説明

XVII型コラーゲンに関する脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤

【課題】脱毛抑制剤及び毛髪の脱色素化抑制剤の提供を目的とする。
【解決手段】XVII型コラーゲンにより、脱毛又は毛髪の脱色素化が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XVII型コラーゲンに関する脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、脱毛抑制のための組成物、毛髪の脱色素化抑制のための組成物、脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法、色素幹細胞の異所性分化抑制剤、色素幹細胞の消失抑制剤、毛包幹細胞の異常分化抑制剤、毛包幹細胞の消失抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外界から個体を護るほかに、毛髪や皮膚の色調やパターンにより個体の識別や防御においても重要な役割を果たしている。皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下脂肪組織の3層から成り、毛包が表皮から連続して皮下脂肪組織に向かって伸長する。毛包の恒常部は毛周期を通じて維持されるのに対し、一過性部は毛周期に同調してその成長と退縮を周期的に繰り返している。また、色素細胞は、皮膚において分化するとメラニン色素を産生し、周囲の角化細胞へと受け渡すことで、皮膚や毛に色素を供給しており、紫外線から皮膚を護ると同時に個体間の識別や防御等の役割を担っている。
【0003】
また、白髪は、我々の誰もが経験する最も目立つ老化現象である。白毛を生やす毛包では色素を産生する色素細胞の数が減少していることは現象として知られていたが、そのメカニズムについてはほとんど知られていなかった。1990年、Cotsarelis等は、毛包の幹細胞がバルジ領域に局在して多く認められることから、毛包の幹細胞がバルジ領域に存在することを提唱した(非特許文献1)。本発明者は、これまでに色素幹細胞を見いだし(非特許文献2)、白髪のメカニズムとして色素幹細胞の維持が必須であることを明らかとしてきた(非特許文献3)。
【0004】
一方、毛髪は皮膚から派生しており、皮膚の変化や欠陥に大きく影響される。さらに、皮膚疾患による脱毛を含めない場合であっても、男性だけでなく女性においても加齢に伴い脱毛現象が増加する傾向にあることが知られている。特に、男性型脱毛症では、前頭部や頭頂部の毛包が退行し脱毛に至るが、このような毛包の退行は、テストステロン(男性ホルモン)の影響によるものであることが知られており、男性ホルモンを標的とした育毛剤が開発されている(特許文献1)。また、剪毛された皮膚において毛の伸長を促進する、コラーゲン蛋白質の加水分解物を用いた育毛剤も開発されている(特許文献2)。その他、毛包退行の要因として、毛包を含む皮膚の結合組織における形態学的変化も、脱毛現象の一因となっている。また、皮下に水疱(裂隙)の形成が認められる皮膚における自己免疫疾患の一種であるBullous pemphigoid(BP)についての研究を目的として、BPの自己抗原であるXVII型コラーゲン遺伝子欠損(COL17KO)マウスが作製され、このCOL17KOマウスにおいてBPの症状である水疱の形成、表皮の障害とともに体毛が少なく白毛の割合の多いマウスが見られることが報告されている(非特許文献4)。
【0005】
【非特許文献1】Cotsarelis G.等、Cell 61: 1329-1337.1990
【非特許文献2】Nishimura EK et al. Nature. 416(6883):854-60, 2002
【非特許文献3】Nishimura EK et al. Science. 307(5710):720-724. 2005
【非特許文献4】Nishie W et al. Nat Med 13:378-383, 2007
【特許文献1】特開2004−248632号公報
【特許文献2】特許第3247764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脱毛や毛髪の脱色素化の抑制を目的として、これまでにも血管拡張剤や植物抽出物等の様々な方法が講じられて来たが、何れも上記問題を解決するには至っておらず、脱毛抑制剤や毛髪の脱色素化抑制剤の開発は、医薬品およびバイオ関連製品開発の分野で望まれている。
【0007】
また、加齢に伴う毛髪の脱色素化(白毛化)と脱毛がどのようなメカニズムで起こっているかは明らかとなっていない。上記の非特許文献4では、COL17KOマウスにおいて体毛が少なく白毛の割合の多いマウスが見られることにも簡単に触れてあるが、非特許文献4は、経時的に白毛化したり脱毛がおこるかどうかにしての記載はなく、そもそも脱毛・白髪等に関する研究報告ではない。そもそも脱毛・毛髪の脱色素化等に関する研究報告ではない。また、非特許文献4では、毛髪の白毛化と脱毛のメカニズムについて何ら解釈を行っていない。
【0008】
しかしながら、これらのメカニズムの解明は、脱毛治療や皮膚や毛髪再生老化制御、白髪治療、あるいは皮膚恒常性維持を目的とした医薬品およびバイオ関連製品開発の分野で望まれている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、脱毛抑制剤又は毛髪の脱色素化抑制剤の提供を目的とする。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記メカニズムを解明し、脱毛治療、白髪治療、皮膚や毛髪の再生老化制御、あるいは皮膚恒常性維持等へ役立つ技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に至る過程では、本発明者は、XVII型コラーゲン遺伝子欠損(COL17KO)マウスにおいて加齢に伴って見られる白毛化と脱毛に先立ち、色素幹細胞及び毛包幹細胞が消失することを見いだした。そこで、COL17KOマウスにおいて毛包幹細胞を含む領域で特異的にヒトXVII型コラーゲンを発現させたところ、色素幹細胞および毛包幹細胞の異常分化が抑制され、形態・分布にも異常が見られず、脱毛及び白毛化は認められなかったことを確認した。以上から、XVII型コラーゲンにより脱毛及び白毛化が抑制されることが明らかとなり、本発明を完成した。
【0012】
一部繰り返しになるが、脱毛及び白毛化のメカニズムに着目して説明すれば、本発明に至る過程では、本発明者は、まず、XVII型コラーゲンの皮膚での発現を詳細に解析し、特異的に発現する領域を見いだした。さらに、COL17KOマウスを、色素幹細胞に着目して観察したところ、白毛化と脱毛に先立ち、色素幹細胞がバルジ領域において成熟色素細胞へと異所性分化し、それに引き続いて、色素幹細胞の消失を認めた。さらに、毛包幹細胞について調べたところ、毛包幹細胞は未分化角化細胞としてバルジ領域を構成していることに加えて、そのバルジ領域を構成する未分化角化細胞が異常な成熟分化をすることにより毛包幹細胞が消失することも観察された。以上から、XVII型コラーゲンが色素幹細胞及び毛包幹細胞の維持に必須であり、その維持不全により白毛化および脱毛を発症することが判明した。以上の結果より、XVII型コラーゲンの欠損は白毛化を来たし、その白毛化は色素幹細胞の消失に起因することが明らかとなり、XVII型コラーゲンにより色素幹細胞及び毛包幹細胞の異常分化が抑制され、その消失が抑制されることによって色素幹細胞及び毛包幹細胞が維持されることが証明され、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む脱毛抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンにより、脱毛を抑制する。
【0014】
さらに、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む毛髪の脱色素化抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンにより、毛髪の脱色素化を抑制する。
【0015】
また、本発明によれば、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む脱毛抑制のための組成物が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンにより、脱毛を抑制する。
【0016】
また、本発明によれば、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む毛髪の脱色素化抑制のための組成物が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンにより、毛髪の脱色素化を抑制する。
【0017】
また、本発明によれば、上記脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、脱毛抑制のための組成物又は毛髪の脱色素化抑制のための組成物を投与することを含む、脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンにより、脱毛又は毛髪の脱色素化を抑制する。
【0018】
また、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞の異所性分化抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体により、色素幹細胞の異所性分化を抑制する。
【0019】
さらに、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞の消失抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体により、色素幹細胞の消失を抑制する。
【0020】
また、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の異常分化抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体により、毛包幹細胞の異常分化を抑制する。
【0021】
また、本発明によれば、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の消失抑制剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体により、毛包幹細胞の消失を抑制する。
【0022】
なお、上記のXVII型コラーゲンに関する脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、色素幹細胞の異所性分化抑制剤、色素幹細胞の消失抑制剤、毛包幹細胞の異常分化抑制剤、毛包幹細胞の消失抑制剤は本発明の一態様であり、本発明は、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明の脱毛抑制のための組成物、毛髪の脱色素化抑制のための組成物、脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法、なども、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、後述の実施例に示すように、ヒトXVII型コラーゲンまたはその変異体により、脱毛、毛髪の脱色素化、色素幹細胞の異所性分化、色素幹細胞の消失、毛包幹細胞の異常分化、又は毛包幹細胞の消失を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の経緯)
上記の非特許文献4では、BPの疾患モデルマウスであるCOL17KOマウスにおいて体毛が少なく白毛の割合の多いマウスが見られることが報告されているが、経時的な変化があるのかどうかが不明で、非特許文献4は、そもそも脱毛・毛髪の脱色素化等に関する研究報告ではない。そのため、COL17KOマウスの体毛の状態に関しても、何日齢の時点でどのような状態であったか等具体的な記載はされていない。すなわち、COL17KOマウスが出生当初から毛髪の量が少なく白い毛髪の割合が多かったのか、出生当初より充分な量の黒い毛髪を有していたのに徐々に毛髪の量が減少し白い毛髪の割合が増えていったのかは説明されていない。ここで、一般的に「脱毛」とは当初充分な量の毛髪を有していたのが徐々に毛髪が減少していく現象を意味し、「白髪」とは当初黒い毛髪を有していたのが徐々に白い毛髪が増えていく現象を意味する。そのため、非特許文献4では、毛髪の脱色素化と脱毛のメカニズムについて何ら解釈を行っていないと言える。
【0025】
そこで、本発明者は、まず経時的にマウスの毛の観察を行い、生下時から毛に異常があるのか、いつから毛の異常がはじまるのか詳細に観察を行い、加齢に伴ってまず白毛化がはじまり、ついで脱毛化もみられるようになり、進行性に進むことを明らかにした。さらに、加齢に伴う毛髪の脱色素化と脱毛がどのようなメカニズムで起こっているかを明らかとするため、XVII型コラーゲンの皮膚での発現を詳細に解析したところ、毛包間表皮に加えて毛包バルジ領域(毛包幹細胞に相当する細胞群)にその発現を特異的に認めた。さらに、加齢に伴い脱毛及び白毛化が起こるCOL17KOマウスを、色素幹細胞に着目して調べた。すると、白毛化と脱毛に先立ち、色素幹細胞がバルジ領域において成熟色素細胞へと異所性分化し、それに引き続いて消失することから、さらに、色素幹細胞の維持に重要となる周囲の毛包幹細胞について調べたところ、毛包幹細胞が未分化角化細胞としてバルジ領域を構成していることに加えて、そのバルジ領域を構成する未分化角化細胞が、表皮や脂腺等などの通常は抑制されている分化方向に対して異常な成熟分化を示すことにより、毛包幹細胞が消失することを認めた。また、COL17KOマウスにおいて毛包幹細胞を含む領域で特異的に発現するプロモーター(ケラチン14プロモーター)を用いてヒトXVII型コラーゲンを発現させたところ、色素幹細胞および毛包幹細胞の異常分化が抑制され、形態・分布にも異常が見られず、脱毛及び白毛化は認められなかったことを確認した。以上の知見は、脱毛治療や白髪治療を目的として、皮膚のXVII型コラーゲンを標的とした医薬品およびバイオ関連製品開発に応用できることを強く示唆する。これらの結果はBPの疾患メカニズム及び治療法について研究報告がなされている非特許文献4から推測することはできず、まったく意外な知見であった。
【0026】
以上の結果より、ヒトXVII型コラーゲンの欠損により色素幹細胞及び毛包幹細胞の消失が起こり、その結果、脱毛及び白毛化を来たすことが明らかとなった。さらに、XVII型コラーゲンにより毛包幹細胞及び色素幹細胞の消失を抑制し、脱毛及び白毛化を抑制することが可能であることが明らかとなった。また、XVII型コラーゲンにより毛包幹細胞及び色素幹細胞の異常分化及び消失が抑制されることによって色素幹細胞及び毛包幹細胞を維持することが可能であることが明らかとなり、本発明を完成した。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(概要)
本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む脱毛抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機能を有するため、それを含む脱毛抑制剤自体も脱毛を抑制する。
【0028】
さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む毛髪の脱色素化抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、毛髪の脱色素化を抑制するという機能を有するため、それを含む毛髪の脱色素化抑制剤自体も毛髪の脱色素化を抑制する。
【0029】
また、本実施形態は、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む脱毛抑制のための組成物である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機能を有するため、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を毛包幹細胞を含む領域で発現させる組成物自体も脱毛を抑制する。
【0030】
また、本実施形態は、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む毛髪の脱色素化抑制のための組成物である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機能を有するため、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を毛包幹細胞を含む領域で発現させる組成物自体も毛髪の脱色素化を抑制する。
【0031】
また、本実施形態は、上記脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、脱毛抑制のための組成物又は毛髪の脱色素化抑制のための組成物を投与することを含む、脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機能及び毛髪の脱色素化を抑制するという機能を有するため、それを投与することを含む方法も脱毛又は毛髪の脱色素化を抑制する。
【0032】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞の異所性分化抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、色素幹細胞の異所性分化を抑制するという機能を有するため、それを含む異所性分化抑制剤自体も色素幹細胞の異所性分化を抑制する。
【0033】
さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化や引き続いておこる細胞消失を抑制して幹細胞維持を促進するという機能を有するため、それを含む異所性分化抑制剤自体も色素幹細胞の異所性分化を抑制する。その結果、バルジ領域における色素幹細胞の成熟色素細胞への異所性分化が抑制され、色素幹細胞の消失が抑制される。
【0034】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞の消失抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、色素幹細胞の消失を抑制するという機能を有するため、それを含む細胞死抑制剤自体も色素幹細胞の消失を抑制する。
【0035】
さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失の抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いておこる消失を抑制して幹細胞維持を促進するという機能を有するため、それを含む細胞死抑制剤自体も色素幹細胞の消失を抑制する。その結果、バルジ領域における色素幹細胞の成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失が抑制され、色素幹細胞の維持が促進される。
【0036】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の異常分化抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、毛包幹細胞の異常分化抑制及び/又は維持促進するという機能を有するため、それを含む異常分化抑制剤自体も毛包幹細胞の異常分化を抑制する。
【0037】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の成熟した表皮毛包脂腺系細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の成熟した表皮毛包脂腺系細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の成熟した表皮毛包脂腺系細胞への分化抑制剤である。後述の実施例に示すように、毛包幹細胞はバルジ領域を構成しており、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、その毛包幹細胞が未分化角化細胞から異常な方向へ成熟分化することを抑制するという機能を有する。そのため、そのような機能を有するXVII型コラーゲンを含む異常分化抑制剤自体も、同様に毛包幹細胞の異常分化を抑制する。その結果、バルジ領域における毛包幹細胞の成熟した細胞への異常分化が抑制され、毛包幹細胞の消失が抑制される。
【0038】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の消失抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、毛包幹細胞の消失抑制及び/又は維持促進するという機能を有するため、それを含む消失抑制剤自体も毛包幹細胞の消失を抑制する。
【0039】
また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞からの異常な成熟分化による毛包幹細胞消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞からの異常な成熟分化による毛包幹細胞消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞からの異常な成熟分化による毛包幹細胞消失の抑制剤である。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンまたはその変異体は、毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への成熟分化による消失を抑制するという機能を有するため、それを含む消失抑制剤自体も毛包幹細胞の消失を抑制する。その結果、バルジ領域における毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞からの成熟分化による消失が抑制され、毛包幹細胞の維持が促進される。
【0040】
(XVII型コラーゲン)
ここで使用される「XVII型コラーゲン」という用語は、天然配列XVII型コラーゲンを含む。ここに記載されるXVII型コラーゲンは、組換え又は合成方法により調製しても種々の供給源から単離してもよい。
【0041】
「天然配列XVII型コラーゲン」は、天然由来のXVII型コラーゲンのアミノ酸配列を有するポリペプチドである。このような天然配列XVII型コラーゲンは、組換え又は合成手段により生産することもでき、種々の供給源から単離することもできる。
【0042】
(XVII型コラーゲン変異体ポリペプチド)
「XVII型コラーゲン変異体」とは、ここに開示される全長天然配列XVII型コラーゲンと80%以上のアミノ酸配列同一性を有するXVII型コラーゲンを意味する。このようなXVII型コラーゲン変異体には、全長天然アミノ酸配列のN-又はC-末端において一又は複数(例えば、2、3・・・)のアミノ酸残基が付加、置換若しくは欠失されたXVII型コラーゲンが含まれる。通常、XVII型コラーゲン変異体は、ここに開示される全長天然アミノ酸配列、ここに開示された全長天然配列XVII型コラーゲン配列と80%以上のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%以上のアミノ酸配列同一性、より好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有している。なお、以下に示す配列番号:1には、全長天然配列XVII型コラーゲンのアミノ酸配列が示されている。
【0043】
ここに定義される「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性が得られるように間隙を導入してもよく、保存的置換を配列同一性の一部と考えないとした、XVII型コラーゲン配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントの選択は、当業者によく知られた方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含むアラインメントを測定するために、適切なパラメータを決定することができる。
【0044】
(XVII型コラーゲン変異体ポリヌクレオチド)
「変異体ポリヌクレオチド」とは、ポリペプチドが本来持っている活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であり、ここに開示する全長天然配列XVII型コラーゲンポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列に対して80%以上の配列同一性を有する。通常は、XVII型コラーゲン変異体ポリペプチドヌクレオチドは、ここに開示する全長天然配列XVII型コラーゲンポリペプチド配列をコードする核酸配列に対して80%以上の核酸配列同一性、好ましくは90%の核酸配列同一性、より好ましくは95%の核酸配列同一性を有している。変異体は、天然ヌクレオチド配列を含まない。なお、以下に示す配列番号:2には、ヒトXVII型コラーゲンをコードする完全長配列が含まれている。
【0045】
ここで同定されるXVII型コラーゲンコード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性が得られるように間隙を導入してもよく、XVII型コラーゲンポリペプチドコード化核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントの選択は、当業者にはよく知られた方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含むアラインメントを測定するために、適切なパラメータを決定することができる。
【0046】
他の実施態様では、XVII型コラーゲン変異体ポリヌクレオチドは、XVII型コラーゲン変異体ポリペプチドをコードし、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、配列番号:1に示すポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする核酸分子である。XVII型コラーゲン変異体ポリペプチドは、XVII型コラーゲン変異体ポリヌクレオチドにコードされるものであってもよい。
【0047】
(毛髪)
ここでいう毛髪とは、ケラチンを主成分とする毛幹及び毛根からなる皮膚の付属器官のことをいい、例えば、頭髪や体毛等がこれに含まれる。
【0048】
(脱毛)
ここでいう脱毛とは、例えば加齢や病気により、毛髪の一部若しくは全部が抜け落ちることをいう。その原因として様々な要因が考えられるが、男性ホルモンの上昇や毛包を含む皮膚の結合組織における形態学的変化が原因となるほか、毛包幹細胞の消失もその一因となりうる。
【0049】
(脱毛の抑制)
ここでいう脱毛の抑制とは、除毛した毛等短くなった毛の伸長を促進することとは異なり、例えば皮膚の結合組織における形態学的変化等の要因により起こる脱毛を抑制すること等をいう。
【0050】
(毛髪の脱色素化)
ここでいう毛髪の脱色素化とは、本来メラニン色素を有する毛髪が、色素細胞からのメラニン色素の供給が減少することにより、毛髪の色が白色に近づいていくことをいう。例えば、頭髪の白髪への変化や体毛の白毛化がこれに含まれる。
【0051】
(皮膚の構造)
皮膚は表面から順番に表皮、真皮、皮下組織の3つの層に分かれており、身体の全表面を覆って、外界との境をなし、内臓などの内部諸器官を外部の刺激や衝撃から保護している。また、表皮は、角質層、顆粒層、有棘層及び基底層で構成されている。基底層は、表皮の最下層にあり、真皮とは波形になって接している。基底層を構成する基底細胞は、立方体又は円柱状をした細胞が一列に並ぶ単層構造からなり、数個おきに色素細胞が点在する。紫外線があたる等の刺激により色素細胞からメラニン色素が生成される。基底層では、真皮の毛乳頭の毛細血管から栄養を補給され常に細胞分裂を行い細胞の新生、増殖を繰り返している。
【0052】
(幹細胞)
幹細胞とは、高い自己維持能(自己複製能)を示し、分化した子孫細胞を供給できる未分化な細胞のことをいう。例えば、色素細胞を子孫細胞として供給する色素幹細胞や、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成し、表皮、汗腺及び皮脂腺等の皮膚付属器官へと分化する能力を有する毛包幹細胞等が挙げられる。
【0053】
(ニッチ)
ニッチとは、幹細胞にとっての生態的適所をいう。通常、組織幹細胞の局在部位をニッチと呼んでいる。ニッチ環境において、幹細胞は未分化な状態に維持される。例えば、色素幹細胞や毛包幹細胞のニッチはバルジ領域に存在する。通常、バルジ領域において色素幹細胞から増殖した子孫細胞の一部は、バルジ領域から毛母へ移動し、そこで色素細胞に分化・成熟してメラニン色素を毛に供給する。
【0054】
(色素幹細胞の異常分化)
色素幹細胞の異常分化とは、本来野生型マウスでは未分化な状態で維持されるバルジ領域(ニッチ)において、異所性に(場違いに)色素幹細胞がメラニン顆粒を持ち樹状の形態を獲得するなど成熟分化してしまうことをいう。通常、この異所性分化した細胞は維持されないで消失する。例えば、バルジ領域において色素幹細胞が未分化性を喪失し、成熟した色素細胞に分化すること等をいう。
【0055】
(毛包幹細胞の異常分化)
毛包幹細胞の異常分化とは、毛包幹細胞が自己維持することなく異常な分化方向へと分化していくことをいう。例えば、バルジ領域において毛包幹細胞が幹細胞性を維持できなくなり、毛包、表皮、脂腺などへと分化してしまうなど正常の制御を逸した分化をいう。
【0056】
(剤形)
ここで、本実施形態の脱毛抑制剤又は毛髪の脱色素化抑制剤は、経口投与や経皮投与によりその効果を奏する可能性が考えられ、その剤形として、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、クリーム剤、内用液剤、注射剤であってもよく、また、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、エアゾール、軟膏、シャンプーやリンス等へ添加することも考えられる。
【0057】
(ベクター)
ベクターは、組換えDNA手順に都合よく付すことのできるいずれのベクターであってもよく、またベクターの選択は該ベクターを導入しようとする宿主細胞に依存することが多い。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわちその複製が染色体複製から独立している染色体外物質として存在するベクターであってもよい。そのようなベクターとしては例えばプラスミド、ファージ、コスミド、ミニ、クロモゾーム、またはウイルスが挙げられる。あるいはまた、ベクターは、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに一体化されそしてその中に一体化された一つまたは複数のクロモゾームと共に複製されるものであってよい。適切なベクターの例は細菌発現ベクターおよび酵母発現ベクターである。前記ウイルスベクターの例として、アデノウイルス、レトロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス等のウイルス由来のベクター等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明において構築した発現ベクターにより、XVII型コラーゲンを任意の場所で発現させることができる。
【0058】
(プロモーター)
ここでいうプロモーターとは、プロモーター配列の下流に存在するポリペプチドの発現を制御する配列のことをいい、ここでは特に毛包幹細胞を含む領域において発現させることが可能なプロモーターが望ましい。例えば、K14プロモーターやK5プロモーター等が挙げられるが、後述する実施例では、毛包幹細胞を含む表皮基底層における特異的な発現を制御するプロモーターとして、ケラチン14プロモーターを用いている。
【0059】
(投与方法)
ここでいう投与方法は、上記剤又は組成物を投与する方法であり、ここで、本実施形態の脱毛抑制剤又は毛髪の脱色素化抑制剤は、経口投与や経皮投与によりその効果を奏する可能性が考えられ、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、クリーム剤、内用液剤やヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、エアゾール、軟膏、シャンプーやリンス等へ添加し投与する方法が考えられる。また、注射剤として、医師や看護師による皮下等への注射により投与する方法も考えられる。
【0060】
(作用効果)
以下に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態は、加齢に伴う白毛化と脱毛のメカニズムを解明し、脱毛治療や白髪治療等へ役立つ技術の提供を目的として実験を行った結果得られた知見に基づいている。すなわち、後述の実施例に示すように、色素幹細胞及び毛包幹細胞について詳細に調べたところ、加齢に伴う白毛化と脱毛に先立ち、色素幹細胞及び毛包幹細胞の消失が認められることが明らかとなり、さらに、毛包幹細胞において本来発現するヒトXVII型コラーゲンが欠損すると、毛包幹細胞によって維持されている色素幹細胞の消失がおこり、これに続いて毛包幹細胞も消失し始めることが明らかとなった。これにより、幹細胞が分化細胞を供給できなくなるため、白髪と脱毛が同時進行することが明らかとなった。
【0061】
本実施形態の脱毛抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、後述の実施例に示すように脱毛を抑制するという作用を有するため、それを含む本実施形態の脱毛抑制剤自体も脱毛を抑制するという効果を奏する。
【0062】
さらに、本実施形態の脱毛抑制剤は、上記(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失による脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失による脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞の消失による脱毛の抑制剤であってもよい。この場合にも、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛包幹細胞の消失を抑制するという機能を有するため、それを含む脱毛抑制剤自体も毛包幹細胞の消失を抑制するという効果を奏し、その結果、脱毛を抑制するという効果を奏する。
【0063】
また、本実施形態の脱色素化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。本実施形態の毛髪の脱色素化抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛髪の脱色素化を抑制するという作用を有するため、それを含む毛髪の脱色素化抑制剤自体も毛髪の脱色素化を促進するという効果を奏する。
【0064】
さらに、本実施形態の毛髪の脱色素化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失による毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失による毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞の消失による毛髪の脱色素化抑制剤であってもよい。この場合にも、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が色素幹細胞の消失を抑制するという機能を有するため、それを含む毛髪の脱色素化抑制剤自体も色素幹細胞の消失を抑制するという効果を奏し、その結果、毛髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する。
【0065】
また、本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む。本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が脱毛を抑制するという作用を有するため、その様な機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を毛包幹細胞を含む領域特異的に発現させる組成物自体も脱毛を抑制するという効果を奏する。
【0066】
また、本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底層において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む。本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が脱毛を抑制するという作用を有するため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を表皮基底層に発現させる組成物自体も脱毛を抑制するという効果を奏する。
【0067】
また、本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底細胞特異的に発現するように制御するケラチン14プロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含んでもよい。この場合にも、本実施形態の脱毛抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が脱毛を抑制するという機能を有するため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を表皮基底細胞特異的に発現させることができる組成物自体も脱毛を抑制するという効果を奏する。
【0068】
また、本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む。本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛髪の脱色素化を抑制するという作用を有するため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を毛包幹細胞を含む領域特異的に発現させる組成物自体も毛髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する。
【0069】
また、本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底層において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む。本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛髪の脱色素化を抑制するという作用を有するため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を表皮基底層に発現させる組成物自体も毛髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する。
【0070】
また、本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底細胞特異的に発現するように制御するケラチン14プロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含んでもよい。この場合にも、本実施形態の毛髪の脱色素化抑制のための組成物は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛髪の脱色素化を抑制するという機能を有するため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を表皮基底細胞特異的に発現させることができる組成物自体も毛髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する。
【0071】
また、本実施形態は、上記の脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、脱毛抑制のための組成物又は毛髪の脱色素化抑制のための組成物を投与することを含む、脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法を含む。後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機能及び毛髪の脱色素化を抑制するという機能を有するため、それを投与することを含む方法も脱毛又は毛髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する。
【0072】
さらに、本実施形態の色素幹細胞の異所性分化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。本実施形態の色素幹細胞の異所性分化抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンが色素幹細胞の異所性分化を抑制するという作用を有するため、それを含む異所性分化抑制剤自体も色素幹細胞の異所性分化を抑制し、その結果、色素幹細胞の消失を抑制するという効果を奏する。
【0073】
さらに、本実施形態の色素幹細胞の異所性分化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化抑制剤であってもよい。この場合にも、本実施形態の色素幹細胞の異所性分化抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制するという機能を有するため、それを含む異所性分化抑制剤自体も色素幹細胞の異所性分化を抑制するという効果を奏し、その結果、色素幹細胞の消失を抑制するという効果を奏する。
【0074】
また、本実施形態の色素幹細胞の細胞死抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。本実施形態の色素幹細胞の細胞死抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が色素幹細胞の消失を抑制するという作用を有するため、それを含む消失抑制剤自体も色素幹細胞の消失を抑制し、その結果、色素幹細胞の維持を促進するという効果を奏する。
【0075】
さらに、本実施形態の色素幹細胞の細胞死抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失の抑制剤であってもよい。この場合にも、本実施形態の色素幹細胞の細胞死抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体が色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失を抑制するという機能を有するため、それを含む細胞死抑制剤自体も色素幹細胞の細胞死を抑制するという効果を奏し、その結果、色素幹細胞の消失を抑制するという効果を奏する。
【0076】
また、本実施形態の毛包幹細胞の異常分化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。本実施形態の毛包幹細胞の異常分化抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンが毛包幹細胞の異常分化を抑制し、毛包幹細胞の維持を促進するという作用を有するため、それを含む異常分化抑制剤自体も毛包幹細胞の異常分化を抑制し、その結果、毛包幹細胞の消失を抑制するという効果を奏する。
【0077】
また、本実施形態の毛包幹細胞の異常分化抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ、毛包幹細胞のバルジ領域での成熟した細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ、毛包幹細胞のバルジ領域での成熟した細胞への分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞のバルジ領域での成熟した細胞への分化抑制剤であってもよい。後述の実施例に示すように、毛包幹細胞はバルジ領域を構成しており、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は、毛包幹細胞が未分化角化細胞から異常な方向へ成熟分化することを抑制するという機能を有する。そのため、この場合にも、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を含む本実施形態の異常分化抑制剤自体も、同様に毛包幹細胞の異常分化を抑制し、その結果、毛包幹細胞の消失を抑制するという効果を奏する。
【0078】
また、本実施形態の毛包幹細胞の消失抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ、毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む。本実施形態の毛包幹細胞の消失抑制剤は、後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲンが毛包幹細胞の消失を抑制し毛包幹細胞の維持を促進するという作用を有するため、それを含む消失抑制剤自体も毛包幹細胞の消失を抑制し、その結果、毛包幹細胞の維持を促進するという効果を奏する。
【0079】
また、本実施形態の毛包幹細胞の消失抑制剤は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化による消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ、毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化による消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を含む、毛包幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化による消失抑制剤であってもよい。この場合には、後述の実施例に示すように、毛包幹細胞はバルジ領域を構成しており、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体は毛包幹細胞が未分化角化細胞から異常な方向へ成熟分化することによる消失を抑制するという機能を有する。そのため、そのような機能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を含む本実施形態の消失抑制剤自体も、同様に毛包幹細胞の消失を抑制し、その結果、毛包幹細胞の維持を促進するという効果を奏する。
【0080】
以上、配列番号:1に示すアミノ酸配列および配列番号2に示すヌクレオチド配列を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0081】
例えば、本実施形態の脱毛抑制剤または毛髪の脱色素化抑制剤は、XVII型コラーゲンまたはその変異体のみからなる必要はなく、他にも脱毛抑制作用または毛髪の脱色素化作用が知られている各種成分、あるいは皮膚、特に頭皮、および体毛、特に毛髪に有益な活性を有することが知られている各種成分を好適に含むことができる。その場合には、それらの各種成分との相加効果または相乗効果によって、さらに優れた脱毛抑制効果または毛髪の脱色素化効果が得られることが期待される。
【0082】
例えば、UVブロック剤、たとえばサンスクリーン剤; ビタミン(A,C,またはE)およびその誘導体(レチニルパルミテート、トコフェリルアセテート、またはトコフェリルパルミテート)、;セラミド、;タンパク質およびタンパク質加水分解物、ペプチド、およびアミノ酸(天然); 尿素およびアラントイン; 糖および糖誘導体、たとえば還元または酸化糖; 植物由来の抽出物(アヤメ科植物由来のもの、またはダイズ由来のもの)または微生物由来の抽出物; ヒドロキシ酸、特にヒドロキシカルボン酸またはケトカルボン酸(フルーツ酸、サリチル酸)およびそのエステル(5−n−オクタノイルサリチル酸); ジアゾキシド、スピロオキサゾンまたはリン脂質(レシチン、特に脱脂レシチン); ニコチン酸誘導体(ニコチン酸エステル、特に、ニコチン酸トコフェリル、ニコチン酸ベンジルおよびニコチン酸C1〜C22アルキル、例えばニコチン酸メチルもしくはニコチン酸ヘキシル);ピリミジン誘導体(2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン3−オキシド、ピリミジン3−オキシド誘導体、2,4−ジアミノピリミジン3−N-オキシド);抗アンドロゲン(ステロイド系もしくは非ステロイド系5α-還元酵素阻害剤、酢酸シプロステロン、アゼライン酸とその塩および誘導体、フルタミド、プロスタグランジン、たとえば塩またはエステル形態のPGF−2αまたはPGE2、並びにこれらの類似体、たとえばラタノプロスト; 殺菌剤、抗かび剤、または抗フケ剤(セレン誘導体、ケトコナゾール、オクトピロックス、トリクロカルバン、トリクロサン、ピリチオン亜鉛、イトラコナゾール、アジア酸、ヒノキチオール、ミピロシン、テトラサイクリン、特にエリスロマイシン、塩酸クリニシン、ベンゾイルパーオキサイドもしくはベンジルパーオキサイド、ミノサイクリン); カルシウムチャネルアンタゴニスト、およびカリウムチャネルアゴニスト; ホルモン; ステロイド系抗炎症剤(グルココルチコイド、コルチコステロイド)、ならびに非ステロイド系抗炎症剤(グリシルレチン酸およびα-ビサボロール、ベンジダミン); レチノイドRXRレセプターアゴニストおよびレチノイドアンタゴニスト; フリーラジカルスカベンジャーおよび抗酸化剤(ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエン); 抗脂漏剤; 抗寄生虫剤;抗ウイルス剤; 抗痒疹剤; カロテノイド(β−カロテン); ラクトンおよびその相当する塩; 必須脂肪酸(リノレイン酸、エイコサテトラエン酸、リノレン酸、およびエイコサトリエン酸)またはそれらのエステルおよびアミド; 必須オイル; フェノールおよびポリフェノール、たとえばフラボノイド;などをXVII型コラーゲンまたはその変異体と一緒に好適に用いることができる。
【0083】
また、本実施形態の脱毛又は毛髪の脱色素化の抑制方法では、上記の各種の剤あるいは組成物を投与するが、これらの投与対象は、哺乳動物であれば性別・年齢を問わず種も特に限定されないが、特に脱毛または毛髪の脱色素化の進行が懸念される場合に予防的にあるいは治療的に投与されるのが望ましい。なお、親族に脱毛または毛髪の脱色素化が進行する傾向の見られる場合に、遺伝的にXVII型コラーゲンまたはその変異体の遺伝子を欠損しているか、その遺伝子の発現が不良である可能性があるため、特に投与の対象として好ましい。さらに、これらの投与対象に対しては、事前に周知の種々の手法を用いて遺伝子を検査を行った結果、実際にXVII型コラーゲンまたはその変異体の遺伝子を欠損しているか、その遺伝子の発現が不良であることが確認されている雄のヒトを対象とすることがより好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
実施例1 COL17KOマウスの解析
1.試験方法
(1)実験動物
本研究で用いたDct−lacZトランスジェニックマウスは、英国MRC、Ian Jackson博士のご提供、CAG−CAT−EGFPマウスは大阪大学、宮崎純一教授のご提供、Dcttml(Cre)BeeマウスはFreedrich Beerman博士のご提供、K14-hCOL17トランスジェニックマウスはウィスコンシン医科大学のKim Yancey教授の提供、COL17KOマウスは北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野清水宏教授の提供による。
【0086】
(2)免疫組織化学
マウスの背部皮膚を4%パラホルムアルデヒド固定、またはそのままで、OCTcompound (Sakura Finetechnical)で凍結包埋した後、8μmの切片にし、3%スキムミルクを用いて常温で30分間ブロッキングした。その後、一次抗体を適当に希釈し4℃で一晩反応させ、PBSで洗浄した後に二次抗体を反応させた。
【0087】
免疫染色に使用した一次抗体は、抗ヒトXVII型コラーゲン抗体(N18、Santa Cruz)、抗マウスXVII型コラーゲン抗体(滋賀医科大学田中俊広教授より提供して頂いた)、抗βガラクトシダーゼ抗体 (Cappel)、抗ケラチン15抗体(Covance)、抗CD34抗体(eBioscience)、抗α6インテグリン抗体(BD Pharmingen)、抗S100a6抗体(LAB VISION)である。二次抗体はAlexaFlour488、568、594(Molecular Probes)を用いた。
【0088】
(3)H.E.染色
マウスの背部皮膚をブアン固定後にパラフィン包埋した後、4μmの切片を作製し、ヘマトキシリン及びエオジンを用いて定法により染色した。
【0089】
(4)色素細胞の分離
生後6日の色素幹細胞を含む色素細胞がGFP陽性となっているCAG−CAT−EGFP; Dcttml(Cre)Beeマウスの背部皮膚を採取し、1000U/mlのディスパーゼ(SANKO JUNYAKU)/PBSの中にて4℃で一晩反応させた後、実体顕微鏡下で真皮を取り除いた。その後、0.25%トリプシンを加え、37℃で10分反応させ、ウシ胎仔血清で中和した後、フローサイトメトリー(FACS)法を用いてGFP陽性の色素細胞を分離した。
【0090】
(5)フローサイトメトリー(FACS)分析
色素細胞の分離には、上記の方法でGFP陽性細胞分画を採取した。また角化細胞については同様に酵素処理にて用意した皮膚懸濁液を上記のCD34、α6インテグリンの抗体と反応させた。FACS分析にはBay Bioscience JSANまたはBecton Dickinson FACS caliberを使用した。
【0091】
(6)RT−PCRによるマウスXVII型コラーゲンmRNA発現の解析
マウス背部皮膚およびGFP陽性の色素細胞からTRIzol(GIBCO)を用いてRNAを抽出した。3μgのRNAをTHERMOSCRIPT RT−PCR System(GIBCO)を用いて逆転写を行いcDNAを合成した。以下のプライマーを用いてマウスXVII型コラーゲンmRNA発現の解析を行った。また、内部標準としてGAPDHmRNAの発現を測定した。
・マウスXVII型コラーゲンのプライマー配列
forward primer:5’−actcgcctcttcttcaacca(配列番号:4)
reverse primer:5’−gagcaggacgccatgttatt(配列番号:5)
・GAPDH
forward primer:5’−accacagtccatgccatcac(配列番号:6)
reverse primer:5’−tccaccaccctgttgctgta(配列番号:7)
【0092】
(結果及び考察)
COL17KOマウスは多くが生後2週間以内に死亡するが、生存する個体は、生後4週頃までは外見上は正常で、黒色の体毛に覆われていた(図1a)。しかしその後、徐々に白毛化がみられ、生後3ヵ月頃には、白毛化・脱毛がかなり目立つようになるとともに、体毛が通常よりも長くなってくる現象がみられた。生後6ヵ月頃には全身がほぼ完全に白毛化し、最終的に10ヵ月頃には全身で脱毛が起こった(図1b)。
【0093】
我々は以前に色素幹細胞の維持不全が白毛化の原因となりうることを明らかにした。そこで、COL17KOマウスの白毛化の原因が、色素幹細胞の維持不全にあるのかどうかを調べるため、色素幹細胞をマーキングできるDct−LacZトランスジーンをCOL17KOマウスに導入し、COL17KOマウスの色素幹細胞の分布及び形態を観察した。その結果、XVII型コラーゲンは、バルジ領域及び表皮の基底細胞で強く発現していること及び色素幹細胞が毛包幹細胞に囲まれた状態で存在していることが明らかとなった(図1c)。また、COL17KOマウスにおける色素幹細胞の分布・形態は、出生直後において異常は認めなかったが、生後3ヵ月頃より、色素幹細胞の数が徐々に少なくなってくると同時に、メラニン顆粒をもち胞体がやや大きく複数の突起をもつ分化した形態の成熟した色素細胞がみられるようになった(図1d、e)。全身が白毛化を来す5ヵ月頃では、色素幹細胞は完全に消失した。以上の結果から、COL17KOマウスにおける白毛化の原因は色素幹細胞の維持不全によるものと結論づけられた。
【0094】
一般的にXVII型コラーゲンは、ヘミデスモソームを形成する上皮系の細胞で発現する事が知られている。色素幹細胞を含む皮膚の色素細胞においてXVII型コラーゲン発現の有無を調べるため、色素細胞でGFPを発現するマウス(CAG−CAT−EGFP; Dcttml(Cre)Beeマウス)で、GFP陽性の色素細胞のRNAを回収し、RT−PCRを用いて、マウスXVII型コラーゲンmRNAの発現を解析したところ、色素幹細胞を含む色素細胞においてXVII型コラーゲンmRNAの発現がないことを確認した(図1f)。以上の結果より、色素幹細胞ではXVII型コラーゲンの発現はなく、COL17KOマウスでみられる色素幹細胞の消失の原因として、色素幹細胞の周囲の細胞におけるXVII型コラーゲン発現の異常が原因である可能性が示唆された。
【0095】
毛包幹細胞の異常の有無を調べるため、最初にCOL17KOマウス及びコントロールの背部皮膚を各週齢で調べた。 H.E.染色組織像の所見上、生後3ヵ月頃より、表皮の肥厚と脂腺の増大がみられた(図2a)。さらに6ヵ月頃では、毛包の嚢胞化や、萎縮した毛包が多くみられた(図2b)。最終的に10ヵ月頃では、毛包など皮膚付属器はほぼ消失した(図2c)。これらの所見より、毛包の維持にはXVII型コラーゲンが必要であることが示唆された。また、これらのH.E.染色組織像の所見は表皮における幹細胞が枯渇するマウスとして報告されたc−Mycが基底細胞で活性化されたマウスや、Rac1が皮膚でノックアウトされたマウスのH.E.染色組織像の所見と非常に似ていることがわかった。そこで、COL17KOマウスでも、同様に毛包幹細胞が枯渇している可能性を考え、毛包幹細胞マーカーである抗ケラチン15抗体、抗CD34抗体、抗α6インテグリン抗体、抗S100a6抗体での染色、及びFACS分析を行い、毛包幹細胞の枯渇が確認できた(図2d−f)。
【0096】
以上の結果より、本実施例において初めて、XVII型コラーゲンの欠損は白毛化を来たし、色素幹細胞の消失に起因することが明確に実証された。つまり、毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲンは毛包幹細胞の維持においてのみならず、色素幹細胞の維持において必須であることが明らかになった。
【0097】
なお、一部繰り返しにはなるが、上記の非特許文献4では、COL17KOマウスにおいて体毛が少なく白毛の割合の多いマウスが見られることが報告されているが、非特許文献4は、そもそも脱毛・毛髪の脱色素化等に関する研究報告ではない。そのため、COL17KOマウスの体毛の状態に関しても、何日齢の時点でどのような状態であったか等具体的な記載はされていない。すなわち、COL17KOマウスが出生当初から毛髪の量が少なく白い毛髪の割合が多かったのか、出生当初より充分な量の黒い毛髪を有していたのに徐々に毛髪の量が減少し白い毛髪の割合が増えていったのかは説明されていない。その一つの原因は、COL17KOマウスは多くが生後2週間以内に死亡するため、十分な経過観察が困難だったからでもある。
【0098】
これに対して、本実施例では、COL17KOマウスは多くが生後2週間以内に死亡するが、生存する個体は、生後4週頃までは外見上は正常で、黒色の体毛に覆われていることを十分な経過観察によって明らかにした(図1a)。そして、その後、さらなる経過観察によって、徐々に白毛化がみられ、生後3ヵ月頃には、白毛化・脱毛がかなり目立つようになるとともに、体毛が通常よりも長くなってくる現象がみられることを明らかにした。そして、約1年の長きにわたる経過観察によって、ついに生後6ヵ月頃には全身がほぼ完全に白毛化し、最終的に10ヵ月頃には全身で脱毛が起こることを明らかにし、コラーゲンXVIIの欠損が哺乳動物の白毛化・脱毛の原因であることを初めて明確に実証することに成功した。これまでは、このようなCOL17KOマウスの体毛状態の長期にわたる十分な経過観察が行われていなかったため、本実施例によって、初めてコラーゲンXVIIの欠損が哺乳動物の白毛化・脱毛の原因であることが明らかになったのである。
【0099】
実施例2 COL17KO, K14−hCOL17トランスジェニックマウスの解析
(1)実験動物
COL17KOは、北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野清水宏教授より提供して頂いた。
【0100】
(COL17KO, K14−hCOL17トランスジェニックマウスの作製)
マウス129Sv/Evゲノムライブラリー(Stratagne社)から、14.7kbのマウスXVII型コラーゲン遺伝子をクローニングし、さらにそこから11.5kbの制限酵素NheI−NotIフラグメントをサブクローニングした。このフラグメント中にあるエクソン2からイントロン3の部位へPGK/Neoカセットを組み込んでターゲッティングベクター(Stratagne社)を作製し、129Sv/Evマウスの胚性肝細胞に組み換えベクターを導入し、正確にターゲット化された胚細胞をC57BL/6Jマウスのblastcyteに注入してキメラマウスを作製した。このキメラマウスとC57BL/6Jマウスとをさらに交配させ、F1ヘテロ動物を4世代以上にわたってクロスさせてヘテロマウス(COL17m−/−)を作製した。
【0101】
K14プロモーターの下流へXVII型コラーゲンcDNAを組み込むことによって、表皮下層のみに特異的にヒトXVII型コラーゲンを発現するC57BL/6Jをバックグラウンドとするトランスジェニックマウス(COL17m+/+、h+マウス)とヘテロマウス(COL17m+/−マウス)を交配した。その結果得られたヘテロかつヒトXVII型コラーゲントランスジーンを有するマウス(COL17m+/−、h+マウス)同士を交配し、COL17KO, K14−hCOL17トランスジェニックマウス(COL17m−/−、h+マウス)を作製した。
【0102】
(2)免疫組織化学
マウスの背部皮膚を実施例1と同様の方法で免疫染色した。免疫染色に使用した一次抗体は、抗マウスXVII型コラーゲン抗体(滋賀医科大学田中俊広教授より提供して頂いた)及び抗βガラクトシダーゼ抗体 (Cappel) である。Dctの染色は、Dct−lacZ transgeneを持つマウスを抗βガラクトシダーゼ抗体で染色した。
【0103】
(結果及び考察)
COL17KOマウスにおいて毛包幹細胞の異常が色素幹細胞の異常を引き起こすことを確認するため、ケラチン14プロモーターでヒトXVII型コラーゲンが発現するトランスジーンを導入したCOL17KOマウス(COL17m−/−、h+マウス)を調べた。このマウスではバルジを含む角化細胞ではヒトXVII型コラーゲンが発現しているが、色素細胞を含むその他の細胞ではヒト・マウスどちらのXVII型コラーゲンも発現していないことを確認した(図3a及びb(一部データ未掲載))。このマウスでは生後5ヵ月を経過しても脱毛及び白毛化はみられず(図3a及びb)、またDct陽性の色素幹細胞の形態・分布にも異常はみられなかった(図3c及びd)。以上の結果より、XVII型コラーゲンの欠損は脱毛及び白毛化を来たし、その脱毛及び白毛化は毛包幹細胞及び/又は色素幹細胞の消失に起因すること、毛包幹細胞でXVII型コラーゲンを発現させることで毛包幹細胞及び色素幹細胞の消失を防げることが示された。つまり、毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲンは、毛包幹細胞の維持においてのみならず、色素幹細胞を維持し、脱毛及び毛髪の脱色素化の抑制において必須であることが明らかになった。
【0104】
すなわち、本実施例によって、遺伝的にXVII型コラーゲンを欠損する哺乳動物の毛包幹細胞においてXVII型コラーゲンを発現させてやることにより、毛包幹細胞に十分な量のXVII型コラーゲンを供給してやると、マウスでは生後5ヵ月を経過しても脱毛及び白毛化はみられず、色素幹細胞の形態・分布にも異常はみられなかったことが初めて明らかになった。これまでは、このようなケラチン14プロモーターでヒトXVII型コラーゲンが発現するトランスジーンを導入したCOL17KOマウスの体毛状態および色素幹細胞の形態・分布の長期にわたる十分な経過観察が行われていなかったため、本実施例によって、初めて毛包幹細胞に十分な量のXVII型コラーゲンを供給してやると、毛包幹細胞及び色素幹細胞の消失を防げるために、脱毛及び白毛化を抑制することができることが明らかとなった。
【0105】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】COL17KOマウスでみられる白毛化および脱毛、コントロールマウスにおけるXVII型コラーゲン発現を示す図である。(a)COL17KOマウスの写真。上から生後2週・6週・2ヵ月・3ヵ月・6ヵ月・10ヵ月のマウスを示す。進行性の脱毛及び白毛化がみられた。(b)10ヵ月のコントロールの写真。 (c) 左:XVII型コラーゲンはバルジ領域及び表皮の基底細胞で強く発現している。右:色素幹細胞は毛包幹細胞に囲まれている。(d)出生後6日、3ヵ月、5ヵ月のコントロールのLacZ染色像。(e)ノックアウトマウス(KOマウス)のLacZ染色像。KOマウスではコントロールマウスに比べてLacZ陽性色素幹細胞は徐々に減少し、分化した像が目立つようになる。5ヵ月以降では陽性細胞はほぼ全て消失する。(f) RT−PCR。GFP陽性色素細胞ではXVII型コラーゲンの発現は認めない。
【図2】色素幹細胞のニッチである毛包幹細胞の消失を示す図である。(a)生後3ヵ月頃より、表皮の肥厚、脂腺の増大がみられた。(b)生後6ヵ月頃より、毛包が嚢胞化する像もみられた。(c)生後10ヵ月では、毛包など皮膚付属器は消失する。(d)α6インテグリンとCD34二重陽性の毛包幹細胞は、COL17KOマウスでは著しく減少した。 (e)コントロール組織の毛包幹細胞マーカーでの染色。(f)COL17KOマウス組織の毛包幹細胞マーカーでの染色。COL17KOマウスではケラチン15・CD34・α6インテグリン・S100a6陽性細胞を認めなかった。
【図3】COL17m−/−、h+マウス及びCOL17KOマウスにおける毛髪の状態、ヒトXVII型コラーゲンの発現及び幹細胞の形態・分布を示す図である。(a)COL17KOマウスでは、XVII型コラーゲンの発現を認めず、進行性の白毛化および脱毛が観察された。(b)COL17m−/−、h+マウスでは、表皮基底層および毛包のバルジ領域においてヒトXVII型コラーゲンの発現が観察され、脱毛及び白毛化は観察されず、野生型マウスと同様の外観を示した。(c)COL17KOマウスでは、生後6日では色素幹細胞が観察されたが、生後5ヵ月では色素幹細胞の消失がみられた。(d)COL17m−/−、h+マウスでは、生後6日においても生後5ヵ月においても幹細胞の消失はみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、脱毛抑制剤。
【請求項2】
前記脱毛が、毛包幹細胞の消失による脱毛である、請求項1に記載の脱毛抑制剤。
【請求項3】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛髪の脱色素化抑制剤。
【請求項4】
前記毛髪の脱色素化が、色素幹細胞の消失による脱色素化である、請求項3に記載の毛髪の脱色素化抑制剤。
【請求項5】
XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは
(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター
を含む、脱毛抑制のための組成物。
【請求項6】
前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは、
(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター、
を含む、毛髪の脱色素化抑制のための組成物。
【請求項9】
前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体
を含む、色素幹細胞の異所性分化抑制剤。
【請求項12】
前記色素幹細胞の異所性分化が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化である、請求項11に記載の異所性分化抑制剤。
【請求項13】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、色素幹細胞の消失抑制剤。
【請求項14】
前記色素幹細胞の消失が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失である、請求項13に記載の消失抑制剤。
【請求項15】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛包幹細胞の異常分化抑制剤。
【請求項16】
前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
前記毛包幹細胞の異常分化は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化である、請求項15に記載の異常分化抑制剤。
【請求項17】
(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は
(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛包幹細胞の消失抑制剤。
【請求項18】
前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
前記毛包幹細胞の消失は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への成熟分化による消失である、請求項17に記載の消失抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161509(P2009−161509A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132741(P2008−132741)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【分割の表示】特願2007−339302(P2007−339302)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 谷村心太郎他,Inflammation and Regeneration,2007年7月,Vol.27,No.4 第428頁及び学会発表プログラムに発表
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】