説明

Y/C分離回路

【課題】 PAL方式の複合映像信号のうちの標準信号及び非標準信号のいずれに対しても適切な輝度信号及び色信号への分離を行うことができるY/C分離回路を提供する。
【解決手段】 処理対象ラインの映像信号と、その前後の映像信号とを用いて色信号を生成する適応型コムフィルタと、処理対象ラインの映像信号中の色信号を抽出するバンドパスフィルタと、処理対象ライン内の映像信号の水平相関性と、処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の輝度信号の垂直相関性と、処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の色信号の垂直相関性とを検出する相関検出回路と、輝度信号の垂直相関性及び色信号の垂直相関性が共にありと検出された場合に適応型コムフィルタの出力を選択し、映像信号の水平相関性がありかつ輝度信号及び色信号の垂直相関性がなしと検出された場合にバンドパスフィルタの出力を選択するセレクタと、セレクタの出力色信号と処理対象ラインの映像信号とを用いて輝度信号を生成する輝度信号生成部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PAL方式の複合映像信号を輝度信号と色信号とに分離するY/C分離回路に関する。
【背景技術】
【0002】
PAL方式の複合映像信号から輝度信号と色信号とを各々分離抽出するY/C分離回路としてコムフィルタを採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるコムフィルタを採用した従来のY/C分離回路においては、2つの2H遅延素子と3つのバンドパスフィルタが備えられ、入力された複合映像信号が第1の2H遅延素子によって2水平走査期間分だけ遅延され、その遅延された複合映像信号は更に第2の2H遅延素子によって2水平走査期間分だけ遅延される。第1の2H遅延素子による遅延映像信号が処理対象ラインの信号とされ、第2の2H遅延素子による遅延映像信号と入力複合映像信号とが処理対象ラインより2つ下と2つ上のラインの信号とされる。それらの入力複合映像信号と第1及び第2の2H遅延素子による各遅延映像信号とを個別にバンドパスフィルタを介して得られた3つのバンドパス信号に基づいたコムフィルタによるライン間のコムフィルタ処理によって色信号と輝度信号とが各々生成される。
【特許文献1】特開平06−54342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、PAL方式の複合映像信号の中には副搬送波の位相が上下1ライン間で90度ずれた(3ラインうちの第1ラインと第3ラインとでは180度ずれた)標準信号とは異なる例えば、PAL60のような非標準信号も存在するので、かかる従来のY/C分離回路の構成では非標準信号には対応しないという問題があった。また、標準信号であっても垂直方向に相関性がない映像信号についてライン間のコムフィルタ処理を行うと、いわゆるドットクロールが発生して画質劣化を招くという問題があった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題には、上記の欠点が一例として挙げられ、PAL方式の複合映像信号のうちの標準信号及び非標準信号のいずれに対しても適切な輝度信号及び色信号への分離を行うことができるY/C分離回路を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明のY/C分離回路は、PAL方式の複合映像信号を入力して輝度信号と色信号とに分離するY/C分離回路であって、処理対象ラインの映像信号と、その前後の映像信号とを用いて色信号を生成する適応型コムフィルタと、前記処理対象ラインの映像信号中の色信号を抽出するバンドパスフィルタと、前記処理対象ライン内の映像信号の水平相関性と、前記処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の輝度信号の垂直相関性と、前記処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の色信号の垂直相関性とを検出する相関検出回路と、前記相関検出回路によって前記輝度信号の垂直相関性及び色信号の垂直相関性が共にありと検出された場合に前記適応型コムフィルタの出力を選択し、前記相関検出回路によって前記映像信号の水平相関性がありかつ前記輝度信号及び色信号の垂直相関性がなしと検出された場合に前記バンドパスフィルタの出力を選択するセレクタと、前記セレクタから出力される色信号と前記処理対象ラインの映像信号とを用いて輝度信号を生成する輝度信号生成部と、を備えたことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0007】
図1は、本発明によるY/C分離回路の構成を示すブロック図である。
【0008】
図1に示す如く、かかるY/C分離回路は、1ライン遅延メモリ10〜13、ライン切替セレクタ19,20、フィルタ回路23〜25、相関検出回路27、ラインコムフィルタ29、切替セレクタ32及び減算器34からなる。
【0009】
1ライン遅延メモリ10〜13はその順に直列に接続されており、最初の1ライン遅延メモリ10には、Y/C分離回路への入力映像信号であるディジタル化された複合映像信号が供給される。1ライン遅延メモリ10〜13の各々は供給される映像信号を1ライン分の時間(1水平走査期間)だけの遅延させて保持出力する。1ライン遅延メモリ11の出力映像信号が現ライン(処理対象ライン)Currentを示すとすると、1ライン遅延メモリ10の出力映像信号は現ラインより1つ下のライン1Lowerを示し、1ライン遅延メモリ10の入力映像信号は現ラインより2つ下のライン2Lowerを示し、1ライン遅延メモリ12の出力映像信号は現ラインより1つ上のライン1Upperを示し、1ライン遅延メモリ13の出力映像信号は現ラインより2つ上のライン2Upperを示す。
【0010】
ライン切替セレクタ19は入力映像信号である2つ下のラインの映像信号2Lowerと1ライン遅延メモリ10から出力される1つ下のラインの映像信号1Lowerとのいずれか一方を非標準判定信号に応じて選択的にフィルタ回路23に出力する。また、ライン切替セレクタ20は1ライン遅延メモリ12から出力される1つ上のラインの映像信号1Upperと1ライン遅延メモリ13から出力される2つ上のラインの映像信号2Upperとのいずれか一方を非標準判定信号に応じて選択的にフィルタ回路25に出力する。
【0011】
非標準判定信号は入力映像信号が標準信号であるか否かを示す信号である。標準信号とは処理対象ラインに対してそれより2つ上のライン、また2つ下のラインの色副搬送波の位相が180度ずれている標準のPAL方式の映像信号をいう。
【0012】
1ライン遅延メモリ11から出力される現ラインの映像信号Currentはフィルタ回路24に供給される。
【0013】
フィルタ回路23〜25の各々はバンドパスフィルタ(BPF)23a〜25aとローパスフィルタ(LPF)23b〜25bとを有し、入力映像信号はそのままのスルー出力信号となる他、バンドパスフィルタ23a〜25a及びローパスフィルタ23b〜25bに供給される。フィルタ回路23はスルー出力信号L−CVBS、バンドパスフィルタ23aの出力信号L−BPF及びローパスフィルタ23bの出力信号L−LPFを出力する。フィルタ回路24はスルー出力信号M−CVBS、バンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPF及びローパスフィルタ24bの出力信号M−LPFを出力する。フィルタ回路25はスルー出力信号U−CVBS、バンドパスフィルタ25aの出力信号U−BPF及びローパスフィルタ25bの出力信号U−LPFを出力する。
【0014】
相関検出回路27はフィルタ回路23〜25の出力に接続されており、処理対象ライン及びその前後ラインについて垂直方向及び水平方向における相関性を検出してその検出結果を出力する。相関検出回路27の具体的構成については後述する。
【0015】
ラインコムフィルタ29は、バンドパスフィルタ23a〜25aの出力信号L−BPF、M−BPF、U−BPFに応じて入力映像信号の色信号を抽出する構成を有する適応型コムフィルタである。ラインコムフィルタ29は、例えば、出力信号U−BPFとL−BPFとを加算する一方、2倍に増幅したM−BPFとその加算結果との差を算出する構成である。
【0016】
切替セレクタ32はラインコムフィルタ29の出力信号とバンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFとのいずれか一方を相関検出回路27の相関検出結果に応じて選択的に出力する。この選択出力がY/C分離回路の色信号出力となる。
【0017】
減算器34は処理対象ラインの映像信号である1ライン遅延メモリ11の出力映像信号から切替セレクタ32の出力色信号を差し引いて輝度信号を出力する。
【0018】
相関検出回路27は図2に示すように、DCレベル差分検出器36、水平度検出器37、CVBS差分検出器38、BPF差分検出器39、角検出器40、AND回路48,51、OR回路49,50,52及びセレクタ53を備えている。
【0019】
DCレベル差分検出器36は、ローパスフィルタ23b〜25bの出力信号L−LPF、M−LPF、U−LPFに応じて処理対象ラインの映像信号とその前後のラインの映像信号との低域成分の差分が第1所定値より小であるか否かを検出する。すなわち、ライン間の輝度信号の低域成分の差分から垂直方向の相関性があるか否かを判断することが行われる。DCレベル差分検出器36は、その差分が第1所定値より小である場合には垂直方向の相関性があるとして論理1を示す信号を出力し、その差分が第1所定値以上である場合には垂直方向の相関性がないとして論理0を示す信号を出力する。
【0020】
水平度検出器37は、ローパスフィルタ24bの出力信号M−LPFに応じて処理対象ライン内の映像信号の着目画素の低域成分と左右に隣接する画素の低域成分との差分が第2所定値より小であるか否か検出する。すなわち、着目画素の左右に隣接する画素の低域成分の差分から水平方向の相関性があるか否かを判断することが行われる。水平度検出器37は、その差分が第2所定値より小である場合には水平方向の相関性があるとして論理1を示す信号を出力し、その差分が第2所定値以上である場合には水平方向の相関性がないとして論理0を示す信号を出力する。
【0021】
CVBS差分検出器38は、スルー出力信号L−CVBS、M−CVBS及びU−CVBS並びにバンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFに応じて処理対象ラインの映像信号とその前後のラインの映像信号との差分が第3所定値より小であるか否か検出する。すなわち、ライン間の映像信号(スルー出力信号)の差分から垂直方向の相関性があるか否かを判断することが行われる。これは差分を求める各信号にクロマ成分がない場合、又はその各信号にクロマ成分があり180度ずれた位置で振幅値がほぼ等しい場合である。第3所定値はバンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFに応じて算出される。CVBS差分検出器38は、差分が第3所定値より小である場合には論理1を示す信号を出力し、差分が第3所定値以上ある場合には論理0を示す信号を出力する。
【0022】
BPF差分検出器39は、バンドパスフィルタ23a〜25aの出力信号L−BPF、M−BPF、U−BPFに応じて処理対象ラインの映像信号の色信号帯域成分とその前後のラインの映像信号の色信号帯域成分との差分が第4所定値より小であるか否か検出する。すなわち、ライン間の映像信号の色信号帯域成分の差分から垂直方向の相関性があるか否かを判断することが行われる。これはCVBS差分検出器38と同様に、差分を求める各信号にクロマ成分がない場合、又はその各信号にクロマ成分があり180度ずれた位置で振幅値がほぼ等しい場合である。BPF差分検出器39は、色信号帯域成分の差分が第4所定値より小である場合には論理1を示す信号を出力し、差分が第4所定値以上ある場合には論理0を示す信号を出力する。
【0023】
角検出器40は、ローパスフィルタ23b〜25bの出力信号L−LPF、M−LPF、U−LPFに応じて処理対象ラインの低域成分に対するその前後のラインの映像信号における輝度信号成分の変化が大きいか否かを検出する。画像のエッジ部があって変化が大きい場合には論理1を示す信号を出力し、変化が小さい場合には論理0を示す信号を出力する。
【0024】
AND回路48はDCレベル差分検出器36の出力信号とCVBS差分検出器38の出力信号との論理積をとる。
【0025】
OR回路49は水平度検出器37の出力信号の反転信号とBPF差分検出器39の出力信号との論理和をとる。OR回路50は水平度検出器37の出力信号の反転信号とCVBS差分検出器38の出力信号との論理和をとる。AND回路51はDCレベル差分検出器36の出力信号とOR回路49,50の各出力信号との論理積をとる。OR回路52はAND回路51の出力信号と角検出器40の出力信号との論理和をとる。
【0026】
セレクタ53には、AND回路48の出力信号とOR回路52の出力信号と非標準判定信号とが供給される。セレクタ53は非標準判定信号に応じてAND回路48の出力信号とOR回路52の出力信号とのいずれか一方を相関検出回路27の検出結果として選択的に出力する。
【0027】
次に、かかる構成のY/C分離回路の動作について説明する。
【0028】
入力映像信号としては標準信号であるPAL方式の複合映像信号の他、PAL60或いはNTSC4.43のような非標準信号が考慮されている。非標準信号では上下のライン間で色副搬送波の位相のずれが90度とならない。すなわち、処理対象ラインに対してそれより2つ上のライン、また2つ下のラインの色副搬送波の位相が180度ずれていない。入力映像信号が標準信号と非標準信号とのいずれであるかは上記した非標準判定信号によって判別可能である。なお、入力映像信号はY/C分離回路以外の信号判定回路(図示せず)において標準信号と非標準信号とのいずれであるかについて判定され、その判定結果が非標準判定信号である。
【0029】
入力映像信号は処理対象ラインCurrentより2つ下のラインの映像信号2Lowerであり、1ライン遅延メモリ10は処理対象ラインCurrentより1つ下のラインの映像信号1Lowerを出力し、1ライン遅延メモリ11は処理対象ラインCurrentの映像信号を出力し、1ライン遅延メモリ12は処理対象ラインCurrentより1つ上のラインの映像信号1Upperを出力し示し、1ライン遅延メモリ13は処理対象ラインCurrentより2つ上のラインの映像信号2Upperを出力する。
【0030】
非標準判定信号が標準信号を示す場合には、ライン切替セレクタ19は映像信号2Lowerを選択してフィルタ回路23に出力し、ライン切替セレクタ20は映像信号2Upperを選択してフィルタ回路25に出力する。これは標準信号では処理対象ラインCurrentに対してそれより2つ上のライン、また2つ下のラインの色副搬送波の位相が180度ずれていることを利用するためである。
【0031】
非標準判定信号が非標準信号を示す場合には、ライン切替セレクタ19は映像信号1Lowerを選択してフィルタ回路23に出力し、ライン切替セレクタ20は映像信号1Upperを選択してフィルタ回路25に出力する。これは逆に上記の色副搬送波の位相が180度ずれていることが利用できないからである。
【0032】
フィルタ回路23はスルー出力信号L−CVBS、バンドパスフィルタ23aの出力信号L−BPF及びローパスフィルタ23bの出力信号L−LPFを出力する。フィルタ回路24はスルー出力信号M−CVBS、バンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPF及びローパスフィルタ24bの出力信号M−LPFを出力する。フィルタ回路25はスルー出力信号U−CVBS、バンドパスフィルタ25aの出力信号U−BPF及びローパスフィルタ25bの出力信号U−LPFを出力する。
【0033】
相関検出回路27の動作説明に当たり、図3に示すように、処理対象ラインの3つの連続する左、中央及び右の画素についてデータの添え字をML,MC,MRとし、処理対象ラインより上のラインの3つの連続する左、中央及び右の画素についてデータの添え字をUL,UC,URとし、処理対象ラインより下のラインの3つの連続する左、中央及び右の画素についてデータの添え字をLL,LC,LRとする。なお、UL,ML,LLに関する3つの画素は垂直方向に同一ライン上に位置し、UC,MC,LCに関する3つの画素は垂直方向に同一ライン上に位置し、UR,MR,LRに関する3つの画素は垂直方向に同一ライン上に位置する。また、入力映像信号が標準信号の場合には、処理対象ラインより上のラインは処理対象ラインより2つ上のラインであり、処理対象ラインより下のラインは処理対象ラインより2つ下のラインである。非標準信号の場合には、処理対象ラインより上のラインは処理対象ラインより1つ上のラインであり、処理対象ラインより下のラインは処理対象ラインより1つ下のラインである。
【0034】
DCレベル差分検出器36においては、ローパスフィルタ25bの出力信号U−LPFに応じて処理対象ラインより上のラインのレベルDUが算出され、ローパスフィルタ24bの出力信号M−LPFに応じて処理対象ラインのレベルDMが算出され、ローパスフィルタ23bの出力信号L−LPFに応じて処理対象ラインより下のラインのレベルDLが算出される。レベルDU,DM,DLは次のように算出される。
【0035】
U=LPFUL/4+LPFUC/2+LPFUR/4
M=LPFML/4+LPFMC/2+LPFMR/4
L=LPFLL/4+LPFLC/2+LPFLR/4
ここで、LPFUL,LPFUC,LPFURは出力信号U−LPFから得られる画素UL,UC,URの信号値である。LPFML,LPFMC,LPFMRは出力信号M−LPFから得られる画素ML,MC,MRの信号値である。LPFLL,LPFLC,LPFLRは出力信号L−LPFから得られる画素LL,LC,LRの信号値である。
【0036】
|DU−DM|及び|DM−DL|のうちの最小値MINDCに係数αDCを乗算した値MINDC・αDCがLPFMC(第1所定値)より小であるか否かが判別される。MINDC・αDC<LPFMCの場合には垂直方向の相関性があるとして論理1を示す信号が出力され、MINDC・αDC≧LPFMCの場合には垂直方向の相関性がないとして論理0を示す信号が出力される。
【0037】
水平度検出器37においては、ローパスフィルタ24bの出力信号M−LPFから得られるLPFML,LPFMC,LPFMRのうちから最大値MAXLPF及び最小値MINLPFが求められ、最小値MINLPFに係数αFLが乗算され、MINLPF・αFLFがMAXLP(第2所定値)より小であるか否かが判別される。MAXLPF>MINLPF・αFLの場合には、水平方向の相関性があるとして論理1を示す信号を出力し、MAXLPF≦MINLPF・αFLの場合には、水平方向の相関性がないとして論理0を示す信号を出力する。
【0038】
CVBS差分検出器38においては、スルー出力信号U−CVBS、M−CVBS及びL−CVBSに応じて処理対象ラインとそれより上のラインとの間のレベル差の最大値DCMUと、処理対象ラインとそれより下のラインとの間のレベル差の最大値DCMLとが次のように算出される。
【0039】
DCMU=MAX(|CVBSML−CVBSUL|,|CVBSMC−CVBSUC|,|CVBSMR−CVBSUR|)
DCML=MAX(|CVBSML−CVBSLL|,|CVBSMC−CVBSLC|,|CVBSMR−CVBSLR|)
すなわち、スルー出力信号U−CVBSから得られる画素UL,UC,URについての信号値CVBSUL,CVBSUC,CVBSUR、スルー出力信号M−CVBSから得られる画素ML,MC,MRについての信号値CVBSML,CVBSMC,CVBSMR、スルー出力信号L−CVBSから得られる画素LL,LC,LRについての信号値CVBSLL,CVBSLC,CVBSLRが用いられる。|CVBSML−CVBSUL|,|CVBSMC−CVBSUC|,|CVBSMR−CVBSUR|のうちの最大値がDCMUである。|CVBSML−CVBSLL|,|CVBSMC−CVBSLC|,|CVBSMR−CVBSLR|のうちの最大値がDCMLである。
【0040】
更に、次に示すように、最大値DCMU,DCMLのうちの小なる方がCVBSMAXSUBとされ、バンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFから得られる画素ML,MC,MRについての信号値BPFML,BPFMC,BPFMRの最大値がCPOW(第3所定値)として得られる。
【0041】
CVBSMAXSUB=MIN(DCMU,DCML)
POW=MAX(BPFML,BPFMC,BPFMR)
CVBSMAXSUBには係数αC4が乗算され、CVBSMAXSUB・αC4がCPOWより小であるか否かが判別される。CVBSMAXSUB・αC4<CPOWの場合には、垂直方向の複合映像信号値の差分が非常に小さいので論理1を示す信号が出力され、CVBSMAXSUB・αC4≧CPOWの場合には垂直方向の複合映像信号値の差分がかなりあるので論理0を示す信号が出力される。
【0042】
BPF差分検出器39においては、バンドパスフィルタ23a〜25aの出力信号L−BPF、M−BPF、U−BPFに応じて処理対象ラインとそれより上のラインとの間のレベル差の最大値の1/2の値DMUと、処理対象ラインとそれより下のラインとの間のレベル差の最大値の1/2のDMLとが次のように算出される。
【0043】
MU=MAX(|BPFML−BPFUL|,|BPFMC−BPFUC|,|BPFMR−BPFUR|)/2
ML=MAX(|BPFML−BPFLL|,|BPFMC−BPFLC|,|BPFMR−BPFLR|)/2
すなわち、出力信号U−BPFから得られる画素UL,UC,URについての信号値BPFUL,BPFUC,BPFUR、出力信号M−BPFから得られる画素ML,MC,MRについての信号値BPFML,BPFMC,BPFMR、出力信号L−BPFから得られる画素LL,LC,LRについての信号値BPFLL,BPFLC,BPFLRが用いられる。|BPFML−BPFUL|,|BPFMC−BPFUC|,|BPFMR−BPFUR|のうちの最大値を1/2にした値がDMUである。|BPFML−BPFLL|,|BPFMC−BPFLC|,|BPFMR−BPFLR|のうちの最大値を1/2にした値がDMLである。
【0044】
更に、次に示すように、バンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFから得られる画素ML,MC,MRについての信号値BPFML,BPFMC,BPFMRの最大値がDMMとして得られる。また、DMU,DMLのうちの小なる方がDMINSUBとされる。
【0045】
MM=MAX(BPFML,BPFMC,BPFMR)
MINSUB=MIN(DMU,DML)
MM及びDMINSUBのうちの小なる方には係数αBIが乗算され、それがDMM及びDMINSUBのうちの大なる方の値(第4所定値)より小であるか否かが判別れる。すなわち、
MAX(DMM,DMINSUB)>MIN(DMM,DMINSUB)・αBI
という条件が成立するか否かが判別される。その条件が成立する場合には、垂直方向の色成分の差分が非常に小さいので論理1を示す信号が出力され、条件が不成立の場合には垂直方向の色成分の差分がかなりあるので論理0を示す信号が出力される。
【0046】
角検出器40においては、次の示すようにローパスフィルタ25bの出力信号U−LPFから得られる画素UL,UC,URの信号値LPFUL,LPFUC,LPFURの最大値と最小値との差分がGAPUとして算出され、またローパスフィルタ23bの出力信号L−LPFから得られる画素LL,LC,LRの信号値PFLL,LPFLC,LPFLRの最大値と最小値との差分がGAPLとして算出される。
【0047】
GAPU=MAX(LPFUL,LPFUC,LPFUR)−MIN(LPFUL,LPFUC,LPFUR)
GAPL=MAX(LPFLL,LPFLC,LPFLR)−MIN(LPFLL,LPFLC,LPFLR)
このように算出されたGAPU,GAPLは上ライン及び下ラインの輝度成分の最大値と最小値との差分である。更に、この差分の絶対値に係数αYGが乗算され、その乗算結果がLPFMCより小であるか否かが判別される。すなわち、
LPFMC<|GAPU−GAPL|・αYG
という条件が成立するか否かが判別される。その条件が成立する場合には、水平方向の輝度成分の変化度が大きいので論理1を示す信号が出力され、条件が不成立の場合には水平方向の輝度成分の変化度が小さいので論理0を示す信号が出力される。
【0048】
入力映像信号が標準信号である場合には、非標準判定信号に応じてセレクタ53はOR回路52の出力信号を相関検出回路27の出力信号として切替セレクタ32に供給する。
【0049】
水平度検出器37によって水平方向の相関性がないとして論理0を示す信号が出力され、同時に垂直方向の色成分の差分が非常に小さいためにBPF差分検出器39からは論理1を示す信号が出力された場合には、AND回路49は論理1を示す信号を出力する。
【0050】
また、水平度検出器37によって水平方向の相関性がないとして論理0を示す信号が出力され、同時に垂直方向の複合映像信号値の差分が非常に小さいためにCVBS差分検出器38からは論理1を示す信号が出力された場合には、AND回路50は論理1を示す信号を出力する。
【0051】
入力映像信号が標準信号である場合には、AND回路49,50から共に論理1を示す信号がされ、更に、DCレベル差分検出器36から垂直方向の相関性があるとして論理1を示す信号が出力されたならば、AND回路51は論理1を示す信号を出力する。その論理1を示す信号はOR回路52及びセレクタ53を介して2DYC選択信号として出力される。
【0052】
同様に、入力映像信号が標準信号である場合には、水平方向の輝度成分の変化度が大きいために角検出器40からを論理1を示す信号が出力されたならば、その論理1を示す信号はOR回路52及びセレクタ53を介して2DYC選択信号として出力される。
【0053】
一方、水平度検出器37によって水平方向の相関性があるとして論理1を示す信号が出力され、同時に垂直方向の色成分の差分がかなりあるためにBPF差分検出器39からは論理0を示す信号が出力された場合、或いはそのいずれか一方から論理0を示す信号が出力された場合には、AND回路49は論理0を示す信号を出力する。
【0054】
また、水平度検出器37によって水平方向の相関性があるとして論理0を示す信号が出力され、同時に垂直方向の複合映像信号値の差分がかなりあるためにCVBS差分検出器38からは論理0を示す信号が出力された場合、或いはそのいずれか一方から論理0を示す信号が出力された場合には、AND回路50は論理0を示す信号を出力する。
【0055】
入力映像信号が標準信号である場合には、AND回路49,50の少なくとも一方から共に論理1を示す信号がされるか、或いは、DCレベル差分検出器36から垂直方向の相関性がないとして論理0を示す信号が出力されたならば、AND回路51は論理0を示す信号を出力する。同時に、水平方向の輝度成分の変化度が小さいために角検出器40からを論理0を示す信号が出力されると、論理0を示す信号がOR回路52及びセレクタ53を介して1DYC選択信号として出力される。
【0056】
入力映像信号が非標準信号である場合には、非標準判定信号に応じてセレクタ53はAND回路48の出力信号を相関検出回路27の出力信号として切替セレクタ32に供給する。
【0057】
入力映像信号が非標準信号である場合に、DCレベル差分検出器36から垂直方向の相関性があるとして論理1を示す信号が出力され、同時に垂直方向の複合映像信号値の差分が非常に小さいためにCVBS差分検出器38からは論理1を示す信号が出力された場合には、AND回路48は論理1を示す信号を出力する。そのAND回路48の論理1を示す信号はセレクタ53を介して2DYC選択信号として出力される。
【0058】
また、入力映像信号が非標準信号である場合に、DCレベル差分検出器36から垂直方向の相関性がないとして論理0を示す信号が出力され、同時に垂直方向の複合映像信号値の差分がかなり大きいためにCVBS差分検出器38からは論理0を示す信号が出力された場合、又はそのいずれか一方から論理0を示す信号が出力された場合には、AND回路48は論理0を示す信号を出力する。そのAND回路48の論理0を示す信号はセレクタ53を介して1DYC選択信号として出力される。
【0059】
セレクタ53から2DYC選択信号が切替セレクタ32に供給された場合には、切替セレクタ32はラインコムフィルタ29の出力信号を色信号として出力する。一方、セレクタ53から1DYC選択信号が切替セレクタ32に供給された場合には、切替セレクタ32はバンドパスフィルタ24aの出力信号M−BPFを色信号として出力する。
【0060】
1ライン遅延メモリ11の出力映像信号である処理対象ラインの映像信号から切替セレクタ32から出力された色信号が減算器34によって差し引かれ、その結果が輝度信号として出力される。
【0061】
このように、入力映像信号が標準信号である場合には、垂直方向に相関性がある映像に対してはライン間コムフィルタ処理を行って色信号を抽出する。一方、例えば、白い背景に1ライン幅の青色の水平方向の線が表示された信号のような垂直方向に相関がない映像信号に対してはバンドパスフィルタ出力を色信号とするので、横方向ドットクロールが大幅に低減することができる。入力映像信号が非標準信号である場合には、マルチバーストの如き輝度のみ垂直方向相関が強い映像信号に対してはライン間コムフィルタ処理を行って色信号を抽出し、非標準信号に対してはバンドパスフィルタ出力による色信号抽出だけの従来回路に比べ解像度を格段に上げることができる。また、全ての相関検出を水平方向の3画素を用いて検出を行うのでノイズにも強い相関検出回路となっている。
【0062】
なお、上記した実施例において用いられた係数αDC,αFL,αC4,αBI,αYG各々の値は大小判別基準を調整するために変更可能である。
【0063】
以上のように、本発明によれば、処理対象ラインの映像信号と、その前後の映像信号とを用いて色信号を生成する適応型コムフィルタと、処理対象ラインの映像信号中の色信号を抽出するバンドパスフィルタと、処理対象ライン内の映像信号の水平相関性と、処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の輝度信号の垂直相関性と、処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の色信号の垂直相関性とを検出する相関検出回路と、輝度信号の垂直相関性及び色信号の垂直相関性が共にありと検出された場合に適応型コムフィルタの出力を選択し、映像信号の水平相関性がありかつ輝度信号及び色信号の垂直相関性がなしと検出された場合にバンドパスフィルタの出力を選択するセレクタと、セレクタの出力色信号と処理対象ラインの映像信号とを用いて輝度信号を生成する輝度信号生成部と、を備えたので、PAL方式の複合映像信号のうちの標準信号及び非標準信号のいずれに対しても適切な輝度信号及び色信号への分離を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の回路中の相関検出回路の具体的構成を示す回路図である。
【図3】処理対象ライン及びその上下ライン各々の3つの連続する左、中央及び右の画素についてデータの添え字を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
10〜13 1ライン遅延メモリ
23〜25 フィルタ回路
27 相関検出回路
29 ラインコムフィルタ
35 減算器
36 DCレベル差分検出器
37 水平度検出器
38 CVBS差分検出器
39 BPF差分検出器
40 角検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PAL方式の複合映像信号を入力して輝度信号と色信号とに分離するY/C分離回路であって、
処理対象ラインの映像信号と、その前後の映像信号とを用いて色信号を生成する適応型コムフィルタと、
前記処理対象ラインの映像信号中の色信号を抽出するバンドパスフィルタと、
前記処理対象ライン内の映像信号の水平相関性と、前記処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の輝度信号の垂直相関性と、前記処理対象ラインとその前後のラインとの映像信号中の色信号の垂直相関性とを検出する相関検出回路と、
前記相関検出回路によって前記輝度信号の垂直相関性及び色信号の垂直相関性が共にありと検出された場合に前記適応型コムフィルタの出力を選択し、前記相関検出回路によって前記映像信号の水平相関性がありかつ前記輝度信号及び色信号の垂直相関性がなしと検出された場合に前記バンドパスフィルタの出力を選択するセレクタと、
前記セレクタから出力される色信号と前記処理対象ラインの映像信号とを用いて輝度信号を生成する輝度信号生成部と、を備えたことを特徴とするY/C分離回路。
【請求項2】
前記相関検出回路は、前記処理対象ラインの映像信号の輝度信号に対するその前後のラインの映像信号の輝度信号の変化度を検出し、
変化度が所定値以上の場合、前記セレクタは前記適応型コムフィルタの出力を選択することを特徴とする請求項1記載のY/C分離回路。
【請求項3】
入力される前記複合映像信号が標準のPAL方式の映像信号である場合に、前記コムフィルタは前記処理対象ラインの映像信号とその2ライン前後の映像信号とを用いて色信号を生成し、前記相関検出回路は処理対象ラインの映像信号とその2ライン前後のラインの映像信号との輝度信号の垂直相関性と、前記処理対象ラインの映像信号とその2ライン前後のラインの映像信号との色信号の垂直相関性とを検出することを特徴とする請求項1記載のY/C分離回路。
【請求項4】
入力される前記複合映像信号が標準のPAL方式の映像信号ではない場合に、前記コムフィルタは前記処理対象ラインの映像信号とその1ライン前後の映像信号とを用いて色信号を生成し、前記相関検出回路は処理対象ラインの映像信号とその1ライン前後のラインの映像信号との輝度信号の垂直相関性を検出し、前記セレクタは、垂直相関性がありと検出された場合には前記適応型コムフィルタの出力を選択し、垂直相関性がなしと検出された場合には前記バンドパスフィルタの出力を選択することを特徴とする請求項1記載のY/C分離回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−157550(P2006−157550A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345993(P2004−345993)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】