説明

ZDDPを実質的に含まない潤滑組成物

【課題】エンジン油においてしばしば使用される、潤滑粘度の油に、洗浄性能および耐磨耗性能を提供することが見出され、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩を実質的に含まない、組成物の提供。
【解決手段】本発明は、(a)金属サリキサレート;(b)(1)酸化防止剤、(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤;ならびに(c)潤滑粘度の油を含有する組成物を提供する。この組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、400ppm以下のリンを含有する。本発明は、この組成物を調製するためのプロセスおよびこの組成物の使用を、さらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、金属サリキサレート(metal salixarate)および他の性能添加剤を含有する、潤滑油組成物に関する。この潤滑油組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩の非存在下で、耐磨耗特性および洗浄特性を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
潤滑油は、機関を、磨耗、スラッジの蓄積およびフィルタの詰まりから保護するために使用される、多数の添加剤を含有することが周知である。機関潤滑油のための一般的な添加剤は、耐磨耗添加剤としてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、およびオーバーベース化スルホン酸カルシウム洗浄剤である。ZDDP耐磨耗添加剤は、金属表面に保護フィルムを形成することによって、機関を保護すると考えられる。ZDDPの代表的な取扱量は、潤滑剤の総重量に基づいて、1重量%〜2重量%の範囲である。オーバーベース化スルホン酸カルシウムのような洗浄剤は、機関の部品に煤および他の沈着物がないように維持することを補助し、そしてアルカリ度の予備を提供する。洗浄剤の代表的な取扱量は、潤滑剤の総重量に基づいて、0.05重量%〜10重量%の範囲である。
【0003】
近年、機関の潤滑剤に由来するホスフェートおよびスルホネートが、粒子の放出に部分的に寄与することが示された。さらに、硫黄およびリンは、触媒変換器において使用されるNO触媒を汚染し、これらの触媒の性能の低下を生じる傾向がある。触媒変換器の性能のあらゆる低下は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物のような温室ガスの量の増加を生じる傾向がある。しかし、ZDDPの量を減少させることにより、機関の磨耗の量が増加する。また、洗浄剤の量を減少させることにより、機関の清浄度が低下し、そして煤の沈着の増加を生じる。
【0004】
特許文献1(Cresseyら)は、オリゴマーまたはポリマーの形態の、フェノール単位およびサリチル酸単位を含む、線状化合物を含有する、潤滑剤のための添加剤を開示する。この線状化合物は、カルシウムと塩を形成し得、そして必要に応じて、ホウ酸と共塩(colast)を形成し得る。これらの添加剤は、洗浄特性および/または耐磨耗特性を有する。潤滑剤の例は、無灰分散剤およびジチオリン酸亜鉛を含有する。
【0005】
特許文献2(Moreton)は、潤滑組成物中にフェノール単位およびサリチル酸単位を含有する、化合物を開示する。これらの化合物は、カルシウムと塩を形成し得る。潤滑組成物の例は、ドデシルアルキル基を有するフェノール単位を含む。この発明の化合物は、ガソリンまたはディーゼル燃料における洗浄剤として使用され得る。これらの化合物はまた、ガソリンまたはディーゼル組成物を熱分解に対して安定化する。
【0006】
特許文献3(Taylor)は、灯油およびフェノール単位とサリチル酸単位とを含む化合物を含有する、燃料組成物を開示する。これらの化合物は、カルシウムと塩を形成し得る。潤滑組成物の例は、ドデシルアルキル基を有するフェノール単位を含む。
【0007】
特許文献4(Taylorら)は、フェノール単位とサリチル酸単位とを含む環式化合物を開示する。このサリチル酸単位は、金属またはアンモニア陽イオンと塩を形成し得る。
【0008】
特許文献5(Lackeら)は、芳香族カルボン酸から誘導される金属洗浄剤、フェノールから誘導される金属洗浄剤を開示し、これらの金属洗浄剤は、潤滑油組成物において、酸化抵抗性を付与し得る。好ましい実施形態において、芳香族カルボン酸は、アルキル基で置換されたサリチル酸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/18728号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,200,936号明細書
【特許文献3】国際公開第99/25793号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/56968号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1262538号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の組成物は、エンジン油においてしばしば使用される、潤滑粘度の油に、洗浄性能および耐磨耗性能を提供することが見出され、そしてこの組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩を実質的に含まない。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、以下:
(a)金属サリキサレート;
(b)少なくとも1種の添加剤であって、この添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される、添加剤;ならびに
(c)潤滑粘度の油
を含有する組成物を提供し、この組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、約400ppm以下のリンを含有する。
【0012】
本発明は、組成物を調製するためのプロセスをさらに提供し、このプロセスは、以下:
(a)金属サリキサレート;
(b)少なくとも1種の添加剤であって、この添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される、添加剤;ならびに
(c)潤滑粘度の油
を混合する工程を包含し、この組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、約400ppm以下のリンを含有する。
【0013】
本発明の組成物の使用は、改善された機関清浄度、低下した磨耗、低下したNO放出および低下した粒子放出のうちの1つ以上を与える。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
組成物であって、以下:
(a)金属サリキサレート;
(b)少なくとも1種の添加剤であって、該添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される、添加剤;ならびに
(c)潤滑粘度の油、
を含有し、該組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、約400ppm以下のリンを含有する、組成物。
(項目2)
前記金属サリキサレートが、式(I)または(II):
(化1)



の少なくとも1つの単位を含む、実質的に線状の化合物の1つまたは混合物によって表され、該化合物の各末端は、式(III)または式(IV):
(化2)



の末端基を有し、該基は、二価の架橋基によって連結されており、該架橋基は、各連結について同じであっても異なっていてもよく;
式(I)〜(IV)において、
fは、1、2または3であり、好ましくは、1または2であり;
Uは、−OH、−NH、−NHR、−N(Rまたはその混合物であり、Rは、1個〜5個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロキシル基またはヒドロカルビル基であり、そしてjは、0、1、または2であり;
は、水素またはヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロカルビル基または置換されたヒドロカルビル基であり;
gは、1、2または3であり、ただし、少なくとも1つのR基は、8個以上の炭素原子を含み;そして
該分子は、平均して、少なくとも1つの単位(I)または単位(III)、および少なくとも1つの単位(II)または単位(IV)を含み、そして該組成物全体における、単位(I)および単位(III)の総数対単位(II)および単位(IV)の総数の比は、約0.1:1〜約2:1であるが、該組成物中の個々の分子は、該範囲外であり得る、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記金属サリキサレートの金属が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
全硫黄含有量が、約0.5重量%未満であり、そして全リン含有量が、約0.07重量%未満である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
全硫酸塩灰分含有量が、約1.5重量%未満である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記分散剤が、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドである、項目1に記載の組成物。
(項目7)
前記酸化防止剤が、ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、またはこれらの混合物である、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記ジフェニルアミンが、式:
(化3)



によって表され、
各RおよびRは、独立して、ヒドロカルビル基であり;そして
zは、0以上であり、ただし、少なくとも1つの環において、zは、0ではない、
項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記ヒンダードフェノールが、式:
(化4)



によって表され、
およびRは、独立して、1個〜24個の炭素原子を含む、分枝鎖または直鎖のアルキル基であり;
Yは、架橋基であり;そして
Eは、水素、ヒドロカルビル基、第二の芳香族基に連結する架橋基、エステル含有基、またはこれらの混合物である、
項目7に記載の組成物。
(項目10)
前記摩擦改質剤が、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルを含有する、項目1に記載の組成物。
(項目11)
前記粘度改質剤が、オレフィンコポリマーを含有する、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記オレフィンコポリマーが、エチレンモノマーと、少なくとも1種の他のコモノマーとを含み、該他のコモノマーが、式HC=CHR10を有するα−オレフィンから誘導され、ここでR10は、ヒドロカルビル基である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記分散剤粘度改質剤が、(a)不飽和ジカルボン酸水素無水物またはその誘導体およびアミンとグラフト重合した、オレフィンコポリマー;(b)アミンで官能基化されたポリメタクリレート;(c)(i)スチレン、(ii)必要に応じてアミンで官能基化された、不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を含むエステル化コポリマー;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目14)
前記潤滑粘度の油が、API Group II油、API Group III油、API Group IV油、またはAPI Group V油およびこれらの混合物からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目15)
前記金属サリキサレートが、油なしでの状態に基づいて、前記組成物の約0.01重量%〜約20重量%で存在し;前記成分(b)の添加剤(1)〜(6)の各々は、油なしでの状態に基づいて、該組成物の約0重量%〜25重量%で存在し、ただし、少なくとも1種の添加剤が、該組成物の0.1重量%以上で存在し;そして前記潤滑粘度の油が、該組成物の99.89重量%までで存在する、項目1に記載の組成物。
(項目16)
組成物の調製のためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)金属サリキサレート;
(b)少なくとも1種の添加剤であって、該添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される、添加剤;ならびに
(c)潤滑粘度の油、
を混合する工程を包含し、該組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、約400ppm以下のリンを含有する、プロセス。
(項目17)
項目16のプロセスによって調製された製品。
(項目18)
内燃機関を潤滑するための方法であって、該内燃機関に、項目1に記載の組成物を含有する潤滑剤を供給する工程を包含する、方法。
(項目19)
改善された機関清浄度、低下した磨耗、低下したNO放出および低下した粒子放出からなる群より選択されるうちの1つ以上を与えるための、項目1の組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記のような組成物を提供する。しばしば、この組成物は、0.5重量%未満、好ましくは、0.3重量%未満、より好ましくは、0.1重量%未満、そして最も好ましくは、ほぼ0重量%の、全硫黄含有量を有する。しばしば、本発明の組成物中の硫黄の主要な供給源は、希釈油に由来する。通常、この希釈油は、成分(b)の添加剤の多くを調製するために使用される製造プロセスにおいて、使用される。希釈油を除いて、本発明の組成物は、しばしば、700ppm以下好ましくは、600ppm以下、より好ましくは、300ppm以下、なおより好ましくは、100ppm以下、そして最も好ましくは、50ppm以下(例えば、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下および15ppm以下)の、硫黄含有量を有する。希釈油由来の硫黄が含有される場合、この組成物の硫黄含有量は、しばしば、800ppmまで、好ましくは、600ppまで、そして最も好ましくは、400ppmまで(例えば、約200ppmまたは約300ppm)増加される。
【0015】
しばしば、この組成物は、この組成物の0.1重量%未満、好ましくは、0.085重量%以下、より好ましくは、0.07重量%以下、なおより好ましくは、0.055重量%以下、そして最も好ましくは、0.05重量%以下(例えば、200ppm以下、好ましくは、100ppm以下、より好ましくは、50ppm以下、そして最も好ましくは、10ppm以下)の、全リン含有量を有する。1つの実施形態において、リンは、1ppmまたは10ppm〜50ppmまたは200ppmで存在する。
【0016】
しばしば、この組成物は、ASTM D−874によって推奨されるように、この組成物の1.5重量%未満、好ましくは、1.1重量%以下、より好ましくは、1.0重量%以下、なおより好ましくは、0.8重量%以下、そして最も好ましくは、0.5重量%以下の、全灰含有量を有する。1つの実施形態において、全灰含有量は、0.1重量%または0.2重量%〜0.6重量%または0.7重量%で存在する。
【0017】
(サリキサレート塩洗浄剤)
本発明の金属サリキサレートの基質は、しばしば、式(I)または(II):
【0018】
【化5】

の少なくとも1つの単位を含む、実質的に線状の化合物の1つまたは混合物によって、代表され、この化合物の各末端は、式(III)または式(IV):
【0019】
【化6】

の末端基を有し、このような基は、二価の架橋基によって連結されており、これらの架橋基は、各連結について同じであっても異なっていてもよく;
式(I)〜(IV)において、
fは、1、2または3であり、好ましくは、1または2であり;
Uは、−OH、−NH、−NHR、−N(Rまたはその混合物であり、Rは、1個〜5個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロキシル基またはヒドロカルビル基であり、そしてjは、0、1、または2であり;
は、水素またはヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロカルビル基または置換されたヒドロカルビル基であり;
gは、1、2または3であり、ただし、少なくとも1つのR基は、8個以上の炭素原子を含み;そして
この分子は、平均して、少なくとも1つの単位(I)または単位(III)、および少なくとも1つの単位(II)または単位(IV)を含み、そしてこの組成物全体における、単位(I)および(III)の総数対単位(II)および(IV)の総数の比は、約0.1:1〜約2:1であるが、この組成物中の個々の分子は、この範囲外であり得る。
【0020】
式(i)および(iii)におけるU基は、−COOR基に対してオルト、メタ、またはパラの1つ以上の位置に位置し得る。好ましくは、U基は、−COOR基に対してオルトに位置する。U基が−OH基である場合、式(i)および(iii)は、2−ヒドロキシ安息香酸(しばしば、サリチル酸と称される)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、またはこれらの混合物から誘導される。Uが−NH基である場合、式(i)および(iii)は、2−アミノ安息香酸(しばしば、アントラニル酸と称される)、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、またはこれらの混合物から誘導される。
【0021】
各場合において同じであっても異なっていてもよい、二価の架橋基としては、−CH−(メチレン架橋)および−CHOCH−(エーテル架橋)が挙げられ、これらの各々は、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物(例えば、パラホルム、ホルマリン)、エタナールまたはプロパナールのようなアルデヒドから誘導され得る。
【0022】
金属サリキサレートの金属は、しばしば、一価、二価、またはこれらの混合物である。好ましくは、この金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、カリウムまたはナトリウム)から選択されるが、マグネシウム、カルシウム、カリウムまたはこれらの混合物が、最も好ましい。
【0023】
サリキサレート分子のかなりの部分(中和の前)は、平均して、以下の式:
【0024】
【化7】

によって表され得ると考えられる。この式において、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、そして水素またはアルキル基であるが、ただし、少なくとも1つのRは、アルキルである。好ましい実施形態において、Rは、ポリイソブテン基(特に、分子量200〜1,000、または約550のもの)である。式(III)の1つのサリチル酸末端基を含む、かなりの量の複核種または三核種もまた、存在し得る。このサリキサレート洗浄剤は、単独で使用されてもよく、他の洗浄剤と共に使用されてもよい。
【0025】
サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法が、米国特許第6,200,936号ならびにPCT出願公開WO01/56968および同WO03/818728に、より詳細に記載されている。サリキサレート誘導体は、大環状構造よりもむしろ、優先的に線状である構造を有すると考えられるが、両方の構造が、用語「サリキサレート」によって包含されることが意図される。さらに、「線状」は、置換基R基における分枝構造も他の構造も排除しない。
【0026】
金属サリキサレートは、しばしば、油がない状態に基づいて、この組成物の0.01重量%〜20重量%、好ましくは、0.1重量%〜10重量%、より好ましくは、0.2重量%〜8重量%、そして最も好ましくは、0.5重量%〜5重量%存在する。
【0027】
(成分(b) 添加剤)
本発明は、少なくとも1種の添加剤を含有し、この添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される。
【0028】
本発明は、少なくとも1種の添加剤を含有し、この添加剤は、(1)酸化防止剤;(2)摩擦改質剤;(3)分散剤;(4)粘度改質剤;(5)分散剤粘度改質剤;および(6)金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤からなる群より選択される。しばしば、2種以上、そして最も好ましくは、3種以上の、添加剤(1)〜(6)が、本発明において存在する。
【0029】
しばしば、添加剤(1)〜(6)の各々の量は、油がない状態に基づいて、この組成物の0重量%〜25重量%、好ましくは、0.1重量%〜20重量%、より好ましくは、0.3重量%〜15重量%、そして最も好ましくは、1重量%〜10重量%で存在するが、ただし、少なくとも1種の添加剤は、この組成物の0.1重量%以上で存在する。
【0030】
(酸化防止剤)
本発明において存在する場合、酸化防止剤としては、しばしば、ジフェニルアミン酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
他の酸化防止添加剤(例えば、ジチオカルバミン酸モリブデンまたは硫化オレフィン)がまた、本発明の組成物に添加され得るが、好ましくは、この組成物は、実質的に、ジチオカルバミン酸モリブデンも硫化オレフィンも含まない。本明細書中において使用される場合、用語「実質的にジチオカルバミン酸モリブデンも硫化オレフィンも含まない」とは、この組成物が、100ppm未満、好ましくは、20ppm未満、そして最も好ましくは、1ppm以下で存在する、ジチオカルバミン酸モリブデンまたは硫化オレフィンを含有することを意味する。
【0032】
存在する場合、本発明のために適切なジフェニルアミンは、しばしば、式:
【0033】
【化8】

によって表される。ここで、RおよびRは、独立して、ヒドロカルビル基であり;そしてzは、0以上であるが、少なくとも1つの環において、zは、0ではない。しばしば、このヒドロカルビル基は、1個〜24個、好ましくは、2個〜18個、そして最も好ましくは、4個〜12個の炭素原子を含む。
【0034】
適切なジフェニルアミン酸化防止剤の例としては、オクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ビスオクチルジフェニルアミン、ビスノニルジフェニルアミン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
存在する場合、ジフェニルアミンは、しばしば、油がない状態に基づいて、この組成物の0.01重量%〜20重量%、好ましくは、0.05重量%〜10重量%、より好ましくは、0.1重量%〜5重量%、そして最も好ましくは、0.2重量%〜3重量%で存在する。
【0036】
存在する場合、本発明のために適切なヒンダードフェノールは、しばしば、式:
【0037】
【化9】

によって表され、ここで、RおよびRは、独立して、1個〜24個、好ましくは、4個〜18個、そして最も好ましくは、4個〜12個の炭素原子を含む、分枝鎖または直鎖のアルキル基であり;そしてEは、水素、ヒドロカルビル基、第二の芳香族基に連結する架橋基、エステル含有基、またはこれらの混合物である。
【0038】
およびRは、直鎖であっても分枝鎖であってもよく;分枝鎖が好ましい。RおよびRの適切な例としては、第二級ブチルおよび第三級ブチルが挙げられる。
【0039】
1つの実施形態において、本発明のために適切な式(VII)のヒンダードフェノールは、式:
【0040】
【化10】

によって表されるエステルまたは酸であり、ここで、RおよびRは、上で定義されたとおりであり、そしてR10は、水素、ヒドロカルビル基またはこれらの混合物である。
【0041】
10がヒドロカルビル基である場合、R10は、好ましくは、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0042】
1つの実施形態において、本発明のために適切な式(VII)のヒンダードフェノールは、架橋基を含む。適切な架橋基の例としては、1個〜8個、好ましくは、1個〜6個、より好ましくは、1個〜4個、そして最も好ましくは、1個〜2個の炭素原子を含む、アルキレン架橋またはエーテル架橋が挙げられる。適切な架橋基の例としては、−CH−、−CHCH−、−CHOCH−および−CHCHOCHCH−が挙げられる。
【0043】
存在する場合、架橋基を有するヒンダードフェノールは、しばしば、式:
【0044】
【化11】

によって表され、ここで、R11およびR12は、上で定義されており、そしてYは、架橋基である。メチレン架橋されたヒンダードフェノールの例としては、4,4’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス−(2−tert−アミル−o−クレゾール)および4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0045】
本発明のヒンダードフェノールはまた、式
【0046】
【化12】

によって表される化合物を含み、ここで、R、EおよびYは、上で定義されている。適切なメチレン架橋された式(VIII)のヒンダードフェノールの例としては、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、および2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−プロピル−6−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0047】
存在する場合、ヒンダードフェノールは、しばしば、油がない状態に基づいて、この組成物の0.01重量%〜25重量%、好ましくは、0.1重量%〜20重量%、より好ましくは、0.5重量%〜15重量%、そして最も好ましくは、1重量%〜10重量%で存在する。
【0048】
(分散剤)
存在する場合、本発明は、分散剤をさらに含有し、この分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドまたはその混合物から誘導される。これらの分散剤は、単独で使用されても、他の分散剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0049】
N置換長鎖アルケニルスクシンイミドは、種々の化学構造を有し、そしてモノスクシンイミドおよび/またはジスクシンイミドが挙げられる。しばしば、長鎖アルケニル基は、350〜10,000、好ましくは、400〜7000、より好ましくは、500〜5000、そして最も好ましくは、500〜4000の数平均分子量を有する。1つの実施形態において、長鎖アルケニル基は、ポリイソブチレン基であり、これは、800〜1600の数平均分子量、そして別の実施形態においては、1600〜3000の数平均分子量を有する。スクシンイミドは、しばしば、ヒドロカルビル置換されたアシル化剤(例えば、ヒドロカルビル置換された無水コハク酸)と、ポリアミンまたはアミノアルコール、しばしば、ポリアルキレンポリアミンまたはポリ(エチレンアミン)(例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、または1つの実施形態において、ポリアミン蒸留ボトムス)との縮合によって調製される。
【0050】
N置換長鎖アルケニルスクシンイミド分散剤添加剤およびこれらの調製は、例えば、米国特許第3,361,673号、同第3,401,118号、および同第4,234,435号に開示されている。
【0051】
適切な分散剤の別のクラスとしては、マンニッヒ塩基が挙げられ、これらは、アルキル基が代表的に少なくとも30個の炭素原子を含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物であり、そして米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0052】
無灰分散剤の別のクラスは、高分子量エステルである。これらの材料は、これらの材料がヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪族アルコール(例えば、グリセロール、ペンタエリトリトール、またはソルビトール)との反応によって調製されるようであり得ることを除いて、上に記載されたスクシンイミドと類似である。このような材料は、米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。
【0053】
他の分散剤としては、ポリマー分散剤添加剤が挙げられ、これらは、一般に、ポリマーに分散剤性の特徴を付与するための極性官能基を含む、炭化水素ベースのポリマーである。
【0054】
分散剤はまた、種々の試薬のいずれかとの反応によって、後処理され得る。とりわけ、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素で置換された無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物である。このような処理を詳述する参考文献が、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0055】
存在する場合、分散剤は、しばしば、油がない状態に基づいて、組成物の0.01重量%〜20重量%、好ましくは、0.1重量%〜15重量%、より好ましくは、0.2重量%〜10重量%、そして最も好ましくは、0.5重量%〜6重量%で存在する。
【0056】
(摩擦改質剤)
本発明において存在する場合、摩擦改質剤は、ポリオールと脂肪族カルボン酸(しばしば、12個〜24個の炭素原子を含む酸)とのモノエステルであり得る。しばしば、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルは、ひまわり油などとの混合物の形態であり、この油は、この摩擦改質剤中に、この混合物の5重量%〜95重量%、好ましくは、10重量%〜90重量%、より好ましくは、20重量%〜85重量%、そして最も好ましくは、20重量%〜80重量%で存在し得る。
【0057】
ポリオールとしては、ジオール、トリオール、およびより多い数のアルコール性OH基を有するアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールが挙げられる);プロピレングリコール(ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールが挙げられる);グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリトリトール;ならびにペンタエリトリトール(ジペンタエリトリトールおよびトリペンタエリトリトールが挙げられる);が挙げられる。好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールである。
【0058】
エステルを形成する脂肪族カルボン酸は、12個〜24個の炭素原子を含む酸である。12個〜24個の炭素原子(例えば、14個〜20個、または16個〜18個の炭素原子)を含む直鎖ヒドロカルビル基を含む酸が好ましい。このような酸は、より多くの炭素原子またはより少ない炭素原子を有する酸と組み合わせてもまた、使用され得る。
【0059】
一般に、この酸は、モノカルボン酸である。カルボン酸の例としては、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0060】
本発明において使用されるエステルは、特に、このようなポリオールとこのようなカルボン酸とのモノエステルである。好ましいエステルは、モノオレイン酸グリセロールである。モノオレイン酸グリセロールは、他のこのような材料の場合と同様に、その市販されている等級において、グリセロール、オレイン酸、他の長鎖酸、ジオレイン酸グリセロール、およびトリオレイン酸グリセロールのような材料を含有する、混合物である。市販の材料は、約60±5重量%の化学種「モノオレイン酸グリセロール」を、35±5%のジオレイン酸グリセロール、ならびに5%未満のトリオレイン酸グリセロールおよびオレイン酸とともに含有すると考えられる。以下に記載されるモノエステルの量は、任意のこのような混合物中に存在するポリオールモノエステルの、実際の補正された量に基づいて、計算される。
【0061】
本発明のために適切な、他の摩擦改質剤としては、脂肪アミン、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、アルコキシ化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩が挙げられる。好ましくは、摩擦改質剤は、硫黄および/またはリンを含まない。
【0062】
存在する場合、摩擦改質剤は、しばしば、油がない状態に基づいて、組成物の0.01重量%〜20重量%、好ましくは、0.05重量%〜10重量%、より好ましくは、0.1重量%〜5重量%、そして最も好ましくは、0.2重量%〜3重量%(例えば、0.5重量%〜2重量%)で存在する。
【0063】
(粘度改質剤)
本発明において存在する場合、粘度改質剤は、しばしば、オレフィンコポリマーである。このオレフィンコポリマーの骨格は、しばしば、2種〜4種、好ましくは、2種〜3種、そして最も好ましくは2種の、異なるオレフィンモノマーを含む。これらのオレフィンモノマーは、しばしば、2個〜20個、好ましくは、2個〜10個、より好ましくは、2個〜6個、そして最も好ましくは、2個〜4個の炭素原子を含む。
【0064】
存在する場合、粘度改質剤は、しばしば、油がない状態に基づいて、組成物の0.01重量%〜15重量%、好ましくは、0.05重量%〜10重量%、より好ましくは、0.1重量%〜5重量%、そして最も好ましくは、0.2重量%〜3重量%で存在する。
【0065】
オレフィンコポリマーは、好ましくは、エチレンモノマー、および式HC=CHR10を有するα−オレフィンから誘導される少なくとも1種の他のコモノマーを含み、ここで、R10は、ヒドロカルビル基であり、好ましくは、1個〜18個、好ましくは、1個〜10個、より好ましくは、1個〜6個、そして最も好ましくは、1個〜3個の炭素原子を含む、アルキル基である。このヒドロカルビル基としては、直鎖を有するアルキル基、分枝鎖を有するアルキル基、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
適切なコモノマーの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチルペンテン−1、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、このコモノマーは、1−ブテン、プロピレン、またはこれらの混合物である。オレフィンコポリマーの例としては、エチレン−プロピレンコポリマーまたはエチレン−ブテン−1コポリマーが挙げられる。
【0067】
本発明のために適切な、他の粘度改質剤としては、水素化スチレン−ブタジエンゴム、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール結合体化ジエンコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、またはこれらの混合物が挙げられる、ポリマー材料が挙げられる。
【0068】
必要に応じて、本発明のオレフィンコポリマーは、不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体およびアミンとさらにグラフト重合されて、分散剤粘度改質剤(しばしば、DVMと称される、これらは、分散剤特性もまた示すので、このように命名される)を形成する。DVM添加剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第6,107,258号および同第6,107,257号に開示されている。
【0069】
オレフィンコポリマーDVMの例としては、DSMから、PA1250TM、PA1260TMおよびPA1274TMとして市販されているもの、ならびにHitec 5777TM(Ethyl Corporationから市販されている)が挙げられる。
【0070】
しばしば、分散剤粘度改質剤は、(a)不飽和ジカルボン酸水素無水物またはその誘導体およびアミンとグラフト重合した、オレフィンコポリマー;(b)アミンで官能基化されたポリメタクリレート;(c)(i)スチレン、(ii)必要に応じてアミンで官能基化された、不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を含むエステル化コポリマー;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される。しばしば、ポリメタクリレートおよび/またはスチレンコポリマーから誘導されるDVMは、米国特許第6,107,258号および同第6,107,257号に記載されるように、アミンとの反応によって調製される。DVMは、単独で使用されても、他のDVMと組み合わせて使用されてもよい。
【0071】
存在する場合、分散剤粘度改質剤は、しばしば、油がない状態に基づいて、組成物の0.01重量%〜10重量%、0.05重量%〜6重量%、より好ましくは、0.08重量%〜4重量%、そして最も好ましくは、0.1重量%〜2重量%で存在する。
【0072】
(耐磨耗剤)
本発明の組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩以外の耐磨耗剤を、さらに含有し得る。適切な耐磨耗剤としては、リン酸エステルまたはその塩;ホスファイト;ならびにリンを含有するカルボン酸エステル、エーテル、およびアミド、あるいはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、リンおよび/または硫黄を含有する耐磨耗剤を、実質的に含まない。本発明の1つの実施形態において、この組成物は、耐磨耗剤を含まない。
【0073】
本明細書中で使用される場合、用語「硫黄および/またはリンを含有する耐磨耗剤を実質的に含まない」とは、組成物が、50ppm未満、好ましくは、10ppm未満、そしてもっとも好ましくは、1pm未満で存在する耐磨耗剤を含むことを意味する。本発明の1つの実施形態において、硫黄および/またはリンを含有する耐磨耗剤は、存在しない。本発明の1つの実施形態において、1ppm〜15ppmの、硫黄および/またはリンを含有する耐磨耗剤が、存在する。
【0074】
(潤滑粘度の油)
本発明の潤滑油組成物は、潤滑粘度の油に添加され得る。この油としては、天然油および合成油、水素化分解法から誘導される油、水素化から誘導される油、水素仕上げ(hydrofinishing)から誘導される油、未精製油、精製油および再精製油、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
未精製油とは、天然供給源または合成供給源から、一般にはさらなる精製処理なし(またはほとんどなし)で直接得られる油である。
【0076】
再精製油は、これらが1回以上の精製工程でさらに処理されて、1つ以上の特性を改善されていることを除いて、未精製油と類似である。精製技術は、当該分野において公知であり、そして溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出または塩基抽出、濾過、浸出などが挙げられる。
【0077】
再精製油はまた、再生油または再処理油としてまた公知であり、そして精製油を得るために使用されたプロセスと類似のプロセスによって得られ、そしてしばしば、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を目的とする技術によって、さらに処理される。
【0078】
本発明の潤滑剤を作製する際に有用である天然油としては、動物油、植物油(例えば、ひまし油、ラード油)、無機質の潤滑油(例えば、液体石油および溶媒で処理されたかまたは酸で処理された、パラフィン系、ナフタレン系、または混合型のパラフィン−ナフタレン系の無機質の潤滑油)、ならびに石炭または頁岩由来の油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
合成潤滑油は、有用であり、そしてこれらとしては、重合オレフィンまたは融合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物;アルキル−ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン));ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにこれらの誘導体、アナログおよびホモログ、またはこれらの混合物のような炭化水素油が挙げられる。好ましくは、合成潤滑油は、アルキル化ジフェニルスルフィドを含まない。
【0080】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、リンを含有する酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンリン酸のジエチルエステル)、ならびにポリマーのテトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されない。合成油は、Fischer−Tropsch反応によって生成され得、そして代表的に、水素異性体化Fischer−Tropsch炭化水素または蝋であり得る。好ましくは、合成潤滑油は、リンを含有するエステルを含まない。
【0081】
潤滑粘度の油はまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesに詳述されるように、定義され得る。5種のベース油群は、以下のとおりである:Group I(硫黄含有量>0.03重量%、および/または<90重量%飽和、粘度指数80−120);Group II(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和、粘度指数80−120);Group III(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和、粘度指数≧120);Group IV(全てのポリαオレフィン(PAO));およびGroup V(Groups IにもGroups IIにもGroups IIIにもGroups IVにも含まれない全ての他のもの)。潤滑粘度の油は、API Group I、API Group II、API Group
III、API Group IV、API Group Vの油、およびこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、API Group II、API Group III、API Group IV、またはAPI Group Vの油、およびこれらの混合物からなる群より選択され、そして最も好ましくは、API Group III、API Group IV、またはAPI Group Vの油、およびこれらの混合物からなる群より選択される。潤滑粘度の油が、API Group II、API Group III、API Group IV、またはAPI Group Vの油である場合、この潤滑油の最大20重量%まで、好ましくは、最大10重量%まで、より好ましくは、最大5重量%まで、そしてもっとも好ましくは、最大1.5重量%までが、API Group Iの油が存在し得る。
【0082】
適切なAPI Group IIIの油の例としては、NexbaseTM 3050、NexbaseTM 3043、YubaseTM 4、YubaseTM 6、およびShellTM XHVI 5.2が挙げられる。
【0083】
潤滑粘度の油は、しばしば、組成物の99.98重量%まで、好ましくは、99.8重量%まで、より好ましくは、99.65重量%まで、そして最も好ましくは、99.3重量%までで存在する。
【0084】
本発明が、濃縮物(これは、さらなる油と組み合わせられて、全体的にかまたは部分的に、完成した潤滑剤を形成する)の形態である場合、上述の分散剤の各々および他の成分対希釈油の比は、しばしば、重量で80:20〜10:90である。
【0085】
(金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩)
本発明は、式:
【0086】
【化13】

によってしばしば表される金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩を、実質的に含まないか、または含まない。この式において、R11およびR12は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはその混合物であるが、ただし、R11とR12とのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、好ましくは、1個〜30個、好ましくは、2個〜20個、そして最も好ましくは、2個〜15個の炭素原子を有する、アルキルまたはシクロアルキルである。
【0087】
用語「実質的に含まない」とは、その組成物が、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の400ppm以下のリン、好ましくは、300ppm以下のリン、より好ましくは、200ppm以下のリン、なおより好ましくは、100ppm以下のリン、そしてもっとも好ましくは、100ppm以下のリン(例えば、50ppm、20ppm、または1ppm以下)を含むことを意味する。本発明の1つの実施形態において、この組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩由来の、0.5ppmまたは10ppm〜50ppmのリンを含有する。本発明の1つの実施形態において、この組成物は、金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩を含まない。
【0088】
M’は、金属であり、そしてnは、M’の利用可能な原子価に等しい整数である。M’は、一価または二価または三価であり、好ましくは、二価であり、より好ましくは、二価の遷移金属である。1つの実施形態において、M’は、亜鉛である。1つの実施形態において、M’は、カルシウムである。1つの実施形態において、M’は、バリウムである。金属のヒドロカルビルジチオリン酸塩の例としては、ヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(しばしば、ZDDP、ZDPまたはZDTPと称される)が挙げられる。
【0089】
(他の性能添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、他の性能添加剤をさらに含有する。他の性能添加剤は、本発明の成分(a)以外の洗浄剤、腐食防止剤、傷防止剤、消泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、密封膨潤剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0090】
存在する他の性能添加剤の総合計量は、油がない状態に基づいて、しばしば、その組成物の0重量%〜20重量%、好ましくは、0.01重量%〜15重量%、より好ましくは、0.05重量%〜10重量%、そして最も好ましくは、0.1重量%〜5重量%である。1種以上の他の性能添加剤が存在し得るが、他の性能添加剤は、互いに対して異なる量で存在するのが普通である。
【0091】
本発明の成分(a)以外の洗浄剤は、公知であり、そしてアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の、フェネート、スルホネート、カルボン酸、リンの酸、モノチオリン酸および/またはジチオリン酸、サリゲニン、アルキルサリチレートとの、中性塩またはオーバーベース化塩、ニュートン塩または非ニュートン塩、塩基性塩、あるいはこれらの混合物が挙げられる。通常使用される金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、またはこれらの混合物が挙げられる。最も通常に使用される金属としては、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウムが挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、硫黄および/またはリンを含有する洗浄剤を含まない。
【0092】
他の性能添加剤(腐食防止剤(オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水コハク酸および脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物;金属不活性化剤(ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾイミダゾールの誘導体が挙げられる);消泡剤(アクリル酸エチルと2−エチルヘキシルアクリレートおよび必要に応じて酢酸ビニルとのコポリマー);抗乳化剤(トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーが挙げられる);流動点降下剤(無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドが挙げられる);ならびに密封膨潤剤(Exxon Necton−37TM(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる)が挙げられる))がまた、本発明の組成物において使用され得る。
【0093】
(プロセス)
本発明は、上記のような組成物の調製のためのプロセスを、さらに提供する。
【0094】
成分(a)〜(c)は、しばしば、本発明の組成物のために、連続的に別々に混合される。混合条件は、しばしば、15℃〜130℃、好ましくは、20℃〜120℃、そして最も好ましくは、25℃〜110℃;および30秒間〜48時間、好ましくは、2分間〜24時間、より好ましくは、5分間〜16時間、そして最も好ましくは、10分間〜5時間の時間;ならびに86kPa〜266kPa(650mmHg〜2000mmHg)、好ましくは、91kPa〜200kPa(690mmHg〜1500mmHg)、そして最も好ましくは、95kPa〜133kPa(715mmHg〜1000mmHg)の範囲の圧力である。
【0095】
このプロセスは、必要に応じて、上に記載されたような他の任意の性能添加剤を混合する工程を包含する。この任意の性能添加剤は、しばしば、連続的にか、別々にか、または濃縮物として、添加される。
【0096】
以下の実施例は、本発明の説明を提供する。これらの実施例は、排他的ではなく、そして本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0097】
(調製実施例1:サリキサレート基質(サリキサレン(salixarene))の調製)
サリキサレン基質のサンプルを、容積約2リットルのフランジフラスコ、フランジおよびクリップ、羽とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌棒(gland)とを有するオーバーヘッド攪拌器、Dean Starkトラップおよび二重表面冷却器、電気マントル/熱伝対/EurothermTM温度制御システムを使用して、マントルのすぐ上から冷却器のすぐ下までのガラス器具をガラスウールで覆って、調製する。このフラスコに、数平均分子量550の高ビニリデンポリイソブチレン(BASFから市販されているGLISSOPAL(登録商標)550)から誘導された475gのポリイソブテニルフェノール、および330gの鉱油(SN 150)を入れ、そして30℃まで加熱し、圧力等化滴下漏斗を介して、3.4gのKOHの50%水溶液を添加する。このフラスコの内容物を75℃まで加熱し、そして81.6gのホルムアルデヒド(ホルマリン)の37%水溶液を添加しながら、この温度を30分間一定に維持する。この反応物に、51.6gのサリチル酸を入れ、そして還流を制御しながら、140℃まで加熱する。Dean Starkトラップを使用して、水を除去する。その生成物を、140℃/13kPa(100mmHgと等価)で30分間、減圧ストリップする。この反応プロセスのさらに詳細な記載は、国際公開WO03/018728、22頁および23頁の実施例1および実施例5に与えられている。
【0098】
(調製実施例2:カルシウムサリキサレート)
容器に、調製実施例1から得られた1200gのサリキサレート、25gのエチレングリコール、130gの水酸化カルシウムおよび410gの2−エチルヘキサノールを入れる。この容器および内容物を、95度まで加熱し、そして減圧化(64kPa、これは、480mmHgに等価である)で攪拌する。次いで、この容器および内容物を、6.7kPa(50mmHgに等価)の減圧に15分間供し、そして130℃まで加熱する。次いで、この容器に、さらに120gのエチレングリコールを、10分間かけて滴下し、その後、二酸化炭素を、浸漬管を介して、わずかな負圧(1.0g/分以下)で、48gが添加されるまで添加する。二酸化炭素の添加が完了したら、その浸漬管を取り除き、そしてその温度を、6.7kPa(50mmHgに等価)の減圧下で200℃まで上昇させて、溶媒を除去する。その残渣を、半融濾過器内の12mmの珪藻土パッドを通して減圧濾過し、粘性の褐色液体を得る。
【0099】
(調製実施例3:マグネシウムサリキサレート)
容器に、調製実施例1から得られた560.5gのサリキサレンおよび433gのキシレンを入れる。この容器および内容物を、窒素雰囲気下で35℃まで加熱し、ここで、53gの酸化マグネシウムを添加する。次いで、この容器に、20.2gの氷酢酸を入れ、次いで、メタノール(42g)と水(30g)との混合物を添加する。この容器および内容物を、61℃まで加熱し、そして炭酸処理する。この容器および内容物を、さらに2時間61℃に維持し、メタノール(36g)と水(26.2g)とのさらなる混合物を添加する。この容器を150℃まで加熱し、そして1時間維持する。その生成物を、減圧ストリップする。
【0100】
(調製実施例4:カリウムサリキサレート)
容器に、調製実施例1から得られた313gのサリキサレートを入れ、そして窒素雰囲気下で80℃まで加熱し、ここで、7gの水中の12.1gの水酸化カリウムを滴下し、続いて、85gの希釈油を添加する。この容器および内容物を、110℃で10分間加熱し、次いで、120℃で90分間加熱し、そして140℃で3時間加熱する。暗褐色の生成物が形成される。
【0101】
(参照実施例1)
組成物を、(a)42.5gのNexbaseTM3050油、(b)34.4gのNexbaseTM3043油、(c)油がない状態に基づいて0.4gのアミン分散剤粘度改質剤、(d)油がない状態に基づいて2.8gのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤、(e)5gの酸化防止剤(ジフェニルアミンおよびヒンダードフェノールを含む)、(f)0.7gのオレフィンコポリマー粘度改質剤、ならびに(g)モノオレイン酸グリセロール摩擦改質剤を混合することによって、調製する。この組成物は、0重量%のカルシウム、0重量%のリン、190ppmの硫黄および0重量%の亜鉛を含有する。この組成物は、13.11mm/s(sSt)のKV100および0重量%の硫化灰含有量を有する。
【0102】
(参照実施例2:上段座席のヨーロッパの客車の油処方物)
参照実施例2は、ジチオ硫酸亜鉛を含有する、首尾よいヨーロッパの上段座席の客車の油処方物である。この油処方物の元素分析は、3307ppmのカルシウム含有量、889ppmのリン含有量、2645ppmの硫黄含有量、および889ppmの亜鉛含有量を示す。この油処方物は、11.3mm/s(cSt)のKV100および1.26重量%の硫化灰含有量を有する。
【0103】
(実施例1)
実施例1は、2.5g(油がない状態に基づく)の調製実施例2の生成物もまた添加されることを除いて、参照実施例1と同じ組成を有する。リン含有量は、0重量%であり、そして硫黄含有量は、190ppm(全て、希釈油に由来する)である。
【0104】
(実施例2)
実施例2は、2.5g(油がない状態に基づく)の調製実施例3の生成物もまた添加されることを除いて、参照実施例1と同じ組成を有する。リン含有量は、0重量%であり、そして硫黄含有量は、190ppm(全て、希釈油に由来する)である。
【0105】
(実施例3)
実施例3は、2.5g(油がない状態に基づく)の調製実施例4の生成物もまた添加されることを除いて、参照実施例1と同じ組成を有する。リン含有量は、0重量%であり、そして硫黄含有量は、190ppm(全て、希釈油に由来する)である。
【0106】
多数の潤滑油組成物を、参照実施例1を使用して、油がない状態に基づいて、実施例1〜3を2.5g添加して形成し、これによって、「実施例1を含む潤滑油組成物」を形成する。実施例2は、「実施例2を含む潤滑油組成物」、「実施例3を含む潤滑油組成物」と表題がつけられる。参照実施例1および対応する実施例1〜3を含む潤滑油組成物は、13.11mm/s(すなわちcSt)のKV100を有する。
【0107】
(試験1:実施例1〜3および参照実施例1〜2のHFRR)
実施例1〜3を含む潤滑油組成物および参照実施例1〜2を、PCS Instrumentsから入手可能なプログラムされた温度の高周波数往復リグ(HFRR)における磨耗性能について、評価する。評価のためのHFRR条件は、200gの負荷、75分間の持続時間、1000マイクロメートルの行程、20ヘルツの周波数、および15分間で40℃に続いて1分間あたり2℃の速度での160℃までの温度の上昇の温度プロフィールである。磨耗による傷(マイクロメートル)およびフィルム形成(フィルムの厚さの百分率)を測定し、より低い磨耗による傷の値およびより高いフィルム形成値は、改善された磨耗性能を示す。
【0108】
フィルムの厚さの百分率は、HFRRの上部金属試験プレートと下部金属試験プレートとの間の電位差の測定に基づく。フィルムの厚さが100%である場合、1000マイクロメートルの行程の全長について、高い電位が存在し、金属と金属との接触がないことを示唆する。逆に、0%のフィルムの厚さについては、電位が存在せず、プレートの間での金属と金属との連続的な接触を示唆する。中間のフィルムの厚さについては、電位が存在し、上部金属試験プレートと下部金属試験プレートとが、金属と金属とのある程度の接触、および金属と金属との接触がない他の領域を有することを示唆する。磨耗による傷およびフィルム形成の得られる結果が、表1に提供される:
【0109】
【化14】

(試験2:実施例1および参照実施例1〜2のCameron Plint)
Cameron Plint TE−77TMは、往復磨耗試験機である。この試験において、鋼球の上部標本が、鋼の平坦な下部標本に押し付けられて往復される。Cameron Plintに、10mlのサンプルを充填し、そして50℃まで加熱し、そして1分間維持する。次いで、そのサンプルを、2分間にわたって100Nの負荷に供し、同時に、往復を、10Hzで15mmの行程の長さにわたって開始する。次いで、そのサンプルを、1分間あたり3℃で250℃まで加熱する。この試験の終了時に、この球に対する磨耗による傷の平均直径(マイクロメートル)(X次元およびY次元で測定)を、較正された顕微鏡を使用して測定する。得られる結果は、以下である:
【0110】
【化15】

(試験3:ASTM D4172を使用する、4つの球での磨耗試験)
この試験において使用される、「実施例4の潤滑湯組成物」および「実施例5の潤滑油組成物」は、「実施例4」が、油がない状態に基づいて、2gの調製実施例2から得られた生成物を含み、そして約1900ppmのカルシウムおよび約146のTBNを有すること;ならびに「実施例5」が、油がない状態に基づいて、1.2gの調製実施例2から得られた生成物を含み、そして約1300ppmのカルシウムおよび約146のTBNを有することを除いて、「実施例1の潤滑油組成物」と同じである。参照実施例3は、アルキルサリチル酸カルシウム(InfineumからAC60CTM範囲の製品から市販されている)が、約1300ppmのカルシウムおよび約146のTBNを有するために充分な量で添加されていることを除いて、参照実施例1と同じ油の組成を有する。参照実施例4は、サリゲニンマグネシウム(The Lubrizol Corporationから市販されている)が、約1300ppmのマグネシウムおよび約146のTBNを有するために充分な量で添加されていることを除いて、参照実施例1と同じ油の組成を有する。
【0111】
ASTM D4172試験を、多数の実施例に対して、ASTM D 4172−94(1999年に再認可)の第8節のページに示されている改変B条件を使用して、実施する。磨耗による傷を、マイクロメートルで測定する。得られる結果は、以下である:
【0112】
【化16】

試験1および試験2からのデータの全体の分析は、本発明の組成物が、参照実施例1と比較して、良好な耐磨耗結果およびフィルム形成結果を生じることを示す。この分析はまた、実施例1の潤滑油組成物が、ジチオリン酸亜鉛を含有する、首尾よいヨーロッパの上段座席の乗用車の油処方物に匹敵する、耐磨耗結果およびフィルム形成結果を有することを示す。
【0113】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」とは、本明細書中で使用される場合、そのもともとの意味において使用され、その意味は、当業者に周知である。具体的には、その用語は、主として炭素原子および水素原子からなり、そして炭素原子を介してその分子の残りの部分に結合する基をいい、そしてその分子が優先的に炭化水素の特徴を有することを損なうには不充分な割合での、他の原子または基の存在を除外しない。一般に、2つ以下、好ましくは、1つ以下の、非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに存在する;代表的に、ヒドロカルビル基には、非炭化水素置換基は、存在しない。用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」のより詳細な定義は、米国特許第6,583,092号に記載されている。
【0114】
上で参照された文献の各々は、本明細書中に参考として援用される。実施例、または他の明白に示される箇所においてを除いて、本明細書中の、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する全ての数値の量は、単語「約」によって修飾されると理解されるべきである。他に示されない限り、本明細書中に記載される化学または組成の各々は、市販の等級の材料であると解釈されるべきであり、この材料は、異性体、副生成物、誘導体、および市販の等級で存在すると通常理解される他の材料を含有し得る。しかし、各化学成分の量は、他に示されない限り、市販の材料に通常存在し得るいずれの溶媒も希釈油も排除して存在する。本明細書中に記載される、量、範囲および比の上限および下限は、独立して組み合わせられ得ると理解されるべきである。同様に、本発明の各元素についての範囲および量は、他の元素のいずれかについての範囲または量と一緒に使用され得る。本明細書中で使用される場合、「本質的になる」との表現は、考慮している組成物の基本的かつ新規な特徴に重大に影響を与えない物質の含有を許可する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の組成物は、内燃機関(例えば、ディーゼル燃料機関、ガソリン燃料機関、天然ガス燃料機関、または混合ガソリン/アルコール燃料機関)において、有用である。
【0116】
本発明の1つの実施形態は、内燃機関を潤滑するための方法を提供し、この方法は、この内燃機関に、本明細書中に記載されるような組成物を含有する潤滑剤を供給する工程を包含する。本発明の組成物の使用は、改善された機関清浄度、低下した磨耗、低下したNO放出および低下した粒子放出からなる群より選択されるうちの1つ以上を付与し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2011−214013(P2011−214013A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−165988(P2011−165988)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2006−547216(P2006−547216)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】