説明

Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末及び該Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有する樹脂組成物

【課題】 本発明は、単一粒子内でコアシェル構造を有し、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子とZn−Alハイドロタルサイト型粒子との特徴を兼ね備え、従来の樹脂組成物に添加しているハイドロタルサイトを使用した場合よりも、樹脂劣化による着色防止や耐熱性に優れた樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 Mg−Alハイドロタルサイト型粒子をコア粒子とし、該コア粒子の粒子表面にZn−Alハイドロタルサイト型粒子からなるシェル層を形成したことを特徴とするZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末及び該Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有する樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一粒子内でコアシェル構造を有し、Mg−AlハイドロタルサイトとZn−Alハイドロタルサイトとの特徴を兼ね備え、従来の樹脂組成物に添加しているハイドロタルサイトを使用した場合よりも、樹脂劣化による着色防止や耐熱性に優れた樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂の安定化や機能化のために様々な化合物の添加が樹脂(組成物)に対して行われている。そのなかで、例えば塩素含有樹脂の耐熱安定性を向上させるために鉛化合物やスズ化合物が添加されていた。しかし近年、環境への意識向上がさけばれ、これら環境負荷の高い化合物の代替化合物としてほとんど無毒なハイドロタルサイト化合物が注目され、使用されるようになってきた。また、農業用フィルムにおいてはハイドロタルサイト化合物の持つ遠赤外線吸収能を利用するためポリオレフィン系樹脂へのハイドロタルサイト化合物の添加も行われている。
【0003】
一般に、ハイドロタルサイト化合物の構造は、日本化学会誌、1995(8)、p622〜628に記載されている通り、
「〔M2+1−x3+(OH)x+〔An−x/nO〕x−
ここでM2+は、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+などの二価金属イオン、M3+は、Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオン、An−は、OH、Cl−、CO2−、SO2−などのn価の陰イオンで、xは一般に0.2〜0.33の範囲である。結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。」とされている。
【0004】
これら樹脂組成物において、機能付与や劣化抑制として、ハイドロタルサイト化合物が用いられている。ハイドロタルサイト化合物としてはその多くがMg−Alハイドロタルサイト型粒子であり、その構成元素であるMgに由来してハイドロタルサイト型粒子はアルカリ性を示す。そのアルカリ性が樹脂の劣化を加速し、着色や樹脂物性を低下させるため、添加量の制限や他の材料との組み合わせ等を行っているのが現状である。
【0005】
Mg−Alハイドロタルサイト型粒子のアルカリ性を低減させる為に、無色で両性金属であるZnをMgの一部または全てを置換させる方法も検討されているが、Zn−Alハイドロタルサイト型粒子はMg−Alハイドロタルサイト型粒子に比べ、耐熱性が低くまたハロゲンキャッチ能力が低いため、一部を置換した場合でもアルカリ性の低下と耐熱性及びハロゲンキャッチ能力のバランスを保つ事が出来ない。
【0006】
これまで、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子は知られており(特許文献1、3、4)、機能の両立を狙うべくハイドロタルサイト粒子にコアシェル構造を持たせることも知られている(特許文献2、3)。
【0007】
特許文献1には板面径が大きく、適度な厚みを有する亜鉛含有ハイドロタルサイトが記載されているが、亜鉛が粒子に均一に含まれるためアルカリ性を大幅に低減する場合には亜鉛の含有量を大量にせざるを得ず、結果、耐熱性が低く、塩素含有樹脂に使った場合には、安定剤としての特性を十分満足することができない。
【0008】
また、コアシェル構造を有する粒子合成法としては、特許文献2に記載されているような芯粒子を均一に成長させる多段階反応により得られることが知られている。
【0009】
さらには、特許文献3にあるように樹脂組成物の透明性向上の為にZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子の屈折率をコントロールするためにコアシェル構造が有効で、より屈折率向上させるには熱処理によって脱水されたハイドロタルサイト化合物が有用と記載されている。
【0010】
また、特許文献4には加工温度の高い含塩素樹脂組成物においてもハイドロタルサイト化合物由来の発泡を抑制でき、且つ、優れた含塩素樹脂の安定性、着色性を付与する酸からの攻撃に耐性を持たせたケイ酸被覆したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−290451号公報
【特許文献2】特開2002−293535号公報
【特許文献3】特開2004−299931号公報
【特許文献4】特開2008−056506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1乃至4に記載されたハイドロタルサイト型化合物粒子ではMg−Alハイドロタルサイト型粒子にZnを導入したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子が記載されており、コアシェル構造型のものもあるが、粒子表面には必ずMgが存在するために、アルカリ性が十分低下しているとは言い難いものである。
【0013】
また、表面耐性を増加させるためにケイ素化合物による表面被覆を行ったハイドロタルサイト型粒子が特許文献4に記載されているが、酸性物質を粒子表面に被覆する点もあり十分な分散が得にくく、含塩素樹脂組成物の安定剤として優れた機能を有するとは言い難いものである。
【0014】
本発明は、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子をコア粒子とし、該コア粒子の粒子表面にZn−Alハイドロタルサイト型粒子からなるシェル層を被覆したコアシェル構造を有するZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子であり、同じZn量においても従来にはないZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子の特性を両立したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0016】
即ち、本発明は、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子をコア粒子とし、該コア粒子の粒子表面にZn−Alハイドロタルサイト層からなるシェル層を形成したことを特徴とするZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明1)。
【0017】
また、本発明は、前記記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末において、シェル層とコア粒子の金属比率が1.0以下であるZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、前記記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末において、コア粒子とシェル層の2価金属比(Zn/Mgモル比)で表わせる値が0.05〜0.8であるZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、前記いずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を熱処理によって脱水したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明4)。
【0020】
また、本発明は、前記いずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子表面が、高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、高級脂肪酸リン酸エステル、カップリング剤及び多価アルコールエステル類から選ばれる少なくとも一種の表面処理剤で被覆されたZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明5)。
【0021】
また、本発明は、前記いずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有する樹脂組成物である(本発明6)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、コアシェル構造を有することによって、アニオン捕捉能を保持したまま、粒子のアルカリ性(塩基性)が低減されているので、高機能樹脂組成物用の安定剤として好適である。
【0023】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、樹脂劣化による着色防止や耐熱性に優れているので、樹脂組成物のフィラーとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の構成をより詳しく説明すれば以下の通りである。
【0025】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子からなるコア粒子の粒子表面にZn−Alハイドロタルサイト層(シェル層)を成長させてコアシェル構造としたものである。シェル層のZn−Alハイドロタルサイト層の存在量を変化させることによってZn量が変化し、表面アルカリ性などを制御できる。また、本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、ハイドロタルサイトが含有する水分を一部脱水することによっても加工温度の高い樹脂での練込時の発泡を抑制する事ができる。
【0026】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、コアシェル構造であってもシェル層にMgが存在するZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子又はZn組成が均一なZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末に比べ、シェル層は両性金属であるZnとAlとから構成されているためにアルカリ性も低く、また、Mg溶出量も非常に低く抑えられるため加工時の樹脂の着色も抑制できる。
【0027】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の組成式は下記(I)に表される通りである。
(Zn1−x・Al(Mg1−y・Al1−z・(OH)・Ann−・mHO (I)
0.2≦x≦0.6、
0.2≦y≦0.6、
0.05≦z≦0.5、
0≦m≦1、
p=x/n、
An:n価のアニオン
【0028】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のAl含有量の割合はx及びyが0.2〜0.6の範囲が好ましい。より好ましくはx及びyの範囲が0.25〜0.45である。x及びyが0.2未満の場合及び0.6を超える場合には、ハイドロタルサイト型粒子粉末の単相を得ることが困難となる。
【0029】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のコアシェルの割合であるzの好ましい範囲は、0.05〜0.5である。より好ましくは0.07〜0.45である。zが0.05未満の場合、コアシェル構造としてのZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子の効果が表れにくく、0.5を超える場合には、コアシェル粒子としての特徴はほとんど現れず、エピタキシャル成長が起きずにコア粒子外に微細な粒子が多量に析出し、Znを均一に含有するZn−Alハイドロタルサイト型粒子が生成する。
【0030】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のシェル層とコア粒子の金属比率は1.0以下である。好ましくは0.05〜0.8であり、より好ましくは0.1〜0.6である。シェル層とコア粒子の金属比率が1.0を超える場合にはシェル層以外に新たに微細な粒子が生成する。
【0031】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のコア粒子とシェル層の2価金属比(Zn/Mgモル比)で表わせる値が0.05〜0.8である。好ましくは0.07〜0.7であり、より好ましくは0.1〜0.35である。コア粒子とシェル層の2価金属比(Zn/Mgモル比)で表わせる値が0.05未満の場合は、アルカリ性を低減できず樹脂劣化の原因となり、0.8を超える場合は、耐熱性が低く、ハロゲンキャッチ能力も低いものとなる。
【0032】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末に含有されているアニオン(Ann−)の種類は、特に限定されるものではないが、例えば水酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、ケイ酸イオン、有機カルボン酸イオン、有機スルフォン酸イオン、有機リン酸イオンなどが挙げられる。
【0033】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の平均板面径は0.05〜1.0μmが好ましい。より好ましくは0.07〜0.8μmである。平均板面径が0.05μm未満の場合には、樹脂に練り込む際の分散性が非常に難しく、樹脂混練用途においては不十分である。1.0μmを超える樹脂添加用のコアシェル構造を有するZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の工業的な生産が困難である。
【0034】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の厚みは0.01〜0.1μmが好ましい。より好ましくは0.02〜0.08μmである。厚みが0.01μm未満の場合には、樹脂に練り込む際の分散性が不十分である。0.1μmを超える場合には、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の工業的な生産が困難である。
【0035】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の板状比(平均板面径/厚み)は2.0〜20が好ましい。より好ましくは2.5〜18である。
【0036】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のBET比表面積値は5〜60m/gが好ましく、より好ましくは7〜30m/gである。
【0037】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粉体pH値は7.0〜9.0が好ましい。より好ましい粉体pH値は7.2〜8.5である。粉体pH値が7.0未満の場合にはZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は工業的に製造することができない。粉体pH値が9.0を超える場合にはZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末のアルカリ性が高く、樹脂組成物の安定剤用としては好ましくない。
【0038】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、必要に応じ、粒子表面が高級脂肪酸やアニオン系界面活性剤、高級脂肪酸リン酸エステル、カップリング剤及び多価アルコールエステル類から選ばれる少なくとも一種の表面処理剤で被覆されてもよい。表面被覆物で被覆することによってコアシェル構造を有するZn-Mg-Alハイドロタルサイト型粒子粉末の樹脂中への分散性が向上するほか、さらなる樹脂の高機能化、安定化が可能である。
【0039】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などであり、高級脂肪酸リン酸エステルとしては、例えば、ステアリルエーテルリン酸、オレイルエーテルリン酸、ラウリルエーテルリン酸などであり、多価アルコールエステルとしては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ステアリン酸モノグリセライドなどである。
【0040】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウムなどの塩類などが挙げられる。
【0041】
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤などを使用できる。
【0042】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末に表面処理剤を被覆する場合の量は、ハイドロタルサイト粒子粉末に対してC換算で0.2〜20.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%である。被覆量が0.2重量%未満の場合には、被覆による機能や分散性などの向上は認められない。20.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。
【0043】
次に、本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の製造法について述べる。
【0044】
即ち、本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム水溶液とアルミニウム塩水溶液とを混合し、pH値が8〜14の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を40〜105℃の温度範囲で熟成してMg−Alハイドロタルサイト型粒子のコア粒子を生成させ、次いで、該コア粒子を含む水性懸濁液に、該コア粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、合計モル数が1.0以下となる割合で亜鉛及びアルミニウムを含有する亜鉛塩水溶液とアルミニウム塩水溶液とを添加した後、pH値が8〜11の範囲、温度が45〜105℃の範囲で熟成することことにより得ることができる。
【0045】
本発明におけるアニオンを含むアルカリ性水溶液としては、アニオンを含む水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液が好ましい。
【0046】
アニオンを含む水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、有機カルボン酸塩、有機スルフォン酸塩、有機リン酸塩などの水溶液が好ましい。
【0047】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素水溶液などが好ましい。
【0048】
本発明におけるマグネシウム水溶液としては、硫酸マグネシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び硝酸マグネシウム水溶液などを使用することができるし、酸化マグネシウム粉末や水酸化マグネシウム粉末を高分散化したスラリーを代用しても良い。
【0049】
本発明におけるアルミニウム塩水溶液としては、硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液及び硝酸アルミニウム水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液である。また、酸化アルミニウム粉末や水酸化アルミニウム粉末を高分散化したスラリーを代用しても良い。
【0050】
コア粒子の調製反応において、アニオンを含有するアルカリ水溶液、マグネシウム及びアルミニウムの混合順序は、特に限定されるものではなく、また、各水溶液あるいはスラリーを同時に混合してもよい。好ましくは、アニオンを含有するアルカリ水溶液に、あらかじめマグネシウム及びアルミニウムを混合した水溶液若しくはスラリーを添加する。
【0051】
また、各水溶液を添加する場合には、該水溶液を一度に添加する場合、又は連続的に滴下する場合のいずれで行ってもよい。
【0052】
コア粒子の調製反応における熟成反応中のpH値は8〜14であり、好ましくは8〜12である。pH値が8未満の場合、板面径が大きく、適度な厚みを有したハイドロタルサイト型粒子の芯粒子が得られない。
【0053】
コア粒子の調製反応における熟成反応中の温度は40〜105℃であり、好ましくは45〜105℃である。40℃未満の場合にもハイドロタルサイト型粒子粉末は生成するが、季節を問わずまた中和発熱も考えると冷却装置等の余分な設備も追加で必要となり、経済的ではない。105℃を超える場合は非常に板面方向への成長が加速され、アスペクト比が高い粒子となる場合があるためコア粒子として適さない。
【0054】
コア粒子の調製反応における熟成反応の反応時間は1〜16時間が好ましい。熟成時間が1時間未満の場合には、板面径が大きく、適度な厚みを有したハイドロタルサイト型のコア粒子が得られ難い。16時間を超える熟成は経済的ではない。
【0055】
コア粒子の調製反応で得られたハイドロタルサイト型のコア粒子は、平均板面径は0.05〜0.15μmが好ましく、厚みは0.008〜0.05μmが好ましく、BET比表面積値は15〜80m/gが好ましい。
【0056】
コア粒子の粒子表面にシェル層を形成する反応(以下、「シェル反応」とする)において、添加する亜鉛及びアルミニウムの合計モル数は、コア粒子の調製反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対して1.0以下であり、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下である。1.0を超える場合には、エピタキシャル成長が起きずにコア粒子外に微細な粒子が多量に析出し、樹脂への分散性が極めて悪くなる。
【0057】
シェル反応における亜鉛及びアルミニウムを混合した溶液添加終了後、1時間までの反応中の温度は45〜105℃であり、好ましくは65〜105℃である。45℃未満の場合にもエピタキシャル成長させることは可能であるが、添加速度や添加量の制限が多くあり、工業的な安定した合成は難しい。その後に所望のコアシェル粒子とするために、反応時間を延長したり、105℃以上の温度へ昇温してエージングすることが効果的で、その温度範囲は105℃〜170℃で、温度と時間を調整する(成長反応)。
【0058】
シェル反応における熟成反応中のpH値は8〜11であり、好ましくは8〜10である。pH値が8未満の場合、エピタキシャル成長が難しい。またpHが11を超えると添加した亜鉛の一部が析出せずに水溶液中に残ってしまうため経済的及び工業的に好ましくない。
【0059】
シェル反応の反応終了時点で、マグネシウム、亜鉛及びアルミニウムは反応懸濁液中に残存しておらず、全てハイドロタルサイト型粒子粉末の生成に寄与している。従って、コア粒子の表面に被覆されたハイドロタルサイトの組成はシェル反応における仕込み組成と同一になるものと推定される。
【0060】
反応終了後に、常法により濾別、水洗、乾燥すれば、亜鉛を含有しないMg−Alハイドロタルサイトをコア粒子とし、該コア粒子の粒子表面(外殻)にZn−Alハイドロタルサイト層を形成したコアシェル構造を有したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末が得られる。
【0061】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、使用樹脂への適応として樹脂混練時の発泡を防ぐために脱水処理も有効で、必要に応じて上記構造式中のHO部分を適量抜くために140〜260℃の温度範囲で熱処理してもよい。熱処理時間は熱処理温度によって調整すればよい。また、熱処理時の雰囲気は酸化雰囲気、非酸化雰囲気いずれでも構わないが、水素のような強い還元作用を持つ雰囲気は好ましくない。
【0062】
本発明においては、必要に応じて、粒子表面が高級脂肪酸やアニオン系界面活性剤、高級脂肪酸リン酸エステル、カップリング剤及び多価アルコールエステル類から選ばれる少なくとも一種の表面処理剤で被覆されてもよい。
【0063】
前記表面処理剤によるZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子表面の被覆は、乾式表面処理、湿式表面処理いずれでも行うことができる。
【0064】
乾式表面処理を行う場合は、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末をヘンシェルミキサー、サンドミル、エッジランナー、タニナカ式粉砕機、らいかい機等に入れ、表面処理剤を添加して乾式混合及び粉砕する。
【0065】
湿式表面処理を行う場合は、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を分散して得られる水性懸濁液に、高級脂肪酸塩等の水溶液を添加して水温を20〜95℃に調整して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子表面を被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。さらに続けて熱処理を行う場合は、熱処理温度において分解してしまわないような任意の表面処理剤を前もって選択する。
【0066】
所望の熱処理温度で所望する表面処理剤が分解してしまう場合には、熱処理後にヘンシェルミキサーなどを使用した乾式表面処理を行えばよい。乾式表面処理を行う場合は、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末と表面処理剤とを粉砕及び混合しながら、必要で有れば外部より加熱すれば良い。
【0067】
表面処理剤としては、前述した高級脂肪酸、高級脂肪酸リン酸エステル、多価アルコールエステル、アニオン系界面活性剤、カップリング剤などが使用できる。
【0068】
表面処理剤の粒子表面の被覆量は、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末に対し、C換算で0.2〜20.0重量%である。0.2重量%未満である場合には、粒子表面に充分な量の表面処理剤を被覆することが困難である。20.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0069】
次に、本発明に係る樹脂組成物について述べる。
【0070】
また、本発明は、前記Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有した樹脂劣化による着色防止や耐熱性に優れた樹脂組成物である。樹脂としては例えば塩素含有樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン樹脂の他、PET樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0071】
本発明に係る塩素含有樹脂組成物は、樹脂100重量部に対して、前記Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を0.1〜10重量部、可塑剤、その他安定剤及び添加剤を含有する。Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の含有量が0.1重量部未満の場合には、安定剤としての効果が低い。10重量部を超える場合には、効果が飽和するため必要以上に添加する意味がない。また、ハイドロタルサイト型粒子粉末を必要以上に多量に添加すると、発泡が起こりやすく、外観不良や初期着色等の悪影響を及ぼす場合がある。
【0072】
可塑剤としては、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチル−n−デシルトリメリテート等のトリメトリット酸エステル系可塑剤、フタル酸ジイロデシル(DIDP)、ジイソノニル・フタレート(DINP)、ジ−2−エチルヘキシル・フタレート(DOP)等のフタル酸エステル系可塑剤、ポリプロピレン・アジペート、ポリプロピレン・セバケート等のポリエステル系可塑剤等が好ましい。
【0073】
その他安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等の亜鉛化合物、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン類、アルキルアリルフォスフェート、トリアルキルフォスフェート等のフォスファイト類、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール系化合物、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油等のエポキシ系化合物等が好ましい。
【0074】
その他の添加剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、りん酸系化合物等の酸化防止剤、ポリエステルの末端をOH基に変えたもの、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリル酸メチルスチレンコポリマー等のゲル化促進剤、炭酸カルシウム、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、ガラス繊維等の増量剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、含臭素有機系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤等の難燃剤、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム等の滑剤、トリクロサン、オーソサイド、サンアイゾール100、サンアイゾール300等防カビ剤等が使用される。
【0075】
本発明に係る樹脂組成物の製造法について述べる。
【0076】
本発明に係る樹脂組成物は通常の製造法によって得ることができるが、例えば、練り込みシートを得る場合には、樹脂、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末及び上記各種安定剤、添加剤を所定量混合し、該混合物を熱間ロールで練り込み、練り込みシートを得た後、熱間プレスで加圧処理することによって得られる。熱間ロールの練り込み温度は用いる樹脂や樹脂組成物によって異なるが、110〜300℃が好ましい。熱間プレスのプレス温度は115〜330℃が好ましい。
【0077】
<作用>
本発明において重要な点は、共沈反応によりMg−Alハイドロタルサイト型粒子を生成させるコア反応により得られたコア粒子を含有する水性懸濁液に亜鉛塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を添加し熟成するシェル反応を行うことにより、内部(コア粒子)と外部(シェル層)とで2価金属種が異なり、また条件により2価金属と3価金属組成も異なり、粒子の受酸能や塩基性が低減されているコアシェル構造のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末が得られる点である。
【0078】
従来、ハイドロタルサイト型粉末粒子中の金属元素の組成や導入元素は粒子内部及び外部で均一で、粒子全体の中で不均一にすることは着目されていなかった。例えば前記特許文献1、4には、金属元素が均一に分布しているハイドロタルサイト型粒子粉末が提案されているが、アルカリ性を呈するMg成分を粒子表面から無くすためには、すべて2価金属をZn等の両性金属に変えないと不可能であった。また、前記特許文献2、3にはコアシェル構造を有するハイドロタルサイト粒子も提案がなされているが、シェル部分の2価金属は2種以上と、アルカリ性を低減させる為に必要なすべて両性金属であるZnのみでの提案はなされていない。
【0079】
本発明者らは鋭意検討の結果、樹脂組成物中での樹脂とハイドロタルサイト粒子粉末との新しい反応メカニズムを導くことに成功した。例えば、樹脂組成物が可塑剤を含まない塩素含有樹脂組成物の場合、樹脂の熱劣化によって生じた塩素イオン及び/又は分子を、同じく熱によって脱離したハイドロタルサイトの層間水が道標となり、ハイドロタルサイト層間に塩素イオン及び/又は分子を導くことで、塩素イオン及び/又は分子によるさらなる連続した劣化を抑止する。ここで適度な水分量が発生すれば樹脂の着色は認められないが、樹脂組成物加工時の外部からの熱によって樹脂中にハイドロタルサイト型粒子粉末より多量の水分が発生してしまうと該粉末粒子に含まれるマグネシウムを容易に溶出せしめ、該マグネシウムが樹脂と接触することによって一般に考えられているようにマグネシウム錯体が形成され赤味の着色を樹脂に与えてしまう。
【0080】
即ち、ハイドロタルサイト粒子粉末中の層間水を脱水するほど樹脂の着色は抑制できるが、ハイドロタルサイト粒子粉末を脱水して層間水を減らすと、塩素等のアニオン捕捉能が極端に低下して本来の捕捉能力の3割以下になってしまう。このため、ある程度の層間水を保持した状態でないと塩素等のアニオン化が起こらず、アニオンにならないものはハイドロタルサイト粒子が捕捉してくれない為に樹脂組成物を安定化する目的を果たせないことが分かった。
【0081】
本発明に係るコアシェル構造のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末又はZnを均一に含有するMg−Zn−Alハイドロタルサイト型粒子粉末と比較して、より高い樹脂の安定性や機能性を与える。これは、Mg−Alハイドロタルサイト型粒子(コア粒子)の粒子表面に存在するZn−Alハイドロタルサイト層を利用しており、そのコアシェル構造が、Mg−Zn−Alハイドロタルサイト型粒子の長所のみを一次粒子に持つハイドロタルサイト型粒子粉末を作製できるため、高い樹脂の安定性や高機能性を樹脂混練時に樹脂に対して付与する樹脂組成物を得ることができる特徴をもつ。
【0082】
またハイドロタルサイト型粒子粉末の表層にのみ亜鉛が存在することで、樹脂へのマグネシウム溶出量が抑制され、粉体pHを中性側に近づけることができるので、加工時の樹脂の着色も抑制できる。
【実施例】
【0083】
次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0084】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末及び樹脂組成物の諸特性は、下記の方法により評価した。
【0085】
Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の板面径は透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JEM−1200EXII)を用いて測定した数値の平均値で示したものである。
【0086】
Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子の厚みは、「X線回折装置RINT−2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ステップ角0.01°、FT0.1secの条件で、ハイドロタルサイト粒子の(006)結晶面の回折ピーク曲線から、シェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0087】
Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の構成相同定はX線回折測定で行った。X線回折測定は、前記X線回折装置を使用し、回折角2θが3〜80°、ステップ角0.03°、FT0.3secの条件で測定した。線源種はCuを使用した。
【0088】
Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末における組成式
(Zn1−x・Al(Mg1−y・Al1−z・(OH)・Ann−・mH
における指数x及びy及びzは、該粒子粉末を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(サーモエレクトロン株式会社製、iCAP6500)でイットリウムを内部標準として用いて分析して求めた。
【0089】
Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の亜鉛の存在位置の確認は、下記の方法で行った。
【0090】
即ち、Zn−Mg−Al系ハイドロタルサイト粒子粉末10gを0.1mol/lの塩酸33mlとイオン交換水100mlとの混合溶液に添加し、20℃で10分間、溶解処理を行った後、もう一度0.1mol/lの塩酸をpH4になるように加え、素早く濾別し、乾燥した該粒子粉末を蛍光X線分析によってZn存在の有無を確認、酸溶解によって粒子表面を溶解、粒子内部のみになった粒子はZnの存在が無いことより、コアシェル構造になっていることを確認した。
【0091】
比表面積値は、窒素を用いたB.E.T.法により測定した。測定装置は「モノソーブ MS−21(QUANTA CHROME製)を使用した。
【0092】
粉体pH値は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpH値をJIS Z 8802−7に従って測定し、得られた値を粉体pH値とした。
【0093】
アニオン(Ann−)として炭酸イオン(CO2−)用いた場合の炭酸イオン含有量、及び粒子表面の高級脂肪酸、高級脂肪酸リン酸エステル、多価アルコールエステル、アニオン系界面活性剤、カップリング剤等による被覆量は、「カーボン・サルファーアナライザー:EMIA−2200(HORIBA製)」により、炭素含有量(重量%)測定して評価した。粒子表面の高級脂肪酸、高級脂肪酸リン酸エステル、多価アルコールエステル、アニオン系界面活性剤、カップリング剤等による被覆量は、表面処理の前後での炭素含有量の増加分から評価した。
【0094】
樹脂のロール混練は、6インチ2本タイプを用いて、樹脂組成物に合わせて温度を140〜190℃に調整した。混練時間も樹脂組成物に合わせて5〜15分にて調整して混練を行った。
【0095】
上記ロール混練したシートを、200×200×1〜1.5mmの圧縮成型体にした。圧縮成形体を作製する装置は加熱プレスが70トン自動プレス(ラム面積210cm)、冷却プレスが30トン手動プレス(ラム面積180cm)とした。圧縮成型条件は、140〜190℃にて、予熱(無圧)にて3分、加圧(6.3MPa)にて2分、冷却(3.1MPa)にて3分の手順で行った。
【0096】
上記のプレスシートなどの測色は測色器(x−rite,Inc.製、X−Rite939)にてL、a、bを求めた。
【0097】
熱安定性試験はギヤー老化式試験機(株式会社安田精機製作所製、102−SHF−77S)にて行った。上記プレスしたシートを30×30mm角に切り出し、ガラス板上にこの試験片を置いて、190℃で120分間試験をしながら、10分毎に試験片を2枚/1サンプルずつ取り出して、記録紙に貼り付けた。
【0098】
プレスシート及び熱安定性試験片の着色レベルは次のような1〜7のレベルに定義し、レベル2,レベル4,レベル6の時間で、レベル比較を行った。
レベル1 ほとんど着色がない
レベル2 若干、赤味及び/又は黄味の着色が認められる
レベル3 淡い褐色
レベル4 褐色
レベル5 濃い褐色
レベル6 一部が炭化・黒化
レベル7 全体が炭化・黒化
【0099】
実施例1
CO2−イオン濃度が1.5mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと18.4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液57mlにイオン交換水を加えて全量500mlとして混合し、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。これに1.2mol/lの硫酸マグネシウム水溶液250mlと0.6mol/lの硫酸アルミニウム水溶液250mlの混合溶液を添加し、全量を1000mlとした。反応容器内を撹拌しながら、95℃に温度を上げた後に4時間熟成して白色沈殿物を生成した(コア反応1)。
【0100】
得られたハイドロタルサイト型コア粒子の板面径は0.13μm、厚みは0.028μm、比表面積は36.2m/gであった。
【0101】
次いで、1.23mol/lの水酸化ナトリウム水溶液500mlを加え、添加により下がった温度を95℃まで上がるまで攪拌保持する。その後に、0.41mol/lの硫酸亜鉛溶液250mlと0.14mol/lの硫酸アルミニウム水溶液250mlの混合溶液を45分かけて添加し、全量を2lとし反応容器内を攪拌しながら、95℃で2時間熟成して白色沈殿物を生成した。コア反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対し、シェル反応で添加した亜鉛とアルミニウムの合計モル数の比は0.31である(シェル反応1)。
【0102】
得られたシェル反応後のハイドロタルサイト型粒子の板面径は0.14μm、厚みは0.042μm、比表面積は27.1m/gであり、粒子外に析出したような部分も認められなかった。
【0103】
次いで、懸濁液の1000mlをオートクレーブに移して、145℃にて4h撹拌しながらエージングし、コアシェル構造のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子の粒子成長を促進させた(成長反応1)。
【0104】
得られた白色沈殿物を含む反応懸濁液を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末をX線分析により結晶相を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。また、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の亜鉛の存在位置は前記確認の方法に従って試験したところ、粒子内部にはZnの存在が無いことより、コアシェル構造になっていることを確認した。
【0105】
また得られたコアシェル構造を有したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、平均板面径が0.31μm、厚みが0.055μmであり、BET比表面積が13.7m/gであった。
【0106】
実施例2〜11、比較例1〜4
マグネシウム化合物の種類、濃度、アルミニウム化合物の種類、濃度、炭酸ナトリウム塩の濃度、アルカリ水溶液の濃度、及び熟成温度を種々変化させた以外は、前記実施例1と同様にしてハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0107】
このときの製造条件を表1〜3に、得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
実施例12〜18、比較例5〜8
次に樹脂配合として、Zn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の表面処理および熱処理を行い評価した。
【0113】
表面処理は得られたZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末に、粉末重量対比3wt%に相当する量のステアリン酸を添加した後にタニナカ粉砕機で加熱粉砕を行い、ステアリン酸で表面処理したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0114】
また、脱水処理(実施例13、16)は200℃にて1時間熱処理して、層間水を示す粒子組成式のnを0とした脱水品を作成後、上記、表面処理同様に表面処理を行った。
【0115】
次に、粉末樹脂配合評価に使用した塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂の各組成配合物とロール混練条件及びプレス条件を挙げる。
【0116】
<塩化ビニル樹脂>
配合組成
PVC(カネカ製 S1003) 100phr
可塑剤(米山薬品製 DOP) 35phr
炭酸Ca(米山薬品製 試薬1級) 20phr
助剤(米山薬品製 ステアリン酸亜鉛) 1.0phr
ハイドロタルサイト 3.0phr
ロール混練
ロール温度 180℃
混練時間 5分
プレス成形
プレス温度 190℃
加熱圧力 10kg/cm
成形時間 5分
冷却圧力 150kg/cm
成形厚み 1mm
【0117】
<酢酸ビニル樹脂>
配合組成
酢酸ビニル(日本ポリケム LV400) 100phr
ハイドロタルサイト 10phr
ロール混練
ロール温度 140℃
混練時間 10分
プレス成形
プレス温度 150℃
加熱圧力 10kg/cm
成形時間 5分
冷却圧力 150kg/cm
成形厚み 100μm
【0118】
このときの樹脂配合したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の樹脂配合評価を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
表5に示すとおり、本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、塩化ビニル樹脂組成物のプレス成型後のb*がいずれも15以下と小さいので樹脂着色が抑制されており、しかも、熱安定性評価において、レベル6に到達するまでの時間がいずれも50分以上と長時間であることが確認された。
また、本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有する酢酸ビニル樹脂組成物は、L*が85以上と高く、b*が3.0以下と小さいので、樹脂の着色が抑制されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係るZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末は、コアシェル構造を有する為にアニオン捕捉能を保持したまま、粒子の塩基性が低減されているので、高機能樹脂組成物用の安定剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg−Alハイドロタルサイト型粒子をコア粒子とし、該コア粒子の粒子表面にZn−Alハイドロタルサイト層からなるシェル層を形成したことを特徴とするZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項2】
請求項1記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末において、シェル層とコア粒子の金属比率が1.0以下であるZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項3】
請求項1記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末において、コア粒子とシェル層の2価金属比(Zn/Mgモル比)で表わせる値が0.05〜0.8であるZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を熱処理によって脱水したZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子表面が、高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、高級脂肪酸リン酸エステル、カップリング剤及び多価アルコールエステル類から選ばれる少なくとも一種の表面処理剤で被覆されたZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のZn−Mg−Alハイドロタルサイト型粒子粉末を含有する樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−178966(P2011−178966A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47231(P2010−47231)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】