説明

[N(CF3)2]−アニオンを有するイオン液体

【課題】価値ある特性を有し、イオン液体として用いることができる新規安定な化合物、およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】次式(1)


[式中、X=N、P、OまたはSであり、n=0、1または2から選択される整数であり、A=飽和、部分的または完全不飽和3〜8員炭化水素鎖であり、R1=正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−Hまたは、アルキル等である]で示される化合物、及び、それらのイオン液体としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(トリフルオロメチルイミド)アニオンおよび、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンを含む塩、ならびにそれらの製造方法、それらのイオン液体としての使用に関する。
イオン液体または液体塩は、有機のカチオンおよび一般に無機のアニオンからなるイオン種である。それらはいかなる中性分子も含まず、373K未満の融点を有する。イオン液体として用いられる複数の化合物が当分野に知られている。特に、それらはまた一連の特許および特許出願の主題でもある。
【0002】
無溶媒のイオン液体は、HurleyおよびWierにより一連の米国特許(US 2,446,331、US 2,446,339およびUS 2,446,350)において初めて開示された。これら「室温で融解する塩」は、AlClおよびハロゲン化n−アルキルピリジニウムを含んでいた。
US 5,827,602には、広い電気化学ウィンドウを有し、電池の電解質として用いられる疎水性のイオン液体が記載されている。これらの塩は、ファンデルワールス半径が100Åより大の、一定の5または6員複素環カチオンおよび多価のアニオンを有し、例えば、ハロゲン化アルキルスルホンイミド、モノまたはジペルフルオロスルホネート、フッ素化アルキルフルオロホスフェートである。
【0003】
さらに、この主題についての幾つかの概説が近年出版されている。
【表1】

【0004】
EP 1 081 129には、テトラアルキルアンモニウムおよび対応するカチオンを有する、安定なN(CF塩が開示されている。複素環カチオンについて、また開示された化合物のイオン液体としての使用については、記載されていない。
【発明の概要】
【0005】
イオン液体の特性、例えば融点、熱的および電気化学的安定性、粘度は、アニオンの性質に大きく影響される。一方、極性および疎水性または親油性は、カチオン/アニオン対の好適な選択により変えることができる。従って、その使用におけるさらなる可能性を促進する、修正された特性を有する新規なイオン液体に対する要請が存在する。
本発明の目的は、価値ある特性を有し、イオン液体として用いることができる新規の安定な化合物、およびそれらの製造方法を提供することである。
本目的は、一般式(1):
【化1】

で表され、ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオンおよび、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンを有する塩を提供することにより達成される。
【0006】
この式においては、
Xは、N、P、OまたはSを示し、
nは、Xがその原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
Aは、飽和、部分的または完全不飽和3〜8員炭化水素鎖であって、
ここで1個を除く全ての炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、前記炭化水素鎖の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子が、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和する、前記炭化水素鎖であり、
【0007】
、Rは、正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CN、を示し、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるRおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでRおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のRおよび/またはRは、全てのRおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでRおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって、置き換えられてもよい。
【0008】
本発明において、原子の原子価は、中性原子から出ている結合の数、または分子内で中性原子が他の原子と共有している電子対の数であって、単純な電子式表現においては原子価を示すダッシュ記号(valence dashes)で表されるものを意味する。本発明によれば、窒素およびリン原子は従って原子価3を有し、酸素およびイオウ原子は原子価2を有し、そして炭素原子は原子価4を有する。リン原子は、カチオンの中性原子の場合は、原子価5を有することもある。
【0009】
本発明において、完全不飽和化合物または置換基はまた、芳香族化合物または芳香族置換基を意味する。
本発明による化合物は、N(CFアニオンと、カチオンとして飽和または不飽和複素環式の4〜9員環とを有する塩である。ここでの好適なヘテロ原子は、N、P、OまたはSである。正の電荷を有するヘテロ原子に加えて、複素環はまたさらに、N、P、OまたはSの群から選択される、同一または異なるヘテロ原子を含むことができる;しかし、該環は少なくとも1個の炭素原子を含む。
【0010】
本発明による好適なカチオンは、安定で、特に単離可能な複素環化合物である。
複素環の全原子は、それぞれ非常に多数の同一または異なる置換基RまたはRを有し、原子の原子価に応じて飽和する。正に荷電したヘテロ原子の場合、置換基の数は原子価に1を加えた数に等しい。
【0011】
幾つかの例が下に示されており、本発明に従って、1個の環の原子あたりの置換基の数を示すことを意図している:一不飽和または芳香族、すなわち、sp混成炭素原子は1個の置換基を有し、一方、飽和sp混成炭素原子は2個の置換基を有する。正の電荷を運び、環に二重結合で結合された酸素またはイオウ原子は置換基を有さず、これは、正の電荷なしで単独で環に結合された酸素またはイオウ原子、および正の電荷なしで環に二重結合で結合された窒素またはリン原子と同様である。正の電荷を有し環に単独で結合された酸素またはイオウ原子、および正の電荷を有し環に二重結合で結合された窒素またはリン原子、および、正の電荷なしで環に単独で結合された窒素またはリン原子は、1個の置換基を有する。
【0012】
水素に加えて、複素環の好適な置換基R、Rは、本発明によれば以下のとおりである:C〜C20、特にC〜C12アルキル基、C〜C20、特にC〜C12アルケニルまたはアルキニル基、飽和または不飽和すなわち芳香族でもある、C〜Cシクロアルキル基、NO、CNまたはハロゲン。しかしハロゲンについては、複素環の炭素原子またはリン原子の置換基としてのみ可能であり、ヘテロ原子N、O、Sの置換基としては可能でないとの制限がある。H、NOおよびCNは、正に荷電したヘテロ原子の置換基としては生じない。
【0013】
置換基R、Rはまた、2環式または多環式カチオンが生じるように、対として結合することもできる。置換基は、ハロゲン原子、特にFおよび/またはClによって部分もしくは完全置換されてもよく、またはCNもしくはNOにより部分置換されてもよく、1個または2個のヘテロ原子、または、O、C(O)、C(O)O、S、S(O)、SO、SOO、N、P、NH、PH、NR’およびPR’の群から選択される原子団を含むことができる。しかし完全ハロゲン化の場合、存在する全ての置換基R、Rが完全ハロゲン化されなくてもよく、すなわち、少なくとも1個のRおよび/またはRはペルハロゲン化されない。
【0014】
一般性を制限することのない、本発明による複素環カチオンの置換基の例は以下のとおりである:
【化2】

【0015】
モデル計算によれば、[N(CFアニオンはファンデルワールス半径90.90Åを有し、従って、従来技術のイオン液体アニオンと比べて比較的小さい。
本発明による塩は疎水性ではなく、すなわち、それらは少なくともある程度は水と混合できる。
さらに、本発明による塩は、有機溶媒に有利に非常に良好に溶解する。
【0016】
既知の液体塩と比べて、本発明の塩は驚くべき低い粘度を有する。
有利なことに、本発明の塩は安定である。それらは単離でき、室温で保存可能である。
さらに、本発明の塩は比較的簡単に製造でき、一方、特に従来技術で知られている[N(SOCFアニオンは困難なしには入手できず、特に非常に高価でもある。
【0017】
本発明に従った好ましい塩においては、カチオンは複素環式、飽和または不飽和5、6または7員環を有する。本発明による、ただ1個の炭素原子を有する5員環の例は、テトラゾリウムカチオンであり、例えば、
【化3】

で表されるものである。
【0018】
本発明による塩のさらに好ましい変形物においては、カチオンの複素環は、N、P、OまたはSから選択される最大合計3個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子が複数存在する場合は、最大2個のヘテロ原子のみが直接隣接して配置されるのが特に好ましい。
ハロゲン原子に加えて、複素環の好ましい置換基は、これらがリンを除くヘテロ原子に結合されていない限りにおいてハロゲン、特にフッ素であり、また直鎖または分枝C〜Cアルキル基、特に−CH、−C、−n−C、−CH(CH、−n−C、−n−C13、および直鎖または分枝の、部分フッ化またはペルフルオロC〜Cアルキル基、特に−CF、−C、−Cである。
【0019】
本発明の好ましい態様は塩であって、ここで飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンが以下の構造:
【化4】

式中、Xは、N、P、OおよびSの群から選択され、そして、
Yは、各々の場合互いに独立して、C、N、P、OおよびSの群から選択され、
式中、少なくとも1個のYは炭素原子であり、一方残りの3個または4個のYは、炭素またはヘテロ原子であってよい、
を有する5または6員環である、前記塩である。
【0020】
正に荷電したヘテロ原子Xの置換基Rの数nは、原子価に1を加えた数に一致し、すなわち、不飽和酸素原子またはイオウ原子は置換基を有さず、飽和酸素原子またはイオウ原子は、不飽和窒素原子およびリン原子と同様に1個の置換基Rを有し、飽和窒素原子およびリン原子は2個の置換基Rを有する。
【0021】
複素環の残りの原子(Y)はそれぞれ、多数(m)の同一または異なる置換基Rを有して、それらの原子価に対応して飽和し、すなわち、飽和酸素原子またはイオウ原子は、不飽和窒素原子およびリン原子と同様に置換基を有さず、飽和窒素原子およびリン原子、ならびに不飽和sp混成炭素原子は、1個の置換基Rを有し、飽和sp混成炭素原子は、2個の置換基Rを有する。
置換基RおよびRは、一般式(1)におけるものと同様に定義される。
【0022】
この態様において特に好ましいのは、カチオンの飽和または不飽和5または6員環のヘテロ原子が分散されており、カチオンが以下の群:
【化5】

式中、Xは、N、P、OおよびSの群から選択され、Yは各々の場合互いに独立して、C、N、P、OおよびSの群から選択される、
から選択されるような変形物である。正に荷電したヘテロ原子Xまたは複素環の残りの原子の、置換基R、Rのnおよびmの数は、5または6員環カチオンの一般式に従って定義される。置換基R、Rは、一般式(1)におけるものと同様に定義される。
【0023】
一般性を制限しない、本発明による5また6員環を有するかかるカチオンの例は、
【化6】

式中、置換基Rは、互いに独立して、一般式(1)におけるRおよびRと同様に定義され、
そしてまた、
【化7】

で表されるものである。
【0024】
さらに好ましい変形物において、本発明による塩は、縮合環を含む飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンを有しており、すなわち、カチオンであって、ここで複素環の2つの隣接する置換基が互いに結合されており、以下の群:
【化8】

式中、Xは各々の場合互いに独立して、N、P、O、SおよびCの群から選択され、ここで少なくとも1個のX=N、P、OまたはSである、
から選択される前記カチオンを有している。
【0025】
各複素環の原子は多数(n)の同一または異なる置換基Rを有し、それらの原子価に応じて飽和し、ここでnは正の電荷を有するヘテロ原子Xの場合は1増加される。
【0026】
A’は、飽和、部分的または完全不飽和2〜7員炭化水素鎖を意味し、ここで炭化水素鎖の炭素原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和する。
置換基R、Rは一般式(1)におけるものと同様に定義されるが、しかしここで、正に荷電したヘテロ原子のα位における置換基Rは、複素環に直接隣接するメチレン基を有さない。
【0027】
一般性を制限しない、本発明によるかかるカチオンの例は以下のとおりである:
【化9】

【0028】
さらに好ましいのは,本発明の塩であって、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンが以下の構造:
【化10】

式中、Xは、NおよびPの群から選択され、YはN、P、OおよびSの群から選択される、
を有する前記塩である。
【0029】
ヘテロ原子Yの置換基Rの数nは、酸素またはイオウ原子の場合は0、窒素またはリン原子の場合は1である。
A’は2〜7員炭化水素鎖、B’は1〜6員炭化水素鎖を意味し、ここで炭化水素鎖は、飽和、部分的または完全不飽和であり、式中、1個を除く全ての炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される同一または異なるヘテロ原子により置き換えることができ、ここで炭化水素鎖A’および B’の炭素原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和する。
【0030】
置換基R、Rは、一般式(1)におけるものと同様に定義される。
一般性を制限しない、本発明によるかかるカチオンの例は以下のとおりである:
【化11】

【0031】
本発明は第二に、一般式(2):
【化12】

で表される、ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオンおよび、飽和または不飽和複素環ジカチオン、すなわち、2個の正に荷電したヘテロ原子を含む飽和または不飽和の複素4〜9員環、を含む塩に関する。
【0032】
この式において、
X、Yは、各々が互いに独立して、N、P、OまたはSを示し、
n、mは、XおよびYがそれぞれそれらの原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数を示し、
A”、B”は、飽和、部分的または完全不飽和0〜4員炭化水素鎖を示し、
ここで炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、
ここで少なくとも1個の炭素原子は、鎖A”およびB”の中に共に存在しており、
ここで炭化水素鎖A”およびB”の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和し、
【0033】
、R、Rは、正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CNを示し、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるR、Rおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでR、Rおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のR、Rおよび/またはRは、全てのR、RおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでR、Rおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、RおよびRのα位は、X=O、SまたはY=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよく、
ここで、複素環ジカチオンは、4、5、6、7、8または9員環である。
【0034】
好ましい塩において、ジカチオンは、複素環式、飽和または不飽和5、6または7員環を有する。
一般性を制限することなく、本発明によるかかるジカチオンの例は以下のとおりである:
【化13】

【0035】
本発明はさらに、一般式(3):
【化14】

で表される塩であって、ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオンおよび、その複素6員環に炭素原子を含まない、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンを含む前記塩に関する。
【0036】
この式において、
X、Yは、各々が互いに独立して、N、P、OまたはSを示し、
nは、Xがその原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数を示し、
mは、Yがその原子価に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数を示し、
【0037】
、Rは、正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
置換されたヘテロ原子がOまたはSではないとの条件で−ORを示し、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるRおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでRおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のRおよび/またはRは、全てのRおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでRおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよい。
【0038】
一般性を制限することなく、本発明によるかかるカチオンの例は以下のとおりである:
【化15】

本発明による化合物は、穏やかな条件の下で容易に合成可能であることが見出された。本発明による塩はまた、高い収率で単離される。
【0039】
このために、一般式:
SON(CFまたはRC(O)N(CF
式中、R=FまたはC2P+1、ここでp=1〜8、
で表される化合物を、一般式:
DF、式中Dはアルカリ金属の群から選択される、
で表されるフッ化アルカリ金属と極性有機溶媒中で反応させ、続いてまたは同時に、一般式(4):
【化16】

で表される塩、または一般式(5):
【化17】

で表される塩であって、
飽和、部分的もしくは完全不飽和複素4〜9員環モノもしくはジカチオンならびに、F、Cl、Br、I、BF、ClO、AsF、SbF、SbCl、PF、RSO、FSO、(RP(O)O、RP(O)、RSO、ROSO、1/2SO2−、CN、SCN、RC(O)O、RC(O)O、2,4−ジニトロフェノラートおよび2,4,6−トリニトロフェノラートの群から選択されるアニオンEを有し、ここでRは、ペルフルオロC〜C−アルキル基またはペルフルオロアリール基であり、およびRは、C〜C−アルキル基またはアリール基である前記塩、
を加える。
【0040】
一般式(4)または(5)で表される塩のヘテロ原子XおよびY、パラメータnおよびm、炭化水素鎖A、A”およびB”、ならびに置換基R、RおよびRは、本明細書中一般式(1)および(2)におけるそれらと同様に定義される。
反応においては、フルオロアルキル化ビス(トリフルオロメチル)アミドスルホン酸は、好ましくはフッ化アルカリ金属との反応に用いる。
【0041】
本発明に従った好ましい変法においては、方法はワンポット反応として実施される、すなわち、フッ化アルカリ金属およびフルオロアルキル化ビス(トリフルオロメチル)アミドスルホン酸またはアシルビス(トリフルオロメチル)アミドからの中間体は単離せず、その替わりに一般式(4)または(5)の塩と直接反応させる。反応物はほぼ等モル量で、アシルビス(トリフルオロメチル)アミドを使用する場合は等モル量の2倍で、用いるのが好ましい。
【0042】
一般式(4)または(5)の塩がそのフッ化物の形態において用いられる場合、すなわち、E=Fである場合、本発明による反応は、直接ワンポット反応にてフッ化アルカリ金属DFの添加なしに行うことができる。
揮発性副生成物が形成されることもあり、それらは次に減圧下で取り除かれる。しかし一般に、副生成物は用いられる溶媒に不溶性であり、ろ過により分離される。溶媒は、必要に応じて揮発性副生成物と共に減圧下で取り除く。本発明による塩は、一般に80%を越える収率で単離することができる。
【0043】
純度が低すぎる場合にはそれを改善するため、本発明による塩は、極性有機溶媒に溶解し、ルビジウムイミドRbN(CFで処理することができる。生成された析出ルビジウム塩は、次にろ過し、溶媒を減圧下で取り除く。
本発明に従って用いられるフッ化アルカリ金属は、好ましくはフッ化カリウムまたはルビジウムであり、特に好ましいのはより安価なフッ化カリウムである。
本発明に従って好ましい極性有機溶媒は、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミドおよびプロピオニトリルの群から選択される。
【0044】
本発明による反応は、−40℃〜80℃の温度で実施されるのが好ましく、0℃〜40℃の間が特に好ましく、さらに室温がより特に好ましい。
本発明による全ての化合物は、塩様の性質、比較的低い融点(通常は100℃未満)を有し、イオン液体として用いることができる。
本発明による塩は、多くの合成または触媒反応の溶媒として用いることができ、該反応は例えば、フリーデルクラフトアクリル化およびアルキル化、ジールスアルダーシクロ添加、水素化および酸化反応、ヘック反応などである。さらに、フッ素化溶媒は、例えば二次および一次電池のために合成することができる。
【0045】
これらは、N(CF基の導入のための試薬として好適である。例えば、N(CF基は、有機ハロゲン化合物中のハロゲン原子を置換可能である。さらに、本発明の塩は、液晶化合物および活性成分の製造のための前駆物質として、特に医薬および農作物保護剤のために重要である。
本発明による化合物は、非水溶性電界質として、必要に応じて当業者に知られている他の電解質と組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
さらに、本発明による塩は、好適な反応における非水溶性極性物質として、相転移触媒としてまたは均一系触媒の異物化のための媒体として、用いることができる。
本明細書における全ての出願、特許および刊行物の完全な開示内容は、参照として本出願に組み込まれる。
【0047】
さらなる解説がない場合も、当業者は、上記の記載をもっとも広い範囲において利用できると考えられる。従って好ましい態様および例は、どのような様式においても絶対に限定的ではない、記述のための開示であると理解される。
全てのNMRスペクトルは、分光計Bruker Avance 3000(H:300.13MHz、19F:282.40MHz)で測定した。
【0048】
例1
【化18】

乾燥アセトニトリル10cm中のRbF1.29g(12.3mmol)およびCFSON(CF3.63g(12.7mmol)から調製した、2.93g(12.3mmol)のRbN(CF溶液を、室温で攪拌しながら、乾燥アセトニトリル5cm中の1−ブチル−3−塩化メチルイミダゾリウム2.15g(12.3mmol)の溶液に加える。反応混合物を室温で15分間攪拌し、析出したRbClをろ別し、乾燥アセトニトリル(2×5cm)で洗浄する。アセトニトリルを120Paの真空下で除去し、残留物を2時間、50℃減圧下で乾燥して、3.24gの油様物質を得る。
【0049】
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)イミド、[C15N(CFの収率は90.5%である。
【表2】

【0050】
例2
【化19】

乾燥アセトニトリル20cm中のRbF2.05g(19.6mmol)およびCFSON(CF5.95g(20.9mmol)から調製した、4.65g(19.6mmol)のRbN(CFの溶液を、室温で攪拌しながら、乾燥アセトニトリル20cm中のN−メチル−N−エチルピロリジニウムブロミド3.65g(18.8mmol)の溶液に加える。反応混合物を室温で15分間攪拌し、析出したRbBrをろ別し、乾燥アセトニトリル(2×5cm)で洗浄する。アセトニトリルを1.4Paの真空下で除去し、残留物を2時間、60〜65℃減圧下で乾燥して、4.68gの固体物質を得る。融点は80〜85℃である。
【0051】
N−メチル−N−エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチル)イミド、[C16N]N(CFの収率は93.4%である。
【表3】

【0052】
例3
【化20】

乾燥アセトニトリル20cm中のRbF2.05g(29.2mmol)およびCFSON(CF8.43g(29.6mmol)から調製した、6.93g(29.2mmol)のRbN(CFの溶液を、室温で攪拌しながら、乾燥アセトニトリル15cm中のN−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート6.50g(29.1mmol)の溶液に加える。反応混合物を室温で15分間攪拌し、析出したRbBFをろ別し、乾燥アセトニトリル(2×5cm)で洗浄する。アセトニトリルを1.4Paの真空下で除去し、残留物を2時間、60〜65℃減圧下で乾燥して、8.28gの油様物質を得る。
【0053】
N−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチル)イミド、[C14N]N(CFの収率は98.7%である。
【表4】

【0054】
例4
【化21】

乾燥ジメチルホルムアミド25cm中の、スプレー乾燥したフッ化カリウムKF1.90g(32.7mmol)およびCFSON(CF9.14g(32.1mmol)から調製した、KN(CFの溶液を、室温で攪拌しながら、乾燥ジメチルホルムアミド10cm中の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート6.28g(31.7mmol)の溶液に加える。反応混合物を室温で15分間攪拌し、続いてアイスバスを用いて冷却する。析出したKBFをろ別し、乾燥ジメチルホルムアミド(10cm)で洗浄する。溶媒を、30〜35℃、1.3Paの真空下で除去する。液体を析出物から分離して、7.8gの赤黄色の油様物質を得る。
【0055】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)イミド、[C11N(CFの収率は93.5%、純度(19F−NMR測定による)は86.5%である。
純度を改善するため、塩を乾燥アセトニトリル10cmに溶解し、乾燥アセトニトリル8cm中のRbN(CF1.35g(5.7mmol)の溶液で室温で処理する。析出したRbBFをろ別し、乾燥アセトニトリル(5cm)で洗浄する。アセトニトリルを、30〜35℃、1.3Paの真空下で除去し、7.8gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)イミド、[C11N(CF、純度98%を得る。
【表5】

【0056】
例5
【化22】

乾燥アセトニトリル5cm中のフッ化ルビジウムRbF0.303g(2.9mmol)およびCFSON(CF0.83g(2.9mmol)から調製した、0.69g(2.9mmol)のRbN(CFの溶液を、−35〜−38℃で攪拌しながら、乾燥アセトニトリル10cm中のN−エチルベンゾチアゾリウムブロミド0.71g(2.9mmol)の溶液に加える。反応混合物を−35〜−38℃で15分間攪拌し、析出したRbBrを続いてこの温度でろ別し、乾燥アセトニトリル(2×5cm)で洗浄する。残留物は、0.48gの臭化ルビジウム(チッ化銀を有する正のサンプルで、NMRスペクトルのHおよび19Fにおいて信号なし)である。アセトニトリル溶液の低い温度(−30℃)におけるNMRスペクトル分析では、N−エチルベンゾチアゾリウムビス(トリフルオロメチル)イミドの生成を示した。
19F−NMR(参照:CClF;溶媒:CDCN):−39.15s

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオン、N(CFを有する、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンの塩であって、一般式(1):
【化1】

式中、
X= N、P、OまたはSであり、
n= Xがその原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
A= 飽和、部分的または完全不飽和3〜8員炭化水素鎖であって、
ここで1個を除く全ての炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、前記炭化水素鎖の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子が、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和する、前記炭化水素鎖であり、
、R= 正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X= N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CNであって、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるRおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでRおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のRおよび/またはRは、全てのRおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでRおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって、置き換えられてもよい、
で表される、前記塩。
【請求項2】
Aが、4、5または6員炭化水素鎖である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
Aが、0個、1個または2個の炭素原子がN、P、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられている炭化水素鎖である、請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
、Rが、互いに独立して、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
X= N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件でハロゲン、特にフッ素、
1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、特に−CH、−C、−n−C、−CH(CH、−n−C、−n−C13
1〜6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の、部分フッ化アルキルまたはペルフルオロアルキル、特に−CF、−C、−C
との意味を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の塩。
【請求項5】
飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンが、以下の群:
【化2】

式中、
X= N、P、OまたはSであり、
Y= 各々の場合において、互いに独立して、N、P、O、SまたはCであって、ここで少なくとも1個のY=Cであり、
n= 不飽和のX=O、Sの場合は0、
飽和のX=O、Sの場合または不飽和のX=N、Pの場合は1、
飽和のX=N、Pの場合は2であり、
m= 飽和のY=O、Sの場合または不飽和のY=N、Pの場合は0、
飽和のY=N、Pの場合またはY=sp−Cの場合は1、
Y=sp−Cの場合は2であり、
式中、R、R基は、請求項1に定義の通りである、
から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項6】
飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンが、以下の群:
【化3】

式中、
X= 各々の場合において、互いに独立して、N、P、O、SまたはCであって、ここで少なくとも1個のX=N、P、OまたはSであり、
n= 飽和のX=O、Sの場合または不飽和のX=N、Pの場合は0、
飽和のX=N、Pの場合またはX=sp−Cの場合またはsp環炭素原子での置換の場合は1、
X=sp−Cの場合またはsp環炭素原子での置換の場合は2であり、
ここでnは、X=N、P、OまたはSの場合は1増加され、
A’= 飽和、部分的または完全不飽和2〜7員炭化水素鎖であって、ここで該炭化水素鎖の炭素原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和し、
式中、R、R基は、正に荷電したヘテロ原子に対するα位の置換基Rが、複素環に直接隣接するメチレン基を有さないとの条件で、請求項1に定義の通りである、
から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項7】
飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンが以下の構造:
【化4】

式中、
X= NまたはPであり、
Y= N、P、OまたはSであり、
n= Y=O、Sの場合は0、
Y= N、Pの場合は1であり、
A’= 飽和、部分的または完全不飽和2〜7員炭化水素鎖であり、
B’= 飽和、部分的または完全不飽和1〜6員炭化水素鎖であり、
式中、炭化水素鎖A’およびB’の1個を除く全ての炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子により置き換えることができ、
および式中、炭化水素鎖A’およびB’の炭素原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和し、
および式中、R、R基は請求項1に定義の通りである、
を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項8】
ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオン、N(CFを有する、飽和、部分的または完全不飽和複素環ジカチオンの塩であって、一般式(2):
【化5】

式中、
X、Y= 各々が互いに独立して、N、P、OまたはSであり、
n、m= XおよびYがそれぞれ、それらの原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
A”、B”= 飽和、部分的または完全不飽和0〜4員炭化水素鎖であって、
ここで炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、
ここで少なくとも1個の炭素原子は、鎖A”およびB”中に共に存在しており、
ここで炭化水素鎖A”およびB”の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和し、
、R、R= 正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X= N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CNであって、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるR、Rおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでR、Rおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のR、Rおよび/またはRは、全てのR、RおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでR、Rおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、RおよびRのα位は、X=O、SまたはY=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよい、
ここで、前記複素環ジカチオンは、4、5、6、7、8または9員環である、
で表される、前記塩。
【請求項9】
複素環ジカチオンが、5、6または7員環である、請求項8に記載の塩。
【請求項10】
ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオン、N(CFを有する、飽和、部分的または完全不飽和複素環カチオンの塩であって、一般式(3):
【化6】

式中、
X、Y= 各々が互いに独立して、N、P、OまたはSであり、
n= Xがその原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
m= Yがその原子価に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
、R= 正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特に塩素、
置換されたヘテロ原子がOまたはSではないとの条件で−ORであって、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるRおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでRおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のRおよび/またはRは、全てのRおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでRおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよい、
で表される、前記塩。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の塩の製造方法であって、Dがアルカリ金属の群から選択される一般式DFで表されるフッ化アルカリ金属を、極性有機溶媒中において、物質:
SON(CFまたはRC(O)N(CF
式中、R=FまたはC2P+1であってここでp=1〜8である、
および一般式(4)で表される塩:
【化7】

式中、
= F、Cl、Br、I、BF、ClO、AsF、SbF、SbCl、PF、RSO、FSO、(RP(O)O、RP(O)、RSO、ROSO、1/2SO2−、CN、SCN、RC(O)O、RC(O)O、2,4−ジニトロフェノラートまたは2,4,6−トリニトロフェノラートであって、ここでRは、ペルフルオロC〜C−アルキル基またはペルフルオロアリール基であり、およびRは、C〜C−アルキル基またはアリール基であり、
X= N、P、OまたはSであり、
n= Xが原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
A= 飽和、部分的または完全不飽和3〜8員炭化水素鎖であって、
ここで1個を除く全ての炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、ここで前記炭化水素鎖の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子が、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和する、前記炭化水素鎖であり、
、R= 正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CNであって、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるRおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでRおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のRおよび/またはRは、全てのRおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでRおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよい、
と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項8または9に記載の塩の製造方法であって、Dがアルカリ金属の群から選択される一般式DFで表されるフッ化アルカリ金属を、極性有機溶媒中において、物質:
SON(CFまたはRC(O)N(CF
式中、R=FまたはC2P+1であって、ここでp=1〜8である、
および一般式(5)で表される塩:
【化8】

式中、
= F、Cl、Br、I、BF、ClO、AsF、SbF、SbCl、PF、RSO、FSO、(RP(O)O、RP(O)、RSO、ROSO、1/2SO2−、CN、SCN、RC(O)O、RC(O)O、2,4−ジニトロフェノラートまたは2,4,6−トリニトロフェノラートであって、ここでRは、ペルフルオロC〜C−アルキル基またはペルフルオロアリール基であり、およびRは、C〜C−アルキル基またはアリール基であり、
X、Y= 各々が互いに独立して、N、P、OまたはSであり、
n、m= XおよびYがそれぞれ、それらの原子価に1を加えた値に応じて飽和するように、0、1または2から選択される整数であり、
A”、B”= 飽和、部分的または完全不飽和0〜4員炭化水素鎖であって、
ここで炭素原子は、N、P、OおよびSから選択される、同一または異なるヘテロ原子によって置き換えることができ、
ここで少なくとも1個の炭素原子は、鎖A”およびB”中に共に存在しており、
ここで炭化水素鎖A”およびB”の炭素原子およびその中に存在するヘテロ原子は、それらの原子価に応じて置換基Rにより飽和し、
、R、R= 正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−H、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、
2〜20個の炭素原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、
3〜7個の炭素原子を有する飽和、部分的または完全不飽和シクロアルキル、
X=N、O、Sの場合はハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
ハロゲン−ヘテロ原子結合がないとの条件で、ハロゲン、特にフッ素または塩素、
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−NO
正に荷電したヘテロ原子への結合がないとの条件で−CNであって、
ここで複素環の異なるおよび/または同一の位置におけるR、Rおよび/またはRは、各々の場合において同一であるか、または異なり、
ここでR、Rおよび/またはRは、互いにペアとして単結合または二重結合で結合されていてもよく、
ここで1個または2個以上のR、Rおよび/またはRは、全てのR、RおよびRが完全にハロゲン化されてはいないとの条件で、部分的または完全にハロゲンにより、特に−Fおよび/または−Clにより置換されてもよく、または部分的に−CNもしくは−NOにより置換されてもよく、
そして、ここでR、Rおよび/またはRの1個または2個の炭素原子は、−O−、−C(O)−、C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−P=、−NH−、−PH−、−NR’−および−PR’−であって、式中、R’=非フッ化、部分フッ化またはペルフルオロC〜C−アルキルまたは−Cであって、式中、Rのα位は、X=O、Sの場合は置き換えられていないもの、から選択されるヘテロ原子および/または、原子群によって置き換えられてもよい、
ここで、複素環ジカチオンは、4、5、6、7、8または9員環である、
と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
用いられるフッ化アルカリ金属がKFまたはRbFであることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
反応が、−40℃〜80℃の温度、特に0℃〜40℃の温度において起こることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応が、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミドおよびプロピオニトリルの群から選択される極性有機溶媒中で起こることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
反応が、ワンポット反応として実施されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
=Fの反応が、フッ化アルカリ金属DFの添加なしに実施されることを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
反応の出発物質が、互いにほぼ同じモル比で用いられることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれかに記載の塩の、イオン液体としての使用。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれかに記載の塩の、非水性電解質としての使用。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれかに記載の塩の、N(CF基の導入のための試薬としての使用。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれかに記載の塩の、相間移動触媒としての使用。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれかに記載の塩の、液晶化合物または活性成分の合成のため、特に医薬または農作物保護剤のための中間物質としての使用。

【公開番号】特開2011−201879(P2011−201879A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74239(P2011−74239)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2004−559692(P2004−559692)の分割
【原出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】