説明

siRNA、両親媒性化合物及びポリカチオンを用いた組成物及び方法

【課題】siRNAを動物細胞に送達するための組成物を提供する。
【解決手段】両親媒性化合物、ポリカチオン及びsiRNAからなる動物細胞、特に哺乳類細胞に送達可能組成物。ここでポリカチオンは、DNA結合タンパクであるヒストンH1であり、ポリカチオンは、ポリマーであり、両親媒性化合物は以下の構造


を有し、R1及びR2は、炭素数6乃至24のアルカン、炭素数6乃至24のアルケン、シクロアルキル、ステロール、ステロイド、置換脂質、脂肪酸のアシルセグメント、疎水性ホルモン及び疎水性ホルモンアナログからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、siRNA、両親媒性化合物及びポリカチオンからなる組成物並びにsiRNAを動物細胞に送達するためにかかる組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、細胞に存在する二本鎖RNAが特定の配列と同一又はほぼ同一の遺伝子の発現を阻害する現象である。この阻害は、標的遺伝子から翻訳されたメッセンジャーRNAの分解を惹起する(非特許文献1)。RNA干渉の誘導に関与する二本鎖RNAは、干渉RNA(interfering RNA)と呼ばれている。RNA干渉を媒介する二本鎖RNA(dsRNA)を介した機構及び細胞機構は、遺伝的及び生化学的手法の両方を用いて研究されている。生化学的分析が示唆するのは、細胞質に導入されたdsRNAが、21から25塩基程度のRNA断片にプロセッシングされることから始まることである(非特許文献2〜6)。in vitroでの検討で示されたのは、スモールインターフェアリングRNA(small interfering RNA;siRNA)と呼ばれるこれらdsRNAは、DicerなるRNAseIII様酵素により部分的に生成されることである(非特許文献7)。これらsiRNAは、mRNAの分解のガイドとして機能しているようで、これは、標的mRNAが特定のsiRNAにより覆われる領域の中心の位置で切断されるためである(非特許文献8)。生化学的事実が示唆するのは、siRNAは、RNA誘導サイレンシングコンプレックス(RISC)と呼ばれる多重的なヌクレアーゼ複合体の一部であるということである(非特許文献2)。この複合体タンパクの一つであるアルゴナウテ2(Argonaute2)は、アルゴナウテ遺伝子ファミリーの産生物として同定された(非特許文献9)。C.elegansのホモログであるrde−1及び関連する遺伝子であってN.crassaのホモログであるqde−2を含むこの遺伝子ファミリーは、遺伝的検討によりRNA干渉に必須であることが示された(非特許文献10〜12)。C.elegansにおける遺伝子スクリーニングにおいて、RNA干渉に必須な遺伝子としてmut−7が同定された。この遺伝子は、RNAseDに類似しており、mRNA分解ステップにおいてその遺伝子産物が機能することを示唆している(非特許文献13)。
【0003】
遺伝子の機能解析に繁用的なC.elegansやD.melanogasterなどのモデル系により、哺乳動物における新規な薬物標的の可能性に関連する手がかりを得ることが可能であるにもかかわらず、哺乳類のモデル系における遺伝子機能の解析には、より直接的な手法が存在する。従来示されたのは、dsRNAは、RNA干渉を誘導するのに用いられ、且つ、マウス卵母細胞及び初期胚における標的の遺伝子発現を阻害する、ということである(非特許文献14、15)。しかしながら、その他の多くの検討により得られたデータが示すのは、培養哺乳類細胞又は初期胚後の組織においてRNA干渉を誘導すべくdsRNAを使用することは、遺伝子サイレンシングの配列特異的な手法として効果的でないということである(非特許文献16、17)。この矛盾は、周知であるインターフェロン合成におけるdsRNA媒介誘導の大部分に起因する可能性があり、この反応経路は卵母細胞や初期胚に存在しない。dsRNA依存性酵素の活性化は、細胞生理学及び遺伝子発現に配列特異的な効果を及ぼさない(非特許文献18〜21)。インターフェロン反応における主要な組成物は、dsRNA依存性リン酸化タンパクであるプロテインキナーゼR(PKR)であって、これは、伸張因子であるeIF2aをリン酸化し且つ不活性化する。加えて、インターフェロンはdsRNA依存性2−5(A)シンテターゼの合成を誘導し、これは、配列非特異的なRNAseLの活性化を導く2‘−5’ポリアデニル酸を合成する(非特許文献22)。
【0004】
しかしながら、このPKRパスウェイは30塩基対未満のdsRNAにより活性化されず、完全な活性化には、80塩基対以上のdsRNAが必要である(非特許文献19、20)。この事実が示唆するのは、より長鎖のdsRNAに変えて、RNA干渉を惹起するのにsiRNAを使用する場合、インターフェロンの反応性の少なくとも一部を経由する可能性があるということである。21から25塩基対のsiRNAを培養条件下にて哺乳類細胞に送達する検討から得られたデータが示すのは、RNA干渉を介した配列特異的な阻害が効果的に起こったということである(非特許文献23、24)。これらの検討において遺伝子特異的阻害は、種々の不死化細胞及び初代細胞株の両方にて観察された。強力なエンハンサーを含有する、トランジエントにトランスフェクトされたプラスミドから発現されたレポーター遺伝子に対して標的化されたsiRNAを用いると、阻害の程度は80から96%の間で変化した。関連しない配列のコントロールのレポーター遺伝子の発現は、このsiRNAにより影響されず、且つ、関連しない配列に対して、siRNAを使用しても阻害は観察されなかった。内在性遺伝子の発現もまた、siRNAの検出限界以下にて観察阻害されなかった。これらのデータは、哺乳類培養細胞株におけるsiRNA媒介RNA干渉の特異性及び効果を示し、且つ、インターフェロンの反応性はこの塩基対のsiRNAにより活性化されないことが示唆される。この結果により、RNA干渉は哺乳細胞における遺伝子発現を効果的に阻害するのに使用可能であることが示唆される。
【0005】
RNA干渉による標的遺伝子の阻害発現能は明らかに有益である。例えば、多くの疾患は特定の遺伝子又は遺伝子群の異常な発現により惹起される。RNA干渉は、有害遺伝子の発現を阻害するのに使用することが可能であって、従って、疾患症状を軽減又は治癒を供することになる。例えば、癌状態又はウィルス複製に貢献する遺伝子を阻害することも可能である。加えて、筋ジストロフィーなどの遺伝的疾患を惹き起こす変異遺伝子を阻害することも可能である。リウマチ症などの炎症性疾患もまた、シクロオキシゲナーゼやサイトカインなどの遺伝子を阻害することにより処置可能である。標的臓器の例として含まれるのは、肝臓、膵臓、脾臓、皮膚、脳、前立腺、心臓などである。加えて、RNA干渉は、遺伝子機能を検討するための実在の遺伝子「ノックアウト」動物に類似の動物を繁殖するのに使用することも可能である。
【0006】
薬物創製もまた、siRNA技術により促進される可能性がある。標的の評価に関するsiRNA手法は、活性を有する薬物標的をスクリーニングすべくより早く、より安価な手法を提供するであろう。薬物標的に関する情報は、活性を有する薬物標的を阻害するばかりでなく、阻害タンパク及びそのパスウェイが有意な現象論的効果を有するかどうかを同定することにより収集されるであろう。例えば、LDL受容体発現の阻害は血清LDLレベルを上昇させ、従って、この受容体のアップレギュレーションは、治療学的効果を示唆するであろう。標的遺伝子又はパスウェイだけでなく遺伝子の発現における阻害の反応効果を同定するのに発現アレイを使用することが可能である(非特許文献25)。機能的パスウェイや(パスウェイに相互作用する)ネットワーク内において遺伝子産物を判別するであろう。
【0007】
生物学的活性物質を細胞内領域へと効果的に送達するのは、種々のベシクルを用いて達成されてきた。特定のタイプのベシクルの一つであるリポソームは、薬物送達における最も開発されたタイプの一つである。1970年代から開発されてきたリポソームは、微小なベシクルであって、親水性及び疎水性領域の両方を有する両性分子を有している。リポソームは1つのタイプの両親媒性分子又は複数の異なる両親媒性分子から形成される。リポソームを用いて生物学的に活性な化合物を複合化するのに複数の方法が開発されてきた。特にリポソームで複合化されたポリヌクレオチドは、哺乳細胞に送達されてきた。DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド)の後(非特許文献26)、複数の陽イオン性脂質がこの目的に合成されてきた。本質的に、全ての陽イオン性脂質は、両親媒性化合物であって、疎水性領域、スペーサー及び陽イオン荷電したアミン(類)を有している。この陽イオン性脂質は、時に、リポソームを形成すべく、DOPE(ヂオレイルフォスファチジルエタノールアミン)などの融合誘導因子脂質に混和される。この陽イオン性リポソームは、その後プラスミドDNA及びDNAの両性複合体に混和され、リポソームは、組織培養ディッシュ中の細胞やin vivoに適用される。陽イオン性リポソーム形成におけるプラスミドDNAの混合の容易性、DNAを複合化する陽イオン性脂質の能力及び比較的高いレベルのトランスフェクション効率は、これらの製剤の利用の増加をもたらしてきた。しかしながら、これらの陽イオン性脂質の製剤は、培養細胞及びin vivoにおいて典型的に毒性を有しているという一般的な欠点を有している(非特許文献27、28)。最近、脂質は、細胞のトランスフェクションを促進すべく、他のDNA結合化合物に関連して使用されている。本発明は、動物細胞であるin vitroやin vivoへの送達に関する生物学的に活性を有する新規なポリイオンを有する複合体の調製に使用されるべく、新規な両親媒性化合物及びこれらの調製方法を提供する。この複合体は、低毒性でありながら細胞外から細胞内へとこのポリイオンを高効率にて移行を促進する。
【0008】
本発明は、動物細胞であるin vitroやin vivoに、高効率で低毒性にて、siRNAを送達する、トランスフェクション試薬及び方法について述べる。本発明における方法は、RNA干渉の目的に関して、siRNAを動物細胞に効果的に送達することを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】P.A. Sharp. Genes Dev 15:485-490., 2001.
【非特許文献2】S.M. Hammond, E. Bernstein, D. Beach and G.J. Hannon. Nature 404:293-296., 2000.
【非特許文献3】A.J. Hamilton and D.C. Baulcombe. Science 286:950-952., 1999.
【非特許文献4】P.D. Zamore, T. Tuschl, P.A. Sharp and D.P. Bartel. Cell 101:25-33., 2000.
【非特許文献5】D. Yang, H. Lu and J.W. Erickson. Curr Biol 10:1191-1200., 2000.
【非特許文献6】S. Parrish, J. Fleenor, S. Xu, C. Mello and A. Fire. Mol Cell 6:1077-1087., 2000.
【非特許文献7】E. Bernstein, A.A. Caudy, S.M. Hammond and G.J. Hannon. Nature 409:363-366., 2001.
【非特許文献8】S.M. Elbashir, W. Lendeckel and T. Tuschl. Genes Dev 15:188-200., 2001.
【非特許文献9】S.M. Hammond, A.A. Caudy and G.J. Hannon. Nat Rev Genet 2:110-119., 2001.
【非特許文献10】H. Tabara, M. Sarkissian, W.G. Kelly, J. Fleenor, A. Grishok, L. Timmons, A. Fire and C.C. Mello. Cell 99:123-132., 1999.
【非特許文献11】M. Fagard, S. Boutet, J.B. Morel, C. Bellini and H. Vaucheret. Proc Natl Acad Sci U S A 97:11650-11654., 2000.
【非特許文献12】C. Catalanotto, G. Azzalin, G. Macino and C. Cogoni. Nature 404:245., 2000.
【非特許文献13】R.F. Ketting, T.H. Haverkamp, H.G. van Luenen and R.H. Plasterk. Cell 99:133-141., 1999.
【非特許文献14】F. Wianny and M. Zernicka-Goetz. Nat Cell Biol 2:70-75., 2000.
【非特許文献15】P. Svoboda, P. Stein, H. Hayashi and R.M. Schultz. Development 127:4147-4156., 2000.
【非特許文献16】N.J. Caplen, J. Fleenor, A. Fire and R.A. Morgan. Gene 252:95-105., 2000.
【非特許文献17】T. Tuschl, P.D. Zamore, R. Lehmann, D.P. Bartel and P.A. Sharp. Genes Dev 13:3191-3197., 1999.
【非特許文献18】G.R. Stark, I.M. Kerr, B.R. Williams, R.H. Silverman and R.D. Schreiber. Annu Rev Biochem 67:227-264., 1998.
【非特許文献19】L. Manche, S.R. Green, C. Schmedt and M.B. Mathews. Mol Cell Biol 12:5238-5248., 1992.
【非特許文献20】M.A. Minks, D.K. West, S. Benvin and C. Baglioni. J Biol Chem 254:10180-10183., 1979.
【非特許文献21】M.J. Clemens and A. Elia. J Interferon Cytokine Res 17:503-524., 1997.
【非特許文献22】M.R. Player and P.F. Torrence. Pharmacol Ther 78:55-113., 1998.
【非特許文献23】N.J. Caplen, S. Parrish, F. Imani, A. Fire and R.A. Morgan. Proc Natl Acad Sci U S A 98:9742-9747., 2001.
【非特許文献24】S.M. Elbashir, J. Harborth, W. Lendeckel, A. Yalcin, K. Weber and T. Tuschl. Nature 411:494-498., 2001.
【非特許文献25】J.F. Reidhaar-Olson and J. Hammer. Current Drug Discovery April:20-24., 2001.
【非特許文献26】Felgner PL, Gadek TR, Holm M, Roman R, Chan HW, Wenz M, Northrop JP, Ringold GM, Danielsen M. Proc Natl Acad Sci U S A 84(21):7413-7417., 1987.
【非特許文献27】Gao, X and Huang, L. Biochem. Biophys. Res. Com. 179:280-285., 1991.
【非特許文献28】Leventis, R and Silvius, JR. Biochim. et Biophys. Acta. 1990;1023:124-132.
【非特許文献29】J. Summerton, D. Stein, S.B. Huang, P. Matthews, D. Weller and M. Partridge. Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:63-70., 1997.
【発明の概要】
【0010】
(本発明の概略)
本発明は、3つの要素、つまり、siRNA、両親媒性化合物及びポリカチオンからなる複合体を用いて動物細胞へのsiRNA移行を提供する。新規な両親媒性化合物及びこの調製方法を述べる。好適実施例において述べているのは、siRNA、両親媒性化合物及びポリカチオンからなる組成物並びに細胞内における遺伝子発現を阻害する目的で、かかる組成物を用いて、siRNAをin vivo又はin vitroへとsiRNAを送達する方法である。
【0011】
好適実施例において、述べられている組成物及び化合物は、in vitro及びin vivoにおける動物細胞へのsiRNAの送達を容易にすることである。このsiRNAは、細胞内に発現されている標的遺伝子と実質的に同一のヌクレオチド配列を有する二本鎖構造を有している。さらに、ポリカチオン及び両親媒性化合物を共に用いることにより、siRNAの移行効率を有意に増加させ、siRNAは、選択された標的遺伝子の発現を阻害する。
【0012】
好適実施例において、ポリカチオンは、ポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリシラザン、ポリジヒドロイミダゾレニウム、ポリアリルアミン及びこれらに類する化合物などのポリマーである。好適な陽イオンポリマーは、エトキシル化ポリエチレンイミン(ePEI)である。
【0013】
好適実施例において、ポリカチオンはDNA結合タンパクである。好適なDNA結合タンパクは、H1、H2A又はH2Bなどのヒストンである。ヒストンは、牛胸腺などの天然ソースに由来していてもよいし、バクテリア内で合成されたリコンビナントタンパクであってもよい。ヒストンなどのDNA結合タンパクは、ポリリジンなどのポリカチオン化合物に比べて種々の点で利点を有している。ヒトH1ヒストンタンパクは、免疫原性がなく、アナフィラキシーを誘導しない。ポリリジンはアナフィラキシーショックを誘導し、非常に免疫原性が高い。好適実施例においてDNA結合タンパクは、SV40ラージT抗原核局在化シグナルやヒトヒストンH1のC末端ドメイン(NLS−H1)の両方を有するバクテリアにて合成されたリコンビナントヒストンなどの核局在化シグナルにリンクされている。
【0014】
好適実施例において、ポリエチレンイミン又は同様のポリマーは、ポリカチオンとして使用され、構造番号1の化合物は、両親媒性化合物として使用されている。他の好適実施例において、ヒストンH1タンパクは、ポリカチオンとして使用され、構造番号1の化合物は、両親媒性化合物として使用されている。siRNAは、細胞における標的遺伝子の効果の検討又は細胞における治療効果の影響を検討するために使用されてもよい。
【0015】
好適実施例において、細胞は、不死化又はトランスフォームされた細胞株などの組織培養中で保持された動物細胞であってもよい。これらに含まれるのは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Bethesda)から入手可能な種々の細胞株であって、例えば、3T3(マウス線維芽細胞)細胞、Rat1(ラット線維芽細胞)細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵母)細胞、CV−1(サル腎臓)細胞、COS(サル腎臓)細胞、293(ヒト初期胚腎臓)細胞、HeLa(ヒト頚部子宮癌)細胞、HepG2(ヒト肝臓)細胞、Sf9(昆虫上皮性卵巣癌)細胞やこれらに類する細胞などが挙げられる。
【0016】
他の好適実施例において、細胞は、初代又は二代細胞であってもよく、これが意味するのは、細胞は、動物から採取した後、比較的短期間、組織培養にて保持されている、ということである。これに含まれるのは、限定されないが、肝臓初代細胞及び筋初代細胞やこれらに類する細胞である。組織内の細胞は、細胞外マトリックスを分解するトリプシンやコラゲナーゼなどの分解酵素により単離される。組織は種々の異なる細胞型から構成されており、好適な細胞型を一定の精製量得るべく、勾配遠心分離や抗体分画などの精製方法を使用してもよい。例えば、初代筋芽細胞は、パーコール(Sigma社製)勾配遠心分離を用いて線維芽細胞が混入している組織から分離される。
【0017】
他の好適実施例において、細胞は、in situやin vivoの組織内に存在する動物細胞であってもよく、この細胞は、組織や動物から分離されていないということを意味する。
【0018】
好適実施例において、遺伝子発現を阻害する目的(いわゆるRNA干渉)で、siRNAを動物細胞へと送達する方法を述べており、両親媒性化合物、効果量のポリカチオン及び溶液状態のsiRNAからなる複合体を形成する方法並びにこの3つの要素を用いて細胞に関連づける方法を有している。好適な両親媒性化合物は構造番号1の化合物である。好適なポリカチオンはエトキシル化PEIである。他の好適なポリカチオンはヒストンである。
【0019】
細胞へのsiRNAの移行を媒介すべく、ポリカチオンと組み合わせて種々の両親媒性化合物を用いてもよい。好適実施例において、この両親媒性化合物は陽イオン性を有している。この陽イオン性両親媒性化合物は、天然由来ではないポリアミンであってもよく、これら1つ以上のアミンは、少なくとも1つの疎水性残基に結合されており、この疎水性残基は、C6−C24アルカン、C6−C24アルケン、ステロール、ステロイド、脂質、脂肪酸又は疎水性ホルモンを有している。両親媒性化合物は、リポソームを形成していても形成していなくてもよい。好適実施例において、複数の新規な両親媒性陽イオン化合物を述べている。この化合物は、一般的に以下の一般構造
【0020】
【化2】

構造番号1
を有しており:R1及びR2は、C6−C24アルカン、C6−C24アルケン、ステロール、ステロイド、脂質、脂肪酸又は疎水性ホルモン及びその他の類似する疎水基からなる群から選択された置換基である。R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
遺伝子導入に関して以前に述べられている陽イオン性リポソームの使用と比較して、上述の新規な両親媒性化合物のほとんどは、単独で使用する場合、細胞内への遺伝子の移行を効果的に媒介しない。しかしながら、これら新規の陽イオン性両親媒性化合物をポリカチオンとともに使用すると、最小限の細胞毒性を以て、種々の動物細胞へ効果的に遺伝子を導入することが可能となる。ポリカチオン及び両親媒性化合物の組み合わせは、siRNAの送達の効率を促進する。
【0022】
好適実施例において、本発明は、動物細胞へsiRNAを送達する方法を提供し、この方法は、構造番号1の化合物と溶液状態のsiRNA及びポリカチオンを混和し3つの要素を有する複合体を調製し、この複合体を動物細胞に関連付けし、且つ、細胞内部にこのsiRNAを送達する方法を有する。このsiRNAは、その後、細胞内における特定の遺伝子の発現を阻害する。この両親媒性化合物は、siRNAを加える前、siRNAを加えるのと同時に、又はsiRNAを加えた後に、ポリカチオンと混和されてもよい。
【0023】
好適実施例において述べているのは、細胞内部において核酸発現を阻害する複合体である。この複合体は、複合体を形成すべく、1つの化合物又は複数の化合物とsiRNAを有しており、この複合体のゼータポテンシャルは、siRNA単独のゼータポテンシャルよりも負である。in vivoにおける哺乳類血管へとこの複合体を導入し、且つ、この複合体を細胞に送達し、選択された遺伝子発現が阻害される。
【0024】
好適実施例において、ポリカチオン、siRNA又は両親媒性化合物は、機能性置換基を結合することにより改変されてもよい。この機能性置換基は、限定されないが、siRNAの送達を容易にする標的化シグナル又はラベル又はその他の基であってもよい。この置換基は、複合体形成に先立ち、1つ以上の組成物に結合されてもよい。代替的に、この置換基は、複合体の形成の後に結合されてもよい。
【0025】
好適実施例において、動物細胞にsiRNAを送達するための化合物、組成物、及び方法を用いてもよく、この細胞は、in vitro、ex vivo、in situ、又はin vivoに存在していてもよい。
【0026】
好適実施例において、本発明は、動物細胞にsiRNAを送達する方法を開示しており、この方法は、両親媒性化合物、効果量のポリカチオン及び溶液状態の選択されたsiRNAからなる3つの要素を有する複合体を用いて細胞に関連づける工程を含んでいる。送達という用語が意味するのは、siRNAが細胞に関連付けられることであって、これにより、遺伝子発現を阻害することにより細胞の内在的な特性が変化する。この複合体は、細胞膜上に存在していてもよく、或いは、細胞質、核又はその他の細胞内小器官の内部に存在していてもよい。送達に関連した相互に変換可能な、使用されているその他の用語には、トランスフェクト、移行又はトランスフォームなどが含まれる。
【0027】
好適実施例において、本発明は、陽イオン性両親媒性化合物及びこの調製方法であって、この化合物は、動物細胞へのsiRNAの送達を促進し、この化合物は、以下の一般構造
【0028】
【化3】

構造番号1
を有しており:R1及びR2は、C6−C24アルカン、C6−C24アルケン、ステロール、ステロイド、脂質、脂肪酸又は疎水性ホルモン及びその他の類似する疎水基からなる群から選択された置換基である。
【0029】
この化合物は陽イオン性として考えられる。なぜなら、この分子は、全体的に正電荷を有しているからである(ゼータポテンシャルが正)。この化合物は、両親媒性であると考えられる。なぜなら、この分子は、一端には疎水性基を有し、他端には親水性基を有しているためである。疎水性基は、定量的な意味合いで、その化学残基は水を排除する。典型的に、疎水性基は、定量的な意味合いで、その化学残基は水を排除する。炭化水素は、疎水性基である。親水性基は、定量的な意味合いで、その化学残基は水を好む性質を有している。典型的に、かかる化学残基は、水溶性であり、水に対して水素結合供与基又は受容基である。親水性基の例には、以下の化学残基を有する化合物が含まれる;つまり、炭化水素、ポリオキシエチレン、ペプチド、オリゴヌクレオチド並びにアミン、アミド、アルコキシ、アミド、カルボン酸、イオウ、又は水酸基などを含む置換基である。
【0030】
好適実施例において、これらの両親媒性化合物は、ポリカチオン及びsiRNAと組み合わされて3つの要素を有する複合体を形成し、細胞にこのsiRNAを送達する目的で動物に関連付けられる。他の好適実施例において、これらの両親媒性化合物は、例えば脂質など他の両親媒性化合物と組み合わされても良く、その後、動物細胞にsiRNAを送達するのに用いられる。
【0031】
siRNAは、短鎖の、15から50塩基対、又は好ましくは21から25塩基対の二本鎖リボ核酸である。「核酸」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドを有するポリマーを参照する技術用語である。天然のヌクレオチドは、デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)基、リン酸基及び塩基を有している。塩基には、プリン類及びピリミジン類が含まれ、さらに、天然の化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然のアナログが更に含まれる。プリン類及びピリミジン類に関する合成誘導体は、限定されないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート及びハロゲン化アルキルなどの塩基上に新規の反応基を置換する改変物を含む。「塩基」という用語は、DNA及びRNAに関する種々の公知の塩基アナログを包含し、限定されないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドリキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン及び2,6−ジアミノプリンを含む。ヌクレオチドは<核酸ポリマーの単量体単位であって、天然のポリヌクレオチドではリン酸基を介して共に結合されている。天然のポリヌクレオチドは、リボース−リン酸骨格を有している。人工又は合成のポリヌクレオチドは、in vivoにおいて重合化されており、同じ又は同様の塩基を含んでいるが、天然のリボース−リン酸骨格とは異なるタイプの骨格を有していてもよい。これらの骨格に含まれるのは、限定されないが、PNA類(ペプチド核酸)、フォスフォロチオエート、フォスフォロジアミデート、モルフォリノ類及び天然のポリヌクレオチドにおけるリン酸骨格に関するその他のバリアントである。
【0032】
siRNAは、遺伝子の一部と同一及びほぼ同一の配列を有している。RNAはin vitroにおいて重合化されていてもよく、リコンビナントRNA又はこれらの基の誘導体はキメラ配列を有している。このsiRNAは、標的遺伝子の発現を阻害するように、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、合成ヌクレオチド、又は種々の適切な組み合わせを含んでいても良い。このRNAは、好ましくは二本鎖であるが、単鎖、三本鎖又は4本鎖であってもよい。
【0033】
送達されたsiRNAは、細胞質又は核の内部に保持することが可能である。siRNAは、内在的又は外来的なヌクレオチド配列の発現を阻害すべく、或いは、一般的に細胞に関連付けられていない特定の生理学的特性に影響を及ぼすべく細胞に送達されてもよい。
【0034】
ここで、タンパクは、ポリペプチドにおいて、互いに結合された2つのアミノ酸残基以上の線形シリーズを参照している。疾病状態を減弱し又は阻止することに関するタンパク質の「治療学的」効果は、細胞内に留まるか、細胞膜に結合し続けるか、一般循環又は血流に進入することが可能な細胞から分泌され、且つ分離されることにより達成されてもよい。治療的な分泌タンパクは、ホルモン、サイトカイン、成長因子、凝固因子、抗プロテアーゼタンパク(例えばα1−アンチトリプシン)、血管新生タンパク(例えば、血管上皮細胞生長因子、線維芽細胞成長因子など)、抗血管新生タンパク(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチンなど)及び血液中に存在するその他のタンパクを含む。細胞膜上のタンパク質は、タンパク又はリポタンパクを取り込むべく、細胞に受容体を供することにより治療的な効果を有することも可能である(例えば低密度リポタンパク受容体)。細胞内に存在する治療的タンパク(「細胞内タンパク質」)は、フェニルケトン尿など、循環する毒性代謝物を排泄する酵素であってもよい。これらはまた、癌細胞の増殖性又は癌原性を減弱させてもよいし(例えば、転移性を減弱させる)、或いはウィルスの複製を阻害してもよい。細胞内タンパクは、細胞骨格(例えば、アクチン、ジストロフィン、ミオシン、ザルコグリカン、ジストログリカンなど)の一部であってもよく、且つ、心筋症及び筋骨格関連疾患(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面・肩甲・上腕型筋ジストロフィーなど)であってもよい。心臓疾患を処置する特定の他の治療タンパクには、心筋収縮性に影響を与えるポリペプチド(例えば、カルシウム及びナトリウムチャネル)、再狭窄阻害剤(例えば、一酸化窒素合成酵素)、血管新生因子、及び抗血管新生因子などが含まれる。
【0035】
siRNAは、治療的な細胞変化を生じさせるべく、細胞に送達されてもよい。治療的な目的(疾患を処置したり防止することを含む動物における健康状態を向上させる技術)に関連して、siRNA又は他の遺伝子に関連する物質の送達は、遺伝子治療と呼ばれている。siRNAは、in situにて器官に直接送達されてもよいし、ex vivoにて細胞に間接的に導入し器官に移植されてもよい。タンパクの合成を阻害したりRNA量を減少させるには、siRNAを細胞へと導入することが必要である。主要な変異遺伝子により惹き起こされる常染色体性優性筋ジストロフィーなどの疾患は、治療的なsiRNAを用いた処置に関する候補例である。siRNAの送達は、主要タンパクの産生を阻害し、これにより、疾患症状を減弱させる。
【0036】
ポリカチオンは、概ね正荷電を有するポリマーを意味しており、例えば、ポリ−L−リジン、ヒドロキシブロマイド、ポリエチレンイメイン又はヒストンなどが挙げられる。重合体性ポリカチオンは、正荷電、中性荷電又は負荷電を有する単量体ユニットを含んでいてもよいが、ポリマーのネットでの荷電は、正荷電であるべきである。また、ポリカチオンは、2つ以上の正荷電を有する非重合性分子も意味している。
【0037】
DNA結合タンパクは、本発明における応用例にて述べた条件下で核酸に関連付けられるタンパクであって、核酸に対して高い結合定数を有する複合体を形成している。このDNA結合タンパクは、天然型にて効果量を用いてもよく、又はこの目的に関連して改変された型にて用いられても良い。このポリカチオンの「効果量」は、siRNAの送達を生じさせることができる量である。好適実施例において、このポリカチオンは、ポリヌクレオチド結合タンパクであって、牛胸腺などの動物組織に由来したものや、大腸菌にてリコンビナントにて合成されたものである。好ましくは、このポリヌクレオチド結合タンパクは、ヒストンタンパクなどの陽イオン性を有している。ヒストンH1タンパクは、好適なヒストン型であって、複数の供給者(Sigma、Invitrogenなど)から購入することが可能である。
【0038】
(その他の定義)
(脂質)
水に不溶性であるが、クロロフォルムやベンゼンなどの有機系溶媒に可溶な、複数の異なる有機系化合物群である。脂質は、親水性及び疎水性部分を有している。脂質は、複合体脂質、単純脂質、及び合成脂質を含むべく意図されている。
【0039】
(複合体脂質)
複合体脂質は、脂肪酸のエステル体であって、グリセライド(脂肪又は油)、糖脂質、リン脂質及びワックスを含んでいる。
【0040】
(単純脂質)
単純脂質は、ステロイドやテルペン類を含んでいる。
【0041】
(合成脂質)
合成脂質は、脂肪酸から調製されたアミドを含んでおり、そのカルボン酸は、アミド、1つ以上の原子が他のヘテロ原子(例えば、窒素やイオウ)などにより置換されている複合体脂質の合成変異体、追加の疎水性基が化学結合されている単純脂質の誘導体に変換されている。合成脂質は、1つ以上の遊離基を有していてもよい。
【0042】
(脂肪)
脂肪は、長鎖カルボン酸のグリセロールエステル体である。脂肪の加水分解により、グリセロール及びカルボン酸、つまり脂肪酸、を産生する。脂肪酸は、飽和又は不飽和(1つ以上の二重結合を有する)であってもよい。
【0043】
(油)
油は、カルボン酸のエステル体であるか、或いは、脂肪酸のグリセライドである。
【0044】
(糖脂質)
糖脂質は、脂質を有する糖体である。この糖体は、典型的には、ガラクトース、グルコース又はイノシトールである。
【0045】
(リン脂質)
リン脂質は、リン酸基及び1つ以上の脂肪酸(脂肪酸のエステル体として)の両方を有する脂質である。このリン酸基は、1つ以上の有機基に結合されていてもよい。
【0046】
(ワックス)
ワックスは、種々の形態の固形、又は半固形の物質であって、一般的に脂肪酸のエステル体である。
【0047】
(ポリイミダゾリニウム):
ポリイミダゾリニウムは、1つ以上のイミダソリニウムなるサブユニットを有するポリマー(ランダム共重合体、ブロック共重合体又はその他の共重合体)である。ポリイミダゾリニウムは、イミダソリニウムのホモポリマーも意味している。このイミダソリニウムなるサブユニットは、ポリマーの主鎖であってもよいし、或いは、ポリマーの主鎖における側鎖であってもよい。このポリマーは、ネットでの天然型ポリマー、ポリカチオン、又はポリアニオンであってもよい。
【0048】
(イミダゾリニウム(イミダゾリニウムサブユニット))
【0049】
【化4】

イミダソリニウム(イミダソリニウムサブユニット)において、R1、R2、R3、R4a、R5a及びR5bなるサブユニットは、種々の置換において、独立して、水素ラジカル又は炭素ラジカルであってもよい。対イオン(X)は、種々の対イオンであってもよい。対イオンには、限定されないが、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及びトシレートを含む。
【0050】
(ポリ−2−イミダゾリン)
ポリ−2−イミダゾリンは、1つ以上のイミダソリニウムなるサブユニットを有するポリマー(ランダム共重合体、ブロック共重合体又はその他の共重合体)である。また、ポリ−2−イミダゾリンは、2−イミダゾリンサブユニットを有するホモポリマーをも意味している。このイミダゾリンサブユニットは、ポリマーの主鎖であってもよいし、或いは、ポリマーの主鎖における側鎖であってもよい。このポリマーは、ネットでの天然型ポリマー、ポリカチオン、又はポリアニオンであってもよい。
【0051】
(2−イミダゾリン(2−イミダゾリンサブユニット))
【0052】
【化5】

2−イミダゾリン(イミダゾリンサブユニット)において、R1、R2、R4a、R5a及びR5bなる置換基は、種々の置換において、独立して、水素ラジカル又は炭素ラジカルであってもよい。
【0053】
(複合体)
複合化又は複合体形成と呼ばれる工程を介して複合体を形成すべく、2つの分子が組み合わされており、静電気的相互作用、水素結合、及び疎水結合などの非共有的総合作用を介して互いに接している。
【0054】
(改変)
二番目の分子により、いわゆる改変なる工程を介して改変物を形成すべく、分子が改変され、この2つの分子は、共有結合を介して結合される。つまり、この2つの分子は、一番目の分子に由来する原子と二番目の原子に由来する原子との間で共有結合を形成しており、新規な単一の分子を形成する。化学的共有結合は、電子密度の共有が存在する2つの分子間での相互作用した結合である。また、改変は、非共有結合を介して、2つの分子間での相互作用も意味している。例えば、クラウンエーテルは、特定のアミノ酸にて非共有結合を形成してもよい。
【0055】
(塩)
塩は、イオン結合を含む種々の化合物であり、1つ以上の電子が他の原子に完全に移行した結合である。塩は、溶液に溶解した場合、陽イオンと陰イオンとに解離するイオン性化合物であって、溶液にイオン強度が増加する。
【0056】
(薬物学的許容可能塩)
薬物学的許容可能塩は、酸及び塩基付加塩の両方を意味している。
【0057】
(薬物学的許容可能酸付加塩)
薬物学的許容可能酸付加塩は、生物学的に有効で遊離塩基の特性を有する塩であって、生物学的その他望ましくないものではなく、無機酸及び有機酸にて形成され、例えば、無機酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及びこれに類似する酸が含まれ、有機酸には、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロニル酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸及びこれに類する酸が含まれる。
【0058】
(薬物学的許容可能塩基付加塩)
薬物学的許容可能塩基付加塩は、生物学的に有効で遊離酸の特性を有するする塩であって、生物学的その他望ましくないものではない。この塩は、無機塩基を加えるか、遊離酸に有機塩基を加えて調製される。無機塩基に由来する塩には、限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩及びこれに類する塩が含まれる。有機塩基に由来する塩には、限定されないが、一級、二級及び三級アミンが含まれ、例えば、メチルアミン、トリエチルアミン及びこれに類するアミンが挙げられる。
【0059】
(内部ポリ電解質複合体)
内部ポリ電解質複合体は、反対する荷電のポリ電解質間の非共有な相互作用である。
【0060】
(荷電、極性及びサイン)
化合物の荷電、極性及びサインは、化合物が1つ以上の電子(正荷電、極性又はサイン)を失うかどうか、或いは、1つ以上の電子(正荷電、極性又はサイン)を取得するかどうかを参照している。
【0061】
(細胞標的化シグナル)
細胞標的化シグナル(又はシグナル)は、本願において、薬物又は核酸などの生物学的に活性を有する化合物を改変する分子として規定されており、培養条件又は全器官の両方において、(組織などの)細胞配置又は細胞の位置に作用可能である。外来遺伝子の細胞内又は組織配置を改変することにより、生物学的に活性を有する化合物の機能は促進可能である。
【0062】
この細胞標的化シグナルは、タンパク質、ペプチド、脂質、ステロイド、糖、炭化水素(非発現)ポリ核酸又は合成化合物であってもよい。この細胞標的化シグナルは、受容体への細胞結合、核への細胞質輸送及び核移行を促進するか、或いは、エンドソームやその他の細胞内ベシクルから遊離させる。
【0063】
核局在化シグナル(NLS)は、核近傍への薬物の標的化及び/又は核内部への移行を促進する。かかる核移行シグナルは、タンパクであっても、ペプチドであってもよく、例えば、SV40ラージT抗原のNLSやヌクレオプラスミンなどが挙げられる。これら核局在化シグナルは、例えば、カリオフェリンβと相互作用するNLS受容体(カリオフェリンα)など種々の核移行因子と相互作用する。核移行タンパクは、それ自身、NLSとして機能する。なぜなら、これらは、核孔又は核に標的化されているからである。例えば、カリオフェリンβは、それ自身、DNAを核孔複合体へ標的化することができる。複数のペプチドは、SV40T抗原に由来している。これらには、短鎖のNLS又は長鎖のNLSを含む。他のNLSペプチドは、M9タンパク、ヌクレオプラシミン及びc−mycに由来する。
【0064】
細胞内分画からの放出を促進するシグナル(放出シグナル)は、エンドソーム(初期及び後期)、ライソゾーム、ファゴソーム、ベシクル、滑面小胞体、ゴルジ体、トランスゴルジネットワーク(TGN)及び筋小胞体などの細胞内小器官からのDNAの放出を惹き起こす可能性がある。この放出に含まれるのは、細胞内分画から細胞質への移動や、又は細胞内分画から核などの小器官への移動である。放出シグナルに含まれるのは、クロロキン、ファビロマイシン又はベレフェルディンAなどの化学物質、ER保持シグナル(KDEL配列)、インフルエンザウィルスのヘマグルチニンサブユニットHA−2ペプチドなどのウィルス成分及び他のタイプの両親媒性ペプチドである。
【0065】
細胞性受容体シグナルは、細胞と生物学的に活性を有する化合物との関連付けを促進する種々のシグナルである。これは、化合物の細胞表面への結合性を増加し及び/又は細胞内分画との関連付けの両方により達成されてもよく、例えば:細胞表面の結合性を促進することによるエンドサイトーシスを促進するリガンドなどを挙げることができる。これに含まれるのは、アシオログライコプロテインやガラクトース残基を用いることによるアシアログライコプロテイン受容体へ標的化する物質である。インスリン、EGF又はトランスフェリンなどの他のタンパク質を標的化に用いてもよい。RGD配列を含むペプチドは、多くの細胞を標的化するのに用いてもよい。細胞膜上のチオール、スルフヒドリル又はジスルフィド基などの他の標的化群には、脂質、脂肪酸、コレステロール、ダンシル化合物及び両親媒性誘導体などの膜と相互作用する分子を含んでいる。加えて、ウィルスタンパク質を細胞と結合するのに用いてもよい。
【0066】
(相互作用モディファイヤー)
相互作用モディファイヤーは、相互作用モディファイヤーを含まない分子に相対して、分子がそれ自身と又は他の分子と相互作用する方式を変更する。この改変の結果として、自己相互作用又は他の分子との相互作用は、増加又は減弱される。例えば、細胞標的化シグナルは、分子と分子又は細胞内分画との間の相互作用を変化させる相互作用モディファイヤーである。ポリエチレングリコールは、1つの相互作用モディファイヤーであって、分子とそれ自身及び他の分子との相互作用を減弱させる。
【0067】
(リンケージ)
2つの他の基(化学残基)との共有結合又はスペーサーを提供する結合である。リンケージは、電気的に中性であってもよく、或いは、正又は負に帯電していてもよい。この化学残基は、疎水性又は親水性であってもよい。好適なスペーサー群に含まれるのは、限定されないが、C1−C12アルキル、C1−C12アルケニル、C6−C18アラルキル、C6−C18アラルケニル、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、ポリオール、アミド、アミン、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリアミン、チオール、チオエーテル、チオエステル、リン含有物質、及び複素環などである。リンケージは、1つ以上の不安定結合を有していてもよい。
【0068】
(二機能性)
クロスリンカーとして通常参照される二機能性分子は、2つの分子と共に結合すべく使用され、つまり、2つの分子間のリンケージを形成する。二機能性分子は、ホモ又はヘテロな二機能性を有していてもよい。
【0069】
(不安定結合)
不安定結合は、選択的に切断可能な共有結合である。つまり、不安定結合は、他の共有結合の切断を伴うことなく、他の共有結合の存在下で切断されてもよい。例えば、ジスルフィド結合は、分子に存在する可能性のある炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−イオウ結合、炭素−窒素結合などの他の結合の切断を伴うことなく、チオールの存在下で切断可能である。不安定が意味するのは、切断可能であるということである。
【0070】
(不安定リンケージ)
不安定リンケージは、不安定結合を有する化学物質であって、2つの他の基との間のスペーサー又はリンクを提供する。リンクされるこの基は、以下から選択されてもよい。つまり、生物学的活性化合物、膜活性化化合物、膜活性を阻害する化合物、機能性反応性基、モノマー及び細胞標的化シグナルである。スペーサー基は、化学残基を含んでいてもよく、これらは以下の群から選択される。つまり、アルカン、アルケン、エステル、エーテル、グリコール、アミド、単糖体、多糖体及び酸素、イオウ若しくは窒素などのヘテロ原子である。スペーサーは、電気的に中性であってもよいし、或いは、正又は負荷電していてもよいし、あるいは、全体として中性、正、又は負荷電しつつ正荷電及び負荷電していてもよい。
【0071】
(pH−不安定リンケージ及び結合)
pH不安定性とは、産生条件下(pH<7)での共有結合の選択的な切断を参照している。つまり、pH不安定結合は、他の共有結合の存在下、これらを切断することなく、切断されてもよい。
【0072】
(両親媒性化合物)
両親媒性化合物は、親水性(水溶性)部分と、疎水性(不溶性)部分とを有している。親水性基は、定量的な意味合いで、その化学残基が水を好む性質を有しているということである。典型的には、かかる化学基は、水溶性であり、且つ水素結合供与基であるか、或いは水の受容基である。親水性基の例には、以下の残基を有する化合物が含まれる:炭水化物、ポリオキシエチレン、ペプチド、オリゴヌクレオチド並びにアミン、アミド、アルコキシアミド、カルボン酸、イオウ、又は水酸基を含む基である。疎水性基は、定量的ない見合いで、その化学残基は水を排除する性質を有している。典型的に、かかる化学基は水溶性ではなく、水素結合を形成しない。炭化水素は、疎水性基である。
【0073】
(ポリマー)
モノマーと呼ばれるより小さなユニットが共に繰り返し結合することにより構築される分子である。本願の応用例において、ポリマーなる用語が含むのは、2から約80のモノマーを有するオリゴマーと80以上のモノマーを有するポリマーとを含んでいる。ポリマーは、リンカー、分岐ネットワーク、スター、コンブ、又はラダー型のポリマーであってもよい。ポリマーは、単一のモノマーが用いられるホモポリマーであってもよく、或いは、2つ以上のモノマーが使用される共重合体であってもよい。共重合体のタイプに含まれるのは、代替、ランダム、ブロック及びグラフト型である。ポリマーの主鎖は、ポリマー長の伸張に必要な結合を有する原子から構成されている。ポリマーの側鎖は、ポリマー長の伸張に必要ではない結合を有する原子から構成されている。重合化技術における当業者にとって、上述の工程に利用可能な重合化工程には種々の分離が存在している。この重合化は、チェイン又はステップであってもよい。この分類に関する既述は、追加及び濃縮ポリマーの終了にしばしば使用されている。「Most step−reaction polymerizations are condensation processed most chain−reaction polymerization are addition process" (M.P Stenvens porymer chemistry: An Introduction New York Oxford University Press 1990)である。テンプレートポリ重合化は、ドーターポリマーからポリマーを形成すべく使用してもよい。
【0074】
(ステップ重合化)
重合化ステップにおいて、重合化は、ステップ毎の様式にて行う。ポリマー伸張は、モノマー、オリゴマー及びポリマー間の反応により起こる。イニシエーターは必要ない。なぜなら、一貫して同様の反応であり、末端はすでに反応性を有しているので終了ステップが存在しないためである。重合化率は、機能性基の減少につれて低下する。典型的にステップ重合化は、2つの異なる方法のいずれかにより行われる。1つの方法は、モノマーが同一の分子にて反応性を有する機能性基(A及びB)を有しており、
A−Bは、−[A−B]−
を生成する。また、他の方法は、2つの二機能性モノマーを有している。
【0075】
A−A+B−Bは、−[A−A−B−B]−
を生成する。
【0076】
一般に、これらの反応には、アシレーション又はアルキレーションが含まれてもよい。アシレーションは、分子にアシル基(−COR)を導入することで定義されている。アルキレーションは、分子にアルキル基を導入することで定義されている。
【0077】
もし、機能性基Aがアミンであると、Bは、(限定されないが)、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシサクシニミド、スルフォニルクロライド、アルデヒド(ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドを含む)、ケトン、エポキシド、カーボネート、イミドエステル、カルボキシレート、アルキルフォスフェート、アリルハライド(ジフルオロ−ジニトロベンゼン)、無水物、酸ハライド、p−ニトロフェニルエステル、o−ニトロフェニルペンタクロロフェニルエステル、又はペンタフルオロフェニルエステルであってもよい。他の場合、機能性基Aがアミンである場合、機能性基Bは、アシル化剤又はアルキル化剤又はアミン化剤であってもよい。
【0078】
機能性基Aがチオール又はスルフヒドリルである場合、機能性基Bは、(限定されないが)、ヨードアセチル誘導体、マレイミド、アジリジン誘導体、アクリロイル誘導体、フルオロベンゼン誘導体、又はジスルフィド誘導体(例えば、ピリジルジスルフィド又は5−チオ−2−ニトロ安息香酸(TNB)誘導体)であってもよい。
【0079】
機能性基Aがカルボン酸塩である場合、機能性基Bは、(限定されないが)、そのジアゾアセテート又は使用されるカルボジイミドのアミンであってもよい。カルボニルジイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、N−ヒドロキシサクシニミド又はアルコールなど、カルボジイミド及びジメチルアミノピリジンを使用して、他の付加物を使用してもよい。
【0080】
機能性基Aが水酸基である場合、機能性基Bは、(限定されないが)、エポキシド、オキシラン及び使用されるカロボニルジイミダゾール又はN,N’−ジサクシニミジルカーボネートのアミン、N−ヒドロキシサクシニミジルクロロフォーメート又はその他のクロロフォーメートのアミンであってもよい。
【0081】
機能性基Aがアルデヒド又はケトンである場合、機能性基Bは、(限定されないが)、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、アミン(NaCNBH3などの還元剤により還元されてもされなくてもよいイミン又はイミニウムを形成すべく)、又は水酸基化合物であってもよく、ケトン又はアセタールを形成する。
【0082】
他の手法は、1つのモノマーを有すべく、
A−A+他の試薬にて−[A−A]−
を生成する方法である。機能性基Aがチオール、スルフヒドリルである場合、ヨウ素(I2)又はNaIO4(ペリオデートナトリウム)や酸素などの酸化剤によりジスルフィド結合に変換されてもよい。機能性基Aは、チオール、スルフヒドリル、酸化及びジスルフィド形成を実行する2−イミノチオレート(トラウト試薬)による反応による基に変換されるアミンであってもよい。ジスルフィド結合形成を触媒すべく、(ピリジルジスルフィド又は5−チオ−2−ニトロ安息香酸(TNB)誘導体などの)ジスルフィド誘導体を使用してもよい。
【0083】
上述の例のいずれかにおける機能性基A又はBは、光反応基であってもよく、例えば、アリルアジド、ハロゲン化アリルアジド、ジアゾ、ベンゾフェノン、アルキン又はジアリジン誘導体などが挙げられる。
【0084】
アミン、水酸基、チオール、スルフヒドリル、カルボキシル基の反応によりアミド、アミジン、ジスルフィド、エーテル、エステル、エナミン、尿素、イソチオウレア、イソウレア、スルフォンアミド、カーボネート、炭素−窒素二重結合(イミン)、アルキルアミン結合(二級アミン)、炭素が水酸基を有する炭素−窒素単結合、チオエーテル、ジオール、ヒドラゾン、ジアゾ、又はスルフォンなどの化学結合を生成する。
【0085】
連鎖重合:ポリマーの連鎖重合化伸張は、モノマーユニットを連続して添加し、限定した数の鎖の成長により起こる。この反応の開始及び伸張機構は、異なっており、通常、伸張停止ステップである。この重合化率は、モノマーが消失するまで一定に保持される。
【0086】
ビニル、アクリレート、メタクリレート、メタクリルアミド基を有するモノマーは、連鎖反応を実行してもよく、ラジカルであっても、陰イオン性であっても、陽イオン性であってもよい。連鎖重合化は、閉環又は開環重合化により達成されてもよい。反応開始における種々の異なるタイプのフリーラジカルを使用してもよく、パーオキサイド、ヒドロキシパーオキサイド、及び2,2’−アゾビス(アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAP)などのアゾ化合物が含まれる。化合物は、2つ以上の要素により製造された材料である。
【0087】
モノマーのタイプ:重合化工程には、種々の広範なモノマーを使用してもよい。これらに含まれるのは、アミン、イミジン、グアニジン、イミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、複素環(イミダゾール、ピリジン、モルフォリン、ピリミジン、又はピレンなど)などの正荷電した有機系モノマーである。このアミンは、pH感受性であってもよく、このアミンのpKaは、4から8の生理学的な範囲内である。特定のアミンに含まれるのは、スペルミン、スペルミジン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(AEPD)、及び3,3’−ジアミノ−N,N−ジメチルジプロピルアンモニウムブロマイドである。
【0088】
また、モノマーは、疎水性、親水性又は両親媒性であってもよい。また、モノマーは、アクリジン、チアゾールオレンジ又はエチジウムブロマイドなどの挿入剤であってもよい。
【0089】
モノマー及びポリマーに関する他のコンポーネント:ポリマーは、その利用性を増大させる他の群を有している。この群は、ポリマー形成に先立ちモノマーに導入されてもよいし、ポリマー形成の後にポリマーに結合されてもよい。この群に含まれるのは:標的化群としてポリマーを標的化するために使用される群であるが、特定の細胞又は組織に対する核酸複合体である。かかる標的化試薬の例に含まれるのは、アシオログライコプロテイン又はガラクトース残基を用いたアシアログライコプロテイン受容体への標的化剤である。標的化には、例えば、インスリン、EGF又はトランスフェリンなどの他のタンパクを使用してもよい。タンパク質は、互いに結合した2つ以上のアミン酸で構築された分子を参照している。このアミノ酸は、天然由来でも合成でもよい。RGD配列を有するペプチドは、多くの細胞を標的化するのに用いられてもよい。細胞膜上のチオール、スルフヒドリル又はジスルフィド基と反応する化学品群は、多くのタイプの細胞を標的化するのに用いられてもよい。標的化には、葉酸及びその他のビタミン類を用いてもよい。他の標的化群含まれる分子は、脂肪酸、コレステロール、ダンシル化合物及びアムフォテリシン誘導体などの膜と反応する分子である。
【0090】
超分子複合体を細胞に相互作用させた後、薬物の送達、又は細胞の特定部分への核酸の送達性を増加すべく他の標的化群を使用してもよい。例えば、エンドソームを崩壊させるべく試薬を使用してもよく、核に標的化すべく核局在化シグナル(NLS)を使用してもよい。
【0091】
種々のリガンドは、薬物及び遺伝子を細胞及び特定の細胞性受容体に標的化すべく使用されてきた。リガンドは、細胞膜上又は細胞の近傍の細胞膜への標的を検索してもよい。受容体へのリガンドの結合は、典型的にエンドサイトーシスを開始する。DNA相対には、リガンドを使用してもよく、エンドサイトーシスが行われない受容体に結合する。例えば、インテグリン受容体に結合するRGDペプチド配列を有するペプチドを使用してもよい。加えて、ウィルスタンパクは、細胞に複合体を結合すべく使用されてもよい。脂質及びステロイドは、細胞膜に複合体を直接挿入すべく使用されてもよい。
【0092】
また、ポリマーは、それ自身で分解可能な基を有していてもよい。この標的化群に結合する際、分解により、この複合体と標的化群に関連する受容体との相互作用を減弱させる。分解可能な基に含まれるのは、限定されないが、ジスルフィド結合、ジオール、ジアゾ結合、エステル結合、スルフォン結合、アセタール、ケタール、エノールエーテル、エノールエステル、エナミン及びイミンなどである。
【0093】
(多価電解質)
多価電解質又はポリイオンは、1つ以上の電荷を有するポリマーであって、つまり、このポリマーは、1つ以上の電子を取得するか消失する群を有している。ポリカチオンは、ネットで正荷電している多価電解質であって、例えば、ポリ−L−リジンがある。ポリカチオンは、正荷電、中性荷電又は負荷電しているモノマーユニットを有していてもよいが、このポリマーのネットでの電荷は正荷電でなければならない。また、ポリカチオンは、2つ以上の正電荷を有する非重合型分子を意味していてもよい。ポリアニオンは、ネットで負電荷を有する多価電解質である。このポリアニオンは、正荷電、中性荷電又は負荷電しているモノマーユニットを有していてもよいが、このポリマーのネットでの電荷は負荷電でなければならない。また、ポリアニオンは、2つ以上の負電荷を有する非重合型分子を意味していてもよい。両性イオンなる用語は、同様の分子の一部である酸性基と塩基性基との反応生成物(塩)を参照している。
【0094】
(立体構造安定化剤)
立体構造安定化剤は、長鎖の親水性群であって、粒子の静電的相互作用に対する立体障害を起こす粒子による最小産物であるポリマーに対する凝集を阻止している。この例として含まれるのは:アルキル基、PEG鎖、ポリサッカライド、アルキルアミンなどであろう。静電気的相互作用は、正電荷と負電荷との間の吸引力に起因する2つ以上の物質における非共有的な関連付けである。
【0095】
(緩衝液)
緩衝液は、弱酸又は弱塩基及びこれらの塩類から調製される。緩衝液溶液は、この溶液に酸又は塩基を追加した際、pHの変化を阻止する。
【0096】
(生物学的、化学的、又は生化学的反応)
生物学的、化学的、又は生化学的反応は、イオン及び/若しくは共有結合の形成又は分解を含んでいる。
【0097】
(反応性を有する)
イオン結合又は共有結合を他の化合物と形成することができる場合、この化合物は反応性を有している。共有結合を形成可能な反応性を有する化合物の一部は、反応性機能性基として参照する。
【0098】
(ステロイド)
ステロイド誘導体は、ステロール、水酸基残基が改変(例えば、アシル化)されているステロール、ステロイドホルモン、又はこれらのアナログを意味している。この改変は、スペーサー群、リンカー又は反応性を有する群を包含している。
【0099】
(ステリック)
立体障害又はステリックは、同一の分子内の隣り合う群に起因した化学反応を阻止したり遅らせたりすることである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0100】
1.両親媒性化合物の合成
A.MC763の合成
【0101】
【化6】

25mLのフレーム・ドライド・フラスコに、オレイルクロライド(新規に蒸留したもの、1.0mL,3.0mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)及びラロイルクロライド(0.7mL、3.0mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)をジクロロメタンに溶解したものを窒素下で加えた。得た溶液を、氷浴にて0℃に冷却した。1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(0.5mL、2.4mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)に続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.1mL、6.1mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)を加えた。この水浴を除去し、溶液を15時間、室温で撹拌した。この溶液を1NのNaOH(10mL)で2回、水(10mL)で2回洗浄し、減圧下で濃縮した。
【0102】
得た残渣の約30%を、セミプレパラティブHPLCにて、アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸なる溶離液を用いて、Beta Basic Cyanoカラム(150Å、5μm、250×21mm、Keystone Scietific社製)上で精製した。このカラムから3種類の化合物を分離し、マススペクトロメーター(Sciex社製、API150EX)により評価した。
【0103】
MC763(分子量647)
MC762(分子量564)
MC#798(分子量729.25)
【0104】
【化7】

B.MC765の合成
【0105】
【化8】

25mLのフレーム・ドライド・フラスコに、オレイルクロライド(新規に蒸留したもの、1.0mL,3.0mmol)、ミリストイルクロライド(0.83mL、3.0mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)をジクロロメタンに混和した混液を窒素下で加えた。得た溶液を、氷浴にて0℃に冷却した。1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(0.5mL、2.4mmol)に続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.1mL、6.1mmol)を加えた。この水浴を除去し、溶液を15時間、室温で撹拌した。この溶液を1NのNaOH(10mL)で2回、水(10mL)で2回洗浄し、減圧下で濃縮した。
【0106】
得た残渣の約30%を、セミプレパラティブHPLCにて、アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸なる溶離液を用いて、Beta Basic Cyanoカラム(150Å、5μm、250×21mm、Keystone Scietific社製)上で精製した。このカラムから3種類の化合物を分離し、マススペクトロメーター(Sciex社製、API150EX)により評価した。
【0107】
MC765(分子量674)
MC764(分子量620)
MC#798(分子量729.25)
【0108】
【化9】

C.MC774の合成
【0109】
【化10】

0℃に冷却したジクロロメタン(1mL)に溶解した1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(10μL、0.049mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)の溶液に、デカノイルクロライド(25μL、0.12mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(21.μL、0.12mmol)を加えた。30分後、この溶液を室温にまで加温させた。12時間後、この溶液を水(2mL)で2回洗浄し、減圧下で濃縮し、TLCにて精製したMC774(21.6mg、87%)を得た。
【0110】
D.MC775の合成
【0111】
【化11】

ジクロロメタン(1mL)に溶解した1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(10μL、0.049mmol)の溶液に、パルミトイル酸(30.8mg、0.12mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(21.μL、0.12mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(25mg、0.12mmol)を加えた。12時間後、この溶液をフィルターに通し、水(2mL)で2回洗浄し、減圧下で濃縮し、TLCにて精製したMC775(21.5mg、81%)を得た。
【0112】
E.MC777、MC778、及びMC779の合成
【0113】
【化12】

【0114】
【化13】

ジクロロメタン(8mL)に溶解したベンゾチアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−フォスフォノニウムヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP,1.300g、2.500mmol、NovaBiochem社製)に、チオクロ酸(0.248g、1.20mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)及びリノレイン酸(365μL、1.20mmol、アルドリッチ・ケミカル社製)を加えた。得た溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(610μL、3.5mmol)に続いて1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(206μL、1.00mmol)を加えた。室温にて16時間後、この溶液を水(20mL)で2回洗浄し、減圧下で濃縮し、1.800gの粗品を得た。この粗品の85mgを2mLのアセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)/1mLの水(0.1%トリフルオロ酢酸)に溶解し、逆相HPLC(10−90%のBで40分)、Beta Basic Cyanoカラムにて、精製し、31.8mgのMC777、1.3mgのMC778及び1.5mgのMC779を得た。
【0115】
F.MC780、MC781及びMC782の合成
【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

化合物MC780、MC781及びMC782は、化合物MC777、MC778及びMC779と同様の合成方法を用いて調製した。合成品由来の粗品は、2mLのアセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)/1mLの水(0.1%トリフルオロ酢酸)に溶解し、Beta Basic Cyanoカラムにて精製し、7.1mgのMC780、13.0mgのMC781及び18.0mgのMC782を得た。
【0118】
G.ポリシラザンの合成:
一般的実験:ポリアミンをDMFに溶解し20から50mg/mLの濃度に調製した。分離した容器において、クロロシロキサンをTHFに溶解し20から50mg/mLの濃度に調製した。クロロシラン溶液の適当量(改変すべきアミノ残基のモル比に基づいて)をポリアミン溶液に撹拌しながら加え、白色の固体を得た。この反応容器に水を加え、使用直前にポリアミンに基づいて1から10mg/mLの最終濃度に調製した。ジイソプロピルアミノメチルポリスチレンなどの固形の支持体塩基を含有していてもよく、フィルター化又は最終溶液の遠心分離により除去した。この一般的な実験手法に従って、以下の化合物を調製した。
【0119】
【表1】

試薬:brPEI−800、brPEI−1800;ポリエチレンイミン(塩基ポリマー平均分子量約800、1800)、アルドリッチ・ケミカル社製
PEI−10k;ポリエチルイミン(塩基ポリマー平均分子量約10,000)、Polyscience社製
brPEI−25k;分岐ポリエチレンイミン(塩基ポリマー平均分子量約25,000)、アルドリッチ・ケミカル社製
ジクロロジメチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジクロロジフェニルシラン、アルドリッチ・ケミカル社製
1,1,4,4−テトラメチル−1,4−ジクロロジシルエチレン、1,3−ジクロロテトライソプロピルジシロキサン、ユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ社製
ジイソプロピルアミノメチルポリスチレン、Fluka Chemical社製。
【0120】
2.in vivoにて動物細胞へのsiRNAの送達;
レポーター遺伝子の使用
マーカー又はレポーター遺伝子は、簡便に測定可能な遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドであって、例えば、ホタルルシフェラーゼ又はグリーンフルオレッセンスタンパク(GFP)である。マーカー遺伝子の産生物の存在が示すのは、細胞がトランスフェクトされており、且つ、産生物量が示すのは、トランスフェクションの効率である。siRNA送達方法と組み合わせたルシフェラーゼレポーター遺伝子は、本願において、siRNAの送達の効率を定量的に同定すべく使用された。
【0121】
(トランスフェクション用複合体の調製)
組成物又は3つの要素から構成される複合体は、1つ以上の両親媒性化合物と、有効量のポリカチオンと、ポリヌクレオチドとを混和混和することにより調製された。1つの好適実施例において、siRNAは、第1に血清不含培地中又は毒性を有しない溶液中にてポリカチオンと混和され、その後、この混液に両親媒性化合物を加えた。siRNA、ポリカチオン及び両親媒性化合物を含有する混液を細胞に加えた。他の好適実施例において、両親媒性化合物は、第1に溶液状態のポリカチオンと混和され、この混液にsiRNAを加えた。その後、siRNA、ポリカチオン及び両親媒性化合物を有する混液を、細胞に添加した。
【0122】
A.ATCC哺乳類COS7細胞へのsiRNAの送達
COS7細胞は、10%の胎仔牛血清を添加したDulbecco‘s Modified Eagle Medium中で保持された。全ての培養は、37℃にて、5%のCO2を含有する加湿雰囲気下で行った。トランスフェクション前約24時間に、細胞を、T75フラスコ中に適当な密度にて載置し、一昼夜インキュベートした。約50%のコンフレントに達した際、細胞は、最初、pGL−3コントロール(ホタルルシフェラーゼ、Promega社製、Madison WI)及びpRL−SV40(シー・パンジールシフェラーゼ、Promega社製、Madison WI)にて、TransT−LT1トランスフェクション試薬を用いて、製造者の推奨する方法に従って(Mirus Corporation、Madison WI)、トランスフェクトされた。15μgのpGL−3コントロール及び50ngのpRL−SV40を、500μLのOpti−MEM(Invitrogen社製)に混和した45μLのTransT−LT1に加え、室温にて5分間インキュベートした。細胞をPBSにて洗浄し、トリプシン/EDTAにて回収し、培地に懸濁し、10%の血清を含有する250μLのDMEMを用いて24穴プレートに載置し、37℃で2時間インキュベートした。
【0123】
その後、siRNA−Luc+(Dharmacon社製)、0.6pmolを、ウェル当たり100μLのOpti−MEMに混和した、示した送達剤に混和し、室温で5分間インキュベートし、37℃で細胞に加えた。
【0124】
pGL−3コントロールプラスミドは、SV40エンハンサー及びアーリープロモーター領域にて翻訳制御されたホタルluc+のコーディング領域を有している。pRL−SV40プラスミドは、SV40エンハンサー及びアーリープロモーター領域にて翻訳制御されたRenilla reniformisなるシー・パンジーのルシフェラーゼのコーディング領域を有している。
【0125】
3’末端が突出した、単鎖の遺伝子特異的なアンチセンスRNAオリゴマーを調製し、PAGE(Dharmacon社製、LaFayette、CO)にて精製した。2つの相同性を有するオリゴヌクレオチドを40μMずつを、2分間、94度で加熱しながら、250μLの100mMNaCl/50mMTris−HCl、pH8.0緩衝液にてアニールし、1分間90℃に冷却し、その後、一分間当たり1℃の割合で20℃にまで冷却した。得たsiRNAを20℃で使用前まで保存した。
【0126】
pGL−3コントロール中のluc+遺伝子と同一のセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有しており:
【0127】
【化16】

luc+のリーディングフレームの155番目から173番目までの配列に対応している。上述のヌクレオチドにある「r」という文字が示すのは、リボヌクレオチドである。pGL−3コントロール中のluc+遺伝子と同一のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有しており:
【0128】
【化17】

luc+のリーディングフレームのアンチセンス方向に、173番目から155番目までの配列に対応している。上述のヌクレオチドにある「r」という文字が示すのは、リボヌクレオチドである。luc+のコーディング配列を有する、アニールされたオリゴヌクレオチドは、siRNA−luc+として参照する。
【0129】
細胞を24時間後に回収し、Promega Dual Luciferaseキット(Promega社製)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。Lurnat LB9507(EG&G Berthold社製、Bad−Wildbad、ドイツ)ルミノメーターを用いた。ルシフェラーゼの発現量は、Relative light unitにて記録した。その後、シー・パンジーのルシフェラーゼ発現に関して適正化し、siRNAを欠除するホタルルシフェラーゼ発現に対する百分率にて示した。少なくとも2つのウェルにおける細胞に関する平均値として示した。
【0130】
【表2】

表A.ePEIにMC#733を添加すると、siRNAの生物学的活性が上昇した
表A.における結果が示すのは、ePEIと組み合わせて両親媒性化合物MC#798を添加することによりsiRNAの送達が有意に促進された、ということである。最大送達は、PEI/MC#798の比率が4:1(重量/重量)の際に達成された。
【0131】
表1.ePEI及び両親媒性化合物処方を用いた、pGL3コントロールをトランスフェクトされたCOS7細胞へのsi−RNA−Luc+の送達
【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

この結果は、示した組成物を用いて、COS7細胞へのsiRNAの効果的な送達を示している。
【0134】
B.エトキシル化PEI/MC#498により媒介されたsiRNAの送達は、培養下の哺乳類細胞における標的遺伝子の発現の阻害において顕著な効果を示す。
【0135】
siRNA−luc+のIC50を同定すべく、トランジエントにトランスフェクトされたCOS−7細胞におけるsiRNA−luc+の滴定を行った。結果が示すのは、標的となるluc+の発現を50%阻害するのに必要なsiRNAの濃度は、約0.18nMであるということである(表B)。この濃度は少なくとも、最も効果的なアンチセンス分子に必要な濃度の100倍以下である(非特許文献29)。siRNA−luc+による最大阻害は25から100nMで惹起され、ほぼ95%であった。これは、ルシフェラーゼ発現を惹起すべく使用されたプラスミド中に含まれているSV−40エンハンサーにより与えられた高いレベルである。siRNA−luc+のセンス又はアンチセンスRNAのいずれか(表B)、或いは、プラスミドにおける配位列に標的化されたsiRNAが送達される際(データは示さず)には、阻害は観察されなかった。これらの結果が示すのは、siRNAは、特定の遺伝子発現を阻害するのに最も効果的な試薬である、ということである。
【0136】
【表5】

表B.ePEI:MC#978を4:1で用いてsiRNAを送達すると、COS−7細胞におけるLuc+標的遺伝子発現を強力且つ特異的に阻害する。低い濃度のsiRNA−luc+(0−1nM)でのLuc+の阻害程度が示すのは、約0.18nMのIC50を有するということである。
【0137】
C.エトキシル化PEI/MC#987は、多重化細胞株へのsiRNAの送達に効果的である。
【0138】
また、siRNAの効果は、ルシフェラーゼ発現プラスミドをトランジエントにトランスフェクトした他の細胞株において検討した。293細胞、HeLa細胞及びCHO細胞への1nMの濃度でのsiRNA−luc+の送達は、それぞれ、ホタルルシフェラーゼ標的遺伝子の発現をそれぞれ70%、94%及び87%と阻害した(表C)。この結果は期待されていたものに妥当であって、より高い濃度のsiRNAは、より高いレベルの阻害をもたらす。野生型のホタルルシフェラーゼをコードするプラスミドにてステーブルにトランスフェクトしたマウス3T3細胞において検討した結果では、1nMのsiRNA−luc+の送達後にルシフェラーゼ活性が75%阻害したことを示した。これらの結果が示すのは、siRNAは、トランジエント及びステーブルにトランスフェクトした哺乳類細胞株の両方において遺伝子発現の阻害が顕著に効果的であるということである。
【0139】
【表6】

表C:ePEI/MC#798にて媒介したsiRNAの送達は、低い濃度のsiRNA(1nM)であっても、種々の哺乳類細胞株において発現したluc+を強力に阻害する。
【0140】
D.ポリシラザン/MC798は、COS細胞に対するsiRNAの送達に効果的である。
【0141】
上述と同様の方法により、MC681は、siRNAの送達が効果的であることを示した。
【0142】
表2.ePEI:両親媒性化合物処方を用いた、pGL−3コントロールをトランスフェクトしたCOS7細胞に対するsiRNA−luc+の送達
【0143】
【表7】

E.HeLa−Luc細胞に対するRNAオリゴの送達
RNAオリゴの送達も検討した。ミュータントスプライシングサイトにて一体化したルシフェラーゼ遺伝子を有する市販のHeLa細胞を用いた。このミュータントスプレイシングサイトは、トランケートされた不活性なルシフェラーゼをコードするmRNAを産生する。RNA塩基対をブロックし、このスプライシングサイトをブロックすることにより、活性を有する全長の酵素の発現が可能となる。従って、この細胞株におけるルシフェラーゼ活性は、直接送達されたRNA量に比例的である。
【0144】
HeLaLuc/705細胞(Clontech Laboratories社製、Palo Alto、CA)を、標準的なHeLa細胞と同様に培養した。この細胞を3×10細胞/ウェルにて24穴の培養ディッシュに載置し、24時間培養した。培地を、以下の配列を有する10nMのRNAオリゴ及びポリカチオン/両親媒性化合物を含有する1.0mLのDMEMに置換した。
【0145】
【化18】

(TriLink BioTechnologies社製、San Diego、CA)。細胞を、37℃、5%CO2にて、4時間インキュベートした。その後、培地を、10%胎仔牛血清を含有するDMEMに交換した。その後、細胞をさらに48時間培養した。細胞を回収し、ライゼートに関して、上述のLurnatLB9507(EG&G Berthold社製、Bad−Wildbad、ドイツ)ルミノメーター[Wolff、1990#72]を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0146】
結果:
表3.ポリカチオン:両親媒性化合物処方を用いた、HeLa−Luc細胞へのRNA−オリゴの送達
【0147】
【表8】

【0148】
【表9】

MC798と共にePEI及びMC681は、HeLa−Luc細胞へのRNAオリゴの送達性を示した。
【0149】
F.染色体融合レポーター遺伝子におけるsiRNAにより媒介された阻害
理想的には、標的となる遺伝子発現におけるsiRNAの阻害効果は、内在性遺伝子に対して、完全で、長期間続き、良好に作用することである。これらの特徴は、部分的であり、或いは、短期間の阻害の後に得られるデータの解釈において惹き起こされる困難性を伴うことなく、遺伝子機能の直接的な解析を可能とする。上述の例において我々が示したのは、レポーター遺伝子を用いてトランジエントにトランスフェクトした細胞株において95%の阻害が達成可能であるというデータである。クロモゾームに組み込まれた遺伝子が阻害可能かどうかを同定すべく、野生型のホタルルシフェラーゼをコードする発現プラスミドをステーブルにトランスフェクトしたマウスNIH3T3細胞を用いて検討を行った。最終濃度が25nMのsiRNA−luc+(又はコントロールのsiRNA−oriの細胞への)送達に、EPEIとMC798(TransIT−TKO)とを組み合わせて用いた。コントロールは、TransIT−TKO単独を受け入れる細胞及び非処理細胞を含んでいる。実験の間、培地を交換し、4日毎に細胞を継代した。分裂する細胞を、トランスフェクション後1、2、3、7、10及び14日目に回収し、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果が示すのは、ルシフェラーゼ発現に対するsiRNA−lucの阻害は、検討した日のそれぞれにおいて80から95%の範囲であった(表B下部参照)。コントロールのsiRNAをトランスフェクトした細胞又はTransIT−TKO単独で処理した細胞におけるルシフェラーゼ活性のレベルは、非処理細胞に比較して、有意な差ではなかった。これらの結果が示すのは、siRNAにて媒介されるRNA干渉は、これらの培養細胞株において高度に効果的であって長期間持続するものであることであり、マウス卵母細胞にて検討した結果から観察されるRNA干渉にて一貫しており、RNA干渉は、50から100倍増加していた。
【0150】
【表10】

表B:TransIT−TKO由来siRNA−lucの単独適用は、ルシフェラーゼ発現において長期間阻害した。データは、コントロールのsiRNA−oriを適用した細胞にて標準化した。
【0151】
G.EPEI及びMC798を用いた、内在性遺伝子発現(核ラミンA/C)のsiRNAにより媒介された阻害
最終濃度を25nMとして、siRNA−Luc[又はコントロールのsiRNA]の分裂CHO細胞への送達に、EPEIとMC798を組み合わせて(TransIT−TKO)使用した。コントロールは、TransIT−TKO単独を適用される細胞又は非処理細胞を含んでいる。実験の間、培地を交換し、4日毎に細胞を継代した。分裂する細胞を、トランスフェクション後、2日目に回収し、細胞質総タンパクを精製した。ラミンA/Cに標的化されたsiRNA(及びコントロールのsiRNA)をトランスフェクトされた細胞に由来するタンパク質の一部を、SDS−PAGE(3から12%のグラジエントゲル)を実行し、ナイロンメンブレンに電気を用いてトランスファーした。核ラミンA/Cのタンパク発現は、ウェスタンブロット分析により定量化した(抗マウスラミンA/C)。結果が示すのは、核ラミン発現のsiRNA−ラミンA/C阻害は、検討した日において80から95%であった。コントロールsiRNAをトランスフェクトした細胞又はTransIT−TKO単独で処理した細胞におけるラミンA/Cのレベルは、非処理細胞に比べて有意差がなかった。この結果が示すのは、siRNAにより媒介されるRNA干渉は、内在性細胞性遺伝子の発現阻害において高度に効果的である、ということである。
【0152】
上述した内容は、本発明の手段のみを例示する目的である。さらに、当業者には種々の改変及び変更を即座に行うことが可能であることから、上述した正確な構造及び制御へと、本発明を限定することを所望するものではない。従って、全ての適切な改変及び等価物は、本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性化合物、ポリカチオン及びsiRNAを有する送達可能な組成物。
【請求項2】
前記ポリカチオンは、DNA結合タンパクであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記DNA結合タンパクは、ヒストンであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒストンは、ヒストンH1であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリカチオンは、ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
以下の構造
【化1】

を有し、
R1及びR2は、炭素数6乃至24のアルカン、炭素数6乃至24のアルケン、シクロアルキル、ステロール、ステロイド、置換脂質、脂肪酸のアシルセグメント、疎水性ホルモン及び疎水性ホルモンアナログからなる群から選択されていることを特徴とする請求項1に記載の両親媒性化合物。
【請求項7】
前記R1及び前記R2は同一であることを特徴とする請求項6に記載の両親媒性化合物。
【請求項8】
前記R1及び前記R2は異なっていることを特徴とする請求項6に記載の両親媒性化合物。
【請求項9】
動物細胞にsiRNAを送達する方法であって:
両親媒性化合物、効果量のポリカチオン及び溶液状態のsiRNAにて構成される組成物を用いて、前記細胞を関連付けすることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ポリカチオンは、DNA結合タンパクであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記DNA結合タンパクはヒストンであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒストンは、ヒストンH1であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリカチオンは、ポリマーであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記動物細胞はin vivoに存在することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記動物細胞は、in vitroに存在することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記動物細胞は、ex vivoに存在することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記動物細胞は、哺乳類細胞であることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2010−132665(P2010−132665A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11(P2010−11)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2003−542621(P2003−542621)の分割
【原出願日】平成14年5月30日(2002.5.30)
【出願人】(504074983)マイラス バイオ コーポレーション (4)
【氏名又は名称原語表記】Mirus Bio Corporation
【Fターム(参考)】