説明

c−kitおよびPDGFRキナーゼ阻害剤としてのピリミジン誘導体および組成物

本発明は、新規ピリミジン誘導体群、そのような化合物を含む医薬組成物、またそのような化合物を、異常なまたは調節解除されたキナーゼ活性と関連のある疾患または障害、特にc−kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼの異常活性化が関与する疾患または障害を処置するまたは予防するために使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月4日に出願した米国仮特許出願番号第60/916,035号に対する優先権の利益を主張する。この出願の開示は全て、参照することにより、その全体が、全ての目的のために、本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の属する技術分野
本発明は、新規化合物群、そのような化合物を含む医薬組成物、またそのような化合物を、異常なまたは調節解除されたキナーゼ活性と関連のある疾患または障害、特にc−kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼの異常活性化を含む疾患または障害を処置するまたは予防するために使用する方法を提供する。
【0003】
背景
タンパク質キナーゼは、広範囲にわたる様々な細胞過程の調節において中心的役割を果たし、そして細胞機能に対する制御を維持する、タンパク質の大きなファミリーを表す。これらのキナーゼの一部の非限定的なリストには、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、神経成長因子受容体、trkB、および線維芽細胞増殖因子受容体であるFGFR3、B−RAFのような受容体チロシンキナーゼ;Ablおよび融合キナーゼであるBCR−Abl、Lck、Bmxおよびc−srcのような非受容体チロシンキナーゼ;ならびにc−RAF、sgk、MAPキナーゼ(例えば、MKK4、MKK6等)およびSAPK2αおよびSAPK2βのようなセリン/スレオニンキナーゼが含まれる。良性および悪性の増殖性障害、ならびに免疫および神経系の不適切な活性化から生ずる疾患を含む、多くの疾患状態において、異常なキナーゼ活性が観察されている。
【0004】
本発明の新規化合物は、1種以上のタンパク質キナーゼの活性を阻害し、それによって、キナーゼ関連疾患の処置において有用であることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の要約
一態様において、本発明は、式I:
【化1】

[式中、
Lは、
【化2】

から選択される、3個の窒素原子を含む5員のヘテロアリール環であり;
、R2aおよびR2bは、水素、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、−NR1011、−OX(ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、C3−12シクロアルキルである。)から各々独立して選択されるか;またはRとR2aまたはRとR2bは、RおよびR2aまたはR2bが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し(すなわち、マーカッシュ構造のピリジル環がR/R2aまたはR/R2bから形成されたフェニル環に縮合し、それによって、キノリニルまたはイソキノリニル環系を作り出す。);R10およびR11は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;またはR10とR11は、R10およびR11が両方結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
は、C6−10アリール、C1−10ヘテロアリール、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、水素、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR5a5b、−XNR5aOR5、−XC(O)R5a、−XS(O)0−25a、−XOX5a、−X5a、−XC(O)OR5a、−XOR5aおよび−XOXOR5aから独立して選択される1〜3個のラジカルで置換されており;ここで、XおよびXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;そしてR5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C6−10アリール、C3−12シクロアルキル、C1−10ヘテロアリールおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから各々独立して選択され;
ここで、Rの該アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル置換基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、−XOR、−XC(O)OR、−XC(O)NRおよび−Xから独立して選択される1〜3個のラジカルでさらに置換され得て;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;そしてRは、水素、C1−6アルキルおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから選択される。]
の化合物:ならびにN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体およびその異性体の混合物;ならびにそのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば、水和物)を提供する。
【0006】
第二態様において、本発明は、1種以上の適当な賦形剤と混合して、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
第三態様において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性、特にc−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性の阻害が、疾患の病状および/または症状を予防し、阻害し、または改善し得る疾患を処置する方法であって、その動物に、治療上有効な量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0008】
第四態様において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性、特にc−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性が疾患の病状および/または症状の一因となる疾患を処置するための薬剤の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0009】
第五態様において、本発明は、式Iの化合物ならびにそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、ならびにその薬学的に許容される塩を製造するための方法を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
定義
1つの基としての、また他の基、例えば、ハロ置換されたアルキルおよびアルコキシの構造要素としての“アルキル”は、直鎖状または分岐鎖状のいずれかであり得る。C1−4アルコキシには、メトキシ、エトキシ等が含まれる。ハロ置換されたアルキルには、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等が含まれる。
【0011】
“アリール”は、6〜10個の環炭素原子を含む、単環式または縮合二環式芳香族環集合体を意味する。例えば、本出願において使用する場合のC6−10アリールには、限定されるものではないが、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルが含まれる。“アリーレン”は、アリール基から誘導される二価のラジカルを意味する。
【0012】
“ヘテロアリール”は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。)から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5〜15員の不飽和環系である。例えば、C1−10ヘテロアリール(1〜10個までの間の炭素原子を意味する“C1−10”は、環系に存在する。)には、本出願において使用するとき、限定されるものではないが、ピラゾリル、ピリジニル、インドリル、チアゾリル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル、フラニル、ベンゾ[b]フラニル、ピロリル、1H−インダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾール−6−イル、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−5−イル、キノリニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル、1H−インドリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジニルおよび2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジニル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−7−イル等が含まれる。
【0013】
“シクロアルキル”は、指示された数の環原子を含む、飽和または部分的に不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。
【0014】
“ヘテロシクロアルキル”は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。)から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、3〜8員の飽和または部分的に不飽和の環系を意味する。例えば、本発明の化合物を記載するために本出願において使用するときのC3−8ヘテロシクロアルキルには、限定されるものではないが、モルホリノ、ピロリジニル、アゼパニル、ピペリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニルオン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシ−8−イル等が含まれる。
【0015】
“ハロゲン”(またはハロ)は、好ましくは、クロロまたはフルオロを表すが、またブロモまたはヨードであってもよい。
【0016】
“キナーゼパネル”は、Abl(ヒト)、Abl(T315I)、JAK2、JAK3、ALK、JNK1α1、ALK4、KDR、オーロラ−A、Lck、Blk、MAPK1、Bmx、MAPKAP−K2、BRK、MEK1、CaMKII(ラット)、Met、CDK1/サイクリンB、p70S6K、CHK2、PAK2、CK1、PDGFRα、CK2、PDK1、c−kit、Pim−2、c−RAF、PKA(h)、CSK、PKBα、cSrc、PKCα、DYRK2、Plk3、EGFR、ROCK−I、Fes、Ron、FGFR3、Ros、Flt3、SAPK2α、Fms、SGK、Fyn、SIK、GSK3β、Syk、IGF−1R、Tie−2、IKKβ、TrKB、IR、WNK3、IRAK4、ZAP−70、ITK、AMPK(ラット)、LIMK1、Rsk2、Axl、LKB1、SAPK2β、BrSK2、Lyn(h)、SAPK3、BTK、MAPKAP−K3、SAPK4、CaMKIV、MARK1、Snk、CDK2/サイクリンA、MINK、SRPK1、CDK3/サイクリンE、MKK4(m)、TAK1、CDK5/p25、MKK6(h)、TBK1、CDK6/サイクリンD3、MLCK、TrkA、CDK7/サイクリンH/MAT1、MRCKβ、TSSK1、CHK1、MSK1、Yes、CK1d、MST2、ZIPK、c−kit(D816V)、MuSK、DAPK2、NEK2、DDR2、NEK6、DMPK、PAK4、DRAK1、PAR−1Bα、EphA1、PDGFRβ、EphA2、Pim−1、EphA5、PKBβ、EphB2、PKCβI、EphB4、PKCδ、FGFR1、PKCη、FGFR2、PKCθ、FGFR4、PKD2、Fgr、PKG1β、Flt1、PRK2、Hck、PYK2、HIPK2、Ret、IKKα、RIPK2、IRR、ROCK−II(ヒト)、JNK2α2、Rse、JNK3、Rsk1(h)、PI3 Kγ、PI3 KδおよびPI3−Kβを含むキナーゼのリストである。本発明の化合物は、キナーゼパネル(野生型および/またはその変異株)に対してスクリーニングされ、また該パネルメンバーの少なくとも1つの活性を阻害する。
【0017】
“処置する”、“処置すること”および“処置”は、疾患および/またはその付随症状を軽減するまたは寛解する方法を言う。
【0018】
好ましい態様の説明
c−kit遺伝子は、受容体チロシンキナーゼをコードし、c−kit受容体に対するリガンドは幹細胞因子(SCF)と呼ばれ、これは、肥満細胞生存に関する主要増殖因子である。c−kit受容体タンパク質チロシンキナーゼの活性は、正常細胞において調節され、c−kit遺伝子産物の正常な機能活性は、正常な造血、メラニン形成、配偶子形成(genetogenesis)、および肥満細胞の増殖および分化の維持に必須である。SCF結合の非存在下でc−kitキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす変異は、肥満細胞症からヒト悪性癌まで幅広い種々の疾患に関与する。
【0019】
一態様において、式Iの化合物に関して、Lは、
【化3】

から選択され;
、R2aおよびR2bは、水素、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、−NR1011、−OX(ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、C3−12シクロアルキルである。)から独立して選択されるか;またはRとR2aまたはRとR2bは、RおよびR2aまたはRおよびR2bが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;R10およびR11は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;またはR10とR11は、R10およびR11が両方結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
は、C6−10アリールおよびC1−10ヘテロアリールから選択され;ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR5a5b、−XNR5aOR5b、−XC(O)R5a、−XS(O)0−25a、−XOX5a、−X5a、−XC(O)OR5a、−XOR5aおよび−XOXOR5aから独立して選択される1〜3個のラジカルで置換されており;ここで、XおよびXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;そしてR5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C3−12シクロアルキル、C1−10ヘテロアリールおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから各々独立して選択され;
ここで、Rの該アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル置換基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、−XOR、−XC(O)OR、−XC(O)NRおよび−Xから独立して選択される1〜3個のラジカルでさらに置換され得て;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;そしてRは、水素、C1−6アルキルおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから選択される。
【0020】
別の態様において、Rは、水素、ピロリジニル、モルホリノ、メトキシ、2−フルオロ−エトキシおよびメチルから選択され;R2aおよびR2bは水素であるか;またはRとR2aは、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成する(すなわち、マーカッシュ構造のピリジル環がRおよびR2aから形成されたフェニル環に縮合し、それによって、イソキノリニル環系を作り出す。)。
【0021】
別の態様において、Rは、ジフルオロメトキシ、ヒドロキシ−メチル、トリフルオロメトキシ、メチル−スルホニル、メトキシおよびエトキシから選択される基で置換されたフェニル;ならびに2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イルから選択される。
【0022】
別の態様において、化合物は、{5−[5−(3−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−2−メチル−フェニル}−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン;N−(2−メチル−5−(5−(3−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(2−メチル−5−(5−(3−(メチルスルホニル)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(3−メトキシフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(3−エトキシフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;および(3−(3−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)フェニル)メタノールから選択される。
【0023】
一態様において、本発明は、c−kitおよびPDGFRα/βキナーゼ受容体により調節される疾患または状態を処置するための方法であって、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0024】
本発明の化合物および組成物を使用して処置(mediated)され得るc−kitおよび/またはPDGFRα/β介在性疾患または状態の例には、限定されるものではないが、腫瘍性障害、アレルギー障害、炎症性障害、自己免疫障害、移植片−対−宿主疾患、マラリア原虫関連疾患、肥満細胞関連疾患、メタボリック症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、物質乱用障害、プリオン病、癌、心臓疾患、線維性疾患、特発性動脈高血圧(IPAH)、または原発性肺高血圧(PPH)が含まれる。
【0025】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る肥満細胞関連疾患の例には、限定されるものではないが、座瘡および座瘡菌、進行性骨化性線維異形成症(FOP)、化学または生物兵器(例えば、炭疽菌および硫黄マスタード)への暴露により誘発される炎症および組織破壊、嚢胞性線維症、腎疾患、炎症性筋障害、HIV、II型糖尿病、脳虚血、肥満細胞症、薬物依存および離脱症状、CNS障害、脱毛の予防および最小化、細菌感染症、間質性膀胱炎、炎症性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、腫瘍血管新生、自己免疫疾患、炎症性疾患、多発性硬化症(MS)、アレルギー障害(喘息を含む)、ならびに骨量減少が含まれる。
【0026】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る腫瘍性障害の例には、限定されるものではないが、肥満細胞症、消化管間質腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群(myelodyplastic syndrome)、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、膠芽細胞腫、または星状細胞腫が含まれる。
【0027】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得るアレルギー障害の例には、限定されるものではないが、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑(erythema multifonne)、皮膚壊死性血管炎(cutaneous necrotizing venulitis)、虫刺されによる皮膚炎、または吸血寄生虫感染症が含まれる。
【0028】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る炎症性障害の例には、限定されるものではないが、関節リウマチ、結膜炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節炎、または痛風性関節炎が含まれる。
【0029】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る自己免疫障害の例には、限定されるものではないが、多発性硬化症、乾癬、腸炎症性疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、局所性または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosis)、皮膚ループス、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患、または増殖性糸球体腎炎が含まれる。
【0030】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る移植片−対−宿主疾患の例には、限定されるものではないが、腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植、または骨髄移植のような、臓器移植による移植片拒絶が含まれる。
【0031】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得るメタボリック症候群の例には、限定されるものではないが、I型糖尿病、II型糖尿病、または肥満が含まれる。
【0032】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得るCNS関連障害の例には、限定されるものではないが、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、拒食症、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神機能低下、集中力低下、悲観的懸念、動揺、自己非難および性欲減退、不安障害、精神障害、または統合失調症が含まれる。
【0033】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る鬱病状態の例には、限定されるものではないが、双極性鬱病、重度もしくはメランコリー型鬱病、非定型鬱病、難治性鬱病、または季節性鬱病が含まれる。本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る不安障害の例には、限定されるものではないが、過換気および心不整脈と関連のある不安、恐怖性障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、ならびに全般性不安障害が含まれる。本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る精神障害の例には、限定されるものではないが、精神病を含め、パニック発作、妄想性障害、転換性障害、恐怖症、躁病、譫妄、解離性健忘、解離性遁走および解離性自殺行動を含む解離性エピソード、自己無視、暴力または攻撃的行動、心的外傷、境界性人格、ならびに妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症および未分化型統合失調症を含め、統合失調症のような急性精神病が含まれる。
【0034】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る神経変性障害の例には、限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。
【0035】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る疼痛状態の例には、限定されるものではないが、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛、または心因性疼痛症候群が含まれる。
【0036】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る物質使用障害の例には、限定されるものではないが、薬物中毒、薬物乱用、薬物習慣性、薬物依存性、離脱症候群、または過剰摂取が含まれる。
【0037】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る癌の例には、限定されるものではないが、黒色腫、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸癌、小細胞肺癌、または他の固形腫瘍が含まれる。
【0038】
本発明の化合物および組成物を使用して処置され得る線維性疾患の例には、限定されるものではないが、C型肝炎(HCV)、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、強皮症、肺線維症、または骨髄線維症が含まれる。
【0039】
別の態様において、本発明は、c−kitキナーゼ受容体および/またはPDGFRα/βにより調節される疾患または状態を処置するための方法であって、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0040】
薬理および有用性
本発明の化合物は、キナーゼの活性を調節し、またそのことから、キナーゼが疾患の病状および/または症状の一因となる疾患または障害を処置するのに有用である。本明細書中に記載する化合物および組成物により阻害され、また本明細書中に記載する方法が有用であるキナーゼの例には、限定されるものではないが、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、Lyn、MAPK14(p38δ)、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼが含まれる。
【0041】
肥満細胞(MC)は、そのほとんどが強力な炎症促進活性を有する多くの様々なメディエーターを産生する、ある特定の造血幹細胞サブセットから誘導される組織要素である。MCは、ほぼ全ての身体部位に分布していることから、活性化要素によるメディエーターの分泌過多は、多臓器不全をもたらし得る。従って、肥満細胞は、多くの疾患に関与する中心的プレーヤーである。本発明は、肥満細胞関連疾患を処置するための方法であって、そのような処置を必要とするヒトに、肥満細胞を枯渇させることができる化合物または肥満細胞脱顆粒を阻害する化合物を投与することを含む方法に関する。そのような化合物は、c−kit阻害剤、またより詳細には、無毒で、選択的で、かつ強力なc−kit阻害剤から選択され得る。好ましくは、該阻害剤は、IL−3の存在下に培養されたIL−3依存性細胞死を促進することができない。
【0042】
肥満細胞関連疾患には、限定されるものではないが、座瘡および座瘡菌(座瘡は、座瘡菌により誘発されるものを含め、あらゆる形態の慢性皮膚炎症を包含する。);進行性骨化性線維異形成症(FOP)として知られている、極めて稀で身体能力を損なう結合組織の遺伝障害;化学または生物兵器(例えば、炭疽菌、硫黄マスタード等)への暴露により誘発される炎症および組織破壊の有害作用;嚢胞性線維症(肺、消化器および生殖器系の遺伝性疾患);急性腎炎症候群、糸球体腎炎、腎アミロイドーシス、間質性腎線維症のような腎疾患(種々の腎症において末期腎疾患をもたらす最終共通経路);筋炎および筋ジストロフィーを含め、炎症性筋障害;HIV(例えば、HIV感染肥満細胞を枯渇させることは、HIV感染および関連疾患を処置するための新たなルートであり得る。);II型糖尿病、肥満および関連障害を処置すること(肥満細胞は、高血糖、高コレステロール血症、高血圧、内皮機能不全、インスリン抵抗性、および血管リモデリングを含む、アテローム性動脈硬化発生の一因となる多くの過程を調節する。);脳虚血;肥満細胞症(様々な組織における、主として、皮膚および骨髄においてだが、脾臓、肝臓、リンパ節、および消化管においてもまた、肥満細胞の異常蓄積により特徴付けられる障害の非常に異質なグループ);薬物依存性および離脱症状(特に、薬物中毒、薬物乱用、薬物習慣性、薬物依存性、離脱症候群および過剰摂取);CNS障害(特に、鬱病、統合失調症、不安、片頭痛、記憶喪失、疼痛および神経変性疾患);発毛を促進すること(脱毛を予防することおよび最小限に抑えることを含む);細菌感染症(特に、FimH発現細菌により引き起こされる感染);過敏性腸症候群(IBS)および過敏性腸疾患(IBD);間質性膀胱炎(とりわけ、膀胱の内側における細胞間の間質での組織損傷から生ずる膀胱壁の慢性炎症);炎症性腸疾患(通常、4つの腸疾患、つまり、クローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎および感染性大腸炎に適用される。);腫瘍血管新生;自己免疫疾患(特に、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチおよび多発性関節炎、強皮症、エリテマトーデス、皮膚筋炎、天疱瘡、多発性筋炎、血管炎ならびに移植片−対−宿主疾患);関節リウマチ(RA)のような炎症性疾患;多発性硬化症(MS);アレルギー障害(特に、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性血管炎(cutaneous necrotizing venulitis)および虫刺されによる皮膚炎、気管支喘息);鼻ポリープ;ならびに骨量減少が含まれる。
【0043】
PDGF(血小板由来増殖因子)は、正常な増殖と、そしてまた、発癌において、また血管平滑筋細胞の疾患において、例えば、アテローム性動脈硬化症および血栓症において見られるような、病的な細胞増殖との両方において重要な役割を果たす、非常に一般的に存在する増殖因子である。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害し得て、従って、神経膠腫、肉腫、前立腺腫瘍、ならびに結腸、胸部および卵巣の腫瘍のような腫瘍疾患;過好酸球増加症;肺線維症、肝線維症および強皮症のような線維症;肺高血圧;ならびに心血管疾患の処置に適当である。
【0044】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を媒介する。Rasは、〜15%のヒト癌において発癌型へと変異する。Rafファミリーは、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼに属し、またそれには、3つのメンバーであるA−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)が含まれる。薬物標的であるRafに対する焦点は、Rasの下流エフェクターとしてのRafの関係に集中している。しかしながら、最近のデータは、B−Rafが、活性化Ras対立遺伝子に対する必要性なしに、幾つかの腫瘍形成において重要な役割を有し得ることを示唆している(Nature 417,949−954(2002年7月1日)。特に、B−Raf変異は、大部分の悪性黒色腫において検出されている。
【0045】
黒色腫に対する現行の医療処置は、とりわけ後期黒色腫に関して、それらの有効性が限られている。本発明の化合物はまた、b−Rafキナーゼが関与する細胞過程も阻害し、ヒト癌の処置に対して、とりわけ黒色腫に対して、新たな治療機会を提供する。
【0046】
本発明の化合物はまた、c−Rafキナーゼが関与する細胞過程も阻害する。c−Rafは、広範囲にわたる多くのヒト癌において変異するras癌遺伝子により活性化される。従って、c−Rafのキナーゼ活性の阻害は、ras介在性腫瘍増殖を予防する方法を提供し得る[Campbell,S. L.,Oncogene,17,1395(1998)]。
【0047】
本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症のような、非悪性の増殖性障害を処置するために、さらにはまた、幹細胞の保護のために、例えば、5−フルオロウラシル(5-fluoruracil)のような化学療法剤の血液毒作用と闘うために、また喘息において使用され得る。
【0048】
本発明の化合物は、移植、例えば、同種移植の結果として起こる障害、とりわけ組織拒絶反応、例えば、とりわけ閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち、同種肺移植の慢性拒絶反応の処置において有用な効果を示す。OBではない患者とは対照的に、OBである患者は、気管支肺胞洗浄液中でPDGF濃度の上昇を示すことが多い。
【0049】
本発明の化合物はまた、再狭窄およびアテローム性動脈硬化のような、血管平滑筋細胞の移動および増殖(ここで、PDGFおよびPDGF−Rもまた役割を果たすことが多い。)と関連のある疾患においても有効である。インビトロおよびインビボにおける血管平滑筋細胞の増殖または移動に対する、これらの効果およびその結果は、本発明の化合物の投与により、そしてまた機械的損傷後の血管内膜の肥厚に対するその効果をインビボにおいて調べることにより、実証され得る。
【0050】
神経栄養因子受容体のtrkファミリー(trkA、trkB、trkC)は、神経および非神経組織の生存、増殖および分化を促進する。TrkBタンパク質は、小腸および結腸における神経内分泌型細胞で、膵臓のα細胞で、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージで、また表皮の顆粒層で発現される(ShibayamaおよびKoizumi,1996)。TrkBタンパク質の発現は、腎芽細胞腫および神経芽細胞腫の好ましくない進行と関連付けられている。さらにまた、TrkBは、癌性前立腺細胞で発現されるが、正常細胞では発現されない。trk受容体のシグナル伝達経路下流は、Shc、活性化Ras、EPK−1およびEPK−2遺伝子、ならびにPLC−γ(PLC-gammal)伝達経路を通じてのMAPK活性化のカスケードが関与する(Sugimotoら,2001)。
【0051】
キナーゼであるc−Srcは、多くの受容体の発癌シグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現は、c−srcの構成的活性化をもたらし、これは、悪性細胞に特徴的であるが、正常細胞にはない。一方、c−srcの発現に欠けるマウスは、大理石骨病の表現型を示し、破骨細胞機能におけるc−srcの重要な関与および関連障害における関与の可能性を示唆している。
【0052】
Tecファミリーキナーゼ、Bmx、非受容体型タンパク質チロシンキナーゼは、乳房上皮癌細胞の増殖を制御する。
【0053】
線維芽細胞増殖因子受容体3は、骨成長に対する負の調節作用および軟骨細胞増殖の阻害を及ぼすことが示された。致死性骨異形成症は、線維芽細胞増殖因子受容体3における様々な変異により引き起こされ、また1つの変異であるTDII FGFR3は、転写因子Stat1を活性化する構成的チロシンキナーゼ活性を有し、細胞周期阻害剤の発現、成長停止および異常な骨の発達をもたらす(Suら,Nature,1997,386,288−292)。FGFR3はまた、多発性骨髄腫型の癌において発現されることも多い。FGFR3活性の阻害剤は、限定されるものではないが、関節リウマチ(RA)、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症を含む、T細胞が媒介する炎症性または自己免疫疾患の処置において有用である。
【0054】
血清およびグルココルチコイド調節キナーゼ(SGK)の活性は、摂動イオンチャネル活性、特に、ナトリウムおよび/またはカリウムチャネルの活性と相関があり、そして本発明の化合物は、高血圧を処置するのに有用であり得る。
【0055】
Linら(1997)J. Clin. Invest. 100,8:2072−2078およびP. Lin(1998)PNAS 95,8829−8834は、乳房腫瘍および黒色腫異種移植モデルにおいて、アデノウイルス感染中またはTie−2(Tek)の細胞外ドメインの注射中、腫瘍増殖および血管新生の阻害、そしてまた肺転移の減少を示している。Tie2阻害剤は、新血管新生が不適切に行われるという状況において(すなわち、糖尿病性網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性新血管新生、関節リウマチ、小児血管腫および癌において)使用され得る。
【0056】
Lckは、T細胞シグナル伝達において役割を果たす。Lck遺伝子を欠くマウスは、胸腺細胞を発生させる能力に乏しい。T細胞シグナル伝達の正の活性化因子としてのLckの機能は、Lck阻害剤が関節リウマチのような自己免疫疾患を処置するのに有用であり得ることを示唆している。
【0057】
JNKは、他のMAPKと共に、癌、トロンビン誘発性血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および心臓疾患に対する細胞応答を媒介する役割を果たす際に関与している。JNK経路の活性化に関連した治療標的には、慢性骨髄性白血病(CML)、関節リウマチ、喘息、変形性関節炎、虚血、癌および神経変性疾患が含まれる。肝臓疾患または肝虚血のエピソードと関連のあるJNK活性化の重要性の結果として、本発明の化合物はまた、種々の肝障害を処置するのにも有用であり得る。JNKが種々の形態の心臓ストレスに対する肥大応答を媒介することが示されているように、心筋梗塞または鬱血性心不全のような心血管疾患におけるJNKの役割もまた報告されている。JNKカスケードはまた、IL−2プロモーターの活性化を含め、T細胞活性化における役割も果たすことが実証されている。従って、JNK阻害剤は、病的免疫応答を変化させる際に治療価値を有し得る。種々の癌におけるJNK活性化の役割もまた確立されており、癌におけるJNK阻害剤の使用の可能性を示唆している。例えば、構成的に活性化されたJNKは、HTLV−1介在性腫瘍形成と関連がある[Oncogene 13:135−42(1996)]。JNKは、カポジ肉腫(KS)における役割を果たし得る。血管内皮増殖因子(VEGF)、IL−6およびTNFαのような、KS増殖に関与する他のサイトカインの他の増殖効果もまた、JNKにより媒介され得る。加えて、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の調節は、JNKの活性と一致し、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるJNK阻害剤の役割を示唆している[Blood 92:2450−60(1998)]。
【0058】
ある種の異常増殖条件は、raf発現と関連があると考えられており、従って、raf発現の阻害に応答すると考えられている。rafタンパク質の異常に高い発現レベルもまた、形質転換および異常な細胞増殖に関与する。これらの異常な増殖条件もまた、raf発現の阻害に応答すると考えられている。例えば、全肺癌細胞株の60%は、非常に高いレベルのc−raf mRNAおよびタンパク質を発現すると報告されていることから、c−rafタンパク質の発現は、異常な細胞増殖における役割を果たすと考えられている。異常な増殖条件のさらなる例は、癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管での平滑筋細胞増殖、例えば、血管形成術後の狭窄または再狭窄のような過剰増殖性障害である。rafが一部をなす細胞シグナル伝達経路はまた、例えば、組織移植片拒絶、内毒素ショックおよび糸球体腎炎のような、T細胞増殖(T細胞活性化および増殖)により特徴付けられる炎症性障害にも関与している。
【0059】
ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junにより調節される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路において、最後から2番目の段階を表すタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c−junは、遺伝毒性傷害により損傷を受けたDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与する。従って、ある細胞においてSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を妨げ、そしてDNA損傷を誘発するか、もしくはDNA合成を阻害して、ある細胞のアポトーシスを誘発する薬剤か、または細胞増殖を阻害する薬剤に対して、細胞を感作する。
【0060】
分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)は、様々な細胞外シグナルに応答して、転写因子、翻訳因子および他の標的分子を活性化する、保存シグナル伝達経路のメンバーである。MAPKは、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MKK)による配列Thr−X−Tyrを有する二重リン酸化モチーフでのリン酸化により活性化される。高等真核生物において、MAPKシグナル伝達の生理的役割は、増殖、発癌、発生および分化のような細胞事象と相関している。従って、これらの経路によって(特に、MKK4およびMKK6によって)シグナル伝達を調節する能力は、炎症性疾患、自己免疫疾患および癌のような、MAPKシグナル伝達と関連のあるヒト疾患に関する処置および予防治療の発展をもたらすであろう。
【0061】
ヒトリボソームS6タンパク質キナーゼのファミリーは、少なくとも8つのメンバー(RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6 Kb)からなる。リボソームタンパク質S6タンパク質キナーゼは、重要な多面的機能を果たし、とりわけ、タンパク質生合成の間のmRNA翻訳の調節における重要な役割がある(Eur. J. Biochem 2000年11月;267(21):6321−30、Exp Cell Res. 1999年11月25日;253(1):100−9、Mol Cell Endocrinol. 1999年5月25日;151(1−2):65−77)。p70S6によるS6リボソームタンパク質のリン酸化はまた、細胞運動性の調節(Immunol. Cell Biol. 2000年8月;78(4):447−51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000年;65:101−27)にも関与しており、従って、腫瘍転移、免疫応答および組織修復ならびに他の疾患状態において重要であり得る。
【0062】
SAPK(また“jun N−末端キナーゼ”または“JNK’s”とも呼ばれる。)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junにより調節される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路において、最後から2番目の段階を表すタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c−junは、遺伝毒性傷害により損傷を受けたDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与する。ある細胞においてSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を妨げ、そしてDNA損傷を誘発することにより作用するそれらの癌治療法に対して、細胞を感作する。
【0063】
BTKは、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性血管炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症および喘息のような、自己免疫および/または炎症性疾患における役割を果たす。B細胞活性化におけるBTKの役割から、BTKの阻害剤は、自己抗体産生のようなB細胞介在性病原性活性の阻害剤として有用であり、またB細胞リンパ腫および白血病の処置に有用である。
【0064】
CHK2は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼのチェックポイントキナーゼファミリーのメンバーであって、環境変異原および内因性活性酸素種により引き起こされる損傷のような、DNA損傷の監視に使用される機構に関与する。結果として、それは、癌治療のための腫瘍抑制因子および標的として関与する。
CSKは、癌細胞、特に結腸癌の転移能に影響を与える。
【0065】
Fesは、様々なサイトカインシグナル伝達経路、さらにはまた、骨髄細胞の分化に関与している、非受容体型タンパク質チロシンキナーゼである。Fesはまた、顆粒球分化機構の重要な成分でもある。
【0066】
Flt3受容体チロシンキナーゼ活性は、白血病および骨髄異形成症候群に関与する。約25%のAMLにおいて、白血病細胞は、構成的に活性型の自己リン酸化(p)FLT3チロシンキナーゼを細胞表面上に発現する。p−FLT3の活性は、白血病細胞に増殖および生存優位性を与える。その白血病細胞がp−FLT3キナーゼ活性を発現する、急性白血病を患う患者は、全体の臨床転帰が不良である。p−FLT3キナーゼ活性の阻害は、白血病細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘発する。
【0067】
IKKαおよびIKKβ(1および2)の阻害剤は、関節リウマチ、移植片拒絶、炎症性腸疾患、変形性関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬、多発性硬化症、脳卒中、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、くも膜下出血、または脳および中枢神経系における炎症性メディエーターの過剰産生と関連のある他の疾患もしくは障害が含まれる疾患の治療法である。
【0068】
Metは、主要なヒト癌のほとんどの種類と関連があり、そして発現は、予後不良および転移と相関することが多い。Metの阻害剤は、肺癌、NSCLC(非小細胞肺癌)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌または外陰癌)、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺または副腎の癌)、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌(例えば、腎細胞癌、腎盂癌)、小児悪性腫瘍、中枢神経系腫瘍(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫または下垂体腺腫)のような癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病等のような血液癌、バレット食道(前癌状態症候群)、腫瘍性皮膚疾患、乾癬、菌状息肉腫および良性前立腺肥大症、糖尿病性網膜症、網膜虚血および網膜新血管新生のような糖尿病関連疾患、肝硬変、アテローム性動脈硬化症のような心血管疾患、自己免疫疾患のような免疫疾患、ならびに腎疾患が含まれる疾患の治療法である。好ましくは、その疾患は、急性骨髄性白血病および結腸直腸癌のような癌である。
【0069】
Nima関連キナーゼ2(Nek2)は、中心体に局在する有糸分裂の開始時に最大活性をもつ、細胞周期調節タンパク質キナーゼである。機能的研究は、Nek2を中心体分離および紡錘体形成に関与させている。頸部、卵巣、前立腺、また特に、乳房の腫瘍を含め、様々なヒト腫瘍から誘導される細胞株において、Nek2タンパク質は、2〜5倍上昇する。
【0070】
p70S6K介在性疾患または状態には、限定されるものではないが、癌および結節性硬化症のような増殖性障害が含まれる。
【0071】
前述に従って、本発明はさらに、先に記載した疾患または障害のいずれかを、そのような処置を必要とする対象において予防するまたは処置するための方法であって、該対象に、治療上有効な量(下記“投与および医薬組成物”を参照。)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。先の使用のいずれかに関して、必要とされる投薬量は、投与方法、処置すべき個々の状態、および所望の効果によって異なる。
【0072】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、単独で、または1種以上の治療剤と組み合わせて、当業界で知られている通常かつ許容され得る方法のいずれかによって、治療上有効な量で投与される。治療上有効な量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力、ならびに他の因子によって大幅に異なり得る。一般に、満足のいく結果は、約0.03〜2.5mg/kg(体重)の1日投薬量で全身に得られることが示される。大型哺乳類、例えば、ヒトにおいて指示された1日投薬量は、約0.5mg〜約100mgの範囲内であり、例えば、1日4回までの分割用量で、または遅延型で便利に投与される。経口投与に適当な単位投薬形態は、約1〜50mgの活性成分を含む。
【0073】
本発明の化合物は、いずれかの従来経路により、特に、経腸的に、例えば、経口的に、例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、または非経口的に、例えば、注射可能な溶液剤もしくは懸濁剤の形態で、局所的に、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤もしくはクリーム剤の形態で、または鼻腔投与、吸入もしくは坐剤の形態で、医薬組成物として投与され得る。少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤と共に、本発明の化合物を、遊離型で、または薬学的に許容される塩の形態で含む医薬組成物は、混合、造粒またはコーティング法により、従来方法で製造され得る。例えば、経口組成物は、a)希釈剤、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)潤滑剤、例えば、シリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤に関してはまた、c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望により、d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;および/またはe)吸収剤、着色料、香料および甘味料と共に、活性成分を含む錠剤またはゼラチンカプセル剤であり得る。注射可能な組成物は、等張水溶液または懸濁液であり得て、坐剤は、脂肪質の乳濁液または懸濁液から製造され得る。その組成物は、滅菌され得るか、および/または保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝剤のような補助剤を含み得る。加えて、それらはまた、他の治療上有益な物質も含み得る。経皮適用に適当な製剤には、担体と共に、有効量の本発明の化合物が含まれる。担体には、宿主の皮膚の通過を補助するために、吸収性の薬理学的に許容され得る溶剤が含まれ得る。例えば、経皮デバイスは、裏当て材、所望により、担体と共に化合物を含む貯蔵部、所望により、化合物を、制御された、かつ所定の速度で、長時間にわたり、宿主の皮膚へと送達するための速度制御バリア、およびそのデバイスを皮膚に固定するための手段を含むバンデージの形態である。マトリックス経皮製剤もまた使用され得る。例えば、皮膚および眼への局所適用に適当な製剤は、好ましくは、当業界でよく知られている水溶液剤、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤である。そのようなものは、溶解剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤および保存剤を含み得る。
【0074】
本発明の化合物は、1種以上の治療剤と組み合わせて(医薬組み合わせ)、治療上有効な量で投与され得る。例えば、相乗効果は、他の喘息治療、例えば、ステロイドおよびロイコトリエン拮抗薬で起こり得る。
【0075】
例えば、相乗効果は、例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、もしくはアスコマイシン、またはその免疫抑制類似体、例えば、シクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、もしくは同等の化合物、気管支拡張剤、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパガリン、免疫抑制抗体、とりわけ、白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58もしくはそれらのリガンド、またはCTLA41gのような他の免疫調節化合物と組み合わせて使用する場合、他の免疫調節または抗炎症物質で起こり得る。本発明の化合物を他の治療と併せて投与する場合、同時投与する化合物の投薬量は、勿論、使用する併用薬物の種類、使用する特定薬物、処置する状態等によって異なる。
【0076】
本発明はまた、a)遊離型での、または薬学的に許容される塩の形態での、本明細書中に開示するような本発明の化合物である第一薬剤、およびb)少なくとも1種の併用薬剤を含む医薬組み合わせ、例えば、キットも提供する。そのキットは、その投与説明書を含み得る。
【0077】
本明細書中で利用するような“同時投与”もしくは“併用投与”等という用語は、単独の患者への選択された複数治療剤の投与を包含することを意味し、その複数薬剤を必ずしも同じ投与経路によりまたは同時に投与するわけではないという処置計画が含まれることを意図する。
【0078】
本明細書中で使用するような“医薬組み合わせ”という用語は、1種以上の活性成分の混合または組み合わせから生ずる製品を意味し、また固定されたおよび固定されていない活性成分の組み合わせが両方含まれる。“固定された組み合わせ”という用語は、複数活性成分、例えば、式Iの化合物および併用薬剤が一つの物または投薬量の形態で両方とも同時に患者へと投与されることを意味する。“固定されていない組み合わせ”という用語は、複数活性成分、例えば、式Iの化合物および併用薬剤が、特定の時間制限なく、同時に、並行してまたは連続して、別の物として両方とも患者へと投与されることを意味し、ここで、そのような投与は、治療上有効なレベルの2種の化合物を患者の体内に与える。後者はまた、カクテル療法、例えば、3種以上の活性成分の投与にも適用される。
【0079】
本発明の化合物を製造するための方法
本発明にはまた、本発明の化合物の製造方法も含まれる。記載する反応において、反応性官能基、例えば、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらは、最終製品において望ましいとき、保護して、その反応におけるそれらの不要な参加を回避することが必要であり得る。標準的な技法に従って、従来の保護基が使用され得る。例えば、T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts、“Protective Groups in Organic Chemistry”において、John Wiley and Sons、1991年を参照。
【0080】
式Iの化合物は、以下の反応スキームIにおける通り進行させて、製造できる:
【化4】

[式中、R、R2a、R2bおよびRは、発明の要約に記載した通りであり、そしてLは、(反応スキームに示す通り)1H−1,2,4−トリアゾール−5−イルである。]。式Iの化合物は、適当な溶媒(例えば、NMP、DMF、nBuOH等)および適当な塩基(例えば、KCO等)の存在下、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させることにより製造され得る。その反応は、約0℃〜約180℃の温度範囲で行われて、完了するまで24時間かかり得る。
【0081】
式Iの化合物の詳細な合成例は、以下の実施例において見い出され得る。
【0082】
本発明の化合物を製造するためのさらなる方法
本発明の化合物は、遊離塩基型の化合物を薬学的に許容される無機または有機酸と反応させることにより、薬学的に許容される酸付加塩として製造され得る。あるいはまた、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離酸型の化合物を薬学的に許容される無機または有機塩基と反応させることにより製造され得る。あるいはまた、本発明の化合物の塩の形態は、出発物質または中間体の塩を使用して製造され得る。
【0083】
遊離酸または遊離塩基型の本発明の化合物は、各々、対応する塩基付加塩または酸付加塩の形態から製造され得る。例えば、酸付加塩の形態での本発明の化合物は、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム等)で処理することにより、対応する遊離塩基へと変換され得る。塩基付加塩の形態での本発明の化合物は、適当な酸(例えば、塩酸等)で処理することにより、対応する遊離酸へと変換され得る。
【0084】
未酸化型での本発明の化合物は、適当な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサン等)中、0〜80℃にて還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物等)で処理することにより、本発明の化合物のN−オキシドから製造され得る。
【0085】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に知られている方法により製造され得る(例えば、さらなる詳細に関しては、Saulnierら,(1994),Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,第4巻,1985頁を参照。)。例えば、適当なプロドラッグは、本発明の非誘導体化化合物を適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート(1,1-acyloxyalkylcarbanochloridate)、p−ニトロフェニルカーボネート(para-nitrophenyl carbonate)等)と反応させることにより製造され得る。
【0086】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に知られている方法により製造され得る。保護基の作成およびそれらの除去に適用可能な技術の詳細な説明は、T. W. Greene,“Protecting Groups in Organic Chemistry”,第3版,John Wiley and Sons,Inc.,1999年において見い出され得る。
【0087】
本発明の化合物は、便利には、本発明の方法の間に、溶媒和物(例えば、水和物)として製造され得るか、または形成され得る。本発明の化合物の水和物は、便利には、ダイオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を使用して、水性/有機溶媒混合物からの再結晶により製造され得る。
【0088】
本発明の化合物は、その化合物のラセミ混合物を光学的に活性な分割剤と反応させて、1対のジアステレオ異性化合物を形成し、そのジアステレオマーを分離して、光学的に純粋な鏡像異性体を回収することにより、それらの個々の立体異性体として製造され得る。鏡像異性体の分割は、本発明の化合物の共有結合ジアステレオ異性誘導体を使用して行われ得るが、解離可能な複合体(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは、異なる物理特性(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性等)を有し、またこれらの相違点を利用することにより容易に分離され得る。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または好ましくは、溶解度の差に基づいた分離/分割技術により分離され得る。次いで、ラセミ化をもたらさないであろういずれかの実用的方法により、光学的に純粋な鏡像異性体を分割剤と共に回収する。化合物のそれらのラセミ混合物からの立体異性体の分割に適用可能な技術のより詳細な説明は、Jean Jacques,Andre Collet,Samuel H. Wilen,“Enantiomers,Racemates and Resolutions”,John Wiley And Sons,Inc.,1981年において見い出され得る。
【0089】
要約すると、式Iの化合物は、
(a)反応スキームIの方法;および
(b)所望により、本発明の化合物の薬学的に許容される塩への変換;
(c)所望により、本発明の化合物の塩の形態の塩ではない形態への変換;
(d)所望により、本発明の化合物の未酸化型の薬学的に許容されるN−オキシドへの変換;
(e)所望により、本発明の化合物のN−オキシド型のその未酸化型への変換;
(f)所望により、本発明の化合物の個々の異性体の異性体の混合物からの分割;
(g)所望により、本発明の非誘導体化化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体への変換;ならびに
(h)所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体の非誘導体化型への変換;
を含む方法により製造され得る。
【0090】
出発物質の製造を特に記載しない限り、その化合物は、知られているか、または当業界で知られている方法と同様にして、もしくは以下の実施例に開示する通りに製造され得る。
【0091】
当業者は、先の変換が本発明の化合物の代表的な製造方法というだけであって、他のよく知られている方法が同様に使用され得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0092】
実施例
限定されるものではないが、本発明による式Iの化合物の製造を説明する以下の実施例により、本発明をさらに実証する。
【0093】
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチル安息香酸 5の合成
【化5】

【0094】
nBuOH(50mL)中の3−アミノ−4−メチル−安息香酸メチルエステル(0.6mol)の溶液に、70% 硝酸(2.7mL)を加えて、硝酸塩を形成した後、シアナミド水溶液(50%(重量)、7mL、0.09mol)と縮合させる。得られた混合物を還流温度で16時間加熱して、周囲温度まで冷却した後、ジエチルエーテル(100mL)を加える。0℃で30分間冷却した後、濾過して、1:1=メタノール:ジエチルエーテル(120mL)で洗浄して、3−グアニジノ−4−メチル−安息香酸メチルエステル 硝酸塩 2を得る。
【0095】
nBuOH(40mL)中の3−グアニジノ−4−メチル−安息香酸メチルエステル 硝酸塩 2(0.02mol)に、3(0.02mol)および水酸化ナトリウム薄片(0.02mol)を加える。得られた混合物を還流温度で12時間加熱して、エステル 4を得る。エステル 4のnBuOH溶液に、1N 水性NaOH(20mL)を加えて、還流温度で30分間加熱する。室温まで冷却した後、その混合物に、激しく撹拌しながら、1N(水性)HCl(20mL)をゆっくり加える。生成物を濾過により集めて、水で洗浄して、酸 5を得る。H NMR(400MHz,d−DMSO)δ 9.28(d,J=1.8Hz,1H),9.08(s,1H),8.7(dd,J=4.7,1.5Hz,1H),8.55(d,J=5.1Hz,1H),8.46(dt,J=8,1.8Hz,1H),8.31(s,1H),7.65(dd,J=7.8,1.5Hz,1H),7.54(dd,J=7.7,4.7Hz,1H),7.49(dd,J=5.2Hz,1H),7.37(d,J=7.9Hz,1H),3.08(s,3H)。MS(m/z)(M+1):307.2。
【0096】
反応物 3は、以下の手順により得ることができる。3−アセチルピリジン(2.47mol)およびN,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール(240mL)の混合物を還流温度で16時間加熱する。溶媒を減圧下に除去して、その残留物にヘキサン(100mL)を加えて、固体を結晶化させる。その固体を塩化メチレン−ヘキサンから再結晶化させて、3−ジメチルアミノ−1−(3−ピリジル)−2−プロペン−1−オンを得る。H NMR(400MHz,d−クロロホルム)δ 9.08(d,J=2.4Hz,1H),8.66(m,1H),8.20(m,1H),7.87(m,1H),7.37(m,1H),5.68(d,J=16.4Hz,1H),3.18(s,3H),2.97(s,3H)。
【0097】
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルベンゾヒドラジド 6の合成
【化6】

【0098】
4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)安息香酸メチルエステル 4(3.2g、10mmol)およびヒドラジン(6mmol)を無水EtOH(20mL)に溶解して、還流温度で一晩加熱する。その混合物を室温まで冷却する。固体を濾過し、水で洗浄して、減圧下に一晩乾燥させて、生成物6を淡黄色の固体として得る。H NMR(400MHz,d6−DMSO)δ 9.68(s,1H),9.26(m,1H),9.06(s,1H),8.69(dd,J=4.7,1.5Hz,1H),8.52(d,J=5.1,1.2Hz,1H),8.43(m,1H),8.1(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),7.56(m,2H),7.46(dd,J=5.1,1.6Hz,1H),7.3(d,J=7.9Hz,1H),4.45(s,1H),3.33(s,3H),3.31(s,1H)。MS(m/z)(M+1):321.1。
【0099】
{5−[5−(3−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−2−メチル−フェニル}−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン A1の合成
【化7】

【0100】
ヒドラジン 6(160mg、0.5mmol)および3−ジフルオロメトキシ−ベンゾニトリル(338mg、2mmol)を無水nBuOH(2mL)/NMP(0.5mL)に懸濁させて、マイクロ波オーブンにおいて180℃で1時間加熱する。その混合物を室温まで冷却する。その混合物を分取LC/MSにより精製して、生成物 A1を淡黄色の固体として得る。H NMR(400MHz,d4−MeOH)δ 9.32(s,1H),8.6(m,2H),8.51(d,J=4.9Hz,1H),7.95(d,J=7.5Hz,1H),7.86(s,1H),7.78(d,J=7.6Hz,1H),7.52(m,2H),7.42(m,2H),7.25(d,J=8.0Hz,1H),6.9(t,J=73.8Hz,1H),2.41(s,3H)。MS(m/z)(M+1):472.2。
【0101】
同様の手順を最終化合物 A2−A8の製造において使用する。
【0102】
{2−メチル−5−[5−(3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−フェニル}−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン A2:H NMR(400MHz,d6−DMSO)δ 10(s,1H),9.42(d,J=8.6Hz,1H),9.3(m,2H),9.09(d,J=5.2Hz,1H),8.99(s,1H),8.67(d,J=7.8Hz,1H),8.56(s,1H),8.31(dd,J=7.8,1.6Hz,1H),8.18(dd,J=7.8,5.5Hz,1H),8.1(t,J=8.0Hz,1H),8.0(d,J=5.2Hz,1H),7.87(m,2H),2.94(s,3H)。MS(m/z)(M+1):490.2。
【0103】
適当な出発物質を使用して、先の実施例(中間体および最終化合物)に記載した手順を繰り返すことにより、表1において同定される以下の式Iの化合物を得る。
【表1】

【表2】

【0104】
アッセイ
本発明の化合物をアッセイして、野生型Ba/F3細胞ならびにTel c−kitキナーゼおよびTel PDGFR融合チロシンキナーゼで形質転換されたBa/F3細胞の増殖を選択的に阻害するそれらの能力を測定する。加えて、本発明の化合物は、Mo7e細胞におけるSCF依存性増殖を選択的に阻害する。さらに、化合物をアッセイして、Abl、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、c−kit、LCK、PDGF−R、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼを阻害するそれらの能力を測定する。
【0105】
増殖アッセイ:BaF3ライブラリー−ブライト・グロ(Bright glo)読み出しプロトコル
化合物を、wt Ba/F3細胞およびTel融合チロシンキナーゼで形質転換されたBa/F3細胞の増殖を阻害するそれらの能力に関して試験する。非形質転換Ba/F3細胞を、組み換えIL3を含む培地で維持する。細胞を1ウェルあたり50ulの培地に5,000細胞で384ウェルのTCプレートへと播種して、試験化合物を0.06nM〜10μMで加える。次いで、その細胞を、37℃、5% COで48時間インキュベートする。その細胞をインキュベートした後、製造業者の説明書に従って、ブライト・グロ(BRIGHT GLO)(商標)(プロメガ(Promega)社)25μLを各々のウェルに加えて、アナリスト(Analyst) GT−発光モード−RLUで50000積分時間を使用して、そのプレートを読み取る。50% 阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を用量反応曲線から決定する。
【0106】
Mo7eアッセイ
96ウェルのフォーマットにおいてc−kitを内因的に発現するMo7e細胞を使用して、本明細書中に記載する化合物をSCF依存性増殖の阻害に関して試験する。簡単に言えば、連続的に2倍希釈した試験化合物(Cmax=10μM)を、ヒト組み換えSCFで刺激したMo7e細胞のそれらの抗増殖活性に関して評価する。37℃で48時間インキュベーションした後、プロメガ社製のMTT比色アッセイを使用することにより、細胞生存率を測定する。
【0107】
c−kit HTRFプロトコル
キナーゼ緩衝液(20mM トリス pH 7.5、10mM MgCl、0.01% BSA、0.1% Brij35、1mM DTT、5% グリセロール、0.05mM NaVO)中、25ngのc−kit(5ng/μL)および2μMのビオチン−EEEPQYEEIPIYLELLP−NHペプチドである、2倍濃度のc−kit酵素ミックスの一定量(5μL)を384のプロキシプレート(proxiplate)(パッカード(Packard)社)の各々のウェルに加える。そのプロキシプレートの最終列の各々のウェルは、バックグラウンドレベルを確かめるために、c−kit無しでc−kit酵素ミックス5μLを有する。本発明の化合物を各々のウェルに加えて、そのプレートを室温で30分間インキュベートする。キナーゼ緩衝液(5μL)中の2倍のATP(40μM)を各々のウェルに加えて、そのプレートを室温で3時間インキュベートする。検出ミックス(50% KF、40% キナーゼ緩衝液、10% EDTA、1:100に希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100に希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB))(10μL)を各々のウェルに加えて、そのプレートを室温でさらに1〜2時間インキュベートする。次いで、HTRFシグナルを検出器で読み取る。
【0108】
ヒトTG−HA−VSMC増殖アッセイ
ヒトTG−HA−VSMC細胞(ATCC)を、10% FBSを補充したDMEMにおいて80−90%の集密度まで増殖させた後、1% FBSおよび30ng/mL 組み換えヒトPDGF−BBを補充したDMEMに6e4細胞/mLの割合で再懸濁させる。次いで、細胞を50uL/ウェルの割合で384ウェルのプレートへとアリコートし、37℃で20時間インキュベートした後、100倍の化合物0.5uLで37℃にて48時間処理する。処理した後、25uLのセルタイター−グロ(CellTiter−Glo)を各々のウェルに15分間加えた後、そのプレートをCLIPR(モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices)社)で読み取る。
【0109】
PDGFRα/βランス(Lance)アッセイプロトコル
2倍濃度のPDGERβペプチドおよびATPミックス(4μM ビオチン−βA−βA−βA−AEEEEYVFIEAKKKペプチド、アッセイ緩衝液(20mM ヘペス(Hepes)、54mM MgCl、0.01% BSA、0.05% ツイーン(Tween)−20、1mM DTT、10% グリセロール、50μM NaVO)中の20μM ATP)のアリコート(2.5μL)を384のプロキシプレート(パッカード社)の各々のウェルに加える。そのプレートを遠心分離して、本発明の化合物(50nL)をピンツール(pintool)ディスペンサーによって各々のウェルに加える。各々のウェルに、2倍濃度の酵素ミックス(アッセイ緩衝液中、4.5ng/μLでのPDGFRα(カタログ番号PV4117)または1.5ng/μLでのPDGFRβ(カタログ番号PV3591))またはPDGFRα/β酵素無しのアッセイ緩衝液単独(2.5μL)を加える。そのプレートを室温で1.5時間インキュベートする。検出ミックス(5μL;50% 1M KF、40% キナーゼ緩衝液、10% EDTA、1:100に希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100に希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB))を各々のウェルに加えて、そのプロキシプレートを室温で1時間インキュベートした後、HTRFシグナルを検出器で読み取る。
【0110】
Ba/F3 FL FLT3増殖アッセイ
使用するマウス細胞株は、全長FLT3構築物を過剰発現するBa/F3 マウスプロ−B細胞株である。これらの細胞を、マウス組み換えIL3を加えて、ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補充したRPMI 1640/10% ウシ胎仔血清(RPMI/FBS)中で維持する。Ba/F3 全長FLT3細胞は、IL3飢餓に16時間付された後、1ウェルあたり25uLの培地に5,000細胞の割合で384ウェルのTCプレートへと播種して、試験化合物を0.06nM〜10μMで加える。その化合物を加えた後、細胞毒性制御のためのFLT3リガンドまたはIL3を1ウェルあたり25uLの培地に適当な濃度で加える。次いで、その細胞を、37℃、5% COで48時間インキュベートする。その細胞をインキュベートした後、製造業者の説明書に従って、ブライト・グロ(商標)(プロメガ社)25μLを各々のウェルに加えて、アナリスト GT−発光モード−RLUで50000積分時間を使用して、そのプレートを読み取る。
【0111】
細胞のBCR−Abl依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用するマウス細胞株は、BCR−Abl cDNAで形質転換された32D造血前駆細胞株(32D−p210)である。これらの細胞を、ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補充したRPMI/10% ウシ胎仔血清(RPMI/FCS)中で維持する。非形質転換32D細胞を、15%のWEHI馴化培地をIL3源として加えて、同様に維持する。
【0112】
32Dまたは32D−p210細胞の懸濁液50μLをグレイナー(Greiner)の384ウェルのマイクロプレート(黒)に1ウェルあたり5,000細胞の密度で播種する。試験化合物50nL(DMSO原液中、1mM)を各々のウェル(STI571が陽性対照として含まれる。)に加える。その細胞を、37℃、5% COで72時間インキュベートする。60% アラマー・ブルー(Alamar Blue)溶液(テック・ダイアグノスティックス(Tek diagnostics))10μLを各々のウェルに加えて、細胞をさらに24時間インキュベートする。アクキュエスト(Acquest)(商標)システム(モレキュラー・デバイス社)を使用して、蛍光強度(530nmで励起、580nmで発光)を定量化する。
【0113】
細胞のBCR−Abl依存性増殖の阻害
32D−p210細胞を96ウェルのTCプレートに1ウェルあたり15,000細胞の密度で播種する。2倍連続希釈の試験化合物50μL(Cmaxは、40μMである。)を各々のウェル(STI571が陽性対照として含まれる。)に加える。その細胞を、37℃、5% COで48時間インキュベートした後、MTT(プロメガ社)15μLを各々のウェルに加えて、その細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmでの光学密度を分光光度法で定量化して、50% 阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を用量反応曲線から決定する。
【0114】
細胞周期分布に対する効果
32Dおよび32D−p210細胞を5mLの培地に1ウェルあたり2.5×10細胞の割合で6ウェルのTCプレートへと播種して、試験化合物を1または10μMで加える(STI571が対照として含まれる。)。次いで、その細胞を、37℃、5% COで24または48時間インキュベートする。細胞懸濁液2mLをPBSで洗浄し、70% EtOHに1時間固定して、PBS/EDTA/RNアーゼ Aで30分間処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を加えて、蛍光強度をFACSカリバー(FACScalibur)(商標)システム(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)社)でのフローサイトメトリーにより定量化する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対するアポトーシス効果を実証するが、32D親細胞ではアポトーシスを誘発しない。
【0115】
細胞のBCR−Abl自己リン酸化に対する効果
BCR−Abl自己リン酸化を、c−abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を使用して、捕捉イライザ(Elisa)で定量化する。32D−p210細胞を50μLの培地において1ウェルあたり2×10細胞で96ウェルのTCプレートに播種する。2倍連続希釈の試験化合物50μL(Cmaxは、10μMである。)を各々のウェル(STI571が陽性対照として含まれる。)に加える。その細胞を、37℃、5% COで90分間インキュベートする。次いで、その細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む溶解緩衝液(50mM トリス−HCl、pH 7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM EGTAおよび1% NP−40)150μLを用いて、氷上で1時間処理する。細胞溶解物50μLを抗abl特異的抗体で予め被覆された96ウェルのオプティプレート(optiplates)に加えて、ブロックする。そのプレートを4℃で4時間インキュベートする。TBS−ツイーン20緩衝液で洗浄した後、アルカリホスファターゼが結合した抗ホスホチロシン抗体50μLを加えて、そのプレートを4℃でさらに一晩インキュベートする。TBS−ツイーン20緩衝液で洗浄した後、発光基質90μLを加えて、アクキュエスト(商標)システム(モレキュラー・デバイス社)を使用して、発光を定量化する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、細胞のBCR−Abl自己リン酸化を用量依存的方法で阻害する。
【0116】
BCR−Ablの変異型を発現する細胞の増殖に対する効果
本発明の化合物を、STI571に抵抗性または感受性の減少を与えるBCR−Ablの野生型または変異型(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)のいずれかを発現するBa/F3細胞に対するそれらの抗増殖効果に関して試験する。変異体−BCR−Abl発現細胞に対する、また非形質転換細胞に対する、これらの化合物の抗増殖効果を、先に記載した通り(IL3を欠く培地において)、10、3.3、1.1および0.37μMで試験した。非形質転換細胞に対する毒性を欠く化合物のIC50値を、先に記載したようにして得られた用量反応曲線から決定した。
【0117】
FGFR3(酵素アッセイ)
精製FGFR3(アップステート(Upstate)社)を用いてのキナーゼ活性アッセイを、キナーゼ緩衝液(30mM トリス−HCl pH 7.5、15mM MgCl、4.5mM MnCl、15μM NaVOおよび50μg/mL BSA)中、0.25μg/mLの酵素、および基質(5μg/mL ビオチン−ポリ−EY(Glu、Tyr)(CIS−US社)および3μM ATP)を含む、最終容量10μLにおいて行う。2つの溶液を作成する:最初に、キナーゼ緩衝液中にFGFR3酵素を含む1つ目の溶液5μLを384フォーマットのプロキシプレート(ProxiPlate)(商標)(パーキン−エルマー(Perkin−Elmer))へと分注した後、DMSOに溶解した化合物50nLを加え、次いで、キナーゼ緩衝液中に基質(ポリ−EY)およびATPを含む2つ目の溶液5μLを各々のウェルに加えた。その反応物を室温で1時間インキュベートし、HTRF検出混合物10μLを加えることにより停止させ、これは、30mM トリス−HCl pH 7.5、0.5M KF、50mM EDTA、0.2mg/mL BSA、15μg/mL ストレプトアビジン−XL665(CIS−US社)および150ng/mL クリプテートが結合した抗ホスホチロシン抗体(CIS−US社)を含む。ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を可能とするために、室温で1時間インキュベーションした後、時間分解蛍光(florescent)シグナルをアナリスト GT(モレキュラー・デバイス社)で読み取る。IC50値を、12の濃度(50μMから0.28nMまでの1:3希釈)での各々の化合物のパーセント阻害の線形回帰分析により計算する。このアッセイにおいて、本発明の化合物は、10nM〜2μMの範囲内にIC50を有する。
【0118】
FGFR3(細胞アッセイ)
本発明の化合物を、形質転換Ba/F3−TEL−FGFR3細胞増殖を阻害するそれらの能力に関して試験し、これは、FGFR3細胞キナーゼ活性に依存する。懸濁液中、培養培地として10% ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640と共に、Ba/F3−TEL−FGFR3を800,000細胞/mLまで培養する。細胞を50μLの培養培地に5000細胞/ウェルの割合で384ウェルフォーマットのプレートへと分注する。本発明の化合物をジメチルスルホキシド(dimethylsufoxide)(DMSO)に溶解して希釈する。12ポイントの1:3連続希釈をDMSOへと作成して、典型的には、10mMから0.05μMまでの範囲にわたる濃度勾配を作り出す。細胞を希釈化合物50nLと共に加えて、細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートする。増殖細胞により作り出される還元環境をモニターするために使用され得るアラマー・ブルー(Alamar Blue)(商標)(トレック・ダイアグノスティック・システムズ(TREK Diagnostic Systems))を最終濃度10%で細胞に加える。37℃の細胞培養インキュベーター中でさらに4時間インキュベーションした後、還元されたアラマー・ブルー(商標)からの蛍光シグナル(530nmで励起、580nmで発光)をアナリスト GT(モレキュラー・デバイス社)で定量化する。IC50値を、12の濃度での各々の化合物のパーセント阻害の線形回帰分析により計算する。
【0119】
b−Raf−酵素アッセイ
本発明の化合物を、b−Rafの活性を阻害するそれらの能力に関して試験する。そのアッセイは、壁が黒で底が透明な384ウェルのマキシソープ(MaxiSorp)プレート(NUNC社)で行う。基質であるIκBαをDPBSに希釈して(1:750)、15μLを各々のウェルに加える。そのプレートを4℃で一晩インキュベートして、EMBLAプレート洗浄機を使用して、TBST(25mM トリス pH 8.0、150mM NaClおよび0.05% ツイーン−20)で3回洗浄する。プレートをスーパーブロック(Superblock)(15μL/ウェル)により室温で3時間ブロックし、TBSTで3回洗浄して、パットを乾燥させる。20μM ATP(10μL)を含むアッセイ緩衝液を各々のウェルに加えた後、化合物100nLまたは500nLを加える。B−Rafをアッセイ緩衝液に(1μLを25μLへと)希釈して、希釈したb−Raf10μLを各々のウェルに加える(0.4μg/ウェル)。そのプレートを室温で2.5時間インキュベートする。そのプレートをTBSTで6回洗浄することにより、キナーゼ反応を停止させる。ホスホ(Phosph)−IκBα(Ser32/36)抗体をスーパーブロックに希釈して(1:10,000)、15μLを各々のウェルに加える。そのプレートを4℃で一晩インキュベートして、TBSTで6回洗浄する。APが結合したヤギ抗マウスIgGをスーパーブロックに希釈して(1:1,500)、15μLを各々のウェルに加える。プレートを室温で1時間インキュベートして、TBSTで6回洗浄する。蛍光アトフォス(Attophos)AP基質(プロメガ社)15μLを各々のウェルに加えて、プレートを室温で15分間インキュベートする。蛍光強度プログラム(励起455nm、発光580nm)を使用して、プレートをアクキュエストまたはアナリスト GTで読み取る。
【0120】
b−Raf−細胞アッセイ
本発明の化合物を、MEKのリン酸化を阻害するそれらの能力に関してA375細胞で試験する。A375細胞株(ATCC)は、ヒト黒色腫患者から誘導されて、それは、B−Raf遺伝子でのV599E変異を有する。B−Rafの変異のために、リン酸化MEKのレベルを評価する。サブコンフルエント乃至コンフルエントなA375細胞を化合物と共に無血清培地において37℃で2時間インキュベートする。次いで、細胞を冷PBSで1回洗浄して、1% トリトン(Triton)X100を含む溶解緩衝液で溶解する。遠心分離した後、上澄みをSDS−PAGEにかけて、次いで、ニトロセルロース膜に移す。次いで、その膜を抗−ホスホ−MEK抗体(ser217/221)(セル・シグナリング(Cell Signaling)社)と共にウエスタンブロットにかける。リン酸化MEKの量をニトロセルロース膜上のホスホ−MEKバンドの密度によりモニターする。
【0121】
アップステート社のキナーゼプロフィルター(KinaseProfiler)(商標)−放射酵素フィルター結合アッセイ
本発明の化合物を、キナーゼパネルの個々メンバーを阻害するそれらの能力に関して評価する。この一般的プロトコルに従って、その化合物を最終濃度10μMで二重に試験する。キナーゼ緩衝液組成物および基質は、“アップステート社のキナーゼプロフィルター(商標)”パネルに含まれる様々なキナーゼによって異なることに注意すべきである。キナーゼ緩衝液(2.5μL、10倍−必要な場合には、MnClを含む。)、活性キナーゼ(0.001−0.01単位;2.5μL)、キナーゼ緩衝液中の特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5−500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼ緩衝液(50μM;5μL)を氷上のエッペンドルフ中で混合する。Mg/ATPミックス(10μL;67.5(または33.75)mM MgCl、450(または225)μM ATPおよび1μCi/μl[γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を加えて、その反応を約30℃で約10分間インキュベートする。その反応混合物を2cm×2cmのP81(ホスホセルロース、正電荷を持つペプチド基質用)またはワットマン(Whatman) No.1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質用)正方紙上にスポットする(20μL)。そのアッセイ正方紙を0.75% リン酸で各々5分間4回洗浄して、アセトンで5分間1回洗浄する。そのアッセイ正方紙をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカクテル5mlを加えて、ペプチド基質への32P取り込み(cpm)をベックマン(Beckman)社のシンチレーションカウンターで定量化する。各々の反応に関して阻害パーセントを計算する。
【0122】
遊離型での、または薬学的に許容される塩の形態での、式Iの化合物は、例えば、本出願に記載したインビトロでの試験により示されるような、有益な薬理学的特性を示す。例えば、本発明の化合物は、Mo7eアッセイにおいて1μM未満のIC50を有し、またBcr−ablに関して10倍以上の選択性を示す。
【0123】
本明細書中に記載する実施例および態様は、説明を目的とするだけのものであること、およびそれに照らした種々の修正または変更が当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。刊行物、特許、および本明細書中に引用する特許出願は全て、参照することにより、全ての目的のために本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Lは、
【化2】

から選択される、3個の窒素原子を含む5員のヘテロアリール環であり;
、R2aおよびR2bは、水素、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、−NR1011、−OX(ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、C3−12シクロアルキルである。)から各々独立して選択されるか;またはRとR2aまたはRとR2bは、RおよびR2aまたはR2bが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;R10およびR11は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;またはR10とR11は、R10およびR11が両方結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルもしくはC1−10ヘテロアリールを形成し;
は、C6−10アリール、C1−10ヘテロアリール、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、水素、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR5a5b、−XNR5aOR5、−XC(O)R5a、−XS(O)0−25a、−XOX5a、−X5a、−XC(O)OR5a、−XOR5aおよび−XOXOR5aから独立して選択される1〜3個のラジカルで置換されており;ここで、XおよびXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;そしてR5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C6−10アリール、C3−12シクロアルキル、C1−10ヘテロアリールおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから各々独立して選択され;
ここで、Rの該アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル置換基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、−XOR、−XC(O)OR、−XC(O)NRおよび−Xから独立して選択される1〜3個のラジカルでさらに置換され得て;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;そしてRは、水素、C1−6アルキルおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから選択される。]
の化合物:およびその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Lが、
【化3】

から選択され;
、R2aおよびR2bが、水素、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、−NR1011、−OX(ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、C3−12シクロアルキルである。)から独立して選択されるか;またはRとR2aが、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;R10およびR11は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルコキシ、ハロ置換されたC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C1−10ヘテロアリールから独立して選択されるか;またはR10とR11は、R10およびR11が両方結合している窒素と一体となってC3−8ヘテロシクロアルキルまたはC1−10ヘテロアリールを形成し;
が、C6−10アリールおよびC1−10ヘテロアリールから選択され;ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR5a5b、−XNR5aOR5b、−XC(O)R5a、−XS(O)0−25a、−XOX5a、−X5a、−XC(O)OR5a、−XOR5aおよび−XOXOR5aから独立して選択される1〜3個のラジカルで置換されており;ここで、XおよびXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;そしてR5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C3−12シクロアルキル、C1−10ヘテロアリールおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから各々独立して選択され;
ここで、Rの該アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル置換基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換されたC1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルコキシ、−XOR、−XC(O)OR、−XC(O)NRおよび−Xから独立して選択される1〜3個のラジカルでさらに置換され得て;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;そしてRは、水素、C1−6アルキルおよびC3−12ヘテロシクロアルキルから選択される;
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、水素、ピロリジニル、モルホリノ、メトキシ、2−フルオロ−エトキシおよびメチルから選択され;R2aおよびR2bが水素であるか;またはRとR2aが、RおよびR2aが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、ジフルオロメトキシ、ヒドロキシ−メチル、トリフルオロメトキシ、メチル−スルホニル、メトキシおよびエトキシから選択される基で置換されたフェニル;ならびに2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イルから選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
{5−[5−(3−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−2−メチル−フェニル}−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン;N−(2−メチル−5−(5−(3−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(2−メチル−5−(5−(3−(メチルスルホニル)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(3−メトキシフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(3−エトキシフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;N−(5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−2−メチルフェニル)−4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン;および(3−(3−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)フェニル)メタノールから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
治療上有効な量の請求項1に記載の化合物を薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤が非経口投与に適当である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される賦形剤が経口投与に適当である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
キナーゼ活性を調節するための方法であって、その必要がある系または対象に、治療上有効な量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与し、それによって、該キナーゼ活性を調節することを含む方法。
【請求項10】
該キナーゼが、c−kit、PDGFRαおよびPDGFRβ、またはその組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該キナーゼが、Lyn、MAPK14、PDGFRα、PDGFRβ、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、PDGF−R、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkB、またはその組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物を、c−kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβキナーゼ受容体と直接接触させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
接触がインビトロまたはインビボにおいて起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
キナーゼ活性の調節が、疾患または状態の病状および/または症状を予防し、阻害し、または改善し得る疾患または状態を処置するための方法であって、対象に、治療上有効な量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物、そして所望により、治療上有効な量の第二薬剤を投与することを含む方法。
【請求項15】
該キナーゼが、c−kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼ受容体から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第二薬剤が、気管支拡張剤、抗炎症剤、ロイコトリエン拮抗薬、またはIgE遮断薬である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物を、第二薬剤より前に、第二薬剤と同時に、または第二薬剤の後に投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
該疾患または状態が、腫瘍性障害、アレルギー障害、炎症性障害、自己免疫障害、マラリア原虫関連疾患、肥満細胞関連疾患、移植片−対−宿主疾患、メタボリック症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、物質乱用障害、プリオン病、癌、心臓疾患、線維性疾患、特発性動脈高血圧、強皮症、および原発性肺高血圧から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍性障害が、肥満細胞症、消化管間質腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群(myelodyplastic syndrome)、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、膠芽細胞腫、および星状細胞腫から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アレルギー障害が、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑(erythema multifonne)、皮膚壊死性血管炎(cutaneous necrotizing venulitis)、虫刺されによる皮膚炎、および吸血寄生虫感染症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
炎症性障害が、関節リウマチ、結膜炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節炎、および痛風性関節炎から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
自己免疫障害が、多発性硬化症、乾癬、腸炎症性疾患、過敏性腸症候群、過敏性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、局所性または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosis)、皮膚ループス、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患、および増殖性糸球体腎炎から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
移植片−対−宿主疾患が臓器移植による移植片拒絶である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
臓器移植が、腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植、および骨髄移植から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
メタボリック症候群が、I型糖尿病、II型糖尿病、および肥満から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
CNS関連障害が、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、拒食症、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神機能低下、集中力低下、悲観的懸念、動揺、自己非難および性欲減退、不安障害、精神障害、および統合失調症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
神経変性障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患、および筋萎縮性側索硬化症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
疼痛状態が、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛、および心因性疼痛症候群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
物質使用障害が、薬物中毒、薬物乱用、薬物習慣性、薬物依存性、離脱症候群、および過剰摂取から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
癌が、黒色腫、消化管間質腫瘍、結腸直腸癌、小細胞肺癌、および他の固形腫瘍から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
線維性疾患が、C型肝炎、肝線維症、心線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、肺線維症、および骨髄線維症から選択される、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−526148(P2010−526148A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507541(P2010−507541)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/062304
【国際公開番号】WO2008/137605
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】