説明

c−Met阻害剤及び用法

本発明は、c−Metチロシンキナーゼとして有用な化合物を提供する。本発明は、本発明の化合物を含んでなる薬学的に許容できる組成物、及び種々の増殖性疾患治療への当該組成物の使用方法も提供する。本発明は、化学式Iの化合物、薬学的に許容できるキャリア、佐剤、又はビヒクルを含んでなる薬学的組成物も提供する。加えて、本発明は、化学式Iの化合物又はその薬学的組成物の治療上有効服用量を患者へ投与することを含んでなる、患者の増殖性疾病、症状、又は疾患を治療又は低減する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はc−Met阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は、本発明の化合物を含んでなる薬学的に許容できる組成物、及び種々の疾患の治療における当該組成物の使用法も提供する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞成長因子(HGF)は細胞分散因子としても知られ、有糸分裂及び細胞運動を誘発することにより細胞形質転換及び腫瘍発現を増強する多機能成長因子である。更に、HGFは、種々のシグナル伝達経路を通じて細胞の運動性及び侵入を刺激することにより、転移を促進する。細胞への効果を生じるために、HGFはその受容体であるc−Met(チロシンキナーゼ受容体)に結合しなければならないc−Metは、50キロダルトン(kDa)のα−サブユニット及び145kDaのβ−サブユニットを含んでなる、広範に発現するヘテロダイマータンパクであり(非特許文献1)、ヒトの癌に顕著な高率で過剰発現し、原発腫瘍と転移の間の移行期間に増幅される。c−Met過剰発現が関係する種々の癌は、胃の腺癌、腎癌、小細胞肺癌、結直腸癌、前立腺癌、脳癌、肝癌、膵臓癌及び乳癌を含んでなるが、これらに限らない。c−Metはアテローム性動脈硬化症及び肺線維症にも関係する。
【0003】
従って、c−Metタンパクキナーゼ受容体の阻害剤として有用である化合物を開発することには大きな需要がある。
【非特許文献1】Maggioraら、J.Cell Physiol.(1997年)173巻、183−186ページ、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の化合物及びその薬学的に許容できる組成物は、c−Met阻害剤として有効であることを見出した。従って、本発明は次式を有する化合物、あるいはその薬学的に許容できる組成物又はプロドラッグを特徴とする。
【0005】
【化14】

式中、L、L、R、R及びWのそれぞれは、本願明細書にて定義する。
【0006】
本発明は、化学式Iの化合物、薬学的に許容できるキャリア、佐剤、又はビヒクルを含んでなる薬学的組成物も提供する。加えて、本発明は、化学式Iの化合物又はその薬学的組成物の治療上有効服用量を患者へ投与することを含んでなる、患者の増殖性疾病、症状、又は疾患を治療するか又はその重症度を低減する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(定義及び一般用語)
特に明記のない限り、本願明細書は以下の定義を適用して用いる。本発明の目的のため、化学元素の同定は、CAS版”Periodic Table of the Elements”、及び”Handbook of Chemistry and Physics”、75版、1994年、に従う。加えて、有機化学の一般原理は、Thomas Sorrell、”Organic Chemistry”、University Science Books、Sausalito、1999年、並びに、M.B.Smith及びJ.March編集、”March’s Advanced Organic Chemistry”、第5版、John Wiley & Sons、New York、2001年に記載があり、参照によりこれらの全内容は本願明細書に組み入れられている。
【0008】
本願明細書に記載するように、本発明の化合物は、上で一般的に説明されるような、あるいは本発明の特定のクラス、サブクラス、及び本発明の化学種により例示されるような、1以上の置換基によって適宜置換してもよい。語句「適宜置換」は、語句「置換、又は非置換」と交換可能であることは明らかである。一般に、用語「適宜」が先行していてもいなくても、用語「置換」は、特定置換基のラジカルを有する所与の構造において、1以上の水素ラジカルの入れ替えを指す。別途規定しない限り、適宜置換された基は、この基の置換されたそれぞれの位置に置換基を有してよい。所与の構造において、1以上の位置が特定の基から選ばれる1以上の置換基で置換されうる際に、その置換基はそれぞれの位置において同じでも異なってもよい。
【0009】
本願明細書に記載のように、用語「適宜置換」がリストに先行する時は、前記用語はそのリストにおける後続の置換可能な基の全てを指す。例えば、Xがハロゲン;適宜置換されたC1−3アルキル又はフェニル;である場合、Xは適宜置換されたアルキルでもよく、適宜置換されたフェニルでもよい。同様に、用語「適宜置換」がリストに続く場合は、別途規定しない限り、前記用語は先行するリストの置換可能な基の全てを指す。例えば:Xがハロゲン、C1−3アルキル、又はフェニルであり、XがJにより適宜置換される場合は、C1−3アルキル及びフェニルの両者がJにより適宜置換されてもよい。当業者であれば、H、ハロゲン、NO、CN、NH、OH又はOCF等の基は、置換可能な基ではないので含まれないことは明白である。置換ラジカル又は構造を特定しないか、又は「適宜置換された」と定義しない場合は、置換ラジカル又は構造は置換されない。
【0010】
本発明が想定する置換基の組み合わせは、好適には、安定又は化学的に可能な化合物を結果として形成するものである。本願明細書に使用の用語「安定」は、生成、検出、及び、好適には回収、精製、ならびに本願明細書に開示の1以上の目的のための使用に供する条件下において、実質的に化合物が変化しないことを指す。いくつかの実施形態において、安定化合物又は化学的に可能な化合物は、40℃以下の温度に保たれ、湿気又は他の化学的反応性条件が存在しなければ、少なくとも1週間、実質的に変化しない。
【0011】
本願明細書に使用の用語「脂肪族」又は「脂肪族基」は、完全飽和又は1以上の不飽和単位を含む、直鎖(非分枝)又は分枝、置換もしくは非置換の炭化水素鎖を意味する。別途規定しない限り、脂肪族基は、1−20の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1−10の炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪族基は、1−8の炭素原子を含む。更に他の実施形態において、脂肪族基は1−6の炭素原子を含み、また別の実施形態において、脂肪族基は1−4の炭素原子を含む。適切な脂肪族基は、直鎖又は分枝、置換もしくは非置換の、アルキル、アルケニル又はアルキニル基を含むが、これらに限定しない。脂肪族基の更なる例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニル及びsec−ブチルを含む。用語「アルキル」及び接頭語「アルキ−」を本願明細書に用いる場合は、直鎖及び分枝した飽和炭素鎖を含む。用語「アルキレン」を本願明細書に用いる場合は、水素原子を2個除去された直鎖又は分枝の飽和炭化水素から由来する、飽和2価炭化水素基を表し、例えば、メチレン、エチレン、イソプロピレン及び同様のもの等である。用語「アルケニル」を本願明細書に用いる場合は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む、1価の直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表す。用語「アルキニル」を本願明細書に用いる場合は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む、1価の直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表す。用語「アルキリデン」を本願明細書に用いる場合は、2価の直鎖アルキル結合基を表す。
【0012】
用語「環状脂肪族」(又は「炭素環」)は、完全に飽和しているか、又は1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない、残りの分子への単結合点を有する、単環式C−C炭化水素又は二環式C−C12炭化水素を指し、上記二環式環系の個々の環は3−7環員を有する。適切な環状脂肪族基は、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルを含んでなるが、これらに限定しない。脂肪族基の更なる例は、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル及びシクロヘプテニルを含んでなる。
【0013】
用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環脂肪族」又は「複素環式」を本願明細書に用いる場合は、1個以上の環員が独立して選択されるヘテロ原子であり、完全飽和、又は1以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではなく、残りの分子への単結合点を有する、単環式、二環式、又は三環式の環系を意味する。いくつかの実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環脂肪族」又は「複素環式」基は、3−14個の環員を有し、そこにおいて1個以上の環員が酸素、硫黄、窒素、又はリンから独立して選ばれるヘテロ原子であり、系内の各環が3−8個の環員を含む。
【0014】
複素環の例には、以下の単環:2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル;並びに、二環:3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン及び1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オン、を含んでなるが、限定しない。
【0015】
用語「ヘテロ原子」は、1以上の酸素、硫黄、窒素、リン又はケイ素を意味し、窒素、硫黄、又はリンの任意の酸化型;任意の塩基性窒素の4価型;あるいは、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル等)、NH(ピロリジニル等)又はNR(N置換ピロリジニル等)の、複素環式環の置換された窒素、を含んでなる。
【0016】
用語「不飽和」を本願明細書に用いる場合は、1以上の不飽和単位を有する部分を意味する。
【0017】
用語「アルコキシ」又は「チオアルキル」を本願明細書に用いる場合は、上述にて定義したアルキル基に、酸素(「アルコキシ」)又は硫黄(「チオアルキル」)原子を通じて主要な炭素鎖が付加することを指す。
【0018】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」及び「ハロアルコキシ」がある場合は、1以上のハロゲン原子で置換したアルキル、アルケニル又はアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はIを意味する。
【0019】
用語「アリール」を単独又はより大きな「アラルキル」「アラルコキシ」又は「アリールオキシアルキル」の中の部分として用いる場合は、合計6−14の環員を有する、単環、二環、及び三環式の炭素環系を指し、ここで、環系の少なくとも1の環は芳香族であり、環系のそれぞれの環は3−7個の環員を含み、残りの分子への単結合点を有する。用語「アリール」は用語「アリール環」と交換可能に用いてもよい。アリール環の例は、フェニル、ナフチル及びアントラセンを含んでなる。
【0020】
用語「ヘテロアリール」を単独又はより大きな「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアリールアルコキシ」の中の部分として用いる場合は、合計5−14の環員を有する、単環、二環、及び三環式の炭素環系を指し、ここで、環系の少なくとも1の環は芳香族であり、環系の少なくとも1の環は1以上のヘテロ原子を含み、環系のそれぞれの環は3−7個の環員を含み、残りの分子への単結合点を有する。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」又は用語「ヘテロ芳香族」と交換可能に用いてもよい。
【0021】
ヘテロアリール環の更なる例は、以下の単環:2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば2−トリアゾリル及び5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ピラゾリル(例えば2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、並びに、以下の二環:ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば2−インドリル)、プリニル、キノリニル(例えば2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、及びイソキノリニル(例えば1−イソキノリニル、3−イソキノリニル又は4−イソキノリニル)、を含んでなる。
【0022】
いくつかの実施形態において、アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)又はヘテロアリール(ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルコキシ等を含む)基は、1以上の置換基を含んでもよい。アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、以下を含んでなる:ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで適宜置換された、フェニル(Ph);Rで適宜置換された、−O(Ph);Rで適宜置換された、−(CH1−2(Ph);Rで適宜置換された、−CH=CH(Ph);−NO−;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRC(O)OR;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRC(O)OR;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(O)OR;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;C(S)N(R;−B(OR;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−(CH0−2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3−10環状脂肪族)、−L−(C6−10アリール)、−L−(5−10員ヘテロアリール)、−L−(5−10員ヘテロシクリル)、オキソ、C1−4ハロアルコキシ、C1−4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CF;又は、2つの置換基は、同じ炭素又は異なる炭素上において、それらが結合する炭素又は介在する炭素と共に、5−7員の飽和、不飽和又は部分飽和の環を形成し、ここでLは、3個以下のメチレン単位が、−NH−、−(NR)−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)、−C(O)CO−、−C(O)、−C(O)NH−、C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NHCO−、NRCO−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)−NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、又は−S(O)−、で入れ替えられるC1−6アルキレン基であり、式中Rの存在はそれぞれ、独立して、水素、適宜置換されたC1−6脂肪族、非置換5−6員ヘテロアリール又は複素環、フェニル、又は、−CH(Ph)から選ばれ、あるいは、同じ置換基又は異なる置換基上の2つの独立したRはそれぞれのR基が結合する原子と共に、5−8員ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリール環、又は3員から8員のシクロアルキル環を形成し、ここで前記ヘテロアリール又はヘテロシクリル環は窒素、酸素又は硫黄から独立して選ばれる1−3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基上には、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロC1−4脂肪族から選ばれる置換基が適宜あり、前述のRのC1−4脂肪族基のそれぞれは置換されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、脂肪族基又はヘテロ脂肪族基、あるいは、非芳香族複素環は、1以上の置換基を含んでもよい。脂肪族又はヘテロ脂肪族基の飽和炭素上、又は、非芳香族複素環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素において上記リストしたものから選ばれ、加えて以下を含んでなる:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、又は=NR、式中、Rはそれぞれ独立に、水素又は適宜置換されたC1−8脂肪族から選ばれる。Rの脂肪族基上には、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ−C1−4脂肪族)、及びハロ(C1−4脂肪族)から選ばれる置換基が適宜あり、式中、前述のRのC1−4脂肪族基はそれぞれ置換されず;又は、同じ窒素上の2つのR*は、当該窒素と共に5−8員ヘテロシクリル又は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれる1−3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環を形成する。
【0024】
いくつかの実施形態において、非芳香族複素環式環の窒素への適宜置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)R+、S(O)N(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R+)、又はNRS(O)を含んでなり;式中、Rは、水素、適宜置換されたC1−6脂肪族、適宜置換されたフェニル、適宜置換された−O(Ph)、適宜置換された−CH(Ph)、適宜置換された−(CH1−2(Ph);適宜置換された−CH=CH(Ph);又は、酸素、窒素又は硫黄から独立して選ばれる1−4個のヘテロ原子を有する非置換5−6員ヘテロアリール又は複素環式環、又は、同じ置換基又は異なる置換基上の2個のRの独立した存在は、各R基が結合する原子(単数又は複数)と共に5−8員ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリール環又は3−8員シクロアルキル環を形成し、ここで前記ヘテロアリール又はヘテロシクリル環は、独立して、窒素、酸素又は硫黄から選ばれる1−3個ヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基又はフェニル環への適宜置換基は、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、又はハロ(C1−4脂肪族)から選ばれ、式中、前述のRのC1−4脂肪族基はそれぞれ非置換である。
【0025】
上記詳述のように、いくつかの実施形態において、2個のR(又はR、又は本願明細書において同様に定義する他の任意の変数)の独立した存在は、それぞれの変数が結合する原子(単数又は複数)と共に、5−8員ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリール環、あるいは3−8員シクロアルキル環を形成する。2個のR(又はR、又は本願明細書において同様に定義する他の任意の変数)の独立した存在が、それぞれの変数が結合する原子(単数又は複数)と一緒になる際に形成される環の例は、以下を含んでなるがこれらに限定されない:a)同一の原子に結合する2個のR(又はR、又は本願明細書において同様に定義する他の任意の変数)の独立した存在は、当該原子と共に、環(例えば、N(R)を形成し、ここでRの両存在は、窒素原子と共にピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、又はモルホリン−4−イル基を形成し;並びに、b)異なる原子に結合する2個のR(又はR、又は本願明細書において同様に定義する他の任意の変数)の独立した存在は、それらの両原子と共に環(例えば、フェニル環が2個のORで置換された環:
【0026】
【化15】

ここでこれらの2個のRの存在は結合する酸素原子と共に、酸素を含む縮合6員環:
【0027】
【化16】

を形成する)を形成する。2個のR(又はR、又は本願明細書において同様に定義する他の任意の変数)の独立した存在が、それぞれの変数が結合する原子(単数又は複数)と一緒になる際に、種々の他の環を形成しうること、及び上記詳述の例示は限定を意図しないことは明らかである。
【0028】
いくつかの実施形態において、アルキル又は脂肪族鎖のメチレン単位は、別の原子又は基と適宜入れ替わる。例えば、このような原子又は基は、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、OC(O)、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−S(O)−NR、−NRS(O)−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、又は−S(O)−を含むがこれらに限定されず、ここでRは本願明細書において定義する。別途規定しない限り、適宜入れ替えは化学的に安定な化合物を生成する。原子又は基を適宜入れ替えることは、鎖の中、及び鎖の一端、すなわち結合点及び/又は終端部において生じうる。化学的に安定な化合物を生じる限り、2個の適宜入れ替えは鎖内で隣接してもよい。別途規定しない限り、入れ替えが終端に生じる場合は、入れ替わる原子は当該終端のH(水素)に結合する。例えば、−CHCHCHのメチレン単位1個が適宜−O−と入れ替わる場合、生成化合物は−OCHCH、−CHOCH又は−CHCHOHでありうる。
【0029】
本願明細書に記載のように、置換基から多環系の1の環の中心へ描かれる結合手(下に示すように)は、多環系の任意の環において置換可能な任意の位置が置換基により置換されることを表す。例えば、図aは、図bに示す任意の位置に置換しうることを表す。
【0030】
【化17】

これは、適宜環系(点線で表す)に縮合した多環系にもあてはまる。例えば、図cにおいて、Xは環A及び環Bにおける適宜置換基である。
【0031】
【化18】

しかしながら、多環系の2個の環がそれぞれの環の中心から描かれた異なる置換基を有する場合においては、別途記載しない限り、それぞれの置換基はそれが付加された環の上での置換基のみであることを表す。例えば、図dにおいて、Yは環Aのみにおける適宜置換基であり、Xは環Bのみにおける適宜置換基である。
【0032】
【化19】

別途規定しない限り、本願明細書に表す構造はまた、当該構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び、幾何学異性体(又はコンフォマー))の形体;例えば、それぞれの不斉中心に対するR及びSコンフォメーション、(Z)及び(E)2重結合異性体、並びに(Z)及び(E)コンフォメーション異性体を含んでなることを意味する。従って、本発明の化合物の1の鏡像異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何学異性体(又はコンフォマー)は、本発明の範囲内にある。
【0033】
用語「保護基」を本願明細書に用いる場合は、例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニル、その他等の官能基を、合成手順の間に好ましくない反応から保護することを意図する基を表す。一般的に用いられる保護基は、Green及びWuts、Protective Groups In Organic Synthesis、第3版、ジョン・ワイリー、ニューヨーク、1999年、において開示され、参照により本願明細書に取り入れられる。窒素保護基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイル等のアシル、アロイル又はカルバミル基、並びに、保護基のある又は保護基のないアラニン、ロイシン、フェニルアラニン等のD、L又はD,L−アミノ酸等のキラル補助基;ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル等のスルホニル基;ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニル等のカルバメート基、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル等のアリールアルキル基、並びに、トリメチルシリル等のシリル基等を含んでなる。好適なN−保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0034】
用語「プロドラッグ」を本願明細書に用いる場合は、インビボにおいて、化学式I、I−a、I−b、又はI−c、あるいは表1、2、又は3に列挙の化合物に変換される化合物を表す。このような変換は、例えば、血中での加水分解、又は血液又は組織中でプロドラッグ形態が親化合物の形態に酵素的に変換することにより起こりうる。本発明の化合物のプロドラッグは、例えば、エステルでもよい。本発明のプロドラッグとして利用されうるエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C−C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カルボナート、カルバミン酸エステル及びアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含む本発明の化合物は、プロドラッグの形態において当該位置をアシル化しうる。他のプロドラッグの形は、例えば、親化合物のOH基をリン酸エステル化して生じるホスファート等のホスファートを含んでなる。プロドラッグに関する綿密な議論は、T.Higuchi及びV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems、第14巻、A.C.S.Symposium Series、Edward B.Roche編集、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年、及びJudkinsら、Synthetic Communications、26巻、23号、4351−4367ページ、1996年、にあり、それぞれ参照により本願明細書に取り入れられる。
【0035】
別途規定しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性の形態は、本発明の範囲内にある。加えて、別途規定しない限り、本願明細書に示す構造は、1以上の同位体標識原子が存在する点のみが異なる化合物を含んでなることを意味する。例えば、水素を重水素又はトリチウムで入れ替えた、又は炭素を13C−又は14C−富化炭素で入れ替えた以外は目下の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、バイオアッセイの分析ツール又はプローブとして有用である。
【0036】
(本発明の化合物の説明)
本発明は、次式を有する化合物、
【0037】
【化20】

又はその薬学的に許容できる塩又はプロドラッグを特徴とし、
式中、WはS−、−C(R)=C(R)−、又は−C(R++S−であり;
は、適宜1−4個のRLAで置換されるC1−2アルキレンであって、前記アルキレンの1又は両方の炭素は適宜−O−、−N(R++)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−に入れ替えられ;RLAは各々、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−SR++、又はC1−4脂肪族から独立して選ばれ、これらはそれぞれ、ハロゲン、−OH、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++から独立して選ばれる3以下の置換基で各々適宜置換され;又は同一の炭素原子上の2つのRLAは=O、=S、=NN(R++、=NNHC(O)(R++)、=NNHC(O)OR++、=NNHS(O)(R++)、又は=N(R++)であり;又は同一の炭素原子上に共に存在する2つのRLAはC3−5シクロアルキル、エチレンジオキソ、又はエチレンジチオを形成し;
は次式
【0038】
【化21】

から選ばれ:
式中、RA2及びRA6のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、−CN、−C(O)OR++、−C(O)R++、−C(O)N(R++、−C(S)N(R++、−C(NH)N(R++、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−OC(O)N(R++、−SR++、−NO、−N(R++、−N(R++)C(O)(R++)、−N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)C(O)OR++、−N(R++)N(R++)C(O)R++、−N(R++)N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)N(R++)C(O)OR++、−N(R++)S(O)N(R++、−N(R++)S(O)++、−S(O)++、−S(O)N(R++、−S(O)R++から選ばれ、C1−4脂肪族は適宜、ハロゲン、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++、又は−N(R++)C(O)(R++)から独立して選ばれる置換基で置換され;
A3はRArであり;又はRA3、RA4及びそれらが結合する炭素は、4個以下のRArの独立した存在で適宜置換される6員アリール環、あるいは少なくとも1のO、N、又はSを含む5−6員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し、前記ヘテロシクリル又はヘテロアリール環は3個以下のRArの独立した存在で適宜置換され;
A4は−OH、−B(OR、−SR、−N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)N(R)C(O)R、−N(R)N(R)C(O)N(R、−N(R)N(R)C(O)OR、−N(R)S(O)N(R、−N(R)S(O)、−C(O)OR、−C(O)N(Rであり;
A5は水素又はRArであり;
は、RとLが結合する炭素との間の共有結合であるか、又はハロゲン、C1−4脂肪族、ハロ(C1−4脂肪族)、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−NO、−CN、−C(O)OR++、−C(O)N(R++、又は−N(R++から独立して選ばれる5基以下で適宜置換される飽和又は不飽和C1−4アルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖の2以下の飽和炭素は、適宜、−C(O)−、−C(O)N(R++)−、−C(O)N(R++)N(R++)−、−C(O)O−、−N(R++)−、−N(R++)C(O)−、−N(R++)C(O)O−、−N(R++)S(O)−、−N(R++)C(O)N(R++)−、−N(R++)N(R++)−、−O−、−OC(O)−、−OC(O)N(R++)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、又は−S(O)N(R++)−で入れ替わり;
はハロゲン、NH又はC1−8脂肪族基であり、適宜、R;6−10員アリール環;3−7員炭素環式環、窒素、酸素及び硫黄から独立して選ばれる1−4ヘテロ原子を有する5−10員ヘテロアリール環;又は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれる1−4ヘテロ原子を有する3−10員ヘテロシクリル環;で置換され、前記アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリル環の各々は適宜、5以下のRArの独立した存在で置換され;
はそれぞれ独立して、−CN、−NO、R++、又は−O(C1−4脂肪族)であり;
Rはハロゲン、−R、−OR、−SR、−OC(O)(C1−8脂肪族)、適宜Rで置換されたPh、適宜Rで置換された−O(Ph)、適宜Rで置換された−CH(Ph)、適宜Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRC(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−S(O)N(R、−S(O)R、−NRS(O)N(R、−NRS(O)、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、又は−(CHNHC(O)Rであり、yは1から4であり;あるいは同一炭素原子上に共に存在する2個のRは、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(C1−8脂肪族)、=NNHS(O)(C1−8脂肪族)、又は=NRであり;
Arはそれぞれ独立して、ハロゲン、−R、−OR、−SR、−OC(O)(C1−8脂肪族)、適宜5個までの−Rで置換されたPh、適宜5個までの−Rで置換された−CH(Ph)、適宜5個までの−Rで置換された−(CH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRC(O)OR、−C(O)CHC(O)R、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−S(O)N(R、−S(O)R、−NRS(O)N(R、−NRS(O)、−C(S)N(R、−C(NH)N(R、及び−(CHNHC(O)Rから選ばれ、yは1から4であり;あるいは、2個の隣接するRAr基は一緒になって1,2−メチレンジオキシ又は1,2−エチレンジオキシであり;
++はそれぞれ独立して水素又はC1−4脂肪族であり;
はそれぞれ独立して、水素又は適宜5個までの−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、もしくはハロ(C1−4脂肪族)の独立した存在で置換されるC1−8脂肪族であり;あるいは、同一の窒素上の2個のRは当該窒素と共に、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれるヘテロ原子を1−3個有する5−8員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
はそれぞれ独立に、水素、適宜置換されたC1−6脂肪族、非置換5−6員ヘテロアリール又はヘテロシクリル環、−Ph、又は−O(Ph)であり、ここで前記適宜置換されたRの脂肪族のそれぞれの置換基は、独立して、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、又はハロ(C1−4脂肪族)であり;あるいは、同一の窒素上の2個のRは当該窒素と共に、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれるヘテロ原子を1−3個有する5−8員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
ただし、Lが−S−CH−ピリジルであるときに、Lは−S−CH−ピリジルではない。
【0039】
一態様において、化学式Iの化合物は、次式を有するトリアゾロチアジアゾールである。
【0040】
【化22】

別の態様において、式Iの化合物は、次式を有するトリアゾロピリダジンである。
【0041】
【化23】

一実施形態において、Rは、水素である。
【0042】
更に他の態様においては、化学式Iの化合物は、次式:
【0043】
【化24】

を有するトリアゾロチアジアジンである。
【0044】
一実施形態において、R++は水素である。
【0045】
別の実施形態において、式I、I−a、I−b、又はI−cの任意の化合物に対し、Lは:適宜1−4個のRLAで置換されたC1−2アルキレンから選ばれ、前記アルキレンの一方又は両方の炭素は適宜−O−、−S−、−S(O)−又は−S(O)−で入れ替わり;RLAのそれぞれは独立して−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−SR++、及びC1−4脂肪族から選ばれ、これらはそれぞれ独立して、ハロゲン、−OH、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++から選ばれる3個以下の置換基により適宜置換され;あるいは、同一炭素原子上に共に存在する2個のRLAは、=O、=S、=NN(R++、=NNHC(O)(R++)、=NNHC(O)OR++、=NNHS(O)(R++)、又は=N(R++)を形成し;あるいは、同一炭素原子上に共に存在する2個のRLAはC3−5シクロアルキル、エチレンジオキソ、又はエチレンジチオを形成する。例えば、次の結合基を含んでなる。
【0046】
【化25】

一実施形態において、式I、I−a、I−b、又はI−cの任意の化合物においてRは次式
【0047】
【化26】

から選択される。
【0048】
別の実施形態において、式I、I−a、I−b、又はI−cの任意の化合物においてRは次式
【0049】
【化27】

から選択される。
【0050】
これらのRが二環式系を含んでなる化学式I、I−a、I−b、I−cの化合物においては、RA3、RA4及びこれらが結合する炭素は、適宜、次式
【0051】
【化28】

から選択されるヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し:
式中、Rによって定義される環の4位は図示の通りであり、
A7のそれぞれは、独立して、水素、−R、−R(−N(R))、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R、−S(O)、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、又は−(CHNHC(O)Rであり;
A8のそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CO++、−C(O)R++、−C(O)N(R++、−C(S)N(R++、C(NH)N(R++、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−OC(O)N(R++、−SR++、−(NO)、N(R++、−N(R++)C(O)(R++)、−N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)CO++、N(R++)N(R++)C(O)R++、−N(R++)N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)N(R++)CO++、−N(R++)SON(R++、−N(R++)SO++、−S(O)++、−SON(R++、−S(O)R++、あるいはそれぞれ独立して、ハロゲン、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++、又は−N(R++)C(O)(R++)から選ばれる置換基で置換されるC1−4脂肪族基であり;
A9のそれぞれは、独立して、水素、F、Cl、C1−4脂肪族、又はハロ(C1−4脂肪族)である。
【0052】
一実施例において、Rは、
【0053】
【化29】

であり、RA4はOHである。
【0054】
他の実施例において、Rは次式
【0055】
【化30】

から選択される。
【0056】
化学式I、I−a、I−b、又はI−cの任意の化合物の別の実施形態において、Lは共有結合形成、−CH−、又は−N(R)−である。
【0057】
化学式I、I−a、I−b、又はI−cの任意の化合物の更に別の実施形態において、Rは次式
【0058】
【化31】

を含む群から選択され、
式中、RB1及びRB2のそれぞれは、独立して、水素又はRArである。
【0059】
基の例としては、以下が挙げられる。
【0060】
【化32】

別の態様において、本発明は、表1、2、又は3に列挙する化合物群から選ばれる化合物を特徴とする。
【0061】
表1.化学式Iaの化合物
【0062】
【表1−1】

【0063】
【表1−2】

【0064】
【表1−3】

【0065】
【表1−4】

【0066】
【表1−5】

【0067】
【表1−6】

【0068】
【表1−7】

【0069】
【表1−8】

【0070】
【表1−9】

【0071】
【表1−10】

【0072】
【表1−11】

【0073】
【表1−12】

【0074】
【表1−13】

表2.化学式I−bの化合物
【0075】
【表2−1】

【0076】
【表2−2】

【0077】
【表2−3】

【0078】
【表2−4】

【0079】
【表2−5】

【0080】
【表2−6】

【0081】
【表2−7】

【0082】
【表2−8】

【0083】
【表2−9】

【0084】
【表2−10】

【0085】
【表2−11】

【0086】
【表2−12】

【0087】
【表2−13】

【0088】
【表2−14】

【0089】
【表2−15】

【0090】
【表2−16】

【0091】
【表2−17】

【0092】
【表2−18】

【0093】
【表2−19】

【0094】
【表2−20】

【0095】
【表2−21】

【0096】
【表2−22】

【0097】
【表2−23】

【0098】
【表2−24】

【0099】
【表2−25】

表3.化学式I又はI−cの化合物
【0100】
【表3−1】

【0101】
【表3−2】

【0102】
【表3−3】

(本発明の化合物の組成物、処方物、及び投与)
別の態様によれば、本発明は、化学式I、I−a、I−b又はI−cの化合物又は表1−3に列挙の化合物、並びに薬学的に許容できるキャリア、佐剤又はビヒクルを含んでなる医薬品組成物を特徴とする。本発明の組成物中の化合物の量は、プロテインキナーゼ、とりわけ生体試料又は患者におけるc−Metを検出可能に阻害するために有効な量である。用語「c−Met」は、「cMet」「MET」「Met」又は当業者に公知の他の命名と同義である。好適には、本発明の組成物は、こうした組成物を必要とする患者への投与のために処方される。最も好適には、本発明の組成物は、患者への経口投与のために処方される。
【0103】
用語「患者」を本願明細書に用いる場合は、動物、好適には哺乳類、最も好適にはヒトを意味する。
【0104】
本発明の化合物が治療のために遊離の形態をとりうること、又は適切にその薬学的に許容できる誘導体でありうることは明らかである。本発明によれば、薬学的に許容できる誘導体は、必要とする患者への投与時に、直接又は間接的に、本願明細書の他箇所に記載の化合物、又は代謝物又はそれらの残留物を提供しうる、薬学的に許容できるプロドラッグ、塩、エステル、エステルの塩、又は他の任意の付加物も又は誘導体を含んでなるが、これらに限らない。
【0105】
本願明細書に使用の用語「薬学的に許容できる塩」とは、正しい医学的判断の範囲内において、ヒト及びより下等な動物の組織との接触使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答等がなく、合理的な利益/危険率に相応する塩を指す。「薬学的に許容できる塩」は、受容者への投与において、直接的又は間接的のいずれかにおいて、本発明の化合物又は阻害活性の代謝物又はその残留物を提供しうる、本発明の化合物の任意の非毒性の塩又はエステルの塩を意味する。本願明細書に使用の用語「阻害活性の代謝物又はその残留物」とは、その代謝産物又は残留物がc−Metの阻害剤でもあることを意味する。
【0106】
薬学的に許容できる塩は、当業に周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、66巻、1−19ページ、1977年、に薬学的に許容できる塩を詳細に記載しており、これは参照により本願明細書に取り入れられる。本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は、無機及び有機の、適切な酸及び塩基に由来ものを含んでなる。薬学的に許容できる、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸等の無機酸によって、又は、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸等の有機酸によって形成したか、あるいはイオン交換等の当該分野で用いられる他の方法の使用によって形成した、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容できる塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンフォスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサノン酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、硫酸ラウリル、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸剤、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、ペルオキソ硫酸塩、3−フェニル・プロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を含んでなる。適切な塩基に由来する塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びN(C1−4アルキル)塩を含んでなる。本発明は、本願明細書に開示の化合物の、塩基性窒素を含む任意の基の4級化も想定する。水溶性もしくは脂溶性又は、水もしくは油脂に懸濁可能な生成物が、このような4級化により得られうる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を包んでなる。更に、薬学的に許容できる塩は、適切な場合、非毒性アンモニウム、4級アンモニウム、ならびに、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシラート、スルファート、ホスファート、ニトラート、C1−8スルホナート及びアリールスルホナートのような対イオンを用いて生成するアミン陽イオンを含んでなる。
【0107】
上述の通り、本発明の薬学的に許容できる組成物は、薬学的に許容できるキャリア、佐剤又はビヒクルを含んでなり、これらは本願明細書に用いるように、任意の及び全ての溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散剤又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存料、固形バインダ、潤滑剤等を、所望の特定服用形態に適合するように、追加して含んでなる。Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21版、2005年、D.B. Troy編集、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、並びに、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.Swarbrick及びJ.C.Boylan、1988−1999年,Marcel Dekker, New York、には薬学的に許容できる組成物の処方に用る種々の技法及びその調製のための公知の技法が開示されており、参照により本願明細書に取り入れられる。例えば、何らかの好ましくない生物学的効果を生じることにより、又は薬学的に許容できる組成物が任意の他成分と有害な方法で相互作用を生じることにより、本発明の化合物と適合しない場合を除いては、任意の従来のキャリア媒体の使用が本発明の範囲内に包含される。
【0108】
薬学的に許容できるキャリアになりうる材料の例は、限定しないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清蛋白質、ホスファート、グリシン、又はソルビン酸等の緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン等の塩又は電解物質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース及びスクロース又はソルビン酸カリウム等の糖;コーンスターチ及びポテトデンプン等のデンプン;セルロース及びカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等の誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂及び坐薬ワックス等の賦形剤;落花生油、綿実油等の油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油及び大豆油;グリコール;プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等;オレイン酸エチル及びエチルラウリン酸エステル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理的食塩水;リンゲル氏液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝液、他にラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等の非毒性の適合性潤滑剤を含んでなり、並びに、処方者の判断に従って、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香料及び芳香剤、保存料及び酸化防止剤が組成物中に存在しうる。
【0109】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、経直腸、経鼻、舌下、経膣、又はインプラントレザバ経由で投与しうる。用語「非経口」を本願明細書に用いる場合は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、クモ膜下、眼内、肝臓内、病巣内及び、頭蓋内の注射又は注入の技法を含んでなる。好適には、組成物は経口、腹腔内又は静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌注射可能形態は、水性又は油性懸濁液でもよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いる、当業に公知の技法により処方してもよい。無菌注射可能処方は、例えば1,3−ブタンジオール溶液等として、非毒性で非経口受容可能な希釈剤又は溶媒中の、滅菌注射可能溶液又は懸濁液でもよい。用いてもよい受容可能なビヒクル及び溶媒の一例は、水、リンゲル氏液及び等張塩化ナトリウム水溶液である。加えて、溶媒又は懸濁媒体として、通常は無菌の不揮発性油を用いる。
【0110】
この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含んでなる任意の非刺激性の不揮発性油を用いてよい。オリーブ油又はヒマシ油等、特に、これらのポリオキシエチル化した形態は、天然の薬学的に許容できる油であるため、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は注射可能物の調製に有用である。これらの油溶液又は油懸濁液は、乳濁液及び懸濁液を含む薬学的に許容できる投薬処方物の処方において広範に用いられるカルボキシメチルセルロース又は同様の分散剤等、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤も含んでよい。薬学的に許容できる固体、液体又は他の投薬形態の製造に広範に用いられる、Tween、Span及び他の乳化剤又は生物学的利用能増強剤も、処方目的のために使用してよい。
【0111】
カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含んでなるが、これらに限らず、任意の経口投与可能な投薬形態で、本発明の薬学的に許容できる組成物を経口投与してよい。経口使用のための錠剤の場合、広範に用いられるキャリアは、ラクトース及びコーンスターチを含んでなる。ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も通常に添加される。カプセル形態での経口投与のための有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチを含んでなる。経口使用に水性懸濁液を要する時は、有効成分を乳化剤及び懸濁剤と混合する。所望であれば、何らかの甘味料、香料又は着色料も添加してよい。
【0112】
あるいは、本発明の薬学的に許容できる組成物は、経直腸投与のための坐剤の形態で投与しうる。これは、室温で固体であるが直腸温では液体であり、これにより直腸で融解して薬物放出する、適切な刺激性のない賦形剤と当該薬剤を混合して調製しうる。このような物質は、ココアバター、密蝋及びポリエチレングリコールを包んでなる。
【0113】
本発明の薬学的に許容できる組成物は、特に治療の目標が、目、皮膚、又は下部腸管の疾病を含んでなる、局所適用により直ちにアクセス可能な領域又は器官を含む時は、局所投与してもよい。これらの各領域又は器官から、適切な局所処方物が直ちに調製される。
【0114】
下部腸管への局所適用は、腸管坐薬処方物(上記参照)又は適切な浣腸処方物により実施しうる。局所経皮パッチも用いてよい。
【0115】
局所塗布において、薬学的に許容できる組成物は、1以上のキャリアに懸濁又は溶解した有効成分を含んでなる適切な軟膏剤に処方してもよい。本発明の化合物を局所投与するためのキャリアは、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を含んでなるが、これらに限らない。あるいは、薬学的に許容できる組成物は、1以上の薬学的に許容できるキャリア中に懸濁又は溶解した有効成分を含んでなる、適切なローション又はクリームに処方しうる。適切なキャリアは、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含んでなるが、これらに限定しない。
【0116】
眼科用途において、薬学的に許容できる組成物は、例えば、等張かつpH調節された滅菌生理食塩水又は他の水溶液中の微粒懸濁液として、あるいは、好適には、等張かつpH調節された滅菌生理食塩水又は他の水溶液中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウム等の保存料と共に、又は保存料を含まずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途において、薬学的に許容できる組成物は、ワセリン等の軟膏剤に処方してもよい。本発明の薬学的に許容できる組成物は、経鼻エアロゾル又は吸引により投与してもよい。このような組成物は、当業に周知の技法により調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物活性を増すための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は従来の可溶化剤又は分散剤を用い、生理的食塩水溶液として調製してもよい。
【0117】
最も好適には、本発明の薬学的に許容できる組成物は、経口投与用に処方される。
【0118】
経口投与のための液体の服用形態は、薬学的に許容できる乳化剤、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含んでなるが、これらに限らない。活性成分に加えて、液体の服用形態には、例えば、水又は他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(とりわけ、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル等の可溶化剤及び乳化剤、並びにこれらの混合物等、当該分野において通常に用いる不活性希釈剤を含んでもよい。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味料、香料、及び芳香剤等の佐剤を含んでもよい。
【0119】
注射可能処方物、例えば無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いる公知技術に従って処方してもよい。無菌注射用調製は、非毒性の非経口的に受容できる希釈剤又は溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール溶液中の、無菌注射可能溶液、懸濁液又は乳液でもよい。用いてもよい受容可能なビヒクル及び溶媒の一例は、水、リンゲル氏液及び等張塩化ナトリウム水溶液である。加えて、溶媒又は懸濁媒体として、通常は無菌の不揮発性油を用いる。この目的のために、合成モノ又は次グリセリドを含んでなる任意の非刺激性の不揮発性油を用いてよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸を注射剤の調製に用いる。
【0120】
注射可能処方物は、例えば、バクテリア保持フィルターによる濾過、あるいは、無菌水又は他の無菌の溶媒に使用前に溶解又は分散できる滅菌固体組成物の形態への殺菌剤の導入により、滅菌しうる。
【0121】
本発明の化合物の効果を長時間化するためには、皮下又は筋肉注射からの化合物吸収の低速化が所望される場合がある。これは、溶解度の低い結晶又はアモルファス材料の液体懸濁液を用いることにより、達成してもよい。このようにすると、化合物の吸収速度は溶解速度に依存し、これは更に結晶サイズ及び結晶形に依存することになる。あるいは、油ビヒクル中に化合物を溶解又は懸濁することにより、非経口的に投与される化合物形態の吸収遅延を起こす。注射可能デポー形態は、ポリ乳酸−ポリグリコリド等の生分解性高分子中に化合物のミクロ封入マトリクスを形成して作製する。ポリマーに対する化合物の比率及び使用する特定ポリマーの性質により、化合物放出の速度を制御しうる。他の生分解性高分子の例は、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)を含んでなる。デポー注射可能処方は、体組織と互換性のあるリポソーム又はミクロエマルジョン中に化合物を封入することによっても調製する。
【0122】
経直腸又は経膣投与のための組成物は、好適には坐薬の形態であり、これは、ココアバター、密蝋及びポリエチレングリコール等の、室温で固体であるが体温では液体であり、これにより直腸又は膣腔で融解して有効成分を放出する、適切な刺激性のない賦形剤と当該薬剤を混合して調製しうる。
【0123】
経口投与のための固形服用形態は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤を含んでなる。このような固形投与形態において、有効成分は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム等の少なくとも1の不活性で薬学的に許容できる賦形剤又はキャリア、及び/又は、a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸等の充填剤又は増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアラビアゴム等の結合剤、c)グリセロール等の湿潤剤、d)寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のシリケート及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)4級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土等の吸収剤、並びに、i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑材、及びこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともできる。
【0124】
類型の固形組成物は、ラクトース又は乳糖等の賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコール及び同様のものを用いる、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中に、充填剤として使用してもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒剤の固形投与形態は、腸溶コーティング及び薬物調製の技術分野で公知の他のコーティング等のコーティング及びシェルと共に調製しうる。これらには、適宜乳白剤を含んでもよく、有効成分のみを、あるいは好適には直腸系のある部分で遅延的に、放出する組成物でもよい。使用可能な包埋組成物の例は、高分子物質及びワックスを含んでなる。類型の固形組成物は、ラクトース又は乳糖等の賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコール及び同様のものを用いる、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中に、充填剤として使用してもよい。
【0125】
有効成分は、上記ように1以上の賦形剤を有するミクロカプセル封入の形態でもありうる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒剤の固形投与形態は、腸溶コーティング及び薬物調製の技術分野で公知の他のコーティング等のコーティング及びシェルと共に調製しうる。当該固形投与形態は、活性化合物をスクロース、ラクトース又はデンプンの等の少なくとも1の不活性の希釈剤と混合してもよい。当該服用形態は、通常実施として、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロース等、製剤潤滑剤及び他の製剤補助剤等の、不活性希釈剤以外の追加の賦形剤も含んでもよい。カプセル、錠剤及び丸剤において、服用形態に緩衝剤も含んでよい。それらは、適宜乳白剤を含んでもよく、有効成分のみを、あるいは好適には直腸系のある部分で遅延的に、放出する化合物でもよい。使用可能な包埋組成物の例は、高分子物質及びワックスを含んでなる。
【0126】
本発明の化合物の局所又は経皮投与の投薬形態は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、液剤、スプレー、吸入剤又はパッチ剤を含んでなる。有効成分は、薬学的に許容できるキャリア及び任意の必要な保存料又は必要でありうる緩衝剤と、無菌条件下で混合してもよい。眼科処方、点耳薬及び点眼液は、本発明の範囲内に包含される。加えて、本発明は経皮パッチの使用も包含し、これにより化合物を身体に制御輸送する利点を更に提供する。当該投与形態は、適切な媒質中に化合物を溶解又は分配して作製しうる。当該化合物の経皮到達量を増すために、吸収促進剤も用いうる。速度制御膜により、あるいは高分子マトリクス又はゲル中に当該化合物を分散することにより、速度制御しうる。
【0127】
本発明の化合物は、好適には、投与の容易さ及び投薬量の一様性のために投薬単位で処方される。用語「投薬単位形態」を本願明細書に用いる場合は、治療する患者に対して適切な薬剤の物理的に独立した単位を意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の1日の全使用量は、正しい医学判断の範囲内で主治医が決定するものであると理解する。任意の特定の患者又は生物体にとっての明確な有効服用レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度;使用する特定化合物の活性;使用する特定組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食餌;投与時間、投与経路及び使用する特定化合物の排出率;治療期間;使用する特定化合物と組み合わせ又は同時使用する薬剤、並びに医学技術に周知の同様の要因を含んでなる種々の要因に依存する。
【0128】
キャリア剤と組み合わせて単一の服用形態を取る本発明の化合物量は、治療の主体、特定の投与形式に依存して変化する。好適には、組成物は、これらを受容する患者に、阻害剤が0.01−100mg/kg体重/日の間の投薬となるように処方すべきである。
【0129】
治療又は予防する特定の症状又は疾病に依存して、通常は当該症状の治療又は予防のために投与する付加的な治療薬も、本発明の組成物中に存在してよい。本願明細書にて使用される場合、通常は特定疾病又は症状の治療又は予防のために投与する付加的な治療薬は、「当該疾病又は症状の治療に対して適切」であることが公知のものである。
【0130】
本発明の組成物中に存在する付加的な治療薬の量は、その治療薬が単独の有効薬剤として含まれる組成物を通常に投与する量を超えない。好適には、本開示の組成物の付加的な治療薬の量は、その治療薬が単独の有効薬剤として含まれる組成物を通常に投与する量の、約50%から100%の範囲である。
【0131】
(本発明の化合物及び組成物の使用)
本発明の化合物又は組成物は、本発明の化合物又は組成物の有効量を患者に投与することにより、患者の増殖性疾病、症状又は疾患を治療するか又は症状又は疾患の重症度を低減する単一療法として用いうる。このような疾病、症状又は疾患は、癌、特に転移癌、アテローム性動脈硬化症及び肺線維症を含んでなる。
【0132】
用語「癌」及び「癌の」は、典型的には無秩序な細胞成長/増殖により特徴付けられる、哺乳類における生理学的条件をいい、又は記載する。癌の例は、悪性腫瘍、リンパ腫、芽球腫、肉腫及び白血病を包んでなるが、これらに限らない。更に特定の癌の例には、副腎皮質癌;膀胱癌;骨癌;脳癌;乳癌;腹膜癌;子宮頸癌;結腸癌;結腸直腸癌;子宮内膜癌又は子宮癌;食道癌;眼癌;胆嚢癌;胃腸の癌;神経グリア芽細胞腫;様々な形の頭頚部癌;肝癌腫;肝細胞癌;腎臓癌;喉頭癌;肝癌;例えば肺の腺癌等の肺癌、小細胞型肺癌、肺の扁平上皮癌、肺非小細胞癌等の肺癌;メラノーマ及び非メラノーマ皮膚癌;例えば、真性多血症、本態性血小板減少症、慢性的特発骨髄線維症、骨髄線維症を有する骨髄様化生、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、慢性的な好酸球性白血病、好酸球増多症候群、全身性の肥満細胞の疾病、非定型的CML又は若年型骨髄単球性白血病等の骨髄増殖性疾患;卵巣癌;膵臓癌;前立腺肥大症を含む前立腺癌;直腸癌;唾液腺癌;扁平上皮細胞癌;精巣癌;甲状腺癌;並びに、外陰部癌を含んでなる。
【0133】
本発明のc−Met阻害剤投与を含む治療方法は、更に、化学治療又は抗増殖性薬剤、あるいは抗炎症薬剤から選ばれる付加的な治療薬を患者に投与することを含んでなり(複合治療)、ここで付加的な治療薬は治療する疾病に対して適切であり、付加的な治療薬は本発明の化合物又は組成物と共に単一の投薬形態として投与されるか、又は多数服用形態の部分として当該化合物又は組成物と分離して投与される。付加的な治療薬は、本発明の化合物と同時に投与してもよく、異なる時刻に投与してもよい。後者の場合、投与は、6時間、12時間、1日、2日、3日、1週、2週、3週、1ヵ月又は2ヵ月ずらしてもよい。本発明の化合物と組み合わせてもよい化学治療剤又は他の抗増殖性剤は、限定せずに例示するが、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エクセメスタン、レトロゾール、herceptin(登録商標)(trastuzumab)、Gleevec(登録商標)(imatanib)、Taxol(登録商標)(paclitaxel)、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン、araC、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、Taxotere(登録商標)(docetaxel)、Zoladex(登録商標)(goserelin)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、Gemzar(登録商標)(gemcitabine)、エポチオリン、ナベルビン、カンプトセシン、daunonibicin、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン又はイダルビシンを含んでなる。別の態様において、付加的な化学治療剤は、G−CSF(顆粒白血球コロニー形成刺激因子)等のサイトカインでありうる。別の態様において、本発明の化合物又は薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、代謝産物、類縁体又はその誘導体は、放射線療法と組み合わせて投与してもよい。更に他の態様において、本発明の化合物又は薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、代謝産物、類縁体又はその誘導体は、限定しないが例えば、CMF(シクロホスファミド、メトトレキセート及び5−フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシン及び5−フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシン及びシクロホスファミド)、FEC(5−フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミド)、ACT又はATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド及びパクリタキセル)、又はCMFP(シクロホスファミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル及びプレドニゾン)等の標準化学療法と組み合わせて投与してもよい。
【0134】
本発明は、c−Met又は肝細胞増殖因子、あるいは両者を発現する細胞の成長を阻害する方法を特徴とし、本発明の化合物又は組成物を当該細胞と接触させ、細胞成長の阻害を引き起こすことを含んでなる。成長を阻害しうる細胞の例は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭状癌細胞、前立腺癌細胞、リンパ腫細胞、結腸癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、頸部癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉腫細胞、腎癌細胞、肝細胞癌細胞、膀胱癌細胞、胃癌細胞、頭部及び頚部扁平上皮癌細胞、メラノーマ細胞又は白血病細胞を含んでなる。
【0135】
本発明は、本発明の化合物又は組成物と生体試料を接触させることを含んでなる、生体試料のc−Metキナーゼ活性の阻害方法を提供する。用語「生体試料」を本願明細書に用いる場合は、生きた生物体の外部の試料を意味し、細胞培養液又はその抽出物;哺乳類又はその抽出物から得られた生検材料;及び血液、唾液、尿、大便、精液、涙液、又は他の体液、あるいはこれらの抽出物を含んでなるが、限定しない。生体試料のキナーゼ活性、特にc−Metキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的のために有用であり、非治療法に限られている。このような目的の例には、生体試料貯蔵及びバイオアッセイを含んでなるが、限定しない。
【0136】
本発明は、患者に本発明の化合物又は組成物を投与することを含んでなる、患者のc−Metキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、患者のc−Met媒介症状又は疾病を治療するかあるいはc−Met媒介症状又は疾病の重症度を低減する方法を含んでなる。用語「c−Met媒介疾病」又は「c−MET媒介症状」を本願明細書に用いる場合は、c−Metが役割を果たすことが公知の任意の疾病状態又は他の有害な症状を意味する。用語「c−Met媒介疾病」又は「c−Met媒介症状」は、c−Met阻害剤での治療により緩和される疾病又は症状も意味する。このような症状としては、胃の腺癌、神経グリア芽細胞腫、腎癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、脳癌、肝癌、膵臓癌及び乳癌等の癌、及びアテローム性動脈硬化症及び肺線維症等の他の増殖性疾病を含んでなるが、これらに限定しない。
【0137】
本発明の特定の実施形態において、化合物又は薬学的に許容できる組成物の「有効量」又は「有効投与量」は、上述の1以上の疾患を治療するか又は疾患の重症度を低減するために有効な量である。本発明の方法による化合物及び組成物は、疾患又は疾病の治療あるいは重症度の低減に有効な、任意の量及び任意の投与経路を用いて投与してもよい。正確な必要量は、種、年齢、患者の全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投薬様式等に依存して患者ごとに異なる。上述のように、化合物又は組成物は、1以上の他の治療薬と共に投与しうる。
【0138】
本発明の化合物又はその医薬品組成物は、プロステーセス、人工弁、代用血管、ステント及びカテーテル等の移植可能医療器具への適用に用いてもよい。例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後に血管壁が狭くなること)の克服のために用いられてきた。しかしながら、ステント又は他の移植可能器具を用いる患者には血塊形成又は血小板活性化の危険がある。これらの好ましくない作用は、器具を本発明の化合物を含んでなる薬学的に許容できる組成物でプレコートすることにより防止又は緩和しうる。
【0139】
適切なコーティング及びコーティングした移植可能器具の一般的製法は、米国特許第6099562号;第5886026号;第5304121号に記載があり、個々の内容は参照により本願明細書に取り入れられる。コーティングは、典型的には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル及びそれらの混合物等の、生体適合性のポリマー材料である。コーティングは、更に、組成物の放出特性を制御するために、フルオロシリコーン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質又はそれらの組み合わせの適切なトップコートにより被覆してもよい。本発明の化合物を塗布する移植可能器具は、本発明の他の実施形態である。化合物は、「薬剤貯蔵所」を提供し、薬剤の水溶液を投与するよりも長時間にわたって薬剤が放出されるように、ビーズ等の移植可能医療器具に適用してもよく、又はポリマー又は他の分子と共に処方してもよい。
【0140】
(本発明の化合物の調製)
以下、本願明細書に使用の用語及び略語の定義を記載する。
【0141】
ATP … アデノシン三リン酸
Boc … t−ブトキシカルボニル
DMF … ジメチルホルムアミド
DTT … ジチオトレイトール
ESMS … エレクトロスプレー質量分析
HEPES … 4−(2−ヒドロキエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC … 高速液体クロマトグラフィ
LC−MS … 液体クロマトグラフィー質量分析
Me … メチル
MeOH … メタノール
NADH … ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドヒドリド
Ph … フェニル
r.t. … 室温
tBu … 3級ブチル
Tf … トリフロロスルホニル
TFA … トリフルオロ酢酸
Ts … トルエンスルホニル
Waters20×100mm YMC−Pack Pro C18カラム上、水/アセトニトリル(0.1%TFA)の一次勾配を用い、28mL/分の流速で逆相HPLCによる精製を実施した。化合物に対する勾配の開始及び最終の組成は、それぞれ10−40%アセトニトリル及び50−90%アセトニトリルの間で変化させた。
【0142】
一般に、本発明の化合物は、本願明細書に記載、又は類似化合物の調製用に当業者公知の方法により調製しうる。本願明細書に記載の発明の、より十分な理解のために以下に実施例を示す。これらの実施例は図示の目的のみのためであり、いかなる点でも本発明の限定と解釈するためのものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0143】
(トリアゾロチアジアゾール(化学式I−aの化合物)の調製)
図1に示すように、化学式IIのカルボン酸を無希釈チオカルボノヒドラジドと反応させ、加熱(約170℃)して縮合反応させ、化学式IIIの4−アミノ−1,2,4−トリアゾール−3−チオールを生成した。化学式IIIの化合物を、化学式IVのカルボン酸とオキシ塩化リン中で還流して、化学式I−aの化合物を生成した。式中、R、L、及びRは、化学式Iの化合物において本願明細書に定義した通りである。
【0144】
化学式I−dにおいて、R及びRは本願明細書にて化学式Iの化合物で定義した通りであり、当該化合物を生成するため、化学式IIIの中間体を化学式Vのイソチアシアネートと加熱しながらDMF中で反応させた。また、Rの一部としてアリール・ボロン酸又はボロナート部分を含有する化合物の調製においては、米国特許第6939985号及び第6559310号、並びに米国特許出願公開第20040133028号に記載の方法により、当業者に公知の方法を導入しうる。
【0145】
これらの方法により調製される本発明のトリアゾロチアジアゾール化合物は、表1に列挙の化合物を含んでなる。表4に、代表的な化合物について特性を分析したデータを示す。
【0146】
(実施例1:化合物2の合成)
図2に示すように、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)酢酸(1mmol)及びチオカルボノヒドラジド(1.5mmol)を、170℃で15分加熱した。混合物を冷却し、5%MeOH/CHCl及び飽和NaHCO中に取り出した。有機層を水、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。生成した5−((ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)メチル)−4H−4−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(化合物1001)を、そのまま次の反応に用いた。続いて、化合物1001とチオフェン−2−塩化カルボニル(0.176g、1.2mmol)の混合物を過剰の塩化ホスホリル(約10mL)に懸濁させ、5時間還流した。過剰の塩化ホスホリルを減圧下で除去し、生じた残留物を砕いた氷と混合した。固形物を濾過し、水で洗浄し、真空乾燥した。逆相HPLCにより精製し、純粋な3−((ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)メチル)−6−[1,2,4]−(チオフェン−2−イル)トリアゾロ[3,4−b][1,3,4]チアジアゾール(化合物2)を得た。
【0147】
(実施例2:化合物5の合成)
図3に示すように、4−ヒドロキシフェニル酢酸(1mmol)及びチオカルボノヒドラジド(1.5mmol)を170℃に15分間加熱した。混合物を室温に冷まし、5%MeOH/CHCl及び飽和NaHCO中に取り出した。有機相を水、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。生成した4−((5−メルカプト−4H−1,2,4−トリアゾル−3−イル)メチル)フェノール(化合物1002)は、次の反応にそのまま使用した。次いで、化合物1002(50mg、0.224mmol)のDMF溶液(2.5mL)に、1−(イソチアシアナトメチル)ベンゼン(65μL、0.50mmol)を加えた。110℃、常圧で終夜撹拌して反応させた時点で、LCMS分析では出発物質の消失及び所望のチアジアゾールの存在が確認された。反応混合物を濃縮すると暗色の油となり、逆相HPLCで精製して化合物5の白色固体(30mg、収率40%)を得た。
【0148】
(トリアゾロピリダジン(式I−b、I−e及びI−fの化合物)の調製)
図4に示すように、同一であっても異種であってもよい脱離基Z及びZ’(例えばハロゲン、ホスホン酸エステル、トシル化又はトリフレート)を含んでなる化学式VIの化合物を、例えばイソプロパノール等の適切な溶媒中、超音波照射下で昇温してヒドラジンと反応させ、化学式VIIの化合物を生成した。典型的には、反応温度は60℃以上である。Rが水素でない場合、置換位置は脱離基の脱離のしやすさ及び/又はRの立体的なかさ高さに支配されうる。化学式IIIの化合物を、化学式VIIIのイミダートエステルと反応させて化学式IXの化合物を生成し、ここで、R及びRはそれぞれ化学式Iの化合物について記載の通りであり、Lは適宜C1−2アルキレンで置換される。典型的には、この反応は、例えば還流メタノール又はエタノール等の、高温の極性溶媒中で実施する。1つの変形としては、加熱無希釈にて反応を実施し、カルボン酸又はエステルをイミダートエステルで置換しうる。次いで、化学式IXの化合物を、触媒を用いるクロスカップリング反応にて化学式Xの化合物と反応させ、化学式I−bの化合物を生成した。化学式I−eの化合物は、Rが水素である化学式I−bの化合物である。クロスカップリング反応に用いる触媒は、例えば、パラジウム触媒/配位子系でありうる(例えば、Pd(PPh、Pd(PtBu、Pd[P(Me)(tBu)]、PdCl(PPh、PdCl(dppf)、Pd(dba)BINAP、又はPd(dba)P(o−tol)(Fu及びLittke、Angew.Chem.Int.Ed.、41巻、4176−4211ページ、2002年;Nicolaouら、Angew.Chem.Int.Ed.、44巻、4442−4489ページ、2005年;又は、Hassenら、Chemical Reviews、102巻、5号、1359−1469ページ、2002年、を参照))。この反応は、通常は塩基存在下で実施する。化学式Xの化合物のM基は、例えば、−B(Oアルキル)又は−B(OH)(Suzuki反応)、−Mg−ハロゲン(Kumada反応)、−Zn−ハロゲン(Negishi反応)、−Sn(アルキル)(Stille反応)、−Si(アルキル)(Hiyama反応)、−Cu−ハロゲン、−ZrCpCl、又は、−AlMeでありうる。R又はR−L−Mの一部としてアリールボロン酸又はボロナート部分を含んでなる化合物の調製においては、米国特許第6939985号及び第6559310号、並びに米国特許出願公開第20040133028号に記載の、当業者に公知の方法を用いて、これらの基を導入しうる。所望であれば、クロスカップリング反応を最初に実施し、その後にヒドラジンと反応させ、ピリミジン環の官能性付与の順番を変えてもよい。
【0149】
触媒を用いるクロスカップリング反応を介するトリアゾロピリダジンのコア構造へのL基付加の代替法としては、いったん化学式IXの化合物を得て、Z基を例えばアミン等の求核部分と反応させ、化学式I−fの化合物を生成しうる。
【0150】
これらの方法により調製する本発明のトリアゾロピリダジン化合物は、表2に列挙の化合物を含んでなる。表4に、代表的な化合物の分析特性データを示す。
【0151】
(実施例3:化合物175の合成)
図5に示すように、40g(0.27mol)3,6−ジクロロピリダジン及び80%ヒドラジン水和物40mLのエタノール80mL中混合物を、1時間還流した。反応混合物を蒸発乾燥し、残留物をベンゼンで再結晶化して、1−(6−クロロピリダジン−3−イル)ヒドラジン(化合物1003)39gを得た。(Takahayashi、J.Pharm.Soc.Japan、75巻、778−781ページ、1955年を参照)。
【0152】
別途、2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル(5.00g、37.58mmol)のエタノール(2.16mL、37.58mmol)溶液を、0℃で約15分間、塩化水素ガスでバブリングした。混合物を終夜0℃で保存した。反応混合物を室温に暖めて等容積のエーテルで処理した後、沈殿を濾過しエーテルと共に粉砕してイミダートエステル(化合物1004、7g、32.5mmol、収率87%)を得た。
【0153】
化合物1003(0.200g、1.4mmol)及び化合物1004(0.636g、2.78mmol)の溶液を、HPLC分析により反応終了を判定するまでエタノール中で還流した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで希釈した。有機相を、水、ブラインで洗浄して真空濃縮した。分取HPLCで精製し、4−((6−クロロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)メチル)フェノール(化合物1005、0.147g、0.565mmol、収率40.4%)を得た。
【0154】
化合物1005(0.050g、0.19mmol)、2−チオフェンボロン酸(0.029g、0.23mmol)、及びPdCldppf(0.005g)のDMF:飽和NaHCO(1:1)中の混合物を窒素フラッシュし、700秒間、130℃で超音波照射した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機相を水洗して真空濃縮した。分取HPLCで精製し、4−((6−(チオフェン−2−イル)−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)メチル)フェノール(化合物175、0.0109g、0.035mmol、収率18.6%)を得た。
【0155】
(実施例4:化合物190の合成)
図6に示すように、化合物1005(35mg、0.13mmol)を1,4−ジアゼパン−5−オン(100mg、0.88mmol)と共にNMP(1mL)に溶解し、混合物を超音波反応器中で200℃、15分間加熱した。反応混合物は分取逆相HPLCで精製し、化合物190(34mg、0.1mmol、収率77%)を得た。
【0156】
(実施例5:化合物206の合成)
図7に示すように、3−クロロ−6−フェニルピリダジン(化合物1006、1g、5.3mmol)及びヒドラジン一水和物(0.51mL、10.53mmol)のイソプロパノール中混合物を、180℃、30分間、超音波照射した。反応物をエーテルで処理し、生成した沈殿を濾過し、エーテルで洗浄して、1−(6−フェニルピリダジン−3−イル)ヒドラジンを得た。これをエーテル中2M塩酸で処理し、対応する塩酸塩(化合物107)を定量的収量で得ることができる。化合物1007(0.050g、0.22mmol)及び2−(4−メトキシフェニル)酢酸(0.044g、0.22mmol)を無希釈で10分間、100℃に加熱した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を水及びブラインで洗浄した。分取逆相HPLCにより精製し、3−(3,4−ジメトキシベンジル)−6−フェニル−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(化合物206、0.0073g、0.021mmol、収率10%)を得た。
【0157】
(トリアゾロチアジアジン(化学式I−c及びI−g)の調製)
図8に示すように、化学式IIのカルボン酸を、常圧、加熱(約170℃)濃縮条件下にて化学量論量のチオカルボノヒドラジドと無希釈で反応させ、式IIIの4−アミノ−1,2,4−トリアゾール−3−チオールを生成した。式中、R及びLは、化学式Iの化合物に対して本願明細書に定義した通りである。化学式IIIの化合物を、塩基性条件下で化学式XIIの化合物と反応させた。式中のLGはクロロ、ブロモ、ヨード、トシル又はトリフル等の脱離基であり、化学式I−cの化合物を生成した。式中、R、L、R、L及びR++は、化学式Iの化合物に対して本願明細書に定義した通りである。化学式I−gの化合物は、各R++が水素である化学式I−cの化合物である。この反応のための適切な塩基は、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ルチジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン等のヒンダードアミン塩基を含んでなる。必要であれば、反応混合物を加熱し、反応を加速終了する。必要ならば、置換基L、R、L又はRにある官能基のいずれかを、当業者に公知の方法により保護基で適切に保護してもよい。
【0158】
この方法により調製される本発明のトリアゾロチアジアジン化合物は、表3に列挙の化合物を含んでなる。表4に、代表的な化合物について特性を分析したデータを示す。
【0159】
(実施例6:化合物541の合成)
図9に示すように、化合物1002は上述の実施例2のように調製しうる。テトラヒドロフラン(2.5mL)中の化合物1002(50mg、0.224mmol)にトリエチルアミン(69μL、0.50mmol)、続いて2−クロロ−1−(チオフェン−3−イル)エタノン(80mg、0.50mmol)を加えた。反応混合物を65℃で終夜撹拌した時点で、LCMS分析では出発物質の消失及び所望生成物の存在が確認された。反応混合物を真空濃縮すると暗色の油となり、逆相HPLCで精製して化合物541の白色固体(40mg、収率75.%)を得た。
【0160】
(実施例7:c−Met阻害についてのKの決定)
標準結合酵素系(Foxら、Protein Sci.、7巻、2249ページ、1998年)を用い、本発明の化合物をc−Metキナーゼ活性の阻害能についてスクリーニングした。反応は、100mM HEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTT及び1.5%DMSOを含んでなる溶液中で実施した。アッセイにおける基質最終濃度は、200μM ATP(Sigma Chemicals、St Louis、米国ミズリー州)及び10μM polyGluTyr(Sigma Chemicals、St Louis)であった。反応は、30℃及び80nM c−Metにて実施した。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルベート、300μM NADH、30μg/mLピルベートキナーゼ及び10μg/mLラクテートデヒドロゲナーゼであった。
【0161】
ATP及び本発明の試験化合物を除いて、上に挙げた試薬全てを含むアッセイストック緩衝溶液を調製した。本発明の試験化合物5μLを0.006μM〜12.5μMの範囲の最終濃度で含むアッセイストック緩衝溶液(175μL)を、96ウェルプレート中、30℃で10分間インキュベートした。通常、本発明の試験化合物の連続希釈物(10mM化合物ストックから)を、DMSOを用いて娘プレートに調製することによって、12点滴定を実施した。反応は、ATP20μLを添加して開始した(最終濃度200μM)。Molecular Devices Spectramaxプレートリーダ(Sunnyvale、米国カリフォルニア州)を使用し、30℃、10分間にわたり反応速度を得た。速度データから阻害剤濃度の関数としてKi値を決定した。表4に、選択したKi値を範囲として示す。表中、「A」はKi値が0.10μM未満、「B」はKi値が0.10μMから2.0μM、並びに「C」はKi値が2.0μMを超えることを表す。
【0162】
表4.化学式Iの化合物の物理的及び生物学的データ
【0163】
【表4−1】

【0164】
【表4−2】

【0165】
【表4−3】

【0166】
【表4−4】

【0167】
【表4−5】

【0168】
【表4−6】

【0169】
【表4−7】

【0170】
【表4−8】

【0171】
【表4−9】

【0172】
【表4−10】

【0173】
【表4−11】

【0174】
【表4−12】

【0175】
【表4−13】

【0176】
【表4−14】

【0177】
【表4−15】

【0178】
【表4−16】

【0179】
【表4−17】

【0180】
【表4−18】

【0181】
【表4−19】

【0182】
【表4−20】

【0183】
【表4−21】

【0184】
【表4−22】

【0185】
【表4−23】

【0186】
【表4−24】

【0187】
【表4−25】

【0188】
【表4−26】

【0189】
【表4−27】

【0190】
【表4−28】

【0191】
【表4−29】

【0192】
【表4−30】

【0193】
【表4−31】

【0194】
【表4−32】

【0195】
【表4−33】

【0196】
【表4−34】

【0197】
【表4−35】

【0198】
【表4−36】

【0199】
【表4−37】

本願明細書に引用の全ての出版物及び特許は、個々の出版物又は特許が具体的に独立して参照により取り入れられるかのように、参照により本願明細書に取り入れられる。前述の本発明においては、理解を明瞭化するための図示及び実施例を用いて若干の詳細を記載したが、当業に通常の技能を有する者であれば、本発明の教示の下で、特許請求の範囲又は概念を外れることなく、本発明の範囲から何らかの変化及び変更が可能であることは、直ちに明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明のトリアゾロチアジアゾール(化学式I−a及びI−dの化合物)の一般的調製手順の図である。
【図2】化合物2の合成を示す図である。
【図3】化合物5の合成を示す図である。
【図4】本発明のトリアゾロピリダジン(化学式I−b、I−f及びI−bの化合物)の一般的調製手順の図である。化学式I−eの化合物は、Rを水素とする化学式I−bの化合物である。
【図5】化合物175の合成を示す図である。
【図6】化合物190の合成を示す図である。
【図7】化合物206の合成を示す図である。
【図8】本発明のトリアゾロチアジアジン(化学式I−c及びI−gの化合物)の一般的調製手順の図である。化学式I−gの化合物は、R++を水素とする化学式I−cの化合物である。
【図9】化合物541の合成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物、又はその薬学的に許容できる塩又はプロドラッグ:
【化1】

式中、WはS−、−C(R)=C(R)−、又は−C(R++S−であり;
は、適宜1−4個のRLAで置換されるC1−2アルキレンであって、前記アルキレンの1又は両方の炭素は適宜−O−、−N(R++)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−に入れ替えられ;RLAは各々、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−SR++、又はC1−4脂肪族から独立して選ばれ、これらは、ハロゲン、−OH、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++から独立して選ばれる3以下の置換基で各々適宜置換され;又は同一の炭素原子上に共に存在する2つのRLAは=O、=S、=NN(R++、=NNHC(O)(R++)、=NNHC(O)OR++、=NNHS(O)(R++)、又は=N(R++)であり;又は同一の炭素原子上に共に存在する2つのRLAはC3−5シクロアルキル、エチレンジオキソ、又はエチレンジチオを形成し;
は次式から選ばれ
【化2】

式中、RA2及びRA6のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、−CN、−C(O)OR++、−C(O)R++、−C(O)N(R++、−C(S)N(R++、−C(NH)N(R++、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−OC(O)N(R++、−SR++、−NO、−N(R++、−N(R++)C(O)(R++)、−N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)C(O)OR++、−N(R++)N(R++)C(O)R++、−N(R++)N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)N(R++)C(O)OR++、−N(R++)S(O)N(R++、−N(R++)S(O)++、−S(O)++、−S(O)N(R++、−S(O)R++から選ばれ、C1−4脂肪族は適宜、ハロゲン、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++、又は−N(R++)C(O)(R++)から独立して選ばれる置換基で置換され;
A3はRArであり;又はRA3、RA4及びそれらが結合する炭素は、4個以下のRArの独立した存在で適宜置換される6員アリール、あるいは少なくとも1のO、N、又はSを含む5−6員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し、前記ヘテロシクリル又はヘテロアリール環は3個以下のRArの独立した存在で適宜置換され;
A4は−OH、−B(OR、−SR、−N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)N(R)C(O)R、−N(R)N(R)C(O)N(R、−N(R)N(R)C(O)OR、−N(R)S(O)N(R、−N(R)S(O)、−C(O)OR、−C(O)N(Rであり;
A5は水素又はRArであり;
は、RとLBが結合する炭素との間の共有結合であるか、又はハロゲン、C1−4脂肪族、ハロ(C1−4脂肪族)、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−NO、−CN、−C(O)OR++、−C(O)N(R++、又は−N(R++、から独立して選ばれる5基以下で適宜置換される飽和又は不飽和C1−4アルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖の2以下の飽和炭素は、適宜、−C(O)−、−C(O)N(R++)−、−C(O)N(R++)N(R++)−、−C(O)O−、−N(R++)−、−N(R++)C(O)−、−N(R++)C(O)O−、−N(R++)S(O)−、−N(R++)C(O)N(R++)−、−N(R++)N(R++)−、−O−、−OC(O)−、−OC(O)N(R++)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、又は−S(O)N(R++)−で入れ替わり;
はハロゲン、NH又はC1−8脂肪族基であり、適宜、R;6−10員アリール環;3−7員炭素環式環、窒素、酸素及び硫黄から独立して選ばれる1−4ヘテロ原子を有する5−10員ヘテロアリール環;又は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれる1−4ヘテロ原子を有する3−10員ヘテロシクリル環;で置換され、前記アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリル環は適宜5以下のRArの独立した存在で置換され;
はそれぞれ独立して水素又はRArであり;
Rはハロゲン、−R、−OR、−SR、−OC(O)(C1−8脂肪族)、適宜Rで置換されたPh、適宜Rで置換された−O(Ph)、適宜Rで置換された−CH(Ph)、適宜Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRC(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−S(O)N(R、−S(O)R、−NRS(O)N(R、−NRS(O)、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、又は−(CHNHC(O)Rであり、yは1から4であり;あるいは同一炭素原子上に共に存在する2個のRは、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(C1−8脂肪族)、=NNHS(O)(C1−8脂肪族)、又は=NRであり;
Arはそれぞれ独立して、ハロゲン、−R、−OR、−SR、−OC(O)(C1−8脂肪族)、適宜5個までの−Rで置換されたPh、適宜5個までの−Rで置換された−CH(Ph)、適宜5個までの−Rで置換された−(CH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRC(O)OR、−C(O)CHC(O)R、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−S(O)N(R、−S(O)R、−NRS(O)N(R、−NRS(O)、−C(S)N(R、−C(NH)N(R、及び−(CHNHC(O)Rから選ばれ、yは1から4であり;あるいは、2個の隣接するRAr基は一緒になって1,2−メチレンジオキシ又は1,2−エチレンジオキシであり;
++はそれぞれ独立して水素又はC1−4脂肪族であり;
はそれぞれ独立して、水素、又は適宜5個までの−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、もしくはハロ(C1−4脂肪族)の独立した存在で置換されるC1−8脂肪族であり;あるいは、同一の窒素上の2個のRは当該窒素と共に、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれるヘテロ原子を1−3個有する5−8員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
はそれぞれ独立に、水素、適宜置換されたC1−6脂肪族、非置換5−6員ヘテロアリール又はヘテロシクリル環、−Ph、又は−O(Ph)であり、ここで前記適宜置換されたRの脂肪族のそれぞれの置換基は、独立して、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族)、−C(O)N(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、又はハロ(C1−4脂肪族)であり;あるいは、同一の窒素上の2個のRは当該窒素と共に、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれるヘテロ原子を1−3個有する5−8員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
ただし、Lが−S−CH−ピリジルであるときは、Lは−S−CH−ピリジルではない、化合物。
【請求項2】
次式
【化3】

を有する、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩又はプロドラッグ。
【請求項3】
次式
【化4】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は水素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
次式
【化5】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
++は水素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、
はC1−2アルキレンであり、適宜1−4個のRLAで置換され、前記アルキレンの一方又は両方の炭素は適宜−O−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−で入れ替わり;RLAのそれぞれは、独立して−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−SR++、又はC1−4脂肪族から選ばれ、このそれぞれは適宜、ハロゲン、−OH、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++から独立して選ばれる3個以下の置換基により置換され;あるいは、同一の炭素原子上に共に存在する2個のRLAは、=O、=S、=NN(R++、=NNHC(O)(R++)、=NNHC(O)OR++、=NNHS(O)(R++)、又は=N(R++)であり;あるいは、同一の炭素原子上に共に存在する2個のRLAは、C3−5シクロアルキル、エチレンジオキソ、又はエチレンジチオを形成し;
A3は、RArであり;あるいは、RA3、RA4及びこれらが結合する炭素は、少なくとも1のO、N、又はSを含む5−6員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し、前記ヘテロシクリル又はヘテロアリール環は3個以下のRArの独立した存在により適宜置換され;
はC1−8脂肪族基であり、適宜R;6−10員アリール環;窒素、酸素、及び硫黄から独立して選ばれる1−4個のヘテロ原子を有する5−10員ヘテロアリール環;又は窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1−4個のヘテロ原子を有する3−10員ヘテロシクリル環で置換され;前記アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクリル環はそれぞれ、適宜5個以下のRArの独立した存在で置換され;
は次式
【化6】

から選ばれる、化合物。
【請求項8】
は、適宜1−4個のRLAで置換されるC1−2アルキレンから選ばれ、ここで前記アルキレンの一方又は両方の炭素は、適宜−O−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−で入れ替わり;並びに、RLAのそれぞれは、独立して−OR++、O(ハロ(C1−4脂肪族))、−SR++、及びC1−4脂肪族から選ばれ;あるいは、同一炭素原子上に共に存在する2個のRLAは、=O、=S、=NN(R++、=NNHC(O)(R++)、=NNHC(O)OR++、=NNHS(O)(R++)、又は=N(R++)であり;あるいは、同一炭素原子上に共に存在する2個のRLAは、C3−5シクロアルキル、エチレンジオキソ又はエチレンジチオを形成する、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
は次式
【化7】

から選ばれる、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
は次式
【化8】

であり、
A4はOHである、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
A3、RA4及びこれらが結合する炭素は次式
【化9】

から選ばれるヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し:
式中、RA7のそれぞれは、独立して、水素、−R、−R(−N(R))、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R、−S(O)、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、又は−(CHNHC(O)Rであり;
A8のそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CO++、−C(O)R++、−C(O)N(R++、−C(S)N(R++、C(NH)N(R++、−OR++、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、−OC(O)N(R++、−SR++、−(NO)、N(R++、−N(R++)C(O)(R++)、−N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)CO++、N(R++)N(R++)C(O)R++、−N(R++)N(R++)C(O)N(R++、−N(R++)N(R++)CO++、−N(R++)SON(R++、−N(R++)SO++、−S(O)++、−SON(R++、−S(O)R++、あるいは独立して、ハロゲン、−OR++、−SR++、−NO、−CN、−N(R++、又は−N(R++)C(O)(R++)から選ばれる置換基で適宜置換されるC1−4脂肪族基であり;
A9のそれぞれは、独立して、水素、F、Cl、C1−4脂肪族、又はハロ(C1−4脂肪族)であり;
前記ヘテロシクリル又はヘテロアリール環は、図示の4位でRに結合する、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
は次式
【化10】

から選ばれる、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
は次式
【化11】

から選ばれる、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
は、共有結合、−CH−または−N(R)−である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
は次式
【化12】

から選ばれ、
式中、RB1及びRB2はそれぞれ独立して水素又はRArである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
は次式
【化13】

から選ばれる、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
表1に列挙の化合物群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
表2に列挙の化合物群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
表3に列挙の化合物群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から7又は請求項17から19のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容できるキャリア、佐剤又はビヒクルを含んでなる、医薬品組成物。
【請求項21】
患者における増殖性疾患の重症度を治療又は低減するための、請求項1から7又は請求項17から19のいずれか1項に記載の化合物、あるいは請求項20に記載の組成物の使用であって、前記増殖性疾患は、胃の腺癌、神経グリア芽細胞腫、腎癌、小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、前立腺癌、脳癌、肝癌、膵臓癌、乳癌又は骨髄増殖性疾患である、使用。
【請求項22】
前記骨髄増殖性疾患は、真性多血症、本態性血小板減少症、慢性的特発骨髄線維症、骨髄線維症を有する骨髄様化生、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、慢性的好酸球性白血病、好酸球増多症候群、全身性肥満細胞疾患、非定型的CML又は若年型の骨髄単球性白血病である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
患者の転移癌の重症度を治療又は低減するための、請求項1から7又は請求項17から19のいずれか1項に記載の化合物、あるいは請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項24】
患者における増殖性疾患の重症度を治療又は低減するための、請求項1から7又は請求項17から19のいずれか1項に記載の化合物、あるいは請求項20に記載の組成物の使用であって、前記増殖性疾患はアテローム性動脈硬化症又は肺線維症である、使用。
【請求項25】
生体試料中のc−Metキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記生体試料を請求項1から7又は請求項17から19のいずれか1項に記載の化合物、あるいは請求項20に記載の組成物と接触することを含んでなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−518296(P2009−518296A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543461(P2008−543461)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045847
【国際公開番号】WO2007/064797
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】