説明

insitu制御放出薬剤送達システム

薬剤又は治療剤の長期制御放出のためのシステムが記載される。本発明によれば、ミクロスフェアに含まれる1種以上の薬剤又は治療剤は、温度感受性ヒドロゲルと混合され、その後、薬剤又は治療剤の所望部位に直接導入される。温度感受性ヒドロゲルも、短期制御放出用の薬剤又は治療剤、例えば鎮痛薬を含むことができる。温度感受性ヒドロゲルは室温で液体状態であるが、注射の際には簡単にゲル状になる。このシステムは、疾患、障害又は症状、例えば腫瘍、椎間板起因の背痛、又は関節炎の治療に特に適しており、薬剤又は治療剤の局所投与を保証する。さらに、本明細書は薬剤又は治療剤を含有するミクロスフェアの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬剤の制御送達のための温度感受性組成物、及びこれらの組成物を介して被験体の特定の部位に薬剤又は治療剤を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
標的指向性治療送達手段は、薬剤の毒性が問題である場合に特に重要である。特定の治療送達法は、毒性の副作用を最小化し、必要な用量を低下させ、かつ患者の費用を減少させることに役立ち得る。本発明は、薬剤及び治療送達の分野におけるこれらの及び/又は他の重要なニーズへの取り組みに関する。
【0003】
製薬学、遺伝子工学及びバイオテクノロジー分野の急速な進歩が、増加数の薬剤及び治療剤の開発に導いている。したがって、これらの新規医薬品の投与方法の開発がますます重要になってきている。
【0004】
多くの薬剤及び治療剤は比較的短い半減期を有し、効果的なレベルを達成するために頻繁な投与が必要である。患者の利便性を増加し、かつ効能を改善するために、薬剤及び治療剤の制御放出組成物が非常に望ましい。利用可能なポリマー及びヒドロゲルによりもたらされる進歩にもかかわらず、患者への薬剤又は治療剤の送達は、大部分が全身的かつ急速であり、一部の場合では所望の結果を達成することができない。したがって、当該技術分野において、特に制御放出様式で、被験体に薬剤又は治療剤を局所的に送達する手段に関するニーズがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、動物への薬剤又は治療剤の部位特異的送達を提供することを一の目的とする。
【0006】
本発明はさらに、動物への薬剤又は治療剤の制御放出を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はさらに、動物の特定の部位に薬剤又は治療剤を局在化することを目的とする。
【0008】
本発明はさらに、疾患、障害又は症状の治療のために、動物に薬剤又は治療剤を送達することを目的とする。
【0009】
これらの及び他の目的は、以下の説明から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、温度感受性ヒドロゲル及び生体適合性ポリマーのミクロスフェアの使用により、薬剤又は治療剤の制御送達を可能にする。哺乳動物を治療するためのこのシステムの使用は、薬剤又は治療剤のより少ない投与頻度を要する利点及び外科的手術の介在を回避する利点を有する。したがって、本発明は、短期又は長期の効果或いは治療に適するシステム、方法及び医薬組成物を含む。
【0011】
本発明によれば、生体適合性ポリマーから作製された、薬剤又は治療剤を含むミクロスフェアが作製される。これらのミクロスフェアは、温度感受性ヒドロゲルに混合されかつその中に懸濁される。室温でこのヒドロゲルは液体状態である。被験体への注入の直後に、液体ヒドロゲルは体温によってゲルになる。ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤は、被験体の細胞外マトリックス中に拡散し、標的部位に制御様式で放出される。
【0012】
本発明は、薬剤又は治療剤を含有する生分解性でかつ生体適合性の複数のポリマーミクロスフェアを含む、薬剤の制御放出用の医薬組成物であって、該ミクロスフェアは温度感受性ヒドロゲル中に懸濁される、上記医薬組成物を含む。このシステムを薬剤又は治療剤を必要とする患者に導入することを含む、疾患、障害又は症状を治療する方法、並びに本発明のシステムを製造する方法が開示される。
【0013】
本発明によるin situゲル化システムは、薬剤又は治療剤を標的(例えば、疼痛性の椎間板又は腫瘍など)に直接送達することができ、かつこの標的領域での薬剤又は治療剤の制御放出によって短期又は長期の治療を提供することができる。このシステムは薬剤又は治療剤の送達のために標的となる領域に適用される。このシステムの使用は、哺乳動物にin vivoで薬剤又は治療剤を導入するために必要ないずれの手段(侵襲的外科手術及び/又は好ましくは注射による前記位置への使用を含む)によってもよい。本発明のin situゲル化システムは、他の治療における使用にも適合し得る。
【0014】
図面の簡単な説明
(後述の「図面の簡単な説明」の項を参照のこと。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好適な実施形態の詳細な説明
本発明はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物に含まれる薬剤又は治療剤の部位特異的送達のための方法及び組成物を提供する。これらの方法及び組成物は、これに限定されるものではないが、ウイルス、酵母及び細菌感染症、癌、炎症、自己免疫疾患、関節及び腰椎(back)障害、並びに関節炎を含む、様々な疾患、障害及び症状の治療のために、これらの組成物の持続放出及び/又は制御放出による送達を提供する。
【0016】
定義
本明細書で使用する「生体適合性」という用語は、所望でない後遺症なく身体と相互作用する物質を意味するべく、本明細書で使用される。
【0017】
本明細書で使用する「ミクロスフェア」という用語は、ポリマーから形成される球状粒子を指す。
【0018】
本明細書で使用する「生分解性」という用語は、酵素的又は化学的に或いは別の手段で、より単純な化学種にin vivoで分解される材料を指す。
【0019】
本明細書で使用する「持続放出性」という用語は、一定期間にわたる薬剤又は治療剤或いはその組合せの連続的な放出を指す。
【0020】
本明細書で使用する「制御放出」という用語は、本発明の薬剤送達製剤に従って送達される薬剤又は治療剤の速度及び/又は量の制御を指す。制御放出は、連続又は不連続であることができ、及び/或いは線形又は非線形であることができる。これは、所望の効果を生じさせるために、単独で、組合せで又は連続的に投与される、1以上のタイプのポリマー組成物、薬剤負荷量、賦形剤又は分解促進剤の包含、或いは他の改質剤を用いて達成することができる。
【0021】
本明細書で使用される「薬剤」という用語は、ヒト及び/又は非ヒト動物の疾患、障害又は他の症状の診断、特徴付け、回復、緩和、治療、予防又は発症の軽減に使用することが意図される物質を指す。
【0022】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、生物(ヒト又は非ヒト動物)に投与される際に、局部及び/又は全身作用によって所望の薬理学的作用、免疫作用及び/又は生理学的作用を誘導する物質の任意の化合物又は組成物を指す。したがって、この用語は、従来から薬剤、ワクチン、及び例えばタンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構築物などの分子を含む生物医薬品とみなされている化合物又は化学物質を包含する。「治療剤」という用語は、主要なあらゆる治療領域において使用するための化合物又は組成物を含み、これに限定されるものではないが、抗生物質及び抗ウイルス薬などの抗感染薬;鎮痛薬及び鎮痛薬の組合せ;局部麻酔薬及び全身麻酔薬;食欲抑制薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;制嘔吐剤;偏頭痛治療薬;抗腫瘍薬;止痒剤;抗精神病薬;解熱剤;鎮痙薬;心血管用薬(カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬、βアゴニスト及び不整脈治療剤を含む);抗高血圧薬;化学療法剤;利尿剤;血管拡張薬;中枢神経興奮薬;感冒薬;鬱血除去薬;診断薬;ホルモン;骨成長刺激剤及び骨吸収阻害剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;精神刺激薬;鎮静剤;精神安定剤;タンパク質、ペプチド及びその断片(天然、化学合成又は組換え的に製造されるものを含む);並びに核酸分子(2以上のヌクレオチド(リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれか)の多量体型、例えば二本鎖及び一本鎖分子並びにスーパーコイル状又は凝縮分子、遺伝子構築物、発現ベクター、プラスミド、アンチセンス分子など)を含む。
【0023】
本発明は、ミクロスフェア-ヒドロゲル混合物に含まれる薬剤又は治療剤の部位特異的送達のための方法及び組成物を提供する。本発明の薬剤送達システムによれば、薬剤又は治療剤は被験体の標的部位に制御様式で放出され得る。一実施形態では、ミクロスフェアを含む温度感受性ヒドロゲルを利用して、被験体への薬剤又は治療剤の部位特異的放出をもたらす。別の実施形態では、温度感受性ヒドロゲルは、被験体へ投与することができる少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含み、その結果、薬剤又は治療剤がヒドロゲルからの拡散及び/又はヒドロゲルの分解によって放出される。別の実施形態では、ヒドロゲルは、被験体へ投与することができる少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含むミクロスフェアを含み、その結果、薬剤又は治療剤がミクロスフェアからの拡散及び/又はミクロスフェアの分解によって放出される。
【0024】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、対象の方法に従って治療される、被験体、ヒト又は動物の症状における任意の改善を指し、身体検査、実験室方法又は機器による方法を用いて検出することができる疾患、障害又は症状の、防止又は予防効果、或いは兆候及び病状の重篤度における任意の緩和、を得ることを含む。
【0025】
特定の疾患又は障害と併せて定義されない限り、本明細書で使用する「治療する(「treat」又は「treating」)」という用語は、(i)疾患、障害又は症状を、該疾患、障害及び/又は障害に罹り易いと思われるが、依然としてこれに罹患していると診断されていない動物又はヒトでの発症から予防すること;(ii)疾患、障害又は症状を阻害すること、すなわちその発達を停止すること;及び/又は(iii)疾患、障害又は症状を取り除くこと、すなわち疾患、障害及び/又は症状の退行を生じさせることを指す。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形(「a」、「an」及び「the」)は、その文脈が明確に指示していない限り、複数を含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、温度感受性ヒドロゲルが、少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含むポリマーミクロスフェアを送達するために使用される。
【0028】
ポリマーは本発明の温度感受性ヒドロゲルを作製する際に使用される。温度感受性ヒドロゲルは、周囲の室温付近(約20℃)で液体であり、かつ体温付近(約37℃)で固体(ゲル)に転移するように設計される。温度感受性ヒドロゲルの作製に使用されるポリマーは、ヒドロゲルを支持するために必要な性質を保持する限り、非限定的に任意のポリマー材料であり得る。温度感受性ヒドロゲルを作製するために必要なポリマーの例として、これに限定されるものではないが、N-イソプロピルアクリルアミド重合体、エチルヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)(ポロキサマー又はPLURONICS(登録商標)重合体として一般的に知られる)、並びにポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体及びその類似体を含む。ポロキサマーは、ポリエチレンオキシドの2つの親水性ブロックと、それによって挟まれる、中心のポリプロプロピレンオキシドの疎水性ブロックとからなる、ABA型のブロック共重合体である。このポリマーは、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続的な重合から誘導される。
【0029】
別の態様では、ヒドロゲルは、共有結合、イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して、水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造(open-lattice structure)を作ることによって作製される。ヒドロゲルを形成するために使用できる材料の例は、イオン的に架橋される、アルギナートなどの多糖、ポリホスファジン及びポリアクリレート、或いはそれぞれ温度又はpHによって架橋される、PLURONICS(登録商標)重合体又はTETRONICS(登録商標)重合体、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体などのブロック共重合体を含む。これらのポリマーは市販されているか又は当業者に公知の方法を用いて合成することができる。例えばConcise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, E. Goethals編集(Pergamen Press, Elmsford, N.Y. 1980)を参照されたい。
【0030】
温度感受性ヒドロゲルは、当業者に慣用の標準的な技術を用いて作製することができる。例えば、温度感受性ヒドロゲルは、ポリマーを製造するか又は市販のポリマーを購入し、該ポリマーを水又は他の溶媒に溶解させ、溶解したポリマーに該ポリマーの架橋を容易にする試薬(例えばヒアルロン酸ナトリウム(SH)など)を添加することによって作製することができる。さらに実施例2〜4を参照されたい。ヒドロゲルを製造するために必要な技術、量、温度、及び時間は当業者に公知である。
【0031】
様々な温度に対するヒドロゲルの感受性、例えば液体(室温で)からゲル(体温で)に可逆的に転移するヒドロゲルの能力は、様々な温度で粘度及び体積変化を測定する標準的なアッセイ又は技術を用いて、例えば実施例2〜4及び図7〜11に詳細に記載される粘度計を用いて、測定することができる。
【0032】
温度感受性ヒドロゲルポリマーは、短期間の治療効果又は治療のための、少なくとも1種の薬剤又は治療剤をさらに含んでもよい。薬剤又は治療剤は、溶媒にポリマーを溶解する前に、溶解中に、又は溶解した後で、ヒドロゲルを製造するために使用されるポリマーに添加し得る。薬剤又は治療剤は、薬剤又は治療剤の、より均一な分散又は溶解を容易にするために、ポリマーを溶液に溶解する前に添加されることが好ましい。
【0033】
本発明の一態様では、組成物は少なくとも1種のミクロスフェアと混合される温度感受性ヒドロゲルを含む。別の態様では、ミクロスフェアは、ミクロスフェア-ヒドロゲル混合物の約10%〜約50容量%を構成することが好ましい。
【0034】
少なくとも1種の生分解性ポリマーが本発明のミクロスフェアの作製に使用される。ミクロスフェアの作製に使用される生分解性ポリマーは、ミクロスフェアを提供するために必要な生体適合性及び生分解性を保持し、かつ当然に哺乳動物に対して非毒性である限り、非限定的に任意のポリマー材料であり得る。生分解性ポリマーは、天然及び合成起源のものを含む。天然ポリマーの例は、タンパク質、例えばアルブミン、コラーゲン、合成ポリアミノ酸及びプロラミンなど、並びに多糖、例えばアルギナート、ヘパリン及び他の天然の糖単位の生分解性ポリマーなどを含む。生分解性ポリマーの適当な例は表1に示され、これに限定されるものではないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-γ-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトカルボナート)又はポリ(ホスホエステル)、或いはこれらのポリマーの混合物又は共重合体を含む。例示のポリ(α-ヒドロキシ酸)は、ポリ(グリコール酸)、ポリ(DL-乳酸)及びポリ(L-乳酸)を含む。例示のポリ(ラクトン)は、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、及びポリ(トリメチレンカルボナート)を含む。
【0035】
本発明で好ましく使用することができる生分解性ポリマーとしてさらに、ポリ-L-乳酸(以降、「PLLA」と称する)、ポリ-D,L-乳酸(以降、「PDLLA」と称する)及びポリ乳酸-コ-グリコール酸(以降、「PLGA」と称する)を含む。特に、5,000〜500,000g/モルの分子量を有する、ポリ乳酸及び乳酸-グリコール酸共重合体(以降、「コポリ(乳/グリコール)酸」と称する)がより好ましい。これらのポリマーは、単独で、又はその2以上の混合物の形態で使用することができる。生分解性ポリマーの別の例は下記の表1に記載される。
【表1】

【0036】
生分解性ポリマーは、薬剤の制御送達における多くの研究の対象とされてきた(Contiら, J. Microencapsulation 9:153 (1992); Cohen及びBernstein, Microparticulate Systems for the Delivery of Proteins and Vaccines (Marcel Dekker Inc. 1996))。生分解性ポリマーから薬剤担体として形成されるミクロスフェアは、大きな表面積を提供する利点、容易に注入可能である利点、及び薬剤放出の終了後に除去する必要がないという利点を有する。注入可能な薬剤送達手段として使用される際に、薬剤の放出速度及びミクロスフェアと細胞との相互作用は、ミクロスフェアの粒径分布に強く依存することが見出された(Amsden及びGoosen, J. Contr. Rel. 43:183 (1997); Baker, Controlled Release of Biologically Active Agents (John Wiley 1987); Ishikawaら, J. Biomater. Sci., Polymer Ed. 2:53 (1991))。
【0037】
したがって、ミクロスフェアの平均粒径及び粒径分布を制御することが可能な条件下で高分子ミクロスフェアを作製する方法の開発を目的とした研究を開示する非常に多くの刊行物が存在する。これらの方法は、モノマーの分散重合、乳化溶液中で溶解したポリマーを電位差分散(potentiometric dispersion)した後の溶媒蒸発、静電的に制御された押出成形、多孔質膜を介して溶解ポリマーを乳化溶液に注入した後の溶媒蒸発、並びに熱融解カプセル封入(hot melt encapsulation)を含む(例えばKuriyamaら, J. Appl. Poly. Sci. 50:107 (1993); Rembaumら, 米国特許第4,138,383号; O'Donnellら, J. Microencaps. 12:155 (1995); Hommelら, 米国特許第4,956,128号; Amsden及びGoosen, J. Contr. Rel. 43:183 (1997); Reyderman及びStavchansky, Pharm. Dev. Technol. 1:223 (1996); Ipponmatsuら, 米国特許第5,376,347号; Shigaら, J. Pharm. Pharmacol. 48:891 (1996), (Jameelaら, J. Biomater Sci Polym Ed 8:457 (1997)を参照)。
【0038】
生分解性ミクロスフェアは、例えばMathiowitz及びLanger, J. Controlled Release 5,13-22 (1987); Mathiowitzら, Reactive Polymers 6, 275-283 (1987);並びにMathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 35, 755-774 (1988)(その教示を本明細書に組み入れる)に記載される、多くの方法のいずれかを用いて、薬剤又は治療剤を含むように作製することができる。方法の選択は、Mathiowitz及びLanger (J. Controlled Release 5:13-22 (1987)); Mathiowitzら(Reactive Polymers 6:275-283 (1987)); Mathiowitzら(J. Appl. Polymer Sci. 35:755-774 (1988)); Mathiowitzら, Scanning Microscopy 4,329-340 (1990); Mathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 45, 125-134 (1992);並びにBenitaら, J. Pharm. Sci. 73, 1721-1724 (1984)(その教示を本明細書に組み入れる)によって記載されるように、ポリマーの選択、サイズ、外形、及び望まれる結晶度に左右される。方法として、溶媒蒸発、相分離、噴霧乾燥及び熱融解カプセル封入を含む。米国特許第4,272,398号;3,773,919号; 3,737,337号; 及び3,523,906号は、ミクロスフェアの製造方法の代表的なものであり、参照により本明細書に組み入れる。
【0039】
さらなる方法として、適当な懸濁化剤を含む連続液体培地にモノマー材料を流入する層流ジェットの振動励起、凍結したモノマー滴をゆっくりと解凍する照射、乳化及び蒸発、高剪断装置及び高い疎水性相対親水性相比を用いた乳化及び蒸発、溶媒、非溶媒混合物中での制御重合、高剪断気流中への押出成形、溶解したポリマーの、流動する非溶媒への、該非溶媒の流動方向と平行に向けられた針による連続的な注入を含む(さらに例えばTimm及びColeman, 米国特許第4,444,961号; Rhimら. 米国特許第4,981,625号; Sansdrap及びMoes, Int. J. Pharm. 98:157 (1993); Rourke, 米国特許第5,643,506号; Sosnowskiら, J. Bioact. Compat. Polym. 9:345 (1994); Wang, 米国特許第5,260,002号; Leelarasameeら, J. Microencaps. 5:147 (1988)を参照)。
【0040】
ミクロスフェアは生体適合性ポリマーから作製し、好ましい実施形態では、米国特許第4,389,330 (Ticeら)に記載されるものと類似した、一回の乳化処理によって作製する。この一回の乳化処理において、生分解性ポリマーを含む揮発性の有機溶媒相、ポリビニルアルコールなどの乳化剤を必然的に含む水溶液、及び生理活性物質をホモジネートすることにより乳濁液を得る。溶媒を蒸発し、生じる固化ミクロスフェアを凍結乾燥する。好適な実施形態のミクロスフェアは20μmの平均径を有する。
【0041】
本発明の薬剤送達システムの一態様では、当該技術分野で公知の方法に従って、薬剤又は治療剤を生分解性ポリマーと混合してミクロスフェアを作製する。水非混和性有機溶媒(例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)と水混和性有機溶媒(例えばアセトニトリル、アセトンなど)の両方に溶解する生分解性ポリマーを使用することが好ましい。
【0042】
好適な実施形態では、生分解性ポリマーを適当な量の高分子界面活性剤と混合して本発明のミクロスフェアを作製する。この高分子界面活性剤は、ミクロスフェアの溶解速度と薬剤の放出速度とを制御するために添加される。ポリマーの性質と剤形の性質とを変更することによって、これらの各放出機構の寄与を制御することができ、かつ薬剤又は治療剤の放出速度を変更することができる。ゆっくりと消耗するポリマー(ポリL-ラクチドなど)又は低グリコリド組成物を含む高分子量のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、拡散が制御されるように放出を生じさせる。グリコリド組成物を増加させること及び分子量を減少させることにより、水分吸収及びポリマーの加水分解の両方を増強し、放出の速度論に消耗成分を追加する。任意の高分子界面活性剤が、これらが親水基と疎水基とを有する両親媒性ブロック共重合体であることを条件として、非限定的に使用し得ることが好ましく、その例として、上記の生分解性ポリマーのジブロック、トリブロック若しくはマルチブロック共重合体又はグラフト共重合体、及びポリエチレングリコールが挙げられる。かかる界面活性剤として、ポリ乳酸-ポリエチレングリコールブロック共重合体が好ましく、ポリ-L-乳酸-ポリエチレングリコールジブロック共重合体(PLLA-PEG、以降、「DiPLE」と称する)又はポリ-L-乳酸-ポリエチレングリコール-ポリ-L-乳酸トリブロック共重合体(PLLA-PEG-PLLA、以降、「TriPLE」と称する)が最も好ましい。
【0043】
ミクロスフェアを作製する他の方法、例えば二重乳化法(Edwardsら, Science 276: 1868-1871, 1997)、相逆転(phase inversion)マイクロカプセル化法(Mathiowitzら, Nature 386: 410-413, 1997)又は噴霧凍結法Putney及びBurke, Nature Biotechnology 16: 153-157, 1998)なども本発明の方法に使用し得ることに留意すべきである。上記生分解性ポリマーと薬剤又は治療剤との混合比を望ましい効果に従って適切に決定できることは、関連分野の当業者に周知である。一態様では、薬剤又は治療剤とミクロスフェアとの混合比は、ミクロスフェアの重量に基づいて0.1〜約70wt%の範囲内、好ましくはミクロスフェアの重量に基づいて0.1〜約50wt%の範囲である。この比が、生分解性ポリマーに基づいて10〜約100重量部の範囲内で選択されることが望ましい。ミクロスフェアの適切な粒径は、直径0.001〜約1000μm、好ましくは1〜100μmの範囲内である。
【0044】
本発明の別の実施形態では、薬剤送達システムは、薬剤又は治療剤を含むミクロスフェアを含む。薬剤又は治療剤を高分子ミクロスフェアに組み込むことができる様々な技術が知られており、これに限定されるものではないが、噴霧乾燥、溶媒蒸発、相分離、急速凍結及び溶媒抽出が挙げられる。噴霧乾燥では、ポリマー及び要素をポリマー用の溶媒中で共に混合し、次いで、溶液を噴霧することによって溶媒を蒸発させて、活性物質を含む高分子小滴を残す。噴霧乾燥はK. Masters(「Spray Drying Handbook」,John Wiley & Sons, New York 1984);及びPatrick B. Deasy (「Microencapsulation and Related Drug Processes」,Marcel Dekker, Inc., New York 1984)(その教示は本明細書に組み入れる)によって詳細に検討されている。
【0045】
溶媒蒸発技術を使用してミクロスフェアを生じさせることができる。これらの技術は、溶解又は分散した活性物質のいずれかを含む有機溶媒にポリマーを溶解させることを含む。次いで、ポリマー/活性物質溶液を継続的に攪拌した相(通常は水性である)に添加する。乳化剤は水中油型乳剤を安定化するために水相に含まれる。次いで、有機溶媒を数時間以上の期間にわたって蒸発することによって、コア材料周辺にポリマーを付着させる。溶媒は、米国特許第3,737,337号及び米国特許第3,523,906号、又は米国特許第3,691,090号(減圧下)に記載されるように1段階で、或いは米国特許第3,891,570号に示されるように熱を用いることによって、ミクロスフェアから除去することができる。2段階の技術は米国特許第4,389,330号に記載されている。凍結乾燥も、Satoら(「Porous Biodegradable Microspheres for Controlled Drug Delivery. I. Assessment of Processing Conditions and Solvent Removal Techniques」,Pharmaceutical Research 5, 21-30 (1988))によって報告されているように、ミクロスフェアから溶媒を除去するために使用されている。これらの方法の教示は本明細書に組み入れる。
【0046】
相分離技術もミクロスフェアを生じさせるために使用することができる。これらの技術は、油中水型乳剤又は水中油型乳剤の生成を含む。ポリマーは、温度、pH、イオン強度の変化、又は沈殿剤の添加によって連続相から活性物質上に沈殿する。例えば、米国特許第4,675,800号等は、活性タンパク質を含むポリ(乳-コ-グリコール)酸ミクロスフェアの生成を記載する。
【0047】
溶液中にカプセル封入されるべきポリマー及び剤は、超音波装置を用いて液化ガス中に噴霧される。噴霧された粒子は、液化ガス(液体窒素)に接触する際に凍結して、凍結した球体を生じる。これらは凍結した非溶媒(エタノール)の表面に沈降する。液化ガスが気化され、球体は非溶媒が解凍すると共に非溶媒中に沈降し始める。球体中の溶媒は非溶媒中に抽出されて、カプセル封入されるべき剤を含むミクロスフェアを生じる。適切な場合、例えば球体がポリラクチド-コ-グリコリド重合体から形成される場合には、ヘキサンなどの他の非溶媒を上記非溶媒(エタノール)に添加することにより、特定のポリマーからの溶媒抽出の速度を増加することができる。
【0048】
あるいは、ポリマー用の低温非溶媒は、該非溶媒の温度がポリマー/活性物質溶液の凍結温度以下であることを条件として、液化ガスで凍結した非溶媒の組合せに取って代わることができる。ポリマー用の非溶媒よりも高い融点を有するポリマー用の溶媒を選択することが重要であり、その結果、非溶媒が最初に融解し、凍結したミクロスフェアが後の解凍時に液体への浸透が可能になる。高分子ミクロスフェアを製造するために低温液体非溶媒液系を使用する場合、ミクロスフェアは即座に非溶媒中に沈降する。ミクロスフェア中の溶媒は解凍するので、非溶媒中に抽出される。ポリマー用の溶媒とポリマー用の非溶媒は、ミクロスフェアからの溶媒の抽出を可能にするために混和性である必要がある。
【0049】
本発明の一態様では、作製したミクロスフェアは、ヒドロゲルを作製した後にヒドロゲルと混合し、生じた混合物をほぼ室温で数時間攪拌することにより、ヒドロゲル中にミクロスフェアを懸濁させる。ミクロスフェアをヒドロゲルと混合又は接触させるのに適切な方法のいずれかを使用し得る。
【0050】
ミクロスフェアは、上述されるようにミクロスフェア中に充填された又はミクロスフェアを形成するポリマーに取り込まれた少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含み得る。代替的に又はこれに加えて、薬剤又は治療剤は、短期間の効果又は治療のために、ヒドロゲルに含まれてもよく、例えばヒドロゲルを形成するポリマーに取り込まれてもよい。薬剤又は治療剤は、ミクロスフェア及び/又はヒドロゲルに、約0.1〜約70重量%、好ましくは約1〜約50重量%、そしてより好ましくは約1〜約30重量%で取り込まれる。しかし、薬剤又は治療剤を、ミクロスフェア及び/又はヒドロゲルの0.01〜95重量%の重量%で取り込むことができることに注意すべきである。ヒドロゲル及び/又はミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤の量又は濃度は、ミクロスフェア及び/又はヒドロゲル中のポリマーの送達速度だけでなく、薬剤又は治療剤の吸収速度、不活性化速度及び排せつ速度にも左右されよう。用量値は、治療される疾患、障害又は症状のタイプ及び重篤度によっても変化する点に注意すべきである。さらに、特定の任意の対象に関して、個人のニーズ、及び組成物を投与する人又は組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従い、経時的に、特定の投与治療計画が調整されるべきである点も理解されるべきである。in vivo用量は、細胞培養物中でのin vitro放出調査又はin vivo動物モデルを基礎とし得る。
【0051】
本発明のミクロスフェア又はヒドロゲル中に取り込むことができる薬剤又は治療剤には、治療剤、診断剤及び予防剤が含まれる。これらは天然の化合物、合成の有機化合物又は無機化合物であり得る。本発明の製品に取り込むことができる物質には、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、無機物、抗生物質、抗腫瘍薬、局部麻酔薬、血管新生阻害薬、血管作用薬、血液凝固阻止薬、免疫調節薬、細胞毒性剤、抗ウイルス薬、抗体、神経伝達物質、精神作用薬、オリゴヌクレオチド、脂質、細胞、組織、組織又は細胞凝集物、及びそれらの組合せが含まれる。
【0052】
他の治療剤として、癌化学療法剤(サイトカイン、ケモカイン、リンホカイン及び実質的に精製された核酸など)及びワクチン(弱毒化インフルエンザウイルスなど)が含まれる。取り込むことができる実質的に精製された核酸には、ゲノム核酸配列、タンパク質をコードするcDNA、発現ベクター、相補的核酸配列に結合して転写又は翻訳を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。例えば、嚢胞性繊維症などの疾患を治療するための遺伝子を投与することができる。ヘパリンなどの多糖も投与することができる。
【0053】
本発明に従って使用可能な薬剤の別の例として、局部麻酔薬(アメソカイン、アルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、ジブカイン、ジクロニン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、オキセサゼイン、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン及びロピバカインなど);麻薬性鎮痛剤(アルフェンタニル、アルファプロジン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、リン酸コデイン、シクラゾシン、デキストモルアミド(dextomoramide)、デゾシン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピアノン(dipianone)、フェドトジン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボルファノール、メプタジノール、メタドン、メタジルアセテート、モルヒネ、ナルブフィン、ノルプロポキシフェン、ノスカピン、オキシコドン、オキシモルフォン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピリトルアミド、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン及びトラマドールなど);並びに非麻薬性鎮痛剤(サリチレート又はフェニルプロピオン酸誘導体など)が含まれる。適当なサリチレートの例として、アミノサリチル酸ナトリウム、バルサラジド、サリチル酸コリン、メサラジン、オルサラジン、パラ-アミノサリチル酸、サリチル酸、サリチルサリチル酸、及びスルファサラジンが含まれる。適当なフェニルプロピオン酸誘導体として、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン及びナプロキセンが含まれる。
【0054】
本発明は、薬剤の制御放出による、疾患、障害又は症状の短期間及び長期間の治療方法を記載する。少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む温度感受性ヒドロゲルと微粒子との組成物は、被験体の、静脈内、筋肉内又は皮下に投与して、或いは他の公知の適当な手法で被験体に投与して、所望の治療効果を得ることができる。好適な実施形態では、この組成物を被験体の特定の部位(位置)に注射する。この組成物は被験体の体外のある間は液状態であるため、ヒドロゲル-ミクロスフェア混合物の注射は、他の任意の経皮注射と同程度容易に行われる。この組成物は、注射後まもなく、化学架橋剤を使用することなく固体(ゲル)状態に転換する。この固化は複数の利益をもたらす。例えば、これは特定の目的部位で薬剤又は治療剤の局在化し、その結果、注射した薬剤又は治療剤の治療効果を最大化する。
【0055】
この組成物を被験体に投与した後、ミクロスフェアを含むヒドロゲルのin situゲル化が生じる。in situゲル化システムの一実施形態は、2つの異なるステップで薬剤又は治療剤の制御放出を可能にする:1)短期間の効果に関する、ヒドロゲル中の薬剤又は治療剤分子の、作用組織又は細胞内への拡散、及び2)長期間の効果に関する、薬剤又は治療剤を含むミクロスフェアの、ゲルから被験体の細胞外マトリックスへの拡散。本明細書に記載されるように、薬剤又は治療剤を含む組成物による被験体の治療結果は、送達される薬剤又は治療剤に従って変化する。例えば、麻酔薬を含む組成物を痛みのある関節の部位に投与した場合、治療の結果として被験体の関節における鎮痛が観察されることが予測される。麻酔薬を含む組成物を分娩中の女性の背部の硬膜外腔に投与した場合、該女性の下半身における鎮痛が観察されることが予測される。化学療法剤がこの送達システムを通じて被験体の腫瘍に送達される場合、治療の結果として被験体の腫瘍の増殖又はサイズの減少又は退行が観察されることが予測される(図6参照)。本発明で使用し得る化学療法剤として、これに限定されるものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、天然物又は植物由来産物、ホルモン及びステロイド(合成の類似体を含む)及び白金薬剤が含まれる。当業者は、腫瘍の抗体を判定するための標準的な技術及び方法に精通しているだろう。
【0056】
一実施形態では、この組成物は、変性椎間板を治療するために、局部麻酔薬を含む水性組成物を被験体の変性椎間板に注射することによって使用して、その結果、鎮痛を与える(図2参照)。現在、局部麻酔薬は脊髄領域近辺に注射されているが、神経線維には注射されていない。薬物動態に関して、エステル型の局部麻酔薬は、血漿コリンエステラーゼによる急速な加水分解を経るため、典型的には非常に短い半減期(例えばプロカイン及びクロロプロカインについては1分未満)を有する。アミド結合も、肝臓のミクロゾーム酵素によって、適当な速度順序:エピドカイン(最速)>リドカイン>メピバカイン>ブピバカイン(最遅)で加水分解される。結果として、アミド局部麻酔薬からの毒性は、肝疾患の患者でより発生する傾向にある。
【0057】
組成物に含まれる薬剤又は治療剤の用量又は量、及び組成物中の薬剤又は治療剤の位置(例えばヒドロゲル又はミクロスフェア中)に応じて、本発明は、薬剤又は治療剤の制御放出を介した疾患、障害又は症状の長期又は短期治療のための方法及び組成物を記載する。したがって、本発明の組成物は、それを必要とする被験体、例えば動物(マウス、ラット又はヒトなど)を治療するために、該組成物を被験体に送達することによって使用し得る。記載されるように、この組成物はヒドロゲル又はミクロスフェア或いはその任意の組み合わせ中に、1種以上の薬剤又は治療剤を含み得る。上述されるように、本発明の組成物を送達するために様々な投与経路を使用し得る。
【0058】
本発明の方法及び組成物は、制御様式で薬剤又は治療剤を放出するため、薬剤又は治療剤の最適な送達を提供する。制御送達により、薬剤が所望の期間にわたって送達される。言い換えれば、より遅くかつ安定な速度の送達により、動物に投与されるべき薬剤又は治療剤の頻度を低減し得る。
【0059】
薬剤又は治療剤の放出速度は多くの要因、例えばヒドロゲル及びミクロスフェアのポリマーの組成、及びヒドロゲルの重合度に左右される。薬剤又は治療剤の放出速度は、ミクロスフェアの生分解性ポリマーの分解速度にも左右される。例えば、グリコール酸エステルは、非常に急速な分解、乳酸エステルはいくぶん遅い分解、そしてカプロ乳酸エステル(caprolactic ester)は非常に遅い分解をもたらす。生分解性ポリマーがポリグリコール酸から構成される場合、放出期間は1週間未満である。生分解性ポリマーがポリ(乳酸)から構成される場合、放出期間は約1週間である。生分解性ポリマーが、カプロラクトン及び乳酸の共重合体、又はトリメチレンカルボナート及び乳酸の共重合体から構成される場合、放出期間は2〜4週間である。生分解性ポリマーが、ポリ(トリメチレンカルボナート)、又はカプロラクトン及びトリメチレンカルボナートの共重合体から構成される場合、放出期間は約3〜8週間である。生分解性ポリマーが、ポリ(トリメチレンカルボナート)又はポリ(カプロラクトン)から構成される場合、放出期間は約5週間より長い。ミクロスフェア又はヒドロゲルからの、所与の薬剤又は治療剤の放出速度は、さらに、充填した薬剤又は治療剤の量(最終産物製剤の%)に左右される。
【0060】
ミクロスフェアからの薬剤又は治療剤の放出速度に影響を与えるさらに別の要因は、薬剤又は治療剤の粒径である。上記の要因を調整することによって、分解、拡散及び制御放出は、非常に広範囲にわたって変化し得る。例えば、放出は、数時間、数日又は数ヶ月にわたって生じるように設計し得る。
【0061】
上記組成物の様々な態様が詳細に記載されているが、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく変形、置換及び付加を成し得ることは、当業者に明らかであろう。本明細書で言及される前述及び後述の全ての特許、特許出願、論文及び刊行物は、参照により本明細書に組み入れる。
【実施例】
【0062】
実施例1:ミクロスフェアの作製
溶媒蒸発法によるミクロスフェア。5%(w/v)のPCL(Mw: 65000 Da)及び1%(w/v)の薬剤を塩化メチレン(MC)に溶解した。生じた溶液を室温で2分間、約3000rpmでホモゲナイズした。次いで、これを100mlの1%(w/v)ポリビニルアルコール(PVA)に注ぎ、室温で4時間、500rpmで攪拌した。固化した後、遠心分離(4000rpmで10分)によってMSを収集し、10mlの超純水で3回洗浄し、冷凍庫で凍結乾燥する。凍結乾燥させたMSの平均直径は、20μm±10μm(標準偏差)である。
【0063】
熱融解カプセル封入によるミクロスフェア。5%(w/v)のPCL粉末を70℃で10mlの脱イオン化水に溶解し、混合液を1分間、ボルテックスによって十分に攪拌した。次いで、これをPCLの融点より5℃高く加熱した200mlの水溶媒に懸濁し、4ブレード型攪拌翼により継続的に2時間、1000rpmで攪拌した。水溶媒は外相に1%(w/v)のポリ(EO-PO-EO)を含んだ。乳濁液が安定化した時点で、これをコア材料が固体化するまで冷却した(Jameelaら. J Biomater Sci Polym Ed 8(6):457 (1997), .Lin及びYu J Microencapsul 18(5):585 (2001), Lin及びKang. J Microencapsul 20(2):169 (2003), Cortesiら. Biomaterials 23(11):2283 (2002), Reithmeierら. J Control Release 73(2-3):339 (2001))。
【0064】
薬剤担体の製剤化:POLOXAMER(登録商標)ポリマー(15〜25%(w/v))及びヒアルロン酸ナトリウム(0.2%(w/v)〜1.5%(w/v))を脱イオン化水に溶解した。生じた溶液にミクロスフェアを添加した後に、室温でさらに4時間、100rpmで攪拌した。最後に、椎間板の被障害領域への経皮注射まで、これを冷凍庫で保管した。注射の直前に、治療剤を含むミクロスフェアを、保存した溶液状態のヒドロゲルと混合する。
【0065】
実施例2:椎間板に起因する腰痛を治療するための薬剤椎間板内送達システム

腰痛(LBP)は、米国において、一般的な医学的症状の第2位、入院の原因の第5位、そして外科的手術処置の原因の第3位にランクしている。椎間板変性疾患(DDD)は、一般的にはLBPの主因と考えられている。免疫組織化学的研究は、微小血管が疼痛レベルの椎間板中に成長する神経繊維を伴うことに起因したLBPを示し、該血管では神経成長因子が発現される(参考文献1)。LBP治療は、薬物治療、ステロイド注射、物理療法、外科手術などを含む。大部分は、一時的な鎮痛、又は術後のケアを要し、高い合併症率を伴う椎間板の破壊であり、しばしば運動分節の不安定性をもたらす。LBPに対する解決策の1つは、椎間板を破壊することなく長期的に鎮痛を与える注射可能な担体である。この研究の目的は、ミクロスフェア(MS)-分散型in situ形成性ヒドロゲルマトリックスであって、MS及びマトリックスの双方に鎮痛薬を含むものを開発することである。
【0066】
材料と方法
融解カプセル封入によるミクロスフェア(MS)作製:脱イオン化水中のポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)(5%(w/v))を70℃で融解した。ブピバカイン遊離塩基(BB)薬剤をこの溶液に混合した。次いで、これを1%(w/v)のポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド-エチレンオキシド)(ポリ(EO-PO-EO))を含む水に65℃で2時間にわたって移した。この溶液を冷却し、MSが固化するまで乾燥した。
【0067】
in situ形成性ゲルの開発:ブピバカインを脱イオン化水に懸濁した。ブピバカインBBを充填したMSを添加した。化学的に架橋したゲルを生じさせるために、15〜35%(w/v)のポリ(EO-PO-EO)、0〜1.0%(w/v)のヒアルロン酸ナトリウム(SH)及び2%(w/v)1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(CDI)を上記溶液に溶解した。物理的に架橋したゲルをCDIを省略することによって生じさせた。CDIを含む溶液について、0.1NのHClを添加することによってpHを5.5に調整した。
【0068】
ゲル化温度の決定:1sec-1の剪断速度でのゲルの粘度を、1.0mmのギャップコーン/プレート(CP52)を装備した粘度計(HB DV-II, Brookfield Engineering Lab., Middleboro, MA)を用いて測定した。平衡での粘度対温度曲線は3つの領域、すなわち固体相、転移相及びゲル相を示した。ゲル化温度は、転移相の中点値を用いて決定した。
【0069】
体積変化の測定:2.0mlのサンプルを温度制御インキュベーター(417, Lab-line Instruments Inc., Melrose, IL)中のガラスチューブ(内径0.5mm)に浸した。20℃〜40℃の各平衡温度で、体積変化をビデオカメラでモニターし、画像ソフトウェア(Image J, NIH)で定量した。
【0070】
in-vitro薬剤放出試験:ゲルを含むバスケットを、溶解装置(D-800 Dissolution Tester, Logan, UT)で、900mlのPBS(pH 7.4、温度37℃)中、50rpmで回転させた。一定の時間ごとに、1mlのPBS溶液を収集し、等量の新鮮なPBS溶液を添加した。ゲルから放出さられるブピバカインの量は、HPLC(Alliance HT LC/MS, Waters, Milford, MA)を用いて274nmで分析した。
【0071】
結果:MSは滑らかな表面を有する球体形状、及び22.2±4.0μmの平均直径を示した。ゲルの粘度は、0、0.4及び0.8%SHについて、それぞれ220、326及び426 Pa sであった。ゲル化温度は、図4に示すように、ポリ(EO-PO-EO)濃度が増加すると共に減少した。体積変化は温度と比例した。15、17及び20%のポリ(EO-PO-EO)+0.8%SHを含むゲルの体積は、それぞれ1.5、1.3及び1.1%の増加を示した。
【0072】
考察:5%PCLベースの融解カプセル封入体を10%PCLベースの水中油型溶媒封入体と比較すると、MSの特徴は類似のサイズ(約25μm)及びより高い収量(約90%)を示したが、前者は有機溶媒を使用しないため優れたものであり得る。in-situ形成性ゲルは、ポリ(EO-PO-EO)及びSHの比に応じて、軟性から固性の範囲である。粘性に対する濃度及び温度の効果は、ポリ(EO-PO-EO)が物理的なもつれ(physical entanglement)によってより高い温度で固体からゲルへの移行を誘導することを示唆する。さらに、CDIが架橋剤としてSHと反応してゲル強度を増加しており、これは粘性の増加によって確認された。SHは、架橋の程度を増加することによってゲルの構造的完全性に寄与する。体積変化はおそらくゲル状態における疎水性鎖のクラスター形成によって説明される。エネルギーの最小化は、水の排除に伴って起こるよりコンパクトな疎水性鎖の形成をもたらし、わずかな体積の増加を生じる。
【0073】
参考文献
1. Freemont, A.J.ら, J Pathol, 2002. 197(3): p. 286-92
実施例3:in situ形成性ヒドロゲルによる核形成(Nucleoplasty)の開発

核形成術、すなわち髄核(NP)の置換は、全椎間板置換及び椎間体融合(intervertebral body fusion)を伴う変性椎間板の外科的処置の実行可能な選択肢である。機械的な、化学的な、表面の、及び粘弾性の適合性を有するin situ形成性核人工器官が研究されている。この研究の目的は、これらの問題の一部に関係するin situ形成性核形成を開発することであった。
【0074】
材料と方法
in-situ形成性ヒドロゲルの作製:最初に、in-situ形成性ゲルを、15〜20%(w/v)のポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド-エチレンオキシド)(ポリ(EO-PO-EO))と0.2〜1.0%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム(SH)を周囲温度で脱イオン化水に溶解させることによって作製した。2%(w/v)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(CDI)を架橋剤としてこの溶液に添加した(参考文献1)。pHを0.1N HClによって5.5に調整した。1分間攪拌した後、この溶液を攪拌器に24時間おき、ゲルを生じさせた。次いで、得られた溶液にミクロスフェアを添加した後、室温でさらに4時間、100rpmで攪拌した。
【0075】
粘弾性試験:粘弾性の動的パラメーターはコーン/プレートシステム(C35/4、直径35mm、角度4°)及び温度制御システム(Haake F3-CH循環器)を搭載したHaake RS-1を用いて、振動モードで測定した。測定ギャップは0.140mmであり、約0.8mlをサンプルプレートに載せた。複素弾性率(G*)をひずみの関数として測定するために、ひずみ振幅掃引試験(strain amplitude sweep test)を非破壊的動的レオロジー試験を用いて1Hzで実施した。サンプルの線形粘弾性領域は、G-ひずみ曲線から決定した。周波数掃引試験の間、線形粘弾性領域からのひずみ値は0.3%に設定し、周波数は0.1〜20Hzの勾配であった。周波数範囲にわたる粘弾性パラメーターの変化を取得した。
【0076】
結果
粘性は、一定のSH濃度でポリ(EO-PO-EO)濃度を増加することにより増加した。同様の傾向が、より低い粘性を有する対照(ポリ(EO-PO-EO又はSH自体))について観察された。粘性の増加はさらに温度増加によっても影響を受けた。20%ポリ(EO-PO-EO)及び0.8%SHを主体として、37℃で、物理的に架橋したヒドロゲルと化学的に架橋したヒドロゲルとの比較において、後者は40%以上高い粘性を示し、これが化学的架橋反応であることが確認された。
【0077】
CDIを含むか又は含まない、37℃での周波数勾配のプロファイルを図5に示す。G*はポリ(EO-PO-EO)濃度の増加により増加した。15%濃度は最大の周波数依存性を示したが、その余のサンプルは、ポリ(EO-PO-EO)濃度の増加に起因してより小さい周波数依存性となった。0.1〜20Hzの範囲の周波数にわたって、CDIを含むヒドロゲルのG*は7〜18KPaで変化し、位相角(δ)は4〜13°で変化し、CDIを含まないヒドロゲルは1〜15KPa及び4〜23°であった。
【0078】
考察
in-situ形成されたヒドロゲルは、室(低)温で低い粘性を示し、ゲルになるより高い温度(37℃)でより高い粘性を示した。液体と同様の挙動を有するこの低い粘度は、開口部を最小にした標的空間へのゲルの注入可能性を助けることができる。CDIによって化学的に架橋したゲルは、より高いG*を示し、これはより堅いゲルを示している。一般的に、ポリ(EO-PO-EO)濃度が高いほど、より強いポリマー間相互作用をもたらし、その結果、より剛性の網目構造が生じる。本発明者らのin-situゲル化システムは、1〜100Hzの範囲にわたって優れた粘弾性を示し、これはヒトの椎間板の正常なNPのものに匹敵する(G*=7〜21 KPa及びδ=23-31°)(参考文献2)。これらは、温度感受性in-situ形成性ヒドロゲルが、さらなる研究に有望な核形成用材料であり得ることを示唆する。
【0079】
参考文献
1. Taguchi, T.及びJ. Tanaka, J Biomater Sci Polym Ed, 2002. 13(1): p. 43-52
2. Iatridis, J.C.ら, Spine, 1996. 21(10): p. 1174-84
実施例4:腫瘍の治療のための薬剤送達システム
ミクロスフェア(MS):脱イオン化水中でポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)(5%(w/v))を70℃で融解した。疎水性抗癌薬をこの溶液中に混合した。次いで、これを1%(w/v)のポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド-エチレンオキシド)(P127)を含む水に、65℃で2時間にわたって移した。この溶液を冷却し、MSが固化するまで乾燥した。
【0080】
in-situ形成性ゲル:疎水性抗癌薬を同様に脱イオン化水中に懸濁した。薬剤を含むMSを添加した。化学的に架橋したゲルを生じさせるために、15〜35%(w/v)のP127、0〜1.0%(w/v)のヒアルロン酸ナトリウム(SH)及び2%(w/v)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を上記溶液に溶解した。物理的に架橋したゲルは、EDCを省略することによって生じさせた。EDCを含む溶液について、0.1NのHClを添加することによってpHを5.5に調整した。
【0081】
ゲル化温度の決定:1sec-1の剪断速度でのゲルの粘度を、1mmのギャップコーン/プレート(CP52)を装備した粘度計(HB DV-II, Brookfield Engineering Lab., Middleboro, MA)を用いて測定した。平衡での粘度対温度曲線は3つの領域、すなわち溶液相、転移相及びゲル相を示した。ゲル化温度は、転移相移行段階の中点値を使用して決定した。
【0082】
体積変化の測定:2.0mlのサンプルを、温度制御インキュベーター(417, Lab-line Instruments Inc., Melrose, IL)中のガラスチューブ(内径0.5mm)に浸した。20℃〜40℃の各平衡温度で、体積変化をビデオカメラでモニターし、画像ソフトウェア(Image J, NIH)で定量した。
【0083】
粘弾性試験:粘弾性の動的パラメーターは、コーン/プレートシステム(C35/4、直径35mm、角度4°)及び温度制御システム(Haake F3-CHサーキュレーター)を装備したHaake RS-1を用いて、振動モードで測定した。測定ギャップは0.140mmであり、約0.8mlをサンプルプレートに載せた。複素弾性率(G*)をひずみの関数として測定するために、ひずみ振幅掃引試験を非破壊的動的レオロジー試験を用いて1Hzで実施した。サンプルの線形粘弾性領域は、G*-ひずみ曲線から決定した。周波数掃引試験の間、線形粘弾性領域からのひずみ値は0.3%に設定し、周波数は0.1〜20Hzの勾配であった。周波数範囲にわたる粘弾性パラメーターの変化を取得した。
【0084】
引用した参考文献
1.Langerら: US Patent 5,626,862 A 5/1997
2.Sawhney: 米国特許6,632,457 B1 10/2003
3.Christopher, G.ら, Recent advances in brain tumor therapy: local intracerebral drug delivery by polymers. Investigational New Drugs, 2004. 22: p. 27-37
4.Moore, T.ら, Experimental investigation and mathematical modeling of Pluronic F127 gel dissolution: drug release in stirred systems. J Control Release, 2000. 67(2-3): p. 191-202
実施例5
MSは滑らかな表面を有する球体形状、及び4.77±1.49μmの平均直径を示した。5%PCLベースの融解カプセル封入を10%ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)ベースの水中油型溶媒蒸発と比較すると、MSは類似のサイズ(約5μm)及びより高い収量(約90%)を示したが、前者は有機溶媒を使用していないためより優れたものであり得る。固体境界付近の流体運動におけるゲル強度を表す粘度は、図7に示すように、一般名でポリ(EO-PO-EO)としても知られるF127ポリマー、濃度及び温度(例えば0.4%ポリ(EO-PO-EO)+0.8%SHについては37℃で426 Pa ・s)に強く依存する。ゲル化温度はポリ(EO-PO-EO)濃度の増加により減少した。粘度に対する濃度及び温度の影響は、ポリ(EO-PO-EO)が物理的なもつれによってより高い温度で固体からゲルへの転移を誘導することを示唆する。他のPluronicゲル製剤で同様の観察が見られた(参考文献2)。この挙動は、ミセルのもつれ及び充填の結果として説明される。このより剛性のゲルの結果として、ミセルは互いに容易に分離することが困難となり、これはより低い体積変化及び薬剤の持続放出の原因となる。ゲル作製のパラメーターを改変することによって、バイアル中での2mlのゲル化速度は1.5〜2分であることが示された。体積変化は温度と比例した。15、17及び20%のポリ(EO-PO-EO)+0.8%SHを含むゲルの体積は、それぞれ1.5、1.3及び1.1%の増加を示した(図8)。体積変化の矛盾はおそらくゲル状態における疎水性鎖のクラスター形成の程度によって説明される。エネルギーの最小化は、水の排除に伴うポリ(EO-PO-EO)の増加により、よりコンパクトな疎水性鎖の形成をもたらし、わずかな体積の増加を生じる
引用した参考文献
1.Langerら:米国特許5,626,862 A 5/1997
2.Sawhney:米国特許6,632,457 B1 10/2003
3.Christopher, G.ら, Recent advances in brain tumor therapy: local intracerebral drug delivery by polymers. Investigational New Drugs, 2004. 22: p. 27-37
4.Moore, T.ら, Experimental investigation and mathematical modeling of Pluronic F127 gel dissolution: drug release in stirred systems. J Control Release, 2000. 67(2-3): p. 191-202
以下に、本明細書で引用した参考文献を記載する。
【0085】
ADDIN EN.REFLIST 1.Jameela SR, Suma N, Jayakrishnan A. Protein release from poly(epsilon-caprolactone) microspheres prepared by melt encapsulation and solvent evaporation techniques: a comparative study. J Biomater Sci Polym Ed 1997;8(6):457-66.
2.Lin WJ, Yu CC. Comparison of protein loaded poly(epsilon-caprolactone) microparticles prepared by the hot-melt technique. J Microencapsul 2001;18(5):585-92.
3.Lin WJ, Kang WW. Comparison of chitosan and gelatin coated microparticles: prepared by hot-melt method. J Microencapsul 2003;20(2):169-77.
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【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明のシステムに従って作製した注射器の平面図である。これは温度感受性ヒドロゲルと混合した鎮痛剤を含有する、身体の疼痛部位への経皮注射用に調製されたミクロスフェアを示す。
【図2】図2は、好適な実施形態による、変性した椎間板へのヒドロゲル及びミクロスフェアの注射を示す。
【図3】図3は、本発明の好適な実施形態による、ヒドロゲル-ミクロスフェア混合物の組成物を例示する。
【図4】図4は、0.8%SHを含むポリ(EO-PO-EO)の量対ゲル化温度を示す。
【図5】図5は、複素弾性率(G)に対するゲル濃度を示す。XL:CDI架橋。Gはポリ(EO-PO-EO)濃度を増加することにより増加した。特に、15%ポリ(EO-PO-EO)+0.8%SHによって生じたin situゲルは、最大の周波数依存性を示したが、その余のゲルはポリ(EO-PO-EO)濃度に応じて1より小さくなった。CDIによって化学的に架橋されたゲルは、より高いGを示し、これはより堅い(stiffer)ゲルを示している。ポリ(EO-PO-EO)濃度が高いほど、より強いポリマー間相互作用をもたらし、その結果、より剛性の網目構造を生じる。詳細な実験プロトコールは実施例3に記載される。
【図6】図6は、注射器による液相ヒドロゲルの腫瘍部位への注射の概略図を示す。
【図7】図7は、15、17及び20%共重合体+0.8%SH溶液に関する、粘度対温度を図示する(n=3)。
【図8】図8は、15、17及び20%共重合体+0.8%SH溶液に関する、膨張率(%)対温度を図示する(n=3)。
【図9】図9は、ヒドロゲルマトリックスの粘度(η)に対する温度の影響を図示する(n=3)。粘性はポリ(EO-PO-EO)濃度の増加によって増加しただけでなく、一定のSH濃度で温度を増加することによっても増加した。物理的に架橋したヒドロゲルと化学的に架橋したヒドロゲルとの比較において、後者は40%高い粘性を示した。in situ形成性ゲルは、より低い温度で低い粘性を示し、その後、温度を増加することにより、より高い粘性に移行し、半固体様ゲルになった。
【図10】図10は、ゲル化温度に対するポリ(EO-PO-EO)の効果を図示する(n=3)。ゲル化温度は、ポリ(EO-PO-EO)濃度と、見事な直線性で逆比例した。
【図11】図11は、熱による体積変化を示す。物理的にもつれたゲル(physically entangled gel)の全体的な体積変化は、温度依存性を連続的に示し、これはおそらく20〜40℃の温度範囲にわたって、ポリ(EO-PO-EO)の局所的なミセル形成がより増加することによる。15%ポリ(EO-PO-EO)+0.8%SHによるin situ形成性ゲルは、最大の体積変化を示した。温度の増加と共に、in situ形成性ゲルは折り畳み(folding)によってそのエネルギーを最小化する傾向があった(すなわち、プロピレンオキシドブロックは、水に曝露されると、水環境に曝露される表面の面積の小さい疎水性小ブロックの中にそれ自体を一緒に螺旋化する)。よりコンパクト(compact)な疎水性ブロックは、よりいっそう有利な配置によって水を排除し得ると思われる。
【図12】図12は、融解カプセル封入によって生じるMS形態を図示する。より高い倍率で粒子の表面形態を調査したところ、かなり滑らかな非多孔性表面が明らかになった。平均直径及び粒径分布は、Image J(NIHから無料ダウンロード)と呼ばれる粒径アナライザーによって計算した。MSの平均直径及び標準偏差は4.77±1.49μmと決定された。
【図13】図13は、ブピバカインのin vitro放出を図示する。BBを含む融解カプセル封入MSからの放出速度は、28日の間、溶媒蒸発MSからのものよりも遅かった。マトリックス中に捕捉されたBBは、より堅く結合し、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)が非常にゆっくりと分解したため、放出の機構は拡散プロセスに従った。拡散が開始した時点で、チャネルがBBの連続的な拡散のための経路を提供した。
【図14】図14は、動的周波数掃引実験におけるin situ形成性ゲルの位相角の挙動を示す。0.1〜20Hzの周波数範囲にわたり、CDIを含むゲルのG*は7〜18KPaで変化し、位相角(d)は4〜13°で変化した。CDIを含まないゲルは1〜15KPa及び4〜23°であった。詳細な実験プロトコールは実施例3に記載された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物内の特定の部位に薬剤又は治療剤を導入する方法であって、薬剤又は治療剤を含有する複数のポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア−ヒドロゲル混合物を動物内の特定の部位に導入することを含み、該ミクロスフェアは温度感受性ヒドロゲル中に分散されており、該ヒドロゲルは、室温又は室温付近で液体状態であり、かつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態であり、該薬剤又は治療剤が前記部位で放出される、上記方法。
【請求項2】
前記導入ステップを注射により実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドロゲルが短期間の治療効果を与えるための少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア−ヒドロゲル混合物が、ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア−ヒドロゲル混合物の約0.1%〜約70%で薬剤又は治療剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒドロゲルが、N-イソプロピルアクリルアミド重合体、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)、ポロキサマー、PLURONICS(登録商標)重合体、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体、多糖、アルギナート、ポリホスファジン、ポリアクリレート、TETRONICSTM 重合体、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、並びにその誘導体及び類似体よりなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ミクロスフェア-ヒドロゲル混合物がその約10%〜約50%でミクロスフェアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、長期間の治療効果のために制御様式で放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ミクロスフェアが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-γ-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトカルボナート)又はポリ(ホスホエステル)、ポリ(DL-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、及びポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コセバシン酸]、ポリ(脂肪酸二量体-コ-セバシン酸)、並びにアリールオキシホスファゼン重合体、或いはこれらの重合体の混合物又は共重合体よりなる群から選択される生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アメソカイン、アルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、ジブカイン、ジクロニン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、オキセサゼイン、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン及びロピバカインよりなる群から選択される局部麻酔薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アルフェンタニル、アルファプロジン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、リン酸コデイン、シクラゾシン、デキストモルアミド、デゾシン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピアノン、フェドトジン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボルファノール、メプタジノール、メタドン、メタジルアセテート、モルヒネ、ナルブフィン、ノルプロポキシフェン、ノスカピン、オキシコドン、オキシモルフォン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピリトルアミド、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン及びトラマドールよりなる群から選択される麻薬性鎮痛剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アミノサリチル酸ナトリウム、バルサラジド、サリチル酸コリン、メサラジン、オルサラジン、パラ-アミノサリチル酸、サリチル酸、サリチルサリチル酸、及びスルファサラジン、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン並びにナプロキセンよりなる群から選択される非麻薬性鎮痛剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
薬剤が動物の筋骨格系関節痛の部位に送達され、該薬剤が該部位に放出されることにより鎮痛が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
筋骨格系関節痛の少なくとも1つの部位が椎間板、股関節部、膝関節部又は足関節部を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
化学療法薬又は化学療法剤が動物の腫瘍の部位に送達され、該化学療法薬又は化学療法剤が該部位に放出されることにより腫瘍の緩解が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化学療法薬又は化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、天然物又は植物由来産物、ホルモン及びステロイド及び白金薬剤よりなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬剤の制御放出により背痛を治療する方法であって、椎間板の少なくとも一ヶ所に医薬組成物を経皮的に注射することを含み、該医薬組成物が温度感受性ヒドロゲルと、少なくとも1種の鎮痛薬を含むポリマーミクロスフェアとを含み、該ヒドロゲルは室温又は室温付近で液体状態であり、かつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態である、上記方法。
【請求項17】
ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア−ヒドロゲル混合物が、ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物の約0.1%〜約70%で薬剤又は治療剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
薬剤又は治療剤の送達用の医薬組成物であって、該組成物が、室温又は室温付近で液体状態でありかつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態である温度感受性ヒドロゲルと、少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む複数のミクロスフェアとを含み、該ミクロスフェアが該ヒドロゲルに懸濁されることにより、前記薬剤又は治療剤を放出するヒドロゲル-ミクロスフェア混合物が形成される、上記医薬組成物。
【請求項19】
ヒドロゲルが短期間の治療効果を生じるための少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物が、ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物の約0.1%〜約70%で薬剤又は治療剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ヒドロゲルが、N-イソプロピルアクリルアミド重合体、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)、ポロキサマー、PLURONICS(登録商標)重合体、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体、多糖、アルギナート、ポリホスファジン、ポリアクリレート、TETRONICSTM 重合体、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、並びにその誘導体及び類似体よりなる群から選択されるポリマーを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
ミクロスフェア-ヒドロゲル混合物が約10%〜約50%でミクロスフェアを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
ミクロスフェアに含まれる少なくとも1種の薬剤又は治療剤が、長期間の治療効果のために、前記ミクロスフェアによって決定される制御様式で放出される、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記ミクロスフェアが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-γ-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトカルボナート)又はポリ(ホスホエステル)、ポリ(DL-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、及びポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コセバシン酸]、ポリ(脂肪酸二量体-コ-セバシン酸)、並びにアリールオキシホスファゼン重合体、或いはこれらの重合体の混合物又は共重合体よりなる群から選択される生分解性ポリマーを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アメソカイン、アルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、ジブカイン、ジクロニン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、オキセサゼイン、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン及びロピバカインよりなる群から選択される局部麻酔薬である、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アルフェンタニル、アルファプロジン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、リン酸コデイン、シクラゾシン、デキストモルアミド、デゾシン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピアノン、フェドトジン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボルファノール、メプタジノール、メタドン、メタジルアセテート、モルヒネ、ナルブフィン、ノルプロポキシフェン、ノスカピン、オキシコドン、オキシモルフォン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピリトルアミド、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン及びトラマドールよりなる群から選択される麻薬性鎮痛剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、アミノサリチル酸ナトリウム、バルサラジド、サリチル酸コリン、メサラジン、オルサラジン、パラ-アミノサリチル酸、サリチル酸、サリチルサリチル酸、及びスルファサラジン、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン並びにナプロキセンよりなる群から選択される非麻薬性鎮痛剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項28】
薬剤又は治療剤の送達用の組成物を製造する方法であって、溶媒に生分解性ポリマーを溶解することによって少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含むミクロスフェアを製造すること;N-イソプロピルアクリルアミド重合体、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)、ポロキサマー、PLURONICS(登録商標)重合体、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体、多糖、アルギナート、ポリホスファジン、ポリアクリレート、TETRONICSTM 重合体、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、並びにその誘導体及び類似体よりなる群から選択されるポリマーを溶解することによって温度感受性ヒドロゲルを製造すること;前記ミクロスフェアが温度感受性ヒドロゲルポリマー中に懸濁されるように前記ミクロスフェアと前記ヒドロゲルポリマーとを混合すること、を含む上記方法。
【請求項29】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-γ-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトカルボナート)又はポリ(ホスホエステル)、ポリ(DL-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、及びポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コセバシン酸]、ポリ(脂肪酸二量体-コ-セバシン酸)、並びにアリールオキシホスファゼン重合体、或いはこれらの重合体の混合物又は共重合体よりなる群から選択される生分解性ポリマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物が、ミクロスフェア、ヒドロゲル又はミクロスフェア-ヒドロゲル混合物の約0.1%〜約70%で薬剤又は治療剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ミクロスフェア-ヒドロゲル混合物が約10%〜約50%でミクロスフェアを含む、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−517927(P2008−517927A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538061(P2007−538061)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/037872
【国際公開番号】WO2006/047279
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(504315680)ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】