説明

pH非依存延長放出性医薬組成物

【課題】胃と腸管の間で出会う広範囲のpH値にわたりより均一に放出される酸性薬物を含む医薬組成物の提供。
【解決手段】酸性薬物を約10〜約40重量%の中性水膨潤性親水性ポリマー及び20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤する酸溶解性ポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含む。特に好ましい組成物はジバルプロエックスナトリウムを含む。錠剤化前顆粒、並びに錠剤化前顆粒及び錠剤の単位剤型の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物に関する。より詳しくは、本発明は、放出速度のpH依存度が低い酸性薬物含有延長放出性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胃液の正常pHは約1であり、腸管中のpHは平均約7である。この事実が、所謂「腸溶」医薬組成物に長年利用されてきた。前記組成物は通常、酸性溶液中には溶解しないかまたは殆ど溶解しないが、高pHでは急速に溶解する物質をコートした錠剤の形態を有する。腸溶組成物により、胃壁が炎症しているような胃に放出されたときに問題がある薬物を経口投与することができる。更に、腸溶錠により、薬物の放出を延長することができる。例えば、錠剤を、一部を腸溶コーティングし、また一部を腸溶コーティングしていない薬物含有顆粒を圧縮することにより作成する。錠剤が崩壊するにつれて、非腸溶顆粒は胃において溶解し、直ちに薬物が放出されるのに対し、腸溶顆粒は腸を通過した後溶解し、薬物が放出される。このようにして、薬物放出は薬物が胃及び腸に滞留している間延長され得る。前記した延長放出システムは未完成であり、本質的に薬物は2様式で放出される。通常、上記したタイプの部分腸溶組成物よりも薬物をよりスムーズに長時間放出することが望ましい。
【0003】
酸性薬物のスムーズな制御放出を達成するために、幾つかのシステムが考案された。これらは浸透システム、溶解システム及び拡散システムの3つに大別される。浸透システムの例は、薬物コアとそれを包囲する小オリフィスを有する半透膜からなる錠剤である。錠剤が水性体液に曝されると、水は浸透圧の差により半透膜を介して錠剤に流れる。その後、錠剤内の薬物濃度が飽和以下に下がるまで薬物濃度、オリフィス直径、浸透圧の差等のパラメータにより調節される一定速度でオリフィスを介して錠剤の外に押し出される。
【0004】
溶解システムは、薬物それ自体、特定塩または誘導体の固有溶解速度を利用している。或いは、薬物をゆっくり溶解するコーティングで被覆したり、薬物をゆっくり溶解する担体中に配合し得る。
【0005】
拡散システムには、薬物コアがポリマー膜で包囲されているレザバーデバイス及び溶解もしくは分散薬物が不活性ポリマーマトリックス全体に均一に分布されているマトリックスデバイスが含まれる。レザバーシステムからの薬物の放出は膜を介する薬物の流出を伴い、フィック拡散第1法則によりコントロールされる。錠剤の形態に応じて、放出を表す方程式は変化する。
【0006】
マトリックスシステムでは、薬物放出メカニズムは、まず薬物がデバイスの表面層から溶解し、その後下層から溶解し、薬物非含有上層を介して拡散する等を伴うと推定される。
【0007】
酸性薬物についての徐放または延長放出性組成物の設計は製薬業者にとって特に問題である。胃の中の低pHにより酸のイオン化が抑制される結果前記酸性薬物の胃液中の溶解度は通常低い。一方、酸性薬物は腸において急速に溶解し、時には所望する以上に急速に溶解する。上記した各種システムにより、消化管を移動するにつれてpHにより影響されない薬物の延長放出性組成物を容易に処方できるが、薬物が胃及び腸管の間で広く変化するpH依存性放出速度を有する有利な組成物は提供されていない。
【0008】
1つの酸性薬物は、通常バルプロ酸(VPA)として公知の2−プロピルペンタン酸であり、これはてんかん発作の治療においてまたは抗精神病薬として有効である。米国特許第4,988,731号明細書(Meade)はバルプロ酸ナトリウム及びバルプロ酸の1:1モル比を有し、4単位を含むオリゴマーを開示している。米国特許第5,212,326号明細書(Meade)はバルプロ酸ナトリウム及びバルプロ酸の1:1モル比を有し、4〜6単位を含むオリゴマーからなるバルプロ酸の安定な非吸湿性固体を開示している。1モルの2−プロピルペンタン酸及びそのナトリウム塩から形成される複合体であるジバルプロエックスナトリウム(ジバルプロ酸水素ナトリウム)は、現在入手可能な最も広く許容されている抗てんかん薬の1つである。
【0009】
しかしながら、てんかん治療において有効であるにもかかわらず、バルプロ酸は胃において余り溶解せず、その消失半減期は一般的に使用される他の抗てんかん薬よりも短いことが判明している。薬物の半減期は成人では6〜17時間、小児では4〜14時間と報告されている。このために、特に長期投与した場合血漿濃度が実質的に変動する。妥当な血漿濃度を安定に維持するために、頻繁に投与しなければならず、そのため患者は不便であり、しばしば処方投与レジメへのコンプライアンスが低下する。更に、薬物の血漿濃度が広く変動する結果、保存的投与レジメで治療量以下の薬物しか投与されないことになり、または集中投与レジメでは特定患者により多くの量が投与されることがある。
【0010】
上記欠点を解消するために、投与後一般的には酸性薬物(具体的には、バルプロ酸)の血漿レベルをより一定に維持する組成物を見つけることに努力が払われてきた。これらの研究の最終目的は、前記薬物について1日1回の投与レジメで安定な血漿レベルを与える組成物を見つけることである。前記努力は、(a)身体に対して代謝的により均一に放出される活性成分の形態の発見、及び(b)薬物を徐放または制御放出メカニズムによりデリバリーする組成物の発見の2つのカテゴリーに大別される。
【0011】
バルプロ酸に関して、米国特許第4,369,172号明細書(Schorら)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース及び/またはナトリウムカルボキシメチルセルロースの混合物をベースとする長期放出性治療組成物が例示されている。特許権者はバルプロ酸ナトリウムを含めた組成物に配合され得ると示唆している多くの治療薬をリストしている。
【0012】
米国特許第4,913,906号明細書(Friedmanら)は、バルプロ酸、そのアミド、またはその塩もしくはエステルの1つを天然または合成ポリマーと混合し、高圧下で錠剤に圧縮した制御放出性剤型を開示している。
【0013】
米国特許第5,009,897号明細書(Brinkerら)は、錠剤に圧縮するのに適した顆粒であって、ジパルプロエックスナトリウムのコア及びポリマーと微結晶セルロースの混合物のコーティングからなる顆粒を開示している。
【0014】
米国特許第5,019,398号明細書(Daste)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び水和シリカのマトリックス中にジバルプロエックスナトリウムを含む徐放性錠剤を開示している。
【0015】
米国特許第5,055,306号明細書(Barryら)は、各種治療薬と併用するのに適した発泡または水分散性顆粒状徐放性組成物を開示している。前記顆粒は、活性成分及び少なくとも1つの賦形剤からなるコア、及びエチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー及び水溶性ヒドロキシル化セルロース誘導体からなる水不溶性水膨潤性コーティングからなる。特許権者はバルプロ酸ナトリウムを含めた前記組成物中に使用し得る治療薬のリストを示唆している。
【0016】
米国特許第5,169,642号明細書(Brinkerら)は、ジバルプロエックスナトリウム、またはバルプロ酸のアミドまたはエステルの顆粒をエチルセルロースまたはメチルメタクリレート、可塑剤、粘着防止剤及び徐放性ポリマー粘度剤からなる徐放性組成物でコートした徐放性剤型を開示している。
【0017】
米国特許第5,185,159号明細書(Aubertら)は、結合剤も顆粒化溶媒も使用せずに製造されるバルプロ酸及びバルプロ酸ナトリウムの組成物を開示している。前記組成物は任意に付着防止剤または粘着防止剤として沈降シリカを含む。
【0018】
米国特許第5,589,191号明細書(Exiguaら)は、錠剤を無水ケイ酸含有エチルセルロースでコートした遅放性バルプロ酸ナトリウム錠剤組成物を開示している。
【0019】
国際特許出願公開第94/27587号パンフレット(Ayerら)は、バルプロ酸またはその誘導体をポリアルキレンオキシドと共にデリバリーすることによるてんかんのコントロール方法を開示している。
【0020】
Bailerら,「抗てんかん薬の代謝(Metabolism of Antiepileptic Drugs)」,p.143−151,R.H.Levy編,ニューヨークに所在のRaven Press(1984年)発行、Int.J.Pharmaceutics,20:53−63(1984)、Biopharmaceutics and Drug Disposition,6:401−411(1985)、及びIsrael J.Med.Sci.,20:46−49(1995)は、幾つかのバルプロ酸の徐放性組成物の薬物動態評価を報告している。
【0021】
上記した努力にもかかわらず、溶解及び放出速度の消化管におけるpH変化への依存度が低い一般的には酸性薬物(具体的には、バルプロ酸)の組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4,988,731号明細書
【特許文献2】米国特許第5,212,326号明細書
【特許文献3】米国特許第4,369,172号明細書
【特許文献4】米国特許第4,913,906号明細書
【特許文献5】米国特許第5,009,897号明細書
【特許文献6】米国特許第5,019,398号明細書
【特許文献7】米国特許第5,055,306号明細書
【特許文献8】米国特許第5,169,642号明細書
【特許文献9】米国特許第5,185,159号明細書
【特許文献10】米国特許第5,589,191号明細書
【特許文献11】国際公開第94/27587号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Bailerら,「抗てんかん薬の代謝(Metabolism of Antiepileptic Drugs)」,p.143−151
【非特許文献2】R.H.Levy編,ニューヨークに所在のRaven Press(1984年)発行、Int.J.Pharmaceutics,20:53−63(1984)
【非特許文献3】Biopharmaceutics and Drug Disposition,6:401−411(1985)
【非特許文献4】Israel J.Med.Sci.,20:46−49(1995)
【発明の概要】
【0024】
(発明の要旨)
本発明によれば、放出速度のpH及び胃滞留時間(GRT)への依存度が低い酸性薬物含有延長放出性医薬組成物は、治療有効量の酸性薬物を、a)約10〜約40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の医薬的に許容し得る中性水膨潤性親水性ポリマー及びb)約20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る医薬的に許容し得る酸溶解性ポリマーからなるポリマーマトリックスに溶解または分散して含む。
【0025】
前記組成物は、胃液のpHが低い胃における酸性薬物の放出速度を速め、腸管における中性もしくは僅かにアルカリ性pHでは酸性薬物の放出速度を低下させる。この結果、薬物が胃の酸性環境から上部及び下部腸管の中性もしくは僅かにアルカリ性環境に移動するにつれて薬物はより均一に放出される。加えて、薬物の放出は、薬物の胃の酸性環境における滞留時間に余り依存しない。
【0026】
別の態様では、本発明は、治療有効量のジバルプロエックスナトリウムを約10〜約40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の中性水膨潤性親水性ポリマー及び約20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含む医薬組成物に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、錠剤に圧縮するのに適した乾燥顆粒状組成物に関し、酸性薬物を約10〜約40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の中性水膨潤性親水性ポリマー及び約20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含む粒子からなる。
【0028】
更なる態様では、本発明は錠剤に圧縮するのに適した顆粒状医薬組成物の製造方法に関し、その方法は
a)約5〜約50重量%(%はすべて顆粒の全重量に基づく)の酸性薬物、約20〜約40重量%の中性水膨潤性親水性ポリマー及び約20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーの混合物を乾式混合して、均一混合物を形成するステップ、
b)ステップa)からの乾燥均一混合物を湿式造粒するステップ、及び
c)ステップb)からの湿った顆粒を乾燥、分粒するステップ
を含む。
【0029】
更に別の態様では、本発明は酸性薬物の制御放出性錠剤の製造方法に関し、その方法は
a)約5〜約50重量%の酸性薬物、約20〜約40重量%の中性水膨潤性親水性ポリマー及び約20〜約50重量%の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーの混合物を乾式混合して、均一混合物を形成するステップ、
b)ステップa)からの乾燥均一混合物を湿式造粒するステップ、
c)ステップb)からの湿った顆粒を乾燥、分粒するステップ、及び
d)ステップc)の混合顆粒を約2,000lbf(約8.9×10ニュートン)〜約10,000lbf(約4.45×10ニュートン)の力で圧縮するステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】異なるpH値での、ポリマーマトリックス延長放出性組成物からなるがpH影響を調整する目的の成分を含まない対照医薬組成物からの薬物の放出%を経時的に示すデータのグラフである。
【図2】異なるpH値での、ポリマーマトリックス延長放出性組成物からなり、更に無水二塩基性リン酸カルシウムを含む組成物からの薬物の放出%を経時的に示すデータのグラフである。
【図3】異なるpH値での、ポリマーマトリックス延長放出性組成物からなり、更に非晶質アルミノメタケイ酸マグネシウムを含む組成物からの薬物の放出%を経時的に示すデータのグラフである。
【図4】本発明の好ましい組成物についての異なるpH値での薬物の放出速度を経時的に示すデータのグラフである。
【図5】従来のヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス組成物からのバルプロ酸の放出に対するインビトロ胃滞留時間の影響を示すデータのグラフである。
【図6】本発明の組成物からのバルプロ酸の放出に対するインビトロ胃滞留時間の影響を示すデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(好ましい実施態様の詳細説明)
請求の範囲を含めた本明細書中、用語「徐放または延長放出」、「長期放出」及び「制御放出」は、薬物組成物に対して使用する場合、ペンシルバニア州イーストンに所在のMack Pub.Co.(1990年)発行のRemington’s Pharmaceutical Sciences、18版、p.1677に記載されている意味を有する。徐放または延長放出性薬物システムは、長期間にわたり薬物をゆっくり放出するドラッグデリバリーシステムを含み、ここには長期放出性及び制御放出性システムも含まれる。前記徐放性システムが血液または標的組織中の薬物レベルを実質的に一定に維持するのに有効である場合、これは制御放出性ドラッグデリバリーシステムと見做される。しかしながら、ドラッグデリバリーシステムで実質的に一定の血液または組織薬物レベルを達成できないが、従来のデリバリーで達成されるよりも薬物の作用時間を延長するならば、これは延長放出性システムと見做される。
【0032】
本発明の組成物は、酸性薬物のための長期または延長放出組成物を提供する。用語「酸性薬物」は、治療活性を有し、約6.0未満のpKa値を示す化合物を意味する。他の理論を排除して1つの理論に束縛されないが、本発明の組成物は、薬物が溶解または分散しているマトリックスの2つのポリマー成分の放出に対する影響の相互作用により広い範囲のpH値にわたり酸性薬物の放出速度を均一または調整する。胃の中の低pH値では、酸溶解性ポリマーは薬物の放出に対して最大の効果を有すると考えられる。薬物の溶解度が通常低いこの状況で、酸溶解性またはイオン化ポリマーはプロトン化し、組成物マトリックスを溶解し始める。これにより、薬物がポリマーマトリックスの前記成分中に溶解または分散しているマトリックスの領域での薬物の放出が2つの方法のいずれかまたは両方で促進される。まずマトリックスの酸溶解性ポリマー成分が溶解すると、薬物の放出が物理的に促進され、次に酸性の胃液により酸溶解性ポリマーがプロトン化すると、組成物マトリックスの局部環境のpHが酸性薬物がより安定であるレベルに上昇する。
【0033】
腸で出会う中性またはアルカリ性pH値では、酸溶解性ポリマーはポリマーマトリックスの中性水膨潤性第2成分と共に膨潤し、よって組成物マトリックスから放出するためには酸性薬物が移動しなければならないより曲がりくねったルートを形成する。このようにして、薬物の放出速度が低pH値では加速し、高pH値では低下し、広いpH範囲にわたりより均一または調整された放出速度が得られる。
【0034】
更に、胃の酸性環境及び腸の中性もしくはアルカリ性pHにおける酸性薬物の放出が組成物のポリマーマトリックスにより緩和されるので、薬物の全体の放出は薬物の胃滞留時間に余り依存しない。
【0035】
【表1】

【0036】
Dressmannら,Pharm.Res.,15:1(1998)から写した表1は、給食または絶食状態の患者における各種薬剤サイズの胃滞留時間(GRT)を示す。
【0037】
好ましい実施態様では、本発明は放出速度のpH依存度が低いバルプロ酸の経口剤型を提供する。用語「バルプロ酸」は化合物2−プロピルペンタン酸それ自体、及び通常ジバルプロエックスナトリウムと呼ばれる1モルの2−プロピルペンタン酸とそのナトリウム塩間で形成される複合体を含めた塩を包含すると意味する。ジバルプロエックスナトリウムはMeadeの米国特許第4,988,731号明細書及び同第5,212,326号明細書に記載されており、式:
【0038】
【化1】

(式中、mは2〜約6である)
で表わされ得る。
【0039】
ジバルプロエックスナトリウムはpKaが4.8の典型的な酸性薬物であり、表2に示すようにpH1.0〜6.7の広いpH範囲、すなわち胃と腸管の間のpH差の範囲で広範囲の溶解度を示す。従って、本発明の組成物を例示するための酸性薬物の例として適している。
【0040】
【表2】

【0041】
本発明に達するとき、低pHでの酸性薬物の溶解/放出を速め、高pHでのその放出を遅らす組成物を得るために各種システムが試みられた。このようにして、酸性薬物が胃から腸管に進むにつれて酸性薬物の放出がより調整される。ジバルプロエックスナトリウムを酸性薬物の代表例として選択した。
【0042】
1つの方法では、錠剤化のために所望の圧縮性を有し、組成物の他の成分と相容性であり、且つマトリックスの局部環境におけるpHを上昇させ、迅速に滲出させることにより胃の酸性環境における溶解/放出を高める塩基性(アルカリ性)賦形剤とともにポリマーマトリックス中に薬物を埋め込んだ。この場合、酸性薬物は賦形剤の高い溶解度/放出により前記賦形剤を欠く類似ポリマーマトリックスよりも速く放出されるであろうと期待された。また、腸管で出会う高pH値での酸性薬物の通常の迅速溶解/放出は、薬物をポリマーマトリックス及び腸において不溶性になる組成物中の残りの未溶解賦形剤を介して拡散させることにより或る程度遅くなるであろうと期待された。
【0043】
この方法を用いて、2つの組成物を試験した。第1の組成物(以下の組成物3)では、酸性pH値では溶解するが中性pH値では不溶性であり且つ優れた圧縮性及び崩壊性を有する無水二塩基性リン酸カルシウムを薬物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Dow Chemical製Methocel(登録商標)グレードK4MP CR)及びラクトースと混合し、錠剤に圧縮した。使用した無水二塩基性リン酸カルシウムは米国特許第5,486,365号明細書に記載されており、富士化学工業(株)からFujicalin(登録商標)として入手可能である。
【0044】
第2の組成物(以下の組成物4)では、塩基性であり且つ優れた圧縮性と分散性を有する微粉状非晶質アルミノケイ酸マグネシウムを二塩基性リン酸カルシウムの代わりに使用した。この物質は富士化学工業(株)からNeusilin(登録商標)として入手可能である。比較のために、上記した2つの賦形剤のいずれをも含まないポリマーマトリックスシステムをベースとするジバルプロエックスナトリウムの延長放出性組成物(組成物2)を比較対照として使用した。
【0045】
添付図面に集めたデータが示すように、組成物3または組成物4で使用したアプローチでは広いpH範囲で薬物放出が所望通り調整されず、組成物2のように中性水膨潤性ポリマーを含む典型的なマトリックス組成物でも同様であった。中性水膨潤性ポリマー及び高pHで酸溶解性・水膨潤性のポリマーのマトリックスからなる本発明の好ましい組成物(組成物1)のみが所望の結果を生じた。
【0046】
図1は、対照組成物(組成物2)からの薬物の経時的放出%を示す。組成物2は、pH影響を緩和する目的の成分を欠く活性薬物のマトリックス延長放出性組成物であった。3つの曲線はpH1.0、pH4.5及びpH6.8での薬物を放出を示す。このグラフから、酸性薬物で予測されるように薬物が高pHよりもpH1.0でゆっくり放出されることが明らかである。更に、8時間後放出された薬物の総量は所望の範囲でない。
【0047】
図2は、pH1.0及びpH6.8での無水二塩基性リン酸カルシウム含有組成物(組成物3)からの薬物の経時的放出%を示す。この場合、8時間後に放出された薬物の総量は両pH値で同じであるが、薬物の放出速度のポイントはpH値により依然として異なる。
【0048】
図3は、pH1.0及びpH6.8での非晶質アルミノケイ酸マグネシウム含有組成物(組成物4)からの薬物の経時的放出%を示す。結果は明らかに、薬物放出速度のpH依存性を緩和する問題の解決法として許容できない。2つのpH値での放出速度は広範囲で変化し、低pH値で8時間後に放出された薬物の総量は許容できないほど低い。
【0049】
図4は、pH1.0、4.5及びpH6.8での本発明の好ましい組成物(組成物1)からの薬物の経時的放出%を示す。図から明らかなように、薬物の放出%を示す3つの曲線は相互にかなり似た軌跡をたどる。
【0050】
2つの組成物からのバルプロ酸放出の胃滞留時間への依存度も試験した。1つの組成物は、薬物がヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックスに分散されている典型的な従来組成物であり、他の組成物は薬物を中性ヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマーと酸溶解性ジメチルアミノエチル改質メタクリレートポリマーの混合物からなるマトリックス中に存在している本発明の組成物であった。薬物組成物をUSP装置II撹拌デバイスにおいて胃条件をシミュレートするためにインビトロで0.1M HCl溶液に曝し、腸条件をシミュレートするためにpH6.8緩衝液(三塩基性リン酸塩)に曝し、放出された薬物の量を下記する蛍光偏光イムノアッセイにより測定した。0時胃滞留時間データは、pH6.8で三塩基性リン酸塩緩衝液における組成物からの放出速度を始めから追跡した実験のデータに相当する。2時間及び4時間胃滞留時間データは、薬物組成物をまず0.1M HClに2時間または4時間曝し、実験の残りをpH6.8の三塩基性緩衝液に曝した実験からのデータである。よって、後者の実験は、薬物を胃の酸性環境に所定時間曝した後実験の残りの時間中性または僅かにアルカリ性の腸環境に曝した状況をシミュレートしている。結果を図5及び6を示す。
【0051】
図5において、従来組成物からの放出速度は、酸性薬物が胃の酸性環境からより可溶性の腸の高pHへ移動するときに予測されるようにpHの変化(2時間及び4時間での点線)に応じて放出速度(曲線の勾配)が顕著に上昇することを示す。加えて、図5の従来組成物では、2時間及び4時間の胃滞留時間での曲線間に大きな差がある。しかしながら、図6に示す曲線は、薬物が本発明の組成物中にある場合には相互に非常に似た軌跡をたどる。2時間の胃滞留時間後の放出速度の変化はかなり少なく、4時間の胃滞留時間の場合には検出不能である。これらのデータから、本発明の組成物は胃滞留時間への依存度が少なく、pHへの依存度も少ないことを示す。
【実施例】
【0052】
組成物1(本発明例)
400mgの錠剤は、ジバルプロエックスナトリウム(60mg)、ジメチルアミノエチル改質ロタクリレート及び中性メタクリレートからなり、約150,000ダルトンの重量平均分子量を有するコポリマーであるRohm America製Eudragit E−100(140mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるDow Chemical製Methocel(登録商標)グレードK4MP CR(100mg)及びラクトース(100mg)を含む。この組成物の薬物含有率は15重量%であった。
【0053】
使用前にバルク薬物を粉砕した。粉砕したバルク薬物をポリマー及び賦形剤と乾式混合した。重量400mgの錠剤をModel C Carver Press錠剤機において丸いダイ(直径=0.95cm)を用い、約2,000lbf(約8.9×10ニュートン)の圧縮力で圧縮した。
【0054】
組成物2(対照例)
上記組成物1と同一の組成を有する錠剤を同じ方法で製造した。ただし、ジメチルアミノメチル改質メタクリレートポリマーを省いた。薬物をヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)マトリックス中に分散させた。
【0055】
組成物3(比較例)
上記組成物1と同一の組成を有する錠剤を同じ方法で製造した。ただし、ジメチルアミノメチル改質メタクリレートポリマーの代わりに無水リン酸ジカルシウムである富士化学工業(株)製Fujicalin(140mg)を使用した。
【0056】
組成物4(比較例)
上記組成物1と同一の組成を有する錠剤を同じ方法で製造した。ただし、ジメチルアミノメチル改質メタクリレートポリマーの代わりにアルミノメタケイ酸マグネシウムである富士化学工業(株)製Neusilin(140mg)を使用した。
【0057】
上記した各組成物について、各種pH値の水溶液におけるインビトロ溶解試験を装置II及び米国薬局方XXI/国民医薬品集XVIに詳記されている方法を用いて実施した。装置の撹拌パドル速度は100rpmであり、媒体の温度は37℃に維持した。各組成物の溶解を、3つのpH値、すなわちpH1(0.1M HCl)、pH4.5(0.05Mリン酸塩緩衝液)及びpH6.8(0.05M三塩基性リン酸塩緩衝液)の2つ以上で観察し、測定した。
【0058】
0、1、2、3、4、6及び8時間目に撹拌試料から1.5mlの試料アリコートを抜き取り、0.45μmフィルターを介して濾過した。試料アリコートをTDX(登録商標)アナライザー(Abbott Laboratories)を用いて蛍光偏光イムノアッセイにより薬物についてアッセイした。各試料を抜き取ったら、等容量の媒体を試験混合物に添加して、一定容量を維持した。試験結果を図1〜4に示す。
【0059】
本発明の好ましい組成物
広いpH範囲における酸性薬物(例えば、ジバルプロエックスナトリウム)の放出をうまく制御及び調整するので、中性水膨潤性ポリマーを酸性pHで可溶性であり且つ中性〜アルカリpHで水膨潤性であるポリマーと組合せて含む上記組成物1に対応する組成物が本発明の好ましい組成物である。前記組成物は、治療有効量の酸性薬物を、約10〜約40重量%(好ましくは、約15〜約30重量%)の医薬的に許容し得る中性水膨潤性親水性ポリマーと約20〜約50重量%(好ましくは、約25〜約40重量%)の約5を越えるpH値で水に膨潤し得る医薬的に許容し得る酸溶解性ポリマーからなるポリマーマトリックスに溶解または分散して含む。%はすべて組成物の全重量に基づく。組成物の残部は、一般的に公知であり、以下に詳記する種類の医薬的に許容し得る賦形剤、例えば希釈剤、結合剤、滑沢剤、滑走剤(glidant)、崩壊剤、及び/または着色剤及び矯臭剤からなる。
【0060】
本発明の組成物に使用するのに適した中性水膨潤性親水性ポリマーには、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそのコポリマーが含まれる。本発明の組成物中に使用され得る中性水膨潤性改質セルロースポリマーには、例えば(Dow Chemicalから入手可能な)Methocel(登録商標)グレードE10MP CR、E4MP、K100V、K4MP、K15MP及びK100MP、(Hercules,Inc.から入手可能な)Klucel(登録商標)HFXヒドロキシプロピルセルロース、(Kelco Co.から入手可能な)Keltone(登録商標)グレードLVCR及びHVCRアルギネート、(Union Carbide Co.から入手可能な)Polyox(登録商標)ポリエチレンオキシドポリマー、(Kelco co.から入手可能な)Keltrol(登録商標)キサンタンガム、及び(B,F,Goodrich Specialty Chemicalsから入手可能な)Carbopol(登録商標)934P、971P及び974Pが含まれる。本発明の組成物のための好ましい中性水膨潤性親水性ポリマーは、約19〜24%のメトキシ置換及び約7〜12%のヒドロキシプロピル置換を含み、約4,000センチポイズ(4パスカル−秒)の2%水性公称粘度を有するセルロースエーテルであるMethocel(登録商標)K4MPである。
【0061】
本発明の組成物に使用するのに適した酸溶解性であり、高pH値で水に膨潤するポリマーは、塩基性官能基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはジアルキルアミノアルキル基)を加えることにより改質させたメタクリル酸/メタクリル酸エステルコポリマーである。前記ポリマーは、ポリマー中に含まれる塩基性窒素原子サイトでプロトン化されてイオン化アンモニウム基を形成するので、酸性pH値で可溶性である。従って、前記物質も「酸イオン化可能」または「塩形成」メタクリル酸/メタクリル酸エステルコポリマーとも称される。本発明の組成物中に使用され得る中性〜アルカリ性pH値で水に膨潤する酸溶解性改質メタクリレートポリマーには、(Rohm America,Inc.から入手可能な)ジメチルアミノメチルメタクリレート及び中性メタクリレートをベースとする約150,000ダルトンの分子量を有するカチオン性コポリマーが含まれる。
【0062】
賦形剤
活性薬物及びポリマーマトリックスに加えて、本発明の予圧縮または圧縮組成物は希釈剤、結合剤、滑沢剤、滑走剤、崩壊剤、着色剤または矯臭剤として作用し得る添加剤または賦形剤を含み得る。
【0063】
錠剤中の活性薬物の量が少ない場合には、1つ以上の不活性希釈剤を添加して、錠剤の嵩を増加させる。この目的で使用される希釈剤には、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、デキストロース、アミロース、ラクトース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、ドライスターチ及び粉末糖が含まれる。
【0064】
結合剤は、錠剤組成物に凝集性を付与して、錠剤を圧縮後無傷のままとすることを保証し、錠剤化前顆粒の自由流動性及び所望の硬度を改善する。結合剤として通常使用される物質には、澱粉、ゼラチン及び糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、糖密及びラクトース)が含まれる。アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイルランドゴケ抽出物、panwarガム、ガッチゴム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースやポリビニルピロリドンのような天然及び合成ガムも結合剤として使用され得る。
【0065】
滑沢剤は錠剤組成物中で複数の機能を発揮し、例えば圧縮錠がダイやパンチに付着するのを防止したり、錠剤のダイからの離型を促進したり、錠剤化前顆粒の流量を改善する。通常使用される滑沢剤には、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油及びポリエチレングリコールが含まれる。錠剤組成物中に使用される滑沢剤の量は約0.1重量%ほどの低量〜約5重量%ほどの高量の範囲であり得る。
【0066】
滑走剤は乾燥粉末混合物の流動性を改善する。最も一般的にはコロイド状二酸化ケイ素が滑走剤として使用されるが、アスベスト非含有タルクも時々使用される。使用する場合、滑走剤は通常組成物の約1重量%以下を占める。
【0067】
崩壊剤は、投与後の錠剤の分解または崩壊を促進するために錠剤組成物に単独物質としてまたは混合物として添加される。十分に乾燥、粉末化したコーンスターチ及びポテトスターチが最も一般的に使用される錠剤崩壊剤である。組成物に添加されるスターチの量は、所望する崩壊速度に応じて異なるが、約5重量%〜約10〜15重量%の範囲である。クロスカルメロース、クロスポビドン及びナトリウムスターチグリコレートのような膨潤崩壊剤はそれぞれ使用され得る架橋セルロース、架橋ポリマー及び架橋スターチ剤の例である。前記物質は通常錠剤組成物中に約2〜約4重量%の量で使用される。
【0068】
着色剤は、錠剤組成物または錠剤コーティングとして使用されるポリマー物質に添加され得る。好適な着色剤には、米国食品医薬品局(FDA)により使用が承認されており、当業者に公知のものが含まれる。
【0069】
錠剤化方法
錠剤は、通常当業者に公知の湿式造粒、乾式造粒または直接圧縮の3つの方法の1つにより製造される。3つの方法はいずれも本発明の錠剤を製造するために使用され得る。
【0070】
本発明の好ましい実施態様と考えられるものを例示し、記載してきたが、本明細書に記載の組成及び方法を請求の範囲で規定される本発明の範囲を逸脱することなくいろいろ変更し得ることは製薬業界の業者に自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の酸性薬物を、a)10〜40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の医薬的に許容し得る中性水膨潤性親水性ポリマー、及びb)15〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る医薬的に許容し得る酸溶解性ポリマーからなるポリマーマトリックスに溶解または分散して含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
ポリマーマトリックスが20〜30重量%の医薬的に許容し得る中性水膨潤性親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ポリマーマトリックスが20〜40重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る医薬的に許容し得る酸溶解性ポリマーを含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
中性水膨潤性親水性ポリマーがメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びそのコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、アクリル酸の架橋ホモポリマー及びコポリマー、キサンタンガム、及びアルギネートからなる群から選択されるポリマーからなることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーが塩基性官能基で改質されたメタクリレートポリマーからなることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーがジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーからなることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
治療有効量の酸性薬物を、10〜40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の医薬的に許容し得る中性水膨潤性セルロースポリマー及び15〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得るジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーからなる酸溶解性ポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
酸性薬物が6以下のpKa値を有する化合物であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬的に許容し得る中性水膨潤性セルロースポリマーが組成物の全重量に基づいて20〜30重量%の量存在することを特徴とする請求の範囲第8項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る医薬的に許容し得る酸溶解性ポリマーが組成物の全重量に基づいて20〜40重量%の量存在し、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする請求の範囲第8項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
酸性薬物がジバルプロエックスナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第8項〜第10項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量の酸性薬物を、10〜40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の中性水膨潤性セルロースポリマー及び15〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤する酸溶解性ジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
中性水膨潤性親水性ポリマーがメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びそのコポリマーからなる群から選択されるポリマーからなることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
酸溶解性ジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーがジメチルアミノエチル改質メタクリレートコポリマーであることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
酸性薬物がジバルプロエックスナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
治療有効量のジバルプロエックスナトリウムを、10〜40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の中性水膨潤性セルロースポリマー及び20〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
錠剤に圧縮するのに適した乾燥顆粒状組成物であって、酸性薬物を10〜40重量%(%はすべて組成物の全重量に基づく)の中性水膨潤性親水性ポリマー及び20〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーからなるマトリックスに溶解または分散して含む粒子からなり、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする前記顆粒状組成物。
【請求項18】
マトリックスが20〜30重量%の中性水膨潤性親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求の範囲第17項に記載の顆粒状組成物。
【請求項19】
マトリックスが20〜40重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーを含むことを特徴とする請求の範囲第17項に記載の顆粒状組成物。
【請求項20】
酸性薬物がジバルプロエックスナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第17項に記載の顆粒状組成物。
【請求項21】
中性水膨潤性親水性ポリマーがメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びそのコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求の範囲第17項に記載の顆粒状組成物。
【請求項22】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーがジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーからなることを特徴とする請求の範囲第17項に記載の顆粒状組成物。
【請求項23】
錠剤に圧縮するのに適した顆粒状医薬組成物の製造方法であって、
a)5〜50重量%の酸性薬物(%はすべて顆粒の全重量に基づく)、20〜40重量%の中性水膨潤性親水性ポリマー及び20〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーの混合物を乾式混合して、均一混合物を形成するステップ、
b)ステップa)からの乾燥均一混合物を湿式造粒するステップ、及び
c)ステップb)からの湿った顆粒を乾燥、分粒するステップ
を含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする前記方法。
【請求項24】
中性水膨潤性親水性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースからなることを特徴とする請求の範囲第23項に記載の方法。
【請求項25】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーがジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーであることを特徴とする請求の範囲第23項に記載の方法。
【請求項26】
酸性薬物がジバルプロエックスナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第23項に記載の方法。
【請求項27】
酸性薬物の制御放出性錠剤の製造方法であって、
a)5〜50重量%の酸性治療薬、20〜40重量%の中性水膨潤性親水性ポリマー及び20〜50重量%の5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーの混合物を乾式混合して、均一混合物を形成するステップ、
b)ステップa)からの乾燥均一混合物を湿式造粒するステップ、
c)ステップb)からの湿った顆粒を乾燥、分粒するステップ、及び
d)ステップc)の混合顆粒を2,000lbf(8.9×10ニュートン)〜10,000lbf(4.45×10ニュートン)の力で圧縮するステップ
を含み、5よりも低いpH値と比較して5を超えるpH値で酸性薬剤の放出速度が減少することを特徴とする前記方法。
【請求項28】
中性水膨潤性親水性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースからなることを特徴とする請求の範囲第27項に記載の方法。
【請求項29】
5を越えるpH値で水に膨潤し得る酸溶解性ポリマーがジアルキルアミノアルキル改質メタクリレートポリマーであることを特徴とする請求の範囲第27項に記載の方法。
【請求項30】
酸性薬物がジバルプロエックスナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第27項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−241218(P2011−241218A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−116089(P2011−116089)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2000−596913(P2000−596913)の分割
【原出願日】平成12年1月26日(2000.1.26)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】