説明

pLDHに特異的に結合するDNAアプタマー

【課題】pLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマー、これを含むマラリア診断用組成物、およびマラリア診断キットを提供する
【解決手段】本発明は、pLDH(plasmodium lactate dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマー、これを含むマラリア診断用組成物、およびマラリア診断キットに関する。本発明のpLDH(plasmodium lactate dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマーは既存に使用される抗体より特異性及び安定性に優れるため、これを用いてpLDHの濃度を敏感で正確に測定できるバイオセンサーを開発すればマラリア診断の正確性を増加するのに役立てると期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマー、およびこれを含むマラリア診断用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアの臨床的症状としては頭痛、筋肉痛、発熱、嘔吐などが挙げられるが、このような症状はマラリア固有の症状ではないので、これに基づいて診断することは難しい。一般に顕微鏡検鏡法によって確診が可能であるが、これは、高価の装備と熟練した人員を必要とするため、マラリア流行地域における初期診断向けとしては不適とされている。免疫クロマトグラフィー法を用いた携帯用診断キットは、抗原−抗体反応を利用するため、保管環境によって診断の正確度に大きな差がある。現場で行う初期診断による初期対応は治療過程に大きな影響を及ぼす。よって、携帯用診断キットの性能改善が必須的である。
【0003】
pLDHは、マラリア寄生虫の全生活史から発見される酵素であって、代謝過程に関与する必須酵素である。4種のマラリア寄生虫がいずれもpLDHを持っており、これらの配列保存率は非常に高い。現在市販されている携帯用マラリア診断キットは、pLDHの抗体を用いた場合が大部分であり、4種のマラリアをすべて診断することができる。
【0004】
アプタマーは、特定の物質に対して高い特異性と親和度を持つ一本鎖DNA(ssDNA)またはRNAである。アプタマーは、特定の物質に対する親和度が非常に高く、安定性があるため、最近多く開発されている。このアプタマーを用いた治療剤および診断用センサーへの応用が盛んに行われている。アプタマーの合成は比較的単純な方法で可能である。細胞、タンパク質および小さい有機物質までも標的物質になれるため、これを用いた新規検出方法の開発が可能であり、既に開発されている抗体に比べてその特異性および安定性が非常に高いため、治療剤の開発並びに薬物伝達システムおよび診断用バイオセンサーへの応用が可能である。
【0005】
既に開発されている抗体を用いた方法は、生体の免疫システムを利用して作られるため、比較的多くの時間および高い費用がかかるという欠点がある。また、タンパク質であるため、その安定性がアプタマーに比べて低下するという欠点があるので、高感度センサーの開発に制約がある。マラリア流行地域が大部分高温地域または湿っぽい地域であることを考えてみると、抗体を用いた診断システムは正確性が低下する。
【0006】
したがって、かかる問題点を克服することができるマラリア診断方法に関する研究の必要性が台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、pLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマー、これを含むマラリア診断用組成物、およびマラリア診断キットを提供することにある。
【0008】
ところが、本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に限定されず、言及されていない別の課題は下記の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、pLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマーであって、配列番号1または配列番号2の塩基配列を有することを特徴とする、DNAアプタマーが提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記pLDHに特異的に結合するDNAアプタマーを含むマラリア診断用組成物が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、前記pLDHに特異的に結合するDNAアプタマーを用いることを特徴とする、マラリア診断キットが提供される。
【0012】
また、本発明のDNAアプタマーは、配列番号1または配列番号2の塩基配列と70%以上の配列相同性を有していることを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明のpLDH(Plasmodium Lactate Dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマーは、既存のマラリア診断用抗体より特異性および安定性に優れるという利点を持っている。また、本発明のアプタマーを用いてpLDHの濃度を敏感且つ正確に測定することができるバイオセンサーを開発すると、マラリア診断の正確性を増加させるのに大きく役立つと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】pvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)タンパク質の発現をSDS−PAGEで確認した結果である。
【図2】pvLDHタンパク質を分離した後、ゲル濾過(superdex200カラム)によって精製した結果である。
【図3】pvLDHに特異的なアプタマー選別段階によってUV分光光度計を用いてssDNAとpvLDHとの結合程度を測定した結果を示したグラフである。
【図4】配列番号1で表される選別されたssDNA(a)、および配列番号2で表される選別されたssDNA(b)の2次構造をMfoldプログラムを用いて予測した結果である。
【図5】配列番号1または配列番号2で表されるアプタマーのpvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)およびpfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)に対する結合有無を測定するためのEMSA(Electrophoretic mobility shift assay)結果を示したものである(SYBR(登録商標)greenで染色した結果であって、それぞれのlaneが意味するところは次のとおりである。1:PvLDH、2:Aptamer #2、3:Aptamer #2+PvLDH、4:Aptamer #1、5:Aptamer #1+PvLDH、6:PfLDH、7:Aptamer #2、8:Aptamer #2+PfLDH、9:Aptamer #1、10:Aptamer #1+PfLDH)。
【図6】配列番号1または配列番号2で表されるアプタマーのpvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)およびpfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)に対する結合有無を測定するためのEMSA結果を示したものである(クマシーブルー(coomassie blue)で染色した結果であって、それぞれのlaneが意味するところは次のとおりである。1:PvLDH、2:Aptamer #2、3:Aptamer #2+PvLDH、4:Aptamer #1、5:Aptamer #1+PvLDH、6:PfLDH、7:Aptamer #2、8:Aptamer #2+PfLDH、9:Aptamer #1、10:Aptamer #1+PfLDH)。
【図7】配列番号1で表されるアプタマーの予測された2次構造を示したものである。
【図8】本発明の実施例で突然変異分析(mutation assay)に使用されたアプタマーの塩基配列および変異部分を表示した突然変異の塩基配列である。
【図9】本発明の実施例に係るEMSA方法による突然変異分析結果である(それぞれのlaneが意味するところは次のとおりである。1:pvLDH、2:aptamer #1、3:aptamer #1+pvLDH、4:loop1突然変異、5:loop1突然変異+pvLDH、6:stem突然変異、7:stem突然変異+pvLDH、8:loop2突然変異、9:loop2突然変異+pvLDH)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、pLDHに対する抗体に代えることが可能なアプタマーを開発するために、pLDHをバクテリア発現システムで発現および精製し、これを用いてSELEX(Systematic Evolution of Ligands of Exponential enrichment)技法でDNAアプタマーを選別し、DNAアプタマーの配列および構造を確立することにより、本発明を完成するに至った。
【0016】
具体的に、本発明は、pLDH(plasmodium lactate dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマーであって、配列番号1または配列番号2の塩基配列を有することを特徴とするDNAアプタマーを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記pLDHに特異的に結合するDNAアプタマーを含むマラリア診断用組成物を提供する。
【0018】
本発明の組成物は、前記DNAアプタマー以外に、薬理学的または生理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤をさらに含んでもよい。
【0019】
このような組成物に含まれ得る適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非結質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油などが挙げられる。前記組成物は、薬剤化する場合、通常の充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0020】
また、本発明は、pLDHに特異的に結合するDNAアプタマーを用いることを特徴とするマラリア診断キットを提供する。
【0021】
前記本発明のDNAアプタマーは、配列番号1または配列番号2の塩基配列を有することが好ましいが、これに限定されるものではない。本発明のDNAアプタマーは、配列番号1または配列番号2の塩基配列と70%以上同一の配列を有する。本発明のDNAアプタマーは、(i)loop部分(5'−TTCCNTNGN−3')、(ii)G−C rich stem部分、あるいは(iii)loop2部分(5'−AGT−3')を共通に含み、前記3つの部分の塩基配列が同一であれば、その他の塩基はいずれから構成されていても、本発明の範疇に属する。
【0022】
前記pLDHは、pvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)、pfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)、pmLDH(plasmodium malariae lactate dehydrogenase)、およびpoLDH(plasmodium ovale lactate dehydrogenase)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1:pvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)遺伝子クローニング
pvLDHに対する遺伝子を増幅するために、BamH1制限酵素認識配列を含む5'プライマー(CCCGGATCCATGACGCCGAAAATTGT)とXhoI制限酵素認識配列を含む3'プライマー(CCCCTCGAGTTAAATGAGCGCCTTCATCCTTTTAGTCT)を使用した。遺伝子増幅のための鋳型として、Plasmodium vivaxのゲノムDNAを使用し、i−pfuポリメラーゼを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)の過程によって増幅した。ポリメラーゼ連鎖反応の各段階は次のとおりである。1)鋳型の二本鎖DNAを解離させる段階で(94℃で30秒)、2)鋳型とプライマーとが結合する段階(56℃で30秒)、および3)新しい鎖を合成する段階で(72℃で1分)。これらの1)〜3)の段階を1サイクルとして、35サイクル繰り返し行った。
【0025】
増幅されたpvLDH遺伝子は、制限酵素切断反応およびDNAライゲーション(ligation)反応によって、(His)6−tagが含まれたpET28aベクターにクローニングし、E.coli BL21(DE3)細胞に形質転換した。
【0026】
実施例2:pvLDHタンパク質の発現
pvLDH遺伝子が形質転換されたE.coli BL21(DE3)細胞は、LB(Luria Bertani)培地で培養するが、UV600nmで光学密度(OD;optical density)値が0.6に到達するまで37℃で培養した。その後、タンパク質の発現を誘導するために、最終濃度が0.2mMとなるようにIPTG(isopropyl−thio−b−D−galactopyranoside:イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加した後、18℃で16時間培養した。タンパク質の発現はSDS−PAGE(sodium−dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)で確認した。細胞は遠心分離機で培地と分離させた後、PBS(10mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)バッファで1回洗浄した。発現させたタンパク質をSDS−PAGEで確認した結果を図1に示した。
【0027】
実施例3:pvLDHタンパク質の精製
バクテリア細胞E.coli BL21(DE3)で発現したpvLDHタンパク質を高純度で精製するために、細胞溶菌バッファ(lysis buffer)(20mM Tris、500mM NaCl、0.5mM β−メルカプトエタノール、5%グリセロール、10mM イミダゾール、pH8.0)に細胞を溶かした後、ソニケーター(sonicator)を用いて15分間超音波粉砕することにより、細胞を破壊した。水溶液上のタンパク質と細胞を分離するために、12000rpmで40分間遠心分離した。
【0028】
また、高純度のタンパク質を得るために、Ni−NTAと(His)6−tagアミノ酸が結合する特性を利用した。具体的に、FPLC(Fast protein liquid chromatography)にNi−NTAカラムを連結し、水溶液上のpvLDHをカラムに流すことにより結合させた。Ni−NTAカラムに結合したタンパク質の(His)6−tagはイミダゾールの化合物と競争的に結合するため、標的タンパク質をカラムで分離させるために、溶出バッファ(elution buffer)(20mM Tris、500mM NaCl、0.5mM β−メルカプトエタノール、5%グリセロール、400mM イミダゾール、pH8.0)を順次流すことにより、pvLDHを高純度で分離することができた。
【0029】
分離されたタンパク質からさらに純度の高いタンパク質を得るために、タンパク質のpI値によって分離させるイオン交換カラムとしてのMonoQカラムをFPLCに連結した後、タンパク質水溶液を流した。pvLDHはカラムに結合せず、残りの不純物のみ結合した。結合していない分画(non−binding fraction)を取って大きさによって分離するゲル濾過(gel filteration)カラムとしてのsuperdex200カラムを用いてもう一度分離した。その結果を図2に示した。
【0030】
実施例4:SELEXを用いたpvLDHタンパク質に対するアプタマーの探索
【0031】
<4−1>ssDNA(single strand DNA)ライブラリーの製造
両末端にPCR増幅およびクローニングのためのプライマーの結合配列を有し、中央に40個のランダムDNA塩基配列を含む90個の配列を有する合成されたライブラリー(5'−CACCTAATACGACTCACTATAGCGGATCCGA−N40−CTGGCTCGAACAAGCTTGC−3')を設計した。
【0032】
また、PCR増幅およびssDNA生成のために5'プライマー(5'−CACCTAATACGACTCACTATAGCGGA−3')、3'プライマー(5'−GCAAGCTTGTTCGAGCCAG−3')およびビオチンが結合した3'プライマー(5'−Biotin−GCAAGCTTGTTCGAGCCAG−3')を使用した。本発明で使用された全てのオリゴヌクレオチドはバイオニック社(韓国)で合成およびPAGE精製した。
【0033】
<4−2>pvLDHのNi−NTA磁性ビーズ(magnetic bead)への固定化
精製されたpvLDHは、表面にコバルトでコートされており、タンパク質のHis−tagと結合する磁性ビーズであるDynalbead(invitrogen、ノルウェー)を用いてビーズに固定した。
【0034】
具体的に、タンパク質結合バッファ(20mM Tris、50mM NaCl、5mM KCl、5mM MgCl、pH8.0)100μLに溶けているタンパク質500pmoleと20μLのビーズを外部磁石を用いて結合バッファで洗浄した後、1時間室温で反応してビーズに固定化させた。
【0035】
<4−3>pvLDHに特異的なアプタマーの選別
pvLDHに特異的なアプタマーを選別するために、磁性を用いた特異的分離方法を行った。
【0036】
まず、ssDNAの最も安定な構造形成のために、100μLの結合バッファに溶けているssDNAライブラリー(1nmole)を90℃で3分間培養した後、4℃で1時間全培養した。その後、先立って磁性ビーズに固定化されたpvLDHタンパク質と混合して共に弱く振盪しながら1時間反応させた。次いで、ビーズに結合したpvLDHタンパク質と結合しないssDNAを除去するために、結合バッファでビーズを2回洗浄した。
【0037】
その後、磁性ビーズによってタンパク質と結合したssDNAを分離するために、溶出バッファ(20mM Tris、50mM NaCl、5mM KCl、5mM MgCl、0.01% tween20、300mM イミダゾール、pH8.0)を用いてタンパク質およびタンパク質に結合したssDNAを溶出させた。溶出したssDNAはエタノールを用いて沈澱させた後、60μLの蒸留水に溶解した後、5'プライマー、ビオチンが結合した3'プライマー、およびi−pfu重合酵素(イントロンバイオテクノロジー、韓国)を用いてPCRによって増幅させた。その後、選別過程のためのssDNAを生成するために、ビオチンが結合したPCR産物を、ビオチンと結合するストレプトアビジン(streptavidin)がコートされた磁性ビーズと共にカップリングバッファ(5mM Tris−HCl、0.5mM EDTA、1M NaCl、0.005% tween20、pH7.5)条件で1時間培養した。培養の後、ssDNAのみを分離するために、100μLの100mM NaOHと5分間培養し、外部磁石を用いて選別されたssDNAを得ることができた。
【0038】
一番目に選別されたssDNAを用いて反復的に選別した。この際、厳しい選別のためにssDNAの量およびpvLDHの濃度を漸次減少させながら行った。さらに、反復される選別で溶出したssDNAに対してUV分光光度計(UVスペクトロメーター、Biochrom Libra S22 spectrometer)で濃度を測定し、残っているssDNAのTroponin Iとの結合程度を確認しながら、選別過程を行った。その結果(%)を図3に示した。
【0039】
<4−4>アプタマーの配列および構造分析
10番目の反復選別されたssDNAは、変形していない5'プライマーと3'プライマーを用いてPCR過程によって増幅させ、pENTR/TOPOベクター(TOPO TA Cloning kit、Invitrogen、米国)にクローニングした後、E.coli TOP10細胞(Invitrogen、米国)に形質転換させた。ssDNAの挿入されたクローンをminiprepキット(GeneAll、韓国)を用いて精製した後、塩基配列を分析(COSMO Genetech、韓国)した。その結果、下記表1に示すように、配列番号1および配列番号2で表されるssDNA配列を分析することができた。
【0040】
また、選別されたssDNAの構造的類似性を分析するために、Mfoldプログラム(http://mfold.bioinfo.rpi.edu/cgi-bin/dna-form1.cgi)を用いて2次構造を分析することができ、図4および図5に示すように、共通の配列および構造を発見した。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例5:EMSA(Electrophoretic mobility shift assay)を用いたPlasmodium vivax以外の種(species)が持つLDHに対する結合有無の測定
配列番号1および配列番号2のアプタマーがpvLDHだけでなく、他の種のマラリア寄生虫のLDHとも結合することができるかを調べるために、EMSA方法によって結合有無を確認した。
【0043】
配列番号1および配列番号2のアプタマー0.5μMをそれぞれ0μMまたは2.5μMのpvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)またはpfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)と1時間常温で20μLの結合バッファで培養した後、6%アクリルアミドゲル(acrylamide gel)にランニング(running)した。この際、電圧は120Vに固定し、電気泳動過程で発生する熱によるタンパク質−アプタマー複合体の変性を防止するために0℃で40分間ランニングした。SYBR(登録商標)greenとクマシーブルーで染色した結果を図5および図6に示した。
【0044】
図5および図6においてそれぞれのレーン(lane)が示すのは下記表2のとおりである。本発明の実施例において、アプタマーの発掘はpvLDHタンパク質を用いて進行したが、pvLDHとpfLDHは、アミノ酸配列保存率(conservation rate)が90%以上のものであって、機能と構造などが互いに非常に類似している。よって、図5および図6に示すように、配列番号1および配列番号2で表されるアプタマーはpvLDHだけでなくpfLDHとも結合することを確認した。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例6:蛍光測定によるpLDHとアプタマー間の結合力の測定
16μgのpvLDHを10μLの磁性ビーズと混合した後、100μLの結合バッファ(20mM Tris、50mM NaCl、5mM KCl、5mM MgCl、pH8.0)で1時間培養した。結合していないpvLDHを分離するために、前記結合バッファで2回洗浄した。その後、多様な濃度のFAMで標識されたアプタマーと共に1時間培養し、pvLDHと結合していないアプタマーは洗浄して除去した。
【0047】
磁石を用いて、pvLDHに結合したFAMが標識されたssDNAのみを分離した後、pvLDHが固定された磁性ビーズに結合したFMAが標識されたssDNAアプタマーの量を蛍光測定(1420 Victor multilabel counter、PerkinElmer、USA)の方法で測定した。その結果、下記表3に示すように、配列番号1および配列番号2の塩基配列を持つDNAアプタマーのKd値を測定することができた。pfLDHに対しても、前記と同様の過程によってKd値を測定した。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例7:アプタマーの突然変異配列に対する結合有無の測定
本発明の実施例4で発掘したアプタマーは、配列番号1および配列番号2で表示され、図4に示すように2次構造を形成する。配列番号1および配列番号2で表されるアプタマーの2次構造は3つの部分に分けることができ、配列番号1で表されるアプタマーの2次構造を図7に示した。
【0050】
図7から分かるように、pLDHに特異的に結合するDNAアプタマーの塩基配列は共通に(i)Loop1(赤色)、(ii)G−C rich stem(青色)、および(iii)Loop2(緑色)部分を含み、それぞれの配列はタンパク質との結合に必須的な配列である。
【0051】
本発明者は、EMSA(Electrophoretic mobility shift assay)方法を用いて、突然変異分析(mutation assay)を行った。配列番号1で表されるアプタマーの一部の配列に突然変異を作り、それぞれの突然変異DNAとpvLDHタンパク質との結合有無をEMSA方法によって確認した。
【0052】
本実施例に使用された、配列番号1で表されるアプタマーの突然変異配列は、それぞれ配列番号3乃至5で表され、図8に示された。また、EMSA結果を図9に示した。図9においてそれぞれのレインが表すのは下記表4のとおりである。
【0053】
【表4】

【0054】
図8および図9から分かるように、Loop1とLoo2の配列を変形させたとき、pvLDHタンパク質と全く結合しないことを確認することができる。これは、Loop1およびLoop2がタンパク質と直接的に結合する部分であることを意味する。G−C rich stemの部分の場合、塩基配列全体を変形させるとDNAの2次構造が乱れるので、一部のみ変形させたが、図9に示すように、結合力が大幅減少したことが分かった。よって、G−C rich stem部分はDNAの安定な2次構造を形成するように助けるうえ、タンパク質との結合にも大きく関与することが分かる。
【0055】
したがって、前記三つの部分は結合に必須的な部分であり、それ以外の配列部分はいずれの配列に変形しても構わないことを意味する。
【0056】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想または必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変更し得ることが理解できるであろう。よって、上述した実施例はすべての面において例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pLDH(plasmodium lactate dehydrogenase)に特異的に結合するDNAアプタマーであって、配列番号1または配列番号2の塩基配列を有することを特徴とする、DNAアプタマー。
【請求項2】
前記DNAアプタマーは配列番号1または配列番号2の塩基配列と70%以上の配列相同性を有することを特徴とする、請求項1に記載のDNAアプタマー。
【請求項3】
前記pLDHはpvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)、pfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)、pmLDH(plasmodium malariae lactate dehydrogenase)、およびpoLDH(plasmodium ovale lactate dehydrogenase)よりなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載のDNAアプタマー。
【請求項4】
請求項1に記載のDNAアプタマーを含むマラリア診断用組成物。
【請求項5】
前記DNAアプタマーは配列番号1または配列番号2の塩基配列と70%以上の配列相同性を有することを特徴とする、請求項4に記載のマラリア診断用組成物。
【請求項6】
前記pLDHは、pvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)、pfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)、pmLDH(plasmodium malariae lactate dehydrogenase)、およびpoLDH(plasmodium ovale lactate dehydrogenase)よりなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項4に記載のマラリア診断用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のDNAアプタマーを用いることを特徴とするマラリア診断キット。
【請求項8】
前記DNAアプタマーは配列番号1または配列番号2の塩基配列と70%以上の配列相同性を有することを特徴とする、請求項7に記載のマラリア診断キット。
【請求項9】
前記pLDHはpvLDH(plasmodium vivax lactate dehydrogenase)、pfLDH(plasmodium falciparum lactate dehydrogenase)、pmLDH(plasmodium malariae lactate dehydrogenase)、およびpoLDH(plasmodium ovale lactate dehydrogenase)よりなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項7に記載のマラリア診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254074(P2012−254074A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9760(P2012−9760)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(511276415)ポハン工科大学校 産学協力団 (3)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH ACADEMY−INDUSTRY FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 31benji, Hyoja−dong, Nam−gu, Pohang−si, Gyeongsangbuk−do 790−784 Republic of Korea
【Fターム(参考)】