説明

p型拡散層形成組成物、p型拡散層の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法

【課題】シリコン基板を用いた太陽電池素子の製造工程において、シリコン基板中の内部応力、基板の反りを発生させることなくp型拡散層を形成し、工程を簡略化しても充分なオーミックコンタクトが得られるp型拡散層形成組成物、p型拡散層の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法の提供。
【解決手段】本発明のp型拡散層形成組成物は、アクセプタ元素を含むガラス粉末と、分散媒と、を含有する。このp型拡散層形成組成物を塗布し熱拡散処理を施すことで、p型拡散層、及びp型拡散層を有する太陽電池素子が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子のp型拡散層形成組成物、p型拡散層の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、半導体基板であるシリコン基板の内部応力を低減し、結晶粒界のダメージ抑制、結晶欠陥増長抑制及び反り抑制可能なp型拡散層形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン太陽電池素子の製造工程について説明する。
まず、光閉じ込め効果を促して高効率化を図るよう、受光面にテクスチャー構造を形成したp型シリコン基板を準備し、続いてドナー元素含有化合物であるオキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800℃〜900℃で数十分の処理を行って、基板に一様にn型拡散層を形成する。この従来の方法では、混合ガスを用いてリンの拡散を行うため、表面のみならず、側面、裏面にもn型拡散層が形成される。そのため、側面のn型拡散層を除去するためのサイドエッチング工程が必要であった。また、裏面のn型拡散層はp型拡散層へ変換する必要があり、裏面のn型拡散層の上にアルミニウムペーストを付与し、これを焼成して、アルミニウムの拡散によってn型拡散層からp型拡散層に変換させていた。
【0003】
しかしながら、アルミペーストは導電率が低いため、シート抵抗を下げなければならず、通常裏面全面に形成したアルミ層は焼成後において10〜20μmほどの厚みを有していなければならない。さらに、シリコンとアルミニウムでは熱膨張率が大きく異なることから、焼成および冷却の過程で、シリコン基板中に大きな内部応力を発生させ、結晶粒界のダメージ、結晶欠陥増長及び反りの原因となる。
【0004】
この問題を解決するために、ペースト組成物の塗布量を減らし、裏面電極層を薄くする方法がある。しかしながら、ペースト組成物の塗布量を減らすと、p型シリコン半導体基板の表面から内部に拡散するアルミニウムの量が不十分となる。その結果、所望のBSF(Back Surface Field)効果(p型拡散層の存在により生成キャリアの収集効率が向上する効果)を達成することができないため、太陽電池の特性が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、例えば、アルミニウム粉末と、有機質ビヒクルと、熱膨張率がアルミニウムよりも小さく、かつ、溶融温度、軟化温度および分解温度のいずれかがアルミニウムの融点よりも高い無機化合物粉末とを含むペースト組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−223813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のペースト組成物を用いた場合でも充分に反りを抑制することができない場合があった。
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、シリコン基板を用いた太陽電池素子の製造工程において、シリコン基板中の内部応力、基板の反りを発生させることなくp型拡散層を形成することが可能で、工程を簡略化しても充分なオーミックコンタクトが得られるp型拡散層形成組成物、p型拡散層の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
<1> アクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末と、分散媒と、を含有するp型拡散層形成組成物。
<2> 前記アクセプタ元素が、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載のp型拡散層形成組成物。
<3> 前記アクセプタ元素を含むガラス粉末が、B、Al及びGaから選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、AgOと、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、及びMoOから選択される少なくとも1種のガラス構成成分と、を含有する前記<1>又は<2>に記載のp型拡散層形成組成物。
【0009】
<4> 半導体基板上に、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のp型拡散層形成組成物を塗布する工程と、熱拡散処理を施す工程と、を有するp型拡散層の製造方法。
<5> 半導体基板上に、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のp型拡散層形成組
成物を塗布する工程と、熱拡散処理を施してp型拡散層を形成する工程と、形成されたn型拡散層上に電極を形成する工程と、を有する太陽電池素子の製造方法。
<6> 前記n型拡散層を形成する工程と、前記電極を形成する工程との間で、前記n型拡散層上に形成したガラス層の除去を行わない、または前記ガラス層の一部を除去する前記<5>に記載の太陽電池素子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリコン基板を用いた太陽電池素子の製造工程において、シリコン基板中の内部応力、基板の反りを発生させることなくp型拡散層を形成することが可能で、工程を簡略化しても充分なオーミックコンタクトが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の太陽電池素子の製造工程の一例を概念的に示す断面図である。
【図2】(A)は、太陽電池素子を表面から見た平面図であり、(B)は(A)の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明のp型拡散層形成組成物について説明し、次にp型拡散層形成組成物を用いるp型拡散層及び太陽電池素子の製造方法について説明する。
尚、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
【0013】
本発明のp型拡散層形成組成物は、少なくともアクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末(以下、単に「ガラス粉末」と称する場合がある)と、分散媒と、を含有し、更に塗布性などを考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、p型拡散層形成組成物とはアクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末を含有し、シリコン基板に塗布した後にこのアクセプタ元素を熱拡散することでp型拡散層を形成することが可能な材料をいう。本発明のp型拡散層形成組成物を用いることで、p型拡散層形成工程とオーミックコンタクト形成工程とを分離でき、オーミックコンタクト形成のための電極材の選択肢が広がるとともに、電極の構造の選択肢も広がる。例えば銀等の低抵抗材を電極に用いれば薄い膜厚で低抵抗が達成できる。また、電極も全面に形成する必要はなく、櫛型等の形状のように部分的に形成してもよい。以上のように薄膜あるいは櫛型形状等の部分的形状にすることで、シリコン基板中の内部応力、基板の反りの発生を抑えながらp型拡散層を形成することが可能となる。
【0014】
したがって、本発明のp型拡散層形成組成物を適用すれば、従来広く採用されている方法、つまりアルミニウムペーストを印刷し、これを焼成してn型拡散層をp型拡散層にするのと同時にオーミックコンタクトを得る方法では発生してしまう基板中の内部応力及び基板の反りの発生が抑制される。
またガラス粉末中のアクセプタ成分は焼成中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によって所望の領域以外にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、アクセプタ成分がガラス粉末中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいものと考えられる。
【0015】
ここで本発明では、酸化銀を含有するガラス粉末を用いる。この酸化銀は、熱拡散処理工程を経て、p型拡散層の上に形成されたガラス層中に銀粒子として析出する。この銀粒子がガラス層中に分布することで、ガラス層自体の導電性を高めることができる。その結果、p型拡散層上に電極を形成する前にエッチング工程によりガラス層を除去しなくとも、電極とシリコン基板間に良好なオーミックコンタクトを形成することができる。そのため、本発明によればガラス層のエッチング工程を省いた場合でも、電極とp型拡散層間のオーミックコンタクトが充分なものとなり、工程が煩雑となるのを抑えることができる。
【0016】
次に、本発明に係るアクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末について、詳細に説明する。
アクセプタ元素とは、シリコン基板中にドーピングさせることによってp型拡散層を形成することが可能な元素である。アクセプタ元素としては第13族の元素が使用でき、例えばB(ほう素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等が挙げられる。
【0017】
ガラス粉末は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化温度、ガラス転移温度、化学的耐久性等を制御することが可能である。
【0018】
アクセプタ元素をガラス粉末に導入するために用いるアクセプタ元素含有物質としては、B、Al、及びGaが挙げられ、B、Al及びGaから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0019】
ガラス粉末中のアクセプタ元素含有物質の含有比率は、溶融温度、軟化温度、アクセプタ元素のドーピング挙動、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、3質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
ガラス粉末中の酸化銀の含有比率は、銀粒子の析出量、溶融温度、軟化温度、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には1質量%以上75質量%以下であることが好ましく、3質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
また、ガラス粉末中において、アクセプタ元素含有物質に対する酸化銀の含有率は、銀粒子の析出量、溶融温度、軟化温度、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には2質量%以上200質量%以下であることが好ましく、5質量%以上150質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
また、ガラス粉末は、以下に記すガラス成分物質を含むことが好ましい。
ガラス成分物質としては、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、WO、MoO、MnO、La、Nb、Ta、Y、TiO、GeO、TeO及びLu等が挙げられ、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、及びMoOから選択される少なくとも1種を用いることが、好ましい。
【0022】
アクセプタ元素を含むガラス粉末の具体例としては、前記アクセプタ元素含有物質と酸化銀と前記ガラス成分物質とを含む系が挙げられ、B−AgO−SiO系(アクセプタ元素含有物質−酸化銀−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)、B−AgO−ZnO系、B−AgO−PbO系等のアクセプタ元素含有物質としてBを含む系、Al−AgO−SiO系等のアクセプタ元素含有物質としてAlを含む系、Ga−AgO−SiO系等のアクセプタ元素含有物質としてGaを含む系などのガラスが挙げられる。また、ガラス成分物質を含まないB−AgO系等のガラス粉末でもよい。
【0023】
なお、B−AgO−Al系、Ga−AgO−B系等のように、2種類以上のアクセプタ元素含有物質を含むガラス粉末でもよい。
上記では2成分ガラスあるいは3成分を含む複合ガラスを例示したが、B−AgO−SiO−NaO等必要に応じて4種類以上の物質を含むガラス粉末でもよい。
【0024】
ガラス粉末中のガラス成分物質の含有比率は、溶融温度、軟化温度、ガラス転移温度、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
ガラス粉末の軟化点は、拡散処理時の拡散性、液だれの観点から、200℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜900℃であることがより好ましい。
【0026】
ガラス粉末の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状及び鱗片状等が挙げられ、n型拡散層形成組成物とした場合の基板への塗布性や均一拡散性の点から、略球状、扁平状又は板状であることが望ましい。
ガラス粉末の粒径は、50μm以下であることが望ましい。50μm以下の粒径を有するガラス粉末を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粉末の粒径は10μm以下であることがより望ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、ガラスの粒径は、平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0027】
アクセプタ元素を含むガラス粉末は、以下の手順で作製される。
最初に原料、例えば、前記アクセプタ元素含有物質と酸化銀と前記ガラス成分物質とを秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金―ロジウム、金、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられるが、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。
続いて得られた融液をジルコニア基板やカーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。
最後にガラスを粉砕し粉末状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の方法が適用できる。
【0028】
p型拡散層形成組成物中のアクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末の含有比率は、塗布性、アクセプタ元素の拡散性等を考慮し決定される。一般には、p型拡散層形成組成物中のガラス粉末の含有比率は、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、1質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、組成物中において上記ガラス粉末を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、バインダーや溶剤などが採用される。
【0030】
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアミド類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド類、ポリスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、セルロースエーテル類、セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム類、キサンタン、グア及びグア誘導体、スクレログルカン及びスクレログルカン誘導体、トラガカント及びトラガカント誘導体、デキストリン及びデキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、又はこれらの共重合体、他にも、シロキサン樹脂を適宜選択しうる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0031】
バインダーの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが望ましい。
【0032】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル系溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン系溶剤;水等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0033】
p型拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、アクセプタ濃度を考慮し決定される。
p型拡散層形成組成物の粘度は、塗布性を考慮して、10mPa・s以上1000000mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以上500000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0034】
次に、本発明のp型拡散層及び太陽電池素子の製造方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の太陽電池素子の製造工程の一例を概念的に表す模式断面図である。以降の図面においては、共通する構成要素に同じ符号を付す。
【0035】
図1(1)では、p型半導体基板10であるシリコン基板にアルカリ溶液を付与してダメージ層を除去し、テクスチャー構造をエッチングにて得る。
詳細には、インゴットからスライスした際に発生するシリコン表面のダメージ層を20質量%苛性ソーダで除去する。次いで1質量%苛性ソーダと10質量%イソプロピルアルコールの混合液によりエッチングを行い、テクスチャー構造を形成する(図中ではテクスチャー構造の記載を省略する)。太陽電池素子は、受光面(表面)側にテクスチャー構造を形成することにより、光閉じ込め効果が促され、高効率化が図られる。
【0036】
次に、図1(2)では、オキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800℃〜900℃で数十分の処理を行って一様にn型拡散層12を形成する。このとき、オキシ塩化リン雰囲気を用いた方法では、リンの拡散は側面及び裏面にも及び、n型拡散層は表面のみならず、側面、裏面にも形成される。そのために、側面のn型拡散層を除去するために、サイドエッチングが施される。
【0037】
そして、図1(3)では、p型半導体基板10の裏面すなわち受光面ではない面のn型拡散層の上に、上記p型拡散層形成組成物を塗布して、p型拡散層形成組成物層13を形成する。本発明では、塗布方法には制限がないが、例えば、印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法などがある。
上記p型拡散層形成組成物の塗布量としては特に制限は無いが、例えば、ガラス粉末量として0.05g/m〜1.05g/mとすることができ、0.065g/m〜0.02g/mであることが好ましい。
【0038】
なお、p型拡散層形成組成物の組成によっては、塗布後に、組成物中に含まれる溶剤を揮発させるための乾燥工程が必要な場合がある。この場合には、80℃〜300℃程度の温度で、ホットプレートを使用する場合は1分〜10分、乾燥機などを用いる場合は10分〜30分程度で乾燥させる。この乾燥条件は、n型拡散層形成組成物の溶剤組成に依存しており、本発明では特に上記条件に限定されない。
【0039】
上記p型拡散層形成組成物を塗布した半導体基板を、600℃〜1200℃で熱処理する。この熱処理により、半導体基板中へアクセプタ元素が拡散し、p型拡散層14が形成される。熱処理には公知の連続炉、バッチ炉等が適用できる。
熱拡散処理時間は、p型拡散層形成組成物に含まれるアクセプタ元素の含有率などに応じて適宜選択することができる。例えば、1分〜60分間とすることができ、2分〜30分間であることがより好ましい。
【0040】
形成されたp型拡散層14の表面には、ガラス層(不図示)が形成されているため、通常の方法ではこのガラスをエッチングにより除去する。エッチングとしては、フッ酸等の酸に浸漬する方法、苛性ソーダ等のアルカリに浸漬する方法など公知の方法が適用できる。
【0041】
ここで、本発明によれば、p型拡散層14表面のガラス相には銀粒子析出しており、ガラス層自体が高い導電性を示している。従って、前記エッチングを行わずに次の工程(反射防止膜の形成)に進めることもできる。またはガラス層を完全に除去せずに、一部残して次の工程に進めることもできる。前記エッチング工程の有無、更にエッチングの程度については、形成したガラス層の厚さや銀粒子の析出量、ガラス層の導電率などを考慮し、適宜選択することができる。したがって本発明の製造方法によれば、ガラス層のエッチング工程が不要となり、或いは完全にガラス層を除去するまでのエッチングが要求されず、工程が簡易化される。
【0042】
また、従来の製造方法では、裏面にアルミペーストを印刷し、これを焼成してn型拡散層をp型拡散層にするのと同時に、オーミックコンタクトを得ている。しかしながら、アルミペーストの導電率が低いため、シート抵抗を下げなければならず、通常裏面全面に形成したアルミ層は焼成後において10〜20μmほどの厚みを有していなければならない。さらに、シリコンとアルミでは熱膨張率が大きく異なることから、焼成および冷却の過程で、シリコン基板中に大きな内部応力を発生させ、反りの原因となる。
この内部応力は、結晶の結晶粒界に損傷を与え、電力損失が大きくなるという課題があった。また、反りは、モジュール工程における太陽電池素子の搬送や、タブ線と呼ばれる銅線との接続において、素子を破損させ易くしていた。近年では、スライス加工技術の向上から、シリコン基板の厚みが薄型化されつつあり、更に素子が割れ易い傾向にある。
【0043】
しかし本発明の製造方法によれば、上記本発明のp型拡散層形成組成物によってn型拡散層をp型拡散層に変換した後、別途このp型拡散層の上に電極を設ける。そのため裏面の電極に用いる材料はアルミニウムに限定されず、例えばAg(銀)やCu(銅)などを適用することができ、裏面の電極の厚さも従来のものよりも薄く形成することが可能となり、さらに全面に形成する必要もなくなる。そのため焼成および冷却の過程で発生するシリコン基板中の内部応力及び反りを低減できる。
【0044】
図1(4)では、上記形成したn型拡散層12の上に反射防止膜16を形成する。反射防止膜16は公知の技術を適用して形成される。例えば、反射防止膜16がシリコン窒化膜の場合には、SiHとNHの混合ガスを原料とするプラズマCVD法により形成する。このとき、水素が結晶中に拡散し、シリコン原子の結合に寄与しない軌道、即ちダングリングボンドと水素が結合し、欠陥を不活性化(水素パッシベーション)する。
より具体的には、上記混合ガス流量比NH/SiHが0.05〜1.0、反応室の圧力が13.3Pa(0.1Torr)〜266.6Pa(2Torr)、成膜時の温度が300〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件下で形成される。
【0045】
図1(5)では、表面(受光面)の反射防止膜上16に、表面電極用金属ペーストをスクリーン印刷法で印刷塗布乾燥させ、表面電極18を形成する。表面電極用金属ペーストは、(1)金属粒子と(2)ガラス粒子とを必須成分とし、必要に応じて(3)樹脂バインダー、(4)その他の添加剤などを含む。
【0046】
次いで、上記裏面のp型拡散層14上にも裏面電極20を形成する。前述のように、本発明では裏面電極20の材質や形成方法は特に限定されない。例えば、アルミニウム、銀、又は銅等の金属を含む裏面電極用ペーストを塗布し、乾燥させて、裏面電極20を形成してもよい。このとき、裏面にも、モジュール工程における素子間の接続のために、一部に銀電極形成用銀ペーストを設けてもよい。
【0047】
図1(6)では、上記電極を焼成して、太陽電池素子を完成させる。600℃〜900℃の範囲で数秒〜数分間焼成すると、表面側では電極用金属ペーストに含まれるガラス粒子によって絶縁膜である反射防止膜16が溶融し、更にシリコン表面も一部溶融して、ペースト中の金属粒子(例えば銀粒子)がシリコン基板10と接触部を形成し凝固する。これにより、形成した表面電極18とシリコン基板10とが導通される。これはファイアースルーと称されている。
【0048】
表面電極18の形状について説明する。表面電極18は、バスバー電極30、及び該バスバー電極30と交差しているフィンガー電極32で構成される。図2(A)は、表面電極18を、バスバー電極30、及び該バスバー電極30と交差しているフィンガー電極32からなる構成とした太陽電池素子を表面から見た平面図であり、図2(B)は、図2(A)の一部を拡大して示す斜視図である。
【0049】
このような表面電極18は、例えば、上述の金属ペーストのスクリーン印刷、又は電極材料のメッキ、高真空中における電子ビーム加熱による電極材料の蒸着等の手段により形成することができる。バスバー電極30とフィンガー電極32とからなる表面電極18は受光面側の電極として一般的に用いられていて周知であり、受光面側のバスバー電極及びフィンガー電極の公知の形成手段を適用することができる。
【0050】
なお上述のp型拡散層及び太陽電池素子の製造方法では、p型半導体基板であるシリコン基板にn型拡散層を形成するのに、オキシ塩化リン(POCl)、窒素および酸素の混合ガスを用いているが、n型拡散層形成組成物を用いてn型拡散層を形成してもよい。n型拡散層形成組成物にはP(リン)やSb(アンチモン)などの第15族の元素がドナー元素として含有される。
【0051】
n型拡散層の形成にn型拡散層形成組成物を用いる方法では、まず、p型半導体基板の表面である受光面にn型拡散層形成組成物を塗布し、裏面に本発明のp型拡散層形成組成物を塗布し、600℃〜1200℃で熱処理する。この熱処理により、表面ではp型半導体基板中へドナー元素が拡散してn型拡散層が形成され、裏面ではアクセプタ元素が拡散してp型拡散層が形成される。この工程以外は上記方法と同様の工程により、太陽電池素子が作製される。
【0052】
また、上記では、表面にn型拡散層、裏面にp型拡散層を形成し、更にそれぞれの層の上に表面電極及び裏面電極を設けた太陽電池素子について説明したが、本発明のn型拡散層形成組成物を用いればバックコンタクト型の太陽電池素子を作製することも可能である。
バックコンタクト型の太陽電池素子は、電極を全て裏面に設けて受光面の面積を大きくするものである。つまりバックコンタクト型の太陽電池素子では、裏面にn型拡散部位及びp型拡散部位の両方を形成しpn接合構造とする必要がある。本発明のn型拡散層形成組成物は、特定の部位にn型拡散部位を形成することが可能であり、よってバックコンタクト型の太陽電池素子の製造に好適に適用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限す
るものではない。なお、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。また「%」は
断りがない限り「質量%」を意味する。
【0054】
[実施例1]
テクスチャーが形成されたp型シリコン基板表面について、以下に示す一般的な手法でn型拡散層を形成した。まずシリコン基板を石英製ボートに立て、これを850℃に加熱した石英チューブ内に挿入した。ここにオキシ塩化リン(POCl)を拡散源としたガス拡散法により、基板全面にリンを拡散させることで、n型拡散層を形成した。具体的には、バブラー容器に満たした液体のPOCl内にキャリアガスとしての窒素(N)を通し、POClを石英チューブ内に導入する。POClは酸素(O)と混ざることでPがシリコン基板表面に堆積し、これが拡散源となってリンがシリコン基板に拡散する。尚加熱処理時間は30分とした。
【0055】
その後フッ酸処理をシリコン基板全面に施し、基板表面に形成されているリン酸塩ガラスを除去した。フッ酸処理は、具体的には、10%のフッ酸水溶液に5分間浸漬した。その後、流水洗浄、乾燥を行った。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。
【0056】
続いて、B−AgO−ZnO−SiO系ガラス粉末(B:18.5%、AgO:27.5%、ZnO:24.5%、SiO:23.8%、Al:5.7%)粉末(以下、「G01」と略記することがある)を調整した。得られたガラス粉末(G01)20gと、エチルセルロース0.5gと、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル10gとを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物を調製した。
【0057】
次に、調製したペーストをスクリーン印刷によって表面にn型拡散層が形成されたp型シリコン基板の片面全面に塗布し、150℃のホットプレート上で5分間乾燥させた。続いて、1000℃に設定した電気炉で30分間熱拡散処理を行い、その後ガラス層を除去するため基板を10%のフッ酸水溶液に5分間浸漬し、流水洗浄、乾燥を行った。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。
【0058】
続いてn型拡散層を形成した面のうち、p型拡散層形成組成物を塗布していない面に対し、プラズマCVDにより反射防止膜(窒化ケイ素膜)を90nmの厚さで形成した。その受光面にスクリーン印刷法を用い、市販の銀電極ペースト(DuPont社製、商品名:PV159)を図2に示すような電極パターンとなるように印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、焼成後の膜厚が20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度、印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0059】
続いてアルミニウム電極ペースト(PVG Solutions社製、商品名:Hyper BSF Al Paste)を、上記と同様にスクリーン印刷法を用いて、裏面(p型拡散層形成組成物を塗布した面、以下同様。)の全面に印刷した。またアルミニウム電極の膜厚が15μmとなるように、アルミニウム電極ペーストの印刷条件を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0060】
続いて、トンネル炉(ノリタケ社製、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、焼成最高温度800℃で保持時間10秒の加熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子1を作製した。太陽電池素子1において基板の反りは発生していなかった。
【0061】
[実施例2]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理後のフッ酸処理を行わずに電極を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池素子2を作製した。太陽電池素子2において、基板の反りは発生していなかった。
【0062】
[実施例3]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理の時間を35分としたこと以外は実施例1と同様にして、太陽電池素子3を作製した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。また、太陽電池素子3において、基板の反りは発生していなかった。
【0063】
[実施例4]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理の時間を35分としたこと以外は実施例2と同様にして、太陽電池素子4を作製した。太陽電池素子4において、基板の反りは発生していなかった。
【0064】
[実施例5]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理の温度を900℃としたこと以外は実施例1と同様にして、太陽電池素子5を作製した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。また、太陽電池素子5において、基板の反りは発生していなかった。
【0065】
[実施例6]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理の温度を900℃としたこと以外は実施例2と同様にして、太陽電池素子6を作製した。太陽電池素子6において、基板の反りは発生していなかった。
【0066】
[実施例7]
ガラス粉末組成をB−AgO−Bi−SiO系ガラス(B:14.1%、AgO:13.9%、Bi:66.7%、SiO:5.3%、以下「G02」と略記することがある)としたこと以外は、実施例1と同様にn型拡散層形成を行い、太陽電池素子7を作製した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。また、太陽電池素子7において、基板の反りは発生していなかった。
【0067】
[実施例8]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理後のフッ酸処理を行わずに電極を形成したこと以外は、実施例7と同様にして、太陽電池素子8を作製した。また、太陽電池素子8において、基板の反りは発生していなかった。
【0068】
[実施例9]
p型拡散層の熱拡散処理の温度を950℃とし、時間を35分としたこと以外は実施例7と同様にして、太陽電池素子9を作製した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。また、太陽電池素子9において、基板の反りは発生していなかった。
【0069】
[実施例10]
p型拡散層の熱拡散処理の温度を950℃とし、時間を35分としたこと以外は実施例8と同様にして、太陽電池素子10を作製した。太陽電池素子10において、基板の反りは発生していなかった。
【0070】
[実施例11]
p型拡散層の熱拡散処理の温度を900℃とし、時間を40分としたこと以外は実施例7と同様にして、太陽電池素子11を作製した。フッ酸処理後のp型シリコン基板表面にガラス層は残存していなかった。また、太陽電池素子11において、基板の反りは発生していなかった。
【0071】
[実施例12]
p型拡散層の熱拡散処理の温度を900℃とし、時間を40分としたこと以外は実施例8と同様にして、太陽電池素子12を作製した。太陽電池素子12において、基板の反りは発生していなかった。
【0072】
[実施例13]
実施例1と同様に、テクスチャーが形成されたp型シリコン基板について、POClを用いたn型形成層形成、ガラス粒子(G01)を用いたp型拡散層形成、プラズマCVDによる反射防止膜を形成した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。
【0073】
その後、受光面にスクリーン印刷法を用い、市販の銀電極ペースト(DuPont社製、商品名:PV159)を図2に示すような電極パターンとなるように印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、焼成後の膜厚が20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度、印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。また裏面に対しても市販の銀電極ペースト(PVG Solutions社製、商品名:Hyper BSF Al Paste)を受光面と同様のパターンに印刷し、150℃の温度で15分間加熱し、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0074】
続いて、実施例1と同様にして、トンネル炉を用いて大気雰囲気下、焼成最高温度800℃で保持時間10秒の加熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子13を作製した。基板の反りは発生していなかった。
【0075】
[実施例14]
p型拡散層形成組成物の熱拡散処理後のフッ酸処理を行わずに電極を形成したこと以外は、実施例13と同様にして、太陽電池素子14を作製した。基板の反りは発生していなかった。
【0076】
[実施例15]
ガラス粉末の組成をG02に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、太陽電池素子15を作製した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。また、基板の反りは発生していなかった。
【0077】
[比較例1]
まず、p型シリコン基板に実施例1と同様にしてn型拡散層を形成し、10%のフッ酸水溶液処理をシリコン基板全面に施し、基板表面に形成されているリン酸塩ガラスを除去した。フッ酸処理後の基板表面にガラス層は残存していなかった。
【0078】
次いで、受光面となる面に対して、プラズマCVDにより反射防止膜(窒化ケイ素膜)を90nmの厚さで形成した。その受光面にスクリーン印刷法を用い、市販の銀電極ペースト(DuPont社製、商品名:PV159)を図2に示すような電極パターンとなるように印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、焼成後の膜厚が20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度、印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0079】
続いてアルミニウム電極ペースト(PVG Solutions社製、商品名:Hyper BSF Al Paste)を、上記と同様にスクリーン印刷法を用いて、裏面の全面に印刷した。またアルミニウム電極の膜厚が30μmとなるように、アルミニウム電極ペーストの印刷条件を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0080】
続いて、トンネル炉(ノリタケ社製、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、焼成最高温度800℃で保持時間10秒の加熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子C1を作製した。太陽電池素子C1において、1.5mm程度の基板の反りが発生した。
【0081】
[比較例2]
ガラス組成を、B−ZnO−SiO系ガラス(B:36.0%、ZnO:29.5%、SiO:28.8%、Al:5.7%)(以下、「G03」と略記することがある)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、太陽電池素子C2を作製した。
【0082】
[比較例3]
ガラス組成を、B−Bi−SiO系ガラス(B:18.0%、Bi:76.7%、SiO:5.3%)(以下、「G04」と略記することがある)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、太陽電池素子C3を作製した。
【0083】
実施例及び比較例におけるn型拡散層形成条件及び太陽電池の作製条件を、表1にまとめて示した。
【0084】
<評価>
作製した太陽電池素子の評価は、擬似太陽光として(株)ワコム電創製WXS−155S−10、電流―電圧(I−V)評価測定器としてI−V CURVE TRACER MP−160(EKO INSTRUMENT社製)の測定装置を組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すJsc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、FF(フィルファクター)、Eff(変換効率)は、それぞれJIS−C−8912、JIS−C−8913及びJIS−C−8914に準拠して測定を行うことで得られたものである。両面電極構造の太陽電池素子において、得られた各測定値を、比較例1(太陽電池素子C1)の測定値を100.0とした相対値に換算して表2に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
表2から、比較例2及び比較例3においては、比較例1よりも発電性能が劣化したことが分かる。これは、以下のように考えることができる。即ち、比較例2及び比較例3においては、ガラス粉末に酸化銀を含まないために、熱拡散処理中に形成された溶融ガラス相の抵抗が増大し、電極とシリコン基板上のp型拡散層間のオーミックコンタクトが不充分であったと考えられる。
【0088】
一方、実施例1〜実施例15で作製した太陽電池素子の発電性能は、比較例1の太陽電池素子の測定値と比べほぼ同等であった。特に、p型拡散層形成物の熱拡散処理後にフッ酸処理を施した場合は、その後の電極形成においてアルミニウムの拡散も生じるため、より高濃度のアルミニウムが拡散したことで、優れたオーミックコンタクトが形成できたと考えられる。その結果、フッ酸処理を施した実施例では、比較例1に比べて、発電性能に優れた太陽電池素子が得られた。また、フッ酸処理を施さなかった実施例においても良好な発電性能を示したことから、熱拡散処理中においてガラス中に銀粒子が析出し、導電性が向上したものと考えられる。
【0089】
さらに実施例13〜実施例15においてはアルミニウム電極を全面に形成しない構造をもつ太陽電池素子でも、比較例1の太陽電池素子と同等の測定値を得ることができた。これは、p型拡散層形成組成物の熱拡散処理により、良好なp型拡散層が形成されたためと考えられる。裏面の電極材料を銀電極にして、且つ細線状の電極のパターンを適用しても優れた発電性能が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0090】
10 p型半導体基板
12 n型拡散層
13 p型拡散層形成組成物層
14 p型拡散層
16 反射防止膜
18 表面電極
20 裏面電極(電極層)
30 バスバー電極
32 フィンガー電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセプタ元素及び酸化銀を含むガラス粉末と、分散媒と、を含有するp型拡散層形成組成物。
【請求項2】
前記アクセプタ元素が、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のp型拡散層形成組成物。
【請求項3】
前記アクセプタ元素を含むガラス粉末が、B、Al及びGaから選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、AgOと、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、及びMoOから選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有する請求項1又は請求項2に記載のp型拡散層形成組成物。
【請求項4】
半導体基板上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のp型拡散層形成組成物を塗布する工程と、熱拡散処理を施す工程と、を有するp型拡散層の製造方法。
【請求項5】
半導体基板上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のp型拡散層形成組成物を塗布する工程と、熱拡散処理を施してp型拡散層を形成する工程と、形成されたn型拡散層上に電極を形成する工程と、を有する太陽電池素子の製造方法。
【請求項6】
前記n型拡散層を形成する工程と、前記電極を形成する工程との間で、前記n型拡散層上に形成したガラス層の除去を行わない、または前記ガラス層の一部を除去する請求項5に記載の太陽電池素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−26471(P2013−26471A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160295(P2011−160295)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】