説明

miR−15ファミリーのマイクロRNAによる心筋細胞生存及び心臓修復の調節

miR−15ファミリーと称される、miR−195を含むマイクロRNAのファミリーは、病的な心臓リモデリングの間に上方制御され、細胞の増殖及び生存に必要なmRNAの発現を抑制し、結果として心筋細胞を消失させることが示されている。様々な心疾患の治療として心臓におけるmiR−15ファミリーの発現を遮断する方策が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、全体として参照により本明細書に援用される2007年11月9日出願の米国仮特許出願第60/986,798号の利益を主張する。
【0002】
政府助成に関する記載
本発明は、National Institutes of Healthからの補助金交付番号第HL53351−06号による補助金の助成を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、概して、発生生物学及び分子生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、心筋細胞における遺伝子調節及び細胞生理に関する。具体的には、本発明は、miR−15ファミリーと命名される、心筋細胞生存及び心臓修復を調節するmiRNAのファミリーに関する。こうしたmiRNAを阻害することにより、心臓細胞におけるアポトーシスの減少がもたらされ、ひいては心肥大及び心不全が抑制される。
【背景技術】
【0004】
心疾患及びその症状としては、冠動脈疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、及び心肥大が挙げられ、明らかに、今日の米国における主要な健康上のリスクとなっている。こうした疾患を患う患者の診断、治療及び支援にかかる費用は、数十億ドルに及ぶ。心疾患のうち特に重篤な2つの症状は、心筋梗塞及び心肥大である。心筋梗塞に関しては、典型的には、アテローム性動脈硬化症の結果として冠動脈内で急性血栓性冠閉塞(acute thrombocytic coronary occlusion)が起こり、心筋細胞死がもたらされる。心筋細胞、すなわち心臓の筋肉細胞は最終分化しており、概して細胞分裂することはできないため、急性心筋梗塞の過程において死ぬと、心筋細胞は概して瘢痕組織に置き換わる。瘢痕組織は収縮性がなく、心機能には寄与しないとともに、心収縮中に膨張するか、又は心室の大きさ及び有効半径を増大させて、例えば、肥大性となることにより、心臓の機能上、有害な役割を果たすことが多い。
【0005】
心肥大に関しては、これを異常発生に類似した疾患とみなす理論もあり、従って、心臓における発生シグナルが肥大疾患に寄与し得るかどうかという問題が提起される。心肥大は、高血圧症、機械的負荷、心筋梗塞、心不整脈、内分泌障害、及び心収縮タンパク質遺伝子の遺伝子突然変異に起因する疾患を含め、実質的にあらゆる形態の心疾患に対する心臓の適応反応である。肥大反応は、初めは心拍出量を増加させる代償機構であるが、継続的に肥大すると、拡張型心筋症(DCM)、心不全、及び突然死に至り得る。米国では、毎年約50万人が心不全と診断され、死亡率はほぼ50%に達する。心肥大の因果関係については広範囲に考証されているが、その基礎となる分子機構は解明されていない。こうした機構の理解は、心疾患の予防及び治療における主要な関心事であり、心肥大及び心不全を特異的に標的とする新薬の設計において、治療モダリティとして決定的に重要となり得る。
【0006】
薬理作用剤による治療は、依然として、心不全の症状を軽減又は解消するための主要な機構となっている。利尿薬は、軽度から中等度の心不全に対する治療の第一選択をなす。利尿薬が効かない場合、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(例えば、エナロプリル及びリシノプリル)又は変力作用剤の治療薬(すなわち、心筋収縮力を増加させることにより心拍出量を改善する薬物)などの血管拡張剤が用いられ得る。残念なことに、こうした標準的な治療薬の多くは数々の副作用を有し、一部の患者には禁忌である。このように、現在用いられている薬理作用剤は、特定の患者集団においては深刻な欠点を有する。新規の安全且つ有効な薬剤が利用可能となれば、現在利用し得る薬理学的なモダリティを使用できない患者にとっても、又はそうしたモダリティによっては十分な回復を得られない患者にとっても、疑いの余地なく利益となるであろう。
【0007】
成人の心臓は、仕事量の変化又は傷害に応じて機能を調整する手段として、大幅なリモデリング及び肥大性の拡大が可能な動的な器官である。心筋梗塞、高血圧症、大動脈弁狭窄、及び弁機能不全に関連する血行動態的なストレス又は神経内分泌系のシグナル伝達により、心筋細胞における細胞内シグナル伝達経路及び転写メディエーターの活性化を介して病的なリモデリング反応が引き起こされる。こうした分子経路の活性化により、心筋細胞サイズ及びタンパク質合成が亢進され、サルコメアの構築が生じ、及び胎児性心臓遺伝子の再発現が引き起こされる。急性及び慢性ストレス後の肥大反応の特徴は、初めは心拍出量の増大だが、肥大が長引けば心不全及び突然死の主要な予測因子となる。この疾患過程に関わる遺伝子及びシグナル伝達経路の同定については大きく進歩しているものの、肥大型リモデリングの全体的な複雑性からは、いまだ明らかにされていないさらなる調節機構が示唆される。
【0008】
近年、とりわけ、発生タイミングの調節、アポトーシス、脂肪代謝、及び造血細胞分化を含め、数多くの生物学的過程にマイクロRNA(miRNA又はmiR)が関わるとされている。miRNAは、約18〜約25ヌクレオチド長の低分子の非タンパク質コードRNAであり、配列特異的な様式で遺伝子発現を調節する。miRNAは、標的mRNAの配列が完全に相補的な場合には、その分解を促進することにより、又は標的mRNAの配列がミスマッチを含む場合には、翻訳を阻害することにより、標的mRNAのリプレッサーとして働く。
【0009】
miRNAは、RNAポリメラーゼII(pol II)又はRNAポリメラーゼIII(pol III;Qi et al. (2006) Cellular & Molecular Immunology Vol. 3:411-419を参照)によって転写され、miRNA一次転写産物(pri−miRNA)と称される初期転写産物から生じるもので、このpri−miRNAは概して数千塩基長であり、個々のmiRNA遺伝子か、タンパク質コード遺伝子のイントロンか、又は多くの場合に複数の密接に関係したmiRNAをコードするポリシストロニックな転写産物に由来する。Carrington et al. (2003)のレビューを参照のこと。pri−miRNAは核内でRNアーゼのDroshaによってプロセシングされ、約70〜約100ヌクレオチドのヘアピン型前駆体(pre−miRNA)となる。細胞質に輸送された後、ヘアピン型pre−miRNAはDicerによってさらにプロセシングされ、二本鎖miRNAが産生される(Lee et al., 1993)。その後、成熟miRNA鎖はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、そこで塩基対の相補性によってその標的mRNAと結合する。miRNAがmRNA標的と完全な塩基対を形成する比較的まれな例では、miRNAはmRNA分解を促進する。より一般的には、miRNAは標的mRNAと不完全なヘテロ二本鎖を形成し、mRNAの安定性に影響を及ぼしたり、又はmRNA翻訳を阻害したりする。
【0010】
miRNAの2〜8位の塩基にわたる5’部分は「シード」領域と称され、特に標的認識に重要である(Krenz and Robbins, 2004;Kiriazis and Kranias, 2000)。シード配列は、標的配列の系統発生学的な保存と共に、現在の多くの標的予測モデルの基礎となっている。miRNA及びその標的を予測するための精緻な計算論的手法が徐々に利用可能になりつつあるものの、標的予測は依然として大きな課題であり、実験による検証が必要とされている。個々のmiRNAが塩基対を形成可能な高親和性及び低親和性のmRNA標的が潜在的に何百もあることと、個々のmRNAを複数のmiRNAが標的化することとにより、miRNAの機能を特定のmRNA標的の調節に帰することはさらに複雑となる。
【0011】
多くのmiRNAが後生動物種間で高度な配列保存性を有することから、強力な進化的圧力及び生物学的な必須過程への関与が示唆される(Reinhart et al., 2000;Stark et al., 2005)。実際、miRNAは、線虫(Caenorhabditis elegans)及びキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)からヒトに至る広範な種において、細胞増殖、分化、アポトーシス、及び発癌を含む多様な生物学的及び病理学的過程で基本的な役割を果たしていることが示されている。しかしながら、心臓発生及び心疾患に寄与し得る分子事象においてmiRNAが果たす役割に関しては、依然として限られた情報しかない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、治療を必要とする対象者において病的心肥大、心不全、又は心筋梗塞を治療する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、心肥大、心不全、又は心筋梗塞を有する対象者を特定することと;前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することとを含む。別の実施形態において、この方法は、対象者に第2の治療薬を投与することをさらに含む。第2の治療薬は、例えば、β遮断薬、イオンチャネル薬、利尿薬、ACE阻害薬、AII拮抗薬、BNP、Ca++遮断薬、及びERA、又はHDAC阻害薬であり得る。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することは、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのantagomirを投与することを含む。一実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することによって阻害される。さらに別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性は、阻害性RNA分子を投与することによって阻害され、ここで阻害性RNA分子は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と少なくとも部分的に同一且つ相補的な二本鎖領域を含む。阻害性RNA分子は、リボザイム、siRNA又はshRNA分子であり得る。なお別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性は、1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸を投与することによって阻害される。miR−15結合部位は、miR−15のシード配列と相補的な配列を含み得る。1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーは、miR−15a、miR−15b、miR−16−1、miR−16−2、miR−195、miR−424及びmiR−497であり得る。
【0014】
本発明はまた、予防を必要とする対象者において病的肥大又は心不全を予防する方法も提供する。一実施形態において、この方法は、病的心肥大又は心不全を発症するリスクのある対象者を特定することと;前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することとを含む。一実施形態において、当該阻害は、心臓細胞に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を送達することを含む。別の実施形態において、リスクのある対象者は、不制御の高血圧症、治っていない弁膜症、慢性狭心症、最近起こした心筋梗塞、心疾患の先天的素因、及び病的肥大からなる群から選択される1つ又は複数のリスク要因を示し得る。
【0015】
miR−15結合部位か、又はその他の、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性のモジュレーターを含むantagomir、アンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA分子、核酸は、標的となる器官、組織、又は細胞型に送達するのに好適な当業者に公知の任意の方法によって投与され得る。例えば、本発明の特定の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、非経口投与、例えば、静脈内注射、動脈内注射、心膜内注射、又は皮下注射などによるか、又は組織(例えば、心臓組織)に直接注射することによって投与され得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、経口的な、経皮的な、腹腔内の、皮下の、持続放出性の、制御放出性の、遅延放出性の、坐薬の、又は舌下の投与経路によって投与され得る。他の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、カテーテルシステムによって投与され得る。
【0016】
本発明はまた、トランスジェニック非ヒト哺乳動物も包含し、その細胞は、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバー(例えばmiR−15a、miR−15b、miR−16−1、miR−16−2、miR−195、miR−424及びmiR−497)の機能形態を発現することができない。別の実施形態において、本発明はトランスジェニック非ヒト哺乳動物を含み、その細胞は、前記非ヒト哺乳動物の細胞内で活性な異種プロモーターの制御下にあるmiR−15ファミリーメンバーのコード領域を含む。いくつかの実施形態において、哺乳動物はマウスである。
【0017】
本発明は、miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを同定する方法を提供し、この方法は、(a)細胞を候補化合物と接触させることと;(b)miR−15ファミリーメンバーの活性又は発現を評価することと;(c)工程(b)における活性又は発現を、候補化合物が存在しない場合の活性又は発現と比較することとを含み、測定された活性又は発現に差があると、それは、その候補化合物が前記miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターであることを示すものである。細胞は、候補化合物とインビトロ又はインビボで接触させ得る。候補化合物は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、又は小分子であり得る。miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの作動薬又は阻害薬であり得る。miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの上流調節因子の作動薬又は阻害薬であり得る。
【0018】
本発明はまた、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を含む医薬組成物も提供する。一実施形態において、本組成物は注射用に製剤化される。別の実施形態において、本医薬組成物は、非経口投与又はカテーテル投与などの投与用のキットと組み合わされる。
【0019】
図面の簡単な説明
以下の図面は本明細書の一部をなすもので、本発明の特定の態様をさらに説明するために含められる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と併せて、そうした図面の1つ又は複数を参照することにより、さらに良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A−B】心肥大におけるmiRNA発現。A.シャム手術及び21日間にわたる胸部大動脈バンディング(TAB)後のマウス、並びに野生型(WT)マウス及びカルシニューリン活性化トランスジェニック(CnA Tg)マウスの代表的な心臓においてH&E染色された部分。スケールバーは2mmに等しい。B.CnA又はTABに応答して調節されたmiRNAの数が示される。なかには、TAB又はCnAのいずれか単独によって肥大が誘導された変化もあったが、誘導されたり、又は抑制されたりしたmiRNAのほとんどは、異なる肥大刺激について重複していた。
【図1C】心肥大におけるmiRNA発現。WT心及びCnA Tg心における特定のmiRNAのノーザンブロット解析。ローディング対照としてU6 RNAを検出した。
【図2】ヒト心不全におけるmiRNA発現。4例のヒト正常心及び6例のヒト不全心におけるmiRNAのノーザンブロット解析。不全の試料中の各miRNAの変化倍数の平均が、右側に示される。
【図3】miRNA 195の心臓特異的な過剰発現は、心筋症を発症させるのに十分である。野生型(WT)及び2つの異なる系統のmiR−195トランスジェニック(Tg)動物の心臓においてH&E染色された部分。miRNA−195 Tg系統3の動物は、心臓拡張により生後2週間で死亡した。WT並びにmiR−195トランスジェニック系統1及び3の心臓に対するノーザンブロット解析では、それぞれ、26.5倍及び29.2倍の心臓特異的miRNAの過剰発現が確認されている。
【図4A−C】miR−195の過剰発現は、心臓の拡大による心機能不全を誘導する。A.心エコーによる分析は、miR−195トランスジェニック(Tg)マウスが左室(LV)拡張及び壁の菲薄化を示し、結果として、野生型(WT)同腹仔と比較して短縮率が低下していることを示している。B.体重に対する心臓の重量比は、miR−195の心臓特異的な過剰発現に応答して増加する。C.リアルタイムPCR分析から、miR−195 Tg動物における肥大遺伝子は、WT動物と比較して上方制御(up-regulation)が示される(n=3)。* 野生型との比較においてP<0.05。
【図5】miR−195に特異的な心臓リモデリング。miR−195の過剰発現は、2週齢で心臓の拡大を誘導し、これは6週間以内に拡張型の表現型に進行する。心臓におけるmiR−214の過剰発現は表現型に影響を及ぼさず、これは、miR−195の心臓病変に対する特異的な影響を示している。スケールバーは2mmに等しい。
【図6A−B】miR−195は、生存促進性のタンパク質を標的とするmiR−15ファミリーの一つである。A.miR−195は、5つの異なるmiR:miR−15、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497からなるmiR−15ファミリーの一つである。miR−15ファミリーメンバーのうち4つは、2つのmiRNAずつがまとまった3群として発現する。B.miR−15ファミリーメンバーは、増殖、生存及び抗アポトーシスに関わるタンパク質を標的とする。従って、miR−195の上方制御によって、これらのmRNAの下方制御(down-regulation)が起こり、細胞死がもたらされる。
【図7】FGF2 mRNAの3’UTRにおけるmiR−195標的配列。
【図8A−B】ヒト不全心由来の試料におけるmiR−15ファミリーメンバーの発現の亢進。A.左側のパネルは、ヒト正常心のRNAブロットを示し、右側のパネルは、ヒト不全心のRNAブロットを示す。B.miR−15ファミリーメンバー間で保存されているシード領域により、miR−15ファミリー全体をノックダウンするための別の手法が可能となる。この手法は、αミオシン重鎖プロモーター(αMHC)などの心臓特異的プロモーターの制御下における複数のmiR−15結合部位の過剰発現を伴う。miR−15結合部位の各々は、保存されたシード領域の配列を含み、あらゆるファミリーメンバーを捕捉することができ、従ってそうしたファミリーメンバーがその内在性の標的に結合することを防止する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一部には、マイクロRNAのmiR−15ファミリーのメンバー、例えばmiR−195が、ヒト不全心の心筋組織並びに病的心肥大の動物モデルにおいて上方制御されるという発見に基づく。心臓におけるmiR−195の過剰発現は、心肥大を誘導するのに十分であり、拡張型の表現型につながり得る。従って、本発明は、対象者の心臓細胞におけるmiR−15ファミリーの1つ又は複数のメンバーの発現又は活性を阻害することにより、対象者における様々な形態の心疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0022】
miR−15ファミリーは、マイクロRNAの小さいファミリーであり、miR−195、miR−16−1、miR−15a、miR−15b、miR−16−2、miR−424、及びmiR−497を含む。miR−15ファミリーメンバーのうち4つは、3群にまとまった転写産物として発現する(図6A)。miR−195とmiR−497とは、17番染色体に位置する遺伝子のイントロン由来の一群として発現する。miR−16は、異なる染色体上に位置するコピーが2つある。1つのコピー(miR−16−1)は、miR−15aと共に、13番染色体でコードされる遺伝子のイントロン由来の一群として発現する。第2のコピー(miR−16−2)は、15bと共に、3番染色体上に位置するSMC4遺伝子のイントロン由来の一群として発現する。miR−424は、X染色体から発現する。miR−15ファミリーメンバーの各々についてのpre−miRNA配列(例えばステムループ配列)を、以下に列挙する:
【化1】

【0023】
各miR−15ファミリーメンバーについてのpre−miRNA配列の各々は、プロセシングにより成熟配列及びアスタリスク付き配列(star sequence)となる。アスタリスク付き配列は、ステムループ構造の他方の鎖からプロセシングされる。miR−15ファミリーメンバーの各々についての成熟配列及びアスタリスク付き配列を、以下に示す:
【化2】

【化3】

【0024】
全てのファミリーメンバーについてシード領域(例えば、成熟miRNA配列のヌクレオチド2〜8位にわたる塩基)が高度に保存されている(AGCAGCAC;配列番号18)とはいえ、成熟miRNAの3’末端はファミリーメンバー間で違いがある(図6A)。
【0025】
本発明は、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することにより、治療を必要とする対象者において病的心肥大、心不全、又は心筋梗塞を治療する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、心肥大、心不全、又は心筋梗塞を有する対象者を特定することと;前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む。「心臓細胞」は、本明細書で使用されるとき、心筋細胞、心臓線維芽細胞、及び心臓内皮細胞を含む。別の実施形態において、この方法は、対象者に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を投与することを含む。なお別の実施形態において、この方法は、病的心肥大又は心不全を発症するリスクのある対象者を特定することと、対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することとを含む。病的心肥大又は心不全を発症するリスクのある対象者は、例えば、不制御の高血圧症、治っていない弁膜症、慢性狭心症、最近起こした心筋梗塞、心疾患の先天的素因又は病的肥大を含む1つ又は複数のリスク要因を示し得る。特定の実施形態において、リスクのある対象者は、心肥大の遺伝的素因を有すると診断され得る。本発明のいくつかの実施形態において、リスクのある対象者は、心肥大の家族歴を有し得る。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、予防を必要とする対象者において心肥大及び拡張型心筋症を予防する方法を提供し、この方法は、対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む。さらに別の実施形態において、本発明は、抑制を必要とする対象者において心肥大の進行を抑制する方法を提供し、この方法は、対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む。さらなる実施形態において、本発明は、心不全又は心肥大を有する対象者において、運動耐容能を増加させ、入院期間を低減し、クオリティ・オブ・ライフを向上させ、罹病率を低下させ、及び/又は死亡率を低下させる方法を提供し、この方法は、対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む。
【0027】
従って、本発明は、miR−195、miR−15a、miR−15b、miR−16−1、miR−16−2、miR−424、及びmiR−497などのmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を利用した、心肥大、心不全、又は心筋梗塞の治療方法を提供する。好ましくは、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与により、結果として対象者における心肥大、心不全、又は心筋梗塞のうちの1つ又は複数の症状が改善され、又は心肥大から心不全への移行が遅延される。1つ又は複数の症状の改善は、例えば、運動能力の増加、心駆出量の増加、左室拡張終期圧の低下、肺毛細血管楔入圧の低下、心拍出量の増加、心係数の上昇、肺動脈圧の降下、左室収縮終期径及び拡張終期径の低下、左室壁及び右室壁応力の低下、壁張力の低下、クオリティ・オブ・ライフの向上、並びに疾患に関連する罹病率又は死亡率の低下であり得る。加えて、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬を使用することにより、心肥大及びそれに付随する症状の発生が防止され得る。一実施形態において、心筋梗塞を患う対象者に対して1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を投与することで、心臓細胞の消失が減少し、梗塞サイズが低減され得る。別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与後、心筋梗塞を患う対象者の心機能が安定化する。
【0028】
マイクロRNA機能の阻害は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することによって実現され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドであり得る。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも1つの化学修飾を有する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の「ロックド核酸」からなり得る。「ロックド核酸」(LNA)は修飾リボヌクレオチドであり、リボース糖部分の2’〜4’位の炭素間に追加の架橋を含む結果として「ロックされた」コンホメーションとなり、LNAを含むオリゴヌクレオチドには熱的な安定性の亢進が付与される。或いは、アンチセンスオリゴヌクレオチドはペプチド核酸(PNA)を含んでもよく、これは、糖リン酸骨格ではなく、ペプチドベースの骨格を含むものである。アンチセンスオリゴヌクレオチドが含み得る他の化学修飾としては、限定はされないが、糖修飾、例えば、2’−O−アルキル(例えば、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル)修飾、2’−フルオロ修飾、及び4’チオ修飾、並びに骨格修飾、例えば、1つ又は複数のホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、又はホスホノカルボキシレート結合が挙げられる(例えば、全体として参照により本明細書に援用される米国特許第6,693,187号及び同第7,067,641号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’−O−メトキシエチル「ギャップマー(gapmer)」であり、これは5’末端及び3’末端の双方に2’−O−メトキシエチルで修飾されたリボヌクレオチドを含み、中心に少なくとも10個のデオキシリボヌクレオチドを有するものである。こうした「ギャップマー」は、RNA標的のRNアーゼH依存性の分解機序を開始させる能力を有する。安定性を亢進し、且つ効力を向上させる他のアンチセンスオリゴヌクレオチド修飾、例えば、全体として参照により本明細書に援用される米国特許第6,838,283号に記載されるものなどが当該技術分野において公知であり、本発明の方法における使用に好適である。マイクロRNAの活性の阻害に有用な好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約19〜約25ヌクレオチド長である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列と少なくとも部分的に相補的な、例えば、成熟miRNA配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%相補的な配列を含み得る。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列と実質的に相補的であり、すなわち、標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%相補的であり得る。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列と100%相補的な配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはantagomirである。「antagomir」は、miRNA配列と少なくとも部分的に相補的な一本鎖の化学修飾リボヌクレオチドである。antagomirは、1つ又は複数の修飾ヌクレオチド、例えば2’−O−メチル−糖修飾を含み得る。いくつかの実施形態において、antagomirは修飾ヌクレオチドのみを含む。antagomirはまた、1つ又は複数のホスホロチオエート結合を含んでもよく、その結果、部分的な、又は完全なホスホロチオエート骨格がもたらされる。インビボでの送達及び安定性を促進するため、antagomirは、その3’末端でコレステロール又は他の部分と結合してもよい。miRNAの阻害に好適なantagomirは、約15〜約50ヌクレオチド長、より好ましくは約18〜約30ヌクレオチド長、及び最も好ましくは約20〜約25ヌクレオチド長であり得る。「部分的に相補的な」とは、標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%相補的な配列を指す。antagomirは、成熟miRNA配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%相補的であり得る。いくつかの実施形態において、antagomirは、成熟miRNA配列と実質的に相補的であり、すなわち、標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%相補的であり得る。他の実施形態において、antagomirは、成熟miRNA配列と100%相補的である。
【0030】
miR−15ファミリーメンバーの機能を阻害する別の手法は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と少なくとも部分的に同一で、且つ部分的に相補的な二本鎖領域を有する阻害性RNA分子を投与することである。阻害性RNA分子は、ステム−ループ構造を含む二本鎖の低分子干渉RNA(siRNA)又は低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子であり得る。阻害性RNA分子の二本鎖領域は、成熟miRNA配列と少なくとも部分的に同一で、且つ部分的に相補的な、例えば、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一且つ相補的な配列を含み得る。いくつかの実施形態において、阻害性RNAの二本鎖領域は、成熟miRNA配列と少なくとも実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む。「実質的に同一で、且つ実質的に相補的な」とは、標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一且つ相補的な配列を指す。他の実施形態において、阻害性RNA分子の二本鎖領域は、標的miRNA配列との100%の同一性及び相補性を有し得る。
【0031】
本明細書に記載される阻害性ヌクレオチド分子は、好ましくは、1つ若しくは複数のmiR−15ファミリーメンバーの成熟配列(例えば、配列番号7、9、11、14、16、及び20)又は1つ若しくは複数のmiR−15ファミリーメンバーのアスタリスク付き配列(例えば、配列番号8、10、12、13、15、17、及び21)を標的とする。いくつかの実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と完全に相補的な配列を含むantagomirである。一実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号14、配列番号16、又は配列番号20と部分的に、又は完全に相補的な配列を有するantagomirである。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17、又は配列番号21と部分的に、又は完全に相補的な配列を有するantagomirである。
【0032】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号14、配列番号16、又は配列番号20と実質的に相補的な配列を含む化学修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17、又は配列番号21と実質的に相補的な配列を含む化学修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドである。本明細書で使用されるとき、「実質的に相補的な」とは、標的ポリヌクレオチド配列(例えば、成熟miRNA配列又は前駆体miRNA配列)と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%相補的な配列を指す。
【0033】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーについての前駆体miRNA配列(pre−miRNA)(例えば、pre−miR−195、pre−miR−497、pre−miR−424、pre−miR−15a、pre−miR−15b、pre−miR−16−1、又はpre−miR−16−2)と実質的に相補的な配列を含み得る。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、pre−miRNA配列のステム−ループ領域の外側に位置する配列と実質的に相補的な配列を含む。一実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号19からなる群から選択されるpre−miRNA配列と実質的に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0034】
本発明の他の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、リボザイム、siRNA、又はshRNAなどの阻害性RNA分子であり得る。一実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、二本鎖領域を含む阻害性RNA分子であり、この二本鎖領域は、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列(例えば、配列番号7、9、11、14、16、及び20)と100%の同一性及び相補性を有する配列を含む。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、二本鎖領域を含む阻害性RNA分子であり、この二本鎖領域は、miR−15ファミリーメンバーのアスタリスク付き配列(例えば、配列番号8、10、12、13、15、17、及び21)と100%の同一性及び相補性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、二本鎖領域を含む阻害性RNA分子であり、前記二本鎖領域は、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの成熟配列との同一性及び相補性が少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%である配列を含む。
【0035】
複数の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーの複数のメンバー(例えば、miR−15a、miR−15b、miR−16−1、miR−16−2、miR−195、miR−424、及びmiR−497)を同時に阻害してもよく、ここで各阻害薬は、別個のmiR−15ファミリーメンバーを標的とする。例えば、いくつかの実施形態において、2つの別個の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーのうち少なくとも2つのメンバーが阻害される。他の実施形態において、3つの別個の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーのうち少なくとも3つのメンバーが阻害される。さらに他の実施形態において、4つの別個の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーのうち少なくとも4つのメンバーが阻害される。さらなる実施形態において、5つの別個の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーのうち少なくとも5つのメンバーが阻害される。一実施形態において、6つの別個の阻害薬を投与することにより、miR−15ファミリーの6つのメンバーが全て阻害される。
【0036】
別の実施形態において、miR−15ファミリー機能の阻害薬は、1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸である。全てのmiR−15ファミリーメンバーのシード領域(AGCAGCAC;配列番号18)は、高度に保存されている。従って、miR−15シード配列との実質的な相補性を有する結合部位を含む核酸であれば、miR−15ファミリーの全てのメンバーと結合する。この手法は、スポンジを使用して有効なmiR−15ファミリーメンバーを「吸い上げ」、それにより所与の標的配列に影響を与え得るmiRNAのプール全体を減らすことに例えられている。用語「miR−15結合部位」は、本明細書で使用されるとき、miR−15a、miR−15b、miR−16−1、miR−16−2、miR−195、miR−424、miR−497、又はその組み合わせの成熟配列との結合能を有するヌクレオチド配列を指す。好ましくは、miR−15結合部位は、miR−15シード配列と実質的に相補的な配列を含む。シード配列又はシード領域は、成熟miRNA配列の5’部分のヌクレオチド2〜8位を指す。一実施形態において、miR−15結合部位は、配列番号18の配列を含む。1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む阻害性核酸は、約20〜約500ヌクレオチド長、約25〜約400ヌクレオチド長、約30〜約300ヌクレオチド長、約40〜約200ヌクレオチド長、又は約50〜約100ヌクレオチド長であり得る。例えば、核酸は、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、350、400、500ヌクレオチド長であり得る。核酸は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、又は20個のmiR−15結合部位を含み得る。複数のmiR−15結合部位が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上のヌクレオチドのスペーサーに隣接し得るか、又はそれによって隔てられ得る。
【0037】
別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を細胞又は対象者に送達するため、発現ベクターが用いられ得る。「ベクター」は、目的とする核酸を細胞の内部に送達するために使用することのできる物質の組成物である。様々なベクターが当該技術分野において公知であり、限定はされないが、線状ポリヌクレオチド、イオン化合物又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが挙げられる。従って、用語「ベクター」には、自己複製プラスミド又はウイルスが含まれる。ウイルスベクターの例としては、限定はされないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。発現構築物は生細胞中で複製してもよく、又は合成により作製してもよい。本願の目的上、用語「発現構築物」、「発現ベクター」、及び「ベクター」は、本発明の適用を一般的で例示的な意味で明らかにするため同義的に用いられるが、本発明を限定することは意図しない。
【0038】
一実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を発現する発現ベクターは、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含み、ここで発現するアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの成熟配列と部分的に、又は完全に相補的である。語句「作動可能に連結された」又は「転写制御下にある」は、本明細書で使用されるとき、プロモーターがポリヌクレオチドに対して、RNAポリメラーゼによる転写開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するのに正しい位置及び向きにあることを意味する。別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を発現する発現ベクターは、shRNA又はsiRNAをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された1つ又は複数のプロモーターを含み、ここで発現するshRNA又はsiRNAは、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの成熟配列と同一且つ相補的な、又は部分的に同一で、且つ部分的に相補的な二本鎖領域を含む。「部分的に同一で、且つ部分的に相補的な」とは、標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一且つ相補的な配列を指す。
【0039】
特定の実施形態において、目的とするポリヌクレオチドをコードする核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」とは、細胞の合成機構又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指し、遺伝子の特異的な転写を開始するのに必要とされる。プロモーターという用語は、本明細書では、RNAポリメラーゼI、II、又はIIIのための開始部位近傍に集まる転写制御モジュール群を指して用いられ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列、ラットインスリンプロモーター、及びグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターを用いることにより、目的とするコード配列の高レベルな発現を得ることができる。当該技術分野において周知されている他のウイルス又は哺乳動物細胞又はバクテリオファージのプロモーターを用いて目的とするコード配列の発現を実現することも、所与の目的に対して発現レベルが十分であるならば、同様に企図される。
【0041】
周知の特性を有するプロモーターを用いることにより、目的とするポリヌクレオチドのトランスフェクション又は形質転換後の発現レベル及びパターンを最適化することができる。さらに、特定の生理学的なシグナルに応答して調節されるプロモーターを選択することにより、遺伝子産物の誘導発現が可能となり得る。表1及び表2は、本発明に関連して、目的とするポリヌクレオチド(例えば、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬)の発現を調節するために用いられ得るいくつかの調節要素を列挙する。このリストは、遺伝子発現の促進に関与する可能性のある全ての要素を網羅することを意図したものではなく、単にその例示に過ぎない。
【0042】
以下は、発現構築物のなかで目的とするポリヌクレオチドと組み合わせて用いられ得るウイルスプロモーター、細胞プロモーター/エンハンサー及び誘導性プロモーター/エンハンサーのリストである(表1及び表2)。加えて、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(Eukaryotic Promoter Data Base EPDBに従う)が、遺伝子の発現の駆動に用いられてもよい。真核細胞は、送達複合体の一部として、或いは追加的な遺伝子発現構築物として適切な細菌ポリメラーゼが提供されると、特定の細菌プロモーターからの細胞質の転写を補助し得る。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
特に、筋特異的プロモーター、及びより詳細には、心臓特異的プロモーターが興味深い。これらとしては、ミオシン軽鎖−2プロモーター(Franz et al., 1994;Kelly et al., 1995)、αアクチンプロモーター(Moss et al., 1996)、トロポニン1プロモーター(Bhavsar et al., 1996);Na/Ca2+交換体プロモーター(Barnes et al., 1997)、ジストロフィンプロモーター(Kimura et al., 1997)、α7インテグリンプロモーター(Ziober and Kramer, 1996)、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター(LaPointe et al., 1996)及びαB−クリスタリン/低分子量熱ショックタンパク質プロモーター(Gopal-Srivastava, 1995)、αミオシン重鎖プロモーター(Yamauchi-Takihara et al., 1989)及びANFプロモーター(LaPointe et al., 1988)が挙げられる。
【0048】
必要に応じて、遺伝子転写産物の適切なポリアデニル化を生じさせるため、ポリアデニル化シグナルが含まれ得る。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功に重要ではないと考えられ、ヒト成長ホルモンシグナル及びSV40ポリアデニル化シグナルなどの任意のかかる配列が用いられ得る。また、発現カセットの要素としてターミネーターも企図される。こうした要素は、メッセージレベルを亢進し、カセットから他の配列へのリードスルーを最小限に抑える働きをし得る。
【0049】
本発明の特定の実施形態において、細胞は本発明の核酸構築物を含み、発現構築物にマーカーを含めることにより、インビトロ又はインビボで細胞を同定し得る。かかるマーカーにより、細胞に識別可能な変化が付与され、発現構築物を含む細胞を容易に同定することが可能となる。通常、薬剤選択マーカーを含めると、クローニング及び形質転換体の選択に役立ち、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン及びヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子が、有用な選択可能マーカーである。或いは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの酵素が用いられてもよい。免疫マーカーもまた用いることができる。用いられる選択可能マーカーは、それが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現することが可能な限り、重要ではないと考えられる。選択可能マーカーのさらなる例は、当業者に周知されている。
【0050】
発現ベクターが細胞に導入され得る方法は数多くある。本発明の特定の実施形態において、発現構築物は、ウイルス又はウイルスゲノムに由来する改変された構築物を含む。特定のウイルスは、受容体介在性エンドサイトーシスによって細胞に入り込むことで宿主細胞ゲノムに組み込まれ、安定的且つ効率的にウイルス遺伝子を発現することが可能なため、哺乳動物細胞に外来遺伝子を移入する際の魅力的な候補となっている(Ridgeway, 1988;Nicolas and Rubenstein, 1988;Baichwal and Sugden, 1986;Temin, 1986)。
【0051】
インビボ送達に好ましい方法の一つには、アデノウイルス発現ベクターの使用が関わる。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを補助するのに十分で、且つ(b)その構築物にクローニングされたアンチセンスポリヌクレオチド(又は他の阻害性ポリヌクレオチド)を発現するのに十分なアデノウイルス配列を含む構築物を含んでいることを意味する。発現ベクターは、遺伝子改変された形態のアデノウイルスを含む。36kB、線状、二本鎖DNAウイルスといったアデノウイルスの遺伝子構成についての知識により、アデノウイルスDNAの多くの部分は7kBまで外来配列に置換することが可能である(Grunhaus and Horwitz, 1992)。アデノウイルスDNAは、遺伝毒性の可能性のないエピソーム型で複製し得るため、レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞がアデノウイルスに感染しても、染色体への組込みは起こらない。また、アデノウイルスは構造的に安定でもあり、大規模な増幅の後にもゲノム再構成は検出されていない。アデノウイルスは、細胞周期段階に関わらず、事実上あらゆる上皮細胞に感染することができる。
【0052】
アデノウイルスは、ゲノムサイズが中程度であり、操作が容易で力価が高く、標的細胞が広範囲にわたり、且つ感染力が高いため、遺伝子導入ベクターとして用いるのに特に好適である。ウイルスゲノムの両末端は100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含み、これは、ウイルスDNAの複製及びパッケージングに必須のシスエレメントである。
【0053】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるか、又は少なくとも条件付き欠損でなければならないという要件以外には、アデノウイルスベクターの性質は本発明の実施の成功に重要ではないと考えられる。アデノウイルスは、42種の既知の異なる血清型又は亜群A〜Fのうちのいずれであってもよい。亜群Cのアデノウイルス5型は、本発明で用いられる条件付き複製欠損のアデノウイルスベクターを得るのに好ましい出発物質である。これは、アデノウイルス5型が、明らかとなっている生化学的及び遺伝的情報の多いヒトアデノウイルスであるためであり、歴史的に、アデノウイルスをベクターとして用いる構築の多くに用いられている。
【0054】
本発明に係る典型的なベクターは複製欠損型であり、アデノウイルスE1領域を有しない。従って、目的とする遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、E1コード配列が取り除かれた位置に導入することが、最も好都合であり得る。しかしながら、アデノウイルス配列内における構築物の挿入位置は、本発明にとって重要ではない。目的とする遺伝子をコードするポリヌクレオチドはまた、Karlsson et al. (1986)によって記載されるとおり、E3置換ベクターの欠失させたE3領域の代わりに挿入されてもよく、又はヘルパー細胞系若しくはヘルパーウイルスがE4欠失を補完するE4領域に挿入されてもよい。
【0055】
アデノウイルスベクターは、真核生物の遺伝子発現(Levrero et al., 1991;Gomez-Foix et al., 1992)及びワクチン開発(Grunhaus and Horwitz, 1992;Graham and Prevec, 1991)に用いられている。最近になって、動物試験から、組換えアデノウイルスが遺伝子治療に用いられ得ることが示唆された(Stratford-Perricaudet and Perricaudet, 1991;Stratford-Perricaudet et al., 1990;Rich et al., 1993)。種々の組織に組換えアデノウイルスを投与する研究には、気管滴下(trachea instillation)(Rosenfeld et al., 1991;Rosenfeld et al., 1992)、筋肉注射(Ragot et al., 1993)、末梢静脈注射(Herz and Gerard, 1993)及び脳への定位接種(Le Gal La Salle et al., 1993)が含まれる。
【0056】
レトロウイルスベクターもまた、細胞内でmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を発現させるのに好適である。レトロウイルスは一本鎖RNAウイルス群であり、逆転写の過程によって感染細胞中でそのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする(Coffin, 1990)。次に、生じたDNAはプロウイルスとして細胞染色体に安定的に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成が誘導される。この組込みの結果、レシピエント細胞及びその子孫においてウイルスの遺伝子配列が保持される。レトロウイルスゲノムは、3つの遺伝子、gag、pol、及びenvを含み、これらはそれぞれ、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、及びエンベロープ成分をコードする。gag遺伝子より上流に存在する配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするためのシグナルを含む。ウイルスゲノムの5’末端及び3’末端には、2本の長末端反復配列(LTR)配列が存在する。これらは強力なプロモーター及びエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムへの組込みにも必要とされる(Coffin, 1990)。
【0057】
レトロウイルスベクターを構築するには、ウイルスゲノムにおいて特定のウイルス配列の代わりに目的とする遺伝子をコードする核酸を挿入し、複製欠損型のウイルスを作る。ビリオンを作成するため、gag、pol、及びenv遺伝子を含むが、LTR及びパッケージング成分は有しないパッケージング細胞系を構築する(Mann et al., 1983)。cDNAを含む組換えプラスミドを、レトロウイルスLTR配列及びパッケージング配列と共にこの細胞系に(例えばリン酸カルシウム沈殿によって)導入すると、パッケージング配列によって組換えプラスミドのRNA転写産物がパッケージングされてウイルス粒子となり、次にこれを培養培地に分泌させる(Nicolas and Rubenstein, 1988;Temin, 1986;Mann et al., 1983)。次に、組換えレトロウイルスを含む培地を回収し、任意選択により濃縮して、遺伝子移入に使用する。レトロウイルスベクターは、広範な種類の細胞型に感染することができる。しかしながら、組込み及び安定的な発現には宿主細胞の分裂が必要となる(Paskind et al., 1975)。
【0058】
本発明の発現構築物として、他のウイルスベクターが用いられてもよい。ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988;Baichwal and Sugden, 1986;Coupar et al., 1988)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway, 1988;Baichwal and Sugden, 1986;Hermonat and Muzycska, 1984)及びヘルペスウイルスなどのウイルスに由来するベクターが用いられ得る。これらは、様々な哺乳動物細胞にとって魅力的ないくつかの特徴を提供する(Friedmann, 1989;Ridgeway, 1988;Baichwal and Sugden, 1986;Coupar et al., 1988;Horwich et al., 1990)。
【0059】
センス又はアンチセンス遺伝子構築物の発現を生じさせるためには、発現構築物が細胞に送達されなくてはならない。この送達は、細胞系を形質転換するための実験室手順で行われるとおりインビトロで達成されてもよく、又は特定の病態の治療で行われるとおりインビボ若しくはエキソビボで達成されてもよい。送達機構の一つは、ウイルス感染を介するものであり、この場合、発現構築物が感染性ウイルス粒子にキャプシド形成される。
【0060】
発現構築物を哺乳動物培養細胞に移入するための、ウイルスに拠らないいくつかの方法もまた、本発明によって企図される。これらとしては、リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb, 1973;Chen and Okayama, 1987;Rippe et al., 1990)、DEAE−デキストラン法(Gopal, 1985)、電気穿孔(Tur-Kaspa et al., 1986;Potter et al., 1984)、ダイレクトマイクロインジェクション(Harland and Weintraub, 1985)、DNAが負荷されたリポソーム(Nicolau and Sene, 1982;Fraley et al., 1979)及びリポフェクタミン−DNA複合体、細胞音波処理(Fechheimer et al., 1987)、高速のマイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子銃(Yang et al., 1990)、及び受容体介在性トランスフェクション(Wu and Wu, 1987;Wu and Wu, 1988)が挙げられる。これらの技術のうちいくつかは、インビボ又はエキソビボでの使用に適合させても成功し得る。
【0061】
発現構築物が細胞に送達されると、目的とする遺伝子をコードする核酸が種々の部位に置かれて発現し得る。特定の実施形態において、遺伝子をコードする核酸は、細胞のゲノムに安定的に組み込まれ得る。この組込みは、相同組換えによって同種の位置及び向きであってもよく(遺伝子の置換)、又はランダムで非特異的な位置に組み込まれてもよい(遺伝子の増大)。さらに別の実施形態において、核酸は、DNAの別個のエピソームセグメントとして細胞に安定的に維持され得る。かかる核酸セグメント、すなわち「エピソーム」は、宿主細胞周期と無関係な、又はそれと同期した維持及び複製を可能とするのに十分な配列をコードする。発現構築物が細胞にどのように送達されるか、及び細胞中のどこに核酸が留まるかは、用いられる発現構築物のタイプに依存する。
【0062】
本発明の別の実施形態において、発現構築物は、単純に裸の組換えDNA又はプラスミドからなってもよい。構築物の移入は、細胞膜を物理的又は化学的に透過可能とする上述の方法のうちのいずれによっても実施され得る。これは、特にインビトロでの移入に適用性を有するが、インビボでの使用にも同様に適用され得る。Dubensky et al.(1984)は、リン酸カルシウム沈殿物の形態のポリオーマウイルスDNAを、成体及び新生仔マウスの肝臓及び脾臓に注入することに成功しており、活性なウイルス複製及び急性感染を実証した。Benvenisty and Neshif(1986)もまた、リン酸カルシウム沈殿プラスミドの腹腔内への直接注入により、結果としてトランスフェクトされた遺伝子が発現することを実証した。目的とするポリヌクレオチドをコードするDNAもまた、同様の方法によりインビボで移入し、遺伝子産物を発現させることが想定される。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態において、裸のDNAの発現構築物を細胞に移入するため、微粒子銃が関わり得る。この方法は、DNAがコーティングされたマイクロプロジェクタイルを高速に加速し、細胞を殺すことなくそれらを細胞膜に穿通させて細胞に入れ込むその能力に依存する(Klein et al., 1987)。小粒子を加速するためのいくつかの装置が開発されている。かかる装置の一つは高圧放電に頼るもので、それにより電流が生成され、ひいては輸送力が提供される(Yang et al., 1990)。使用されるマイクロプロジェクタイルは、タングステン又は金ビーズなどの生物学的作用を起こさない物質からなっている。
【0064】
ラット及びマウスの肝臓、皮膚、及び筋組織を含む特定の器官が、インビボで撃ち込まれている(Yang et al., 1990;Zelenin et al., 1991)。これは、組織又は細胞を外科的に露出させて、銃と標的器官との間にあるいかなる組織も排除する必要があり、すなわち、エキソビボでの処置となり得る。この場合も、目的とする特定のポリヌクレオチドをコードするDNAがこの方法によって送達されてもよく、なお本発明に組み込まれ得る。
【0065】
本発明のさらなる実施形態において、発現構築物はリポソームに封入されてもよい。リポソームは多孔質構造であり、リン脂質二重層膜及び内部の水性媒体を特徴とする。多重膜リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。多重膜リポソームは、過剰の水溶液中にリン脂質が懸濁されるとき、同時に形成される。脂質成分は閉じた構造が形成される前に自己組織化を起こし、水と溶解した溶質とを脂質二重層の間に閉じ込める(Ghosh and Bachhawat, 1991)。また、リポフェクタミン−DNA複合体も企図される。
【0066】
本発明の特定の実施形態において、リポソームは、センダイウイルス(HVJ)と複合体を形成し得る。これは、細胞膜との融合を容易にし、及びリポソームに被包されたDNAの細胞侵入を促進することが示されている(Kaneda et al., 1989)。他の実施形態において、リポソームは、核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と複合体を形成し得るか、又はそれと併用され得る(Kato et al., 1991)。さらに別の実施形態において、リポソームはHVJ及びHMG−1の双方と複合体を形成し得るか、又はそれらと併用され得る。すなわち、かかる発現構築物を用いたインビトロ及びインビボでの核酸の導入及び発現が成功しており、ひいてはそうした発現構築物は本発明に適用することが可能である。DNA構築物において細菌プロモーターが用いられる場合、リポソーム中に適切な細菌ポリメラーゼを含めることも望ましい。
【0067】
特定の遺伝子をコードする核酸を細胞に送達するために用いることのできる他の発現構築物は、受容体介在性の送達媒体である。こうした媒体は、ほぼ全ての真核細胞における受容体介在性エンドサイトーシスによる巨大分子の選択的取り込みを利用する。様々な受容体は細胞型特異的に分布するため、送達は高度に特異的であり得る(Wu and Wu, 1993)。
【0068】
受容体介在性の遺伝子標的媒体は、概して2つの成分、すなわち、細胞受容体特異的リガンドと、DNA結合剤とからなる。いくつかのリガンドが、受容体介在性の遺伝子移入に用いられている。最も広範に特徴付けられているリガンドは、アシアロオロソムコイド(ASOR)(Wu and Wu, 1987)及びトランスフェリン(Wagner et al., 1990)である。近年では、ASORと同じ受容体を認識する合成のネオ糖タンパク質が遺伝子送達媒体として用いられており(Ferkol et al., 1993;Perales et al., 1994)、また、扁平上皮癌細胞への遺伝子の送達に、上皮成長因子(EGF)も用いられている(Myers、欧州特許第0273085号)。
【0069】
他の実施形態において、送達媒体は、リガンドとリポソームとを含み得る。例えば、Nicolau et al.(1987)は、ガラクトース末端のアシアロガングリオシドであるラクトシルセラミドをリポソームに組み込んで用い、肝細胞によるインスリン遺伝子の取り込みの増加を観測した。従って、特定の遺伝子をコードする核酸もまた、リポソームの有る、又は無い様々な受容体−リガンド系によって細胞型(例えば心臓細胞)に特異的に送達され得ることは、実現可能である。例えば、上皮成長因子(EGF)は、EGF受容体の上方制御を呈する細胞への核酸の送達を介在する受容体として用いられ得る。マンノースは、肝細胞のマンノース受容体を標的とするために用いることができる。また、CD5(CLL)、CD22(リンパ腫)、CD25(T細胞白血病)及びMAA(メラノーマ)に対する抗体も、同様に標的部分として用いることができる。
【0070】
特定の例では、ポリヌクレオチドが陽イオン性脂質と併せて投与され得る。陽イオン性脂質の例としては、限定はされないが、リポフェクチン、DOTMA、DOPE、及びDOTAPが挙げられる。参照によって具体的に援用される国際公開第0071096号は、遺伝子治療に有効に用いることのできるDOTAP:コレステロール又はコレステロール誘導体の製剤など、種々の製剤について記載している。他の開示はまた、ナノ粒子を含む種々の脂質又はリポソーム製剤及び投与方法についても考察している;それらとしては、限定はされないが、製剤、並びにその他の、核酸の投与及び送達に関連する態様の範囲について参照によって具体的に援用される米国特許出願公開第20030203865号、同第20020150626号、同第20030032615号、及び同第20040048787号が挙げられる。粒子を形成するために用いられる方法もまた、そうした態様について参照によって援用される米国特許第5,844,107号、同第5,877,302号、同第6,008,336号、同第6,077,835号、同第5,972,901号、同第6,200,801号、及び同第5,972,900号に開示される。
【0071】
特定の実施形態において、遺伝子移入は、エキソビボ条件下でより容易に実施され得る。エキソビボ遺伝子治療とは、動物から細胞を単離し、その細胞にインビトロで核酸を送達し、次に、その改変された細胞を動物に戻すことを指す。これには、動物からの組織/器官の外科的摘出、又は細胞及び組織の初代培養が関わり得る。
【0072】
本発明はまた、治療後にmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を除去又は排出するための方法も含む。この方法は、心臓組織におけるmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬についてのハイブリダイゼーション部位を過剰発現させることを含み得る。一実施形態において、この方法は、心筋特異的プロモーター(例えばα−MHC)を用いて、心筋におけるmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬についてのハイブリダイゼーション部位を過剰発現させることを含み得る。別の実施形態において、ハイブリダイゼーション部位は、miR−15ファミリーメンバーのシード領域配列を含み得る。別の実施形態において、ハイブリダイゼーション部位は配列番号18の配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーション部位は、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2などの、miR−15ファミリーメンバーの1つ又は複数の標的の3’UTR由来配列と相補的な配列を含み得る。
【0073】
本発明の別の実施形態において、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬は、他の治療モダリティと併せて対象者に投与される。心血管障害の場合の心肥大についての現行の医学的管理は、少なくとも2つのタイプの薬物、すなわち、レニン−アンジオテンシン系の阻害薬及びβアドレナリン遮断薬の使用を含む(Bristow, 1999)。心不全の場合の病的肥大を治療する治療剤としては、アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害薬及びβアドレナリン受容体遮断薬が挙げられる(Eichhorn and Bristow, 1996)。心肥大の治療向けに開示されている他の医薬品としては、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(米国特許第5,604,251号)及びニューロペプチドY拮抗薬(国際公開第98/33791号)が挙げられる。
【0074】
非薬理学的な治療は、主に、薬理学的治療の補助として用いられる。非薬理学的な治療の一つの方法には、食事におけるナトリウムの低減が関わる。加えて、非薬理学的な治療はまた、陰性変力作用剤(例えば、特定のカルシウムチャネル遮断薬及びジソピラミドなどの抗不整脈薬)、心臓毒(例えば、アンフェタミン)、及び血漿増量薬(例えば、非ステロイド系抗炎症剤及びグルココルチコイド)を含む特定の沈降性の薬物の除去も伴う。
【0075】
従って、上記の治療薬に加え、より「標準的な」医薬品の心臓治療薬を、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬と共に対象者に提供してもよい。他の治療薬の例としては、限定なしに、いわゆる「β遮断薬」、抗高血圧薬、強心薬、抗血栓薬、血管拡張薬、ホルモン拮抗薬、変力作用薬、利尿薬、エンドセリン受容体拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン2型拮抗薬及びサイトカイン遮断薬/阻害薬、及びHDAC阻害薬が挙げられる。また、併用療法には、miR−499、miR−208、miR−208b及びmiR−21などの、心臓リモデリングに関与するさらなるmiRNAの発現又は活性の阻害も関わり得る。また、併用療法は、miR−29などの特定のマイクロRNAの過剰発現も含み得る。
【0076】
心臓細胞を、1つ若しくは複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬と標準的な医薬品とを含む単一の組成物若しくは薬理学的製剤と接触させることによるか、又は2つの異なる組成物若しくは製剤について、一方の組成物がmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を含み、他方が標準的な医薬品を含む場合、細胞をそれらと一度に接触させることにより、併用法が実現され得る。或いは、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬を用いた治療薬は、数分間から数週間に及ぶ間隔を空けることにより、他の薬剤の投与前であっても、又はその投与後であってもよい。標準的な医薬品とmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬とが別個に細胞に適用される実施形態では、一般に、医薬品及びmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が有利に組み合わされた効果を細胞に対してなお及ぼすことができるよう、各送達時点の間に大幅に長い期間が経過してしまうことが断じてないようにされ得る。かかる場合には、典型的には、細胞を双方のモダリティと互いに約12〜24時間以内、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に接触させ得ることが企図され、遅延時間が約12時間しかないことが最も好ましい。しかしながら、ある状況においては治療期間の大幅な延長が望ましいこともあり、その場合、それぞれの投与の間は数日間(2、3、4、5、6又は7日間)から数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8週間)を空ける。
【0077】
また、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬、又は他の医薬品のいずれかの2回以上の投与が望ましいことも考えられる。これに関しては、様々な組み合わせが用いられ得る。例として、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬を「A」、及び他方の医薬品を「B」とする場合、合計3回及び4回の投与に基づく以下の順列が例示される:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B B/A/A A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B B/B/B/A A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/A/B。
他の組み合わせも同様に企図される。
【0078】
治療レジメンは、臨床的状況に応じて異なり得る。しかしながら、ほとんどの場合に長期管理が適切であるものと思われる。また、疾患の進行中の短いウィンドウ内などに、肥大をmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬で断続的に治療することが望ましいこともある。
【0079】
薬理学的な治療剤及び投与方法、投薬量等は、当業者に周知されており(例えば、参照により関連する部分が本明細書に援用される「Physicians Desk Reference」、Klaassenの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、「Remington’s phamaceutical Sciences」、及び「The Merck Index, Eleventh Edition」を参照)、本明細書の開示をふまえて本発明と組み合わされ得る。治療対象者の状態によっては、投薬量をいくらか変更する必要が生じ得る。いずれにせよ、投与責任者が個々の対象者に適切な用量を決定し、かかる個別の決定は、当業者の技術の範囲内である。
【0080】
本発明で用いられ得る薬理学的治療剤の非限定的な例としては、抗高リポタンパク血症剤、抗動脈硬化剤、抗血栓薬/抗線溶薬、血液凝固薬、抗不整脈剤、抗高血圧剤、昇圧薬、うっ血性心不全の治療剤、抗狭心症剤、抗細菌剤又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
加えて、本実施例でβ遮断薬が使用されたように(下記参照)、以下の任意のものが、心臓療法の標的となる新規遺伝子セットの開発に用いられ得ることに留意すべきである。こうした遺伝子のうち多くは重複し得ると予想されるが、新規の遺伝子標的を開発することができる可能性が高い。
【0082】
特定の実施形態では、特に、アテローム性動脈硬化症並びに血管組織の肥厚化又は閉塞の治療において、本明細書で「抗高リポタンパク血症薬」として知られる1つ又は複数の脂質及び/又はリポタンパク質の血中濃度を降下させる薬剤の投与が、本発明に係る心血管治療薬と組み合わされ得る。特定の実施形態において、抗高リポタンパク血症剤には、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、樹脂酸/胆汁酸金属イオン封鎖剤、HMG CoAレダクターゼ阻害薬、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモン若しくは甲状腺ホルモン類似体、その他の薬剤又はそれらの組み合わせが含まれ得る。アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体の非限定的な例としては、ベクロブラート、エンザフィブラート(enzafibrate)、ビニフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート(atromide-S)、クロフィブリン酸、エトフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル(lobid)、ニコフィブラート、ピリフィブラート、ロニフィブラート、シムフィブラート及びテオフィブラートが挙げられる。樹脂酸/胆汁酸金属イオン封鎖剤の非限定的な例としては、コレスチラミン(cholybar、questran)、コレスチポール(colestid)及びポリデキシドが挙げられる。HMG CoAレダクターゼ阻害薬の非限定的な例としては、ロバスタチン(mevacor)、プラバスタチン(pravochol)又はシンバスタチン(zocor)が挙げられる。ニコチン酸誘導体の非限定的な例としては、ニコチン酸塩、アシピモックス、ニセリトロール、ニコクロナート、ニコモール及びオキシニアシン酸が挙げられる。甲状腺ホルモン及びその類似体の非限定的な例としては、エトロキサート(etoroxate)、チロプロプ酸及びサイロキシンが挙げられる。
【0083】
その他の抗高リポタンパク血症薬の非限定的な例としては、アシフラン、アザコステロール、ベンフルオレックス、β−ベンザルブチルアミド、カルニチン、コンドロイチン硫酸、クロメストロン(clomestrone)、デタクストラン(detaxtran)、デキストラン硫酸ナトリウム、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、エリタデニン、フラザボール、メグルトール、メリナミド、ミタトリエンジオール、オルニチン、γ−オリザノール、パンテチン、テトラ酢酸ペンタエリスリトール、α−フェニルブチルアミド、ピロザジル、プロブコール(lorelco)、β−シトステロール、スルトシル酸ピペラジン塩、チアデノール、トリパラノール及びキセンブシンが挙げられる。抗動脈硬化薬の非限定的な例としては、ピリジノールカルバメートが挙げられる。
【0084】
特定の実施形態では、特に、アテローム性動脈硬化症及び血管(例えば、動脈)閉塞の治療において、血餅の除去又は予防を促進する薬剤の投与が、モジュレーターの投与と組み合わされ得る。抗血栓薬及び/又は抗線溶薬の非限定的な例としては、抗凝固薬、抗凝固薬の拮抗薬、抗血小板剤、血栓溶解剤、血栓溶解剤の拮抗薬又はそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、経口投与することのできる抗血栓剤、例えば、アスピリン及びワルファリン(coumadin)などが好ましい。
【0085】
抗凝固薬の非限定的な例としては、アセノクマロール、アンクロッド、アニシンジオン、ブロムインジオン、クロリンジオン、クメタロール、シクロクマロール、デキストラン硫酸ナトリウム、ジクマロール、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、エチリデンジクマロール、フルインジオン、ヘパリン、ヒルジン、リアポラートナトリウム(lyapolate sodium)、オキサジジオン、ペントサンポリサルフェート、フェニンジオン、フェンプロクモン、ホスビチン、ピコタミド、チオクロマロール及びワルファリンが挙げられる。
【0086】
抗血小板剤の非限定的な例としては、アスピリン、デキストラン、ジピリダモール(persantin)、ヘパリン、スルフィンピラゾン(anturane)及びチクロピジン(ticlid)が挙げられる。
【0087】
血栓溶解剤の非限定的な例としては、組織プラスミノゲン活性化因子(activase)、プラスミン、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ(abbokinase)、ストレプトキナーゼ(streptase)、アニストレプラーゼ/APSAC(eminase)が挙げられる。
【0088】
患者が出血又は出血可能性の増加を被る特定の実施形態では、血液凝固を亢進し得る薬剤が用いられ得る。血液凝固促進剤の非限定的な例としては、血栓溶解剤の拮抗薬及び抗凝固薬の拮抗薬が挙げられる。抗凝固薬の拮抗薬の非限定的な例としては、プロタミン及びビタミンK1が挙げられる。
【0089】
血栓溶解剤の拮抗薬の非限定的な例としては、アミノカプロン酸(amicar)及びトラネキサム酸(amstat)が挙げられる。抗血栓薬の非限定的な例としては、アナグレリド、アルガトロバン、シロスタゾール、ダルトロバン、デフィブロチド、エノキサパリン、フラキシパリン、インドブフェン、ラモパラン(lamoparan)、オザグレル、ピコタミド、プラフィブリド、テデルパリン、チクロピジン及びトリフルサルが挙げられる。
【0090】
抗不整脈剤の非限定的な例としては、クラスI抗不整脈剤(ナトリウムチャネル遮断薬)、クラスII抗不整脈剤(βアドレナリン遮断薬)、クラスIII抗不整脈剤(再分極遅延薬)、クラスIV抗不整脈剤(カルシウムチャネル遮断薬)及びその他の抗不整脈剤が挙げられる。
【0091】
ナトリウムチャネル遮断薬の非限定的な例としては、クラスIA、クラスIB及びクラスIC抗不整脈剤が挙げられる。クラスIA抗不整脈剤の非限定的な例としては、ジソピラミド(norpace)、プロカインアミド(pronestyl)及びキニジン(quinidex)が挙げられる。クラスIB抗不整脈剤の非限定的な例としては、リドカイン(xylocaine)、トカイニド(tonocard)及びメキシレチン(mexitil)が挙げられる。クラスIC抗不整脈剤の非限定的な例としては、エンカイニド(enkaid)及びフレカイニド(tambocor)が挙げられる。
【0092】
βアドレナリン遮断薬、βアドレナリン拮抗薬又はクラスII抗不整脈剤の別称でも知られるβ遮断薬の非限定的な例としては、アセブトロール(sectral)、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、塩酸ブチドリン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール(brevibloc)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソドール、ニフェナロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロパノロール(inderal)、ソタロール(betapace)、スルフィナロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール、トリプロロール及びキシビノロールが挙げられる。特定の実施形態において、β遮断薬には、アリールオキシプロパノールアミン誘導体が含まれる。アリールオキシプロパノールアミン誘導体の非限定的な例としては、アセブトロール、アルプレノロール、アロチノロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブニトロロール、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、エパノロール、インデノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール及びトリプロロールが挙げられる。
【0093】
クラスIII抗不整脈剤としても知られる、再分極を遅延させる薬剤の非限定的な例としては、アミオダロン(cordarone)及びソタロール(betapace)が挙げられる。
【0094】
クラスIV抗不整脈剤の別称でも知られるカルシウムチャネル遮断薬の非限定的な例としては、アリールアルキルアミン(例えば、ベプリジル、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、プレニラミン、テロジリン、ベラパミル)、ジヒドロピリジン誘導体(フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン)、ピペラジン誘導体(例えば、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン)、又は、ベンシクラン、エタフェノン、マグネシウム、ミベフラジル若しくはペルヘキシリンなどのその他のカルシウムチャネル遮断薬が挙げられる。特定の実施形態において、カルシウムチャネル遮断薬には、長時間作用型のジヒドロピリジン(ニフェジピン型)カルシウム拮抗薬が含まれる。
【0095】
その他の抗不整脈剤の非限定的な例としては、アデノシン(adenocard)、ジゴキシン(lanoxin)、アセカイニド、アジマリン、アモプロキサン、アプリンジン、ブレチリウムトシレート、ブナフチン、ブトベンジン、カポベン酸、シフェンリン、ジソピラミド、ヒドロキニジン、インデカイニド、臭化イプラトロピウム、リドカイン、ロラジミン、ロルカイニド、メオベンチン、モリシジン、ピルメノール、プラジマリン、プロパフェノン、ピリノリン、ポリガラクツロン酸キニジン、硫酸キニジン及びビキジルが挙げられる。
【0096】
抗高血圧剤の非限定的な例としては、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII作用剤、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬及びその他の抗高血圧薬が挙げられる。
【0097】
αアドレナリン遮断薬又はαアドレナリン拮抗薬としても知られるα遮断薬の非限定的な例としては、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ニセルゴリン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシン及びヨヒンビンが挙げられる。特定の実施形態において、α遮断薬にはキナゾリン誘導体が含まれ得る。キナゾリン誘導体の非限定的な例としては、アルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン及びトリマゾシンが挙げられる。特定の実施形態において、抗高血圧剤は、α及びβの双方のアドレナリン拮抗薬である。α/β遮断薬の非限定的な例には、ラベタロール(normodyne、trandate)が含まれる。
【0098】
抗アンジオテンシンII作用剤の非限定的な例としては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬が挙げられる。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の非限定的な例としては、アラセプリル、エナラプリル(vasotec)、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル及びラミプリルが挙げられる。アンジオテンシンII受容体拮抗薬としても知られるアンジオテンシンII受容体遮断薬の非限定的な例としては、ANG受容体遮断薬又はANG−II 1型受容体遮断薬(ARBS)、アンジオカンデサルタン(angiocandesartan)、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン及びバルサルタンが挙げられる。
【0099】
交感神経遮断薬の非限定的な例としては、中枢作用性の交感神経遮断薬又は末梢作用性の交感神経遮断薬が挙げられる。中枢神経系(CNS)交感神経遮断薬としても知られる中枢作用性の交感神経遮断薬の非限定的な例としては、クロニジン(catapres)、グアナベンズ(wytensin)、グアンファシン(tenex)及びメチルドパ(aldomet)が挙げられる。末梢作用性の交感神経遮断薬の非限定的な例としては、神経節遮断剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断剤、βアドレナリン遮断剤又はαアドレナリン遮断剤が挙げられる。神経節遮断剤の非限定的な例としては、メカミラミン(inversine)及びトリメタファン(arfonad)が挙げられる。アドレナリン作動性ニューロン遮断剤の非限定的な例としては、グアネチジン(ismelin)及びレセルピン(serpasil)が挙げられる。βアドレナリン遮断薬の非限定的な例としては、アセニトロール(sectral)、アテノロール(tenormin)、ベタキソロール(kerlone)、カルテオロール(cartrol)、ラベタロール(normodyne、trandate)、メトプロロール(lopressor)、ナドロール(corgard)、ペンブトロール(levatol)、ピンドロール(visken)、プロプラノロール(inderal)及びチモロール(blocadren)が挙げられる。αアドレナリン遮断薬の非限定的な例としては、プラゾシン(minipress)、ドキサゾシン(cardura)及びテラゾシン(hytrin)が挙げられる。
【0100】
特定の実施形態において、心血管治療剤には、血管拡張薬(例えば、脳血管拡張薬、冠血管拡張薬又は末梢血管拡張薬)が含まれ得る。特定の好ましい実施形態において、血管拡張薬には冠血管拡張薬が含まれる。冠血管拡張薬の非限定的な例としては、アモトリフェン(amotriphene)、ベンダゾール、ベンフロジルヘミスクシナート、ベンズヨーダロン、クロラシジン、クロモナール、クロベンフロール、クロニトラート、ジラゼプ、ジピリダモール、ドロプレニラミン、エフロキサート、四硝酸エリトリチル、エタフェノン、フェンジリン、フロレジル、ガングレフェン、ヘキセストロールビス(β−ジエチルアミノエチルエーテル)、ヘキソベンジン、イトラミントシレート、ケリン、リドフラジン、六硝酸マンニトール(mannitol hexanitrane)、メジバジン、ニコルグリセリン(nicorglycerin)、四硝酸ペンタエリトリトール、ペントリニトロール、ペルヘキシリン、ピメフィリン、トラピジル、トリクロミル、トリメタジジン、リン酸トロルニトレート及びビスナジンが挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、血管拡張薬には、長期治療の血管拡張薬又は高血圧性緊急症の血管拡張薬が含まれ得る。長期治療の血管拡張薬の非限定的な例としては、ヒドララジン(apresoline)及びミノキシジル(loniten)が挙げられる。高血圧性緊急症の血管拡張薬の非限定的な例としては、ニトロプルシド(nipride)、ジアゾキシド(hyperstat IV)、ヒドララジン(apresoline)、ミノキシジル(loniten)及びベラパミルが挙げられる。
【0102】
その他の抗高血圧薬の非限定的な例としては、アジマリン、γ−アミノ酪酸、ブフェニオド、シクレタニン、シクロシドミン、タンニン酸クリプテナミン、フェノルドパム、フロセキナン、ケタンセリン、メブタメート、メカミラミン、メチルドパ、メチル4−ピリジルケトンチオセミカルバゾン、ムゾリミン、パルギリン、ペンピジン、ピナシジル、ピペロキサン、プリマペロン、プロトベラトリン、ラウバシン、レシメトール、リルメニジン、サララシン、ニトロプルシドナトリウム、チクリナフェン、カンシル酸トリメタファン、チロシナーゼ及びウラピジルが挙げられる。
【0103】
特定の実施形態において、抗高血圧薬には、アリールエタノールアミン誘導体、ベンゾチアジアジン誘導体、N−カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、グアニジン誘導体、ヒドラジン/フタラジン、イミダゾール誘導体、第四級アンモニウム化合物、レセルピン誘導体又はスルホンアミド誘導体が含まれ得る。アリールエタノールアミン誘導体の非限定的な例としては、アモスラロール、ブフラロール、ジレバロール、ラベタロール、プロネタロール、ソタロール及びスルフィナロールが挙げられる。ベンゾチアジアジン誘導体の非限定的な例としては、アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、シクロチアジド、ジアゾキシド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド(paraflutizide)、ポリチアジド、テトラクロルメチアジド及びトリクロルメチアジドが挙げられる。N−カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体の非限定的な例としては、アラセプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル及びラミプリルが挙げられる。ジヒドロピリジン誘導体の非限定的な例としては、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピン及びニトレンジピンが挙げられる。グアニジン誘導体の非限定的な例としては、ベタニジン、デブリソキン、グアナベンズ、グアナクリン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアンファシン、グアノクロル、グアノキサベンズ及びグアノキサンが挙げられる。ヒドラジン/フタラジンの非限定的な例としては、ブドララジン、カドララジン、ジヒドララジン、エンドララジン、ヒドラカルバジン、ヒドララジン、フェニプラジン、ピルドララジン及びトドララジンが挙げられる。イミダゾール誘導体の非限定的な例としては、クロニジン、ロフェキシジン、フェントラミン、チアメニジン及びトロニジンが挙げられる。第四級アンモニウム化合物の非限定的な例としては、臭化アザメトニウム、塩化クロルイソンダミン、ヘキサメソニウム、ペンタシニウムビス(メチルスルホン酸塩)、臭化ペンタメトニウム、酒石酸ペントリニウム、塩化フェナクトロピニウム及びメト硫酸トリメチジニウムが挙げられる。レセルピン誘導体の非限定的な例としては、ビエタセルピン、デセルピジン、レシナミン、レセルピン及びシロシンゴピンが挙げられる。スルホンアミド誘導体の非限定的な例としては、アンブシド、クロパミド、フロセミド、インダパミド、キネタゾン、トリパミド及びキシパミドが挙げられる。
【0104】
昇圧薬は、概して、ショック時に血圧を上昇させるために用いられ、そうしたショックは外科手技中に起こり得る。抗低血圧薬としても知られる昇圧薬の非限定的な例としては、メチル硫酸アメジニウム、アンジオテンシンアミド、ジメトフリン、ドパミン、エチフェルミン、エチレフリン、ゲペフリン、メタラミノール、ミドドリン、ノルエピネフリン、フォレドリン及びシネフリンが挙げられる。
【0105】
うっ血性心不全の治療用薬剤の非限定的な例としては、抗アンジオテンシンII作用剤、後負荷−前負荷軽減治療薬、利尿薬及び変力作用剤が挙げられる。
【0106】
特定の実施形態において、アンジオテンシン拮抗薬を耐容できない動物患者は、併用療法で治療され得る。かかる療法は、ヒドララジン(apresoline)と硝酸イソソルビド(isordil、sorbitrate)との併用投与であり得る。
【0107】
利尿薬の非限定的な例としては、チアジド又はベンゾチアジアジン誘導体(例えば、アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、エピチアジド、エチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド(paraflutizide)、ポリチアジド、テトラクロルメチアジド、トリクロルメチアジド)、有機水銀化合物(例えば、クロルメロドリン、メラルリド、メルカムファミド(mercamphamide)、メルカプトメリンナトリウム、メルクマリル酸、メルクマチリンドジウム(mercumatilin dodium)、塩化第一水銀、マーサリル)、プテリジン(例えば、フルテレン、トリアムテレン)、プリン(例えば、アセフィリン、7−モルホリノメチルテオフィリン、パマブロム、プロテオブロミン(protheobromine)、テオブロミン)、アルドステロン拮抗薬(例えば、カンレノン、オレアンドリン、スピロノラクトン)を含むステロイド、スルホンアミド誘導体(例えば、アセタゾラミド、アンブシド、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾールアミド、クロラミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジフェニルメタン−4,4’−ジスルホンアミド、ジスルファミド、エトキシゾラミド、フロセミド、インダパミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、キネタゾン、トラセミド、トリパミド、キシパミド)、ウラシル(例えば、アミノメトラジン、アミソメトラジン)、カリウム保持性拮抗薬(例えば、アミロライド、トリアムテレン)又はその他の利尿薬、例えば、アミノジン、アルブチン、クロラザニル、エタクリン酸、エトゾリン、ヒドラカルバジン、イソソルビド、マンニトール、メトカルコン、ムゾリミン、ペルヘキシリン、チクリナフェン及び尿素が挙げられる。
【0108】
強心薬としても知られる陽性変力作用剤の非限定的な例としては、アセフィリン、アセチルジギトキシン、2−アミノ−4−ピコリン、アムリノン、ベンフロジルヘミスクシナート、ブクラデシン、セルベロシン、カンホタミド、コンバラトキシン、シマリン、デノパミン、デスラノシド、ジギタリン、ジギタリス、ジギトキシン、ジゴキシン、ドブタミン、ドパミン、ドペキサミン、エノキシモン、エリトロフレイン、フェナルコミン、ギタリン、ギトキシン、グリコシアミン、ヘプタミノール、ヒドラスチニン、イボパミン、ラナトシド、メタミバム、ミルリノン、ネリイホリン、オレアンドリン、ウアバイン、オキシフェドリン、プレナルテロール、プロシラリジン、レジブホゲニン、シラレン、シラレニン、ストロファンチン、スルマゾール、テオブロミン及びキサモテロールが挙げられる。
【0109】
詳細な実施形態において、変力作用剤は、強心配糖体、βアドレナリン作動薬又はホスホジエステラーゼ阻害薬である。強心配糖体の非限定的な例としては、ジゴキシン(lanoxin)及びジギトキシン(crystodigin)が挙げられる。βアドレナリン作動薬の非限定的な例としては、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン、ドブタミン(dobutrex)、ドパミン(intropin)、ドペキサミン、エフェドリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、ホルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロール及びキサモテロールが挙げられる。ホスホジエステラーゼ阻害薬の非限定的な例としては、アムリノン(inocor)が挙げられる。
【0110】
抗狭心症剤には、有機硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬及びそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0111】
ニトロ血管拡張薬としても知られる有機硝酸塩の非限定的な例としては、ニトログリセリン(nitro-bid、nitrostat)、硝酸イソソルビド(isordil、sorbitrate)及び硝酸アミル(aspirol、vaporole)が挙げられる。
【0112】
エンドセリン(ET)は、心不全の発症に関与すると思われる生理学的及び病態生理学的な作用を有する21個のアミノ酸のペプチドである。ETの作用は、2つのクラスの細胞表面受容体との相互作用を介してもたらされる。A型受容体(ET−A)は血管収縮及び細胞成長に関連し、一方、B型受容体(ET−B)は、内皮細胞の介在する血管拡張及びアルドステロンなどの他の神経ホルモンの放出に関連する。ETの産生か、又はETのもつ関連細胞を刺激する能力のいずれかを阻害することのできる薬理作用剤が、当該技術分野において公知である。ETの産生の阻害には、エンドセリン変換酵素と称される酵素を遮断する薬剤の使用が関わり、このエンドセリン変換酵素は、活性ペプチドをその前駆体からプロセシングすることに関与している。ETの細胞刺激能の阻害には、ETのその受容体との相互作用を遮断する薬剤の使用が関わる。エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の非限定的な例としては、ボセンタン、エンラセンタン、アンブリセンタン、ダルセンタン、テゾセンタン、アトラセンタン、アボセンタン、クラゾセンタン、エドネンタン、シタクスセンタン、TBC 3711、BQ 123、及びBQ 788が挙げられる。
【0113】
特定の実施形態において、補助治療手段には、あるタイプの手術が含まれてもよく、それらとしては、例えば、予防、診断又は病期分類、治癒及び緩和のための手術が挙げられる。手術、特に治癒手術は、本発明及び1つ又は複数の他の薬剤などの他の治療薬と併せて用いられ得る。
【0114】
血管及び心血管の疾患及び障害のためのかかる手術治療手段は当業者に周知されており、限定はされないが、生体への手術施行、心血管用の機械的な人工装具の提供、血管形成術、冠動脈再灌流、カテーテルアブレーション、対象者に対する植込み型除細動器の提供、機械的な循環補助又はそれらの組み合わせが含まれ得る。本発明で用いられ得る機械的な循環補助の非限定的な例には、大動脈内バルーンカウンターパルゼーション法、左心補助循環装置又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、治療又は予防を必要とする対象者において筋骨格障害を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、(a)筋骨格障害を有するか、又はそのリスクのある対象者を特定することと;(b)前記対象者の骨格筋細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現及び/又は活性を増加させることとを含む。障害は、筋ジストロフィー、非活動性萎縮、抗重力及び脱神経が原因となる筋肉の消耗からなる群から選択され得る。発現及び/又は活性を増加させることは、前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーを、任意選択により脂質媒体中に含めて前記対象者に投与することを含んでもよく、又は前記対象者において前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーを発現する発現ベクターを投与することを含んでもよい。発現ベクターは、アデノウイルス発現ベクターなどのウイルス発現ベクターであっても、又は脂質媒体中に含められた発現ベクターなどの非ウイルス性発現ベクターであってもよい。この方法は、さらに、非miR−15ファミリーメンバー治療薬(すなわち、別のマイクロRNA又は他の適切な治療薬)を含み得る。
【0116】
本発明はまた、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバー(例えば、miR−195、miR−497、miR−424、miR−15a、miR−15b、miR−16−1、及びmiR−16−2)の阻害薬を含む医薬組成物も包含する。本医薬組成物としては、antagomir、アンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA分子、及び1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸などの、本明細書に記載されるとおりの任意のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が含まれ得る。臨床適用が完了している場合、医薬組成物は目的とする用途に適した形態に調製され得る。一般にこれは、本質的に発熱性物質を含まず、さらにヒト又は動物に有害となり得る他の不純物も含まない組成物の調製を伴い得る。
【0117】
巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、並びに、水中油乳剤、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が、マイクロRNA機能のオリゴヌクレオチド阻害薬又は阻害性ヌクレオチドを発現する構築物の送達媒体として用いられ得る。本発明の核酸を組織、例えば心筋組織に送達するのに好適な市販の脂肪乳剤としては、Intralipid(登録商標)、Liposyn(登録商標)、Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、Nutrilipid、及び他の類似の脂質乳剤が挙げられる。インビボでの送達媒体としての使用に好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち、人工膜小胞)である。かかる系の調製及び使用は、当該技術分野において周知されている。例示的製剤は、米国特許第5,981,505号;米国特許第6,217,900号;米国特許第6,383,512号;米国特許第5,783,565号;米国特許第7,202,227号;米国特許第6,379,965号;米国特許第6,127,170号;米国特許第5,837,533号;米国特許第6,747,014号;及び国際公開第03/093449号にも開示されており、これらは全体として参照により本明細書に援用される。
【0118】
一般には、送達媒体を安定させ、且つ標的細胞によって取り込み可能にするため、適切な塩及び緩衝液を用いることが望まれる。緩衝液はまた、組換え細胞が患者に導入されるときにも用いられる。本発明の水性組成物としては、薬学的に許容可能な担体又は水性媒体中に溶解又は分散した有効量の送達媒体又は細胞が含まれる。語句「薬学的に許容可能な」又は「薬理学的に許容可能な」は、動物又はヒトに投与されたとき、有害反応、アレルギー反応、又は他の都合の悪い反応を生じることのない分子実体及び組成物を指す。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品、例えばヒトへの投与に好適な医薬品の製剤化に使用するうえで許容可能な溶媒、緩衝液、溶液、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するかかる媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知されている。治療組成物中における任意の従来の媒質又は薬剤の使用が、それが本発明の活性成分と適合しない場合を除き、企図される。補助活性成分もまた、それらが組成物のベクター又は細胞を不活性化しないならば、組成物に組み込むことができる。
【0119】
本発明の活性組成物は、古典的な医薬調製物を含み得る。こうした本発明に係る組成物の投与は、一般的な経路のいずれによっても、その標的組織が当該経路を介して利用可能な限り行われ得る。それとしては、経口、経鼻、又は経口腔粘膜が挙げられる。或いは、投与は、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射若しくは静脈内注射によるか、又は心臓組織に直接注射することによってもよい。miRNA阻害薬又は阻害性ポリヌクレオチドをコードする発現構築物を含む医薬組成物はまた、治療剤を心臓に送達するためのカテーテルシステム又は冠循環を隔離するシステムによって投与されてもよい。心臓及び冠血管系に治療剤を送達するための様々なカテーテルシステムが、当該技術分野において公知である。本発明での使用に好適なカテーテルベースの送達方法又は冠血管を隔離する方法のいくつかの非限定的な例が、米国特許第6,416,510号;米国特許第6,716,196号;米国特許第6,953,466号、国際公開第2005/082440号、国際公開第2006/089340号、米国特許出願公開第2007/0203445号、米国特許出願公開第2006/0148742号、及び米国特許出願公開第2007/0060907号に開示されており、これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される。かかる組成物は、通常、上述のとおりの薬学的に許容可能な組成物として投与され得る。
【0120】
活性化合物はまた、非経口投与又は腹腔内投与されてもよい。例示として、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合した水中に、活性化合物を遊離塩基又は薬理学的に許容可能な塩として、溶液を調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中における分散体もまた調製することができる。通常の保管及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するため、一般に防腐剤を含む。
【0121】
注射による使用又はカテーテル送達に好適な医薬品形態としては、例えば、滅菌水溶液又は分散体及び滅菌注射可能溶液又は分散体の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。一般に、こうした調製物は無菌であり、容易に注射可能な程度の流動性を有する。調製物は、製造及び保管条件下で安定でなければならず、且つ細菌及び真菌などの微生物による汚染作用から保護されていなければならない。適切な溶媒又は分散媒は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有し得る。例えば、レシチンなどのコーティングを用いたり、分散体の場合には所要の粒度を維持したり、界面活性剤を用いたりすることにより、適切な流動性を維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に用いることにより、注射可能組成物の持続的な吸収をもたらすことができる。
【0122】
滅菌注射可能溶液は、活性化合物を適切な量で、必要に応じて任意の他の成分(例えば上記に列挙されるとおりの)と共に溶媒中に組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散体は、様々な滅菌活性成分を、基本的な分散媒と、例えば上記に列挙されるとおりの他の所望成分とを含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製用滅菌粉末の場合、好ましい調製方法としては、真空乾燥及び凍結乾燥技術が挙げられ、それによって活性成分と、加えて既に滅菌ろ過されたその溶液からの任意のさらなる所望成分との粉末が得られる。
【0123】
本発明の組成物は、概して、中性形態又は塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容可能な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸又はリン酸)か、又は有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)に由来する酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)が挙げられる。タンパク質の遊離カルボキシル基と共に形成される塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄)か、又は有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)に由来し得る。
【0124】
製剤化されると、溶液は好ましくは、投薬製剤と適合する形で、且つ治療上有効な量で投与される。製剤は、注射可能溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与され得る。水溶液での非経口投与については、例えば、溶液は概して好適に緩衝され、まず初めに液状希釈剤が、例えば十分な生理食塩水又はグルコースにより等張性とされる。かかる水溶液は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に用いられ得る。好ましくは、特に本開示をふまえて、当業者に公知のとおりの滅菌水性媒質が用いられる。例示として、1回分の用量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加するか、又は予定の注入部位に注射してもよい(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035−1038頁及び1570−1580頁を参照)。治療対象者の状態によっては、投薬量をいくらか変更する必要が生じ得る。いずれにせよ、投与責任者が個々の対象者に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与については、調製物は、FDAのOffice of Biologics基準の求める無菌性、発熱原性、一般的な安全性及び純度についての基準を満たさなければならない。
【0125】
本明細書に記載される任意の組成物がキットに含まれてもよい。非限定的な例では、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬、例えばantagomirがキットに含まれる。キットは、各miR−15ファミリーメンバーについて、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、又は6つの阻害薬を含み得る。例として、キットは、miR−195の阻害薬とmiR−15aの阻害薬とを含み得る。miR−15ファミリーメンバーについてのあらゆる可能な組み合わせの阻害薬が、本発明によって企図される。キットは、阻害性ポリヌクレオチドを安定化させるための水及び/又は緩衝液をさらに含み得る。キットはまた、miRNA阻害薬の細胞への送達を促進するための1つ又は複数のトランスフェクション試薬も含み得る。
【0126】
キットの構成成分は、水性媒質中か、又は凍結乾燥形態のいずれかで収められ得る。キットの容器手段としては、概して、少なくとも1本のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ又は他の容器手段を挙げることができ、その中に構成成分が入れられ、好ましくは、好適に一定量に分割され得る。キットに2つ以上の構成成分がある場合(標識試薬及び標識が共に収められ得る)、キットはまた、概して、第2、第3又は他のさらなる容器を含んでもよく、その中にさらなる構成成分が別個に入れられ得る。しかしながら、1本のバイアルに様々に組み合わせられた構成成分が含まれてもよい。本発明のキットはまた、典型的には、核酸、及び任意の他の試薬の容器を、市販用に厳重に封入して収容する手段も含む。かかる容器としては、射出成形又はブロー成形プラスチック容器を挙げることができ、その中に所望のバイアルが保持される。
【0127】
キットの構成成分が1つ及び/又は複数の溶液体で提供されるとき、その溶液体は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。
【0128】
しかしながら、キットの構成成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬及び/又は構成成分が乾燥粉末として提供されるとき、その粉末は、好適な溶媒を添加することによって再構成することができる。この溶媒も別の容器手段で提供され得ることが想定される。
【0129】
容器手段としては、概して、少なくとも1本のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ及び/又は他の容器手段を挙げることができ、その中に核酸製剤が入れられ、好ましくは、好適に配分される。キットはまた、無菌の薬学的に許容可能な緩衝液及び/又は他の希釈剤を収容するための第2の容器手段も含み得る。
【0130】
かかるキットはまた、miRNA阻害薬を保護若しくは維持するか、又はその分解を防止する構成成分も含み得る。かかる構成成分はRNアーゼフリーであってもよく、又はRNアーゼから保護し得る。かかるキットは、概して、好適な手段において、個々の試薬又は溶液ごとに別個の容器を含み得る。
【0131】
キットはまた、キットの構成成分の使用法、さらにキットに含まれない任意の他の試薬の使用についての説明書も含み得る。説明書は、実施され得る変形例を含み得る。キットはまた、様々な投与経路、例えば非経口投与又はカテーテル投与によってmiRNA阻害薬を投与するための器具又は装置も含み得る。
【0132】
かかる試薬は、本発明のキットの実施形態であることが企図される。しかしながら、かかるキットは、上記に特定される具体的な品目に限定されず、miRNAの操作又は特性決定に用いられる任意の試薬を含み得る。
【0133】
本発明は、miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを同定するための方法をさらに含む。1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの機能の阻害薬の同定は、心肥大又は心不全の予防又は治療又は好転に有用である。miR−15ファミリーメンバーのモジュレーター(例えば阻害薬)は、本発明の方法に係る心障害を治療するための医薬組成物中に含まれ得る。
【0134】
こうしたアッセイは、候補化合物の大規模ライブラリのランダムスクリーニングを含み得る;或いは、アッセイを用いて特定のクラスの化合物に焦点を絞ってもよく、そうしたクラスは、miR−15ファミリーメンバーの発現及び/又は機能をより阻害しやすい化合物となることが考えられる構造上の特性を考慮して選択される。
【0135】
miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを同定するため、一般に、候補化合物が存在する場合及び存在しない場合のmiR−15ファミリーメンバーの機能が決定される。例えば、方法は、概して、
(a)候補化合物を提供することと、
(b)候補化合物をmiR−15ファミリーメンバーと混合することと、
(c)miR−15ファミリーメンバーの活性を測定することと、
(d)工程(c)における活性を、候補化合物が存在しない場合の活性と比較することと、
を含み、測定された活性に差があると、それは、その候補化合物がmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターであることを示すものである。
アッセイはまた、単離細胞、器官、又は生体においても行われ得る。
【0136】
miR−15ファミリーメンバーの活性又は発現の評価には、miR−15ファミリーメンバーの発現レベルの評価が含まれ得る。当業者は、例えばノーザンブロッティング又はRT−PCRを含め、RNA発現レベルを評価するための様々な方法に精通しているであろう。miR−15ファミリーメンバーの活性又は発現の評価には、miR−15ファミリーメンバーの活性の評価が含まれ得る。いくつかの実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの活性の評価は、miR−15ファミリーメンバーによって調節される遺伝子の発現又は活性の評価を含む。miR−15ファミリーメンバーによって調節される遺伝子としては、例えば、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、及びサイクリンD2が挙げられる。当業者は、miR−15ファミリーメンバーによって調節される遺伝子の活性又は発現を評価するための様々な方法に精通しているであろう。かかる方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、RT−PCR、ELISA、又はウエスタンブロッティングが挙げられる。
【0137】
当然ながら、有効な候補が見つからないこともあるという事実にもかかわらず、本発明のスクリーニング方法はそれ自体として有用であることは理解されるであろう。本発明は、かかる候補を見つける方法のみならず、そのスクリーニング方法を提供する。
【0138】
本明細書で使用されるとき、用語「候補物質」は、miR−15ファミリーメンバーの機能を調節し得る可能性のある任意の分子を指す。典型的には、様々な商業的供給元から、有用な化合物を「力ずくで(brute force)」同定することを目的とした、有用な薬物の基本的な基準を満たすと考えられる分子ライブラリを入手することになる。コンビナトリアルに生成されたライブラリ(例えば、antagomirライブラリ)を含め、かかるライブラリのスクリーニングは、関連する(及び無関係な)化合物を活性について大量にスクリーニングする迅速且つ効率的な方法である。コンビナトリアル手法はまた、活性を有するが、その他の点では望ましくない化合物をモデルとする第2、第3、及び第4世代の化合物の生成による、可能性のある薬物の急速な進化にも適する。本発明の方法に従いスクリーニングされ得る候補化合物の非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又は小分子である。miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターはまた、miR−15ファミリーメンバーのいずれか1つの上流調節因子の作動薬又は阻害薬であってもよい。
【0139】
時間がかからず、安価で且つ容易に実行できるアッセイは、インビトロアッセイである。かかるアッセイは、概して単離分子を使用し、迅速且つ大量に実行することができ、従って短い期間に得られる情報量が増加する。アッセイの実行には、試験管、プレート、皿、及びディップスティック又はビーズなどの他の表面を含め、様々な容器が用いられ得る。
【0140】
化合物のハイスループットスクリーニングのための技術が、全体として参照により本明細書に援用される国際公開第84/03564号に記載されている。大量の低分子antagomir化合物を、プラスチックピン又は他の何らかの表面などの固体基板上で合成してもよい。かかる分子は、miR−15ファミリーメンバーとハイブリダイズする能力について迅速にスクリーニングすることができる。
【0141】
本発明はまた、細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現及び/又は機能を調節する能力に関する化合物のスクリーニングも企図する。この目的のために特異的に改変された細胞を含め、骨格筋細胞に由来する細胞系を含む様々な細胞系をかかるスクリーニングアッセイに利用することができる。H9C2細胞系であり得るような主要な心臓細胞が用いられてもよい。
【0142】
インビボアッセイには、トランスジェニック動物を含めた様々な心疾患動物モデルの使用が関わり、そうした動物モデルは、特定の異常を有するか、又は、候補化合物が生体内の種々の細胞に到達したり、影響を及ぼしたりする能力を測定するために用いることのできるマーカーを保因するように改変されている。そのサイズ、取り扱い易さ、並びにその生理学的及び遺伝学的構造に関する情報から、マウス、特にトランスジェニックのマウスが好ましい実施形態である。しかしながら、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、スナネズミ、ウッドチャック、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ及びサル(チンパンジー、テナガザル及びヒヒを含む)を含め、他の動物も同様に好適である。阻害薬のアッセイは、こうした種のいずれかに由来する動物モデルを使用して行われ得る。
【0143】
試験化合物による動物の治療には、動物に対する化合物の適切な形態での投与が関わる。投与は、臨床目的で利用することのできる任意の経路により得る。インビボでの化合物の有効性測定には、限定はされないが、肥大シグナル伝達経路の変化及び肥大の身体症状を含め、様々な異なる規準が関わり得る。また、動物において毒性及び用量反応の計測を実施することができ、これはインビトロアッセイ又は細胞内アッセイより有意義な方法である。
【0144】
一実施形態において、本発明は、心臓細胞生存を調節する方法を提供し、この方法は、心臓細胞に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを投与することを含む。別の実施形態において、モジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの発現又は活性の作動薬である。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの作動薬の投与後、心臓細胞生存は減少する。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの発現又は活性の阻害薬である。なお別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与後、心臓細胞生存は増加する。
【0145】
さらなる実施形態において、本発明は、心臓細胞のアポトーシスを調節する方法を提供し、この方法は、心臓細胞に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを投与することを含む。別の実施形態において、モジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの発現又は活性の作動薬である。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの作動薬の投与後、心臓細胞のアポトーシスは増加する。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターは、miR−15ファミリーメンバーの発現又は活性の阻害薬である。なお別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与後、心臓細胞のアポトーシスは減少する。いくつかの実施形態において、細胞をmiR−15ファミリー阻害薬と接触させることにより、細胞において、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2の発現が増加する。他の実施形態において、細胞をmiR−15ファミリー作動薬と接触させることにより、細胞において、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2の発現が減少する。
【0146】
従って、本発明は、細胞におけるFGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2の発現を調節する方法を含み、この方法は、細胞をmiR−15ファミリーメンバーのモジュレーターと接触させることを含む。一実施形態において、miR−15ファミリー作動薬の投与後、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2の発現は細胞中で減少する。別の実施形態において、miR−15ファミリー阻害薬の投与後、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2の発現は細胞中で増加する。
【0147】
miR−15ファミリーメンバーの作動薬は、miR−15ファミリーメンバー由来の成熟配列又はアスタリスク付き配列を含むポリヌクレオチドであり得る。一実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、又は配列番号21の配列を含む。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの作動薬は、miR−15ファミリーメンバーのpri−miRNA又はpre−miRNA配列(例えば、pre−miR−195、pre−miR−497、pre−miR−424、pre−miR−15a、pre−miR−15b、pre−miR−16−1、又はpre−miR−16−2)を含むポリヌクレオチドであり得る。例えば、一実施形態において、この作動薬は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号19の配列を含むポリヌクレオチドであり得る。miR−15ファミリーメンバーの成熟配列を含むポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、ロックド核酸、ペプチド核酸、糖修飾、例えば、2’−O−アルキル(例えば、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル)修飾、2’−フルオロ修飾、及び4’チオ修飾など、並びに骨格修飾、例えば、1つ又は複数のホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、又はホスホノカルボキシレート結合などの1つ又は複数の化学修飾を含み得る。一実施形態において、miR−15ファミリーメンバー配列を含むポリヌクレオチドは、コレステロールとコンジュゲートしている。別の実施形態において、miR−15ファミリーメンバーの作動薬は、miR−15ファミリーメンバーとは異なる薬剤であってもよく、miR−15ファミリーメンバーの機能を増進するか、補完するか、又は代替する働きをする。別の実施形態において、miR−15ファミリー作動薬は、インビボでベクターから発現され得る。
【0148】
一実施形態において、本発明は、治療を必要とする対象者において病的心肥大、心不全、又は心筋梗塞を治療する方法を提供し、この方法は、心肥大、心不全、又は心筋梗塞を有する対象者を特定することと;1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を対象者に投与することとを含む。本発明の特定の実施形態において、miR−15ファミリー阻害薬は、(a)細胞を候補化合物と接触させることと;(b)miR−15ファミリーメンバーの活性又は発現を評価することと;(c)工程(b)における活性又は発現を、候補化合物が存在しない場合の活性又は発現と比較することとを含む方法によって同定されてもよく、候補化合物と接触させた細胞におけるmiR−15ファミリーメンバーの活性又は発現が、候補化合物が存在しない場合の細胞における活性又は発現と比較して減少しているとき、それは、その候補化合物がmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬であることを示すものである。
【0149】
本発明の特定の実施形態は、miR−15ファミリーメンバーの機能的対立遺伝子の一方又は双方が欠如したトランスジェニック動物を提供する。また、誘導性プロモーター、組織選択的プロモーター、又は構成的プロモーターの制御下にmiR−15ファミリーメンバーを発現するトランスジェニック動物、かかる動物に由来する組換え細胞系、及びトランスジェニック胚も、miR−15ファミリーメンバーが心筋細胞の発生及び分化並びに病的心肥大及び心不全の発症において果たす正確な役割を決定するのに有用であり得る。さらに、こうしたトランスジェニック動物は、心臓の発生に関する洞察を提供し得る。構成的に発現するmiR−15ファミリーメンバーを使用すると、過剰発現又は調節されない発現のモデルがもたらされる。また、1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーが、一方又は双方の対立遺伝子において「ノックアウト」されたトランスジェニック動物も企図される。
【0150】
一般的な実施形態において、トランスジェニック動物は、所与の導入遺伝子を、その導入遺伝子が発現可能な方法でゲノムに組み込むことにより産生される。トランスジェニック動物の産生方法は、概して、Wagner and Hoppe(米国特許第4,873,191号;参照により本明細書に援用される)、及びBrinster et al.(1985;参照により本明細書に援用される)によって記載されている。
【0151】
典型的には、ゲノム配列に隣接する遺伝子が、マイクロインジェクションによって受精卵に移入される。マイクロインジェクトされた卵子が宿主の雌に移植され、導入遺伝子の発現について子孫がスクリーニングされる。トランスジェニック動物は、限定はされないが、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳動物、及び魚類を含む数多くの動物由来の受精卵から産生され得る。
【0152】
マイクロインジェクション用のDNAクローンは、当該技術分野において公知の任意の手段により調製することができる。例えば、マイクロインジェクション用のDNAクローンは、細菌プラスミド配列の除去に適切な酵素によって切断し、標準的な技術を用いてDNA断片をTBE緩衝液中の1%アガロースゲル上で電気泳動させることができる。臭化エチジウムで染色することによりDNAバンドが見えるようになり、発現配列を含むバンドを切り取る。次に、切り取ったバンドを、0.3Mの酢酸ナトリウム、pH7.0を含む透析袋に入れる。DNAは透析袋に電気溶出し、1:1のフェノール:クロロホルム溶液によって抽出したうえ2倍容量のエタノールによって沈殿させる。1mlの低塩濃度緩衝液(0.2MのNaCl、20mMのトリス、pH7.4、及び1mMのEDTA)中にDNAを再び溶解し、Elutip-D(商標)カラムで精製する。このカラムは、まず初めに3mlの高塩濃度緩衝液(1MのNaCl、20mMのトリス、pH7.4、及び1mMのEDTA)によってプライミングし、続いて5mlの低塩濃度緩衝液によって洗浄する。DNA溶液はカラムに3回通し、DNAをカラムマトリクスと結合させる。3mlの低塩濃度緩衝液で1回洗浄した後、0.4mlの高塩濃度緩衝液でDNAを溶出し、2倍容量のエタノールによって沈殿させる。DNA濃度は、UV分光光度計において260nmの吸光度によって計測する。マイクロインジェクションのため、5mMのトリス、pH7.4及び0.1mMのEDTA中、DNA濃度は3μg/mlに調製する。マイクロインジェクション用DNAの他の精製方法が、Palmiter et al.(1982);及びSambrook et al.(2001)に記載されている。
【0153】
例示的なマイクロインジェクション手順では、6週齢の雌マウスについて、妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG;Sigma)の5IU注射(0.1cc、ip)と、その48時間後のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG;Sigma)の5IU注射(0.1cc、ip)により過排卵を誘導する。hCG注射の直後、雌を雄と共に置く。hCG注射の21時間後、交尾した雌をCO2窒息又は頸椎脱臼により屠殺し、切除した卵管から胚を回収したうえ、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)を含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中に置く。周囲の卵丘細胞をヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で取り除く。次に前核期胚を洗浄し、注入時まで、5%CO、95%空気の加湿環境下にある37.5℃のインキュベーター内において、0.5%BSAを含有するアール平衡塩類溶液(EBSS)中に置いておく。胚は2細胞期で移植することができる。
【0154】
ランダムに循環する成体雌マウスを、精管を切除した雄とつがいにする。本目的上、C57BL/6若しくはSwissマウス又は他の同等な系統を用いることができる。レシピエント雌は、ドナー雌と同時に交尾させる。胚移植時、レシピエント雌には、体重1グラム当たり0.015mlの2.5%アベルチンを腹腔内注射することによって麻酔をかける。単一の背側正中切開により卵管を露出させる。次に、体壁を通じて卵管上に直接切開を行う。次に、時計用鉗子(watchmakers forceps)で卵嚢を破る。移植する胚をホールピペットの先端のDPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)に入れる(約10〜12個の胚)。ピペットの先端を漏斗に差し込んで胚を移し入れる。移した後、2本の縫合糸で切開を閉じる。
【0155】
本明細書で使用されるとき、用語「心不全」は、心臓が血液を送り出す能力が低下する任意の状態を意味するよう、広義に用いられる。結果として、組織にうっ血及び浮腫が生じる。最も多くの場合、心不全は、冠血流が低下する結果として起こる心筋層の収縮力の減少によって引き起こされる;しかしながら、心臓弁の損傷、ビタミン欠乏、原発性心筋疾患を含む他の多くの要因が、心不全を引き起こし得る。心不全の正確な生理学的機序は完全には解明されていないが、心不全には、概して、交感神経反応、副交感神経反応、及び圧受容体反応を含むいくつかの心臓の自律神経特性における障害が関与していると考えられる。語句「心不全の症状」は、心不全に関連する検査所見を含め、息切れ、圧痕浮腫、肥大した圧痛のある肝臓、充血した頸静脈、肺ラ音などの心不全に関連する続発症の全てを包含するよう、広義に用いられる。
【0156】
用語「治療」又は文法的に等価な語は、心不全の症状(すなわち、心臓が血液を送り出す能力)の改善及び/又は好転を包含する。心臓の「生理学的機能の改善」は、本明細書に記載される尺度のいずれか(例えば、駆出率、左室径短縮率、左室内径、心拍数等の尺度)、並びにその動物の生存に対する影響の有無を用いて評価され得る。動物モデルの使用においては、治療されたトランスジェニック動物と未治療のトランスジェニック動物との反応が、本明細書に記載されるアッセイのいずれかを用いて比較される(加えて、治療された、及び未治療の非トランスジェニック動物が対照として含められることもある)。これにより、本発明のスクリーニング方法において用いられる心不全に関連するいずれかのパラメータに改善を生じさせる化合物が、治療化合物として特定され得る。
【0157】
用語「拡張型心筋症」は、収縮期の収縮機能が不良な対称的に拡がった左心室の存在を特徴とするタイプの心不全を指し、加えて、多くの場合に右心室が関与する。
【0158】
用語「化合物」は、疾患、疾病、病気、又は生体機能の障害を治療又は予防するために使用することのできる任意の化学物質、医薬品、薬物などを指す。化合物には、公知の治療化合物及び潜在的に見込まれる治療化合物の双方が含まれる。化合物は、本発明のスクリーニング方法を用いたスクリーニングによって治療効果があると決定することができる。「公知の治療化合物」とは、かかる治療において有効であることが(例えば、動物試験か、又はヒトへの投与による先行経験を通じて)示されている治療化合物を指す。換言すれば、公知の治療化合物は、心不全の治療に効果的な化合物に限定されない。
【0159】
本明細書で使用されるとき、用語「心肥大」は、成人の心筋細胞が肥大性の拡大によってストレスに反応する過程を指す。かかる拡大は、細胞分裂なしに細胞サイズが増加すること、細胞内でサルコメアがさらに構築され、力の発生が最大化すること、及び胎児性心臓遺伝子プログラムが活性化することによって特徴付けられる。心肥大は、罹病率及び死亡率のリスク増加に関連付けられることが多く、従って心肥大の分子機構の解明を目指す研究は、人間の健康に重要な影響を有し得る。
【0160】
本明細書で使用されるとき、用語「調節する」は、生物活性の変化又は変性を指す。調節は、タンパク質活性の増加若しくは減少、キナーゼ活性の変化、結合特性の変化、又はタンパク質若しくは他の目的とする構造の活性に関連する生物学的、機能的、若しくは免疫学的特性の任意の他の変化であり得る。用語「モジュレーター(modulator)」は、上記のとおり生物活性を変化又は変性させることが可能な任意の分子又は化合物を指す。
【0161】
用語「βアドレナリン受容体拮抗薬」は、ベータ(β)型のアドレナリン受容体(すなわち、カテコールアミン、特にノルエピネフリンに反応するアドレナリン作動系の受容体)を部分的に、又は完全に遮断することが可能な化学的化合物又は物質を指す。いくつかのβアドレナリン受容体拮抗薬は、1つの受容体サブタイプ(概してβ)に対してある程度の特異性を呈する;かかる拮抗薬は、「β特異的アドレナリン受容体拮抗薬」及び「β特異的アドレナリン受容体拮抗薬」と称される。用語「βアドレナリン受容体拮抗薬」は、選択的及び非選択的拮抗薬である化学的化合物を指す。βアドレナリン受容体拮抗薬の例としては、限定はされないが、アセブトロール、アテノロール、ブトキサミン、カルテオロール、エスモロール、ラベトロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール、プロパノロール、及びチモロールが挙げられる。公知のβアドレナリン受容体拮抗薬の誘導体の使用は、本発明の方法に包含される。実際、機能上βアドレナリン受容体拮抗薬としての挙動を示すいずれの化合物も、本発明の方法に包含される。
【0162】
用語「アンジオテンシン変換酵素阻害薬」又は「ACE阻害薬」は、レンニン−アンジオテンシン系において比較的不活性なアンジオテンシンIを活性なアンジオテンシンIIに変換することに関与する酵素を、部分的に、又は完全に阻害することが可能な化学的化合物又は物質を指す。加えて、ACE阻害薬はブラジキニンの分解も同時に阻害し、これがACE阻害薬の降圧効果を大幅に高めているものと思われる。ACE阻害薬の例としては、限定はされないが、ベナゼプリル、カプトプリル、エナロプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル及びラミプリルが挙げられる。公知のACE阻害薬の誘導体の使用は、本発明の方法に包含される。実際、機能上ACE阻害薬としての挙動を示すいずれの化合物も、本発明の方法に包含される。
【0163】
本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子型」は、生体の実際の遺伝子構造を指し、一方「表現型」は、個体によって示される身体的特徴を指す。加えて、「表現型」は、ゲノムの選択的発現の結果である(すなわちそれは、細胞履歴及びその細胞外環境に対する反応の発現である)。実際には、ヒトゲノムは推定30,000〜35,000個の遺伝子を含む。各細胞型において、こうした遺伝子のうち発現するのは、ごく小さい割合(すなわち、10〜15%)に過ぎない。
【0164】
不定冠詞「a」又は「an」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書で用語「含む(comprising)」と併せて用いられるとき、「1つ」を意味し得るが、それはまた、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0165】
本明細書で考察される実施形態のいずれも、本発明の任意の方法又は組成物に関連して実施することができ、及び逆もまた同じであることが企図される。さらに、本発明の組成物及びキットを用いて本発明の方法を実現することができる。
【0166】
本願全体を通じて、用語「約」は、ある値が、その値を測定するために用いられた装置又は方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0167】
特許請求の範囲において用語「又は」が使用されるとき、二者択一のみを指すか、又は選択肢が互いに排他的であることを指すものと明示的に示されない限り、「及び/又は」を意味するために用いられるが、但し本開示は、二者択一のみ及び「及び/又は」を指すという定義を支持する。
【0168】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、単語「含んでいる(comprising)」(及び「含んでいる(comprising)」の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有している(having)」(及び「有している(having)」の任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含んでいる(including)」(及び「含んでいる(including)」の任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含有している(containing)」(及び「含有している(containing)」の任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)は、非排他的若しくは非制限的であり、詳説されない別の要素若しくは方法工程を排除するものではない。
【0169】
以下の実施例は、本発明の様々な態様をさらに例示するために含められる。当業者は、以下の実施例に開示される技術が、本発明を実施する際に上手く機能することが本発明者によって発見された技術及び/又は組成物を表し、従って、その実施に好ましい態様を構成するものとみなされ得ることを理解するはずである。しかしながら、当業者は、本開示をふまえて、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく開示される具体的な実施形態に多くの変更を加えることができ、それでもなお、同様の、又は類似した結果が得られることを理解しなければならない。
【実施例】
【0170】
実施例1.ストレス応答性miRNAによる心肥大及び心不全の調節
細胞表現型の調節へのmiRNAの関与をふまえ、本発明者は、miRNAが心臓ストレスに対する心臓の応答を調節する役割を果たし得るという仮説を立てた。心臓ストレスは、遺伝子発現において転写及び翻訳の変化を引き起こすことが知られている。miRNAの心肥大への関与の可能性を調べるため、186個の異なるmiRNAを示すマイクロアレイを用いて、作製した2つの心肥大マウスモデルにおいてmiRNAマイクロアレイ比較分析を実施した。心臓への後負荷の増加によって肥大を誘導する胸部大動脈バンディング(TAB)(Hill et al., 2000)に供されたマウスを、シャム手術を受けた動物と比較した。第2のモデルでは、十分に特徴付けられている形態の重篤な肥大を引き起こす活性カルシニューリン(CnA)(Molkentin et al., 1998)を心臓で発現するトランスジェニックマウスを、野生型同腹仔と比較した(図1A)。TABに供されたマウスの心臓から単離されたRNAは、シャム手術を受けた対照と比較して、27個のmiRNAの発現増加を示し、及びCnA Tgマウスは、非トランスジェニック同腹仔の対照と比較して33個のmiRNAの発現増加を示し、そのうち21個が双方のモデルにおいて上方制御された。同様に、TAB及びCnA誘導性の肥大には、それぞれ15個及び14個のmiRNAの発現低下が伴い、そのうち7個のmiRNAが共通して下方制御された(図1B)。これらのmiRNAの発現のノーザン解析及び先行するマイクロアレイ解析(Barad et al., 2004;Sempere et al., 2004;Shingara et al., 2005;Babak et al., 2004;Liu et al., 2004)は、それらが広範な組織において発現することを示している。
【0171】
その相対的な発現レベル、ヒト、ラット及びマウス配列の保存、並びに肥大時の発現レベルに基づき、本発明者は、11個の上方制御されたmiRNA及び5個の下方制御されたmiRNAに焦点を絞った。WT及びCnA Tg動物の心臓組織から単離されたRNAのノーザンブロット解析により、miR−21、miR−23、miR−24、miR−125b、miR−195、miR−199a、及びmiR−214の発現が上昇し、miR−29c、miR−93、miR−150及びmiR−181bの発現が低下したことが確認された(図1C)。まとめれば、これらのデータは、心肥大において特有のmiRNAが調節されることを示しており、そうしたmiRNAがこの過程のモジュレーターとして機能し得る可能性が示唆される。
【0172】
心室肥大は、様々な形態の心臓ストレスに応答して発症し、ヒトでは心不全に至ることが多い(Arad et al., 2002)。特発性の末期ヒト不全心における肥大調節性のmiRNAのノーザンブロット解析を行ったところ、miR−24、miR−125b、miR−195、miR−199a及びmiR−214の発現増加が示され、一方、miR−23の発現は、非不全群及び不全群の群内で異なるようであった(図2)。miR−21、miR−27、miR−29c、miR−93、miR−150及びmiR−181bの発現に変化は認められなかった(データは示さず)。従って、ヒト不全心におけるmiRNA発現の変化パターンがマウス肥大心のそれと重なったことから、これらのmiRNAが有害な心臓リモデリングを分子的に特徴付けるものであることが示唆される。
【0173】
実施例2.心臓におけるmiR−195の過剰発現は、心肥大を発症させるのに十分である。
αミオシン重鎖(MHC)プロモーターの制御下に、miR−24、miR−195及びmiR−214を心臓において特異的に過剰発現させた。miR−24についてはF1子孫を得ることはできなかったが、これは、心臓におけるこのmiRNAの過剰発現が胚致死を引き起こすことを示唆している。miR−195トランスジェニック(Tg)系統3の全ての子孫が、生後の最初の2週間で心不全により死亡したことから(図3)、それ以降の研究には、生存可能だったmiR−195のTg系統1を用いた。ノーザンブロット解析から、miR−195が、Tg系統1における正常値の約25倍高いレベルで発現したことが示された(図3)。miR−195の過剰発現は、初めは心筋細胞の破壊を伴う心臓の拡大を引き起こし、それが進行して6週齢までには拡張型の表現型となった。いくらかの線維性病変があったものの、野生型(WT)と比較したときのmiR−195 Tgマウスにおける個々の筋細胞サイズの劇的な増加が、より著しいものであった(図3)。
【0174】
6週齢の動物に対する心エコー検査から、miR−195 Tgマウスが、左室壁(AWs及びPWs)の菲薄化、左室径(LVIDd及びLVIDs)の増加、及び短縮率の低下によって示されるとおりの心機能の悪化をみせたことが示された(図4A)。体重に対する心臓重量比もまた、miR−195 Tg動物においてはWT同腹仔と比較して劇的に増加したことから、miR−195の過剰発現が心臓の拡大を刺激するのに十分であることが示される(図4B)。miR−195 Tg動物由来の心臓組織に対する、そのWT同腹仔と比較したリアルタイムPCR解析から、心臓におけるmiR−195の過剰発現に応答して、肥大マーカーの心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、b型ナトリウム利尿タンパク質(BNP)及びβミオシン重鎖(βMHC)が劇的に上方制御されたことが明らかとなった(図4C)。
【0175】
心臓の構造、機能、及び遺伝子発現に対するmiR−195の過剰発現の劇的な作用とは対照的に、心臓におけるmiR−214の過剰発現は、miR−195の過剰発現と同等のレベルにおいて、表現型に何ら影響は及ぼさなかった(図4C及び図5、データは示さず)。従って、miR−195 Tg動物において誘導された心臓リモデリングは、miRNAの過剰発現によって生じる一般的な非特異的作用ではなく、このmiRNAの機能的作用に特異的に起因する。これらの結果は、miR−195の発現の増加が、心不全につながる肥大シグナル伝達を誘導することを示している。miR−195は、関連するmiRNAのなかの小さいファミリーであるmiR−15ファミリーに属するため、他のファミリーメンバーもまた心疾患に関与している可能性が高い。
【0176】
miR−195が心臓の拡大を促進する能力はmiR−1と対照的であり、miR−1は、筋肉特異的miRNAであって、bHLHタンパク質Hand2の発現を抑制することによって心臓の拡大を阻害する(Zhao et al., 2005)。miR−1は成人の心臓において高度に発現するが、miR−195は、明らかに、miR−1の心臓拡大を阻害する作用を打ち消す能力を有する。
【0177】
肥大時に下方制御されたmiRNAが心筋細胞において過剰発現することによって細胞サイズの明らかな低減が生じることは、上方制御されたmiRNAによって誘発される作用と逆の作用であり、特に興味深い。こうした結果の解釈の一つは、これらのmiRNAが通常は拡大を抑制するように機能し、従って下方制御されると肥大が亢進されるというものである。
【0178】
miRNA−195は、マイクロRNAの小さいファミリーであるmiR−15ファミリーに属し、このmiR−15ファミリーには、miR−195、miR−16−1、miR−15a、miR−15b、miR−16−2、miR−424、及びmiR−497が含まれる。miR−15ファミリーメンバーのうち4つは、3つのまとまった転写産物として発現する(図6A)。様々なバイオインフォマティクス手法を用いて、miR−195についての可能性のあるmRNA標的が同定された。同定された標的mRNAのうちいくつかは、細胞の増殖、生存及び抗アポトーシスに関与するタンパク質をコードする(図6B)。miR−15ファミリーについて予想される標的の一つはFGF2であり、これは、心臓修復を促進することが示されている(図7)。miR−15ファミリーの全てのメンバーがヒト不全心においては上方制御され、これは、マイクロRNAのこのファミリーが、病的な心臓リモデリングにおいて重要な役割を果たすことを示している(図8)。全てのmiR−15ファミリーメンバーが保存されたシード配列を共有することから、このシード配列を標的化することによって全てのmiR−15ファミリーメンバーを同時に阻害することが可能であり得る。かかる一手法は、複数の結合部位を含む核酸の過剰発現を伴い、こうした結合部位はシード配列と相補的な配列を含む。異なるメンバー全てが、シード領域が重複していて、結果的に標的配列が重複しているため、そうした核酸によって「捕捉される」か、又は「吸い取られる」であろう(図8B)(Ebert et al., 2007)。
【0179】
本明細書で考察及び引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全体として参照により本明細書に援用される。本明細書に開示及び特許請求される組成物及び方法は全て、必要以上に実験を行うことなく、本開示をふまえて作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者には、組成物及び方法に対し、及び本発明に記載される方法の工程又は工程の順序において、本発明の構想、趣旨及び範囲から逸脱することなく変更を加え得ることは明らかであろう。より具体的には、化学的にも、及び生理学的にも関連性のある特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤に代替され得ると同時に、同じ、又は同様の結果が達成され得ることは明らかであろう。当業者に明らかなかかる類似の代替例及び修正例は全て、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の趣旨、範囲及び構想の範囲内であると見なされる。
【0180】
X.参考文献
以下の参考文献は、例示的手順又はその他の本明細書の記載を補足する詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に援用される。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象者において病的心肥大、心不全、又は心筋梗塞を治療する方法であって:
(a)心肥大、心不全、又は心筋梗塞を有する対象者を特定することと、
(b)前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記阻害することが、前記対象者に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が、antagomir、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は阻害性RNA分子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーが、miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と相補的な配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と相補的な配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害性RNA分子が二本鎖領域を含み、前記二本鎖領域が、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記二本鎖領域が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記阻害薬が、1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記miR−15結合部位が、配列番号18と相補的な配列を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が、非経口投与によるか、又は心臓組織に直接注射することによって投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記非経口投与が静脈内投与又は皮下投与である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が、経口、経皮、持続放出、制御放出、遅延放出、坐薬、カテーテル、又は舌下投与によって投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記対象者に第2の心肥大治療薬を投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の治療薬が、β遮断薬、イオンチャネル薬、利尿薬、ACE−I、AII拮抗薬、BNP、Ca++遮断薬、エンドセリン受容体拮抗薬、及びHDAC阻害薬からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の治療薬が、前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬と同時に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の治療薬が、前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬より先に、又はそれより後に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与後、前記対象者において、病的心肥大、心不全、又は心筋梗塞のうちの1つ又は複数の症状が改善される、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数の症状が、運動能力の増加、心駆出量の増加、左室拡張終期圧の低下、肺毛細血管楔入圧の低下、心拍出量の増加、心係数の上昇、肺動脈圧の降下、左室収縮終期径及び拡張終期径の低下、左室壁及び右室壁応力の低下、壁張力の低下、クオリティ・オブ・ライフの向上、疾患に関連する罹病率若しくは死亡率の低下、又はこれらの組み合わせである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬の投与により、前記対象者において心肥大から心不全への移行が遅延する、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーが、miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424及びmiR−497からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
予防を必要とする対象者において病的肥大又は心不全を予防する方法であって、
(a)病的心肥大又は心不全を発症するリスクのある対象者を特定することと、
(b)前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記阻害することが、心臓細胞に1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を送達することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が、antagomir、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は阻害性RNA分子である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーが、miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と相補的な配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と相補的な配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記阻害性RNA分子が二本鎖領域を含み、前記二本鎖領域が、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記二本鎖領域が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記阻害薬が、1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記miR−15結合部位が、配列番号18と相補的な配列を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
リスクのある前記対象者が、不制御の高血圧症、治っていない弁膜症、慢性狭心症、最近起こした心筋梗塞、心疾患の先天的素因、及び病的肥大からなる群から選択される1つ又は複数のリスク要因を示し得る、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
リスクのある前記対象者が、心肥大の遺伝的素因を有すると診断されている、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
リスクのある前記対象者が、心肥大の家族歴を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、前記非ヒト哺乳動物細胞が、少なくとも1つの機能的miR−15ファミリーメンバーを発現することができない、トランスジェニック哺乳動物。
【請求項36】
前記miR−15ファミリーメンバーが、miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497からなる群から選択される、請求項35に記載のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項37】
前記哺乳動物がマウスである、請求項35に記載のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項38】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、前記非ヒト哺乳動物細胞が、前記非ヒト哺乳動物の細胞内で活性な異種プロモーターの制御下にあるmiR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、又はmiR−497コード領域を含む、トランスジェニック哺乳動物。
【請求項39】
前記哺乳動物がマウスである、請求項38に記載のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項40】
前記プロモーターが、組織特異的プロモーター、筋特異的プロモーター、又は心筋特異的プロモーターである、請求項38に記載のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項41】
miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497のうちの1つ又は複数の天然対立遺伝子の一方又は双方を欠くトランスジェニック非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項42】
miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、又はmiR−497の前記天然対立遺伝子の双方を欠く、請求項41に記載の細胞。
【請求項43】
予防を必要とする対象者において心肥大及び拡張型心筋症を予防する方法であって、前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む、方法。
【請求項44】
抑制を必要とする対象者において心肥大の進行を抑制する方法であって、前記対象者の心臓細胞における1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの発現又は活性を阻害することを含む、方法。
【請求項45】
miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターを同定する方法であって、
(a)細胞を候補化合物と接触させることと、
(b)miR−15ファミリーメンバーの活性又は発現を評価することと、
(c)工程(b)における活性又は発現を、前記候補化合物が存在しない場合の活性又は発現と比較することと、
を含み、測定された活性又は発現に差があると、それは、前記候補化合物が前記miR−15ファミリーメンバーのモジュレーターであることを示すものである、方法。
【請求項46】
前記細胞を前記候補化合物とインビトロで接触させる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞を前記候補化合物とインビボで接触させる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記モジュレーターが、前記miR−15ファミリーメンバーの作動薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記モジュレーターが、前記miR−15ファミリーメンバーの阻害薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記候補化合物が、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、又は小分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記活性又は発現を評価することが、前記miR−15ファミリーメンバーの発現を評価することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記発現を評価することが、ノーザンブロッティング又はRT−PCRを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記活性又は発現を評価することが、前記miR−15ファミリーメンバーの活性を評価することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記miR−15ファミリーメンバーの活性を評価することが、前記miR−15ファミリーメンバーによって調節される遺伝子の発現又は活性を評価することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記miR−15ファミリーメンバーによって調節される前記遺伝子が、FGF2、TGFb誘導性因子2、BCL9I、BCL2L、CDC25A、サイクリンE1、サイクリンD1、又はサイクリンD2である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記活性を評価することが、2つ以上のmiR−15ファミリーメンバーの活性又は発現を評価することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬を含む医薬組成物。
【請求項58】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーの阻害薬が、antagomir、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は阻害性RNA分子である、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記1つ又は複数のmiR−15ファミリーメンバーが、miR−15a、miR−15b、miR−16、miR−195、miR−424、及びmiR−497からなる群から選択される、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と相補的な配列を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記antagomir又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と相補的な配列を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記阻害性RNA分子が二本鎖領域を含み、前記二本鎖領域が、miR−15ファミリーメンバーの成熟配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記二本鎖領域が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列と実質的に同一で、且つ実質的に相補的な配列を含む、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記阻害薬が、1つ又は複数のmiR−15結合部位を含む核酸である、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
前記miR−15結合部位が、配列番号18と相補的な配列を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記組成物が注射用に製剤化される、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項67】
非経口投与用のキットと組み合わされる請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項68】
非経口投与が静脈内投与又は皮下投与である、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
カテーテル投与用のキットと組み合わされる請求項57に記載の医薬組成物。

【図1A−B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−C】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図7】
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【図8A−B】
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【公表番号】特表2011−503106(P2011−503106A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533320(P2010−533320)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/083020
【国際公開番号】WO2009/062169
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(501100582)ボード オブ リージェンツ, ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (19)
【Fターム(参考)】