増幅率可変部と、前記通信テストで前記光送受信部の通信エラーを検出する通信異常検出部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるX線CT装置の基本的構成図。
【図2】同実施形態のX線CT装置の通信テスト機能を示すブロック構成図。
【図3】同実施形態における非接触データ伝送装置のブロック図。
【図4】同実施形態における通信テストのフローチャート図。
【図5】同実施形態における通信テストパターンの一例。
【図6】同実施形態の通信テストの結果を示す一例。
【図7】同実施形態における劣化部品の特定例。
【図8】同実施形態における通信テスト結果を表示する画面例。
【図9】同実施形態におけるメインテナンスサービスへの連絡表示例。
【図10】同実施形態における他の通信テスト項目の例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について図1から図10に示す図面を参照しながら詳細に説明する。なお、X線CT装置はX線管とX線検出部とが対向して配置され、被検体の周囲を共に回転するタイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線源のみが被検体の周囲を回転するタイプなど様々なタイプがあるが、本実施形態は光を伝送媒体とする非接触データ伝送装置を有するものであれば、いずれのタイプにも適用可能である。本実施形態の説明では、X線管とX線検出部とが共に回転するタイプについて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態におけるX線CT装置を示している。実施形態のX線CT装置は、被検体P(患者)をX線でスキャンするための架台(ガントリ)11と、被検体Pを架台11内に移動する寝台12と、X線CT装置全体を制御するシステム制御部13と、架台11から得られた投影データを処理し、医用画像を処理する画像処理部14とを有する。
【0011】
架台11は、被検体P(患者)を中心にして回転運動する回転部15と、回転部15を支持する固定部16から構成される。回転部15には、X線を発生するX線管111、被検体P(患者)を透過したX線を検出するX線検出器112、X線検出器112の検出データをデジタルデータに変換して収集するデータ収集装置(DAS:Data Acquisition System)113、およびデータ収集装置113で取得された投影データを回転部15外の画像処理部14へ非接触で伝送する非接触データ伝送装置114から構成される。
【0012】
システム制御部13は、X線を発生するためにX線管111に印加する電圧を発生する高電圧発生装置115、スキャン条件に基づいて回転部15を回転させる回転駆動部116、および被検体Pが横臥する寝台12をガントリ11内に移動させる寝台駆動部117を制御する。
【0013】
画像処理部14は、非接触データ伝送装置114から転送された投影データから、断面像を再構成するなどの診断に必要な医用画像を再構成するための画像処理を行い、この医用画像は、画像データ保存部141に保存するとともにコンソールの表示部131などに表示される。システム制御部13はさらに操作者がシステム制御を行うための操作部132を備える。
【0014】
図2に示すように、本実施形態のX線CT装置は上記一般的な装置構成に加え、非接触データ伝送装置114を構成する光部品の性能劣化状態を判定できる通信テストを行う機能を有する。ここでは、非接触データ伝送装置114の通信テストを行うにあたって必要なブロックのみを記載している。
【0015】
非接触データ伝送装置114は、固定部16側の通信制御を行う固定部側制御部21、光を伝送媒体として回転部15とデータ通信を行う光送受信部22a、回転部15側の通信制御を行う回転部側制御部23、光を伝送媒体として固定部16とデータ通信を行う光送受信部22b、および通信テストの強制終了のためのリセット部24を有する。
【0016】
また、固定部16側には一つ以上の送信用LED25a、受信用PD26a(複数のLED、PDを代表して1つに符号をつける)回転部15にも一つ以上の送信用LED25b、受信用PD26bを有する。破線矢印で示す固定部16から回転部15方向のデータ通信においては、操作部132から送信されるスキャン条件データ(回転部15のX線出力条件や、スリット、ウエッジなどのシステム制御信号)などが送信される。また、実線矢印で示す回転部15から固定部16へのデータ通信では被検体Pの投影データ等が送信される。なお、図2の送信用LED25a、25b、受信用PD26a、26bの数、配置は単なる例示でありこの図により制限されない。すなわち光部品の配置数および配置位置は伝送容量、コストなどのシステム設計によって変化する。例えば、一般的には固定部16から回転部15への伝送量は、回転部15から固定部16への伝送量より少なくて済むため、回転部15側のPD26bの設置数は固定部16のPD26aの設置数より少なくてよい。また、受信用PD26a、26bの設置数を送信用LED25a、25bの設置数より少なくし、回転速度などで決定される伝送容量を勘案し、必要数の送信LED25a、25bを配置する。
【0017】
さらに、システム制御部13は、通信テストにより通信エラーを検出する通信異常検出部27と、通信エラーが検出された場合に、通信エラーとなっている光部品(LED25a、25b、PD26a、26b)を特定するために通信エラーが生じた時の回転部15の回転角から性能劣化した光部品を特定する劣化部品判定部28と、通信エラー時に縮退モードで運転するかどうかを判定する縮退運転モード判定部29を有する。
【0018】
図3は、非接触データ伝送装置114のブロックを示している。固定部側制御部21および回転部側制御部23には、後述する通信テストのスケジュールを管理・制御を行うスケジュール制御部31a、31bと、固定部16および回転部15の光送受信部22a、22bには、LED25a、26bの駆動電流を制御するLED駆動部32a、32bとLED駆動部32a、32bの駆動電流を通信テストスケジュールで規定される範囲内で可変する電流可変部33a、33bを有し、さらにPD26a、26bの受信信号をデータ識別レベルまで増幅するPDアンプ部34a、34bと、PDアンプ部34a、34bの増幅率を通信テストスケジュールで規定される範囲内で可変する増幅率可変部35a、35bを有する。
【0019】
次に図4を用いて、本実施形態で実施されるに通信テストのフローを説明する。まずステップST401では、通信テストを行うための通信テストモードを開始する。この通信テストモードは、X線管111のウォーミングアップ時に行うことが好ましい。ウォーミングアップ時に行うことによってスキャン開始までの時間を余分に消費することがない上、毎日の稼働時に非接触データ伝送装置114の光部品の性能劣化確認が可能となる。
【0020】
ステップST402では、タイマをセットする。通信テスト中に通信エラーが生じると、固定部側制御部21から回転部側制御部23への制御が不可能となるため、本実施形態の通信テストでは、固定部側制御部21と回転部側制御部23との同期をタイマによって行い、固定部側制御部21と回転部側制御部23それぞれがタイマスケジュールによって通信テストを継続することとする。これにより通信テスト中に通信エラーが生じても、通信テストを中断することなく実行することが可能となる。
【0021】
ステップST403では、まずLED25a、25bの性能劣化テストを行う。LED25a、25bで性能劣化が生じているかどうかは、電流可変部33a、33bによる駆動電流の可変を行い、通信エラーが生じるかどうかで判定する。駆動電流の可変幅は、X線CT装置の仕様で定められた範囲内で可変することとし、この可変によって装置が故障することはない。本実施形態の例では±10%の範囲で可変することとする。また固定部側LED25a、回転部側のLED25bの駆動電流を同時に可変することとして説明する。なお、本実施形態では、LED25a、25bの駆動電流を可変しているが、本来の目的は、LED25a、25bの送信出力を可変することが目的である。
【0022】
図5は、テストスケジュールを示している。回転部15の最初の1回転目では、LED25a、25bをX線CT装置で規定される標準の駆動電流値で駆動し、非接触データ伝送装置114の通信テストを行う(0%試験)。また1回転のアイドリングの後、次の1回転では、10%LED25a、25bの駆動電流を増加させ通信テストを行う(+10%試験)。さらに1回転のアイドリングの後、10%LED25a、25bの駆動電流を減少させ通信テストを行う(−10%試験)。この時、PDアンプ34a、36bは規定の標準増幅率(0%)に設定し可変しない。
【0023】
ステップST404では、通信エラーが生じたかどうか判断する。通信エラーが生じていれば(ST404:No)、通信異常検出部27によりタイムアウトを検出し(ST405)、次のステップに進む。通信エラーがなければ、(ST404:Yes)そのまま次のステップに進む。また、通信テスト中に通信エラーが発生すれば、劣化部品判定部28は、通信エラーが生じたLED−PD対と、回転部15の回転角を記録する。
【0024】
なお、通信エラーをタイムアウトにより判定したが、通信データのパリティーチェックを行い、通信誤り率が増加していることで通信エラーを判定してもよい。
【0025】
ステップST406では、PD26a、26bの性能劣化テストを行う。テストスケジュールは図5で示したようにLED25a、25bの性能劣化テストと同様とする。
【0026】
回転部15の最初の1回転目では、PDアンプ34a、34bの増幅率を装置で規定される標準の増幅率で通信テストを行う(0%試験)。また1回転のアイドリングの後、次の1回転では、10%PDアンプ34a、34bの増幅率を増加させ通信テストを行う(+10%試験)。さらに1回転のアイドリングの後、10%PDアンプ34a、34bの増幅率を減少させ通信テストを行う(−10%試験)。この時、LED25a、25bの駆動電流は規定の標準値(0%)に設定し可変しない。なお、本実施形態では、PDアンプ34a、34bの増幅率を可変しているが、本来の目的は、PD26a、26bの光電気変換効率の劣化を判定するために受信感度を可変することが目的であるため、その他の可変方法を用いてもよい。
【0027】
ステップST407では、通信エラーが生じたかどうか判断する。通信エラーが生じていれば(ST407:No)、通信異常検出部27によりタイムアウトを検出し(ST408)、次のステップに進む。通信エラーがなければ、(ST408:Yes)そのまま次のステップに進む。また、通信テスト中に通信エラーが発生すれば、劣化部品判定部28は、通信エラーが生じたLED−PD対と、回転部15の回転角を記録する。なお、この場合も、通信データのパリティーチェックを行い、通信誤り率が増加していることを判定して通信エラーとしてもよい。
【0028】
ステップST408では、通信テストスケジュールのタイムアウトを検出する。これは、何らかの原因にて通信テストが終了しない場合に、回転部側制御部23の制御をリセット部24にて強制的にリセットを行うためのものである。
【0029】
ここまでのステップにて通信テストが終了する(ST410)。ステップST411では、通信テストで通信エラーが発生したかどうかを判定する。通信テストで通信エラーが発生していれば、劣化部品判定部28は、記録された回転角をもとに劣化部品を特定し(ST412)、結果表示を行う(ST413)。また、通信テストで通信エラーがない場合も同様に結果表示する(ST413)。
【0030】
ここでLED25a、25bの駆動電流可変の簡便な方法を述べる。LED駆動部32a、32bは、例えばトランジスタの差動増幅器などで実現され、その駆動電流の制限は、差動増幅器の電流値を制限するカレントミラー回路に接続される抵抗にて制限することができる。また、市販のLEDドライバICなどを使用する場合においても駆動電流値を抵抗で制限できるものが多い。したがって、複数の抵抗(本実施形態では3つの抵抗)を切り替えられるアナログスイッチなどを用意し、通信テストスケジュールに応じて切り替える方法が簡便である。また電子ボリュームなどのICを使用して抵抗値を段階的に可変してもよい。
【0031】
また、PDアンプ34a、34bの増幅率を可変する簡便な方法について述べる。PDアンプ34a、34bには、トランスインピーダンス型アンプやハイインピーダンス型アンプなどの種類がある。トランスインピーダンス型においては、出力の一部を入力に負帰還させる抵抗があり、この抵抗によって電流増幅率を変化できる。また、ハイインピーダンス型は、PDをバイアスする抵抗でその電流増幅率を可変できる。したがって、電流増幅率を可変する複数の抵抗(本実施形態では3つの抵抗)を切り替えられるアナログスイッチなどを用意し、通信テストスケジュールに応じて切り替える方法が簡便である。
【0032】
図6は、通信テストの結果を示している。この例では、PDアンプ34a、34bの増幅率が+10%の時、およびLED25a、25bの駆動電流が−10%の時に通信エラーが生じたことがわかる。また、図7は、この時の劣化光部品の特定結果を示している。通信エラーが生じた回転角、および通信方向からその時間に通信テストを行ったLED−PD対を特定し、さらにそのどちらが劣化しているかを判定する。例えば、LED25の駆動電流が−10%の時に通信エラーが生じていれば、PD26の劣化と判定でき、またPDアンプ34の増幅率−10%の時に通信エラーが生じていれば、LED25が劣化していると判断する。劣化した光部品の切り分けができない場合は、通信エラーを生じたLED−PD対両方を表示する。
【0033】
上記通信テストは、LEDの性能劣化試験では回転部15の5回転分の時間で終了し、PDの性能劣化試験も同様に5回転分の時間で終了する。すなわち10回転分の時間で終了する。例えば1回転0.75秒のスキャン条件では、7.5秒という短い時間にて通信テストの全試験が完了するので、性能劣化があるかどうかを確認したい場合に任意の時間で行ってもよい。しかしこの通信テストをX線管111のウォーミングアップ時に行えばスキャン開始までの時間を余分に消費することがない。
【0034】
図8は、通信テスト結果をコンソールの表示部131に表示した例を示している。通信エラーが生じた場合には、「架台内の通信部品劣化で通信エラーが発生する可能性がある」旨のメッセージ81を表示すると同時に、部品劣化が生じている場所を点滅などで表示する(図中はLED、PDの性能劣化を示す)。さらに、スキャン中に通信エラーが生じる可能性があっても装置を稼働させるかどうかを操作者に確認を求めるウインドウ82を表示させ、運転モードを選択する。YESを選択した場合には、通信エラーを生じる可能は残るが少なくとも現時点では通信エラーを生じない縮退運転モードで運転する。ここでいう縮退運転モードとは、特にX線CT装置の機能に制限を与えるものではないが、非接触データ伝送装置114の通信エラーが現時点では生じない状態のLED25a、25bの駆動電流とPDアンプ34a、34bの増幅率の可変範囲の組み合わせを判断し、その駆動条件にて運転する。このため標準のLED25a、25bの駆動電流(0%)と標準のPDアンプ34a、34bの増幅率(0%)以外の条件で運転する可能性が高い。
【0035】
また、Noを選択した場合には、標準のLEDの駆動電流(0%)と標準のPDアンプの増幅率(0%)で運転を継続する。この場合は、スキャン中に通信エラーが生じる可能性がある。
【0036】
このようにユーザ側にて通信部品の性能劣化が生じていることを認識し、了解して診断を行うシステムとする。さらに装置を強制的に停止するという選択肢を設けてもよい。
【0037】
通信テストの結果では、通信が正常に行われるLED25a、25bの駆動電流とPDアンプ34a、34bの増幅率の組み合わせがない場合がある。この場合は運転を停止することが好ましい。これらの縮退運転モードの判断は、縮退運転モード判定部29で行われる。
【0038】
また、通信部品の性能劣化が生じた場合には、速やかにサービスに連絡しメインテナンスを行う必要がある。したがって本実施形態の通信テストにより通信エラーが生じた場合には、図9に示すようなメッセージ91を表示するとともに自動的にメインテナンスサービスへ連絡する構成を採用すれば、装置が完全にストップする前にメインテナンスが可能となる。これによりシステムダウンを事前に回避できる。
【0039】
図10は、通信テストの他の実施形態を示している。光部品の性能劣化は、上述した光出力(電気光変換効率)、受信感度(光電気変換効率)だけでなく、LED、PDどちらにおいても周波数特性が劣化することが多い。従って送信データのクロック周波数を規定の範囲内で可変する通信テストを行ってもよい。すなわち周波数可変部36a、36bを固定部側制御部21および回転部側制御部23にそれぞれ設け、通信テストスケジュールに加える。通信テストスケジュールは図5と同様に、標準の周波数に対して増減するようなスケジュールで構わない。
【0040】
このように、光部品の性能劣化を判定する様々なテスト項目を追加することにより、さらにきめ細やかに光部品の性能劣化の兆候を判断できるようになる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、X線CT装置内の非接触データ伝送装置内に使用されるLED、PDなどの光部品に対して、塵、埃などの汚れによる発光性能、受光性能の劣化を事前に判定することが可能である。また通信テストスケジュールによる性能劣化テストをウォーミングアップ時などと並行して行えるため時間を無駄に消費することがない。またこの通信テストは光部品の性能劣化を判定しているため、たとえ通信エラーが生じても通信エラーが生じない駆動条件でX線CT装置を稼働することができる。完全にシステムダウンする前に部品の交換・清掃などのメインテナンスが行えるため、緊急時の患者などでCT検査ができなくなるという致命的な問題を回避できる。
【0042】
本発明は、上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施形態では固定部側LED25a、回転部側のLED25bの駆動電流を同時に可変したが、独立して可変することで光部品の性能劣化の程度をさらに詳細に分類することができ、縮退モードの範囲を広げることができる。例えば、本実施形態の説明では、LEDの駆動電流(+10%)時に、PDアンプ増幅率(+10%)などの条件では通信テストを行っていないが、この条件下で通信エラーがない場合は縮退運転が可能となる。
【0043】
また、本実施形態の通信テストは、装置の仕様内で光部品の動作条件を可変させるため、縮退運転モードにおいて装置を故障させる可能性がない。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
11…架台(ガントリ)
12…寝台
13…システム制御部
14…画像処理部
15…回転部
16…固定部
111…X線管
112…X線検出器
113…データ収集装置
114…非接触データ伝送装置
115…高電圧発生装置
116…回転駆動部
117…寝台駆動部
21…固定部側制御部
22a、22b…光送受信部
23…回転部側制御部
24…リセット部
25a、25b…LED
26a、26b…PD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管が被検体を中心に回転可能に配置された回転部と、
前記回転部の回転を制御する回転制御部と、
前記回転部の回転運動を支える固定部と、
固定部と回転部が相互通信可能にLEDとPDが配置された光送受信部と、
前記光受信部の通信テストスケジュールを実行する固定部側制御部および回転部側制御部と、
前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の送信出力を規定の範囲内で可変するLED駆動電流可変部と、
前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の受信感度を規定の範囲内で可変するPDアンプ増幅率可変部と、
前記通信テストで前記光送受信部の通信エラーを検出する通信異常検出部と、
を有するX線CT装置。
【請求項2】
前記通信テストスケジュール実行中に通信エラーを検出した場合、前記通信異常検出部の通信エラー検出時間と、その時間における前記回転制御部で制御される回転部の回転角から前記光送受信部の性能劣化を生じているLEDおよびPDを特定する劣化部品判定部を、さらに有する請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記通信テストスケジュール実行中に通信エラーを検出した場合、前記通信テスト結果を表示する表示部をさらに有し、縮退運転モードで運転するかどうかの選択画面を表示する請求項2記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記LED駆動電流可変部は、LEDの駆動電流を可変する複数の抵抗を有する請求項3記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記PDアンプ増幅率可変部は、PDアンプの増幅率を可変する複数の抵抗を有する請求項4記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記通信異常検出部は、タイムアウトまたはパリティーチェックにより通信エラーを検出する請求項5記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記縮退運転モードは、前記通信テストスケジュールで通信エラーが生じない条件下で、前記LEDの駆動電流、および前記PDアンプの増幅率を可変させ運転を行う請求項6記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記通信テストスケジュールに従って、前記固定部側および回転部側光送受信部の通信クロック周波数を規定の範囲内で可変させるための周波数可変部を、
さらに有する請求項7記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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