説明

p53−mdmx相互作用を阻害する低分子抗がん剤

【課題】p53−mdmx相互作用を阻害する低分子抗がん剤を提供すること。
【解決手段】ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxを発現する細胞の増殖を抑制するための組成物によって上記課題は解決された。したがって、本発明は、p53−mdmx相互作用に関連するがんを効率よく治療することができる抗がん剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品に関する。より特定すると、本発明は、抗がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がん抑制遺伝子p53は約半数のヒトがんで変異が認められており、がん発生の抑制に重要な役割を担っている。しかしながら、残りの半分のがんではp53が野生型であり、多くの場合、p53機能に対し抑制的に働く因子(Negative regulators)が過剰発現していることが報告されている。がん抑制遺伝子がコードするp53タンパク質のNegative regulatorsとしてE3ユビキチンリガーゼMdm2やMdmx(非特許文献1)がよく知られており、p53野生型の遺伝子を持つ多くのがん細胞で過剰発現が認められている。また、2004年Science誌(非特許文献2)に、p53−Mdm2相互作用を阻害する低分子化合物Nutlin−3aが同定され、その低分子化合物が効率良くp53遺伝子を野生型に持つがん細胞を死滅させることが報告されている。
【0003】
MdmxはMdm2と類似した構造を持つタンパク質である。Nutlin−3aは、p53−Mdm2相互作用を強く阻害することができるが、p53−Mdmxの相互作用に対してはあまり阻害効果を示さず、Mdmx過剰発現型がん細胞への効果は認められない(非特許文献3)。そのために、Nutlin−3aではMdmxを過剰発現しているがん細胞への増殖抑制効果が認められていない。これまでに、p53−Mdmx相互作用を阻害する低分子化合物は発見されていないため、Mdmxを過剰発現しているがん細胞に対する治療法は未だ確立されておらず、そのようながんの治療において副作用の強い抗がん剤を使わざるを得ないのが現状である。また、非特許文献3でも、p53とmdmxとの結合を阻害する化合物については言及していない。
【0004】
本発明者らは、非特許文献4において、この文献では抗がん剤の候補に関する知見を公開したが、タンパク質−タンパク質の結合を阻害することが述べられているが、具体的な分子標的については言及していない。
【0005】
非特許文献5および6は、ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類の製造方法を開示するが、p53−Mdmx相互作用に関する知見は一切記載されていない。
【0006】
また、本発明者らの一部は、アシルアミノフェニル基を有する抗がん剤という出願をした(特願2008−218662)。しかし、この出願では、p53−Mdmx相互作用については述べられていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kruse J.P,Gu W.,Cell,2009,137(4):609−622
【非特許文献2】Vassilev L.T.,Vu B.T.,Graves B.,Carvajal D.,Podlaski F.,Filipovic Z.,Kong N.,Kammlott U.,Lukacs C.,Klein C.,Fotouhi N.,Liu E.A.,Science,2004,303(5659):844−848
【非特許文献3】Hu B,Gilkes D.M.,Farooqi B.,Sebti S.M.,Chen J.,J.Biol.Chem.,2006,281(44):33030−33035
【非特許文献4】Satoshi YAMAKAWA,et al.,Biol.Pharm.Bull.31(5)916―920(2008)
【非特許文献5】Okamoto H.,Yonemori F.,Wakitani K.,Minowa T.,Maeda K.,Shinkai H.,Nature,406,203−207(2000)
【非特許文献6】Shinkai H.,Maeda K.,Yamasaki T.,Okamoto H.,Uchida I.,J. Med.Chem.,43,3566−3572(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、Mdmx−p53の阻害剤を提供すること、およびMdmxを過剰発現しているがん細胞に対する治療法を開発することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、今般、本発明者らは、Mdmxを過剰発現しているがん細胞にして、Mdmx−p53結合を阻害し、高い細胞増殖抑制効果を発揮するビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、後者の構造に対応する非硫黄含有化合物である[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類を見出すことができた。このことにより、Mdmx高発現型がん細胞に有効な治療効果を示す抗がん剤を開発できる基礎を提供する。
【0010】
一般に、タンパク質−タンパク質の結合を低分子で阻害することは、困難であると考えられていた。本発明者らは、多くの場合、タンパク質−タンパク質間相互作用部位にシステイン残基が存在することや、システインがタンパクの3次構造維持に重要な役割を果たしていることに着目し、このシステインと−S−S−結合を介して、タンパク間相互作用を阻害する化合物を見出すことを計画した。
【0011】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、その候補化合物として、ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類を、(Okamoto H.,Yonemori F.,Wakitani K.,Minowa T.,Maeda K.,Shinkai H.,Nature,406,203−207 (2000); Shinkai H.,Maeda K.,Yamasaki T.,Okamoto H.,Uchida I.,J.Med.Chem.,43,3566−3572(2000))に基づいて合成した(表1)。これらを含む低分子化合物を、本発明において開発したp53−Mdmx相互作用阻害効果のスクリーニングに供したところ、これらの低分子化合物が有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明者らはp53−Mdmxの相互作用をモニタリングする実験系を確立し(図1)、低分子化合物ライブラリーを用いて、その相互作用を阻害する低分子化合物を探索した。その結果、例示的に試験したK−178およびその類縁体であるK−154、K−179、K−180、K−181等ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類(なお、K番号で始まる化合物番号と構造式との対応は、表1を参照)が顕著にその相互作用を抑制することが見出された(図2)。また、実際、野生型p53遺伝子を持ちMdmxが過剰発現しているがん細胞に得られた低分子化合物を添加すると、その低分子化合物の添加によりp53の活性化を伴い(図3)、その用量依存的にがん細胞が死滅することがわかった(図4)。また、様々ながん細胞を用いて、K−178の細胞増殖抑制活性を調べたところ、野生型p53を持つがん細胞は、変異型p53を持つがん細胞に比べ、K−178による細胞増殖抑制効果が高い傾向にあった(図5)。
【0013】
本発明は、非特許文献1−6等からは予測できなかったものである。なぜならp53とmdmxの相互作用を阻害する特定の化合物は、これらの文献からは容易に推測できないからである。
【0014】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(項目1)ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxを発現する細胞の増殖を抑制するための組成物。
(項目2)前記化合物は、
【0015】
【化1】


【0016】
【化2】


【0017】
【化3】


【0018】
【化4】


【0019】
【化5】


【0020】
【化6】


【0021】
【化7】


【0022】
【化8】


【0023】
【化9】


【0024】
【化10】


【0025】
【化11】

および、
【0026】
【化12】

からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目3)前記細胞はp53を発現する細胞である、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxの過剰発現に関連する疾患を処置するための組成物。
(項目5)前記疾患はがんである、項目4に記載の組成物。
(項目6)前記疾患は乳がんである、項目4または5に記載の組成物。
(項目7)前記疾患はp53発現とも関連する、項目4〜6のいずれか1項に記載の組成物。
(項目8)前記化合物は、
【0027】
【化13】


【0028】
【化14】


【0029】
【化15】


【0030】
【化16】


【0031】
【化17】


【0032】
【化18】


【0033】
【化19】


【0034】
【化20】


【0035】
【化21】


【0036】
【化22】


【0037】
【化23】

および、
【0038】
【化24】

からなる群より選択される、項目4〜7に記載の組成物。
(項目9)ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxとp53と間の相互作用の阻害剤。
(項目10)前記化合物は、
【0039】
【化25】


【0040】
【化26】


【0041】
【化27】


【0042】
【化28】


【0043】
【化29】


【0044】
【化30】


【0045】
【化31】


【0046】
【化32】


【0047】
【化33】


【0048】
【化34】


【0049】
【化35】

および、
【0050】
【化36】

からなる群より選択される、項目9に記載の組成物。
(項目11)p53とMdmxとの相互作用を調節する物質を検出する方法であって、該方法は:
(a)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)とMdmxとの融合タンパク質を、グルタチオンをコーティングした固相上で提供する工程;
(b)エピトープで標識したp53および測定対象物質を該融合タンパク質に提供する工程;および
(c)遊離した該エピトープ標識したp53を、該エピトープに対する抗体を用いて検出または定量する工程、
を包含する、方法。
(項目12)前記エピトープはFLAG配列である、項目11に記載の方法。
(項目13)前記検出または定量は、前記抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗体を用いて、該西洋ワサビペルオキシダーゼの発色基質を発色させ、該発色の吸光度を測定することによって実行される、項目11または12に記載の方法。
【0051】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0052】
このように今回の発明は、治療法が未だ確立されていなかったMdmxを過剰発現しているがん細胞に対する抗がん剤としての有用性が期待できる。また、分子標的、つまり疾患のメカニズムを診断し、適切な抗がん剤を選択投与することが重要であって、本発明で見出した一連の低分子合成化合物は、分子標的薬として意味を持つといえる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、p53−Mdmx相互作用をモニタリングする実験系の概略図である。グルタチオンを固相化したプレートにグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を融合したMdmx分子と、FLAGエピトープ標識したp53との複合体を配置し、これに、候補物質を供し、FLAG配列を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗FLAG抗体を結合させる。結合した抗体複合体をHRPの発色基質に供し、その発色を490nmの吸光度を測定することによって、結合量を測定することができる。
【図2】図2は、Mdmx−p53の結合を阻害する低分子化合物の同定を示す図である。Aは、図1で示す改良型ELISA法を用いて、K−178およびその類縁体であるK−154、K−179、K−180、K−181等ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィドおよびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレートがMdmx−p53の結合を阻害することを示す。横軸の数値は、濃度(μM)を示し、横軸の化合物2はK−154、3はK−178を、4はK−179を、5はK−180を、6はK−181を示す。方法としては、グルタチオンを固相化した96穴プレート(PIERCE社)に100μlの15μg/ml GST−Mdmx溶液(燐酸緩衝食塩水(PBS)/Tween20/5% スキムミルク中)を添加、室温1時間で結合させた。そのプレートをPBS/Tween20で3回洗浄した後、100μlの1μg/mlFLAGタグしたp53および図中で示す各々の濃度の低分子化合物(燐酸緩衝食塩水(PBS)/Tween20/5%スキムミルク中)を添加した。1時間反応後、良く洗浄し、HRP標識した抗FLAG抗体(10000倍希釈:Sigma社)を室温1時間反応させた。その後、洗浄した後、発色キット(住友ベークライト社)を用いて、呈色反応を行った。Bは、ELISAプレートリーダーを用いて、490nmの吸光度を測定し、低分子化合物の濃度に対するp53−Mdmx相互作用阻害活性を示す。黒四角(■)は、K−154を示し、黒三角(▲)は、K−178を示し、黒丸(●)はK−179を示し、クロス(×)はK−180を示し、アステリスク(*)はK−181を示す。実験には、対照(低分子化合物を含有しない)およびブランク(FLAGタグしたp53を含まない)を並行して実施し、あらゆるサンプル値はブランク値で差し引いた。そして、各サンプルのp53結合量を対照値に対するパーセントで表した。K−154、K−178、K−179、K−180、K−181の阻害効果のIC50値はそれぞれ、1.07μM、0.96μM、0.76μM、0.88μM、0.71μMであった。
【図3】図3は、低分子化合物K−178によるp53の安定化および活性化を示す図である。MCF7細胞(ヒト乳がん細胞)を2x10細胞となるように6穴プレートにまき、一晩培養した。その後、K−178およびNutlin−3a(カルビオケム社)を図中で示す濃度になるように添加し、24時間後、その細胞を回収した。その薬剤処理した細胞から全細胞抽出液を調製し、5−20%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(バイオクラフト社)を行った。そして、PVDF膜(ミリポア社)にタンパク質を転写させ、クラスリン重鎖(ローディングコントロール)、Mdm2、p53およびp21に対する抗体を用いて、それらタンパク質の発現をウエスタンブロット法で確認した。K−178を添加するとp53の安定化が検出され、その標的遺伝子であるMdm2やp21の発現誘導が認められた。細胞を処理した化合物としては、1はDMSO(対照)を示し、2は10μM K−178を示し、3は30μM K−178を示し、4は100μM K−178を示し、5は10μM Nutlin−3aを示す。上からCHC、Mdm2、p53およびp21のマーカーを用いた実験結果を示す。
【図4】図4は、低分子化合物K−178による癌細胞のp53依存性増殖抑制効果を示す図である。左側はK−178濃度をx軸として、細胞生存率(%)をy軸としてグラフを作成した。黒菱形(◆)は、siRNAのコントロール(si−cont.)を示し、黒四角(■)は、si−p53(p53のsiRNA)を示す。方法としては、ヒト乳がん細胞であるMCF7細胞を1x10細胞となるように6穴プレートにまき、一晩培養後、Lipofectamine2000(Invitrogen社)を用いて、図中に示したsiRNA(100 pmol、Sigma社)を細胞へ導入した。48時間後、1x10細胞となるように24穴プレートにまき直し、一晩培養後、各々の濃度のK−178を添加した。72時間後、クリスタルバイオレット法を用いて、細胞生存率を算出した。コントロールsiRNAおよびp53に対するsiRNAで処理した細胞におけるK−178による細胞増殖抑制活性のCC50値はそれぞれ3.4、12.6μMであった。また、siRNAの効果を確認するために、同処置を施した細胞から抽出液を調製し、その全細胞抽出液中のクラスリン重鎖(ローディングコントロール)およびp53の発現をウエスタンブロット法で確認した。右側にウェスタンブロットの結果を示す。上からCHCおよびp53を示し、左は、コントロール(si−cont.)を示し、右側がp53のsiRNA(si−p53)を示す。
【図5】図5は、低分子化合物K−178による様々ながん細胞の増殖抑制効果を示す図である。左側はK−178濃度をx軸として、細胞生存率(%)をy軸としてグラフを作成した。図中に示す様々な細胞(TIG−7、ヒト正常繊維芽細胞(縦線(|));MCF7細胞、ヒト乳がん細胞(黒菱形(◆));A427細胞、ヒト肺がん細胞(黒三角(▲));HT1080細胞、ヒト繊維芽腫(黒四角(■));U2OS細胞、ヒト骨肉腫(黒丸(●))、以上5種の細胞は野生型p53を有する;PC3細胞、ヒト肺がん細胞(白三角(△));A431細胞、ヒト乳がん細胞(白四角(□));MDA−MB−468細胞、ヒト乳がん細胞(白菱形(◇))以上3種の細胞は、変異型p53を有する。)を2x10細胞となるように24穴プレートにまき、一晩培養後、各々の濃度のK−178を添加した。48時間後、クリスタルバイオレット法を用いて、細胞生存率を算出した。野生型p53を持つがん細胞は、変異型p53を持つがん細胞に比べ、K−178による細胞増殖抑制効果が高い傾向にあった。K−178の感受性の高いがん細胞における細胞増殖抑制活性のCC50値はそれぞれ18.2μM(MCF7細胞)、18.1μM(A427細胞)、14.6μM(HT1080細胞)であった。また、実施例16のK−178によるMCF7細胞における細胞増殖抑制活性のCC50値の違いは細胞をsiRNAで処理していることが原因と推測される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の修飾語等(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等の冠詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0055】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は本明細書中、統一した意味で使用し、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わされて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
【0056】
本明細書において「Mdmx」とは、Mdm2と類似した構造を持つタンパク質をいい(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、GenbankにおいてNM_002393として登録されている。本明細書では、Mdmxとmdmxとは、特に言及しない限り交換可能に使用され、タンパク質または遺伝子のいずれかまたは両方をさすことが当業者に理解される。Mdmxを過剰発現しているがん細胞に対する治療法は未だ確立されておらず、そのようながんの治療において副作用の強い抗がん剤を使わざるを得ないのが現状である。p53とmdmxとの結合を阻害する化合物については言及した報告はない。がん抑制遺伝子p53は約半数のヒトがんで変異が認められており、がん発生の抑制に重要な役割を担っている。しかしながら、残りの半分のがんではp53が野生型であり、多くの場合、p53機能に対し抑制的に働く因子(Negative regulators)が過剰発現していることが報告されている。がん抑制遺伝子がコードするp53タンパク質の抑制的に働く因子としてMdmx(非特許文献1)が報告されている。また、p53野生型の遺伝子を持つ多くのがん細胞で過剰発現が認められている。
【0057】
本明細書において「ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類」とは、以下の構造:
【0058】
【化37】

を有し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0059】
本明細書において「S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類」とは、以下の構造:
【0060】
【化38】

ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0061】
本明細書において「[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類」とは、以下の構造:
【0062】
【化39】

ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0063】
本明細書において「2−(アシルアミノ)フェノール類」とは、以下の構造:
【0064】
【化40】

ここで、Rは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、Rは、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0065】
本発明において、今般、本発明者らは、Mdmxを過剰発現しているがん細胞にして、Mdmx−p53結合を阻害し、高い細胞増殖抑制効果を発揮するビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、並びに、後者の構造に対応する非硫黄含有化合物である[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類を見出すことができた。
【0066】
本明細書において「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0067】
本明細書において「炭化水素」とは、炭素と水素だけからなる化合物の総称である。炭素原子の連なり方によって鎖式炭化水素と環式炭化水素とに大別され、鎖の場合もあり、側鎖をもつ場合もあり、前者は、直鎖炭化水素といい、後者は分岐炭化水素をいう。したがって、「炭化水素」には、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アリサイクリルなどが包含されることが理解される。
【0068】
本明細書において「アルキル」とは、炭素数1〜10個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を包含し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ぺンチル、イソぺンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6または1〜4個のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ぺンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。
【0069】
本明細書において「アルケニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の二重結合を有する炭素数2〜6個、または2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルケニルを包含し、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジエニル、3−メチル−2−ブテニル等が挙げられる。
【0070】
本明細書において「アルキニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の三重結合を有する炭素数2〜6個、または2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキニルを包含し、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等が挙げられる。さらに1個又はそれ以上の二重結合を有していてもよい。
【0071】
本明細書において「シクロアルキル」とは、環状飽和炭化水素基をいい、代表的に炭素数3〜15の環状飽和炭化水素基を包含し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基などが挙げられる。好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基が挙げられる。
【0072】
本明細書において「シクロアルケニル」は、環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいい、代表的に、炭素数3〜15個の環状の不飽和脂肪族炭化水素基を包含し、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルが挙げられ、好ましくはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルである。シクロアルケニルには、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0073】
本明細書において「シクロアルキニル」は、1個又はそれ以上の三重結合を有する環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいい、代表的に、炭素数9〜15個の1個又はそれ以上の三重結合を有する環状の不飽和脂肪族炭化水素基を包含する。
【0074】
本明細書において「アリール」とは、単環芳香族炭化水素基(例:5〜8員のもの、例えば、フェニル)及び多環芳香族炭化水素基(例:1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル等)を包含する。好ましくは、フェニル又はナフチル(1−ナフチル、2−ナフチル)が挙げられる。
【0075】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、単環芳香族複素環式基及び縮合芳香族複素環式基を包含する。単環芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環から誘導される、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を包含する。縮合芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環が、1〜4個の5〜8員の芳香族炭素環もしくは他の5〜8員の芳香族ヘテロ環と縮合している、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を包含する。
【0076】
本明細書において「脂環式(アリサイクリル;alicyclyl)」とは、非芳香族複素環式基をいい、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルなどを包含する。
【0077】
本明細書において「ヘテロサイクリル」とは、酸素原子、硫黄原子、及び/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよく、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい非芳香族複素環式基を包含する。また、そのような非芳香族複素環式基がさらに炭素数1〜4のアルキル鎖で架橋されていてもよく、シクロアルカン(5〜6員環が好ましい)やベンゼン環が縮合していてもよい。非芳香族であれば、飽和でも不飽和でもよい。好ましくは5〜8員環である。例えば、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、ピロリジノン、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、イミダゾリジノン、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノン、ピペリジノ、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、ピペラジノン、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル等が挙げられる。
【0078】
本明細書において「置換もしくは非置換のアルキル」、「置換もしくは非置換のアルケニル」、「置換もしくは非置換のアルキニル」、「置換もしくは非置換のアリール」、「置換もしくは非置換のシクロアルキル」、「置換もしくは非置換のシクロアルケニル」、「置換もしくは非置換のヘテロアリール」、「置換もしくは非置換のアリサイクリル」、「置換もしくは非置換のヘテロサイクリル」、「置換もしくは非置換のアルコキシ」、における置換基としては、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF、CHCF、CHCCl)、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル、アダマンチル)、シクロアルキルアルキル(例:シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アリール(例:フェニル、ナフチル)、アリールアルキル(例:ベンジル、フェネチル)、ヘテロアリール(例:ピリジル、フリル)、ヘテロアリールアルキル(例:ピリジルメチル)、ヘテロサイクリル(例:ピペリジル)、ヘテロサイクリルアルキル(例:モルホリルメチル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ハロゲン化アルコキシ(例:OCF)、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェニルオキシ)、アルキルオキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル)、アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、アミノ(例:アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ、アルキルアミノアルキル(例:ジエチルアミノメチル)、スルファモイル、オキソ等からなる群から選択される。1〜4個の当該置換基で置換されていてもよい。
【0079】
本発明の化合物の製薬上許容される塩としては、以下の塩が挙げられる。
【0080】
本発明において利用可能な塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロ環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0081】
本発明において利用可能な酸性塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
【0082】
本明細書において「溶媒和物」とは、本発明化合物またはその製薬上許容される塩の溶媒和物を意味し、例えば、アルコール(例:エタノール)和物や水和物等が挙げられる。水和物としては、1水和物、2水和物等を挙げることができる。
【0083】
別の実施形態において、本発明は、上記のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、あるいはそのプロドラッグ(たとえば、エステル類、アミド類)を含有する医薬組成物を提供する。
【0084】
本明細書において「プロドラッグ」、「プロドラッグ化合物」とは、化学的又は代謝的に分解し得る基を有し、加水分解や加溶媒分解によって又は生理条件下で分解することによって薬学的に活性を示す本発明化合物の誘導体である。いろいろな形のプロドラッグが、当該技術分野において知られている。このようなプロドラッグ誘導体の例については、次を参照することができる。本発明で使用される化合物のプロドラッグは、その化合物中に存在する官能基を、生体内で開裂すると親化合物が放出されるような修飾方法で修飾することによって製造される。たとえば、プロドラッグは、本発明で使用される化合物中のヒドロキシ基などが、生体内で開裂されるとそれぞれ遊離ヒドロキシ基などを再生する基と結合している化合物を含む。プロドラッグの例は、これらに限定されないが、本発明の化合物中のヒドロキシ官能基のエステル(例えば、アセタート、ホルマート、およびベンゾアート誘導体)、カルバマート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)などを含む。
(a)Design of Prodrugs,edited by H.Bundgaard,(Elsevier,1985) and Methods in Enzymology,Vol.42.p.309−396,edited by K.Widder,et al.(Academic Press,1985);
(b)A Textbook of Drug Designand Development,edited by Krogsgaard−Larsen;
(c)H.Bundgaard,Chapter 5“Designand Application of Prodrugs”,by H.Bundgaard p.113−191(1991);
(d)H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,8,1−38(1992);
(e)H.Bundgaard,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,77,285(1988);および
(f)N.Kakeya,et al.,Chem.Pharm.Bull.,32,692(1984)。
【0085】
(製造方法)
本発明化合物の一般的製造法を以下に例示する。また、抽出、精製などは、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
【0086】
本発明の化合物の合成は、当該分野において公知の手法を参酌しながら実施することができる。
【0087】
原料化合物は、市販の化合物であるか、他の本明細書中に記載の文献に記載されたもの、このほか本明細書において記載されたものならびに本明細書において他に引用された文献に記載されるものならびに他に公知の化合物を利用することができる。
【0088】
本発明の化合物の中には、互変異性体が存在し得るものがあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0089】
本発明のビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類は、(非特許文献5および6)に基づいて合成することができる。
【0090】
例えば、本明細書において本発明のS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類の化合物は、o-アミノチオフェノールに、所望の置換基が結合したカルボニルハロゲンを結合させて、当該置換基を導入することによって合成することができる。置換基は、アミノ基およびチオ基の両方または一方に導入されうる。別々の置換基を導入するには反応性の相違を利用するか、または保護・脱保護により、所望の置換基を結合させた後、他方のものを導入すればよい。
【0091】
同様に、本明細書において本発明の[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類の化合物は、o-アミノフェノールに、所望の置換基が結合したカルボニルハロゲンを結合させて、当該置換基を導入することによって合成することができる。置換基は、アミノ基およびヒドロキシ基の両方または一方に導入されうる。一方の場合は、下記2−(アシルアミノ)フェノール類と同様になる。別々の置換基を導入するには反応性の相違を利用するか、または保護・脱保護により、所望の置換基を結合させた後、他方のものを導入すればよい。
【0092】
同様に、本明細書において本発明の2−(アシルアミノ)フェノール類の化合物は、o-アミノフェノールに、必要に応じて、ヒドロキシ基を保護し、所望の置換基が結合したカルボニルハロゲンを結合させて、当該置換基を導入し、必要に応じて脱保護することによって合成することができる。
【0093】
本明細書において本発明のビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類の化合物は、2−アミノフェニルジスルフィドに、所望の置換基が結合したカルボニルハロゲンを結合させて、当該置換基を導入することによって合成することができる。別々の置換基を導入するには、o-アミノチオフェノールのアミノ基とチオール基との反応性の相違を利用するか、または、両基にカルボニルハロゲンを結合させ所望の置換基を結合させた後、チオエステル基側を選択的に加水分解し、他方のものを導入すればよい。
【0094】
反応溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、飽和炭化水素類(例、シクロヘキサン、ヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(例、アセトニトリルなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、t−ブタノールなど)、水およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0095】
塩基としては、例えば金属水素化物(例、水素化ナトリウムなど)、金属水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、金属炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムなど)、金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなど)、炭酸水素ナトリウム、金属ナトリウム、有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、2,6−ルチジンなど)、ピリジン、アルキルリチウム(n−BuLi、sec−BuLi、tert−BuLi)等が挙げられる。塩基は必ずしも使用する必要はないが、必要に応じて用いることができる。
【0096】
本明細書において使用されうる縮合剤としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOPTM)、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、水溶性カルボジイミド(WSC)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)などを用いることができる。また、これらの試薬は、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)などと組み合わせて使用することができる。
【0097】
本明細書において使用されうる場合、反応溶媒としてエーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなど)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、塩基として有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、2,6−ルチジンなど)、縮合剤としてHATUまたはPyBOPを用いて行えばよい。反応温度、反応時間は特に限定されないが、通常は室温にて反応を実施し、反応の進行が遅い場合には加温することによって反応が促進される場合もある。
【0098】
本発明の製造は、本明細書に記載される実施形態を適宜改変し、あるいは組み合わせ、あるいは公知技術を付加することによって実施することができる。
【0099】
本発明の化合物は、保護基を用いて保護することができる。たとえば、代表的には、ハロゲン(I、Br、Cl、Fなど)、低級(ここでは、代表的にC1−C6を示すがこれに限定されない。)アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ等を表す。)において、適宜の置換基を当該分野で公知の手法により保護することによって製造することができる。このような保護基としては、例えばエトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、アセチル、ベンジル等の、Protective Groups in Organic Synthesis、T.W.Green著、John Wiley & Sons Inc.(1981年)等に記載されている保護基をあげることができる。保護基の導入および脱離方法は、有機合成化学で常用される方法[例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、T.W.Greene著、John Wiley & Sons Inc.(1981年)参照]等に記載の方法あるいはそれらに準じて得ることができる。また、各置換基に含まれる官能基の変換は、上記製造法以外にも公知の方法[例えば、Comprehensive Organic Transformations、R.C.Larock著(1989年)等]によっても行うことができ、本発明の化合物の中には、これを合成中間体としてさらに新規な誘導体へ導くことができるものもある。上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
【0100】
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を以下に説明する。本発明は、この形態に拘束されないことが理解される。
【0101】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、以下の表1に記載されるビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、並びにその類縁体の構造を示す化合物を提供する。表中の化合物番号は、本明細書において適宜使用する。
【0102】
(表1.ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類およびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類)
【0103】
【表1−1】

【0104】
【表1−2】

【0105】
1つの局面では、本発明は、Mdmxを発現する細胞の増殖を抑制するための組成物を提供する。代表的には、この組成物は、ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィドおよびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート、後者の構造に対応する非硫黄含有化合物である[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む。
【0106】
具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
【0107】
【化41】

を有する化合物を含み、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0108】
あるいは本発明の組成物は、以下の式:
【0109】
【化42】

を有する化合物を含み、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される)。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0110】
本発明の組成物は、以下の構造:
【0111】
【化43】

を有する化合物を含み、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0112】
また、本発明の組成物は、以下の構造:
【0113】
【化44】

を有する化合物を含み、ここで、Rは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロサイクル、および置換もしくは非置換のアルコキシからなる群より選択され、これらの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、グアニジノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロからなる群から選択される。好ましくは、Rは、炭素数1から15の置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐炭化水素、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換のアリサイクリル、および置換もしくは非置換のヘテロサイクリルから選択される。
【0114】
1つの実施形態では、本発明は、上記に列挙した具体的な化合物の任意の化合物を含む組成物であって、Mdmx阻害剤であるものを提供する。ここで疾患としては、Mdmxに関連するものであればどのような疾患等でも対象とすることができる。代表的には、対象となる疾患はがんであり、そのひとつの例としては、乳がんを挙げることができる。あるいは対象とする疾患は、p53発現とも関連するものである。したがって、1つの実施形態では、本発明によって、がん患者に投与することによって薬効を発揮する任意の医薬組成物が提供される。
【0115】
ここで、Mdmxに関連する疾患としては、例えば、がん、心筋症などを挙げることができる。あるいは、Mdmxに関連する障害ないし症状としては、心血管系疾患、内分泌代謝異常や老化などを挙げることができる。
【0116】
このうち、K−152およびK−153の2つはインビトロではp53とmdmxの相互作用を阻害する活性があるが、インビボでは、癌細胞に到達する前に、−S−S−結合が容易に切れて代謝的に不安定なSH基が生成すると予測され、活性はそれほど高くないと推定される。したがって、より好ましい化合物としては、−S−S−結合が容易に切断されないような化合物、或いは、−SH基をエステルとして保護したプロドラッグを選択するとよいが本発明はこれに限定されることはない。
【0117】
あるいは、本発明は、Mdmxとp53と間の相互作用の阻害剤を提供する。この阻害剤は、代表的には、ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィドおよびS−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレートからなる群より選択される化合物を含む。この阻害剤はさらに、後者の構造に対応する非硫黄含有化合物[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類をも含む。
このような阻害剤は、医薬としての用途のほか、試薬としての用途も見出すことができる。
【0118】
別の実施形態では、本発明は、がんまたは免疫疾患の処置または予防のための医薬であって、上記に列挙した具体的な化合物の任意の化合物を含む医薬を提供する。
【0119】
本発明は、p53−Mdmxのスクリーニング方法により得られた化合物又はその塩として、関連して発症する疾患に対する治療又は予防作用を発揮し得る。例えば、本発明のスクリーニング方法によれば、癌、免疫疾患等に有効な治療剤又は予防剤の候補化合物をスクリーニングすることができる。
【0120】
1つの局面では、本発明は、p53とMdmxとの相互作用を調節する物質を検出する方法を提供することができる。この方法は:(a)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)とMdmxとの融合タンパク質を、グルタチオン(Pierce社等より購入可能)をコーティングした固相上で提供する工程;(b)エピトープで標識したp53および測定対象物質を該融合タンパク質に提供する工程;および(c)遊離した該エピトープ標識したp53を、該エピトープに対する抗体を用いて検出または定量する工程を包含する。
【0121】
使用されるGSTは、どのようなものでもよいが、実施例で使用されているもの、あるいは、例えば、GEヘルスケア社から市販されているどのGST融合タンパク質発現用ベクターを用いるとよい。
【0122】
本明細書では、「エピトープ」とは、抗体結合部位をいい、ここで、使用されるエピトープは、どのようなものでもよいが、代表的にはFLAG配列が使用される。
【0123】
融合たんぱく質は、当該分野において公知の手法によって製造することができ、代表的には、実施例で使用されているもの、あるいは、例えば、シグマ−アルドリッチ社から市販されているFLAG融合タンパク質発現ベクターを用いることができる。
【0124】
本発明では、コーティングは、どのような方法でも実現でき、例えば、Pullen,S.S.,et al.(1999).J.Biol.Chem.274,14246−14254.の文献で使用されている方法、例えば、グルタチオンは構造の中心に位置するスルフヒドリル基を介してプレートウェルに固定する方法などを用いて実現することができる。
【0125】
本発明では、固相としては抗原抗体反応において用いられるものであれば、いかなるものでもよく、例えば、Pullen,S.S.,et al.(1999).J.Biol.Chem.274,14246−14254.の文献で使用されているもの、例えば、ポリスチレン表面などを用いることができる。
【0126】
1つの実施形態では、検出または定量は、抗原抗体反応を検出ないし定量しうる任意の公知の方法を使用することができるが、抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗体を用いて、該西洋ワサビペルオキシダーゼの発色基質を発色させ、該発色の吸光度を測定することによって実行される。
【0127】
(医薬)
本発明の化合物またはその製薬上許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが好ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用される。
【0128】
本発明が主に対象とする疾患である「がん」としては、固形がん、血管腫、血管内皮腫、肉腫、カポシ肉腫及び造血器腫瘍等の種々の悪性新生物が例示され、大腸がん及び肝がん等が包含され、さらにこれらがんの転移をも包含する。本発明は、上記病気を治療する医薬品を製剤化するのに特に有用になるような特定の特性を有する新規の一連の化合物の発見に成功した。特に、本化合物は、充実性腫瘍か、血液の腫瘍のような増殖性の病気の治療において、特に、結腸直腸のがん、乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がんまたは膀胱がんおよび腎臓がん、同様に、白血病およびリンパ腫のような病気において有用である。
【0129】
特に、Mdmxの発現あるいはp53−mdmx相互作用に関連するがんとしては、肺癌、神経芽細胞腫、脳腫瘍、骨肉腫、網膜芽腫などを挙げることができ、このような疾患に対する有効な治療がなかったのが現状であった。
【0130】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はその塩を有効成分として含有することに1つの特徴がある。したがって、該医薬組成物は、発症する疾患に対して、p53−mdmx相互作用を阻害することを介して作用し得るという優れた効果を発揮する。例えば、本発明の医薬組成物は特に、癌等に対して、p53−mdmx相互作用を阻害することを介して作用し得るという優れた効果を発揮する。該医薬組成物を癌の治療又は予防に用いる場合は、通常の癌療法、例えば、放射線療法、化学療法、たとえば腫瘍細胞を事前感応化するためのDNA劣化剤を施すのと同時に、又はその前でも使用できる。
【0131】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物中における化合物又はその塩の含有量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができ、治療上有効量であればよく、低分子化合物又は高分子化合物の場合、例えば、0.0001〜1000mg、好ましくは、0.001〜100mg、ポリペプチド又はその誘導体の場合、例えば、0.0001〜1000mg、好ましくは、0.001〜100mg、核酸又はその誘導体の場合、例えば、0.00001〜100mg、好ましくは、0.0001〜10mgであることが望ましい。
【0132】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はその塩を安定に保持し得る種々の助剤をさらに含有してもよい。具体的には、有効成分の送達対象となる部位に到達するまでの間に、有効成分が分解することを抑制する性質を呈する薬学的に許容されうる助剤、賦形剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等が挙げられる。
【0133】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物の投与形態は、有効成分の種類;投与対象となる個体、器官、局所部位、組織;投与対象となる個体の年齢、体重等に応じて、適宜選択される。前記投与形態としては、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、局所投与等が挙げられる。
【0134】
また、本発明の医薬組成物の投与量も、有効成分の種類;投与対象となる個体、器官、局所部位、組織;投与対象となる個体の年齢、体重等に応じて、適宜選択される。投与としては、特に限定されないが、有効成分が、低分子化合物又は高分子化合物である場合、前記有効成分の量として、例えば、0.0001〜1000mg/kg体重、好ましくは、0.001〜100mg/kg体重、ポリペプチド又はその誘導体の場合、例えば、0.0001〜1000mg/kg体重、好ましくは、0.001〜100mg/kg体重、核酸又はその誘導体の場合、例えば、0.00001〜100mg/kg体重、好ましくは、0.0001〜10mg/kg体重の1回投与量となるように、1日につき、複数回、例えば、1〜3回投与すること等が挙げられる。
【0135】
1つの実施形態において、本発明が利用しうる投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口または例えば、直腸内、口腔内、皮下、筋肉内、静脈内等の非経口をあげることができる。投与形態としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤等がある。経口投与に適当な、例えば乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビット、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。また、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性製剤からなる。例えば、注射剤の場合、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
【0136】
本発明において使用しうる局所製剤は、活性化合物を1種もしくはそれ以上の媒質、例えば鉱油、石油、多価アルコール等または局所医薬製剤に使用される他の基剤中に溶解または懸濁させて調製する。腸内投与のための製剤は、通常の担体、例えばカカオ脂、水素化脂肪、水素化脂肪カルボン酸等を用いて調製し、座剤として提供される。本発明では、非経口剤においても、経口剤で例示したグリコール類、油類、フレーバー類、防腐剤(抗酸化剤を含む)、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0137】
1つの実施形態において、本発明の化合物もしくはその製薬上許容される塩の有効用量および投与回数は、投与形態、患者の年令、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度等により異なるが、通常、投与量は、1日当たり0.01〜1000mg/人、好ましくは5〜500mg/人であり、投与回数は、1日1回または分割して投与するのが好ましい。
【0138】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、好ましくは、IC50が被検物質なしの場合の蛍光値を基準に、被検物質の抑制活性が1以下、好ましくは、0.1μM以下、より好ましくは、0.01μM以下の値を有するもの、あるいは、10nM〜10μMの範囲内、好ましくは、10μM未満、より好ましくは、1μM未満のIC50値をもつような化合物である。
【0139】
製剤化に関するさらなる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),Pergamon Press 1990年の第5巻の第25.2章を参照することができる。
【0140】
本発明はまた、本発明の医薬組成物を製造するシステム、装置、キットにも関する。そのようなシステム、装置、キットの構成要件は、当該分野において公知のものを利用することができ、当業者は適宜設計することができることが理解される。
【0141】
本発明はまた、本発明の化合物またはその溶媒和物を使用するシステム、装置、キットにも関する。そのようなシステム、装置、キットの構成要件は、当該分野において公知のものを利用することができ、当業者は適宜設計することができることが理解される。
【0142】
本発明化合物は、医薬としての有用性を備えた化合物である。ここで、医薬としての有用性としては、代謝安定性がよい点、薬物代謝酵素の誘導も少ない点、他の薬剤を代謝する薬物代謝酵素の阻害も小さい点、経口吸収性の高い化合物である点、クリアランスが小さい点、または、半減期が薬効を発現するために十分長い点などが含まれる。
【0143】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【実施例】
【0144】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、この実施例等により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0145】
使用機器、及び測定条件などは下記に記載したものを採用した。
【0146】
以下に、本発明の代表的な化合物の製造例を記載する。
【0147】
(実施例1:N,N’−(2,2’−ジスルファンジイルbis(2,1−フェニレン)bis(2−メチルプロパンアミド) K−152)
本発明の化合物は以下の手順に従って製造した。このような製造は、非特許文献5および6などを参酌して適宜改変することができる。
(1)2−アミノフェニルジスルフィド(2.02 mM)[TCI社]をCHCl(5 ml)に溶解した。
(2)この溶液にピリジン(400 μl)を加えた。
(3)イソブチリルクロリド(4.04 mM)[Wako社]をCHCl(5 ml)に溶かし、上記の溶液に滴下した。
(4)常温、常圧で1時間撹拌した。
(5)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(6)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(7)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(8)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
m.p.144.5-146.4℃
IR (KBr) cm-1: 3244.0,3186.2,2970.2,2869.9,1660.6,1577.7,1525.6,1460.0,1436.9,1380.9,1276.8,1238.4,1201.6,1157.2,1099.3,1035.7,948.9,937.3,887.2,744.5,686.6,596.0,470.6
1H NMR (CDCl3) d: 1.47 (12H,d,J= 6.8 Hz),3.43 (2H,septet,J = 7.2 Hz),7.36 (2H,dt,J = 7.2 Hz),7.43 (2H,d,J =8.0 Hz),7.85 (2H,d,J = 8.0 Hz),7.98 (2H,d,J = 8.0 Hz).
ESI-MS(positive mode) m/z: 389.14 (M + H)+
【0148】
(実施例2:N,N’−(2,2’−ジスルファンジイルbis(2,1−フェニレン)bis(2,2−ジメチルプロパンアミド) K−153)
2−アミノフェニルジスルフィド(2.02mM)[TCI社]をCHCl(5 ml)に溶解し、ピリジン(400μl)を加えた。トリメチルアセチルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)溶液を上記溶液に滴下した。ついで、実施例1と同様の操作をし、目的化合物を白色結晶として得た。
m.p. 86.0-87.0℃
IR (KBr) cm-1: 3386.8,3247.9,2869.9,2391.6,1678.0,1643.2,1575.7,1467.7,1433.0,1361.7,1305.7,1226.6,1161.1,1058.8,1035.7,931.6,916.1,771.5,750.3,626.8,455.2.
1H NMR (CDCl3) d: 1.25 (18H,s),6.94(2H,dt,J = 1.5 and 7.8 Hz),7.21 (2H,dd,J = 1.5 and 7.8 Hz),7.40 (2H,dd,J = 1.5and 7.8 Hz),8.46 (2H,dd,J = 1.5 and 8.4 Hz),8.52 (2H,br s).
ESI-MS(positive mode) m/z: 417.17 (M + H)+
【0149】
(実施例3:N,N’−(2,2’−ジスルファンジイルbis(2,1−フェニレン)ジオクタンアミド K154)
2−アミノフェニルジスルフィド(2.02 mM)[TCI社]をCHCl(5 ml)に溶解し、ピリジン(400 μl)を加えた。n−オクタノイルクロリド(4.04 mM)[関東化学株式会社]のCHCl(5 ml)溶液を上記溶液に滴下した。ついで、実施例1と同様の操作をし、目的化合物を白色結晶として得た。
m.p. 79.0-81.0℃
IR (KBr) cm-1: 3267.2,3192.0,2923.9,2848.7,2405.1,1662.5,1577.7,1523.7,1465.8,1438.8,1409.9,1284.5,1234.4,1033.8,962.4,732.9,686.6,464.8,405.0.
1H NMR (CDCl3) d: 0.89 (6H,m),1.30(16H,m),1.65 (4H,m),2.16 (4H,t,J = 7.6 Hz),6.99 (2H,dt,J = 7.6 Hz),7.35 - 7.43(4H,m),7.97 (2H,br s),8.40 (2H,brd,J = 7.6 Hz).
ESI-MS(positive mode) m/z: 501.26 (M + H)+
【0150】
(実施例4:N,N’−(2,2’−ジスルファンジイルbis(2,1−フェニレン)ジシクロペンタンカルボキサミド K−201)
2−アミノフェニルジスルフィド(2.02 mM)[TCI社]をCHCl(5 ml)に溶解し、ピリジン(400 μl)を加えた。シクロペンタンカルボニルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)溶液を上記溶液に滴下した。ついで、実施例1と同様の操作をし、目的化合物を白色結晶として得た。
m.p. 157-158℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.55-1.86(16H,m),2.47 (4H,quintet,J = 7.6 Hz),6.98 (2H,brt,J = 7.6 Hz),7.35 (2H,brd,J =8.0 Hz),7.40 (2H,brt,J = 8.0 Hz),8.06 (2H,brs),8.42 (2H,brd,J = 8.4 Hz)。
【0151】
(実施例5:N,N’−(2,2’−ジスルファンジイルbis(2,1−フェニレン)ジベンザミド K−202)
2−アミノフェニルジスルフィド(2.02 mM)[TCI社]をCHCl(5 ml)に溶解し、ピリジン(400μl)を加えた。ベンゾイルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)溶液を上記溶液に滴下した。ついで、実施例1と同様の操作をし、目的化合物を白色結晶として得た。
m.p. 144-145℃
1H NMR (CDCl3) d: 6.95 (2H,dt,J= 1.5 and 7.8 Hz),7.31 (2H,dt,J = 1.5 and 8.4 Hz),7.40 - 7.60 (8H,m),7.69 (4H,dd,J= 1.5 and 8.4 Hz),8.50 (2H,dd,J = 1.5 and 8.4 Hz),8.93 (2H,br s)。
【0152】
(実施例6:S−2−イソブチラミドフェニル 2−メチルプロパンチオレート K−178)
(1)o−アミノチオフェノール(1.87mmol)[Wako社]をCHCl(5ml)に溶解させ、ピリジン(350μl)を加えた。
(2)イソブチリルクロリド(4.04 mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)溶液を、氷冷下、上記の溶液に滴下した。
(3)常温、常圧で1〜2時間撹拌した。
(4)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(5)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(6)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(7)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
m.p. 92−94℃
IR (KBr) cm-1: 3286.5,2968.2,2871.8,1753.2,1658.7,1606.6,1250.4,1348.1,1298.0,1255.6,1180.4,1099.3,920.0,842.8,758.0,694.3.
1H NMR (CDCl3) d: 1.24 (6H,d,J= 6.9 Hz),1.33 (6H,d,J = 6.9 Hz),2.51 (1H,septet,J = 7.2 Hz),2.94 (1H,septet,J= 7.2 Hz),7.14 (1H,t,J = 7.6 Hz),7.38 (1H,d,J = 6.4 Hz),7.43 (1H,t,J = 8.4 Hz),7.76(1H,br s),8.35 (1H,d,J = 8.0 Hz)。
【0153】
(実施例7:S−2−ピバルアミドフェニル 2−メチルプロパンチオレート K−179)
(1)o−アミノチオフェノール(1.87mmol)[Wako社]をCHCl(5ml)に溶解させ,ピリジン(350μl)を加えた。
(2)トリメチルアセチルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)の溶液を、氷冷下、上記の溶液に滴下した。
(3)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(4)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(5)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(6)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
(7)この結晶をMeOH(5 ml)に溶解させ、5N KOH(1 ml)を加え、常温常圧で2時間撹拌を行った。
(8)反応液をHClで酸性(pH 5〜6)にし、CHCl(約100 mlで2回)で抽出した。
(9)飽和NaHCOで2回、水で1回、飽和食塩水で2回洗浄後、乾燥し、減圧濃縮した。ただちに、残渣にピリジン(400μl)を加え、更に、イソブチリルクロリド(2.02mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)を加えた。
(10)常温、常圧で1時間撹拌する。
(11)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(12)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(13)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(14)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
m.p. 88.5-90.6℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.28 (9H,s),1.29(6H,d),1.31 (15H,m),2.93 (1H,septet,J = 7.0 Hz),7.11 (1H,dt,J = 1.0 and 8.0 Hz),7.38(1H,dd,J = 8.0 and 1.0 Hz),7.44 (1H,dt,J = 1.0 and 8.5 Hz),8.05 (1H,brs),8.35(1H,brd,J = 9.0 Hz)。
【0154】
(実施例8:S−2−(シクロペンタンカルボキサミド)フェニル 2−メチルプロパンチオレート K−180)
(1)o−アミノチオフェノール(1.87mmol)[Wako社]をCHCl(5ml)に溶解させ,ピリジン(350μl)を加えた。
(2)シクロペンタンカルボニルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)の溶液を、氷冷下、上記の溶液に滴下した。
(3)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(4)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(5)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(6)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
(7)この結晶をMeOH(5 ml)に溶解させ、5N KOH(1 ml)を加え、常温常圧で2時間撹拌を行った。
(8)反応液をHClで酸性(ph 5〜6)にし、CHClで抽出した。
(9)飽和NaHCOで2回、水で1回、飽和食塩水で2回洗浄後、乾燥し、減圧濃縮した。ただちに、残渣にピリジン(400 μl)を加え、更に、イソブチリルクロリド(2.02mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)を加えた。
(10)常温、常圧で1時間撹拌する。
(11)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(12)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(13)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(14)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
m.p. 86-87℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.29 (6H,d,J= 6.8 Hz),1.58 - 1.93 (8H,m),2.69 (1H,quintet,J = 8.4 Hz),2.94 (1H,septet,J =7.2 Hz),7.12 (1H,t,J = 7.6 Hz),7.26 - 7.47 (2H,m),7.74 (1H,brs),8.34 (1H,d,J =8.0 Hz)。
【0155】
(実施例9:S−2−ベンザミドフェニル 2−メチルプロパンチオレート K−181)
(1)o−アミノチオフェノール(1.87mmol)[Wako社]をCHCl(5ml)に溶解させ,ピリジン(350μl)を加えた。
(2)ベンゾイルクロリド(4.04 mM)[Aldrich社]のCHCl(5 ml)の溶液を、氷冷下、上記の溶液に滴下した。
(3)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(4)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(5)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(6)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
(7)この結晶をMeOH(5 ml)に溶解させ、5N KOH(1 ml)を加え、常温常圧で2時間撹拌を行った。
(8)反応液をHClで酸性(ph 5〜6)にし、CHClで抽出した。
(9)飽和NaHCOで2回、水で1回、飽和食塩水で2回洗浄後、乾燥し、減圧濃縮した。ただちに、残渣にピリジン(400 μl)を加え、更に、イソブチリルクロリド(2.02mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)を加えた。
(10)常温、常圧で1時間撹拌する。
(11)反応液をCHClで希釈し、1%HCl、水、飽和NaHCO、飽和食塩水、で順次洗浄。
(12)有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮。
(13)析出した結晶を酢酸エチルに溶解させ、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製した。
(14)精製物をエタノールより再結晶化し、白色結晶を得た。
m.p. 65-66℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.27 (6H,d,J= 6.8 Hz),2.95 (1H,septet,J = 6.8 Hz),7.42 - 7.57 (7H,m),7.85 (1H,d,J = 8.0 Hz),8.48(1H,d,J = 8.8 Hz),8.51 (1H、 brs)。
【0156】
(実施例10:2−イソブチラミドフェニル イソブチレート K−205)
2−アミノフェノール(1.87mmol)[TCI社]をCHCl(5ml)に溶解させ、ピリジン(350μl)を加えた。これに、イソブチリルクロリド(4.04 mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)を加え、氷冷下、上記の溶液に滴下した。次いで、実施例1の場合と同様に処理し、白色結晶を得た。
m.p. 88.5-90.6℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.25 (3H,d,J= 7.0 Hz),1.37 (3H,J = 6.0 Hz),2.51 (1H,J = 7.0 Hz),2.88 (1H,J = 7.0 Hz),7.11(1H,d,J = 3.7 Hz),7.22 (1H,m),7.26 (1H,brs),8.19 (1H,d,J = 7.8 Hz).
ESI-MS(positive mode) m/z: 250.1443 (M + H)+
【0157】
(実施例11:N−(2−ヒドロキシフェニル)イソブチラミド K−204)
K−205を、実施例7の場合と同様に処理し、白色結晶を得た。
m.p.107.4-109.2℃
1H NMR (CDCl3) d: 1.30 (6H,d,J= 6.9 Hz),2.65 (1H,septet,J = 7.0 Hz),6.90 (1H,brt,J = 7.0 Hz),7.01 (1H,brd,J =7.0 Hz),7.11 (1H,brt,J = 7.0 Hz),7.54 (1H,br s),8.89 (1H,br s).
ESI-MS(positive mode) m/z: 180.1025 (M + H)+
【0158】
(実施例12:3−イソブチリルベンゾ[d]チアゾール−2(3H)−オン K−209)
2−ヒドロキシベンゾチアゾール(2.02 mM)[Wako社]をCHCl(5 ml)に溶解し、ピリジン(400 μl)を加えた。更に、イソブチリルクロリド(3.03 mM)[Wako社]のCHCl(5 ml)を加えた。以降、実施例1の場合と同様に処理をし、油成物を得た。油状物
1H NMR (CDCl3) d: 1.28 (6H,d,J= 6.8 Hz),3.89 (6H,d,J = 6.8 Hz),7.15 - 7.40 (3H,m),8.10 (1H,d,J = 8.0 Hz)。
【0159】
(実施例13:薬理評価−p53−Mdmx相互作用阻害効果をモニタリングする改良型ELISA法)
p53とMdmxとの相互作用を阻害する低分子化合物を探索するために、以下の実験手順でその定量法(改良型ELISA法)を確立した。代表図を図1に示す。
【0160】
まず、100μg/mlアンピシリン抗生物質(シグマ−アルドリッチ社)を含むLB培地(メルク社)に大腸菌を入れ、600nmの吸光度が1となったところで、イソプロピルβーD−l−チオガラクトピラノシド(IPTG)が0.1mMとなるように添加し、30℃、4時間培養後、大腸菌を4℃、6000×g、15分の遠心で回収した。大腸菌をPBSに懸濁させた後、超音波破砕し、大腸菌の溶解物を得た。その溶解物を4℃、20,000×g、15分の遠心を行い、その上清を取った。その上清をグルタチオンセファロース(GEヘルスケア社)と混合し、4℃、1時間反応、PBSで4回洗浄した後、10mM還元型グルタチオン(シグマ−アルドリッチ社)を含む50mM Tris緩衝食塩水(100mM NaCl)で目的のタンパク質を溶出した。このような大腸菌大量発現系を用いて、Mdmx(NM_002393)をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(GEヘルスケア社のPGEX6P1ベクターを使用)との融合タンパク質として調製し、グルタチオンセファロースで精製した。そして、0.05%Tween20を含むリン酸緩衝液で透析した後、グルタチンコートしたプレート(ピアス社)に固相化した。そして、大腸菌大量発現系を用いて、FLAGエピトープ標識したp53を調製し、固相化したGST−Mdmxと反応させた。反応後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識した抗FLAG抗体および発色基質を用いて、p53−Mdmxの結合量を定量したところ、加えたp53の容量に依存して増加することがわかった。この系を用いて、p53−Mdmxタンパク質間相互作用を阻害する低分子化合物のスクリーニングを行った。
【0161】
(実施例14:Mdmx−p53相互作用を阻害する低分子化合物の同定)
A.グルタチオンコートしたプレート(PIERCE社)に100μlの15μg/ml GST−Mdmx溶液を添加し、室温1時間固相化した。そのプレートを良く洗浄した後、100μlの1μg/mlFLAGタグしたp53および各々の濃度の実施例1−12で製造した低分子化合物を添加した。1時間反応後、良く洗浄し、HRP標識したFLAG抗体(10000倍希釈:Sigma社)を室温1時間反応させた。その後、洗浄した後、発色キット(住友ベークライト社)を用いて呈色反応を行った。
【0162】
B.ELISAプレートリーダーを用いて、490nmの吸光度を測定し、低分子化合物の濃度に対するp53−Mdmx相互作用阻害活性を示した。
【0163】
結果を図2(A,B)に示す、K−154、K−178、K−179、K−180、K−181の阻害効果のIC50値はそれぞれ、1.07、0.96、0.76、0.88、0.71mMであった。
【0164】
(実施例15:ウエスタンブロット法による、低分子化合物K−178によるp53の安定化および活性化の評価)
MCF7細胞(ヒト乳がん細胞)(大日本住友製薬(Dainippon Sumitomo Pharma,Osaka,Japan)を代理店とし、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(ATCC))より購入)を2x10細胞となるように6穴プレートにまき、一晩培養した。その後、K−178を添加し、24時間後にその細胞を回収した。その培養には、10%ウシ胎仔血清(バイオウエスト社)、ストレプトマイシン−ペニシリン(ナカライテスク社)を含むRPMI−1640培地(シグマ−アルドリッチ社)を用い、COインキュベーター(ヒラサワ社、テーハー式、CPD−300A)中37℃で行った。
【0165】
(結果)
結果は図3に示す。全細胞抽出液中のクラスリン重鎖(ローディングコントロール)、Mdm2、p53およびp21の発現をウエスタンブロット法で確認した。K−178を添加するとp53の安定化が検出され、その標的遺伝子であるMdm2やp21の発現誘導が認められた。
【0166】
(実施例16:低分子化合物K−178による、MCF7ヒト乳癌細胞のp53依存性増殖抑制効果)
上記の培養条件でMCF7細胞(ATCCより購入)を1x10細胞となるように6穴プレートにまき、一晩培養後、Lipofectamine2000(Invitrogen社)を用いて、図4中に示したsiRNA(100 pmol、Sigma社)を細胞へ導入した。48時間後、1x10細胞となるように24穴プレートにまき直し、一晩培養後、各々の濃度のK−178を添加した。72時間後、クリスタルバイオレット法を用いて、細胞生存率を算出した。クリスタルバイオレット法には、1穴当たり300μlのクリスタルバイオレット溶液(0.75% クリスタルバイオレット、0.25% 塩化ナトリウム(NaCl)、1.75% ホルムアルデヒド、50% エタノール)を使用し、室温15分反応、大量の水道水で洗浄した後、着色した細胞(ディッシュに接着している生存細胞のみが着色される)をプレートリーダーで600nmの吸光度を測定し、細胞生存率の算出に使用した。コントロールsiRNAおよびp53に対するsiRNA(それぞれ、si−cont.およびsi−p53とも表記する。)で処理した細胞におけるK−178による細胞増殖抑制活性のCC50値はそれぞれ3.4、12.6μMであった。また、siRNAの効果を確認するために、同処置を施した細胞から抽出液を調製し、その全細胞抽出液中のクラスリン重鎖(ローディングコントロール)およびp53の発現をウエスタンブロット法で確認した。
【0167】
(実施例17:低分子化合物K−178による様々ながん細胞の増殖抑制効果)
以下の細胞は、ATCCおよびJapanese Collection of Research Bioresources(JCRB)細胞バンクから入手した:TIG−7、ヒト正常繊維芽細胞(JCRB細胞バンクより入手);MCF7細胞(ATCCより入手)、ヒト乳がん細胞;A427細胞(ATCCより入手)、ヒト肺がん細胞;HT1080細胞(ATCCより入手)、ヒト繊維芽腫;U2OS細胞(ATCCより入手)、ヒト骨肉腫;A431細胞(ATCCより入手)、ヒト乳がん細胞;MDA−MB−468細胞(ATCCより入手)、ヒト乳がん細胞;PC3細胞(JCRB細胞バンクより入手)、ヒト肺がん細胞。
【0168】
図中に示す様々な細胞(TIG−7、ヒト正常繊維芽細胞;MCF7細胞、ヒト乳がん細胞;A427細胞、ヒト肺がん細胞;HT1080細胞、ヒト繊維芽腫;U2OS細胞、ヒト骨肉腫;A431細胞、ヒト乳がん細胞;MDA−MB−468細胞、ヒト乳がん細胞;PC3細胞、ヒト肺がん細胞)(これらの細胞のうち、Mdmxに関連するものとしては、MCF7細胞、A427細胞およびHT1080細胞であり、代表的な疾患はがんである)を2×10細胞となるように24穴プレート(TIG−7細胞、HT1080細胞、U2OS細胞およびMDA−MB−468細胞に関しては、10%ウシ胎仔血清(バイオウエスト社)、ストレプトマイシン-ペニシリン(ナカライテスク社)を含むダルベッコ改変イーグル培地(シグマ-アルドリッチ社)、そしてMCF7細胞、A427細胞、A431細胞およびPC3細胞に関しては、10%ウシ胎仔血清(バイオウエスト社)、ストレプトマイシン−ペニシリン(ナカライテスク社)を含むRPMI−1640培地(シグマ−アルドリッチ社)を用い、CO2インキュベーター中37℃で行った。)にまき、一晩培養後、各々の濃度のK−178を添加した。48時間後、上記クリスタルバイオレット法を用いて、細胞生存率を算出した。
【0169】
変異型p53を持つA431細胞、MDA−MB−468細胞およびPC3細胞における薬剤のCC50値は30μM以上であるのに対し、野生型p53を持つMCF7細胞、A427細胞およびHT1080細胞におけるCC50値はそれぞれ、18.2μM、18.1μM、14.6μMであり、野生型p53を持つがん細胞は、変異型p53を持つがん細胞に比べ、K−178による細胞増殖抑制効果が高い傾向にあった。
【0170】
また、実施例16のK−178によるMCF7細胞における細胞増殖抑制活性のCC50値の違いは細胞をsiRNAで処理していることが原因と推測される。
【0171】
Mdmxの発現が高く野生型p53を持つMCF7細胞やHT1080細胞と変異型p53を持つ細胞を用いて、ここで得られた知見がin vivoにおいても再現されるか、K−178およびその類縁体がMdmxを高発現したがん細胞に対し、抗腫瘍効果を示すのか調べる予定である。
【0172】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0173】
これまで、Mdmx高発現型がん細胞に対して有効な治療剤がなく、副作用の強い既存の抗がん剤を使用せざるを得なかった。しかし、このたび、Mdmx−p53相互作用特異的に阻害する低分子化合物を見出したので、有効な治療効果を示す抗がん剤を開発できる見通しを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxを発現する細胞の増殖を抑制するための組成物。
【請求項2】
前記化合物は、
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

および、
【化12】

からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞はp53を発現する細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxの過剰発現に関連する疾患を処置するための組成物。
【請求項5】
前記疾患はがんである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記疾患は乳がんである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記疾患はp53発現とも関連する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は、
【化13】


【化14】


【化15】


【化16】


【化17】


【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】

および、
【化24】

からなる群より選択される、請求項4〜7に記載の組成物。
【請求項9】
ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド類、S−[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカンチオレート類、[2−(アシルアミノ)フェニル]アルカノエート類、および2−(アシルアミノ)フェノール類からなる群より選択される化合物を含む、Mdmxとp53と間の相互作用の阻害剤。
【請求項10】
前記化合物は、
【化25】


【化26】


【化27】


【化28】


【化29】


【化30】


【化31】


【化32】


【化33】


【化34】


【化35】

および、
【化36】

からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
p53とMdmxとの相互作用を調節する物質を検出する方法であって、該方法は:
(a)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)とMdmxとの融合タンパク質を、グルタチオンをコーティングした固相上で提供する工程;
(b)エピトープで標識したp53および測定対象物質を該融合タンパク質に提供する工程;および
(c)遊離した該エピトープ標識したp53を、該エピトープに対する抗体を用いて検出または定量する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記エピトープはFLAG配列である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出または定量は、前記抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗体を用いて、該西洋ワサビペルオキシダーゼの発色基質を発色させ、該発色の吸光度を測定することによって実行される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178704(P2011−178704A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43548(P2010−43548)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】