miRNAに関連する癌を検出および処置するための方法および組成物およびmiRNAインヒビターおよび標的
本発明は、癌(特に血液悪性疾患、特にT細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)が含まれる)に関連するマイクロRNA(miRNA)ならびに癌の処置および管理におけるその評価および調整に関する。本発明は、miRNAの調整による癌(特にT−ALL)の診断および処置のための方法および組成物、アンタゴニスト(antagist)の単離および選択のためのアッセイにおける処置に対する応答の予想および評価のためのmiRNAおよびそのアンタゴニスト(特にアンタゴミア)の使用、ならびに癌の処置および管理のための組成物としての使用に関する。miRNA(特に、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR26、miR92、miR148、およびmiR223)のアンタゴニスト/アンタゴミアを使用した癌(特にT−ALL)の処置または緩和のための方法および組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌(血液悪性疾患、特にT細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)が含まれる)の診断、管理、および処置、ならびに処置に対する応答の予測および評価に関する。本発明は、癌(血液学的悪性疾患(T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)など)が含まれる)に関連するマイクロRNA(miRNA)ならびに癌の処置および管理におけるその評価および調整に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌(血液悪性疾患が含まれる)の処置ならびに特定の処置レジメンに対する癌および癌細胞の応答の予測および評価への従来のアプローチは、存在する腫瘍型の適切な分類に依る。適切な分類は、今度は、臨床的特徴、腫瘍細胞の形態学、腫瘍細胞の免疫表現型に主に依存し、より少ない程度に、腫瘍細胞の染色体異常に依存する。しかし、所与の腫瘍型の範囲内でさえ、特定の処置レジメンに対する応答は、しばしば、非常に多様であり、分子レベルでの分析により、従来の分類スキームによって定義された腫瘍型がしばしば非常に不均一であることが明らかである。
【0003】
したがって、腫瘍(血液悪性疾患が含まれる)を分類するための最近の試みは、特定の腫瘍型の成長または病理学を駆動する特異的遺伝子異常または分子誘発因子の同定に集中している。次いで、かかる遺伝子異常または分子誘発因子は、疾患のマーカーおよび/または治療の標的として役立ち得る。全てではないがほとんどのヒト悪性疾患におけるマイクロRNA(miRNA)の異常な発現が関連していると見なされる証拠が増大しており、これらが実際に腫瘍抑制因子または癌遺伝子のいずれか/両方として作用することができ、共通の経路を有し得る多数の癌または特定のmiRNAイニシエーターまたはモジュレーターを有する特異的癌で効果があり得ることを示唆している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。
【0004】
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の調節によって作用する(Bartelら、(2004)Cell 116:281−297)。miRNAは、Caenorhabditis elegansにおいて発達欠損を引き起こす変異の分析によって最初に発見され(Lee R.C.ら、(1993)Cell,75,843−854)、miRNA発現の変化がヒト癌(白血病が含まれる)でさらに証明されている(Calin G.A.ら、(2004)PNAS USA 101:1 17555−11760;HayashitaYら、(2005)Cancer Res 65:9628−9632;Johnson S.M.ら、(2005)Cell 120:635−647;Lu Jら、(2005)Nature 435:834−838;Venturini Lら、(2007)Blood 109:4399−4405)。マイクロRNA(miRNA)は、相補的なメッセンジャーRNA(mRNA)標的配列への多タンパク質複合体のハイブリッド形成および動員による配列特異的様式で遺伝子発現を調節する。miRNA機能を、アンタゴミア(antagomir)(個別のmiRNAに相補的な化学修飾したオリゴヌクレオチド)によって一過性にアンタゴナイズすることができる。
【0005】
単一のmiRNAは数百のメッセンジャーRNAをターゲティングすることができ、それにより、その各遺伝子由来のタンパク質産物を調整することができる(Bartel DP(2009)Cell 136:215−233)。したがって、単一または特定のmiRNA組は、単一または相関する細胞事象(例えば、細胞増殖)と調和する少数の重要なタンパク質の産生の調節によって個別の生理学的過程を調節することができる(Baltimore Dら、(2008)Nat Immunol 9:839−845;Bartel DP(2009)Cell 136:215−233)。
【0006】
miRNAの17〜92クラスターが造血系癌(hematopoietic cancer)中で高発現し、in vivoでのリンパ球増殖およびc−Myc誘導白血病誘発/リンパ腫誘発を増強する(Heら、2005)(Xiaoら、2008)。17〜92クラスターおよびそのパラログも多様な固形腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓、前立腺、胃由来の腫瘍が含まれる)で発現する(Voliniaら、2006)(Petroccaら、2008)。しかし、これまでのところ、個別のmiRNA(特に、ポリシストロニック転写物(17〜92クラスターなど)上にコードされるもの)によって調節される標的の機能はほとんど知られていない。
【0007】
多数のmiRNAが公知であり、且つ同定されているにも関わらず(公知のmiRNAは、公開データベース(miRBaseデータベース(mirbase.org);Griffiths−Jones S(2003)Methods Mol Biol 342:129−138)が含まれる)による配列の情報および特徴を有する名称によってアクセス可能であり、疾患の開始および/または進行におけるその特異的役割ならびに治療のための標的または疾患(癌が含まれる)のモジュレーターとしてのその特定の価値の大部分が依然として明確に定義されていない。したがって、癌(特定の癌が含まれる)における個別または集合的なmiRNAの関連についての具体的な解明、疾患の診断および管理、ならびに癌の個別または集合的なmiRNAに対する特定の治療の開発が当該分野で依然として必要であることが明らかなはずである。
【0008】
本明細書中の参考文献の引用は、かかる参考文献が本発明の先行技術であることを承認すると解釈されないものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Visone RおよびCroce CM、Am J Pathology(2009)174(4):1131〜1138
【非特許文献2】Garzon Rら、Ann Rev Med(2009)60:167〜179
【非特許文献3】Lui W−Oら、Cancer Res(2007)67(13):6031〜6043
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
その最も広い態様では、本発明は、癌(血液悪性疾患が含まれる)の診断および処置ならびに処置に対する応答の予測および評価のための方法および組成物に及ぶ。特異的miRNAを、癌(特に、血液学的悪性疾患、特に、白血病およびリンパ腫)の病原における関与因子として提供し、疾患の予防、処置、または緩和における有効な標的として証明されている。
【0011】
本明細書中に示したデータは、miRNA(特にmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223)が癌(T細胞急性リンパ球性白血病(T−ALL))におけるmiRNA発現の大部分を占めることを証明している。まとめると、新規のmiRNA組(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223)は、種々の癌の病原に関与する腫瘍抑制遺伝子の共通する組(PTEN、BCL2L11、NF1、FBXW7、IKZF1、およびPHF6が含まれる)の活性を下方制御する。これらのmiRNAは、現在、その発現に及ぼす重複し且つ協同的な影響によって腫瘍抑制遺伝子を(特に、T−ALLにおいて)調整することが証明されており、動物モデルにおいてT−ALLを促進することができる。
【0012】
本発明によれば、1つ以上のmiRNA(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現を、血液悪性疾患(T−ALLが含まれる)の診断、特定の治療レジメンに対する応答の予想、および/または治療に対する応答のモニタリングのために使用することができる。miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223(特にmiR−19b、miR−26a、miR−92、および/またはmiR−223)のアンタゴニスト/アンタゴミアは、単独または特に組み合わせて、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現の変化または過剰発現を示す癌(血液悪性疾患および任意の癌または状態が含まれる)に対する候補治療薬である。
【0013】
本発明は、特異的miRNA(特に、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、または全て)の特異的阻害のための方法および組成物を介した癌の調整方法に関する。本発明の組成物および方法は、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現および/または活性を阻害する。特に、本発明は、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の特異的阻害のための遺伝子アプローチおよび核酸を提供する。1つ以上の本発明のmiRNAの特異的阻害の際に発癌および白血病誘発が破壊され、腫瘍細胞または癌細胞の増殖が阻害されることを本明細書中に証明する。
【0014】
本発明は、miRNA(特に、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223が含まれる)の発現および活性を特異的に阻害または遮断するオリゴヌクレオチドおよび核酸を提供する。miRNAのアンタゴミアを本明細書中に提供して評価し、抗発癌活性および抗白血病誘発活性が証明された。本発明の1つの態様では、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223に相補的な核酸のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび発現は、1つ以上のmiRの発現および/または活性を特異的に阻害し、miRNA媒介性の腫瘍発生および癌細胞増殖を遮断する。
【0015】
miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに相補的な1つ以上のアンタゴミアを含む血液学的悪性疾患の処置用の組成物を本明細書中に提供する。本発明は、さらに、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む血液学的悪性疾患の処置用の組成物を提供する。本発明の1つの態様では、血液学的悪性疾患は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される。特定の態様では、悪性疾患は、白血病、特にT−ALLである。
【0016】
本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む癌の処置用の組成物を含む。組成物は、特に、miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0017】
さらなる実施形態では、本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される本明細書中に提供した少なくとも1つのmiRNA配列に実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。アンタゴニストまたはアンタゴミアは、表1に示すmiRNA標的配列に実質的に相補的であり得る。特に、本発明のアンタゴミア、アンタゴニスト、またはオリゴヌクレオチドは、表1に示す配列番号1〜10の群から選択されるヌクレオチドまたは1つ以上の配列番号1〜10のmiRNA配列の発現または活性を阻害するのに十分なそのヌクレオチドのサブセットに実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。本発明は、表2に示すか配列番号11〜15に示す配列群から選択される1つ以上の配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。
【0018】
本発明の組成物の1つの態様では、1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。特定の態様では、本発明のアンタゴミア、核酸、およびオリゴヌクレオチドを、核酸の化学的骨格の操作または他の部分の共有結合または非共有結合のいずれかによって修飾することができる。各場合または任意の場合では、かかる操作または結合は、安定性、細胞、組織、または器官の取り込みを修飾するか、そうでなければ、核酸およびオリゴヌクレオチドの有効性を増強するのに役立ち得る。本発明のさらなる態様では、アンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドの取り込み、安定性を増強するか、ターゲティングするのに役立ち得る他の分子(ポリペプチド、炭水化物、脂質または脂質様部分、リガンド、化学物質または化合物が含まれるが、これらに限定されない)に共有結合させることができる。
【0019】
本発明の組成物は、さらに、抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤(anti−mitotic agent)、アポトーシス剤(apoptotic agent)または抗体、または免疫調節薬から選択される1つ以上のさらなる化合物を含むことができる。本発明の組成物を、単独または他の処置、治療薬、または薬剤と組み合わせて、処置すべき状態に応じて同時または逐次的に投与することができる。さらに、本発明は、1つ以上の本明細書中に記載の特異的miRアンタゴニスト/アンタゴミアおよび他の薬剤または治療薬(抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤、アポトーシス剤または抗体、または免疫調節薬など)を含む組成物を意図し、且つ含む。より一般的には、これらの抗癌剤は、チロシンキナーゼインヒビターまたはリン酸化カスケードインヒビター、翻訳後調節因子、細胞成長インヒビターまたは細胞分裂インヒビター(例えば、有糸分裂阻害薬)、インヒビター、またはシグナル伝達インヒビターであり得る。他の処置または治療は、適切な用量の鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェン、またはケトプロフェン)またはアヘン薬(モルヒネなど)など)、または制吐薬の投与を含むことができる。さらに、組成物を、免疫応答を刺激し、癌細胞または腫瘍を減少または消失させる免疫調節薬(インターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)または他の成長因子、コロニー刺激因子、サイトカイン、またはホルモン(デキサメタゾンなど)など)と共に投与することができる。組成物を、抗腫瘍抗原抗体と共に投与することもできる。
【0020】
本発明は、治療有効量のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物を含む。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、一定の治療方法に関し、この治療方法は、miRNAの活性およびその調整(特に、発癌または白血病誘発に関連する1つ以上のmiRNAの活性および/または発現の阻害)に基づくであろう。例えば、薬物またはmiRNAへの他の結合パートナー(アンタゴミア(anagomir)またはオリゴヌクレオチドなど)を、例えば、miRNA発現または活性を阻害する(例えば、抗癌治療を増強する)ために投与することができる。
【0022】
miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から特に選択される1つ以上のmiRNAの発現を阻害するための方法を提供する。特に、1つ以上のmiRNAを発現する細胞を有効量の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させ、それにより、1つ以上のmiRNAの発現または活性が阻害される工程を含む、本発明で関連することが示された1つ以上のmiRNAの発現を阻害する方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における本発明のmiRNAの発現またはそのmiRNAの増大した発現に関連する状態(癌または他の過剰増殖障害など)を処置または予防する方法を含む。この方法の1つの態様では、この化合物または薬剤は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223の1つ以上のmiRNAと特異的にハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアである。
【0024】
さらなる態様では、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における癌を処置するか、その進行を阻害する方法を含む。本発明の方法に感受性を示す癌には、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌(gastric cancer)、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌(stomach cancer)、食道癌、および前立腺癌の群から選択される癌が含まれる。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0025】
本発明は、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される腫瘍抑制遺伝子の発現を増強または増大させる方法を提供し、この方法は、上記腫瘍抑制遺伝子のうちの1つ以上を発現することができる細胞をmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させる工程を含む。1つの態様では、上記方法は、細胞をmiR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに実質的に相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させる工程を含む。
【0026】
本発明は、さらに、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を阻害する1つ以上の化合物を投与する工程を含む、miR17〜92クラスターが増幅または過剰発現される癌を処置または緩和する方法を提供する。1つの態様では、方法は、miR−19、miR−26、およびmiR−92を阻害する1つ以上の化合物を投与することを含む。
【0027】
本発明の診断上および医学上の有用性は、哺乳動物(特に、ヒト患者)における癌、悪性疾患、リンパ腫、および/または白血病をスクリーニングするか評価するためのアッセイにおける本発明の使用に及ぶ。したがって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を評価する、癌のモニタリング方法および/または処置に対する応答の評価方法を提供する。1つのかかる態様では、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される癌に関連する少なくとも2つのmiRNAの活性を決定および評価し、癌または癌処置に対する応答を分子レベルなどでモニタリングまたは評価する。例えば、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現および/または活性の減少は、予後の改善または癌処置もしくは治療薬に対する正の応答に関連し得る。本発明は、さらに、miRNAの存在程度の定量分析またはその活性を模倣または遮断することができる薬物または他の薬剤の同定のための試験キットの形態で調製することができるアッセイ系を含む。
【0028】
本発明の1つの態様では、哺乳動物における癌をモニタリングするための、または癌治療に対する応答を評価するための方法を提供し、この方法は:
(a)上記哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)上記サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を、参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、少なくとも2つのmiRNAの発現または活性が参照サンプルと比較して変化する。本方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が変化する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は血液学的悪性疾患である。
【0029】
さらに、癌に関連する1つ以上のmiRNAの発現を阻害する化合物または薬剤を同定するための方法を提供し、この方法は:
(a)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAを発現する細胞をインキュベートする工程、および
(b)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される上記miRNAの発現または活性を検出または測定する工程
を含み、それにより、
上記候補化合物または薬剤の存在下 対 上記候補化合物または薬剤の非存在下でのmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される上記miRNAの発現の減少が、上記化合物または薬剤がmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現を阻害することを示す。
【0030】
したがって、本発明は、血液学的悪性疾患の処置または予防のための化合物を同定するための方法を提供し、ここで、上記化合物が上記悪性疾患に関連するmiRNAの発現または活性をアンタゴナイズするかまたは阻害し、上記方法は:
(a)化合物をmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAを発現する細胞と接触させる工程、および
(b)上記miRNAのうちの1つ以上の発現または活性を決定する工程
を含み、
ここで、上記miRNAの発現または活性が阻害されるか減少する。
【0031】
方法の1つの態様では、上記1つ以上のmiRNAの発現または活性を、上記miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性または発現、または上記miRNAを発現する白血病細胞またはリンパ腫細胞の成長または生存度の決定によって評価する。方法のさらなる態様では、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子は、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される。さらなる態様では、白血病細胞またはリンパ腫細胞がT−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株である方法を提供する。
【0032】
本発明は、哺乳動物における血液学的悪性疾患を検出または評価するための方法を含み、この方法は:
(a)上記哺乳動物から血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程を含み、
1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する。
【0033】
本発明は、哺乳動物における癌を検出または評価するための方法を含み、この方法は:
(a)上記哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)上記サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
上記miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する。
【0034】
上記方法の1つの態様では、2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。上記方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0035】
本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、検出可能な標識で標識することができる。特定の態様では、標識を、酵素、リガンド、蛍光を発する化学物質、および放射性元素から選択することができる。放射性標識(同位体3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reなど)を使用する場合、公知の現在利用可能な計数手順を使用することができる。標識が酵素である場合、当該分野で公知の現在使用されている比色分析技術、分光光度的技術、蛍光分光光度的技術、電流測定技術、または気体定量技術のうちのいずれかによって検出することができる。
【0036】
他の目的および利点が、以下の例示的な図面を参照して進行する以下の説明の再検討から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】miR−19は、in vitroでのサイトカイン依存性生存を増強する。(a)17〜92クラスター(「オンコミア−1」が含まれる)およびそのパラログのゲノム構成。同色で示したmiRNAは、共通のシード配列を有する。(b)不死化FL5−12リンパ球のサイトカイン依存性生存についての競合アッセイの略図。(c)miR−19で形質導入したFL5−12細胞がIL3枯渇の際に拡大し、一方、空のベクターまたは他の17〜92miRNAで形質導入した集団では拡大しないことを示すFACSプロフィール。
【図2】miR−19は、in vitroでのリンパ球生存を増強する。(a)1日目の細胞数に対して正規化した空のベクター(ベクター)またはmiR−19(miR−19)を発現する完全培地中のFL5−12細胞の成長曲線(p<0.009)。(b)放出24時間後の同調FL5−12細胞におけるS期分画(ベクター:24%±3%;miR−19:24.5%±0.5;p=0.8)。(c)ベクターまたはmiR−19で形質導入し、IL3を除去した48時間後のFL5−12細胞の生存率(ベクター:平均49%±1%;miR−19:82%±1.5%;p<6exp−06)。(d)FL5−12/miR−19と比較したFL5−12/ベクター細胞の細胞生存度を測定した代表的なFACSプロフィール。IL3枯渇後の生細胞の比率を示す。
【図3】miR−19は、T−ALLにおけるヒト癌遺伝子および新規の転座の標的である。(a)一連のヒトリンパ性悪性疾患((T−/B−ALL)TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病;(FL)濾胞性リンパ腫;(DLBCL)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;(BL)バーキットリンパ腫;(HD)ホジキン病;(扁桃腺)反応性扁桃腺由来のリンパ球;(F)FL5−12細胞(親(黒色バー)またはmiR−19での形質導入(赤色バー)))におけるmiR−19発現のqRT−PCR測定(示した値は平均±SDである)。(b)13q14においてRB1プローブ(緑色)ならびに13q32において17〜92遺伝子座が重複するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6(赤色)を使用したt(13;14)(q32;q11)の二色FISH分析。(c)FISHの結果の図的表現。(d)ノッチ誘導性T−ALLのマウスモデル。(e)ノッチ−ICN+miR−19(赤色;n=6)またはノッチ−ICN+ベクター(黒色;n=9)での造血前駆細胞(HPC)移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。(f)〜(h)ノッチ/miR−19誘導性ALLの代表的な顕微鏡写真。(f)血液塗抹標本上の白血病性芽球。(g)miR−19/緑色蛍光タンパク質(GFP)発現白血病細胞による骨髄の消失。(h)脾腫およびリンパ腫。ノッチ1誘導性白血病の病理的外観は同一である(示さず)。
【図4】T−ALLにおける新規のt(13;14)(q32;q11)転座の細胞遺伝学的特徴。17〜92クラスターに局在するT−ALL癌遺伝子の存在を強調したより高解像度の二色FISH分析(図3と同一)。13q14においてRB1プローブ(緑色)ならびに13q32において17〜92遺伝子座が重複するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6(赤色)を使用した分析。プローブRP11−97P7は、13番染色体中のクローンの半分および誘導14番染色体に対してマッピングした他の半分を保持する分割シグナルを示す。プローブR11−980D6は、13番染色体中に幾らかのシグナルが保持され、誘導14番染色体にマッピングした大部分のクローンを伴う。
【図5】t(9;14)ノッチ1転写物の分子特徴付け。(a)全長ノッチ1転写物に対応するノッチ1遺伝子の構造およびタンパク質ドメイン。(b)白血病リンパ芽球中で発現したノッチ1短縮転写物の5’RACE配列。キメラノッチ1−14番染色体配列は、ノッチ1エクソン28中に存在するブレイクポイントに対して遠位のノッチ1配列を含む。このmRNAの第1のATGコドンは、ノッチ1エクソン29中に存在する。ノッチ1エクソン29中に存在する5’RACEプライマーに対応する配列を、太字で示す。(c)t(9;14)によって生成された短縮ノッチ1mRNAの構造。
【図6】miR−19/ノッチ−1誘導性T−ALLの特徴付け。(a)低倍率(10倍)での白血病動物由来の血液塗抹標本の代表的な顕微鏡写真。(b)高倍率(40倍)の白血病性芽球。(c)未染色の骨髄塗抹標本。(d)GFP蛍光により、白血病細胞による骨髄の広範な浸潤が同定される。(e)表示の表面マーカーに対するPE標識抗体を使用したGFP陽性ALL細胞の免疫表現型検査。ノッチ1形質導入HPCで発症した白血病は、同一の特徴(示さず)を示したが、潜伏期がより長かった。
【図7】miR−19はc−Mycと協力し、ΕμΜycリンパ腫におけるp53依存性アポトーシスを遮断する。(a)ΕμΜyc/p53+/−HPC由来のmiR−19発現リンパ腫を生成するための実験デザインの略図。(b)miR−19発現HPCは、in vivoでのMyc駆動リンパ腫誘発中に急速に富化する。(c)ΕμΜyc/p53+/−HPC由来のベクターおよびmiR−19発現リンパ腫中のp53遺伝子座におけるヘテロ接合性の喪失を評価するためのPCR(NeoおよびWTは、p53のノックアウトおよび野生型対立遺伝子を示す)。
【図8】親細胞およびmiR−19形質導入FL5−12細胞の遺伝子発現分析。(a)教師なしクラスタリング分析のヒートマップ表示により、親細胞(FL/ベクター)とmiR−19発現FL5−12細胞(FL/miR−19)との間の遺伝子発現の相違が明らかとなる。(b)アレイ上に示した予想されるmiR−19標的(336遺伝子、赤線)対全ての表示遺伝子(8065遺伝子、黒線)の発現の変化の比較(p<2e−04;KS試験)。(c)その発現が親細胞と比較してFL5−12/miR−19細胞で1SDを超えて下方制御される遺伝子のヒストグラム。包括的に、miR−19標的は、他の遺伝子より有意に大きく下方制御される。しかし、発現のより顕著な(1.5または2SD)減少を示す遺伝子間でmiR−19標的は有意に富化されない。
【図9】ショートヘアピンRNA(shRNA)スクリーニングのための最適化研究。(a)ベクターと比較してBimに対するshRNAによるB1M/BC12L11タンパク質(短期および長期の曝露)のノックダウンを示すFL5−12細胞の免疫ブロット。(b)Bim shRNAおよびGFPを発現するFL5−12細胞は、その後のIL3枯渇およびレスキューサイクルで富化される。T0は未処置である。T1はIL3枯渇およびIL3レスキューの1サイクルである。T2は2サイクルである。(c)GFPに連結したポジティブコントロールshRNAを空のベクターで10倍から10,000倍まで希釈したライブラリー再構築実験。shRNA発現細胞およびGFP発現細胞の富化は、1,000倍希釈で容易に検出され、おそらく10,000倍でさえも検出される。(d)(c)のように実施し、スクリーニングアッセイにおいてmiR−19を詳細に特徴づけるためのmiR−19の連続希釈物を使用したライブラリー再構築実験。これらの所見に基づいて、ライブラリーを、プールあたりの複雑度約1,000shRNAに構築した。
【図10】リンパ球生存におけるmiR−19を表現型模写するshRNAの遺伝子スクリーニング。(a)プールしたshRNAのスクリーニングデザインの略図。(b)ハーフヘアピンアレイの結果の教師なしクラスタリング分析のヒートマップ。T1およびT2は、IL3枯渇の1または2サイクル後の時点を示す。−IL3および+IL3は、IL3の非存在下または存在下の培養を示す。A、B、およびCはレプリケートを示す(T2/+IL3でのレプリケートBを技術上の理由から除去した)。(c)各shRNAの倍率変化(log2)および確認研究のための閾値(赤線)を示すマイクロアレイデータの統計分析(SAM)。(d)遺伝子組富化分析(GSA)により、14遺伝子をターゲティングするshRNA組の富化が同定される(赤円)。(e)IL3枯渇の際に表示のshRNAおよびGFPを発現するFL5−12細胞の富化を示す代表的な検証実験。8つの検証された「ヒット」のうちの5つは、直接的なmiR−19標的である。ベクターのみでは変化が示されなかった(示さず)。
【図11】shRNAスクリーニングの結果の図表によるまとめ。(a)約12,000のshRNAおよび7,853の固有の標的の大規模shRNAライブラリーから、8遺伝子に対するshRNAはmiR−19を表現型模写することを示した。8遺伝子のうちの5遺伝子は、938個の予想miR−19標的と比較してmiR−19シードマッチを含んでいた。それ故、遺伝スクリーニングにより、miR−19標的遺伝子が非常に有意に富化する(p<7.2 exp−07、フィッシャーの正確検定)。(b)744個の予想miR−19標的遺伝子を含むマウスゲノムについての同一の分析(マウスDock5遺伝子は標的ではない)。フィッシャーの正確検定により、マウスゲノム中のmiR−19標的の富化が確認される(p<3.2 exp−05)。
【図12】同定された遺伝子は、実際のおよび関連するmiR−19の標的である。(a)ベクター(黒色バー)またはmiR−19形質導入された(影付きバー)FL5−12細胞から調製したcDNA上の表示の遺伝子についてのqRT−PCR。発現レベル(平均±SD)を、ベクターコントロールに対して正規化する(相対発現)。(b)上記のように分析したベクター(黒色バー)およびmiR−19のアンタゴミア(影付きバー)で形質導入したFL5−12細胞を比較したqRT−PCR。(c)および(d)表示のタンパク質について探索したベクター、miR−19(c)またはアンタゴミア−19(d)で形質導入したFL5−12細胞由来の溶解物の免疫ブロット。(e)Bcl2(FL5−12/Bcl2)を同時発現するFL5−12細胞ならびにGFPおよび表示のshRNAまたはmiR−19のFACSプロフィール。リンパ球生存に及ぼすBcl2依存性の影響を評価するために、細胞を完全培地(+IL3)からIL3欠損培地(−IL3)にシフトさせる。(f)GFPおよびアンタゴミア(抗19)またはベクターで形質導入し、完全培地で成長させたFL5−12/Bcl2細胞のFACS分析。(g)miR−19によるPI3K生存シグナルのマルチレベルコントロールを示す図。
【図13】マウスT−ALLにおけるmiR−19および標的遺伝子の発現。(a)miR−19発現は、ノッチ1のみと比較してノッチ1およびmiR−19で形質導入したHPC由来のT−ALLで増加する。(b)いくつかの標的遺伝子のmRNA発現は、ノッチ1のみと比較してノッチ1およびmiR−19によって駆動されるマウスT−ALLで減少する(*p<0.05;**p<0.1;***p>0.1)。
【図14】miR−19による3’非翻訳領域(3’UTR)抑制についてのレポーターアッセイ。表示の遺伝子の3’UTRを二重ルシフェラーゼレポーター構築物(pSiCheck2)にサブクローニングし、miR−19による3’UTRの阻害を、ウミシイタケルシフェラーゼ活性のホタルルシフェラーゼ活性に対する平均±SD比(RLuc/Luc)として示す。WTは野生型3’UTRを示す。MはmiR−19結合部位が変異した3’UTRを示す。Ptenの場合、一方の部位(M1)または両方の部位(M1+M2)を変異させた(*は、有意な(p<0.05)変化を示す。**は、有意でない(p>0.05)変化を示す)。
【図15】miR−19は、AktおよびリボゾームS6リン酸化の活性化を誘導する。ベクターまたはmiR−19で形質導入し、IL3を12時間除去し、表示の抗体で探索したFL5−12細胞の免疫ブロット。
【図16】相補性実験−cDNA発現。miR−19/GFPおよび表示のcDNAまたは空のベクターまたはAMPキナーゼ活性を活性化するために1μΜメトホルミンで処置した空のベクターを同時発現する細胞の富化についてのFACSの結果のまとめ。IL3の存在下でのT0、Il3枯渇後の時点T1およびT2。標準誤差(SEM)を示す(全ての場合、p(T2対T0について)<0.05)。アポトーシス促進性BIMタンパク質の発現は、FL5−12細胞の細胞死を迅速に誘導した。他のcDNAやメトホルミン処置のいずれも、miR−19の防御機能を抑制しなかった。
【図17】shRNA構築物によってノックダウンされたタンパク質。(a)〜(g)表示のshRNA構築物または空のベクターで形質導入し、表示のタンパク質について探索した細胞の免疫ブロット。いずれの場合も、試験した少なくとも3つのshRNAの最も有効なshRNAを示す。
【図18】レトロウイルスshRNAライブラリーベクター。(a)shRNAライブラリースクリーニングで使用したMSCVベースのMRPレトロウイルスライブラリーベクターの図。検証実験においてこの構築物(MLP)のGFP発現バージョンを各検出のために使用したことに留意のこと。(b)p53を誘導するためにドキソルビシンで処置したか未処置であり、p53に対するshRNAを有するか持たない表示のベクター構築物で形質導入した初代線維芽細胞由来の溶解物の免疫ブロット。p53shRNAを発現するMRPベクターおよびMLPベクターの両方は、有効にタンパク質をノックダウンする。(c)シグナル/バックグラウンド比を決定するためのライブラリー中に存在するshRNA(ライブラリープローブ)またはネガティブコントロールのいずれかに適合する配列したハーフヘアピン由来のシグナル強度の比較。
【図19】T−ALLにおける発癌性miRNAの包括的研究。a.実験ストラテジーの略図。b.所与のサンプルにおける全ての発現したmiRNAの平均発現値(平均および標準偏差(SD))に正規化し、発現レベルによって順序付けた定量的RT−PCRによる50のT−ALLサンプルにわたる平均miRNA発現。最も豊富に発現された「上位10」のmiRNAを示した。c.数値的に順序付けたT−ALLの異なる細胞遺伝学的亜群におけるmiRNA発現(平均およびSD)。最も豊富なmiRNAを示した。
【図20】MiRNA発現分析。a.18種のヒトT−ALL細胞株におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(平均およびSD)。b.FACS選別した正常な細胞集団におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(サンプルあたり2レプリケートの平均およびSD)。c.全ヒトT−ALLサンプルにわたる平均値(L)と表示の正常細胞集団(N)を比較した差次的miRNA発現。正常サンプルまたは白血病サンプルのいずれかにおける倍率変化が5を超え、且つ検出可能に発現する(相対値>50)miRNAのみを示す。黒色の数値は白血病細胞におけるより高い発現を示し、赤色の数値は正常細胞におけるより高い発現を示す。
【図21】発癌性miRNAについてのプールライブラリースクリーニング。a.スクリーニングプロトコールの略図:一次スクリーニングによって、癌遺伝子誘導性アポトーシスのバイパスを選択し、二次スクリーニングによってIL−3の非存在下でのリンパ球増殖をスクリーニングする。b.一次スクリーニング:MEFにおけるc−MYC誘導性アポトーシスを示す顕微鏡写真(挿入図)および生存/接着細胞から取り出したmiRNA配列の比率(下)。簡潔に述べれば、DNAを単離し、組み込んだmiRNAをPCRによって増幅し、サブクローニングし、約100クローンを選別し、組み込んだmiRNAを配列決定した。c.二次スクリーニング:IL−3枯渇の際に二次miRNAライブラリーおよびGFPを発現するFL5−12細胞の富化(挿入図)およびIL−3枯渇後にFL5−12細胞から回収したmiRNA配列の比率(下)。d.スクリーニングの検証:IL−3枯渇前および枯渇後のmiRNA/GFP発現FL5−12細胞の平均倍率変化およびSD(3つの独立した実験の結果)。e.中間結果のまとめ:ヒトT−ALLにおいて10種の最高に発現したmiRNA(赤色円)、miRNAスクリーニングにおける有効な「ヒット」(青色円)、およびT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子に結合するmiRNA(緑色円)。
【図22】候補miRNAはマウスT−ALLモデルにおいて癌遺伝子として作用する。a.ノッチ1駆動T−ALLの養子移入モデルの略図。b.ノッチ1−ICNおよびいずれかのベクター(黒色、n=13)、miR−19b(赤色、n=7)、miR−20a(橙色、n=4)、miR−26a(紫紅色、n=5)、miR−30(灰色、n=5)、miR−92(緑色、n=5)、またはmiR−223(青色、n=7)を発現するHPCの移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。c.ノッチ1誘導性T−ALLの代表的な顕微鏡写真。異なるmiRNAを発現する白血病の病理学的外観は同一である(示さず)。
【図23】候補miRNAはマウスT−ALLモデルにおいて癌遺伝子として作用する。a.ノッチ1−ICNおよびベクター(黒色、n=13)またはmiR−27(赤色、n=5;ベクターと比較してp<0.05)、miR−24(紫紅色、n=5;p=0.5)、miR−23a(緑色、n=5;p<0.05)、もしくはmiR−148a(青色、n=7;p<0.05)を発現するHPCの移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。b.表示のマーカーについてポジティブ染色された細胞の比率を用いたマウスT−ALL上の表面マーカー発現の分析。c.ベクターコントロールにおいて生じた白血病と比較した表示のmiRNAを発現するマウス白血病細胞におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定。
【図24】miRNAは、マウスT−ALLにおいて腫瘍抑制遺伝子の発現を調節する。a.表示の遺伝子の3’UTRに及ぼすmiRNAの影響を試験するルシフェラーゼレポーターアッセイ(三連の実験の平均およびSD)。V=ベクター、数値はmiRNA名を示す。*は、ベクターと比較した有意な(p<0.05)影響を示す。b.ノッチ1および表示のmiRNAを発現するマウスT−ALLにおける遺伝子発現の定量的RT−PCR測定。倍率変化対コントロールベクターを発現するT−ALLとして示した範囲および平均。*は有意性を示す(p<0.05)。c〜g.ノッチ1およびベクターまたは表示のmiRNAを発現し、表示の抗体で探索したマウスT−ALL由来の溶解物の免疫ブロット。
【図25】miRNAはマウスFL5−12細胞におけるいくつかの腫瘍抑制遺伝子の発現に影響を及ぼす。a〜d.空のベクターまたは表示のmiRNAのいずれかを発現するGFP選別したFL5−12細胞の溶解物を、表示のタンパク質について探索した。
【図26】shRNAによってノックダウンされたタンパク質。a〜c.空のベクターまたは表示のshRNAのいずれかを発現するGFP選別したFL5−12細胞の溶解物を、表示のタンパク質について探索した。
【図27】T−ALL抑制遺伝子に及ぼす個別および協同的なmiRNAの影響。a.HPC移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。HPCは全てノッチ1−ICNおよびベクター(黒色、n=13)またはshNFl(赤色、n=6)、shBCL2L11(橙色、n=6)、shPTEN(紫紅色、n=3)、shFBWX7(緑色、n=4)、dn−Ikzf1(青色、n=10)、もしくはshPHF6(紫色、n=3)を発現する。b.表示のアンタゴミアを発現するT−ALL1細胞のin vitro培養中の細胞数(各時点についての平均およびSD;d6時点*および6d期**にわたる有意差(p<0.05)を示す)およびT−ALL1細胞におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(挿入図)。c.表示のアンタゴミアで形質導入したT−ALL1細胞の生存度(平均およびSD、*p<0.05)。dおよびe.表示のアンタゴミアを発現するT−ALL1細胞におけるBCL2L11(d)およびPTEN(e)mRNAレベルの定量的RT−PCR(平均およびSD、*ベクターと比較してp<0.05)。fおよびg.表示のmiRNAで形質導入した細胞におけるBCL2L11(f)およびPTEN(g)の3’UTRルシフェラーゼレポーターアッセイ(平均およびSD、*三連の測定においてp<0.05)。h.本研究で同定したmiRNAによる6つの腫瘍抑制遺伝子の重複調節の図表によるまとめ:太字はヒトT−ALLで高発現するmiRNAを示す。各線の幅は、miRNA−mRNA相互作用の強度および保存の計算値に比例する。
【図28】ヒトKoptk1 T−ALL細胞株におけるアンタゴミア研究。a.表示のアンタゴミアを発現するKoptk1細胞のin vitro培養中の細胞数(各時点についての平均およびSD。*は有意な(p<0.05)成長遅延を示す)。bおよびc.表示のアンタゴミアを発現するKoptk1細胞におけるBCL2L11(b)およびPTEN(c)のmRNAレベルの定量的RT−PCR(平均およびSD。*はベクターと比較してp<0.05である)。
【図29】miR−223に対するアンタゴミアはT−ALL細胞株において抗増殖効果を示す。競合アッセイの結果。T−ALL株(Koptk1、T−ALL1、およびJurkat)を、miR−223アンタゴミアおよびGFPをコードするレンチウイルス構築物で形質導入した。GFPの発現を、48時間毎にFACSによって評価した。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
本発明によれば、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用することができる。かかる技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrookら、,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(1989);“Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I−III [Ausubel,R.M.,ed.(1994)];“Cell Biology:A Laboratory Handbook” Volumes I−III [J.E.Celis,ed.(1994))];“Current Protocols in Immunology” Volumes I−III [Coligan,J.E.,ed.(1994)];“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait ed.1984);“Nucleic Acid Hybridization” [B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)];“Transcription And Translation” [B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)];“Animal Cell Culture” [R.I.Freshney,ed.(1986)];“Immobilized Cells And Enzymes” [IRL Press,(1986)];B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”(1984)を参照のこと。
【0039】
したがって、本明細書中に出現する場合、以下の用語は、以下に記載の定義を有するものとする。
【0040】
用語「miRNA」、「miR」、「マイクロRNA」、「miRNA標的」、および具体的に列挙していない任意のバリアントを、本明細書中で交換可能に使用することができ、本出願および特許請求の範囲を通して使用されるように、核酸材料(リボ核酸、RNA(単一または複数のRNAが含まれる)が含まれる)をいい、miRNA(miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNA、ならびに本明細書中に記載され、且つ表1に示す核酸配列データ(配列番号1〜10)および本明細書中および特許請求の範囲に記載の活性プロフィールを有するmiRNAが含まれる)に及ぶ。したがって、実質的に等価な活性または変化した活性を示す配列も同様に意図する。これらの修飾は、意図的であり得るか(例えば、部位特異的変異誘発によって得た修飾など)、偶発的であり得る(宿主またはそのバリアントの変異によって得た修飾など)。また、用語「miRNA」、「miR」、「マイクロRNA」、および「miRNA標的」は、本明細書中に具体的に引用した核酸ならびに全ての実質的に類似のアナログおよび対立遺伝子バリエーションをその範囲内に含むことを意図する。
【0041】
用語「オリゴヌクレオチド」、「アンチセンス」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「アンタゴミア」、「miRNAアンタゴミア」、および具体的に列挙していない任意のバリアントを、本明細書中で交換可能に使用することができ、本出願および特許請求の範囲を通して使用されるように、核酸材料(単一または複数の核酸が含まれる)をいい、本明細書中に記載のmiRNA核酸配列(表1に記載のものが含まれる)に相補的なオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアおよび表2の相補配列、および本明細書中および特許請求の範囲に記載の活性プロフィール(特に、1つ以上のそのmiRNAの発現の阻害、特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの阻害が可能なこと)を有するものに及ぶ。特に、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号11〜15に提供するmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAまたはその一部に特異的な核酸配列に実質的に相補的であり得る(例えば、表2に提供)。したがって、実質的に等価であるか変化した活性を示す核酸またはそのアナログも同様に意図する。これらの修飾は、意図的であり得るか(例えば、部位特異的変異誘発によって得た修飾など)、偶発的であり得る(核酸またはアンタゴミア/オリゴヌクレオチドの産生者である宿主中でバリアントとしてか変異によって得た修飾など)。本発明のアンタゴニストの言及において本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」を、2つ以上、好ましくは3つを超えるリボヌクレオチドから構成される分子と定義する。その正確なサイズは、多数の要因、同様に、オリゴヌクレオチドの根本的な機能および使用に依存するであろう。
【0042】
用語「薬剤」は、任意の分子(ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、化学化合物、および小分子が含まれる)を意味する。特に、用語「薬剤」には、化合物(試験化合物または薬物候補化合物など)が含まれる。
【0043】
用語「アゴニスト」は、その最も広い意味でリガンドが結合する受容体を刺激するリガンドをいう。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「アンタゴニスト」を、受容体への結合の際に生物学的応答自体を誘発しないが、アゴニスト媒介性応答を遮断または弱める化合物を説明するために使用する。
【0045】
用語「アッセイ」は、化合物の特異的性質を測定するために使用される任意の過程を意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物の収集物に由来するその活性に基づいて化合物を特徴づけるか選択するために使用される過程を意味する。
【0046】
用語「結合親和性」は、非共有結合性の関係において2つ以上の化合物がどの程度強く相互に結合するのかを説明する性質である。結合親和性を、定性的に(「強い」、「弱い」、「高い」、「低い」など)または定量的に(KDの測定など)特徴づけることができる。
【0047】
用語「キャリア」は、薬学的組成物を中間の(medium)、嵩高い、および/または有用な形態にする薬学的組成物の処方で使用される無毒の材料を意味する。キャリアは、1つ以上のかかる材料(賦形剤、安定剤、または水性pH緩衝化溶液など)を含むことができる。生理学的に許容され得るキャリアの例には、水性または固体の緩衝液成分(リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸が含まれる);抗酸化剤(アスコルビン酸が含まれる);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる);キレート剤(EDTAなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);および/または非イオン性界面活性剤(ツウィーン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびプルロニック(登録商標)など)が含まれる。
【0048】
用語「複合体」は、2つ以上の化合物が相互に結合、接触、または会合する場合に作製される実体を意味する。
【0049】
用語「化合物」を、本明細書中で、本発明のアッセイに関連して記載される「試験化合物」または「薬物候補化合物」の文脈で使用する。そのようなものとして、これらの化合物は、合成、組換え、または天然供給源から誘導される有機化合物または無機化合物を含む。
【0050】
用語「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列と実質的に類似するが、必ずしも同一ではない活性を示すひと続きの連続する核酸残基を含むオリゴヌクレオチドに関する。特定の態様では、「フラグメント」は、完全な配列の核酸配列の少なくとも5核酸残基(好ましくは、少なくとも10核酸残基、少なくとも15核酸残基、少なくとも20核酸残基、少なくとも25核酸残基、少なくとも40核酸残基、少なくとも50核酸残基、少なくとも60核酸(nucleic)残基、少なくとも70核酸残基、少なくとも80核酸残基、少なくとも90核酸残基、少なくとも100核酸残基、少なくとも125核酸残基、少なくとも150核酸残基、少なくとも175核酸残基、少なくとも200核酸残基、または少なくとも250核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドをいうことができる。
【0051】
用語「ポリペプチドのフラグメント」は、完全な配列と機能活性または発現活性が実質的に類似するが、必ずしも同一ではないひと続きの連続するアミノ酸残基を含むペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、単量体、サブユニット、および酵素に関する。特定の態様では、「フラグメント」は、完全な配列のアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸(amino)残基、少なくとも70アミノ酸残基、少なくとも80アミノ酸残基、少なくとも90アミノ酸残基、少なくとも100アミノ酸残基、少なくとも125アミノ酸残基、少なくとも150アミノ酸残基、少なくとも175アミノ酸残基、少なくとも200アミノ酸残基、または少なくとも250アミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドをいうことができる。
【0052】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖形態且つセンス方向またはアンチセンス方向のポリ核酸、ストリンジェントな条件下で特定のポリ核酸とハイブリッド形成する相補ポリ核酸、およびその塩基対の少なくとも約60%が相同であり、より具体的にはその塩基対の70%、最も具体的には90%、特定の実施形態では、その塩基対の100%が共通するポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドには、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、およびその合成アナログが含まれる。修飾骨格を有する核酸(ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、および2’−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオアートなど)も含まれる。ポリヌクレオチドを、約10〜約5000塩基、詳細には約100〜約4000塩基、より詳細には約250〜約2500塩基の範囲の種々の長さの配列によって記載する。1つのポリヌクレオチド実施形態は、約10〜約30塩基長を含む。ポリヌクレオチドの特定の実施形態は、約17〜約22ヌクレオチドのポリリボヌクレオチドであり、より一般的には、低分子干渉RNA(siRNA−二本鎖siRNA分子および自己相補的な一本鎖siRNA分子(shRNA)の両方)と記載される。別の特定の実施形態は、修飾骨格を有する核酸(ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、および2’−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオアートなど)、天然に存在しない核酸残基を含むもの、1つ以上の核酸置換物(メチル−、チオ−、スルフェート、ベンゾイル−、フェニル−、アミノ−、プロピル−、クロロ−、およびメタノカルバヌクレオシドなど)、またはその検出を容易にするためのレポーター分子である。本明細書中のポリヌクレオチドを、特定の標的DNA配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。これは、ポリヌクレオチドがその各鎖とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならないということを意味する。したがって、ポリヌクレオチド配列は、標的配列の配列を正確に反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントを、ポリヌクレオチドの5’末端に付着させることができ、残りのポリヌクレオチド配列は鎖に相補的である。あるいは、ポリヌクレオチド配列がストリンジェントな条件下でハイブリッド形成か伸長産物の合成のためのテンプレートを形成するのに十分な鎖の配列との相補性を有することを条件として、非相補的塩基またはより長い配列をポリヌクレオチド内に分散させることができる。
【0053】
用語「癌」は、血液、皮膚、または身体の器官中の悪性または良性の細胞成長(例えば、血液学的悪性疾患、乳房、前立腺、肺、胃腸管、肝臓、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、腎臓、膵臓、胃、または腸であるが、これらに限定されない)をいう。癌は、隣接組織に浸潤し、遠隔器官(例えば、骨、肝臓、肺、または脳)に拡大する(転移する)傾向がある。本明細書中で使用する場合、用語「癌」には、転移性腫瘍細胞型(黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、および肥満細胞腫などであるが、これらに限定されない)および組織癌腫型(結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎癌、胃癌、膠芽細胞腫、原発性肝臓癌、卵巣癌、前立腺癌などであるが、これらに限定されない)の両方が含まれる。
【0054】
「レプリコン」は、in vivoでの自律性DNA複製単位として機能する(すなわち、それ自体の調節下で複製することができる)任意の遺伝的構成要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0055】
「ベクター」は、付着したセグメントが複製するように別のDNAセグメントを付着させることができるレプリコン(プラスミド、ファージ、またはコスミドなど)である。
【0056】
「DNA分子」は、その一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の多量体形態をいう。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみをいい、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語には、とりわけ線状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体で見い出される二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造を考察するなかで、配列を、本明細書中で、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’→3’方向の配列のみを与える通常の慣習にしたがって記載することができる。
【0057】
「複製起点」は、DNA合成に関与するDNA配列をいう。
【0058】
DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下においた場合にin vivoで転写されてポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって画定される。コード配列には、原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に存在するであろう。
【0059】
転写調節配列および翻訳調節配列は、宿主細胞中のコード配列を発現させるDNA調節配列(プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、およびターミネーターなど)である。
【0060】
発現調節配列がDNA配列の転写および翻訳を調節および制御する場合、そのDNA配列は発現調節配列に「作動可能に連結」される。用語「作動可能に連結された」には、発現すべきDNA配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有することならびに発現調節配列の調節下でのDNA配列の発現およびDNA配列によってコードされる所望の産物の産生が可能なように正しい読み取り枠を維持することが含まれる。組換えDNA分子に挿入することが望まれる遺伝子が適切な開始シグナルを含まない場合、かかる開始シグナルをその遺伝子の前に挿入することができる。
【0061】
用語「標準的なハイブリッド形成条件」は、ハイブリッド形成および洗浄の両方について5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩および温度の条件をいう。しかし、当業者は、かかる「標準的なハイブリッド形成条件」が特定の条件(緩衝液中のナトリウムおよびマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列の長さおよび濃度、ミスマッチ率、およびホルムアミドの比率などが含まれる)に依存することを認識するであろう。ハイブリッド形成する2つの配列がRNA−RNA、DNA−DNA、またはRNA−DNAのいずれであるかどうかも「標準的なハイブリッド形成条件」の決定に重要である。かかる標準的なハイブリッド形成条件は、周知の式にしたがって当業者によって容易に決定され、所望される場合、ハイブリッド形成は、より高いストリンジェンシーの洗浄での予想されるか決定されたTmより典型的には10〜20NC低い。
【0062】
「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することができるDNA制御領域である。本発明を定義するために、プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位と接し、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含めるために上流(5’方向)に伸長する。プロモーター配列内に転写開始部位(ヌクレアーゼS1でのマッピングによって都合良く定義される)およびRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見い出されるであろう。真核生物プロモーターは、しばしば、しかし常にではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含むであろう。原核生物プロモーターは、−10および−35コンセンサス配列に加えて、シャイン・ダルガルノ配列を含む。
【0063】
「発現調節配列」は、別のDNA配列の転写および翻訳を調節および制御するDNA配列である。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、次いでコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合、細胞中の転写調節配列および翻訳調節配列の「調節下に」ある。
【0064】
「シグナル配列」をコード配列の前に含めることができる。この配列は、ポリペプチドのN末端側に存在し、ポリペプチドを細胞表面に誘導するかポリペプチドを培地に分泌するように宿主細胞に伝達するシグナルペプチドをコードし、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって切り取られる。原核生物および真核生物由来の種々のタンパク質に会合したシグナル配列が見い出され得る。
【0065】
用語「プライマー」は、本明細書中で使用する場合、精製された制限消化物のように天然に存在するか合成で産生されるかに関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドおよび誘発剤(DNAポリメラーゼなど)の存在下および適切な温度およびpH)におかれた場合に合成開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは、一本鎖または二本鎖であってよく、誘発剤の存在下で所望の伸長産物の合成を刺激するのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、多数の要因(温度、プライマー供給源、および方法の使用が含まれる)に依存するであろう。例えば、診断への適用のために、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは、より少数のヌクレオチドを含むことができるが、典型的には、15〜25またはそれを超えるヌクレオチドを含む。
【0066】
本明細書中のプライマーを、特定の標的DNA配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。これは、プライマーがその各鎖とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は、正確なテンプレートの配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントを、プライマーの5’末端に付着させることができ、残りのプライマー配列は鎖に相補的である。あるいは、プライマー配列が、ハイブリッド形成し、それにより、伸長産物の合成用のテンプレートを形成するのに十分な鎖の配列との相補性を有することを条件として、非相補的塩基またはより長い配列をプライマー内に分散させることができる。
【0067】
本明細書中で使用する場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は細菌酵素をいい、その各酵素は特異的ヌクレオチド配列またはその付近で二本鎖DNAを切断する。
【0068】
DNAが細胞内に導入された場合、細胞は、外因性または異種のDNAによって「形質転換」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれ(共有結合して)ても組み込まれなくてもよい。原核生物、酵母、および哺乳動物細胞では、例えば、形質転換DNAを、エピソームエレメント(プラスミドなど)上に維持することができる。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、娘細胞によって染色体複製を介して遺伝するように形質転換DNAが染色体に組み込まれるようになった細胞である。この安定性は、真核細胞が形質転換DNAを含む娘細胞集団から構成される細胞株またはクローンを樹立する能力によって証明される。「クローン」は、単一の細胞または有糸分裂による共通祖先に由来する細胞集団である。「細胞株」は、多世代にわたってin vitroで安定に成長することができる初代細胞のクローンである。
【0069】
少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)のヌクレオチドがDNA配列の定義した長さにわたって一致する場合、2つのDNA配列は、「実質的に相同」である。実質的に相同な配列を、配列データバンクで利用可能な標準的ソフトウェアを使用した配列の比較によるか、例えば、特定の系について定義したストリンジェントな条件下でのサザンハイブリッド形成実験で同定することができる。適切なハイブリッド形成条件の定義は当業者の範囲内である。例えば、Maniatisら、.,前出;DNA Cloning,Vols.I & II,前出;Nucleic Acid Hybridization,前出を参照のこと。
【0070】
本明細書中に記載のアミノ酸残基は、「L」異性体であることが好ましい。しかし、免疫グロブリン結合の所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、「D」異性体での残基を任意のL−アミノ酸残基の代わりに使用することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基をいう。標準的なポリペプチド命名法(J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969))を順守して、アミノ酸残基の略称を、以下の対応表中に示す。
【0071】
【表1】
全アミノ酸残基配列を、本明細書中でその左方向および右方向がアミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向である式によって示すことに留意すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の始まりおよび終りのダッシュが1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合を示すことに留意すべきである。本明細書中に交互に出現し得る三文字表記および一文字表記を相関させるために上記の表を示す。
【0072】
特定のコドンが異なるアミノ酸をコードするコドンに変更されるように、変異を、これに関する配列においてなすことができる。かかる変異を、一般に、可能な限りヌクレオチドの変化を少数にして作製する。非保存的様式(すなわち、特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸群に属するアミノ酸から別の群に属するアミノ酸へのコドンの変化による)または保存的様式(すなわち、特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸群に属するアミノ酸から同一の群に属するアミノ酸へのコドンの変化による)で得られたタンパク質中のアミノ酸を変化させるようにこの種の置換変異を行うことができる。かかる保存的変化により、一般に、得られたタンパク質の構造および機能があまり変化しない。非保存的変化は、得られたタンパク質の構造、活性、または機能が変化する可能性がより高い。本発明には得られたタンパク質の活性または結合特性が有意に変化しない保存的変化を含む配列が含まれると見なすべきである。
【0073】
以下は、種々のアミノ酸群の例である:
非極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン
非荷電極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン
荷電極性R基を有するアミノ酸(Ph6.0で負に荷電):アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0で)。別の群は、フェニル基を有するアミノ酸であり得る:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
別の群は、分子量(すなわち、R基のサイズ)に従い得る:
グリシン(75)、アラニン(89)、セリン(105)、プロリン(115)、バリン(117)、トレオニン(119)、システイン(121)、ロイシン(131)、イソロイシン(131)、アスパラギン(132)、アスパラギン酸(133)、グルタミン(146)、リジン(146)、グルタミン酸(147)、メチオニン(149)、ヒスチジン(pH6.0で)(155)、フェニルアラニン(165)、アルギニン(174)、チロシン(181)、トリプトファン(204)。特に好ましい置換は以下である:正電荷を保持することができるようなLysへのArgの置換またはその逆;負電荷を保持することができるようなGluへのAspの置換またはその逆;遊離−OHを保持することができるようなSerへのThrの置換;遊離NH2を保持することができるようなGinへのAsnの置換。
【0074】
特定の好ましい特性を有するアミノ酸に置換するためにアミノ酸置換を導入することもできる。例えば、Cysを、別のCysとのジスルフィド架橋のための潜在的部位として導入することができる。Hisを、特定の「触媒」部位として導入することができる(すなわち、Hisは酸または塩基として作用することができ、生化学的触媒において最も一般的なアミノ酸である)。タンパク質構造中に−ターンを誘導するその特定の平面構造のために、Proを導入することができる。
【0075】
少なくとも約70%のアミノ酸残基(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)が同一であるか保存的置換を示す場合、2つのアミノ酸配列は「実質的に相同」である。
【0076】
DNA構築物の「異種」領域は、本来はより大きな分子と関連して見出されないより大きなDNA分子内の同定可能なDNAセグメントである。したがって、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、遺伝子は、通常、供給元の生物のゲノム中の哺乳動物ゲノムDNAに隣接しないDNAに隣接するであろう。異種コード配列の別の例は、本来はコード配列自体が見出されない構築物である(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含むcDNAまたは未変性遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子変異または天然に存在する変異事象は、本明細書中に定義のDNAの異種領域を生じない。
【0077】
「抗体」は、特異的エピトープに結合する任意の免疫グロブリン(抗体およびそのフラグメントが含まれる)である。本用語はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびキメラ抗体を含み、最後のものは米国特許第4,816,397号および同第4,816,567号にさらに詳述されている。例示的な抗体分子は、インタクトな免疫グロブリン分子、実質的にインタクトな免疫グロブリン分子、およびパラトープを含む免疫グロブリン分子の一部(当該分野でFab、Fab’、F(ab’)2、およびF(v)として公知の部分(この部分は本明細書中に記載の治療方法での使用に好ましい)が含まれる)である。抗体分子のFabおよびF(ab’)2部分を、周知の方法による実質的にインタクトな抗体分子に対するパパインおよびペプシンの各タンパク質分解反応によって調製する。例えば、Theofilopolousら、の米国特許第4,342,566号を参照のこと。Fab’抗体分子部分も周知であり、F(ab’)2部分から産生され、その後に2つの重鎖部分を連結しているジスルフィド結合をメルカプトエタノールで還元し、その後に得られたタンパク質メルカプタンをヨードアセトアミドなどの試薬でアルキル化する。インタクトな抗体分子を含む抗体が本明細書中で好ましい。
【0078】
「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する重鎖および軽鎖の可変領域および超可変領域から構成される抗体分子の構造部分である。本明細書中で使用されるその種々の文法上の形態における句「抗体分子」は、インタクトな免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の両方を意図する。その種々の文法上の形態における句「モノクローナル抗体」は、特定の抗原と免疫反応することができるたった1種の抗体結合部位を有する抗体をいう。したがって、モノクローナル抗体は、典型的には、免疫反応する任意の抗原に対して単一の結合親和性を示す。したがって、モノクローナル抗体は、それぞれが異なる抗原に対して免疫特異性を示す複数の抗体結合部位を有する抗体分子を含むことができる(例えば、二重特異性(キメラ)モノクローナル抗体)。
【0079】
用語「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」は、疾患を引き起こす作用物質に曝露され得るか、疾患発症前に疾患への素因を有し得る被験体における疾患または障害の獲得または発症のリスクの軽減(すなわち、疾患の少なくとも1つの臨床症状を発症させない)をいう。
【0080】
用語「予防法(prophylaxis)」は、用語「予防」に関連するか含まれ、その目的が疾患を処置または治癒させることよりもむしろ予防することである措置または手順をいう。予防措置の非限定的な例には、ワクチンの投与、例えば、不動に起因する血栓症リスクのある入院患者への低分子量ヘパリンの投与、およびマラリアが風土病であるか、マラリア接触リスクが高い地理的領域を訪問する前の抗マラリア薬(クロロキンなど)の投与が含まれ得る。
【0081】
「治療有効量」は、医師または他の臨床医によって探求されている被験体の生物学的または医学的な応答を誘発する薬物、化合物、抗菌薬、抗体、または医薬品の量を意味する。特に、グラム陽性菌感染およびグラム陽性菌の成長に関して、用語「有効量」には、グラム陽性菌の感染量または感染範囲を生物学的に有意義に減少させる(殺菌効果および/または静菌効果が含まれる)のに有効な化合物または薬剤の量が含まれることを意図する。句「治療有効量」を、本明細書中で、伝染性細菌の成長もしくは量またはその存在および活性に伴い得る他の病理学的特徴(例えば、発熱または白血球数など)の臨床的に有意な変化を予防するか、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%軽減させるのに十分な量を意味するために使用する。
【0082】
任意の疾患または感染の、用語「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、1つの実施形態では、疾患または感染の改善(すなわち、感染性因子または細菌の疾患または成長の停止、または少なくとも1つのその臨床症状の発現、範囲、または重症度の軽減)をいう。別の実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、被験体によって識別可能でないかもしれない少なくとも1つの身体的パラメーターの改善をいう。さらに別の実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、疾患または感染の物理的(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメーターの安定化)、またはその両方の調整をいう。さらなる実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、疾患の進行の遅延または感染の軽減に関する。
【0083】
句「薬学的に許容され得る」は、ヒトに投与した場合に生理学的に容認され、且つ典型的にはアレルギー反応や類似の有害反応(胃の不調および眩暈など)を起こさない分子的実体および組成物をいう。
【0084】
その第1の態様では、本発明は、発癌および白血病誘発に関連するmiRNAの同定ならびに癌の管理および処置におけるその調整またはモニタリングに関する。したがって、本発明は、本明細書中に開示のmiRNA標的(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223のうちの1つ以上(以下の表1に記載のものなどが含まれる)が含まれる)の発現および/または活性を阻害する薬剤が癌の進行を阻害し(動物モデルにおける白血病誘発の予防が含まれる)、腫瘍抑制遺伝子(特に、腫瘍抑制遺伝子Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、および/またはFbzw7)に及ぼすmiRNA標的の阻害効果を抑制することができるという発見に基づく。したがって、本発明は、癌または発癌(ongogenesis)に関与するか関連するmiRNA標的、miRNA標的の活性または発現を阻害することができる薬剤のスクリーニング方法、およびmiRNA標的発現の上昇に関連する癌および疾患(miR17〜92転座に関連する癌、血液癌、乳癌、膠芽細胞腫、および黒色腫など)の予防および/または処置におけるこれらの薬剤の使用を提供する。
【0085】
【表2】
本発明は、特に発癌または白血病誘発に関連する1つ以上のmiRNA(組み合わせが含まれる)(miR19、miR20、miR26、miR92、miR148、およびmiR223から選択されるmiRNA(上の表に記載のものが含まれる)など)の発現および/または活性の特異的阻害のための方法および組成物に関する。一定のmiRが実質的に等価な重複する活性および配列を有する(例えば、miR19はmiR19aおよびmiR19bの各々および両方を含むことができること、miR20はmiR20aおよびmiR20bの各々および両方を含むことができることなど)ことに注目すべきである。特に、本発明は、miRNA標的の特異的阻害のための遺伝学的アプローチおよび核酸を提供する。1つ以上のmiRNA標的の特異的阻害の際に発癌/白血病誘発経路が破壊され、特に、白血病誘発、白血病細胞増殖が阻害されるか遮断されることを本明細書中で証明している。特に、アンタゴミア、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および1つ以上のmiRNA標的に相補的な核酸の発現が1つ以上のmiRNA標的の発現または活性を特異的に阻害し、miR媒介性腫瘍発生を遮断する。
【0086】
アンタゴミア
本発明は、1つ以上のmiRNA標的(特に、miR19b、miR26a、miR26、miR92、miR148、およびmiR223から選択されるmiRNA)に実質的に相補的なアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、核酸を提供する。前述のオリゴヌクレオチドは1つ以上のmiRNA標的の発現または活性を阻害する。例示的なアンタゴミアを以下の表2に提供する。以下の例示的な配列を使用し、本明細書中に提供した実施例中でその活性を証明した。
【0087】
【表3】
上記の例示的アンタゴミアは、System Biosciences(Mountain View,CA;systembio.com)からmiRZIPs(商標)として市販されている。
【0088】
Stoffelらは、2005年に「アンタゴミア」を使用したin vivoでのmiRNAのサイレンシングを最初に記載した(Krutzfeldt Jら、(2005)Nature 438(7068):685−689)。特異的miRNAに対するアンタゴミアの静脈内投与により、特異的器官における対応するmiRNAレベルが顕著に減少した。特異的miRNAに相補的な化学修飾された一本鎖RNAアナログは、アンタゴミアとして有効である。オリゴヌクレオチドは、コレステロール分子と連結して標的の取り込みを増強して標的分解を改善し、ホスホロチオアート修飾を有することが記載されている(Krutzfeld Jら、(2007)Nucl Adids Res 35(9):2885−2892)。短縮および修飾したオリゴヌクレオチドアンタゴミアの薬学的組成物が記載されている(US2010/0286234号およびWO2010/144485A1号が含まれる)。Scherrらは、miRNA機能の特異的阻害のためのレンチウイルス媒介性アンタゴミア発現系を記載している(Scherr Mら、(2007)Nucl Acids Res 35(22):el49(doi:10.1093/nar/qkm971)。レンチウイルスアンタゴミアは市販されている(System BiosciencesのmiRZIPs(商標)およびDharmacon/ThermoScientificのmicroRNA mimics meridianが含まれる)。miRNA配列(mirBaseなどのデータベースから公的に入手可能な配列が含まれる)の知識ならびにアンタゴミア、レンチウイルス構築物、および合成オリゴヌクレオチドの商業的および公的利用可能性により、試験、判定、および評価のために利用可能な例示的なmiRNA標的インヒビターとしてアンタゴミア/オリゴヌクレオチドが作製される。したがって、当業者は、本発明の使用および適用に適切なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを容易にデザイン、作製、または獲得することができる。
【0089】
本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される本明細書中に提供したmiRNA配列のうちの少なくとも1つに実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。アンタゴニストまたはアンタゴミアは、表1に記載のmiRNA標的配列に実質的に相補的であり得る。特に、本発明のアンタゴミア、アンタゴニスト、またはオリゴヌクレオチドには、表1に記載の配列番号1〜10の群から選択されるヌクレオチドまたはmiRNA配列である配列番号1〜10のうちの1つ以上の発現または活性を阻害するのに十分なそのヌクレオチドのサブセットに実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明は、表2に記載されるか配列番号11〜15に記載の配列群から選択される1つ以上の配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。
【0090】
1つ以上の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むことができる。特定の態様では、本発明のアンタゴミア、核酸、およびオリゴヌクレオチドを、核酸の化学的骨格の操作または他の部分の共有結合または非共有結合のいずれかによって修飾することができる。それぞれまたは任意の場合、かかる操作または結合は、安定性、細胞、組織、または器官の取り込みを改変するか、そうでなければ核酸およびオリゴヌクレオチドの有効性を増強するために役立ち得る。本発明のさらなる態様では、アンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、取り込み、安定性を増強するかオリゴヌクレオチドをターゲティングするのに役立ち得る他の分子(ポリペプチド、炭水化物、脂質、または脂質様部分、リガンド、化学物質、または化合物が含まれるが、これらに限定されない)に共有結合することができる。本発明のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを、混合または非共有結合もしくは共有結合によって他の標的に指向するオリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。
【0091】
当業者は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNA標的の阻害で有効な核酸およびオリゴヌクレオチドの選択過程を容易にするか簡潔にするためのいくつかのストラテジーのうちのいずれかを容易に使用することができる。オリゴヌクレオチドとmRNA分子中の相補配列との間の結合エネルギーの予想または熱力学的指標の計算を使用することができる(Chiangら、.(1991)J.Biol.Chem.266:18162−18171;Stullら、.(1992)Nucl.Acids Res.20:3501−3508)。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、二次構造に基づいて選択することができる(Wickstromら、(1991)in Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS,Wickstrom,ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,pp.7−24;Limaら、.(1992)Biochem.31:12055−12061)。Schmidt and Thompson(米国特許第6416,951号)は、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させる工程および挿入色素の存在下でのハイブリッド形成または標識の組み込みおよび非標識オリゴヌクレオチドの存在下での色素の分光学的特性または標識のシグナルの測定によってハイブリッド形成の動態をリアルタイムで測定する工程を含む、機能的アンチセンス薬の同定方法を記載している。さらに、当業者によって認識される種々の基準(例えば、自己相補性が存在しないこと、ヘアピンループが存在しないこと、安定なホモ二量体および二重鎖が形成されないこと(安定を予想されるエネルギー(kcal/mol)によって評価する)が含まれる)を使用して適切なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列またはアンタゴミア配列またはアンチセンス標的を予想する種々のコンピュータプログラムのいずれかを使用することができる。かかるコンピュータプログラムの例を容易に使用することができ、これらは当業者に公知であり、OLIGO4またはOLIGO6プログラム(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)およびOligoTechプログラム(Oligo Therapeutics Inc.,Wilsonville,OR)が含まれる。
【0092】
さらに、本発明で適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ハイブリッド形成条件下でのオリゴヌクレオチドライブラリーまたは核酸分子のライブラリーのスクリーニングおよび標的RNAまたは核酸とハイブリッド形成するものの選択によって同定することができる(例えば、米国特許第6,500,615号を参照のこと)。Mishra and Toulmeは、標的に結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅に基づいた選択手順も開発していた(Mishraら、(1994)Life Sciences 3 17:977−982)。オリゴヌクレオチドを、RNアーゼHによる標的RNAの切断を媒介する能力、切断フラグメントの選択および特徴付けによって選択することもできる(Hoら、(1996)Nucl Acids Res 24:1901−1907;Hoら、(1998)Nature Biotechnology 16:59−630)。RNA分子のGGGAモチーフに対するオリゴヌクレオチドの生成およびそれへのオリゴヌクレオチドのターゲティングも記載されている(米国特許第6,277,981号)。
【0093】
miRNA標的発現の阻害を、当該分野において日常的な方法(例えば、当業者に周知の(例えば、腫瘍抑制遺伝子配列の)RT−PCR分析、RNA発現のノーザンブロットアッセイ、またはタンパク質発現のウェスタンブロットアッセイによる)で測定することができる。細胞増殖または腫瘍細胞成長に及ぼす影響を、当業者に周知の方法(本願の実施例で教示した方法が含まれる)によってin vitroまたはin vivo、細胞、腫瘍、または動物のモデル系で測定することもできる。同様に、miRNA標的活性(特に腫瘍抑制遺伝子発現活性)の阻害を測定することができる。
【0094】
「実質的に相補的な」を、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドまたは核酸との間で安定且つ特異的な結合が起こるのに十分な程度の相補性を示すために使用する。オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリッド形成可能であるべきその標的核酸配列と100%相補的である必要はないと理解される。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの標的への結合が標的分子の通常の機能を妨害して有用性または発現を喪失させる場合に特異的にハイブリッド形成可能であり、in vivoアッセイまたは治療上の処置の場合の生理学的条件下またはin vitroアッセイの場合のアッセイの実施条件下でオリゴヌクレオチドの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する。
【0095】
本発明の文脈では、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)の結合からなるヌクレオチドモノマーまたはヌクレオシドモノマーのオリゴマーまたはポリマーをいう。オリゴヌクレオチドには、天然に存在しないモノマーまたは同様に機能するその一部を含むオリゴマーが含まれ、かかる修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの増強およびヌクレアーゼに対する安定性の増加により、未変性形態よりも好まれ得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、それぞれ少なくとも1つのヌクレオチドから作製される2つ以上の化学的に異なる領域(例えば、1つ以上の有利な性質(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増加、細胞取り込みの増加、RNA標的に対する結合親和性の増加)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域およびRNA:DNAハイブリッドまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素(例えば、RNアーゼH−RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼ)の基質である領域)を含むことができる。
【0096】
好ましい実施形態では、miRNA結合親和性が増大するように修飾されるオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアの領域は、糖の2’位が修飾された少なくとも1つのヌクレオチド、最も好ましくは2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、または2’−フルオロ修飾ヌクレオチドを含む。かかる修飾はオリゴヌクレオチドに日常的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ耐性が増強されるように修飾する。細胞は、核酸を分解することができる種々のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼを含む。多数のヌクレオチドおよびヌクレオシドの修飾は、ヌクレアーゼ消化に対して比較的より高い耐性が付与されることが示されている。少なくとも1つのホスホロチオアート修飾を含むオリゴヌクレオチドが現在より好まれている(Geary,R.S.ら、(1997)Anticancer Drug Des 12:383−93;Henry,S.P.ら、(1997)Anticancer Drug Des 12:395−408;Banerjee,D.(2001)Curr Opin Investig Drugs 2:574−80)。いくつかの場合、標的結合親和性を増強するオリゴヌクレオチド修飾はまた、独立して、ヌクレアーゼ耐性を増強することができる。
【0097】
本発明で想定されるいくつかの好ましいオリゴヌクレオチドの具体例には、修飾骨格(例えば、ホスホロチオアート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合、または短鎖ヘテロ原子または複素環の糖間結合)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドが最も好ましい。De Mesmaekerら、.(1995)Acc.Chem.Res.28:366−374)によって開示されたアミド骨格も好ましい。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい(Summerton and Weller,米国特許第5,034,506号)。他の好ましい実施形態(ペプチド核酸(PNA)骨格など)では、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格をポリアミド骨格に置換し、核酸塩基はポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接または間接的に結合する(Nielsenら、.,Science,1991 ,254,1497)。オリゴヌクレオチドはまた、1つ以上の置換された糖部分を含むことができる。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター(intercalator);オリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学的性質を改善するための基、および類似の性質を有する他の置換基。オリゴヌクレオチド上の他の位置(特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位)に類似の修飾を行うこともできる。
【0098】
オリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアはまた、塩基の修飾または置換を付加的または代替的に含むことができる。本明細書中で使用する場合、「未修飾」または「天然の」核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、天然の核酸で稀または一過性にしか見出されない核酸塩基(例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−meピリミジン(特に5−メチルシトシン(5−me−C))(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、およびゲントビオシルHMC)ならびに合成核酸塩基(2−アミノアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン(Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,1980,pp75−77;Gebeyehu,G.ら、1987,Nucl.Acids Res.15:4513)が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。当該分野で公知の「ユニバーサル」塩基(例えば、イノシン)を含めることができる。
【0099】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアの別の修飾は、オリゴヌクレオチドへのオリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する1つ以上の部分または結合体の化学結合を含む。かかる部分には、脂質部分(コレステロール部分、コレステリル部分(Letsingerら、.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553)、コール酸(Manoharanら、.(1994)Bioorg.Med.Chem.Let.4:1053)、チオエーテル(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール)(Manoharanら、.(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:306;Manoharanら、.(1993)Bioorg.Med.Chem.Let.3:2765)、チオコレステロール(Oberhauserら、.(1992)Nucl.Acids Res.20:533)、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)(Saison−Behmoarasら、.(1991)EMBO J.10:111;abanovら、.(1990)FEBS Lett.259:327;Svinarchukら、.(1993)Biochimie 75:49)、リン脂質、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、.(1995)Nucleosides & Nucleotides 14:969)など)が含まれるが、これらに限定されない。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよびかかるオリゴヌクレオチドの調製方法は当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,138,045号、同第5,218,105号、および同第5,459,255号)。Farrel and Kloster(米国特許第6,310,047号)は、高親和性DNA結合多核白金化合物を使用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達およびin vivoヌクレアーゼ耐性の増強を記載している。所与のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミア中の全ての位置が均一に修飾される必要はなく、1つを超える上記修飾を、単一のオリゴヌクレオチド中に組み込むことができるか、オリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドでさえも組み込むことができる。
【0100】
本発明のオリゴヌクレオチドおよびアンタゴミアは、好ましくは、約8〜約50ヌクレオチド長である。特に好ましいオリゴヌクレオチドは10〜30ヌクレオチド長であり、15〜25ヌクレオチドが特に好ましい。本発明の文脈では、これは8〜50単量体を有する前述の天然に存在しないオリゴマーを含むと理解される。
【0101】
本発明で使用されるオリゴヌクレオチドを、周知の固相合成技術によって簡便かつ日常的に作製することができる。かかる合成のための装置は、いくつかの供給元(Applied Biosystemsが含まれる)から販売されている。かかる合成のための任意の他の手段も使用することができ、実際のオリゴヌクレオチド合成は十分に当業者の能力の範囲内である。他のオリゴヌクレオチド(ホスホロチオアートおよびアルキル化誘導体など)の調製のために類似の技術を使用することも周知である。
【0102】
発癌および白血病誘発におけるmiRNA標的の役割および活性ならびに腫瘍/癌細胞中でのその集合的発現の認識および理解によって生じる診断および治療の可能性は、miRNAが癌関連遺伝子(腫瘍抑制遺伝子が含まれる)との直接的で且つ原因となる相互作用に関与し、癌細胞の増殖または維持を誘導または促進する活性を有するようであるという事実に由来する。前に示唆されており、本明細書にさらに詳述されているように、本発明は、miRNAによって開始される活性を調整するためのmiRNA標的が関与するか関係する一連の反応における薬学的介入を意図する。
【0103】
したがって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から特に選択される1つ以上のmiRNAの発現の阻害方法を提供する。特に、1つ以上のmiRNAを発現する細胞を有効量の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させ、それにより、1つ以上のmiRNAの発現または活性が阻害される工程を含む、本発明で関連することが示された1つ以上のmiRNAの発現を阻害する方法を提供する。
【0104】
本発明は、さらに、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における本発明のmiRNAの発現またはmiRNAの増大した発現に関連する状態(癌または他の過剰増殖障害など)を処置または予防する方法を含む。この方法の1つの態様では、化合物または薬剤は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223の1つ以上のmiRNAと特異的にハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアである。
【0105】
アッセイ
本発明の診断的および医学的な有用性は、哺乳動物(特に、ヒト患者)における癌、悪性疾患、リンパ腫、および/または白血病をスクリーニングするか評価するためのアッセイにおける本発明のmiRNA標的の使用にまで及ぶ。したがって、本発明は、そのmiRNAの存在範囲の定量的分析またはその活性を模倣または遮断することができる薬物または他の薬剤の同定のための試験キットの形態で調製することができるアッセイ系を含む。
【0106】
さらに、
(a)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAを発現する細胞をインキュベートする工程、および
(b)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現または活性を検出または測定する工程
を含み、それにより、
候補化合物または薬剤の存在下対候補化合物または薬剤の非存在下でのmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現の減少が、化合物または薬剤がmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現を阻害することを示す、癌に関連する1つ以上のmiRNAの発現を阻害する化合物または薬剤の同定方法を提供する。
【0107】
方法の1つの態様では、1つ以上のmiRNAの発現または活性を、miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性または発現、またはmiRNAを発現する白血病細胞またはリンパ腫細胞の成長または生存度の決定によって評価する。例示的なかかる方法を本明細書中に提供するか(実施例中の方法が含まれる)、そうでなければ当業者に公知であり、そして/または当業者の能力の範囲内である。miRNA発現を、例えば、RT−PCRアッセイを使用して決定することができる。例えば、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子(例えば、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される)をモニタリングして、miRNAの発現または活性を決定し、評価することができる。あるいは、白血病細胞またはリンパ腫細胞(T−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株など)を、miRNAの活性または発現の決定において成長について評価することができる。動物モデルも使用することができる。
【0108】
癌(リンパ腫または白血病が含まれる)を、1つ以上のmiRNA(特に、miR19、miR20、miR26、miR92、miR148、および/またはmiR223から選択される)の発現の決定によって評価またはモニタリングすることができる。したがって、本発明は、
(a)哺乳動物から血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する、哺乳動物における悪性疾患(血液学的悪性疾患が含まれる)の検出または評価方法を含む。
(a)哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
少なくとも2つのmiRNAの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する、哺乳動物における癌を検出または評価する方法を意図し、提供する。
【0109】
上記方法の1つの態様では、2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。上記方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0110】
当業者は、癌のin vivo動物モデルまたは動物異種移植研究を使用して、本発明のmiRNAの役割をさらにまたは付加的にスクリーニング、評価、および/または検証し、本発明のmiRNAのモジュレーター(アンタゴミアが含まれる)を評価、同定、および特徴づける(miRNA発現の調整、miRNA標的遺伝子またはタンパク質の調整、ならびに腫瘍の進行、成長、耐性、および/または浸潤の阻害のさらなる評価が含まれる)ことができる。例示的な癌または腫瘍モデル(ノッチ1誘導性T−ALLのマウスモデルが含まれる)を提供し、本明細書中の実施例で使用する。(Pear WSら、(1996)J Exp Med 183(5):2283−2291;Wendel NHGら、(2004)Nature 428(6980):332−337)。適切な動物モデルには、種々の癌および過剰増殖状態のモデルが含まれるが、これらに限定されない。任意の適切な癌モデルを使用することができる。例示的且つ有用な血液学的悪性疾患の動物モデルには、Vav遺伝子調節配列(VavP)によって調節されるBcl2導入遺伝子を使用した濾胞性リンパ腫モデル(Egle Aら、(2004)Blood 103(6):2276−2283);免疫グロブリンμまたはκエンハンサーにカップリングさせたc−myc癌遺伝子を使用したリンパ性悪性疾患トランスジェニックマウスモデル(Adams JMら、(1985)Nature 318(6046):533−38)が含まれる。
【0111】
多数の蛍光物質が公知であり、標識として使用することができる。これらには、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー、およびルシファーイエローが含まれる。特定の検出物質は、ヤギ中で調製され、イソチオシアナートを介してフルオレセインと結合体化させた抗ウサギ抗体である。miRNA標的またはその結合パートナーを、放射性元素または酵素で標識することもできる。放射性標識を、任意の現在利用可能な計数手順によって検出することができる。好ましい同位体を、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reから選択することができる。
【0112】
酵素標識が同様に有用であり、現在使用されている比色分析技術、分光光度的技術、蛍光分光光度的技術、電流測定技術、または気体定量技術のうちのいずれかによって検出することができる。酵素を、架橋分子(カルボジイミド、ジイソシアナート、およびグルタルアルデヒドなど)との反応によって選択された粒子に結合体化させる。これらの手順で使用することができる多数の酵素は公知であり、使用することができる。ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが好ましい。代わりの標識物質および方法のその開示の例として米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号、および同第4,016,043号が参照される。
【0113】
本発明のさらなる実施形態では、疑われる標的または癌細胞における所定のmiRNAの活性または能力の有無を決定するための専門医による使用に適切な市販の試験キットを調製することができる。上で考察した試験技術によれば、かかるキットの1つのクラスは、勿論、選択される方法(例えば、「競合的方法」など)に応じて、少なくとも標識されたmiRNAまたはその結合パートナー(例えば、腫瘍抑制遺伝子)および説明書を含むであろう。キットはまた、その他の試薬(緩衝液、安定剤など)を含むこともできる。
【0114】
組成物
本発明は、さらに、本発明の治療方法の実施で有用な治療組成物を意図する。本治療組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤(キャリア)および有効成分としての本明細書中に記載のアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、miRNA標的アンタゴニストのうちの1つ以上を混合物で含む。好ましい実施形態では、組成物は、本発明のmiRNAの標的細胞(特に、癌細胞または前癌細胞)内のその標的への特異的結合を調整することができる薬剤を含む。
【0115】
有効成分としてアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニストを含む治療組成物の調製は、当該分野で十分に理解されている。典型的には、かかる組成物を、注射液(溶液または懸濁物のいずれか)として調製するが、注射前の液体での溶液、または懸濁物に適切な固体形態も調製することができる。調製物を乳化することもできる。治療有効成分を、しばしば、薬学的に許容可能であり、且つ有効成分と適合する賦形剤と混合する。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールなどおよびその組み合わせである。さらに、必要に応じて、組成物は、有効成分の有効性を増強する少量の補助剤(湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)を含むことができる。
【0116】
アンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニストを、薬学的に許容され得る塩の中和形態として治療組成物に処方することができる。薬学的に許容され得る塩には酸付加塩が含まれ、この塩は、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、およびマンデル酸など)を使用して形成される。遊離カルボキシル基から形成された塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄など)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、およびプロカインなど)から誘導することができる。
【0117】
治療用アンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニスト含有組成物を、例えば、単位用量の注射によって慣習的に静脈内投与する。用語「単位用量」は、本発明の治療組成物に関連して使用する場合、ヒトのための単位投薬量として適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要な希釈剤(すなわち、キャリアまたはビヒクル)と関連して所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性物質を含む。
【0118】
組成物を、投薬処方物に適合する様式および治療有効量で投与する。投与量は、処置すべき被験体、被験体の免疫系が有効成分を使用する能力、および所望のmiRNA能力の阻害または中和の程度に依存する。必要な有効成分の正確な投与量は、施術者の判断に依存し、各個体に特有である。
【0119】
本明細書中で使用する場合、「pg」はピコグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「ug」または「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ul」または「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「l」はリットルを意味する。
【0120】
治療組成物は、さらに、有効量の核酸またはオリゴヌクレオチド、および1つ以上の以下の有効成分または活性薬剤を含むことができる:化学療法薬、放射線治療薬、免疫調節薬、有糸分裂阻害剤。
【0121】
本発明の薬学的組成物を、局所処置または全身処置のいずれが望ましいかおよび処置すべき領域に応じて多数の方法で投与することができる。投与は、局所(眼、膣、直腸、鼻腔内、経皮が含まれる)、経口、または非経口であり得る。非経口投与には、点滴または注入、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射、肺投与(例えば、吸入またはガス注入による)、または髄腔内もしくは脳室内投与が含まれる。経口投与のために、その吸収および分布特性のために少なくとも1つの2’置換リボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドが特に有用であることが見出されている。米国特許第5,591,721号(Agrawalら、.)は、経口投与に適切であり得る。局所投与用処方物には、経皮貼布、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体、および粉末が含まれ得る。従来の薬学的キャリア、水性基剤、粉末基剤、または油性基剤、および増粘剤などが必要であり得るか望ましいかもしれない。コーティングしたコンドームおよびグローブなども有用であり得る。経口投与用組成物には、粉末または顆粒、水または非水性媒質の懸濁物または溶液、カプセル、サシェ、または錠剤が含まれる。増粘剤、矯味矯臭剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましいかもしれない。非経口、髄腔内、または脳室内投与用の組成物には、緩衝液、希釈剤、および他の適切な添加物も含むことができる滅菌水溶液が含まれ得る。かかる薬学的キャリアに加えて、オリゴヌクレオチド取り込みを容易にするためにカチオン性脂質を処方物中に含めることができる。取り込みを容易にすることが示されている1つのかかる組成物は、リポフェクチン(BRL Bethesda,MD)である。
【0122】
投与は、処置される状態の重症度および応答性に依存し、一連の処置は数日から数ヵ月または治癒するか病状が軽減するまで継続する。最適な投与計画を、体内の薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者は、至適投薬量、投与方法、および反復速度を容易に決定することができる。至適投薬量は、個別のオリゴヌクレオチドの相対効力に応じて変化し得、一般に、in vitroおよびin vivoでの動物研究におけるIC50またはEC50に基づいて計算することができる。例えば、化合物の分子量(オリゴヌクレオチド配列および化学構造から得られる)および有効用量(IC50など)(例えば、実験的に得られる)を考慮して、用量(mg/kg)を日常的に計算する。
【0123】
当該分野で周知のように、DNA配列を、適切な発現ベクター中での発現調節配列への作動可能な連結およびこの発現ベクターの適切な単細胞宿主の形質転換のための使用によって発現することができる。本発明のDNA配列の発現調節配列へのかかる作動可能な連結には、勿論、依然としてDNA配列の一部ではない場合、DNA配列の上流の正確な読み取り枠での開始コドン(ATG)の提供が含まれる。
【0124】
広範な種々の宿主/発現ベクター組み合わせを、本発明の核酸配列の発現で使用することができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体配列、非染色体配列、および合成DNA配列のセグメントからなり得る。適切なベクターには、SV40および公知の細菌プラスミドの誘導体(例えば、大腸菌プラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMB9、およびその誘導体、プラスミド(RP4など);ファージDNAS(例えば、λファージの多数の誘導体(例えば、NM989))および他のファージDNA(例えば、M13および一本鎖繊維状ファージDNA);酵母プラスミド(2μプラスミドまたはその誘導体);真核細胞に有用なベクター(昆虫細胞または哺乳動物細胞で有用なベクターなど);およびプラスミドとファージDNAとの組み合わせ由来のベクター(ファージDNAまたは他の発現調節配列が使用されるように改変されたプラスミドなど)などが含まれる。広範な種々の単細胞宿主細胞はまた、本発明のDNA配列の発現で有用である。これらの宿主には、周知の真核生物宿主および原核生物宿主(大腸菌、シュードモナス、バチルス、ストレプトマイセス、真菌(酵母など)、および動物細胞(CHO細胞、R1.1細胞、B−W細胞、およびL−M細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)など)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、ならびに組織培養のヒト細胞および植物細胞の株など)が含まれ得る。
【0125】
全てのベクターではないが、発現調節配列および宿主が本発明の核酸配列を発現するように等しく十分に機能すると理解されるであろう。全ての宿主が同一の発現系を用いて十分に等しく機能するわけではないであろう。しかし、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく所望の発現を達成するために過度の実験を行うことなく適切なベクター、発現調節配列、および宿主を選択することができるであろう。例えば、ベクターの選択では、ベクターが宿主中で機能しなければならないので、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、コピー数を調節する能力、およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現も考慮されるであろう。
【0126】
発現調節配列の選択では、通常、種々の要因が考慮されるであろう。これらには、特に潜在的な二次構造に関して、例えば、系の相対強度、その調節性、および発現すべき特定の核酸配列または遺伝子との適合性が含まれる。適切な単細胞宿主を、例えば、選択したベクターとのその適合性、その分泌特性、そのタンパク質を正確に折り畳む能力、およびその発酵要件、ならびに発現すべきDNA配列によってコードされる産物の宿主に対する毒性、および発現産物の精製の容易さを考慮して選択するであろう。
【0127】
合成DNA/RNA配列により、miRNAアナログまたは「ムテイン」を発現する遺伝子を都合良く構築可能である。あるいは、ムテインをコードするDNAを、未変性のRNA、遺伝子、またはcDNAの部位特異的変異誘発によって作製することができ、ムテインを、従来のポリペプチド合成を使用して直接作製することができる。タンパク質への非天然アミノ酸の一般的な部位特異的組み込み方法は、Christopher J.Noren,Spencer J.Anthony−Cahill,Michael C.Griffith,Peter G.Schultz,Science,244:182−188(April 1989)に記載されている。本方法を使用して、非天然アミノ酸を有するアナログを作製することができる。
【0128】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼにいくらか類似する様式で他の一本鎖RNA分子を特異的に切断する能力を有するRNA分子である。リボザイムは、一定のmRNAがそれ自体のイントロンを切り出す能力を有するという所見から発見された。これらのRNAのヌクレオチド配列の修飾により、研究者は、RNA分子中の特異的なヌクレオチド配列を認識し、それを切断する分子を操作することができた(Cech,1988.)。これらは配列特異的であるので、特定の配列を有するmRNAのみが不活化される。研究者は、2つのリボザイム型(テトラヒメナ型および「ハンマーヘッド」型)を同定している(Hasselhoff and Gerlach,1988)。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基配列を認識する一方で、「ハンマーヘッド」型は、11〜18塩基配列を認識する。認識配列が長いほど、標的mRNA種中で排他的に起こる可能性がより高い。したがって、ハンマーヘッド型リボザイムは、テトラヒメナ型リボザイムよりも特異的mRNA種の不活化に好ましく、18塩基認識配列はより短い認識配列より好ましい。
【0129】
本発明を、本発明の例として提供した以下の非限定的な実施例を参照してより深く理解することができる。以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために示すが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限すると決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0130】
実施例1
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の制御によって作用する(Bartel,2004)。miRNAの17〜92クラスターは造血系癌で高発現し、in vivoでのリンパ球増殖およびc−Myc誘導性白血病誘発/リンパ腫誘発を増強する(Heら、2005)(Xiaoら、2008)。17〜92クラスターおよびそのパラログはまた、多様な固形腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓、前立腺、および胃由来の固形腫瘍が含まれる)で発現される(Voliniaら、2006)(Petroccaら、2008)。
【0131】
in vitro造血形質転換アッセイを使用して、本発明者らは、驚いたことに、17〜92クラスター中のmiRNAのうちでmiR−19のみの過剰発現がインターロイキン−3(IL3)枯渇FL5−12リンパ球をアポトーシス死から防御することを決定した。本発明者らはまた、:(1)miR−19が浸潤性(aggressive)白血病およびリンパ腫(T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫が含まれる)で高度に過剰発現されるが、濾胞性B細胞リンパ腫ではそうではないことを証明し、(2)miR−17〜92クラスターがT細胞受容体遺伝子座[t(13;14)(q32;q11)]と並列して第2の転座と共に生じ、それにより、構成的に活性化/短縮された(エクソン29〜34)ノッチ1形態を発現するT−ALLに関連する新規の(しかし、おそらく稀な)染色体再配列を同定し、そして(3)miR−19がノッチ1誘導性T−ALLおよびc−Myc誘導性バーキットリンパ腫の両方を促進することを証明した。
【0132】
造血形質転換アッセイにおいてmiR−19の活性を再利用するshRNAの不偏性遺伝子スクリーニングを使用して、本発明者らは、リンパ球生存に関与するmiR−19標的として以下の8つの遺伝子(5つがmiR−19シード配列を有する)を同定した:Bim(アポトーシス促進性)、Pten(腫瘍抑制因子)、Prkaa1(AMP活性化キナーゼのαサブユニット)、Ppp2r5e(PP2Aのεイソ型)、およびDock5(細胞質分裂−5のデディケーター(dedicator))(その全てが直接のmiR−19標的である)、ならびにFoxOlおよびFoxO3(Fox転写因子)およびBnip3(Rheb/mTORおよびBcl2結合タンパク質の制御因子)(これらはそうではない)。
【0133】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)(miR−19結合部位およびmiR−19アンタゴミアの変異分析と組み合わせたレポーターアッセイ)を使用して、本発明者らは、Bim、Pten、Prkaa1、およびPppp2r5eの発現がリンパ球中でmiR−19によって直接制御されること、および造血形質転換アッセイにおいて各遺伝子がリンパ球生存に寄与することを確認した。さらに、miR−19は、PTENではそうでなかったが、タンパク質レベルでPPP2R5E、PRKAA1、およびBIMを明確に減少させた一方で、mirR−19アンタゴミアはmiR−19標的タンパク質PPP2R5E、PRKAA1、BIM、およびPTENのレベルを増加させた(マウスDock5遺伝子はヒト遺伝子中に存在するmiR−19シードマッチを含まず、FL5−12細胞におけるmiR−19の標的ではない)。
【0134】
これらのデータは、miR−19が細胞生存のPI−3K関連プログラムと協調し、特異的治療レジメンに対する応答の予想および/または治療に対する応答のモニタリングのための白血病およびリンパ腫の診断のためにmiR−19発現の測定を使用することができることを証明している。これらは、さらに、癌(miR−19が過剰発現した血液悪性疾患が含まれる)に対して有効な治療薬としてのmiR−19のアンタゴニスト/アンタゴミアを示す。
【0135】
miR−19の発癌活性は、17〜29クラスターのmiRNAとそのパラログとの間で固有である
確立された造血形質転換のin vitroアッセイ(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)を使用して、17〜92クラスターおよびそのパラログ内の重要な発癌活性を同定した。固有のシード配列ファミリーを示す全てのmiRNA(具体的には、miR−17、miR−18a、miR−19b−1(miR−19)、miR−20a、miR−106a、miR−106b、およびmiR−25)を試験した(図1a)。アッセイは、IL3から除去した場合にアポトーシスを受けるFL5−12リンパ球のIL3依存性に基く。競合実験では、FL5−12細胞を、GFP+個別のmiRNAまたは空のベクターで部分的に形質導入し、これらの混合した集団を、その相対的比率の変化について蛍光標示式細胞分取(FACS)によってモニタリングした(図1b)。miR−19を発現するFL5−12細胞はIL3枯渇の際に親細胞を超えて迅速に富化され、他のmiRNAはこの防御効果に関連しなかった(t検定によってmiR−19:p<0.002、全ての他のmiRNAおよびベクターp>0.05)(図1c)。この効果は、主に、アポトーシスからの防御に起因し、細胞周期動態を有意に変化させなかった(図2)。それ故、17〜92クラスターおよびそのパラログ内で、miR−19は、in vitroでのリンパ球生存を増強する異なる能力を有する。
【0136】
miR−19は一定の白血病およびリンパ腫で高発現され、T細胞白血病における新規の染色体再配列の標的である
ヒトリンパ悪性疾患におけるmiR−19の発現を評価した。扁桃腺由来の非悪性リンパ球と比較して、T−ALLにおいてmiR−19発現が5〜17倍増加し、B−ALLではいくらかより少なく増加した(図3a)。さらに、新規の再配列がT−ALLにおいて認められた−miR−17〜92クラスターがT細胞受容体遺伝子座(TCRA/D)と並列する転座(t(13;14)(q32;q11))(図3bおよびcならびに図4)。この変化は、第2の転座t(9;14)(q34;q11)(他のTCRA/D対立遺伝子に影響を及ぼし、構成的に活性な短縮形態のノッチ1(エクソン29〜34)を発現させる)と共に起こる(図5)(Palermo、ら、.,2006),(Ellisenら、1991)。miR−19はまた浸潤性B細胞リンパ腫(DLBCLおよびバーキットリンパ腫など)で高発現されたが、無痛性濾胞性リンパ腫ではあまり豊富でなかった。特に、FL5−12細胞中のmiR−19のレトロウイルス発現は、いくつかの腫瘍標本における発現に匹敵するレベルであった(図3a)。したがって、miR−19は浸潤性のリンパ性癌で高発現し、T細胞白血病における新規の染色体再配列の標的である。
【0137】
miR−19はin vivoで浸潤性のT細胞系統悪性疾患およびB細胞系統悪性疾患の発症を駆動する
miRNAはin vivoでリンパ悪性疾患の発症を駆動することができるだろうか?miR−19発現および転座データに基づいて、miR−19をT−ALLマウスモデルにおいて評価した(Pearら、1996)。簡潔に述べれば、ほとんどのT−ALL症例はノッチ1遺伝子中に変異を有し、t(9;14)(q34;q11)転座のように、これらはノッチ1の構成的に活性な細胞内ドメイン(ノッチ−ICN)を生成する(Wengら、2004)。miR−19のin vivoでノッチ−ICN誘導性T−ALLを促進する能力を試験するために、HPCを照射レシピエントに養子導入した(図3d)。ノッチ−ICNおよびmiR−19を発現するHPCを投与したマウスはT−ALLをすぐに発症し、これらの全動物は2ヵ月以内に瀕死の状態であった。同時に、ノッチ−ICNのみを発現するHPCを投与した80%のマウスは無疾患のままであった(p=0.0003)(図3e)。病理学により、血液塗抹標本上の豊富な芽球、骨髄、脾臓、およびリンパ節の浸潤、ならびにT細胞マーカーの排他的発現を用いてT−ALLの診断を確認した(図3f〜hおよび図6)。miR−19は、バーキットリンパ腫のΕμΜycモデルで類似の効果を示した。これは、全クラスターについて報告されるように(Heら、2005)、p53依存性アポトーシスの遮断によってc−Mycと協力する能力を示した(図7)。それ故、miR−19は、in vivoでB細胞系統およびT細胞系統から生じる浸潤性悪性疾患における癌遺伝子として作用する。
【0138】
miR−19の発癌活性を担う標的の同定
標的予想および遺伝子発現分析。miR−19の発癌活性を担う分子標的を決定した。最初に、コンピュータ標的同定および遺伝子発現分析を組み合わせた。Targetscanにより、938種のヒトおよび744種のマウスの潜在的miR−19標的を検索した。miR−19またはベクターで形質導入したFL5−12細胞における遺伝子発現プロフィールは、中程度の発現の変化しか示さなかった(平均倍率変化0.2±標準偏差(SD)0.39](図8)。全体的にみて、予想される全miR−19標的(Pten腫瘍抑制遺伝子が含まれる)の発現レベルは、他の遺伝子よりも減少した(p<2e−04、コルモゴロフ・スミルノフ検定による)。しかし、より明白な(1.5または2SD)発現の減少を示す遺伝子のうちでmiR−19標的の有意な富化は認められなかった(2SDでp>0.46;1.5SDでp>0.077、フィッシャーの正確検定)(図8)。
【0139】
miR−19標的のための不偏機能アッセイとしてのショートヘアピンRNA遺伝子スクリーニング。不偏遺伝子スクリーニングがリンパ球生存に関与するmiR−19標的を同定するための代替法であり得ると仮定した。具体的には、そのノックダウンが、リンパ球中のmiR−19を表現型模写する遺伝子のshRNAスクリーニング(Paddisonら、2004)がmiR−19の活性を担う遺伝子を同定すると仮定した。対照実験を、Bim(Bcl2L11)(公知の17〜92クラスターの標的)に対するshRNAを使用して行った(図9a〜c)。約1,000個のshRNAプールでのFL5−12細胞の形質導入および2サイクルのIL3枯渇または完全培地中での継代を含むスクリーニングプロトコール(図10a)を考案した。カスタムハーフヘアピンアレイ(Chang,Elledge,& Hannon,2006)を使用して、1または2ラウンドの選択(T1およびT2)後の処理(IL3−)サンプル対未処理(IL3+)サンプルにおけるshRNAの存在量の変化を測定した。教師なしクラスタリングは、生物学的レプリケート間で良好な再現性を示し(A−C;平均相関r=0.60±0.17)、その後のIL3枯渇サイクルを使用したshRNAにおいて進行性のシフトを示した(図10b)。統計ツールを使用して、生物学的に有意なシグナルを同定した。マイクロアレイの有意性分析(SAM)により、個別のshRNAの変化を同定し(図10c)、一方で、遺伝子組分析(GSA)により、同一の遺伝子をターゲティングするshRNA群を定義した。GSAにより、少なくとも2つ且つ5つまでの異なるshRNAによってそれぞれターゲティングされる14遺伝子が同定された。最上位の「ヒット」は、5つの独立したshRNAによってターゲティングされたAMP活性化キナーゼのαサブユニット(Prkaa1)であった(図10d)。
【0140】
ショートヘアピンRNAを使用した推定miR−19標的の検証。候補遺伝子を、同一のshRNA実験系を使用して最初に検証した。GSA分析から同定されたほぼ全ての遺伝子および任意の閾値を超える(1.65倍超の増加、p<0.05)SAM分析由来のタンパク質コード遺伝子が含まれていた。全体で、70超の遺伝子および典型的にはそれぞれをターゲティングする3つのshRNAを再試験した。最終的に、8つの遺伝子をターゲティングするshRNAにより、IL3を枯渇したFL5−12細胞において生存上の利点が得られた(三連の実験、ベクター(示さず)に関してp>0.2および8つ全てのshRNAに関してp<0.05、t検定)(図10e)。顕著には、これらの遺伝子のうちの5つはmiR−19シード配列を保有していた。アポトーシス促進性Bimに加えて、これらは、腫瘍抑制遺伝子Pten、AMP活性化キナーゼのαサブユニット(Prkaa1)、PP2Aのεイソ型(Ppp2r5e)、および細胞質分裂−5遺伝子のデディケーター(Dock5)であった。さらに、直接的なmiR−19標的ではなかった3つの遺伝子(すなわち、FoxO転写因子であるFoxO1およびFoxO3およびBnip3(Rheb/mTORおよびBcl2結合タンパク質の制御因子))も、miR−19の標的として本アッセイで検証した。まとめると、miR−19のように挙動するshRNAの不偏遺伝子スクリーニングの結果は、miR−19結合部位を含む遺伝子の非常に有意な富化を示す(p<7.17e−07フィッシャーの正確検定)(図11a)。ヒトDock5遺伝子と異なり、マウス遺伝子はmiR−19標的であると予想されないが、マウスゲノムについての富化統計の計算により高有意水準が確認された(p<3.2 exp−05、フィッシャーの正確検定による)(図11b)。同様に、同定された遺伝子は、造血細胞生存におけるmiR−19の機能的に関連する標的である。結果的に、これらは、癌(具体的には、血液悪性疾患)処置のための潜在的な治療標的を示す。
【0141】
miR−19がmiR−19標的として同定された遺伝子の発現を制御することの確認。miR−19はmiR−19の標的として同定された遺伝子の発現を実際に制御するのであろうか?qRT−PCRは、miR−19がFL5−12細胞およびマウスT−ALLサンプルにおけるPten、Ppp2r5r、Prkaa1、およびBimのmRNAレベルを1/2まで減少させたことを証明した(図12aおよび図13)。レポーターアッセイおよびmiR−19結合部位の変異誘発により、これらの遺伝子のmiR−19結合部位を介した3’非翻訳領域(UTR)の直接的な阻害が確認された(図14)。逆に、miR−19に対するアンタゴミアがmRNAレベルを増加させ(図12b)、miR−19およびアンタゴミアの両方がタンパク質レベルに測定可能な影響を及ぼした。例えば、miR−19は、PPP2R5E、PRKAA1、およびBIMを明確に減少させ(図12c)、リボゾームS6リン酸化(PI3K活性の下流読み出し)を直接活性化した(図15)。miR−19がPTENタンパク質に検出可能な影響を及ぼさなかった一方で、そのmRNAは明確に減少した。アンタゴミアは、全miR−19標的タンパク質(PTENが含まれる)増加させた(図12d)。予想通り、miR−19もアンタゴミアもBnip3に影響を及ぼさなかった(図12cおよびd)。また、マウスDock5遺伝子はヒト遺伝子中に存在するシードマッチを含まず、したがって、FL5−12細胞における標的ではない。miR−19発現と比較したアンタゴミアのより大きな影響は、これらの遺伝子が増殖細胞中で内因性miR−19によって強力に(tonically)抑制されることを示し得る。これらの所見により、Bim、Prkaa1、Pten、およびPpp2r5eの発現がリンパ球中のmiR−19によって制御されることが確認される。
【0142】
miR−19の発癌活性へのmiR−19標的の相対的寄与の評価。新規のmiR−19標的の相対的寄与を評価した。アポトーシス促進性BIMタンパク質はBCL2と対立し、リンパ球生存の重要な制御因子である(Bouilletら、1999)。miR−19がBim非依存性効果を有するかどうかを評価するために、Bcl2を安定に発現するように操作したFL5−12細胞(FL5−12/Bcl2細胞)を使用して相補性研究を行った。予想通り、Bim shRNAはさらなる利点を付与しなかったのに対して、PtenおよびPp2r5eに対するmiR19およびshRNAは、Bcl2の存在下で持続的な富化を示した(図12e)。逆に、miR−19に対するアンタゴミアは、抗増殖効果を示さなかった。アンタゴミアを発現するFL5−12/Bcl2細胞は継代の際に喪失した(図12f)。同様に、miR−19の発現は、メトホルミン活性化AMPキナーゼまたはPtenもしくはPp2r5eの発現の存在下で、連続的増殖に関連していた(図16)。それ故、miR−19は、複数の標的遺伝子(リンパ球におけるPI3関連生存シグナルの制御因子が含まれる)を通して作用する(図12g)。
【0143】
材料と方法
細胞培養、生存度、増殖アッセイ、およびベクター構築物。FL5−12マウスリンパ球、IL3枯渇研究、およびウイルス形質導入は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。細胞周期およびGuava TechnologiesのViacountアッセイを使用したDNA染色色素(LDS751)の取り込みに基づいた細胞周期および細胞死アッセイを、報告されているように行った(Mavrakisら、2008)。レトロウイルスベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づき、miR 17、miR 18a、miR 19b−1(miR−19)、miR 106a、miR 106b、miR 25をコードするmiRNA発現ベクター(Heら、2005)、ノッチ−ICN(W.Pearからの提供)(Pearら、1996)およびBcl2(Wendelら、2004)をコードするベクター、各shRNAベクター(図17)、およびライブラリーベクター(MRP)(図18aおよびb)が含まれる。miRNAインヒビターオリゴヌクレオチド(アンタゴミア)MZIP 19a−PA−1、MZIP 19b−PA−1、およびスクランブルドコントロール(MZIP000−PA−1)はSystem Biosciencesから入手した。
【0144】
マウスの生成
レトロウイルスで形質導入したHPCの養子移入に基づいたノッチ1誘導性T−ALLおよびEμMycリンパ種のマウスモデルが報告されている(Pearら、1996)、(Wendelら、2004)。データを、統計的有意性についてのログランク(Mantel−Cox)検定を使用してカプラン・マイヤー形式で分析した。ヘテロ接合性ポリメラーゼ連鎖反応(LOH PCR)のp53喪失および表面マーカー分析による免疫表現型検査は記載の通りであった(Wendelら、2004)。
【0145】
ウェスタンブロット分析
全細胞溶解物由来の免疫ブロットを記載のように行った(Wendelら、2004)。簡潔に述べれば、50μgのタンパク質/サンプルをSDS−PAGEゲルで分離し、Immobilon−P膜(Millipore)に移した。抗体は以下に対する抗体であった:Prkaa1(2532、1:1000、Cell Signaling)、Bim/Bcl2L11(AAP−330、1:1000,Assay Designs)、FoxO1(94545、1:1000、Cell Signaling)、FoxO3a(9467、1:1000、Cell Signaling)、Phospho−FoxO3a(94665、1:1000、Cell Signaling)、Ppp2r5e(NB 100−845、NOVUS)、Pten(9559、1:1000、Cell Signaling)、チューブリン(1:5000;Sigma、B−5−1−2)、アクチン(1:5000;Sigma、AC−15)、Bnip3(3769、1:1000、Cell Signaling)、リン酸化S6(2215、1:1000、Cell Signaling)、リン酸化Akt(4058、1:1000、Cell Signaling)、およびDock5(Alan Hall(MSKCC)からの提供)。増強型化学発光を検出のために使用した(ECL,Amersham)。
【0146】
リアルタイム定量的PCR
総RNAおよびmiRNA富化RNAを、Allprep DNA/RNA/Proteinキット(Qiagen)およびmiRNeasyミニキット(Qiagen)をそれぞれ使用して細胞および腫瘍サンプルから抽出した。病理学的診断を、Weill Cornell Medical Collegeの熟達した血液病理学者が行った。cDNA合成およびqRT−PCRおよびΔΔCt法による分析は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)。TaqMan遺伝子発現アッセイを、以下のために使用した:Bcl2L11(Mm00437796_m1)、Dock5(Mm00555757_m1)、FoxO1(Mm00490672_m1)、FoxO3(Mm01185722_m1)、Ppp2r5e(Mm00803759_m1)、Prkaa1(Mm01296695_m1)、およびPten(Mm01212532_m1)。マウスGAPD(GAPDH)(4352932)およびmiR−19b(000396)は、Applied Biosystemsから入手した。発現を、RNU6B(001093,Applied Biosystems)に対して正規化した。
【0147】
ルシフェラーゼアッセイ
Dock5、Ppp2r5e、Prkaa1、およびBimの3’−UTRフラグメントをPCRによって生成し、psi−CHECK−2ベクター(Promega)にクローニングした。記載のようにアッセイを行った(Xiaoら、2008)。部位特異的変異誘発によって結合部位変異体を生成した。
【0148】
核型および蛍光in situハイブリッド形成(FISH)分析
患者の初代リンパ芽球から作製した中期染色体調製物を、標準的手順にしたがって核型分析に供した。13q32に存在するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6をInvitrogenから入手した。DNAを、ニック翻訳によってスペクトラムオレンジdUTP蛍光色素(Vysis,Downers Grove,IL)を使用して標識した。スペクトラムグリーン標識したRB1プローブを、染色体13qハイブリッド形成のコントロールとして使用した。細胞遺伝学的分析のために使用される細胞に対して標準的な方法によってFISHを行った。Nikon Eclipse 600顕微鏡に取りつけられたCytovisionイメージングシステム(Applied Imaging,Santa Clara,CA)を使用して、ハイブリッド形成シグナルを、DAPI染色スライド上の少なくとも20の中期スプレッドに関してスコアリングした。
【0149】
異常ノッチ1転写物の5’RACE増幅
ClontechのNucleotrap mRNA抽出キットを用いて患者の初代リンパ芽球からmRNAを抽出し、ノッチ1遺伝子のエクソン29配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー(5’−TCGTCCATGAGGGCACCGTCTGAAG−3’)を使用してSMART RACEキット(Clontech)にて5’RACEを行った。
【0150】
プールshRNAライブラリースクリーニング
このプールshRNAスクリーニングの根底にあるテクノロジーが記載されており、ハーフヘアピンアレイ検出の使用も記載されている(Mavrakisら、2008)、(Silvaら、2008)、(Chang,Elledge,& Harmon,2006)。簡潔に述べれば、shRNAライブラリーをMRPベクターにクローニングし、p53 shRNAについてタンパク質ノックダウンを確認した。FL5−12細胞を、低感染多重度にて1,000個のshRNAを含むライブラリープールで形質導入し、3つに分割し、それぞれを2サイクルのIL3枯渇およびレスキューに供した。DNA単離、組み込まれたshRNAまたは基準としてのライブラリーのPCR増幅のために生存度が回復した後にサンプルを回収し、標識し、ハイブリッド形成した。画像スキャン(Axon 4000Bスキャナ)から作成したデータ(Nimblescanソフトウェア)を、処理および分析のためにRバージョン2.4にインポートした。各Nimblegen 12−plexカスタムアレイは、12,033個のハーフヘアピンプローブからなる。ほとんどがライブラリー中でshRNAによって示され、残りをバックグラウンドの見積もりのために使用した。予想通り、これらのネガティブコントロールスポットは、各アレイ上の実験プローブよりも低い強度を示した。バックグラウンドより低いシグナル値をバックグラウンド概算値と置換して、低シグナルに起因する比率の高さを小さくした。次いで、各アレイについての2つのチャネルを、LOESS正規化を使用して正規化した。正規化された強度のlog比を、さらなる分析で使用した。
【0151】
プールshRNAスクリーニングのためのデータ分析
分析を、R中、マイクロアレイ用Bioconductor線形モデル(LIMMA)(Yang,Paquet,& Dudoit,2006)、マイクロアレイの有意性分析(SAM)(Tusher,Tibshirani,& Chu,2001)、および遺伝子組分析(GSA)(Efron & Tibshirani,2007)ライブラリーを使用して行った。生物学的レプリケート間の相関を、各時点について主成分分析(principal component analysis)(PCA)によって計算して実験効果および生物学的レプリケートの大きさを決定した。生物学的レプリケートは、実験におけるばらつきの主な原因を構成していなかった。生物学的レプリケートの平均相関は0.60(±0.17)であり、おそらく、集団が培養中に変動した確率変動を反映していた。生物学的に有意なシグナルをSAMソフトウェアを使用して同定して、shRNAの相対存在量の相違を反映するプローブを選択した。条件にわたる各特徴の独立したサンプルを想定する対応のない2クラスのアルゴリズムを使用した。Q値を経験的に計算し、有意な特徴の同定のために使用した。全体的にみて、そのshRNAプローブが以下のこれらの基準を満たすことが見出された場合、遺伝子を潜在的候補とスコアリングした:倍率変化(FC)1.65超、p<0.05、および対応するタンパク質を伴う現在の遺伝子バンク注釈づけ。GSAを使用してさらなる試験を行って、同一遺伝子をターゲティングする複数のヘアピン由来のデータに基づいて候補を同定し(各遺伝子が2〜4つのヘアピンによってターゲティングされる場合)、その倍率変化をまとめている。この統計値を包括的順列由来の同一の統計値と比較して、各遺伝子の経験的p値に到達させた。GSA分析において正の倍率変化を示す全ての遺伝子組を検証に含めた(嗅覚受容体481を除く)。これらのカットオフは比較的任意であり、偽陽性を最小にするための控えめな基準として選択した。
【0152】
shRNAオフターゲット効果のコンピュータ分析
いくつかのコンピュータ分析を行って、スクリーニングの結果がオフターゲット効果に寄与し得るかどうかを調査した。以下の2つの仮説を考慮した:(1)スクリーニングで過剰に出現したshRNAがmiR−19自体と配列が類似し、したがって、3’UTR中の部位を介してmiR−19活性を模倣すること;(2)スクリーニングの結果が、少数の重要な遺伝子に及ぼすマイクロRNA様オフターゲット効果によって説明可能であること。
【0153】
第1の仮説のために、全shRNAを、(a)miR−19シード領域に対するshRNA「シード」(2〜8位)および(b)全長miR−19aおよびmiR−19b配列に対するshRNAの非ギャップ配列類似性によってランク付けた。ライブラリー中のshRNAはmiR−19と同一の7merシード領域を持たなかった;そのシード領域がmiR−19の7merシードと6つの位置で適合したshRNAのうち(6merシード適合位置3〜8を有する12のshRNA、6merシード適合位置2〜7を有する2つのshRNA)、スクリーニング中で過剰に出現した上位100個のshRNA中に存在したものはなかった。ライブラリー中のshRNAと全長miR−19a/b配列との間の最大配列類似性は、13塩基非ギャップマッチであった;23個のshRNAはmiR−19aおよび/またはmiR−19bに対してこの程度の類似性を有していたが、スクリーニング由来の上位100個の過剰に出現したshRNA中に存在したものはなかった。さらに、スクリーニング中の過剰出現によるshRNAのランク付けとmiR−19とのこれらの類似性比較との間のスピアマン順位相関(|rho|<.01)は低かった。
【0154】
次に、スクリーニング中で上位にランク付けられたshRNAが完全なライブラリーと比較してPTEN、PRKAA1、BCL2L11、PPP2R5E、DOCK5、FOXO1、FOXO3、およびBNIP3に対する予想されるオフターゲット効果を有する可能性が高いかどうかを考慮した。これが正しかったならば、スクリーニング中のshRNAの過剰出現がこれらの重要な遺伝子のオフターゲットサイレンシングによって説明可能である。shRNAの潜在的なマイクロRNA様オフターゲット効果を予想するために、全マウスゲノム中の3’UTRを、ライブラリー中のshRNAの7merシード配列に対する適合(2〜8位、保存フィルタなし)をスキャニングした。所与のshRNAについて7merシードマッチを有する遺伝子を、このshRNAの予想されるオフターゲットであると見なした。次いで、本発明者らは、8遺伝子のうちのいずれかについて、遺伝子を「オフターゲット」すると予想されるshRNA組が、完全なshRNAライブラリーと比較してスクリーニング由来の上位Kまでの過剰に出現したshRNA中で富化されるかどうかを試験した。2から250までの範囲のK値を使用し、任意のK値についてのフィッシャーの正確検定による統計的有意性(全ての場合において各遺伝子についてp>0.05)は認められなかった。これらのコントロールは、shRNAがmiR−19自体に類似しないこと、およびスクリーニングの結果を重要な遺伝子に対する上位にランク付けられたshRNAのオフターゲット効果によって説明できることを示す。
【0155】
ライブラリー中の約12000個のshRNAの固有の標的の数およびmiR−19標的も予想されるこれらの標的のサブセットに関する富化統計値(enrichment statistic)を、少数の「ヒット」数を説明するためのフィッシャーの正確検定を使用して計算した。ヒトゲノムおよびマウスゲノムの両方についてこの分析を行った。標的予想を、Targetscan5.1によって行った。
【0156】
発現アレイ分析
総RNAを上記のように単離し、RNA 6000 NanoAssayおよびBioanalyzer2100(Agilent)を使用して品質について分析した。2mgの総RNAをcDNA合成のために使用した。cRNAの合成、線形増幅、および標識を、MessageAmp aRNAキット(Ambion)およびビオチン化ヌクレオチド(Enzo Diagnostics)を使用したin vitro転写によって行った。次いで、10マイクログラムの標識し、断片化したcRNAを、製造者(Affymetrix)の説明書にしたがってGeneChipとハイブリッド形成させた。チップを、GS3000スキャナ(Affymetrix)内でスキャニングし、GCOS1.4(GeneChip Operating Software,Affymetrix)を使用して定量し、Partekソフトウェア(Partek(登録商標)Genomic Suite(商標)6.4)を使用して分析した。「R」ソフトウェアパッケージ中の「affy」および「gcrma」ライブラリーを使用して、マイクロアレイプローブレベルデータのロバストマルチアレイ分析(robust multi−array analysis)(RMA)正規化を行った。さらに、「mas5」関数を使用して、プローブのpresent/absentコールを同定した。1つを超えるプローブが技術的レプリケート中に存在しない場合、プローブをさらなる分析から除外した。プローブの正確な標的遺伝子を同定するために、RefSeqリリース35由来のマウス転写物に対する「Affymetrix Mouse430A_2 Target Sequences」について「blastn」プログラムを使用してBLAST検索を行った。パラメーター−v1−bl−e.05−S1をBLAST検索で使用した。遺伝子発現のlog比を計算するために、プローブレベルデータにわたるメジアン分散分析(median polish)を行って遺伝子発現値(すなわち、レプリケートにわたるプローブ強度のメジアンを算出し、同一遺伝子をターゲティングするプローブにわたるこれらのプローブ値のメジアンを使用した)を得、実験対コントロールのlogの相違を計算した。統計分析のために、遺伝子の平均log2(発現の変化)を使用してデータを中心におき、全遺伝子にわたってlog2の単位分散(発現変化)を有するように正規化した。この正規化により、データの拡張Z変換(modifid Z transformation)(Zスコア)が得られる。
【0157】
コルモゴロフ・スミルノフ(KS)統計
miR−19標的対全遺伝子の発現の変化を比較するために、そのlog(発現変化)値の分布を、片側KS統計を使用して比較した。片側KS統計は、一方の組についての発現変化の分布が他の組の分布と比較して有意に下向きにシフトする(下方制御される)かどうかを評価する。KS統計は、経験的累積分布関数(cdf):
【0158】
【数1】
は、nj(Z変換後)log(発現変化)値に基づいた遺伝子組j=1、2の経験的cdfである)の値の最大差を算出する。Matlab関数kstest2を使用して、KS試験統計量および漸近p値を計算した。
【0159】
参考文献
【0160】
【化1】
【0161】
【化2】
【0162】
【化3】
実施例2
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の調節によって作用する(Bartel,2004)。miRNAによる遺伝子発現の制御は複雑である。多数のmRNAはその3’UTR内に複数のmiRNAのための結合部位を含み、ほとんどのmiRNAは多数の遺伝子を潜在的にターゲティングすることができる(Bartel,2004)。配列分析によって予想されるあらゆるmiRNA結合部位が表現型に寄与するわけではないことが明らかである。逆に、複数のmiRNAが単一の細胞経路に影響を及ぼし得る(Mavrakisら、2010)、(Liら、2007)。
【0163】
T−ALLは、いくつかの協同する遺伝子病変の結果として生じる(Aifantis,Raetz,& Bu,2008)。例えば、ほとんどの症例でノッチ1の活性化病変を保有し(Wengら、2004)、腫瘍抑制遺伝子(PTEN(Palomeroら、2007);NF1(Balgobindら、2008);PHF6(Van Vlierbergheら、2010);PTPN2(Keppeら、2010);IKZF1(Dailら、2010)、(Winandy,Wu,& Georgopoulos,1995)、(Marcaisら、2010)、(Sunら、1999)、(Mullighanら、2007);およびFBXW7(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007)が含まれる)はT−ALLにおける不活化体細胞変異または欠失の標的である。発癌性miR−17〜92クラスターは、T−ALLにおいてt(13;14)(q32;ql 1)転座によってターゲティングされる(Landais,Landry,Legault,& Rassart,2007)。各miRNAは、現在、T−ALLに関与している(例えば、実施例1に記載のmiR−19b)(Mavrakisら、,2010)。miR19bは発癌性miR−17〜92クラスターのメンバーである(図1aも参照のこと)。種々の癌におけるmiRNA発現分析は、少数のmiRNAのみが癌細胞中で高発現され、起源の組織を連想させるパターンを維持することを示している(Luら、2005)、(Landgrafら、2007)。
【0164】
これらの研究では、本発明者らは、T−ALLおよび潜在的に他の癌に関連するmiRNAを評価および決定するための3つの別個のアプローチを使用した。3つのアプローチ−miRNA発現分析、公知の腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析、および発癌性miRNAについての不偏スクリーニング−を使用して、T−ALLで潜在的に重要なmiRNAを同定した。一定のこれらのmiRNAのT−ALLの病原への寄与を、白血病誘発マウスモデルにおけるmiRNA自体の活性の評価およびヒトT−ALL細胞株におけるmiRNAに対するアンタゴミア活性の評価の両方によって確認した。
【0165】
miRNA発現分析。定量的PCRを使用して、50種の臨床T−ALL標本および18種のT−ALL細胞株における430個のmiRNAの発現を測定した。miRNA発現パターンは、T−ALL細胞および細胞株で高発現された10種のmiRNA(miR−223、miR−19b、miR−20a、miR−92、miR−142−3p、miR−150、miR−93、miR−26a、miR−16、およびmiR−342)と非常に一致することが見出され、残りの420種のmiRNAは有意により低いレベルで検出された。T−ALL細胞および細胞株におけるmiRNA発現パターンと精製前駆体(CD34+およびCD3−CD4+CD8+)細胞および正常な(CD3+CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8−、およびCD3+CD4−CD8+)T細胞におけるmiRNA発現パターンとの比較により、miR−223発現のT−ALL特異的増加およびより少ない程度でのmiR−376およびmiR−662の発現のT−ALL特異的増加が証明された。
【0166】
T−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析。潜在的なmiRNA結合部位についてのT−ALLの病原に関与する12種の腫瘍抑制遺伝子の3’UTRの分析により、T−ALLに潜在的に関与するmiRNAの体系が得られた。T−ALL中で最も高度に発現する10種のmiRNAのうちの5種(具体的には、miR−25/92、miR−26、miR−19、miR−223、およびmiR−20/93/106)も、本分析において最高位にランク付けされた(同一の3’UTR結合「シード」配列を有するmiRNAを本分析およびその後の分析において共にグループ化し、同一のシード配列を有するmiRNAが取り換え可能であり得ると理解すべきである)。
【0167】
発癌性miRNAの不偏遺伝子スクリーニング。c−MYC形質導入マウス胚線維芽細胞(MEF)のレトロウイルスmiRNAライブラリーでの感染および10%から0.1%への血清濃度の減少後に接着性を保持していた細胞を選択して、細胞をアポトーシス死から防御するmiRNAを同定した。この最初のスクリーニングで同定されたmiRNAが真に白血病誘発に関連し、単に成長停止に関連するのではないことを確実にするために、一次スクリーニングで同定されたGFPタグ付きmiRNAのライブラリーを使用して、インターロイキン−3(IL−3)依存性FL5−12マウスプロB細胞に感染させた。IL−3枯渇後のGFP発現細胞の富化により、IL−3非依存性成長に関連するmiRNAが同定された。FL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された6つのmiRNAは、miR−19b、miR−20/93/106、およびmiR−25/92(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現し、且つmiRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高位にランク付けされる)、miR−26およびmiR−223(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現する)、およびmiR−148/152(miRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)であった。
【0168】
T−ALLに関与するmiRNAの白血病誘発活性。次いで、T−ALL白血病誘発で潜在的に重要であると同定された6つのmiRNAの発癌潜在性をin vivoで試験した。HPCをノッチ1+miRNAまたは空のベクターコントロールで形質導入し、HPCを照射した同系レシピエントに移植し、定期的に血球を計数してT−ALLの発症を検出した。レトロウイルスによって送達されたmiRNAが白血病コントロールより2〜6倍高いレベルで発現したこのアッセイでは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223はそれぞれCD4+CD8+T−ALLの発症を有意に促進した(一方で、miR−23、miR−24およびmiR−30はそうではなかった)。
【0169】
T−ALLに関与するmiRNAに対するアンタゴミアの抗白血病誘発活性。最後に、ヒトT−ALL細胞株(T−ALL1、KOPTK1、およびJURKATが含まれる)の成長速度および生存度に及ぼすmiRNAアンタゴミアの影響を評価した。miR−19b、miR−26、およびmiR−92に対するアンタゴミアは、成長速度を低下させ、細胞生存度を有意に低下させ、腫瘍抑制遺伝子PTENおよびBCL2L11(Bim)を脱抑制(de−repress)させた(miR−148および無作為に選択したmiR−182に対するアンタゴミアはそうではなかった)。miR−223に対するアンタゴミアは、同様に、成長速度および細胞生存度を減少させた。各アンタゴミアの発現と比較して、T−ALL細胞株におけるmiR−19bおよびmiR−92に対するアンタゴミアまたはmiR−19b、miR−92、およびmiR−26aに対するアンタゴミアの同時発現は、成長速度をより明確に減少させ、アポトーシス細胞の比率を2倍超にし、PTENおよびBCL2L11の発現をより増加させ、PTENおよびBCL2L11の3’UTRレポーター活性に付加的な影響を及ぼした。
【0170】
これらのデータは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223がヒトT−ALLにおける大部分のmiRNA発現を占め、その発現に対する重複しかつ協同する効果によってT−ALLの病原に関与する共通の腫瘍抑制遺伝子組(PTEN、BCL2L11、NFI、FBXW7、IKZF1、およびPHF6が含まれる)の活性を下方制御し、動物モデルにおいてT−ALLを促進することができることを証明している。
【0171】
ミエロイド特異的miRNAであると考えられたmiR−223(Faziら、2005)、(Chen,Li,Lodish,& Barrel,2004)、(Johnnidisら、2008)は、ヒトT−ALL中で選択的に上方制御される。miR−223は、NOTCH1およびc−MYCのE3ユビキチンリガーゼとして作用するFBXW7(CDC4)の強力な制御因子であり、T−ALLの症例および他の癌の約20%で変異している(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007)、(Maserら、2007)。他のmiRNAも正常な前駆体および/または分化T細胞で見出されており、おそらく、さらなる変異の状況においてのみその発癌潜在性を達成する。
【0172】
miR−148は、消化管癌(特に胃癌および結腸直腸癌)に関与している(Chen Yら、(2010)J Gastrointest Surgery 14(7):doi:10.1007/s11605−010−1202−2)。miR−148のRT−PCR分析を使用したさらなる細胞株発現研究では、いくつかの肝細胞株(HLF、HLE、およびHepG2細胞)でmiR148発現の増加が認められており(データ示さず)、肝臓癌におけるmiR−148のさらなる役割を意味付けている。
【0173】
本データは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現の測定を血液悪性疾患(T−ALLが含まれる)の診断、特異的治療レジメンに対する応答の予測、および/または治療に対する応答のモニタリングのために使用することができることを示す。これらのデータは、さらに、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223(特に、miR−19b、miR−26a、miR−92、および/またはmiR−223)のアンタゴニスト/アンタゴミアが単独または特に組み合わせて、癌(血液悪性疾患が含まれる)およびmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223を過剰発現する任意の癌または状態に対する候補治療薬であるという証拠を提供する。
【0174】
結果
T−ALL細胞および細胞株で高発現したmiRNAの同定
不偏miRNAライブラリースクリーニングを使用して、ヒトT−ALL中のmiRNA発現パターンを決定した(図19a)。定量的PCR(Mestdaghら、2009)を使用して、異なる細胞遺伝学的群を代表する50種の臨床T−ALL標本(Aifantis,Raetz,& Bu,2008)(TLX1、TLX3、HOXA、およびTAL1/LMO2が含まれる)および一連の18種のヒトT−ALL細胞株中の430種のmiRNAの発現を測定した。10種のmiRNAが高発現されたのに対して、ほとんどの他のmiRNAは辛うじて検出可能であった。これらの「上位10」miRNAは以下であった(発現レベルに関して降順):miR−223、miR−19b、miR−20a、miR−92、miR−142−3p、miR−150、miR−93、miR−26a、miR−16、およびmiR−342(図1b)。全体的なmiRNA発現パターンは細胞遺伝学的群の間で酷似しており、ヒトT−ALL細胞株においても保存されていた(図19c、図20a)。精製前駆体(CD34+およびCD4+CD8+CD3−)細胞集団および正常な(CD4+CD8+CD3+ダブルポジティブ、CD4+シングルポジティブ、またはCD8+シングルポジティブ)T細胞集団との比較により、miR−223発現は白血病特異的に増加し、miR−376およびmiR−662の発現の白血病特異的増加は遥かに小さかったことが明らかとなった(図20bおよびc)。それ故、少数のmiRNAがヒトT−ALLで高発現する。
【0175】
T−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析。次に、コンピュータによるアプローチを使用して、T−ALLの病原に潜在的に重要なmiRNAを同定した。T−ALLの病原に関与する12種の腫瘍抑制遺伝子(具体的には、FBXW7(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007);PTEN(Palomeroら、2007);PHF6(Van Vlierbergheら、2010);PTPN2(Kleppeら、2010);IKZF1(Dailら、2010)、(Winandy,Wu,& Georgopoulos,1995)、(Marcaisら、2010)、(Sunら、1999)、(Mullighanら、2007);NF1(Balgobindら、2008);BCL2L11(Mavrakisら、2010);CDK8;サイクリンC;NLK;RBI;およびp53)の3’UTRを、潜在的なmiRNA結合部位について分析した(Lewis,Shih,Jones−Rhoades,Bartel,& Burge,2003)、(Friedman,Farh,Burge,& Bartel,2009)。予想通り、多数のmiRNAがこれらの遺伝子に結合したので、累積状況スコア(表3)の計算または保存された7mer部位および8mer部位(共に広範に保存されたmiRNAシードファミリーに制限される)の数の加算によって順位を作成した。顕著には、最も高発現した10種のmiRNAのうちの5種も、本分析で最も高くランク付けされたmiRNAに含まれた(p<l e−4(富化についてウィルコクソンを使用))。したがって、miR−19b、miR−20a/93、miR−26a、miR−92、およびmiR−223はT−ALL中で高発現され、T−ALLにおいて腫瘍抑制遺伝子をターゲティングすると予想された。故に、T−ALL標的腫瘍抑制遺伝子において10種の最も豊富に発現したmiRNAのうちの5種がこの癌に関与していた。
【0176】
【表4】
a状況スコアを、予想される部位での状況の特徴(局所AU含量、miRNAの3’末端の予想される結合、3’UTR中の位置)のmiRNAトランスフェクション実験における下方制御の程度と相関させて計算し、このスコアはmiRNA−mRNA相互作用の強度を示す。負の値が大きいほど有効な部位に相当する。−0.1未満の値のみを示す。スコアを、0.1単位まで四捨五入する。
b分析に含まれる12の全遺伝子の和を計算する。
c同一のシード配列を有する相同miRNAを示す。
【0177】
白血病誘発性miRNAの不偏遺伝子スクリーニング。最後に、白血病誘発性miRNAの不偏miRNAライブラリースクリーニングを行った。2工程の同胞選択プロトコールを使用した。簡潔に述べれば、miRNAを、c−MYC(Evanら、1992)(T−ALLにおけるノッチ1の重要な下流エフェクターである)によって誘導されるアポトーシスからマウスMEF細胞を防御する能力について最初にスクリーニングした(Palomeroら、2006)、(Wengら、2006)、(Klinakis,Szabolcs,Politi,Kiaris,Artavanis−Tsakonas,& Efstratiadis,2006)。c−MYC形質導入MEFにレトロウイルスmiRNAライブラリーを感染させ、10%から0.1%への血清濃度の減少後に接着性を保持する細胞を回収し、これらの接着細胞が保有する形質導入miRNAを同定した。この最初のスクリーニングで同定されたmiRNA(高発現したmiR−25/92、miR−19b、およびmiR−223(図21b)が含まれる)が真に白血病誘発に関連し、単に成長停止に関連するのではないことを確実にするために(Seoane,Le,& Massague,2002)、次いで、miRNAを、リンパ球におけるサイトカイン非依存性成長を促進する能力についてスクリーニングした(Mavrakisら、2010)(図21a)。二次ライブラリーを生成するために、一次スクリーニング由来の全miRNAをサブクローニングし、FL5−12リンパ球を、GFPレポーターと共に各miRNAを発現するプールしたベクターで部分的に形質導入した。IL−3枯渇およびGFP発現細胞の富化後、配列分析によって最も豊富なmiRNAを同定した(図21c)。同一のFL5−12リンパ球アッセイにおける最も豊富な各miRNAの再試験により、miR−148a/152、miR−22、miR−19b、miR−101、miR−25/92、およびmiR−20a/106がFL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された(図21d)。
【0178】
相補アプローチにより、T−ALLにおける複数の潜在的な白血病誘発性miRNAを同定する。これらの結果を図21eにまとめている。簡潔に述べれば、FL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された6種のmiRNAは、miR−19b、miR−20/92/106、およびmiR−25/92(miRNAのうちでT−ALL細胞および細胞株中で最も高度に発現し、且つmiRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)、miR−26およびmiR−223(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現する)、およびmiR−148/152(miRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)であった。故に、相補アプローチは、T−ALLにおける一連の潜在的に発癌性のmiRNAを定義する。
【0179】
T−ALLに関与するmiRNAの白血病誘発活性。ノッチ1誘導性T−ALLのマウスモデルを使用して、in vivoで最も有望なmiRNAの発癌潜在性を直接試験した。簡潔に述べれば、HPCを、空のベクターまたはmiRNAのいずれかと共にノッチ1で形質導入し、照射した同系レシピエントに移植した。定期的な血球計数によって動物を白血病発症についてモニタリングした(図22a)。第1に、空のベクター(n=13)と比較したmiR−19b(n=7、p<0.01)による疾患の促進を確認した(Mavrakisら、2010)。類似の疾患の促進が、miR−20a(n=4、p<0.001)、miR−26a(n=5、p<0.001)、miR−92(n=5、p=0.02)、およびmiR−223(n=7、p<0.01)を用いて見出された。典型的には、これらのmiRNAで形質導入したHPCを投与した動物が75日目までに急性白血病を発症する一方で、miR−30を投与したベクターコントロールまたは動物(n=5、p=0.15)の80%超がこの時点で無疾患のままである(図22b)。in vitroでのスクリーニングおよび予想に基づいて、さらなるmiRNAを試験した。具体的には、miR−148は有意な疾患の促進に関連し(n=7、p<0.01)、miR−27は疾患促進の強い傾向を示した一方で(n=5、p=0.05)、miR−23(n=5、p>0.05)やmiR−24(n=5、p>0.05)はいかなる影響も示さなかった(図23a)。病理学的分析により、全白血病がCD4+CD8+ダブルポジティブT−ALLであり(図21b)、Ki67によって高増殖性を示し、TUNELによるアポトーシスを欠き、白血病動物の肺、肝臓、および脳に広く浸潤したことが明らかとなった(図22c)。定量的PCRは、コントロール由来の白血病細胞と比較してレトロウイルスで送達されたmiRNAによって駆動された白血病細胞における2倍および6倍のmiRNAの発現の増加を証明した(図23c)。したがって、マウスT−ALLモデルにおける癌遺伝子としてmiR−19b、miR−20a、miR−26a、miR−223が挙動し、より少ないmiR−27aおよびmiR−148/152も挙動する。
【0180】
T−ALLに関与するmiRNAによってターゲティングされる遺伝子。ノッチ1誘導性T−ALLの発症を促進するmiRNAは、miRNA標的遺伝子のコンピュータ分析で最高位にランク付けされたmiRNAのうちで有意に富化されるようである(シード数または状況スコアについての経験的p値はp<1 e−4)(表3)。この所見を、不偏機械学習アプローチを使用して試験した。簡潔に述べれば、lasso回帰を使用して、白血病誘発性miRNAとノッチ1誘導性T−ALLの発症を促進しなかった無作為選択したmiRNAの群との間を区別する標的遺伝子を同定した。少数のポジティブトレーニング例(白血病誘発性miRNA)のみが利用可能であったので、異なるネガティブトレーニング組を使用して学習手順を50回反復することによって安定性分析を行った。FBXW7(46/50ランで同定)、BCL2L11(21/50ラン)、およびPTEN(11/50ラン)は、15種の遺伝子のうちでこの分析で最も頻繁に同定された。
【0181】
これらの標的遺伝子予測を、マウス白血病の3’UTRレポーターアッセイ(図24a)の使用、定量的PCR(図24b)、および免疫ブロット(図24c〜g)アッセイによって実験的に試験した。miR−19bは、PTENおよびBCL2L11発現を制御する(Mavrakisら、2010)。miR−20aはBCL2L11に類似の影響を及ぼし、miR−20aおよびmiR−26aの両方は白血病細胞中のPTENおよびPHF6タンパク質ならびにmRNAのレベルを減少させる。miR−27aおよびmiR−148aは、IKZF1、NF1、およびFBXW7を制御する。同様に、miR−92はIKZF1およびFBWX7に影響を及ぼすが、マウスNF1をターゲティングしない。予想通り、miR−223は、FBXW7レポーター活性およびタンパク質レベルを強力に制御する。miRNA形質導入FL5−12細胞における所見により、これらの結果が強く確認された(図25)。それ故、白血病誘発性miRNAは、T−ALLにおいて6種の腫瘍抑制遺伝子に部分的に重複する影響を及ぼす。
【0182】
これらの腫瘍抑制遺伝子の生理学的有意性を確実にするために、同一のマウスノッチ1誘導性T−ALLモデルを使用してノックダウン分析を行った。簡潔に述べれば、PTEN(Mavrakisら、2010)、BCL2L11(Mavrakisら、2010)、NF1、PHF6、およびFBXW7(図26)、ならびにドミナントネガティブIKZF1対立遺伝子(Dn−Ikzf1)(Beverly & Capobianco、2003)に対するshRNAを、上記の同一の養子移入モデルで使用した。これらの実験により、PTEN(n=3、p<0.05)およびBCL2L11(n=6、p<0.01)(Mavrakisら、2010)ならびにNF1(n=6、p<0.01)、PHF6(n=3、p<0.05)、およびDn−Ikzf1(n=10、p<0.01)に対するshRNAによるノッチ1誘発白血病の発症の促進が確認された。FBXW7は傾向を示したが、有意性には到達しなかった(n=4、p=0.1)(図27a)。shRNAおよびmiRNAはその機構およびおそらくその標的ノックダウン効率が異なり得るが、これらの結果はノッチ1誘発性T−ALLにおけるこれらの遺伝子の腫瘍抑制機能を示す。
【0183】
T−ALLに関与するmiRNAに対するアンタゴミアの抗白血病活性。複数のmiRNAによる腫瘍抑制遺伝子制御の多面性および部分的に重複するパターンを考慮して、2つのヒトT−ALL細胞株(T−ALL1およびKoptk1)の成長速度および生存度に及ぼすmiRNAアンタゴミアの影響を評価した。ヒトT−ALL1細胞株は、高レベルのmiR−19a、miR−19b、miR−26a、およびmiR−92を発現するが、他のmiRNA(例えば、miR−148aおよび無作為選択したmiR−182は低レベルでしか発現されない(図27b挿入図)。miR−19a/b、miR−26a、およびmiR−92に対するアンタゴミアは、成長速度を低下させ(図27b)、細胞生存度を有意に減少させ(p<0.05;ベクターと比較した各アンタゴミア)(図27c)、腫瘍抑制遺伝子PTENおよびBCL2L11を脱抑制する(図27dおよびe)。対照的に、miR−148aおよびmiR−182に対するアンタゴミアは、PTENまたはBCL2L11の増殖、生存度、発現に有意な影響を示さなかった(p>0.05)。Koptk1細胞株における結果は、T−ALL1細胞株における結果と類似していた(図28)。同様に、miR−223に対するアンタゴミアは、T−ALL1、Koptk1、およびJurkatT−ALL細胞株における細胞増殖を減少させる(図29)。それ故、各miRNAは、T−ALLにおける生存度および腫瘍抑制遺伝子発現に寄与して影響を及ぼし、したがって、これらのmiRNAをターゲティングするアンタゴニストまたはアンタゴミアはT−ALL患者の処置における有用な薬剤であること予想される。
【0184】
共通の標的遺伝子に結合するmiRNAは協同的抗白血病効果を示す。miR−19a/b、miR−26a、およびmiR−92に対するアンタゴミアの同時発現は、個別のアンタゴミアよりもT−ALL1細胞の成長に強い影響を及ぼした(p<0.001、組み合わせアンタゴミア対ベクター)(図27b)。細胞生存度に及ぼす影響はさらにより明白であり、短期アッセイにおいて3つのアンタゴミアのアポトーシスが個別のアンタゴミアにおけるものの2倍であった(図27c)。したがって、併用処置により、個別のアンタゴミアと比較してBCL2L11およびPTEN発現がより大幅に増加した(図27dおよびe)。同様に、miR19bおよびmiR−92またはmiR−19b、miR−26a、およびmiR−92の同時発現は、BCL2L11およびPTENの3’UTRレポーター活性にそれぞれさらなる影響を及ぼした(図27fおよびg)。したがって、高発現miRNA群は、ヒトT−ALL細胞において協同的効果を示す。したがって、これらのmiRNA群をターゲティングするアンタゴニストまたはアンタゴミアの投与は、T−ALL患者の処置において付加的または相乗的利点を有すると予想される。
【0185】
材料と方法
T−ALL患者サンプル。50人のT−ALL患者の診断用骨髄サンプルを、異なる欧州の施設から得た(UZ Ghent,Ghent;UZ Leuven,Leuven;Hopital Purpan,Toulouse;CHU de Nancy−Brabois,Vandoeuvre−Les−Nancy)。得られたT−ALL患者のコホートは、15人のTAL/LMO(7人のLMO2再配列および8人のSIL−TAL)、12人のHOXA(4人のMLL再配列、6人のinv(7)(p15q35)、および2人のCALM−AF10)、10人のTLX3および5人のTLX1再配列患者のサンプルからなる。残りの8人のT−ALL患者を、既知のT−ALL亜群に分類することができない。白血病サンプル由来の総RNAを、以前に記載のように(Van Vlierbergheら、2006)TRIzol試薬(Invitrogen,Belgium)を使用して単離した。本研究(2008/531)は、Medical Ethical Commission of Ghent University Hospital(Belgium)によって承認された。
【0186】
T−ALL細胞株。18種のT−ALL細胞株(DND−41、MOLT−16、CCRF−CEM、RPM1−8402、ALL−SIL、KE−37、BE−13、HSB−2、HPB−ALL、LOUCY、PF−382、PEER、MOLT−3、CUTLL1、CTV−1、P12−ICHIKAWA、T−ALL1、およびKOPTK1)およびHEK−293T細胞株を、15%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%カナマイシン、および1%グルタミンを補足したRPMI−1640培地(Invitrogen,Belgium)中で培養した。白血病細胞株由来の総RNAを、製造者のプロトコールにしたがってmiRNeasyミニキット(Qiagen,Belgium)を使用して単離した。
【0187】
正常なT細胞集団のサブセット。Medical Ethical Commission of Ghent University Hospital(Belgium)のガイドラインにしたがって、小児胸腺を入手し、使用した。5つの正常なT細胞集団のサブセット(CD34+、CD3−CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8−、およびCD3+CD4−CD8+)を、Cellquestソフトウェアを使用したFACSVantage蛍光標示式細胞分取器(FACS)での細胞の分取またはMACSおよびマイクロビーズの使用によって得た(Van de Walle、ら、.、2009)。CD34+胸腺細胞を、CD34マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用したMACSの使用によって小児胸腺から得た。ダブルポジティブ(DP)CD3−CD4+CD8+およびCD3+CD4+CD8+T細胞を、CD3−フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、CD8−フィコエリトリン(PE)、およびCD4−アロフィコシアニン(APC)での総胸腺懸濁物の染色によって分取した。シングルポジティブCD3+CD4+CD8−およびCD3+CD4−CD8+T細胞を分取するために、Dynabeads(Dynal Biotech)の使用によって未熟なCD1+胸腺細胞の枯渇を最初に行い、より成熟した細胞が豊富な得られた集団を、その後にCD3−FITC、CD8−PE、およびCD4−APCで標識した。正常なT細胞集団の異なるサブセットの純度は、常に少なくとも98%であった。総RNAを、製造者のプロトコールにしたがってmiRNeasyミニキット(Qiagen,Belgium)を使用して単離した。
【0188】
マイクロRNAプロファイリング。miRNAの高処理リアルタイム定量を、miRNA cDNA合成のためのステムループ逆転写酵素(RT)プライマーの使用によって行い、その後に予備増幅工程およびTaqman PCR分析(Applied Biosystems,Belgium)を行った(Chenら、2005)。簡潔に述べれば、白血病患者サンプル、白血病細胞株、または正常なT細胞サブセット由来の20ngの総RNAを、448種のスモールRNA(430種のmiRNAおよび18種のスモールRNAコントロールを含む)のmiRNA cDNA合成のためのmegaplexRTステムループプライマープールの使用によって逆転写した。次に、cDNAの予備増幅を、Taqman PreAmpマスターミックス(2x)およびPreAmpプライマーミックス(5×)(Applied Biosystems,Belgium)(miRNA特異的順方向プライマーおよびユニバーサル逆方向プライマーからなる)の使用による14サイクルPCR反応にて行った(Mestdaghら、2008)。最後に、448種のスモールRNAを、40サイクルPCRプロトコールを使用して各サンプルについてプロファイリングした。リアルタイムRT−PCR反応を、全て、遺伝子最大化ストラテジーを使用して7900HT(Applied Biosystems,Belgium)にて行った(Hellemans,Mortier,De Paepe,Frank Speleman,& Jo Vandesompele,2007)。SDSソフトウェアバージョン2.1を使用して、自動ベースライン設定および閾値0.05にてraw Cq値を計算した。本発明者らは、定量的PCRデータの正規化のための正規化因子として所与のサンプル中の全発現miRNAの平均発現値を使用した。Cq値35超のmiRNAを、非発現と見なした(Mestdaghら、2009)。
【0189】
細胞培養、生存度、増殖アッセイ、およびベクター構築物。FL5−12マウスプロBリンパ球、細胞周期およびアポトーシス研究、ならびにウイルス形質導入は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)、(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。T−ALL細胞株(Jurkatが含まれる)を、10〜20%ウシ胎児血清,100U/mlペニシリンG、および100μg/mlストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地中で5%CO2下の加湿環境にて37℃で培養した。全ベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づき、記載の全miRNAをコードするmiRNA発現ベクター(Heら、2005)、ノッチ1−ICN(Pearら、1996)、および各shRNAベクター(shRNAによるタンパク質ノックダウン;図10)が含まれる。miRNAプールライブラリー(Heら、2005)はG.J.Hannonから惜しみなく提供され、約300個のmiRNAを含むようにPCRクローニングによって拡大されている。アンタゴミアMZIP19a−PA−1、MZIP19b−PA−1、MZIP26a−PA−1、MZIP92a−PA−1、MZIP148a−PA−1、MZIP182−PA−1、MZIP223−PA−1、およびスクランブルドコントロール(MZIP000−PA−1)は、System Biosciencesから入手した。
【0190】
ライブラリースクリーニング。一次スクリーニングは、MEFにおけるc−MKC誘導性アポトーシスに基づく(Evanら、1992)。MEFを、c−MYCおよびmiRNAライブラリーで形質導入し、均一なc−MYC発現を選択するためにピューロマイシン中で培養し、アポトーシスを、10%から0.1%への血清希釈によって誘発した。生存細胞は接着性を示したままであり、これらをDNA単離、組み込んだmiRNAライブラリー構築物のPCR増幅、pGEM−Tベクターへのサブクローニング、細菌形質転換、および約100コロニーの配列同定のために回収した。二次ライブラリーを、一次スクリーニング由来の全miRNAのMSCV構築物へのサブクローニングによって構築した。二次スクリーニングは、in vitroでのFL5−12リンパ球のIL−3依存性に基づく(Mavrakisら、2010)、(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。FL5−12細胞をプールしたGFPタグ付きライブラリーで部分的に形質導入し、IL−3枯渇によって選択した。miRNAを上記のように同定した。各miRNAを、その後に同一のFL5−12アッセイおよびin vivoで検証した。
【0191】
マウスの生成。マウスT−ALLモデルが報告されている(Pearら、1996)、(Wendelら、2004)。データを、統計的有意性についてのログランク(Mantel−Cox)検定を使用してカプラン・マイヤー形式で分析した。表面マーカー分析は記載の通りであった(Wendelら、2004)。
【0192】
ウェスタンブロット分析。全細胞溶解物の免疫ブロットを記載のように行った(Wendelら、2004)。抗体は以下に対する抗体であった:Bim/Bcl2111(AAP−330、1:1000、Assay Designs)、Nf1(sc67、1:100、Santa Cruz)、Cdc4/Fbxw7(ab7405、1:500、Abeam)、Ikzf1(sc−13039、1:500、Santa Cruz)、Phf6(NB100−79861、1:1000、Novus Biologicals)、Pten(9559,1:1000、Cell Signaling)、チューブリン(1:5000;Sigma、B−5−1−2)、およびアクチン(1:5000;Sigma、AC−15)。
【0193】
遺伝子発現についてのリアルタイム定量的PCR。総RNAおよびmiRNA富化RNAを、Allprep DNA/RNA/ProteinおよびmiRNeasyミニキットを使用して抽出した。病理学的診断を、Weill Cornell Medical Centerの熟達した血液病理学者が行った。cDNA合成、PCR、およびΔΔCt法による分析は記載の通りであり(Mavrakisら、2008)、Taqman遺伝子発現アッセイを使用した:Bcl2111(Mm00437796_m1)、BCL2L11(Hs00197982_m1)、Pten(Mm01212532_m1)、PTEN(Hs02621230_s1)、 Nf1(Mm00812430_ml)、NF1(Hs01035104_m1)、Ikzf1(Mm01 187878_ml)、IKZF1(Hs00172991_m1)、Fbxw7(Mm00504452_m1)、FBXW7(Hs0021 7794_m1)、Phf6(Mm00804415_m1)、およびマウスGAPD(GAPDH)(4352932,Applied Biosystems)。発現を、RNU6B(001093,Applied Biosystems)に対して正規化した。
【0194】
miRNA−標的遺伝子相互作用のコンピュータ分析。
【0195】
トレーニングデータ。教師つき学習アプローチを行って、全スクリーニングを通過したmiRNA(+1クラス)と通過しなかったmiRNA(−1クラス)とを区別することができる小さな標的遺伝子組を不偏的方法で同定するように試みた。ポジティブmiRNAに共通の標的遺伝子組を同定するためにデザインしたが、本アプローチはまた、ネガティブmiRNAによって共通にターゲティングされる遺伝子を同定することができる。スクリーニングによって検証されたmiRNA(miR−19、miR−20/93、miR−25/92、miR−148、miR−26a、miR−223、miR−27ab)を、ポジティブトレーニングデータ(+1クラス)として使用した。最終段階で検証できなかった3種のmiRNA(miR−30a、miR−23a、miR−24)およびT−ALL中で高発現されたが、最初のスクリーニングで検証できなかった5種のさらなるmiRNA(miR−142−3p、miR−150、miR−342−3p、miR−146、miR−16)を、ネガティブトレーニングデータ(−1クラス)として使用した。
【0196】
標的の予想。各miRNAのシード配列(位置2:8)を使用して、保存mRNA標的を、相補配列がマウスおよびヒトオルソログの両方の3’UTRで生じる標的と定義した。両UTR由来の最小数のシードマッチを、各miRNA:mRNA対の保存された7mer計数(count)として使用した。Biopythonを使用して、Refseq(リリース42)を使用してマウスおよびヒトの3’UTR配列を抽出した。複数のRefSeq転写物が単一の遺伝子に認められる場合、最長の3’UTRを使用した。
【0197】
lasso回帰。lasso回帰を使用して、ポジティブmiRNAとネガティブmiRNAを区別する遺伝子組を同定した。このアプローチでは、各miRNA(ポジティブまたはネガティブ)を、全ての可能な遺伝子にわたって保存された7merのシード計数のそのベクトルXmiRによって示す。この回帰は、ポジティブ(resp.ネガティブ)miRNAの保存された7merのシード計数の加重和が+1(resp.−1)に近いように、遺伝子にわたる重みベクトルwを学習する。回帰モデルにおけるlasso拘束によって散在を促す(すなわち、ほとんどの遺伝子は0に等しい重み(回帰係数)を有する)。この方法では、lasso回帰は、2クラス間を区別することができる少数の標的遺伝子を同定する。以下の式により、最適化問題は解決される。
【0198】
【数2】
(式中、ymiRは有効なmiRNAについては+1であり、有効でないmiRNAについは−1であり、ΧmiRは保存された7mer計数のベクトルであり、λは10の非ゼロ重みを与えた正則化パラメーターである)。lasso回帰を、Bioconductorのglmnetパッケージを使用して行った。
【0199】
miRNAの富化。表3中のmiRNAの富化の経験的p値を、ヒト遺伝子の全リスト(3’UTRおよび標的の予想が可能であった)由来の(腫瘍抑制遺伝子組と等しいサイズの)遺伝子の10,000個のランダムサンプルの選択によって決定した。これらのランダム遺伝子組のそれぞれの各miRNAファミリーのスコアの和を計算した。次いで、miRNAファミリーを、これらのスコアにしたがってランク付けし、これらのランク付けについての富化スコアを、ポジティブmiRNA(全スクリーニングを通過)と全ての他のmiRNAとを比較するウィルコクソン順位和検定によって決定した。この手順を、(i)保存シードマッチ数および(ii)TargetScanによって定義された3つの異なるmiRNAシードファミリー組((a)全ファミリー;(b)保存ファミリー;(c)広く保存されたファミリー)を使用したTargetScan由来の状況スコアについて繰り返した。
【0200】
miRNA−3’UTR相互作用の分析。Targetscan5.1ソフトウェアを使用した腫瘍抑制遺伝子組にわたる所与のmiRNAの予想される結合部位の状況スコアの和による部位有効性の累積的測定に基づいて順位を決定した(Lewis,Shih,Jones−Rhoades,Bartel,& Burge,2003)、(Friedman,Farh,Burge,& Bartel,2009)。
【0201】
ルシフェラーゼアッセイ。マウスFBXW7(bp2793−4139;受入番号NM_001 177773)、ヒトNF1(bp10033−10666;受入番号NM_000267)、ヒトPHF6(bpの位置3271−4299;受入番号NM_001015877)、およびBim(bp.3155−4773;受入番号NM_009754)3’UTRフラグメントをPCRによって生成し、Genecopoeiaから購入したIKZF1 3’UTR(カタログ番号HmiT000397b,UTRのbp2343−4471)以外をpsi−CHEC−2ベクター(Promega)にクローニングした。アッセイを記載のように行った(Xiaoら、2008)。
【0202】
参考文献
【0203】
【化4】
【0204】
【化5】
【0205】
【化6】
【0206】
【化7】
本発明を、その精神または本質的特質から逸脱することなく、他の形態で具体化するか、他の方法で実施することができる。したがって、本開示は、全ての態様において例示であって本発明を制限しないと見なされ、発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって示され、等価の意図および範囲内に含まれる全ての変更形態が本発明内に含まれることが意図される。したがって、概要、説明、材料と方法、および図面は、制限よりもむしろ例示とみなされる。
【0207】
種々の参考文献(特許および公開された刊行物が含まれる)が本明細書を通して引用されており、その各々の全体が本明細書中で参考として援用される。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌(血液悪性疾患、特にT細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)が含まれる)の診断、管理、および処置、ならびに処置に対する応答の予測および評価に関する。本発明は、癌(血液学的悪性疾患(T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)など)が含まれる)に関連するマイクロRNA(miRNA)ならびに癌の処置および管理におけるその評価および調整に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌(血液悪性疾患が含まれる)の処置ならびに特定の処置レジメンに対する癌および癌細胞の応答の予測および評価への従来のアプローチは、存在する腫瘍型の適切な分類に依る。適切な分類は、今度は、臨床的特徴、腫瘍細胞の形態学、腫瘍細胞の免疫表現型に主に依存し、より少ない程度に、腫瘍細胞の染色体異常に依存する。しかし、所与の腫瘍型の範囲内でさえ、特定の処置レジメンに対する応答は、しばしば、非常に多様であり、分子レベルでの分析により、従来の分類スキームによって定義された腫瘍型がしばしば非常に不均一であることが明らかである。
【0003】
したがって、腫瘍(血液悪性疾患が含まれる)を分類するための最近の試みは、特定の腫瘍型の成長または病理学を駆動する特異的遺伝子異常または分子誘発因子の同定に集中している。次いで、かかる遺伝子異常または分子誘発因子は、疾患のマーカーおよび/または治療の標的として役立ち得る。全てではないがほとんどのヒト悪性疾患におけるマイクロRNA(miRNA)の異常な発現が関連していると見なされる証拠が増大しており、これらが実際に腫瘍抑制因子または癌遺伝子のいずれか/両方として作用することができ、共通の経路を有し得る多数の癌または特定のmiRNAイニシエーターまたはモジュレーターを有する特異的癌で効果があり得ることを示唆している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。
【0004】
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の調節によって作用する(Bartelら、(2004)Cell 116:281−297)。miRNAは、Caenorhabditis elegansにおいて発達欠損を引き起こす変異の分析によって最初に発見され(Lee R.C.ら、(1993)Cell,75,843−854)、miRNA発現の変化がヒト癌(白血病が含まれる)でさらに証明されている(Calin G.A.ら、(2004)PNAS USA 101:1 17555−11760;HayashitaYら、(2005)Cancer Res 65:9628−9632;Johnson S.M.ら、(2005)Cell 120:635−647;Lu Jら、(2005)Nature 435:834−838;Venturini Lら、(2007)Blood 109:4399−4405)。マイクロRNA(miRNA)は、相補的なメッセンジャーRNA(mRNA)標的配列への多タンパク質複合体のハイブリッド形成および動員による配列特異的様式で遺伝子発現を調節する。miRNA機能を、アンタゴミア(antagomir)(個別のmiRNAに相補的な化学修飾したオリゴヌクレオチド)によって一過性にアンタゴナイズすることができる。
【0005】
単一のmiRNAは数百のメッセンジャーRNAをターゲティングすることができ、それにより、その各遺伝子由来のタンパク質産物を調整することができる(Bartel DP(2009)Cell 136:215−233)。したがって、単一または特定のmiRNA組は、単一または相関する細胞事象(例えば、細胞増殖)と調和する少数の重要なタンパク質の産生の調節によって個別の生理学的過程を調節することができる(Baltimore Dら、(2008)Nat Immunol 9:839−845;Bartel DP(2009)Cell 136:215−233)。
【0006】
miRNAの17〜92クラスターが造血系癌(hematopoietic cancer)中で高発現し、in vivoでのリンパ球増殖およびc−Myc誘導白血病誘発/リンパ腫誘発を増強する(Heら、2005)(Xiaoら、2008)。17〜92クラスターおよびそのパラログも多様な固形腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓、前立腺、胃由来の腫瘍が含まれる)で発現する(Voliniaら、2006)(Petroccaら、2008)。しかし、これまでのところ、個別のmiRNA(特に、ポリシストロニック転写物(17〜92クラスターなど)上にコードされるもの)によって調節される標的の機能はほとんど知られていない。
【0007】
多数のmiRNAが公知であり、且つ同定されているにも関わらず(公知のmiRNAは、公開データベース(miRBaseデータベース(mirbase.org);Griffiths−Jones S(2003)Methods Mol Biol 342:129−138)が含まれる)による配列の情報および特徴を有する名称によってアクセス可能であり、疾患の開始および/または進行におけるその特異的役割ならびに治療のための標的または疾患(癌が含まれる)のモジュレーターとしてのその特定の価値の大部分が依然として明確に定義されていない。したがって、癌(特定の癌が含まれる)における個別または集合的なmiRNAの関連についての具体的な解明、疾患の診断および管理、ならびに癌の個別または集合的なmiRNAに対する特定の治療の開発が当該分野で依然として必要であることが明らかなはずである。
【0008】
本明細書中の参考文献の引用は、かかる参考文献が本発明の先行技術であることを承認すると解釈されないものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Visone RおよびCroce CM、Am J Pathology(2009)174(4):1131〜1138
【非特許文献2】Garzon Rら、Ann Rev Med(2009)60:167〜179
【非特許文献3】Lui W−Oら、Cancer Res(2007)67(13):6031〜6043
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
その最も広い態様では、本発明は、癌(血液悪性疾患が含まれる)の診断および処置ならびに処置に対する応答の予測および評価のための方法および組成物に及ぶ。特異的miRNAを、癌(特に、血液学的悪性疾患、特に、白血病およびリンパ腫)の病原における関与因子として提供し、疾患の予防、処置、または緩和における有効な標的として証明されている。
【0011】
本明細書中に示したデータは、miRNA(特にmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223)が癌(T細胞急性リンパ球性白血病(T−ALL))におけるmiRNA発現の大部分を占めることを証明している。まとめると、新規のmiRNA組(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223)は、種々の癌の病原に関与する腫瘍抑制遺伝子の共通する組(PTEN、BCL2L11、NF1、FBXW7、IKZF1、およびPHF6が含まれる)の活性を下方制御する。これらのmiRNAは、現在、その発現に及ぼす重複し且つ協同的な影響によって腫瘍抑制遺伝子を(特に、T−ALLにおいて)調整することが証明されており、動物モデルにおいてT−ALLを促進することができる。
【0012】
本発明によれば、1つ以上のmiRNA(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現を、血液悪性疾患(T−ALLが含まれる)の診断、特定の治療レジメンに対する応答の予想、および/または治療に対する応答のモニタリングのために使用することができる。miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223(特にmiR−19b、miR−26a、miR−92、および/またはmiR−223)のアンタゴニスト/アンタゴミアは、単独または特に組み合わせて、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現の変化または過剰発現を示す癌(血液悪性疾患および任意の癌または状態が含まれる)に対する候補治療薬である。
【0013】
本発明は、特異的miRNA(特に、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、または全て)の特異的阻害のための方法および組成物を介した癌の調整方法に関する。本発明の組成物および方法は、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現および/または活性を阻害する。特に、本発明は、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の特異的阻害のための遺伝子アプローチおよび核酸を提供する。1つ以上の本発明のmiRNAの特異的阻害の際に発癌および白血病誘発が破壊され、腫瘍細胞または癌細胞の増殖が阻害されることを本明細書中に証明する。
【0014】
本発明は、miRNA(特に、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223が含まれる)の発現および活性を特異的に阻害または遮断するオリゴヌクレオチドおよび核酸を提供する。miRNAのアンタゴミアを本明細書中に提供して評価し、抗発癌活性および抗白血病誘発活性が証明された。本発明の1つの態様では、1つ以上のmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223に相補的な核酸のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび発現は、1つ以上のmiRの発現および/または活性を特異的に阻害し、miRNA媒介性の腫瘍発生および癌細胞増殖を遮断する。
【0015】
miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに相補的な1つ以上のアンタゴミアを含む血液学的悪性疾患の処置用の組成物を本明細書中に提供する。本発明は、さらに、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む血液学的悪性疾患の処置用の組成物を提供する。本発明の1つの態様では、血液学的悪性疾患は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される。特定の態様では、悪性疾患は、白血病、特にT−ALLである。
【0016】
本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む癌の処置用の組成物を含む。組成物は、特に、miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0017】
さらなる実施形態では、本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される本明細書中に提供した少なくとも1つのmiRNA配列に実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。アンタゴニストまたはアンタゴミアは、表1に示すmiRNA標的配列に実質的に相補的であり得る。特に、本発明のアンタゴミア、アンタゴニスト、またはオリゴヌクレオチドは、表1に示す配列番号1〜10の群から選択されるヌクレオチドまたは1つ以上の配列番号1〜10のmiRNA配列の発現または活性を阻害するのに十分なそのヌクレオチドのサブセットに実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。本発明は、表2に示すか配列番号11〜15に示す配列群から選択される1つ以上の配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。
【0018】
本発明の組成物の1つの態様では、1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。特定の態様では、本発明のアンタゴミア、核酸、およびオリゴヌクレオチドを、核酸の化学的骨格の操作または他の部分の共有結合または非共有結合のいずれかによって修飾することができる。各場合または任意の場合では、かかる操作または結合は、安定性、細胞、組織、または器官の取り込みを修飾するか、そうでなければ、核酸およびオリゴヌクレオチドの有効性を増強するのに役立ち得る。本発明のさらなる態様では、アンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドの取り込み、安定性を増強するか、ターゲティングするのに役立ち得る他の分子(ポリペプチド、炭水化物、脂質または脂質様部分、リガンド、化学物質または化合物が含まれるが、これらに限定されない)に共有結合させることができる。
【0019】
本発明の組成物は、さらに、抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤(anti−mitotic agent)、アポトーシス剤(apoptotic agent)または抗体、または免疫調節薬から選択される1つ以上のさらなる化合物を含むことができる。本発明の組成物を、単独または他の処置、治療薬、または薬剤と組み合わせて、処置すべき状態に応じて同時または逐次的に投与することができる。さらに、本発明は、1つ以上の本明細書中に記載の特異的miRアンタゴニスト/アンタゴミアおよび他の薬剤または治療薬(抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤、アポトーシス剤または抗体、または免疫調節薬など)を含む組成物を意図し、且つ含む。より一般的には、これらの抗癌剤は、チロシンキナーゼインヒビターまたはリン酸化カスケードインヒビター、翻訳後調節因子、細胞成長インヒビターまたは細胞分裂インヒビター(例えば、有糸分裂阻害薬)、インヒビター、またはシグナル伝達インヒビターであり得る。他の処置または治療は、適切な用量の鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェン、またはケトプロフェン)またはアヘン薬(モルヒネなど)など)、または制吐薬の投与を含むことができる。さらに、組成物を、免疫応答を刺激し、癌細胞または腫瘍を減少または消失させる免疫調節薬(インターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)または他の成長因子、コロニー刺激因子、サイトカイン、またはホルモン(デキサメタゾンなど)など)と共に投与することができる。組成物を、抗腫瘍抗原抗体と共に投与することもできる。
【0020】
本発明は、治療有効量のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物を含む。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、一定の治療方法に関し、この治療方法は、miRNAの活性およびその調整(特に、発癌または白血病誘発に関連する1つ以上のmiRNAの活性および/または発現の阻害)に基づくであろう。例えば、薬物またはmiRNAへの他の結合パートナー(アンタゴミア(anagomir)またはオリゴヌクレオチドなど)を、例えば、miRNA発現または活性を阻害する(例えば、抗癌治療を増強する)ために投与することができる。
【0022】
miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から特に選択される1つ以上のmiRNAの発現を阻害するための方法を提供する。特に、1つ以上のmiRNAを発現する細胞を有効量の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させ、それにより、1つ以上のmiRNAの発現または活性が阻害される工程を含む、本発明で関連することが示された1つ以上のmiRNAの発現を阻害する方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における本発明のmiRNAの発現またはそのmiRNAの増大した発現に関連する状態(癌または他の過剰増殖障害など)を処置または予防する方法を含む。この方法の1つの態様では、この化合物または薬剤は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223の1つ以上のmiRNAと特異的にハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアである。
【0024】
さらなる態様では、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における癌を処置するか、その進行を阻害する方法を含む。本発明の方法に感受性を示す癌には、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌(gastric cancer)、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌(stomach cancer)、食道癌、および前立腺癌の群から選択される癌が含まれる。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0025】
本発明は、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される腫瘍抑制遺伝子の発現を増強または増大させる方法を提供し、この方法は、上記腫瘍抑制遺伝子のうちの1つ以上を発現することができる細胞をmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させる工程を含む。1つの態様では、上記方法は、細胞をmiR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに実質的に相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させる工程を含む。
【0026】
本発明は、さらに、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を阻害する1つ以上の化合物を投与する工程を含む、miR17〜92クラスターが増幅または過剰発現される癌を処置または緩和する方法を提供する。1つの態様では、方法は、miR−19、miR−26、およびmiR−92を阻害する1つ以上の化合物を投与することを含む。
【0027】
本発明の診断上および医学上の有用性は、哺乳動物(特に、ヒト患者)における癌、悪性疾患、リンパ腫、および/または白血病をスクリーニングするか評価するためのアッセイにおける本発明の使用に及ぶ。したがって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を評価する、癌のモニタリング方法および/または処置に対する応答の評価方法を提供する。1つのかかる態様では、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される癌に関連する少なくとも2つのmiRNAの活性を決定および評価し、癌または癌処置に対する応答を分子レベルなどでモニタリングまたは評価する。例えば、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現および/または活性の減少は、予後の改善または癌処置もしくは治療薬に対する正の応答に関連し得る。本発明は、さらに、miRNAの存在程度の定量分析またはその活性を模倣または遮断することができる薬物または他の薬剤の同定のための試験キットの形態で調製することができるアッセイ系を含む。
【0028】
本発明の1つの態様では、哺乳動物における癌をモニタリングするための、または癌治療に対する応答を評価するための方法を提供し、この方法は:
(a)上記哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)上記サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を、参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、少なくとも2つのmiRNAの発現または活性が参照サンプルと比較して変化する。本方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が変化する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は血液学的悪性疾患である。
【0029】
さらに、癌に関連する1つ以上のmiRNAの発現を阻害する化合物または薬剤を同定するための方法を提供し、この方法は:
(a)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAを発現する細胞をインキュベートする工程、および
(b)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される上記miRNAの発現または活性を検出または測定する工程
を含み、それにより、
上記候補化合物または薬剤の存在下 対 上記候補化合物または薬剤の非存在下でのmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される上記miRNAの発現の減少が、上記化合物または薬剤がmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現を阻害することを示す。
【0030】
したがって、本発明は、血液学的悪性疾患の処置または予防のための化合物を同定するための方法を提供し、ここで、上記化合物が上記悪性疾患に関連するmiRNAの発現または活性をアンタゴナイズするかまたは阻害し、上記方法は:
(a)化合物をmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAを発現する細胞と接触させる工程、および
(b)上記miRNAのうちの1つ以上の発現または活性を決定する工程
を含み、
ここで、上記miRNAの発現または活性が阻害されるか減少する。
【0031】
方法の1つの態様では、上記1つ以上のmiRNAの発現または活性を、上記miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性または発現、または上記miRNAを発現する白血病細胞またはリンパ腫細胞の成長または生存度の決定によって評価する。方法のさらなる態様では、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子は、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される。さらなる態様では、白血病細胞またはリンパ腫細胞がT−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株である方法を提供する。
【0032】
本発明は、哺乳動物における血液学的悪性疾患を検出または評価するための方法を含み、この方法は:
(a)上記哺乳動物から血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程を含み、
1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する。
【0033】
本発明は、哺乳動物における癌を検出または評価するための方法を含み、この方法は:
(a)上記哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)上記サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
上記miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する。
【0034】
上記方法の1つの態様では、2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。上記方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0035】
本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、検出可能な標識で標識することができる。特定の態様では、標識を、酵素、リガンド、蛍光を発する化学物質、および放射性元素から選択することができる。放射性標識(同位体3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reなど)を使用する場合、公知の現在利用可能な計数手順を使用することができる。標識が酵素である場合、当該分野で公知の現在使用されている比色分析技術、分光光度的技術、蛍光分光光度的技術、電流測定技術、または気体定量技術のうちのいずれかによって検出することができる。
【0036】
他の目的および利点が、以下の例示的な図面を参照して進行する以下の説明の再検討から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】miR−19は、in vitroでのサイトカイン依存性生存を増強する。(a)17〜92クラスター(「オンコミア−1」が含まれる)およびそのパラログのゲノム構成。同色で示したmiRNAは、共通のシード配列を有する。(b)不死化FL5−12リンパ球のサイトカイン依存性生存についての競合アッセイの略図。(c)miR−19で形質導入したFL5−12細胞がIL3枯渇の際に拡大し、一方、空のベクターまたは他の17〜92miRNAで形質導入した集団では拡大しないことを示すFACSプロフィール。
【図2】miR−19は、in vitroでのリンパ球生存を増強する。(a)1日目の細胞数に対して正規化した空のベクター(ベクター)またはmiR−19(miR−19)を発現する完全培地中のFL5−12細胞の成長曲線(p<0.009)。(b)放出24時間後の同調FL5−12細胞におけるS期分画(ベクター:24%±3%;miR−19:24.5%±0.5;p=0.8)。(c)ベクターまたはmiR−19で形質導入し、IL3を除去した48時間後のFL5−12細胞の生存率(ベクター:平均49%±1%;miR−19:82%±1.5%;p<6exp−06)。(d)FL5−12/miR−19と比較したFL5−12/ベクター細胞の細胞生存度を測定した代表的なFACSプロフィール。IL3枯渇後の生細胞の比率を示す。
【図3】miR−19は、T−ALLにおけるヒト癌遺伝子および新規の転座の標的である。(a)一連のヒトリンパ性悪性疾患((T−/B−ALL)TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病;(FL)濾胞性リンパ腫;(DLBCL)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;(BL)バーキットリンパ腫;(HD)ホジキン病;(扁桃腺)反応性扁桃腺由来のリンパ球;(F)FL5−12細胞(親(黒色バー)またはmiR−19での形質導入(赤色バー)))におけるmiR−19発現のqRT−PCR測定(示した値は平均±SDである)。(b)13q14においてRB1プローブ(緑色)ならびに13q32において17〜92遺伝子座が重複するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6(赤色)を使用したt(13;14)(q32;q11)の二色FISH分析。(c)FISHの結果の図的表現。(d)ノッチ誘導性T−ALLのマウスモデル。(e)ノッチ−ICN+miR−19(赤色;n=6)またはノッチ−ICN+ベクター(黒色;n=9)での造血前駆細胞(HPC)移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。(f)〜(h)ノッチ/miR−19誘導性ALLの代表的な顕微鏡写真。(f)血液塗抹標本上の白血病性芽球。(g)miR−19/緑色蛍光タンパク質(GFP)発現白血病細胞による骨髄の消失。(h)脾腫およびリンパ腫。ノッチ1誘導性白血病の病理的外観は同一である(示さず)。
【図4】T−ALLにおける新規のt(13;14)(q32;q11)転座の細胞遺伝学的特徴。17〜92クラスターに局在するT−ALL癌遺伝子の存在を強調したより高解像度の二色FISH分析(図3と同一)。13q14においてRB1プローブ(緑色)ならびに13q32において17〜92遺伝子座が重複するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6(赤色)を使用した分析。プローブRP11−97P7は、13番染色体中のクローンの半分および誘導14番染色体に対してマッピングした他の半分を保持する分割シグナルを示す。プローブR11−980D6は、13番染色体中に幾らかのシグナルが保持され、誘導14番染色体にマッピングした大部分のクローンを伴う。
【図5】t(9;14)ノッチ1転写物の分子特徴付け。(a)全長ノッチ1転写物に対応するノッチ1遺伝子の構造およびタンパク質ドメイン。(b)白血病リンパ芽球中で発現したノッチ1短縮転写物の5’RACE配列。キメラノッチ1−14番染色体配列は、ノッチ1エクソン28中に存在するブレイクポイントに対して遠位のノッチ1配列を含む。このmRNAの第1のATGコドンは、ノッチ1エクソン29中に存在する。ノッチ1エクソン29中に存在する5’RACEプライマーに対応する配列を、太字で示す。(c)t(9;14)によって生成された短縮ノッチ1mRNAの構造。
【図6】miR−19/ノッチ−1誘導性T−ALLの特徴付け。(a)低倍率(10倍)での白血病動物由来の血液塗抹標本の代表的な顕微鏡写真。(b)高倍率(40倍)の白血病性芽球。(c)未染色の骨髄塗抹標本。(d)GFP蛍光により、白血病細胞による骨髄の広範な浸潤が同定される。(e)表示の表面マーカーに対するPE標識抗体を使用したGFP陽性ALL細胞の免疫表現型検査。ノッチ1形質導入HPCで発症した白血病は、同一の特徴(示さず)を示したが、潜伏期がより長かった。
【図7】miR−19はc−Mycと協力し、ΕμΜycリンパ腫におけるp53依存性アポトーシスを遮断する。(a)ΕμΜyc/p53+/−HPC由来のmiR−19発現リンパ腫を生成するための実験デザインの略図。(b)miR−19発現HPCは、in vivoでのMyc駆動リンパ腫誘発中に急速に富化する。(c)ΕμΜyc/p53+/−HPC由来のベクターおよびmiR−19発現リンパ腫中のp53遺伝子座におけるヘテロ接合性の喪失を評価するためのPCR(NeoおよびWTは、p53のノックアウトおよび野生型対立遺伝子を示す)。
【図8】親細胞およびmiR−19形質導入FL5−12細胞の遺伝子発現分析。(a)教師なしクラスタリング分析のヒートマップ表示により、親細胞(FL/ベクター)とmiR−19発現FL5−12細胞(FL/miR−19)との間の遺伝子発現の相違が明らかとなる。(b)アレイ上に示した予想されるmiR−19標的(336遺伝子、赤線)対全ての表示遺伝子(8065遺伝子、黒線)の発現の変化の比較(p<2e−04;KS試験)。(c)その発現が親細胞と比較してFL5−12/miR−19細胞で1SDを超えて下方制御される遺伝子のヒストグラム。包括的に、miR−19標的は、他の遺伝子より有意に大きく下方制御される。しかし、発現のより顕著な(1.5または2SD)減少を示す遺伝子間でmiR−19標的は有意に富化されない。
【図9】ショートヘアピンRNA(shRNA)スクリーニングのための最適化研究。(a)ベクターと比較してBimに対するshRNAによるB1M/BC12L11タンパク質(短期および長期の曝露)のノックダウンを示すFL5−12細胞の免疫ブロット。(b)Bim shRNAおよびGFPを発現するFL5−12細胞は、その後のIL3枯渇およびレスキューサイクルで富化される。T0は未処置である。T1はIL3枯渇およびIL3レスキューの1サイクルである。T2は2サイクルである。(c)GFPに連結したポジティブコントロールshRNAを空のベクターで10倍から10,000倍まで希釈したライブラリー再構築実験。shRNA発現細胞およびGFP発現細胞の富化は、1,000倍希釈で容易に検出され、おそらく10,000倍でさえも検出される。(d)(c)のように実施し、スクリーニングアッセイにおいてmiR−19を詳細に特徴づけるためのmiR−19の連続希釈物を使用したライブラリー再構築実験。これらの所見に基づいて、ライブラリーを、プールあたりの複雑度約1,000shRNAに構築した。
【図10】リンパ球生存におけるmiR−19を表現型模写するshRNAの遺伝子スクリーニング。(a)プールしたshRNAのスクリーニングデザインの略図。(b)ハーフヘアピンアレイの結果の教師なしクラスタリング分析のヒートマップ。T1およびT2は、IL3枯渇の1または2サイクル後の時点を示す。−IL3および+IL3は、IL3の非存在下または存在下の培養を示す。A、B、およびCはレプリケートを示す(T2/+IL3でのレプリケートBを技術上の理由から除去した)。(c)各shRNAの倍率変化(log2)および確認研究のための閾値(赤線)を示すマイクロアレイデータの統計分析(SAM)。(d)遺伝子組富化分析(GSA)により、14遺伝子をターゲティングするshRNA組の富化が同定される(赤円)。(e)IL3枯渇の際に表示のshRNAおよびGFPを発現するFL5−12細胞の富化を示す代表的な検証実験。8つの検証された「ヒット」のうちの5つは、直接的なmiR−19標的である。ベクターのみでは変化が示されなかった(示さず)。
【図11】shRNAスクリーニングの結果の図表によるまとめ。(a)約12,000のshRNAおよび7,853の固有の標的の大規模shRNAライブラリーから、8遺伝子に対するshRNAはmiR−19を表現型模写することを示した。8遺伝子のうちの5遺伝子は、938個の予想miR−19標的と比較してmiR−19シードマッチを含んでいた。それ故、遺伝スクリーニングにより、miR−19標的遺伝子が非常に有意に富化する(p<7.2 exp−07、フィッシャーの正確検定)。(b)744個の予想miR−19標的遺伝子を含むマウスゲノムについての同一の分析(マウスDock5遺伝子は標的ではない)。フィッシャーの正確検定により、マウスゲノム中のmiR−19標的の富化が確認される(p<3.2 exp−05)。
【図12】同定された遺伝子は、実際のおよび関連するmiR−19の標的である。(a)ベクター(黒色バー)またはmiR−19形質導入された(影付きバー)FL5−12細胞から調製したcDNA上の表示の遺伝子についてのqRT−PCR。発現レベル(平均±SD)を、ベクターコントロールに対して正規化する(相対発現)。(b)上記のように分析したベクター(黒色バー)およびmiR−19のアンタゴミア(影付きバー)で形質導入したFL5−12細胞を比較したqRT−PCR。(c)および(d)表示のタンパク質について探索したベクター、miR−19(c)またはアンタゴミア−19(d)で形質導入したFL5−12細胞由来の溶解物の免疫ブロット。(e)Bcl2(FL5−12/Bcl2)を同時発現するFL5−12細胞ならびにGFPおよび表示のshRNAまたはmiR−19のFACSプロフィール。リンパ球生存に及ぼすBcl2依存性の影響を評価するために、細胞を完全培地(+IL3)からIL3欠損培地(−IL3)にシフトさせる。(f)GFPおよびアンタゴミア(抗19)またはベクターで形質導入し、完全培地で成長させたFL5−12/Bcl2細胞のFACS分析。(g)miR−19によるPI3K生存シグナルのマルチレベルコントロールを示す図。
【図13】マウスT−ALLにおけるmiR−19および標的遺伝子の発現。(a)miR−19発現は、ノッチ1のみと比較してノッチ1およびmiR−19で形質導入したHPC由来のT−ALLで増加する。(b)いくつかの標的遺伝子のmRNA発現は、ノッチ1のみと比較してノッチ1およびmiR−19によって駆動されるマウスT−ALLで減少する(*p<0.05;**p<0.1;***p>0.1)。
【図14】miR−19による3’非翻訳領域(3’UTR)抑制についてのレポーターアッセイ。表示の遺伝子の3’UTRを二重ルシフェラーゼレポーター構築物(pSiCheck2)にサブクローニングし、miR−19による3’UTRの阻害を、ウミシイタケルシフェラーゼ活性のホタルルシフェラーゼ活性に対する平均±SD比(RLuc/Luc)として示す。WTは野生型3’UTRを示す。MはmiR−19結合部位が変異した3’UTRを示す。Ptenの場合、一方の部位(M1)または両方の部位(M1+M2)を変異させた(*は、有意な(p<0.05)変化を示す。**は、有意でない(p>0.05)変化を示す)。
【図15】miR−19は、AktおよびリボゾームS6リン酸化の活性化を誘導する。ベクターまたはmiR−19で形質導入し、IL3を12時間除去し、表示の抗体で探索したFL5−12細胞の免疫ブロット。
【図16】相補性実験−cDNA発現。miR−19/GFPおよび表示のcDNAまたは空のベクターまたはAMPキナーゼ活性を活性化するために1μΜメトホルミンで処置した空のベクターを同時発現する細胞の富化についてのFACSの結果のまとめ。IL3の存在下でのT0、Il3枯渇後の時点T1およびT2。標準誤差(SEM)を示す(全ての場合、p(T2対T0について)<0.05)。アポトーシス促進性BIMタンパク質の発現は、FL5−12細胞の細胞死を迅速に誘導した。他のcDNAやメトホルミン処置のいずれも、miR−19の防御機能を抑制しなかった。
【図17】shRNA構築物によってノックダウンされたタンパク質。(a)〜(g)表示のshRNA構築物または空のベクターで形質導入し、表示のタンパク質について探索した細胞の免疫ブロット。いずれの場合も、試験した少なくとも3つのshRNAの最も有効なshRNAを示す。
【図18】レトロウイルスshRNAライブラリーベクター。(a)shRNAライブラリースクリーニングで使用したMSCVベースのMRPレトロウイルスライブラリーベクターの図。検証実験においてこの構築物(MLP)のGFP発現バージョンを各検出のために使用したことに留意のこと。(b)p53を誘導するためにドキソルビシンで処置したか未処置であり、p53に対するshRNAを有するか持たない表示のベクター構築物で形質導入した初代線維芽細胞由来の溶解物の免疫ブロット。p53shRNAを発現するMRPベクターおよびMLPベクターの両方は、有効にタンパク質をノックダウンする。(c)シグナル/バックグラウンド比を決定するためのライブラリー中に存在するshRNA(ライブラリープローブ)またはネガティブコントロールのいずれかに適合する配列したハーフヘアピン由来のシグナル強度の比較。
【図19】T−ALLにおける発癌性miRNAの包括的研究。a.実験ストラテジーの略図。b.所与のサンプルにおける全ての発現したmiRNAの平均発現値(平均および標準偏差(SD))に正規化し、発現レベルによって順序付けた定量的RT−PCRによる50のT−ALLサンプルにわたる平均miRNA発現。最も豊富に発現された「上位10」のmiRNAを示した。c.数値的に順序付けたT−ALLの異なる細胞遺伝学的亜群におけるmiRNA発現(平均およびSD)。最も豊富なmiRNAを示した。
【図20】MiRNA発現分析。a.18種のヒトT−ALL細胞株におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(平均およびSD)。b.FACS選別した正常な細胞集団におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(サンプルあたり2レプリケートの平均およびSD)。c.全ヒトT−ALLサンプルにわたる平均値(L)と表示の正常細胞集団(N)を比較した差次的miRNA発現。正常サンプルまたは白血病サンプルのいずれかにおける倍率変化が5を超え、且つ検出可能に発現する(相対値>50)miRNAのみを示す。黒色の数値は白血病細胞におけるより高い発現を示し、赤色の数値は正常細胞におけるより高い発現を示す。
【図21】発癌性miRNAについてのプールライブラリースクリーニング。a.スクリーニングプロトコールの略図:一次スクリーニングによって、癌遺伝子誘導性アポトーシスのバイパスを選択し、二次スクリーニングによってIL−3の非存在下でのリンパ球増殖をスクリーニングする。b.一次スクリーニング:MEFにおけるc−MYC誘導性アポトーシスを示す顕微鏡写真(挿入図)および生存/接着細胞から取り出したmiRNA配列の比率(下)。簡潔に述べれば、DNAを単離し、組み込んだmiRNAをPCRによって増幅し、サブクローニングし、約100クローンを選別し、組み込んだmiRNAを配列決定した。c.二次スクリーニング:IL−3枯渇の際に二次miRNAライブラリーおよびGFPを発現するFL5−12細胞の富化(挿入図)およびIL−3枯渇後にFL5−12細胞から回収したmiRNA配列の比率(下)。d.スクリーニングの検証:IL−3枯渇前および枯渇後のmiRNA/GFP発現FL5−12細胞の平均倍率変化およびSD(3つの独立した実験の結果)。e.中間結果のまとめ:ヒトT−ALLにおいて10種の最高に発現したmiRNA(赤色円)、miRNAスクリーニングにおける有効な「ヒット」(青色円)、およびT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子に結合するmiRNA(緑色円)。
【図22】候補miRNAはマウスT−ALLモデルにおいて癌遺伝子として作用する。a.ノッチ1駆動T−ALLの養子移入モデルの略図。b.ノッチ1−ICNおよびいずれかのベクター(黒色、n=13)、miR−19b(赤色、n=7)、miR−20a(橙色、n=4)、miR−26a(紫紅色、n=5)、miR−30(灰色、n=5)、miR−92(緑色、n=5)、またはmiR−223(青色、n=7)を発現するHPCの移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。c.ノッチ1誘導性T−ALLの代表的な顕微鏡写真。異なるmiRNAを発現する白血病の病理学的外観は同一である(示さず)。
【図23】候補miRNAはマウスT−ALLモデルにおいて癌遺伝子として作用する。a.ノッチ1−ICNおよびベクター(黒色、n=13)またはmiR−27(赤色、n=5;ベクターと比較してp<0.05)、miR−24(紫紅色、n=5;p=0.5)、miR−23a(緑色、n=5;p<0.05)、もしくはmiR−148a(青色、n=7;p<0.05)を発現するHPCの移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。b.表示のマーカーについてポジティブ染色された細胞の比率を用いたマウスT−ALL上の表面マーカー発現の分析。c.ベクターコントロールにおいて生じた白血病と比較した表示のmiRNAを発現するマウス白血病細胞におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定。
【図24】miRNAは、マウスT−ALLにおいて腫瘍抑制遺伝子の発現を調節する。a.表示の遺伝子の3’UTRに及ぼすmiRNAの影響を試験するルシフェラーゼレポーターアッセイ(三連の実験の平均およびSD)。V=ベクター、数値はmiRNA名を示す。*は、ベクターと比較した有意な(p<0.05)影響を示す。b.ノッチ1および表示のmiRNAを発現するマウスT−ALLにおける遺伝子発現の定量的RT−PCR測定。倍率変化対コントロールベクターを発現するT−ALLとして示した範囲および平均。*は有意性を示す(p<0.05)。c〜g.ノッチ1およびベクターまたは表示のmiRNAを発現し、表示の抗体で探索したマウスT−ALL由来の溶解物の免疫ブロット。
【図25】miRNAはマウスFL5−12細胞におけるいくつかの腫瘍抑制遺伝子の発現に影響を及ぼす。a〜d.空のベクターまたは表示のmiRNAのいずれかを発現するGFP選別したFL5−12細胞の溶解物を、表示のタンパク質について探索した。
【図26】shRNAによってノックダウンされたタンパク質。a〜c.空のベクターまたは表示のshRNAのいずれかを発現するGFP選別したFL5−12細胞の溶解物を、表示のタンパク質について探索した。
【図27】T−ALL抑制遺伝子に及ぼす個別および協同的なmiRNAの影響。a.HPC移植後の無白血病生存のカプラン・マイヤー分析。HPCは全てノッチ1−ICNおよびベクター(黒色、n=13)またはshNFl(赤色、n=6)、shBCL2L11(橙色、n=6)、shPTEN(紫紅色、n=3)、shFBWX7(緑色、n=4)、dn−Ikzf1(青色、n=10)、もしくはshPHF6(紫色、n=3)を発現する。b.表示のアンタゴミアを発現するT−ALL1細胞のin vitro培養中の細胞数(各時点についての平均およびSD;d6時点*および6d期**にわたる有意差(p<0.05)を示す)およびT−ALL1細胞におけるmiRNA発現の定量的RT−PCR測定(挿入図)。c.表示のアンタゴミアで形質導入したT−ALL1細胞の生存度(平均およびSD、*p<0.05)。dおよびe.表示のアンタゴミアを発現するT−ALL1細胞におけるBCL2L11(d)およびPTEN(e)mRNAレベルの定量的RT−PCR(平均およびSD、*ベクターと比較してp<0.05)。fおよびg.表示のmiRNAで形質導入した細胞におけるBCL2L11(f)およびPTEN(g)の3’UTRルシフェラーゼレポーターアッセイ(平均およびSD、*三連の測定においてp<0.05)。h.本研究で同定したmiRNAによる6つの腫瘍抑制遺伝子の重複調節の図表によるまとめ:太字はヒトT−ALLで高発現するmiRNAを示す。各線の幅は、miRNA−mRNA相互作用の強度および保存の計算値に比例する。
【図28】ヒトKoptk1 T−ALL細胞株におけるアンタゴミア研究。a.表示のアンタゴミアを発現するKoptk1細胞のin vitro培養中の細胞数(各時点についての平均およびSD。*は有意な(p<0.05)成長遅延を示す)。bおよびc.表示のアンタゴミアを発現するKoptk1細胞におけるBCL2L11(b)およびPTEN(c)のmRNAレベルの定量的RT−PCR(平均およびSD。*はベクターと比較してp<0.05である)。
【図29】miR−223に対するアンタゴミアはT−ALL細胞株において抗増殖効果を示す。競合アッセイの結果。T−ALL株(Koptk1、T−ALL1、およびJurkat)を、miR−223アンタゴミアおよびGFPをコードするレンチウイルス構築物で形質導入した。GFPの発現を、48時間毎にFACSによって評価した。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
本発明によれば、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用することができる。かかる技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrookら、,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(1989);“Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I−III [Ausubel,R.M.,ed.(1994)];“Cell Biology:A Laboratory Handbook” Volumes I−III [J.E.Celis,ed.(1994))];“Current Protocols in Immunology” Volumes I−III [Coligan,J.E.,ed.(1994)];“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait ed.1984);“Nucleic Acid Hybridization” [B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)];“Transcription And Translation” [B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)];“Animal Cell Culture” [R.I.Freshney,ed.(1986)];“Immobilized Cells And Enzymes” [IRL Press,(1986)];B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”(1984)を参照のこと。
【0039】
したがって、本明細書中に出現する場合、以下の用語は、以下に記載の定義を有するものとする。
【0040】
用語「miRNA」、「miR」、「マイクロRNA」、「miRNA標的」、および具体的に列挙していない任意のバリアントを、本明細書中で交換可能に使用することができ、本出願および特許請求の範囲を通して使用されるように、核酸材料(リボ核酸、RNA(単一または複数のRNAが含まれる)が含まれる)をいい、miRNA(miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNA、ならびに本明細書中に記載され、且つ表1に示す核酸配列データ(配列番号1〜10)および本明細書中および特許請求の範囲に記載の活性プロフィールを有するmiRNAが含まれる)に及ぶ。したがって、実質的に等価な活性または変化した活性を示す配列も同様に意図する。これらの修飾は、意図的であり得るか(例えば、部位特異的変異誘発によって得た修飾など)、偶発的であり得る(宿主またはそのバリアントの変異によって得た修飾など)。また、用語「miRNA」、「miR」、「マイクロRNA」、および「miRNA標的」は、本明細書中に具体的に引用した核酸ならびに全ての実質的に類似のアナログおよび対立遺伝子バリエーションをその範囲内に含むことを意図する。
【0041】
用語「オリゴヌクレオチド」、「アンチセンス」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「アンタゴミア」、「miRNAアンタゴミア」、および具体的に列挙していない任意のバリアントを、本明細書中で交換可能に使用することができ、本出願および特許請求の範囲を通して使用されるように、核酸材料(単一または複数の核酸が含まれる)をいい、本明細書中に記載のmiRNA核酸配列(表1に記載のものが含まれる)に相補的なオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアおよび表2の相補配列、および本明細書中および特許請求の範囲に記載の活性プロフィール(特に、1つ以上のそのmiRNAの発現の阻害、特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの阻害が可能なこと)を有するものに及ぶ。特に、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号11〜15に提供するmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAまたはその一部に特異的な核酸配列に実質的に相補的であり得る(例えば、表2に提供)。したがって、実質的に等価であるか変化した活性を示す核酸またはそのアナログも同様に意図する。これらの修飾は、意図的であり得るか(例えば、部位特異的変異誘発によって得た修飾など)、偶発的であり得る(核酸またはアンタゴミア/オリゴヌクレオチドの産生者である宿主中でバリアントとしてか変異によって得た修飾など)。本発明のアンタゴニストの言及において本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」を、2つ以上、好ましくは3つを超えるリボヌクレオチドから構成される分子と定義する。その正確なサイズは、多数の要因、同様に、オリゴヌクレオチドの根本的な機能および使用に依存するであろう。
【0042】
用語「薬剤」は、任意の分子(ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、化学化合物、および小分子が含まれる)を意味する。特に、用語「薬剤」には、化合物(試験化合物または薬物候補化合物など)が含まれる。
【0043】
用語「アゴニスト」は、その最も広い意味でリガンドが結合する受容体を刺激するリガンドをいう。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「アンタゴニスト」を、受容体への結合の際に生物学的応答自体を誘発しないが、アゴニスト媒介性応答を遮断または弱める化合物を説明するために使用する。
【0045】
用語「アッセイ」は、化合物の特異的性質を測定するために使用される任意の過程を意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物の収集物に由来するその活性に基づいて化合物を特徴づけるか選択するために使用される過程を意味する。
【0046】
用語「結合親和性」は、非共有結合性の関係において2つ以上の化合物がどの程度強く相互に結合するのかを説明する性質である。結合親和性を、定性的に(「強い」、「弱い」、「高い」、「低い」など)または定量的に(KDの測定など)特徴づけることができる。
【0047】
用語「キャリア」は、薬学的組成物を中間の(medium)、嵩高い、および/または有用な形態にする薬学的組成物の処方で使用される無毒の材料を意味する。キャリアは、1つ以上のかかる材料(賦形剤、安定剤、または水性pH緩衝化溶液など)を含むことができる。生理学的に許容され得るキャリアの例には、水性または固体の緩衝液成分(リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸が含まれる);抗酸化剤(アスコルビン酸が含まれる);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる);キレート剤(EDTAなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);および/または非イオン性界面活性剤(ツウィーン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびプルロニック(登録商標)など)が含まれる。
【0048】
用語「複合体」は、2つ以上の化合物が相互に結合、接触、または会合する場合に作製される実体を意味する。
【0049】
用語「化合物」を、本明細書中で、本発明のアッセイに関連して記載される「試験化合物」または「薬物候補化合物」の文脈で使用する。そのようなものとして、これらの化合物は、合成、組換え、または天然供給源から誘導される有機化合物または無機化合物を含む。
【0050】
用語「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列と実質的に類似するが、必ずしも同一ではない活性を示すひと続きの連続する核酸残基を含むオリゴヌクレオチドに関する。特定の態様では、「フラグメント」は、完全な配列の核酸配列の少なくとも5核酸残基(好ましくは、少なくとも10核酸残基、少なくとも15核酸残基、少なくとも20核酸残基、少なくとも25核酸残基、少なくとも40核酸残基、少なくとも50核酸残基、少なくとも60核酸(nucleic)残基、少なくとも70核酸残基、少なくとも80核酸残基、少なくとも90核酸残基、少なくとも100核酸残基、少なくとも125核酸残基、少なくとも150核酸残基、少なくとも175核酸残基、少なくとも200核酸残基、または少なくとも250核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドをいうことができる。
【0051】
用語「ポリペプチドのフラグメント」は、完全な配列と機能活性または発現活性が実質的に類似するが、必ずしも同一ではないひと続きの連続するアミノ酸残基を含むペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、単量体、サブユニット、および酵素に関する。特定の態様では、「フラグメント」は、完全な配列のアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸(amino)残基、少なくとも70アミノ酸残基、少なくとも80アミノ酸残基、少なくとも90アミノ酸残基、少なくとも100アミノ酸残基、少なくとも125アミノ酸残基、少なくとも150アミノ酸残基、少なくとも175アミノ酸残基、少なくとも200アミノ酸残基、または少なくとも250アミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドをいうことができる。
【0052】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖形態且つセンス方向またはアンチセンス方向のポリ核酸、ストリンジェントな条件下で特定のポリ核酸とハイブリッド形成する相補ポリ核酸、およびその塩基対の少なくとも約60%が相同であり、より具体的にはその塩基対の70%、最も具体的には90%、特定の実施形態では、その塩基対の100%が共通するポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドには、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、およびその合成アナログが含まれる。修飾骨格を有する核酸(ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、および2’−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオアートなど)も含まれる。ポリヌクレオチドを、約10〜約5000塩基、詳細には約100〜約4000塩基、より詳細には約250〜約2500塩基の範囲の種々の長さの配列によって記載する。1つのポリヌクレオチド実施形態は、約10〜約30塩基長を含む。ポリヌクレオチドの特定の実施形態は、約17〜約22ヌクレオチドのポリリボヌクレオチドであり、より一般的には、低分子干渉RNA(siRNA−二本鎖siRNA分子および自己相補的な一本鎖siRNA分子(shRNA)の両方)と記載される。別の特定の実施形態は、修飾骨格を有する核酸(ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、および2’−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオアートなど)、天然に存在しない核酸残基を含むもの、1つ以上の核酸置換物(メチル−、チオ−、スルフェート、ベンゾイル−、フェニル−、アミノ−、プロピル−、クロロ−、およびメタノカルバヌクレオシドなど)、またはその検出を容易にするためのレポーター分子である。本明細書中のポリヌクレオチドを、特定の標的DNA配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。これは、ポリヌクレオチドがその各鎖とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならないということを意味する。したがって、ポリヌクレオチド配列は、標的配列の配列を正確に反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントを、ポリヌクレオチドの5’末端に付着させることができ、残りのポリヌクレオチド配列は鎖に相補的である。あるいは、ポリヌクレオチド配列がストリンジェントな条件下でハイブリッド形成か伸長産物の合成のためのテンプレートを形成するのに十分な鎖の配列との相補性を有することを条件として、非相補的塩基またはより長い配列をポリヌクレオチド内に分散させることができる。
【0053】
用語「癌」は、血液、皮膚、または身体の器官中の悪性または良性の細胞成長(例えば、血液学的悪性疾患、乳房、前立腺、肺、胃腸管、肝臓、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、腎臓、膵臓、胃、または腸であるが、これらに限定されない)をいう。癌は、隣接組織に浸潤し、遠隔器官(例えば、骨、肝臓、肺、または脳)に拡大する(転移する)傾向がある。本明細書中で使用する場合、用語「癌」には、転移性腫瘍細胞型(黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、および肥満細胞腫などであるが、これらに限定されない)および組織癌腫型(結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎癌、胃癌、膠芽細胞腫、原発性肝臓癌、卵巣癌、前立腺癌などであるが、これらに限定されない)の両方が含まれる。
【0054】
「レプリコン」は、in vivoでの自律性DNA複製単位として機能する(すなわち、それ自体の調節下で複製することができる)任意の遺伝的構成要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0055】
「ベクター」は、付着したセグメントが複製するように別のDNAセグメントを付着させることができるレプリコン(プラスミド、ファージ、またはコスミドなど)である。
【0056】
「DNA分子」は、その一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の多量体形態をいう。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみをいい、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語には、とりわけ線状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体で見い出される二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造を考察するなかで、配列を、本明細書中で、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’→3’方向の配列のみを与える通常の慣習にしたがって記載することができる。
【0057】
「複製起点」は、DNA合成に関与するDNA配列をいう。
【0058】
DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下においた場合にin vivoで転写されてポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって画定される。コード配列には、原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に存在するであろう。
【0059】
転写調節配列および翻訳調節配列は、宿主細胞中のコード配列を発現させるDNA調節配列(プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、およびターミネーターなど)である。
【0060】
発現調節配列がDNA配列の転写および翻訳を調節および制御する場合、そのDNA配列は発現調節配列に「作動可能に連結」される。用語「作動可能に連結された」には、発現すべきDNA配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有することならびに発現調節配列の調節下でのDNA配列の発現およびDNA配列によってコードされる所望の産物の産生が可能なように正しい読み取り枠を維持することが含まれる。組換えDNA分子に挿入することが望まれる遺伝子が適切な開始シグナルを含まない場合、かかる開始シグナルをその遺伝子の前に挿入することができる。
【0061】
用語「標準的なハイブリッド形成条件」は、ハイブリッド形成および洗浄の両方について5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩および温度の条件をいう。しかし、当業者は、かかる「標準的なハイブリッド形成条件」が特定の条件(緩衝液中のナトリウムおよびマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列の長さおよび濃度、ミスマッチ率、およびホルムアミドの比率などが含まれる)に依存することを認識するであろう。ハイブリッド形成する2つの配列がRNA−RNA、DNA−DNA、またはRNA−DNAのいずれであるかどうかも「標準的なハイブリッド形成条件」の決定に重要である。かかる標準的なハイブリッド形成条件は、周知の式にしたがって当業者によって容易に決定され、所望される場合、ハイブリッド形成は、より高いストリンジェンシーの洗浄での予想されるか決定されたTmより典型的には10〜20NC低い。
【0062】
「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することができるDNA制御領域である。本発明を定義するために、プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位と接し、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含めるために上流(5’方向)に伸長する。プロモーター配列内に転写開始部位(ヌクレアーゼS1でのマッピングによって都合良く定義される)およびRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見い出されるであろう。真核生物プロモーターは、しばしば、しかし常にではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含むであろう。原核生物プロモーターは、−10および−35コンセンサス配列に加えて、シャイン・ダルガルノ配列を含む。
【0063】
「発現調節配列」は、別のDNA配列の転写および翻訳を調節および制御するDNA配列である。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、次いでコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合、細胞中の転写調節配列および翻訳調節配列の「調節下に」ある。
【0064】
「シグナル配列」をコード配列の前に含めることができる。この配列は、ポリペプチドのN末端側に存在し、ポリペプチドを細胞表面に誘導するかポリペプチドを培地に分泌するように宿主細胞に伝達するシグナルペプチドをコードし、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって切り取られる。原核生物および真核生物由来の種々のタンパク質に会合したシグナル配列が見い出され得る。
【0065】
用語「プライマー」は、本明細書中で使用する場合、精製された制限消化物のように天然に存在するか合成で産生されるかに関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドおよび誘発剤(DNAポリメラーゼなど)の存在下および適切な温度およびpH)におかれた場合に合成開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは、一本鎖または二本鎖であってよく、誘発剤の存在下で所望の伸長産物の合成を刺激するのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、多数の要因(温度、プライマー供給源、および方法の使用が含まれる)に依存するであろう。例えば、診断への適用のために、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは、より少数のヌクレオチドを含むことができるが、典型的には、15〜25またはそれを超えるヌクレオチドを含む。
【0066】
本明細書中のプライマーを、特定の標的DNA配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。これは、プライマーがその各鎖とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は、正確なテンプレートの配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントを、プライマーの5’末端に付着させることができ、残りのプライマー配列は鎖に相補的である。あるいは、プライマー配列が、ハイブリッド形成し、それにより、伸長産物の合成用のテンプレートを形成するのに十分な鎖の配列との相補性を有することを条件として、非相補的塩基またはより長い配列をプライマー内に分散させることができる。
【0067】
本明細書中で使用する場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は細菌酵素をいい、その各酵素は特異的ヌクレオチド配列またはその付近で二本鎖DNAを切断する。
【0068】
DNAが細胞内に導入された場合、細胞は、外因性または異種のDNAによって「形質転換」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれ(共有結合して)ても組み込まれなくてもよい。原核生物、酵母、および哺乳動物細胞では、例えば、形質転換DNAを、エピソームエレメント(プラスミドなど)上に維持することができる。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、娘細胞によって染色体複製を介して遺伝するように形質転換DNAが染色体に組み込まれるようになった細胞である。この安定性は、真核細胞が形質転換DNAを含む娘細胞集団から構成される細胞株またはクローンを樹立する能力によって証明される。「クローン」は、単一の細胞または有糸分裂による共通祖先に由来する細胞集団である。「細胞株」は、多世代にわたってin vitroで安定に成長することができる初代細胞のクローンである。
【0069】
少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)のヌクレオチドがDNA配列の定義した長さにわたって一致する場合、2つのDNA配列は、「実質的に相同」である。実質的に相同な配列を、配列データバンクで利用可能な標準的ソフトウェアを使用した配列の比較によるか、例えば、特定の系について定義したストリンジェントな条件下でのサザンハイブリッド形成実験で同定することができる。適切なハイブリッド形成条件の定義は当業者の範囲内である。例えば、Maniatisら、.,前出;DNA Cloning,Vols.I & II,前出;Nucleic Acid Hybridization,前出を参照のこと。
【0070】
本明細書中に記載のアミノ酸残基は、「L」異性体であることが好ましい。しかし、免疫グロブリン結合の所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、「D」異性体での残基を任意のL−アミノ酸残基の代わりに使用することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基をいう。標準的なポリペプチド命名法(J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969))を順守して、アミノ酸残基の略称を、以下の対応表中に示す。
【0071】
【表1】
全アミノ酸残基配列を、本明細書中でその左方向および右方向がアミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向である式によって示すことに留意すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の始まりおよび終りのダッシュが1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合を示すことに留意すべきである。本明細書中に交互に出現し得る三文字表記および一文字表記を相関させるために上記の表を示す。
【0072】
特定のコドンが異なるアミノ酸をコードするコドンに変更されるように、変異を、これに関する配列においてなすことができる。かかる変異を、一般に、可能な限りヌクレオチドの変化を少数にして作製する。非保存的様式(すなわち、特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸群に属するアミノ酸から別の群に属するアミノ酸へのコドンの変化による)または保存的様式(すなわち、特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸群に属するアミノ酸から同一の群に属するアミノ酸へのコドンの変化による)で得られたタンパク質中のアミノ酸を変化させるようにこの種の置換変異を行うことができる。かかる保存的変化により、一般に、得られたタンパク質の構造および機能があまり変化しない。非保存的変化は、得られたタンパク質の構造、活性、または機能が変化する可能性がより高い。本発明には得られたタンパク質の活性または結合特性が有意に変化しない保存的変化を含む配列が含まれると見なすべきである。
【0073】
以下は、種々のアミノ酸群の例である:
非極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン
非荷電極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン
荷電極性R基を有するアミノ酸(Ph6.0で負に荷電):アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0で)。別の群は、フェニル基を有するアミノ酸であり得る:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
別の群は、分子量(すなわち、R基のサイズ)に従い得る:
グリシン(75)、アラニン(89)、セリン(105)、プロリン(115)、バリン(117)、トレオニン(119)、システイン(121)、ロイシン(131)、イソロイシン(131)、アスパラギン(132)、アスパラギン酸(133)、グルタミン(146)、リジン(146)、グルタミン酸(147)、メチオニン(149)、ヒスチジン(pH6.0で)(155)、フェニルアラニン(165)、アルギニン(174)、チロシン(181)、トリプトファン(204)。特に好ましい置換は以下である:正電荷を保持することができるようなLysへのArgの置換またはその逆;負電荷を保持することができるようなGluへのAspの置換またはその逆;遊離−OHを保持することができるようなSerへのThrの置換;遊離NH2を保持することができるようなGinへのAsnの置換。
【0074】
特定の好ましい特性を有するアミノ酸に置換するためにアミノ酸置換を導入することもできる。例えば、Cysを、別のCysとのジスルフィド架橋のための潜在的部位として導入することができる。Hisを、特定の「触媒」部位として導入することができる(すなわち、Hisは酸または塩基として作用することができ、生化学的触媒において最も一般的なアミノ酸である)。タンパク質構造中に−ターンを誘導するその特定の平面構造のために、Proを導入することができる。
【0075】
少なくとも約70%のアミノ酸残基(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)が同一であるか保存的置換を示す場合、2つのアミノ酸配列は「実質的に相同」である。
【0076】
DNA構築物の「異種」領域は、本来はより大きな分子と関連して見出されないより大きなDNA分子内の同定可能なDNAセグメントである。したがって、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、遺伝子は、通常、供給元の生物のゲノム中の哺乳動物ゲノムDNAに隣接しないDNAに隣接するであろう。異種コード配列の別の例は、本来はコード配列自体が見出されない構築物である(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含むcDNAまたは未変性遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子変異または天然に存在する変異事象は、本明細書中に定義のDNAの異種領域を生じない。
【0077】
「抗体」は、特異的エピトープに結合する任意の免疫グロブリン(抗体およびそのフラグメントが含まれる)である。本用語はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびキメラ抗体を含み、最後のものは米国特許第4,816,397号および同第4,816,567号にさらに詳述されている。例示的な抗体分子は、インタクトな免疫グロブリン分子、実質的にインタクトな免疫グロブリン分子、およびパラトープを含む免疫グロブリン分子の一部(当該分野でFab、Fab’、F(ab’)2、およびF(v)として公知の部分(この部分は本明細書中に記載の治療方法での使用に好ましい)が含まれる)である。抗体分子のFabおよびF(ab’)2部分を、周知の方法による実質的にインタクトな抗体分子に対するパパインおよびペプシンの各タンパク質分解反応によって調製する。例えば、Theofilopolousら、の米国特許第4,342,566号を参照のこと。Fab’抗体分子部分も周知であり、F(ab’)2部分から産生され、その後に2つの重鎖部分を連結しているジスルフィド結合をメルカプトエタノールで還元し、その後に得られたタンパク質メルカプタンをヨードアセトアミドなどの試薬でアルキル化する。インタクトな抗体分子を含む抗体が本明細書中で好ましい。
【0078】
「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する重鎖および軽鎖の可変領域および超可変領域から構成される抗体分子の構造部分である。本明細書中で使用されるその種々の文法上の形態における句「抗体分子」は、インタクトな免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の両方を意図する。その種々の文法上の形態における句「モノクローナル抗体」は、特定の抗原と免疫反応することができるたった1種の抗体結合部位を有する抗体をいう。したがって、モノクローナル抗体は、典型的には、免疫反応する任意の抗原に対して単一の結合親和性を示す。したがって、モノクローナル抗体は、それぞれが異なる抗原に対して免疫特異性を示す複数の抗体結合部位を有する抗体分子を含むことができる(例えば、二重特異性(キメラ)モノクローナル抗体)。
【0079】
用語「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」は、疾患を引き起こす作用物質に曝露され得るか、疾患発症前に疾患への素因を有し得る被験体における疾患または障害の獲得または発症のリスクの軽減(すなわち、疾患の少なくとも1つの臨床症状を発症させない)をいう。
【0080】
用語「予防法(prophylaxis)」は、用語「予防」に関連するか含まれ、その目的が疾患を処置または治癒させることよりもむしろ予防することである措置または手順をいう。予防措置の非限定的な例には、ワクチンの投与、例えば、不動に起因する血栓症リスクのある入院患者への低分子量ヘパリンの投与、およびマラリアが風土病であるか、マラリア接触リスクが高い地理的領域を訪問する前の抗マラリア薬(クロロキンなど)の投与が含まれ得る。
【0081】
「治療有効量」は、医師または他の臨床医によって探求されている被験体の生物学的または医学的な応答を誘発する薬物、化合物、抗菌薬、抗体、または医薬品の量を意味する。特に、グラム陽性菌感染およびグラム陽性菌の成長に関して、用語「有効量」には、グラム陽性菌の感染量または感染範囲を生物学的に有意義に減少させる(殺菌効果および/または静菌効果が含まれる)のに有効な化合物または薬剤の量が含まれることを意図する。句「治療有効量」を、本明細書中で、伝染性細菌の成長もしくは量またはその存在および活性に伴い得る他の病理学的特徴(例えば、発熱または白血球数など)の臨床的に有意な変化を予防するか、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%軽減させるのに十分な量を意味するために使用する。
【0082】
任意の疾患または感染の、用語「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、1つの実施形態では、疾患または感染の改善(すなわち、感染性因子または細菌の疾患または成長の停止、または少なくとも1つのその臨床症状の発現、範囲、または重症度の軽減)をいう。別の実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、被験体によって識別可能でないかもしれない少なくとも1つの身体的パラメーターの改善をいう。さらに別の実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、疾患または感染の物理的(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメーターの安定化)、またはその両方の調整をいう。さらなる実施形態では、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、疾患の進行の遅延または感染の軽減に関する。
【0083】
句「薬学的に許容され得る」は、ヒトに投与した場合に生理学的に容認され、且つ典型的にはアレルギー反応や類似の有害反応(胃の不調および眩暈など)を起こさない分子的実体および組成物をいう。
【0084】
その第1の態様では、本発明は、発癌および白血病誘発に関連するmiRNAの同定ならびに癌の管理および処置におけるその調整またはモニタリングに関する。したがって、本発明は、本明細書中に開示のmiRNA標的(miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223のうちの1つ以上(以下の表1に記載のものなどが含まれる)が含まれる)の発現および/または活性を阻害する薬剤が癌の進行を阻害し(動物モデルにおける白血病誘発の予防が含まれる)、腫瘍抑制遺伝子(特に、腫瘍抑制遺伝子Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、および/またはFbzw7)に及ぼすmiRNA標的の阻害効果を抑制することができるという発見に基づく。したがって、本発明は、癌または発癌(ongogenesis)に関与するか関連するmiRNA標的、miRNA標的の活性または発現を阻害することができる薬剤のスクリーニング方法、およびmiRNA標的発現の上昇に関連する癌および疾患(miR17〜92転座に関連する癌、血液癌、乳癌、膠芽細胞腫、および黒色腫など)の予防および/または処置におけるこれらの薬剤の使用を提供する。
【0085】
【表2】
本発明は、特に発癌または白血病誘発に関連する1つ以上のmiRNA(組み合わせが含まれる)(miR19、miR20、miR26、miR92、miR148、およびmiR223から選択されるmiRNA(上の表に記載のものが含まれる)など)の発現および/または活性の特異的阻害のための方法および組成物に関する。一定のmiRが実質的に等価な重複する活性および配列を有する(例えば、miR19はmiR19aおよびmiR19bの各々および両方を含むことができること、miR20はmiR20aおよびmiR20bの各々および両方を含むことができることなど)ことに注目すべきである。特に、本発明は、miRNA標的の特異的阻害のための遺伝学的アプローチおよび核酸を提供する。1つ以上のmiRNA標的の特異的阻害の際に発癌/白血病誘発経路が破壊され、特に、白血病誘発、白血病細胞増殖が阻害されるか遮断されることを本明細書中で証明している。特に、アンタゴミア、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および1つ以上のmiRNA標的に相補的な核酸の発現が1つ以上のmiRNA標的の発現または活性を特異的に阻害し、miR媒介性腫瘍発生を遮断する。
【0086】
アンタゴミア
本発明は、1つ以上のmiRNA標的(特に、miR19b、miR26a、miR26、miR92、miR148、およびmiR223から選択されるmiRNA)に実質的に相補的なアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、核酸を提供する。前述のオリゴヌクレオチドは1つ以上のmiRNA標的の発現または活性を阻害する。例示的なアンタゴミアを以下の表2に提供する。以下の例示的な配列を使用し、本明細書中に提供した実施例中でその活性を証明した。
【0087】
【表3】
上記の例示的アンタゴミアは、System Biosciences(Mountain View,CA;systembio.com)からmiRZIPs(商標)として市販されている。
【0088】
Stoffelらは、2005年に「アンタゴミア」を使用したin vivoでのmiRNAのサイレンシングを最初に記載した(Krutzfeldt Jら、(2005)Nature 438(7068):685−689)。特異的miRNAに対するアンタゴミアの静脈内投与により、特異的器官における対応するmiRNAレベルが顕著に減少した。特異的miRNAに相補的な化学修飾された一本鎖RNAアナログは、アンタゴミアとして有効である。オリゴヌクレオチドは、コレステロール分子と連結して標的の取り込みを増強して標的分解を改善し、ホスホロチオアート修飾を有することが記載されている(Krutzfeld Jら、(2007)Nucl Adids Res 35(9):2885−2892)。短縮および修飾したオリゴヌクレオチドアンタゴミアの薬学的組成物が記載されている(US2010/0286234号およびWO2010/144485A1号が含まれる)。Scherrらは、miRNA機能の特異的阻害のためのレンチウイルス媒介性アンタゴミア発現系を記載している(Scherr Mら、(2007)Nucl Acids Res 35(22):el49(doi:10.1093/nar/qkm971)。レンチウイルスアンタゴミアは市販されている(System BiosciencesのmiRZIPs(商標)およびDharmacon/ThermoScientificのmicroRNA mimics meridianが含まれる)。miRNA配列(mirBaseなどのデータベースから公的に入手可能な配列が含まれる)の知識ならびにアンタゴミア、レンチウイルス構築物、および合成オリゴヌクレオチドの商業的および公的利用可能性により、試験、判定、および評価のために利用可能な例示的なmiRNA標的インヒビターとしてアンタゴミア/オリゴヌクレオチドが作製される。したがって、当業者は、本発明の使用および適用に適切なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを容易にデザイン、作製、または獲得することができる。
【0089】
本発明は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される本明細書中に提供したmiRNA配列のうちの少なくとも1つに実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。アンタゴニストまたはアンタゴミアは、表1に記載のmiRNA標的配列に実質的に相補的であり得る。特に、本発明のアンタゴミア、アンタゴニスト、またはオリゴヌクレオチドには、表1に記載の配列番号1〜10の群から選択されるヌクレオチドまたはmiRNA配列である配列番号1〜10のうちの1つ以上の発現または活性を阻害するのに十分なそのヌクレオチドのサブセットに実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明は、表2に記載されるか配列番号11〜15に記載の配列群から選択される1つ以上の配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを含む。
【0090】
1つ以上の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むことができる。特定の態様では、本発明のアンタゴミア、核酸、およびオリゴヌクレオチドを、核酸の化学的骨格の操作または他の部分の共有結合または非共有結合のいずれかによって修飾することができる。それぞれまたは任意の場合、かかる操作または結合は、安定性、細胞、組織、または器官の取り込みを改変するか、そうでなければ核酸およびオリゴヌクレオチドの有効性を増強するために役立ち得る。本発明のさらなる態様では、アンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを、取り込み、安定性を増強するかオリゴヌクレオチドをターゲティングするのに役立ち得る他の分子(ポリペプチド、炭水化物、脂質、または脂質様部分、リガンド、化学物質、または化合物が含まれるが、これらに限定されない)に共有結合することができる。本発明のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアを、混合または非共有結合もしくは共有結合によって他の標的に指向するオリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。
【0091】
当業者は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNA標的の阻害で有効な核酸およびオリゴヌクレオチドの選択過程を容易にするか簡潔にするためのいくつかのストラテジーのうちのいずれかを容易に使用することができる。オリゴヌクレオチドとmRNA分子中の相補配列との間の結合エネルギーの予想または熱力学的指標の計算を使用することができる(Chiangら、.(1991)J.Biol.Chem.266:18162−18171;Stullら、.(1992)Nucl.Acids Res.20:3501−3508)。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、二次構造に基づいて選択することができる(Wickstromら、(1991)in Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS,Wickstrom,ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,pp.7−24;Limaら、.(1992)Biochem.31:12055−12061)。Schmidt and Thompson(米国特許第6416,951号)は、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させる工程および挿入色素の存在下でのハイブリッド形成または標識の組み込みおよび非標識オリゴヌクレオチドの存在下での色素の分光学的特性または標識のシグナルの測定によってハイブリッド形成の動態をリアルタイムで測定する工程を含む、機能的アンチセンス薬の同定方法を記載している。さらに、当業者によって認識される種々の基準(例えば、自己相補性が存在しないこと、ヘアピンループが存在しないこと、安定なホモ二量体および二重鎖が形成されないこと(安定を予想されるエネルギー(kcal/mol)によって評価する)が含まれる)を使用して適切なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列またはアンタゴミア配列またはアンチセンス標的を予想する種々のコンピュータプログラムのいずれかを使用することができる。かかるコンピュータプログラムの例を容易に使用することができ、これらは当業者に公知であり、OLIGO4またはOLIGO6プログラム(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)およびOligoTechプログラム(Oligo Therapeutics Inc.,Wilsonville,OR)が含まれる。
【0092】
さらに、本発明で適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ハイブリッド形成条件下でのオリゴヌクレオチドライブラリーまたは核酸分子のライブラリーのスクリーニングおよび標的RNAまたは核酸とハイブリッド形成するものの選択によって同定することができる(例えば、米国特許第6,500,615号を参照のこと)。Mishra and Toulmeは、標的に結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅に基づいた選択手順も開発していた(Mishraら、(1994)Life Sciences 3 17:977−982)。オリゴヌクレオチドを、RNアーゼHによる標的RNAの切断を媒介する能力、切断フラグメントの選択および特徴付けによって選択することもできる(Hoら、(1996)Nucl Acids Res 24:1901−1907;Hoら、(1998)Nature Biotechnology 16:59−630)。RNA分子のGGGAモチーフに対するオリゴヌクレオチドの生成およびそれへのオリゴヌクレオチドのターゲティングも記載されている(米国特許第6,277,981号)。
【0093】
miRNA標的発現の阻害を、当該分野において日常的な方法(例えば、当業者に周知の(例えば、腫瘍抑制遺伝子配列の)RT−PCR分析、RNA発現のノーザンブロットアッセイ、またはタンパク質発現のウェスタンブロットアッセイによる)で測定することができる。細胞増殖または腫瘍細胞成長に及ぼす影響を、当業者に周知の方法(本願の実施例で教示した方法が含まれる)によってin vitroまたはin vivo、細胞、腫瘍、または動物のモデル系で測定することもできる。同様に、miRNA標的活性(特に腫瘍抑制遺伝子発現活性)の阻害を測定することができる。
【0094】
「実質的に相補的な」を、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドまたは核酸との間で安定且つ特異的な結合が起こるのに十分な程度の相補性を示すために使用する。オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリッド形成可能であるべきその標的核酸配列と100%相補的である必要はないと理解される。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの標的への結合が標的分子の通常の機能を妨害して有用性または発現を喪失させる場合に特異的にハイブリッド形成可能であり、in vivoアッセイまたは治療上の処置の場合の生理学的条件下またはin vitroアッセイの場合のアッセイの実施条件下でオリゴヌクレオチドの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する。
【0095】
本発明の文脈では、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)の結合からなるヌクレオチドモノマーまたはヌクレオシドモノマーのオリゴマーまたはポリマーをいう。オリゴヌクレオチドには、天然に存在しないモノマーまたは同様に機能するその一部を含むオリゴマーが含まれ、かかる修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの増強およびヌクレアーゼに対する安定性の増加により、未変性形態よりも好まれ得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、それぞれ少なくとも1つのヌクレオチドから作製される2つ以上の化学的に異なる領域(例えば、1つ以上の有利な性質(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増加、細胞取り込みの増加、RNA標的に対する結合親和性の増加)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域およびRNA:DNAハイブリッドまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素(例えば、RNアーゼH−RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼ)の基質である領域)を含むことができる。
【0096】
好ましい実施形態では、miRNA結合親和性が増大するように修飾されるオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアの領域は、糖の2’位が修飾された少なくとも1つのヌクレオチド、最も好ましくは2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、または2’−フルオロ修飾ヌクレオチドを含む。かかる修飾はオリゴヌクレオチドに日常的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ耐性が増強されるように修飾する。細胞は、核酸を分解することができる種々のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼを含む。多数のヌクレオチドおよびヌクレオシドの修飾は、ヌクレアーゼ消化に対して比較的より高い耐性が付与されることが示されている。少なくとも1つのホスホロチオアート修飾を含むオリゴヌクレオチドが現在より好まれている(Geary,R.S.ら、(1997)Anticancer Drug Des 12:383−93;Henry,S.P.ら、(1997)Anticancer Drug Des 12:395−408;Banerjee,D.(2001)Curr Opin Investig Drugs 2:574−80)。いくつかの場合、標的結合親和性を増強するオリゴヌクレオチド修飾はまた、独立して、ヌクレアーゼ耐性を増強することができる。
【0097】
本発明で想定されるいくつかの好ましいオリゴヌクレオチドの具体例には、修飾骨格(例えば、ホスホロチオアート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合、または短鎖ヘテロ原子または複素環の糖間結合)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドが最も好ましい。De Mesmaekerら、.(1995)Acc.Chem.Res.28:366−374)によって開示されたアミド骨格も好ましい。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい(Summerton and Weller,米国特許第5,034,506号)。他の好ましい実施形態(ペプチド核酸(PNA)骨格など)では、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格をポリアミド骨格に置換し、核酸塩基はポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接または間接的に結合する(Nielsenら、.,Science,1991 ,254,1497)。オリゴヌクレオチドはまた、1つ以上の置換された糖部分を含むことができる。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター(intercalator);オリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学的性質を改善するための基、および類似の性質を有する他の置換基。オリゴヌクレオチド上の他の位置(特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位)に類似の修飾を行うこともできる。
【0098】
オリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアはまた、塩基の修飾または置換を付加的または代替的に含むことができる。本明細書中で使用する場合、「未修飾」または「天然の」核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、天然の核酸で稀または一過性にしか見出されない核酸塩基(例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−meピリミジン(特に5−メチルシトシン(5−me−C))(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、およびゲントビオシルHMC)ならびに合成核酸塩基(2−アミノアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン(Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,1980,pp75−77;Gebeyehu,G.ら、1987,Nucl.Acids Res.15:4513)が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。当該分野で公知の「ユニバーサル」塩基(例えば、イノシン)を含めることができる。
【0099】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアの別の修飾は、オリゴヌクレオチドへのオリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する1つ以上の部分または結合体の化学結合を含む。かかる部分には、脂質部分(コレステロール部分、コレステリル部分(Letsingerら、.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553)、コール酸(Manoharanら、.(1994)Bioorg.Med.Chem.Let.4:1053)、チオエーテル(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール)(Manoharanら、.(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:306;Manoharanら、.(1993)Bioorg.Med.Chem.Let.3:2765)、チオコレステロール(Oberhauserら、.(1992)Nucl.Acids Res.20:533)、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)(Saison−Behmoarasら、.(1991)EMBO J.10:111;abanovら、.(1990)FEBS Lett.259:327;Svinarchukら、.(1993)Biochimie 75:49)、リン脂質、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、.(1995)Nucleosides & Nucleotides 14:969)など)が含まれるが、これらに限定されない。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよびかかるオリゴヌクレオチドの調製方法は当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,138,045号、同第5,218,105号、および同第5,459,255号)。Farrel and Kloster(米国特許第6,310,047号)は、高親和性DNA結合多核白金化合物を使用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達およびin vivoヌクレアーゼ耐性の増強を記載している。所与のオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミア中の全ての位置が均一に修飾される必要はなく、1つを超える上記修飾を、単一のオリゴヌクレオチド中に組み込むことができるか、オリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドでさえも組み込むことができる。
【0100】
本発明のオリゴヌクレオチドおよびアンタゴミアは、好ましくは、約8〜約50ヌクレオチド長である。特に好ましいオリゴヌクレオチドは10〜30ヌクレオチド長であり、15〜25ヌクレオチドが特に好ましい。本発明の文脈では、これは8〜50単量体を有する前述の天然に存在しないオリゴマーを含むと理解される。
【0101】
本発明で使用されるオリゴヌクレオチドを、周知の固相合成技術によって簡便かつ日常的に作製することができる。かかる合成のための装置は、いくつかの供給元(Applied Biosystemsが含まれる)から販売されている。かかる合成のための任意の他の手段も使用することができ、実際のオリゴヌクレオチド合成は十分に当業者の能力の範囲内である。他のオリゴヌクレオチド(ホスホロチオアートおよびアルキル化誘導体など)の調製のために類似の技術を使用することも周知である。
【0102】
発癌および白血病誘発におけるmiRNA標的の役割および活性ならびに腫瘍/癌細胞中でのその集合的発現の認識および理解によって生じる診断および治療の可能性は、miRNAが癌関連遺伝子(腫瘍抑制遺伝子が含まれる)との直接的で且つ原因となる相互作用に関与し、癌細胞の増殖または維持を誘導または促進する活性を有するようであるという事実に由来する。前に示唆されており、本明細書にさらに詳述されているように、本発明は、miRNAによって開始される活性を調整するためのmiRNA標的が関与するか関係する一連の反応における薬学的介入を意図する。
【0103】
したがって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から特に選択される1つ以上のmiRNAの発現の阻害方法を提供する。特に、1つ以上のmiRNAを発現する細胞を有効量の本発明のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドと接触させ、それにより、1つ以上のmiRNAの発現または活性が阻害される工程を含む、本発明で関連することが示された1つ以上のmiRNAの発現を阻害する方法を提供する。
【0104】
本発明は、さらに、miRNA(特に、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223)の発現または活性を阻害する治療有効量の化合物または薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における本発明のmiRNAの発現またはmiRNAの増大した発現に関連する状態(癌または他の過剰増殖障害など)を処置または予防する方法を含む。この方法の1つの態様では、化合物または薬剤は、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223の1つ以上のmiRNAと特異的にハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンタゴミアである。
【0105】
アッセイ
本発明の診断的および医学的な有用性は、哺乳動物(特に、ヒト患者)における癌、悪性疾患、リンパ腫、および/または白血病をスクリーニングするか評価するためのアッセイにおける本発明のmiRNA標的の使用にまで及ぶ。したがって、本発明は、そのmiRNAの存在範囲の定量的分析またはその活性を模倣または遮断することができる薬物または他の薬剤の同定のための試験キットの形態で調製することができるアッセイ系を含む。
【0106】
さらに、
(a)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAを発現する細胞をインキュベートする工程、および
(b)候補化合物または薬剤の存在下および非存在下でmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現または活性を検出または測定する工程
を含み、それにより、
候補化合物または薬剤の存在下対候補化合物または薬剤の非存在下でのmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現の減少が、化合物または薬剤がmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択されるmiRNAの発現を阻害することを示す、癌に関連する1つ以上のmiRNAの発現を阻害する化合物または薬剤の同定方法を提供する。
【0107】
方法の1つの態様では、1つ以上のmiRNAの発現または活性を、miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性または発現、またはmiRNAを発現する白血病細胞またはリンパ腫細胞の成長または生存度の決定によって評価する。例示的なかかる方法を本明細書中に提供するか(実施例中の方法が含まれる)、そうでなければ当業者に公知であり、そして/または当業者の能力の範囲内である。miRNA発現を、例えば、RT−PCRアッセイを使用して決定することができる。例えば、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子(例えば、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される)をモニタリングして、miRNAの発現または活性を決定し、評価することができる。あるいは、白血病細胞またはリンパ腫細胞(T−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株など)を、miRNAの活性または発現の決定において成長について評価することができる。動物モデルも使用することができる。
【0108】
癌(リンパ腫または白血病が含まれる)を、1つ以上のmiRNA(特に、miR19、miR20、miR26、miR92、miR148、および/またはmiR223から選択される)の発現の決定によって評価またはモニタリングすることができる。したがって、本発明は、
(a)哺乳動物から血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する、哺乳動物における悪性疾患(血液学的悪性疾患が含まれる)の検出または評価方法を含む。
(a)哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(b)サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
少なくとも2つのmiRNAの発現または活性が参照サンプルと比較して増加する、哺乳動物における癌を検出または評価する方法を意図し、提供する。
【0109】
上記方法の1つの態様では、2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。上記方法の1つの態様では、3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、発現または活性が増加する。さらなる態様では、癌は、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される。特定の態様では、癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から特に選択される血液学的悪性疾患である。特定の態様では、癌は、白血病(特に、T−ALL)である。
【0110】
当業者は、癌のin vivo動物モデルまたは動物異種移植研究を使用して、本発明のmiRNAの役割をさらにまたは付加的にスクリーニング、評価、および/または検証し、本発明のmiRNAのモジュレーター(アンタゴミアが含まれる)を評価、同定、および特徴づける(miRNA発現の調整、miRNA標的遺伝子またはタンパク質の調整、ならびに腫瘍の進行、成長、耐性、および/または浸潤の阻害のさらなる評価が含まれる)ことができる。例示的な癌または腫瘍モデル(ノッチ1誘導性T−ALLのマウスモデルが含まれる)を提供し、本明細書中の実施例で使用する。(Pear WSら、(1996)J Exp Med 183(5):2283−2291;Wendel NHGら、(2004)Nature 428(6980):332−337)。適切な動物モデルには、種々の癌および過剰増殖状態のモデルが含まれるが、これらに限定されない。任意の適切な癌モデルを使用することができる。例示的且つ有用な血液学的悪性疾患の動物モデルには、Vav遺伝子調節配列(VavP)によって調節されるBcl2導入遺伝子を使用した濾胞性リンパ腫モデル(Egle Aら、(2004)Blood 103(6):2276−2283);免疫グロブリンμまたはκエンハンサーにカップリングさせたc−myc癌遺伝子を使用したリンパ性悪性疾患トランスジェニックマウスモデル(Adams JMら、(1985)Nature 318(6046):533−38)が含まれる。
【0111】
多数の蛍光物質が公知であり、標識として使用することができる。これらには、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー、およびルシファーイエローが含まれる。特定の検出物質は、ヤギ中で調製され、イソチオシアナートを介してフルオレセインと結合体化させた抗ウサギ抗体である。miRNA標的またはその結合パートナーを、放射性元素または酵素で標識することもできる。放射性標識を、任意の現在利用可能な計数手順によって検出することができる。好ましい同位体を、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reから選択することができる。
【0112】
酵素標識が同様に有用であり、現在使用されている比色分析技術、分光光度的技術、蛍光分光光度的技術、電流測定技術、または気体定量技術のうちのいずれかによって検出することができる。酵素を、架橋分子(カルボジイミド、ジイソシアナート、およびグルタルアルデヒドなど)との反応によって選択された粒子に結合体化させる。これらの手順で使用することができる多数の酵素は公知であり、使用することができる。ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが好ましい。代わりの標識物質および方法のその開示の例として米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号、および同第4,016,043号が参照される。
【0113】
本発明のさらなる実施形態では、疑われる標的または癌細胞における所定のmiRNAの活性または能力の有無を決定するための専門医による使用に適切な市販の試験キットを調製することができる。上で考察した試験技術によれば、かかるキットの1つのクラスは、勿論、選択される方法(例えば、「競合的方法」など)に応じて、少なくとも標識されたmiRNAまたはその結合パートナー(例えば、腫瘍抑制遺伝子)および説明書を含むであろう。キットはまた、その他の試薬(緩衝液、安定剤など)を含むこともできる。
【0114】
組成物
本発明は、さらに、本発明の治療方法の実施で有用な治療組成物を意図する。本治療組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤(キャリア)および有効成分としての本明細書中に記載のアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、miRNA標的アンタゴニストのうちの1つ以上を混合物で含む。好ましい実施形態では、組成物は、本発明のmiRNAの標的細胞(特に、癌細胞または前癌細胞)内のその標的への特異的結合を調整することができる薬剤を含む。
【0115】
有効成分としてアンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニストを含む治療組成物の調製は、当該分野で十分に理解されている。典型的には、かかる組成物を、注射液(溶液または懸濁物のいずれか)として調製するが、注射前の液体での溶液、または懸濁物に適切な固体形態も調製することができる。調製物を乳化することもできる。治療有効成分を、しばしば、薬学的に許容可能であり、且つ有効成分と適合する賦形剤と混合する。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールなどおよびその組み合わせである。さらに、必要に応じて、組成物は、有効成分の有効性を増強する少量の補助剤(湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)を含むことができる。
【0116】
アンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニストを、薬学的に許容され得る塩の中和形態として治療組成物に処方することができる。薬学的に許容され得る塩には酸付加塩が含まれ、この塩は、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、およびマンデル酸など)を使用して形成される。遊離カルボキシル基から形成された塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄など)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、およびプロカインなど)から誘導することができる。
【0117】
治療用アンタゴミア、オリゴヌクレオチド、またはmiRNAアンタゴニスト含有組成物を、例えば、単位用量の注射によって慣習的に静脈内投与する。用語「単位用量」は、本発明の治療組成物に関連して使用する場合、ヒトのための単位投薬量として適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要な希釈剤(すなわち、キャリアまたはビヒクル)と関連して所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性物質を含む。
【0118】
組成物を、投薬処方物に適合する様式および治療有効量で投与する。投与量は、処置すべき被験体、被験体の免疫系が有効成分を使用する能力、および所望のmiRNA能力の阻害または中和の程度に依存する。必要な有効成分の正確な投与量は、施術者の判断に依存し、各個体に特有である。
【0119】
本明細書中で使用する場合、「pg」はピコグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「ug」または「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ul」または「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「l」はリットルを意味する。
【0120】
治療組成物は、さらに、有効量の核酸またはオリゴヌクレオチド、および1つ以上の以下の有効成分または活性薬剤を含むことができる:化学療法薬、放射線治療薬、免疫調節薬、有糸分裂阻害剤。
【0121】
本発明の薬学的組成物を、局所処置または全身処置のいずれが望ましいかおよび処置すべき領域に応じて多数の方法で投与することができる。投与は、局所(眼、膣、直腸、鼻腔内、経皮が含まれる)、経口、または非経口であり得る。非経口投与には、点滴または注入、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射、肺投与(例えば、吸入またはガス注入による)、または髄腔内もしくは脳室内投与が含まれる。経口投与のために、その吸収および分布特性のために少なくとも1つの2’置換リボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドが特に有用であることが見出されている。米国特許第5,591,721号(Agrawalら、.)は、経口投与に適切であり得る。局所投与用処方物には、経皮貼布、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体、および粉末が含まれ得る。従来の薬学的キャリア、水性基剤、粉末基剤、または油性基剤、および増粘剤などが必要であり得るか望ましいかもしれない。コーティングしたコンドームおよびグローブなども有用であり得る。経口投与用組成物には、粉末または顆粒、水または非水性媒質の懸濁物または溶液、カプセル、サシェ、または錠剤が含まれる。増粘剤、矯味矯臭剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましいかもしれない。非経口、髄腔内、または脳室内投与用の組成物には、緩衝液、希釈剤、および他の適切な添加物も含むことができる滅菌水溶液が含まれ得る。かかる薬学的キャリアに加えて、オリゴヌクレオチド取り込みを容易にするためにカチオン性脂質を処方物中に含めることができる。取り込みを容易にすることが示されている1つのかかる組成物は、リポフェクチン(BRL Bethesda,MD)である。
【0122】
投与は、処置される状態の重症度および応答性に依存し、一連の処置は数日から数ヵ月または治癒するか病状が軽減するまで継続する。最適な投与計画を、体内の薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者は、至適投薬量、投与方法、および反復速度を容易に決定することができる。至適投薬量は、個別のオリゴヌクレオチドの相対効力に応じて変化し得、一般に、in vitroおよびin vivoでの動物研究におけるIC50またはEC50に基づいて計算することができる。例えば、化合物の分子量(オリゴヌクレオチド配列および化学構造から得られる)および有効用量(IC50など)(例えば、実験的に得られる)を考慮して、用量(mg/kg)を日常的に計算する。
【0123】
当該分野で周知のように、DNA配列を、適切な発現ベクター中での発現調節配列への作動可能な連結およびこの発現ベクターの適切な単細胞宿主の形質転換のための使用によって発現することができる。本発明のDNA配列の発現調節配列へのかかる作動可能な連結には、勿論、依然としてDNA配列の一部ではない場合、DNA配列の上流の正確な読み取り枠での開始コドン(ATG)の提供が含まれる。
【0124】
広範な種々の宿主/発現ベクター組み合わせを、本発明の核酸配列の発現で使用することができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体配列、非染色体配列、および合成DNA配列のセグメントからなり得る。適切なベクターには、SV40および公知の細菌プラスミドの誘導体(例えば、大腸菌プラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMB9、およびその誘導体、プラスミド(RP4など);ファージDNAS(例えば、λファージの多数の誘導体(例えば、NM989))および他のファージDNA(例えば、M13および一本鎖繊維状ファージDNA);酵母プラスミド(2μプラスミドまたはその誘導体);真核細胞に有用なベクター(昆虫細胞または哺乳動物細胞で有用なベクターなど);およびプラスミドとファージDNAとの組み合わせ由来のベクター(ファージDNAまたは他の発現調節配列が使用されるように改変されたプラスミドなど)などが含まれる。広範な種々の単細胞宿主細胞はまた、本発明のDNA配列の発現で有用である。これらの宿主には、周知の真核生物宿主および原核生物宿主(大腸菌、シュードモナス、バチルス、ストレプトマイセス、真菌(酵母など)、および動物細胞(CHO細胞、R1.1細胞、B−W細胞、およびL−M細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)など)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、ならびに組織培養のヒト細胞および植物細胞の株など)が含まれ得る。
【0125】
全てのベクターではないが、発現調節配列および宿主が本発明の核酸配列を発現するように等しく十分に機能すると理解されるであろう。全ての宿主が同一の発現系を用いて十分に等しく機能するわけではないであろう。しかし、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく所望の発現を達成するために過度の実験を行うことなく適切なベクター、発現調節配列、および宿主を選択することができるであろう。例えば、ベクターの選択では、ベクターが宿主中で機能しなければならないので、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、コピー数を調節する能力、およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現も考慮されるであろう。
【0126】
発現調節配列の選択では、通常、種々の要因が考慮されるであろう。これらには、特に潜在的な二次構造に関して、例えば、系の相対強度、その調節性、および発現すべき特定の核酸配列または遺伝子との適合性が含まれる。適切な単細胞宿主を、例えば、選択したベクターとのその適合性、その分泌特性、そのタンパク質を正確に折り畳む能力、およびその発酵要件、ならびに発現すべきDNA配列によってコードされる産物の宿主に対する毒性、および発現産物の精製の容易さを考慮して選択するであろう。
【0127】
合成DNA/RNA配列により、miRNAアナログまたは「ムテイン」を発現する遺伝子を都合良く構築可能である。あるいは、ムテインをコードするDNAを、未変性のRNA、遺伝子、またはcDNAの部位特異的変異誘発によって作製することができ、ムテインを、従来のポリペプチド合成を使用して直接作製することができる。タンパク質への非天然アミノ酸の一般的な部位特異的組み込み方法は、Christopher J.Noren,Spencer J.Anthony−Cahill,Michael C.Griffith,Peter G.Schultz,Science,244:182−188(April 1989)に記載されている。本方法を使用して、非天然アミノ酸を有するアナログを作製することができる。
【0128】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼにいくらか類似する様式で他の一本鎖RNA分子を特異的に切断する能力を有するRNA分子である。リボザイムは、一定のmRNAがそれ自体のイントロンを切り出す能力を有するという所見から発見された。これらのRNAのヌクレオチド配列の修飾により、研究者は、RNA分子中の特異的なヌクレオチド配列を認識し、それを切断する分子を操作することができた(Cech,1988.)。これらは配列特異的であるので、特定の配列を有するmRNAのみが不活化される。研究者は、2つのリボザイム型(テトラヒメナ型および「ハンマーヘッド」型)を同定している(Hasselhoff and Gerlach,1988)。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基配列を認識する一方で、「ハンマーヘッド」型は、11〜18塩基配列を認識する。認識配列が長いほど、標的mRNA種中で排他的に起こる可能性がより高い。したがって、ハンマーヘッド型リボザイムは、テトラヒメナ型リボザイムよりも特異的mRNA種の不活化に好ましく、18塩基認識配列はより短い認識配列より好ましい。
【0129】
本発明を、本発明の例として提供した以下の非限定的な実施例を参照してより深く理解することができる。以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために示すが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限すると決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0130】
実施例1
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の制御によって作用する(Bartel,2004)。miRNAの17〜92クラスターは造血系癌で高発現し、in vivoでのリンパ球増殖およびc−Myc誘導性白血病誘発/リンパ腫誘発を増強する(Heら、2005)(Xiaoら、2008)。17〜92クラスターおよびそのパラログはまた、多様な固形腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓、前立腺、および胃由来の固形腫瘍が含まれる)で発現される(Voliniaら、2006)(Petroccaら、2008)。
【0131】
in vitro造血形質転換アッセイを使用して、本発明者らは、驚いたことに、17〜92クラスター中のmiRNAのうちでmiR−19のみの過剰発現がインターロイキン−3(IL3)枯渇FL5−12リンパ球をアポトーシス死から防御することを決定した。本発明者らはまた、:(1)miR−19が浸潤性(aggressive)白血病およびリンパ腫(T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫が含まれる)で高度に過剰発現されるが、濾胞性B細胞リンパ腫ではそうではないことを証明し、(2)miR−17〜92クラスターがT細胞受容体遺伝子座[t(13;14)(q32;q11)]と並列して第2の転座と共に生じ、それにより、構成的に活性化/短縮された(エクソン29〜34)ノッチ1形態を発現するT−ALLに関連する新規の(しかし、おそらく稀な)染色体再配列を同定し、そして(3)miR−19がノッチ1誘導性T−ALLおよびc−Myc誘導性バーキットリンパ腫の両方を促進することを証明した。
【0132】
造血形質転換アッセイにおいてmiR−19の活性を再利用するshRNAの不偏性遺伝子スクリーニングを使用して、本発明者らは、リンパ球生存に関与するmiR−19標的として以下の8つの遺伝子(5つがmiR−19シード配列を有する)を同定した:Bim(アポトーシス促進性)、Pten(腫瘍抑制因子)、Prkaa1(AMP活性化キナーゼのαサブユニット)、Ppp2r5e(PP2Aのεイソ型)、およびDock5(細胞質分裂−5のデディケーター(dedicator))(その全てが直接のmiR−19標的である)、ならびにFoxOlおよびFoxO3(Fox転写因子)およびBnip3(Rheb/mTORおよびBcl2結合タンパク質の制御因子)(これらはそうではない)。
【0133】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)(miR−19結合部位およびmiR−19アンタゴミアの変異分析と組み合わせたレポーターアッセイ)を使用して、本発明者らは、Bim、Pten、Prkaa1、およびPppp2r5eの発現がリンパ球中でmiR−19によって直接制御されること、および造血形質転換アッセイにおいて各遺伝子がリンパ球生存に寄与することを確認した。さらに、miR−19は、PTENではそうでなかったが、タンパク質レベルでPPP2R5E、PRKAA1、およびBIMを明確に減少させた一方で、mirR−19アンタゴミアはmiR−19標的タンパク質PPP2R5E、PRKAA1、BIM、およびPTENのレベルを増加させた(マウスDock5遺伝子はヒト遺伝子中に存在するmiR−19シードマッチを含まず、FL5−12細胞におけるmiR−19の標的ではない)。
【0134】
これらのデータは、miR−19が細胞生存のPI−3K関連プログラムと協調し、特異的治療レジメンに対する応答の予想および/または治療に対する応答のモニタリングのための白血病およびリンパ腫の診断のためにmiR−19発現の測定を使用することができることを証明している。これらは、さらに、癌(miR−19が過剰発現した血液悪性疾患が含まれる)に対して有効な治療薬としてのmiR−19のアンタゴニスト/アンタゴミアを示す。
【0135】
miR−19の発癌活性は、17〜29クラスターのmiRNAとそのパラログとの間で固有である
確立された造血形質転換のin vitroアッセイ(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)を使用して、17〜92クラスターおよびそのパラログ内の重要な発癌活性を同定した。固有のシード配列ファミリーを示す全てのmiRNA(具体的には、miR−17、miR−18a、miR−19b−1(miR−19)、miR−20a、miR−106a、miR−106b、およびmiR−25)を試験した(図1a)。アッセイは、IL3から除去した場合にアポトーシスを受けるFL5−12リンパ球のIL3依存性に基く。競合実験では、FL5−12細胞を、GFP+個別のmiRNAまたは空のベクターで部分的に形質導入し、これらの混合した集団を、その相対的比率の変化について蛍光標示式細胞分取(FACS)によってモニタリングした(図1b)。miR−19を発現するFL5−12細胞はIL3枯渇の際に親細胞を超えて迅速に富化され、他のmiRNAはこの防御効果に関連しなかった(t検定によってmiR−19:p<0.002、全ての他のmiRNAおよびベクターp>0.05)(図1c)。この効果は、主に、アポトーシスからの防御に起因し、細胞周期動態を有意に変化させなかった(図2)。それ故、17〜92クラスターおよびそのパラログ内で、miR−19は、in vitroでのリンパ球生存を増強する異なる能力を有する。
【0136】
miR−19は一定の白血病およびリンパ腫で高発現され、T細胞白血病における新規の染色体再配列の標的である
ヒトリンパ悪性疾患におけるmiR−19の発現を評価した。扁桃腺由来の非悪性リンパ球と比較して、T−ALLにおいてmiR−19発現が5〜17倍増加し、B−ALLではいくらかより少なく増加した(図3a)。さらに、新規の再配列がT−ALLにおいて認められた−miR−17〜92クラスターがT細胞受容体遺伝子座(TCRA/D)と並列する転座(t(13;14)(q32;q11))(図3bおよびcならびに図4)。この変化は、第2の転座t(9;14)(q34;q11)(他のTCRA/D対立遺伝子に影響を及ぼし、構成的に活性な短縮形態のノッチ1(エクソン29〜34)を発現させる)と共に起こる(図5)(Palermo、ら、.,2006),(Ellisenら、1991)。miR−19はまた浸潤性B細胞リンパ腫(DLBCLおよびバーキットリンパ腫など)で高発現されたが、無痛性濾胞性リンパ腫ではあまり豊富でなかった。特に、FL5−12細胞中のmiR−19のレトロウイルス発現は、いくつかの腫瘍標本における発現に匹敵するレベルであった(図3a)。したがって、miR−19は浸潤性のリンパ性癌で高発現し、T細胞白血病における新規の染色体再配列の標的である。
【0137】
miR−19はin vivoで浸潤性のT細胞系統悪性疾患およびB細胞系統悪性疾患の発症を駆動する
miRNAはin vivoでリンパ悪性疾患の発症を駆動することができるだろうか?miR−19発現および転座データに基づいて、miR−19をT−ALLマウスモデルにおいて評価した(Pearら、1996)。簡潔に述べれば、ほとんどのT−ALL症例はノッチ1遺伝子中に変異を有し、t(9;14)(q34;q11)転座のように、これらはノッチ1の構成的に活性な細胞内ドメイン(ノッチ−ICN)を生成する(Wengら、2004)。miR−19のin vivoでノッチ−ICN誘導性T−ALLを促進する能力を試験するために、HPCを照射レシピエントに養子導入した(図3d)。ノッチ−ICNおよびmiR−19を発現するHPCを投与したマウスはT−ALLをすぐに発症し、これらの全動物は2ヵ月以内に瀕死の状態であった。同時に、ノッチ−ICNのみを発現するHPCを投与した80%のマウスは無疾患のままであった(p=0.0003)(図3e)。病理学により、血液塗抹標本上の豊富な芽球、骨髄、脾臓、およびリンパ節の浸潤、ならびにT細胞マーカーの排他的発現を用いてT−ALLの診断を確認した(図3f〜hおよび図6)。miR−19は、バーキットリンパ腫のΕμΜycモデルで類似の効果を示した。これは、全クラスターについて報告されるように(Heら、2005)、p53依存性アポトーシスの遮断によってc−Mycと協力する能力を示した(図7)。それ故、miR−19は、in vivoでB細胞系統およびT細胞系統から生じる浸潤性悪性疾患における癌遺伝子として作用する。
【0138】
miR−19の発癌活性を担う標的の同定
標的予想および遺伝子発現分析。miR−19の発癌活性を担う分子標的を決定した。最初に、コンピュータ標的同定および遺伝子発現分析を組み合わせた。Targetscanにより、938種のヒトおよび744種のマウスの潜在的miR−19標的を検索した。miR−19またはベクターで形質導入したFL5−12細胞における遺伝子発現プロフィールは、中程度の発現の変化しか示さなかった(平均倍率変化0.2±標準偏差(SD)0.39](図8)。全体的にみて、予想される全miR−19標的(Pten腫瘍抑制遺伝子が含まれる)の発現レベルは、他の遺伝子よりも減少した(p<2e−04、コルモゴロフ・スミルノフ検定による)。しかし、より明白な(1.5または2SD)発現の減少を示す遺伝子のうちでmiR−19標的の有意な富化は認められなかった(2SDでp>0.46;1.5SDでp>0.077、フィッシャーの正確検定)(図8)。
【0139】
miR−19標的のための不偏機能アッセイとしてのショートヘアピンRNA遺伝子スクリーニング。不偏遺伝子スクリーニングがリンパ球生存に関与するmiR−19標的を同定するための代替法であり得ると仮定した。具体的には、そのノックダウンが、リンパ球中のmiR−19を表現型模写する遺伝子のshRNAスクリーニング(Paddisonら、2004)がmiR−19の活性を担う遺伝子を同定すると仮定した。対照実験を、Bim(Bcl2L11)(公知の17〜92クラスターの標的)に対するshRNAを使用して行った(図9a〜c)。約1,000個のshRNAプールでのFL5−12細胞の形質導入および2サイクルのIL3枯渇または完全培地中での継代を含むスクリーニングプロトコール(図10a)を考案した。カスタムハーフヘアピンアレイ(Chang,Elledge,& Hannon,2006)を使用して、1または2ラウンドの選択(T1およびT2)後の処理(IL3−)サンプル対未処理(IL3+)サンプルにおけるshRNAの存在量の変化を測定した。教師なしクラスタリングは、生物学的レプリケート間で良好な再現性を示し(A−C;平均相関r=0.60±0.17)、その後のIL3枯渇サイクルを使用したshRNAにおいて進行性のシフトを示した(図10b)。統計ツールを使用して、生物学的に有意なシグナルを同定した。マイクロアレイの有意性分析(SAM)により、個別のshRNAの変化を同定し(図10c)、一方で、遺伝子組分析(GSA)により、同一の遺伝子をターゲティングするshRNA群を定義した。GSAにより、少なくとも2つ且つ5つまでの異なるshRNAによってそれぞれターゲティングされる14遺伝子が同定された。最上位の「ヒット」は、5つの独立したshRNAによってターゲティングされたAMP活性化キナーゼのαサブユニット(Prkaa1)であった(図10d)。
【0140】
ショートヘアピンRNAを使用した推定miR−19標的の検証。候補遺伝子を、同一のshRNA実験系を使用して最初に検証した。GSA分析から同定されたほぼ全ての遺伝子および任意の閾値を超える(1.65倍超の増加、p<0.05)SAM分析由来のタンパク質コード遺伝子が含まれていた。全体で、70超の遺伝子および典型的にはそれぞれをターゲティングする3つのshRNAを再試験した。最終的に、8つの遺伝子をターゲティングするshRNAにより、IL3を枯渇したFL5−12細胞において生存上の利点が得られた(三連の実験、ベクター(示さず)に関してp>0.2および8つ全てのshRNAに関してp<0.05、t検定)(図10e)。顕著には、これらの遺伝子のうちの5つはmiR−19シード配列を保有していた。アポトーシス促進性Bimに加えて、これらは、腫瘍抑制遺伝子Pten、AMP活性化キナーゼのαサブユニット(Prkaa1)、PP2Aのεイソ型(Ppp2r5e)、および細胞質分裂−5遺伝子のデディケーター(Dock5)であった。さらに、直接的なmiR−19標的ではなかった3つの遺伝子(すなわち、FoxO転写因子であるFoxO1およびFoxO3およびBnip3(Rheb/mTORおよびBcl2結合タンパク質の制御因子))も、miR−19の標的として本アッセイで検証した。まとめると、miR−19のように挙動するshRNAの不偏遺伝子スクリーニングの結果は、miR−19結合部位を含む遺伝子の非常に有意な富化を示す(p<7.17e−07フィッシャーの正確検定)(図11a)。ヒトDock5遺伝子と異なり、マウス遺伝子はmiR−19標的であると予想されないが、マウスゲノムについての富化統計の計算により高有意水準が確認された(p<3.2 exp−05、フィッシャーの正確検定による)(図11b)。同様に、同定された遺伝子は、造血細胞生存におけるmiR−19の機能的に関連する標的である。結果的に、これらは、癌(具体的には、血液悪性疾患)処置のための潜在的な治療標的を示す。
【0141】
miR−19がmiR−19標的として同定された遺伝子の発現を制御することの確認。miR−19はmiR−19の標的として同定された遺伝子の発現を実際に制御するのであろうか?qRT−PCRは、miR−19がFL5−12細胞およびマウスT−ALLサンプルにおけるPten、Ppp2r5r、Prkaa1、およびBimのmRNAレベルを1/2まで減少させたことを証明した(図12aおよび図13)。レポーターアッセイおよびmiR−19結合部位の変異誘発により、これらの遺伝子のmiR−19結合部位を介した3’非翻訳領域(UTR)の直接的な阻害が確認された(図14)。逆に、miR−19に対するアンタゴミアがmRNAレベルを増加させ(図12b)、miR−19およびアンタゴミアの両方がタンパク質レベルに測定可能な影響を及ぼした。例えば、miR−19は、PPP2R5E、PRKAA1、およびBIMを明確に減少させ(図12c)、リボゾームS6リン酸化(PI3K活性の下流読み出し)を直接活性化した(図15)。miR−19がPTENタンパク質に検出可能な影響を及ぼさなかった一方で、そのmRNAは明確に減少した。アンタゴミアは、全miR−19標的タンパク質(PTENが含まれる)増加させた(図12d)。予想通り、miR−19もアンタゴミアもBnip3に影響を及ぼさなかった(図12cおよびd)。また、マウスDock5遺伝子はヒト遺伝子中に存在するシードマッチを含まず、したがって、FL5−12細胞における標的ではない。miR−19発現と比較したアンタゴミアのより大きな影響は、これらの遺伝子が増殖細胞中で内因性miR−19によって強力に(tonically)抑制されることを示し得る。これらの所見により、Bim、Prkaa1、Pten、およびPpp2r5eの発現がリンパ球中のmiR−19によって制御されることが確認される。
【0142】
miR−19の発癌活性へのmiR−19標的の相対的寄与の評価。新規のmiR−19標的の相対的寄与を評価した。アポトーシス促進性BIMタンパク質はBCL2と対立し、リンパ球生存の重要な制御因子である(Bouilletら、1999)。miR−19がBim非依存性効果を有するかどうかを評価するために、Bcl2を安定に発現するように操作したFL5−12細胞(FL5−12/Bcl2細胞)を使用して相補性研究を行った。予想通り、Bim shRNAはさらなる利点を付与しなかったのに対して、PtenおよびPp2r5eに対するmiR19およびshRNAは、Bcl2の存在下で持続的な富化を示した(図12e)。逆に、miR−19に対するアンタゴミアは、抗増殖効果を示さなかった。アンタゴミアを発現するFL5−12/Bcl2細胞は継代の際に喪失した(図12f)。同様に、miR−19の発現は、メトホルミン活性化AMPキナーゼまたはPtenもしくはPp2r5eの発現の存在下で、連続的増殖に関連していた(図16)。それ故、miR−19は、複数の標的遺伝子(リンパ球におけるPI3関連生存シグナルの制御因子が含まれる)を通して作用する(図12g)。
【0143】
材料と方法
細胞培養、生存度、増殖アッセイ、およびベクター構築物。FL5−12マウスリンパ球、IL3枯渇研究、およびウイルス形質導入は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。細胞周期およびGuava TechnologiesのViacountアッセイを使用したDNA染色色素(LDS751)の取り込みに基づいた細胞周期および細胞死アッセイを、報告されているように行った(Mavrakisら、2008)。レトロウイルスベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づき、miR 17、miR 18a、miR 19b−1(miR−19)、miR 106a、miR 106b、miR 25をコードするmiRNA発現ベクター(Heら、2005)、ノッチ−ICN(W.Pearからの提供)(Pearら、1996)およびBcl2(Wendelら、2004)をコードするベクター、各shRNAベクター(図17)、およびライブラリーベクター(MRP)(図18aおよびb)が含まれる。miRNAインヒビターオリゴヌクレオチド(アンタゴミア)MZIP 19a−PA−1、MZIP 19b−PA−1、およびスクランブルドコントロール(MZIP000−PA−1)はSystem Biosciencesから入手した。
【0144】
マウスの生成
レトロウイルスで形質導入したHPCの養子移入に基づいたノッチ1誘導性T−ALLおよびEμMycリンパ種のマウスモデルが報告されている(Pearら、1996)、(Wendelら、2004)。データを、統計的有意性についてのログランク(Mantel−Cox)検定を使用してカプラン・マイヤー形式で分析した。ヘテロ接合性ポリメラーゼ連鎖反応(LOH PCR)のp53喪失および表面マーカー分析による免疫表現型検査は記載の通りであった(Wendelら、2004)。
【0145】
ウェスタンブロット分析
全細胞溶解物由来の免疫ブロットを記載のように行った(Wendelら、2004)。簡潔に述べれば、50μgのタンパク質/サンプルをSDS−PAGEゲルで分離し、Immobilon−P膜(Millipore)に移した。抗体は以下に対する抗体であった:Prkaa1(2532、1:1000、Cell Signaling)、Bim/Bcl2L11(AAP−330、1:1000,Assay Designs)、FoxO1(94545、1:1000、Cell Signaling)、FoxO3a(9467、1:1000、Cell Signaling)、Phospho−FoxO3a(94665、1:1000、Cell Signaling)、Ppp2r5e(NB 100−845、NOVUS)、Pten(9559、1:1000、Cell Signaling)、チューブリン(1:5000;Sigma、B−5−1−2)、アクチン(1:5000;Sigma、AC−15)、Bnip3(3769、1:1000、Cell Signaling)、リン酸化S6(2215、1:1000、Cell Signaling)、リン酸化Akt(4058、1:1000、Cell Signaling)、およびDock5(Alan Hall(MSKCC)からの提供)。増強型化学発光を検出のために使用した(ECL,Amersham)。
【0146】
リアルタイム定量的PCR
総RNAおよびmiRNA富化RNAを、Allprep DNA/RNA/Proteinキット(Qiagen)およびmiRNeasyミニキット(Qiagen)をそれぞれ使用して細胞および腫瘍サンプルから抽出した。病理学的診断を、Weill Cornell Medical Collegeの熟達した血液病理学者が行った。cDNA合成およびqRT−PCRおよびΔΔCt法による分析は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)。TaqMan遺伝子発現アッセイを、以下のために使用した:Bcl2L11(Mm00437796_m1)、Dock5(Mm00555757_m1)、FoxO1(Mm00490672_m1)、FoxO3(Mm01185722_m1)、Ppp2r5e(Mm00803759_m1)、Prkaa1(Mm01296695_m1)、およびPten(Mm01212532_m1)。マウスGAPD(GAPDH)(4352932)およびmiR−19b(000396)は、Applied Biosystemsから入手した。発現を、RNU6B(001093,Applied Biosystems)に対して正規化した。
【0147】
ルシフェラーゼアッセイ
Dock5、Ppp2r5e、Prkaa1、およびBimの3’−UTRフラグメントをPCRによって生成し、psi−CHECK−2ベクター(Promega)にクローニングした。記載のようにアッセイを行った(Xiaoら、2008)。部位特異的変異誘発によって結合部位変異体を生成した。
【0148】
核型および蛍光in situハイブリッド形成(FISH)分析
患者の初代リンパ芽球から作製した中期染色体調製物を、標準的手順にしたがって核型分析に供した。13q32に存在するゲノムクローンRP11−97P7およびRP11−980D6をInvitrogenから入手した。DNAを、ニック翻訳によってスペクトラムオレンジdUTP蛍光色素(Vysis,Downers Grove,IL)を使用して標識した。スペクトラムグリーン標識したRB1プローブを、染色体13qハイブリッド形成のコントロールとして使用した。細胞遺伝学的分析のために使用される細胞に対して標準的な方法によってFISHを行った。Nikon Eclipse 600顕微鏡に取りつけられたCytovisionイメージングシステム(Applied Imaging,Santa Clara,CA)を使用して、ハイブリッド形成シグナルを、DAPI染色スライド上の少なくとも20の中期スプレッドに関してスコアリングした。
【0149】
異常ノッチ1転写物の5’RACE増幅
ClontechのNucleotrap mRNA抽出キットを用いて患者の初代リンパ芽球からmRNAを抽出し、ノッチ1遺伝子のエクソン29配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー(5’−TCGTCCATGAGGGCACCGTCTGAAG−3’)を使用してSMART RACEキット(Clontech)にて5’RACEを行った。
【0150】
プールshRNAライブラリースクリーニング
このプールshRNAスクリーニングの根底にあるテクノロジーが記載されており、ハーフヘアピンアレイ検出の使用も記載されている(Mavrakisら、2008)、(Silvaら、2008)、(Chang,Elledge,& Harmon,2006)。簡潔に述べれば、shRNAライブラリーをMRPベクターにクローニングし、p53 shRNAについてタンパク質ノックダウンを確認した。FL5−12細胞を、低感染多重度にて1,000個のshRNAを含むライブラリープールで形質導入し、3つに分割し、それぞれを2サイクルのIL3枯渇およびレスキューに供した。DNA単離、組み込まれたshRNAまたは基準としてのライブラリーのPCR増幅のために生存度が回復した後にサンプルを回収し、標識し、ハイブリッド形成した。画像スキャン(Axon 4000Bスキャナ)から作成したデータ(Nimblescanソフトウェア)を、処理および分析のためにRバージョン2.4にインポートした。各Nimblegen 12−plexカスタムアレイは、12,033個のハーフヘアピンプローブからなる。ほとんどがライブラリー中でshRNAによって示され、残りをバックグラウンドの見積もりのために使用した。予想通り、これらのネガティブコントロールスポットは、各アレイ上の実験プローブよりも低い強度を示した。バックグラウンドより低いシグナル値をバックグラウンド概算値と置換して、低シグナルに起因する比率の高さを小さくした。次いで、各アレイについての2つのチャネルを、LOESS正規化を使用して正規化した。正規化された強度のlog比を、さらなる分析で使用した。
【0151】
プールshRNAスクリーニングのためのデータ分析
分析を、R中、マイクロアレイ用Bioconductor線形モデル(LIMMA)(Yang,Paquet,& Dudoit,2006)、マイクロアレイの有意性分析(SAM)(Tusher,Tibshirani,& Chu,2001)、および遺伝子組分析(GSA)(Efron & Tibshirani,2007)ライブラリーを使用して行った。生物学的レプリケート間の相関を、各時点について主成分分析(principal component analysis)(PCA)によって計算して実験効果および生物学的レプリケートの大きさを決定した。生物学的レプリケートは、実験におけるばらつきの主な原因を構成していなかった。生物学的レプリケートの平均相関は0.60(±0.17)であり、おそらく、集団が培養中に変動した確率変動を反映していた。生物学的に有意なシグナルをSAMソフトウェアを使用して同定して、shRNAの相対存在量の相違を反映するプローブを選択した。条件にわたる各特徴の独立したサンプルを想定する対応のない2クラスのアルゴリズムを使用した。Q値を経験的に計算し、有意な特徴の同定のために使用した。全体的にみて、そのshRNAプローブが以下のこれらの基準を満たすことが見出された場合、遺伝子を潜在的候補とスコアリングした:倍率変化(FC)1.65超、p<0.05、および対応するタンパク質を伴う現在の遺伝子バンク注釈づけ。GSAを使用してさらなる試験を行って、同一遺伝子をターゲティングする複数のヘアピン由来のデータに基づいて候補を同定し(各遺伝子が2〜4つのヘアピンによってターゲティングされる場合)、その倍率変化をまとめている。この統計値を包括的順列由来の同一の統計値と比較して、各遺伝子の経験的p値に到達させた。GSA分析において正の倍率変化を示す全ての遺伝子組を検証に含めた(嗅覚受容体481を除く)。これらのカットオフは比較的任意であり、偽陽性を最小にするための控えめな基準として選択した。
【0152】
shRNAオフターゲット効果のコンピュータ分析
いくつかのコンピュータ分析を行って、スクリーニングの結果がオフターゲット効果に寄与し得るかどうかを調査した。以下の2つの仮説を考慮した:(1)スクリーニングで過剰に出現したshRNAがmiR−19自体と配列が類似し、したがって、3’UTR中の部位を介してmiR−19活性を模倣すること;(2)スクリーニングの結果が、少数の重要な遺伝子に及ぼすマイクロRNA様オフターゲット効果によって説明可能であること。
【0153】
第1の仮説のために、全shRNAを、(a)miR−19シード領域に対するshRNA「シード」(2〜8位)および(b)全長miR−19aおよびmiR−19b配列に対するshRNAの非ギャップ配列類似性によってランク付けた。ライブラリー中のshRNAはmiR−19と同一の7merシード領域を持たなかった;そのシード領域がmiR−19の7merシードと6つの位置で適合したshRNAのうち(6merシード適合位置3〜8を有する12のshRNA、6merシード適合位置2〜7を有する2つのshRNA)、スクリーニング中で過剰に出現した上位100個のshRNA中に存在したものはなかった。ライブラリー中のshRNAと全長miR−19a/b配列との間の最大配列類似性は、13塩基非ギャップマッチであった;23個のshRNAはmiR−19aおよび/またはmiR−19bに対してこの程度の類似性を有していたが、スクリーニング由来の上位100個の過剰に出現したshRNA中に存在したものはなかった。さらに、スクリーニング中の過剰出現によるshRNAのランク付けとmiR−19とのこれらの類似性比較との間のスピアマン順位相関(|rho|<.01)は低かった。
【0154】
次に、スクリーニング中で上位にランク付けられたshRNAが完全なライブラリーと比較してPTEN、PRKAA1、BCL2L11、PPP2R5E、DOCK5、FOXO1、FOXO3、およびBNIP3に対する予想されるオフターゲット効果を有する可能性が高いかどうかを考慮した。これが正しかったならば、スクリーニング中のshRNAの過剰出現がこれらの重要な遺伝子のオフターゲットサイレンシングによって説明可能である。shRNAの潜在的なマイクロRNA様オフターゲット効果を予想するために、全マウスゲノム中の3’UTRを、ライブラリー中のshRNAの7merシード配列に対する適合(2〜8位、保存フィルタなし)をスキャニングした。所与のshRNAについて7merシードマッチを有する遺伝子を、このshRNAの予想されるオフターゲットであると見なした。次いで、本発明者らは、8遺伝子のうちのいずれかについて、遺伝子を「オフターゲット」すると予想されるshRNA組が、完全なshRNAライブラリーと比較してスクリーニング由来の上位Kまでの過剰に出現したshRNA中で富化されるかどうかを試験した。2から250までの範囲のK値を使用し、任意のK値についてのフィッシャーの正確検定による統計的有意性(全ての場合において各遺伝子についてp>0.05)は認められなかった。これらのコントロールは、shRNAがmiR−19自体に類似しないこと、およびスクリーニングの結果を重要な遺伝子に対する上位にランク付けられたshRNAのオフターゲット効果によって説明できることを示す。
【0155】
ライブラリー中の約12000個のshRNAの固有の標的の数およびmiR−19標的も予想されるこれらの標的のサブセットに関する富化統計値(enrichment statistic)を、少数の「ヒット」数を説明するためのフィッシャーの正確検定を使用して計算した。ヒトゲノムおよびマウスゲノムの両方についてこの分析を行った。標的予想を、Targetscan5.1によって行った。
【0156】
発現アレイ分析
総RNAを上記のように単離し、RNA 6000 NanoAssayおよびBioanalyzer2100(Agilent)を使用して品質について分析した。2mgの総RNAをcDNA合成のために使用した。cRNAの合成、線形増幅、および標識を、MessageAmp aRNAキット(Ambion)およびビオチン化ヌクレオチド(Enzo Diagnostics)を使用したin vitro転写によって行った。次いで、10マイクログラムの標識し、断片化したcRNAを、製造者(Affymetrix)の説明書にしたがってGeneChipとハイブリッド形成させた。チップを、GS3000スキャナ(Affymetrix)内でスキャニングし、GCOS1.4(GeneChip Operating Software,Affymetrix)を使用して定量し、Partekソフトウェア(Partek(登録商標)Genomic Suite(商標)6.4)を使用して分析した。「R」ソフトウェアパッケージ中の「affy」および「gcrma」ライブラリーを使用して、マイクロアレイプローブレベルデータのロバストマルチアレイ分析(robust multi−array analysis)(RMA)正規化を行った。さらに、「mas5」関数を使用して、プローブのpresent/absentコールを同定した。1つを超えるプローブが技術的レプリケート中に存在しない場合、プローブをさらなる分析から除外した。プローブの正確な標的遺伝子を同定するために、RefSeqリリース35由来のマウス転写物に対する「Affymetrix Mouse430A_2 Target Sequences」について「blastn」プログラムを使用してBLAST検索を行った。パラメーター−v1−bl−e.05−S1をBLAST検索で使用した。遺伝子発現のlog比を計算するために、プローブレベルデータにわたるメジアン分散分析(median polish)を行って遺伝子発現値(すなわち、レプリケートにわたるプローブ強度のメジアンを算出し、同一遺伝子をターゲティングするプローブにわたるこれらのプローブ値のメジアンを使用した)を得、実験対コントロールのlogの相違を計算した。統計分析のために、遺伝子の平均log2(発現の変化)を使用してデータを中心におき、全遺伝子にわたってlog2の単位分散(発現変化)を有するように正規化した。この正規化により、データの拡張Z変換(modifid Z transformation)(Zスコア)が得られる。
【0157】
コルモゴロフ・スミルノフ(KS)統計
miR−19標的対全遺伝子の発現の変化を比較するために、そのlog(発現変化)値の分布を、片側KS統計を使用して比較した。片側KS統計は、一方の組についての発現変化の分布が他の組の分布と比較して有意に下向きにシフトする(下方制御される)かどうかを評価する。KS統計は、経験的累積分布関数(cdf):
【0158】
【数1】
は、nj(Z変換後)log(発現変化)値に基づいた遺伝子組j=1、2の経験的cdfである)の値の最大差を算出する。Matlab関数kstest2を使用して、KS試験統計量および漸近p値を計算した。
【0159】
参考文献
【0160】
【化1】
【0161】
【化2】
【0162】
【化3】
実施例2
マイクロRNA(miRNA)は、正常な発生、分化、および疾患(癌が含まれる)に関与する生物学的過程の遍在性制御因子である。これらは、転写レベルおよび翻訳レベルでの遺伝子発現の調節によって作用する(Bartel,2004)。miRNAによる遺伝子発現の制御は複雑である。多数のmRNAはその3’UTR内に複数のmiRNAのための結合部位を含み、ほとんどのmiRNAは多数の遺伝子を潜在的にターゲティングすることができる(Bartel,2004)。配列分析によって予想されるあらゆるmiRNA結合部位が表現型に寄与するわけではないことが明らかである。逆に、複数のmiRNAが単一の細胞経路に影響を及ぼし得る(Mavrakisら、2010)、(Liら、2007)。
【0163】
T−ALLは、いくつかの協同する遺伝子病変の結果として生じる(Aifantis,Raetz,& Bu,2008)。例えば、ほとんどの症例でノッチ1の活性化病変を保有し(Wengら、2004)、腫瘍抑制遺伝子(PTEN(Palomeroら、2007);NF1(Balgobindら、2008);PHF6(Van Vlierbergheら、2010);PTPN2(Keppeら、2010);IKZF1(Dailら、2010)、(Winandy,Wu,& Georgopoulos,1995)、(Marcaisら、2010)、(Sunら、1999)、(Mullighanら、2007);およびFBXW7(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007)が含まれる)はT−ALLにおける不活化体細胞変異または欠失の標的である。発癌性miR−17〜92クラスターは、T−ALLにおいてt(13;14)(q32;ql 1)転座によってターゲティングされる(Landais,Landry,Legault,& Rassart,2007)。各miRNAは、現在、T−ALLに関与している(例えば、実施例1に記載のmiR−19b)(Mavrakisら、,2010)。miR19bは発癌性miR−17〜92クラスターのメンバーである(図1aも参照のこと)。種々の癌におけるmiRNA発現分析は、少数のmiRNAのみが癌細胞中で高発現され、起源の組織を連想させるパターンを維持することを示している(Luら、2005)、(Landgrafら、2007)。
【0164】
これらの研究では、本発明者らは、T−ALLおよび潜在的に他の癌に関連するmiRNAを評価および決定するための3つの別個のアプローチを使用した。3つのアプローチ−miRNA発現分析、公知の腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析、および発癌性miRNAについての不偏スクリーニング−を使用して、T−ALLで潜在的に重要なmiRNAを同定した。一定のこれらのmiRNAのT−ALLの病原への寄与を、白血病誘発マウスモデルにおけるmiRNA自体の活性の評価およびヒトT−ALL細胞株におけるmiRNAに対するアンタゴミア活性の評価の両方によって確認した。
【0165】
miRNA発現分析。定量的PCRを使用して、50種の臨床T−ALL標本および18種のT−ALL細胞株における430個のmiRNAの発現を測定した。miRNA発現パターンは、T−ALL細胞および細胞株で高発現された10種のmiRNA(miR−223、miR−19b、miR−20a、miR−92、miR−142−3p、miR−150、miR−93、miR−26a、miR−16、およびmiR−342)と非常に一致することが見出され、残りの420種のmiRNAは有意により低いレベルで検出された。T−ALL細胞および細胞株におけるmiRNA発現パターンと精製前駆体(CD34+およびCD3−CD4+CD8+)細胞および正常な(CD3+CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8−、およびCD3+CD4−CD8+)T細胞におけるmiRNA発現パターンとの比較により、miR−223発現のT−ALL特異的増加およびより少ない程度でのmiR−376およびmiR−662の発現のT−ALL特異的増加が証明された。
【0166】
T−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析。潜在的なmiRNA結合部位についてのT−ALLの病原に関与する12種の腫瘍抑制遺伝子の3’UTRの分析により、T−ALLに潜在的に関与するmiRNAの体系が得られた。T−ALL中で最も高度に発現する10種のmiRNAのうちの5種(具体的には、miR−25/92、miR−26、miR−19、miR−223、およびmiR−20/93/106)も、本分析において最高位にランク付けされた(同一の3’UTR結合「シード」配列を有するmiRNAを本分析およびその後の分析において共にグループ化し、同一のシード配列を有するmiRNAが取り換え可能であり得ると理解すべきである)。
【0167】
発癌性miRNAの不偏遺伝子スクリーニング。c−MYC形質導入マウス胚線維芽細胞(MEF)のレトロウイルスmiRNAライブラリーでの感染および10%から0.1%への血清濃度の減少後に接着性を保持していた細胞を選択して、細胞をアポトーシス死から防御するmiRNAを同定した。この最初のスクリーニングで同定されたmiRNAが真に白血病誘発に関連し、単に成長停止に関連するのではないことを確実にするために、一次スクリーニングで同定されたGFPタグ付きmiRNAのライブラリーを使用して、インターロイキン−3(IL−3)依存性FL5−12マウスプロB細胞に感染させた。IL−3枯渇後のGFP発現細胞の富化により、IL−3非依存性成長に関連するmiRNAが同定された。FL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された6つのmiRNAは、miR−19b、miR−20/93/106、およびmiR−25/92(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現し、且つmiRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高位にランク付けされる)、miR−26およびmiR−223(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現する)、およびmiR−148/152(miRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)であった。
【0168】
T−ALLに関与するmiRNAの白血病誘発活性。次いで、T−ALL白血病誘発で潜在的に重要であると同定された6つのmiRNAの発癌潜在性をin vivoで試験した。HPCをノッチ1+miRNAまたは空のベクターコントロールで形質導入し、HPCを照射した同系レシピエントに移植し、定期的に血球を計数してT−ALLの発症を検出した。レトロウイルスによって送達されたmiRNAが白血病コントロールより2〜6倍高いレベルで発現したこのアッセイでは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223はそれぞれCD4+CD8+T−ALLの発症を有意に促進した(一方で、miR−23、miR−24およびmiR−30はそうではなかった)。
【0169】
T−ALLに関与するmiRNAに対するアンタゴミアの抗白血病誘発活性。最後に、ヒトT−ALL細胞株(T−ALL1、KOPTK1、およびJURKATが含まれる)の成長速度および生存度に及ぼすmiRNAアンタゴミアの影響を評価した。miR−19b、miR−26、およびmiR−92に対するアンタゴミアは、成長速度を低下させ、細胞生存度を有意に低下させ、腫瘍抑制遺伝子PTENおよびBCL2L11(Bim)を脱抑制(de−repress)させた(miR−148および無作為に選択したmiR−182に対するアンタゴミアはそうではなかった)。miR−223に対するアンタゴミアは、同様に、成長速度および細胞生存度を減少させた。各アンタゴミアの発現と比較して、T−ALL細胞株におけるmiR−19bおよびmiR−92に対するアンタゴミアまたはmiR−19b、miR−92、およびmiR−26aに対するアンタゴミアの同時発現は、成長速度をより明確に減少させ、アポトーシス細胞の比率を2倍超にし、PTENおよびBCL2L11の発現をより増加させ、PTENおよびBCL2L11の3’UTRレポーター活性に付加的な影響を及ぼした。
【0170】
これらのデータは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223がヒトT−ALLにおける大部分のmiRNA発現を占め、その発現に対する重複しかつ協同する効果によってT−ALLの病原に関与する共通の腫瘍抑制遺伝子組(PTEN、BCL2L11、NFI、FBXW7、IKZF1、およびPHF6が含まれる)の活性を下方制御し、動物モデルにおいてT−ALLを促進することができることを証明している。
【0171】
ミエロイド特異的miRNAであると考えられたmiR−223(Faziら、2005)、(Chen,Li,Lodish,& Barrel,2004)、(Johnnidisら、2008)は、ヒトT−ALL中で選択的に上方制御される。miR−223は、NOTCH1およびc−MYCのE3ユビキチンリガーゼとして作用するFBXW7(CDC4)の強力な制御因子であり、T−ALLの症例および他の癌の約20%で変異している(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007)、(Maserら、2007)。他のmiRNAも正常な前駆体および/または分化T細胞で見出されており、おそらく、さらなる変異の状況においてのみその発癌潜在性を達成する。
【0172】
miR−148は、消化管癌(特に胃癌および結腸直腸癌)に関与している(Chen Yら、(2010)J Gastrointest Surgery 14(7):doi:10.1007/s11605−010−1202−2)。miR−148のRT−PCR分析を使用したさらなる細胞株発現研究では、いくつかの肝細胞株(HLF、HLE、およびHepG2細胞)でmiR148発現の増加が認められており(データ示さず)、肝臓癌におけるmiR−148のさらなる役割を意味付けている。
【0173】
本データは、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223の発現の測定を血液悪性疾患(T−ALLが含まれる)の診断、特異的治療レジメンに対する応答の予測、および/または治療に対する応答のモニタリングのために使用することができることを示す。これらのデータは、さらに、miR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223(特に、miR−19b、miR−26a、miR−92、および/またはmiR−223)のアンタゴニスト/アンタゴミアが単独または特に組み合わせて、癌(血液悪性疾患が含まれる)およびmiR−19b、miR−20a、miR−26、miR−92、miR−148、および/またはmiR−223を過剰発現する任意の癌または状態に対する候補治療薬であるという証拠を提供する。
【0174】
結果
T−ALL細胞および細胞株で高発現したmiRNAの同定
不偏miRNAライブラリースクリーニングを使用して、ヒトT−ALL中のmiRNA発現パターンを決定した(図19a)。定量的PCR(Mestdaghら、2009)を使用して、異なる細胞遺伝学的群を代表する50種の臨床T−ALL標本(Aifantis,Raetz,& Bu,2008)(TLX1、TLX3、HOXA、およびTAL1/LMO2が含まれる)および一連の18種のヒトT−ALL細胞株中の430種のmiRNAの発現を測定した。10種のmiRNAが高発現されたのに対して、ほとんどの他のmiRNAは辛うじて検出可能であった。これらの「上位10」miRNAは以下であった(発現レベルに関して降順):miR−223、miR−19b、miR−20a、miR−92、miR−142−3p、miR−150、miR−93、miR−26a、miR−16、およびmiR−342(図1b)。全体的なmiRNA発現パターンは細胞遺伝学的群の間で酷似しており、ヒトT−ALL細胞株においても保存されていた(図19c、図20a)。精製前駆体(CD34+およびCD4+CD8+CD3−)細胞集団および正常な(CD4+CD8+CD3+ダブルポジティブ、CD4+シングルポジティブ、またはCD8+シングルポジティブ)T細胞集団との比較により、miR−223発現は白血病特異的に増加し、miR−376およびmiR−662の発現の白血病特異的増加は遥かに小さかったことが明らかとなった(図20bおよびc)。それ故、少数のmiRNAがヒトT−ALLで高発現する。
【0175】
T−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子中の潜在的なmiRNA結合部位の分析。次に、コンピュータによるアプローチを使用して、T−ALLの病原に潜在的に重要なmiRNAを同定した。T−ALLの病原に関与する12種の腫瘍抑制遺伝子(具体的には、FBXW7(O’Neilら、2007)、(Thompsonら、2007);PTEN(Palomeroら、2007);PHF6(Van Vlierbergheら、2010);PTPN2(Kleppeら、2010);IKZF1(Dailら、2010)、(Winandy,Wu,& Georgopoulos,1995)、(Marcaisら、2010)、(Sunら、1999)、(Mullighanら、2007);NF1(Balgobindら、2008);BCL2L11(Mavrakisら、2010);CDK8;サイクリンC;NLK;RBI;およびp53)の3’UTRを、潜在的なmiRNA結合部位について分析した(Lewis,Shih,Jones−Rhoades,Bartel,& Burge,2003)、(Friedman,Farh,Burge,& Bartel,2009)。予想通り、多数のmiRNAがこれらの遺伝子に結合したので、累積状況スコア(表3)の計算または保存された7mer部位および8mer部位(共に広範に保存されたmiRNAシードファミリーに制限される)の数の加算によって順位を作成した。顕著には、最も高発現した10種のmiRNAのうちの5種も、本分析で最も高くランク付けされたmiRNAに含まれた(p<l e−4(富化についてウィルコクソンを使用))。したがって、miR−19b、miR−20a/93、miR−26a、miR−92、およびmiR−223はT−ALL中で高発現され、T−ALLにおいて腫瘍抑制遺伝子をターゲティングすると予想された。故に、T−ALL標的腫瘍抑制遺伝子において10種の最も豊富に発現したmiRNAのうちの5種がこの癌に関与していた。
【0176】
【表4】
a状況スコアを、予想される部位での状況の特徴(局所AU含量、miRNAの3’末端の予想される結合、3’UTR中の位置)のmiRNAトランスフェクション実験における下方制御の程度と相関させて計算し、このスコアはmiRNA−mRNA相互作用の強度を示す。負の値が大きいほど有効な部位に相当する。−0.1未満の値のみを示す。スコアを、0.1単位まで四捨五入する。
b分析に含まれる12の全遺伝子の和を計算する。
c同一のシード配列を有する相同miRNAを示す。
【0177】
白血病誘発性miRNAの不偏遺伝子スクリーニング。最後に、白血病誘発性miRNAの不偏miRNAライブラリースクリーニングを行った。2工程の同胞選択プロトコールを使用した。簡潔に述べれば、miRNAを、c−MYC(Evanら、1992)(T−ALLにおけるノッチ1の重要な下流エフェクターである)によって誘導されるアポトーシスからマウスMEF細胞を防御する能力について最初にスクリーニングした(Palomeroら、2006)、(Wengら、2006)、(Klinakis,Szabolcs,Politi,Kiaris,Artavanis−Tsakonas,& Efstratiadis,2006)。c−MYC形質導入MEFにレトロウイルスmiRNAライブラリーを感染させ、10%から0.1%への血清濃度の減少後に接着性を保持する細胞を回収し、これらの接着細胞が保有する形質導入miRNAを同定した。この最初のスクリーニングで同定されたmiRNA(高発現したmiR−25/92、miR−19b、およびmiR−223(図21b)が含まれる)が真に白血病誘発に関連し、単に成長停止に関連するのではないことを確実にするために(Seoane,Le,& Massague,2002)、次いで、miRNAを、リンパ球におけるサイトカイン非依存性成長を促進する能力についてスクリーニングした(Mavrakisら、2010)(図21a)。二次ライブラリーを生成するために、一次スクリーニング由来の全miRNAをサブクローニングし、FL5−12リンパ球を、GFPレポーターと共に各miRNAを発現するプールしたベクターで部分的に形質導入した。IL−3枯渇およびGFP発現細胞の富化後、配列分析によって最も豊富なmiRNAを同定した(図21c)。同一のFL5−12リンパ球アッセイにおける最も豊富な各miRNAの再試験により、miR−148a/152、miR−22、miR−19b、miR−101、miR−25/92、およびmiR−20a/106がFL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された(図21d)。
【0178】
相補アプローチにより、T−ALLにおける複数の潜在的な白血病誘発性miRNAを同定する。これらの結果を図21eにまとめている。簡潔に述べれば、FL5−12細胞にIL−3非依存性を付与することが確認された6種のmiRNAは、miR−19b、miR−20/92/106、およびmiR−25/92(miRNAのうちでT−ALL細胞および細胞株中で最も高度に発現し、且つmiRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)、miR−26およびmiR−223(miRNAのうちでT−ALL細胞中で最も高度に発現する)、およびmiR−148/152(miRNAのうちでT−ALLに関与する腫瘍抑制遺伝子と潜在的に相互作用すると最も高度にランク付けされる)であった。故に、相補アプローチは、T−ALLにおける一連の潜在的に発癌性のmiRNAを定義する。
【0179】
T−ALLに関与するmiRNAの白血病誘発活性。ノッチ1誘導性T−ALLのマウスモデルを使用して、in vivoで最も有望なmiRNAの発癌潜在性を直接試験した。簡潔に述べれば、HPCを、空のベクターまたはmiRNAのいずれかと共にノッチ1で形質導入し、照射した同系レシピエントに移植した。定期的な血球計数によって動物を白血病発症についてモニタリングした(図22a)。第1に、空のベクター(n=13)と比較したmiR−19b(n=7、p<0.01)による疾患の促進を確認した(Mavrakisら、2010)。類似の疾患の促進が、miR−20a(n=4、p<0.001)、miR−26a(n=5、p<0.001)、miR−92(n=5、p=0.02)、およびmiR−223(n=7、p<0.01)を用いて見出された。典型的には、これらのmiRNAで形質導入したHPCを投与した動物が75日目までに急性白血病を発症する一方で、miR−30を投与したベクターコントロールまたは動物(n=5、p=0.15)の80%超がこの時点で無疾患のままである(図22b)。in vitroでのスクリーニングおよび予想に基づいて、さらなるmiRNAを試験した。具体的には、miR−148は有意な疾患の促進に関連し(n=7、p<0.01)、miR−27は疾患促進の強い傾向を示した一方で(n=5、p=0.05)、miR−23(n=5、p>0.05)やmiR−24(n=5、p>0.05)はいかなる影響も示さなかった(図23a)。病理学的分析により、全白血病がCD4+CD8+ダブルポジティブT−ALLであり(図21b)、Ki67によって高増殖性を示し、TUNELによるアポトーシスを欠き、白血病動物の肺、肝臓、および脳に広く浸潤したことが明らかとなった(図22c)。定量的PCRは、コントロール由来の白血病細胞と比較してレトロウイルスで送達されたmiRNAによって駆動された白血病細胞における2倍および6倍のmiRNAの発現の増加を証明した(図23c)。したがって、マウスT−ALLモデルにおける癌遺伝子としてmiR−19b、miR−20a、miR−26a、miR−223が挙動し、より少ないmiR−27aおよびmiR−148/152も挙動する。
【0180】
T−ALLに関与するmiRNAによってターゲティングされる遺伝子。ノッチ1誘導性T−ALLの発症を促進するmiRNAは、miRNA標的遺伝子のコンピュータ分析で最高位にランク付けされたmiRNAのうちで有意に富化されるようである(シード数または状況スコアについての経験的p値はp<1 e−4)(表3)。この所見を、不偏機械学習アプローチを使用して試験した。簡潔に述べれば、lasso回帰を使用して、白血病誘発性miRNAとノッチ1誘導性T−ALLの発症を促進しなかった無作為選択したmiRNAの群との間を区別する標的遺伝子を同定した。少数のポジティブトレーニング例(白血病誘発性miRNA)のみが利用可能であったので、異なるネガティブトレーニング組を使用して学習手順を50回反復することによって安定性分析を行った。FBXW7(46/50ランで同定)、BCL2L11(21/50ラン)、およびPTEN(11/50ラン)は、15種の遺伝子のうちでこの分析で最も頻繁に同定された。
【0181】
これらの標的遺伝子予測を、マウス白血病の3’UTRレポーターアッセイ(図24a)の使用、定量的PCR(図24b)、および免疫ブロット(図24c〜g)アッセイによって実験的に試験した。miR−19bは、PTENおよびBCL2L11発現を制御する(Mavrakisら、2010)。miR−20aはBCL2L11に類似の影響を及ぼし、miR−20aおよびmiR−26aの両方は白血病細胞中のPTENおよびPHF6タンパク質ならびにmRNAのレベルを減少させる。miR−27aおよびmiR−148aは、IKZF1、NF1、およびFBXW7を制御する。同様に、miR−92はIKZF1およびFBWX7に影響を及ぼすが、マウスNF1をターゲティングしない。予想通り、miR−223は、FBXW7レポーター活性およびタンパク質レベルを強力に制御する。miRNA形質導入FL5−12細胞における所見により、これらの結果が強く確認された(図25)。それ故、白血病誘発性miRNAは、T−ALLにおいて6種の腫瘍抑制遺伝子に部分的に重複する影響を及ぼす。
【0182】
これらの腫瘍抑制遺伝子の生理学的有意性を確実にするために、同一のマウスノッチ1誘導性T−ALLモデルを使用してノックダウン分析を行った。簡潔に述べれば、PTEN(Mavrakisら、2010)、BCL2L11(Mavrakisら、2010)、NF1、PHF6、およびFBXW7(図26)、ならびにドミナントネガティブIKZF1対立遺伝子(Dn−Ikzf1)(Beverly & Capobianco、2003)に対するshRNAを、上記の同一の養子移入モデルで使用した。これらの実験により、PTEN(n=3、p<0.05)およびBCL2L11(n=6、p<0.01)(Mavrakisら、2010)ならびにNF1(n=6、p<0.01)、PHF6(n=3、p<0.05)、およびDn−Ikzf1(n=10、p<0.01)に対するshRNAによるノッチ1誘発白血病の発症の促進が確認された。FBXW7は傾向を示したが、有意性には到達しなかった(n=4、p=0.1)(図27a)。shRNAおよびmiRNAはその機構およびおそらくその標的ノックダウン効率が異なり得るが、これらの結果はノッチ1誘発性T−ALLにおけるこれらの遺伝子の腫瘍抑制機能を示す。
【0183】
T−ALLに関与するmiRNAに対するアンタゴミアの抗白血病活性。複数のmiRNAによる腫瘍抑制遺伝子制御の多面性および部分的に重複するパターンを考慮して、2つのヒトT−ALL細胞株(T−ALL1およびKoptk1)の成長速度および生存度に及ぼすmiRNAアンタゴミアの影響を評価した。ヒトT−ALL1細胞株は、高レベルのmiR−19a、miR−19b、miR−26a、およびmiR−92を発現するが、他のmiRNA(例えば、miR−148aおよび無作為選択したmiR−182は低レベルでしか発現されない(図27b挿入図)。miR−19a/b、miR−26a、およびmiR−92に対するアンタゴミアは、成長速度を低下させ(図27b)、細胞生存度を有意に減少させ(p<0.05;ベクターと比較した各アンタゴミア)(図27c)、腫瘍抑制遺伝子PTENおよびBCL2L11を脱抑制する(図27dおよびe)。対照的に、miR−148aおよびmiR−182に対するアンタゴミアは、PTENまたはBCL2L11の増殖、生存度、発現に有意な影響を示さなかった(p>0.05)。Koptk1細胞株における結果は、T−ALL1細胞株における結果と類似していた(図28)。同様に、miR−223に対するアンタゴミアは、T−ALL1、Koptk1、およびJurkatT−ALL細胞株における細胞増殖を減少させる(図29)。それ故、各miRNAは、T−ALLにおける生存度および腫瘍抑制遺伝子発現に寄与して影響を及ぼし、したがって、これらのmiRNAをターゲティングするアンタゴニストまたはアンタゴミアはT−ALL患者の処置における有用な薬剤であること予想される。
【0184】
共通の標的遺伝子に結合するmiRNAは協同的抗白血病効果を示す。miR−19a/b、miR−26a、およびmiR−92に対するアンタゴミアの同時発現は、個別のアンタゴミアよりもT−ALL1細胞の成長に強い影響を及ぼした(p<0.001、組み合わせアンタゴミア対ベクター)(図27b)。細胞生存度に及ぼす影響はさらにより明白であり、短期アッセイにおいて3つのアンタゴミアのアポトーシスが個別のアンタゴミアにおけるものの2倍であった(図27c)。したがって、併用処置により、個別のアンタゴミアと比較してBCL2L11およびPTEN発現がより大幅に増加した(図27dおよびe)。同様に、miR19bおよびmiR−92またはmiR−19b、miR−26a、およびmiR−92の同時発現は、BCL2L11およびPTENの3’UTRレポーター活性にそれぞれさらなる影響を及ぼした(図27fおよびg)。したがって、高発現miRNA群は、ヒトT−ALL細胞において協同的効果を示す。したがって、これらのmiRNA群をターゲティングするアンタゴニストまたはアンタゴミアの投与は、T−ALL患者の処置において付加的または相乗的利点を有すると予想される。
【0185】
材料と方法
T−ALL患者サンプル。50人のT−ALL患者の診断用骨髄サンプルを、異なる欧州の施設から得た(UZ Ghent,Ghent;UZ Leuven,Leuven;Hopital Purpan,Toulouse;CHU de Nancy−Brabois,Vandoeuvre−Les−Nancy)。得られたT−ALL患者のコホートは、15人のTAL/LMO(7人のLMO2再配列および8人のSIL−TAL)、12人のHOXA(4人のMLL再配列、6人のinv(7)(p15q35)、および2人のCALM−AF10)、10人のTLX3および5人のTLX1再配列患者のサンプルからなる。残りの8人のT−ALL患者を、既知のT−ALL亜群に分類することができない。白血病サンプル由来の総RNAを、以前に記載のように(Van Vlierbergheら、2006)TRIzol試薬(Invitrogen,Belgium)を使用して単離した。本研究(2008/531)は、Medical Ethical Commission of Ghent University Hospital(Belgium)によって承認された。
【0186】
T−ALL細胞株。18種のT−ALL細胞株(DND−41、MOLT−16、CCRF−CEM、RPM1−8402、ALL−SIL、KE−37、BE−13、HSB−2、HPB−ALL、LOUCY、PF−382、PEER、MOLT−3、CUTLL1、CTV−1、P12−ICHIKAWA、T−ALL1、およびKOPTK1)およびHEK−293T細胞株を、15%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%カナマイシン、および1%グルタミンを補足したRPMI−1640培地(Invitrogen,Belgium)中で培養した。白血病細胞株由来の総RNAを、製造者のプロトコールにしたがってmiRNeasyミニキット(Qiagen,Belgium)を使用して単離した。
【0187】
正常なT細胞集団のサブセット。Medical Ethical Commission of Ghent University Hospital(Belgium)のガイドラインにしたがって、小児胸腺を入手し、使用した。5つの正常なT細胞集団のサブセット(CD34+、CD3−CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8+、CD3+CD4+CD8−、およびCD3+CD4−CD8+)を、Cellquestソフトウェアを使用したFACSVantage蛍光標示式細胞分取器(FACS)での細胞の分取またはMACSおよびマイクロビーズの使用によって得た(Van de Walle、ら、.、2009)。CD34+胸腺細胞を、CD34マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用したMACSの使用によって小児胸腺から得た。ダブルポジティブ(DP)CD3−CD4+CD8+およびCD3+CD4+CD8+T細胞を、CD3−フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、CD8−フィコエリトリン(PE)、およびCD4−アロフィコシアニン(APC)での総胸腺懸濁物の染色によって分取した。シングルポジティブCD3+CD4+CD8−およびCD3+CD4−CD8+T細胞を分取するために、Dynabeads(Dynal Biotech)の使用によって未熟なCD1+胸腺細胞の枯渇を最初に行い、より成熟した細胞が豊富な得られた集団を、その後にCD3−FITC、CD8−PE、およびCD4−APCで標識した。正常なT細胞集団の異なるサブセットの純度は、常に少なくとも98%であった。総RNAを、製造者のプロトコールにしたがってmiRNeasyミニキット(Qiagen,Belgium)を使用して単離した。
【0188】
マイクロRNAプロファイリング。miRNAの高処理リアルタイム定量を、miRNA cDNA合成のためのステムループ逆転写酵素(RT)プライマーの使用によって行い、その後に予備増幅工程およびTaqman PCR分析(Applied Biosystems,Belgium)を行った(Chenら、2005)。簡潔に述べれば、白血病患者サンプル、白血病細胞株、または正常なT細胞サブセット由来の20ngの総RNAを、448種のスモールRNA(430種のmiRNAおよび18種のスモールRNAコントロールを含む)のmiRNA cDNA合成のためのmegaplexRTステムループプライマープールの使用によって逆転写した。次に、cDNAの予備増幅を、Taqman PreAmpマスターミックス(2x)およびPreAmpプライマーミックス(5×)(Applied Biosystems,Belgium)(miRNA特異的順方向プライマーおよびユニバーサル逆方向プライマーからなる)の使用による14サイクルPCR反応にて行った(Mestdaghら、2008)。最後に、448種のスモールRNAを、40サイクルPCRプロトコールを使用して各サンプルについてプロファイリングした。リアルタイムRT−PCR反応を、全て、遺伝子最大化ストラテジーを使用して7900HT(Applied Biosystems,Belgium)にて行った(Hellemans,Mortier,De Paepe,Frank Speleman,& Jo Vandesompele,2007)。SDSソフトウェアバージョン2.1を使用して、自動ベースライン設定および閾値0.05にてraw Cq値を計算した。本発明者らは、定量的PCRデータの正規化のための正規化因子として所与のサンプル中の全発現miRNAの平均発現値を使用した。Cq値35超のmiRNAを、非発現と見なした(Mestdaghら、2009)。
【0189】
細胞培養、生存度、増殖アッセイ、およびベクター構築物。FL5−12マウスプロBリンパ球、細胞周期およびアポトーシス研究、ならびにウイルス形質導入は記載の通りであった(Mavrakisら、2008)、(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。T−ALL細胞株(Jurkatが含まれる)を、10〜20%ウシ胎児血清,100U/mlペニシリンG、および100μg/mlストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地中で5%CO2下の加湿環境にて37℃で培養した。全ベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づき、記載の全miRNAをコードするmiRNA発現ベクター(Heら、2005)、ノッチ1−ICN(Pearら、1996)、および各shRNAベクター(shRNAによるタンパク質ノックダウン;図10)が含まれる。miRNAプールライブラリー(Heら、2005)はG.J.Hannonから惜しみなく提供され、約300個のmiRNAを含むようにPCRクローニングによって拡大されている。アンタゴミアMZIP19a−PA−1、MZIP19b−PA−1、MZIP26a−PA−1、MZIP92a−PA−1、MZIP148a−PA−1、MZIP182−PA−1、MZIP223−PA−1、およびスクランブルドコントロール(MZIP000−PA−1)は、System Biosciencesから入手した。
【0190】
ライブラリースクリーニング。一次スクリーニングは、MEFにおけるc−MKC誘導性アポトーシスに基づく(Evanら、1992)。MEFを、c−MYCおよびmiRNAライブラリーで形質導入し、均一なc−MYC発現を選択するためにピューロマイシン中で培養し、アポトーシスを、10%から0.1%への血清希釈によって誘発した。生存細胞は接着性を示したままであり、これらをDNA単離、組み込んだmiRNAライブラリー構築物のPCR増幅、pGEM−Tベクターへのサブクローニング、細菌形質転換、および約100コロニーの配列同定のために回収した。二次ライブラリーを、一次スクリーニング由来の全miRNAのMSCV構築物へのサブクローニングによって構築した。二次スクリーニングは、in vitroでのFL5−12リンパ球のIL−3依存性に基づく(Mavrakisら、2010)、(Plas,Talapatra,Edinger,Rathmell,& Thompson,2001)。FL5−12細胞をプールしたGFPタグ付きライブラリーで部分的に形質導入し、IL−3枯渇によって選択した。miRNAを上記のように同定した。各miRNAを、その後に同一のFL5−12アッセイおよびin vivoで検証した。
【0191】
マウスの生成。マウスT−ALLモデルが報告されている(Pearら、1996)、(Wendelら、2004)。データを、統計的有意性についてのログランク(Mantel−Cox)検定を使用してカプラン・マイヤー形式で分析した。表面マーカー分析は記載の通りであった(Wendelら、2004)。
【0192】
ウェスタンブロット分析。全細胞溶解物の免疫ブロットを記載のように行った(Wendelら、2004)。抗体は以下に対する抗体であった:Bim/Bcl2111(AAP−330、1:1000、Assay Designs)、Nf1(sc67、1:100、Santa Cruz)、Cdc4/Fbxw7(ab7405、1:500、Abeam)、Ikzf1(sc−13039、1:500、Santa Cruz)、Phf6(NB100−79861、1:1000、Novus Biologicals)、Pten(9559,1:1000、Cell Signaling)、チューブリン(1:5000;Sigma、B−5−1−2)、およびアクチン(1:5000;Sigma、AC−15)。
【0193】
遺伝子発現についてのリアルタイム定量的PCR。総RNAおよびmiRNA富化RNAを、Allprep DNA/RNA/ProteinおよびmiRNeasyミニキットを使用して抽出した。病理学的診断を、Weill Cornell Medical Centerの熟達した血液病理学者が行った。cDNA合成、PCR、およびΔΔCt法による分析は記載の通りであり(Mavrakisら、2008)、Taqman遺伝子発現アッセイを使用した:Bcl2111(Mm00437796_m1)、BCL2L11(Hs00197982_m1)、Pten(Mm01212532_m1)、PTEN(Hs02621230_s1)、 Nf1(Mm00812430_ml)、NF1(Hs01035104_m1)、Ikzf1(Mm01 187878_ml)、IKZF1(Hs00172991_m1)、Fbxw7(Mm00504452_m1)、FBXW7(Hs0021 7794_m1)、Phf6(Mm00804415_m1)、およびマウスGAPD(GAPDH)(4352932,Applied Biosystems)。発現を、RNU6B(001093,Applied Biosystems)に対して正規化した。
【0194】
miRNA−標的遺伝子相互作用のコンピュータ分析。
【0195】
トレーニングデータ。教師つき学習アプローチを行って、全スクリーニングを通過したmiRNA(+1クラス)と通過しなかったmiRNA(−1クラス)とを区別することができる小さな標的遺伝子組を不偏的方法で同定するように試みた。ポジティブmiRNAに共通の標的遺伝子組を同定するためにデザインしたが、本アプローチはまた、ネガティブmiRNAによって共通にターゲティングされる遺伝子を同定することができる。スクリーニングによって検証されたmiRNA(miR−19、miR−20/93、miR−25/92、miR−148、miR−26a、miR−223、miR−27ab)を、ポジティブトレーニングデータ(+1クラス)として使用した。最終段階で検証できなかった3種のmiRNA(miR−30a、miR−23a、miR−24)およびT−ALL中で高発現されたが、最初のスクリーニングで検証できなかった5種のさらなるmiRNA(miR−142−3p、miR−150、miR−342−3p、miR−146、miR−16)を、ネガティブトレーニングデータ(−1クラス)として使用した。
【0196】
標的の予想。各miRNAのシード配列(位置2:8)を使用して、保存mRNA標的を、相補配列がマウスおよびヒトオルソログの両方の3’UTRで生じる標的と定義した。両UTR由来の最小数のシードマッチを、各miRNA:mRNA対の保存された7mer計数(count)として使用した。Biopythonを使用して、Refseq(リリース42)を使用してマウスおよびヒトの3’UTR配列を抽出した。複数のRefSeq転写物が単一の遺伝子に認められる場合、最長の3’UTRを使用した。
【0197】
lasso回帰。lasso回帰を使用して、ポジティブmiRNAとネガティブmiRNAを区別する遺伝子組を同定した。このアプローチでは、各miRNA(ポジティブまたはネガティブ)を、全ての可能な遺伝子にわたって保存された7merのシード計数のそのベクトルXmiRによって示す。この回帰は、ポジティブ(resp.ネガティブ)miRNAの保存された7merのシード計数の加重和が+1(resp.−1)に近いように、遺伝子にわたる重みベクトルwを学習する。回帰モデルにおけるlasso拘束によって散在を促す(すなわち、ほとんどの遺伝子は0に等しい重み(回帰係数)を有する)。この方法では、lasso回帰は、2クラス間を区別することができる少数の標的遺伝子を同定する。以下の式により、最適化問題は解決される。
【0198】
【数2】
(式中、ymiRは有効なmiRNAについては+1であり、有効でないmiRNAについは−1であり、ΧmiRは保存された7mer計数のベクトルであり、λは10の非ゼロ重みを与えた正則化パラメーターである)。lasso回帰を、Bioconductorのglmnetパッケージを使用して行った。
【0199】
miRNAの富化。表3中のmiRNAの富化の経験的p値を、ヒト遺伝子の全リスト(3’UTRおよび標的の予想が可能であった)由来の(腫瘍抑制遺伝子組と等しいサイズの)遺伝子の10,000個のランダムサンプルの選択によって決定した。これらのランダム遺伝子組のそれぞれの各miRNAファミリーのスコアの和を計算した。次いで、miRNAファミリーを、これらのスコアにしたがってランク付けし、これらのランク付けについての富化スコアを、ポジティブmiRNA(全スクリーニングを通過)と全ての他のmiRNAとを比較するウィルコクソン順位和検定によって決定した。この手順を、(i)保存シードマッチ数および(ii)TargetScanによって定義された3つの異なるmiRNAシードファミリー組((a)全ファミリー;(b)保存ファミリー;(c)広く保存されたファミリー)を使用したTargetScan由来の状況スコアについて繰り返した。
【0200】
miRNA−3’UTR相互作用の分析。Targetscan5.1ソフトウェアを使用した腫瘍抑制遺伝子組にわたる所与のmiRNAの予想される結合部位の状況スコアの和による部位有効性の累積的測定に基づいて順位を決定した(Lewis,Shih,Jones−Rhoades,Bartel,& Burge,2003)、(Friedman,Farh,Burge,& Bartel,2009)。
【0201】
ルシフェラーゼアッセイ。マウスFBXW7(bp2793−4139;受入番号NM_001 177773)、ヒトNF1(bp10033−10666;受入番号NM_000267)、ヒトPHF6(bpの位置3271−4299;受入番号NM_001015877)、およびBim(bp.3155−4773;受入番号NM_009754)3’UTRフラグメントをPCRによって生成し、Genecopoeiaから購入したIKZF1 3’UTR(カタログ番号HmiT000397b,UTRのbp2343−4471)以外をpsi−CHEC−2ベクター(Promega)にクローニングした。アッセイを記載のように行った(Xiaoら、2008)。
【0202】
参考文献
【0203】
【化4】
【0204】
【化5】
【0205】
【化6】
【0206】
【化7】
本発明を、その精神または本質的特質から逸脱することなく、他の形態で具体化するか、他の方法で実施することができる。したがって、本開示は、全ての態様において例示であって本発明を制限しないと見なされ、発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって示され、等価の意図および範囲内に含まれる全ての変更形態が本発明内に含まれることが意図される。したがって、概要、説明、材料と方法、および図面は、制限よりもむしろ例示とみなされる。
【0207】
種々の参考文献(特許および公開された刊行物が含まれる)が本明細書を通して引用されており、その各々の全体が本明細書中で参考として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液学的悪性疾患の処置または予防のための化合物の同定するための方法であって、該化合物は、該悪性疾患に関連するmiRNAの発現または活性をアンタゴナイズするかまたは阻害し、該方法は:
(a)化合物と、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAを発現する細胞とを接触させる工程、および
(b)1つ以上の該miRNAの発現または活性を決定する工程
を包含し、
ここで、該miRNAの発現または活性が阻害または軽減される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のmiRNAの発現または活性を、該miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性もしくは発現、または該miRNAを発現する白血病細胞もしくはリンパ腫細胞の成長もしくは生存度を決定することによって評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子が、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記白血病細胞または前記リンパ腫細胞がT−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物における血液学的悪性疾患を検出または評価するための方法であって、該方法は:
(a)該哺乳動物由来の血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)該1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が該参照サンプルと比較して増加する、方法。
【請求項6】
2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が増加する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血液学的悪性疾患が、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物における癌を検出または評価するための方法であって、該方法は:
(d)該哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(e)該サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(f)該少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が、該参照サンプルと比較して増加する、方法。
【請求項9】
3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が増加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物における癌をモニタリングするか癌治療に対する応答を評価するための方法であって、該方法は:
(g)該哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(h)該サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(i)該少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が、該参照サンプルと比較して変化する、方法。
【請求項12】
3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が変化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
血液学的悪性疾患の処置に使用するための組成物であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに相補的な1つ以上のアンタゴミアを含む、組成物。
【請求項15】
血液学的悪性疾患の処置に使用するための、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項16】
前記血液学的悪性疾患が、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
癌の処置に使用するための組成物であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項18】
前記アンタゴミアまたは前記オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項19】
miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項20】
抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤、アポトーシス剤もしくは抗体、または免疫調節剤から選択される1つ以上のさらなる化合物をさらに含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項21】
治療有効量の、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチド、ならびに薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される腫瘍抑制遺伝子の発現を増強または増加させる方法であって、該腫瘍抑制遺伝子のうちの1つ以上を発現することができる細胞と、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドとを接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
細胞と、miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに実質的に相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドとを接触させる工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
miR17〜92クラスターが増幅または過剰発現される癌を処置または緩和する方法であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を阻害する1つ以上の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項25】
miR−19、miR−26、およびmiR−92を阻害する1つ以上の化合物を投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
血液学的悪性疾患の処置または予防のための化合物の同定するための方法であって、該化合物は、該悪性疾患に関連するmiRNAの発現または活性をアンタゴナイズするかまたは阻害し、該方法は:
(a)化合物と、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAを発現する細胞とを接触させる工程、および
(b)1つ以上の該miRNAの発現または活性を決定する工程
を包含し、
ここで、該miRNAの発現または活性が阻害または軽減される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のmiRNAの発現または活性を、該miRNAの量、1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子の活性もしくは発現、または該miRNAを発現する白血病細胞もしくはリンパ腫細胞の成長もしくは生存度を決定することによって評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のmiRNA標的である腫瘍抑制遺伝子が、Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記白血病細胞または前記リンパ腫細胞がT−ALL患者の細胞サンプルまたはT−ALL細胞株である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物における血液学的悪性疾患を検出または評価するための方法であって、該方法は:
(a)該哺乳動物由来の血液または血球のサンプルを得る工程、
(b)miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(c)該1つ以上のmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該1つ以上のmiRNAのうちの少なくとも1つの発現または活性が該参照サンプルと比較して増加する、方法。
【請求項6】
2つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が増加する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血液学的悪性疾患が、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物における癌を検出または評価するための方法であって、該方法は:
(d)該哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(e)該サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(f)該少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が、該参照サンプルと比較して増加する、方法。
【請求項9】
3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が増加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物における癌をモニタリングするか癌治療に対する応答を評価するための方法であって、該方法は:
(g)該哺乳動物から細胞サンプルを得る工程、
(h)該サンプル中のmiR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を測定する工程、および
(i)該少なくとも2つのmiRNAの発現または活性を参照サンプル中のまたはそれに由来する発現または活性と比較する工程
を含み、
ここで、該miRNAのうちの少なくとも2つの発現または活性が、該参照サンプルと比較して変化する、方法。
【請求項12】
3つ以上のmiRNAの発現または活性を測定し、比較し、該発現または活性が変化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、胃癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、消化管癌、食道癌、および前立腺癌の群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
血液学的悪性疾患の処置に使用するための組成物であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに相補的な1つ以上のアンタゴミアを含む、組成物。
【請求項15】
血液学的悪性疾患の処置に使用するための、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項16】
前記血液学的悪性疾患が、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、およびバーキットリンパ腫から選択される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
癌の処置に使用するための組成物であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項18】
前記アンタゴミアまたは前記オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項19】
miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドを含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項20】
抗癌剤または治療薬、有糸分裂阻害剤、アポトーシス剤もしくは抗体、または免疫調節剤から選択される1つ以上のさらなる化合物をさらに含む、請求項14、15、または17に記載の組成物。
【請求項21】
治療有効量の、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的なアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチド、ならびに薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
Pten、Bim/Bcl2111、Phf6、Ikzf1、Nf1、およびFbxw7から選択される腫瘍抑制遺伝子の発現を増強または増加させる方法であって、該腫瘍抑制遺伝子のうちの1つ以上を発現することができる細胞と、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAに実質的に相補的な1つ以上のアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドとを接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
細胞と、miR−19、miR26、およびmiR−92から選択される少なくとも2つのmiRNAに実質的に相補的な少なくとも2つのアンタゴミアまたはオリゴヌクレオチドとを接触させる工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
miR17〜92クラスターが増幅または過剰発現される癌を処置または緩和する方法であって、miR−19、miR−20、miR−26、miR−92、miR−148、およびmiR−223から選択される1つ以上のmiRNAの発現または活性を阻害する1つ以上の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項25】
miR−19、miR−26、およびmiR−92を阻害する1つ以上の化合物を投与する、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2013−520197(P2013−520197A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555004(P2012−555004)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/000365
【国際公開番号】WO2011/106104
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(500213834)
【出願人】(512197629)ヘント ユニバーシティー (2)
【出願人】(512219574)コロンビア ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/000365
【国際公開番号】WO2011/106104
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(500213834)
【出願人】(512197629)ヘント ユニバーシティー (2)
【出願人】(512219574)コロンビア ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
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