説明

pHトリガ標的制御放出デリバリーシステム

本発明は、新しいpHトリガ標的制御デリバリーシステムに関する。本発明の制御放出システムは、pH感受性マイクロス粒子に封入された、製薬活性成分を含む固体疎水性ナノ粒子からなる実質的に流動性の粉末である。本発明はまた、組成物を調製する工程およびそれを使用する方法に関する。制御放出システムは、胃および小腸を含む、胃腸管の特定の領域を標的として製薬活性成分を制御放出するために用いられる。本発明はさらに、本発明の制御放出システムを含む製薬製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、pH感受性マイクロ粒子に封入された固体疎水性ナノ粒子を含む、製薬活性成分を胃および小腸を含む胃腸(G−I)管の特定の領域に、生体利用効率を高め有効レベルの薬剤をその領域に長期間にわたって放出するために部位特異的な標的制御放出をするための、制御されたドラッグデリバリーシステムに関する。
【0002】
2.関連技術の説明
標的ドラッグデリバリーは、製薬工業の目標である。標的ドラッグデリバリーでは、その治療効果を作用部位または器官に局在化することによって、薬効を最大にすることが目的である。もし成功すれば、標的化は薬剤の毒性の大幅な減少、薬剤量の減少、および治療効果の増大をもたらす。
【0003】
経口経路は、胃腸管の特定の領域、おもに胃および小腸から体循環に吸収される薬剤を投与するためだけでなく、胃、小腸および大腸を含む胃腸管の全領域から体循環に吸収される薬剤を投与するために用いられうる。経口投与された薬剤は、求められる標的に到達するために、いくつかの障害を越えなければならない。胃腸液中でみられるpHおよび酵素活性は、薬剤を不活性化させ、または薬剤の溶解性を低下させうる。さらに、腸内吸収の後、経口投与された薬剤はしばしば、肝臓によって「ファーストパス」除去を受け、胆汁中に排出されるか薬理不活性な代謝物に変換される。経口投与された薬剤の生体利用効率の低下は、このファーストパス効果の結果である。さらに、経口投与された薬剤の持続時間は胃腸の保持時間で制限され、薬効は、薬剤がその標的に、所望の時間治療レベルを維持するために十分な量で到達する能力に依存する。
【0004】
近年、胃および小腸を含む胃腸管の特定の領域を標的とするデリバリーシステムの構築に向けた、おもにコーティング技術による、とくにpH感受性ポリマーを用いた、広範囲な研究が進められている。これらのコーティングは、小腸の下端または結腸で有効薬剤が放出されるように、放出前のより長いタイムラグを達成するために修正されてきた。しかしながら、これらのコーティングは従来の腸溶性のコーティングと同様の機能であることが観察された。
【0005】
典型的には、pH感受性材料は、胃を通過する間有効薬剤を保護するために、または刺激性の有効薬剤を封入するためにコーティングとして用いられ、小腸に入った後すみやかに薬剤を放出する。結腸内のデリバリーを達成するpH感受性コーティングは、米国特許第4910021号明細書および国際公開第90/01329号パンフレットのような特許に記載されている。米国特許第4910021号明細書はカプセルをコートするためのpH感受性材料の使用を記載している。国際公開第90/01329号パンフレットは、酸を含むビーズのpH感受性コーティングを記載しており、ビーズ中心の酸がpH感受性コーティングの溶解を延ばす。
【0006】
米国特許第6068859号明細書は、副作用プロファイルが改善されたアジスロマイシンの制御放出剤形;剤形を調製する工程;およびアジスロマイシンをこのような制御放出剤形でこのような治療が必要なヒトの患者を含む哺乳類に投与することを含む、微生物感染を治療する方法を開示する。前記発明による最初の遅延放出の実施形態は、アジスロマイシンを含む錠剤コア、錠剤分解物質、滑沢剤、および1以上の製薬担体を含む、コアが胃のpHでは実質的に不溶性および非浸透性であり、小腸のpHではより可溶性および浸透性である、好ましくはポリマーの材料でコートされている、pH依存性コート錠剤である。好ましくは前記コーティングポリマーはpH<5.0で実質的に不溶性および非浸透性でありpH>5.0で水溶性である。
【0007】
米国特許第5175003号明細書は、pH感受性腸溶性材料および腸溶解性材料に浸透性を付与しうる膜形成可塑剤からなる、ドラッグデリバリーシステムに使用するための、二元メカニズムのポリマー混合物を開示する;薬剤が浸透した、場合によっては製薬上中性の核を覆っている、二元メカニズムのポリマー混合物からなるマトリクスペレット;同じまたは異なった組成物を包む二元メカニズムのポリマー混合物でコートされたマトリクスペレットを含む膜コートペレット;およびマトリクスペレットを含む製薬剤形。マトリクスペレットは、酸性pHでの拡散、および通常pHの値が約5.0またはそれ以上での分解によって、酸溶解性薬剤を放出する。
【0008】
米国特許第4503030号明細書は、胃腸管の特定のpH領域に薬剤を分注する浸透装置を開示する。特に、前記発明は、薬剤を含むコンパートメントを囲む半浸透性pH感受性組成物で作られた壁と、壁を通ってコンパートメントと装置の外部を接続する通路を含む浸透装置に関する。前記装置は3.5以下のpHを有する胃腸管の領域で制御された速度で薬物を運搬し、3.5以上のpHを有する胃腸管の領域で前記装置は自己破壊してそのすべての薬物を放出し、それによって薬剤吸収の総利用効率を上げる。
【0009】
米国特許第5609590号明細書および米国特許第5358502号明細書は、有効薬剤を水性環境に分注するための浸透破裂装置を開示する。前記装置は有効薬剤および少なくとも部分的に半透膜に囲まれた浸透剤を含む。あるいは前記有効薬剤が浸透剤としても機能してもよい。半透膜は、水を透過させ、有効薬剤および浸透剤は実質的に透過させない。トリガ中心は半透膜に取り付けられる(例えばカプセルの半分ずつを接合する)。トリガ中心はpH3〜9で活性化され、ときどき、しかし突発的に、有効薬剤の運搬を開始する。これらの装置は、浸透破裂によって、有効薬剤コアをボーラスとしてpHトリガ放出することを可能にする。
【0010】
米国特許第5316774号明細書は、各微粒子が内部細孔ネットワークを形成するポリマー微粒子マトリクスを含む活性基質を制御放出するための組成物を開示する。活性基質は、活性基質の内部細孔ネットワークからの放出速度を調節するために選択された物理的および化学的性質をもつブロッキング剤とともに、細孔ネットワークにトラップされる。典型的な一実施形態においては、腸溶性材料をブロッキング剤に用いて、薬剤を選択的に腸に運搬することができる。腸溶性材料は胃では元のままであるが、腸のpH条件では分解する。他の典型的な実施形態においては、持続的放出の設計に、活性基質が放出される環境で予想される条件のもとで安定に保たれるブロッキング剤を用いる。pH感受性材料のみを用いて部位特異的デリバリーを達成することは、有効薬剤が放出部位または望ましい運搬時間の前に漏れるために困難であり、さらに高pHにさらされた後で活性成分放出前の長いタイムラグを達成することは難しい(pH感受性材料の速い溶解または分解のため)。
【0011】
さらに、pH感受性材料および浸透デリバリーシステムを組み合わせたハイブリッドシステムも開示されている。これらの装置では、有効成分の持続的な放出を遅延して開始させることができる。一装置では、pH感受性マトリクスまたはコーティングが溶解して、有効薬剤の持続的放出を提供する浸透性装置を放出する。米国特許第4578075号明細書、米国特許第4681583号明細書、および米国特許第4851231号明細書を参照。他の装置は、不溶性およびpH感受性材料のポリマーブレンドで作られた半浸透性コーティングからなる。pHの増加にしたがってコーティングの浸透性が増加し、有効薬剤の放出速度が増加する。米国特許第4096238号明細書、米国特許第4503030号明細書、米国特許第4522625号明細書、および米国特許第4587117号明細書を参照。
【0012】
米国特許第5484610号明細書は、pHおよび温度感受性であり、生体活性剤を保護された形で胃液を通過させるための有用な担体であるターポリマーを開示する。前記ターポリマーは、腸管の高い生理的pHで膨張し、その結果生体活性剤を腸に放出する。前記ターポリマーは線状であり、35〜99重量%までの、ターポリマーに体温以下のLCST(低臨界溶液温度)特性を与える温度感受性成分、1〜30重量%の、pKaが2〜8の範囲の、カルボキシル酸基のイオン化または脱イオン化によって、低pHでの生体活性剤の損失を防ぎ、約7.4の生理的pHで生体活性剤を放出させるpH感受性成分、およびLCSTを体温以下の温度で安定化しターポリマーにおよぼす生体活性剤の影響を補償する疎水性成分から形成される。前記ターポリマーは、安全な生体活性剤の搭載、簡単な剤形作成方法を提供し、ターポリマーは胃の酸性環境での保護担体として機能し、さらに生体活性剤が腸管で放出されるまで生体活性剤を消化酵素から保護する。
【0013】
米国特許第6103865号明細書は、pHに依存して膨張性および溶解性のような物理的性質が変化し、ドラッグデリバリーシステム、生体材料センサーなど、およびそれらの作成方法に適用できる、スルホンアミド基を含むpH感受性ポリマーを開示する。pH感受性ポリマーは、異なるpKaのスルホンアミド基を、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、N−イソプロピルアクリルアミドなどのようなポリマーの親水基とのカップリングによって、または他の重合可能なモノマーとの共重合によって、ポリマーの親水基に導入することによって形成される。これらのpH感受性ポリマーは、線状ポリマー、グラフトコポリマー、ハイドロゲルまたは相互貫入ネットワークポリマーの構造をとりうる。
【0014】
米国特許第5656292号明細書は、活性成分、とくに薬剤の、pH依存性またはpH調節制御放出のための組成物を開示する。前記組成物は活性成分およびアセテートおよびジカルボキシレート残基で置換されたデンプン分子の圧縮可能な混合物からなる。好ましいジカルボキシレート酸はコハク酸である。アセテート残基の平均置換度は少なくとも1であり、ジカルボキシレート残基では0.2〜1.2である。デンプン分子は、同じデンプン分子の骨格についた、または別のデンプン分子の骨格についた、アセテートおよびカルボキシレート残基をもつことができる。当該発明は、前記デンプンアセテートジカルボキシレートを、エステル交換またはデンプンアセテートおよびデンプンジカルボキシレートそれぞれの混合によって調製する方法を開示する。
【0015】
米国特許第5554147号明細書、米国特許第5788687号明細書、および米国特許第6306422号明細書は、生体活性剤が疎水性、pH感受性ポリマーマトリクスから放出される、生体活性剤の制御放出方法を開示する。前記ポリマーマトリクスは、pHが8.5に達する環境では膨張して活性剤を放出する。前記制御放出システムに用いるための疎水性および弱酸性コモノマーのポリマーが開示される。さらに、前記制御放出システムが使われうる特定の実施形態も開示される。pH感受性ポリマーは、尿管カテーテル法に用いられるラテックスカテーテルにコートされる。pH感受性ポリマーにコートされた尿管カテーテルは、マトリクス中に抗生物質またはウレアーゼ阻害剤をトラップし、高pHの尿にさらされたとき活性剤を放出する。
【0016】
Mathiowitzらは米国特許第6365187号明細書を開示する。薬剤または胃腸管の疾病の治療、もしくは診断の目的で使われる生体活性基質を含むマイクロカプセルの形態の、またはそのコーティングとしての生体接着ポリマーが記載される。ポリマー性マイクロ粒子はすべて、少なくとも11mN/cm(110N/m)の生体接着力をもつ。生体接着マイクロ粒子を製作する技術が、インビトロでマイクロ粒子と胃腸管の選択されたセグメントとの間の生体接着力を測定する方法とともにさらに記載される。この定量的な方法は、化学的性質、表面モルフォロジーおよび薬剤を搭載したマイクロ粒子の大きさを一方の軸に、生体接着力を他方の軸にとった、双方の相関関係を確立する方法を与え、比較的大きな天然および合成ポリマーの群から最も有望な材料を理論的な考察からスクリーニングできるようにし、生体接着マイクロ粒子の作成に用いられるであろう。
【0017】
本発明は、薬剤を胃および小腸を含む胃腸管の特定の領域に、生体利用効率を高め、これらの領域に吸収されうる薬剤の量を長期間にわたって最大にする部位特異的標的制御デリバリーを行うための、経口ドラッグデリバリーシステムの継続的な必要性に対する。出願人が認識している従来技術は、pHによって活性化され、デポジットを増大させ胃および小腸を含む胃腸管の特定の領域の活性成分の長期間にわたる放出を長期化させる、標的制御デリバリーシステムについて記載していない。
【0018】
アジスロマイシンは、9a−アザ−9a−メチル−9−デオキソ−9a−ホモエリスロマイシンAのU.S.A.N(一般名)で、エリスロマイシンAから誘導される広域抗菌化合物であり、微生物感染の治療に使われている。アジスロマイシンは、米国特許第4474768号明細書およびKobrehel et al、米国特許第4517359号明細書に記載され、図1に示される。これらの特許は、抗菌特性があり、その結果抗生物質として有用なアジスロマイシンおよびその特定の誘導体を開示する。封入された剤形のアジスロマイシンは、米国特許第6068859号明細書に開示される。
【0019】
アジスロマイシンの経口投与は、患者によっては、筋痙攣、下痢、吐き気、および嘔吐のような、胃腸(GI)の副作用を起こしうることが広く知られている。胃腸の副作用の発生率は、投与量が少ないときよりも投与量が多いときのほうが高い。
【0020】
経口でアジスロマイシンを従来の非制御型の放出カプセルによって投与すると、十二指腸まで相対的に広い範囲に薬剤がさらされる結果になる。アジスロマイシンを、胃での大幅な薬剤の溶解を防ぐ従来の腸溶性剤形で投与した場合も、アジスロマイシン投与量の大部分が十二指腸にさらされうる。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明は、製薬活性成分を胃および小腸を含む胃腸管の特定の領域に、それらの生体利用効率を高め、これらの領域に有効レベルの製薬活性成分を長期間にわたって放出する部位特異的標的制御デリバリーを行うための、改善されたキャリアシステムに関する。特に、本発明は、pH感受性マイクロ粒子に封入された固体疎水性ナノ粒子を含む制御放出システムに関する。前記ナノ粒子の表面特性は、ナノ粒子の特定の部位、特に細胞表面に現れる残基への親和性を高めるために、または細胞表面タンパク質もしくは受容体への親和性を高めるために修飾されうる。製薬活性成分は、前記疎水性ナノ粒子に、前記pH感受性マイクロ粒子に、またはナノおよびマイクロ粒子の両方に組み込まれうる。
【0022】
活性成分およびナノ粒子は、周辺環境のpHが所望の値に達したときマイクロ粒子から放出される。この制御放出の方法は、活性成分を含むナノ粒子が、特定の部位に運搬され、活性剤の発生が必要な場所だけに運搬されることを確実にする。pHの変化によって、マイクロ粒子のpH感受性マトリクス材料が溶解または膨張する。マトリクスの溶解または膨張は、マイクロ粒子の構造を分裂させ、ナノ粒子および活性成分の放出を促進する。ナノ粒子の標的表面へのデポジションは、標的表面でのナノ粒子の同調を確実にするためにサイズを最適化することによって、および細胞表面に現れる特定の残基へのナノ粒子の親和性を高めるために、または細胞表面タンパク質もしくは受容体への親和性を高めてナノ粒子と標的表面の間の相互作用を最大にするために、ナノ粒子の表面を修飾することによって改善される。
【0023】
さまざまな化学基および生体接着材料が、ナノ粒子と標的表面の相互作用を改善するために標的表面に応じてナノ粒子構造に組み込まれうる。カチオン性界面活性剤は正に荷電したナノ粒子を生成し;アニオン性界面活性剤は負に荷電したナノ粒子を生成し;非イオン性界面活性剤は中性のナノ粒子を生成し;そして両性イオン性界面活性剤は可変の電荷をもつナノ粒子を生成する。
【0024】
一実施形態においては、本発明のナノ粒子は生体接着性である。生体接着ナノ粒子は、生体接着材料をナノ粒子の固体疎水性マトリクスに組み込むことによって、生体接着材料をpH感受性マイクロ粒子マトリクスに組み込むことによって、またはマイクロ粒子マトリクス中の生体接着材料と併用して生体接着材料をナノ粒子マトリクスに用いることによって形成される。
【0025】
本発明のナノ粒子は、組織の接着を最小にする、またはナノ粒子が高度な選択性で特定の細胞もしくは組織を標的にする配位子も含んでもよい。本発明の制御デリバリーシステムは、製薬活性成分の経口デリバリーに、また画像診断を向上させるために有用である。
【0026】
本発明のキャリアシステムは、pH感受性マイクロ粒子に包まれたさまざまな活性成分を含む固体疎水性ナノ粒子から形成される流動性の粉末であり;
(i)保存の間、または標的部位に届いて必要とされるまでの、製薬活性成分の保護;
(ii)近接環境系のpH変化に対応した、第1製薬活性成分のマイクロ粒子からの、および第2製薬活性成分のナノ粒子からの、pHトリガ放出;
(iii)部位特異的標的デリバリー、および製薬活性成分を含むナノ粒子の、標的表面へのデポジションの向上;
(iv)ナノ粒子に封入された製薬活性成分の生体利用効率の向上;および、
(v)ナノ粒子に封入された製薬活性成分の、長期間にわたる持続的な放出、
の利点がある。
【0027】
本発明は、また;
(i)製薬活性成分の固体疎水性ナノ粒子へ組み込み;
(ii)1以上の製薬活性剤、ナノ粒子、およびpH感受性材料を含む水性混合物を形成し;そして、
(iii)前記混合物を噴霧乾燥させて粉末組成物を形成する、
の段階を含む、活性成分を含む本発明の多成分制御放出システムの製造方法を提供する。
【0028】
本発明は、さらに;
(i)疎水性材料を前記材料の融点を超える温度まで加熱して溶融体を形成し;
(ii)第1製薬活性剤を溶融体に溶解または分散させ;
(iii)第2製薬活性剤、pH感受性材料、および標的化材料を水相に溶解または分散させ;
(iv)組成物を前記疎水性材料の融点超に加熱し;
(v)この高温溶融体を前記水相と混合し分散液を形成し;
(vi)約1ミクロン〜約2ミクロンの粒子サイズを有する均質な微細分散液が得られるまで、前記融解温度超の温度で前記分散液を高い剪断力で均質化し、:
(vii)前記分散液を室温まで冷却し;そして、
(viii)乳化した混合懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成する、
の段階を含む、製薬活性成分を含む本発明の多成分制御放出システムの製造工程を提供する。
【0029】
本発明はさらに、本発明の多成分制御放出システムを含む製薬製品を提供する。
【0030】
詳細な説明
本発明は、製薬製品に組み込むことができる、製薬活性成分の放出速度を制御する方法を提供する。本発明は、部位特異的標的デリバリー、生体利用効率の向上、および長期にわたる製薬活性成分の持続的な放出を提供する。本発明のデリバリーシステムは、図2に示されるような、pH感受性マイクロ粒子に封入された、製薬活性成分を含む固体疎水性ナノ粒子から形成される流動性の粉末を含む。組成物は、近接環境系のpH変化によって活性化され、標的デリバリー、生体利用効率の向上、長期にわたる製薬活性成分の持続的な放出を提供する。ナノ粒子の表面特性は、ナノ粒子の細胞表面に現れる特定の残基への親和性、またはナノ粒子の細胞表面タンパク質もしくは受容体への親和性を高めるために修飾することができる。製薬活性成分は、疎水性ナノ粒子に、pH感受性マイクロ粒子に、またはナノおよびマイクロ粒子の両方に組み込まれうる。第1製薬活性成分をナノ粒子に組み込んでもよく、第1製薬活性成分と異なる第2製薬活性成分をマイクロ粒子に組み込んでもよい。
【0031】
「粒子」の用語は、固体の、実質的に球体の微粒子を説明することを意図するものである。本発明の教示に従って、他の微粒子形状が形成されてもよいことは理解されるであろう。
【0032】
「pHトリガ放出」の用語は、放出速度が周辺媒体もしくは環境系のpHに依存するまたは調節されることを意味することを意図するものである。
【0033】
活性成分およびナノ粒子は、周辺環境のpHが所望の値に達したとき、マイクロ粒子から放出される。本発明の制御放出の方法は、活性成分を含むナノ粒子が、G−I管の特定の部位に運搬され、活性剤の発生が必要な場所に運搬されることを確実にする。pHの変化によって、マイクロ粒子のpH感受性マトリクス材料が溶解または膨張する。マトリクスの溶解または膨張は、マイクロ粒子の構造を分裂させ、マイクロ粒子に含まれるナノ粒子および活性成分の放出を促進する。ナノ粒子の、標的表面へのデポジションは、標的表面でのナノ粒子の同調を確実にするためにサイズを最適化することによって、および細胞表面に現れる特定の残基へのナノ粒子の親和性を高めるために、または細胞表面タンパク質もしくは受容体への親和性を高めてナノ粒子と標的表面の間の相互作用を最大にするために表面を修飾することによって改善される。
【0034】
ナノ粒子と標的表面との間の相互作用に対しては、さまざまな化学基および生体接着材料を、標的表面との相互作用を改善するために、ナノ粒子構造に組み込むことができる。カチオン性界面活性剤は正に荷電したナノ粒子を生成し;アニオン性界面活性剤は負に荷電したナノ粒子を生成し;非イオン性界面活性剤は中性のナノ粒子を生成し;そして両性イオン性界面活性剤は可変の電荷をもつナノ粒子を生成する。
【0035】
一実施形態においては、本発明のナノ粒子は生体接着性である。生体接着ナノ粒子は、生体接着材料をナノ粒子の固体疎水性マトリクスに組み込むことによって、生体接着材料をpH感受性マイクロ粒子マトリクスに組み込むことによって、またはマイクロ粒子マトリクス中の生体接着材料と併用して生体接着材料をナノ粒子マトリクスに用いることによって形成される。
【0036】
本発明の多成分制御放出システムは、約1重量%〜約50重量%の疎水性マトリクス、約1重量%〜約50重量%のpH感受性マトリクス、約0重量%〜約10重量%の標的化材料、約0%〜約20重量%の界面活性剤、および約0.01重量%〜約50重量%の活性成分を含みうる。疎水性マトリクスは、生体利用効率を向上させ、ナノ粒子を通して製薬活性成分が拡散する速度を持続させ、長期間にわたって標的部位に製薬活性成分を放出することを可能にする。前記マイクロ粒子は、約20ミクロン〜約100ミクロンの範囲の平均サイズを有する。前記ナノ粒子は、約0.01ミクロン〜約5ミクロンの範囲の平均サイズを有し、約30℃〜約90℃の範囲の融点を有する。任意の個々の粒子の線形寸法は、粒子の表面の2点を結ぶ最長の直線の長さを表す。
【0037】
さらなる成分を前記キャリアシステムに加えるか、前記ナノ粒子、前記マイクロ粒子、もしくはナノおよびマイクロ粒子両方のマトリクスに組み込むことができる。本発明の制御放出システムは、そのまま、特に制限されないが、抗酸化剤;フリーラジカルスカベンジャー;抗菌薬;抗微生物薬;アレルギー阻害剤;抗加齢薬;防腐剤;鎮痛剤;抗脱毛薬;毛髪成長促進薬;毛髪成長阻害薬;角質溶解薬;抗炎症薬;ヒーリング薬;抗暴言剤;炎症阻害剤;血管収縮剤;血管拡張剤;創傷治癒促進剤;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質;抗真菌剤;脱毛薬;反対刺激剤;ビタミン、アミノ酸およびこれらの誘導体;ハーブエキス;フラボイド;キレート試薬;細胞ターンオーバー増進剤;および栄養剤を含む、他の製薬活性剤を含みうる。加える成分は、通常、粒子の約1重量%〜約20重量%の量である。
【0038】
本発明の制御放出システムは、そのまま、さらなる製薬活性剤を含むことができる。加える成分は、通常、粒子の約1重量%〜約20重量%の量である。
【0039】
本発明の制御放出組成物は、簡単に、所定の共通の用量で製品に加工することができる。製品の例として、製薬、診断、移植、造影などの製品があげられる。
【0040】
I.ナノ粒子を形成するためのマトリクス材料
マトリクス材料を選択する際に考慮すべきこととしては、活性剤に対する優れたバリア特性、低い毒性および刺激性、安定性、並びに所定の活性剤を高度に取り込む能力が挙げられる。本発明の組成物および装置の適当なワックス材料は、約25℃〜約150℃の範囲の融点および約1℃〜約10℃の浸透点を有する、不活性な非毒性材料である。ワックスの例としては、天然ワックス、合成ワックス、およびこれらの混合物が挙げられる。適当なワックスには、さらに、蜜ろうのような動物性ワックス、カルナバ、カンデリラ、サトウキビ、米ぬか、およびヤマモモのワックスのような、植物性ワックスを含む天然、再生、または合成の食物認可ワックス、パラフィンおよびマイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスのような鉱物ワックス、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0041】
当業者に周知の他の疎水性材料、並びに「Industrial Waxes」,Vol.I and II,by Bennett F.A.I.C.,published by Chemical Publishing Company Inc.,1975、およびMartindale,「The Extra Pharmacopoeia」,The Pharmaceutical Press,28th Edition pp.1063−1072に記載されているような適当な材料が、本発明において用いられてもよい。
【0042】
本発明のナノ粒子を形成するマトリクス材料に使われる適当な油脂材料および/またはグリセリド材料としては、特に制限されないが;モノ−、ジおよびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、テルペン、並びにビタミン、の脂質類が含まれる:
本発明の油脂材料は、モノグリセリド、ジグリセリド、モノステアリン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリンおよびこれらの混合物から選択されるグリセリドであってもよい。用いられうる他の油脂材料は、硬化パーム油、硬化パーム核油、硬化ピーナッツ油、硬化菜種油、硬化米ぬか油、硬化大豆油、硬化綿実油、硬化ひまわり油、部分硬化大豆油、部分硬化綿実油、およびこれらの混合物である。
【0043】
本発明で用いられうる固形油脂材料の例には、硬化ヒマシ油および硬化植物油、固形油脂、およびこれらの混合物が含まれる。用いられうる他の脂質材料には、合成または天然源からの単離により製造されうる、食品グレードの純度を有するトリグリセリドが含まれる。天然源には、長鎖トリグリセリド(LCT)の源としての、動物性油脂または、大豆油などの植物油が含まれうる。本発明での使用に適当な他のトリグリセリドは、大部分が中鎖脂肪酸(C10〜C18)から構成され、中鎖トリグリセリド(MCT)として示される。かようなトリグリセリドの脂肪酸部分は不飽和または多価不飽和であってもよく、種々の脂肪酸材料を有するトリグリセリドの混合物であってもよい。
【0044】
用いられうるリン脂質は、特に制限されないが、ホスファチジン酸、飽和および不飽和両方の脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびベータ−アシル−イ−アルキルリン脂質を含む。リン脂質の例には、特に制限されないが、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)のようなホスファチジルコリン;およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンまたは1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミンのようなホスファチジルエタノールアミンが含まれる。非対称アシル鎖(例えば一方のアシル鎖が6炭素で他方のアシル鎖が12炭素の)をもつ合成リン脂質を用いてもよい。
【0045】
油脂材料として用いられうるステロイドは、特に制限されないが、コレステロール、コレステロールサルフェート、コレステロールヘミスクシネート、6−(5−コレステロール−3ベータ−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−アルファ−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3−ベータ−トロキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−アルファ−D−マンノピラノシドおよびコレステリル(4’−トリメチル−3,5−アンモニオ)ブタノエートが含まれる。
【0046】
油脂材料として用いられうるさらなる脂質化合物には、トコフェロールおよび誘導体、並びに、油およびステアリルアミンのような誘導体油が含まれる。
【0047】
油脂材料は、特に制限されないが、飽和および不飽和脂肪酸、偶数および奇数脂肪酸、シスおよびトランス異性体、並びにアルコール、エステル、無水物、ヒドロキシ脂肪酸およびプロスタグランジンを含む脂肪酸誘導体を含みうる、脂肪酸およびその誘導体であってもよい。用いられうる飽和および不飽和脂肪酸は、特に制限されないが、12〜22個の間の炭素原子をもつ直鎖または分岐した構造の分子が含まれる。用いられうる飽和脂肪酸の例として、特に制限されないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミン酸、およびステアリン酸が挙げられる。用いられうる不飽和脂肪酸の例として、特に制限されないが、ラウリン酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペテロセリン酸、およびオレイン酸が挙げられる。用いられうる分岐脂肪酸の例として、特に制限されないが、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、およびイソプレノイドが挙げられる。脂肪酸誘導体は、12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸;N−[12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチル−アミノ)オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸、N−サクシニル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイル−ホモシステイン;および/またはこれらの組み合わせを含む。用いられうるモノ、ジおよびトリグリセリドまたはその誘導体は、特に制限されないが、6〜24個の間の炭素原子をもつ脂肪酸を含む分子または脂肪酸の混合物、ジガラクトシルジグリセリド、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール;1,2−シジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール;および1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロールを含む。
【0048】
本発明のナノ粒子は、約30℃〜約90℃の範囲、好ましくは約40℃〜約90℃の範囲の融点を有してもよい。粒子の融点は、通常は用いられるキャリアマトリクスの関数である。したがって、好ましいマトリクス材料は、約50℃〜約80℃、好ましくは約60℃〜約70℃の範囲の融点を有する。本発明のキャリアシステムの使用のために重要なのはキャリアマトリクスの融点よりも、むしろ粒子の融点であるということは理解されるべきである。
【0049】
II. マイクロ粒子マトリクスを形成するための材料
マイクロ粒子は、pH感受性材料のみで構成されるか、またはpH感受性材料と水感受性材料もしくは生体接着材料との混合物を含んでもよい。
【0050】
pHおよび塩感受性材料
任意の材料および構造の形態は、所望のpHの溶液によってトリガをかけられるまでマイクロ粒子中の完全性を保持する、pH感受性または塩感受性トリガ中心として用いることができる。通常は、トリガpHは約3〜12の間であるが、いくつかの応用ではそれ以上またはそれ以下になりうる。トリガpHは、トリガpHより上または下のどちらかで、pH感受性材料が分解および/または溶解する、閾値のpH値または範囲である。前記マイクロ粒子は、溶液中で安定に形成することができ、その後pHがトリガpH以上に上昇すると、マイクロ粒子が活性化される。同様に、前記マイクロ粒子は、溶液中で安定に形成することができ、pHがトリガpH以下に下がるとマイクロ粒子が活性化される。ひとたび活性化されると、活性成分およびナノ粒子が放出される。
【0051】
一実施形態においては、pH感受性トリガ中心は、トリガpHの上もしくは下の所望のpHの、または塩濃度の溶液によってトリガをかけられたあと、マイクロ粒子がより透水性に、および/または物理的強度を失うように用いられる。他の実施形態では、トリガ中心が2つのナノ粒子部分を同時に保持するために用いられる。トリガ中心は、トリガpHの上もしくは下の所望のpHの溶液によってトリガをかけられたあと、または塩濃度の変化のあと、例えば分解または溶解するなど、接着性または強度を失いうる。接着強度の低下によって、マイクロ粒子コアの内部の静水圧が、接着トリガ中心によって同時に保持されたナノ粒子部分を押し出して分離させ、したがって内容物を放出させる。
【0052】
前記pH感受性材料は、酸性または塩基性の水溶液に不溶の固体で、溶液のpHが中性のときに溶解、または分解および溶解してもよい。前記pH感受性材料は、酸性または塩基性の水溶液に不溶の固体で、溶液のpHがトリガpH値よりも上昇または下降したときに溶解、または分解および溶解してもよい。
【0053】
典型的なpH感受性材料は、炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のエステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、一定の形のゼラチン、グルテン、セラック、ザロール、ケラチン、ケラチンサンダラック−トル、アンモニアセラック、ベンゾフェニルサリチレート、セルロースアセテートトリメリテート、セラック混合セルロースアセテート、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、酸化セルロース、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマーなどのポリアクリル酸誘導体、メタクリル酸およびそのエステル、ビニルアセテート、クロトン酸コポリマーのような、アミノ置換基、アクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、フタレート誘導体(すなわち共有結合したフタレート部分をもつ化合物)をもつアクリレートポリマーのコポリマーを含む。
【0054】
用いられる適当なpH感受性材料の例としては、ニュー ジャージー州ピスカタウェイに本社を、ドイツのダルムシュタットにローム(Rohm GmbH)支社をもつデグサ−ヒュルズ コーポレイション(Degussa−Huls Corporation)の完全子会社である、ローム アメリカ インコーポレイテッド(Rohm America Inc.)のオイドラギット(Eudragit)(登録商標)ポリマーシリーズが挙げられる。オイドラギット(登録商標)L 30 D−55およびオイドラギット(登録商標)L 100−55は、pHが5.5以上で溶解性であり、pH5以下で不溶性の、pH依存性アニオン性ポリマーである。これらのポリマーは、十二指腸の標的ドラッグデリバリーに用いることができる。オイドラギット(登録商標) L 100は、空腸の標的ドラッグデリバリーのための、pH6.0以上で溶解するpH依存性アニオン性ポリマーである。オイドラギット(登録商標)S 100は、回腸の標的ドラッグデリバリーのための、pH7.0以上で溶解するpH依存性アニオン性ポリマーである。オイドラギット(登録商標)E 100およびオイドラギット(登録商標)EPOは、pH5.0までは溶解性でありpH5.0以上は不溶性である、pH依存性カチオン性ポリマーである。したがって、適当なpH感受性材料は、前記pH感受性マイクロ粒子が約5超のpHを有する溶液に接触したときに分解または溶解する。
【0055】
さらなるpH感受性材料には、pHがpKa以下に下降したときイオン化する多数の置換基を含む、多官能ポリマーが含まれる。イオン性基のpKaより低いpHを有する水溶液においてポリマーが溶解するように、十分な量のイオン性基がポリマーに組み込まれていなければならない。これらのイオン性基は、ブロックコポリマーとして、またはポリマー骨格についたペンダント基として、またはポリマー鎖の架橋もしくは接続に使われる材料の一部として、ポリマーに組み込むことができる。このようなイオン性基の例には、ポリホスフェン、ビニルピリジン、ビニルアニリン、ポリリジン、ポリオルニチン、その他のタンパク質、およびアミノ部分を含む置換基をもつポリマーが含まれる。
【0056】
胃のpHでは相対的に不溶性および非浸透性であるが、小腸および結腸のpHではより溶解性であり浸透性であるpH感受性ポリマーには、ポリアクリルアミド、例えば炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のエステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマーのようなフタレート誘導体、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマーなどのポリアクリル酸誘導体、セラック、ならびにビニルアセテートおよびクロトン酸のコポリマーが含まれる。
【0057】
他のpH感受性ポリマーには、セラック;フタレート誘導体、とくに酢酸フタル酸セルロース、ポリビニル酢酸フタレート、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリアクリル酸誘導体、とくにアクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー混合ポリメチルメタクリレート;並びにビニルアセテートおよびクロトン酸のコポリマーが含まれる。
【0058】
メタクリル酸およびメチルメタクリレートのアニオン性アクリルコポリマーも、組成物および装置が十二指腸の先端の小腸の位置に移動するまで組成物および装置の放出を遅延するためのコーティング材料に、特に有用である。このタイプのコポリマーは、ローム ファーマコーポレイション(Rohm Pharma Corp)からオイドラギット−L.R(商標)およびオイドラギット−S.R(商標)の商品名で入手でき、メタクリル酸およびメチルメタクリレートのアニオン性コポリマーである。遊離カルボキシル基のエステルに対する比は、オイドラギット−L.R(商標)でおよそ1:1であり、オイドラギット−S.R(商標)でおよそ1:2である。オイドラギット−L.R(商標)およびオイドラギット−S.R(商標)の混合物も用いることができる。
【0059】
他のpH感受性材料には、pH9およびそれ以上では水に不溶で、pH7では水溶性または水に分散する、カチオン性pH感受性ポリマーが挙げられる。
【0060】
pH感受性および塩感受性材料は、不活性な水感受性材料と混合することができる。不活性とは、トリガ範囲におけるpHまたは塩濃度の変化に、実質的に影響されないことを意味する。不活性材料に対するpH感受性材料の比率を変化させることによって、トリガの後放出までのタイムラグを調節することができる。
【0061】
本発明の一実施形態においては、前記マイクロ粒子は胃のpHでは実質的に不溶性および非浸透性であり、小腸のpHではより溶解性および浸透性である、pH感受性材料から形成される。好ましくは、マイクロ粒子はpH約5.0以下で実質的に不溶性および非浸透性であり、pH約5.0以上で水溶性である。胃のpHでは相対的にに不溶性および非浸透性であるが、小腸または結腸のpHではより溶解性であり浸透性である、pH感受性ポリマーには、ポリアクリルアミド、例えば炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のエステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマーのようなフタレート誘導体、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、などのポリアクリル酸誘導体、セラック、並びにビニルアセテートおよびクロトン酸のコポリマーが含まれる。
【0062】
好ましいpH感受性ポリマーには、セラック;フタレート誘導体、とくに酢酸フタル酸セルロース、ポリビニル酢酸フタレート、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリアクリル酸誘導体、とくにアクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマーの混合ポリメチルメタクリレート;ビニルアセテート;クロトン酸コポリマーおよびローム アメリカ インコーポレイテッドのオイドラギット(登録商標)ポリマーシリーズが含まれる。
【0063】
水感受性材料
水感受性材料を、pHまたは塩感受性材料に混合して本発明のマイクロ粒子を形成することができる。適当な水感受性材料は、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー、ポリエチレンオキサイド、水溶性ポリアミドまたはポリエステル、ポリアクリル酸のようなアクリル酸のコポリマーもしくはホモポリマー、ポリスチレンアクリル酸コポリマーまたはデンプン誘導体、ポリビニルアルコール、多糖、親水コロイド、天然ゴム、タンパク質、およびこれらの混合物を含む。
【0064】
本発明に有用な合成水感受性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸およびメタクリレートのアニオン性ポリマー、ジメチル−アミノエチルアンモニウム官能基をもつカチオン性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、水溶性ポリアミドまたはポリエステルを含む。
【0065】
水溶性ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースの例として、ヒドロキシエチルおよびカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルおよびカルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルおよびカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルカルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルカルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらのカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、特にそして好ましくはナトリウムおよびカリウム誘導体も有用である。
【0066】
本発明の実施に際して有用なポリビニルアルコールは、部分的におよび完全に加水分解されたポリビニルアセテートであり、「ポリビニルアルコール」は、ポリビニルアセテートが、加水分解度とも呼ばれる範囲約75%〜約99%まで加水分解されたものを意味する。かような材料は、参照により本明細書に組み込まれる、1991年9月24日に発行された米国特許第5051222号明細書の実施例I〜XIVのいずれの方法によっても調製される。
【0067】
本発明の実施に有用なポリビニルアルコールは、ワーミニスター ペンシルヴェニアのゲーリング−モンゴメリー インコーポレイテッド(Gehring−Montgomery, Inc. of Warminister Pennsylvania)より市販されている、約14,000Daの分子量および約83%の加水分解度を有するモウィオール(Mowiol)(登録商標)3−83、モウィオール(登録商標)3−98、並びに、16,000Daの分子量を有する完全に加水分解された(98%)ポリビニルアルコールである。他の適当なポリビニルアルコールは:約15,000〜27,000Daの分子量および約88%の加水分解度を有し、アレンタウン,ペンシルヴェニアのエアー プロダクツ アンド ケミカルズ,インコーポレイテッド(Air Products & Chemicals, Inc. of Allentown, Pennsylvania)より市販されているエアヴォール(AIRVOL)(登録商標)205、並びに、15,000〜27,000Daの分子量および約99%の加水分解度を有し、アレンタウン,ペンシルヴェニアのエアー プロダクツ アンド ケミカルズ,インコーポレイテッドより市販されているヴィネックス(VINEX)(登録商標)1025;約22,000〜26,000Daの分子量および約89%の加水分解度を有し、デュ ポン カンパニー,ポリマー プロダクツ デパートメント,ウィルミントン,デラウェア(the Du Pont Company, Polymer Products Department, Wilmington, Delaware)より市販されている、エルヴァノール(ELVANOL)(登録商標)51−05;約76%〜約79%の加水分解度を有し、テンプルフィールズ,ハーロウ,エセックス,イングランド シーエム20 2ビーエイチ(ハーロウ ケミカル カンパニー リミテッド the Harlow Chemical Co. Ltd. Of Templefields, Harlow, Essex, England CM20 2BH)より市販されているアルコテックス(ALCOTEX)(登録商標)78、並びに、約86%〜約88%の加水分解度を有し、テンプルフィールズ,ハーロウ,エセックス,イングランド シーエム20 2ビーエイチより市販されているアルコテックス(登録商標)F88/4;並びに、日本 530、大阪市、北区、野崎町、9−6の日本合成化学工業株式会社(Nippon Gohsei K.K., The Nippon Synthetic Chemical Industry Co., Ltd., of No. 9−6, Nozaki Cho,Kita−Ku, Osaka, 530 Japan)より市販されている、ゴーセノール(GOHSENOL)(登録商標)GL−03およびゴーセノール(登録商標)KA−20である。
【0068】
適当な多糖は、例えばアラビアゴムのような天然ゴム、デンプン誘導体、デキストリン化および加水分解されたデンプンなどの、甘くない、コロイド状に溶解するタイプの多糖である。適当な多糖としては、ブリッジウォーター,ニュー ジャージーのナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニー(the National Starch and Chemical Company of Bridgewater, New Jersey)より市販されているカプール(Capul)(登録商標)、エヌ−ロック(N−Lok)(登録商標)、ハイ−キャップ(Hi−Cap)(商標)100またはハイ−キャップ(商標)200;マスカティーン,アイオワのグレイン プロセシング コーポレイション(the Grain Processing Corporation of Muscatine, Iowa)より市販されているピュア−コート(Pure−Cote)(商標)などの、水に分散性の市販の修飾デンプンがある。好ましい実施形態において、前記天然ゴムは、ティーアイシー ガムズ インコーポレイテッド ベルカンプ,ミッドランド(TIC Gums Inc. Belcamp, Midland)より市販されているアラビアゴムである。適当な親水コロイドはキサンタン、マルトデキストリン、ガラクトマンナンまたはトラガカントであり、好ましくは、マスカティーン,アイオワのグレイン プロセシング コーポレイションより市販されているマルトリン(Maltrin)(商標)M100、およびマルトリン(商標)M150のようなマルトデキストリンである。
【0069】
生体接着ポリマー
経口摂取されたドラッグデリバリーシステムは、上皮表面または粘液に接着しうる。生体活性成分のデリバリーのためには、粘液接着は実質的に生体利用効率を改善することもできるが、粘液層のみよりも上皮に接着するシステムをとるほうが有利である。いくつかのタイプの造影の目的では、上皮表面および粘液両方への接着が望ましく、一方、例えば胃潰瘍または潰瘍性結腸炎の場合のような病理状態では、粘膜層の下の細胞への接着が起こりうる。Duchene, et al., Drug Dev. Ind. Pharm. 14(2&3),283−318(1998)は、ドラッグデリバリーのための生体接着システムの製薬上および医学上の形態を概説している。「生体接着」は材料が生体組織に長期間にわたって接着する能力として定義される。生体接着は、胃の排出および腸ぜん動運動に起因する、並びに繊毛運動による移動に起因する、滞留時間が不十分であるという問題の解決になる。十分な生体接着がおこるためには、生体接着剤および受容体組織の間に十分な接触が必要であり、生体接着剤は組織表面および/または粘液のすきまに浸透しなければならず、機械的、静電的、または化学的結合を形成する。ポリマーの生体接着性能は、ポリマーの性質および周辺媒体の性質の両方に影響される。
【0070】
本発明のマイクロ粒子に生体接着ポリマーを組み込むことは、粘膜内層を通ったナノ粒子の吸収を制御または増大させるために、あるいは胃腸を通るナノ粒子の通過をさらに遅らせるために用いられうる。
【0071】
本明細書中で用いられる生体接着ポリマーは、粘液上皮に通常の生理条件下で結合するものである。胃腸管への生体接着は2段階で進行する:(1)合成材料が粘液基質中に接触した点における粘弾性による変形、および(2)接着性合成材料と粘液または上皮細胞との間の結合の形成。一般には、ポリマーの組織への接着は、(i)物理的または機械的結合、(ii)1次または共有化学結合、および/または(iii)イオン結合のような2次化学結合によって達成される。物理的または機械的結合は、生体接着材料を粘液または粘膜のひだのすきまにデポジットまたは包含することによって生じる。生体接着特性に寄与する2次化学結合は、ファンデルワールス相互作用のような分散性相互作用および水素結合のようなより強い特殊な相互作用を含みうる。水素結合を形成するおもな要因である親水性官能基は、ヒドロキシルおよびカルボキシル基を含む。本発明に用いられる適当な生体接着ポリマーには、H.S.Sawhney,C.P.PathakおよびJ.A.HubellのMacromolecules.1993,26:581−587に記載されている生体侵食性ハイドロゲル、本明細書中に組み込まれる教示、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)およびポリ(フマル−コ−セバシン)酸を含む。
【0072】
増強された生体接着特性をもつポリマーは、無水物モノマーまたはオリゴマーをポリマーに組み込むことで得られる。オリゴマー添加剤は、タンパク質、多糖、および合成生体適合性ポリマーを含む、広範囲の親水性および疎水性のポリマーに、混合される、または組み込まれる。無水オリゴマーは、有機添加物単独での使用に加えて、金属酸化物微粒子に結合して生体接着性を高めることができる。有機色素は、その電荷および疎水性/親水性によって、ポリマーに組み込まれたときのポリマーの生体接着性能を増大または低下させることができる。オリゴマー化合物を、通常は生体接着性のない広範囲の異なったポリマーに組み込むことで、ポリマーの粘膜などの組織の表面への接着性を増加させるために用いることができる。
【0073】
III. 標的化メカニズム
前記ナノ粒子は、前記マイクロ粒子を形成する材料のpHの選択、前記ナノ粒子のサイズ、および/または配位子のナノ粒子への組み込みまたは付加によって、特異的にまたは非特異的に、標的化することができる。例えば、生物活性分子、またはナノ粒子の電荷、親油性もしくは親水性に影響する分子を、ナノ粒子の表面に付加することができる。さらに、組織の接着を最小にする、またはインビボで特異的な標的化を促進する分子をナノ粒子に付加することもできる。典型的な標的化分子の例として、抗体、レクチン、および特定のタイプの細胞表面の受容体に特異的に結合した他の分子が挙げられる。
【0074】
本発明の一実施形態においては、ナノ粒子は、ナノ粒子表面に付加したレクチンによって修飾され、小腸の粘膜上皮を標的とし、体循環およびリンパ循環に吸収される。本発明の実施形態においては、炭水化物またはレクチンが、本発明のナノ粒子を、小腸のM細胞およびペイヤーズパッチ細胞を標的とするために用いられる。本発明の他の実施形態においては、フコシル糖に結合したレクチンが、ナノ粒子を修飾するために用いられる。レクチンは、細胞表面の複合糖質の炭水化物残基を高い特異性で認識する、タンパク質または糖タンパクの異種グループである;本発明のナノ粒子の修飾に用いることのできるレクチンの例として、特に制限されないが、ウレックスユーロピース凝集素I(Ulex Europeas Agglutinin I)(UEA)のようなフコシル複合糖質に特異的に結合するレクチン;ファセオラス ヴァルガリス赤血球凝集素(Phaseous vulgaris haemagglutinin)(PHA)、トマトレクチン(リコペルシコン エスクレンタム、Lycopersicon esculentum)(TL)、小麦胚凝集素(WGA)のようなガラクトース/N−アセチルガラクトセアミンに特異的に結合するレクチン;ガランサス ニヴァリス凝集素(Galanthus nivalis agglutinin)(GNA)のようなマンノースに特異的に結合するレクチン;コンA/コンカヴァランA(例えば、本出願書類に参照として組み込まれる、Lehr et al.,1995,Lectins Biomedical Perspectives,pp117−140を参照)のようなマンノースおよび/またはグルコースに特異的に結合するレクチンがあげられる。前記標的化分子は、必要に応じて誘導体化できる。例えば、本出願書類に参照として組み込まれる、Chen et al., 1995,Proceed.Internat.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.22およびCohen 国際公開第95/03035号パンフレットを参照。
【0075】
本発明の他の実施形態においては、本発明のナノ粒子は、細胞表面に現れる特定の残基への親和性をもつ、または細胞表面タンパク質もしくは受容体への親和性をもつ、ウイルスタンパク質あるいは細菌タンパク質で修飾されうる。このようなタンパク質の例には、特に制限されないが、コレラ毒素Bサブユニットおよび細菌性アドヘソトープが含まれる。
【0076】
さらに、本発明の他の実施形態においては、本発明のナノ粒子は、前記ナノ粒子に特定のタイプの細胞を標的とさせるモノクローナル抗体または抗体フラグメントで修飾することができる。本発明のナノ粒子を、特定の粘膜細胞表面の受容体およびタンパク質の配位子で修飾することができる。本明細書中で、「配位子」の用語は、腸の粘膜に接着する、またはナノ粒子にG−I管の特定の細胞タイプを標的とさせるために用いられる、または腸の粘膜上のナノ粒子の吸収に追随する、ナノ粒子に付加した配位子を意味する。適当な配位子には、特定の表面分子に対して免疫活性な、特定の細胞表面タンパク質および抗体または抗体フラグメントが含まれる。適当な配位子には、さらに、例えばアルギネートおよびポリアクリレートなどの生体接着性のコーティング材料のような、特異性の低い標的化配位子を含んでもよい。
【0077】
IV 活性成分
本発明で用いることのできる製薬活性成分は、鎮痛剤、抗炎症薬、駆虫剤、抗不整脈薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風薬、降圧薬、抗マラリア剤、抗偏頭痛薬、ムスカリン性受容体拮抗薬、抗腫瘍薬、勃起障害改善薬、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静剤、催眠剤、神経弛緩剤、ベータ−阻害剤、強心薬、副腎皮質ホルモン、利尿剤、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗剤、角質溶解剤、脂質調整薬、抗狭心症薬、COX2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤、性ホルモン、興奮剤、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、認識力増強剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺肥大症薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0078】
本発明とあわせて、幅広い種類の治療薬を用いることができる。本発明の組成物に用いることのできる前記治療薬(例えば製薬上の薬)は、水溶性および水に不溶の両方の薬剤を含む。このような治療薬には、抗ヒスタミン剤(例えばジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンおよびマレイン酸デクスクロルフェニラミン)、鎮痛剤(例えばアスピリン、コデイン、モルフィン、ジヒドロモルフォン、オキシコドンなど)、ナプロキン、ジクロフェナク、インドメタシン、フルビプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカン、スリンダク、制吐剤(例えばメトクロプラミド)、抗てんかん剤(例えばフェニトイン、メプロバメートおよびニトラゼパム)、血管拡張剤(例えばニフェジピン、パパベリン、ジルチアゼムおよびニカルジピン)、鎮咳薬および去たん剤(例えばリン酸コデイン)、抗ぜんそく剤(例えばテオフィリンおよびアミノフィリン)、酸中和剤、鎮痙剤(例えばアトロピン、スコポラミン)、抗糖尿病剤(例えばインシュリン)、利尿剤(例えばエタクリン酸、ベンドロフルアジド)、抗低血圧剤(例えばプロプラノロール、クロニジン)、降圧剤(例えばクロニジン、メチルドーパ)、気管支拡張剤(例えばアルブテロール)、ステロイド(例えばヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾン)、抗生物質(例えばテトラシクリン)、抗痔剤、催眠剤、向精神薬、抗下痢剤、粘液溶解剤、鎮静剤、充血除去剤、下剤、ビタミン、興奮剤(フェニルプロパノールアミンのような食欲抑制剤を含む)が含まれるが、上記に制限されない。
【0079】
本発明のデリバリーシステムに用いる有効な量がこのような方法により決定されうる薬剤の例には、インドメタシン、ジクロフェナック、フルビプロフェン、アスピリン、デキサメタゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルクティカゾン、チオキソコルタル、およびヒドロコルチゾンなどの、非ステロイドおよびステロイドの抗炎症薬を含む、抗炎症薬;シクロスポリンなどの免疫抑制剤;サルブタモールおよびテオフィリンなどの気管支拡張剤;ジルチアゼム、カプトプリル、ニフェジピン、硝酸イソソルビド、オキシプレノロールなどの抗狭心症剤および降圧剤;臭化シメトロピウムのような鎮痙剤;メトトレキサレート、タモキシフェン、シクロホスファミド、メルカプトプリンエトポシドなどの抗腫瘍薬;5−アミノサリチル酸などの抗結腸炎薬;およびキニジン、ベラパミル、プロカインアミドおよびリドカインのような抗不整脈薬;インシュリン、ヒト成長ホルモン、インターロイキン−II、インターフェロン、カルシトニン、ロイプロリド、腫瘍壊死因子、骨成長因子、メラニン細胞刺激ホルモン、カプトプリル、ソマトスタチン、ソマトスタチンオクタペプチド類似体、シクロスポリン、レニン阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼなどのプロテインまたはペプチドドラッグ;その他のホルモン;ワクチン;ヘパリンまたは短連鎖ヘパリンなどの抗凝血剤;およびエルゴタミンのような抗偏頭痛薬が含まれる。
【0080】
結腸への運搬に有用な薬の例には、ジクロフェナック、フルビプロフェン、インドメタシン、およびアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);デキサメタゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルクティカゾン、チオキソコルタル、およびヒドロコルチゾンなどのステロイド薬;エストロゲン、エストラジオールおよびテストステロンなどの避妊薬またはステロイドホルモン;シクロスポリンなどの免疫抑制剤;テオフィリンおよびサルブタモールなどの気管支拡張剤;硝酸イソソルビド、モノ硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニフェジピン、オキシプレノロール、ジルチアゼム、カプトプリル、アテノロール、ベナゼプリル、メトプロロール、バソプリルなどの抗狭心症剤および降圧剤;臭化シメトロピウムのような鎮痙薬;5−アミノサリチル酸などの抗結腸炎薬;キニジン、ベラパルニル、プロカインアミドおよびリドカインのような抗不整脈薬;メトトレキサレート、タモキシフェン、シクロホスファミド、メルカプトプリン、およびエトポシドなどの抗腫瘍薬;インシュリン、ヒト成長ホルモン、インターロイキン−II、インターフェロン、カルシトニン、ロイプロリド、腫瘍壊死因子、骨成長因子、メラニン細胞刺激ホルモン、カプトプリル、ソマトスタチン、ソマトスタチンオクタペプチド類似体、シクロスポリン、レニン阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、その他のホルモンおよびワクチンなどのプロテインまたはペプチドドラッグ;ヘパリンまたは短連鎖ヘパリンなどの抗凝血剤、エルゴトミンのような抗偏頭痛薬;グリベンクラミド;5−ヒドロキシトリプタミン1A型受容体アゴニストジェピロン;5HTオンダステロン拮抗薬;メトケファミド;メントール;ネオマイシンなどの抗生物質、アンピシリンおよびアモキシリンなどのベータ−ラクタム類、セファレキシンおよびクロキサシリンなどのセファロスポリン類、およびエリスロマイシンなどのマクロライド類;およびミソプロストールなどの、胃腸粘膜をNSAID損傷から保護するためのPGE類似体が含まれる。LH−RHおよびインシュリンなどのプロテインドラッグは、小腸よりも結腸により長く存続し、より吸収されうる。ジクロフェナック、キニジン、テオフィリン、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、オキシプレノロール、メトプロロール、グリベンクラミド、5−ヒドロキシトリプタミン1A型受容体アゴニストジェピロン、5HTオンダステロン拮抗薬、メトケファミド、メントール、ベナゼプリル(ACE阻害剤)などの他の薬剤が結腸への吸収をもつことが示されている。
【0081】
消化管の他の領域を治療するのに有用な薬剤の例は、以下の通りである;胃食道逆流症−−H2受容体拮抗薬(例えばタガメット(Tagamet)、ザンタック(Zantac))、プロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾール(Omeprazole));カンジダ食道炎−−ナイスタチンまたはクロトリマゾール;十二指腸潰瘍−−H2受容体拮抗薬、プロスタグランジン(例えばサイトテック(Cytotec)、プロスチン(Prostin))、プロトンポンプ阻害剤(例えばプリロセック(Prilosec)、オメプラゾール、スクラルファート(Sucralfate));分泌過多症、ゾリンジャー−エリソン症候群−−H2受容体拮抗薬;胃炎−−H2受容体拮抗薬、ミソプロストールなどの胃腸粘膜をNSAID損傷から保護するためのPGE類似体、ソマトスタチンなどの膵炎を治療するGHR−IHドラッグ、および臭化シメトロピウムなどの局所的な痙攣を治療する鎮痙薬。
【0082】
前記デリバリーシステムの治療上の有効性は、胃腸管の特定の部位に効果的なレベルの薬剤を運搬する能力に依存する。これによって、特に制限されないが、潰瘍性結腸炎、クローン病、結腸癌、食道炎、カンジダ食道炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、ゾリンジャー−エリソン症候群(ガストリノーマ)、胃炎、慢性の便秘、膵炎、局所的な痙攣、局所的な感染、寄生虫、およびその他の胃腸管内における体系的な障害(例えば血管炎症、感染性および腫瘍性状態)の影響による変化を含む疾病の局所的な治療ができる。
【0083】
加えうる活性成分は、特に制限されないが、薬剤などの治療物質または製薬活性剤、化粧品物質などの非治療物質、局所的もしくは一般的な麻酔剤または痛み止めまたは鎮静剤、ワクチン、抗体、微生物、殺菌物質、避妊組成物、インシュリンなどのタンパク質またはペプチド、殺虫剤、除草剤、成長ホルモンまたは種子発芽ホルモンなどのホルモン、ステロイド、毒素、またはマーカー物質を含む。可能な活性成分の非制限的な例としては、ヒドロクロロチアジド、アセタゾールアミド、アセチルサリチル酸、アロプリノール、アミロリド、抗不整脈剤、抗生物質、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗凝血剤、抗真菌剤、アテノロール、ベンドロフルメチアジド、ベンズブロマロン、ベンズチアジド、ベータメタゾン、気管支拡張剤、ブフェニン、ブプラノロール、化学療法剤、クロルジアゼポキシド、クロルキン、クロロチアジド、クロルプロマジン、クロルタリドン、クレンブテロール、クロミプラミン、クロニジン、コ−デルゴクリン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジアゾキシド、ジクロフェナク、ジクロフェナミド、ジギタリスグリコシド、ジヒドララジン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、鉄の塩、エルゴタミン、エタクリン酸、エチニルエストラジオール、エトキシゾラミド、フェノテロール、フルドロコルチゾン、フルフェナジン、フルオロセミド、ガロパミル、グアネチジン、ホルモン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、ヒドロフルメチアジド、免疫抑制剤、イブプロフェン、イミプラミン、インドメタシン、冠状動脈治療剤、レボドパ、リチウム塩、マグネシウム塩、酢酸メドロキシプロゲステロン、マナジオン、メタカロン、8−メトキシプソラレン、メチルクロチアジド、メチルドーパ、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチルチオウラシル、メチルキサンチン、メチプラノロール、モルシドミン、モルフィン、ナプロキセン、ニセルグリン、ニフェジピン、ノルフェネフリン、オキシフェンブタゾン、パパベリン、パルマサゾン、ペントバルビタル、ペルフェナジン、フェノバルビタル、フェニルブタゾン、フィトメナジオン、ピレンゼピン、ポリチアジド、プラゾシン、プレドニソロン、プレドニゾン、プロベニシド、プロプラノロール、プロピルチオウラシル、レスシンアミン、レセルピン、secブタバルビタール、secオバルビタール、スピロノラクトン、サルファサラジン、スルホンアミド、テストステロン、チオリダジン、トリアムシノロン、トリアムテレン、トリクロロメチアジド、トリフルオペラジン、トリフルオプロマジン、抗結核剤、ベラパミル、ウイルス増殖抑止剤、ジトスタティクス、ブロモクリプチン、ブロモプリド、カルビドーパ、カルボクロメン、キニン、クロルプロチキセン、シメチジン、クロフィブラット、シクリジン、デシプラミン、ジスルフィラム、ドンペリドン、ドキセピン、フェンブフェン、フルフェナミン酸、フルナリジン、ゲムフィブロシル、ハロペリドール、ケトプロフェン、ラベタロール、ロラゼパム、メフェナミン酸、メルペロン、メトクロプラミド、ノルトリプチリン、ノスカピン、オクスプレノロール、オキシメトロン、ペンタゾコシン、ペチジン、スタノゾロール、スリンダク、スルピリド、チオチキセンが挙げられる。
【0084】
適当な活性成分は、粘膜への侵入のあと、または(経口投与の場合)唾液とともに胃腸管への輸送のあと、体系的な効果を与えるものだけでなく、局所的な生理的な影響を与えるものである。本発明に記載の組成物から調製された生体接着剤形は、特に活性成分の活性を長期間にわたって与える活性成分に対して適当である。それらの例は、以下の通りである;鎮痛剤および抗炎症薬(NSAID、アセチルサリチル酸、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメートナトリウム、メタフェナミン酸、ナプロキセンナトリウム、パラセタモル、ピロキシカム、トルメチンナトリウム);抗不整脈薬(塩酸プロカインアミド、硫酸キニジン、塩酸ベラパミル);抗菌薬(アモキシシリン、アンピシリン、ベンザチンペニシリン、ベンジルペニシリン、セファクロール、セファドロキシル、セファレキシン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、クラブラン酸、塩酸クリンダマイシン、塩酸ドキシキシクリン、エリスロマイシン、フルクロキサシリンナトリウム、硫酸カナマイシン、塩酸リンコマイシン、塩酸ミノシクリン、ナフシリンナトリウム、ナリジクス酸、ネオマイシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、フェノキシメチル−ペニシリンカリウム);抗凝血剤(ワルファリン);抗うつ剤(塩酸アミトリプチリン、アモキサピン、塩酸ブチトリプチリン、塩酸クロミプラミン、塩酸デシプラミン、塩酸ドチエピン、塩酸ドキセピン、フルオキセチン、ジェピロン、イミプラミン、炭酸リチウム、塩酸ミアンセリン、ミリナシプラン、塩酸ノルトリプチリン、塩酸パロキセチン);抗糖尿病薬剤(グリベンクラミド);抗真菌薬(アンフォテリシン、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、硝酸ミコナゾール、ナイスタチン);抗ヒスタミン剤(アステミゾール、シンナリジン、塩酸シプロヘプタジン、フルナリジン、オキサトミド、プロメタジン、テルフェナジン);降圧剤(カプトプリル、エナラプリル、ケタンセリン、リシノプリル、ミノキシジル、塩酸プラゾシン、ラミプリル、レセルピン);抗ムスカリン薬(硫酸アトロピン、ヒオスシン);抗ウイルス剤(アシクロビル、AZT、ddC、ddI、ガンシクロビル、ロビリド、チビラピン、3TC、デラビルジン、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サクイナビル);鎮静薬(アルプラゾラム、塩酸ブスピロン、塩酸クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、クロザピン、ジアゼパム、塩酸フルペンチキソール、フルフェンアジン、フルラゼパム、ロラゼパム、マザペルチン、オランザピン、オキサゼパム、ピモジド、ピパムペロン、ピラセタム、プロマジン、リスペリドン、セルフォテル、セロクエル、スルピリド、テマゼパム、チオチキセン、トリアゾラム、トリフルペリドール、ジプラシドン);抗脳卒中薬(ルベルゾール、酸化ルベルゾール、リルゾール、アプチガネル、エリプロジル、レマセミド);抗偏頭痛薬(アルニジタン、スマトリプタン);ベータ−アドレナリン受容体遮断薬(アテノロール、カルベジロール、メトプロロール、ネビボロール、プロパノロール);強心薬(ジギトキシン、ジゴキシン、ミルリノン);副腎皮質ステロイド(ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン);殺菌剤(クロルヘキシジン);利尿剤(アセタゾールアミド、フルセミド、ヒドロクロロチアジド、イソソルビド);抗パーキンソン病薬(メシル酸ブロモクリプチン、レボドバ、塩酸セレギリン);酵素;エッセンシャルオイル(アネトール、アニス油、キャラウェイ、カルダモン、カッシア油、シネオール、シナモン油、丁子油、コリアンダー油、脱メントールミント油、ディル油、ユーカリ油、ユージノール、ジンジャー、レモン油、マスタード油、橙花油、ナツメグ油、オレンジ油、ペパーミント、セージ、スペアミント、テルピネオール、タイム);胃腸薬(シメチジン、シサプリド、クレボプリド、塩酸ジフェノキシレート、ドンペリドン、フェモチジン、ランソプラゾール、塩酸ロペラミド、酸化ロペラミド、メサラジン、塩酸メトクロプラミドモサプリド、オルサラジン、オメプラゾール、ラニチジン、ラベプラゾール、リドグレル、サルファサラジン);止血剤(アミノカプロン酸);脂質調整薬(ロバスタチン、プラバスタチン、プロブコル、シムバスタチン);局部麻酔剤(ベンゾカイン、リグノカイン);オピオイド鎮痛剤(塩酸ブプレノルフィン、コデイン、デキストロモラミド、ジヒドロコデイン);副交感神経興奮剤(ガランタミン、ネオスチグミン、フィソスチミン、タクリン、ドネペジル、ENA 713(エキセロン)、キサノメリン);血管拡張剤(アムロジピン、ブフォメジル、亜硝酸アミル、ジルタゼム、ジピリダモール、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、リドフラジン、モルシドミン、ニカルジピン、ニフェジピン、オクスペンチフィリン、四硝酸ペンタエリトリトール)。
【0085】
本発明のデリバリーシステムに組み込まれうる他の活性成分は、治療および予防薬を含む。これらは、タンパク質、ペプチド、糖、オリゴ糖、核酸分子または他の合成もしくは天然の薬であってもよい。前記薬は、蛍光ラベルまたは酵素反応もしくはクロマトグラフィーで検出できる試薬などの、検出可能なラベルで標識されてもよい。
【0086】
好ましい薬剤には、抗生物質、抗ウイルス剤、ワクチン、血管拡張剤、血管収縮剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤を含む免疫調節化合物、インターロイキン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子およびインターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)などのサイトカイン、遺伝子およびアンチセンスを含むオリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、気管支拡張剤、生殖ホルモン、カルシトニン、インシュリン、エリスロポイチン、成長ホルモンを含むホルモン、およびアンチバン(Antiban)(商標)などの他のタイプの薬剤が含まれる。
【0087】
V. 診断的適用および胃腸造影
本発明のシステムは、例えば硫酸バリウム、シアトリゾエートナトリウム、ヨウ素含有造影剤などのX線造影剤、超音波造影剤、磁気共鳴造影の造影剤もしくは増強剤、断層撮影剤、または陽電子放射剤などの部位特異的デリバリーなど、診断上の目的にも有用である。前記システムは、さらに、腫瘍のモノクローナル抗体マーカーを運搬するのに有用である。
【0088】
本発明のデリバリーシステムは、肝臓および腎臓の疾患の検出への適用、心臓への適用、腫瘍の重量および組織の検出および解析、並びに末梢血速度の測定の他に、血管の造影にも使うことができる造影剤を含むことができる。
【0089】
硫酸バリウム懸濁液は、D.Sutton,Editor,A Textbook of Radiology and Imaging,Volume 2,Churchill Livingstone,London(1980)に記述されるように、味の悪さおよび溶液の外では沈殿する傾向などの望ましくない性質を持つにもかかわらず、上部胃腸管を調べるのに使われる万能な造影剤である。
【0090】
前記システムのいくつかの性質、例えば:(a)サイズ:沈殿速度はサイズに比例する(すなわち、細かい微粒子ほど懸濁液で安定である);(b)非イオン性媒体、なぜなら硫酸バリウム微粒子の電荷が微粒子のアグリゲーション速度に影響し、かつアグリゲーションは胃の内容物の存在下では増進されるため;および(c)溶液のpH:懸濁液はpH5.3で最も安定であるが、懸濁液が胃を通過するとき、必ず酸性になり沈殿しやすくなる、は診断および胃腸の造影に有利である。
【0091】
硫酸バリウムを前記マトリクス組成物および前記マトリクス組成物の製品へ封入することによって、胃液が過剰に存在する場合に胃粘膜への優先的なコーティングを促進することができる。胃腸管のより末端部分を標的とした生体接着性をもつ場合、他の方法では簡単には得られない、内壁造影のようなものも得られる。
【0092】
造影過程を良くするために、ガスおよび硫酸バリウムの両方を用いる二重造影法は、粘膜表面の適切なコーティングを用いる。二重造影を達成するために、空気または二酸化炭素を、患者の胃腸管に導入しなければならない。これは、一般的には経鼻胃管を用いて胃拡張を制御して引き起こすことで達成される。個々の気泡を多数の本発明の接着性マイクロ粒子に入れて放出することによって、同等の結果を得ることができ、本造影過程は胃を超えた腸部分に適用できる。
【0093】
生体接着性を評価するインビボの方法は、硫酸バリウムなどのX線不透過な材料、またはX線不透過な材料と炭酸ナトリウムなどのガス発生剤との両方の、生体接着ポリマー中への封入を用いる。このX線不透過な材料を経口投与した後、画像解析を用いて、その胃および腸の範囲の分布が調べられる。
【0094】
アジスロマイシンのG−I管における放出速度を制限する(すなわち胃のpHでアジスロマイシンの放出を持続させ、小腸および結腸のpHでアジスロマイシンを放出する)アジスロマイシンの制御放出剤形は、副作用が抑えられた剤形をもたらす。pH7.0以上で溶解するpH依存性アニオン性ポリマーは、本発明のデリバリーシステムに、小腸および結腸で薬剤のデリバリーを開始するために用いられうる。本発明の制御放出システムにおいて前記薬剤を封入する目的は、アジスロマイシン誘起のG−I副作用の発生率および重大性を低下させることである。これは、投与量が多い場合、例えば2gおよびそれ以上の、胃腸副作用の発生率が比較的高くなりうる場合に、特に有用である。十二指腸がアジスロマイシンを受けることを最小にすることによって、アジスロマイシン誘起のG−I副作用の全体の発生率および重大性が低下する。本発明の制御放出システムは、剤形に組み込むことができ、かつ、アジスロマイシンの治療上有用な投与量を運搬することができ、同時にG−I管を通してアジスロマイシンの局所的な放出を特に十二指腸で抑え、それによって胃腸副作用を減少させることができる。
【0095】
一実施形態においては、本発明の制御放出デリバリーシステムは約1%〜約50%の疎水性材料を含み、約1%〜約50%のpH感受性材料、約0%〜約50%の水感受性材料および約0%〜約30%のアジスロマイシンを含む。
【0096】
本発明のナノ粒子に封入される活性成分、薬剤は、化学名塩酸[S−(R,R)]−a−[1−(メチルアミノ)エチル]−ベンゼンメタノールである、微生物感染を治療するためのアドレナリン作用(血管収縮)剤である、シュードエフェドリンである。シュードエフェドリンは、一般的な風邪、副鼻腔炎、および花粉症およびその他の呼吸器のアレルギーによって起こる鼻または洞の鬱血(詰まり)を軽減するために用いられる。シュードエフェドリンは、さらに耳の炎症または感染によっておこる耳の鬱血を軽減するためにも用いられる。シュードエフェドリンは、通常、風邪薬において、コデインに加えられる。シュードエフェドリンの効果は、エピネフリンと同様であり、かつおもな効果はアンフェタミンと同様であるがそれよりも弱い。分子式はC1015NO・HClである。塩酸シュードエフェドリンは、微細な白色からオフホワイトの結晶または粉末であり、かすかな特徴的な臭いをもつ。
【0097】
シュードエフェドリンのG−I管における放出速度を制限する、すなわち胃のpHでシュードエフェドリンの放出を持続させ、小腸または結腸のpHではシュードエフェドリンを放出する、シュードエフェドリンの制御放出剤形は、副作用が抑えられる剤形をもたらす。pH7.0以上で溶解性になるpH依存性アニオン性ポリマーが小腸または結腸の薬剤のデリバリーを始めるために用いられる。本発明の制御放出システムにおいて、この薬剤の封入の目的は、シュードエフェドリン誘起G−I副作用の発生率および重大性を低下させることである。本発明の制御放出システムは剤形に組み込むことができ、かつ、、シュードエフェドリンの治療上有用な投与量を運搬することができ、同時にG−I管を通してシュードエフェドリンの局所的な放出を特に十二指腸で抑え、それによって胃腸副作用を減少させることができる。
【0098】
V. 加工方法
Va. ナノ粒子
本発明のナノ粒子中に、封入される活性成分および芳香剤は、(1)疎水性材料を融点を超える温度まで加熱して、溶融体を形成し、(2)活性剤を前記溶融体中に溶解または分散させ、(3)前記溶融体を水相中に乳化し;そして(5)分散液を室温まで冷却して、微細な懸濁液を形成する、段階により調製されうる。
【0099】
活性成分は固体状の疎水性ナノ粒子、pH感受性マイクロ粒子、またはナノおよびマイクロ粒子の両方に導入されうる。
【0100】
Vb. マイクロ粒子
本発明の制御放出システムは、(a)選択された活性剤を、ナノ粒子の疎水性の内部に導入し、(b)1以上の活性剤、ナノ粒子、およびpH感受性材料を含む水性混合物を形成し、そして(c)本発明の混合物を噴霧乾燥させて、乾燥粉末組成物を形成する、段階により調製されうる。従って、ナノ粒子は、マイクロ粒子構造中に封入されうる。ナノ粒子中に導入される活性剤と同一であってもよく異なってもよい1以上の活性剤が、マイクロ粒子構造中に導入されうる。
【0101】
多成分系制御放出システムの製造工程は、以下の段階を含む:
(i)疎水性材料を融点を超える温度まで加熱して、溶融体を形成し;
(ii)選択された第1の活性剤を前記溶融体中に溶解または分散させ;
(iii)第2の活性剤、およびpH感受性の材料を、水相中に溶解または分散させ、疎水性材料の融解温度を超えるまで加熱し;
(iv)この高温溶融体を前記水相と混合して分散液を形成し;
(v)約1ミクロン〜約2ミクロンの粒子サイズを有する均質な微細分散液が得られるまで、前記融解温度超の温度で前記分散液を高い剪断力で均質化し;
(vi)前記分散液を室温まで冷却し;そして、
(vii)乳化混合懸濁液を噴霧乾燥させて、乾燥粉末組成物を形成する。
【0102】
均質化は、シンプルパドルまたはリボンミキサーのような、本技術分野において周知の種々のミキサーを用いた任意の適当な手法により行われてもよく、ただし、リボンまたはプラウブレンダー、ドラムアグロメレーター、および高剪断力ミキサーなどの他のミキサーが用いられてもよい。本工程に適当な装置としては、エーピーブイ ゴーリン インコーポレイテッド エヴェレット,マサチューセッツ(APV Gaulin Inc.Everett,Massachusetts)から入手可能な、モデル ラニー 100 ラブ ホモジナイザー(model Rannie 100 lab homogenizer)、イースト ロング メドウ,マサチューセッツのシルヴァーソン マシーンズ(Silverson Machines.of East Long Meadow,Massachusetts)またはスパータ,ニュー ジャージーのスコット プロセシング エクイップメント コーポレイション(Scott Prossessing Equipment Corp. of Sparta,New Jersey)から入手可能な、ローターステーター高剪断力ミキサー、および他の高剪断力ミキサーが挙げられる。
【0103】
過剰な水分を除去する目的で、懸濁液をスプレー乾燥させる。噴霧乾燥は本技術分野において周知であり、主要な材料が香味油である食品、および主要な材料が芳香性油である化粧品などの多くの用途において商業的に用いられている。参照により本明細書中に組み込まれる、Balassa,“Microencapsulation in the Food Industry”,CRC Critical Review Journal in Food Technology,July 1971,pp.245−265;Barreto.“Spray Dried Perfumes for Specialties,Soap and Chemical Specialties”,December 1966;Maleeny,Spray Dried Perfumes,Soap and San Chem,Jan.1958,pp.135 et seq.;Flinn and Nack,“Advances in Microencapsulation Techniques”,Batelle Technical Review,Vo.16,No.2,pp.2−8(1967);米国特許第5525367号明細書;および米国特許第5417153号明細書を参照。
【0104】
拡散速度を変化させる、pHにより活性化されるマイクロ粒子を考える。例えば、pHにより活性化されるマイクロ粒子に封入された活性成分は、以下の速度のいずれかにより拡散しうる:
(i)単位時間あたり実質的に持続して放出される、定常状態または0次放出速度:
(ii)時間とともに放出速度が0へと減少する、1次放出速度;および
(iii)初速度は遅いが、続いて時間とともに増加する、遅延放出。
【0105】
分子拡散によって活性剤を長期間にわたって放出することを目的として、疎水性材料から形成されるナノ粒子は制御放出システムを提供する。ナノ粒子の疎水性材料中の活性剤は、過渡拡散により放出されうる。ナノ粒子の疎水性マトリクス中に溶解している活性成分の放出速度の、早い時間および遅い時間での理論的な近似値は、下記の等式により算出されうる:
【0106】
【数1】

【0107】
ここで:
rは、シリンダーの半径であり;
は、無限大の時間後に制御放出システムから放出される芳香の量であり;
は、時間t後に制御放出システムから放出される芳香の量であり;そして、
は、マトリクス中の芳香または芳香性化学物質の拡散係数である。
【0108】
疎水性ナノ粒子から活性剤が放出される放出速度は、一般的に、pH感受性のマトリクスから活性剤が放出される放出速度よりも遅い。活性剤は、活性剤の所望の放出時間に応じて、疎水性ナノ粒子またはpH感受性マトリクス中に導入されるように選択されうる。例えば、所定の第1の活性剤は、洗浄時に放出されるように、pHまたは塩感受性のマトリクス中に導入され、所定の第2の活性剤は、前記第1の活性剤が放出される際または放出された後の長期間にわたる放出のために、疎水性ナノ粒子中に導入されうる。
例えば、本発明により形成されるpH感受性マトリクスは、所定のpHまたは塩濃度で第1の活性剤を放出して、第1の活性剤の持続的な放出とともに「バースト」を提供することができ、本発明により形成されるナノ粒子は、放出速度に応じて、1日または数日内のような初期から数週間まで、活性剤を放出しうる。
【0109】
好ましい実施形態において、活性剤は、前記マイクロ粒子の約0.01重量%〜約60重量%、好ましくは約1重量%〜約50重量%のレベルで存在する。好ましい実施形態において、ナノ粒子は一般的にpH感受性マトリクス中に、前記マトリクスの約1重量%〜約80重量%、好ましくは1重量%〜60重量%で存在し、残りは活性剤およびpH感受性材料である。好ましい実施形態において、pH感受性材料は、一般にマトリクス材料の約1重量%〜約80重量%、好ましくは約1重量%〜約60重量%のレベルで存在し、残りは活性剤および疎水性材料である。
【0110】
前記化合物は、経口、直腸内、もしくは非経口で、単独でまたは抗生物質、ステロイドなどの他の治療剤と併せて、治療が必要な哺乳類に投与することができる。経口剤形は、錠剤、カプセル、糖衣錠、および同様な形の圧縮製薬剤形を含む。20〜100mg/mlを含む等張食塩水を、筋肉内、くも膜下、静脈内、および動脈内の投与経路を含む、非経口投与に用いることができる。直腸内投与は、ココアバターなどの通常の担体から作られた坐薬を用いて達成されうる。
【0111】
用法は、患者の個々の指示、年齢、体重および一般的な健康状態、および望まれる結果に合わせられなければならないが、一般的に、投与量は約1mg/日〜約1000mg/日を必要に応じて1日1回または複数回で投与する。
【0112】
前記組成物は、好ましくはユニット剤形(一服として物理的に分離したユニットを意味する)、または1回または複数回の処方でヒトの患者および他の哺乳類に投与するための、ユニットの所定の分割に作成され、各ユニットが所望の治療効果を得られるように計算された量の所定の活性材料を適当な製薬賦形剤とともに含む。
【0113】
製薬組成物は、したがって、1以上の本発明の組成物を、少なくとも1つの製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とともに含む。このような組成物を調製する際に、前記活性剤は通常賦形剤で混合もしくは希釈されるか、またはカプセルもしくは包装の形をとりうる担体に包まれる。賦形剤が希釈剤としてはたらく場合、活性成分のビークル、担体、もしくは媒体として作用する固体、半固体、または液体の材料であってもよい。したがって、前記組成物は、錠剤、丸薬、粉末、エリキシル剤、懸濁液、乳化液、溶液、シロップ、ソフトおよびハードのゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射溶液および滅菌包装粉末の形態であってもよい。適当な賦形剤の例には、ラクトース、デキストロース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、マイクロクリスタリンセルロース、ポリビニルピロリジノン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれ、処方にはさらに滑石、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルなどの保存料、甘味料または香料が含まれうる。
【0114】
本発明の前記キャリアシステムは、製薬およびヘルスケア製品に組み込まれうる。
【0115】
以下の実施例により、本発明はさらに説明されうる。ただし、これらの実施例は単に例示の目的で含まれており、そうでないと特記しない限り本発明の範囲を制限することを意図するものではないと理解されるであろう。本明細書中、詳細な説明、実施例および特許請求の範囲に記載の百分率、比率、および部は、全て質量基準であり、そうでないと特記しない限り概略値である。
【実施例】
【0116】
実施例
pH感受性ドラッグデリバリーシステムの調製
実施例1
以下の手法により、薬剤を疎水性ナノ粒子マトリクス中の活性剤とした多成分制御放出システムを調製する。ナノ粒子の疎水性マトリクスは、ウエスト バビロン、ニューヨークのストラール アンド ピッチ インコーポレイテッド(Stahl & Pitsch Inc. of West Babylon, New−York)から市販されている、カンデリラワックスである。マイクロ粒子のpH感受性マトリクスは、オイドラギッド(登録商標)S 100(ピスカタウェイ,ニュー ジャージーのローム アメリカ インコーポレイテッドから市販されている)であり、これは小腸および結腸で薬剤を運搬し、十二指腸でナノ粒子を放出するためのpH7.0以上で溶解するpH依存性アニオン性ポリマーである。水感受性マトリクスは、ハイ−キャップ(商標)100(ブリッジウォーター,ニュー ジャージーのナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニーから市販されている)である。
【0117】
400gのカンデリラワックスを80℃のオーブン中に仕込み、溶融させる。多目的シリコンラバーヒーター(コール−パルマー インストゥルメント カンパニー(Cole−Palmer Instrument Company))を装着した1ガロン容器中に、1500gの脱イオン水を仕込む。400gのオイドラギッド(登録商標)S 100(ピスカタウェイ,ニュー ジャージーのローム アメリカ インコーポレイテッドから市販されている)および100gのハイ−キャップ(商標)100(ブリッジウォーター,ニュー ジャージーのナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニーから市販されている)を水に添加し、この水溶液をプロペラミキサーを用いて混合しながら90℃まで加熱した。カンデリラワックスをオーブンから取り出し、100gのアジスロマイシンをこの溶融体中にガラス棒を用いて手動で混合する。この薬剤/ワックス混合物を水溶液中に注ぎ、この分散液を、エーピーブイ ゴーリン インコーポレイテッドから入手可能なラニー 100 ラブ ホモジナイザーを用いて20,000psiで均質化する。この分散液をチューブインチューブ型の熱交換器(モデル 00413,エナジー インコーポレイテッド ハンソン マサチューセッツ(Model 00413,Energy Inc. Hanson Massachusetts))中を通過させることにより室温まで冷却し、懸濁液を形成する。得られた懸濁液を、ボーウェン ラブ モデル ドライヤー(ミドルセックス,ニュー ジャージーのスプレー−テック製)(Bowen Lab Model Drier(at Spray−Tek of Middlesex,New Jersey))により、380°Fの入口温度、225°Fの出口温度、および45,000r.p.m.のホイール速度で、250c.f.m.の空気を用いて噴霧乾燥させて、固体疎水性ナノ粒子中に封入された25%のアジスロマイシンを含有する、流動性の乾燥粉末を製造する。得られた多成分制御放出システムは、10%のアジスロマイシン、40%のカンデリラワックス、40%のpH感受性材料、および10%の水感受性材料を含む。
【0118】
実施例2
以下の手法により、薬剤を疎水性ナノ粒子マトリクス中の活性剤とした多成分制御放出システムを調製する。ナノ粒子の疎水性マトリクスは、ウエスト バビロン、ニューヨークのストラール アンド ピッチ インコーポレイテッド(Stahl & Pitsch Inc. of West Babylon, New−York)から市販されている、カンデリラワックスである。マイクロ粒子のpH感受性マトリクスは、オイドラギッド(登録商標)S 100(ピスカタウェイ,ニュー ジャージーのローム アメリカ インコーポレイテッドから市販されている)、小腸および結腸で薬剤を運搬し、十二指腸でナノ粒子を放出するためのpH7.0以上で溶解するpH依存性アニオン性ポリマーである。水感受性マトリクスは、ハイ−キャップ(商標)100(ブリッジウォーター,ニュー ジャージーのナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニーから市販されている)である。
【0119】
400gの蜜ろうを80℃のオーブン中に仕込み、溶融させる。多目的シリコンラバーヒーター(コール−パルマー インストゥルメント カンパニー(Cole−Palmer Instrument Company))を装着した1ガロン容器中に、1500gの脱イオン水を仕込む。400gのオイドラギッド(登録商標)S 100(ピスカタウェイ,ニュー ジャージーのローム アメリカ インコーポレイテッドから市販されている)および100gのハイ−キャップ(商標)100(ブリッジウォーター,ニュー ジャージーのナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニーから市販されている)を水に添加し、この水溶液をプロペラミキサーを用いて混合しながら90℃まで加熱した。蜜ろうをオーブンから取り出し、100gのシュードエフェドリンをこの溶融体中にガラス棒を用いて手動で混合する。この薬剤/ワックス混合物を水溶液中に注ぎ、この分散液を、エーピーブイ ゴーリン インコーポレイテッドから入手可能なラニー 100 ラブ ホモジナイザーを用いて20,000psiで均質化する。この分散液をチューブインチューブ型の熱交換器(モデル 00413,エナジー インコーポレイテッド ハンソン マサチューセッツ(Model 00413,Energy Inc. Hanson Massachusetts))中を通過させることにより室温まで冷却し、懸濁液を形成する。得られた懸濁液を、ボーウェン ラブ モデル ドライヤー(ミドルセックス,ニュー ジャージーのスプレー−テック製)(Bowen Lab Model Drier(at Spray−Tek of Middlesex,New Jersey))により、380°Fの入口温度、225°Fの出口温度、および45,000r.p.m.のホイール速度で、250c.f.m.の空気を用いて噴霧乾燥させて、固体疎水性ナノ粒子中に封入された25%のシュードエフェドリンを含有する、流動性の乾燥粉末を製造する。得られた多成分制御放出システムは、10%のシュードエフェドリン、40%の蜜ろう、40%のpH感受性材料、および10%の水感受性材料を含む。
【0120】
上記の実施形態は、本発明の原理が適用されうる多くの可能な具体的な実施形態のほんのいくつかを例示するためのものであると解される。当業者によれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、これらの原理に従って、容易に多くの多様な変更がなされうる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
本発明は以下の図面を参照してより十分に記載される。
【図1】アジスロマイシンの模式図である。
【図2】本発明の制御放出システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の固体ナノ粒子を含み、それぞれの前記固体ナノ粒子、前記複数個の固体ナノ粒子がpH感受性または塩感受性のマイクロ粒子に封入され、前記pH感受性または塩感受性のマイクロ粒子はpH感受性または塩感受性マトリクス材料から形成され、かつ第1製薬活性剤が前記固体ナノ粒子もしくは前記マイクロ粒子、または前記固体ナノ粒子およびマイクロ粒子の両方に組み込まれる、制御放出組成物。
【請求項2】
前記第1製薬活性剤が前記固体ナノ粒子に組み込まれ、前記pH感受性または塩感受性マトリクス材料に封入される第2製薬活性剤をさらに含み、前記pH感受性または塩感受性マトリクス材料が、所定のpHまたは所定の塩濃度の溶液に接触したときに前記第2製薬活性剤を放出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記pH感受性マイクロ粒子が約3〜約12の範囲のpHを有する溶液に接触したとき前記pH感受性マイクロ粒子が分解または溶解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記pH感受性マイクロ粒子が約5超のpHを有する溶液に接触したとき前記pH感受性または塩感受性マトリクス材料が分解または溶解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記pH感受性または塩感受性マトリクス材料が、約9以上のpHで水に不溶、約7またはそれ以下のpHで水溶性の、カチオン性pH感受性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記pH感受性材料が、
アミノ置換基をもつアクリレートポリマー、アクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、フタレート誘導体およびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記pH感受性材料が、
炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、エステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、ゼラチン、グルテン、セラック、ザロール、ケラチン、ケラチンサンダラック−トル、アンモニアセラック、ベンゾフェニルサリチレート、セルロースアセテートトリメリテート、セラック混合セルロースアセテート、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、酸化セルロース、ポリアクリル酸誘導体、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアセテート、クロトン酸コポリマーおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複数個のナノ粒子の第1部分が、前記複数個のナノ粒子の第2部分に、pH感受性または塩感受性マトリクス材料で接着している、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記マイクロ粒子の前記pH感受性または塩感受性材料に混合された湿度感受性材料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記湿度感受性材料が、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル酸コポリマーまたはホモポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレンアクリル酸コポリマー、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸およびメタクリレートのアニオン性ポリマー、ジメチル−アミノエチルアンモニウム官能基をもつカチオン性ポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルカルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルカルボキシメチルセルロース、多糖、親水コロイド、天然ゴム、タンパク質、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記pH感受性材料が、胃のpHでは相対的に不溶性および非浸透性であり、小腸および結腸のpHではより可溶性であり浸透性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記pH感受性材料が、ポリアクリルアミド、炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、その他のエステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマーのようなフタレート誘導体、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマーのようなポリアクリル酸誘導体、セラック、並びにビニルアセテートおよびクロトン酸のコポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記固体ナノ粒子が、約25℃〜約150℃の範囲の融点を有するワックス材料から形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ワックス材料が約1〜約10の浸透点をもつ、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ワックス材料が:
天然ワックス、合成ワックス、再生ワックス、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記ワックスが、カルナバワックス、カンデリラワックス、および蜜ろうの1以上を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記固体ナノ粒子が:
硬化ヒマシ油、硬化植物油、固形脂肪、グリセリド、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂質、ステロイドおよびこれらの混合物
からなる群から選択される油脂材料から形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記グリセリドが:
トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、モノステアリン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリンおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記脂肪酸誘導体が:
アルコール、エステル、無水物、ヒドロキシ脂肪酸およびプロスタグランジン
からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記油脂材料が:
ラウリン酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペテロセリン酸、オレイン酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソプレノイド、12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸、N−[12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチル−アミノ)オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸、N−サクシニル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイル−ホモシステイン、ジガラクトシルジグリセリド、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール;1,2−シジパルミトイル−sn−3スクシニルグリセロール;1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロールおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記油脂材料が:
リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、ステロイド誘導体、テルペン、トコフェロール、ステアリルアミン、ビタミンおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記リン脂質が:
ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リソホスファチジル誘導体、カルジオリピン、ベータ−アシル−y−アルキルリン脂質、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン、合成リン脂質およびこれらの混合物
を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ステロイドが:
コレステロール、コレステロールサルフェート、コレステロールヘミスクシネート、6−(5−コレステロール−3ベータ−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−アルファ−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3−ベータ−トロキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−アルファ−D−マンノピラノシド、コレステリル(4’−トリメチル−3,5−アンモニオ)ブタノエートおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記マイクロ粒子が:
天然オリゴマー、合成オリゴマー、天然ポリマー、合成ポリマーおよびコポリマー、デンプン、デンプン誘導体、オリゴ糖、多糖、親水コロイド、天然ゴム、タンパク質、セルロース、セルロース誘導体、およびこれらの混合物
からなる群から選択される水感受性材料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記固体ナノ粒子もしくは前記マイクロ粒子または前記ナノ粒子および前記マイクロ粒子の両方に組み込まれる生体接着材料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記生体接着材料が、生体接着ポリマーである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記生体接着ポリマーが、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)およびポリ(フマル−コ−セバシン)酸からなる群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ナノ粒子が、さらに配位子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記ナノ粒子が、レクチンウイルスタンパク質、細菌タンパク質、モノクローナル抗体および抗体フラグメントを含む群から選択される標的化材料を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1製薬活性剤が:
鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、制吐剤、抗てんかん剤、血管拡張剤、鎮咳薬、去たん剤、抗低血圧剤、抗炎症薬、駆虫剤、抗不整脈薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗真菌薬、抗痛風薬、降圧薬、抗マラリア剤、抗偏頭痛薬、ムスカリン性受容体拮抗薬、抗腫瘍薬、抗脳卒中薬、勃起障害改善薬、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静剤、催眠剤、神経弛緩剤、ベータ−阻害剤、強心薬、副腎皮質ホルモン、利尿剤、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗剤、角質溶解剤、脂質調整薬、抗狭心症薬、COX2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤、性ホルモン、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、認識力増強剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺肥大症薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、抗痔剤、向精神剤、抗下痢剤、粘液溶解剤、充血緩和剤、下剤、ビタミン、興奮剤、食欲抑制剤、避妊薬、タンパク質、ペプチド、糖、天然薬、およびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1製薬活性剤が、1以上の薬剤またはステロイドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記薬剤が:
抗生物質、抗ウイルス剤、抗原、ワクチン、血管拡張剤、血管収縮剤、免疫調節化合物、サイトカイン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、気管支拡張剤、ホルモン、カルシトニン、インシュリン、エリスロポエチン、成長ホルモン、およびこれらの混合物。
からなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1製薬活性剤が結腸に運搬される、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記第一製薬活性剤が:
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、およびアスピリン;ステロイド、避妊薬、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、気管支拡張剤、抗狭心症剤、降圧剤、鎮痙薬、抗結腸炎薬、抗不整脈剤、抗腫瘍薬、タンパク質、ペプチドドラッグ、インターフェロン、カルシトニン、ロイプロリド、腫瘍壊死因子、骨成長因子、メラニン細胞刺激ホルモン、カプトプリル、ソマトスタチン、ソマトスタチンオクタペプチド類似体、シクロスポリン、レニン阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、ワクチン、抗凝血剤、抗偏頭痛薬、オンダステロン拮抗薬、メントール、抗生物質、ベータ−ラクタム、セファロスポリン、マクロライド、胃十二指腸粘膜をNSAID損傷から保護するための類似体およびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1製薬活性剤が消化管に運搬される、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記第1製薬活性剤が胃および/または小腸に運搬される、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記第1製薬活性剤が胃腸管に運搬される、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
前記第1製薬活性剤が造影剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記造影剤が、硫酸バリウム、シアトリゾエートナトリウムヨウ素含有造影剤、超音波造影剤、磁気共鳴造影剤、磁気共鳴造影増強剤、断層撮影剤、陽電子放射剤の1以上である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記製薬活性剤が、アジスロマイシンであり、前記pH感受性または塩感受性マトリクス組成物が、約7.0以上のpHで溶解性であり小腸または結腸にアジスロマイシンを運搬するpH依存性のアニオン性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記製薬組成物が、シュードエフェドリンであり、前記pH感受性または塩感受性マトリクス組成物が約7.0以上のpHで溶解性であり小腸または結腸にアジスロマイシンを運搬するpH依存性のアニオン性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項42】
前記ナノ粒子が、さらにカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項43】
前記マイクロ粒子が約20ミクロン〜約100ミクロンのサイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
前記ナノ粒子のそれぞれが、約0.01ミクロン〜約5ミクロンの平均サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項45】
前記第1製薬活性剤が、前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子に組み込まれ、前記pHまたは塩感受性材料の前記溶液への接触によって前記第1製薬剤を放出してバーストを供給し、その後前記第1製薬剤が継続的に長期間にわたって放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
前記長期間が1日から数週間の範囲である、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記溶液への接触によって前記第2製薬剤を放出してバーストを供給し、その後前記第1製薬剤が継続的に長期間にわたって放出される、請求項2に記載の組成物。
【請求項48】
前記長期間が1日から数週間の範囲である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
複数個の固体ナノ粒子を含み前記複数個の固体ナノ粒子がpH感受性または塩感受性マイクロ粒子に封入され、前記pH感受性または塩感受性マイクロ粒子がpH感受性または塩感受性マトリクス材料から形成され、前記第1製薬活性剤が前記固体ナノ粒子もしくは前記マイクロ粒子または前記固体ナノ粒子および前記マイクロ粒子の両方に、哺乳類への1回または複数回の投与によって前記製薬活性剤を放出するのに十分な質で製薬上および生理的に適当な担体とともに組み込まれる制御放出組成物を含む、製薬組成物。
【請求項50】
前記剤形が、粉末、錠剤、カプセル、および注射用組成物である、請求項49に記載の製薬組成物。
【請求項51】
請求項1に記載の組成物から形成される製品。
【請求項52】
活性基質をあらかじめ選択された環境に運搬するための、複数個の固体ナノ粒子を含み、前記複数個の固体ナノ粒子がpH感受性または塩感受性マイクロ粒子に封入され、前記pH感受性または塩感受性マイクロ粒子がpH感受性または塩感受性マトリクス材料から形成され、前記第1製薬活性剤が前記固体ナノ粒子もしくは前記マイクロ粒子または前記固体ナノ粒子および前記マイクロ粒子の両方に組み込まれる、
制御放出組成物が前記環境に導入されることによって、前記組成物の分解および前記活性剤の放出が可能になる、
前記制御放出組成物を前記環境に導入することを含む方法。
【請求項53】
前記環境が胃または小腸である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記pH感受性マイクロ粒子が約3〜約12の範囲のpHを有する溶液に接触したとき、前記pH感受性マイクロ粒子が分解または溶解する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記pH感受性材料が、
炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、エステルフタル酸セルロース、エーテルフタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、フタル酸水素ポリビニル酢酸、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンおよびマレイン酸のコポリマー、ゼラチン、グルテン、セラック、ザロール、ケラチン、ケラチンサンダラック−トル、アンモニアセラック、ベンゾフェニルサリチレート、セルロースアセテートトリメリテート、セラック混合セルロースアセテート、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、酸化セルロース、ポリアクリル酸誘導体、アクリル酸およびアクリル酸エステルのコポリマー、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアセテート、クロトン酸コポリマーおよびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記複数個のナノ粒子の第1部分が、前記複数個のナノ粒子の第2部分に、pH感受性または塩感受性マトリクス材料で接着している、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記マイクロ粒子の前記pH感受性または塩感受性材料に混合された湿度感受性材料をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記活性剤が:
鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、制吐剤、抗てんかん剤、血管拡張剤、鎮咳薬、去たん剤、抗低血圧剤、抗炎症薬、駆虫剤、抗不整脈薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風薬、降圧薬、抗マラリア剤、抗偏頭痛薬、ムスカリン性受容体拮抗薬、抗腫瘍薬、抗脳卒中薬、勃起障害改善薬、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静剤、催眠剤、神経弛緩剤、ベータ−阻害剤、強心薬、副腎皮質ホルモン、利尿剤、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗剤、角質溶解剤、脂質調整薬、抗狭心症薬、COX2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤、性ホルモン、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、認識力増強剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺肥大症薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、抗痔剤、向精神剤、抗下痢剤、粘液溶解剤、充血緩和剤、下剤、ビタミン、興奮剤、食欲抑制剤、避妊薬、タンパク質、ペプチド、糖、天然薬、およびこれらの混合物
からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記第1製薬活性剤が、製薬剤、化粧品物質、薬剤またはステロイドの1以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記活性剤が:
抗生物質、抗ウイルス剤、抗原、ワクチン、血管拡張剤、血管収縮剤、免疫調節化合物、サイトカイン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、気管支拡張剤、ホルモン、カルシトニン、インシュリン、エリスロポエチン、成長ホルモン、およびこれらの混合物。
からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記活性剤が結腸に運搬される、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
前記活性剤が消化管に運搬される、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記活性剤が胃および/または小腸に運搬される、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
前記活性剤が胃腸管に運搬される、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
前記活性剤が造影剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項66】
前記造影剤が、硫酸バリウム、シアトリゾエートナトリウムおよびヨウ素含有造影剤の1以上である、請求項52に記載の方法。
【請求項67】
前記固体ナノ粒子もしくは前記マイクロ粒子または前記ナノ粒子および前記マイクロ粒子の両方に組み込まれる生体接着材料をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項68】
前記生体接着材料が、生体接着ポリマーである、請求項52に記載の方法。
【請求項69】
前記ナノ粒子が、さらに配位子を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項70】
前記ナノ粒子が、レクチンウイルスタンパク質、細菌タンパク質、モノクローナル抗体および抗体フラグメントを含む群から選択される標的化材料を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項71】
疎水性材料を融点を超える温度に加熱して溶融体を形成し;
第1製薬活性剤を前記溶融体に溶解または分散させ;
第2活性剤、およびpH感受性マトリクスを水相に溶解または分散させ、前記疎水性材料の融解温度超に加熱し;
加熱した溶融体を水相に混合して分散液を形成し;
均質な微細分散液が得られるまで前記分散液を融解温度を超える温度で高い剪断力で均質化し;
前記分散液を室温まで冷却し;そして、
乳化した混合懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成させる、
段階を含む、多成分制御放出システムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510666(P2006−510666A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559045(P2004−559045)
【出願日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/026142
【国際公開番号】WO2004/052339
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(503272069)サルヴォナ エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】