説明

Xa因子活性を阻害する新規化合物

本発明は、式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは薬理学的に許容される配合物に関する。これらの化合物はXa因子の阻害および血栓症の予防および/または治療に用いることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固阻害作用を有する新規化合物(いわゆる抗凝固薬)、それらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物および水和物、それらを活性成分として含む医薬組成物、そのような化合物、塩および組成物の製造法、並びにそれらの血栓塞栓症の予防および/または治療における使用に関する。これらの化合物、塩および組成物は非常に有効なXa因子阻害剤である。本発明はまた、これらの化合物および塩の活性形でもよいプロドラッグ、ラセミ化合物およびジアステレオマーに関する。
【背景技術】
【0002】
血栓塞栓症は、比較的大きな手術、長時間の不動、下肢の骨折、肥満、血中脂肪代謝異常、グラム陰性生物感染、癌および加齢のようなり危険因子を持つ人々における血液凝固傾向の増大に起因する。
静脈血栓症は水腫の形成または冒された静脈によって排出された組織による炎症につながりうる。より深い静脈の血栓症(いわゆる深部静脈血栓症)は重い合併症、例えば肺血栓塞栓症につながりうる。動脈血栓症は冒された動脈による組織の虚血性壊死、例えば冒された冠状動脈の場合は心筋梗塞につながりうる。他の血栓塞栓症は、例えば動脈硬化症、卒中(発作)、狭心症、間欠性跛行である。
【0003】
正常な生理学的状態では、自然な血液凝固は傷ついた血管から多量の血液が失われるのを防ぐ。血液凝固の間、液体血液は、栓を形成することによって傷ついた血管を塞ぐゼラチン状の塊である血餅に変換される。その過程で、血漿中に存在する可溶性フィブリノーゲンは多段階過程、いわゆる凝固カスケードで繊維ゼラチン状凝固物質フィブリンに変換される。
【0004】
凝固活性化の2つの異なる経路間には差異がある。本来の凝固経路は、血液が非生理学的表面と接触するときに開始される。非固有凝固経路は、血管が傷つくことによって開始される。いずれの凝固経路も、凝固因子X、セリンプロテアーゼがその活性形(Xa因子)へ変換される共通経路で一緒になっている。いわゆるプロトロンビナーゼ複合体であるV
a因子およびCa2+と一緒になったXa因子はプロトロンビンをトロンビンへ変換させる。トロンビンは、ペプチドをフィブリノーゲンから開裂することによりフィブリンモノマーを離し、これらのモノマーは凝固してフィブリン繊維を形成することが可能である。最後に、XIII因子は架橋を生じさせ、すなわちフィブリン繊維を安定化させる。
【0005】
抗凝固薬は血栓塞栓症の予防および治療のいずれにも用いられる。狭義の抗凝固薬に関するかぎりでは、すぐにききめがあり、特定の血液凝固因子を直接阻害するヘパリンと、ビタミンKアンタゴニスト(例えば、クマリン誘導体)との間には差異がある。後者は、ビタミンKの存在に関係がある特定の凝固因子の肝臓での産生を阻害し、もっぱらゆっくり効き始める。もう一方の抗凝固薬は、フィブリン溶解システムの直接的または間接的活性化を生じさせるフィブリン溶解薬(fibrinolytics)であり、そして例えばアセチルサリチル酸のような血小板凝集阻害剤である。さらにまれな使用法は酵素アンクロッドによる血中フィブリノーゲンレベルの低減である。抗凝固薬を用いる目的は、血管を閉鎖しうる血餅の形成を妨げること、あるいはまたそれが形成されるやいなやそれを再度溶解することである。
【0006】
上記の狭義の抗凝固薬、すなわちヘパリンおよびビタミンKアンタゴニストには欠点がある。ヘパリンの場合、非分別ヘパリン(UFH)と低分子量ヘパリン(LMWH)との間に差異がある。UFHの欠点は、静脈内投与しなければならず、抗凝固効果が変化し、従って患者および投与量の適応をしばしばモニターする必要があることである。LMWHは、モニターなしの一定投与量で皮下に用いることができるが、UFHと比べてその効果は鎖長が短いのではるかに減少する。
【0007】
ワルファリンのようなビタミンKアンタゴニストは、患者ごとに異なる(おそらく遺伝因子による)活性度を示す。上記の遅い作用開始に加えて、これは、患者がモニターしなければならず、そして投与量を個々に適応させることが必要であるという欠点を伴う。
【0008】
他の公知の抗凝固薬はトロンビン阻害剤のグループに属する。その分野での関連研究活動の最新の大要は例えば、Jules A.Shafer, Current Opinion in Chemical Biology,1988,2:458−485,Joseph P.Vacca, Current Opinion in Chemical Biology,2000,4:394−400およびFahad AlobeidiおよびJames A. Ostrem, DDT, Vol.3,No.5,1998年5月:223−231に見ることができる。
【0009】
トロンビン阻害剤の決定的な欠点は、望ましい効果を得るためには、生体内でのトロンビン活性を出血傾向が高まるような大きな程度に抑制する必要があり、投薬が難しい。
これに対して、Xa因子阻害剤はトロンビンのプロトロンビンからの新たな形成を抑制させ、早期止血に必要な目下のトロンビン活性を損なわない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、有用な性質、特に抗凝固活性を有する新規化合物を提供することである。
【0011】
さらに詳しくは、目的は、有効性が改善され、副作用が少ないおよび/または選択性が高い新規なXa因子阻害剤を提供することである。さらに、適した医薬組成物を提供することである。これらの化合物および組成物は、好ましくは非経口的または経口的、特に経口的に投与することができる。
【0012】
本発明のさらなる目的は、これらの新規化合物の製造法を提供することである。
これらの新規化合物はさらに、血栓塞栓症の予防および/または治療に用いるのに適している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高い活性と選択性を有し、そして特に経口投与することができる、抗凝固化合物、それらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物、水和物および配合物に関する。本発明はさらに、これらの化合物および塩の活性形でもよいプロドラッグ、ラセミ化合物およびジアステレオマーに関する。該化合物および塩は、それ自身がプロドラックであって、新陳代謝(metabolisation)によってのみ活性化されてもよい。活性成分としてこれらの化合物および塩等を含む医薬組成物についても記載する。
【0014】
本発明は、一般式(I)の化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは薬理学的に許容される配合物に関する。
【0015】
【化1】

(式中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、C1−、C2−、C3−もしくはC4−アルキルオキシ基またはフッ素原子であり、そして、Rは、5、6または7個の環原子を有する置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基である)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
明細書、特に請求の範囲において次の定義が関係する。
【0017】
「アルキル」は、好ましくは1、2、3または4個の炭素原子を有する飽和の直鎖または分枝鎖炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチルまたはn−ブチル基を指す。
【0018】
さらに、「アルキル」は、1、2、3個またはそれ以上の水素原子がハロゲン原子(好ましくはFまたはCl)に入れ代わっている基、例えば2,2,2−トリクロロエチルまたはトリフルオロメチル基を指す。
【0019】
「5、6または7個の環原子を有するヘテロシクロアルキル基」は、1、2または3(好ましくは2)個の環炭素原子が互いにそれぞれ独立して酸素、窒素または硫黄原子(好ましくは窒素原子)に入れ代わっているシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基を指す。「ヘテロシクロアルキル」はさらに、1つ以上の水素原子が互いにそれぞれ独立してフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子に、あるいはOH、=O、SH、=S、NH2、=NHまたはNO2基に入れ代わっている相当する基を指す。例は、ピペリジル、モルホリニルまたはピペラジニル基である。
【0020】
「置換されていてもよい」は、1、2またはそれ以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子に、あるいはOH、=O、SH、=S、SO2NH2、NH2、=NH、−C(=NH)NH2またはNO2基に入れ代わっている基を指す。この表現はさらに、1、2またはそれ以上の水素原子が互いにそれぞれ独立してC1−C4アルキル基に入れ代わっている基を指し、C1−C4アルキル基は、OH、=O、SH、=S、SO2NH2、NH2、=NH、−C(=NH)NH2またはNO2基で置換されていることもありうる。
Xは水素原子またはヒドロキシ基(特に水素原子)であるのが好ましい。
【0021】
Rは下記式の基であるのがさらに好ましい。
【0022】
【化2】

(式中、nは0、1または2(特に1)であり、そしてR1はC1−、C2−、C3−もしくはC4−アルキル基(特にCH3またはCF3基)である)
【0023】
Rは式−N(CH2CH22NCH3の環状基(N−メチルピペラジニルまたは4−メチルピペラジニル基)であるのが特に好ましい。
【0024】
3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ基の立体化学がβ−D−グルコースのそれに相当するのがさらに好ましい。
【0025】
次の化合物も好ましい:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド;その中の3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ基の立体化学が特にβ−D−グルコースまたはα−D−グルコースのそれに相当し、フェニルグリシン本体の立体化学が(S)配置であるとさらに好ましい。
【0026】
次の構造の1つを有する式(I)の化合物が特に好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
それらの置換のゆえに、式(I)の化合物は1つ以上のキラリティの中心を含む。従って、本発明には、あらゆる混合比の純粋な光学的対掌体全て、および純粋なジアステレオマー全て、そしてそれらの混合物が含まれる。本発明にはさらに、式(I)の化合物の全ての互変異性形が含まれる。
【0029】
式(I)の化合物の薬理学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される鉱酸、例えば塩酸、硫酸およびリン酸の塩;または有機酸、例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸の塩である。
式(I)の化合物は溶媒和、特に水和していてもよい。水和は例えば、製造過程の間に、または初めは無水である式(I)の化合物が吸湿性であるために生じうる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての少なくとも1種の式(I)の化合物および任意に担体物質および/または補助剤を含む。
【0031】
本発明がまた関係するプロドラッグ(例えば、R.B.Silverman, Medizinsche Chemie, VCH Weinheim,1995,第8章,p.361ff)は、式(I)の化合物、および特にアミジノ基上の、生理学的条件下で除去される少なくとも1つの薬理学的に許容される保護基、例えば、ヒドロキシ、アルコキシ、アラルキルオキシ、アシルまたはアシルオキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、アセチルまたはアセチルオキシ基よりなる。
【0032】
ここに記載の式(I)の化合物はWO0216312に記載の方法と同様に製造することができる。そのような方法で得られる化合物の場合、フェニルグリシン本体が(R)配置である式(I)の化合物および相当する(S)配置化合物の両者が非常に有効なXa因子阻害剤であり、全く同じに置換されているとき、(S)配置化合物は少しよりよい阻害性を有する。従って、本発明では、フェニルグリシン本体が(S)配置である式(I)の化合物が好ましく、(R)配置を有する化合物およびあらゆる混合比の混合物も非常に良好な阻害性を有し、本発明はそれらにも関するものである。
【0033】
3−アミノベンズアミジンは商業的に入手しうる;3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアミジンは、商業的に入手しうる4−ヒドロキシ−3−ニトロベンゾニトリルからピンナー反応(A.Pinner, F.Klein, Ber. 10,1889(1877);11,4,1475(1878);16,352,1643(1883))によって4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアミジンを得、その後、H2−Pd/Cで還元することにより製造することができる。別のベンズアミジンは同様にして製造することができる。
【0034】
グリコシル化アリール化合物(例えば、グリコシル化ベンズアルデヒド)は、例えば、Kleine等,Carbohydrate Research 1985,142,333−337およびBrewster等,Tetrahedron Letters 1979,5051−5054;ヘリシン(サリチルアルデヒド−β−D−グルコシド)は商業的に入手しうる。
【0035】
合成法が示されていない全ての出発物質は、例えばアクロス、アルドリッチ、フルカ、ランカスターまたはメルクの各社から商業的に入手しうる。
【0036】
本発明の化合物または医薬組成物は、制限されるわけではないが、Xa因子活性の阻害、血栓塞栓症、動脈再狭窄、敗血症、癌、急性炎症またはXa因子活性によって仲介される他の症状、特に静脈血栓症、水腫または炎症、深静脈血栓症、肺血栓症、血管手術の場合における比較的大きな手術後の血栓塞栓合併症、長時間の不動、下肢の骨折等、動脈血栓症、特に心筋梗塞時の冠状血管の動脈血栓症、および動脈硬化症、発作、狭心症、間欠性跛行等の予防および/または治療に用いることができる。
【0037】
一般に、初めに述べたように、本発明の活性成分は、できるだけ高いXa因子阻害作用を有し、同時にできるだけ高い選択性を有する。選択性は本発明では、Xa因子と、トリプターゼ、トリプシン、プラスミン、トロンビン、そしてさらなるセリンプロテアーゼとの間で阻害作用を比較することによって調べた。さらに、本発明の化合物は(固有および非固有の)凝固カスケードの別の酵素、例えばII因子、VII因子、VIIa因子、IX因子、IXa因子およびX因子の阻害剤として重要である。
【0038】
上述のように、式(I)の化合物、それらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物、および水和物、そしてさらに配合物および医薬組成物の治療における使用は本発明の範囲に入る。
【0039】
本発明はまた、血栓塞栓症の予防および/または治療用製剤の製造でのこれらの活性成分の使用に関する。一般に、式(I)の化合物は個々に、または他の望ましい治療薬と組み合わせて、公知の許容される方法を用いて投与される。投与は例えば次のルートの1つにより行える:糖衣錠、被覆錠剤、ピル、半固体物質、ソフトまたはハードカプセル、溶液、エマルジョンまたは懸濁液のような形で経口的に;注射用液のような形で非経口的に;座薬の形で直腸から;粉末配合剤またはスプレーのような形での吸入により、経皮的にまたは鼻腔内から。
【0040】
そのような錠剤、ピル、半固体物質、被覆錠剤、糖衣錠およびハードゼラチンカプセルの製造の場合、治療に有用な生成物は薬理学的に不活性な無機または有機医薬担体物質、例えばラクトース、サッカロース、グルコース、モルト、シリカゲル、デンプンまたはそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩、スキムミルク粉末等と混合しうる。ソフトカプセルの製造の場合、例えば植物油、石油、動物性または合成油、ワックス、脂肪およびポリオールのような薬学的担体物質を用いることができる。
溶液およびシロップの製造の場合、例えば水、アルコール、食塩水、水性デキストロース、ポリオール、グリセロール、植物油、石油、および動物性または合成油のような薬学的担体物質を用いることができる。座薬の場合、例えば植物油、石油、動物性または合成油、ワックス、脂肪およびポリオールのような薬学的担体物質を用いることができる。エーロゾル配合物の場合、目的に適した圧縮ガス、例えば酸素、窒素および二酸化炭素を用いることができる。薬学的に許容される薬剤はまた、防腐および安定化のための添加物、乳化剤、甘味剤、フレーバー剤、浸透圧を変えるための塩、バッファー、カプセル封入添加剤および酸化安定剤を含む。
【0041】
他の治療薬との組み合わせでは、ワルファリン等のような血栓塞栓症の予防および/ま
たは治療に通例用いられる他の活性成分を含めうる。
上記症状の予防および/または治療の場合、本発明の生物学的に活性な化合物の投与量は広い範囲で変えることができ、そして個々の要件に合わせて調整することができる。投与量は一般に、0.1μg〜10mg/kg体重/日が適しており、0.1〜4mg/kg/日が好ましい。適当な場合では、投与量は上記の値より下でも上でもよい。
日用量を例えば1、2、3または4回の別個の投与量で投与してもよい。例えば、1週間に1回の投与量で投与することも可能である。
【実施例】
【0042】
次の実施例で本発明を説明する。3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−2−イルオキシの立体化学はβ−D−グルコースのそれに相当する。
【0043】
実施例1:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0044】
【化4】

【0045】
3−アミノベンズアミジン2塩酸塩(6.243g、30mmol)をフラスコに量り入れ、平行して、ヘリシン(8.528g、30mmol)、トルエン−4−スルホン酸1水和物(5.707g、30mmol)および2−イソシアノ−1−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−エタノン(5.016g、30mmol)を3つのガラスビーカーに量り入れる。120mlのアセトニトリル:水(1:1)をフラスコに加える。
次に、攪拌しながら、ヘリシンおよびトルエン−4−スルホン酸1水和物をヘラで30分にわたって次々に室温にて加える。これに平行して、2−イソシアノ−1−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−エタノンを100mlのアセトニトリル:水(1:1)に溶解し、滴下漏斗(20mlのアセトニトリル:水(1:1)ですすぐ)に移す。ヘリシン、3−アミノベンズアミジン2塩酸塩およびトルエン−4−スルホン酸1水和物を10分間、室温で攪拌した後、この黄色溶液を0℃に冷却し、そして激しく攪拌しながら2−イソシアノ−1−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−エタノン溶液を0℃で滴加する。2時間後に滴加手順は完了する。攪拌を0℃でさらに2時間(合計4時間)続ける。次に、溶媒を真空除去する。HPLCによって、残留物を精製し、ジアステレオマーを分離する。
283868(586.65)
MS(ESI):587[M+H]
【0046】
用いられるイソシアノアセトアミドの第2アミンからの一般的な製造手順(K.Matsumoto等,Synthesis,1997,249−250参照):
第2アミン(1mmol)を溶媒の入っていないまたはメタノール、ジクロロメタンもしくはジメチルホルムアミドのような溶媒の入った一口フラスコに入れる。イソシアノ酢酸メチルエステル(1mmol)を滴下漏斗によって速やかに滴加する。溶液を室温で18時間攪拌する。
溶液はその後すでに完全に結晶化するか、あるいはエーテルを添加し、深冷凍結キャビネットで一夜貯蔵した後に結晶化が生じる。形成された固体はヘラを用いて注意深く砕き、ジエチルエーテルに懸濁する。次に、固体を吸引濾過し、数回ジエチルエーテルで洗浄する。
実施例1では、N−メチルピペラジンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
【0047】
実施例2:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0048】
【化5】

【0049】
合成については実施例1を参照。
283868(586.65)
MS(ESI):587[M+H]
【0050】
実施例3:2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチル−[1,4]ジアゼパン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0051】
【化6】

【0052】
製造は実施例1と同様に行った;4−ヒドロキシ−3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および2−イソシアノ−1−(4−メチル−[1,4]ジアゼパン−1−イル)−エタノンを出発物質として用いた。1−メチル−[1,4]ジアゼパンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
294069(616.68)
MS(ESI):617.2[M+H]
【0053】
3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアミジン2塩酸塩の合成
3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアミジン2塩酸塩は2工程で商業的に入手しうる4−ヒドロキシ−3−ニトロ−ベンゾニトリルから製造することができる。そのためには、氷で冷却しながら、3.3g(20mmol)の4−ヒドロキシ−3−ニトロ−ベンゾニトリルを80mlの乾燥クロロホルムに溶解し、HClのメタノール中の飽和溶液40mlを加える。24時間後、白色懸濁液を濾過し、得られたイミドエーテルを乾燥する。後者をアンモニアのメタノール中の2N溶液60mlで処理し、5時間還流する。冷却後、沈殿を再度濾過し、これをメタノール中の2N−HCl溶液に溶解し、次いで、溶媒を除去する。得られた4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアミジンの塩酸塩(3.3g、収率76%)を150mlのメタノールに溶解する;330mgのパラジウム担持活性炭を加え、水素ガス雰囲気下、室温で24時間攪拌する。触媒を濾過した後、溶媒を除き、得られた残留物を再度メタノール中のHClの2N溶液に溶解する。乾燥後、2.5gの3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアミジンの2塩酸塩を得る。これはさらなる合成に直接用いることができる。
793O(151.17)
MS(ESI):152[M+H]
【0054】
実施例4:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチル−[1,4]ジアゼパン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0055】
【化7】

【0056】
製造は実施例1と同様に行った;3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および2−イソシアノ−1−(4−メチル−[1,4]ジアゼパン−1−イル)−エタノンを出発物質として用いた。1−メチル−[1,4]ジアゼパンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
294068(600.68)
MS(ESI):601.2[M+H]
【0057】
実施例5:2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−N−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0058】
【化8】

【0059】
製造は実施例1と同様に行った;3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および2−イソシアノ−1−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタノンを出発物質として用いた。N−メチルピペラジンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
283869(602.65)
MS(ESI):603[M+H]
【0060】
実施例6:2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−N−(2−オキソ−2−チオモルホリン−4−イル−エチル)−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0061】
【化9】

【0062】
製造は実施例1と同様に行った;4−ヒドロキシ−3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および2−イソシアノ−1−チオモルホリン−4−イル)−エタノンを出発物質として用いた。チオモルホリンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
273559S(605.67)
MS(ESI):606[M+H]
【0063】
実施例7:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−(2−オキソ−2−チオモルホリン−4−イル−エチル)−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0064】
【化10】

【0065】
製造は実施例1と同様に行った;3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および2−イソシアノ−1−チオモルホリン−4−イル−エタノンを出発物質として用いた。チオモルホリンをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
273558S(589.67)
MS(ESI):590[M+H]
【0066】
実施例8:2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−N−[2−(2−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0067】
【化11】

【0068】
製造は実施例1と同様に行った;4−ヒドロキシ−3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および1−(2−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−イル)−2−イソシアノ−エタノンを出発物質として用いた。ピペリジン−2−イル−メタノールをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
2939510(617.66)
MS(ESI):618[M+H]
【0069】
実施例9:2−(3−カルバミミドイル−フェニルアミノ)−N−[2−(2−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0070】
【化12】

【0071】
製造は実施例1と同様に行った;3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および1−(2−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−イル)−2−イソシアノ−エタノンを出発物質として用いた。ピペリジン−2−イル−メタノールをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
293959(601.66)
MS(ESI):602[M+H]
【0072】
実施例10:2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−N−[2−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−2−[2−(3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド
【0073】
【化13】

【0074】
製造は実施例1と同様に行った;4−ヒドロキシ−3−アミノベンズアミジン2塩酸塩および1−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−2−イソシアノ−エタノンを出発物質として用いた。ピペリジン−4−オールをイソニトリルに対するアミン成分として用いた。
2837510(603.63)
MS(ESI):604[M+H]
【0075】
Xa因子活性に対する阻害作用の測定はWO0216312に記載の方法により行った。
実施例1の化合物のIC50値は0.1〜10nMである。実施例2〜10の化合物のIC50値は0.1nM〜1μMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは薬理学的に許容される配合物。
【化1】

(式中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、C1−、C2−、C3−もしくはC4−アルキルオキシ基またはフッ素原子であり、そして
Rは、5、6または7個の環原子を有する置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基である)
【請求項2】
Xが水素原子またはヒドロキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが下記式の基である、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】

(式中、nは0、1または2であり、そしてR1はC1−、C2−、C3−もしくはC4−アルキル基である)
【請求項4】
Rが式−N(CH2CH22NCH3の環状基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ基の立体化学がβ−D−グルコースのそれに相当する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
フェニルグリシン本体が(S)配置である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物および任意に担体物質および/または補助剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物のXa因子阻害における使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物の、血栓塞栓症、動脈再狭窄、敗血症、癌、急性炎症、またはXa因子活性によって仲介される他の症状の治療および/または予防における使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物の血管手術での利用のための使用。

【公表番号】特表2008−506745(P2008−506745A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521890(P2007−521890)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007867
【国際公開番号】WO2006/008141
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504288753)モルフォケム アクチェンゲゼルシャフト フュア コンビナトリシェ ヘミー (5)
【Fターム(参考)】