説明

[4[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−(1H−ピロロ−ピリジン−イル)−メタノンのプロドラッグ及びその合成

この発明は、本明細書中で炎症性疾患の処置及び改善のための化合物及び組成物に関する。具体的には、この発明はトリプターゼ阻害活性を有する化合物、及びその中間体、そうした化合物を含んでなる医薬組成物、及びトリプターゼインヒビターを投与することによって改善することができる状態疾患又は障害[例えば、喘息及び急性黄斑変性症を含めて他の炎症性疾患を含むが、それらには限定されない]に罹患している対象を処置する方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
それらのプロドラッグの形での、トリプターゼ阻害活性を有する新規で、かつ有用な化合物がそしてその中間体、そうした化合物を含んでなる医薬組成物、及びトリプターゼインヒビターを投与することによって改善することができる疾患又は障害状態[例えば、喘息及び他の炎症性疾患を含むが、それらには限定されない]に罹患している対象を処置する方法が、本明細書中に提供されている。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
発明の背景
マスト細胞介在性炎症状態、特に喘息について公衆衛生上の懸念が高まりつつある。喘息は、しばしば、慢性炎症の発病をもたらす免疫特異的アレルゲン及び全身性の化学又は物理的刺激の双方に対する気管及び気管支の過剰反応が漸進的に進行することによって特徴づけられる。IgE受容体を含む白血球、特にマスト細胞及び好塩基球は、気管支の上皮組織及びその下にある平滑筋組織内に存在する。こうした白血球は、まず特異的な吸入抗原がIgE受容体に結合することによって活性化され、次いでいくつかのケミカルメディエーターが放出される。例えば、マスト細胞の脱顆粒化によって、プロテオグリカン、ペルオキシダーゼ、アリールスルファターゼB、キマーゼ、及びトリプターゼの放出がなされ、その結果、細気管支狭窄が生じる。
【0004】
トリプターゼは、マスト細胞分泌性顆粒内に貯留され、そしてヒトマスト細胞の主要なプロテアーゼである。トリプターゼは、血管拡張性及び気管支拡張性の神経ペプチドの分解(非特許文献1、2及び3)及びヒスタミンに対する気管支応答のモジュレーション(非特許文献4)を含む、様々な生物学的プロセスに関与している。
【0005】
結果として、トリプターゼインヒビターは抗炎症薬(非特許文献5)として、特に慢性喘息の処置に(非特許文献6)有用でありえ、そしてまた、アレルギー性鼻炎(非特許文献7)、炎症性腸疾患(非特許文献8)、乾癬(非特許文献9)、結膜炎(非特許文献10)、アトピー性皮膚炎(非特許文献11)、関節リウマチ(非特許文献12)、変形性関節症(非特許文献13)、痛風性関節炎、リウマチ性脊椎炎、及び関節軟骨破壊疾患の処置又は予防にも有用でありうる。加えて、トリプターゼは、線維芽細胞の強力な有糸分裂促進因子であることが示され、喘息および間質性肺疾患における肺線維症に関与していることが示唆されている(非特許文献14)。それ故、トリプターゼインヒビターは、線維性状態(非特許文献15)、例えば、線維症、強皮症、肺線維症、肝硬変、心筋線維症、神経線維腫及び肥厚性瘢痕の処置又は予防に有用でありうる。
【0006】
これに加えて、トリプターゼインヒビターは、心筋梗塞、卒中、狭心症及びアテローム性動脈硬化症のプラーク破裂のその他の帰結の処置又は予防に有用でありうる(非特許文献16)。
【0007】
トリプターゼはまた、更にコラゲナーゼを活性化するプロストロメリシンを活性化し、その結果、軟骨及び歯周の結合組織の破壊を、それぞれ引き起こすことが判明している。
【0008】
それ故、トリプターゼインヒビターは、関節炎、歯周病、糖尿病性網膜症、及び腫瘍増殖の処置又は予防に有用でありうる(非特許文献17)。また、トリプターゼインヒビターは、アナフィラキシー(非特許文献18)、多発性硬化症(非特許文献19)、消化性潰瘍及び合胞体ウイルス感染症の処置にも有用でありうる。
【0009】
特許文献1には、トリプターゼインヒビターとしての[(ベンジルアミン)−ピペリジン−1−イル](アリール又はヘテロアリール)メタノンを含む化合物が開示されており、そして、血管拡張性及び気管支拡張性の神経ペプチドの分解(非特許文献20、21及び22)及びヒスタミンに対する気管支応答のモジュレーション(非特許文献23)を含む、様々な生物学的プロセスに関与しているトリプターゼに帰因するそうした化合物の可能性のある使用が記載されている。
【0010】
特許文献1には、式A:
【化2】

の化合物、それらの製造、及びトリプターゼの阻害によってモジュレートされることができる疾患状態を処置するための使用がより詳細に開示されている。特許文献1にはまた、式AのR1がアリール又はヘテロアリール基であることができることが開示されている。特許文献1に例示されているヘテロアリール基は、アルキルピリジル、アルキルチエニル、及びインドリル(indoyl)である。
【0011】
従って、それがトリプターゼを阻害し、容易に生物学的利用性が可能である、特に価値のある医薬特性を有する新規で、かつ有用な化合物が必要である。こうした化合物は、トリプターゼインヒビターを投与することによって改善することができる状態、例えば、マスト細胞媒介性炎症状態、炎症、及び血管拡張性及び気管支拡張性神経ペプチドの分解に関連する疾患又は障害に罹患している患者を処置する際に容易に有用性を有するであろう。
【0012】
この発明は更に、患者の黄斑変性症を処置するか、又は改善する方法に関する。
【0013】
黄斑変性症とは、黄斑と呼ばれる網膜の一部分が変質する障害の一般的用語である。加齢性黄斑変性症(AMD)は、最も通常のタイプの黄斑変性症である。米国では、AMDは55歳より高齢である人々のなかで失明原因の第1位である。米国においては1000万人を超える人々がこの疾患によって侵され、これには90歳を超える人々の23%が含まれている(www.webmd.com/eye-health/macular-degeneration/macular-degeneration-overview)。
【0014】
患者を苦しめている種々のタイプの黄斑変性症がある。黄斑変性症の一つのタイプは、“ドライ型(dry)(萎縮型)”黄斑変性症である。ドライ型黄斑変性症は、色素が黄斑上に蓄積する障害の早期のステージである。この色素の蓄積は黄斑組織の加齢又は薄化に起因する。この色素の蓄積の結果として、中心視野欠損がしだいに起こりうる。AMDは、しばしばドライ型黄斑変性症から始まる。
【0015】
もうひとつのタイプのAMDは、“ウェット型(wet)(滲出型)”黄斑変性症である。ウェット型黄斑変性症は、血管が異常に網膜下で成長し、そして漏出し始める新生血管タイプの変性である。この漏出の結果、網膜の光を感じる細胞に永久的な損傷が起こり、これによってこうした細胞死、すなわち、盲点が最終的に引き起こされる。視野欠損が小さい可能性のあるドライ型黄斑変性症と異なり、ウェット型黄斑変性症で生じる視野欠損は重篤でありうる。実際には、AMDに罹患している人の中でわずかに10%がウェット型黄斑変性症を患っているが、顕著な視野欠損を患っているAMDに罹患している人の66%は、その欠損がウェット型黄斑変性症に直接起因している可能性があることが報告されている。
【0016】
黄斑変性症の原因は不明であるので、この障害の原因を決定する成功例はもっぱら限定されている。その上、黄斑変性症の処置には限定された成功例しかない。これまで、ドライ型黄斑変性症に対してはFDAによって承認された処置はなく、そして栄養学的介入がウェット型黄斑変性症の進行を防止するのに使用されている。
【0017】
更に、この発明の方法では、黄斑変性症に罹患している患者に化合物を投与することによって患者の免疫細胞の活性がモジュレートされる。多数のタイプの免疫細胞の活性が、この発明の方法においてモジュレートすることができる。こうした免疫細胞の例には、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、マスト細胞、樹状細胞、及び好酸球、好塩基球及び好中球から成る群より選択される顆粒球が含まれる。こうした細胞の組み合わせの活性もまた、この発明の方法においてモジュレートされうることは当然である。
【0018】
更に、この発明の方法はまた、脈絡膜新生血管を処置し、又は改善するのに用いることができ、そしてまた患者のウェット型黄斑変性症を処置し、又は改善することができる。
【0019】
従って、この発明はAMDの改善を必要とする患者を式Iの化合物を用いて処置する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,977,263号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Caughey, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 244, pages 133-137
【非特許文献2】Franconi, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 248, pages 947-951
【非特許文献3】Tam, et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1990, 3, pages 27-32
【非特許文献4】Sekizawa, et al., J. Clin. Invest., 1989, 83, pages 175-179
【非特許文献5】K Rice, P.A. Sprengler, Current Opinion in Drug Discovery and Development, 1999, 2(5), pages 463-474
【非特許文献6】M.Q. Zhang, H. Timrnerman, Mediators Inflarnm., 1997, 112, pages 311-317
【非特許文献7】S. J. Wilson et al, Clin. Exp. Allergy, 1998,28, pages 220-227
【非特許文献8】S.C. Bischoff et al, Histopathology, 1996,28, pages 1-13
【非特許文献9】A. Naukkarinen et al, Arch. Dermatol. Res., 1993,285, pages 341-346
【非特許文献10】A.A.Irani et al, J. Allergy Clin. Immunol., 1990, 86, pages 34-40
【非特許文献11】A. Jarvikallio et al, Br. J. Dermatol., 1997, 136, pages 871-877
【非特許文献12】L.C Tetlow et al, Ann. Rheum. Dis., 1998,54, pages 549-555
【非特許文献13】M.G. Buckley et al, J. Pathol., 1998, 186, pages 67-74
【非特許文献14】Ruoss et al., J. Clin. Invest., 1991, 88, pages 493-499
【非特許文献15】J.A. Cairns and A.F. Walls, J. Clin. Invest., 1997, 99, pages 1313-1321
【非特許文献16】M. Jeziorska et al, J. Pathol., 1997, 182, pages 115-122
【非特許文献17】W.J. Beil et al, Exp. Hematol., (1998) 26, pages 158-169
【非特許文献18】L.B. Schwarz et al, J. Clin. Invest., 1995,96, pages 2702-2710
【非特許文献19】M. Steinhoff et al, Nat. Med. (N. Y.), 2000, 6(2), pages 151-158
【非特許文献20】Caughey, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 244, pages 133, 137
【非特許文献21】Franconi, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 248, pages 947-951
【非特許文献22】Tam, et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1990, 3, pages 27-32
【非特許文献23】Sekizawa, et al., J. Clin. Invest., 1989, 83, pages 175-179
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
この発明は、置換された2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(アルキル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−アセトアミド(式Iの化合物);
【化3】

前記化合物の合成、及び/又は前記化合物のプロドラッグ、製薬学的に許容される塩、又は溶媒和物、それを必要とする患者を処置する方法を対象とする。
【0023】
更に、この発明は、医薬的に有効な量の式Iの化合物と、製薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物を対象とする。更に、この発明は、トリプターゼを含有する組成物にこの化合物を導入することを含んでなる、トリプターゼインヒビターのプロドラッグとしての式Iの化合物の使用を対象とする。加えて、この発明は、トリプターゼインヒビターによる改善を必要とする生理学的状態に罹患し、又は曝されている患者を処置するための式Iの化合物の使用であって、その患者に治療的に有効な量の請求項1の化合物を投与することを含んでなる、上記使用を対象とする。この発明はまた、式Iの化合物の製造を対象とする。
【0024】
詳細な説明
定義
上記で、及び本明細書説明及び添付の請求項中で使用されている際には、次の用語は、別途指示しない限り、次の意味を有しているものと理解されなければならない:
【0025】
本明細書中で使用されている際は、用語“この発明の化合物(compound of the present invention)”及び等価の表現は、上記に述べられているごとく、この表現は、プロドラッグ、製薬学的に許容される塩及び溶媒和物、例えば、水和物を含む、式Iの化合物を包含する意図である。同様に、中間体への言及は、それ自体、請求項に記載されていようといまいと、状況がそれを許す場合には、塩、及び溶媒和物を包含する意図である。明確化のために、状況がそれを許す場合、具体的な例を明細書中に記載することがあるが、こうした例は純粋に例示的なものであり、それらは状況がそれを許す場合、他の例を排除する意図ではない。
【0026】
本明細書中で使用されている際は、用語“処置(treatment)”又は“処置すること(treating)”は、予防的治療並びに確立された状態の処置を包含する。
【0027】
“患者(patient)”とは、ヒト又は他の哺乳類を意味する。
【0028】
“有効な量(effective amount)”は、所望の治療効果をもたらすのに有効な化合物の量を表示することを意味している。
【0029】
“プロドラッグ(prodrug)”とは、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答などを伴うことなしに、そしてインビボでこの発明の化合物への代謝手段(例えば、加水分解)によって変換しうる、患者への投与に適している化合物を意味する。プロドラッグについての十分なディスカッションは、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A. C. S. Symposium Series, 及びEdward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987中に提供されており、この双方とも引用によって本明細書中に組み込まれる。
【0030】
具体的な実施態様
加えて、この発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物を患者に投与することによって改善することができる生理学的状態(physiological condition)に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。この発明の化合物で処置することができる生理学的状態の具体的な実施態様としては、下記のものが含まれるが、これらのものに限定されないことは当然のことである:炎症性疾患、例えば、関節の炎症、関節炎、関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、風疹性関節炎、乾癬性関節炎、及び他の慢性炎症性関節疾患。この発明によって処置することができる生理学的状態の他の実施態様には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、COPD増悪、関節軟骨破壊、眼結膜炎、春季結膜炎、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、間質性肺疾患、線維症、強皮症、肺線維症、急性黄斑変性症、黄斑変性症、ウェット型黄斑変性症、肝硬変、心筋線維症、神経線維腫、肥厚性瘢痕、種々の皮膚科的状態(various dermatological conditions)(例えば、アトピー性皮膚炎及び乾癬)、心筋梗塞、卒中(stroke)、狭心症及びアテローム硬化症のプラーク破裂の他の帰結、並びに歯周疾患、糖尿病性網膜症、腫瘍増殖、アナフィラキシー、多発性硬化症、消化性潰瘍及び合胞体ウイルス感染症などの生理学的状態が含まれる。
【0031】
特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、喘息に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0032】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、COPDに罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0033】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、COPD増悪に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0034】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、アレルギー性鼻炎に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0035】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、関節の炎症に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0036】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、黄斑変性症に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0037】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、ウェット型黄斑変性症に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0038】
別の特定の実施態様では、この発明は、生理学的に有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、急性黄斑変性症に罹患している患者を処置するための式Iの化合物の使用を対象とする。
【0039】
加えて、この発明は、式Iの化合物、βアドレナリン作動薬、抗コリン作動薬、抗炎症性コルチコステロイド及び抗炎症剤から成る群より選択される第二の化合物と、その製薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物に及ぶ。こうした組成物では、式Iの化合物及び第二の化合物は、治療的に有効な活性、すなわち、相加効果又は相乗効果を提供するような量で存在する。こうした医薬組成物で処置することができる具体的な炎症性疾患又は障害には、喘息が含まれるがこれには限定されない。
【0040】
更に、この発明は、式Iの化合物、並びにβアドレナリン作動薬、抗コリン作動薬、抗炎症性コルチコステロイド及び抗炎症薬から成る群より選択される第二の化合物を患者に投与することを含んでなる、炎症性障害に罹患している患者を処置する方法を対象とする。こうした方法では、式Iの化合物及び第二の化合物は、治療的に有効な活性、すなわち、相加効果又は相乗効果を提供するような量で存在する。この発明のこうした方法では、第二の化合物の前にこの発明の化合物を患者に投与することもできるし、第二の化合物を、この発明の化合物の前に患者に投与することもできるし、それともこの発明の化合物と第二の化合物を同時に投与することもできる。当該方法による適用を有するアドレナリン作動薬、抗コリン作動薬、抗炎症性コルチコステロイド、及び抗炎症剤の具体的な例は下記に述べられている。
【0041】
医薬組成物
上記に説明されているように、この発明の化合物は有用な薬理学的活性を示し、従って医薬組成物中に組み込まれ、そしてある種の医学的障害に罹患している患者の処置に使用され得る。すなわち、この発明は、更なる局面によって、本発明の化合物と、その製薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0042】
本明細書中で使用される際には、用語“製薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)”とは、好ましくは、政府、特に連邦政府又は州政府の規制当局により承認されているか、あるいは動物、より具体的にはヒトにおける使用のための米国薬局方又は別の一般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。適切な薬学的担体は、E.W.Martinによる“レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)”に記載されている。
【0043】
この発明による医薬組成物は、1つ又はそれより多い製薬学的に許容される補助剤又は賦形剤を使用して慣用的な方法に従って製造することができる。とりわけ、補助剤は、希釈剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、滑沢剤、界面活性剤、滅菌水性媒体及び種々の非毒性の有機溶媒を含んでなる。コンポジットオイル(composit oils)は、錠剤、カプセル剤、ピル、徐放性製剤、顆粒、散剤、水溶液又は懸濁液、注入用溶液、エリキシル剤、又はシロップ剤の形態で存在することができ、そして、製薬学的に許容される製剤を得るために、甘味料、矯味矯臭剤、着色剤又は安定化剤からなる群から選択される1つ又はそれより多い薬剤を含むことができる。ビヒクルの選択及びビヒクル中の活性物質の量は通例、活性化合物の溶解度及び化学的特性、投与の具体的な方式及び薬務において遵守されるべき規定によって決まる。例えば、乳糖、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、非変性デンプン(unmodified starch)、ケイ化微結晶セルロース(silicified microcrystalline cellulose)、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、デキストレート(dextrates)、フルクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸二カルシウム、硫酸カルシウムなどの賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファ化デンプン、デンプン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリカルボフィル(polycarbophils)、ゼラチン及びアカシアガムなどの結合剤、及びクロスカルメロースナトリウム(sodium croscannellose)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスポビドン、デンプン、微結晶セルロース、アルギン酸、及びある種のケイ酸塩複合体などの崩壊剤と共に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素添加植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、脂肪酸のグリセリルエステル、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤及び二酸化ケイ素、タルク、デンプンなどの滑剤と組み合わせて、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポロキサマー(poloxamer)、ポリオキシエチレンエーテル、ドキュセートナトリウム(sodium docusate)、ポリエトキシ化ヒマシ油及び塩化ベンザルコニウムなどのある種の適切な湿潤剤と共に、錠剤を製造するために使用することができる。カプセルを製造するためには、乳糖、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、非変性デンプン、ケイ化微結晶セルロースなどの増量剤を、単独又は2つ若しくはそれより多い増量剤の混合物として、上記に記載した結合剤を含むか、含まずに、上記に列挙した適切な湿潤剤、崩壊剤、滑剤、滑沢剤などと共に使用することが有利である。水性懸濁液を使用するときには、それらは乳化剤又は懸濁を容易にする薬剤を含有することができる。
【0044】
スクロース、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及びクロロホルム又はこれらの混合物などの希釈剤もまた使用することができる。こうした製薬学的に許容される担体はまた、例えば、ピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物又は合成起源のものを含む、滅菌水及び滅菌油であることができる。医薬組成物を静脈内投与するときは、水が好ましい担体である。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液はまた、特に注入用溶液のための液体担体として使用することができる。適切な医薬賦形剤には、マンニトール、ヒト血清アルブミン(HSA)、デンプン、グルコース、乳糖、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。こうした組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。
【0045】
この発明の医薬組成物は、患者に適切な投与形態を提供するように、治療的に有効な量の活性化合物を適切な量の担体と一緒に含有することは当然のことである。静脈内注入が極めて有効な投与形態であるが、以下に議論される注入、あるいは経口、経鼻又は非経口投与などの他の方式も使用することができる。
【0046】
処置方法
式Iの化合物は、文献に記載され、そして下記に記載されている試験によって、トリプターゼ阻害活性を有し、そしてこの試験結果はヒト及び他の哺乳動物における薬理学的活性と相関していると考えられる。加えて、式Iの化合物は、文献に記載されている試験によってインビトロのトリプターゼ活性を有している化合物のプロドラッグである。従って、更なる実施態様において、この発明は、トリプターゼ阻害剤を投与することによって改善され得る状態に罹患しているか、あるいは曝されている患者を処置するための式I又は式Iを含有する組成物の使用を対象とする。例えば、式Iの化合物は、炎症性疾患、例えば、関節炎、関節リウマチ、及びリウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、風疹性関節炎、乾癬性関節炎、変形性関節症又は他の慢性炎症性関節疾患、又は関節軟骨破壊である疾患などの他の関節状態を含む関節の炎症、眼結膜炎、春季結膜炎、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、間質性肺疾患、線維症、強皮症、肺線維症、肝硬変、心筋線維症、神経線維腫、過形成性瘢痕、種々の皮膚科的状態(例えば、アトピー性皮膚炎及び乾癬)、心筋梗塞、卒中、狭心症及びアテローム動脈硬化症のプラーク破裂のその他の帰結、並びに歯周疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、急性黄斑変性症、ウェット型黄斑変性症、腫瘍増殖、アナフィラキシー、多発性硬化症、消化性潰瘍又は合胞体ウイルス感染症を処置するために有用である。
【0047】
本発明の更なる特性によれば、有効な量の本発明の化合物又は本発明の化合物を含む組成物を患者に投与することを含んでなる、トリプターゼ阻害剤の投与によって改善され得る状態、例えば、前記に記載された状態に罹患しているか、あるいは曝されているヒト患者又は動物罹患体の処置方法を提供する。
【0048】
組み合わせ療法
上記で説明したごとく、別の医薬的に活性な薬剤を、処置される疾患に応じて式Iの化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、喘息の処置では、アルブテロール、テルブタリン、フォルモテロール、フェノテロール又はプレナリンなどのβアドレナリン作動薬を含むことができ、同様に、臭化イプラトロピウムなどの抗コリン作動薬;ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルニソリド又はデキサメタゾンなどの抗炎症性コルチコステロイド、及びクロモグリク酸ナトリウム及びネドクロミルナトリウムなどの抗炎症剤を含むことができる。従って、この発明は、式Iの化合物、及びβアドレナリン作動薬、抗コリン作動薬、抗炎症性コルチコステロイド、及び抗炎症剤から成る群より選択される第二の化合物、及びその製薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物にまで及ぶ。この医薬組成物中で適用を有する具体的な製薬学的担体は、本明細書中に記載されている。
【0049】
更に、この発明は、喘息に罹患している患者を処置する方法であって、この発明の化合物と、βアドレナリン作動薬、抗コリン作動薬、抗炎症性コルチコステロイド、及び抗炎症剤から成る群より選択される第二の化合物を患者に投与することを含んでなる、上記方法にまで及ぶ。こうした組み合わせ方法では、この発明の化合物は、第二の化合物の投与前に投与してもよいし、この発明の化合物は、第二の化合物の投与後に投与してもよいし、あるいはこの発明の化合物と第二の化合物を同時に投与してもよい。
【0050】
送達方式
本発明に従って、式Iの化合物、又は本化合物を含んでなる医薬組成物は、非経口的、経粘膜的(例えば、経口、経鼻、眼球内、肺内若しくは直腸内)、又は経皮的に患者に導入することができる。
【0051】
経口送達
引用によって本明細書中に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.1990 (Mack Publishing Co. Easton PA 18042)中の89章に一般的に記載されている、経口固体投薬形態は、本明細書中で使用するために意図されている。固体投薬形態には、錠剤、カプセル、ピル、トローチ剤若しくはロゼンジ(lozenge)、カシェ剤又はペレット剤が含まれる。また、リポソーム又はプロテイノイド封入が、この組成物を製剤化するのに使用することができる(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されているプロテイノイドマイクロスフェア(proteinoid microspheres)として)。リポソーム封入を使用してもよく、そしてリポソームは種々のポリマーで誘導体化してもよい(例えば、米国特許第5,013,556号)。治療用の可能な固体投薬形態の説明は、引用によって本明細書中に組み入れられる、Marshall, K. In: Modern Pharmaceutics Edited by G.S. Banker and C.T. Rhodes Chapter 10, 1979に記載されている。一般的には、この製剤はこの発明の化合物と、胃環境に対する保護及び生物学的に活性な物質(すなわち、この発明の化合物)の腸内放出を許容する不活性成分を含むであろう。
【0052】
この発明の化合物の経口投薬形態もまた、特に意図される。こうした化合物は経口送達がより有効であるように化学修飾することができる。一般的には、意図される化学的修飾は、前記モイエティが、(a)タンパク質分解の抑制;及び(b)胃又は腸から血流への取りこみを許容する少なくとも1つのモイエティの成分分子自体との結合である。また、この発明の化合物の全体的な安定度が増加すること、及び体内循環時間が増加することが所望される。こうしたモイエティの例には、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリプロリンが含まれる。Abuchowski
and Davis, 1981, “Soluble Polymer-Enzyme Adducts” In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, NY, pp. 367-383; Newmark, et al., 1982, J. Appl. Biochem. 4:185-189。使用されうる他のポリマーには、ポリ−1,3−ジオキソラン及びポリ−1,3,6−チオキソカンがある。上記に示したごとく、医薬使用に好ましいのは、ポリエチレングリコールモイエティである。
【0053】
この発明の化合物の場合には、放出部位は、胃、小腸(十二指腸、空腸若しくは回腸)であってもよいし、それとも大腸であってもよい。胃内では溶解しないが該物質を十二指腸又は腸内のどこかで放出する製剤は、当業者であれば利用可能である。好ましくは、この放出は、この発明の化合物を保護することによるか、あるいは胃環境を超えて(例えば、腸内のように)この化合物を放出することのいずれかによって、胃環境の悪影響を回避するであろう。
【0054】
完全な胃抵抗性を確実にするためには、少なくともpH5.0まで不浸透性であるコーティングが不可欠である。腸溶性コーティングとして使用される、より一般的な不活性成分の例には、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、オイドラギットL30D(Eudragit L30D)、アクアテリック(Aquateric)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS及びシェラックがある。これらのコーティングは混合皮膜として使用してもよい。
【0055】
コーティング又はコーティング混合物はまた、胃に対する保護を意図しない錠剤に使用することができる。これには、糖衣又は錠剤の嚥下を容易にするコーティングが包含されうる。カプセルは、乾燥した治療薬(すなわち、粉末剤)の送達のためのハードシェル(例えば、ゼラチン)から成るものであってもよく;液体形態の場合には、ソフトゼラチンシェルが使用されてもよい。カシェ剤のシェル物質は、濃厚なデンプン又は他の可食性紙であってもよいであろう。ピル、ロゼンジ、成型錠剤又は粉薬錠剤(tablet triturates)では、湿潤塊化技術(moist massing techniques)を使用してもよい。
【0056】
この治療薬は、約1mmの粒径の顆粒又はペレットの形態の微細な多粒子としての製剤中に含有されうる。カプセル投与の場合の物質の製剤はまた、粉末、軽度に圧縮されたプラグとして、又は更に錠剤としても存在しうる。治療薬は圧縮によって調製されうる。
【0057】
着色剤及び矯味矯臭剤はすべて、含まれていてもよい。例えば、この発明の化合物を製剤化し(例えば、リポソーム又はマイクロスフェア(microsphere)封入により)、次い
で更に食用品(例えば、着色剤及び矯味矯臭剤を含有する冷却した飲料)内に含有させてもよい。
【0058】
この治療薬の量を不活性物質で希釈させるか、又は増加させてもよい。これらの希釈剤には、炭水化物、特にマンニトール、α−乳糖、無水乳糖、セルロース、スクロース、修飾デキストラン及びデンプンが含まれうる。また、ある種の無機塩も増量剤として使用されてもよく、これらには、三リン酸カルシウム(calcium triphosphate)、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムが含まれる。いくつかの商業的に入手可能な希釈剤としては、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx1500、エンコンプレス(Emcompress)及びアビセル(Avicell)がある。
【0059】
治療薬を固体投薬形態に製剤化する際には、崩壊剤を含有することができる。崩壊剤として使用される物質には、デンプンをベースにした市販の崩壊剤であるデンプングリコール酸ナトリウムであるエキスプロタブ(Explotab)を含むデンプン、アンバーライト(Amberlite)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジ果皮、酸型カルボキシメチルセルロース(acid carboxymethyl cellulose)、天然の海綿及びベントナイトが挙げられ、これらは全て使用することができるが、これらに限定されることはない。崩壊剤の別の形態は、不溶性陽イオン交換樹脂である。粉末ガム類は崩壊剤として、及び結合剤として使用することができ、こうしたものには、寒天、カラヤ(Karaya)又はトラガカントなどの粉末ガムが含まれうる。アルギン酸及びそのナトリウム塩もまた、崩壊剤として有用である。
【0060】
結合剤は、治療剤と一緒に結合して硬質錠剤を形成させるのに用いることができ、そしてアカシアガム、トラガカント、デンプン及びゼラチンなどの天然産物由来の物質を含むことができる。他のものには、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の双方とも、治療薬を顆粒化するのにアルコール溶液中で使用されうる。
【0061】
抗摩擦剤を治療薬の製剤中に含有させて、製剤プロセスの間の付着を防止することができる。滑沢剤は、治療薬とダイ壁(die wall)との間の層として使用することができ、これらには、下記のものが含まれるがこれらに限定されない;ステアリン酸(そのマグネシウム塩及びカルシウム塩を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油及びワックス。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000及び6000(Carbowax 4000及び6000)などの可溶性滑沢剤も使用してもよい。
【0062】
製剤化の過程で、薬物の流動特性を改善し、圧縮の過程で、再配列を補助しうる滑剤(glidants)を加えてもよい。滑剤には、デンプン、タルク、焼成シリカ及び水和シリコアルミネート(hydrated silicoaluminate)が含まれ得る。
【0063】
水性環境中への治療薬の溶解を補助するために、界面活性剤を湿潤剤として添加してもよい。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及び硫酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン性清浄剤が含まれうる。陽イオン性清浄剤を使用してもよく、これには塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム(benzethomium chloride)が含まれうる。界面活性剤として製剤中に含有させうる、可能な非イオン性洗浄剤のリストには、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50及び60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられうる。こうした界面活性剤は、この発明の化合物の製剤中に単独あるいは種々の比率の混合物として存在しうる。
【0064】
この発明の化合物の取りこみを増強する可能性のある添加剤には、例えば、脂肪酸のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸がある。制御放出経口製剤が望ましい可能性がある。拡散又は浸出のいずれかのメカニズムによって放出を可能にする不活性マトリクス(例えば、ガム)中に薬物を組み込むことができるであろう。徐々に変性するマトリクスもまた製剤中に組み込ませてもよい。ある種の腸溶性コーティングはまた、遅延放出効果を有する。
【0065】
この治療剤の制御放出のもう1つの形態は、Oros治療システム(Alza Corp.)に基づく方法によるものであり、すなわち、浸透作用により単一の小さな開口から水が浸入し、薬物を押し出すことを可能にする半透膜中に該薬物を封入する。
【0066】
他のコーティングを製剤化に使用してもよい。これらには、コーティングパンに適用しうる種々の糖が含まれる。治療剤はまた、フィルムコート錠剤中に施されてもよく、そしてこの場合に使用される物質は、2つの群に分類される。第一群は、非腸溶性物質であり、これには、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxy-niethyl cellulose)、プロビドン(providone)及びポリエチレングリコールが含まれる。第二群は、通例、フタル酸のエステルである腸溶性物質から成る。
【0067】
物質の混合物が、最適なフィルムコーティングを提供するのに使用されうる。フィルムコーティングは、パンコーター内又は流動床内で、あるいは圧縮コーティングによって行なわれうる。
【0068】
肺送達
単独又は医薬組成物中の、この発明の化合物の肺送達もまた本明細書中で意図されている。化合物は吸入の間に、哺乳動物の肺に送達され、そして肺上皮内液層を通過して血流に入る。これについての他の報告には、Adjei et al., 1990, Pharmaceutical Research,
7:565-569; Adjei et al., 1990, International Journal of Pharmaceutics, 63:135-144 (leuprolide acetate:酢酸リュープロリド);Braquet et al., 1989, Journal of Cardiovascular Pharmacology, 13(suppl. 5):143-146(endothelin-1:エンドセリン−1);Hubbard et al., 1989, Annals of Internal Medicine, Vol. III, pp. 206-212(al- antitrypsin:a1−アンチトリプシン);Smith et al., 1989, J.Clin. Invest. 84:1145-1146(a-1-proteinase:a−1−プロテイナーゼ);Oswein et al., 1990, “Aerosolization of Proteins”, Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March,(recombinant human growth hormone:組換えヒト成長ホルモン);Debs et al., 1988, J. Immunol. 140:3482-3488(interferon-y and tumor necrosis factor alpha:インターフェロン−γ及び腫瘍壊死因子α)及びPlatz et al., 米国特許第5,284,656号(granulocyte colony stimulating factor:顆粒球コロニー刺激因子)が含まれる。全身作用の場合の薬物の肺送達のための方法及び組成物は、Wong et al.に1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号に記載されている。
【0069】
治療剤の肺送達のために設計された広範囲の機械的デバイスが、この発明の実施の際の使用のために意図され、このデバイスには、ネブライザー、定量吸入器、及び粉末吸入器があるが、これらに限定されず、これらの全てについて当技術分野の当業者は精通している。
【0070】
この発明の実施に適した商業的に入手可能なデバイスのいくつかの具体的な例には、ほんの一部の名前をあげると、マリンクロッド・インコーポレイテッド(Wallinckrodt, Inc.)(St. Louis, Missouri)製のUltraventネブライザー;Marquest Medical Products, Englewood, Colorado)製のAcorn II ネブライザー;Glaxo Inc.(Reseaxch Triangle Park, North Carolina)製のVentolin定量吸入器;及びFisons Corp., Bedford, Massachusetts)製のSpinhaler粉末吸入器がある。
【0071】
こうしたデバイスはすべて、この発明の化合物を投与するのに適した製剤を使用することが必要である。通例、各製剤は、使用されるデバイスのタイプに特有であり、そして治療に有用な通常の希釈剤、補助剤及び/又は担体のほかに、適切な噴射物質の使用が必要でありうる。また、リポソーム、マイクロカプセル若しくはマイクロスフェア、封入複合体、又は他のタイプの担体の使用も意図される。この発明の化学修飾された化合物もまた、化学修飾のタイプ又は使用デバイスのタイプに応じて、種々の製剤に調製されうる。
【0072】
ジェット型又は超音波型のいずれかのネブライザーを用いて使用するのに適した製剤は、通例、溶液rnL当たり約0.1〜25mgの化合物の濃度で水中に溶解されたこの発明の化合物を含有する。この製剤はまた、緩衝剤及び単糖(simple sugar)を含有してもよい(例えば、浸透圧の安定化及び調節のため)。ネブライザー製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧により引き起こされる化合物の表面誘起凝集を減少又は防止するために界面活性剤を含有してもよい。
【0073】
計量吸入器デバイスで使用する製剤は通例、界面活性剤を用いて噴射剤中に懸濁した本発明の化合物を含む微細な分割粉末を含んでなる。この噴射剤は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又はヒドロカーボン(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン、又はその組合せを含む)などのこの目的のために使用される任意の慣用的な物質でありうる。適切な界面活性剤には、ソルビタントリオレアート及び大豆レシチンが含まれる。オレイン酸もまた界面活性剤として有用でありうる。
【0074】
粉末吸入器デバイスから投与するための製剤は、本発明の化合物を含有する微細な分割乾燥粉末を含有し、そしてまた、乳糖、ソルビトール、スクロース又はマンニトールのような充填剤を、デバイスからの粉末の分散を容易にするような量(例えば、製剤の50〜90重量%)で含有しうる。この発明の化合物は、肺の末端にまで最も効果的に送達するように、平均粒径10mm(すなわち、ミクロン)未満、最も好ましくは0.5〜5mmを有する粒子形態に調製することが最も好都合である。
【0075】
経鼻送達
この発明の化合物の経鼻送達もまた意図される。経鼻送達では、薬物を肺中に沈着させる必要性がなく、鼻への治療薬物投与後に直接血流に化合物が移動することが可能である。経鼻送達のための製剤としては、デキストラン又はシクロデキストランを含有するものが含まれる。
【0076】
眼内送達
この発明の化合物の眼内送達もまた意図される。薬物の眼内投与のための種々の、多くの方法が当技術分野において知られている。眼内送達は薬物を経口投与する必要性はなく、眼に治療薬を投与した直後に眼内液に化合物が移行することが可能である。眼内送達用製剤には、水性又は非水性媒体中の溶液又は懸濁液が含まれるが、それに限定されない。
【0077】
経皮送達
薬物を経皮投与(例えば、経皮パッチを介して)する種々の多くの方法は、当技術分野において知られている。経皮投与方法は、この発明において適用を有している。経皮パッチは、例えば、米国特許第5,407,713号(Rolando et al.)(4.18,1995発行(issued April L 8, 1995));米国特許第5,352,456号(Fallon et al.)(10.4,1994発行);米国特許第5,332,213号(D'Angelo et al.)(8.9,1994発行);米国特許第5,336,168号(Sibalis)(8.9,1994発行);米国特許第5,290,561号(Farhadieh et al.)(3.1,1994発行);米国特許第5,254,346号(Tucker et al.)(10.19,1993発行);米国特許第5,164,189号(Berger et al.)(11.17,1992発行);米国特許第5,163,899号(Sibalis)(11.17,1992発行);米国特許第5,088,977号及び5,087,240号(双方ともSibalis)(双方とも2.18,1992発行);米国特許第5,008,110号(Benecke et al.)(4.16,1991発行);及び米国特許第4,921,475号(Sibalis)(5.1,1990発行)に記載され、これらのそれぞれの開示は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0078】
経皮投与経路は、経皮浸透増強剤(例えば、米国特許第5,164,189号(前掲)、米国特許第5,008,110号(前掲)、及び米国特許第4,879,119号(Aruga et al.)(11.17,1989発行)に記載されている増強剤など)の使用によって増強することができることが容易に理解されうることであり、これらのそれぞれの開示は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0079】
局所投与
局所投与用には、本発明の化合物を含有するゲル(水又はアルコールベース)、クリーム又は軟膏が使用されてもよい。本発明の化合物はまた、パッチ適用のためのゲル又はマトリクス基剤中に組み込まれてもよく、これにより経皮バリアを通して化合物の制御放出が可能になる。
【0080】
直腸投与
直腸投与用の固体組成物には、公知の方法に従って製剤化され、そして本発明の化合物を含有する坐剤が含まれる。
【0081】
投与量
本発明の組成物中の活性成分の割合は変更することができ、適切な投与量が得られるような比率を構成することが必要である。いくつかの単位投薬形態は、ほとんど同時に投与してもよいことは自明なことである。使用される投与量は、医師により決定され、そして所望の治療効果、投与経路及び処置期間、並びに患者の状態に左右される。成人では、投与量は、通例、吸入では約0.001〜約50、好ましくは約0.001〜約5mg/kg体重/日であり、経口投与では、約0.01〜約100、好ましくは0.1〜70、更に特に0.5〜10mg/kg体重/日であり、そして静脈内投与では、約0.001〜約10、好ましくは0.01〜1mg/kg体重/日である。いずれの具体的な場合にも、投与量は年齢、体重、一般的健康状態などの処置される対象に固有のファクター、及び医薬品の有効性に影響しうる他の特性によって決まる。
【0082】
更に、本発明による化合物は、所望の治療効果を得るために必要な頻度で投与されうる。ある患者では、より高用量又は低用量に急速に反応し、そしてかなり低用量の維持量で十分であることが判明する場合もありうる。他の患者では、それぞれの特定の患者の生理的要件によって1日に1〜4回の割合で長期間、処置することが必要になる場合もありうる。通例、活性物質は1日に1〜4回、経口的に投与されうる。もちろん、患者の中には、1日当たり多くて1又は2回の投与で処方する必要がある場合もあるであろう。
【0083】
この発明の化合物の投与が有効な治療レジメンである患者は、好ましくはヒトであるが、任意の動物であってもよいことは当然のことである。従って、当技術分野の当業者によって容易に理解されうるように、この発明の方法及び医薬組成物は、任意の動物、特に哺乳動物への投与に特に適しているが、これらの動物は、下記の、すなわち、獣医用途のための動物を含み、それらには限定されない:ネコ科又はイヌ科の動物の罹患体などの家庭内の動物(domestic animals);限定されないが、ウシ科、ウマ科、ヤギ、ヒツジ及びブタの罹患体のような家畜(farm animals);野生動物(野生の状態であろうと、それとも動物園内の状態であろうと);例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどのような実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽類などのようなトリ種。
【発明を実施するための形態】
【0084】
〔実施例〕
製造の詳細
式Iの化合物は、公知の方法を適用又は適合させることによって[公知の方法とは、これまでに使用されているか、又は文献に記載される方法、例えば、R.C.Larock in Comprehensive Organic Transformations, VCH publishers, 1989によって記載されている方法を意味する]、あるいは本明細書中の記載と同様の方法の通りに製造することができる。
【0085】
下記に記載される反応では、反応におけるそれらの好ましくない関与を回避するために、反応性官能基(例えば、アミノ基)を保護する必要がある場合がありうる。従来から使用されている保護基は、標準的手法に従って使用しうる;例えば、T.W. Greene and P.G.M.Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry” John Wiley and Sons, 1991参照。
【0086】
特に、式Iの化合物は下記の実施例1〜20によって示されるように製造することができる。例えば、この発明の化合物では、その製造が収束的合成から構成されているキラルプロドラッグがある。
【0087】
本明細書中で使用される際は、別途指示しない限り、次の略語及び定義が次の意味を有しているものと理解されなければならない。
【0088】
略語リスト
APCI 大気圧化学イオン化
BOC tert−ブチルジカーボナート(tert-butyl dicarbonate)
BOC anhydride ジ−tert−ブチルジカルボニル無水物(di-tert-butyl dicarbonyl anhydride)
t-Bu tert−ブチル
t-BuOH tert−ブタノール
CDCl3 重水素化クロロホルム
CD3OD 重水素化メタノール
DCM ジクロロメタン,CH2Cl2又は塩化メチレン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMSO-d6 ジメチル−d6スルホキシド
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
eq 当量
Et エチル
Et2O ジエチルエーテル
Et3N トリエチルアミン
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
EDCI 1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HPLC 高速(高性能)液体クロマトグラフィー
H2 水素
L リットル
LC/MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
M モル(の)
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MgSO4 硫酸マグネシウム
MHz メガヘルツ
min 分
OMe メトキシド
NaHCO3 重炭酸ナトリウム
Na2CO3 炭酸ナトリウム
NaCl 塩化ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NaI ヨウ化ナトリウム
NaOMe ナトリウムメトキシド
Na2SO4 硫酸ナトリウム
n-BuOAc n−ブチルアセタート(n-butyl acetate)
NMR 核磁気共鳴
Pd/C パラジウム/炭素
Pd(PPh3)4 テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム
Pd(PPh3)2Cl2 ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド
PdCl2dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド
Pd(dtbpf)Cl2 (1,1’−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド
Pd2(dba)3 トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
Pd(OAc)2 酢酸パラジウム(II)(palladium(II) acetate)
P(Cy)3 トリシクロヘキシルホスフィン
t-Bu3P トリ−t−ブチルホスフィン
PPh3 トリフェニルホスフィン
PrOH プロパノール
i-PrOH イソプロパノール
Pt/C 白金/炭素
t-BuOK カリウムtert−ブトキシド
rt 室温
Rt 保持時間
sat 飽和
SiO2 シリカ
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMS トリメチルシリル
【0089】
製造の詳細
実施例1
(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化4】

【0090】
1A.((S)−1−{[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−カルバモイル}−2−メチル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化5】

窒素下にて、[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−イル]−メタノン・塩酸塩(100mg,0.18mmol)を、DMF(2.6mL)中に溶解し、そして0℃で5分間撹拌した。これにヒドロキシベンゾトリアゾール(77mg,0.57mmol)、BOC−Val−Gly−OH(59mg,0.21mmol)、トリエチルアミン(0.05mL,0.36mmol)を連続して加え、引き続いて1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・塩酸塩(41mg,0.21mmol)を加えた。この反応混合物を室温に暖め、そして終夜撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、そしてブライン(30mL)で洗浄した。このブラインを酢酸エチル(2×30mL)で逆抽出し、そして有機画分を集め、そして10%クエン酸(2×30mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×30mL)及びブライン(30mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、真空下にて濃縮すると、粗生成物が得られ、これを溶離剤として5%MeOH/CH2Cl2を用いるSiO2カラムクロマトグラフィーによって生成すると、(1−{[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−カルバモイル}−2−メチル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(100mg,72%)が得られた。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.40-7.30 (m, 2H), 7.28-7.21 (m, 2H), 7.18-7.10 (m, 1H), 7.08-7.00 (m, 1H), 6.98-6.85 (m, 1H), 5.00-4.90 (br s, 1H), 4.30 (t, 2H), 3.85-3.70 (br m, 2H), 3.73 (t, 2H), 3.47 (s, 2H), 3.33 (s, 3H), 3.20-2.90 (br m, 2H), 1.90-1.60 (br m, 6H), 1.30-1.24 (m, 10H), 1.80-1.70 (br m, 6H);
19F NMR (282 MHz, CDCl3) δ -57.60 (s, 1F);
MS m/z: [M+H]+=779。
【0091】
1.(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化6】

ジオキサンに溶解した4N HCl(2.5mL)を、((S)−1−{[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−カルバモイル}−2−メチル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.94mg,0.12mmol)に加えた。この結果生じた無色の溶液を、N2の下にて室温で終夜撹拌した。この反応混合物を真空下にて濃縮し、そして残留物をEt2O(10mL)でトリチュレートした。エーテル層を除去し、そして淡黄色固形物をEt2O(3×10mL)で洗浄した。この固形物を真空下にて乾燥すると、生成物(85mg,99%)が得られた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.74-8.71 (m, 1H), 8.54-8.51 (m, 1H), 8.20 (br s, 2H), 7.7.63-7.60 (m, 1H), 7.44-7.36 (m, 1H), 7.32-7.21 (m, 1H), 7.13-7.05 (m, 1H), 7.01-6.98 (d, 1H), 4.39 (t, 2H), 4.25 (d, 2H), 4.21-4.15 (m, 1H), 3.88-3.83 (m, 2H), 3.79-3.77 (m, 1H), 3.69 (t, 2H), 3.62 (br s, 2H), 3.24 (s, 3H), 3.08-2.88 (m, 2H), 2.10-2.03 (m, 1H), 1.85-1.60 (m, 6H), 1.11-1.07 (m, 1H), 0.94 (d, 6H);MS m/z: [M+H]+=679。
【0092】
実施例2
(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化7】

【0093】
2A.[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化8】

この表題化合物は、出発物質としてBOC−L−Val−OHを用いて、実施例1A中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.41-7.33 (m, 2H), 7.25-7.21 (m, 2H), 7.15 (d, 1H), 7.12-7.02 (m, 1H), 6.98-6.91 (m, 1H), 6.45 (br s, 1H), 4.40 (br s, 2H), 4.30 (t, 2H), 3.94-3.86 (m, 1H), 3.80 (br s, 2H), 3.72 (t, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.19-2.95 (m, 2H), 2.20-2.11 (m, 1H), 1.81-1.68 (m, 6H), 1.59 (s, 9H), 1.27-1.24 (m, 1H), 0.94-0.84 (m, 6H);
MS m/z: [M+H]+=722。
【0094】
2.(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化9】

この表題化合物は、出発物質として[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.134mg,0.18mmol)を用いて、実施例1B中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.90 (br s, 1H), 8.14 (br s, 2H), 7.57 (s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.22-7.08 (m, 4H), 6.96 (d, 1H), 4.42-4.17 (m, 4H), 3.75-3.62 (m, 4H), 3.56-3.52 (m, 4H), 3.20 (s, 3H), 3.09-2.89 (m, 4H), 2.09-1.98 (m, 2H), 1.76-1.58 (m, 6H), 1.05 (t, 1H), 0.87 (d, 6H);
MS m/z: [M+H]+=622。
【0095】
実施例3
(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化10】

【0096】
3A.[(R)−1−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化11】

この表題化合物は、出発物質としてBOC−D−Val−OHを用いて、実施例1A中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.42-7.36 ( m, 2H), 7.30-7.25 (m, 2H), 7.15 (d, 1H), 7.09-7.03 (m, 1H), 6.96-6.91 (m, 1H), 6.56 (br s, 1H), 4.39 (br s, 2H), 4.29 (t,
2H), 3.93-3.88 (m, 1H), 3.80 (br s, 2H), 3.72 (t, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.16-3.05 (m, 2H), 2.19-2.10 (m, 1H), 1.89-1.69 (m, 6H), 1.40 (s, 9H), 1.28-1.23 (m, 1H), 0.92-0.84 (m, 6H);
MS m/z: [M+H]+=722。
【0097】
3.(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化12】

この表題化合物は、出発物質として[(R)−1−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを用いて、実施例1B中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.89 (br s, 1H), 8.14 (br s, 2H), 7.61 (s, 1H), 7.38 (d, 1H), 7.30-7.12 (m, 4H), 7.00 (d, 1H), 4.41-4.19 (m, 4H), 3.71-3.65 (m, 4H), 3.63-3.55 (m, 4H), 3.23 (s, 3H), 3.12-2.95 (m, 4H), 2.12-2.03 (m, 2H), 1.77-1.61 (m, 6H), 1.09 (t, 1H), 0.91 (d, 6H);
MS m/z: [M+H]+=622。
【0098】
実施例4
(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化13】

【0099】
4A.[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化14】

CH2Cl2(30mL)中の[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−メタノン・塩酸塩(0.3g,0.55mmol)、BOC−Val−OH(0.143g,0.66mmol)、EDCI(0.126g,0.66mmol)、HOBT(0.224g,1.65mmol),及びEt3N(0.23ml,1.65mmol)の溶液を、室温で終夜撹拌した。この反応混合物をEtOAc中に注ぎ、そして有機層を10%クエン酸及びブラインで洗浄した。有機層をMGSO4上で乾燥し、ろ過し、真空下にて濃縮すると、粗生成物が得られた。3%MeOH/CH2Cl2で溶離する、SiO2を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物(0.39g,99%)が得られた。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.4 (s, 1H), 7.1 (m, 2H), 7.0-6.8 (m, 3H), 6.3 (bs, 1H), 5.0 (bs, 1H), 4.5-4.3 (m, 4H), 3.9 (m, 1H), 3.8 (m, 2H), 3.35 (s, 3H), 3.1 (m, 2H), 2.2 (m, 2H), 2.0-1.6 (m, 6H), 1.4 (s, 9H), 0.9 (m, 6H)。
MS m/z: [M+H]+=711。
【0100】
4.(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化15】

エーテル(20mL)中の[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.35g,0.49mmol)の溶液に、エーテルに溶解した2M HCl(10mL,20.0mmol)を加えた。この反応混合物を室温で終夜撹拌した。この結果生じた沈殿物を回収すると、表題化合物(260mg,82%)が得られた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 9.0 (m, 1H), 8.3 (bs, 2H), 7.7 (s, 1H), 7.3-7.0 (m,
5H), 4.5 (m, 2H), 4.4-4.2 (m, 2H), 3.7-3.5 (m, 6H), 3.2 (s, 3H), 3.1- 2.9 (m, 2H), 2.1 (m, 1H), 1.85-1.5 (m, 4H), 0.9 (m, 6H)。
MS m/z: [M+H]+=611。
【0101】
実施例5
(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化16】

【0102】
5A.((S)−1−{[(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−カルバモイル}−2−メチル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化17】

DMF(15mL)中の[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−メタノン・塩酸塩(0.3g,0.55mmol)、BOC−Val−GlyOH(0.18g,0.66mmol)、EDCI(0.126g,0.66mmol)、HOBT(0.224g,1.65mmol)、及びEt3N(0.23ml,1.65mmol)の溶液を、室温で終夜撹拌した。この反応混合物をEtOAc中に注ぎ、そして有機層を水及びブラインで洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過し真空下にて濃縮すると、粗生成物が得られた。3%MeOH/CH2Cl2で溶離する、SiO2を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物(0.4g,95%)が提供された。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.4 (s, 1H), 7.1 (m, 2H), 7.0-6.8 (m, 3H), 6.7 (bs, 1H), 5.1 (bs, 1H), 4.5-4.3 (m, 4H), 4.1-3.7 (m, 6H), 3.35 (s, 3H), 3.1 (m, 3H), 2.1 (m, 1H), 1.8-1.6 (m, 6H), 1.4 (s, 9H), 0.9 (m, 6H)。MS m/z: [M+H]+=768。
【0103】
5.(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化18】

この表題化合物は、出発物質として((S)−1−{[(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−カルバモイル}−2−メチル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルを用いて、実施例4B中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.8 (m, 1H), 8.6 (m, 1H), 8.3 (bs, 2H), 7.7 (s, 1H), 7.3-7.0 (m, 5H), 4.5 (m, 2H), 4.3 (t, 2H), 3.8 (t, 2H), 3.7-3.5 (m, 6H), 3.2 (s, 3H), 3.0 (m, 2H), 2.1 (m, 1H), 1.8-1.5 (m, 4H), 0.9 (m, 6H)。
MS m/z: [M+H]+=668。
【0104】
実施例6
(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化19】

【0105】
6A.[(R)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化20】

この表題化合物は、出発物質としてD−BOC−Val−OHを用いて、実施例5A中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.4 (s, 1H), 7.1 (m, 2H), 7.0-6.8 (m, 3H), 6.3 (bs, 1H), 5.0 (bs, 1H), 4.5-4.3 (m, 4H), 3.9 (m, 1H), 3.8 (m, 2H), 3.35 (s, 3H), 3.1 (m, 2H), 2.2 (m, 2H), 2.0-1.6 (m, 6H), 1.4 (s, 9H), 0.9 (m, 6H)。
MS m/z: [M+H]+=711。
【0106】
6.(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化21】

この表題化合物は、出発物質として[(R)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを用いて、実施例4B中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 9.0 (m, 1H), 8.3 (bs, 2H), 7.7 (s, 1H), 7.3-7.0 (m,
5H), 4.5 (m, 2H), 4.4-4.2 (m, 2H), 3.7-3.5 (m, 6H), 3.2 (s, 3H), 3.1- 2.9 (m, 2H), 2.1 (m, 1H), 1.85-1.5 (m, 4H), 0.9 (m, 6H)。
MS m/z: [M+H]+=611。
【0107】
実施例7
(S)−2−アミノ−N−[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化22】

【0108】
7A.{(S)−1−[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピルカルバモイル]−2−メチル−プロピル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化23】

この表題化合物は、出発物質としてBOC−Val−Val−OHを用いて、実施例5A中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.4 (s, 1H), 7.2 (m, 2H), 6.9 (m, 3H), 6.7 (bs, 1H), 6.5 (bs, 1H), 5.0 (bs, 1H), 4.6-4.2 (m, 5H), 3.9 (m, 1H), 3.7 (m, 2H), 3.4 (s, 3H), 3.1 (m, 2H), 2.9 (m, 2H), 2.4-2.2 (m, 2H), 1.8-1.6 (m, 5H), 1.4 (s, 9H), 0.9 (m, 12H)。
MS m/z: [M+H]+=810。
【0109】
7.(S)−2−アミノ−N−[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
【化24】

この表題化合物は、出発物質として{(S)−1−[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピルカルバモイル]−2−メチル−プロピル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルを用いて、実施例4B中と同様な方法で製造された。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.7 (m, 1H), 8.5 (d, 1H), 8.2 (m, 3H), 7.7 (s, 1H),
7.3-7.0 (m, 5H), 4.5 (m, 2H), 4.3 (m, 2H), 3.9-3.7 (m, 6H), 3.3 (s, 3H), 3.1 (m, 2H), 2.0 (m, 2H), 1.8-1.6 (m, 4H), 0.9 (m, 12H)。
MS m/z: [M+H]+=710。
【0110】
下記のスキーム1に従って化合物Iを製造するための出発物質は、商業上入手可能である。
【0111】
生物活性
この発明の化合物の特性は、1)親化合物のβ−トリプターゼインヒビター能力(IC50及びKi値)、及び2)ラット血漿におけるプロドラッグの安定性によって示される。
【0112】
インビトロにおける試験手順
発明の背景の章の中で述べられているように、トリプターゼの作用はすべて、その触媒活性に依存しているので、その触媒活性を阻害する化合物はトリプターゼの作用を潜在的に阻害するであろう。触媒活性の阻害については、インビトロにおける酵素アッセイ及び細胞アッセイによって測定することができる。
【0113】
単離されたヒト肺のトリプターゼ、又は酵母細胞内で発現させた組み換えヒトβ−トリプターゼのいずれかを用いてトリプターゼ阻害活性を確認した。単離された天然酵素又は発現酵素を用いて、実質的に同等の結果が得られた。このアッセイ手順では、基質としてL−ピログルタミル−L−プロリル−L−アルギニン−パラ−ニトロアニリド(S2366:Quadratech)を使用する、96ウェルマイクロプレート(Costar 3590)を使用した(実質的には、McEuen et. al. Biochem Pharm, 1996, 52, pages 331-340に記載されている)。アッセイは0.5mM 基質(2×Km)を用いて室温で行なわれ、そしてマイクロプレートは、405nmの波長でマイクロプレートリーダー(Beckman Biomek Plate reader)を用いて読み取った。
【0114】
トリプターゼプライマリースクリーン(Tryptase primary screen)(発色アッセイ)のための材料及び方法
アッセイバッファー
50mM Tris(pH8.2)、100mM NaCl、0.05% ツイーン20、50μg/mL ヘパリン。
基質
S2366(ストック溶液(2.5mM))。
酵素
精製組み換えβトリプターゼストック(310μg/mL)。
プロトコル(一点測定)
・60μLの希釈基質を各ウェルに添加する(アッセイバッファー中、終濃度500μM)。
・化合物を二連で添加する(終濃度20μM、容量20μL)。
・酵素を、20μLの容量中の終濃度50ng/mLで添加する。
・各ウェルの総容量は100μLである。
・短時間かき混ぜて、混合させ、そして室温で30分間にわたって暗室でインキュベートする。
・405nMで吸光度を読み取る。
【0115】
各プレートは以下のコントロールを有する:
全体:60μLの基質、20μLのバッファー(0.2%終濃度(DMSO))、
20μLの酵素。
非特異的:60μLの基質、40μLのバッファー(0.2%DMSOを含む)。
全体:60μLの基質、20μLのバッファー(DMSO不含)、20μLの酵素。
非特異的:60μLの基質、40μLのバッファー(DMSO不含)。
【0116】
プロトコル(IC50及びKiの決定)
このプロトコルは化合物を、以下の終濃度で二連にて加えること以外は上記と実質的に同じである:0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10μM(全ての希釈は手作業で行なわれる)。各アッセイの場合には、一点でも、あるいはIC50決定でも、標準化合物が使用され、比較のためのIC50が導かれる。IC50値から、Kiは以下の式を用いて算出することができる:Ki=IC50/(1+[基質]/Km)。
【0117】
式Iのプロドラッグの親化合物のβ−トリプターゼ阻害能力は、表1に示される:
【表1】

【0118】
血漿安定性
実施例1のラット血漿安定性を、ラット血漿中の化合物を100ng/mLでインキュベートし、引き続いてLC−MS/MSバイオアナリシス(LC-MS/MS bioanalysis)することによって試験して、ゼロ時間条件(インキュベーションなし)と比較して残存している親化合物を測定した。37℃でのインキュベーションの1及び4時間後に残存している1の濃度は、19%及び0%であり、1はこうした条件下で極めて不安定であることが示された。1はプロドラッグとして設計されているので、血漿不安定性は望ましい特性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
X及びYは、2つの置換基が同時に水素であることはないように、水素、メチル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、モルホリン−4−イル−メタノンから成る群より選択され;
1は、H、低級アルキル又は置換アルキルであり;
2は、水素、及び天然及び非天然アミノ酸を含む群より選択される]
の化合物、該化合物のN−オキシド、該化合物の製薬学的に許容される塩、該化合物の溶媒和物又は該化合物の水和物。
【請求項2】
2が、水素及び−C(O)CH(CH(CH32)NH2から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、−OCF3である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、モルホリン−4−イル−メタノンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
1がイソプロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
下記:
(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、
(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、
(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[1−(2−メトキシ−エチル)−4−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、
(S)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、
(S)−2−アミノ−N−[(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、
(R)−2−アミノ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩、及び
(S)−2−アミノ−N−[(S)−1−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジルカルバモイル)−2−メチル−プロピル]−3−メチル−ブチルアミド・塩酸塩
から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式Iの1つ又はそれより多い化合物を製薬学的に許容される担体中に含んでなる医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの1つ又はそれより多い化合物と、炎症疾患の処置において有用である1つ又はそれより多い追加の医薬的に活性な化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
製薬学的に許容される担体中の請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記の1つ又はそれより多い追加の医薬的に活性な化合物が、公知の抗炎症剤から成る群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記の1つ又はそれより多い追加の医薬的に活性な化合物が、気道炎症を処置することが知られている化合物から成る群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記の1つ又はそれより多い追加の医薬的に活性な化合物が、関節の炎症を処置することが知られている化合物から成る群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
生理学的状態が、炎症性疾患、関節軟骨破壊疾患、眼結膜炎、春季結膜炎、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、間質性肺疾患、線維症、慢性閉塞性肺疾患、強皮症、肺線維症、肝硬変、心筋線維症、神経線維腫、過形成性瘢痕、皮膚科的状態、アテローム動脈硬化症のプラーク破裂に関連する状態、歯周疾患、糖尿病性網膜症、腫瘍増殖、アナフィラキシー、多発性硬化症、消化性潰瘍、及び合胞体ウイルス感染症から成る群より選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の式Iの1つ又はそれより多い化合物を投与することによる、炎症疾患を処置及び/又は予防する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の式Iの1つ又はそれより多い化合物と製薬学的に許容される担体を投与することによる、炎症疾患を処置及び/又は予防する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の式Iの1つ又はそれより多い化合物、公知の抗炎症剤、及び製薬学的に許容される担体を投与することによる、炎症疾患を処置及び/又は予防する方法。

【公表番号】特表2013−515732(P2013−515732A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546130(P2012−546130)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061434
【国際公開番号】WO2011/079095
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】