説明

ZSM−5微粒子及びその製造方法

【課題】
本発明は、粒子径が小さいZSM−5微粒子及び該微粒子が安定に分散した分散液、並びに、該微粒子を効率良く製造できる方法を提供するものである。
【解決手段】
SiO/Alモル比が40〜300であり、分散液の状態において動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子、及び、当該ZSM−5微粒子が分散した分散液、並びに、珪素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液を混合した含水ゲルを得てから、有機構造指向剤及び水を添加して混合して混合液スラリーを得る際のアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/L以下とし、Na、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lと調整してから、水熱合成することを特徴とする当該分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集が少ないZSM−5微粒子と該ZSM−5微粒子が溶媒に安定に分散した分散液に関するものである。本発明の微細ZSM−5は、例えば、触媒用途、光学用途や薄膜用途等に有用である。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトの品質は一般的に、結晶粒子径が小さい微粒子ほど向上する。更に、微粒子は分散した状態であることが望ましい。例えば、触媒分野では反応成分の移動、吸着、脱離に影響を与える。又、光学や薄膜材料の分野においては、粒子の大きさは透明性に大きく影響する。
【0003】
しかしながら、微粒子は単位体積当たりの表面積が大きくなることから粒子の凝集が起こり易く、分散した粒子を得ることが課題となっている。
【0004】
微細ZSM−5の製造方法としては、例えば、結晶化の工程中高物質移動速度および反応混合物に高剪断力を与えるように高速度のかきまぜで0.005〜0.1μmの微細ZSM−5が開示されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1のZSM−5は、0.005〜0.1μmの微細ZSM−5粒子が凝集した凝集物である。
【0005】
又、平均寸法100nmまたはそれ未満の結晶または凝集物からなるモレキュラーシーブであって、前記モレキュラーシーブは、最長寸法の分散が平均最長寸法の15%未満であるような結晶または凝集物サイズ分布を有し、またコロイド状の懸濁液を形成することが可能である、ナノメーターサイズのモレキュラーシーブ結晶または凝集物及びそれらの製造方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、SiO/Alモル比が40〜500であるZSM−5の合成に関しては開示がなく、シリカライト−1、シリカライト−2の合成方法のみ記載されている。又、SiO/Al比の影響に関しては、MFI型ゼオライト(ZSM−5)のための合成混合物のアルミナ含量の増加は、結晶サイズの増加をもたらすように見えると記載されている。
【0006】
又、平均粒径250ナノメートル未満、好ましくは200ナノメートル未満を、幾向標準偏差として示される粒度分布が1.30未満、好ましくは1.20未満である、結晶性ケイ酸アルミニウム粒子が開示されている(特許文献3)。しかしながら、ここでの結晶性ケイ酸アルミニウムは、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトA、ZSM−2、シリカライト、ヒドロキシソーダライトであり、ZSM−5の合成に関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−5335号公報
【特許文献2】特表平7−502964号公報
【特許文献3】特表平8−500574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粒子径が小さいZSM−5微粒子及び該微粒子が安定に分散した分散液、並びに、該微粒子を効率良く製造できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、粒子径がナノサイズである微細ZSM−5が、凝集することなく安定に分散した状態で合成できる方法を鋭意検討した結果、特に合成時の液相に含有される電解質イオン濃度が生成粒子の分散凝集に影響する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、SiO/Alモル比が40〜300であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液、並びに、該ZSM−5微粒子が安定に分散される製造方法として、Si原料、Al原料、アルカリ原料及び有機構造指示剤の混合物を水熱合成することからなる方法であって、混合液中のアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/L以下である上記ZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液の製造方法である。
【0011】
以下、本発明のZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液について詳細に説明する。
【0012】
本発明は微細ゼオライトに関するものであり、更には動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液に関する発明である。
【0013】
本発明の動的光散乱法で測定した平均粒子径は20〜300nmである。その理由は、平均粒子径が20nm未満の場合、合成が難しく安定な分散状態が得られ難く、一方、平均粒子径が300nmを超えた場合、合成は比較的容易であるが長期間放置により沈降が見られ安定な分散液が得られ難いからである。
【0014】
動的光散乱法による平均粒子径の測定は、本発明の方法で得た分散液をそのまま動的光散乱法による測定装置で測定した。測定装置は、動的光散乱法であれば特に限定するものではなく、一般の装置を用いることが出来る。尚、測定における粒子濃度は特に限定するものではないが、純水で希釈し適性濃度とし測定することが出来る。適性濃度は粒子径により異なるが、例えば、1〜20重量%である。
【0015】
本発明の安定な分散液とは、微粒子間に凝集が起こらず、微細であることで自らのブラウン運動により外から攪拌しなくとも、長期間放置しても粒子が沈降しないものを言い、例えば、1ヶ月以上沈降が見られないものである。
【0016】
ここで、分散液の溶媒としては限定するものではないが、水、エタノール等のアルコール溶媒等用途に合わせて選択出来、例えば、水が好ましい。
【0017】
本発明のZSM−5微粒子のSiO/Alモル比は40〜300である。その理由は、SiO/Alモル比が40未満の場合、比較的微細になり易いがアモルファス成分を含まない結晶性の高いZSM−5が得られ難く、一方、SiO/Alモル比が300を超えた場合、結晶成長の成長は起こり易いが微粒子が得られ難いからである。
【0018】
次に、本発明のZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明のZSM−5微粒子、及び、該ZSM−5微粒子が安定に分散した分散液は、珪素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液を混合し得た含水ゲルに、有機構造指向剤及び水を添加して混合して混合液スラリーから得ることができる。
【0020】
本発明の珪素化合物溶液、アルミニウム化合物溶液は特に限定するものではない。珪素化合物溶液としては、沈降法シリカ、乾式法シリカ等の粉末やケイ酸ソーダ等の溶液を使用でき、アルミニウム化合物溶液としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の粉末や硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ等の溶液を使用できる。また、これらの原料用液に加えアルカリ原料を使用することができる。アルカリ原料として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0021】
尚、本発明においては、前記混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度が粒子の凝集に影響するため、原料中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度は低濃度が好ましい。例えば、ケイ酸ソーダの溶液と硫酸アルミニウムの溶液を混合して得られるシリカとアルミナからなる複合ゲルを水洗して含まれるNa、SOを除いて使用することが出来る。
【0022】
本発明の有機構造指示剤は特に限定はなく、例えば、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TPAOH」)、テトラプロピルアンモニウムブロミド(以下、「TPABr」)、ノルマルプロピルアンモニウム(以下、「NPA」)等を用いることが出来、特にTPAOHが好ましい。
【0023】
又、有機構造指示剤の添加量は特に限定はなく、例えば、有機構造指示剤/Si(モル比)で0.05〜0.40であることが好ましい。尚、有機構造指示剤がTPAOHの場合はTPAOH添加量の増加と共に微細化が起こり易く、一方、有機構造指示剤がTPABrの場合はTPABr添加量の増加と共に凝集が起こり易いという傾向がある。
【0024】
本発明においては前記した珪素化合物溶液、アルミニウム化合物溶液、アルカリ原料及び有機構造指示剤の混合液スラリー中のアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/L以下であることが必須である。
【0025】
アルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/Lを超えた場合、凝集が生じ易く、本発明の微粒子が得られ難い。下限は特に限定はなく、工業的に可能である範囲で低濃度が好ましい。
【0026】
尚、前記アルカリ金属イオンとしては、例えばNa、Kである。又、前記ハロゲンイオンとしては、例えばCl、Br、Fである。
【0027】
本発明では、混合液スラリーを水熱合成することでZSM−5微粒子が安定に分散した分散液を得ることができる。
【0028】
本発明の水熱合成温度は特に限定はなく、例えば、有機構造指示剤がTPAOHの場合は70〜120℃である。又、水熱合成時間は特に限定はなく、例えば、12時間から10日間である。
【0029】
次に、前記水熱合成で得られたZSM−5微粒子が安定に分散した分散液中に含まれる無機イオン、有機構造指示剤等の洗浄方法としては特に限定するものではなく、遠心沈降法、限外ろ過法、ろ過法等を用いることが出来る。特に、本発明の動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子が安定に溶媒に分散した分散液は、分散安定性、溶媒置換の容易さ等から限外ろ過法が好ましい。
【0030】
本発明で言う、動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子が安定に分散した分散液とは、前記水熱合成後の分散液及び前記洗浄後の分散液である。尚、分散液中に含まれる無機イオン、有機構造指示剤等の含有量は用途により洗浄し使用することが好ましい。
【0031】
又、得られた分散液中のZSM−5微粒子は溶媒を乾燥除去することにより固体状態で得ることが出来る。乾燥方法は特に限定するものではなく、箱型乾燥機、スプレードライ等を用いることが出来る。更に、乾燥物の形状も限定するものではなく、粉末、薄膜等を用いることが出来る。
【発明の効果】
【0032】
本願発明のZSM−5微粒子は、分散液として凝集することなく安定に分散した状態であり、例えば、触媒用途、光学用途や薄膜用途等に有用である。
【0033】
又、本願発明のZSM−5微粒子の製造方法により、当該ZSM−5微粒子を効率良く製造することが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
尚、以下の記載における動的光散乱法による粒子径、結晶構造の評価、及びNa、K、Cl、Br、SOの分析は下記の方法によるものである。
【0036】
動的光散乱法による粒子径の測定は、日機装製のマイクロトラック9340UPA(粒子屈折率1.66、密度2.2g/cm、液体屈折率1.33)で測定した。尚、本発明の平均粒子径は体積平均径である。
【0037】
結晶構造の評価は、マックサイエンス製MXP3(X線源CuKα、加速電圧40kV、管電流30mA、操作速度2θ=0.02deg/sec)で行った。
【0038】
Na、Kの分析は、PERKIN ELMER製のOPTIMA3300DVICPで行った。
【0039】
Cl、Br、及びSOの分析は、東ソー製のION CHROMATOGRAPH IC−2001(カラムSUPER IC−A)で行った。
【0040】
実施例1
ケイ酸ソーダ溶液と硫酸アルミニウム溶液を混合し、含水ゲルを得た。得られた含水ゲル44.9gと、TPAOH(セイケム社製40%溶液)42.6g、HO12.5g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lであった。
【0041】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、半透明であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は75nmであった。
【0042】
次に、旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は22wt%であり、粒子径は75nmであった。
【0043】
分散液(A)、分散液(B)共に、一ヶ月以上沈降の見られない安定なものであった。
【0044】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は55であった。
【0045】
実施例2
実施例1で得られた含水ゲル41.7g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)55.4g、HO12.6g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lであった。
【0046】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、ほほ無色透明であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は25nmであった。
【0047】
次に、旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は18wt%であり、粒子径は25nmであった。
【0048】
分散液(A)、分散液(B)共に、一ヶ月以上沈降の見られない安定なものであった。
【0049】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は48であった。
【0050】
実施例3
実施例1で得られた含水ゲル51.5g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)10.0g、HO37.1g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lであった。
【0051】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、乳白色であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は250nmであった。
【0052】
次に、旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は28wt%であり、粒子径は250nmであった。
【0053】
分散液(A)、分散液(B)共に、一ヶ月以上沈降の見られない安定なものであった。
【0054】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は56であった。
【0055】
実施例4
ケイ酸ソーダ溶液と硫酸アルミニウム溶液を混合し、含水ゲルを得た。得られた含水ゲル37.1g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)42.7g、HO19.0g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.13モル/Lであった。
【0056】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、乳白色であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は275nmであった。
【0057】
次に、旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は25wt%であり、粒子径は275nmであった。
【0058】
分散液(A)、分散液(B)共に、一ヶ月以上沈降の見られない安定なものであった。
【0059】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は240であった。
【0060】
比較例1
実施例1で得られた含水ゲル41.7g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)55.4g、HO12.6g及び種晶0.6gに、NaClを1.0g添加し強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここでは、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.52モル/Lであった。
【0061】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、白色であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は378nmであった。
【0062】
次に、旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は20wt%であり、粒子径は378nmであった。
【0063】
分散液(A)、分散液(B)共に、一週間程度で沈降物が見られた。
【0064】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は55であった。
【0065】
比較例2
ケイ酸ソーダ溶液と硫酸アルミニウム溶液を混合し、含水ゲルを得た。得られた含水ゲル31.1g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)42.8g、HO24.7g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.08モル/Lであった。
【0066】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた分散液(A)は、白色であり、動的光散乱法で測定した平均粒子径は428nmであった。
【0067】
次に、旭旭化成ケミカルズ製(ペンシル型モジュールSLP−0053)膜を用い、分散液(A)を限外ろ過法でpH=10まで純水で置換洗浄した。得られた分散液(B)の固形分濃度は25wt%であり、粒子径は428nmであった。
【0068】
分散液(A)、分散液(B)共に、2日程度で沈降物が見られた。
【0069】
尚、分散液を乾燥し、得られた粉体をXRD測定したところ、分散液(A)、分散液(B)共にZSM−5単相であり、SiO/Al(モル比)は3200であった。
【0070】
比較例3
ケイ酸ソーダ溶液と硫酸アルミニウム溶液を混合し、含水ゲルを得た。得られた含水ゲル49.9g、TPAOH(セイケム社製40%溶液)42.2g、HO9.5g及び種晶0.6gを強攪拌で1時間混合し、混合液スラリーを得た。尚、種晶は東ソー製ZSM−5(860NHA)を用いた。ここで、混合液スラリー中のNa、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.38モル/Lであった。
【0071】
得られた混合液スラリーをオートクレーブに入れ、温度115℃において4日間加熱した後、オートクレーブから溶液を取り出した。得られた液(A)中の粒子は沈殿しており、動的光散乱法での測定は出来なかった。
【0072】
次に、5Cのろ紙でろ過水洗を行い、乾燥した。
【0073】
得られた乾燥物をXRD測定したところ、アモルファスであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明のZSM−5微粒子は、分散液として安定性が高く、触媒用途、光学用途や薄膜用途等に利用の可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alモル比が40〜300であり、分散液の状態において動的光散乱法で測定した平均粒子径が20〜300nmであるZSM−5微粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のZSM−5微粒子が分散した分散液。
【請求項3】
珪素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液を混合し得た含水ゲルに、有機構造指向剤及び水を添加して混合して混合液スラリーを得る際のアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/L以下とし、Na、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lと調整してから、水熱合成することを特徴とする請求項2記載の分散液の製造方法。
【請求項4】
珪素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液を混合し得た含水ゲルに、有機構造指向剤及び水を添加して混合して混合液スラリーを得る際のアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオン濃度の総和が0.5モル/L以下とし、Na、K、Cl、Br、及びSO濃度の総和は0.15モル/Lと調整してから、水熱合成して得られる分散液を乾燥することを特徴とする請求項1記載のZSM−5微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−131671(P2012−131671A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286463(P2010−286463)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】