説明

c−kitおよびPDGFRキナーゼインヒビターとしての化合物および組成物

本発明は、新規化合物群、当該化合物を含む医薬組成物ならびに異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性に関連した疾患または障害、特にc−kit、PDGFRおよびPDGFRキナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防のための、当該化合物の使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2007年5月4日に出願した米国仮出願第60/916,051号の優先権の利益を主張する。この出願の全開示は、その全体においてあらゆる目的のために、参照により本明細書に引用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、新規化合物群、当該化合物を含む医薬組成物ならびに異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性に関連した疾患または障害、特にc−kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防のための、当該化合物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
プロテインキナーゼは、広範な細胞プロセスの制御および細胞機能の制御の維持に中心的な役割を有する大きなタンパク質群である。これらのキナーゼの部分的な、非限定的な例は:血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、神経増殖因子受容体、trkBおよび繊維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3、B−RAFのような受容体チロシンキナーゼ;Ablおよびその融合キナーゼであるBCR−Abl、Lck、Bmxおよびc−srcのような非受容体チロシンキナーゼ;ならびにc−RAF、sgk、MAPキナーゼ(例えばMKK4、MKK6等)およびSAPK2αおよびSAPK2βのようなセリン/スレオニンキナーゼを含む。異常なキナーゼ活性は、良性および悪性増殖性疾患ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に由来する疾患を含む多様な疾患状態において観察される。
【0004】
本発明の新規化合物は、1種以上のプロテインキナーゼの活性を阻害し、したがってキナーゼ関連疾患の処置に有用であると予期される。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
1つの局面において、本発明は、式I:
【化1】

【0006】
〔式中、
Lは−NC(O)−、−NC(O)N−および−C(O)N−から選択され;
【0007】
、R2aおよびR2bはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、−NR1011、−OXから選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;RはC3−12シクロアルキルであり;あるいはRとR2aまたはRとR2bは、RおよびR2aまたはR2bが結合している炭素原子と一体となって、フェニルを形成し;R10およびR11は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;あるいはR10とR11は、R10およびR11の両方が結合している窒素と一体となって、C3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
【0008】
、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−OX、−S(O)0−2および−NR1213から独立して選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rはそれぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルおよび−NR1213から選択され;ここでRのシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは所望により、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルキルおよび−NR1213から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてもよく;ここでR12およびR13は、水素およびC1−6アルキルから独立して選択されるか;あるいはRとRはRおよびRが結合している炭素原子と一体となって、C3−8ヘテロアリールを形成する;
【0009】
ただし、R、R、R、RまたはRの少なくとも1個がR、R、R、RおよびRが結合している式Iのフェニル環と直接結合した硫黄を有する〕
の化合物ならびにそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体およびそれらの異性体の混合物;ならびに当該化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)を提供する。
【0010】
第2の局面において、本発明は、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩と、1種以上の好適な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
第3の局面において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性、特にc−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性の阻害によって疾患の病理および/または症状が予防、阻害または改善され得る疾患を処置する方法であって、前記動物に治療上有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
第4の局面において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性、特にc−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性が疾患の病理および/または症状に関与する疾患の処置用医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0013】
第5の局面において、本発明は、式Iの化合物ならびにそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体およびそれらの異性体の混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
定義
基またはハロ置換アルキルおよびアルコキシのような他の基の構造要素としての「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の何れかであってよい。C1−4−アルコキシはメトキシ、エトキシ等を含む。ハロ置換アルキルはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等を含む。
【0015】
「アリール」は、6〜10個の環炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えば、本明細書で使用するとき、C6−10アリールはフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルを含むが、これらに限定されない。「アリーレン」は、アリール基に由来する二価基を意味する。
【0016】
「ヘテロアリール」は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜15員不飽和環系であり、ここでRは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。例えば、C1−10ヘテロアリール(「C1−10」は環系に1〜10個の炭素原子が存在することを意味する)は、本明細書において使用するとき、ピラゾリル、ピリジニル、インドリル、チアゾリル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル、フラニル、ベンゾ[b]フラニル、ピロリル、1H−インダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾール−6−イル、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−5−イル、キノリニル、1H−インドリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジニルおよび2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジニル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−7−イル等を含むが、これらに限定されない。
【0017】
「シクロアルキル」は、記載した環原子数を含む飽和または部分不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含む。
【0018】
「ヘテロシクロアルキル」は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員飽和または部分不飽和環系であり、ここでRは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。例えば、C3−8ヘテロシクロアルキルは、本発明の化合物を説明するために本明細書において使用するとき、モルホリノ、ピロリジニル、アゼパニル、ピペリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシ−8−イル等を含むが、これらに限定されない。
【0019】
「ハロゲン」(またはハロ)は、好ましくはクロロまたはフルオロを意味するが、ブロモまたはヨードであってもよい。
【0020】
「キナーゼパネル」は、Abl(ヒト)、Abl(T315I)、JAK2、JAK3、ALK、JNK1α1、ALK4、KDR、Aurora−A、Lck、Blk、MAPK1、Bmx、MAPKAP−K2、BRK、MEK1、CaMKII(ラット)、Met、CDK1/サイクリンB、p70S6K、CHK2、PAK2、CK1、PDGFRα、CK2、PDK1、c−kit、Pim−2、c−RAF、PKA(h)、CSK、PKBα、cSrc、PKCα、DYRK2、Plk3、EGFR、ROCK−I、Fes、Ron、FGFR3、Ros、Flt3、SAPK2α、Fms、SGK、Fyn、SIK、GSK3β、Syk、IGF−1R、Tie−2、IKKβ、TrKB、IR、WNK3、IRAK4、ZAP−70、ITK、AMPK(ラット)、LIMK1、Rsk2、Axl、LKB1、SAPK2β、BrSK2、Lyn(h)、SAPK3、BTK、MAPKAP−K3、SAPK4、CaMKIV、MARK1、Snk、CDK2/サイクリンA、MINK、SRPK1、CDK3/サイクリンE、MKK4(m)、TAK1、CDK5/p25、MKK6(h)、TBK1、CDK6/サイクリンD3、MLCK、TrkA、CDK7/サイクリンH/MAT1、MRCKβ、TSSK1、CHK1、MSK1、Yes、CK1d、MST2、ZIPK、c−Kit(D816V)、MuSK、DAPK2、NEK2、DDR2、NEK6、DMPK、PAK4、DRAK1、PAR−1Bα、EphA1、PDGFRβ、EphA2、Pim−1、EphA5、PKBβ、EphB2、PKCβI、EphB4、PKCδ、FGFR1、PKCη、FGFR2、PKCθ、FGFR4、PKD2、Fgr、PKG1β、Flt1、PRK2、Hck、PYK2、HIPK2、Ret、IKKα、RIPK2、IRR、ROCK−II(ヒト)、JNK2α2、Rse、JNK3、Rsk1(h)、PI3 Kγ、PI3 KδおよびPI3−Kβを含むキナーゼの一覧である。本発明の化合物は、該キナーゼパネル(野生型および/またはその変異型)についてスクリーニングされて、該パネルメンバーの少なくとも1種の活性を阻害する。
【0021】
「処置する」、「処置し」および「処置」は、疾患および/またはそれに付随する症状を緩和または軽減する方法を意味する。
【0022】
好ましい態様の説明
c−kit遺伝子は受容体チロシンキナーゼをコード化し、マスト細胞生存のための重要な増殖因子であるc−kit受容体に対するリガンドは幹細胞因子(SCF)と称される。c−kit受容体タンパク質チロシンキナーゼの活性は正常細胞において制御されており、c−kit遺伝子産物の正常な機能的活性は、正常な造血の維持、メラニン形成、配偶子形成(genetogenesis)ならびにマスト細胞の増殖および分化に必要である。SCF結合の非存在下におけるc−kitキナーゼ活性の構造的活性化を引き起こす変異は、肥満細胞症乃至悪性ヒトがんにわたる多様な疾患に関与している。
【0023】
1つの態様において、式Iの化合物に関して、Lは−NC(O)−および−C(O)N−から選択され;R、R2aおよびR2bは水素、ヒドロキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、−NR1011、−OXから独立して選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;RはC3−12シクロアルキルであり;あるいはRとRは、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;R10およびR11は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;あるいはR10とR11は、R10およびR11の両方が結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;RおよびRは水素およびハロから独立して選択され;RおよびRは水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、−S(O)0−2から独立して選択され;そしてRはハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−OXおよび−S(O)0−2から選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここでRのシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは所望により、C1−6アルキルおよびハロ置換−C1−6アルキルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてもよく;あるいはRとRはRおよびRが結合している炭素原子と一体となってC3−8ヘテロアリールを形成する。ただし、R、R、R、RまたはRの少なくとも1個はフェニル環と直接結合した硫黄を有する。
【0024】
他の態様において、Rは水素、ヒドロキシ、ピロリジニル、モルホリノ、メトキシ、ジフルオロ−メトキシ、2−フルオロ−エトキシおよびメチルから選択されるか;あるいはRとR2aは、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となって、フェニルを形成する(すなわち、マーカッシュ構造のピリジル環は、RとR2aから形成されたフェニル環と縮合して、イソキノリニル環系を形成する)。
【0025】
他の態様において、RおよびRは水素、メチル−スルホニル、メチル、2−フルオロ−エトキシ、メチル−ピペラジニル−スルホニル、プロポキシ、イソブトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2,3−ジフルオロ−2−(フルオロメチル)プロポキシ、ブトキシおよびシクロプロピル−メトキシから独立して選択され;Rは水素、ハロ、メチル−スルホニル、メチル、メトキシ、エトキシおよびモルホリノから選択されるか;あるいはRとRは、RおよびRが結合している炭素原子と一体となってチアゾリルを形成する。
【0026】
他の態様において、化合物はN−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール−6−カルボキサミド;2−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−メチル−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−メチル−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−エトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−モルホリノピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−(ピロリジン−1−イル)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)−4−モルホリノベンズアミド;N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−(2−フルオロエトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−(シクロプロピルメトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−メチルピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−(2−フルオロエトキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−プロポキシベンズアミド;3−メトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−ブトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−(シクロプロピルメトキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(イソキノリン−4−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−メトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニルベンズアミド);N−(3−(4−(5−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(4−メチルピペラジン−1−イルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−イソブトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンズアミド;および3−(2,3−ジフルオロ−2−(フルオロメチル)プロポキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミドから選択される。
【0027】
1つの態様において、本発明は、c−kitおよびPDGFRα/βキナーゼ受容体によって調節される疾患または状態を処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
本発明の化合物および組成物を用いて介在することができるc−kitおよび/またはPDGFRα/β介在性疾患または状態の例は、新生物性障害、アレルギー性障害、炎症性障害、自己免疫障害、移植片対宿主病、マラリア原虫関連疾患、マスト細胞関連疾患、メタボリック症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、薬物乱用障害、プリオン病、がん、心臓疾患、線維症、特発性動脈性高血圧(IPAH)または原発性肺高血圧(PPH)を含むが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができるマスト細胞関連疾患の例は、ざ瘡およびプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)ざ瘡、進行性骨化性線維形成異常症(FOP)、化学兵器または生物兵器(例えば炭疽菌および硫黄マスタード)への曝露によって誘導される炎症および組織破壊、嚢胞性線維症;腎疾患、炎症性筋障害、HIV、II型糖尿病、脳虚血、肥満細胞症、薬物依存および禁断症状、CNS障害、脱毛の予防および低減、細菌感染、間質性膀胱炎、炎症性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、腫瘍新血管形成、自己免疫疾患、炎症性疾患、多発性硬化症(MS)、アレルギー性障害(喘息を含む)および骨量の減少を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる新生物性障害の例は、肥満細胞症、消化管間質腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、結直腸がん、胃がん、精巣がん、グリア芽腫または星状細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができるアレルギー性障害の例は、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、じんま疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形性(multifonne)紅斑、皮膚壊死性細静脈炎、刺虫性皮膚炎症または吸血寄生虫感染症を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる炎症性障害の例は、リウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎または痛風性関節炎を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる自己免疫障害の例は、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様関節炎、多発性関節炎、局所性または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚狼瘡、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患または増殖性糸球体腎炎を含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる移植片対宿主病の例は、臓器移植片拒絶、例えば腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植または骨髄移植を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができるメタボリック症候群の例は、I型糖尿病、II型糖尿病または肥満を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができるCNS関連障害の例は、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、拒食症、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神機能低下、集中力低下、悲観的不安、激越、自己非難および性欲減退、不安障害、精神障害または統合失調症を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる鬱病状態の例は、双極性鬱病、重度またはメランコリー型鬱病、非定型鬱病、難治性鬱病または季節性鬱病を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる不安障害の例は、過呼吸および心臓不整脈に関連した不安、恐怖障害、強迫神経症、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害および一般の不安障害を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる精神障害の例は、パニック発作、例えば神経病、妄想性障害、転換性障害、恐怖症、躁病、錯乱、解離性エピソード、例えば解離性健忘症、解離性遁走および解離性自殺行動、自己無視、凶暴症または攻撃的行動、トラウマ、境界性人格および急性精神病、例えば妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症および鑑別不能型統合失調症を含む統合失調症を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる神経変性障害の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)または筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる疼痛状態の例は、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、がん疼痛、神経因性疼痛または心因性疼痛症候群を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる物質使用障害の例は、薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、禁断症候群または過量投与を含むが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができるがんの例は、黒色腫、結腸がん、消化管間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がんまたは他の固形腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の化合物または組成物を用いて処置することができる線維症の例は、C型肝炎(HCV)、肝臓線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、強皮症、肝硬変、肺線維症または骨髄線維症を含むが、これらに限定されない。
【0043】
他の態様において、本発明は、c−kitおよび/またはPDGFRα/βキナーゼ受容体によって調節される疾患または状態を処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0044】
薬理および有用性
本発明の化合物はキナーゼの活性を調節し、それ自体がキナーゼが疾患の病理および/または症状に関与する疾患または障害の処置に有用である。本明細書に記載の化合物および組成物によって阻害されるキナーゼならびに本明細書に記載の方法が有用であるキナーゼは、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、Lyn、MAPK14(p38δ)、PDGFRα、PDGFRβ、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼを含むが、これらに限定されない。
【0045】
マスト細胞(MC)は、大部分が強い炎症促進活性を有する多様なメディエーターを産生する、造血幹細胞の特定の小集団に由来する組織要素である。MCがほとんど全ての体の部位に分布しているため、活性化要素によるメディエーターの過分泌は複数の臓器不全を導き得る。したがってマスト細胞は、多様な疾患において中心的な役割を有する。本発明は、マスト細胞関連疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とするヒトにマスト細胞を除去することができる化合物またはマスト細胞脱顆粒を阻害する化合物を投与することを含む方法に関する。かかる化合物はc−kit阻害剤、特に非毒性、選択的そして強力なc−kit阻害剤から選択することができる。好ましくは、当該阻害剤は、IL−3の存在下で培養したIL−3依存性細胞の死亡を促進し得ない。
【0046】
マスト細胞関連疾患は、ざ瘡およびプロピオニバクテリウムざ瘡(ざ瘡はPropionibacterium acnesによって誘導されるものを含むあらゆる形態の慢性皮膚炎症を含む);極めて稀な、結合組織の遺伝的障害を引き起こす、進行性骨化性線維形成異常症(FOP)として知られている疾患;化学兵器または生物兵器(例えば炭疽菌、硫黄マスタード等)への曝露によって引き起こされる炎症および組織破壊の有害な効果;嚢胞性線維症(肺、消化系および生殖器系の遺伝的疾患);腎疾患、例えば急性腎炎症候群、糸球体腎炎、腎アミロイド症、腎間質性線維症(多様なネフロパシーにおける末期腎疾患を導く最終共通経路);筋炎および筋ジストロフィーを含む炎症性筋障害;HIV(例えば、HIV感染マスト細胞の除去がHIV感染および関連する疾患の処置のための新規な経路であり得る);II型糖尿病、肥満および関連する障害の処置(マスト細胞はアテローム性動脈硬化症、例えば高血糖、高コレステロール血症、高血圧、内皮機能不全、インスリン抵抗性および血管リモデリングの発生に寄与する多くのプロセスを制御する);脳虚血;肥満細胞症(異なる組織(主として皮膚および骨髄であるが、脾臓、肝臓、リンパ節および胃腸管も含む)におけるマスト細胞の異常な蓄積によって特徴付けられる極めて異種性の疾患群);薬物依存および禁断症状(特に薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、禁断症候群および過量投与);CNS障害(特に鬱病、統合失調症、不安、偏頭痛、記憶喪失、疼痛および神経変性疾患);発毛促進(脱毛の予防および低減を含む);細菌感染(特にFimH発現細菌によって引き起こされる感染);間質性膀胱炎(特に膀胱内膜の細胞間の間質での組織損傷をもたらす膀胱壁の慢性炎症);炎症性腸疾患(一般に、4種の腸疾患、すなわちクローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎および感染性大腸炎に適用される);腫瘍新血管形成;自己免疫疾患(特に多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様関節炎および多発性関節炎、強皮症、エリテマトーデス、皮膚筋炎、天疱瘡、多発性筋炎、脈管炎および移植片対宿主病);炎症性疾患、例えばリウマチ様関節炎(RA);多発性硬化症(MS);アレルギー性障害(特に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、じんま疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性細静脈炎および刺虫性皮膚炎症、気管支喘息);鼻のポリープ症;炎症性腸症候群(IBS)および炎症性腸疾患(IBD);および骨量の減少を含むが、これらに限定されない。
【0047】
PDGF(血小板由来増殖因子)は極めて一般に存在する増殖因子であり、正常な増殖と病的細胞増殖の両方において重要な役割を有し、例えば発がんおよび血管平滑筋細胞の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症において見られる。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害し、したがって神経膠腫、肉腫、前立腺腫瘍および結腸、乳房および卵巣の腫瘍のような腫瘍疾患;過好酸球増加;肺線維症、肝臓線維症および強皮症のような線維症;肺高血圧;ならびに心臓血管疾患の処置に好適であり得る。
【0048】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は増殖シグナルへの細胞応答を仲介する。Rasはヒトがんの〜15%において発がん形態に変異している。Rafファミリーはセリン/スレオニンプロテインキナーゼに属し、これは3種のメンバーA−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)を含む。薬剤標的であるRafへの注目は、Rasの下流エフェクターとしてのRafの関連性に集中している。しかし、最近のデータによると、B−Rafが活性化Rasアレルを要求しないある種の腫瘍の形成において突出した役割を有し得ることが示唆されている(Nature 417, 949 - 954 (01 Jul 2002)。特に、B−Raf変異は悪性黒色腫において高い割合で検出されている。
【0049】
黒色腫の既存の医学的処置は、特に後期黒色腫について、その有効性が限定されている。本発明の化合物はまた、b−Rafキナーゼを含む細胞プロセスを阻害し、ヒトのがん、特に黒色腫の処置の新規な治療機会を提供する。
【0050】
本発明の化合物はまた、c−Rafキナーゼを含む細胞プロセスを阻害する。c−Rafは多くのヒトのがんにおいて変異しているras発がん遺伝子によって活性化される。したがって、c−Rafのキナーゼ活性の阻害は、ras介在性腫瘍増殖を予防する方法を提供し得る[Campbell, S. L., Oncogene, 17, 1395 (1998)]。
【0051】
本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症のような非悪性増殖性障害の処置のためならびに幹細胞の保護のため、例えば5−フルオロウラシルのような化学療法剤の血液毒性効果に対処するためならびに喘息において使用することができる。本発明の化合物は、特にPDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置のために使用することができる。
【0052】
本発明の化合物は、移植、例えば同種移植の結果として生じる障害、特に組織拒絶、例えば特に閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち同種肺移植の慢性拒絶の処置において有用な効果を示す。OBを有さない患者とは対照的に、OBを有する患者はしばしば気管支肺胞洗浄液において上昇したPDGF濃度を示す。
【0053】
本発明の化合物はまた、血管平滑筋細胞移動および増殖に関連した疾患(PDGFおよびPDGF−Rもしばしば関与する)、例えば再狭窄およびアテローム性動脈硬化症において有効である。インビトロおよびインビボでの血管平滑筋細胞の増殖および移動に関するこれらの効果およびその結果は、本発明の化合物の投与によって、そしてまたインビボでの機械的外傷後の血管内皮の肥厚に対するその効果を試験することによって示すことができる。
【0054】
ニューロトロフィン受容体のtrkファミリー(trkA、trkB、trkC)は、神経組織および非神経組織の生存、増殖および分化を促進する。TrkBタンパク質は、神経内分泌系タイプの細胞、小腸および結腸、膵臓のアルファ細胞、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージならびに上皮の顆粒層において発現している(Shibayama and Koizumi, 1996)。TrkBタンパク質の発現は、ウィルムス腫瘍および神経芽腫の好ましくない進行に関連している。さらに、TkrBはがん様前立腺細胞において発現するが、正常細胞においては発現しない。trk受容体の下流シグナル伝達経路は、Shc、活性化Ras、ERK−1およびERK−2遺伝子を介したMAPK活性化カスケードならびにPLC−ガンマ変換経路を含む(Sugimoto et al., 2001)。
【0055】
キナーゼc−Srcは、多様な受容体の発がんシグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現は、悪性細胞の特徴であるが正常細胞には存在しないc−srcの構成的活性化を導く。他方、c−src発現欠損マウスは大理石骨病の表現型を示し、破骨細胞機能においてc−srcが重要な関与をしており、関連する疾病に関係している可能性があることが示されている。
【0056】
Tecファミリーキナーゼ、Bmx、非受容体タンパク質−チロシンキナーゼは哺乳類上皮がん細胞の増殖を制御する。
【0057】
繊維芽増殖因子受容体3は、骨増殖に対する負の制御効果および軟骨細胞増殖の阻害を示した。致死性異形成は繊維芽増殖因子受容体3における異なる変異によって引き起こされ、1つの変異、TDII FGFR3は転写因子Stat1を活性化する構成的チロシンキナーゼ活性を有し、細胞サイクル阻害、増殖停止および異常な骨発達の発現を導く(Su et al., Nature, 1997, 386, 288-292)。FGFR3はまた、しばしば多発性骨髄腫タイプのがんにおいて発現している。FGFR3活性の阻害剤は、リウマチ様関節炎(RA)、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年性糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症を含むが、これらに限定されないT細胞介在性炎症または自己免疫疾患の処置において有用である。
【0058】
血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ(SGK)の活性は、摂動イオンチャネル活性、特にナトリウムおよび/またはカリウムチャネルのものに関連しており、本発明の化合物は高血圧の処置に有用であり得る。
【0059】
Lin et al (1997) J. Clin. Invest. 100, 8: 2072-2078およびP. Lin (1998) PNAS 95, 8829-8834は、乳房腫瘍および黒色腫異種移植片モデルにおいて、アデノウイルス感染またはTie−2(Tek)の細胞外ドメインの注射での腫瘍増殖および血管形成の阻害ならびに肺転移の減少を示している。Tie2阻害剤は、新血管形成が不適切に生じている状況(すなわち、糖尿病性網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性による慢性新血管形成、リウマチ様関節炎、小児血管腫およびがん)において使用することができる。
【0060】
LckはT細胞シグナル伝達に関与する。Lck遺伝子を欠くマウスは、胸腺細胞を発生する能力が低い。T細胞シグナル伝達の正のアクチベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤がリウマチ様関節炎のような自己免疫疾患を処置するために使用し得ることを示唆している。
【0061】
他のMAPKに加えて、JNKはがん、トロンビン誘導性血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および心臓疾患に対する細胞応答を介在する役割を有すると考えられている。JNK経路の活性化に関連した治療標的は、慢性骨髄性白血病(CML)、リウマチ様関節炎、喘息、骨関節炎、虚血、がんおよび神経変性疾患を含む。肝臓疾患または肝臓虚血エピソードに関連したJNK活性化の重要性の結果として、本発明の化合物はまた、多様な肝臓障害の処置に有用であり得る。心臓血管疾患、例えば心筋梗塞または鬱血性心不全におけるJNKの役割はまた、JNKが多様な形態の心臓ストレスに対する異常肥大応答を介在することが示されたと報告されている。JNKカスケードはまた、IL−2プロモーターの活性化を含むT細胞活性化に関与することが示されている。したがって、JNKの阻害剤は、変化した病的免疫応答において治療的価値を有し得る。多様ながんにおけるJNK活性化の役割も確立されており、このことはがんにおけるJNK阻害剤の潜在的用途を示唆している。例えば、構成的に活性化されたJNKはHTLV−1介在性腫瘍形成に関与している[Oncogene 13:135-42 (1996)]。JNKはカポジ肉腫(KS)に関与し得る。KS増殖に関連する他のサイトカイン、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、IL−6およびTNFαの他の増殖性効果も、JNKが介在し得る。さらに、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の制御はJNKの活性に対応しており、このことは慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるJNK阻害剤の役割を示唆している[Blood 92:2450-60 (1998)]。
【0062】
ある種の異常な増殖性状態はraf発現と関連していると考えられており、したがってraf発現の阻害に応答すると考えられる。異常に高いレベルのrafタンパク質の発現はまた、形質転換および異常な細胞増殖に関与している。これらの異常な増殖性状態はまた、raf発現の阻害に応答性であると考えられている。例えば、c−rafタンパク質の発現は、全肺がん細胞系の60%が異常に高いレベルのc−raf mRNAおよびタンパク質を発現することが報告されているため、異常な細胞増殖に関与すると考えられる。異常な増殖性状態のさらなる例は、過増殖性障害、例えばがん、腫瘍、過形成、肺線維症、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管における平滑筋細胞増殖、例えば血管形成術後の狭窄または再狭窄である。rafが一部である細胞シグナル伝達経路はまた、例えばT細胞増殖(T細胞活性化および増殖)によって特徴付けられる炎症性障害、例えば組織移植片拒絶、内毒素性ショックおよび糸球体腎炎にも関連する。
【0063】
ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junによって制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路における最後から2番目の工程を意味するプロテインキナーゼのファミリーである。特に、c−junは遺伝毒性損傷によって損傷したDNAの修復に関与するタンパク質をコード化する遺伝子の転写に関与する。したがって、細胞においてSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を防止して、DNA損傷を誘導し、DNA合成を阻害し、細胞のアポトーシスを誘導し、または細胞増殖を阻害する薬剤に対して細胞を感受性にする。
【0064】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)は、転写因子、翻訳因子および他の標的分子を多様な細胞外シグナルに応答して活性化する保存的シグナル伝達経路のメンバーである。MAPKは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MKK)によるThr−X−Tyr配列を有するデュアルリン酸化モチーフでのリン酸化によって活性化される。高等真核生物において、MAPKシグナル伝達の生理的な役割は増殖、発がん、発生および分化のような細胞事象に関連している。したがって、これらの経路(特にMKK4およびMKK6)を介したシグナル伝達を制御する能力は、MAPKシグナル伝達が関与するヒトの疾患、例えば炎症性疾患、自己免疫疾患およびがんの処置および予防的治療の開発を導き得る。
【0065】
ヒトリボソームS6プロテインキナーゼのファミリーは、少なくとも8種のメンバーからなる(RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6 Kb)。リボソームタンパク質S6プロテインキナーゼは重要な多向性機能を有し、タンパク質生合成におけるmRNA翻訳の制御に深く関与している(Eur. J. Biochem 2000 November; 267(21): 6321-30、Exp Cell Res. Nov. 25, 1999; 253 (1):100-9、Mol Cell Endocrinol. May 25, 1999;151(1-2):65-77)。S6リボソームタンパク質のp70S6によるリン酸化はまた、細胞運動性(Immunol. Cell Biol. 2000 August;78(4):447-51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000;65:101-27)の制御にも関連し、したがって腫瘍転移、免疫応答および組織修復ならびに他の疾患状態に重要であり得る。
【0066】
SAPK(「jun N−末端キナーゼ」または「JNK’s」とも称される)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junによって制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路における最後から2番目の工程を意味するプロテインキナーゼのファミリーである。特に、c−junは遺伝毒性損傷によって損傷したDNAの修復に関与するタンパク質をコード化する遺伝子の転写に関与する。したがって、細胞においてSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を防止して、DNA損傷を誘導し、DNA合成を阻害し、細胞のアポトーシスを誘導し、または細胞増殖を阻害する薬剤に対して細胞を感受性にする。
【0067】
BTKは自己免疫疾患および/または炎症性疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ様関節炎、多発性脈管炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症および喘息に関与する。B細胞活性化におけるBTKの役割のため、BTKの阻害剤は、自己抗体産生のようなB細胞介在性病的活性の阻害剤として有用であり、B細胞リンパ腫および白血病の処置に有用である。
【0068】
CHK2はセリン/スレオニンプロテインキナーゼのチェックポイントキナーゼファミリーのメンバーであり、環境変異源および内因性活性酸素種によって引き起こされる損傷のようなDNA損傷の監視に用いられるメカニズムに関与する。結果として、それは腫瘍サプレッサーおよびがん治療の標的と考えられる。
【0069】
CSKはがん細胞、特に結腸がんの転移能に影響する。
【0070】
Fesは多様なサイトカインシグナル伝達経路ならびに骨髄細胞の分化に関与する非受容体プロテインチロシンキナーゼである。Fesはまた、顆粒球分化機構の重要な成分である。
【0071】
Flt3受容体チロシンキナーゼ活性は、白血病および骨髄異形成症候群に関与する。AMLの約25%において、白血病細胞が細胞表面で構成的に活性形態の自己リン酸化(p)FLT3チロシンキナーゼを発現する。p−FLT3の活性は、白血病細胞の増殖および生存利益を与える。白血病細胞がp−FLT3キナーゼ活性を発現する急性白血病を有する患者は、不良な全体の臨床結果を有する。p−FLT3キナーゼ活性の阻害は白血病細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘発させる。
【0072】
IKKαおよびIKKβ(1&2)の阻害剤は、リウマチ様関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、骨関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬、多発性硬化症、卒中、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、くも膜下出血または脳および中枢神経系における炎症性メディエーターの過剰生産に関連した他の疾患もしくは障害を含む疾患の治療剤である。
【0073】
Metは主要なヒトのがんのほとんどのタイプに関連し、発現はしばしば不良な予後および転移に関連する。Metの阻害剤は、肺がん、NSCLC(非小細胞肺がん)、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚または眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、結腸がん、乳がん、婦人科腫瘍(例えば子宮肉腫、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がんまたは外陰がん)、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん(例えば甲状腺がん、副甲状腺がんまたは副腎がん)、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性もしくは急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がんもしくは尿管がん(例えば、腎細胞がん、腎盂がん)、小児悪性腫瘍、中枢神経系の新生物(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫または下垂体腺腫)、血液腫瘍、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病等、バレット食道(前悪性症候群)新生物性皮膚疾患、乾癬、菌状息肉腫および良性前立腺肥大、糖尿病関連疾患、例えば糖尿病性網膜症、網膜虚血および網膜新血管形成、肝硬変、心臓血管病、例えばアテローム性動脈硬化症、免疫学的疾患、例えば自己免疫疾患および腎疾患のようながんを含む疾患の治療剤である。好ましくは、疾患は急性骨髄性白血病および結直腸がんのような腫瘍である。
【0074】
Nima関連キナーゼ2(Nek2)は、中心体に局在化する有糸分列の開始時に最大の活性を有する細胞サイクル制御プロテインキナーゼである。機能試験は中心体分離および紡錘体形成の制御におけるNek2に関係する。Nek2タンパク質は子宮頸部、卵巣、前立腺および特に乳房のものを含む広範なヒトの腫瘍に由来する細胞系において2〜5倍上昇する。
【0075】
p70S6K介在性疾患または状態は、増殖性障害、例えばがんおよび結節硬化症を含むが、これらに限定されない。
【0076】
上記にしたがって、本発明はさらに、かかる処置を必要とする対象における上記疾患または障害の何れかを予防または処置する方法であって、当該対象に治療上有効量の(「投与および医薬組成物」参照)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。上記何れかの使用のために、必要な投与量は投与形態、処置する具体的な状態および所望の効果に基づいて変化する。
【0077】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、治療上有効量で、当該技術分薬において既知の何れかの通常の許容される形態で、単剤または1種以上の治療剤との組合せにおいて投与される。治療上有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康、使用する化合物の能力および他の要因に依存して広範に変化し得る。一般に、全身的な1日用量約0.03〜2.5mg/kg体重で満足のいく結果が得られる。大型哺乳類、例えばヒトにおける適用1日用量は約0.5mg〜約100mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割用量または徐放形態で投与する。経口投与に好適な単位投与形態は、約1〜50mgの有効成分を含む。
【0078】
本発明の化合物は、何れかの常套の経路、特に経腸、例えば経口的に、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経腸的に、例えば注射液または懸濁液の形態で、局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、または経鼻、吸入もしくは座薬形態で、医薬組成物として投与することができる。遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物は、常套の方法で、混合、造粒またはコーティング方法によって製造することができる。例えば、経口用組成物は、有効成分とa)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた、c)結合剤、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望により、d)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩または発泡性混合物;および/またはe)吸着剤、着色剤、風味剤および甘味剤を含む錠剤またはゼラチンカプセル剤であり得る。注射用組成物は、水性等張液または懸濁液であってよく、座薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造することができる。該組成物は滅菌してよくおよび/またはアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用の塩および/またはバッファーを含んでよい。加えて、それらはまた他の治療上有用な物質を含み得る。経皮適用に好適な製剤は、有効量の本発明の化合物と担体を含む。担体は、宿主の皮膚の通過を補助するための吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含んでいてもよい。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、所望により担体と共に化合物を含むリザーバー、所望により化合物を宿主の皮膚に制御されたおよび予め決定された速度で長期間にわたって送達するための速度制御バリア、およびデバイスを皮膚に接着させる手段を含むバンデージの形態である。経皮マトリックス製剤を使用してもよい。例えば皮膚および眼への局所適用に好適な製剤は、好ましくは当該技術分野において周知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。これらは可溶化剤、安定化剤、等張性上昇剤、バッファーおよび保存剤を含んでいてもよい。
【0079】
本発明の化合物は、1種以上の治療剤との組合せにおいて治療上有効量で投与することができる(医薬組合せ剤)。例えば、他の喘息治療薬、例えばステロイドおよびロイコトリエンアンタゴニストとの相乗効果が生じ得る。
【0080】
例えば、相乗効果は他の免疫調節剤または抗炎症剤と、例えば次のものと組み合わせて使用したときに相乗効果が生じ得る:シクロスポリン、ラパマイシンまたはアスコマイシンまたはその免疫抑制アナログ、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシンまたは同等の化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、気管支拡張剤、15−デオキシスペルグアリン、免疫抑制抗体、特に白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58またはそれらのリガンド、あるいは他の免疫調節化合物、例えばCTLA41g。本発明の化合物を他の治療剤との組合せで投与するとき、共投与する化合物の用量は、当然、使用する共薬剤のタイプ、使用する具体的な薬剤、処置する状態等に依存して変化する。
【0081】
本発明はまた、a)本明細書に記載の、遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物である第1の薬剤とb)少なくとも1種の共薬剤を含む医薬組合せ剤、例えばキットを提供する。当該キットは投与のための指示書を含んでいてもよい。
【0082】
「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬剤を1人の患者に投与することを意味しており、薬剤を必ずしも同じ投与経路または同時に投与することのない処置レジメンを含むことを意図する。
【0083】
用語「医薬組合せ剤」は、本明細書において使用するとき、1種以上の有効成分の混合または組合せによって得られる製品を意味しており、有効成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤のいずれもを含む。用語「固定された組合せ剤」は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤が共に、同時に、1個の物または投与形で患者に投与されることを意味する。用語「固定されていない組合せ剤」は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤を、いずれも1人の患者に、別々の物として、同時に、同時一体的にまたは逐次的に、特に時間の限定なく、かかる投与によって患者の体内で2種の化合物の治療上有効レベルが得られるように投与することを意味する。後者はまた、カクテルセラピー、例えば3種以上の有効成分の投与に適用する。
【0084】
本発明の化合物の製造方法
本発明はまた、本発明の化合物の製造方法を含む。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基は、これらが最終生成物において反応への望ましくない参加を避けることが望まれるとき、保護する必要があり得る。標準的な技術に従って、常套の保護基を用いることができる。例えばT.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991参照。
【0085】
Lが−NHC(O)−である式Iの化合物は、次の反応スキームIの通りに進めて製造することができる:
反応スキームI
【化2】

【0086】
〔式中、R、R2a、R2b、R、R、R、RおよびRは発明の要約に記載のとおりである〕。式Iの化合物は、式2の化合物と式3の化合物を好適な溶媒(例えばDMF等)、好適なカップリング剤(例えばHATU等)および好適な塩基(例えばDIEA等)の存在下で反応させて製造することができる。該反応は、約0℃〜約60℃の温度範囲で実施し、完了に24時間まで要し得る。
【0087】
Lが−C(O)NH−である式Iの化合物は、次の反応スキームIIの通りに進めて製造することができる:
反応スキームII
【化3】

【0088】
〔式中、R、R、R、R、R、RおよびRは発明の要約に記載のとおりである〕。式Iの化合物は、式4の化合物と式5の化合物を好適な溶媒(例えばDMF等)、好適なカップリング剤(例えばHATU等)および好適な塩基(例えばDIEA等)の存在下で反応させて製造することができる。該反応は、約0℃〜約60℃の温度範囲で実施し、完了に24時間まで要し得る。
【0089】
式Iの化合物の合成の詳細な例示は、下記実施例に見出すことができる。
【0090】
本発明の化合物を製造するための付加的な方法
本発明の化合物は、遊離塩基形の化合物と薬学的に許容される無機または有機酸を反応させて、薬学的に許容される酸付加塩として製造することができる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離酸形の化合物と薬学的に許容される無機または有機塩基を反応させて製造することができる。あるいは、塩形の本発明の化合物は、塩形の出発物質または中間体を用いて製造することができる。
【0091】
遊離酸形または遊離塩基形の本発明の化合物は、対応する塩基付加塩または酸付加塩形からそれぞれ製造することができる。例えば、酸付加塩形の本発明の化合物は、好適な塩基(例えば水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム等)で処理して対応する遊離塩基に変換してもよい。塩基付加塩形の本発明の化合物は、好適な酸(例えば塩酸等)で処理して対応する遊離酸に変換してもよい。
【0092】
非酸化形の本発明の化合物は、還元剤(例えば硫黄、硫黄ジオキシド、トリフェニルホスフィン、ホウ化水素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭素化リン等)で、好適な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサン等)中、0〜80℃で処理して、本発明の化合物のN−オキシドから製造することができる。
【0093】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる(さらに詳しくは、例えばSaulnier et al., (1994)、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照されたい)。例えば、適切なプロドラッグは、本発明の化合物を好適なカルバミル化剤(例えば1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカルボネート等)と反応させて製造することができる。
【0094】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる。保護基の作製とその除去に適用される技術の詳細な説明は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0095】
本発明の化合物は、溶媒和物(例えば水和物)として、本発明の方法によって簡便に製造または形成することができる。本発明の化合物の水和物は、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を用いて、水性/有機溶媒混合物から再結晶して簡便に製造することができる。
【0096】
本化合物のラセミ混合物を光学活性分割剤と反応させ、ジアステレオ異性化合物のペアを形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として本発明の化合物を製造できる。エナンチオマーの分割は、本発明の化合物の共有結合性ジアステレオマー誘導体を使用して行ってもよいが、解離可能な複合体が好ましい(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性等)を有し、これらの差を利用して容易に分割し得る。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または溶解度の差に基づく分離/分割技術により分離し得る。光学的に純粋なエナンチオマーを、次いで、ラセミ化をもたらさないであろう任意の実際的手段により、分割剤と共に回収する。化合物の立体異性体のそのラセミ混合物からの分割に適用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0097】
要約すると、式Iの化合物は、次のものを含む方法により製造できる:
(a)反応スキームIおよびIIのもの、そして
(b)所望により本発明の化合物の薬学的に許容される塩への変換;
(c)所望により本発明の化合物の塩形態の非塩形態への変換;
(d)所望により本発明の化合物の酸化されていない形の薬学的に許容されるN−オキシドへの変換;
(e)所望により本発明の化合物のN−オキシド形態のその酸化されていない形への変換;
(f)所望により本発明の化合物の個々の異性体の異性体混合物からの分離;
(g)所望により誘導体化されていない本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体への変換;および
(h)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体の非誘導体化形態への変換。
【0098】
出発物質の製造が特に記載されていない限り、その化合物は既知であるか、または、当分野で既知の方法に準じて、または以下の実施例に開示のとおり、製造し得る。
【0099】
当業者は、上記の変換は本発明の化合物の製造の単なる代表例であって、他の既知の方法を同様に使用してよいことを認識しよう。
【実施例】
【0100】
実施例
本発明を、本発明の式Iの化合物の製造を説明する下記実施例によってさらに例示するが、限定するものではない。
中間体の製造例
【0101】
6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン 5の合成
【化4】

n−ブタノール(29mL)中の2−アミノ−4−ニトロトルエン 1(0.033mol)に硝酸(2.1g、水中65%)、次いでシアナミド水溶液(2mL、0.047mmol)を加える。得られた混合物を還流温度で25時間加熱する。0℃に冷却した後、濾過し、1:1=エタノール:ジエチルエーテル(30mL)で洗浄して、2−メチル−5−ニトロフェニルグアニジン硝酸塩 2を得る。
【0102】
イソプロパノール(15mL)中の2−メチル−5−ニトロフェニルグアニジン 2(0.0074mol)に、3(0.0074mol)および水酸化ナトリウムフレーク(0.008mol)を加える。得られた混合物を還流温度で12時間加熱する。0℃に冷却した後濾過して生成物を回収し、イソプロパノール(6mL)およびメタノール(3mL)で洗浄して、4を得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 9.31 (s, 1H), 9.24 (s, 1H), 8.78 (m, 1H), 8.70 (m, 1H), 8.61 (m, 1H), 8.47 (m, 1H), 7.88 (m, 1H), 7.55 (m, 3H), 2.39 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 278.2.
【0103】
反応物 3を次の方法で得ることができる。3−アセチルピリジン(2.47mol)とN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(240mL)の混合物を還流温度で16時間加熱する。真空下で溶媒を除去し、残渣にヘキサン(100mL)を加えると、固体が結晶化する。塩化メチレン−ヘキサンから固体を再結晶して、3−ジメチルアミノ−1−(3−ピリジル)−2−プロペン−1−オン 3を得る。
1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 9.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.66 (m, 1H), 8.20 (m, 1H), 7.87 (m, 1H), 7.37 (m, 1H), 5.68 (d, J = 16.4 Hz, 1H), 3.18 (s, 3H), 2.97 (s, 3H).
【0104】
反応器に濃塩酸(17mL)、次いで塩化第一スズ無水物(0.03mol)を加える。該混合物を10分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却する。温度が0〜5℃を保つように、化合物 4(5.6mmol)の酢酸エチル(3mL)溶液をゆっくりと加える(3〜4分間)。反応混合物をrtにして、1.5時間撹拌する。これに水(50mL)を加え、次いで50%の水酸化ナトリウム溶液(40mL)をゆっくりと加える。得られた混合物をクロロホルム(2×25mL)で抽出する。有機層を水で完全に洗浄し、蒸発させる。残渣を酢酸エチル(2mL)に溶解させ、0〜10℃に冷却し、この温度で1時間維持する。生じた沈殿を濾過して回収し、酢酸エチル(1mL)で洗浄して、1.0gの5を得る。1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 9.26 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.71 (m, 1H), 8.48 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.34 (m, 1H), 7.59 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.41 (m, 1H), 7.12 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.42 (m, 1H), 3.50 (bs, 2H), 2.24 (s, 3H).
【0105】
4−(5−ブロモピリジン−3−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン 8の合成
【化5】

3の合成に用いたプロトコルと同様に、1−(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−エタノンから1−(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−3−ジメチルアミノ−プロペノン 7を製造する。 LC/MS (m/z) (M+1)+: 386.1, 388.1.
【0106】
N−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−グアニジン硝酸塩を4の製造に用いたものと同様のプロトコルによって縮合して、[4−(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イル]−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−アミン 8を得る。1H NMR (400MHz, d-CDCl3) δ 9.33 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 9.09 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.74 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.61 (t, J = 2.0 Hz, 1H), 8.53 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.82 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.10 (s, 1H), 2.41 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 255.0, 257.0.
【0107】
6−メチル−N1−(4−(5−(ピロリジン−1−イル)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン 10の合成
【化6】

8(0.40g、1.04mmol)、ピロリジン(3.12mmol)、KPO(0.44g、2.08mmol)、CuI(38.5mg、0.10mmol)およびL−プロリンアミノ酸(48.1mg、0.21mmol)をDMSO(8mL)中で混合し、マイクロウェーブオーブン中160℃で20分間加熱して、(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−[4−(5−ピロリジン−1−イル−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン 9を製造する。冷却した混合物を水と酢酸エチル間で分配する。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出する。合併した有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮する。4mlのDMSOに残渣を溶解させ、HPLCで精製して、純粋な生成物9(25%)を得る。1H NMR (400MHz, d-CDCl3) δ 9.23 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.90 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.39 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 3.43-3.48 (m, 4H), 2.49 (s, 3H), 2.12-2.16 (m, 4H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 377.2.
【0108】
EtOH中、10%のPd/Cおよび1atmの水素の存在下、rtで9を水素化して、4−メチル−N3−[4−(5−ピロリジン−1−イル−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イル]−ベンゼン−1,3−ジアミン 10を製造する(30%)。セライトで濾過した後に溶媒を除去し、さらに精製することなく生成物を使用する。LC/MS (m/z) (M+1)+: 347.2.
【0109】
ピロリジンを他のアミン(例えばモルホリン)で置換して、9および10と類似する別の中間体を合成することができる。
【0110】
N1−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン 14の合成
【化7】

3−ブロモ−5−メトキシピリジン(3.0g、16mmol)とPd(PPhの混合物を数回脱気し、Nでパージする。トリブチル(1−エトキシビニル)スズ(7.04mL、20.8mmol)およびトルエン(15mL)を該混合物に加える。得られた反応混合物をマイクロウェーブオーブン中150℃で30分間加熱する。反応完了後、反応混合物をセライトパッドで濾過し、MeOHで洗浄し、濃縮して残渣を得る。上記残渣にHCl(1N、25mL)およびTHF(25mL)を加え、混合物を室温で2時間撹拌する。真空下で溶媒を除去し、残渣をEtOAcに溶解させる。有機層をNaCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン=1:1)でこれを精製して、11を明黄色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 8.75 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.52 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.74 (dd, J = 1.6, 3.2 Hz, 1H), 3.91 (s, 3H), 2.64 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 152.1.
【0111】
3の製造と同様の方法を用いてジエトキシ−N,N−ジメチルメタンアミンと反応させて、11から3−(ジメチルアミノ)−1−(5−メトキシピリジン−3−イル)プロプ−2−エン−1−オン 12を製造する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 8.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.37 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 1.6, 2.8 Hz, 1H), 5.86 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 2.95 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 207.1
【0112】
4の製造と同様の方法を用いて、12とN−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−グアニジン硝酸塩 2を縮合して、4−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン 13を得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 9.23 (s, 1H), 8.93 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.80 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.44 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.91 (dd, J = 2.0, 8.4 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.90 (s, 3H), 2.44 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 338.1
【0113】
10の製造と同様のプロトコルを用いて、3の水素化によってN3−[4−(5−メトキシ−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イル]−4−メチル−ベンゼン−1,3−ジアミン 14を製造する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 8.90 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.71 (s, 1H), 8.51 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.01 (dd, J = 2.0, 3.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.38 (dd, J = 2.4, 8.0 Hz, 1H), 4.87 (s, 2H), 3.95 (s, 3H), 2.12 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 308.1
【0114】
N1−(4−(5−(2−フルオロエトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン 17の合成
【化8】

化合物13(220mg、0.65mmol)をDCMに溶解させ、−78℃で一夜、BBr(3.25mmol)で処理する。混合物をDCMで希釈し、1NのNaOH水溶液で洗浄する。得られた水相を過剰の1N HClで酸性化し、DCMで抽出する。濃縮して15を得て、これをさらに精製することなく使用する。LC/MS (m/z) (M+1)+: 324.2.
【0115】
CsHCO(103.6mg、0.54mmol)および1−ブロモ−2−フルオロ−エタン(102.0mg、0.80mmol)と共に、アセトニトリル(2.0mL)中、還流温度で一夜、化合物15(87.0mg、0.27mmol)を加熱する。分取LC/MSで混合物を精製して、16を得る。LC/MS (m/z) (M+1)+: 370.1.
【0116】
EtOH(2.0mL)中でSnClO(77.2mg、0.41mmol)と、化合物16(50.0mg、0.14mmol)を還流温度で1時間加熱する。混合物をNaOH(1N、50mL)に溶解させ、DCMで抽出する。有機層を分離し、NaSOで乾燥させて、濾過し、濃縮して粗生成物を得て、これをさらに精製することなく使用する。LC/MS (m/z) (M+1)+: 340.1.
【0117】
1−ブロモ−2−フルオロ−エタンを他のアルキルハライド(例えばブロモメチルシクロプロパン)と置き換えて、16および17と類似する別の中間体を合成することができる。
【0118】
N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)−4−(5−メチルピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン 21の合成
【化9】

5−メチル−ニコチノニトリル(2.08g、17.6mmol)を無水THF(20mL)中で、MgMeBr(EtO中3M溶液、10mL、30mmol)と共に2時間、還流温度で加熱する。冷却後、NaCO水溶液をゆっくりと加えて反応をクエンチする。DCMで抽出して、粗混合物を得て、シリカゲルクロマトグラフィーでこれを精製して、1−(5−メチル−ピリジン−3−イル)−エタノン 18(0.7g、30%)を得る。LC/MS (m/z) (M+1)+: 136.1.
【0119】
3の製造と同様の方法を用いて、18とジエトキシ−N,N−ジメチルメタンアミンを反応させて、1−(5−メチル−ピリジン−3−イル)−エタノン 19を製造する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 8.87 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.49 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.02-8.04 (m, 1H), 7.75 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.85 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 3.16 (s, 3H), 2.94 (s, 3H), 2.35 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 191.2.
【0120】
n−ブタノール(15mL)中の2−メチル−5−ニトロフェニルグアニジン 2(2.0mmol)に19(2.0mmol)および水酸化ナトリウムフレーク(2.0mmol)を加える。得られた混合物をマイクロウェーブオーブン中180℃で40分間加熱する。0℃に冷却した後、濾過によって生成物を回収し、エーテル(20mL)およびメタノール(10mL)で洗浄して、20(90%)を得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 9.19 (s, 1H), 9.13 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.91 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.57 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.37 (s, 1H), 7.90 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.41 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 322.2.
【0121】
MeOH中、10% Pd/Cおよび水素バルーンの存在下、rtで20を水素化して、化合物21を製造する。セライトで濾過した後溶媒を除去し、さらに精製することなく生成物を使用する(95%)。LC/MS (m/z) (M+1)+: 292.1.
【0122】
3−ヒドロキシ−4−メタンスルホニル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミド 23の合成
【化10】

6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン 5(578mg、2.09mmol)、4−ヨード−3−ヒドロキシ−安息香酸(587mg、2.22mmol)およびHATU(960mg、2.52mmol)をrtで無水DMF(5mL)に溶解させる。ジイソプロピルエチルアミン(0.732mL、4.2mmol)を該溶液に滴下する。30分後、NaHCO飽和水溶液に該混合物をゆっくりと加える。固体を濾過し、水で洗浄し、真空下で一夜乾燥させて、生成物22を黄褐色固体として得る(630mg、60%)。LC/MS (M+1): 524.1.
【0123】
化合物22(580mg、1.11mmol)、CuI(42mg、0.272mmol)、L−プロリン(61mg、0.444mmol)、1NのNaOH(0.5mL)およびNaSOMe(267mg、2.22mmol)をDMSO(3mL)に懸濁し、マイクロウェーブオーブン中180℃で25分間加熱する。混合物を濃アンモニア水溶液で希釈し、EtOAcで洗浄する。pH=7になるまで水相に1NのHCl水溶液を加え、濾過して固体沈殿を回収して、生成物23(80%)を得る。LC/MS (M+1): 476.1.
【0124】
最終化合物の合成
タイプA
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−3(メチルスルホニル)ベンズアミド A1
【化11】

6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン 5(5mmol)、3−(メチルスルホニル)安息香酸(6mmol)およびHATU(6mmol)をrtで無水DMF(5mL)に溶解させる。ジイソプロピルエチルアミン(6mmol)を該溶液に滴下する。30分後、NaHCO飽和水溶液に該混合物をゆっくりと加える。固体を濾過し、水で洗浄し、真空下で一夜乾燥させて、生成物A1を明黄色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.5 (s, 1H), 9.33 (s, 1H), 9.04 (s, 1H), 8.75 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.55 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.29 (d, J = 8 Hz, 1H), 8.13 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.11 (s, H), 7.83 (t, J = 8 Hz, 1H), 7.66 (dd, J = 7.3, 5.3 Hz, 1H), 7.47 (m, 2H), 7.25 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.29 (s, 3H), 2.55 (s, 6H, 2Me-HOAc), 2.24 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 460.2.
【0125】
同様の方法を用い、LC/MSで精製して、化合物A2〜A5を製造する。
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド A2:1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.52 (s, 1H), 9.26 (s, 1H), 8.90 (s, 1H), 8.69 (s, 1H), 8.61 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.08-8.14 (m, 3H), 8.00-8.07 (m, 2H), 7.65 (m, 1H), 7.40 (m, 1H), 7.23 (m,1H), 3.22 (s, 3H), 2.21 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 460.2.
4−クロロ−3−メタンスルホニル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミド A3:1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.6 (s, 1H), 9.3 (s, 1H), 9.04 (s, 1H), 8.72 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 8.55 (m, 3H), 8.3 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.6 (dd, J = 7.9, 4.8 Hz, 1H), 7.48 (m, 2H), 7.24 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.44 (s, 3H), 2.24 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 494.1.
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ベンゾ[d]チアゾール−6−カルボキサミド A4:1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.20 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 9.02 (s, 1H), 8.74 (d, J = 3.2 Hz,1H), 8.58 (m, 1H), 8.53 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.62 (m, 1H), 7.45 (d, J = 5.2 Hz,1H), 7.41 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.15-7.22 (m,3H), 7.09-7.13 (m,1H), 2.22 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 439.2.
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−クロロ−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド A5:1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.65 (s, 1H), 9.29 (s, 1H), 9.03 (s, 1H), 8.72 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 8.55 (m, 2H), 8.06 (s, 1H), 8.00 (d, J = 9.2, 1H), 7.87 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.45 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.34 (s, 3H), 2.24 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 494.1.
【0126】
4−メタンスルホニル−3−メチル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミド A6
【化12】

中間体6をA1と同様に製造する。化合物6(0.1mmol)、CuI(0.075mmol)、L−プロリン(0.1mmol)、1NのNaOH(0.1mL)およびNaSOMe(0.15mmol)をDMSO(0.5mL)に懸濁し、マイクロウェーブオーブン中180℃で5分間加熱する。分取LC/MSで混合物を精製してA6を得る。1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.45 (s, 1H), 9.24 (s, 1H), 8.89 (s, 1H), 8.67 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.49 (m, 2H), 8.09 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.4, 1H), 7.90-7.93 (m, 2H), 7.56 (m, 1H), 7.39 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.32 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 2.21 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 474.2.
同様の方法を用いて、A7、A8を製造する。
【0127】
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−メチル−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド A7:1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.46 (s, 1H), 9.23 (s, 1H), 8.87 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.67 (m, 1H), 8.50 (m, 2H), 8.05 (d, J = 12.8 Hz, 1H), 7.58 (m, 2H), 7.39(m, 2H), 7.29 (m, 1H), 7.22 (m, 2H), 3.23 (s, 3H), 2.69 (s, 3H), 2.21 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 474.2.
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−エトキシ−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド A8:1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.37 (s, 1H), 9.23 (s, 1H), 8.89 (s, 1H), 8.66 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 8.48 (m, 2H), 8.37 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.25 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 8.05 (s, 1H), 7.55(m, 1H), 7.39 (m, 3H), 7.22 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.30 (m, 2H), 3.27 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 1.41 (t, J = 6.4 Hz, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 504.2.
【0128】
タイプB
4−メタンスルホニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピロリジン−1−イル−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−フェニル}−ベンズアミド B1
【化13】

A1の製造で用いたものと同様の方法で、最終化合物B1を10から製造する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.5 (s, 1H), 9.12 (s, 1H), 8.6 (s, 1H), 8.59 (s, 1H), 8.18 (m, 3H), 8.09 (m, 3H), 7.89 (s, 1H), 7.54 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.5 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.3 (m, 4H), 3.29 (s, 3H), 2.24 (s, 3H), 1.86 (m, 4H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 530.1.
【0129】
タイプC
3−メタンスルホニル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−4−モルホリン−4−イル−ベンズアミド C1:
【化14】

A3(20mg、0.04mmol)とモルホリン(0.07mL、0.8mmol)をマイクロウェーブオーブン中130℃で30分間加熱する。分取LC/MSで精製してC1を得る。LC/MS (m/z) (M+1)+: 545.3.
【0130】
タイプD
4−メタンスルホニル−N−{3−[4−(5−メトキシ−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−4−メチル−フェニル}−ベンズアミド D1:
【化15】

A1の製造と同様の方法を用いて、最終化合物D1を14から得る。1H NMR (400MHz, d4-MeOH) δ 9.29 (s, 1H), 8.82 (m, 1H), 8.7 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 8.6 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.36 (s, 1H), 8.17 (m, 2H), 8.11 (m, 2H), 7.66 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.35 (m, 2H), 4.09 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 2.35 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 490.2.
【0131】
N−(3−{4−[5−(2−フルオロ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−ピリミジン−2−イルアミノ}−4−メチル−フェニル)−4−メタンスルホニル−ベンズアミド D2:
【化16】

A1の製造と同様の方法を用いて、最終化合物D2を17から製造する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.5 (s, 1H), 9.04 (s, 1H), 8.93 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.54 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.46 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.16 (m, 3H), 8.07 (m, 3H), 7.5 (m, 2H), 7.24 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.7 (d, J = 47.8 Hz, 2H), 4.37 (d, J = 30 Hz, 2H), 3.29 (s, 3H), 2.24 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 522.2.
【0132】
タイプE
4−メタンスルホニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−メチル−ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−フェニル}−ベンズアミド E1
【化17】

A1の製造と同様の方法を用いて、最終化合物E1を21から製造する。LC/MS (m/z) (M+1)+: 474.2.
【0133】
タイプF
3−(2−フルオロ−エトキシ)−4−メタンスルホニル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミド F1:
【化18】

化合物23(0.04mmol)、CsHCO(0.1mmol)および1−ブロモ−2−フルオロ−エタン(0.04mmol)を無水アセトニトリル(0.5mL)中、マイクロウェーブオーブン中150℃で10分間加熱する。分取LC/MSで精製して、最終化合物F1を得る。1H NMR (400MHz, DMSO) δ 10.41 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 9.01 (s, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.55 (m, 2H), 8.10 (s, 1H), 7.95 (m, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.71(m, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.46 (m, 2H), 7.25 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.92 (m, 1H), 4.80 (m, 1H), 4.62 (m, 1H), 4.55 (m, 1H), 3.32 (s, 3H), 2.25 (s, 3H). LC/MS (m/z) (M+1)+: 522.2.
同様の方法を用いて、化合物F2〜F8を製造する。
【0134】
タイプG
N−(3−(4−(イソキノリン−4−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド G1:
【化19】

A1の製造と同様の方法を用いて、最終化合物G1を27から製造する。LC/MS (m/z) (M+1)+: 510.2.
【0135】
上記実施例に記載の方法(中間体および最終化合物)を反復し、適切な出発物質を用いて、下記表1に定義の式Iの化合物を得る。
表1
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0136】
アッセイ
本発明の化合物の野生型Ba/F3細胞ならびにTel c−kitキナーゼおよびTel PDGFR融合チロシンキナーゼで形質転換したBa/F3細胞の増殖の選択的阻害能を測定するためにアッセイする。さらに、本発明の化合物はMo7e細胞のSCF依存増殖を選択的に阻害する。さらに、本化合物のAbl、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、c−Kit、LCK、PDGF−R、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼ阻害能を測定するためにアッセイする。
【0137】
増殖アッセイ:BaF3ライブラリー−Bright glo 読み取りプロトコル
化合物のwt Ba/F3細胞およびTel融合チロシンキナーゼで形質転換したBa/F3細胞の増殖の阻害能を試験する。非形質転換Ba/F3細胞は、組換えIL3を含む培地中で維持する。384ウェルTCプレートに細胞を50μlの培地中5,000細胞/ウェルで播種し、0.06nM〜10μMの試験化合物を加える。次いで細胞を37℃、5%のCOで48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、製造業者の指示書に従って25μLのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を各ウェルに加え、Analyst GT - ルミネッセンスモード−50000積分時間を用いてRLUでプレートを読み取る。50%阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を用量応答曲線から決定する。
【0138】
Mo7eアッセイ
c−kitを内因的に発現するMo7e細胞を用いて、96ウェルフォーマットで本明細書に記載の化合物をSCF依存増殖の阻害について試験する。簡潔には、ヒト組換えSCFで刺激したMo7e細胞の抗増殖活性について、2倍連続希釈した試験化合物(Cmax=10μM)を評価する。37℃で48時間インキュベーションした後、PromegaのMTT比色分析アッセイを用いて細胞生存率を測定する。
【0139】
c−kit HTRFプロトコル
2倍濃度のc−kit酵素混合物(enzyme mix)、25ngのc−kit(5ng/μL)および2μMのビオチン−EEEPQYEEIPIYLELLP−NHペプチドのキナーゼバッファー(20mMのTris pH7.5、10mMのMgCl、0.01%のBSA、0.1%のBrij35、1mMのDTT、5%のグリセロール、0.05mMのNaVO)アリコート(5μL)を384プロキシプレート(Packard)の各ウェルに加える。バックグラウンドレベルを確認するため、プロキシプレートの下2列のウェルは、それぞれ5μLのc−kit酵素混合物を含み、c−kitを含まない。本発明の化合物を各ウェルに加え、プレートを室温で30分間インキュベートする。キナーゼバッファー(5μL)中2倍のATP(40μM)を各ウェルに加え、プレートを室温で3時間インキュベートする。検出混合物(50%のKF、40%のキナーゼバッファー、10%のEDTA、1:100希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB)0(10μL)を各ウェルに加え、さらにプレートを室温で1〜2時間インキュベートする。HTRFシグナルを検出器で読み取る。
【0140】
ヒトTG−HA−VSMC増殖アッセイ
10%のFBSを補ったDMEM中で、ヒトTG−HA−VSMC細胞(ATCC)を80〜90%コンフルエンスまで増殖した後、1%のFBSと30ng/mLの組換えヒトPDGF−BBを補ったDMAM中に6e4細胞/mLで再懸濁する。次いで384ウェルプレートに50μL/ウェルで細胞を等分し、37℃で20時間インキュベートし、次いで37℃で48時間、100倍の化合物0.5μLで処理する。処理後、25uLのCellTiter-Gloを各ウェルに15分間加え、次いでプレートをCLIPR(Molecular Devices)で読み取る。
【0141】
PDGFRα&β Lanceアッセイプロトコル
2倍濃度のPDGFRβペプチドとATP混合物(4μMのビオチン−βA−βA−βA−AEEEEYVFIEAKKKペプチド、アッセイバッファー(20mMのHepes、54mMのMgCl、0.01%のBSA、0.05%のTween−20、1mMのDTT、10%のグリセロール、50μMのNaVO)中20μMのATP)のアリコート(2.5μL)を384プロキシプレート(Packard)の各ウェルに加える。該プレートを遠心分離し、本発明の化合物(50nL)をピンツールディスペンサーを介して各ウェルに加える。2倍濃度の酵素混合物(アッセイバッファー中、4.5ng/μLのPDGFRα(カタログ番号PV4117)または1.5ng/μLのPDGFRβ(カタログ番号PV3591))またはPDGFRα/β酵素を含まないアッセイバッファーのみを、各ウェルに加える(2.5μL)。プレートを室温で1.5時間インキュベートする。検出混合物(5μL;50% 1MのKF、40%のキナーゼバッファー、10%のEDTA、1:100希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB))を各ウェルに加え、プロキシプレートを室温で1時間インキュベートした後、検出器でHTRFシグナルを読み取る。
【0142】
Ba/F3 FL FLT3増殖アッセイ
使用するマウス細胞系は、全長FLT3構造を過剰発現しているBa/F3マウスプロB細胞系である。ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補い、マウス組換えIL3を加えたRPMI1640/10%胎児ウシ血清(RPMI/FBS)中でこれらの細胞を維持する。Ba/F3全長FLT3細胞はIL3飢餓を16時間被り、次いで384ウェルTCプレート中、25μLの培地中5,000細胞/ウェルで播種し、試験化合物0.06nM〜10μMを加える。化合物添加後、FLT3リガンドまたは細胞傷害性コントロールとしてIL3を25μl/ウェルの培地に適切な濃度で加える。次いで、細胞を37℃、5%COで48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、製造業者の指示書に従って25μLのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を各ウェルに加え、Analyst GT - ルミネッセンスモード−50000インテグレーション時間を用いてRLUでプレートを読み取る。
【0143】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用するマウス細胞系はBCR−Abl cDNA(32D−p210)で形質転換した32D造血前駆細胞系である。ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補ったRPMI/10%胎児ウシ血清(RPMI/FCS)中でこれらの細胞を維持する。IL3源として培地を調節した15%WEHI調節培地を加えて、同様に非形質転換32D細胞を維持する。
【0144】
50μLの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液をGreiner384ウェルマイクロプレート(黒色)に密度5000細胞/ウェルで播種する。試験化合物50nL(DMSO原液中1mM)を各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。該細胞を37℃、5%COで72時間インキュベートする。各ウェルに10μLの60%Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)を加え、細胞をさらに24時間インキュベートする。Acquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて蛍光強度(励起波長530nm、放出波長580nm)を定量する。
【0145】
細胞性BCR−Abl依存増殖の阻害
96ウェルTCプレートに密度15,000細胞/ウェルで32D−p210細胞を播種する。試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは40μMである)50μLを各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。37℃、5%COで細胞を48時間インキュベートした後、15μLのMTT(Promega)を各ウェルに加え、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmの吸光度を分光光度計で測定し、50%阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を用量応答曲線から決定する。
【0146】
細胞サイクル分布に対する効果
6ウェルTCプレートに32D細胞および32D−p210細胞を5mLの培地中2.5×10細胞/ウェルで播種し、試験化合物を1または10μMで加える(STI571はコントロールとして含まれる)。次いで37℃、5%COで該細胞を24時間または48時間インキュベートする。細胞懸濁液2mLをPBSで洗浄し、70%のEtOHで1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分間処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を加え、FACScalibur(商標)システム(BD Biosciences)によるフローサイトメトリーによって蛍光強度を定量する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対するアポトーシス効果を示すが、32D親細胞のアポトーシスは誘導しない。
【0147】
細胞性BCR−Abl自己リン酸化に対する効果
c−abl特異的捕捉抗体と抗ホスホチロシン抗体を用いた捕捉ElisaによってBCR−Abl自己リン酸化を定量する。96ウェルTCプレートに32D−p210細胞を50μLの培地中2×10細胞/ウェルで播種する。試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは10μMである)50μLを各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。37℃、5%COで細胞を90分間インキュベートする。次いで、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む溶解バッファー(50mMのTris HCl、pH7.4、150mMのNaCl、5mMのEDTA、1mMのEGTAおよび1%のNP40)150μLで氷上で細胞を1時間処理する。抗abl特異的抗体で予めコーティングし、ブロックした96ウェル光学プレートに50μLの細胞溶解物を加える。該プレートを4℃で4時間インキュベートする。TBS−Tween20バッファーで洗浄した後、50μLのアルカリホスファターゼ複合抗ホスホチロシン抗体を加え、該プレートを4℃でさらに一夜インキュベートする。TBS−Tween20バッファーで洗浄した後、90μLの蛍光基質を加え、Acquest(商標)(Molecular Devices)を用いて蛍光を定量する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、用量依存的に細胞性BCR−Abl自己リン酸化を阻害する。
【0148】
変異形態のBcr ablを発現する細胞の増殖に対する効果
野生型またはSTI571に対する耐性を与えるか、もしくは感受性を低下させる変異形態のBCR−Abl(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)を発現するBa/F3細胞に対する本発明の化合物の抗増殖性効果を試験する。変異BCR−Abl発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖性効果を、(IL3を含まない培地中)10、3.3、1.1および0.37μMで上記の通り試験する。非形質転換細胞に対して毒性を示さない化合物のIC50値を、上記の通りに得た用量応答曲線から決定した。
【0149】
FGFR3(酵素アッセイ)
キナーゼバッファー(30mMのTris−HCl pH7.5、15mMのMgCl、4.5mMのMnCl、15μMのNaVOおよび50μg/mLのBSA)および基質(5μg/mLのビオチン−ポリ−EY(Glu、Tyr)(CIS-US, Inc.)および3μMのATP)中の酵素0.25μg/mLを含む最終体積10μLで、精製FGFR3(Upstate)によるキナーゼ活性アッセイを実施する。2種の溶液を調製する:第1にキナーゼバッファー中のFGFR3酵素を含む第1溶液5μLを384フォーマットProxiPlate(登録商標)(Perkin-Elmer)に分注し、次いでDMSOに溶解させた化合物50nLを加え、キナーゼバッファー中に基質(ポリ−EY)およびATPを含む第2溶液5μLを各ウェルに加えた。室温で1時間反応をインキュベートし、10μLのHTRF検出混合物(30mMのTris−HCl pH7.5、0.5MのKF、50mMのETDA、0.2mg/mLのBSA、15μg/mLのストレプトアビジン−XL665(CIS-US, Inc.)および150ng/mLのクリプテート複合抗ホスホチロシン抗体(CIS-US, Inc.)を含む)を加えて停止させる。室温で1時間インキュベートしてストレプトアビジンとビオチンを相互作用させた後、Analyst GT(Molecular Devices Corp.)で時間分解蛍光シグナルを読み取る。12種の濃度(50μMから0.28nMの1:3希釈)での各化合物の阻害率の直線回帰分析によってIC50値を計算する。このアッセイにおいて、本発明の化合物は10nM〜2μMのIC50を有する。
【0150】
FGFR3(細胞アッセイ)
FGFR3細胞性キナーゼ活性に依存する形質転換されたBa/F3−TEL−FGFR3細胞増殖に対する本発明の化合物の阻害能を試験する。Ba/F3−TEL−FGFR3は、培養培地として10%の胎児ウシ血清を補ったRPMI1640の懸濁液中で800,000細胞/mLまで培養する。384ウェルフォーマットプレートに細胞を、培養培地50μL中5000細胞/ウェルで分注する。本発明の化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、希釈する。12点の1:3連続希釈物をDMSOで調製し、典型的には10mM〜0.05μMの濃度勾配を作製する。50nLの希釈した化合物と共に細胞を加え、細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートする。増殖細胞によって創出される還元環境をモニターするために使用し得るAlamarBlue(登録商標)(TREK Diagnostic Systems)を細胞に、最終濃度10%で加える。細胞培養インキュベーター中、37℃でさらに4時間インキュベートしたのち、還元されたAlamarBlue(登録商標)(励起波長530nm、放出波長580nm)由来の蛍光シグナルをAnalyst GT(Molecular Devices Corp.)で定量する。12種の濃度での各化合物の阻害率の直線回帰分析によってIC50値を計算する。
【0151】
b−Raf酵素アッセイ
本発明の化合物のb−Raf活性阻害能について試験する。黒色壁透明底の384ウェルMaxiSorpプレート(NUNC)でアッセイを実施する。基質IκBαをDPBS(1:750)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを4℃で一夜インキュベートし、EMBLAプレート洗浄機を用いてTBST(25mMのTris、pH8.0、150mMのNaClおよび0.05%のTween20)で3回洗浄する。室温で3時間、Superblock(15μL/ウェル)でプレートをブロックし、TBSTで3回洗浄し、パット乾燥させる。20μMのATP(10μL)を含むアッセイバッファー、次いで100nLまたは500nLの化合物を各ウェルに加える。b−Rafをアッセイバッファー(1μLを25μLに)で希釈し、10μLの希釈したb−Rafを各ウェルに加える(0.4μg/ウェル)。該プレートを室温で2.5時間インキュベートする。TBSTで6回洗浄してキナーゼ反応を停止させる。ホスホ−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblock(1:10,000)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを4℃で一夜インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP複合ヤギ抗マウスIgGをSuperblock(1:1,500)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15μLの蛍光Attophos AP基質(Promega)を各ウェルに加え、該プレートを室温で15分間インキュベートする。AcquestまたはAnalyst GTで蛍光強度プログラム(励起波長455nm、放出波長580nm)を用いてプレートを読み取る。
【0152】
b−Raf細胞アッセイ
本発明の化合物のMEKリン酸化阻害能について、A375細胞において試験する。A375細胞系(ATCC)はヒト黒色腫患者に由来し、B−Raf遺伝子にV599E変異を有する。B−Rafの変異によってリン酸化MEKのレベルが上昇する。サブコンフルエント乃至コンフルエントなA375細胞を、無血清培地中、37℃で2時間化合物と共にインキュベートする。次いで細胞を冷PBSで1回洗浄し、1%のTriton X100を含む溶解バッファーで溶解させる。遠心分離後、上清をSDS−PAGEに供し、次いでニトロセルロース膜に移す。該膜を抗ホスホMEK抗体(ser217/221)(Cell Signaling)によるウェスタンブロッティングに供する。ニトロセルロース膜のホスホMEKバンドの密度によってリン酸化MEKの量をモニターする。
【0153】
Upstate Kinase Profiler(商標)−放射性酵素フィルター結合アッセイ
本発明の化合物のキナーゼパネルの個々のメンバーの阻害能について評価する。この一般プロトコルに従って、最終濃度10μM、2連で化合物を試験する。キナーゼバッファー組成物と基質は“Upstate Kinase Profiler(商標)”パネルに含まれる多様なキナーゼについて変化する。キナーゼバッファー(2.5μL、所望により10倍のMnCl)、活性キナーゼ(0.001〜0.01単位;2.5μL)、キナーゼバッファー中の特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5〜500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼバッファー(50μM;5μL)を氷上でエッペンドルフ内で混合する。Mg/ATP混合物(10μL;67.5(または33.75)mMのMgCl、450(または225)μMのATPおよび1μCi/μlの[γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を加え、反応を約30℃で約10分間インキュベートする。2cm×2cmのP81(リンセルロース、正に荷電したペプチド基質について)または四角のWhatman No. 1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質について)紙に反応混合物をスポットする(20μL)。アッセイ四角片を0.75%のリン酸で4回、それぞれ5分間洗浄し、アセトンで1回、5分間洗浄する。アッセイ四角片をシンチレーションバイアルに移し、5mlのシンチレーションカクテルを加え、Beckmanシンチレーションカウンターでペプチド基質への32P取り込み(cpm)を定量する。阻害率を各反応について計算する。
【0154】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば本明細書に記載のインビトロ試験によって示されるように、有用な薬理学的特性を示す。
【0155】
本明細書に記載の実施例および態様は説明のみを目的としており、その範囲内の多様な修飾または変形が当業者に示唆されており、本明細書および特許請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。本明細書において言及した全ての公報、特許および特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に引用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、
Lは−NC(O)−、−NC(O)N−および−C(O)N−から選択され;
、R2aおよびR2bはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、−NR1011、−OXから選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;RはC3−12シクロアルキルであり;あるいはRとR2aまたはRとR2bは、RおよびR2aまたはR2bが結合している炭素原子と一体となって、フェニルを形成し;R10およびR11は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;あるいはR10とR11は、R10およびR11の両方が結合している窒素と一体となって、C3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
、R、R、RおよびRは、水素、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−OX、−S(O)0−2および−NR1213から独立して選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rはそれぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルおよび−NR1213から選択され;ここでRのシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは所望により、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルキルおよび−NR1213から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてもよく;ここでR12およびR13は、水素およびC1−6アルキルから独立して選択されるか;あるいはRとRはRおよびRが結合している炭素原子と一体となって、C3−8ヘテロアリールを形成する;
ただし、R、R、R、RまたはRの少なくとも1個がR、R、R、RおよびRが結合している式Iのフェニル環と直接結合した硫黄を有する〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Lが−NC(O)−および−C(O)N−から選択され;R、R2aおよびR2bが水素、ヒドロキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、−NR1011、−OXから独立して選択され;ここでXが結合およびC1−4アルキレンから選択され;RがC3−12シクロアルキルであり;あるいはRとRは、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;R10およびR11が水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルコキシ、ハロ置換−C1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;あるいはR10とR11は、R10およびR11の両方が結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
およびRが水素およびハロから独立して選択され;
およびRが水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、−S(O)0−2から独立して選択され;そして
がハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換−C1−6アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−OXおよび−S(O)0−2から選択され;ここでXが結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rがそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここでRのシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルが所望により、C1−6アルキルおよびハロ置換−C1−6アルキルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてもよく;あるいはRとRはRおよびRが結合している炭素原子と一体となってC3−8ヘテロアリールを形成する;ただし、R、R、R、RまたはRの少なくとも1個がフェニル環と直接結合した硫黄を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素、ヒドロキシ、ピロリジニル、モルホリノ、メトキシ、ジフルオロ−メトキシ、2−フルオロ−エトキシおよびメチルから選択されるか;あるいはRとR2aは、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となって、フェニルを形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが水素、メチル−スルホニル、メチル、2−フルオロ−エトキシ、メチル−ピペラジニル−スルホニル、プロポキシ、イソブトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2,3−ジフルオロ−2−(フルオロメチル)プロポキシ、ブトキシおよびシクロプロピル−メトキシから独立して選択され;Rが水素、ハロ、メチル−スルホニル、メチル、メトキシ、エトキシおよびモルホリノから選択されるか;あるいはRとRは、RおよびRが結合している炭素原子と一体となってチアゾリルを形成する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール−6−カルボキサミド;2−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−メチル−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−メチル−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−エトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−モルホリノピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−(ピロリジン−1−イル)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニル)−4−モルホリノベンズアミド;N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−(2−フルオロエトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−(シクロプロピルメトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(5−メチルピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−(2−フルオロエトキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−プロポキシベンズアミド;3−メトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−ブトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−(シクロプロピルメトキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(イソキノリン−4−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−3−(メチルスルホニル)ベンズアミド;4−メトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミノ)フェニル)−3−(メチルスルホニルベンズアミド);N−(3−(4−(5−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−3−(4−メチルピペラジン−1−イルスルホニル)ベンズアミド;N−(3−(4−(5−ヒドロキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;3−イソブトキシ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミド;N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンズアミド;および3−(2,3−ジフルオロ−2−(フルオロメチル)プロポキシ)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−4−(メチルスルホニル)ベンズアミドから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
治療上有効量の請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤が非経腸投与に適している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される賦形剤が経口投与に適している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
キナーゼ活性を調節する方法であって、それを必要とする系または対象に、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与して、当該キナーゼ活性を調節することを含む方法。
【請求項10】
キナーゼがc−kit、PDGFRαおよびPDGFRβから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キナーゼがc−kit、Abl、Lyn、MAPK14、PDGFRα、PDGFRβ、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、PDGF−R、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBまたはそれらの組合せから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物がc−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβキナーゼ受容体と直接接触する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
接触がインビトロまたはインビボで生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
キナーゼ活性の調節によって疾患または状態の病理および/または症状が予防、阻害または改善され得る疾患または状態を処置する方法であって、治療上有効量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物および所望により治療上有効量の第2薬剤を対象に投与することを含む方法。
【請求項15】
キナーゼがc−kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼ受容体から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2薬剤が気管支拡張剤、抗炎症剤、ロイコトリエンアンタゴニストまたはIgEブロッカーである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物が第2薬剤の前、それと同時またはそれの後に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
疾患または状態が新生物性障害、アレルギー性障害、炎症性障害、自己免疫障害、マラリア原虫関連疾患、マスト細胞関連疾患、移植片対宿主病、メタボリック症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、薬物乱用障害、プリオン病、がん、心臓疾患、線維症、特発性動脈性高血圧、強皮症および原発性肺高血圧から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
新生物性障害が肥満細胞症、消化管間質腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、結直腸がん、胃がん、精巣がん、グリア芽腫および星状細胞腫から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アレルギー性障害が喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、じんま疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形性(multifonne)紅斑、皮膚壊死性細静脈炎、刺虫性皮膚炎症および吸血寄生虫感染症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
炎症性障害がリウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎および痛風性関節炎から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
自己免疫障害が多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、過敏性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様関節炎、多発性関節炎、局所性または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚狼瘡、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患および増殖性糸球体腎炎から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
移植片対宿主病が臓器移植片拒絶である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
臓器移植が腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植および骨髄移植から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
メタボリック症候群がI型糖尿病、II型糖尿病および肥満から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
CNS関連障害が鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、拒食症、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神機能低下、集中力低下、悲観的不安、激越、自己非難および性欲減退、不安障害、精神障害および統合失調症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
神経変性障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患および筋萎縮性側索硬化症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
疼痛状態が急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、がん疼痛、神経因性疼痛および心因性疼痛症候群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
物質使用障害が薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、禁断症候群および過量投与から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
がんが黒色腫、消化管間質腫瘍、結直腸がん、小細胞肺がんおよび他の固形腫瘍から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
線維症がC型肝炎、肝臓線維症、心臓線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、肺線維症および骨髄線維症から選択される、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−526151(P2010−526151A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507577(P2010−507577)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062568
【国際公開番号】WO2008/137794
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】