説明

pH依存性薬剤化合物、pH調整剤および遅延剤を含む医薬組成物

本発明は、pH依存性薬剤化合物およびpH調整剤を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH依存性薬剤化合物を含む医薬組成物、そのような組成物の使用および製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
pH依存性薬剤化合物は、消化管に沿って顕著なpH依存性溶解度を示す。それらは、絶食時の健康な対象で予測される低い胃pHでは可溶性である。しかしながら、高い腸pH環境では、それらは沈殿するかもしれず、かつ/または溶解が不完全であるかもしれない。加えて、食物摂取、医学的処置、および病態生理学的状態が胃pHを上昇し得て、その結果、薬剤溶解は減少し得る。不完全な溶解は、pH依存性薬剤化合物の非常に可変性の患者内および患者間バイオアベイラビリティをもたらし得る。
【0003】
pH調整剤、例えば有機酸の経口投与形態への混合は、微小環境pHを調節し、それにより薬剤溶解度および薬剤溶解を促進する。加えて、pH非依存性薬剤放出が達成できる。しかしながら、pH調整剤は、典型的に薬剤化合物と比較して高いpH環境で高い溶解度を示し、急速に拡散し、その結果固体投与形態中に存在するpH依存性薬剤化合物から急速に分離する。ポリマー類をpH調整剤の急速な拡散を遅延させるため、故に、固体投与形態内の標的pHを維持するに使用できる。しかしながら、ポリマー類の使用は、典型的に、例えば長時間にわたる、例えば10時間にわたるおよびそれより長い、薬剤放出を伴う放出調節製剤に終わる。このような放出調節製剤からの薬剤化合物の完全な吸収は、生理学的状態だけでなく、薬剤化合物自体にも非常に依存し得る。例えば、腸管の非常に特異的な部位、例えば上部、例えば小腸でしか吸収されない薬剤化合物は、高い対象内および対象間可変性および減少したバイオアベイラビリティを示し得る。
【0004】
従って、減少した対象内および対象間可変性および増加したバイオアベイラビリティを有する、pH依存性薬剤化合物を含む医薬組成物の必要性がある。驚くべきことに、本発明者らは、pH依存性薬剤化合物およびpH調整剤を含む改善された医薬組成物を同定し、ここで、該pH調整剤が製剤内に、例えば全溶解時間にわたり存在し、例えば薬剤化合物と同時に放出される。
【発明の開示】
【0005】
一つの局面において、本発明は、pH依存性薬剤化合物、pH調整剤および遅延剤、例えばポリマー、例えば水溶性ポリマーを含む医薬組成物であって、ここで、該薬剤の該医薬組成物からの放出が、例えば消化器液と接触してから、4時間の最大溶解時間の後に、例えば、約1から4時間の溶解時間以内に、例えば1から2時間以内に、または1から3時間以内に、または約2から4時間以内に、例えば2から3時間以内に完了する。
【0006】
本発明のさらなる局面において、例えば、薬剤および酸の胃への何らかの早期の放出を防止するためおよび/または薬剤および酸の溶解に対する個々に異なる胃pH効果を抑制するため、例えば腸管上部、例えば小腸への均一な薬剤溶解を確実にするために、付加的な腸溶性コーティングを適用してよい。
【0007】
さらに別の局面において、本発明は、例えば、約5.5の腸で腸溶性コートの溶解を提供するために、酸コアと腸溶性コーティングの間に遮断(isolation)コートを提供する。
【0008】
本発明のさらに別の局面において、本医薬組成物は多微粒子(multiparticulate)系、例えば、ミニタブレットまたはペレットの形である。このような多微粒子系は一体化系を越える利点、例えば、改善された輸送再現性および/または消化管での高い程度の分散を示し、減少した対象内および対象間可変性および改善されたバイオアベイラビリティをもたらす。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特性、利点および対象は、以下の明細書、添付の特許請求の範囲および図面を参照して、当業者にはさらに理解され、認識されるであろう。
【0010】
図面の簡単な説明
明細書に取りこまれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的態様を説明する。
図1は薬剤とpH調整剤の同時の放出率を示す。
図2は薬剤放出に対するpH調整剤の影響を示す。
図3は溶解媒体pH非依存性の薬剤放出を示す。
【0011】
本発明の組成物は、特に腸管上部、例えば小腸における、pH依存性薬剤化合物の短期間放出調節を提供し、減少した患者内および患者間可変性および改善されたバイオアベイラビリティを示す。
【0012】
発明の詳細な説明
ここで使用する用語“薬剤”は、治療的または薬理学的効果を有する任意の化合物、物質、薬剤、医薬または活性成分を意味し、それは哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に適する。このような薬剤は“治療的有効量”で投与すべきである。
【0013】
ここで使用する用語“治療的有効量”は、哺乳動物が患っている疾患または状態の症状を軽減し、除き、処置し、予防し、または制御するのに有効な量または濃度を意味する。用語“制御”は、哺乳動物が患っている疾患または状態の進行の遅延、中断、阻止または停止であり得る全ての過程を言うことを意図する。しかしながら、“制御”は、全ての疾患および状態の完全な排除を必ずしも示さず、予防的処置を含むことを意図する。
【0014】
適当な治療的有効量は、使用する治療用化合物および扱う適応症により変化する量として当業者には既知である。
【0015】
本発明に特に適する薬剤およびそれらの塩は、pH依存性の、特に弱塩基性の薬剤、例えばpH1とpH6の溶解度差異が>100である全ての薬剤である。
【0016】
本薬剤は、組成物の約60重量%まで、組成物の約1%から約60重量%までの量で存在し得る。しかしながら、薬剤の特定濃度の選択は、豐形態ならびに対象のサイズおよび状態を含む、医薬分野で既知の因子に従いなすことが意図される。
【0017】
本発明の適当なpH調整剤は、酸、例えば無機酸、例えば環境温度で固体である水溶性無機酸、例えばスルファミン酸を含む。
【0018】
適当な有機酸は、1個以上の酸性基、例えばカルボン酸およびスルホン酸基から選択される酸性基を含み、特に環境温度で固体のものである。
【0019】
適当な水溶性有機酸は、例えば環境温度で固体である、一、二または多塩基性カルボン酸またはモノ、ジまたはトリスルホン酸から選択される水溶性有機酸である。適当な固体水溶性カルボン酸は、例えば2〜8個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子を含む脂肪族モノまたはポリカルボン酸、例えば4〜6個、例えば4個の炭素原子を含む、例えば飽和または不飽和の全またはトリカルボン酸を含む。適当な固体水溶性脂肪族モノカルボン酸の例は、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)を含む。適当な固体水溶性脂肪族ジカルボン酸の例は、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸またはフマル酸を含む。本脂肪族カルボン酸は、所望により、カルボキシ、アミノおよびヒドロキシから選択される、同一または異なり得る1個以上の基、例えば1個、2個または3個の基で置換されていてよい。適当な置換固体水溶性脂肪族カルボン酸は、例えばグルコン酸、乳酸の固体形態、グリコール酸またはアスコルビン酸のようなヒドロキシ置換脂肪族一カルボン酸;リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸(ヒドロキシマロン酸)、または粘液酸(ガラクタル酸)のようなヒドロキシ置換脂肪族二カルボン酸;ヒドロキシ2s置換脂肪族三カルボン酸、例えばクエン酸;またはグルタミン酸またはアスパラギン酸のような酸性側鎖を担持するアミノ酸を含む。
【0020】
適当な芳香族性カルボン酸は、14個までの炭素原子を含む水溶性アリールカルボン酸を含む。適当なアリールカルボン酸は、1個以上のカルボキシル基、例えば1個、2個または3個のカルボキシ基を担持するアリール基、例えばフェニルまたはナフチル基を含む。本アリール基は、所望によりヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、例えばメトキシ、およびスルホニルから選択される、同一または異なり得る1個以上の基、例えば1個、2個または3個の基で置換されていてよい。適当なアリールカルボン酸は、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはトリメリト酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)を含む。
【0021】
好ましくは、本pH調整剤はクエン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸およびマレイン酸から選択される。好ましくはフマル酸を使用する。
【0022】
本発明に特に適するpH調整剤は、微小環境pHをより酸性方向へと変え、それにより薬剤の溶解が困難である、例えば不溶性であるpH値で、投与形態からの薬剤の放出速度を増加させるものである。
【0023】
本pH調整剤は、組成物の約1%から約60重量%、例えば、組成物の約10%から約40重量%を構成する。本発明の組成物中のpH調整剤対薬剤化合物の比率は約0.2:1から約2:1、例えば1:1であり得る。
【0024】
遅延剤として、ポリマー類、例えば水溶性ポリマー類、例えば、約100cpsより大きい粘性、例えば約100から約100,000cpsの粘性を有する、例えばセルロース誘導体を使用できる。好ましくは水溶性ポリマー類を使用できる。
【0025】
適当なポリマー類はセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースk100LV、K4M、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースK15M、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、例えばエチルセルロース100、酢酸セルロース、例えば酢酸セルロースCA−398−10NF、酢酸フタル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル誘導体、例えばポリアクリレート、例えば架橋ポリアクリレート、メタクリル酸(methycrylic acid)コポリマー類、ビニルポリマー類、例えばポリビニルピロリドン、酢酸ポリビニル、または酢酸フタル酸ポリビニルおよび商品名Kollidon SR(登録商標)の下に販売されているようなそれらの混合物、ポリエチレングリコール、ポリアンハイドライド、ポリサッカライド、例えばキサンタン、例えばキサンタンガム、ガラクトマンナン、ペクチン、およびアルギネートを含むが、これらに限定されない。
【0026】
好ましいポリマー類は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばMethocel K100LV、Methocel K4MおよびMethocel K100Mを含む。
【0027】
本ポリマーは、組成物の約10%から約60重量%、例えば組成物の約30%から約60重量%を構成する。
【0028】
本発明のある例示的態様において、本医薬組成物は、医薬組成物中に一般的に見られる付加的な賦形剤を含んでよく、そのような賦形剤の例は、流動促進剤、滑剤、抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定化剤、防腐剤、香味剤、甘味剤および、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003)(これは引用により本明細書に包含する)に記載のような他の成分を含むが、これらに限定されない。
【0029】
これらの付加的な賦形剤は、全医薬組成物の約0.05−11重量%、例えば全組成物の約0.5から約2重量%を構成し得る。抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定化剤または防腐剤は、典型的に全医薬組成物の約0.05−1重量%まで提供される。甘味剤または香味剤は、典型的に全医薬組成物の約2.5%または5重量%まで提供する。
【0030】
適当な滑剤はステアリン酸マグネシウム、タルク、水素化ヒマシ油、グリセリルベハプテート(glycerylbehaptate)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドポリマー類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、DL−ロイシン、コロイド状シリカ、および当分野で既知のその他を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、組成物の重量の約0から3%、例えば約0.5から3%、例えば1%滑剤を含み得る。
【0031】
適当な増量剤は、例えば無水または水和形態のラクトース、糖、デンプン、例えばコーン、小麦、メイズまたはポテトデンプン、修飾デンプン、例えばデンプン水解物または前ゼラチン化デンプン、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、マルトース、グルコース無水物;無機塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸、または硫酸カルシウム、微晶性セルロース、セルロース誘導体および当分野で既知のその他を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、組成物重量の約0から65%、例えば約3から65%増量剤を含み得る。
【0032】
適当な流動促進剤はAerosil 200またはタルクおよび当分野で既知のその他を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、組成物の重量の約0から2%流動促進剤を含み得る。
【0033】
適当な結合剤は、既知であり、BASF社から商品名Povidone(登録商標)の下に販売されているようなポリビニルピロリドン(PVP)、例えばPVP K30またはPVP K12;またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えば低い見かけの粘性を有する、例えば20℃で2重量%水性溶液について測定して100cps未満、例えば50cps未満、好ましくは20cps未満のHMPC、例えば既知であり、信越社から商品名Pharmacoat(登録商標) 603の下に販売されているようなHPMC 3cpsを含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、組成物の重量の約0から5%、例えば約0.5から5%結合剤を含み得る。
【0034】
抗酸化剤の例は、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシルアニソールおよびブチルヒドロキシルトルエンを含むが、これらに限定されない。α−トコフェロールとしてのビタミンEが特に有用である。
【0035】
本発明のさらなる局面において、例えば、上記の通りのミニタブレットの形で医薬組成物を製造する方法が提供され、その方法は、活性成分、有機酸、ポリマー、および任意の付加的な錠剤化賦形剤を混合し、水または有機溶媒で湿式造粒することを含む。例えば、ミニタブレットの形での製造のために、乾燥した顆粒を、400μm篩いを通して篩ってよい。例えば商品名Aerosilの下に入手可能な二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから成る外相を添加し、激しく混合し得る。本混合物を、例えば1.5から約4mm、例えば1.7から2mmの直径のミニタブレットに圧縮し得る。得られるミニタブレットをカプセル、例えば硬ゼラチンまたはデンプンカプセルに封入してよく、またはサシェットで提供してよい。
【0036】
本発明のさらに別の局面において、例えば、上記の通りのペレットで医薬組成物を製造する方法が提供され、その方法は活性成分、有機酸、ポリマーおよび例えば微晶性セルロースを遊星ミキサー中で根号することにより乾燥混合物を製造することを含む。精製水を添加して、湿潤塊を得て、それを続いて適当なサイズの篩いを使用して押し出し得る。本押し出し物をスフェロナイザーで丸め、徹底的に乾燥させ、適当なサイズ選択のために篩い、例えば、短時間型放出調節ペレットを得ることができる。
【0037】
本発明のさらなる態様において、腸溶性コーティングをミニタブレットまたはペレットに提供する。
【0038】
ここで使用する用語“腸溶性コーティング”は、投与形態が胃で、例えばpH1から2乃至pH5までで早くも溶解することを保護するコーティングを意味する。
【0039】
本発明の腸溶性コーティングは以下を含み得る(パーセンテージは最終コーティングミニタブレットまたはペレットの%に関する)
・腸溶性コーティング用の2−40%ポリマー類、例えば、商品名HP 50またはHP 55の下に信越から入手可能である、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、例えば信越から商品名Aqoat H、M、またはLの下に商業的に入手可能な酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばRoehm Pharmaから商品名Eudragit L、S、L100-55、またはL30Dの下に、Colorconから商品名Acryl-Ezeの下に、またはBASFから商品名Kollicoat MAE 30 DPの下に商業的に入手可能なメチルアクリル酸−エチルアクリル酸コポリマー(メタクリル酸コポリマー、USP)、例えばFMC Biopolymerから商品名Aquacoat CPDの下に商業的に入手可能なフタル酸酢酸セルロース、またはEastman KodakからのPolymer、例えばColorconから商品名Suretericの下に商業的に入手可能な酢酸フタル酸ポリビニル
・サブコーティング(錠剤コアと腸溶性コートの間の遮断コート)用0−15%ポリマー類:例えば商品名Pharmacoat 603または606の下に商業的に入手可能なヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、Colorconから商品名Aquacoat ECD、FMC Biopolymer、またはSureleaseの下に商業的に入手可能なエチルセルロース、およびエチルセルロース:HPMC=1:1から1:10までのそれらの混合物、例えばColorconから商品名Opadry II HP, type 85Fの下に入手可能なポリビニルアルコール
・0−10%可塑剤、例えばトリアセチン、クエン酸トリエチル、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸アセチルトリエチル、など
・0−15%固着防止剤、例えば商品名Aerosil 200、Syloid 244 FP、タルク、モノステアリン酸グリセロールの下に商業的に入手可能な例えば二酸化ケイ素など
・水部分有りまたは無しの有機溶媒またはそれらの混合物、例えばエタノール、アセトン、イソプロパノール、またはコーティングポリマー類およびコーティング溶液のための賦形剤を溶解または分散するために必要な場合水
・水性腸溶性コーティング懸濁液にポリマー類を再分散するための、例えばEudragit L100-55を再分散するための0−0.5%水酸化ナトリウム。
【0040】
本発明のさらなる局面は、ここで定義の医薬組成物のコーティング方法を提供し、該方法は
有機腸溶性コーティング溶液の場合:
(1)腸溶性コーティングポリマーおよび可塑剤を有機溶媒に溶解し、そして
(2)固着防止剤を分散させることを含む。
【0041】
水性分散からのコーティングの場合:
(1)可塑剤を水中に溶解するか微細分散させ、
(2)固着防止剤を分散させ、そして最後に
(3)再構成した懸濁液(例えばAqoatまたはEudragit L 100-55)または市販の水性ポリマー分散(例えばEudragit L 30D, Acryl-Aze, Kollicoat MAE 30 D)を添加する
ことを含む。
【0042】
所望により遮断コートは、例えば、適当なポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(4−8%)、可塑剤(0−3%)および固着防止剤(0−3%)を含む水性溶液で適用してよい。水性エチルセルロース分散、例えばAquacoat ECDまたはSureleaseを1:10から1:1(エチルセルロース:HPMC)までの範囲で添加し、サブコーティングの遮断効果を改善し得る。ミニタブレット/ペレットサイズに基づいて、適用するサブコートの総量は3−15%(より確実には5−10%)であり得る。コア重量の2−10%の範囲のポリビニルアルコール(Opadry II HP)を有効なサブコーティングのために用い得る。
さらなる局面において、HPMCサブコートを、何らさらなる添加剤無く、エタノール/アセトン1:1中の有機懸濁液(溶媒あたり約6−10%ポリマー)の形で適用し得る。
【0043】
腸溶性コーティングおよび/またはサブコートは、例えばウルスター原則を有するまたは有しないパン・コーターまたは流動床コーターを使用して、例えば約5から15mmの直径を有する例えば大きな錠剤については、投与形態の2から45重量%、例えば約10−25%、および例えば約1.5から4mm、例えば1.7から2mmの直径を有する例えば小さな錠剤については、約20−40%のコーティング層まで適用できる。サブコーティング層は、例えば大きな錠剤については投与形態の約2−15重量%、例えば約4−10%、および、例えば小さな錠剤、例えばミニタブレット、またはペレットについては約8−15%を構成し得る。腸溶性コーティング層は、例えば大きな錠剤については投与形態の約5−40重量%、例えば約8−20%、および、例えば小さな錠剤、例えばミニタブレット、またはペレットについては約15−30%を構成し得る:本層は、人工胃液または0.1N HCL溶液中で1−3時間の腸溶性抵抗性を確実にするためにミニタブレット/ペレットサイズの大きさに依存し得る(欧州薬局方または米国薬局方に従う)。加えて、胃抵抗性試験中のコアの膨張を最小限に抑えなければならない。
【0044】
さらなる局面において、本発明は、例えば、腸溶性コートされていない投与形態の場合、胃で、または腸溶性コートされた投与形態の場合、腸管上部、例えば小腸で、例えば、消化器液と接触してから4時間以内に、完全な薬剤放出、例えば投与形態の完全な崩壊を提供する上記で定義の医薬組成物を規定する。例えば完全な薬剤放出は、約1から4時間以内、例えば1から3時間または1から2時間以内、または約2から4時間、例えば2から3時間以内に提供され得る。
【0045】
本発明の全ての医薬組成物の有用性は、標準臨床試験で、例えば、薬剤の治療的に有効な血中濃度を提供する薬剤投与量の既知の適応症で、例えば、75kg哺乳動物、例えば、成人および標準動物モデルで2.5−1000mgの薬剤/日を使用して観察できる。本組成物により提供される薬剤の増加したバイオアベイラビリティは、標準動物試験および臨床試験で観察できる。
【0046】
以下の実施例はここに記載の本発明を説明するが、その範囲を限定するために供しない。実施例は、本発明の実施法を示唆することのみを意図する。各実施例において使用する、医薬組成物の重量%で示される成分の量は、各記載の後に位置する各表に明示する。
【実施例】
【0047】
1. ミニタブレット
薬剤、有機酸、ポリマー、および全ての付加的な錠剤化賦形を混合し、乳鉢中、水または有機溶媒と湿式造粒する。40℃で乾燥後、ミニタブレットの製造のための乾燥顆粒を400μm篩いを通して篩う。二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを含む外相を添加し、徹底的に混合する。混合物を、1.7から2mmの直径を有するミニタブレットに圧縮する。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
2. ペレット:
活性成分、有機酸、ポリマーおよび例えば微晶性セルロースを遊星ミキサー中で混合することにより乾燥混合物を製造する。精製水を添加して湿潤塊を得て、それを続いて適当なサイズの篩いを使用して押し出す。本押し出し物をスフェロナイザーで丸め、徹底的に乾燥させ、適当なサイズ選択のために篩い、短時間型放出調節ペレットを得る。
【表7】

【0055】
3. 腸溶性コーティング:
実施例1から4:
サブコートの製造:
サブコートをポリマーの水性溶液、可塑剤および固着防止剤から製造する。所望により水性エチルセルロース分散(Aquacoat ECDまたはSurelease)を添加する。あるいは、水またはエタノール/アセトン1:1中のポリマーの有機懸濁液を製造する。
【0056】
腸溶性コートの製造:
有機腸溶性コーティング溶液の場合、腸溶性コーティングポリマーおよび可塑剤を有機溶媒中に溶解後、固着防止剤を分散させる。水性分散からのコーティングの場合、可塑剤を水に溶解するか微細分散させ、固着防止剤を分散させ、そして最後に再構成した懸濁液(すなわちAqoatまたはEudragit L 100-55)または市販の水性ポリマー分散(Eudragit L 30D, Acryl-Aze, Kollicoat MAE 30 D)を添加する。
【0057】
コーティング法:
コーティングを、ウルスター原則を有するまたは有しないパン・コーターまたは流動床コーターを使用して、2から45%(大きな錠剤については約10−25%および小さな錠剤/ミニタブレットについては20−40%)のコーティング層まで適用する。サブコーティング層:2−15%(大きな錠剤4−10%、ミニタブレット/ペレット:8−15%)/腸溶性コーティング層:5−40%(大きな錠剤:8−20%、ミニタブレット/ペレット:15−30%)本層は、人工胃液または0.1N HCL溶液中で1−3時間の腸溶性抵抗性を確実にするためにミニタブレット/ペレットサイズの大きさに依存し得る(欧州薬局方または米国薬局方に従う)。加えて、胃抵抗性試験中のコアの膨張を最小限に抑えなければならない。
【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
【表11】

【0062】
【表12】

【0063】
【表13】

【0064】
4. インビトロ溶解試験
溶解試験をUSP 1装置(100rpm、37℃、および500ml溶解媒体)で行う。錠剤を一定pH媒体(リン酸緩衝液、pH=6.8)に6時間の間隔で曝す。0.1%SDSを緩衝液に添加して、沈降(sink)条件を作る。予定した間隔でサンプルを溶解媒体から取り、0.45μm膜フィルターを通して濾過する。ジピリダモールを410nm波長で分光光度法で測定し(Perkin Elmer UV/VIS)、一方酸放出をHPLCで定量する。一定溶解容量を維持するために等量の新鮮緩衝液を添加する。全実験はトリプリケートで行う。
【0065】
HPLCアッセイ
クロマトグラフィーを、データ解析のためのChromeleonソフトウエアを備えたAgilent HPLC, HP1100で行う。最初の8分の間、移動相は、リン酸でpH2.7に調節した0.1M NHPO緩衝液から成る。その後、勾配(アセトニトリル/NHPO緩衝液(pH2.7))を使用して、残っている可能性のある薬剤化合物を完全に除く。Inertsil C8-3.5μm, 4.6*150mm(Erchatech AG, Switzerland)を使用して、分離を達成する。1ml/分の流速、5μL(FA)および10μL(CAおよびSA)の注入容量、および15分のラン時間を適用する。クロマトグラムを210nmで記録する。
【0066】
4.1 Methocel K4M 30%ベースの錠剤からの薬剤化合物ジピリダモール10%(図1中白三角)およびフマル酸(種々の濃度)(図1中黒丸)の同時の溶出を図1に証明する。
溶解条件:a)リン酸緩衝液pH6.8、SDS 0.1%;b)0.01N HCl。薬剤をUV分光分析(波長:410nm)で、フマル酸をHPLCで分析する。
【0067】
4.2 薬剤化合物(ジピリダモール10%)のMethocel K100LV 30%ベースの錠剤からの有利に対するpH調整剤(図2中、黒丸として示すフマル酸20%w/w、黒三角として示すコハク酸20%w/w、および白丸として示す酸無し)の影響を図2に証明する。溶解条件:リン酸緩衝液pH6.8;SDS 0.1%。薬剤をUV分光分析(波長:410nm)で分析する。
【0068】
4.3 フマル酸(図3において白三角で示すフマル酸添加(pH6.8)、黒三角で示すフマル酸添加(pH2)および白四角で示すフマル酸非添加(pH2))添加および非添加の薬剤放出のpH非依存性を図3に証明する。溶解条件:a)リン酸緩衝液pH6.8、SDS 0.1%;b)0.01N HCl。薬剤をUV分光分析(波長:410nm)で分析する。
【0069】
pH依存性薬剤化合物の溶解が高いpH環境で高められる。pH調整剤、例えばフマル酸の混合は、固体投与形態、例えばミニタブレット/ペレット内および近接部位のpHをより酸性方向へと変え、それにより薬剤溶解度および溶解を高める。ポリマーは投与形態内および周囲のpHの維持を助ける。薬剤およびpH調整剤の同時の放出率が、全溶解を通して達成される。
【0070】
本発明をその詳細な記載と関連して記載しているが、上記の記載は説明を意図し、本発明の範囲を限定することを意図せず、それは添付の特許請求の範囲により定義される。他の態様、利点、および改変は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】薬剤とpH調整剤の同時の放出率を示す。
【図2】薬剤放出に対するpH調整剤の影響を示す。
【図3】溶解媒体pH非依存性の薬剤放出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH依存性薬剤化合物、pH調整剤および遅延剤を含む医薬組成物であって、該薬剤の該医薬組成物からの放出が1〜4時間の最大溶解時間の後に完了する、医薬組成物。
【請求項2】
該薬剤の該医薬組成物からの放出が2〜4時間の最大溶解時間後に完了する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
pH調整剤がクエン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸およびマレイン酸から選択される有機酸である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
遅延剤がポリマー、例えば水溶性ポリマーである、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬剤およびpH調整剤が医薬組成物から同時に放出される、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
腸溶性コーティングを含む、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
酸コアと腸溶性コーティングの間に遮断(isolation)コートをさらに含む、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
ミニタブレットまたはペレットの形である、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
pH依存性薬剤、フマル酸およびセルロース誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
低下した対象内および対象間可変性および改善されたバイオアベイラビリティを提供するための、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
1〜4時間の最大溶解時間後に医薬組成物からの薬剤の完全な放出を提供するための、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
腸管上部で医薬組成物からの薬剤の完全な放出を提供するための、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−504796(P2009−504796A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527383(P2008−527383)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008243
【国際公開番号】WO2007/022956
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】