trkBアゴニストを投与することにより望まれない体重減少または摂食障害を治療する方法
本発明は、trkBアゴニストの末梢投与により、望まれない体重減少(悪液質および加齢に伴うものなど)、摂食障害(神経性食欲不振など)、またはオピオイド誘導性嘔吐症を治療する方法に関する。本発明は、trkBアゴニストを含む組成物およびキットにもまた関する。
【図1】
【図1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望まれない体重減少、摂食障害、またはオピオイド誘導性嘔吐症の治療および/または予防におけるtrkBアゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロトロフィンは、小型ホモ二量体タンパク質のファミリーであり、このタンパク質は、神経系の発生および維持に重要な役割を果たす。ニューロトロフィンファミリーのメンバーには、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT−3)、ニューロトロフィン4/5(NT−4/5)、ニューロトロフィン6(NT−6)、およびニューロトロフィン7(NT−7)が含まれる。ニューロトロフィンは、他のポリペプチド性成長因子に類似して、細胞表面受容体と相互作用することによりその標的細胞に影響する。現在分かっていることによると、2種類の膜貫通糖タンパク質が、ニューロトロフィンに対する受容体として作用する。ニューロトロフィン応答性神経細胞は、2×10−9MのKDでNGF、BDNF、NT−3、およびNT−4/5と結合する、p75NTRまたはp75としても公知である共通の低分子量(65〜80kDa)低親和性受容体(LNGFR)と、trkファミリーの受容体型チロシンキナーゼのメンバーである、高分子量(130〜150kDa)高親和性(10−11M範囲のKD)受容体とをもつ。Trk受容体ファミリーの同定されたメンバーは、trkA、trkB、およびtrkCである。
【0003】
BDNFおよびNT−4/5は、両方共に類似の親和性でtrkBおよびp75NTR受容体に結合する。しかし、NT−4/5突然変異マウスおよびBDNF突然変異マウスは、極めて対照的な表現型を示す。NT−4/5−/−マウスは生存可能で、繁殖性であり、軽度の感覚欠損を有するだけであるが、BDNF−/−マウスは、重症の神経細胞欠損および行動症状を有して、出生初期に死亡する。Fanら、Nat.Neurosci.3(4):350〜7、2000;Liuら、Nature 375:238〜241、1995;Conoverら、Nature 375:235〜238、1995;Ernforsら、Nature 368:147〜150、1994;Jonesら、Cell 76:989〜999、1994。いくつかの刊行物は、NT−4/5およびBDNFが、in vivoで別個の生物学的活性を有すると報告し、この別個の活性が、NT−4/5およびBDNFによるtrkB受容体およびその下流のシグナル伝達経路の差次的活性化に部分的に起因するおそれがあると示唆している。Fanら、Nat.Neurosci.3(4):350〜7、2000;Minichielloら、Neuron.21:335〜45、1998;Wirthら、Development.130(23):5827〜38、2003;Lopezら、発表番号38.6、2003年要旨集、Society for Neuroscience。
【0004】
BDNFおよびNT−4/5は、C57db/dbマウスなどのII型糖尿病モデル動物において血中グルコースおよび血中脂質の制御活性ならびに抗肥満活性を有することが示された。米国特許第6,391,312号;Itakuraら、Metabolism 49:129〜33(2000);米国特許出願公開第2005/0209148号;WO2005/082401。BDNFは、高脂肪食を給餌されたマウスにおいて抗肥満活性およびレプチン抵抗性の回復活性を有することもまた示された。米国特許出願公開第2003/0036512号。Kernieらは、BDNF遺伝子の発現が低減したヘテロ接合性BDNFノックアウトマウスにおいて、BDNFまたはNT−4/5が摂食行動および肥満を一時的に後退させることができたと報告した。Kernieら、EMBO J.19(6):1290〜300、2000。ヒトtrkBに対するY722C置換というde novoミスセンス突然変異が、受容体のリン酸化およびMAPキナーゼへのシグナル伝達の障害を招くこと、ならびにこの突然変異が過食性肥満という独特なヒト症状を招くと思われることが報告された。Yeoら、Nat.Neurosci.7:1187〜1189(2004)。
【0005】
肥満を有する人々および神経性食欲不振を有する患者におけるBDNFの循環レベルが研究された。Monteleoneら、Psychosomatic Medicine 66:744〜748、2004;Nakazatoら、Biol.Psychiatry 54:485〜490、2003。マウスにおけるBDNF産生障害は摂食増加、エネルギー消費の低減、および体重増加と関連したという研究成果に基づく推測とは反対に、循環BDNFは、神経性食欲不振の患者では有意に低減し、非肥満健常対照に比べて肥満対象で有意に増加する。神経性食欲不振では、BDNF低減は、摂食を促進することにより、負のバランスを導く患者の行動変更を相殺しようとし、肥満では、BDNFのレベル増加は、エネルギー消費を刺激し、食物摂取を減少させることにより、正のエネルギー不均衡状態に対抗する適応メカニズムとなりうると仮定されている。Monteleoneら、Psychosomatic Medicine 66:744〜748、2004。
【0006】
本明細書に引用するすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に、すべての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれていることが示されたかの如く、それと同程度に、そのようにこれによって参照により組み込まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、trkB選択的アゴニストを含めたtrkBアゴニストの末梢投与により、体重および/または摂食を増加させる方法を提供する。これらの方法は、望まれない体重減少(悪液質または加齢に伴うものなど)、摂食障害(神経性食欲不振など)、およびオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防するために用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、霊長類における体重を増加させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、霊長類における摂食を増加させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、霊長類における悪液質を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、霊長類における悪液質を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、霊長類における望まれない体重減少を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、霊長類における神経性食欲不振を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、霊長類における神経性食欲不振を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、個体におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その個体に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、個体におけるオピオイド誘導性嘔吐症を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その個体に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0018】
trkBアゴニストは末梢投与される。例えば、trkBアゴニストは、以下の手段、すなわち静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腸管外、吸入経由、動脈内、心臓内、脳室内、および経皮的のうちの1つにより投与することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、その個体は霊長類である。いくつかの実施形態では、その霊長類はヒトである。
【0020】
本明細書に記載する方法に使用することができるtrkBアゴニストには、非限定的に、BDNFポリペプチド、NT−4/5ポリペプチド、および抗trkBアゴニスト抗体が含まれる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストはヒトNT−4/5である。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストはヒトBDNFである。他の実施形態では、trkBアゴニストは、trkB選択的な抗trkBアゴニスト抗体を含めた抗trkBアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、抗trkB抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0021】
別の態様では、本発明は、trkB選択的アゴニストを含めた有効量のtrkBアゴニストと、薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、本明細書に記載する任意の疾患を治療または予防するために使用することができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載する任意の方法に使用するためのtrkBアゴニストを含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、容器と、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせた有効量のtrkBアゴニストを含む組成物と、本明細書に記載する任意の方法にその組成物を使用するための説明書とを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、受容体と特異的に結合してその受容体を活性化するアゴニストモノクローナル抗体を作製する方法もまた提供し、その方法は、(a)その受容体の細胞外ドメインを含む免疫原性分子を宿主哺乳動物に約15日以内に少なくとも2回注射することにより、その哺乳動物を免疫処置するステップを含む。この方法は、免疫処置した哺乳動物由来のリンパ球を不死化細胞系と融合させて、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生させるステップ、モノクローナル抗体を分泌させる条件でハイブリドーマを培養するステップ、および受容体と結合してそれを活性化させるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選択するステップをさらに含むことがある。いくつかの実施形態では、受容体は、活性化のために二量体化を必要とする受容体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、望まれない体重減少(悪液質または加齢に関連するものなど)、摂食障害(神経性食欲不振など)、およびオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防する方法を提供し、その方法は、個体または対象にtrkBアゴニストを投与することを含む。
【0025】
I.一般的な技術
本発明の実施は、特に示さない限り、当技術分野の技術の範囲内に入る分子生物学(組換え技術を含める)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技術を使用する。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献に十分に説明されている。
【0026】
II.定義
本明細書に使用する「治療」は、有益な、または所望の臨床的結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に、以下、すなわち疾患に関連する1つまたは複数の症状の改善、重症度の軽減、緩和のうちの1つまたは複数が含まれる。例えば、悪液質および/または望まれない体重減少の治療について、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に以下、すなわち体重減少、脂肪分解、筋肉および内臓タンパク質の減少、食欲不振(食欲減退)、摂食/カロリー摂取の低減、慢性嘔気、疲労、および脱力のうちの任意の1つまたは複数の任意の改善、重症度の軽減、および/または緩和が含まれる。神経性食欲不振の治療のために、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に、以下、すなわち食欲の改善、食物に対する恨みの減弱、体重増、正常な栄養状態、水分および電解質バランスの維持、年齢および身長に対して正常な体重の維持、入院の回数および期間の低減、ならびに死亡リスクの低減のうちの任意の1つまたは複数が含まれる。オピオイド誘導性嘔吐症の治療のために、有益または所望の臨床的結果には、非限定的に、悪心および/または嘔吐の重症度の軽減および/または期間の短縮によって、オピオイドに誘導される鎮痛の完全な臨床的利益を可能にすることが含まれる。
【0027】
疾患またはその疾患の1つもしくは複数の症状を「回復させること」とは、trkBアゴニストを投与しないことに比べて疾患に関連する1つまたは複数の症状を軽減または改善することを意味する。「回復させること」には、症状の期間の短縮または低減もまた含まれる。
【0028】
疾患の「発生率を低減すること」は、重症度の低減(この状態のために一般に使用される他の薬物および/または治療法(への例えば曝露)の必要性および/または量の低減が含まれることがある)、期間の低減、および/または回数低減(例えば個体における次の偶発性発作までの時間の遅延または増加を含める)のうちの任意のものを意味する。当業者に理解されるように、個体は、治療に対するその応答に関して変動することがあり、それとして、例えば個体における疾患の発生率を低減する方法は、trkBアゴニストの投与が、特定の個体における発生率のそのような低減を引き起こす見込みがありうるという合理的な期待に基づいてtrkBアゴニストを投与することを反映している。
【0029】
本明細書に使用する、疾患の発生を「遅延させること」は、疾患の進行を、延期、妨害、減速、遅滞、安定化、および/または延期することを意味する。この遅延は、その疾患の履歴および/または治療されている個体に応じて様々な時間でありうる。当業者に明らかなように、十分または有意な遅延は、その個体が疾患(例えば、悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症)を発生しない点で事実上予防を包含することがある。症状の発生を「遅延させる」方法は、この方法を使用しないことに比べた場合に、所与の時間枠で症状の発生の確率を低減し、かつ/または所与の時間枠で症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な数の対象を使用した臨床試験に基づく。
【0030】
疾患の「発生」または「進行」は、障害の最初の出現および/またはその後の進行を意味する。疾患の発生は、検出可能なことがあり、そのため当技術分野で十分に公知の標準的な臨床技術を用いて評定されることがある。しかし、発生は、検出不能でありうる進行もまた表す。本発明の目的のために、発生または進行は、症状の生物学的経過を表す。「発生」には、出現、再発、および発症が含まれる。本明細書に使用する、疾患の「発症」または「出現」には、最初の発症および/または再発が含まれる。
【0031】
本明細書に使用する、薬物、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、有益な、または所望の結果をもたらすために十分な量である。予防的使用に関して、有益な、または所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症状、その合併症、ならびに疾患の発生時に現れる中間の病理学的表現型を含めた疾患のリスクを排除もしくは低減すること、重症度を軽減すること、または始まりを遅延させることなどの結果が含まれる。治療的使用に関して、有益な、または所望の結果には、疾患の攻撃の強度、期間、もしくは回数を低減すること、ならびに疾患の合併症および疾患の発生時に現れる中間の病理学的表現型を含めた(生化学的、組織学的、および/または行動的)疾患に起因する1つもしくは複数の症状を減少させること、その疾患を患っている者の生活の質を上げること、その疾患を治療するために必要な他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を高めること、および/または患者の疾患の進行を遅延させることなどの臨床結果が含まれる。有効投与量は、1回または複数回の投与で施すことができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、直接的または間接的のいずれかで予防または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的状況で理解されているように、有効投与量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と共に達成されることもあるし、達成されないこともある。したがって、「有効投与量」は、1つまたは複数の治療剤を投与する状況で考慮することができ、1種または複数の他の薬剤と共に、所望の結果が達成できるか、または達成されるならば、単一の薬剤を、有効量で与えることを考慮することができる。
【0032】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物には、非限定的に、農用動物、スポーツ用の動物、霊長類(ヒトを含める)、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、およびラットもまた含まれる。
【0033】
「trkBアゴニスト」は、trkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化することができる薬剤を表す。例えばアゴニストは、trkB受容体の細胞外ドメインに結合することがあり、それによって受容体の二量体化を引き起こし、細胞内触媒性キナーゼドメインの活性化を招くことがある。その結果、これは、in vitroおよび/またはin vivoで受容体を発現している細胞の生育および/または分化の刺激を招くことがある。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、trkBに結合してtrkBの生物学的活性を活性化する。
【0034】
本発明のtrkBアゴニストと共に使用する場合の「生物学的活性」は、概してtrkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化する能力を有することを表す。本明細書に使用する「生物学的活性」は、trkBの天然由来のリガンドであるNT−4/5および/またはBDNFがtrkB発現細胞に及ぼす作用により誘導されるエフェクター機能と共通する1つまたは複数のエフェクター機能を包含する。限定することなく、生物学的活性には、以下、すなわちtrkBに結合し、それを活性化する能力、trkB受容体の二量体化を促進する能力、細胞(損傷した細胞を含める)、特に末梢(交感、感覚、運動、および腸管)神経細胞、および中枢(脳および脊髄)神経細胞を含めたin vitroまたはin vivo神経細胞、ならびに非神経細胞、例えば末梢血白血球、内皮細胞、および血管平滑筋細胞の発生、生存、機能、維持、および/または再生を促進する能力のうちの任意の1つまたは複数が含まれる。特に好ましい生物学的活性は、末梢に投与した場合に、霊長類における体重および/もしくは摂食を増加させる能力、霊長類における悪液質および神経性食欲不振の1つもしくは複数の症状を治療(予防を含める)する能力、ならびに/または哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症の1つもしくは複数の症状を治療(予防を含める)する能力である。
【0035】
「アゴニスト抗trkB抗体」(相互交換可能に「抗trkBアゴニスト抗体」と称される)は、trkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化することができる抗体を表す。例えば、アゴニスト抗体は、trkB受容体の細胞外ドメインに結合することによって、その受容体の二量体化を引き起こし、細胞内触媒性キナーゼドメインの活性化を招くことができる。その結果、これは、受容体をin vitroおよび/またはin vivoで発現している細胞の生育および/または分化の刺激を招くことができる。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗trkB抗体は、trkBに結合し、trkBの生物学的活性を活性化する。
【0036】
本明細書に使用する「末梢投与」または「末梢に投与される」は、中枢神経系(CNS)または血液脳関門(BBB)の外側から対象に薬剤を導入することを表す。末梢投与は、脊椎または脳への直接投与以外の任意の投与経路を包含する。末梢投与は局所または全身性でありうる。
【0037】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に局在する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書に使用するとき、この用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体の部分を含む融合タンパク質(ドメイン抗体など)、および抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の他の任意の修正された立体配置もまた包含する。抗体には、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、その抗体は任意の特定のクラスである必要はない。抗体重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り付けることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。これらの異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニットの構造および三次元立体配置は、十分に公知である。
【0038】
本明細書に使用する「モノクローナル抗体」は、実質的に相同な抗体集団から得られた抗体を表し、すなわち、その集団を構成する個別の抗体は、少量存在しうる、可能な、天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対しており、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体が典型的には含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。修飾語「ポリクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法により抗体を産生することを必要とするとみなしてはならない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作ることができるし、米国特許第4,816,567号に記載されたような組換えDNA法により作ることもできる。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら、1990、Nature、348:552〜554に記載された技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離することもまたできる。
【0039】
本明細書に使用する「ヒト化」抗体は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小の配列を含有するその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を表す。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および生物学的活性を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にもみられないが、抗体の性能をさらに洗練および最適化するために含められた残基を含むことがある。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含むものである。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の少なくとも部分もまた含むものである。抗体は、WO99/58572に記載されているように修飾されたFc領域を有することがある。他の形態のヒト化抗体は、本来の抗体に関して変更されている1つまたは複数(1、2、3、4、5、および6つ)のCDRを有し、そのCDRは、本来の抗体由来の1つまたは複数のCDR「から誘導された」1つまたは複数のCDRとも称される。
【0040】
本明細書に使用する、「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、かつ/または当技術分野で公知であるか、もしくは本明細書に開示するヒト抗体を作るための任意の技術を使用して作られた抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。そのような一例は、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。一実施形態では、ヒト抗体は、ファージライブラリーがヒト抗体を発現する場合には、そのファージライブラリーから選択される(Vaughanら、1996、Nature Biotechnology、14:309〜314;Sheetsら、1998、PNAS、(USA)95:6157〜6162;HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381;Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581)。ヒト抗体は、トランスジェニック動物に、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによってもまた作ることができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生する不死化ヒトBリンパ球により調製することができる(そのようなBリンパ球は、個体から回収することもできるし、in vitroで免疫処置されていることもある)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boernerら、1991、J.Immunol.、147(1):86〜95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0041】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を、単独または組合せのいずれかで表す。重鎖および軽鎖の可変領域は、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)により接続された4つのフレームワーク領域(FR)からそれぞれなる。各鎖のCDRは、FRによって近接して繋がり合って、もう一方の鎖由来のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するために、(1)種相互の配列変動性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、(第5版、1991、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ))、および(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikaniら(1997)J.Molec.Biol.273:927〜948))の少なくとも2つの技術がある。本明細書に使用するCDRは、一方のアプローチまたは両方のアプローチの組合せのいずれかによって規定されるCDRを表すことがある。
【0042】
抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を、単独または組合せのいずれかで表す。
【0043】
抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」か、または「特異的に結合する」(本明細書において相互交換可能に使用される)エピトープは、当技術分野で十分に理解された用語であり、そのような特異的または優先的結合を決定する方法もまた、当技術分野で十分に公知である。分子が代替の細胞または物質と反応または関連するよりも、高頻度に、迅速に、長い継続時間で、かつ/または大きな親和性で、その分子が特定の細胞または物質と反応または関連するならば、その分子は、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合するよりも、大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い継続時間で、その抗体が結合するならば、その抗体は、標的に「特異的に」結合または「優先的に」結合または「選択的に」結合する。例えば、trkBエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、それが他のtrkBエピトープまたは非trkBエピトープに結合するよりも、大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い継続時間で、このエピトープと結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合することもあるし、結合しないこともあることもまた理解されている。それとして、trkBへの抗体の「特異的」結合または「優先的」結合または「選択的」結合は、必ずしも排他的結合を必要としない(がそれを含むこともある)。必然的ではなく概して、選択的trkB結合の言及は、優先的結合(例えば、他の受容体に比べてtrkBに対して少なくとも3分の1、5分の1、または好ましくは少なくとも10分の1もしくは100分の1の濃度のIC50を有する結合)を意味する。
【0044】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然由来配列のFc領域または変異Fc領域のことがある。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動するおそれがあるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常は位置Cys226のアミノ酸残基またはPro230からそのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域の残基の付番は、KabatにおけるようなEUインデックスの付番である。Kabatら、Sequences of Proteins of Imunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ、1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に2つの定常ドメインであるCH2およびCH3を含む。
【0045】
本明細書に使用する「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するものである。好ましいFcRは、天然由来配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するFcR(γ受容体)であり、それには、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcγRIVサブクラスの受容体が、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングされた形態を含めて含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制受容体」)が含まれ、これらの受容体は、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92;Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34;de Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41;Nimmerjahnら、2005、Immunity 23:2〜4に総説されている。「FcR」には、胎児への母体IgGの輸送を担う新生児型受容体であるFcRnもまた含まれる。(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587;およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0046】
「補体依存性細胞傷害作用」および「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを表す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体を形成した分子(例えば抗体)に補体系第1成分(C1q)が結合することによって開始する。補体活性化を評定するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)に記載されているCDCアッセイを行うことができる。
【0047】
「機能的Fc領域」は、天然由来配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をもつ。「エフェクター機能」の例には、C1qの結合、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体の結合、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、一般にFc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と結合していることが必要であり、そのような抗体エフェクター機能を評価するために当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評定することができる。
【0048】
「天然由来配列のFc領域」は、自然界でみられるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然由来配列のFc領域のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含むが、天然由来配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をなお保持する。好ましくは、変異Fc領域は、天然由来配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域に比べて、天然由来配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1個から約10個のアミノ酸置換、および好ましくは約1個から約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異Fc領域は、天然由来配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくはそれと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性をもつ。
【0049】
本明細書に使用する「抗体依存性細胞性細胞傷害作用」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現している非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応を表す。関心対象の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているアッセイのようなin vitro ADCCアッセイを用いて評定することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいはまたは追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、例えばClynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656に開示されているモデルのような動物モデルでin vivo評定することができる。
【0050】
本明細書に使用する「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、活性成分と組み合わせた場合に、その成分に生物学的活性を保持させ、対象の免疫系と反応しない任意の物質が含まれる。例には、非限定的に、リン酸緩衝溶液、水、油/水型乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの任意の標準的な医薬担体が含まれる。エアロゾルまたは腸管外投与用の好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液または普通の(0.9%)生理食塩水である。そのような担体を含む組成物は、十分に公知の従来法により製剤される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing、2000参照)。
【0051】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において相互交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸ポリマーを表す。このポリマーは、直鎖または分岐であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、非アミノ酸により分断されてもよい。この用語は、天然に修飾された、または介入により、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識構成要素とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは修飾により修飾されたアミノ酸ポリマーもまた包含する。同様にこの定義に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば非天然アミノ酸などを含める)を含有するポリペプチド、および当技術分野で公知の他の修飾である。本発明のポリペプチドが抗体に基づくことから、そのポリペプチドは、一本鎖または関連した鎖として存在することがあることが理解されている。
【0052】
本明細書において相互交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを表し、これには、DNAおよびRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによりポリマーに組み込むことができる任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそのアナログなどの修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。存在するならば、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの集合前または集合後に加えられてよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素により分断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化構成要素とのコンジュゲーションによるなどのポリマー化後にさらに修飾することができる。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドのアナログへの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結を有するもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電連結を有するものなど(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分を含有するもの、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなど)など、介入物を有するもの(例えばアクリジン、ソラーレンなど)、キレート剤を含有するもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属など)、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結を有するものなど(例えばα−アノマー核酸など)、および未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖に通例存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホネート基、ホスフェート基に置き換えるか、標準的な保護基により保護するか、または活性化して追加のヌクレオチドへの追加の連結を調製することができるし、固体支持体にコンジュゲートすることもできる。5’および3’末端のOHは、リン酸化することもできるし、アミンまたは1から20個の炭素原子の有機キャップ基部分と置換することができる。他のヒドロキシルもまた標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドは、例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、□−アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシドアナログを含めた、当技術分野で一般に公知の、アナログ形態のリボースまたはデオキシリボース糖もまた含有することがある。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替連結基に置き換えることができる。これらの代替連結基には、非限定的に、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれ、式中、各RまたはR’は、独立してHであるか、またはエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含有してもよい置換または未置換アルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチド中のすべての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含めた本明細書に言及するすべてのポリヌクレオチドにあてはまる。
【0053】
本明細書に使用する「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋な(すなわち混入物を有さない)、さらに好ましくは少なくとも90%純粋な、さらに好ましくは少なくとも95%純粋な、さらに好ましくは少なくとも98%純粋な、さらに好ましくは少なくとも99%純粋な物質を表す。
【0054】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込み用のベクターについてのレシピエントでありうるか、またはレシピエントであった個別の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、その子孫は、自然突然変異、偶発的突然変異、または計画的突然変異が原因で、本来の親細胞と(形態またはゲノムDNA相補体が)必ずしも完全には同一ではないことがある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをin vivoでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0055】
本明細書に使用する「ベクター」は、宿主細胞に関心対象の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達し、好ましくは発現させることができる構築物を意味する。ベクターの例には、非限定的に、ウイルスベクター、裸のDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン凝縮剤と関連したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、および産生細胞などのある種の真核細胞が含まれる。
【0056】
本明細書に使用する「発現制御配列」は、核酸の転写を指令する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成性もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーでありうる。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結している。
【0057】
本明細書に使用する用語「kon」は、抗原への抗体の会合についての速度定数を表すことを意図する。
【0058】
本明細書に使用する用語「koff」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を表すことを意図する。
【0059】
本明細書に使用する用語「KD」は、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を表すことを意図する。
【0060】
本明細書に使用する単数形「a」、「an」、および「the」には、別に示さない限り複数の参照が含まれる。
【0061】
III.本発明の方法
本発明は、trkBアゴニストの末梢投与により体重および/または摂食を増加させる方法を包含する。これらの方法は、霊長類における望まれない体重減少(悪液質など)および摂食障害(神経性食欲不振など)、ならびに哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防するために用いることができる。本発明は、有効量の1つまたは複数のtrkBアゴニストを、それを必要とする個体に末梢投与することを伴う(様々な表示および態様は本明細書に記載する)。
【0062】
本明細書に記載するすべての方法に関して、trkBアゴニストの参照には、1つまたは複数のこれらの薬剤を含む組成物もまた含まれる。これらの組成物は、当技術分野で十分に公知の緩衝液を含めた、薬学的に許容できる賦形剤などの適切な賦形剤をさらに含むことがある。本発明は、単独で、または他の従来の治療方法と組み合わせて使用することができる。
【0063】
本明細書に記載する方法により治療および/または予防することができる悪液質は、以下、すなわち慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、慢性心不全(CHF)、加齢、癌、およびAIDSのうちの1つまたは複数によって引き起こされ、かつ/またはそれに関連することがある。
【0064】
いくつかの実施形態では、悪液質を治療されたか、または望まれない体重減少を治療されたヒト患者は、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20.0kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックス(BMI、メートル単位の身長の二乗あたりの体重(kg/m2)として計算される)を有する。いくつかの実施形態では、悪液質を治療されたか、または望まれない体重減少を治療されたヒト患者は、標準推奨1日摂取レベルまたは発病前レベルの約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%未満の1日摂食量を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法により神経性食欲不振を治療されるヒト患者は、約18.5kg/m2、約17.5kg/m2、および約16.5kg/m2のいずれか未満のBMIを有する。いくつかの実施形態では、神経性食欲不振を治療されたヒト患者は、標準推奨1日摂食レベルまたは発病前レベルの約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%未満の1日摂食量を有する。
【0066】
trkBアゴニストは末梢投与される。たとえ薬剤が末梢投与されても、わずかな率の薬剤は血液脳関門を通過して、薬剤の性質に応じて中枢神経系への送達を招くおそれがあることが理解されている。いくつかの実施形態では、末梢投与されたtrkBアゴニスト(例えばtrkBアゴニスト抗体)の約1%、約0.5%、約0.25%、および約0.1%のいずれか未満が、CNSにアクセスする。
【0067】
trkBアゴニストは、任意の適切な末梢経路により個体に投与することができる。本明細書に記載する実施例が、利用できる技術の限定ではなく例示を意図することは、当業者に明らかなはずである。したがって、いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、例えばボーラスまたは一定時間にわたる連続点滴のような静脈内投与、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、舌下、滑膜内、吹入経由、経口、吸入、または局所経路によるものなどの公知の方法により個体に投与される。投与は、全身的(例えば静脈内投与)または局所的でありうる。ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーを含めた、液体製剤用の市販のネブライザーが投与に有用である。液体製剤を直接噴霧することもできるし、凍結乾燥粉末を再構成後に噴霧することもできる。あるいは、trkBアゴニストは、フッ化炭素製剤および定量吸入器を使用してエアロゾル化することができるし、凍結乾燥して粉砕した粉末として吸入することができる。
【0068】
trkBアゴニストは、CNSまたは血液脳関門の外側に部位特異的または標的化局所送達技術により投与することができる。部位特異的または標的化局所送達技術の例には、trkBアゴニストの様々な植込み可能なデポー供給源、または点滴カテーテル、留置カテーテル、もしくはニードルカテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ(adventitial wraps)、シャントおよびステントもしくは他の埋込み可能な装置、部位特異的担体、直接注射、または直接適用が含まれる。例えば、PCT公開WO00/53211および米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0069】
trkBアゴニストの様々な製剤は、投与のために使用することができる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、混ぜ物なしに(neat)投与することができる。他の実施形態では、trkBアゴニストおよび薬学的に許容できる賦形剤が投与され、それらは様々な製剤のことがある。薬学的に許容できる賦形剤は、当技術分野において公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする相対的に不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態またはコンシステンシーを与えることができるし、希釈剤として作用することもできる。適切な賦形剤には、非限定的に、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、封入剤、緩衝剤、ならびに皮膚透過促進剤が含まれる。腸管外および非腸管外薬物送達のための賦形剤および製剤は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)に述べられている。概して、これらの薬剤は、注射による投与(例えば腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)のために製剤されるが、他の形態(例えば経口、粘膜、経皮、吸入など)の投与を使用することもまたできる。
【0070】
特定の投薬方式、すなわち用量、タイミング、および繰り返しは、特定の個体ならびにその個体の病歴、治療する特定の疾患(例えば、悪液質、望まれない体重減少、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症)、および特定のtrkBアゴニストに依存するものである。概して、以下の任意の用量のtrkBアゴニスト(例えば、NT−4/5、BDNF、および抗trkBアゴニスト抗体)を使用することができ、少なくとも約50mg/kg体重、少なくとも約20mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約2mg/kg体重、少なくとも約1mg/kg体重、少なくとも約750μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、少なくとも約250ug/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約10ug/kg体重、少なくとも約1μg/kg体重、またはそれを超える用量が投与される。半減期などの経験的考察は、一般に投与量の決定に寄与するものである。数日間以上にわたる繰り返し投与について、治療は、疾患の症状の所望の抑制が起こるか、または十分な治療レベルが達成されるまで、状態に応じて継続される。例えば、1週間に1から5回の投薬が考えられている。他の投薬方式には、1日に最大1回、1週間に1から5回、またはそれよりも回数の少ない方式が含まれる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、1週間に約1回、1カ月に約1から4回投与される。段階投与量を用いた、2日から最大7日、または14日までもの間隔の間欠投薬方式を用いることができる。いくつかの実施形態では、治療は、毎日投薬で開始して、その後毎週または毎月までもの投薬に変えることができる。この治療法の進行は、従来の技術およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0071】
一部の個体では、1回を超える投与が必要なことがある。投与回数は、治療クールにわたり決定および調整することができる。例えば、投与回数は、治療する疾患の種類および重症度、その薬剤が予防目的それとも治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の臨床歴およびその薬剤に対する応答、ならびに担当医師の判断に基づき決定または調整することができる。典型的には、臨床家は、所望の結果を達成する投与量に達するまでtrkBアゴニストを投与するものである。場合によっては、trkBアゴニストの持続性連続放出製剤が適切なことがある。持続性放出を達成するための様々な製剤および装置が、当技術分野で公知である。例えば、trkBアゴニストは、機械的ポンプにより投与することができるし、持続放出または低速放出用のマトリックス床に包埋することができる。
【0072】
一実施形態では、1回または複数回の投与を与えられた個体におけるtrkBアゴニストについての投与量は、経験的に決定することができる。個体に漸増する投与量のtrkBアゴニストを与える。trkBアゴニストの有効性を評定するために、病状のマーカーをモニターすることができる。個体、疾患(悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症など)の段階、ならびに過去の治療および使用中の同時治療に応じて投与量が変動するものであることは、当業者に明らかなものである。
【0073】
本発明の方法によるtrkBアゴニストの投与は、例えばレシピエントの生理的状態、投与の目的が治療であるかそれとも予防であるか、および当業者に公知の他の要因に応じて連続的または間欠的でありうる。trkBアゴニストの投与は、予め選択された期間にわたり本質的に連続的なこともあるし、間隔を空けた一連の投与のこともある。
【0074】
他の製剤には、非限定的にリポソームなどの担体を含めた、当技術分野で公知の適切な送達形態が含まれる。例えば、Mahatoら(1997)Pharm.Res.14:853〜859を参照されたい。リポソーム製剤には、非限定的に、サイトフェクチン、多重膜小胞、および単膜小胞が含まれる。
【0075】
疾患の評定は、当技術分野で公知の標準法を用いて、例えば、適切なマーカーをモニターすることによって行われる。例えば悪液質については、以下のマーカー、すなわち体重、血漿アルブミン、体脂肪、ボディーリーンマス(body lean mass)、疲労、虚弱、および食欲をモニターすることができる。神経性食欲不振については、以下のマーカー、すなわち体重、食欲、および体重増のおそれをモニターすることができる。オピオイド誘導性嘔吐症について、以下のマーカー、すなわち悪心、嘔吐、食欲、体重、および他の関連する医学的合併症をモニターすることができる。
【0076】
IV.組成物および組成物を作製する方法
本発明の方法はtrkBアゴニストを使用し、trkBアゴニストは、天然由来のtrkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能に仲介される下流の経路と結合し、それを活性化する任意の分子を表す。trkBアゴニストには、NT−4/5およびBDNFなどの、trkB受容体の任意の天然由来リガンドが含まれる。trkBアゴニストには、天然由来trkB受容体に結合し、それを活性化することによって、その受容体の天然由来リガンドの生物学的活性を模倣している、trkB受容体の非天然由来リガンド(例えばポリペプチド、ペプチド由来化合物、環状ペプチド由来または非ペプチド由来分子)もまた含まれる。trkB受容体の非天然由来リガンドの一例は、抗trkBアゴニスト抗体である。trkBアゴニストには、小分子またはペプチド模倣体(例えばBDNFのペプチド模倣体)もまた含まれる。例えば、O’Learyら、J.Biol.Chem.278:25738〜44、2003を参照されたい。いくつかの実施形態では、小分子trkBアゴニストは、末梢投与した場合に、血液脳関門を有意に通過しない。
【0077】
trkBアゴニストは、任意の1つまたは複数の以下の特徴を示すはずである:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質または望まれない体重減少の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、trkB受容体と結合し、それを活性化するが、trkAおよび/またはtrkCなどの1つまたは複数の他のtrk受容体を有意にも優先的にも活性化しない。
【0078】
trkBアゴニストは、本明細書に記載する任意の方法に使用するための組成物の形態でありうる。本発明の方法に使用する組成物は、有効量のtrkBアゴニストを含む。組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定化剤をさらに含むことがある(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第20版(2000)Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)。許容できる担体、賦形剤、または安定化剤は、その投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、またはベンジルアルコール、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストランを含めた単糖、二糖、および他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン系界面活性剤を含むことがある。薬学的に許容できる賦形剤を本明細書にさらに記載する。
【0079】
本明細書に記載するtrkBアゴニストは、持続放出用に製剤することができる。持続放出調製物の適切な例には、trkBアゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、造型品の形態、例えばフィルムまたはマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および7−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−ビニル酢酸、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、スクロースアセテートイソブチレート、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。使用することができる持続放出薬物送達システムの別の例は、Atrix Laboratoriesが作るATRIGEL(登録商標)である。例えば、米国特許第6,565,874号を参照されたい。ATRIGEL(登録商標)薬物送達システムは、生物分解性縫合糸に使用されるポリマーに類似した生物分解性ポリマーを生物適合性担体に溶解したものからなる。trkBアゴニストは、製造時にこの液体送達系に混合することができるし、製品に応じて、後で使用時に医師が添加することもできる。液体製品をゲージの小さい針を通して皮下または筋肉内に注射するか、またはカニューレを通してアクセス可能な組織部位に置く場合には、担体と組織液中の水との置き換えにより、ポリマーが沈殿し、固体フィルムまたは植込剤が形成する。その植込剤に封入されたtrkBアゴニストは、次にポリマーマトリックスが経時的に生物分解するときに制御された方式で放出される。患者の医学的必要性に応じて、Atrigelシステムは、数日から数カ月までの期間にわたりタンパク質を送達することができる。Alkermesが製造するProLease(登録商標)、Medisorb(登録商標)などの注射用持続放出システムもまた使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明は、医薬としての使用の状況であろうと、かつ/または医薬の製造のための使用の状況であろうと、本明細書に記載する任意の方法に使用するための組成物(本明細書に記載)を提供する。
【0081】
NT−4/5ポリペプチド
本発明の方法に用いるtrkBアゴニストにはNT−4/5ポリペプチドが含まれる。本明細書に使用する「NT−4/5ポリペプチド」には、天然に存在する成熟タンパク質(相互交換可能に「NT−4/5」と名付ける)(例えば、下記表1および米国特許出願公開2005/0209148およびPCT WO2005/08240および米国特許出願公開20030203383の図1に示す成熟ヒトNT−4/5など)およびNT−4/5の天然に存在するアミノ酸配列変異体と、NT−4/5のアミノ酸配列変異体と、成熟NT−4/5(ヒトなど)およびアミノ酸配列変異体のペプチド断片と、成熟NT−4/5および前記アミノ酸配列変異体およびペプチド断片の修飾された形態(ここで、ポリペプチドまたはペプチドは、天然に存在するアミノ酸以外の部分との置換により共有結合的に修飾されている)が含まれるが、ただし、そのアミノ酸配列変異体、ペプチド断片、およびその修飾された形態は、trkBアゴニストおよび/または天然成熟NT−4/5タンパク質の1つまたは複数の生物学的活性を示す。trkBアゴニストには、本明細書に記載するNT−4/5ポリペプチドの任意の実施形態を含む融合タンパク質およびコンジュゲート、例えばPEG、IgG Fc領域、アルブミン、またはペプチドなどの半減期延長部分にコンジュゲートまたは融合したNT−4/5ポリペプチドもまた含まれる。考慮中のアミノ酸配列変異体、ペプチド断片(変異体の断片を含める)、またはその修飾された形態には、任意の動物種のNGF、BDNF、またはNT−3は含まれない。天然に存在するNT−4/5の変異体、ペプチド断片、および修飾された形態は、米国特許出願公開第2003/0203383号;第2002/0045576号;第2005/0209148号;米国特許第5,702,906号;第6,506,728号;第6,566,091号;第5,830,858号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドには、本明細書に記載する任意の1つまたは複数の実施形態が含まれる。例えば、NT−4/5ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を有する天然に存在する配列を含む。
【0082】
【表1】
【0083】
いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドは哺乳動物NT−4/5ポリペプチドであり、このポリペプチドは、天然に存在する哺乳動物NT−4/5、または天然に存在する哺乳動物NT−4/5から誘導されたNT−4/5ポリペプチドであって、天然に存在する非哺乳動物NT−4/5のどの部分とも合致しない配列を有するNT−4/5ポリペプチドのことがある。いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドはヒトNT−4/5ポリペプチドであり、このポリペプチドは、天然に存在するヒトNT−4/5または天然に存在するヒトNT−4/5から誘導されたNT−4/5ポリペプチドであって、天然に存在する非ヒトNT−4/5のどの部分とも合致しない配列を有するNT−4/5ポリペプチドのことがある。
【0084】
変異体、ペプチド断片、修飾された形態のNT−4/5ポリペプチド(天然に存在するNT−4/5を含める)、本発明の融合タンパク質およびコンジュゲートを含めたNT−4/5ポリペプチドは、以下の任意の(1つまたは複数の)性質を特徴とする:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。したがって、すべてのNT−4/5ポリペプチド(変異体、断片、および修飾された形態を含める)は、上記のように機能的である。
【0085】
変異体の生物学的活性は、当技術分野で公知の方法および本明細書に記載する方法を用いてin vitroおよびin vivoで試験することができる。抗trkBアゴニストを同定するための本明細書に記載する方法もまた用いることができる。NT−4/5ポリペプチドは、天然に存在するNT−4/5タンパク質に比べて高まった活性または低減した活性を有することがある。いくつかの実施形態では、機能的に等価な変異体は、上記の(または当技術分野で公知の)1つまたは複数の生物学的アッセイに関して、NT−4/5ポリペプチドが誘導された天然由来のNT4/5タンパク質に比べて少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の任意の活性を有する。いくつかの実施形態では、機能的に等価の変異体は、TrkB受容体のin vitro活性化(例えば、実施例6ならびにUS2005/0209148およびPCT WO2005/082401に記載されているアッセイ)において約0.01nM、約0.1nM、約1nM、約10nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する。
【0086】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体には、天然に存在するNT−4/5(例えば表1に示す成熟ヒトNT−4)の配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入、欠失、および/または置換によって、天然に存在するNT−4/5とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。アミノ酸配列変異体は、概して、任意の天然に存在するNT−4/5(配列番号1に示す成熟ヒトNT−4/5など)と少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一なものである。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一である。
【0087】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体は、以前に単離されたNT−4/5 DNAに所定の突然変異を加えることにより作製することができる。アミノ酸変異体は、NT−4/5およびTrkB受容体の結晶構造に基づき設計および作製することができる。Banfieldら、Structure 9:1191〜9(2001)。例えば、NT−4/5の単量体同士の間およびNT−4/5とTrkB受容体との間の相互作用に直接関与しないアミノ酸を、例えばPEG付着部位を導入するために突然変異させることができる。当技術分野で公知の方法を使用して、天然に存在するNT−4/5タンパク質に比べて高まっているか、または低減した1つまたは複数の生物学的活性を有するNT−4/5ポリペプチド変異体を設計することができる。
【0088】
そのような所定の突然変異を加える際に考慮すべき2つの主要な変数、すなわち突然変異部位の場所および突然変異の本質がある。一般に、概して選択される突然変異の場所および本質は、修飾されるNT−4/5の特徴に依存する。例えば、候補NT−4/5アンタゴニストまたはスーパーアゴニストは、最初にNGF、BDNF、NT−3、およびNT−4の間で同一または高度に保存されたアミノ酸残基の場所を決定することにより選択することができる。次に、例えば(1)最初に保存的選択と、次に達成した結果に応じてより過激な選択と置換すること、(2)標的残基を欠失させること、もしくは(3)場所を決定した部位に隣接して同一または異なるクラスの残基を挿入すること、または選択肢1〜3の組合せにより、それらの残基を連続して修飾することができる。
【0089】
役立つ一技術は「alaスキャニング」と呼ばれる。ここで、アミノ酸残基または標的残基の群を同定し、アラニンまたはポリアラニンに置換する。次に、アラニン置換に機能的感受性を示しているドメインは、アラニン置換部位で、またはその部位に代わってさらなる変異体または他の変異体を導入することにより洗練させる。
【0090】
明らかに、例えば、NT−4/5をNGF、BDNF、またはNT−3に変換するような変異は、本発明の範囲内に含まれない。したがって、アミノ酸配列の変異を導入するための部位が所定であっても、突然変異の本質自体は所定である必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは標的領域でalaスキャニングまたはランダム突然変異誘発が行われ、発現したNT−4/5変異体が、最適な所望の活性についてスクリーニングされる。
【0091】
アミノ酸配列の欠失は、概して約1から30残基、より好ましくは約1から10残基の範囲であり、そして典型的には連続している。欠失は、NT−4/5の活性を修飾するために、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で相同性が低い領域に導入することができる。BDNF、NT−3、およびNGFと実質的に相同な区域でのNT−4/5からの欠失は、NT−4/5の生物学的活性をより有意に修飾する見込みがさらに高いことがある。連続的な欠失の数は、影響を受けたドメインにおけるNT−4/5の三次構造(例えば、β−プリーツシートまたはαらせん)を保存するように選択することができる。
【0092】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から、1000個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶ、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわち成熟NT−4/5配列内の挿入)は、概して、約1から10残基、より好ましくは、1から5残基、最も好ましくは、1から3残基の範囲のことがある。末端挿入の例には、組換え宿主からの成熟NT−4/5の分泌を容易にするために、NT−4/5分子のN末端に異種N末端シグナル配列を融合することが含まれる。そのようなシグナルは、概して、意図される宿主細胞と同種であり、それらには、大腸菌についてのSTIIもしくはlpp、酵母についてのα因子、および哺乳動物細胞についてのヘルペスgDなどのウイルスシグナルが含まれる。他の挿入には、NT−4/5のN末端またはC末端へのポリペプチドの融合が含まれる。
【0093】
変異体の別の群には、NT−4/5の少なくとも1つ(好ましくは1つだけ)のアミノ酸残基が除去されて、異なる残基がその場所に挿入されているものが含まれる。一例は、アルギニンおよびリシンを他のアミノ酸に置き換えて、NT−4/5をセリンプロテアーゼによるタンパク質分解に抵抗性にすることによって、より安定なNT−4/5変異体を創出することである。置換突然変異誘発のための最大の関心対象の部位には、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4にみられるアミノ酸が、側鎖のかさ高さ、電荷、または疎水性に関して実質的に異なる部位であるが、NGF、NT−3、およびBDNFの種々の動物アナログの中で(例えば、すべての動物NGF、すべての動物NT−3、およびすべてのBDNFの間で)選択された部位に高度の相同性もまたある部位が含まれる。この分析は、栄養因子の活性の区別に関与しうる残基を強調するものであることから、これらの部位での変異体は、そのような活性に影響を及ぼすことがある。成熟ヒトNT−4/5でのそのような部位をN末端から番号付けしたもの、および例示的な置換の例には、それぞれ、配列番号1のNT−4/5のG77からK、H、Q、またはRへ、およびR84からE、F、P、Y、またはWへの置換が含まれる。関心対象の他の部位は、残基がすべての動物種のBDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で同一な部位であり、このコンフォメーションの程度は、全4つの因子に共通する生物学的活性を達成することの重要性を示唆している。
【0094】
例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換には、保存的置換が含まれる。保存的置換を行う方法は、当技術分野で公知である。例えば、ala(A)は、val、leu、ileと、好ましくは、valと置換することができ、arg(R)は、lys、gln、asnと、好ましくは、lysと置換することができ、asn(N)は、gln、his、lys、argと、好ましくは、glnと置換することができ、asp(D)は、gluと置換することができ、cys(C)は、serと置換することができ、gln(Q)は、asnと置換することができ、glu(E)は、aspと置換することができ、gly(G)は、proと置換することができ、his(H)は、asn、gln、lys、argと、好ましくは、argと置換することができ、ile(I)は、leu、val、met、ala、phe、ノルロイシンと、好ましくは、leuと置換することができ、leu(L)は、ノルロイシン、ile、val、met、ala、pheと、好ましくは、ileと置換することができ、lys(K)は、arg、gln、asnと、好ましくは、argと置換することができ、met(M)は、leu、phe、ileと、好ましくは、leuと置換することができ、phe(F)は、leu、val、ile、alaと、好ましくは、leuと置換することができ、pro(P)は、glyと置換することができ、ser(S)は、thrと置換することができ、thr(T)は、serと置換することができ、trp(W)は、tyrと置換することができ、tyr(Y)は、trp、phe、thr、serと、好ましくは、pheと置換することができ、val(V)は、ile、leu、met、phe、ala、ノルロイシンと、好ましくは、leuと置換することができる。
【0095】
保存的置換に特に適した部位には、成熟ヒトNT−4(配列番号1)のN末端から付番して、R11、G12、E13、V16、D18、W23、V24、D26、V40、L41、Q54、Y55、F56、E58、T59、G77、R79、G80、H85、W86、A99、L100、T101、W110、R111、W112、I113、R114、I115、D116、およびA118が含まれる。NT−4/5の適正なコンフォメーションを維持することに関与しないシステイン残基もまた、その分子の酸化的安定性を高め、異常な架橋形成を防止するために、概してセリンで置換することができる。この節に示す部位以外の部位は、一般に上記の欠失研究または挿入研究に適する。
【0096】
機能の実質的な修飾は、(a)置換の区域における、例えば、シートまたはらせんコンフォメーションとしてのポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに及ぼす置換の効果が有意に異なる置換を選択することによって達成することができる。天然に存在する残基は、共通する側鎖の性質に基づいて群分けされる(残基の一部は、いくつかの機能群に入ることがある):
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0097】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のメンバーと交換することを伴うものである。
【0098】
NT−4変異体の例には、E67からSまたはTへの突然変異を有する配列番号1のポリペプチド(これは、N結合型グリコシル化部位を付加する);配列番号1のアミノ酸残基R83からQ94まで、G1からC61まで、G1からC17まで、C17からC61まで、C17からC78まで、C17からC90まで、C17からC119まで、C17からC121まで、R11からR27まで、R11からR34まで、R34からR53まで、C61からC78まで、R53からC61まで、C61からC119まで、C61からC78まで、C78からC119まで、C61からC90まで、R60からC78まで、K62からC119まで、K62からK91まで、R79からR98まで、R83からK93まで、T101からR111まで、G1からC121までのポリペプチド;配列番号1のV40〜C121を含むポリペプチド(例えば、N末端および/またはC末端で、あるポリペプチドに融合した配列番号1のV40〜C121);C78、C61、Q54〜T59、R60〜D82、H85〜S88、W86〜T101が欠失した(表示する残基範囲(両端を含む)が欠失した)配列番号1を含むポリペプチド;R53からHへ、K91からHへ、V108からFへ、R84からQ、H、N、T、YまたはWへ、およびD116からE、N、Q、Y、SまたはTへの突然変異を有する配列番号1が含まれる。位置70がG、E、DもしくはP以外のアミノ酸残基で置換され、位置71がA、PもしくはM以外の残基で置換され、かつ/または位置83がR、D、SもしくはK以外の残基で置換されたNT−4/5(配列番号1)、および環化NT−4断片もまた含まれる。
【0099】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、その2つの配列中のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、下記のように最大の一致で整列された場合に同じならば、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列が類似した局所領域を同定および比較するために、比較ウィンドウにわたり配列を比較することによって行われる。本明細書に使用する「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20個、通常は30から約75個、40から約50個の連続する位置のセグメントを表し、そのセグメントで、ある配列を同数の連続する位置の参照配列と、それら2つの配列を最適に整列させた後で、比較することができる。
【0100】
比較のための配列の最適な整列は、デフォルトのパラメーターを使用して、生物情報学ソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR,Inc.、ウィスコンシン州マディソン)中のMegalignプログラムを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されているいくつかの整列スキームを具体化する:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、ワシントンDC、第5巻、補遺3巻、345〜358頁より;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626〜645頁、Methods in Enzymology、第183巻、Academic Press,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、カリフォルニア州サンフランシスコ;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0101】
好ましくは、「配列同一率」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたり、2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、ここで、その比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、その2つの配列の最適な整列に関する(付加も欠失も含まない)参照配列と比較して、20%以下、通常は5から15%、または10から12%の付加もしくは欠失(すなわちギャップ)を含むことがある。この率は、両方の配列に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、合致した位置数を得、その合致した位置数を、参照配列における位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、その結果に100をかけて、配列同一率を得ることによって計算される。
【0102】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体は、天然に存在することもあるし、以前に単離したNT−4/5 DNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望の変異ポリペプチドのin vitro合成によるなどして、合成的に調製することができる。上記のように、そのような変異体は、成熟NT−4/5のアミノ酸配列(例えば表1に示す配列)内に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、または挿入もしくは置換を含むことがある。欠失、挿入および置換の任意の組合せは、結果として生じる変異ポリペプチドが、所望の特徴をもつならば、NT−4/5のアミノ酸配列変異体に到達するように加えられる。そのアミノ酸変化は、組換え宿主に発現した際に、例えばグリコシル化部位を導入もしくは移動するか、または膜アンカー配列を導入して、NT−4/5のさらなる修飾を招くこともまたある(例えばPCT WO89/01041参照)。
【0103】
いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドは、成熟ヒトNT−4/5をコードしている核酸配列(例えば配列番号2)にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0104】
同様に、またはその代わりに、変異ポリヌクレオチドは、天然由来の遺伝子またはその部分もしくは相補体に実質的に相同なことがある。そのようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件で、そのポリペプチドをコードしている天然に存在するDNA配列(または相補的配列)にハイブリダイズすることができる。
【0105】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予備洗浄;50℃〜65℃、5×SSC、一晩でのハイブリダイズ;続いて0.1%SDSを含有する2×SSC、0.5×SSCおよび0.2×SSCの各々での、65℃で20分間の2回洗浄が含まれる。
【0106】
本明細書に使用する「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために、低イオン強度および高温(例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)を使用する条件、(2)ハイブリダイゼーションの間に、ホルムアミドなどの変性剤(例えば42℃で750mM 塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムと共に0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を有する50%(v/v)ホルムアミド)を使用する条件;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃、および50%ホルムアミド中で55℃での洗浄に続いて、EDTAを含有する0.1×SSCからなる、55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する条件である。別のストリンジェントな条件の例は、50%ホルムアミド、5×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、2×デンハルト溶液、および10%硫酸デキストラン中で、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて、0.1×SSCおよび0.1%SDS中で42℃での洗浄である。当業者は、プローブ長などの要因に適合させるために必要な温度、イオン強度などをどのように調整するかを認識しているものである。
【0107】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載するポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列があることは、当業者に認識されているものである。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然由来遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を担う。それにもかかわらず、コドン使用頻度の差異が原因で変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に考えられている。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内に属する。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つまたは複数の突然変異の結果として変更された内因性遺伝子である。結果として生じたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有することもあるが、有する必要はない。対立遺伝子は、標準的技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
【0108】
本発明の方法に使用するtrkBアゴニストには、NT−4/5(例えば表1に示すヒトNT−4/5)またはその機能的ペプチド断片のアミノ酸配列を含む融合タンパク質もまた含まれる。生物学的に活性なNT−4/5ポリペプチドは、配列、例えば、免疫学的反応性を高める配列、支持体もしくは担体へのポリペプチドの結合形成を容易にする配列、または再フォールディングおよび/もしくは精製を容易にする配列(例えば、Myc、インフルエンザウイルスヘマグルチニンから誘導されたHA、His−6、FLAGなどのエピトープをコードしている配列)と融合することができる。これらの配列は、N末端またはC末端で、NT−4/5ポリペプチドに融合することができる。加えて、このタンパク質またはポリヌクレオチドは、その機能を増加させるか、または細胞中のその局在化を特定する、分泌配列などの他のものまたはポリペプチドに融合することができる。上記の組換え融合タンパク質を産生する方法は、当技術分野で公知である。この組換え融合タンパク質は、当技術分野で十分に公知の方法によって、産生、再フォールディング、および単離することができる。
【0109】
本明細書に記載するNT−4/5ポリペプチドは、個体におけるそのポリペプチドの半減期を増加させるために修飾することができる。例えば、NT−4/5ポリペプチドは、生物学的活性の最小限の損失で、全身クリアランスを低減するために、PEG化することができる。本発明は、PEG分子に連結したNT−4/5ポリペプチドを含む組成物(医薬組成物を含める)もまた提供する。いくつかの実施形態では、このPEG分子は、可逆的連結を介してNT−4/5ポリペプチドに連結している。PEG化NT−4/5ポリペプチドの半減期は、非PEG化NT−4/5ポリペプチドの半減期の約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、および約30倍のいずれかを超えるだけ延長することができる。
【0110】
ポリエチレングリコールポリマー(PEG)は、当技術分野で公知の方法を用いて、NT−4/5ポリペプチドの種々の官能基に連結することができる。例えば、Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002);Sakaneら、Pharm.Res.14:1085〜91(1997)を参照されたい。PEGは、このポリペプチドの以下の官能基、すなわちアミノ基、カルボキシル基、修飾または天然N末端、アミン基、およびチオール基に連結することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の表面アミノ酸残基が、PEG分子で修飾される。PEG分子は、種々の大きさ(例えば、約2から40KDaの範囲)のことがある。NT−4/5ポリペプチドに連結したPEG分子は、約2000Da、約10000Da、約15000Da、約20000Da、約25000Da、約30000Da、約35000Da、約40000Daの任意の分子量を有することがある。PEG分子は、一本鎖または分岐鎖のことがある。PEGをNT−4/5ポリペプチドに連結するために、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を使用することができる。その官能基は、NT−4/5ポリペプチド上の利用可能な反応性基の種類に基づいて選択される。ポリペプチドに誘導体を連結する方法は、当技術分野で公知である。Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002)。NT−4/5ポリペプチドとPEGとの間の連結は、個体において切断または自然分解することができ、半減期を改善するが活性の損失を最小限に抑えることができる連結(可逆的連結または分解可能な連結)のこともまたある。NT−4/5ポリペプチド上のPEG連結部位は、表面の残基を、PEG反応性の基を有するシステインなどのアミノ酸残基に突然変異させることによって創出することもまたできる。例えば、ヒトNT−4/5(配列番号1)の以下のアミノ酸は、PEGの付着のために突然変異させることができる:G1、V2、S3、E4、T5、S9、R10、T25、D26、R28、T29、V31、E37、E39、L41、E43、A46、A47、G48、G49、S50、R53、D64、N65、A66、E67、E68、G69、D82、R83、R84、H85、A104、Q105、G106、R107、V108、S125、およびT127。これらは、他の種における対応する残基に適用することができる。
【0111】
いくつかのPEG化NT−4/5が作製され、米国特許出願公開第2005/0209148号およびPCT WO2005/082401の実施例6および7に示されている。成熟ヒトNT−4/5の位置50でのセリン残基は、システインに変化させてNT4−S50Cを作製し、次に、それをPEG化することができ、ここで、PEGは、位置50でシステインに連結している。PEGに対するN末端特異的付着の一例は、位置1の残基をセリンまたはスレオニンに突然変異させ、次にPEG化することであり、ここで、PEGは、位置1のセリンに連結している。
【0112】
NT−4/5ポリペプチドは、組換え手段によって、すなわち、NT−4/5ポリペプチドをコードしている核酸の発現によって産生することができる。組換え細胞培養、および場合により、例えば、変異体の活性のバイオアッセイによるか、またはウサギ抗NT−4/5ポリクローナル抗体(天然由来のNT−4/5中にも存在する、その変異体の少なくとも1つの免疫エピトープに結合する)を含む免疫アフィニティーカラムへの吸着による細胞培養物からの変異ポリペプチドの精製において。40残基以下のオーダーの小さなペプチド断片は、in vitro法により好都合に作られる。
【0113】
NT−4/5ポリペプチドをコードしているDNAは、宿主細胞においてタンパク質を発現させるために発現ベクターにクローニングすることができる。NT−4/5ポリペプチドをコードしている核酸の例は、米国特許出願公開第2003/0203383号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドをその成熟形態でコードしているDNAは、そのアミノ末端で分泌シグナルに連結することができる。この分泌シグナルは、好ましくは、ヒト細胞からのNT−4/5のin vivo分泌を普通は指令するNT−4/5プレ配列である。しかし、適切な分泌シグナルには、他の動物NT−4/5由来のシグナル、NGF、NT−2、もしくはNT−3由来のシグナル、ウイルスシグナル、または同種もしくは関係する種の分泌ポリペプチドに由来するシグナルもまた含まれる。任意の宿主細胞(大腸菌など)は、そのタンパク質またはポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0114】
発現したNT−4/5ポリペプチドは、精製することができる。NT−4/5ポリペプチドは、培地から分泌タンパク質として回収することができるが、分泌シグナルなしに直接発現した場合には、このポリペプチドは、宿主細胞溶解物からもまた回収することができる。当技術分野で公知のタンパク質精製法を用いることができる。NT−4/5ポリペプチドを産生する方法および発現したNT−4/5ポリペプチドを精製する方法は、米国特許出願公開第2003/0203383号および米国特許第6,184,360号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法により、大腸菌に発現させ、再フォールディングさせることができる。成熟ヒトNT−4/5は、(例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、Sigma(ミズーリ州セントルイス)、およびUpstate Biotech.(カリフォルニア州テメキュラ)から商業的に得ることもまたできる。
【0115】
抗trkBアゴニストポリペプチドおよび抗体
本発明の方法に使用されるtrkBアゴニストには、抗trkBアゴニスト抗体を含めた抗trkBアゴニストポリペプチドもまた含まれる。抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)は、以下の特徴のうちの任意の1つまたは複数を示すはずである:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)は多価であり、trkB受容体の細胞外ドメインに結合する。trkファミリーのニューロトロフィン受容体と結合および架橋し、またはそれを二量体化することができる免疫グロブリンは、これらの受容体を活性化し、ニューロトロフィンへの曝露に類似した帰結を神経細胞に生むことが示された。米国特許第6,656,465号およびPCT WO01/98361を参照されたい。
【0117】
trkBアゴニスト抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体の部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体配置を包含しうる。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または(ヒト化抗体を含めて)他の任意の起源でありうる。
【0118】
いくつかの実施形態では、(抗体を含めて)ポリペプチドはtrkBと結合し、他のニューロトロフィン受容体(関係するニューロトロフィン受容体であるtrkAおよび/またはtrkCなど)とは有意には交差反応(結合)しない。アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトtrkBと結合することがある。アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびげっ歯動物trkBともまた結合することがある。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびラットtrkBと結合することがある。いくつかの実施形態では、抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびマウスtrkBと結合することがある。一実施形態では、ポリペプチドは、ヒトtrkB細胞外ドメイン上の1つまたは複数のエピトープを認識する。別の実施形態では、抗体は、ヒトtrkB細胞外ドメイン上の1つまたは複数のエピトープを認識するマウスまたはラット抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはヒトtrkBと結合し、別の哺乳動物種(いくつかの実施形態では脊椎動物種)由来のtrkBと有意には結合しない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ヒトtrkBおよび別の哺乳動物種(いくつかの実施形態では脊椎動物種)由来の1つまたは複数のtrkBと結合する。別の実施形態では、ポリペプチドは、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシのうちの1つまたは複数から選択されるtrkB上の1つまたは複数のエピトープを認識する。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニスト抗体は、TrkB受容体(例えばヒトtrkB)のin vitro活性化に、約0.01nM、約0.1nM、約0.5nM、約1nM、約5nM、約10nM、約50nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する(例えば、実施例6ならびにUS2005/0209148およびPCT WO2005/082401に記載されているアッセイ)。
【0120】
trkBに対する抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)の結合親和性は、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまででありうる。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、もしくは約50pM、または約50pM未満のいずれかである。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれか未満である。なお他の実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約40pM超である。当技術分野で十分に公知のように、結合親和性は、KD、すなわち解離定数として表現することができ、結合親和性の増加はKDの減少に対応する。
【0121】
trkBへの抗体の結合親和性を決定する一方法は、抗体の単官能性Fab断片の結合親和性を測定することによる。単官能性Fab断片を得るために、抗体(例えばIgG)をパパインで切断するか、組換え発現させることができる。抗体の抗trkB Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(BIAcore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、BIAcore,INC、ニュージャージー州ピスカタウェイ)により決定することができる。CM5チップは、供給業者の説明書にしたがってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化することができる。ヒトtrkB−Fc融合タンパク質(「htrkB」)(またはラットtrkBなどの他の任意のtrkB)は、10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中で希釈し、活性化したチップの上に0.0005mg/mL濃度でインジェクトすることができる。個別のチップチャンネルを通過する可変流動時間を使用して、2つの範囲の抗原密度、すなわち詳細な動力学的研究には200〜400応答単位(RU)およびスクリーニングアッセイには500〜1000RUを達成することができる。チップは、エタノールアミンでブロックすることができる。再生の研究から、200回を超えるインジェクションの間、Pierce溶出緩衝液(製品番号21004、Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)および4M NaCl(2:1)の混合物は、結合したFabを効果的に除去するが、チップ上のhtrkBの活性を保つことが示された。HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P29)は、BIAcoreアッセイのための運転緩衝液として使用する。精製Fab試料の系列希釈(0.1〜10×推定KD)は、100μL/minで1分間インジェクトし、最長2時間の解離時間を見込む。Fabタンパク質の濃度は、標準として(アミノ酸分析により決定した)公知の濃度のFabを使用したELISAおよび/またはSDS−PAGE電気泳動により決定する。動力学的会合速度(kon)および解離速度(koff)(一般に25℃で測定される)は、BIAevaluationプログラムを用いて1:1ラングミュア結合モデルにデータをあてはめることによって同時に得られる(Karlsson,R.、Roos,H.、Fagerstam,L.、Petersson,B.(1994)Methods Enzymology 6:99〜110)。平衡解離定数(KD)の値は、koff/konとして計算する。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニストポリペプチド(抗体を含める)は、エフェクター機能障害を有する。本明細書に使用する「エフェクター機能障害」(用語「免疫学的に不活性」と相互交換可能に使用される)を有する抗体またはポリペプチドは、エフェクター機能をまったく有さないか、または(未修飾または天然に存在する定常領域を有する抗体またはポリペプチドに比べて)低減した活性のエフェクター機能を有する抗体またはポリペプチドを表し、その抗体またはポリペプチドは、例えば、以下の任意の1つまたは複数に活性を有さないか、または低減した活性を有する:a)補体介在性溶解をトリガーすること、b)抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を刺激すること、およびc)ミクログリアを活性化すること。エフェクター機能の活性は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、および約100%のいずれかだけ低減していることがある。いくつかの実施形態では、抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞介在性破壊をトリガーせずにtrkB受容体に結合する。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位は、修飾または突然変異させて、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIVなどのある種のFc受容体に対する結合親和性を除去または低減することができる。簡潔にするために、実施形態がポリペプチドにもまたあてはまることを理解して、抗体を参照する。EU付番システム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest;第5版、Public Health Service、National Institutes of Healthy、メリーランド州ベセスダ、1991)を使用して、(例えばIgG抗体の)定常領域のどのアミノ酸残基が変更または突然変異されたかを表示することができる。類似の変化を複数の種類の抗体および種にわたり加えることができることを理解して、この付番を特定の種類の抗体(例えばIgG1)または種(例えばヒト)に使用することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、trkB受容体に特異的に結合するポリペプチド(抗体を含める)は、エフェクター機能障害を有する重鎖定常領域を含む。この重鎖定常領域は、天然に存在する配列を有することがあるか、または変異体である。いくつかの実施形態では、天然に存在する重鎖定常領域のアミノ酸配列は、例えばアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失により突然変異させることによって、定常領域のエフェクター機能に障害が起こる。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域のFc領域のN−グリコシル化もまた変化させることができ、例えば完全または部分的に除去することができ、それによって定常領域のエフェクター機能に障害が起こる。
【0124】
いくつかの実施形態では、(例えばIgGのCH2ドメイン中の)Fc領域のN−グリコシル化を除去することにより、エフェクター機能に障害が起こる。いくつかの実施形態では、グリコシル化アミノ酸残基または定常領域中のグリコシル化認識配列の部分である隣接残基を突然変異させることにより、Fc領域のN−グリコシル化を除去する。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン(N−X−S)、アスパラギン−X−スレオニン(N−X−T)、およびアスパラギン−X−システイン(N−X−C)(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、N−グリコシル化のためのアスパラギン側鎖に糖質部分が酵素的に付着するための認識配列である。定常領域のトリペプチド配列中の任意のアミノ酸を突然変異させることにより、無グリコシル化IgGを得る。例えば、ヒトIgG1およびIgG3のN−グリコシル化部位N297は、A、D、Q、K、またはHに突然変異させることができる。Taoら、J.Immunology 143:2595〜2601(1989)およびJefferisら、Immunological Reviews 163:59〜76(1998)を参照されたい。Asn−297のGln、His、またはLysへの置換を有するヒトIgG1およびIgG3は、ヒトFcγRIに結合せず、補体を活性化せず、IgG1に対するC1q結合能が完全に失われ、IgG3に対しては劇的に減少することが報告された。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Nは、アミノ酸A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、Yのいずれか1つに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Nは、保存的置換残基に突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Xは、プロリンに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Sは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Tは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Cは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチドに続くアミノ酸は、Pに突然変異される。いくつかの実施形態では、定常領域でのN−グリコシル化は、酵素的に(N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3、およびエングリコシダーゼH(englycosidase H)などで)除去される。N−グリコシル化の除去は、N−グリコシル化に欠損を有する細胞系で抗体を産生することによってもまた達成することができる。Wrightら、J Immunol.160(7):3393〜402(1998)。
【0125】
いくつかの実施形態では、定常領域のN−グリコシル化部位に付着したオリゴ糖と相互作用しているアミノ酸残基を突然変異させて、FcγRIに対する結合親和性を低減する。例えば、ヒトIgG3のF241、V264、D265を突然変異させることができる。Lundら、J.Immunology 157:4963〜4969(1996)を参照されたい。
【0126】
いくつかの実施形態では、PCT WO99/58572およびArmourら、Molecular Immunology 40:585〜593(2003);Reddyら、J.Immunology 164:1925〜1933(2000)に記載されているように、エフェクター機能は、ヒトIgGの233〜236、297、および/または327〜331などの領域を修飾することにより障害を起こす。PCT WO99/58572およびArmourらに記載されている抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域のすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞介在性破壊をトリガーせずに標的分子と結合することができる。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIに対して低減した親和性を有する。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbと特異的に結合することができる。これらは、典型的には2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインから誘導されたキメラドメインに基づく。このように修飾された抗体は、従来の抗体療法に対する炎症反応および他の有害反応を回避するための慢性抗体療法への使用に特に適する。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の任意の突然変異を有するヒト重鎖IgG1である:1)A327A330P331からG327S330S331;2)E233L234L235G236からP233V234A235、G236欠失;3)E233L234L235からP233V234A235;4)E233L234L235G236A327A330P331からP233V234A235G327S330S331、G236欠失;5)E233L234L235A327A330P331からP233V234A235G327S330S331;および6)N297からA297またはN以外の任意の他のアミノ酸。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の突然変異を有するヒト重鎖IgG2である:A330P331からS330S331。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の任意の突然変異を有するヒト重鎖IgG4である:E233F234L235G236からP233V234A235、G236欠失;E233F234L235からP233V234A235;およびS228L235からP228E235。
【0127】
定常領域もまた修飾して、補体活性化に障害を起こすことができる。例えば、補体C1成分の結合後のIgG抗体の補体活性化は、C1結合モチーフ(例えばC1q結合モチーフ)中の定常領域のアミノ酸残基を突然変異させることにより低減することができる。ヒトIgG1のD270、K322、P329、P331のそれぞれに関するAla突然変異は、抗体がC1qに結合して補体を活性化する能力を有意に低減することが報告された。マウスIgG2bについては、残基E318、K320、およびK322がC1q結合モチーフを構成する。Idusogieら、J.Immunology 164:4178〜4184(2000);Duncanら、Nature 322:738〜740(1988)。
【0128】
マウスIgG2bについて同定されたC1q結合モチーフE318、K320、およびK322は、他の抗体アイソタイプと共通すると考えられる。Duncanら、Nature 322:738〜740(1988)。IgG2bについてのC1q結合活性は、3つの特定の残基の任意の1つを、その側鎖に不適切な官能基を有する残基と置き換えることによって撤廃することができる。C1qの結合を撤廃するために、イオン系残基のみをAlaに置き換えることは不必要である。C1qの結合を撤廃するために3つの残基のうちの任意の1つの代わりにGly、Ile、Leu、もしくはValなどの他のアルキル置換非イオン系残基、またはPhe、Tyr、Trp、およびProなどの芳香族無極性残基を使用することもまた可能である。加えて、C1qの結合活性を撤廃するために、残基318ではなく320および322の代わりにSer、Thr、Cys、およびMetなどの極性非イオン系残基を使用することもまた可能である。
【0129】
本発明は、エフェクター機能障害を有する抗体もまた提供し、ここで、その抗体は修飾されたヒンジ領域を有する。ヒトIgGのFc受容体に対するヒトIgGの結合親和性は、ヒンジ領域を修飾することにより調節することができる。Canfieldら、J.Exp.Med.173:1483〜1491(1991);Hezarehら、J.Virol.75:12161〜12168(2001);Redpathら、Human Immunology 59:720〜727(1998)。特異的アミノ酸残基は、突然変異または欠失させることができる。修飾されたヒンジ領域は、CH1ドメインとは異なる抗体クラスまたはサブクラスの抗体から誘導された完全なヒンジ領域を含むことがある。例えば、IgGクラスの抗体の定常ドメイン(CH1)は、IgG4クラスの抗体のヒンジ領域に付着していることがある。あるいは、新しいヒンジ領域は、天然ヒンジの一部、または繰り返しの中の各ユニットが天然ヒンジ領域から誘導された繰り返しユニットの一部を含むことがある。いくつかの実施形態では、天然ヒンジ領域は、1つもしくは複数のシステイン残基を、アラニンなどの中性残基に変換することによって、または適切に配置された残基をシステイン残基に変換することによって変更される。例えば、米国特許第5,677,425号を参照されたい。そのような改変は、当技術分野で認識されているタンパク質化学および好ましくは遺伝子工学技術を用いて、ならびに本明細書に記載するように実施される。
【0130】
trkB受容体に特異的に結合するポリペプチドであって、エフェクター機能障害を有する重鎖定常領域に融合したポリペプチドもまた本明細書に記載する方法に使用することができる。そのような融合ポリペプチドの一例はイムノアドヘシンである。例えば、米国特許第6,153,189号を参照されたい。
【0131】
当技術分野で公知の、エフェクター機能障害を有する抗体を製造する他の方法もまた用いることができる。
【0132】
修飾された定常領域を有する抗体およびポリペプチドは、1つまたは複数のアッセイで試験して、生物学的活性におけるエフェクター機能低減のレベルを出発抗体に比べて評価することができる。例えば、変更されたFc領域または変更されたヒンジ領域を有する抗体またはポリペプチドが補体またはFc受容体(例えばミクログリア上のFc受容体)と結合する能力は、本明細書に開示するアッセイおよび当技術分野で認められている任意のアッセイを使用して評定することができる。PCT WO99/58572;Armourら、Molecular Immunology 40:585〜593(2003);Reddyら、J.Immunology 164:1925〜1933(2000);Songら、Infection and Immunity 70:5177〜5184(2002)。
【0133】
抗trkBアゴニスト抗体は、trkBの1つまたは複数の細胞外ドメインを発現する免疫原を使用することによって作ることができる。免疫原の一例は、trkBを高く発現する細胞であり、その細胞は、本明細書に記載するように得ることができる。使用することができる免疫原の別の例は、trkB受容体の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分を含有する可溶性タンパク質(trkBイムノアドヘシンなど)である。
【0134】
宿主動物の免疫処置の経路およびスケジュールは、概して、本明細書にさらに記載する抗体の刺激および産生のための確立された技術および従来技術に沿う。ヒトおよびマウス抗体を産生するための一般技術は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。
【0135】
ヒトを含めた任意の哺乳動物対象またはそれに由来する抗体産生細胞は、ヒトを含めた哺乳動物のハイブリドーマ細胞系の産生のための基礎として役立つように操作することができることが考えられている。典型的には、宿主動物は、本明細書に記載するものを含めたある量の免疫原を腹腔内接種される。
【0136】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.(1975)Nature 256:495〜497の、またはBuck,D.W.ら(1982)In Vitro、18:377〜381により修正された一般体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いて、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製することができる。非限定的にX63−Ag8.653およびSalk Institute、Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴからの骨髄腫細胞系を含めた入手できる骨髄腫細胞系を、ハイブリダイゼーションに使用することができる。一般に、その技術は、ポリエチレングリコールなどの融合源を使用して、または当業者に十分に公知の電気的手段により、骨髄腫細胞およびリンパ系細胞を融合させることを伴う。融合後に、融合用培地から細胞を分離し、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地などの選択生育培地中で生育させ、ハイブリダイズしてない親細胞を排除する。本明細書に記載する、血清を補充されたか、または補充されていない任意の培地は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技術の別の代替として、EBVで不死化したB細胞を使用して、主題発明の抗trkBモノクローナル抗体を産生させることができる。ハイブリドーマを所望により増大させてサブクローニングし、従来のイムノアッセイ(例えばラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、または蛍光イムノアッセイ)の手順により、抗免疫源活性について上清がアッセイされる。
【0137】
抗体の起源として使用することができるハイブリドーマは、trkBに特異的なモノクローナル抗体またはその部分を産生する親ハイブリドーマのすべての誘導体、子孫細胞を包含する。
【0138】
そのような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を用いてin vitroまたはin vivoで生育させることができる。モノクローナル抗体は、所望により硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって培地または体液から単離することができる。望まれない活性がもしも存在すれば、固相に付着した免疫原からできた吸着剤の上に調製物を流し、その免疫原から所望の抗体を溶出または放出させることによってそれを除去することができる。ヒトもしくは他の種のtrkB受容体、またはヒトもしくは他の種のtrkB受容体の断片、または二官能性薬剤もしくは誘導化剤(例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は異なるアルキル基である))を使用し、免疫処置される種に免疫原性のタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤)にコンジュゲートした標的アミノ酸配列を含有するヒトもしくは他の種のtrkB受容体もしくは断片を用いた宿主動物の免疫処置は、抗体(例えばモノクローナル抗体)集団を得ることができる。免疫原の別の例は、trkBを高く発現する細胞であり、その細胞は、組換え手段により、または天然起源から高レベルのtrkBを発現する細胞を単離もしくは富化することにより得ることができる。これらの細胞は、ヒトのものでも、他の動物起源であってもよく、直接単離された免疫原として使用することもできるし、免疫原性が増加または(trkBの断片の)trkBの発現が増加もしくは富化するように加工することもできる。そのような加工には、非限定的に、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノール、アセトン、および/または様々な酸などの、細胞またはその断片の安定性または免疫原性を増加するように設計された薬剤を用いて、その細胞またはその断片を処理することが含まれる。さらに、そのような処理の前または後のいずれかで、細胞は、所望の免疫原について、この場合はtrkBまたはその断片について富化するために、加工することができる。これらの加工ステップには、当技術分野で十分に公知の膜分画技術が含まれることがある。
【0139】
所望であれば、関心対象の抗trkB抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)は配列決定することができ、次に、ポリヌクレオチド配列は、発現または伝播のために、ベクターにクローニングすることができる。関心対象の抗体をコードしている配列は、宿主細胞のベクター中に維持することができ、次に、宿主細胞は、将来に使用するために規模拡大および凍結することができる。その代わりとして、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」するために、または抗体の親和性もしくは他の性質を改善するために、遺伝子操作に使用することができる。例えば、その抗体をヒトにおける臨床試験および治療に使用するならば、定常領域をヒト定常領域にさらに類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。抗体配列を遺伝子操作して、trkB受容体に対してさらに大きな親和性を、およびtrkB受容体の活性化にさらに大きな効力を得ることが理想的なことがある。1つまたは複数のポリヌクレオチド変化を抗trkB抗体に加えても、trkB細胞外ドメインまたはtrkBのエピトープに対する結合能をなお維持することができることは、当業者に明らかであろう。
【0140】
モノクローナル抗体をヒト化するためには4つの一般的ステップがある。これらは、(1)出発抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計するステップ、すなわちヒト化工程の間にどの抗体のフレームワーク領域を使用すべきかを判断するステップ、(3)実際のヒト化方法論/技術、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;第6,180,370号;および第6,548,640号を参照されたい。例えば、その抗体をヒトにおける臨床試験および治療に使用するならば、定常領域をヒト定常領域にさらに類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号を参照されたい。
【0141】
げっ歯動物V領域または修飾げっ歯動物V領域、およびそれらに関連する相補性決定領域(CDR)がヒト定常ドメインに融合したものを有するキメラ抗体を含めた、非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含むいくつかの「ヒト化」抗体分子が記載されている。例えば、Winterら、Nature 349:293〜299(1991)、Lobuglioら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220〜4224(1989)、Shawら、J Immunol.138:4534〜4538(1987)、およびBrownら、Cancer Res.47:3577〜3583(1987)を参照されたい。他の参考文献は、ヒト支持性フレームワーク領域(FR)にげっ歯動物CDRをグラフト化してから、適切なヒト抗体定常ドメインと融合させることを記載している。例えば、Riechmannら、Nature 332:323〜327(1988)、Verhoeyenら、Science 239:1534〜1536(1988)、およびJonesら、Nature 321:522〜525(1986)を参照されたい。別の参考文献は、組換え上張り(veneered)げっ歯動物フレームワーク領域により支持されるげっ歯動物CDRについて記載している。例えば、欧州特許公報第519,596号を参照されたい。これらの「ヒト化」分子は、げっ歯動物抗ヒト抗体分子に対する望まれない免疫応答であって、ヒトレシピエントにおけるそれらの部分の治療適用の期間および有効性を制限する免疫応答を最小化するように設計される。抗体定常領域は、それが免疫学的に不活性なように、例えばそれが補体介在性溶解をトリガーせず、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を刺激しないように、操作することができる。他の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613〜2624;PCT出願PCT/GB99/01441;および/またはUK特許出願第9809951.8号に記載されているように修飾される。
【0142】
例えばPCT/GB99/01441;UK特許出願第9809951.8号を参照されたい。同様に利用することができる、抗体をヒト化する他の方法は、Daughertyら、Nucl.Acids Res.19:2471〜2476(1991)および米国特許第6,180,377号;第6,054,297号;第5,997,867号;第5,866,692号;第6,210,671号;第6,350,861号;およびPCT出願WO01/27160に開示されている。
【0143】
なお別の代替では、完全ヒト抗体は、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することにより得ることができる。より理想的な(例えば完全ヒト抗体の)免疫応答またはより強い免疫応答を産生するように設計されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化またはヒト抗体の作製に使用することができる。そのような技術の例は、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)からのXenomouse(商標)ならびにMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)からのHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。
【0144】
代替では、抗体は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して組換え製造および発現させることができる。別の代替では、抗体は、ファージディスプレイ技術により組換え製造することができる。例えば、米国特許第5,565,332号、第5,580,717号、第5,733,743号、および第6,265,150号、ならびにWinterら、Annu.Rev.Immunol.12:433〜455(1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature 348:552〜553(1990))を用いて、非免疫処置ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生させることができる。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの、繊維状バクテリオファージの主または副コートタンパク質遺伝子のいずれかにフレーム内でクローニングして、ファージ粒子表面に機能的抗体断片として表出させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有することから、抗体の機能的性質に基づく選択は、それらの性質を示す抗体をコードしている遺伝子の選択もまた招く。したがって、ファージは、B細胞の性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができ、総説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology 3、564〜571(1993)を参照されたい。いくつかの起源のV遺伝子セグメントは、ファージディスプレイのために使用することができる。Clacksonら(Nature 352:624〜628(1991))は、免疫処置されたマウスの脾臓から誘導されたV遺伝子の小規模ランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。本質的にMarkら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)またはGriffithら、EMBO J.12:725〜734(1993)に記載されている技法通りに、免疫処置されていないヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、多様なアレイの抗原(自己抗原を含める)に対する抗体を単離することができる。自然免疫応答では、抗体遺伝子は、高い率で突然変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入される変化の一部は、高い親和性を付与するものであり、その後の抗原攻撃の間に、高親和性表面免疫グロブリンを表出しているB細胞が優先的に複製および分化する。この自然工程は、「鎖シャフリング」として公知の技術を使用することにより模倣することができる。Marksら、Bio/Technol.10:779〜783(1992))。この方法では、ファージディスプレイにより得られた「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を、免疫処置されていないドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然に存在する変異体のレパートリー(レパートリー)に連続的に置き換えることによって改善することができる。この技術は、pM〜nM範囲の親和性を有する抗体および抗体断片を産生させる。非常に大規模なファージ抗体レパートリー(「究極の(mother−of−all)ライブラリー」としても公知である)を作るための戦略は、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21:2265〜2266(1993)に記載されている。遺伝子シャフリングを用いて、げっ歯動物抗体からヒト抗体を誘導することもまたでき、ここで、そのヒト抗体は、出発げっ歯動物抗体と類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によると、ファージディスプレイ技術により得られるげっ歯動物抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えられ、げっ歯動物−ヒトキメラを創出する。抗原上での選択は、機能的抗原結合部位を復旧することができるヒト可変領域の単離を招く、すなわちエピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)。残りのげっ歯動物Vドメインを置き換えるためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT公開WO93/06213参照)。CDRグラフト化によるげっ歯動物抗体の伝統的ヒト化とは異なり、この技術は、げっ歯動物起源のフレームワークもCDR残基も有さない完全なヒト抗体を提供する。上記論考はヒト化抗体に関するが、論じた一般原理は、例えばイヌ、ネコ、霊長類、ウマ、およびウシに使用するための抗体をあつらえるために適用できることは明らかである。
【0145】
抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有するモノクローナル抗体である二重特異性抗体のことがあり、それは、本明細書に開示する抗体を使用して調製することができる。二重特異性抗体を作るための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Sureshら、1986、Methods in Enzymology 121:210参照)。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対と、異なる特異性を有する2つの重鎖との同時発現に基づいた(MillsteinおよびCuello、1983、Nature 305、537〜539)。
【0146】
二重特異性抗体を作る一アプローチによると、所望の結合特異性(抗体−抗原組合せ部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。軽鎖の結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)が融合体の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に共トランスフェクトされる。これは、構築物に使用される等しくない比の3つのポリペプチド鎖が最適の収率をもたらす実施形態において、この3つのポリペプチド断片の相互比率の調整に大きな柔軟性を与える。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率を招く場合またはその比が特に重要ではない場合には、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖に関するコード配列を、1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0147】
一アプローチでは、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、もう一方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を与える)とから構成される。二重特異性分子の半分だけに免疫グロブリン軽鎖を有するこの非対称構造は、望まれない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物を分離することを容易にする。このアプローチは、PCT公開WO94/04690に記載されている。
【0148】
2つの共有結合した抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内に属する。そのような抗体は、望まれない細胞に免疫系細胞を標的化するために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療のために(PCT公開WO91/00360およびWO92/200373、ならびにEP03089)使用されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋法を使用して作ることができる。適切な架橋剤および技術は、当技術分野で十分に公知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0149】
抗体は、宿主動物から作った抗体を最初に単離し、遺伝子配列を得、その遺伝子配列を使用して宿主細胞(例えばCHO細胞)に抗体を組換え発現させることにより、組換え的に作ることができる。使用することができる別の方法は、植物(例えばタバコ)、トランスジェニック乳、または他の生物に抗体配列を発現させることである。植物または乳に抗体を組換え発現させる方法が開示されている。例えば、Peetersら(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.およびD.Huszar(1995)Int.Rev.lmmunol 13:65;ならびにPollockら(1999)J Immunol Methods 231:147を参照されたい。例えばヒト化抗体、単鎖抗体などの抗体誘導体を作る方法は、当技術分野で公知である。
【0150】
キメラまたはハイブリッド抗体は、架橋剤を伴う方法を含めた合成タンパク質化学の公知の方法を用いてin vitroで調製することもまたできる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成させることによって、免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート(methyl−4−mercaptobutyrimidate)が含まれる。
【0151】
Iliadesら、1997、FEBS Letters、409:437〜441に記載されているような単鎖Fv断片もまた産生させることができる。様々なリンカーを使用したそのような単鎖断片の結合形成は、Korttら、1997、Protein Engineering、10:423〜433に記載されている。抗体の組換え産生および操作のための様々な技術は、当技術分野で十分に公知である。
【0152】
抗体は、1999年11月18日に公開されたPCT公開WO99/58572に記載されているように修飾することができる。これらの抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常ドメインのすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の有意な補体依存性溶解も細胞介在性破壊もトリガーせずに、標的分子と結合することができる。好ましくは、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbと特異的に結合することができる。これらは、典型的には2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインから誘導されたキメラドメインに基づく。このように修飾された抗体は、従来の抗体療法に対する炎症および他の有害反応を回避するための慢性抗体療法に使用するために好ましい。
【0153】
宿主動物の免疫処置または組換えのいずれかで作られた抗体は、本明細書に記載する任意の1つまたは複数のtrkBアゴニスト活性を示すはずである。
【0154】
イムノアッセイおよび蛍光標識細胞選別(FACS)などのフローサイトメトリー選別技術を使用して、trkBに特異的な抗体を単離することもまたできる。
【0155】
抗体は、多数の異なる担体に結合させることができる。担体は、活性および/または不活性でありうる。十分に公知の担体の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。担体の本質は、本発明の目的のために可溶性または不溶性のいずれかでありうる。当業者は、抗体を結合させるための他の適切な担体を知っているものであるし、日常的な実験を用いてそれを確かめることができるものである。
【0156】
アゴニスト抗trkB抗体をコードしているDNAは、当技術分野で公知のように配列決定することができる。一般に、モノクローナル抗体は、容易に単離され、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなcDNAの好ましい入手源として役立つ。いったん単離したDNAは、発現ベクター(PCT公開WO87/04462に開示されている発現ベクターなど)に配置することができ、その発現ベクターは、次に大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞にモノクローナル抗体の合成を得る。例えば、PCT公開WO87/04462を参照されたい。DNAは、例えば相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインについてのコード配列に置換することによって(Morrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列のすべてもしくは一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合形成させることによってもまた修飾することができる。そのようにして、本明細書の抗trkBモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を調製する。アゴニスト抗trkB抗体(その抗原結合断片など)をコードしているDNAもまた、本明細書に記載する所望の細胞にアゴニスト抗trkB抗体を送達および発現させるために使用することができる。DNA送達技術は、本明細書にさらに記載する。
【0157】
抗trkB抗体は、当技術分野で十分に公知の方法を用いて特徴付けすることができる。例えば、一方法は、抗体−抗原複合体の結晶構造を解明すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイを含めて、それが結合するエピトープを同定することであり、それは、例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies,a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1999の第11章に記載されている。追加の例では、エピトープマッピングを使用して、抗trkB抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは、様々な入手源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、オランダ)から市販されている。エピトープは、線状エピトープ、すなわち単一ストレッチのアミノ酸に含有されることもあるし、必ずしも単一ストレッチに含有されないことがある、アミノ酸の三次元相互作用により形成されるコンフォメーションエピトープのことがある。様々な長さのペプチド(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)を単離または(例えば組換え)合成して、抗trkB抗体を用いた結合アッセイに使用することができる。別の例では、抗trkB抗体が結合するエピトープは、trkB細胞外配列から誘導された重複するペプチドを使用し、抗trkB抗体による結合を決定することによる系統スクリーニングで決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによると、trkBをコードしているオープンリーディングフレームは、ランダムに、または特異的遺伝子構築物によるかのいずれかで断片化され、発現したtrkBの断片と、被験抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRにより産生し、次にin vitroで転写し、放射性アミノ酸の存在下でタンパク質に翻訳することができる。次に、放射性標識したtrkB断片への抗体の結合は、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。ある種のエピトープは、ファージ粒子の表面に表出されたランダムなペプチド配列の大規模ライブラリー(ファージライブラリー)を使用することによってもまた同定することができる。
【0158】
抗trkB抗体を特徴付けるために使用することができるなお別の方法は、同じ抗原に、すなわちtrkB細胞外ドメインに結合することが公知の他の抗体を用いた競合アッセイを使用して、抗trkB抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを判定することである。競合アッセイは、当業者に十分に公知である。競合アッセイに有用な抗体の例には、以下のものが含まれる:抗体6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、および2256。PCT公開WO01/98361を参照されたい。
【0159】
エピトープマッピングは、PCT公開WO01/98361に記載されているドメインスワップ突然変異体を使用してもまた行うことができる。概して、このアプローチは、trkAまたはtrkCと有意に交差反応しない抗trkB抗体に有用である。trkBのドメインスワップ突然変異体は、trkBの細胞外ドメインをtrkCまたはtrkA由来の対応するドメインに置き換えることにより作ることができる。様々なドメインスワップ突然変異体への各アゴニスト抗trkB抗体の結合は、ELISAまたは当技術分野で公知の他の方法を用いて、評価し、野生型(天然由来の)trkBへのその結合と比較することができる。別のアプローチでは、アラニンスキャニングを行うことができる。抗原であるtrkB受容体の個別の残基は、別のアミノ酸(通常はアラニン)に系統的に突然変異され、ELISAまたは当技術分野で公知の他の方法を用いて、修飾trkBが抗体に結合する能力を試験することによって、変化の効果が評定される。
【0160】
BDNFポリペプチド
本発明の方法に用いるtrkBアゴニストには、BDNFポリペプチドが含まれる。本明細書に使用する「BDNFポリペプチド」には、米国特許第5,180,820号に示される成熟ヒトBDNFなどの天然に存在する成熟タンパク質(相互交換可能に「BDNF」と称される)およびBDNFの天然に存在するアミノ酸配列変異体と、BDNFのアミノ酸配列変異体と、成熟BDNF(ヒトなど)および前記アミノ酸配列変異体のペプチド断片と、成熟BDNFおよび前記アミノ酸配列変異体およびペプチド断片の修飾された形態が含まれるが、ただし、ポリペプチドまたはペプチドは、天然に存在するアミノ酸以外の部分との置換により共有的に修飾されている、そのアミノ酸配列変異体、ペプチド断片、およびその修飾された形態は、trkBアゴニストおよび/または天然に存在する成熟BDNFタンパク質の1つまたは複数の生物学的活性を示す。trkBアゴニストには、本明細書に記載するBDNFポリペプチドの任意の実施形態を含む融合タンパク質およびコンジュゲート、例えばPEGまたはペプチドなどの半減期延長部分にコンジュゲートまたは融合したBDNFポリペプチドもまた含まれる。考慮中のアミノ酸配列変異体、ペプチド断片(変異体の断片を含める)、またはその修飾された形態には、任意の動物種のNGF、NT−4/5、またはNT−3は含まれない。BDNFポリペプチドには、本明細書に記載する任意の1つまたは複数の実施形態が含まれる。例えば、BDNFポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を有する天然に存在する配列を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、天然に存在する哺乳動物BDNF、または天然に存在する哺乳動物BDNFから誘導されたBDNFポリペプチドであって、天然に存在する非哺乳動物BDNFのどの部分とも合致しない配列を有するBDNFポリペプチドのことがある。いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、天然に存在するヒトBDNF、または天然に存在するヒトBDNFから誘導されたBDNFポリペプチドであって、天然に存在する非ヒトBDNFのどの部分とも合致しない配列を有するBDNFポリペプチドのことがある。
【0162】
変異体、ペプチド断片、BDNFポリペプチド(天然に存在するBDNFを含める)の修飾された形態、本発明の融合タンパク質およびコンジュゲートを含めたBDNFポリペプチドは、以下の任意の(1つまたは複数の)性質を特徴とする:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。したがって、すべてのBDNFポリペプチド(変異体、断片、および修飾された形態を含める)は、上記のように機能的である。
【0163】
変異体の生物学的活性は、当技術分野で公知の方法および本明細書に記載する方法を用いて、in vitroおよびin vivoで試験することができる。BDNFポリペプチドは、天然に存在するBDNFタンパク質に比べて高まった活性または低減した活性を有することがある。いくつかの実施形態では、機能的に等価な変異体は、上記の(または当技術分野で公知の)1つまたは複数の生物学的アッセイに関して、BDNFポリペプチドが誘導された天然由来のBDNFタンパク質に比べて少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の任意の活性を有する。いくつかの実施形態では、機能的に同等の変異体は、in vitroでのTrkB受容体の活性化(例えば、実施例6ならびに米国特許出願第2005/0209148号およびPCT公開WO2005/082401に記載されているアッセイ)において、約0.01nM、約0.1nM、約1nM、約10nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する。
【0164】
BDNFのアミノ酸配列変異体には、天然に存在するBDNF(例えば成熟ヒトBDNF)の配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入、欠失、および/または置換によって、天然に存在するBDNFとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。アミノ酸配列変異体は、概して、任意の天然に存在するBDNF(成熟ヒトBDNFなど)と少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一なものである。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約85%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約90%同一である。いくつかの実施形態では、変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約95%同一である。
【0165】
例えば、BDNFをNGF、BDNF、またはNT−3に変換するような変異は、本発明の範囲内に含まれない。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位は所定であっても、突然変異の本質自体は所定である必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは標的領域でalaスキャニングまたはランダム突然変異誘発が行われ、発現したBDNF変異体が、最適の所望の活性についてスクリーニングされる。
【0166】
アミノ酸配列の欠失は、概して約1から30残基、より好ましくは約1から10残基の範囲であり、そして典型的には連続している。欠失は、BDNFの活性を修飾するために、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で相同性の低い領域に導入することができる。NT−4/5、NT−3、およびNGFと実質的に相同な区域でのBDNFからの欠失は、BDNFの生物学的活性をより有意に修飾すると見込みがさらに高いことがある。連続的な欠失の数は、影響を受けたドメインにおけるBDNFの三次構造(例えば、β−プリーツシートまたはαらせん)を保存するように選択することができる。
【0167】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から1000個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶ、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわち成熟BDNF配列内の挿入)は、概して、約1から10残基、より好ましくは、1から5残基、最も好ましくは1から3残基の範囲のことがある。末端挿入の一例には、組換え宿主からの成熟BDNFの分泌を容易にするために、BDNF分子のN末端に異種N末端シグナル配列を融合することが含まれる。そのようなシグナルは、概して、意図される宿主細胞と同種であり、それらには、大腸菌についてのSTIIまたはlpp、酵母についてのα因子、および哺乳動物細胞についてのヘルペスgDなどのウイルスシグナルが含まれる。他の挿入には、BDNFのNまたはC末端へのポリペプチドの融合が含まれる。
【0168】
変異体の別の群には、BDNF中の少なくとも1つ(好ましくは1つだけ)のアミノ酸残基が除去されて、異なる残基がその場所に挿入されているものが含まれる。一例は、アルギニンおよびリシンを他のアミノ酸に置き換えて、BDNFをセリンプロテアーゼによるタンパク質分解に抵抗性にすることによって、より安定なBDNF変異体を創出することである。置換突然変異誘発のための最大の関心対象の部位には、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5にみられるアミノ酸が、側鎖のかさ高さ、電荷、または疎水性に関して実質的に異なる部位であるが、NGF、NT−3、およびNT−4/5の様々の動物アナログ内で(例えば、すべての動物NGF、すべての動物NT−3、およびすべてのBDNFのすべての間で)選択された部位に高度の相同性もまたある部位が含まれる。この分析は、栄養因子の活性の区別に関与しうる残基を強調するものであることから、これらの部位での変異体は、そのような活性に影響を及ぼすことがある。関心対象の他の部位は、残基がすべての動物種のBDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で同一な部位であり、このコンフォメーションの程度は、全4つの因子に共通する生物学的活性を達成することの重要性を示唆している。
【0169】
例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換には、保存的置換が含まれる。保存的置換を行う方法は、当技術分野で公知である。例えば、ala(A)は、val、leu、ileと、好ましくはvalと置換することができ、arg(R)は、lys、gln、asnと、好ましくはlysと置換することができ、asn(N)は、gln、his、lys、argと、好ましくはglnと置換することができ、asp(D)は、gluと置換することができ、cys(C)は、serと置換することができ、gln(Q)は、asnと置換することができ、glu(E)は、aspと置換することができ、gly(G)は、proと置換することができ、his(H)は、asn、gln、lys、argと、好ましくはargと置換することができ、ile(I)は、leu、val、met、ala、phe、ノルロイシンと、好ましくはleuと置換することができ、leu(L)は、ノルロイシン、ile、val、met、ala、pheと、好ましくはileと置換することができ、lys(K)は、arg、gln、asnと、好ましくはargと置換することができ、met(M)は、leu、phe、ileと、好ましくはleuと置換することができ、phe(F)は、leu、val、ile、alaと、好ましくはleuと置換することができ、pro(P)は、glyと置換することができ、ser(S)はthrと置換することができ、thr(T)は、serと置換することができ、trp(W)は、tyrと置換することができ、tyr(Y)は、trp、phe、thr、serと、好ましくはpheと置換することができ、val(V)は、ile、leu、met、phe、ala、ノルロイシンと、好ましくはleuと置換することができる。
【0170】
機能の実質的な修飾は、(a)置換の区域における、例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしてのポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに及ぼす置換の効果が有意に異なる置換を選択することにより達成することができる。天然に存在する残基は、共通の側鎖の性質に基づいて群分けされる(残基の一部は、いくつかの機能的群に入ることがある):
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0171】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のメンバーと交換することを伴うものである。
【0172】
BDNFのアミノ酸配列変異体は、天然に存在することもあるし、以前に単離したBDNF DNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望の変異ポリペプチドのin vitro合成によるなどして、合成的に調製することができる。上記のように、そのような変異体は、成熟BDNFのアミノ酸配列(例えば表1に示す配列)内に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、または挿入もしくは置換を含むことがある。欠失、挿入、および置換の任意の組合せは、結果として生じる変異ポリペプチドが、所望の特徴をもつならば、BDNFのアミノ酸配列変異体に到達するように加えられる。そのアミノ酸変化は、組換え宿主に発現した際に、例えばグリコシル化部位を導入もしくは移動するか、または膜アンカー配列を導入して、(PCT WO89/01041による)BDNFのさらなる修飾を招くこともまたある。
【0173】
いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、成熟ヒトBDNFをコードしている核酸配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0174】
同様に、またはその代わりに、変異ポリペプチドは、天然由来の遺伝子またはその部分もしくは相補体に実質的に相同なことがある。そのようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件で、そのポリペプチドをコードしている天然に存在するDNA配列(または相補的配列)にハイブリダイズすることができる。
【0175】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載するポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列があることは、当業者に認識されているものである。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然由来遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を担う。それにもかかわらず、コドン利用頻度の差異が原因で変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に考えられている。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内に属する。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つまたは複数の突然変異の結果として変更された内因性遺伝子である。結果として生じたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有することもあるが、有する必要はない。対立遺伝子は、標準技術(ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはデータベース配列の比較など)を用いて同定することができる。
【0176】
本発明の方法に使用するtrkBアゴニストには、BDNF(例えばヒトBDNF)またはその機能的ペプチド断片のアミノ酸配列を含む融合タンパク質もまた含まれる。生物学的に活性なBDNFポリペプチドは、配列、例えば、免疫学的反応性を高める配列、支持体もしくは担体へのポリペプチドの結合形成を容易にする配列、または再フォールディングおよび/もしくは精製を容易にする配列(例えば、Myc、インフルエンザウイルスヘマグルチニンから誘導されたHA、His−6、FLAGなどのエピトープをコードしている配列)と融合することができる。これらの配列は、N末端またはC末端で、BCNFポリペプチドに融合することができる。加えて、このタンパク質またはポリヌクレオチドは、その機能を増加させるか、または細胞中のその局在化を特定する、分泌配列などの他のものまたはポリペプチドに融合することができる。上記の組換え融合タンパク質を産生する方法は、当技術分野で公知である。この組換え融合タンパク質は、当技術分野で十分に公知の方法によって、産生、再フォールディング、および単離することができる。
【0177】
本明細書に記載するBDNFポリペプチドは、個体におけるそのポリペプチドの半減期を増加させるために修飾することができる。例えば、BDNFポリペプチドは、生物学的活性の最小限の損失で、全身クリアランスを低減するために、PEG化することができる。本発明は、PEG分子に連結したBDNFポリペプチドを含む組成物(医薬組成物を含む)もまた提供する。いくつかの実施形態では、このPEG分子は、可逆的連結を介してBDNFポリペプチドに連結している。PEG化BDNFポリペプチドの半減期は、非PEG化BDNFポリペプチドの半減期の約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、および約30倍のいずれかを超えるだけ延長することができる。
【0178】
PEGポリマーは、当技術分野で公知の方法を使用して、BDNFポリペプチドの様々の官能基に連結することができる。例えば、Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002);Sakaneら、Pharm.Res.14:1085〜91(1997)を参照されたい。PEGは、このポリペプチドの以下の官能基、すなわちアミノ基、カルボキシル基、修飾または天然N末端、アミン基、およびチオール基に連結することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の表面アミノ酸残基が、PEG分子で修飾される。PEG分子は、様々な大きさ(例えば約2から40KDaの範囲)のことがある。BDNFポリペプチドに連結したPEG分子は、約2000、約10000、約15000、約20000、約25000、約30000、約35000、約40000Daの任意の分子量を有することがある。PEG分子は、一本鎖または分岐鎖のことがある。BDNFポリペプチドにPEGを連結するために、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を使用することができる。その官能基は、BDNFポリペプチド上の利用可能な反応性基の種類に基づいて選択される。ポリペプチドに誘導体を連結する方法は、当技術分野で公知である。Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459から476(2002)。BDNFポリペプチドとPEGとの間の連結は、個体において切断または自然分解でき、半減期を改善するが活性の損失を最小限に抑えることができる連結(可逆的または分解可能な連結)のこともまたある。BDNFポリペプチド上のPEG連結部位は、表面の残基を、PEG反応性基を有するシステインなどのアミノ酸残基に突然変異させることによって創出することもまたできる。
【0179】
BDNFポリペプチドは、組換え手段によって、すなわち、BDNFポリペプチドをコードしている核酸の発現によって産生することができる。組換え細胞培養、および場合により、例えば、変異体の活性のバイオアッセイによるか、またはウサギ抗BDNFポリクローナル抗体(天然由来のBDNF中にも存在する、その変異体の少なくとも1つの免疫エピトープに結合する)を含む免疫アフィニティーカラムへの吸着による細胞培養物からの変異ポリペプチドの精製において。40残基以下のオーダーの小さなペプチド断片は、in vitro法により好都合に作られる。
【0180】
BDNFポリペプチドをコードしているDNAは、宿主細胞においてタンパク質を発現させるための発現ベクターにクローニングすることができる。BDNFポリペプチドをコードしている核酸の例は、米国特許出願公開第2003/0203383号に記載されている。BDNFポリペプチドをその成熟形態でコードしているDNAは、そのアミノ末端で分泌シグナルと連結することができる。この分泌シグナルは、好ましくは、通常はヒト細胞からのBDNFのin vivo分泌を指令するBDNFプレ配列である。しかし、適切な分泌シグナルには、他の動物BDNF由来のシグナル、NGF、NT−2、もしくはNT−3由来のシグナル、ウイルスシグナル、または同種もしくは関係する種の分泌ポリペプチドに由来するシグナルもまた含まれる。任意の宿主細胞(大腸菌など)は、タンパク質またはポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0181】
発現したBDNFポリペプチドは、精製することができる。BDNFポリペプチドは、培地から分泌タンパク質として回収することができるが、分泌シグナルなしに直接発現した場合には、このポリペプチドは、宿主細胞溶解物からもまた回収することができる。当技術分野で公知のタンパク質精製法を用いることができる。BDNFポリペプチドを産生する方法および発現したBDNFポリペプチドを精製する方法は、当技術分野で公知である。BDNFポリペプチドは、当技術分野で公知の方法により、大腸菌に発現させ、再フォールディングさせることができる。成熟ヒトBDNFは、(例えばR&D Systemsから)商業的に得ることもまたできる。
【0182】
NT−4/5ポリペプチドを作製および産生する方法は、BDNFポリペプチドを作製および産生するためにもまた用いることができる。
【0183】
trkBアゴニストの同定
trkBアゴニスト(抗体など)は、以下の方法の1つまたは複数を含めた、当技術分野で認められている方法を用いて同定することができる。例えば、米国特許第5,766,863号および第5,891,650号に記載されているキナーゼ受容体活性化(KIRA)アッセイを用いることができる。このELISA型アッセイは、受容体型タンパク質チロシンキナーゼ(rPTK、例えばtrk受容体)のキナーゼドメインの自己リン酸化を測定することによるキナーゼ活性化の定性または定量測定に、ならびに選択されたrPTKの潜在的アゴニストまたはアンタゴニストの同定および特徴付けに適する。アッセイの第1の段階は、キナーゼ受容体の、本発明の場合はtrkB受容体のキナーゼドメインのリン酸化を伴い、ここで、その受容体は、真核細胞の細胞膜に存在する。受容体は、内因性受容体であってもよいし、受容体をコードしている核酸すなわち受容体構築物を細胞に形質転換してもよい。典型的には、第1の固相(例えば第1のアッセイプレートのウェル)にそのような細胞(通常は哺乳動物細胞系)の実質的に均一な集団を被覆することにより、細胞を固相に接着させる。多くの場合、細胞は接着性であり、その結果、第1の固相に自然に接着する。「受容体構築物」が使用されるならば、それは、通常はキナーゼ受容体とflagポリペプチドとの融合体を含む。flagポリペプチドは、アッセイのELISA部分で、捕捉剤により、多くの場合、捕捉抗体により認識される。次に、接着した細胞を有するウェルに候補アゴニストなどの分析物を加えることにより、チロシンキナーゼ受容体(例えばtrkB受容体)を分析物に曝露(または接触)させる。このアッセイは、関心対象のチロシンキナーゼ受容体(例えばtrkB)に関するアゴニストリガンドの同定を可能にする。分析物に曝露後に、接着細胞は、溶解緩衝液(可溶化洗剤を中に有する)および穏やかな撹拌を使用して可溶化することによって、アッセイのELISA部分に直接供することができる細胞溶解物を放出し、その細胞溶解物は、濃縮する必要も、清澄化する必要もない。
【0184】
このように調製された細胞溶解物は、次に、アッセイのELISA段階に供する準備ができている。ELISA段階の第1ステップとして、第2の固相(通常はELISAマイクロタイタープレートのウェル)に、チロシンキナーゼ受容体または受容体構築物の場合にはflagポリペプチドに特異的に結合する捕捉剤(多くの場合、捕捉抗体)を被覆する。第2の固相の被覆は、捕捉剤が第2の固相に接着するように実施する。捕捉剤は、概してモノクローナル抗体であるが、本明細書の実施例に記載するように、ポリクローナル抗体または他の薬剤もまた使用することができる。得られた細胞溶解物は、次に接着性捕捉剤に曝露するか、またはそれと接触させることにより、その受容体または受容体構築物が第2の固相に接着する(または捕捉される)ようにする。次に、未結合の細胞溶解物を除去し、捕捉された受容体または受容体構築物を残す洗浄ステップを実施する。次に、接着または捕捉された受容体または受容体構築物は、チロシンキナーゼ受容体におけるリン酸化されたチロシン残基を同定する抗ホスホチロシン抗体に曝露するか、またはそれと接触させる。好ましい実施形態では、抗ホスホチロシン抗体は、非放射性呈色試薬の色変化を触媒する酵素に(直接的または間接的に)コンジュゲートされる。したがって、受容体のリン酸化は、試薬のその後の色変化により測定することができる。酵素は、抗ホスホチロシン抗体に直接結合することもできるし、コンジュゲート分子(例えばビオチン)が抗ホスホチロシン抗体にコンジュゲートすることができ、その酵素は、そのコンジュゲート分子を介して続いて抗ホスホチロシン抗体に結合することができる。最終的に、捕捉された受容体または受容体構築物への抗ホスホチロシン抗体の結合は、例えば呈色試薬の色変化により測定する。
【0185】
最初の同定に続いて、候補(例えば抗trkBモノクローナル抗体)のアゴニスト活性は、標的の生物学的活性を試験することが公知であるバイオアッセイによりさらに確認および洗練することができる。例えば、候補がtrkBを作動する能力は、完全長trkBをトランスフェクトしたPC12細胞を使用したPC12神経突起成長アッセイで試験することができる(Jianら、Cell Signal.8:365〜70、1996)。このアッセイは、適切なリガンドによる刺激に応答したラットフェオサイトクローマ(pheocytochroma)細胞(PC12)による神経突起の成長を測定する。これらの細胞は、内因性trkAを発現するため、NGFに応答性である。しかし、これらの細胞は、内因性trkBを発現しないため、trkBアゴニストに対する応答を誘起するために、trkB発現構築物をトランスフェクトされる。トランスフェクトされた細胞を候補と共にインキュベートした後に、神経突起の成長が測定され、例えば細胞の直径の2倍を超える神経突起を有する細胞が計数される。トランスフェクトされたPC12細胞における神経突起の成長を刺激する候補(抗trkB抗体など)は、trkBアゴニスト活性を実証する。
【0186】
trkBの活性化は、胚の発生の特異的段階の様々な特異的神経細胞を使用することによってもまた決定することができる。適切に選択された神経細胞は、生存のためにtrkBの活性化に依存しうるため、これらの神経細胞をin vitroで生存させた後に、trkBの活性化を決定することが可能である。適切な神経細胞の初代培養物に候補を添加することは、その候補がtrkBを活性化するならば、少なくとも数日間これらの神経細胞の生存を導くものである。これは、候補(抗trkB抗体など)がtrkBを活性化する能力を決定させる。この種のアッセイの一例では、E15マウス胚由来の下神経節を解剖し、解離させ、結果として得られた神経細胞を低密度で組織培養皿で平板培養する。次に、候補抗体を培地に添加し、プレートを24〜48時間インキュベートする。この時点の後で、様々な任意の方法により神経細胞の生存を評定する。アゴニストの投与を受けた試料は、典型的には対照抗体の投与を受けた試料よりも生存率の増加を示すものであり、これにより、アゴニストの存在の判定が可能になる。例えば、Buchmanら(1993)Development 118(3):989〜1001を参照されたい。
【0187】
trkBアゴニストは、自然に、またはtrkBをコードしているDNAのトランスフェクション後のいずれかで、trkBを発現している多様な細胞型における下流のシグナル伝達を、それが活性化する能力により同定することができる。このtrkBは、ヒトtrkBまたは他の哺乳動物(げっ歯動物または霊長類など)trkBでありうる。下流のシグナル伝達カスケードは、trkB発現細胞の様々な生化学的または生理学的パラメーター、例えばタンパク質発現レベル、もしくはタンパク質のタンパク質リン酸化レベルに対する変化、または細胞の代謝または生育状態(本明細書に記載する神経細胞の生存および/または神経突起の成長を含める)に対する変化により検出することができる。関連する生化学的または生理学的パラメーターを検出する方法は、当技術分野で公知である。
【0188】
V.キット
本発明は、本方法に使用するためのキットもまた提供する。本発明のキットは、精製されたtrkBアゴニスト(例えば、天然に存在するNT−4/5またはBDNF、および抗trkBアゴニスト抗体)を含む1つまたは複数の容器および本明細書に記載する本発明の任意の方法にしたがって使用するための説明書を包含する。概して、これらの説明書は、本明細書に記載する任意の方法により、悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症などの疾患を治療するためのtrkBアゴニストの投与の説明を含む。このキットは、治療に適した個体を、その個体が疾患および疾患の段階を有するかどうかを同定することに基づいて選択する説明をさらに含むことがある。
【0189】
trkBアゴニストの使用に関係する説明書は、概して意図される治療のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を包含する。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば多回量パッケージ)、または亜単位用量のことがある。本発明のキットに供給される説明書は、典型的にはラベルまたは添付文書(例えばキットに包含される紙片)に書かれた説明書であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気または光保存ディスクに収容される説明書)もまた許容できる。
【0190】
ラベルまたは添付文書は、組成物が、本明細書に記載する疾患(悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症など)を治療するために使用されることを表示する。説明書は、本明細書に記載する任意の方法を実施するために提供することができる。
【0191】
本発明のキットは、適切なパッケージの中にある。適切なパッケージには、非限定的に、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブルパッケージ(例えば密封マイラーまたはポリ袋)などが含まれる。吸入器、経鼻投与装置(例えばアトマイザー)、またはミニポンプなどの点滴装置などの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージもまた考えられている。キットは、滅菌アクセスポートを有することがある(例えば、容器は、静脈用溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺することができるストッパーを有するバイアルのことがある)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有することがある(例えば、容器は、静脈用溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺することができるストッパーを有するバイアルのことがある)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤はtrkBアゴニストである。容器は、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに含むことがある。
【0192】
キットは、緩衝液および解釈上の情報などの追加の構成要素を場合により提供することがある。通常は、キットは、容器と、容器の上もしくは容器に関連したラベルまたは添付文書とを含む。
【0193】
以下の実施例は、非限定的に本発明を例示するために提供される。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
NT−4/5の毎日点滴は、肥満ヒヒに体重増加および過食症を招く
肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から24日目まで1日1回2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。追加の肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から24日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。食物摂取を最初の45日間毎日測定した。動物は、最初の53日間、1週間に1回体重測定し、次に81日目および109日目にそれぞれ続行した。
【0195】
図1に、NT−4/5の毎日点滴が肥満ヒヒの体重に及ぼす効果を示す。図1に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の体重は、81日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、肥満ヒヒに長期であるが可逆的な体重増加を招いたことを示した。
【0196】
図2に、肥満ヒヒにおける食物摂取に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図2に示すように、NT−4/5処置群における摂食は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の摂食は、33日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、肥満ヒヒに可逆的な過食症を招いたことを示した。
【0197】
(実施例2)
NT−4/5の1週間に2回の点滴は、肥満ヒヒに体重増加を招くが、過食症は招かなかった
肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から39日目まで1週間に2回2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。追加の肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から39日目まで1週間に2回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。摂食を最初の55日間毎日測定した。動物は最初の66日間1週間に1回体重測定し、次に94日目および122日目にそれぞれ続行した。
【0198】
図3に、NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満ヒヒの体重に及ぼす効果を示す。図3に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の体重は、94日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の1週間に2回の点滴が、肥満ヒヒに可逆的な体重増加を招いたことを示した。
【0199】
図4に、NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満ヒヒの食物摂取に及ぼす効果を示す。図4に示すように、二元配置ANOVA解析によると、1週間に2回のNT−4/5点滴は、肥満ヒヒの摂食を有意に変化させなかった。データのBonferroni事後検定解析は、NT−4/5群(黒三角)とビヒクル対照群(白四角)の間で対での有意な差を示さなかった。
【0200】
(実施例3)
NT−4/5の毎日点滴は、痩せたカニクイザルに体重増加および過食症を招いた
痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで1週間に1回0.6mg/kgのPEG化NT−4/5(PEG化NT4−G1S)のIV点滴を受けさせた。PEG化NT4/5は、ヒトNT−4/5成熟配列の1位のグリシンからセリンへの突然変異導入、および米国特許出願公開第2005/0209148号およびPCT WO2005/082401の実施例7に記載されている最初のアミノ酸セリンにPEGを付着させることにより作製した。追加の痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。摂食は、最初の50日間毎日測定した。動物は、1週間に1回、最長50日目まで体重測定した。
【0201】
図5に、痩せた雌性カニクイザルにおける体重に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図5に示すように、NT−4/5の毎日処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加したが、PEG化NT−4/5の毎週処置群では有意に増加しなかった。NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群のレベルにまだ完全には戻らなかった。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、痩せたカニクイザルの体重増加を招いたことを示した。
【0202】
図6に、痩せたカニクイザルにおける摂食に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図6に示すように、NT−4/5の毎日処置群における摂食は、ビヒクル群に比べて有意に増加したが、PEG化NT−4/5の毎週処置群では有意に増加せず、NT−4/5処置群における摂食は、38日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、痩せたカニクイザルに可逆的過食症を招いたことを示した。
【0203】
体重にNT−4/5およびPEG化NT−4/5が及ぼす効果を、皮下投与によってもまた試験した。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の皮下(SC)注射を受けさせた。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで1日1回1mg/kgのPEG化NT−4/5のSC注射を受けさせた。追加の痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のSC注射を受けさせた。動物は、最長21日目まで1週間に1回体重測定した。
【0204】
図7に、痩せた雌性カニクイザルにおける体重に及ぼすNT−4/5およびPEG化NT−4/5の毎日のSC注射の効果を示す。図7に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加した。加えて、PEG化NT−4/5処置群の体重もまた、ビヒクル群に比べて有意に増加した。
【0205】
(実施例4)
NT−4/5の毎日の皮下注射は、NZWウサギにおける体重および摂食に有意な効果を示さなかった
5匹の雄性および5匹の雌性ニュージーランド白色(NZW)ウサギ(体重範囲3〜4kg)に、1日目から15日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の皮下(SC)注射を受けさせた。追加の5匹の雄性および5匹の雌性NZWウサギ(体重範囲3〜5kg)に、1日目から15日間まで1日1回ビヒクル(PBS)のSC注射を受けさせた。摂食は、最初の15日間毎日測定した。動物は、最長15日目まで1週間に1回体重測定した。
【0206】
体重または摂食について、NT−4/5処置群およびビヒクル群の間に統計的に有意な差は観察されなかった。NT−4/5処置した雄性ウサギおよびビヒクル雄性ウサギの間、ならびにNT−4/5処置した雌性ウサギおよびビヒクル雄性ウサギの間で比較を行った。
【0207】
(実施例5)
NT−4/5の単回注射は、フェレットに嘔吐を引き起こさなかったが、モルヒネ誘導性嘔吐を低減することができる
嘔吐症に及ぼすNT−4/5の効果を、約1kgの体重を有する成雌性フェレット(Marshall Farm、コネチカット州)で研究した。催吐剤(0.05mg/kgのモルヒネ6−グルクロニド、M6G)を、陽性対照として皮下に与え、NT−4/5を投与する前のベースラインを確立した。漸増する用量のNT−4/5(0.1、1、または10mg/kg)を(各投薬量について)フェレット6匹に単独で皮下注射し、NT−4/5が吐き気または嘔吐などの任意の有害作用を引き起こすことができるかどうかを試験した。加えて、2用量、すなわち1mg/kgおよび10mg/kgのNT−4/5をM6Gの10分前に与え、NT−4/5がM6G誘導性嘔吐症を抑制することができるかどうかを試験した。動物をホームケージに戻し、注射後60分間にわたり潜時、吐き気および嘔吐の回数を観察した。
【0208】
図8に示すように、0.1、1、または10mg/kgのNT−4/5単独の単回注射は、フェレットに嘔吐を引き起こさなかったが、0.05mg/kgのM6Gの単回SC注射は、効果的に催吐症を誘導した。1mg/kgおよび10mg/kgの両方のNT−4/5は、フェレットにおけるM6G誘導性嘔吐を有意に低減した。
【0209】
フェレットにおけるNT−4/5のSC注射の抗嘔吐症効果を担いうるtrkB活性化部位を試験するために、フェレット脳幹におけるtrkBのc−Fos活性化を試験した。雌性フェレット5匹に単回用量10mg/kgのNT−4/5を皮下注射し、続いて5分後に10mg/kgのシスプラチンを静脈内注射した。陰性対照として追加の雌性フェレット4匹に、ビヒクルの単回用量注射に続いて、5分後にシスプラチンの注射を行った。動物は、ペントバルビタールナトリウム(65mg/kg、ip)により1時間後に屠殺し、1L/kgのPBSに続いて1L/kgの4%パラホルムアルデヒド(pH7.3)の心臓内潅流により固定した。脳幹切片は、30umに切り出し、浮遊切片を、(PBS中の)0.1%トリトンX−100に希釈した10%正常ロバ血清(NDS)中で1時間インキュベートし、続いて0.1%トリトンX−100および10%NDSを有するPBS中のヒツジ抗Fos(1:1000、OA−11−824、Genosys Biotechnologies、英国ケンブリッジ)中で、4℃で48時間インキュベートした。切片は、PBS中で洗浄し、次にビオチン化抗ヒツジIgG二次抗体溶液中で室温で60分間インキュベートした。アビジンビオチン複合体技術(Vectastain Eliteアビジンビオチン複合体(ABC)キット、Vector)を用いて呈色させた。簡潔には、切片をABC試薬に入れて室温で60分間、次に3,3−ジアミノベンジジン(0.5mg/ml)を含有する溶液に入れて30〜60秒間インキュベートした。次に、スライド上に脳幹切片を載せ、24時間乾燥させ、50、70、95、および100%エタノール中でそれぞれ4分間脱水し、次にキシレンに入れて透明にし、その後、それらの切片をマウントして検鏡した。クレシルバイオレットで染色された隣接切片における孤束核(NTS)の核および亜核の境界を評定した。c−Fos免疫反応性神経細胞核の数を、最後野、迷走神経後核(DMNX)、ならびに閂より0.5〜1.0mm吻側および0.5mm尾側、ならびに閂での迷走神経背側核(DVC)の吻側尾側の範囲に沿った3レベルでNTSのすべての亜核について両側的に決定した。動物毎レベル毎に3つの切片を計数し、平均した。ANOVA(Prism;GraphPadSoftware、カリフォルニア州サンディエゴ)をTukeyの後検定と共に使用してデータを比較した。NT−4/5処置は、ビヒクルを注射した動物に比べて最後野におけるc−Fos陽性核の数を劇的に増加させた(図9A、P=0.0009、Studentのt検定)。対照的に、NT−4/5処置は、ビヒクルを注射した動物に比べて迷走神経後核におけるc−Fos陽性核の数を有意に減少させた(図9B、P=0.0047、Studentのt検定)。他方で、NT−4/5処置は、NTSの複数の亜核および視床下部の室傍核を含めた他の脳幹核におけるc−Fos陽性核の数を有意には変更しなかった。
【0210】
最後野は、大部分の他の脳領域とは異なり、血液脳関門の外側に位置し、循環している高分子と完全にアクセスできる(最近の例としては、YangおよびFerguson、2003、Regul.Pept.112(1〜3):9〜17参照)。c−Fosの誘導は、BDNFおよびNT−4/5などのtrkBリガンドによるtrkB活性化の公知の最初期事象である(Ipら、1993、J.Neurosci.13(8):3394〜405およびMarshら、1993、J.Neurosci.13(10):4281〜92)。
【0211】
これらのデータは、一緒になって、最後野が、少なくとも部分的に、系統的に送達されたNT−4/5または他のtrkBアゴニストの真の「末梢的にアクセス可能な」標的になることを示唆している。迷走神経後核におけるc−Fosの発現低減(図9B)は、NT−4/5前処置による嘔吐回路の部分的減弱を反映しているおそれがある。
【0212】
(実施例6)
trkBアゴニスト抗体の作製およびスクリーニング
モノクローナル抗TrkBアゴニスト抗体を作製するための免疫処置:Balb/Cマウス1匹に、抗原としてヒトTrkB細胞外ドメイン8ugを定期的なスケジュールで5回注射した。ベクターpTriEx−2 Hygro(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、293細胞にHisタグ付きヒトTrkB細胞外ドメイン(残基31〜430)を発現させた。Ni−NTA樹脂を製造業者(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)の説明通りに使用して、trkB細胞外ドメインを精製した。最初の4回の注射については、ヒトTrkBをRIBIアジュバントシステムおよびミョウバンと混合することによって抗原を調製した。首筋、足底、およびIPにおよそ3日毎に11日間のクールで注射することにより、合計8ugの抗原を与えた。13日目にマウスを安楽死させ、脾臓を取り出した。リンパ球を8653細胞と融合させ、ハイブリドーマクローンを作った。クローンを生育させ、次に、ヒトおよびラット両方のTrkB ELISAを用いたELISAスクリーニングにより、抗TrkB陽性クローンとして選択した。
【0213】
抗trkB抗体のELISAスクリーニング:クローンがヒトおよびラット両方のTrkBと結合する能力について、生育中のハイブリドーマクローンからの上清をスクリーニングした。アッセイは、0.5ug/mlのラットまたはヒトTrkB−Fc融合タンパク質100ulを一晩被覆した96ウェルプレートを用いて行った。各ステップの間に、0.05%Tween−20を含有するPBSを用いて、過剰の試薬をウェルから洗浄して除いた。次に、0.5%BSAを含有するリン酸緩衝溶液(PBS)でプレートをブロックした。上清をプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗マウスFcを添加して、TrkBに結合したマウス抗体に結合させた。次に、テトラメチルベンジジンをHRPについての基質として添加し、上清に存在するマウス抗体の量を検出した。反応を停止させ、450nmで吸光度を読み取ることにより抗体の相対量を定量した。50個の抗体がELISAアッセイで陽性と示された。これらの抗体のうち、5個をさらに試験し、それらがアゴニスト活性を有することが示された。下記表2を参照されたい。
【0214】
KIRAアッセイ:このアッセイは、ヒトTrkBに関する受容体型チロシンキナーゼ活性化を誘導する能力について、ELISAで陽性と見出された抗体をスクリーニングするために使用した。Sadickら(1997)Experimental Cell Research 234(2):354〜61。天然リガンドであるBDNFおよびNT−4/5を用いてみられる活性化に類似して、gDタグ付きヒトTrkBをトランスフェクトされた安定細胞系を利用して、ハイブリドーマクローンからの精製マウス抗体が細胞表面の受容体を活性化する能力について、それらの抗体を試験した。天然リガンドは、TrkB受容体のキナーゼドメインの自己リン酸化を誘導した。細胞を様々な濃度の抗体に曝露した後で、それらの細胞を溶解させ、ELISAを行ってTrkB受容体のリン酸化を検出した。各推定TrkBアゴニストについてEC50(下記表2および図10に示す)を決定し、天然リガンドNT−4/5のEC50と比較した。
【0215】
E15節状神経細胞生存アッセイ:E15の胚から得た下神経節神経細胞はBDNFにより支援されていたため、飽和濃度の神経栄養因子で、生存率は培養48時間まで100%に近かった。BDNFの不在下では、5%未満の神経細胞が48時間まで生存した。したがって、E15結節性神経細胞の生存率は、抗TrkB抗体のアゴニスト活性を評価するための高感度アッセイであり、すなわち、アゴニスト抗体は、E15結節性神経細胞の生存を促進するであろう。
【0216】
定時交配させた妊娠Swiss Webster雌性マウスをCO2吸入により安楽死させた。子宮角を取り出し、胚期E15の胚を抽出した。下神経節を解剖し、次にトリプシン処理し、機械的に解離させ、ポリ−L−オルニチンおよびラミニンで被覆した96ウェルプレートに入れた所定の無血清培地中で、ウェル1個あたり200〜300細胞の密度で平板培養した。抗TrkB抗体のアゴニスト活性は、3回の繰り返しでヒトBDNFに対して用量反応的に評価した。培養48時間後に、Biomek FX液体取扱いワークステーション(Beckman Coulter)で行った自動免疫細胞化学プロトコールに細胞を供した。プロトコールには、固定(4%ホルムアルデヒド、5%スクロース、PBS)、透過処理(PBS中の0.3%トリトンX−100)、非特異的結合部位のブロッキング(5%正常ヤギ血清、0.1%BSA、PBS)、ならびに神経細胞を検出するための一次および二次抗体を用いた連続インキュベーションが含まれた。タンパク質遺伝子産物9.5(PGP9.5、Chemicon)に対するウサギポリクローナル抗体は、樹立された神経細胞表現型マーカーであったが、その抗体を一次抗体として使用した。Alexa Fluor488ヤギ抗ウサギ(Molecular Probes)は、培養物に存在するすべての細胞の核を標識するために、核色素Hoechst33342(Molecular Probes)と一緒に二次試薬として使用した。画像取得および画像解析は、Discovery−1/GenII Imager(Universal Imaging Corporation)で行った。画像は、Alexa Fluor488およびHoechst33342に関する2波長で自動的に取得し、核染色がすべてのウェルに存在することから、画像装置の画像に基づくオートフォーカスシステムに関する基準点として核染色を使用した。適切な目標およびウェル毎に画像化する部位の数は、各ウェルの表面全体に及ぶように選択した。自動化画像解析は、抗PGP9.5抗体を用いた神経細胞の特異的染色に基づいて、培養48時間後に各ウェルに存在する神経細胞数を計数するために設定した。画像の慎重な閾値設定ならびに形態および蛍光強度に基づく選択性フィルターの適用は、ウェル毎に神経細胞の正確な計数を招いた。EC50(下記表2および図11に示す)は、各推定TrkBアゴニスト抗体について決定し、天然リガンドのEC50と比較した。
【0217】
下記表2に、同定された5つの抗trkB抗体ならびにマウス神経細胞の生存に及ぼすそれらの活性およびヒトtrkBに及ぼすリン酸化活性を示す。
【0218】
【表2】
【0219】
マウスへの抗trkBアゴニスト抗体の頭蓋内注射:雄性C57B6繁殖引退マウス(8〜12月齢)をCharles River Laboratories(Hollister施設)から得て、それを、12時間の明暗サイクルで、注射前の少なくとも5日間に食事および水を自由摂取させて、温度/湿度制御環境で順応させた。各マウスをイソフルランで麻酔し、頭蓋の上の部分の毛を刈り込んだ。マウスを脳底固定外科装置(Kopfモデル900)に固定し、麻酔し、媒質にセットした電気加温パッドで保温した。頭蓋の剪毛した部分にベタジンを塗布し、その領域を滅菌した。頭蓋骨の上の耳のちょうど後ろから開始して眼の方向に、約1cm長の小さな正中縦切開を行った。頭蓋を露出させ、頭蓋表面の直径約1cmの円形スペースを綿棒で清浄にし、任意の結合組織を除去した。表面は、30%過酸化水素に浸した綿棒で清浄にし、ブレグマを露出させた。頭蓋の深さを測定するプローブとしてドリルのチップを使用して、頭蓋骨を水平垂直方向に調整して、それがドリル処置前のレベルであったことを保証した。外側0.5mmに比べた内側0.5mmからの、および後側0.5mmに比べた前側0.5mmからの(ブレグマで0に合わせた)深さの偏差は、±0.05mmの差に入るように最小化した。マウス脳アトラス(Franklin、K.B.J.& Paxinos,G.、The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates、Academic Press、サンディエゴ、1997)によると、単回外側視床下部内注射の座標は以下の通りであった:ブレグマから1.30mm後側;正中から−0.5mm、(ブレグマでの)頭蓋表面から深さ5.70mm。脳と接触するのを避けながら頭蓋を通してドリルで小さな穴を開けた。ドリルを、Hamiltonシリンジ(モデル84851)に取り付けた斜端26ゲージ針に取り換え、同じ座標に戻った。外側視床下部に化合物2ulを2分間にわたり徐々に増やして注射した。注射後30秒間針をこの位置に保ち、次に1mm上げた。もう30秒間経った後で、針を1mm上げた。30秒後に、針を完全に取り出した。次に、切開を閉じ、2〜9mmの創傷クリップ(Autoclip、Braintree Scientific,Inc.、マサチューセッツ州ブレーントリー)を用いて閉じ合わせた。0日目に注射を行った。体重および摂食を毎日15日目までモニターした。
【0220】
図12Aおよび12Bに示すように、特定の用量での抗体18H6および36D1の頭蓋内注射は、マウスにおける体重および摂食を有意に低減した。特定の用量で与えた対照IgG抗体および23B8は、摂食にも体重にも有意には影響しなかった。統計解析には、二元配置ANOVAをBonferroni事後検定と共に用いた。これは、CNSに直接注射した場合に、抗trkBアゴニスト抗体が、体重および摂食に対して、天然trkBアゴニストであるNT−4/5に質的に類似した効果を有することを示している。
【0221】
(実施例7)
trkBアゴニスト抗体の末梢注射は、サルにおいて摂食および体重の増加を招いた
痩せた成雌性カニクイザル(ベースラインで体重3〜5kg)に、1週間に2回マウスモノクローナルアゴニスト抗体38B8の静脈内注射を受けさせ、別の動物3匹にビヒクルの注射を受けさせた。摂食を毎日モニターし、体重を毎週モニターした。PRISM(GraphPad Software Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて統計解析を行った。すべてのデータおよびグラフは、平均±平均の標準誤差(SEM)で表現した。データはDunnet後検定と共に二次元ANOVAにより解析した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【0222】
5mg/kgのtrkBアゴニスト抗体38B8の1週間に2回の注射で処置したサルは、2週間以内に累積摂食の40%増加(図13A)および体重の10%増加(図13B)を示し、これは、trkBチロシンキナーゼ受容体の特異的活性化が摂食の増加、カロリー摂取の増加、および体重増加を仲介することを示している。
【0223】
本明細書に記載する実施例および実施形態は、単に例示目的であり、それに照らして当業者に様々な修飾または変化が示唆されるものであり、本出願の精神および範囲内に含まれるものとすることは、理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望まれない体重減少、摂食障害、またはオピオイド誘導性嘔吐症の治療および/または予防におけるtrkBアゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロトロフィンは、小型ホモ二量体タンパク質のファミリーであり、このタンパク質は、神経系の発生および維持に重要な役割を果たす。ニューロトロフィンファミリーのメンバーには、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT−3)、ニューロトロフィン4/5(NT−4/5)、ニューロトロフィン6(NT−6)、およびニューロトロフィン7(NT−7)が含まれる。ニューロトロフィンは、他のポリペプチド性成長因子に類似して、細胞表面受容体と相互作用することによりその標的細胞に影響する。現在分かっていることによると、2種類の膜貫通糖タンパク質が、ニューロトロフィンに対する受容体として作用する。ニューロトロフィン応答性神経細胞は、2×10−9MのKDでNGF、BDNF、NT−3、およびNT−4/5と結合する、p75NTRまたはp75としても公知である共通の低分子量(65〜80kDa)低親和性受容体(LNGFR)と、trkファミリーの受容体型チロシンキナーゼのメンバーである、高分子量(130〜150kDa)高親和性(10−11M範囲のKD)受容体とをもつ。Trk受容体ファミリーの同定されたメンバーは、trkA、trkB、およびtrkCである。
【0003】
BDNFおよびNT−4/5は、両方共に類似の親和性でtrkBおよびp75NTR受容体に結合する。しかし、NT−4/5突然変異マウスおよびBDNF突然変異マウスは、極めて対照的な表現型を示す。NT−4/5−/−マウスは生存可能で、繁殖性であり、軽度の感覚欠損を有するだけであるが、BDNF−/−マウスは、重症の神経細胞欠損および行動症状を有して、出生初期に死亡する。Fanら、Nat.Neurosci.3(4):350〜7、2000;Liuら、Nature 375:238〜241、1995;Conoverら、Nature 375:235〜238、1995;Ernforsら、Nature 368:147〜150、1994;Jonesら、Cell 76:989〜999、1994。いくつかの刊行物は、NT−4/5およびBDNFが、in vivoで別個の生物学的活性を有すると報告し、この別個の活性が、NT−4/5およびBDNFによるtrkB受容体およびその下流のシグナル伝達経路の差次的活性化に部分的に起因するおそれがあると示唆している。Fanら、Nat.Neurosci.3(4):350〜7、2000;Minichielloら、Neuron.21:335〜45、1998;Wirthら、Development.130(23):5827〜38、2003;Lopezら、発表番号38.6、2003年要旨集、Society for Neuroscience。
【0004】
BDNFおよびNT−4/5は、C57db/dbマウスなどのII型糖尿病モデル動物において血中グルコースおよび血中脂質の制御活性ならびに抗肥満活性を有することが示された。米国特許第6,391,312号;Itakuraら、Metabolism 49:129〜33(2000);米国特許出願公開第2005/0209148号;WO2005/082401。BDNFは、高脂肪食を給餌されたマウスにおいて抗肥満活性およびレプチン抵抗性の回復活性を有することもまた示された。米国特許出願公開第2003/0036512号。Kernieらは、BDNF遺伝子の発現が低減したヘテロ接合性BDNFノックアウトマウスにおいて、BDNFまたはNT−4/5が摂食行動および肥満を一時的に後退させることができたと報告した。Kernieら、EMBO J.19(6):1290〜300、2000。ヒトtrkBに対するY722C置換というde novoミスセンス突然変異が、受容体のリン酸化およびMAPキナーゼへのシグナル伝達の障害を招くこと、ならびにこの突然変異が過食性肥満という独特なヒト症状を招くと思われることが報告された。Yeoら、Nat.Neurosci.7:1187〜1189(2004)。
【0005】
肥満を有する人々および神経性食欲不振を有する患者におけるBDNFの循環レベルが研究された。Monteleoneら、Psychosomatic Medicine 66:744〜748、2004;Nakazatoら、Biol.Psychiatry 54:485〜490、2003。マウスにおけるBDNF産生障害は摂食増加、エネルギー消費の低減、および体重増加と関連したという研究成果に基づく推測とは反対に、循環BDNFは、神経性食欲不振の患者では有意に低減し、非肥満健常対照に比べて肥満対象で有意に増加する。神経性食欲不振では、BDNF低減は、摂食を促進することにより、負のバランスを導く患者の行動変更を相殺しようとし、肥満では、BDNFのレベル増加は、エネルギー消費を刺激し、食物摂取を減少させることにより、正のエネルギー不均衡状態に対抗する適応メカニズムとなりうると仮定されている。Monteleoneら、Psychosomatic Medicine 66:744〜748、2004。
【0006】
本明細書に引用するすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に、すべての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれていることが示されたかの如く、それと同程度に、そのようにこれによって参照により組み込まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、trkB選択的アゴニストを含めたtrkBアゴニストの末梢投与により、体重および/または摂食を増加させる方法を提供する。これらの方法は、望まれない体重減少(悪液質または加齢に伴うものなど)、摂食障害(神経性食欲不振など)、およびオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防するために用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、霊長類における体重を増加させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、霊長類における摂食を増加させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、霊長類における悪液質を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、霊長類における悪液質を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、霊長類における望まれない体重減少を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、霊長類における神経性食欲不振を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、霊長類における神経性食欲不振を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その霊長類に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、個体におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防する方法を提供し、その方法は、その個体に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、個体におけるオピオイド誘導性嘔吐症を回復させるか、その発生率を低減するか、またはその発生もしくは進行を遅延させる方法を提供し、その方法は、その個体に有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む。
【0018】
trkBアゴニストは末梢投与される。例えば、trkBアゴニストは、以下の手段、すなわち静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腸管外、吸入経由、動脈内、心臓内、脳室内、および経皮的のうちの1つにより投与することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、その個体は霊長類である。いくつかの実施形態では、その霊長類はヒトである。
【0020】
本明細書に記載する方法に使用することができるtrkBアゴニストには、非限定的に、BDNFポリペプチド、NT−4/5ポリペプチド、および抗trkBアゴニスト抗体が含まれる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストはヒトNT−4/5である。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストはヒトBDNFである。他の実施形態では、trkBアゴニストは、trkB選択的な抗trkBアゴニスト抗体を含めた抗trkBアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、抗trkB抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0021】
別の態様では、本発明は、trkB選択的アゴニストを含めた有効量のtrkBアゴニストと、薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、本明細書に記載する任意の疾患を治療または予防するために使用することができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載する任意の方法に使用するためのtrkBアゴニストを含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、容器と、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせた有効量のtrkBアゴニストを含む組成物と、本明細書に記載する任意の方法にその組成物を使用するための説明書とを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、受容体と特異的に結合してその受容体を活性化するアゴニストモノクローナル抗体を作製する方法もまた提供し、その方法は、(a)その受容体の細胞外ドメインを含む免疫原性分子を宿主哺乳動物に約15日以内に少なくとも2回注射することにより、その哺乳動物を免疫処置するステップを含む。この方法は、免疫処置した哺乳動物由来のリンパ球を不死化細胞系と融合させて、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生させるステップ、モノクローナル抗体を分泌させる条件でハイブリドーマを培養するステップ、および受容体と結合してそれを活性化させるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選択するステップをさらに含むことがある。いくつかの実施形態では、受容体は、活性化のために二量体化を必要とする受容体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、望まれない体重減少(悪液質または加齢に関連するものなど)、摂食障害(神経性食欲不振など)、およびオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防する方法を提供し、その方法は、個体または対象にtrkBアゴニストを投与することを含む。
【0025】
I.一般的な技術
本発明の実施は、特に示さない限り、当技術分野の技術の範囲内に入る分子生物学(組換え技術を含める)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技術を使用する。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献に十分に説明されている。
【0026】
II.定義
本明細書に使用する「治療」は、有益な、または所望の臨床的結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に、以下、すなわち疾患に関連する1つまたは複数の症状の改善、重症度の軽減、緩和のうちの1つまたは複数が含まれる。例えば、悪液質および/または望まれない体重減少の治療について、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に以下、すなわち体重減少、脂肪分解、筋肉および内臓タンパク質の減少、食欲不振(食欲減退)、摂食/カロリー摂取の低減、慢性嘔気、疲労、および脱力のうちの任意の1つまたは複数の任意の改善、重症度の軽減、および/または緩和が含まれる。神経性食欲不振の治療のために、有益な、または所望の臨床的結果には、非限定的に、以下、すなわち食欲の改善、食物に対する恨みの減弱、体重増、正常な栄養状態、水分および電解質バランスの維持、年齢および身長に対して正常な体重の維持、入院の回数および期間の低減、ならびに死亡リスクの低減のうちの任意の1つまたは複数が含まれる。オピオイド誘導性嘔吐症の治療のために、有益または所望の臨床的結果には、非限定的に、悪心および/または嘔吐の重症度の軽減および/または期間の短縮によって、オピオイドに誘導される鎮痛の完全な臨床的利益を可能にすることが含まれる。
【0027】
疾患またはその疾患の1つもしくは複数の症状を「回復させること」とは、trkBアゴニストを投与しないことに比べて疾患に関連する1つまたは複数の症状を軽減または改善することを意味する。「回復させること」には、症状の期間の短縮または低減もまた含まれる。
【0028】
疾患の「発生率を低減すること」は、重症度の低減(この状態のために一般に使用される他の薬物および/または治療法(への例えば曝露)の必要性および/または量の低減が含まれることがある)、期間の低減、および/または回数低減(例えば個体における次の偶発性発作までの時間の遅延または増加を含める)のうちの任意のものを意味する。当業者に理解されるように、個体は、治療に対するその応答に関して変動することがあり、それとして、例えば個体における疾患の発生率を低減する方法は、trkBアゴニストの投与が、特定の個体における発生率のそのような低減を引き起こす見込みがありうるという合理的な期待に基づいてtrkBアゴニストを投与することを反映している。
【0029】
本明細書に使用する、疾患の発生を「遅延させること」は、疾患の進行を、延期、妨害、減速、遅滞、安定化、および/または延期することを意味する。この遅延は、その疾患の履歴および/または治療されている個体に応じて様々な時間でありうる。当業者に明らかなように、十分または有意な遅延は、その個体が疾患(例えば、悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症)を発生しない点で事実上予防を包含することがある。症状の発生を「遅延させる」方法は、この方法を使用しないことに比べた場合に、所与の時間枠で症状の発生の確率を低減し、かつ/または所与の時間枠で症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な数の対象を使用した臨床試験に基づく。
【0030】
疾患の「発生」または「進行」は、障害の最初の出現および/またはその後の進行を意味する。疾患の発生は、検出可能なことがあり、そのため当技術分野で十分に公知の標準的な臨床技術を用いて評定されることがある。しかし、発生は、検出不能でありうる進行もまた表す。本発明の目的のために、発生または進行は、症状の生物学的経過を表す。「発生」には、出現、再発、および発症が含まれる。本明細書に使用する、疾患の「発症」または「出現」には、最初の発症および/または再発が含まれる。
【0031】
本明細書に使用する、薬物、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、有益な、または所望の結果をもたらすために十分な量である。予防的使用に関して、有益な、または所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症状、その合併症、ならびに疾患の発生時に現れる中間の病理学的表現型を含めた疾患のリスクを排除もしくは低減すること、重症度を軽減すること、または始まりを遅延させることなどの結果が含まれる。治療的使用に関して、有益な、または所望の結果には、疾患の攻撃の強度、期間、もしくは回数を低減すること、ならびに疾患の合併症および疾患の発生時に現れる中間の病理学的表現型を含めた(生化学的、組織学的、および/または行動的)疾患に起因する1つもしくは複数の症状を減少させること、その疾患を患っている者の生活の質を上げること、その疾患を治療するために必要な他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を高めること、および/または患者の疾患の進行を遅延させることなどの臨床結果が含まれる。有効投与量は、1回または複数回の投与で施すことができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、直接的または間接的のいずれかで予防または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的状況で理解されているように、有効投与量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と共に達成されることもあるし、達成されないこともある。したがって、「有効投与量」は、1つまたは複数の治療剤を投与する状況で考慮することができ、1種または複数の他の薬剤と共に、所望の結果が達成できるか、または達成されるならば、単一の薬剤を、有効量で与えることを考慮することができる。
【0032】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物には、非限定的に、農用動物、スポーツ用の動物、霊長類(ヒトを含める)、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、およびラットもまた含まれる。
【0033】
「trkBアゴニスト」は、trkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化することができる薬剤を表す。例えばアゴニストは、trkB受容体の細胞外ドメインに結合することがあり、それによって受容体の二量体化を引き起こし、細胞内触媒性キナーゼドメインの活性化を招くことがある。その結果、これは、in vitroおよび/またはin vivoで受容体を発現している細胞の生育および/または分化の刺激を招くことがある。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、trkBに結合してtrkBの生物学的活性を活性化する。
【0034】
本発明のtrkBアゴニストと共に使用する場合の「生物学的活性」は、概してtrkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化する能力を有することを表す。本明細書に使用する「生物学的活性」は、trkBの天然由来のリガンドであるNT−4/5および/またはBDNFがtrkB発現細胞に及ぼす作用により誘導されるエフェクター機能と共通する1つまたは複数のエフェクター機能を包含する。限定することなく、生物学的活性には、以下、すなわちtrkBに結合し、それを活性化する能力、trkB受容体の二量体化を促進する能力、細胞(損傷した細胞を含める)、特に末梢(交感、感覚、運動、および腸管)神経細胞、および中枢(脳および脊髄)神経細胞を含めたin vitroまたはin vivo神経細胞、ならびに非神経細胞、例えば末梢血白血球、内皮細胞、および血管平滑筋細胞の発生、生存、機能、維持、および/または再生を促進する能力のうちの任意の1つまたは複数が含まれる。特に好ましい生物学的活性は、末梢に投与した場合に、霊長類における体重および/もしくは摂食を増加させる能力、霊長類における悪液質および神経性食欲不振の1つもしくは複数の症状を治療(予防を含める)する能力、ならびに/または哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症の1つもしくは複数の症状を治療(予防を含める)する能力である。
【0035】
「アゴニスト抗trkB抗体」(相互交換可能に「抗trkBアゴニスト抗体」と称される)は、trkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される下流の経路に結合し、それを活性化することができる抗体を表す。例えば、アゴニスト抗体は、trkB受容体の細胞外ドメインに結合することによって、その受容体の二量体化を引き起こし、細胞内触媒性キナーゼドメインの活性化を招くことができる。その結果、これは、受容体をin vitroおよび/またはin vivoで発現している細胞の生育および/または分化の刺激を招くことができる。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗trkB抗体は、trkBに結合し、trkBの生物学的活性を活性化する。
【0036】
本明細書に使用する「末梢投与」または「末梢に投与される」は、中枢神経系(CNS)または血液脳関門(BBB)の外側から対象に薬剤を導入することを表す。末梢投与は、脊椎または脳への直接投与以外の任意の投与経路を包含する。末梢投与は局所または全身性でありうる。
【0037】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に局在する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書に使用するとき、この用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体の部分を含む融合タンパク質(ドメイン抗体など)、および抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の他の任意の修正された立体配置もまた包含する。抗体には、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、その抗体は任意の特定のクラスである必要はない。抗体重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り付けることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。これらの異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニットの構造および三次元立体配置は、十分に公知である。
【0038】
本明細書に使用する「モノクローナル抗体」は、実質的に相同な抗体集団から得られた抗体を表し、すなわち、その集団を構成する個別の抗体は、少量存在しうる、可能な、天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対しており、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体が典型的には含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。修飾語「ポリクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法により抗体を産生することを必要とするとみなしてはならない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作ることができるし、米国特許第4,816,567号に記載されたような組換えDNA法により作ることもできる。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら、1990、Nature、348:552〜554に記載された技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離することもまたできる。
【0039】
本明細書に使用する「ヒト化」抗体は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小の配列を含有するその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を表す。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および生物学的活性を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にもみられないが、抗体の性能をさらに洗練および最適化するために含められた残基を含むことがある。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含むものである。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の少なくとも部分もまた含むものである。抗体は、WO99/58572に記載されているように修飾されたFc領域を有することがある。他の形態のヒト化抗体は、本来の抗体に関して変更されている1つまたは複数(1、2、3、4、5、および6つ)のCDRを有し、そのCDRは、本来の抗体由来の1つまたは複数のCDR「から誘導された」1つまたは複数のCDRとも称される。
【0040】
本明細書に使用する、「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、かつ/または当技術分野で公知であるか、もしくは本明細書に開示するヒト抗体を作るための任意の技術を使用して作られた抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。そのような一例は、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。一実施形態では、ヒト抗体は、ファージライブラリーがヒト抗体を発現する場合には、そのファージライブラリーから選択される(Vaughanら、1996、Nature Biotechnology、14:309〜314;Sheetsら、1998、PNAS、(USA)95:6157〜6162;HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381;Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581)。ヒト抗体は、トランスジェニック動物に、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによってもまた作ることができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生する不死化ヒトBリンパ球により調製することができる(そのようなBリンパ球は、個体から回収することもできるし、in vitroで免疫処置されていることもある)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boernerら、1991、J.Immunol.、147(1):86〜95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0041】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を、単独または組合せのいずれかで表す。重鎖および軽鎖の可変領域は、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)により接続された4つのフレームワーク領域(FR)からそれぞれなる。各鎖のCDRは、FRによって近接して繋がり合って、もう一方の鎖由来のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するために、(1)種相互の配列変動性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、(第5版、1991、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ))、および(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikaniら(1997)J.Molec.Biol.273:927〜948))の少なくとも2つの技術がある。本明細書に使用するCDRは、一方のアプローチまたは両方のアプローチの組合せのいずれかによって規定されるCDRを表すことがある。
【0042】
抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を、単独または組合せのいずれかで表す。
【0043】
抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」か、または「特異的に結合する」(本明細書において相互交換可能に使用される)エピトープは、当技術分野で十分に理解された用語であり、そのような特異的または優先的結合を決定する方法もまた、当技術分野で十分に公知である。分子が代替の細胞または物質と反応または関連するよりも、高頻度に、迅速に、長い継続時間で、かつ/または大きな親和性で、その分子が特定の細胞または物質と反応または関連するならば、その分子は、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合するよりも、大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い継続時間で、その抗体が結合するならば、その抗体は、標的に「特異的に」結合または「優先的に」結合または「選択的に」結合する。例えば、trkBエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、それが他のtrkBエピトープまたは非trkBエピトープに結合するよりも、大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い継続時間で、このエピトープと結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合することもあるし、結合しないこともあることもまた理解されている。それとして、trkBへの抗体の「特異的」結合または「優先的」結合または「選択的」結合は、必ずしも排他的結合を必要としない(がそれを含むこともある)。必然的ではなく概して、選択的trkB結合の言及は、優先的結合(例えば、他の受容体に比べてtrkBに対して少なくとも3分の1、5分の1、または好ましくは少なくとも10分の1もしくは100分の1の濃度のIC50を有する結合)を意味する。
【0044】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然由来配列のFc領域または変異Fc領域のことがある。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動するおそれがあるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常は位置Cys226のアミノ酸残基またはPro230からそのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域の残基の付番は、KabatにおけるようなEUインデックスの付番である。Kabatら、Sequences of Proteins of Imunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ、1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に2つの定常ドメインであるCH2およびCH3を含む。
【0045】
本明細書に使用する「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するものである。好ましいFcRは、天然由来配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するFcR(γ受容体)であり、それには、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcγRIVサブクラスの受容体が、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングされた形態を含めて含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制受容体」)が含まれ、これらの受容体は、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92;Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34;de Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41;Nimmerjahnら、2005、Immunity 23:2〜4に総説されている。「FcR」には、胎児への母体IgGの輸送を担う新生児型受容体であるFcRnもまた含まれる。(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587;およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0046】
「補体依存性細胞傷害作用」および「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを表す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体を形成した分子(例えば抗体)に補体系第1成分(C1q)が結合することによって開始する。補体活性化を評定するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)に記載されているCDCアッセイを行うことができる。
【0047】
「機能的Fc領域」は、天然由来配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をもつ。「エフェクター機能」の例には、C1qの結合、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体の結合、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、一般にFc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と結合していることが必要であり、そのような抗体エフェクター機能を評価するために当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評定することができる。
【0048】
「天然由来配列のFc領域」は、自然界でみられるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然由来配列のFc領域のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含むが、天然由来配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をなお保持する。好ましくは、変異Fc領域は、天然由来配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域に比べて、天然由来配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1個から約10個のアミノ酸置換、および好ましくは約1個から約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異Fc領域は、天然由来配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくはそれと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性をもつ。
【0049】
本明細書に使用する「抗体依存性細胞性細胞傷害作用」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現している非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応を表す。関心対象の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているアッセイのようなin vitro ADCCアッセイを用いて評定することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいはまたは追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、例えばClynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656に開示されているモデルのような動物モデルでin vivo評定することができる。
【0050】
本明細書に使用する「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、活性成分と組み合わせた場合に、その成分に生物学的活性を保持させ、対象の免疫系と反応しない任意の物質が含まれる。例には、非限定的に、リン酸緩衝溶液、水、油/水型乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの任意の標準的な医薬担体が含まれる。エアロゾルまたは腸管外投与用の好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液または普通の(0.9%)生理食塩水である。そのような担体を含む組成物は、十分に公知の従来法により製剤される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing、2000参照)。
【0051】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において相互交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸ポリマーを表す。このポリマーは、直鎖または分岐であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、非アミノ酸により分断されてもよい。この用語は、天然に修飾された、または介入により、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識構成要素とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは修飾により修飾されたアミノ酸ポリマーもまた包含する。同様にこの定義に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば非天然アミノ酸などを含める)を含有するポリペプチド、および当技術分野で公知の他の修飾である。本発明のポリペプチドが抗体に基づくことから、そのポリペプチドは、一本鎖または関連した鎖として存在することがあることが理解されている。
【0052】
本明細書において相互交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを表し、これには、DNAおよびRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによりポリマーに組み込むことができる任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそのアナログなどの修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。存在するならば、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの集合前または集合後に加えられてよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素により分断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化構成要素とのコンジュゲーションによるなどのポリマー化後にさらに修飾することができる。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドのアナログへの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結を有するもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電連結を有するものなど(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分を含有するもの、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなど)など、介入物を有するもの(例えばアクリジン、ソラーレンなど)、キレート剤を含有するもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属など)、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結を有するものなど(例えばα−アノマー核酸など)、および未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖に通例存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホネート基、ホスフェート基に置き換えるか、標準的な保護基により保護するか、または活性化して追加のヌクレオチドへの追加の連結を調製することができるし、固体支持体にコンジュゲートすることもできる。5’および3’末端のOHは、リン酸化することもできるし、アミンまたは1から20個の炭素原子の有機キャップ基部分と置換することができる。他のヒドロキシルもまた標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドは、例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、□−アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシドアナログを含めた、当技術分野で一般に公知の、アナログ形態のリボースまたはデオキシリボース糖もまた含有することがある。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替連結基に置き換えることができる。これらの代替連結基には、非限定的に、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれ、式中、各RまたはR’は、独立してHであるか、またはエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含有してもよい置換または未置換アルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチド中のすべての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含めた本明細書に言及するすべてのポリヌクレオチドにあてはまる。
【0053】
本明細書に使用する「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋な(すなわち混入物を有さない)、さらに好ましくは少なくとも90%純粋な、さらに好ましくは少なくとも95%純粋な、さらに好ましくは少なくとも98%純粋な、さらに好ましくは少なくとも99%純粋な物質を表す。
【0054】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込み用のベクターについてのレシピエントでありうるか、またはレシピエントであった個別の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、その子孫は、自然突然変異、偶発的突然変異、または計画的突然変異が原因で、本来の親細胞と(形態またはゲノムDNA相補体が)必ずしも完全には同一ではないことがある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをin vivoでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0055】
本明細書に使用する「ベクター」は、宿主細胞に関心対象の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達し、好ましくは発現させることができる構築物を意味する。ベクターの例には、非限定的に、ウイルスベクター、裸のDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン凝縮剤と関連したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、および産生細胞などのある種の真核細胞が含まれる。
【0056】
本明細書に使用する「発現制御配列」は、核酸の転写を指令する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成性もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーでありうる。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結している。
【0057】
本明細書に使用する用語「kon」は、抗原への抗体の会合についての速度定数を表すことを意図する。
【0058】
本明細書に使用する用語「koff」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を表すことを意図する。
【0059】
本明細書に使用する用語「KD」は、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を表すことを意図する。
【0060】
本明細書に使用する単数形「a」、「an」、および「the」には、別に示さない限り複数の参照が含まれる。
【0061】
III.本発明の方法
本発明は、trkBアゴニストの末梢投与により体重および/または摂食を増加させる方法を包含する。これらの方法は、霊長類における望まれない体重減少(悪液質など)および摂食障害(神経性食欲不振など)、ならびに哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療または予防するために用いることができる。本発明は、有効量の1つまたは複数のtrkBアゴニストを、それを必要とする個体に末梢投与することを伴う(様々な表示および態様は本明細書に記載する)。
【0062】
本明細書に記載するすべての方法に関して、trkBアゴニストの参照には、1つまたは複数のこれらの薬剤を含む組成物もまた含まれる。これらの組成物は、当技術分野で十分に公知の緩衝液を含めた、薬学的に許容できる賦形剤などの適切な賦形剤をさらに含むことがある。本発明は、単独で、または他の従来の治療方法と組み合わせて使用することができる。
【0063】
本明細書に記載する方法により治療および/または予防することができる悪液質は、以下、すなわち慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、慢性心不全(CHF)、加齢、癌、およびAIDSのうちの1つまたは複数によって引き起こされ、かつ/またはそれに関連することがある。
【0064】
いくつかの実施形態では、悪液質を治療されたか、または望まれない体重減少を治療されたヒト患者は、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20.0kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックス(BMI、メートル単位の身長の二乗あたりの体重(kg/m2)として計算される)を有する。いくつかの実施形態では、悪液質を治療されたか、または望まれない体重減少を治療されたヒト患者は、標準推奨1日摂取レベルまたは発病前レベルの約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%未満の1日摂食量を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法により神経性食欲不振を治療されるヒト患者は、約18.5kg/m2、約17.5kg/m2、および約16.5kg/m2のいずれか未満のBMIを有する。いくつかの実施形態では、神経性食欲不振を治療されたヒト患者は、標準推奨1日摂食レベルまたは発病前レベルの約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%未満の1日摂食量を有する。
【0066】
trkBアゴニストは末梢投与される。たとえ薬剤が末梢投与されても、わずかな率の薬剤は血液脳関門を通過して、薬剤の性質に応じて中枢神経系への送達を招くおそれがあることが理解されている。いくつかの実施形態では、末梢投与されたtrkBアゴニスト(例えばtrkBアゴニスト抗体)の約1%、約0.5%、約0.25%、および約0.1%のいずれか未満が、CNSにアクセスする。
【0067】
trkBアゴニストは、任意の適切な末梢経路により個体に投与することができる。本明細書に記載する実施例が、利用できる技術の限定ではなく例示を意図することは、当業者に明らかなはずである。したがって、いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、例えばボーラスまたは一定時間にわたる連続点滴のような静脈内投与、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、舌下、滑膜内、吹入経由、経口、吸入、または局所経路によるものなどの公知の方法により個体に投与される。投与は、全身的(例えば静脈内投与)または局所的でありうる。ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーを含めた、液体製剤用の市販のネブライザーが投与に有用である。液体製剤を直接噴霧することもできるし、凍結乾燥粉末を再構成後に噴霧することもできる。あるいは、trkBアゴニストは、フッ化炭素製剤および定量吸入器を使用してエアロゾル化することができるし、凍結乾燥して粉砕した粉末として吸入することができる。
【0068】
trkBアゴニストは、CNSまたは血液脳関門の外側に部位特異的または標的化局所送達技術により投与することができる。部位特異的または標的化局所送達技術の例には、trkBアゴニストの様々な植込み可能なデポー供給源、または点滴カテーテル、留置カテーテル、もしくはニードルカテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ(adventitial wraps)、シャントおよびステントもしくは他の埋込み可能な装置、部位特異的担体、直接注射、または直接適用が含まれる。例えば、PCT公開WO00/53211および米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0069】
trkBアゴニストの様々な製剤は、投与のために使用することができる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、混ぜ物なしに(neat)投与することができる。他の実施形態では、trkBアゴニストおよび薬学的に許容できる賦形剤が投与され、それらは様々な製剤のことがある。薬学的に許容できる賦形剤は、当技術分野において公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする相対的に不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態またはコンシステンシーを与えることができるし、希釈剤として作用することもできる。適切な賦形剤には、非限定的に、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、封入剤、緩衝剤、ならびに皮膚透過促進剤が含まれる。腸管外および非腸管外薬物送達のための賦形剤および製剤は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)に述べられている。概して、これらの薬剤は、注射による投与(例えば腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)のために製剤されるが、他の形態(例えば経口、粘膜、経皮、吸入など)の投与を使用することもまたできる。
【0070】
特定の投薬方式、すなわち用量、タイミング、および繰り返しは、特定の個体ならびにその個体の病歴、治療する特定の疾患(例えば、悪液質、望まれない体重減少、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症)、および特定のtrkBアゴニストに依存するものである。概して、以下の任意の用量のtrkBアゴニスト(例えば、NT−4/5、BDNF、および抗trkBアゴニスト抗体)を使用することができ、少なくとも約50mg/kg体重、少なくとも約20mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約2mg/kg体重、少なくとも約1mg/kg体重、少なくとも約750μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、少なくとも約250ug/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約10ug/kg体重、少なくとも約1μg/kg体重、またはそれを超える用量が投与される。半減期などの経験的考察は、一般に投与量の決定に寄与するものである。数日間以上にわたる繰り返し投与について、治療は、疾患の症状の所望の抑制が起こるか、または十分な治療レベルが達成されるまで、状態に応じて継続される。例えば、1週間に1から5回の投薬が考えられている。他の投薬方式には、1日に最大1回、1週間に1から5回、またはそれよりも回数の少ない方式が含まれる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、1週間に約1回、1カ月に約1から4回投与される。段階投与量を用いた、2日から最大7日、または14日までもの間隔の間欠投薬方式を用いることができる。いくつかの実施形態では、治療は、毎日投薬で開始して、その後毎週または毎月までもの投薬に変えることができる。この治療法の進行は、従来の技術およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0071】
一部の個体では、1回を超える投与が必要なことがある。投与回数は、治療クールにわたり決定および調整することができる。例えば、投与回数は、治療する疾患の種類および重症度、その薬剤が予防目的それとも治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の臨床歴およびその薬剤に対する応答、ならびに担当医師の判断に基づき決定または調整することができる。典型的には、臨床家は、所望の結果を達成する投与量に達するまでtrkBアゴニストを投与するものである。場合によっては、trkBアゴニストの持続性連続放出製剤が適切なことがある。持続性放出を達成するための様々な製剤および装置が、当技術分野で公知である。例えば、trkBアゴニストは、機械的ポンプにより投与することができるし、持続放出または低速放出用のマトリックス床に包埋することができる。
【0072】
一実施形態では、1回または複数回の投与を与えられた個体におけるtrkBアゴニストについての投与量は、経験的に決定することができる。個体に漸増する投与量のtrkBアゴニストを与える。trkBアゴニストの有効性を評定するために、病状のマーカーをモニターすることができる。個体、疾患(悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症など)の段階、ならびに過去の治療および使用中の同時治療に応じて投与量が変動するものであることは、当業者に明らかなものである。
【0073】
本発明の方法によるtrkBアゴニストの投与は、例えばレシピエントの生理的状態、投与の目的が治療であるかそれとも予防であるか、および当業者に公知の他の要因に応じて連続的または間欠的でありうる。trkBアゴニストの投与は、予め選択された期間にわたり本質的に連続的なこともあるし、間隔を空けた一連の投与のこともある。
【0074】
他の製剤には、非限定的にリポソームなどの担体を含めた、当技術分野で公知の適切な送達形態が含まれる。例えば、Mahatoら(1997)Pharm.Res.14:853〜859を参照されたい。リポソーム製剤には、非限定的に、サイトフェクチン、多重膜小胞、および単膜小胞が含まれる。
【0075】
疾患の評定は、当技術分野で公知の標準法を用いて、例えば、適切なマーカーをモニターすることによって行われる。例えば悪液質については、以下のマーカー、すなわち体重、血漿アルブミン、体脂肪、ボディーリーンマス(body lean mass)、疲労、虚弱、および食欲をモニターすることができる。神経性食欲不振については、以下のマーカー、すなわち体重、食欲、および体重増のおそれをモニターすることができる。オピオイド誘導性嘔吐症について、以下のマーカー、すなわち悪心、嘔吐、食欲、体重、および他の関連する医学的合併症をモニターすることができる。
【0076】
IV.組成物および組成物を作製する方法
本発明の方法はtrkBアゴニストを使用し、trkBアゴニストは、天然由来のtrkB受容体および/またはtrkBシグナル伝達機能に仲介される下流の経路と結合し、それを活性化する任意の分子を表す。trkBアゴニストには、NT−4/5およびBDNFなどの、trkB受容体の任意の天然由来リガンドが含まれる。trkBアゴニストには、天然由来trkB受容体に結合し、それを活性化することによって、その受容体の天然由来リガンドの生物学的活性を模倣している、trkB受容体の非天然由来リガンド(例えばポリペプチド、ペプチド由来化合物、環状ペプチド由来または非ペプチド由来分子)もまた含まれる。trkB受容体の非天然由来リガンドの一例は、抗trkBアゴニスト抗体である。trkBアゴニストには、小分子またはペプチド模倣体(例えばBDNFのペプチド模倣体)もまた含まれる。例えば、O’Learyら、J.Biol.Chem.278:25738〜44、2003を参照されたい。いくつかの実施形態では、小分子trkBアゴニストは、末梢投与した場合に、血液脳関門を有意に通過しない。
【0077】
trkBアゴニストは、任意の1つまたは複数の以下の特徴を示すはずである:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質または望まれない体重減少の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、trkBアゴニストは、trkB受容体と結合し、それを活性化するが、trkAおよび/またはtrkCなどの1つまたは複数の他のtrk受容体を有意にも優先的にも活性化しない。
【0078】
trkBアゴニストは、本明細書に記載する任意の方法に使用するための組成物の形態でありうる。本発明の方法に使用する組成物は、有効量のtrkBアゴニストを含む。組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定化剤をさらに含むことがある(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第20版(2000)Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)。許容できる担体、賦形剤、または安定化剤は、その投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、またはベンジルアルコール、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストランを含めた単糖、二糖、および他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン系界面活性剤を含むことがある。薬学的に許容できる賦形剤を本明細書にさらに記載する。
【0079】
本明細書に記載するtrkBアゴニストは、持続放出用に製剤することができる。持続放出調製物の適切な例には、trkBアゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、造型品の形態、例えばフィルムまたはマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および7−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−ビニル酢酸、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、スクロースアセテートイソブチレート、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。使用することができる持続放出薬物送達システムの別の例は、Atrix Laboratoriesが作るATRIGEL(登録商標)である。例えば、米国特許第6,565,874号を参照されたい。ATRIGEL(登録商標)薬物送達システムは、生物分解性縫合糸に使用されるポリマーに類似した生物分解性ポリマーを生物適合性担体に溶解したものからなる。trkBアゴニストは、製造時にこの液体送達系に混合することができるし、製品に応じて、後で使用時に医師が添加することもできる。液体製品をゲージの小さい針を通して皮下または筋肉内に注射するか、またはカニューレを通してアクセス可能な組織部位に置く場合には、担体と組織液中の水との置き換えにより、ポリマーが沈殿し、固体フィルムまたは植込剤が形成する。その植込剤に封入されたtrkBアゴニストは、次にポリマーマトリックスが経時的に生物分解するときに制御された方式で放出される。患者の医学的必要性に応じて、Atrigelシステムは、数日から数カ月までの期間にわたりタンパク質を送達することができる。Alkermesが製造するProLease(登録商標)、Medisorb(登録商標)などの注射用持続放出システムもまた使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明は、医薬としての使用の状況であろうと、かつ/または医薬の製造のための使用の状況であろうと、本明細書に記載する任意の方法に使用するための組成物(本明細書に記載)を提供する。
【0081】
NT−4/5ポリペプチド
本発明の方法に用いるtrkBアゴニストにはNT−4/5ポリペプチドが含まれる。本明細書に使用する「NT−4/5ポリペプチド」には、天然に存在する成熟タンパク質(相互交換可能に「NT−4/5」と名付ける)(例えば、下記表1および米国特許出願公開2005/0209148およびPCT WO2005/08240および米国特許出願公開20030203383の図1に示す成熟ヒトNT−4/5など)およびNT−4/5の天然に存在するアミノ酸配列変異体と、NT−4/5のアミノ酸配列変異体と、成熟NT−4/5(ヒトなど)およびアミノ酸配列変異体のペプチド断片と、成熟NT−4/5および前記アミノ酸配列変異体およびペプチド断片の修飾された形態(ここで、ポリペプチドまたはペプチドは、天然に存在するアミノ酸以外の部分との置換により共有結合的に修飾されている)が含まれるが、ただし、そのアミノ酸配列変異体、ペプチド断片、およびその修飾された形態は、trkBアゴニストおよび/または天然成熟NT−4/5タンパク質の1つまたは複数の生物学的活性を示す。trkBアゴニストには、本明細書に記載するNT−4/5ポリペプチドの任意の実施形態を含む融合タンパク質およびコンジュゲート、例えばPEG、IgG Fc領域、アルブミン、またはペプチドなどの半減期延長部分にコンジュゲートまたは融合したNT−4/5ポリペプチドもまた含まれる。考慮中のアミノ酸配列変異体、ペプチド断片(変異体の断片を含める)、またはその修飾された形態には、任意の動物種のNGF、BDNF、またはNT−3は含まれない。天然に存在するNT−4/5の変異体、ペプチド断片、および修飾された形態は、米国特許出願公開第2003/0203383号;第2002/0045576号;第2005/0209148号;米国特許第5,702,906号;第6,506,728号;第6,566,091号;第5,830,858号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドには、本明細書に記載する任意の1つまたは複数の実施形態が含まれる。例えば、NT−4/5ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を有する天然に存在する配列を含む。
【0082】
【表1】
【0083】
いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドは哺乳動物NT−4/5ポリペプチドであり、このポリペプチドは、天然に存在する哺乳動物NT−4/5、または天然に存在する哺乳動物NT−4/5から誘導されたNT−4/5ポリペプチドであって、天然に存在する非哺乳動物NT−4/5のどの部分とも合致しない配列を有するNT−4/5ポリペプチドのことがある。いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドはヒトNT−4/5ポリペプチドであり、このポリペプチドは、天然に存在するヒトNT−4/5または天然に存在するヒトNT−4/5から誘導されたNT−4/5ポリペプチドであって、天然に存在する非ヒトNT−4/5のどの部分とも合致しない配列を有するNT−4/5ポリペプチドのことがある。
【0084】
変異体、ペプチド断片、修飾された形態のNT−4/5ポリペプチド(天然に存在するNT−4/5を含める)、本発明の融合タンパク質およびコンジュゲートを含めたNT−4/5ポリペプチドは、以下の任意の(1つまたは複数の)性質を特徴とする:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。したがって、すべてのNT−4/5ポリペプチド(変異体、断片、および修飾された形態を含める)は、上記のように機能的である。
【0085】
変異体の生物学的活性は、当技術分野で公知の方法および本明細書に記載する方法を用いてin vitroおよびin vivoで試験することができる。抗trkBアゴニストを同定するための本明細書に記載する方法もまた用いることができる。NT−4/5ポリペプチドは、天然に存在するNT−4/5タンパク質に比べて高まった活性または低減した活性を有することがある。いくつかの実施形態では、機能的に等価な変異体は、上記の(または当技術分野で公知の)1つまたは複数の生物学的アッセイに関して、NT−4/5ポリペプチドが誘導された天然由来のNT4/5タンパク質に比べて少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の任意の活性を有する。いくつかの実施形態では、機能的に等価の変異体は、TrkB受容体のin vitro活性化(例えば、実施例6ならびにUS2005/0209148およびPCT WO2005/082401に記載されているアッセイ)において約0.01nM、約0.1nM、約1nM、約10nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する。
【0086】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体には、天然に存在するNT−4/5(例えば表1に示す成熟ヒトNT−4)の配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入、欠失、および/または置換によって、天然に存在するNT−4/5とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。アミノ酸配列変異体は、概して、任意の天然に存在するNT−4/5(配列番号1に示す成熟ヒトNT−4/5など)と少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一なものである。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一である。
【0087】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体は、以前に単離されたNT−4/5 DNAに所定の突然変異を加えることにより作製することができる。アミノ酸変異体は、NT−4/5およびTrkB受容体の結晶構造に基づき設計および作製することができる。Banfieldら、Structure 9:1191〜9(2001)。例えば、NT−4/5の単量体同士の間およびNT−4/5とTrkB受容体との間の相互作用に直接関与しないアミノ酸を、例えばPEG付着部位を導入するために突然変異させることができる。当技術分野で公知の方法を使用して、天然に存在するNT−4/5タンパク質に比べて高まっているか、または低減した1つまたは複数の生物学的活性を有するNT−4/5ポリペプチド変異体を設計することができる。
【0088】
そのような所定の突然変異を加える際に考慮すべき2つの主要な変数、すなわち突然変異部位の場所および突然変異の本質がある。一般に、概して選択される突然変異の場所および本質は、修飾されるNT−4/5の特徴に依存する。例えば、候補NT−4/5アンタゴニストまたはスーパーアゴニストは、最初にNGF、BDNF、NT−3、およびNT−4の間で同一または高度に保存されたアミノ酸残基の場所を決定することにより選択することができる。次に、例えば(1)最初に保存的選択と、次に達成した結果に応じてより過激な選択と置換すること、(2)標的残基を欠失させること、もしくは(3)場所を決定した部位に隣接して同一または異なるクラスの残基を挿入すること、または選択肢1〜3の組合せにより、それらの残基を連続して修飾することができる。
【0089】
役立つ一技術は「alaスキャニング」と呼ばれる。ここで、アミノ酸残基または標的残基の群を同定し、アラニンまたはポリアラニンに置換する。次に、アラニン置換に機能的感受性を示しているドメインは、アラニン置換部位で、またはその部位に代わってさらなる変異体または他の変異体を導入することにより洗練させる。
【0090】
明らかに、例えば、NT−4/5をNGF、BDNF、またはNT−3に変換するような変異は、本発明の範囲内に含まれない。したがって、アミノ酸配列の変異を導入するための部位が所定であっても、突然変異の本質自体は所定である必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは標的領域でalaスキャニングまたはランダム突然変異誘発が行われ、発現したNT−4/5変異体が、最適な所望の活性についてスクリーニングされる。
【0091】
アミノ酸配列の欠失は、概して約1から30残基、より好ましくは約1から10残基の範囲であり、そして典型的には連続している。欠失は、NT−4/5の活性を修飾するために、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で相同性が低い領域に導入することができる。BDNF、NT−3、およびNGFと実質的に相同な区域でのNT−4/5からの欠失は、NT−4/5の生物学的活性をより有意に修飾する見込みがさらに高いことがある。連続的な欠失の数は、影響を受けたドメインにおけるNT−4/5の三次構造(例えば、β−プリーツシートまたはαらせん)を保存するように選択することができる。
【0092】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から、1000個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶ、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわち成熟NT−4/5配列内の挿入)は、概して、約1から10残基、より好ましくは、1から5残基、最も好ましくは、1から3残基の範囲のことがある。末端挿入の例には、組換え宿主からの成熟NT−4/5の分泌を容易にするために、NT−4/5分子のN末端に異種N末端シグナル配列を融合することが含まれる。そのようなシグナルは、概して、意図される宿主細胞と同種であり、それらには、大腸菌についてのSTIIもしくはlpp、酵母についてのα因子、および哺乳動物細胞についてのヘルペスgDなどのウイルスシグナルが含まれる。他の挿入には、NT−4/5のN末端またはC末端へのポリペプチドの融合が含まれる。
【0093】
変異体の別の群には、NT−4/5の少なくとも1つ(好ましくは1つだけ)のアミノ酸残基が除去されて、異なる残基がその場所に挿入されているものが含まれる。一例は、アルギニンおよびリシンを他のアミノ酸に置き換えて、NT−4/5をセリンプロテアーゼによるタンパク質分解に抵抗性にすることによって、より安定なNT−4/5変異体を創出することである。置換突然変異誘発のための最大の関心対象の部位には、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4にみられるアミノ酸が、側鎖のかさ高さ、電荷、または疎水性に関して実質的に異なる部位であるが、NGF、NT−3、およびBDNFの種々の動物アナログの中で(例えば、すべての動物NGF、すべての動物NT−3、およびすべてのBDNFの間で)選択された部位に高度の相同性もまたある部位が含まれる。この分析は、栄養因子の活性の区別に関与しうる残基を強調するものであることから、これらの部位での変異体は、そのような活性に影響を及ぼすことがある。成熟ヒトNT−4/5でのそのような部位をN末端から番号付けしたもの、および例示的な置換の例には、それぞれ、配列番号1のNT−4/5のG77からK、H、Q、またはRへ、およびR84からE、F、P、Y、またはWへの置換が含まれる。関心対象の他の部位は、残基がすべての動物種のBDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で同一な部位であり、このコンフォメーションの程度は、全4つの因子に共通する生物学的活性を達成することの重要性を示唆している。
【0094】
例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換には、保存的置換が含まれる。保存的置換を行う方法は、当技術分野で公知である。例えば、ala(A)は、val、leu、ileと、好ましくは、valと置換することができ、arg(R)は、lys、gln、asnと、好ましくは、lysと置換することができ、asn(N)は、gln、his、lys、argと、好ましくは、glnと置換することができ、asp(D)は、gluと置換することができ、cys(C)は、serと置換することができ、gln(Q)は、asnと置換することができ、glu(E)は、aspと置換することができ、gly(G)は、proと置換することができ、his(H)は、asn、gln、lys、argと、好ましくは、argと置換することができ、ile(I)は、leu、val、met、ala、phe、ノルロイシンと、好ましくは、leuと置換することができ、leu(L)は、ノルロイシン、ile、val、met、ala、pheと、好ましくは、ileと置換することができ、lys(K)は、arg、gln、asnと、好ましくは、argと置換することができ、met(M)は、leu、phe、ileと、好ましくは、leuと置換することができ、phe(F)は、leu、val、ile、alaと、好ましくは、leuと置換することができ、pro(P)は、glyと置換することができ、ser(S)は、thrと置換することができ、thr(T)は、serと置換することができ、trp(W)は、tyrと置換することができ、tyr(Y)は、trp、phe、thr、serと、好ましくは、pheと置換することができ、val(V)は、ile、leu、met、phe、ala、ノルロイシンと、好ましくは、leuと置換することができる。
【0095】
保存的置換に特に適した部位には、成熟ヒトNT−4(配列番号1)のN末端から付番して、R11、G12、E13、V16、D18、W23、V24、D26、V40、L41、Q54、Y55、F56、E58、T59、G77、R79、G80、H85、W86、A99、L100、T101、W110、R111、W112、I113、R114、I115、D116、およびA118が含まれる。NT−4/5の適正なコンフォメーションを維持することに関与しないシステイン残基もまた、その分子の酸化的安定性を高め、異常な架橋形成を防止するために、概してセリンで置換することができる。この節に示す部位以外の部位は、一般に上記の欠失研究または挿入研究に適する。
【0096】
機能の実質的な修飾は、(a)置換の区域における、例えば、シートまたはらせんコンフォメーションとしてのポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに及ぼす置換の効果が有意に異なる置換を選択することによって達成することができる。天然に存在する残基は、共通する側鎖の性質に基づいて群分けされる(残基の一部は、いくつかの機能群に入ることがある):
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0097】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のメンバーと交換することを伴うものである。
【0098】
NT−4変異体の例には、E67からSまたはTへの突然変異を有する配列番号1のポリペプチド(これは、N結合型グリコシル化部位を付加する);配列番号1のアミノ酸残基R83からQ94まで、G1からC61まで、G1からC17まで、C17からC61まで、C17からC78まで、C17からC90まで、C17からC119まで、C17からC121まで、R11からR27まで、R11からR34まで、R34からR53まで、C61からC78まで、R53からC61まで、C61からC119まで、C61からC78まで、C78からC119まで、C61からC90まで、R60からC78まで、K62からC119まで、K62からK91まで、R79からR98まで、R83からK93まで、T101からR111まで、G1からC121までのポリペプチド;配列番号1のV40〜C121を含むポリペプチド(例えば、N末端および/またはC末端で、あるポリペプチドに融合した配列番号1のV40〜C121);C78、C61、Q54〜T59、R60〜D82、H85〜S88、W86〜T101が欠失した(表示する残基範囲(両端を含む)が欠失した)配列番号1を含むポリペプチド;R53からHへ、K91からHへ、V108からFへ、R84からQ、H、N、T、YまたはWへ、およびD116からE、N、Q、Y、SまたはTへの突然変異を有する配列番号1が含まれる。位置70がG、E、DもしくはP以外のアミノ酸残基で置換され、位置71がA、PもしくはM以外の残基で置換され、かつ/または位置83がR、D、SもしくはK以外の残基で置換されたNT−4/5(配列番号1)、および環化NT−4断片もまた含まれる。
【0099】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、その2つの配列中のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、下記のように最大の一致で整列された場合に同じならば、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列が類似した局所領域を同定および比較するために、比較ウィンドウにわたり配列を比較することによって行われる。本明細書に使用する「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20個、通常は30から約75個、40から約50個の連続する位置のセグメントを表し、そのセグメントで、ある配列を同数の連続する位置の参照配列と、それら2つの配列を最適に整列させた後で、比較することができる。
【0100】
比較のための配列の最適な整列は、デフォルトのパラメーターを使用して、生物情報学ソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR,Inc.、ウィスコンシン州マディソン)中のMegalignプログラムを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されているいくつかの整列スキームを具体化する:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、ワシントンDC、第5巻、補遺3巻、345〜358頁より;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626〜645頁、Methods in Enzymology、第183巻、Academic Press,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、カリフォルニア州サンフランシスコ;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0101】
好ましくは、「配列同一率」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたり、2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、ここで、その比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、その2つの配列の最適な整列に関する(付加も欠失も含まない)参照配列と比較して、20%以下、通常は5から15%、または10から12%の付加もしくは欠失(すなわちギャップ)を含むことがある。この率は、両方の配列に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、合致した位置数を得、その合致した位置数を、参照配列における位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、その結果に100をかけて、配列同一率を得ることによって計算される。
【0102】
NT−4/5のアミノ酸配列変異体は、天然に存在することもあるし、以前に単離したNT−4/5 DNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望の変異ポリペプチドのin vitro合成によるなどして、合成的に調製することができる。上記のように、そのような変異体は、成熟NT−4/5のアミノ酸配列(例えば表1に示す配列)内に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、または挿入もしくは置換を含むことがある。欠失、挿入および置換の任意の組合せは、結果として生じる変異ポリペプチドが、所望の特徴をもつならば、NT−4/5のアミノ酸配列変異体に到達するように加えられる。そのアミノ酸変化は、組換え宿主に発現した際に、例えばグリコシル化部位を導入もしくは移動するか、または膜アンカー配列を導入して、NT−4/5のさらなる修飾を招くこともまたある(例えばPCT WO89/01041参照)。
【0103】
いくつかの実施形態では、NT−4/5ポリペプチドは、成熟ヒトNT−4/5をコードしている核酸配列(例えば配列番号2)にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0104】
同様に、またはその代わりに、変異ポリヌクレオチドは、天然由来の遺伝子またはその部分もしくは相補体に実質的に相同なことがある。そのようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件で、そのポリペプチドをコードしている天然に存在するDNA配列(または相補的配列)にハイブリダイズすることができる。
【0105】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予備洗浄;50℃〜65℃、5×SSC、一晩でのハイブリダイズ;続いて0.1%SDSを含有する2×SSC、0.5×SSCおよび0.2×SSCの各々での、65℃で20分間の2回洗浄が含まれる。
【0106】
本明細書に使用する「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために、低イオン強度および高温(例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)を使用する条件、(2)ハイブリダイゼーションの間に、ホルムアミドなどの変性剤(例えば42℃で750mM 塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムと共に0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を有する50%(v/v)ホルムアミド)を使用する条件;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃、および50%ホルムアミド中で55℃での洗浄に続いて、EDTAを含有する0.1×SSCからなる、55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する条件である。別のストリンジェントな条件の例は、50%ホルムアミド、5×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、2×デンハルト溶液、および10%硫酸デキストラン中で、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて、0.1×SSCおよび0.1%SDS中で42℃での洗浄である。当業者は、プローブ長などの要因に適合させるために必要な温度、イオン強度などをどのように調整するかを認識しているものである。
【0107】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載するポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列があることは、当業者に認識されているものである。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然由来遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を担う。それにもかかわらず、コドン使用頻度の差異が原因で変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に考えられている。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内に属する。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つまたは複数の突然変異の結果として変更された内因性遺伝子である。結果として生じたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有することもあるが、有する必要はない。対立遺伝子は、標準的技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
【0108】
本発明の方法に使用するtrkBアゴニストには、NT−4/5(例えば表1に示すヒトNT−4/5)またはその機能的ペプチド断片のアミノ酸配列を含む融合タンパク質もまた含まれる。生物学的に活性なNT−4/5ポリペプチドは、配列、例えば、免疫学的反応性を高める配列、支持体もしくは担体へのポリペプチドの結合形成を容易にする配列、または再フォールディングおよび/もしくは精製を容易にする配列(例えば、Myc、インフルエンザウイルスヘマグルチニンから誘導されたHA、His−6、FLAGなどのエピトープをコードしている配列)と融合することができる。これらの配列は、N末端またはC末端で、NT−4/5ポリペプチドに融合することができる。加えて、このタンパク質またはポリヌクレオチドは、その機能を増加させるか、または細胞中のその局在化を特定する、分泌配列などの他のものまたはポリペプチドに融合することができる。上記の組換え融合タンパク質を産生する方法は、当技術分野で公知である。この組換え融合タンパク質は、当技術分野で十分に公知の方法によって、産生、再フォールディング、および単離することができる。
【0109】
本明細書に記載するNT−4/5ポリペプチドは、個体におけるそのポリペプチドの半減期を増加させるために修飾することができる。例えば、NT−4/5ポリペプチドは、生物学的活性の最小限の損失で、全身クリアランスを低減するために、PEG化することができる。本発明は、PEG分子に連結したNT−4/5ポリペプチドを含む組成物(医薬組成物を含める)もまた提供する。いくつかの実施形態では、このPEG分子は、可逆的連結を介してNT−4/5ポリペプチドに連結している。PEG化NT−4/5ポリペプチドの半減期は、非PEG化NT−4/5ポリペプチドの半減期の約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、および約30倍のいずれかを超えるだけ延長することができる。
【0110】
ポリエチレングリコールポリマー(PEG)は、当技術分野で公知の方法を用いて、NT−4/5ポリペプチドの種々の官能基に連結することができる。例えば、Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002);Sakaneら、Pharm.Res.14:1085〜91(1997)を参照されたい。PEGは、このポリペプチドの以下の官能基、すなわちアミノ基、カルボキシル基、修飾または天然N末端、アミン基、およびチオール基に連結することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の表面アミノ酸残基が、PEG分子で修飾される。PEG分子は、種々の大きさ(例えば、約2から40KDaの範囲)のことがある。NT−4/5ポリペプチドに連結したPEG分子は、約2000Da、約10000Da、約15000Da、約20000Da、約25000Da、約30000Da、約35000Da、約40000Daの任意の分子量を有することがある。PEG分子は、一本鎖または分岐鎖のことがある。PEGをNT−4/5ポリペプチドに連結するために、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を使用することができる。その官能基は、NT−4/5ポリペプチド上の利用可能な反応性基の種類に基づいて選択される。ポリペプチドに誘導体を連結する方法は、当技術分野で公知である。Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002)。NT−4/5ポリペプチドとPEGとの間の連結は、個体において切断または自然分解することができ、半減期を改善するが活性の損失を最小限に抑えることができる連結(可逆的連結または分解可能な連結)のこともまたある。NT−4/5ポリペプチド上のPEG連結部位は、表面の残基を、PEG反応性の基を有するシステインなどのアミノ酸残基に突然変異させることによって創出することもまたできる。例えば、ヒトNT−4/5(配列番号1)の以下のアミノ酸は、PEGの付着のために突然変異させることができる:G1、V2、S3、E4、T5、S9、R10、T25、D26、R28、T29、V31、E37、E39、L41、E43、A46、A47、G48、G49、S50、R53、D64、N65、A66、E67、E68、G69、D82、R83、R84、H85、A104、Q105、G106、R107、V108、S125、およびT127。これらは、他の種における対応する残基に適用することができる。
【0111】
いくつかのPEG化NT−4/5が作製され、米国特許出願公開第2005/0209148号およびPCT WO2005/082401の実施例6および7に示されている。成熟ヒトNT−4/5の位置50でのセリン残基は、システインに変化させてNT4−S50Cを作製し、次に、それをPEG化することができ、ここで、PEGは、位置50でシステインに連結している。PEGに対するN末端特異的付着の一例は、位置1の残基をセリンまたはスレオニンに突然変異させ、次にPEG化することであり、ここで、PEGは、位置1のセリンに連結している。
【0112】
NT−4/5ポリペプチドは、組換え手段によって、すなわち、NT−4/5ポリペプチドをコードしている核酸の発現によって産生することができる。組換え細胞培養、および場合により、例えば、変異体の活性のバイオアッセイによるか、またはウサギ抗NT−4/5ポリクローナル抗体(天然由来のNT−4/5中にも存在する、その変異体の少なくとも1つの免疫エピトープに結合する)を含む免疫アフィニティーカラムへの吸着による細胞培養物からの変異ポリペプチドの精製において。40残基以下のオーダーの小さなペプチド断片は、in vitro法により好都合に作られる。
【0113】
NT−4/5ポリペプチドをコードしているDNAは、宿主細胞においてタンパク質を発現させるために発現ベクターにクローニングすることができる。NT−4/5ポリペプチドをコードしている核酸の例は、米国特許出願公開第2003/0203383号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドをその成熟形態でコードしているDNAは、そのアミノ末端で分泌シグナルに連結することができる。この分泌シグナルは、好ましくは、ヒト細胞からのNT−4/5のin vivo分泌を普通は指令するNT−4/5プレ配列である。しかし、適切な分泌シグナルには、他の動物NT−4/5由来のシグナル、NGF、NT−2、もしくはNT−3由来のシグナル、ウイルスシグナル、または同種もしくは関係する種の分泌ポリペプチドに由来するシグナルもまた含まれる。任意の宿主細胞(大腸菌など)は、そのタンパク質またはポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0114】
発現したNT−4/5ポリペプチドは、精製することができる。NT−4/5ポリペプチドは、培地から分泌タンパク質として回収することができるが、分泌シグナルなしに直接発現した場合には、このポリペプチドは、宿主細胞溶解物からもまた回収することができる。当技術分野で公知のタンパク質精製法を用いることができる。NT−4/5ポリペプチドを産生する方法および発現したNT−4/5ポリペプチドを精製する方法は、米国特許出願公開第2003/0203383号および米国特許第6,184,360号に記載されている。NT−4/5ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法により、大腸菌に発現させ、再フォールディングさせることができる。成熟ヒトNT−4/5は、(例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、Sigma(ミズーリ州セントルイス)、およびUpstate Biotech.(カリフォルニア州テメキュラ)から商業的に得ることもまたできる。
【0115】
抗trkBアゴニストポリペプチドおよび抗体
本発明の方法に使用されるtrkBアゴニストには、抗trkBアゴニスト抗体を含めた抗trkBアゴニストポリペプチドもまた含まれる。抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)は、以下の特徴のうちの任意の1つまたは複数を示すはずである:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)は多価であり、trkB受容体の細胞外ドメインに結合する。trkファミリーのニューロトロフィン受容体と結合および架橋し、またはそれを二量体化することができる免疫グロブリンは、これらの受容体を活性化し、ニューロトロフィンへの曝露に類似した帰結を神経細胞に生むことが示された。米国特許第6,656,465号およびPCT WO01/98361を参照されたい。
【0117】
trkBアゴニスト抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体の部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体配置を包含しうる。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または(ヒト化抗体を含めて)他の任意の起源でありうる。
【0118】
いくつかの実施形態では、(抗体を含めて)ポリペプチドはtrkBと結合し、他のニューロトロフィン受容体(関係するニューロトロフィン受容体であるtrkAおよび/またはtrkCなど)とは有意には交差反応(結合)しない。アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトtrkBと結合することがある。アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびげっ歯動物trkBともまた結合することがある。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびラットtrkBと結合することがある。いくつかの実施形態では、抗trkBポリペプチドは、ヒトおよびマウスtrkBと結合することがある。一実施形態では、ポリペプチドは、ヒトtrkB細胞外ドメイン上の1つまたは複数のエピトープを認識する。別の実施形態では、抗体は、ヒトtrkB細胞外ドメイン上の1つまたは複数のエピトープを認識するマウスまたはラット抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはヒトtrkBと結合し、別の哺乳動物種(いくつかの実施形態では脊椎動物種)由来のtrkBと有意には結合しない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ヒトtrkBおよび別の哺乳動物種(いくつかの実施形態では脊椎動物種)由来の1つまたは複数のtrkBと結合する。別の実施形態では、ポリペプチドは、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシのうちの1つまたは複数から選択されるtrkB上の1つまたは複数のエピトープを認識する。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニスト抗体は、TrkB受容体(例えばヒトtrkB)のin vitro活性化に、約0.01nM、約0.1nM、約0.5nM、約1nM、約5nM、約10nM、約50nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する(例えば、実施例6ならびにUS2005/0209148およびPCT WO2005/082401に記載されているアッセイ)。
【0120】
trkBに対する抗trkBアゴニストポリペプチド(例えば抗体)の結合親和性は、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまででありうる。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、もしくは約50pM、または約50pM未満のいずれかである。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれか未満である。なお他の実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約40pM超である。当技術分野で十分に公知のように、結合親和性は、KD、すなわち解離定数として表現することができ、結合親和性の増加はKDの減少に対応する。
【0121】
trkBへの抗体の結合親和性を決定する一方法は、抗体の単官能性Fab断片の結合親和性を測定することによる。単官能性Fab断片を得るために、抗体(例えばIgG)をパパインで切断するか、組換え発現させることができる。抗体の抗trkB Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(BIAcore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、BIAcore,INC、ニュージャージー州ピスカタウェイ)により決定することができる。CM5チップは、供給業者の説明書にしたがってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化することができる。ヒトtrkB−Fc融合タンパク質(「htrkB」)(またはラットtrkBなどの他の任意のtrkB)は、10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中で希釈し、活性化したチップの上に0.0005mg/mL濃度でインジェクトすることができる。個別のチップチャンネルを通過する可変流動時間を使用して、2つの範囲の抗原密度、すなわち詳細な動力学的研究には200〜400応答単位(RU)およびスクリーニングアッセイには500〜1000RUを達成することができる。チップは、エタノールアミンでブロックすることができる。再生の研究から、200回を超えるインジェクションの間、Pierce溶出緩衝液(製品番号21004、Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)および4M NaCl(2:1)の混合物は、結合したFabを効果的に除去するが、チップ上のhtrkBの活性を保つことが示された。HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P29)は、BIAcoreアッセイのための運転緩衝液として使用する。精製Fab試料の系列希釈(0.1〜10×推定KD)は、100μL/minで1分間インジェクトし、最長2時間の解離時間を見込む。Fabタンパク質の濃度は、標準として(アミノ酸分析により決定した)公知の濃度のFabを使用したELISAおよび/またはSDS−PAGE電気泳動により決定する。動力学的会合速度(kon)および解離速度(koff)(一般に25℃で測定される)は、BIAevaluationプログラムを用いて1:1ラングミュア結合モデルにデータをあてはめることによって同時に得られる(Karlsson,R.、Roos,H.、Fagerstam,L.、Petersson,B.(1994)Methods Enzymology 6:99〜110)。平衡解離定数(KD)の値は、koff/konとして計算する。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗trkBアゴニストポリペプチド(抗体を含める)は、エフェクター機能障害を有する。本明細書に使用する「エフェクター機能障害」(用語「免疫学的に不活性」と相互交換可能に使用される)を有する抗体またはポリペプチドは、エフェクター機能をまったく有さないか、または(未修飾または天然に存在する定常領域を有する抗体またはポリペプチドに比べて)低減した活性のエフェクター機能を有する抗体またはポリペプチドを表し、その抗体またはポリペプチドは、例えば、以下の任意の1つまたは複数に活性を有さないか、または低減した活性を有する:a)補体介在性溶解をトリガーすること、b)抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を刺激すること、およびc)ミクログリアを活性化すること。エフェクター機能の活性は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、および約100%のいずれかだけ低減していることがある。いくつかの実施形態では、抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞介在性破壊をトリガーせずにtrkB受容体に結合する。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位は、修飾または突然変異させて、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIVなどのある種のFc受容体に対する結合親和性を除去または低減することができる。簡潔にするために、実施形態がポリペプチドにもまたあてはまることを理解して、抗体を参照する。EU付番システム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest;第5版、Public Health Service、National Institutes of Healthy、メリーランド州ベセスダ、1991)を使用して、(例えばIgG抗体の)定常領域のどのアミノ酸残基が変更または突然変異されたかを表示することができる。類似の変化を複数の種類の抗体および種にわたり加えることができることを理解して、この付番を特定の種類の抗体(例えばIgG1)または種(例えばヒト)に使用することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、trkB受容体に特異的に結合するポリペプチド(抗体を含める)は、エフェクター機能障害を有する重鎖定常領域を含む。この重鎖定常領域は、天然に存在する配列を有することがあるか、または変異体である。いくつかの実施形態では、天然に存在する重鎖定常領域のアミノ酸配列は、例えばアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失により突然変異させることによって、定常領域のエフェクター機能に障害が起こる。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域のFc領域のN−グリコシル化もまた変化させることができ、例えば完全または部分的に除去することができ、それによって定常領域のエフェクター機能に障害が起こる。
【0124】
いくつかの実施形態では、(例えばIgGのCH2ドメイン中の)Fc領域のN−グリコシル化を除去することにより、エフェクター機能に障害が起こる。いくつかの実施形態では、グリコシル化アミノ酸残基または定常領域中のグリコシル化認識配列の部分である隣接残基を突然変異させることにより、Fc領域のN−グリコシル化を除去する。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン(N−X−S)、アスパラギン−X−スレオニン(N−X−T)、およびアスパラギン−X−システイン(N−X−C)(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、N−グリコシル化のためのアスパラギン側鎖に糖質部分が酵素的に付着するための認識配列である。定常領域のトリペプチド配列中の任意のアミノ酸を突然変異させることにより、無グリコシル化IgGを得る。例えば、ヒトIgG1およびIgG3のN−グリコシル化部位N297は、A、D、Q、K、またはHに突然変異させることができる。Taoら、J.Immunology 143:2595〜2601(1989)およびJefferisら、Immunological Reviews 163:59〜76(1998)を参照されたい。Asn−297のGln、His、またはLysへの置換を有するヒトIgG1およびIgG3は、ヒトFcγRIに結合せず、補体を活性化せず、IgG1に対するC1q結合能が完全に失われ、IgG3に対しては劇的に減少することが報告された。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Nは、アミノ酸A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、Yのいずれか1つに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Nは、保存的置換残基に突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Xは、プロリンに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Sは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Tは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチド配列中のアミノ酸Cは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異される。いくつかの実施形態では、トリペプチドに続くアミノ酸は、Pに突然変異される。いくつかの実施形態では、定常領域でのN−グリコシル化は、酵素的に(N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3、およびエングリコシダーゼH(englycosidase H)などで)除去される。N−グリコシル化の除去は、N−グリコシル化に欠損を有する細胞系で抗体を産生することによってもまた達成することができる。Wrightら、J Immunol.160(7):3393〜402(1998)。
【0125】
いくつかの実施形態では、定常領域のN−グリコシル化部位に付着したオリゴ糖と相互作用しているアミノ酸残基を突然変異させて、FcγRIに対する結合親和性を低減する。例えば、ヒトIgG3のF241、V264、D265を突然変異させることができる。Lundら、J.Immunology 157:4963〜4969(1996)を参照されたい。
【0126】
いくつかの実施形態では、PCT WO99/58572およびArmourら、Molecular Immunology 40:585〜593(2003);Reddyら、J.Immunology 164:1925〜1933(2000)に記載されているように、エフェクター機能は、ヒトIgGの233〜236、297、および/または327〜331などの領域を修飾することにより障害を起こす。PCT WO99/58572およびArmourらに記載されている抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域のすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞介在性破壊をトリガーせずに標的分子と結合することができる。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIに対して低減した親和性を有する。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbと特異的に結合することができる。これらは、典型的には2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインから誘導されたキメラドメインに基づく。このように修飾された抗体は、従来の抗体療法に対する炎症反応および他の有害反応を回避するための慢性抗体療法への使用に特に適する。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の任意の突然変異を有するヒト重鎖IgG1である:1)A327A330P331からG327S330S331;2)E233L234L235G236からP233V234A235、G236欠失;3)E233L234L235からP233V234A235;4)E233L234L235G236A327A330P331からP233V234A235G327S330S331、G236欠失;5)E233L234L235A327A330P331からP233V234A235G327S330S331;および6)N297からA297またはN以外の任意の他のアミノ酸。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の突然変異を有するヒト重鎖IgG2である:A330P331からS330S331。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖定常領域は、以下の任意の突然変異を有するヒト重鎖IgG4である:E233F234L235G236からP233V234A235、G236欠失;E233F234L235からP233V234A235;およびS228L235からP228E235。
【0127】
定常領域もまた修飾して、補体活性化に障害を起こすことができる。例えば、補体C1成分の結合後のIgG抗体の補体活性化は、C1結合モチーフ(例えばC1q結合モチーフ)中の定常領域のアミノ酸残基を突然変異させることにより低減することができる。ヒトIgG1のD270、K322、P329、P331のそれぞれに関するAla突然変異は、抗体がC1qに結合して補体を活性化する能力を有意に低減することが報告された。マウスIgG2bについては、残基E318、K320、およびK322がC1q結合モチーフを構成する。Idusogieら、J.Immunology 164:4178〜4184(2000);Duncanら、Nature 322:738〜740(1988)。
【0128】
マウスIgG2bについて同定されたC1q結合モチーフE318、K320、およびK322は、他の抗体アイソタイプと共通すると考えられる。Duncanら、Nature 322:738〜740(1988)。IgG2bについてのC1q結合活性は、3つの特定の残基の任意の1つを、その側鎖に不適切な官能基を有する残基と置き換えることによって撤廃することができる。C1qの結合を撤廃するために、イオン系残基のみをAlaに置き換えることは不必要である。C1qの結合を撤廃するために3つの残基のうちの任意の1つの代わりにGly、Ile、Leu、もしくはValなどの他のアルキル置換非イオン系残基、またはPhe、Tyr、Trp、およびProなどの芳香族無極性残基を使用することもまた可能である。加えて、C1qの結合活性を撤廃するために、残基318ではなく320および322の代わりにSer、Thr、Cys、およびMetなどの極性非イオン系残基を使用することもまた可能である。
【0129】
本発明は、エフェクター機能障害を有する抗体もまた提供し、ここで、その抗体は修飾されたヒンジ領域を有する。ヒトIgGのFc受容体に対するヒトIgGの結合親和性は、ヒンジ領域を修飾することにより調節することができる。Canfieldら、J.Exp.Med.173:1483〜1491(1991);Hezarehら、J.Virol.75:12161〜12168(2001);Redpathら、Human Immunology 59:720〜727(1998)。特異的アミノ酸残基は、突然変異または欠失させることができる。修飾されたヒンジ領域は、CH1ドメインとは異なる抗体クラスまたはサブクラスの抗体から誘導された完全なヒンジ領域を含むことがある。例えば、IgGクラスの抗体の定常ドメイン(CH1)は、IgG4クラスの抗体のヒンジ領域に付着していることがある。あるいは、新しいヒンジ領域は、天然ヒンジの一部、または繰り返しの中の各ユニットが天然ヒンジ領域から誘導された繰り返しユニットの一部を含むことがある。いくつかの実施形態では、天然ヒンジ領域は、1つもしくは複数のシステイン残基を、アラニンなどの中性残基に変換することによって、または適切に配置された残基をシステイン残基に変換することによって変更される。例えば、米国特許第5,677,425号を参照されたい。そのような改変は、当技術分野で認識されているタンパク質化学および好ましくは遺伝子工学技術を用いて、ならびに本明細書に記載するように実施される。
【0130】
trkB受容体に特異的に結合するポリペプチドであって、エフェクター機能障害を有する重鎖定常領域に融合したポリペプチドもまた本明細書に記載する方法に使用することができる。そのような融合ポリペプチドの一例はイムノアドヘシンである。例えば、米国特許第6,153,189号を参照されたい。
【0131】
当技術分野で公知の、エフェクター機能障害を有する抗体を製造する他の方法もまた用いることができる。
【0132】
修飾された定常領域を有する抗体およびポリペプチドは、1つまたは複数のアッセイで試験して、生物学的活性におけるエフェクター機能低減のレベルを出発抗体に比べて評価することができる。例えば、変更されたFc領域または変更されたヒンジ領域を有する抗体またはポリペプチドが補体またはFc受容体(例えばミクログリア上のFc受容体)と結合する能力は、本明細書に開示するアッセイおよび当技術分野で認められている任意のアッセイを使用して評定することができる。PCT WO99/58572;Armourら、Molecular Immunology 40:585〜593(2003);Reddyら、J.Immunology 164:1925〜1933(2000);Songら、Infection and Immunity 70:5177〜5184(2002)。
【0133】
抗trkBアゴニスト抗体は、trkBの1つまたは複数の細胞外ドメインを発現する免疫原を使用することによって作ることができる。免疫原の一例は、trkBを高く発現する細胞であり、その細胞は、本明細書に記載するように得ることができる。使用することができる免疫原の別の例は、trkB受容体の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分を含有する可溶性タンパク質(trkBイムノアドヘシンなど)である。
【0134】
宿主動物の免疫処置の経路およびスケジュールは、概して、本明細書にさらに記載する抗体の刺激および産生のための確立された技術および従来技術に沿う。ヒトおよびマウス抗体を産生するための一般技術は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。
【0135】
ヒトを含めた任意の哺乳動物対象またはそれに由来する抗体産生細胞は、ヒトを含めた哺乳動物のハイブリドーマ細胞系の産生のための基礎として役立つように操作することができることが考えられている。典型的には、宿主動物は、本明細書に記載するものを含めたある量の免疫原を腹腔内接種される。
【0136】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.(1975)Nature 256:495〜497の、またはBuck,D.W.ら(1982)In Vitro、18:377〜381により修正された一般体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いて、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製することができる。非限定的にX63−Ag8.653およびSalk Institute、Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴからの骨髄腫細胞系を含めた入手できる骨髄腫細胞系を、ハイブリダイゼーションに使用することができる。一般に、その技術は、ポリエチレングリコールなどの融合源を使用して、または当業者に十分に公知の電気的手段により、骨髄腫細胞およびリンパ系細胞を融合させることを伴う。融合後に、融合用培地から細胞を分離し、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地などの選択生育培地中で生育させ、ハイブリダイズしてない親細胞を排除する。本明細書に記載する、血清を補充されたか、または補充されていない任意の培地は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技術の別の代替として、EBVで不死化したB細胞を使用して、主題発明の抗trkBモノクローナル抗体を産生させることができる。ハイブリドーマを所望により増大させてサブクローニングし、従来のイムノアッセイ(例えばラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、または蛍光イムノアッセイ)の手順により、抗免疫源活性について上清がアッセイされる。
【0137】
抗体の起源として使用することができるハイブリドーマは、trkBに特異的なモノクローナル抗体またはその部分を産生する親ハイブリドーマのすべての誘導体、子孫細胞を包含する。
【0138】
そのような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を用いてin vitroまたはin vivoで生育させることができる。モノクローナル抗体は、所望により硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって培地または体液から単離することができる。望まれない活性がもしも存在すれば、固相に付着した免疫原からできた吸着剤の上に調製物を流し、その免疫原から所望の抗体を溶出または放出させることによってそれを除去することができる。ヒトもしくは他の種のtrkB受容体、またはヒトもしくは他の種のtrkB受容体の断片、または二官能性薬剤もしくは誘導化剤(例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は異なるアルキル基である))を使用し、免疫処置される種に免疫原性のタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤)にコンジュゲートした標的アミノ酸配列を含有するヒトもしくは他の種のtrkB受容体もしくは断片を用いた宿主動物の免疫処置は、抗体(例えばモノクローナル抗体)集団を得ることができる。免疫原の別の例は、trkBを高く発現する細胞であり、その細胞は、組換え手段により、または天然起源から高レベルのtrkBを発現する細胞を単離もしくは富化することにより得ることができる。これらの細胞は、ヒトのものでも、他の動物起源であってもよく、直接単離された免疫原として使用することもできるし、免疫原性が増加または(trkBの断片の)trkBの発現が増加もしくは富化するように加工することもできる。そのような加工には、非限定的に、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノール、アセトン、および/または様々な酸などの、細胞またはその断片の安定性または免疫原性を増加するように設計された薬剤を用いて、その細胞またはその断片を処理することが含まれる。さらに、そのような処理の前または後のいずれかで、細胞は、所望の免疫原について、この場合はtrkBまたはその断片について富化するために、加工することができる。これらの加工ステップには、当技術分野で十分に公知の膜分画技術が含まれることがある。
【0139】
所望であれば、関心対象の抗trkB抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)は配列決定することができ、次に、ポリヌクレオチド配列は、発現または伝播のために、ベクターにクローニングすることができる。関心対象の抗体をコードしている配列は、宿主細胞のベクター中に維持することができ、次に、宿主細胞は、将来に使用するために規模拡大および凍結することができる。その代わりとして、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」するために、または抗体の親和性もしくは他の性質を改善するために、遺伝子操作に使用することができる。例えば、その抗体をヒトにおける臨床試験および治療に使用するならば、定常領域をヒト定常領域にさらに類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。抗体配列を遺伝子操作して、trkB受容体に対してさらに大きな親和性を、およびtrkB受容体の活性化にさらに大きな効力を得ることが理想的なことがある。1つまたは複数のポリヌクレオチド変化を抗trkB抗体に加えても、trkB細胞外ドメインまたはtrkBのエピトープに対する結合能をなお維持することができることは、当業者に明らかであろう。
【0140】
モノクローナル抗体をヒト化するためには4つの一般的ステップがある。これらは、(1)出発抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計するステップ、すなわちヒト化工程の間にどの抗体のフレームワーク領域を使用すべきかを判断するステップ、(3)実際のヒト化方法論/技術、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;第6,180,370号;および第6,548,640号を参照されたい。例えば、その抗体をヒトにおける臨床試験および治療に使用するならば、定常領域をヒト定常領域にさらに類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号を参照されたい。
【0141】
げっ歯動物V領域または修飾げっ歯動物V領域、およびそれらに関連する相補性決定領域(CDR)がヒト定常ドメインに融合したものを有するキメラ抗体を含めた、非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含むいくつかの「ヒト化」抗体分子が記載されている。例えば、Winterら、Nature 349:293〜299(1991)、Lobuglioら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220〜4224(1989)、Shawら、J Immunol.138:4534〜4538(1987)、およびBrownら、Cancer Res.47:3577〜3583(1987)を参照されたい。他の参考文献は、ヒト支持性フレームワーク領域(FR)にげっ歯動物CDRをグラフト化してから、適切なヒト抗体定常ドメインと融合させることを記載している。例えば、Riechmannら、Nature 332:323〜327(1988)、Verhoeyenら、Science 239:1534〜1536(1988)、およびJonesら、Nature 321:522〜525(1986)を参照されたい。別の参考文献は、組換え上張り(veneered)げっ歯動物フレームワーク領域により支持されるげっ歯動物CDRについて記載している。例えば、欧州特許公報第519,596号を参照されたい。これらの「ヒト化」分子は、げっ歯動物抗ヒト抗体分子に対する望まれない免疫応答であって、ヒトレシピエントにおけるそれらの部分の治療適用の期間および有効性を制限する免疫応答を最小化するように設計される。抗体定常領域は、それが免疫学的に不活性なように、例えばそれが補体介在性溶解をトリガーせず、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を刺激しないように、操作することができる。他の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613〜2624;PCT出願PCT/GB99/01441;および/またはUK特許出願第9809951.8号に記載されているように修飾される。
【0142】
例えばPCT/GB99/01441;UK特許出願第9809951.8号を参照されたい。同様に利用することができる、抗体をヒト化する他の方法は、Daughertyら、Nucl.Acids Res.19:2471〜2476(1991)および米国特許第6,180,377号;第6,054,297号;第5,997,867号;第5,866,692号;第6,210,671号;第6,350,861号;およびPCT出願WO01/27160に開示されている。
【0143】
なお別の代替では、完全ヒト抗体は、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することにより得ることができる。より理想的な(例えば完全ヒト抗体の)免疫応答またはより強い免疫応答を産生するように設計されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化またはヒト抗体の作製に使用することができる。そのような技術の例は、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)からのXenomouse(商標)ならびにMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)からのHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。
【0144】
代替では、抗体は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して組換え製造および発現させることができる。別の代替では、抗体は、ファージディスプレイ技術により組換え製造することができる。例えば、米国特許第5,565,332号、第5,580,717号、第5,733,743号、および第6,265,150号、ならびにWinterら、Annu.Rev.Immunol.12:433〜455(1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature 348:552〜553(1990))を用いて、非免疫処置ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生させることができる。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの、繊維状バクテリオファージの主または副コートタンパク質遺伝子のいずれかにフレーム内でクローニングして、ファージ粒子表面に機能的抗体断片として表出させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有することから、抗体の機能的性質に基づく選択は、それらの性質を示す抗体をコードしている遺伝子の選択もまた招く。したがって、ファージは、B細胞の性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができ、総説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology 3、564〜571(1993)を参照されたい。いくつかの起源のV遺伝子セグメントは、ファージディスプレイのために使用することができる。Clacksonら(Nature 352:624〜628(1991))は、免疫処置されたマウスの脾臓から誘導されたV遺伝子の小規模ランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。本質的にMarkら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)またはGriffithら、EMBO J.12:725〜734(1993)に記載されている技法通りに、免疫処置されていないヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、多様なアレイの抗原(自己抗原を含める)に対する抗体を単離することができる。自然免疫応答では、抗体遺伝子は、高い率で突然変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入される変化の一部は、高い親和性を付与するものであり、その後の抗原攻撃の間に、高親和性表面免疫グロブリンを表出しているB細胞が優先的に複製および分化する。この自然工程は、「鎖シャフリング」として公知の技術を使用することにより模倣することができる。Marksら、Bio/Technol.10:779〜783(1992))。この方法では、ファージディスプレイにより得られた「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を、免疫処置されていないドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然に存在する変異体のレパートリー(レパートリー)に連続的に置き換えることによって改善することができる。この技術は、pM〜nM範囲の親和性を有する抗体および抗体断片を産生させる。非常に大規模なファージ抗体レパートリー(「究極の(mother−of−all)ライブラリー」としても公知である)を作るための戦略は、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21:2265〜2266(1993)に記載されている。遺伝子シャフリングを用いて、げっ歯動物抗体からヒト抗体を誘導することもまたでき、ここで、そのヒト抗体は、出発げっ歯動物抗体と類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によると、ファージディスプレイ技術により得られるげっ歯動物抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えられ、げっ歯動物−ヒトキメラを創出する。抗原上での選択は、機能的抗原結合部位を復旧することができるヒト可変領域の単離を招く、すなわちエピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)。残りのげっ歯動物Vドメインを置き換えるためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT公開WO93/06213参照)。CDRグラフト化によるげっ歯動物抗体の伝統的ヒト化とは異なり、この技術は、げっ歯動物起源のフレームワークもCDR残基も有さない完全なヒト抗体を提供する。上記論考はヒト化抗体に関するが、論じた一般原理は、例えばイヌ、ネコ、霊長類、ウマ、およびウシに使用するための抗体をあつらえるために適用できることは明らかである。
【0145】
抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有するモノクローナル抗体である二重特異性抗体のことがあり、それは、本明細書に開示する抗体を使用して調製することができる。二重特異性抗体を作るための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Sureshら、1986、Methods in Enzymology 121:210参照)。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対と、異なる特異性を有する2つの重鎖との同時発現に基づいた(MillsteinおよびCuello、1983、Nature 305、537〜539)。
【0146】
二重特異性抗体を作る一アプローチによると、所望の結合特異性(抗体−抗原組合せ部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。軽鎖の結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)が融合体の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に共トランスフェクトされる。これは、構築物に使用される等しくない比の3つのポリペプチド鎖が最適の収率をもたらす実施形態において、この3つのポリペプチド断片の相互比率の調整に大きな柔軟性を与える。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率を招く場合またはその比が特に重要ではない場合には、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖に関するコード配列を、1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0147】
一アプローチでは、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、もう一方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を与える)とから構成される。二重特異性分子の半分だけに免疫グロブリン軽鎖を有するこの非対称構造は、望まれない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物を分離することを容易にする。このアプローチは、PCT公開WO94/04690に記載されている。
【0148】
2つの共有結合した抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内に属する。そのような抗体は、望まれない細胞に免疫系細胞を標的化するために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療のために(PCT公開WO91/00360およびWO92/200373、ならびにEP03089)使用されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋法を使用して作ることができる。適切な架橋剤および技術は、当技術分野で十分に公知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0149】
抗体は、宿主動物から作った抗体を最初に単離し、遺伝子配列を得、その遺伝子配列を使用して宿主細胞(例えばCHO細胞)に抗体を組換え発現させることにより、組換え的に作ることができる。使用することができる別の方法は、植物(例えばタバコ)、トランスジェニック乳、または他の生物に抗体配列を発現させることである。植物または乳に抗体を組換え発現させる方法が開示されている。例えば、Peetersら(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.およびD.Huszar(1995)Int.Rev.lmmunol 13:65;ならびにPollockら(1999)J Immunol Methods 231:147を参照されたい。例えばヒト化抗体、単鎖抗体などの抗体誘導体を作る方法は、当技術分野で公知である。
【0150】
キメラまたはハイブリッド抗体は、架橋剤を伴う方法を含めた合成タンパク質化学の公知の方法を用いてin vitroで調製することもまたできる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成させることによって、免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート(methyl−4−mercaptobutyrimidate)が含まれる。
【0151】
Iliadesら、1997、FEBS Letters、409:437〜441に記載されているような単鎖Fv断片もまた産生させることができる。様々なリンカーを使用したそのような単鎖断片の結合形成は、Korttら、1997、Protein Engineering、10:423〜433に記載されている。抗体の組換え産生および操作のための様々な技術は、当技術分野で十分に公知である。
【0152】
抗体は、1999年11月18日に公開されたPCT公開WO99/58572に記載されているように修飾することができる。これらの抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常ドメインのすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の有意な補体依存性溶解も細胞介在性破壊もトリガーせずに、標的分子と結合することができる。好ましくは、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbと特異的に結合することができる。これらは、典型的には2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインから誘導されたキメラドメインに基づく。このように修飾された抗体は、従来の抗体療法に対する炎症および他の有害反応を回避するための慢性抗体療法に使用するために好ましい。
【0153】
宿主動物の免疫処置または組換えのいずれかで作られた抗体は、本明細書に記載する任意の1つまたは複数のtrkBアゴニスト活性を示すはずである。
【0154】
イムノアッセイおよび蛍光標識細胞選別(FACS)などのフローサイトメトリー選別技術を使用して、trkBに特異的な抗体を単離することもまたできる。
【0155】
抗体は、多数の異なる担体に結合させることができる。担体は、活性および/または不活性でありうる。十分に公知の担体の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。担体の本質は、本発明の目的のために可溶性または不溶性のいずれかでありうる。当業者は、抗体を結合させるための他の適切な担体を知っているものであるし、日常的な実験を用いてそれを確かめることができるものである。
【0156】
アゴニスト抗trkB抗体をコードしているDNAは、当技術分野で公知のように配列決定することができる。一般に、モノクローナル抗体は、容易に単離され、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなcDNAの好ましい入手源として役立つ。いったん単離したDNAは、発現ベクター(PCT公開WO87/04462に開示されている発現ベクターなど)に配置することができ、その発現ベクターは、次に大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞にモノクローナル抗体の合成を得る。例えば、PCT公開WO87/04462を参照されたい。DNAは、例えば相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインについてのコード配列に置換することによって(Morrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列のすべてもしくは一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合形成させることによってもまた修飾することができる。そのようにして、本明細書の抗trkBモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を調製する。アゴニスト抗trkB抗体(その抗原結合断片など)をコードしているDNAもまた、本明細書に記載する所望の細胞にアゴニスト抗trkB抗体を送達および発現させるために使用することができる。DNA送達技術は、本明細書にさらに記載する。
【0157】
抗trkB抗体は、当技術分野で十分に公知の方法を用いて特徴付けすることができる。例えば、一方法は、抗体−抗原複合体の結晶構造を解明すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイを含めて、それが結合するエピトープを同定することであり、それは、例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies,a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1999の第11章に記載されている。追加の例では、エピトープマッピングを使用して、抗trkB抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは、様々な入手源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、オランダ)から市販されている。エピトープは、線状エピトープ、すなわち単一ストレッチのアミノ酸に含有されることもあるし、必ずしも単一ストレッチに含有されないことがある、アミノ酸の三次元相互作用により形成されるコンフォメーションエピトープのことがある。様々な長さのペプチド(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)を単離または(例えば組換え)合成して、抗trkB抗体を用いた結合アッセイに使用することができる。別の例では、抗trkB抗体が結合するエピトープは、trkB細胞外配列から誘導された重複するペプチドを使用し、抗trkB抗体による結合を決定することによる系統スクリーニングで決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによると、trkBをコードしているオープンリーディングフレームは、ランダムに、または特異的遺伝子構築物によるかのいずれかで断片化され、発現したtrkBの断片と、被験抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRにより産生し、次にin vitroで転写し、放射性アミノ酸の存在下でタンパク質に翻訳することができる。次に、放射性標識したtrkB断片への抗体の結合は、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。ある種のエピトープは、ファージ粒子の表面に表出されたランダムなペプチド配列の大規模ライブラリー(ファージライブラリー)を使用することによってもまた同定することができる。
【0158】
抗trkB抗体を特徴付けるために使用することができるなお別の方法は、同じ抗原に、すなわちtrkB細胞外ドメインに結合することが公知の他の抗体を用いた競合アッセイを使用して、抗trkB抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを判定することである。競合アッセイは、当業者に十分に公知である。競合アッセイに有用な抗体の例には、以下のものが含まれる:抗体6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、および2256。PCT公開WO01/98361を参照されたい。
【0159】
エピトープマッピングは、PCT公開WO01/98361に記載されているドメインスワップ突然変異体を使用してもまた行うことができる。概して、このアプローチは、trkAまたはtrkCと有意に交差反応しない抗trkB抗体に有用である。trkBのドメインスワップ突然変異体は、trkBの細胞外ドメインをtrkCまたはtrkA由来の対応するドメインに置き換えることにより作ることができる。様々なドメインスワップ突然変異体への各アゴニスト抗trkB抗体の結合は、ELISAまたは当技術分野で公知の他の方法を用いて、評価し、野生型(天然由来の)trkBへのその結合と比較することができる。別のアプローチでは、アラニンスキャニングを行うことができる。抗原であるtrkB受容体の個別の残基は、別のアミノ酸(通常はアラニン)に系統的に突然変異され、ELISAまたは当技術分野で公知の他の方法を用いて、修飾trkBが抗体に結合する能力を試験することによって、変化の効果が評定される。
【0160】
BDNFポリペプチド
本発明の方法に用いるtrkBアゴニストには、BDNFポリペプチドが含まれる。本明細書に使用する「BDNFポリペプチド」には、米国特許第5,180,820号に示される成熟ヒトBDNFなどの天然に存在する成熟タンパク質(相互交換可能に「BDNF」と称される)およびBDNFの天然に存在するアミノ酸配列変異体と、BDNFのアミノ酸配列変異体と、成熟BDNF(ヒトなど)および前記アミノ酸配列変異体のペプチド断片と、成熟BDNFおよび前記アミノ酸配列変異体およびペプチド断片の修飾された形態が含まれるが、ただし、ポリペプチドまたはペプチドは、天然に存在するアミノ酸以外の部分との置換により共有的に修飾されている、そのアミノ酸配列変異体、ペプチド断片、およびその修飾された形態は、trkBアゴニストおよび/または天然に存在する成熟BDNFタンパク質の1つまたは複数の生物学的活性を示す。trkBアゴニストには、本明細書に記載するBDNFポリペプチドの任意の実施形態を含む融合タンパク質およびコンジュゲート、例えばPEGまたはペプチドなどの半減期延長部分にコンジュゲートまたは融合したBDNFポリペプチドもまた含まれる。考慮中のアミノ酸配列変異体、ペプチド断片(変異体の断片を含める)、またはその修飾された形態には、任意の動物種のNGF、NT−4/5、またはNT−3は含まれない。BDNFポリペプチドには、本明細書に記載する任意の1つまたは複数の実施形態が含まれる。例えば、BDNFポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を有する天然に存在する配列を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、天然に存在する哺乳動物BDNF、または天然に存在する哺乳動物BDNFから誘導されたBDNFポリペプチドであって、天然に存在する非哺乳動物BDNFのどの部分とも合致しない配列を有するBDNFポリペプチドのことがある。いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、天然に存在するヒトBDNF、または天然に存在するヒトBDNFから誘導されたBDNFポリペプチドであって、天然に存在する非ヒトBDNFのどの部分とも合致しない配列を有するBDNFポリペプチドのことがある。
【0162】
変異体、ペプチド断片、BDNFポリペプチド(天然に存在するBDNFを含める)の修飾された形態、本発明の融合タンパク質およびコンジュゲートを含めたBDNFポリペプチドは、以下の任意の(1つまたは複数の)性質を特徴とする:(a)trkB受容体に結合する、(b)trkB受容体に結合し、trkBの生物学的活性および/またはtrkBシグナル伝達機能により仲介される1つもしくは複数の下流の経路を活性化する、(c)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、体重および/または摂食を増加させる、(d)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、悪液質の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(e)末梢投与した場合に、霊長類においてtrkB受容体に結合し、神経性食欲不振の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(f)末梢投与した場合に、哺乳動物においてtrkB受容体に結合し、オピオイド誘導性嘔吐症の1つまたは複数の症状を治療、予防、後退、または回復させる、(g)trkB受容体の二量体化および活性化を促進する、ならびに(h)trkB受容体依存性の神経細胞の生存および/または神経突起の成長を増加させる。したがって、すべてのBDNFポリペプチド(変異体、断片、および修飾された形態を含める)は、上記のように機能的である。
【0163】
変異体の生物学的活性は、当技術分野で公知の方法および本明細書に記載する方法を用いて、in vitroおよびin vivoで試験することができる。BDNFポリペプチドは、天然に存在するBDNFタンパク質に比べて高まった活性または低減した活性を有することがある。いくつかの実施形態では、機能的に等価な変異体は、上記の(または当技術分野で公知の)1つまたは複数の生物学的アッセイに関して、BDNFポリペプチドが誘導された天然由来のBDNFタンパク質に比べて少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の任意の活性を有する。いくつかの実施形態では、機能的に同等の変異体は、in vitroでのTrkB受容体の活性化(例えば、実施例6ならびに米国特許出願第2005/0209148号およびPCT公開WO2005/082401に記載されているアッセイ)において、約0.01nM、約0.1nM、約1nM、約10nM、または約100nMのいずれか未満のEC50(最大有効濃度の半値)を有する。
【0164】
BDNFのアミノ酸配列変異体には、天然に存在するBDNF(例えば成熟ヒトBDNF)の配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入、欠失、および/または置換によって、天然に存在するBDNFとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。アミノ酸配列変異体は、概して、任意の天然に存在するBDNF(成熟ヒトBDNFなど)と少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一なものである。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約85%同一である。いくつかの実施形態では、この変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約90%同一である。いくつかの実施形態では、変異体は、成熟ヒトBDNFのアミノ酸配列と少なくとも約95%同一である。
【0165】
例えば、BDNFをNGF、BDNF、またはNT−3に変換するような変異は、本発明の範囲内に含まれない。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位は所定であっても、突然変異の本質自体は所定である必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは標的領域でalaスキャニングまたはランダム突然変異誘発が行われ、発現したBDNF変異体が、最適の所望の活性についてスクリーニングされる。
【0166】
アミノ酸配列の欠失は、概して約1から30残基、より好ましくは約1から10残基の範囲であり、そして典型的には連続している。欠失は、BDNFの活性を修飾するために、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で相同性の低い領域に導入することができる。NT−4/5、NT−3、およびNGFと実質的に相同な区域でのBDNFからの欠失は、BDNFの生物学的活性をより有意に修飾すると見込みがさらに高いことがある。連続的な欠失の数は、影響を受けたドメインにおけるBDNFの三次構造(例えば、β−プリーツシートまたはαらせん)を保存するように選択することができる。
【0167】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から1000個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶ、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわち成熟BDNF配列内の挿入)は、概して、約1から10残基、より好ましくは、1から5残基、最も好ましくは1から3残基の範囲のことがある。末端挿入の一例には、組換え宿主からの成熟BDNFの分泌を容易にするために、BDNF分子のN末端に異種N末端シグナル配列を融合することが含まれる。そのようなシグナルは、概して、意図される宿主細胞と同種であり、それらには、大腸菌についてのSTIIまたはlpp、酵母についてのα因子、および哺乳動物細胞についてのヘルペスgDなどのウイルスシグナルが含まれる。他の挿入には、BDNFのNまたはC末端へのポリペプチドの融合が含まれる。
【0168】
変異体の別の群には、BDNF中の少なくとも1つ(好ましくは1つだけ)のアミノ酸残基が除去されて、異なる残基がその場所に挿入されているものが含まれる。一例は、アルギニンおよびリシンを他のアミノ酸に置き換えて、BDNFをセリンプロテアーゼによるタンパク質分解に抵抗性にすることによって、より安定なBDNF変異体を創出することである。置換突然変異誘発のための最大の関心対象の部位には、BDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5にみられるアミノ酸が、側鎖のかさ高さ、電荷、または疎水性に関して実質的に異なる部位であるが、NGF、NT−3、およびNT−4/5の様々の動物アナログ内で(例えば、すべての動物NGF、すべての動物NT−3、およびすべてのBDNFのすべての間で)選択された部位に高度の相同性もまたある部位が含まれる。この分析は、栄養因子の活性の区別に関与しうる残基を強調するものであることから、これらの部位での変異体は、そのような活性に影響を及ぼすことがある。関心対象の他の部位は、残基がすべての動物種のBDNF、NGF、NT−3、およびNT−4/5の間で同一な部位であり、このコンフォメーションの程度は、全4つの因子に共通する生物学的活性を達成することの重要性を示唆している。
【0169】
例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換には、保存的置換が含まれる。保存的置換を行う方法は、当技術分野で公知である。例えば、ala(A)は、val、leu、ileと、好ましくはvalと置換することができ、arg(R)は、lys、gln、asnと、好ましくはlysと置換することができ、asn(N)は、gln、his、lys、argと、好ましくはglnと置換することができ、asp(D)は、gluと置換することができ、cys(C)は、serと置換することができ、gln(Q)は、asnと置換することができ、glu(E)は、aspと置換することができ、gly(G)は、proと置換することができ、his(H)は、asn、gln、lys、argと、好ましくはargと置換することができ、ile(I)は、leu、val、met、ala、phe、ノルロイシンと、好ましくはleuと置換することができ、leu(L)は、ノルロイシン、ile、val、met、ala、pheと、好ましくはileと置換することができ、lys(K)は、arg、gln、asnと、好ましくはargと置換することができ、met(M)は、leu、phe、ileと、好ましくはleuと置換することができ、phe(F)は、leu、val、ile、alaと、好ましくはleuと置換することができ、pro(P)は、glyと置換することができ、ser(S)はthrと置換することができ、thr(T)は、serと置換することができ、trp(W)は、tyrと置換することができ、tyr(Y)は、trp、phe、thr、serと、好ましくはpheと置換することができ、val(V)は、ile、leu、met、phe、ala、ノルロイシンと、好ましくはleuと置換することができる。
【0170】
機能の実質的な修飾は、(a)置換の区域における、例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしてのポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに及ぼす置換の効果が有意に異なる置換を選択することにより達成することができる。天然に存在する残基は、共通の側鎖の性質に基づいて群分けされる(残基の一部は、いくつかの機能的群に入ることがある):
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0171】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のメンバーと交換することを伴うものである。
【0172】
BDNFのアミノ酸配列変異体は、天然に存在することもあるし、以前に単離したBDNF DNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望の変異ポリペプチドのin vitro合成によるなどして、合成的に調製することができる。上記のように、そのような変異体は、成熟BDNFのアミノ酸配列(例えば表1に示す配列)内に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、または挿入もしくは置換を含むことがある。欠失、挿入、および置換の任意の組合せは、結果として生じる変異ポリペプチドが、所望の特徴をもつならば、BDNFのアミノ酸配列変異体に到達するように加えられる。そのアミノ酸変化は、組換え宿主に発現した際に、例えばグリコシル化部位を導入もしくは移動するか、または膜アンカー配列を導入して、(PCT WO89/01041による)BDNFのさらなる修飾を招くこともまたある。
【0173】
いくつかの実施形態では、BDNFポリペプチドは、成熟ヒトBDNFをコードしている核酸配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0174】
同様に、またはその代わりに、変異ポリペプチドは、天然由来の遺伝子またはその部分もしくは相補体に実質的に相同なことがある。そのようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件で、そのポリペプチドをコードしている天然に存在するDNA配列(または相補的配列)にハイブリダイズすることができる。
【0175】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載するポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列があることは、当業者に認識されているものである。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然由来遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を担う。それにもかかわらず、コドン利用頻度の差異が原因で変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に考えられている。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内に属する。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つまたは複数の突然変異の結果として変更された内因性遺伝子である。結果として生じたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有することもあるが、有する必要はない。対立遺伝子は、標準技術(ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはデータベース配列の比較など)を用いて同定することができる。
【0176】
本発明の方法に使用するtrkBアゴニストには、BDNF(例えばヒトBDNF)またはその機能的ペプチド断片のアミノ酸配列を含む融合タンパク質もまた含まれる。生物学的に活性なBDNFポリペプチドは、配列、例えば、免疫学的反応性を高める配列、支持体もしくは担体へのポリペプチドの結合形成を容易にする配列、または再フォールディングおよび/もしくは精製を容易にする配列(例えば、Myc、インフルエンザウイルスヘマグルチニンから誘導されたHA、His−6、FLAGなどのエピトープをコードしている配列)と融合することができる。これらの配列は、N末端またはC末端で、BCNFポリペプチドに融合することができる。加えて、このタンパク質またはポリヌクレオチドは、その機能を増加させるか、または細胞中のその局在化を特定する、分泌配列などの他のものまたはポリペプチドに融合することができる。上記の組換え融合タンパク質を産生する方法は、当技術分野で公知である。この組換え融合タンパク質は、当技術分野で十分に公知の方法によって、産生、再フォールディング、および単離することができる。
【0177】
本明細書に記載するBDNFポリペプチドは、個体におけるそのポリペプチドの半減期を増加させるために修飾することができる。例えば、BDNFポリペプチドは、生物学的活性の最小限の損失で、全身クリアランスを低減するために、PEG化することができる。本発明は、PEG分子に連結したBDNFポリペプチドを含む組成物(医薬組成物を含む)もまた提供する。いくつかの実施形態では、このPEG分子は、可逆的連結を介してBDNFポリペプチドに連結している。PEG化BDNFポリペプチドの半減期は、非PEG化BDNFポリペプチドの半減期の約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、および約30倍のいずれかを超えるだけ延長することができる。
【0178】
PEGポリマーは、当技術分野で公知の方法を使用して、BDNFポリペプチドの様々の官能基に連結することができる。例えば、Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459〜476(2002);Sakaneら、Pharm.Res.14:1085〜91(1997)を参照されたい。PEGは、このポリペプチドの以下の官能基、すなわちアミノ基、カルボキシル基、修飾または天然N末端、アミン基、およびチオール基に連結することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の表面アミノ酸残基が、PEG分子で修飾される。PEG分子は、様々な大きさ(例えば約2から40KDaの範囲)のことがある。BDNFポリペプチドに連結したPEG分子は、約2000、約10000、約15000、約20000、約25000、約30000、約35000、約40000Daの任意の分子量を有することがある。PEG分子は、一本鎖または分岐鎖のことがある。BDNFポリペプチドにPEGを連結するために、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を使用することができる。その官能基は、BDNFポリペプチド上の利用可能な反応性基の種類に基づいて選択される。ポリペプチドに誘導体を連結する方法は、当技術分野で公知である。Robertsら、Advanced Drug Delivery Reviews 54:459から476(2002)。BDNFポリペプチドとPEGとの間の連結は、個体において切断または自然分解でき、半減期を改善するが活性の損失を最小限に抑えることができる連結(可逆的または分解可能な連結)のこともまたある。BDNFポリペプチド上のPEG連結部位は、表面の残基を、PEG反応性基を有するシステインなどのアミノ酸残基に突然変異させることによって創出することもまたできる。
【0179】
BDNFポリペプチドは、組換え手段によって、すなわち、BDNFポリペプチドをコードしている核酸の発現によって産生することができる。組換え細胞培養、および場合により、例えば、変異体の活性のバイオアッセイによるか、またはウサギ抗BDNFポリクローナル抗体(天然由来のBDNF中にも存在する、その変異体の少なくとも1つの免疫エピトープに結合する)を含む免疫アフィニティーカラムへの吸着による細胞培養物からの変異ポリペプチドの精製において。40残基以下のオーダーの小さなペプチド断片は、in vitro法により好都合に作られる。
【0180】
BDNFポリペプチドをコードしているDNAは、宿主細胞においてタンパク質を発現させるための発現ベクターにクローニングすることができる。BDNFポリペプチドをコードしている核酸の例は、米国特許出願公開第2003/0203383号に記載されている。BDNFポリペプチドをその成熟形態でコードしているDNAは、そのアミノ末端で分泌シグナルと連結することができる。この分泌シグナルは、好ましくは、通常はヒト細胞からのBDNFのin vivo分泌を指令するBDNFプレ配列である。しかし、適切な分泌シグナルには、他の動物BDNF由来のシグナル、NGF、NT−2、もしくはNT−3由来のシグナル、ウイルスシグナル、または同種もしくは関係する種の分泌ポリペプチドに由来するシグナルもまた含まれる。任意の宿主細胞(大腸菌など)は、タンパク質またはポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0181】
発現したBDNFポリペプチドは、精製することができる。BDNFポリペプチドは、培地から分泌タンパク質として回収することができるが、分泌シグナルなしに直接発現した場合には、このポリペプチドは、宿主細胞溶解物からもまた回収することができる。当技術分野で公知のタンパク質精製法を用いることができる。BDNFポリペプチドを産生する方法および発現したBDNFポリペプチドを精製する方法は、当技術分野で公知である。BDNFポリペプチドは、当技術分野で公知の方法により、大腸菌に発現させ、再フォールディングさせることができる。成熟ヒトBDNFは、(例えばR&D Systemsから)商業的に得ることもまたできる。
【0182】
NT−4/5ポリペプチドを作製および産生する方法は、BDNFポリペプチドを作製および産生するためにもまた用いることができる。
【0183】
trkBアゴニストの同定
trkBアゴニスト(抗体など)は、以下の方法の1つまたは複数を含めた、当技術分野で認められている方法を用いて同定することができる。例えば、米国特許第5,766,863号および第5,891,650号に記載されているキナーゼ受容体活性化(KIRA)アッセイを用いることができる。このELISA型アッセイは、受容体型タンパク質チロシンキナーゼ(rPTK、例えばtrk受容体)のキナーゼドメインの自己リン酸化を測定することによるキナーゼ活性化の定性または定量測定に、ならびに選択されたrPTKの潜在的アゴニストまたはアンタゴニストの同定および特徴付けに適する。アッセイの第1の段階は、キナーゼ受容体の、本発明の場合はtrkB受容体のキナーゼドメインのリン酸化を伴い、ここで、その受容体は、真核細胞の細胞膜に存在する。受容体は、内因性受容体であってもよいし、受容体をコードしている核酸すなわち受容体構築物を細胞に形質転換してもよい。典型的には、第1の固相(例えば第1のアッセイプレートのウェル)にそのような細胞(通常は哺乳動物細胞系)の実質的に均一な集団を被覆することにより、細胞を固相に接着させる。多くの場合、細胞は接着性であり、その結果、第1の固相に自然に接着する。「受容体構築物」が使用されるならば、それは、通常はキナーゼ受容体とflagポリペプチドとの融合体を含む。flagポリペプチドは、アッセイのELISA部分で、捕捉剤により、多くの場合、捕捉抗体により認識される。次に、接着した細胞を有するウェルに候補アゴニストなどの分析物を加えることにより、チロシンキナーゼ受容体(例えばtrkB受容体)を分析物に曝露(または接触)させる。このアッセイは、関心対象のチロシンキナーゼ受容体(例えばtrkB)に関するアゴニストリガンドの同定を可能にする。分析物に曝露後に、接着細胞は、溶解緩衝液(可溶化洗剤を中に有する)および穏やかな撹拌を使用して可溶化することによって、アッセイのELISA部分に直接供することができる細胞溶解物を放出し、その細胞溶解物は、濃縮する必要も、清澄化する必要もない。
【0184】
このように調製された細胞溶解物は、次に、アッセイのELISA段階に供する準備ができている。ELISA段階の第1ステップとして、第2の固相(通常はELISAマイクロタイタープレートのウェル)に、チロシンキナーゼ受容体または受容体構築物の場合にはflagポリペプチドに特異的に結合する捕捉剤(多くの場合、捕捉抗体)を被覆する。第2の固相の被覆は、捕捉剤が第2の固相に接着するように実施する。捕捉剤は、概してモノクローナル抗体であるが、本明細書の実施例に記載するように、ポリクローナル抗体または他の薬剤もまた使用することができる。得られた細胞溶解物は、次に接着性捕捉剤に曝露するか、またはそれと接触させることにより、その受容体または受容体構築物が第2の固相に接着する(または捕捉される)ようにする。次に、未結合の細胞溶解物を除去し、捕捉された受容体または受容体構築物を残す洗浄ステップを実施する。次に、接着または捕捉された受容体または受容体構築物は、チロシンキナーゼ受容体におけるリン酸化されたチロシン残基を同定する抗ホスホチロシン抗体に曝露するか、またはそれと接触させる。好ましい実施形態では、抗ホスホチロシン抗体は、非放射性呈色試薬の色変化を触媒する酵素に(直接的または間接的に)コンジュゲートされる。したがって、受容体のリン酸化は、試薬のその後の色変化により測定することができる。酵素は、抗ホスホチロシン抗体に直接結合することもできるし、コンジュゲート分子(例えばビオチン)が抗ホスホチロシン抗体にコンジュゲートすることができ、その酵素は、そのコンジュゲート分子を介して続いて抗ホスホチロシン抗体に結合することができる。最終的に、捕捉された受容体または受容体構築物への抗ホスホチロシン抗体の結合は、例えば呈色試薬の色変化により測定する。
【0185】
最初の同定に続いて、候補(例えば抗trkBモノクローナル抗体)のアゴニスト活性は、標的の生物学的活性を試験することが公知であるバイオアッセイによりさらに確認および洗練することができる。例えば、候補がtrkBを作動する能力は、完全長trkBをトランスフェクトしたPC12細胞を使用したPC12神経突起成長アッセイで試験することができる(Jianら、Cell Signal.8:365〜70、1996)。このアッセイは、適切なリガンドによる刺激に応答したラットフェオサイトクローマ(pheocytochroma)細胞(PC12)による神経突起の成長を測定する。これらの細胞は、内因性trkAを発現するため、NGFに応答性である。しかし、これらの細胞は、内因性trkBを発現しないため、trkBアゴニストに対する応答を誘起するために、trkB発現構築物をトランスフェクトされる。トランスフェクトされた細胞を候補と共にインキュベートした後に、神経突起の成長が測定され、例えば細胞の直径の2倍を超える神経突起を有する細胞が計数される。トランスフェクトされたPC12細胞における神経突起の成長を刺激する候補(抗trkB抗体など)は、trkBアゴニスト活性を実証する。
【0186】
trkBの活性化は、胚の発生の特異的段階の様々な特異的神経細胞を使用することによってもまた決定することができる。適切に選択された神経細胞は、生存のためにtrkBの活性化に依存しうるため、これらの神経細胞をin vitroで生存させた後に、trkBの活性化を決定することが可能である。適切な神経細胞の初代培養物に候補を添加することは、その候補がtrkBを活性化するならば、少なくとも数日間これらの神経細胞の生存を導くものである。これは、候補(抗trkB抗体など)がtrkBを活性化する能力を決定させる。この種のアッセイの一例では、E15マウス胚由来の下神経節を解剖し、解離させ、結果として得られた神経細胞を低密度で組織培養皿で平板培養する。次に、候補抗体を培地に添加し、プレートを24〜48時間インキュベートする。この時点の後で、様々な任意の方法により神経細胞の生存を評定する。アゴニストの投与を受けた試料は、典型的には対照抗体の投与を受けた試料よりも生存率の増加を示すものであり、これにより、アゴニストの存在の判定が可能になる。例えば、Buchmanら(1993)Development 118(3):989〜1001を参照されたい。
【0187】
trkBアゴニストは、自然に、またはtrkBをコードしているDNAのトランスフェクション後のいずれかで、trkBを発現している多様な細胞型における下流のシグナル伝達を、それが活性化する能力により同定することができる。このtrkBは、ヒトtrkBまたは他の哺乳動物(げっ歯動物または霊長類など)trkBでありうる。下流のシグナル伝達カスケードは、trkB発現細胞の様々な生化学的または生理学的パラメーター、例えばタンパク質発現レベル、もしくはタンパク質のタンパク質リン酸化レベルに対する変化、または細胞の代謝または生育状態(本明細書に記載する神経細胞の生存および/または神経突起の成長を含める)に対する変化により検出することができる。関連する生化学的または生理学的パラメーターを検出する方法は、当技術分野で公知である。
【0188】
V.キット
本発明は、本方法に使用するためのキットもまた提供する。本発明のキットは、精製されたtrkBアゴニスト(例えば、天然に存在するNT−4/5またはBDNF、および抗trkBアゴニスト抗体)を含む1つまたは複数の容器および本明細書に記載する本発明の任意の方法にしたがって使用するための説明書を包含する。概して、これらの説明書は、本明細書に記載する任意の方法により、悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症などの疾患を治療するためのtrkBアゴニストの投与の説明を含む。このキットは、治療に適した個体を、その個体が疾患および疾患の段階を有するかどうかを同定することに基づいて選択する説明をさらに含むことがある。
【0189】
trkBアゴニストの使用に関係する説明書は、概して意図される治療のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を包含する。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば多回量パッケージ)、または亜単位用量のことがある。本発明のキットに供給される説明書は、典型的にはラベルまたは添付文書(例えばキットに包含される紙片)に書かれた説明書であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気または光保存ディスクに収容される説明書)もまた許容できる。
【0190】
ラベルまたは添付文書は、組成物が、本明細書に記載する疾患(悪液質、神経性食欲不振、およびオピオイド誘導性嘔吐症など)を治療するために使用されることを表示する。説明書は、本明細書に記載する任意の方法を実施するために提供することができる。
【0191】
本発明のキットは、適切なパッケージの中にある。適切なパッケージには、非限定的に、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブルパッケージ(例えば密封マイラーまたはポリ袋)などが含まれる。吸入器、経鼻投与装置(例えばアトマイザー)、またはミニポンプなどの点滴装置などの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージもまた考えられている。キットは、滅菌アクセスポートを有することがある(例えば、容器は、静脈用溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺することができるストッパーを有するバイアルのことがある)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有することがある(例えば、容器は、静脈用溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺することができるストッパーを有するバイアルのことがある)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤はtrkBアゴニストである。容器は、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに含むことがある。
【0192】
キットは、緩衝液および解釈上の情報などの追加の構成要素を場合により提供することがある。通常は、キットは、容器と、容器の上もしくは容器に関連したラベルまたは添付文書とを含む。
【0193】
以下の実施例は、非限定的に本発明を例示するために提供される。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
NT−4/5の毎日点滴は、肥満ヒヒに体重増加および過食症を招く
肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から24日目まで1日1回2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。追加の肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から24日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。食物摂取を最初の45日間毎日測定した。動物は、最初の53日間、1週間に1回体重測定し、次に81日目および109日目にそれぞれ続行した。
【0195】
図1に、NT−4/5の毎日点滴が肥満ヒヒの体重に及ぼす効果を示す。図1に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の体重は、81日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、肥満ヒヒに長期であるが可逆的な体重増加を招いたことを示した。
【0196】
図2に、肥満ヒヒにおける食物摂取に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図2に示すように、NT−4/5処置群における摂食は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の摂食は、33日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、肥満ヒヒに可逆的な過食症を招いたことを示した。
【0197】
(実施例2)
NT−4/5の1週間に2回の点滴は、肥満ヒヒに体重増加を招くが、過食症は招かなかった
肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から39日目まで1週間に2回2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。追加の肥満雌性ヒヒ3匹(体重範囲20〜30kg)に、1日目から39日目まで1週間に2回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。摂食を最初の55日間毎日測定した。動物は最初の66日間1週間に1回体重測定し、次に94日目および122日目にそれぞれ続行した。
【0198】
図3に、NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満ヒヒの体重に及ぼす効果を示す。図3に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加し、NT−4/5処置群の体重は、94日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の1週間に2回の点滴が、肥満ヒヒに可逆的な体重増加を招いたことを示した。
【0199】
図4に、NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満ヒヒの食物摂取に及ぼす効果を示す。図4に示すように、二元配置ANOVA解析によると、1週間に2回のNT−4/5点滴は、肥満ヒヒの摂食を有意に変化させなかった。データのBonferroni事後検定解析は、NT−4/5群(黒三角)とビヒクル対照群(白四角)の間で対での有意な差を示さなかった。
【0200】
(実施例3)
NT−4/5の毎日点滴は、痩せたカニクイザルに体重増加および過食症を招いた
痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の静脈内(IV)点滴を受けさせた。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで1週間に1回0.6mg/kgのPEG化NT−4/5(PEG化NT4−G1S)のIV点滴を受けさせた。PEG化NT4/5は、ヒトNT−4/5成熟配列の1位のグリシンからセリンへの突然変異導入、および米国特許出願公開第2005/0209148号およびPCT WO2005/082401の実施例7に記載されている最初のアミノ酸セリンにPEGを付着させることにより作製した。追加の痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から31日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のIV点滴を受けさせた。摂食は、最初の50日間毎日測定した。動物は、1週間に1回、最長50日目まで体重測定した。
【0201】
図5に、痩せた雌性カニクイザルにおける体重に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図5に示すように、NT−4/5の毎日処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加したが、PEG化NT−4/5の毎週処置群では有意に増加しなかった。NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群のレベルにまだ完全には戻らなかった。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、痩せたカニクイザルの体重増加を招いたことを示した。
【0202】
図6に、痩せたカニクイザルにおける摂食に及ぼすNT−4/5の毎日点滴の効果を示す。図6に示すように、NT−4/5の毎日処置群における摂食は、ビヒクル群に比べて有意に増加したが、PEG化NT−4/5の毎週処置群では有意に増加せず、NT−4/5処置群における摂食は、38日目までにビヒクル群のレベルに戻った。このデータは、NT−4/5の毎日点滴が、痩せたカニクイザルに可逆的過食症を招いたことを示した。
【0203】
体重にNT−4/5およびPEG化NT−4/5が及ぼす効果を、皮下投与によってもまた試験した。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の皮下(SC)注射を受けさせた。痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで1日1回1mg/kgのPEG化NT−4/5のSC注射を受けさせた。追加の痩せた雌性カニクイザル3匹(体重範囲3〜5kg)に、1日目から21日目まで1日1回ビヒクル(PBS)のSC注射を受けさせた。動物は、最長21日目まで1週間に1回体重測定した。
【0204】
図7に、痩せた雌性カニクイザルにおける体重に及ぼすNT−4/5およびPEG化NT−4/5の毎日のSC注射の効果を示す。図7に示すように、NT−4/5処置群の体重は、ビヒクル群に比べて有意に増加した。加えて、PEG化NT−4/5処置群の体重もまた、ビヒクル群に比べて有意に増加した。
【0205】
(実施例4)
NT−4/5の毎日の皮下注射は、NZWウサギにおける体重および摂食に有意な効果を示さなかった
5匹の雄性および5匹の雌性ニュージーランド白色(NZW)ウサギ(体重範囲3〜4kg)に、1日目から15日目まで毎日2mg/kgのヒトNT−4/5の皮下(SC)注射を受けさせた。追加の5匹の雄性および5匹の雌性NZWウサギ(体重範囲3〜5kg)に、1日目から15日間まで1日1回ビヒクル(PBS)のSC注射を受けさせた。摂食は、最初の15日間毎日測定した。動物は、最長15日目まで1週間に1回体重測定した。
【0206】
体重または摂食について、NT−4/5処置群およびビヒクル群の間に統計的に有意な差は観察されなかった。NT−4/5処置した雄性ウサギおよびビヒクル雄性ウサギの間、ならびにNT−4/5処置した雌性ウサギおよびビヒクル雄性ウサギの間で比較を行った。
【0207】
(実施例5)
NT−4/5の単回注射は、フェレットに嘔吐を引き起こさなかったが、モルヒネ誘導性嘔吐を低減することができる
嘔吐症に及ぼすNT−4/5の効果を、約1kgの体重を有する成雌性フェレット(Marshall Farm、コネチカット州)で研究した。催吐剤(0.05mg/kgのモルヒネ6−グルクロニド、M6G)を、陽性対照として皮下に与え、NT−4/5を投与する前のベースラインを確立した。漸増する用量のNT−4/5(0.1、1、または10mg/kg)を(各投薬量について)フェレット6匹に単独で皮下注射し、NT−4/5が吐き気または嘔吐などの任意の有害作用を引き起こすことができるかどうかを試験した。加えて、2用量、すなわち1mg/kgおよび10mg/kgのNT−4/5をM6Gの10分前に与え、NT−4/5がM6G誘導性嘔吐症を抑制することができるかどうかを試験した。動物をホームケージに戻し、注射後60分間にわたり潜時、吐き気および嘔吐の回数を観察した。
【0208】
図8に示すように、0.1、1、または10mg/kgのNT−4/5単独の単回注射は、フェレットに嘔吐を引き起こさなかったが、0.05mg/kgのM6Gの単回SC注射は、効果的に催吐症を誘導した。1mg/kgおよび10mg/kgの両方のNT−4/5は、フェレットにおけるM6G誘導性嘔吐を有意に低減した。
【0209】
フェレットにおけるNT−4/5のSC注射の抗嘔吐症効果を担いうるtrkB活性化部位を試験するために、フェレット脳幹におけるtrkBのc−Fos活性化を試験した。雌性フェレット5匹に単回用量10mg/kgのNT−4/5を皮下注射し、続いて5分後に10mg/kgのシスプラチンを静脈内注射した。陰性対照として追加の雌性フェレット4匹に、ビヒクルの単回用量注射に続いて、5分後にシスプラチンの注射を行った。動物は、ペントバルビタールナトリウム(65mg/kg、ip)により1時間後に屠殺し、1L/kgのPBSに続いて1L/kgの4%パラホルムアルデヒド(pH7.3)の心臓内潅流により固定した。脳幹切片は、30umに切り出し、浮遊切片を、(PBS中の)0.1%トリトンX−100に希釈した10%正常ロバ血清(NDS)中で1時間インキュベートし、続いて0.1%トリトンX−100および10%NDSを有するPBS中のヒツジ抗Fos(1:1000、OA−11−824、Genosys Biotechnologies、英国ケンブリッジ)中で、4℃で48時間インキュベートした。切片は、PBS中で洗浄し、次にビオチン化抗ヒツジIgG二次抗体溶液中で室温で60分間インキュベートした。アビジンビオチン複合体技術(Vectastain Eliteアビジンビオチン複合体(ABC)キット、Vector)を用いて呈色させた。簡潔には、切片をABC試薬に入れて室温で60分間、次に3,3−ジアミノベンジジン(0.5mg/ml)を含有する溶液に入れて30〜60秒間インキュベートした。次に、スライド上に脳幹切片を載せ、24時間乾燥させ、50、70、95、および100%エタノール中でそれぞれ4分間脱水し、次にキシレンに入れて透明にし、その後、それらの切片をマウントして検鏡した。クレシルバイオレットで染色された隣接切片における孤束核(NTS)の核および亜核の境界を評定した。c−Fos免疫反応性神経細胞核の数を、最後野、迷走神経後核(DMNX)、ならびに閂より0.5〜1.0mm吻側および0.5mm尾側、ならびに閂での迷走神経背側核(DVC)の吻側尾側の範囲に沿った3レベルでNTSのすべての亜核について両側的に決定した。動物毎レベル毎に3つの切片を計数し、平均した。ANOVA(Prism;GraphPadSoftware、カリフォルニア州サンディエゴ)をTukeyの後検定と共に使用してデータを比較した。NT−4/5処置は、ビヒクルを注射した動物に比べて最後野におけるc−Fos陽性核の数を劇的に増加させた(図9A、P=0.0009、Studentのt検定)。対照的に、NT−4/5処置は、ビヒクルを注射した動物に比べて迷走神経後核におけるc−Fos陽性核の数を有意に減少させた(図9B、P=0.0047、Studentのt検定)。他方で、NT−4/5処置は、NTSの複数の亜核および視床下部の室傍核を含めた他の脳幹核におけるc−Fos陽性核の数を有意には変更しなかった。
【0210】
最後野は、大部分の他の脳領域とは異なり、血液脳関門の外側に位置し、循環している高分子と完全にアクセスできる(最近の例としては、YangおよびFerguson、2003、Regul.Pept.112(1〜3):9〜17参照)。c−Fosの誘導は、BDNFおよびNT−4/5などのtrkBリガンドによるtrkB活性化の公知の最初期事象である(Ipら、1993、J.Neurosci.13(8):3394〜405およびMarshら、1993、J.Neurosci.13(10):4281〜92)。
【0211】
これらのデータは、一緒になって、最後野が、少なくとも部分的に、系統的に送達されたNT−4/5または他のtrkBアゴニストの真の「末梢的にアクセス可能な」標的になることを示唆している。迷走神経後核におけるc−Fosの発現低減(図9B)は、NT−4/5前処置による嘔吐回路の部分的減弱を反映しているおそれがある。
【0212】
(実施例6)
trkBアゴニスト抗体の作製およびスクリーニング
モノクローナル抗TrkBアゴニスト抗体を作製するための免疫処置:Balb/Cマウス1匹に、抗原としてヒトTrkB細胞外ドメイン8ugを定期的なスケジュールで5回注射した。ベクターpTriEx−2 Hygro(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、293細胞にHisタグ付きヒトTrkB細胞外ドメイン(残基31〜430)を発現させた。Ni−NTA樹脂を製造業者(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)の説明通りに使用して、trkB細胞外ドメインを精製した。最初の4回の注射については、ヒトTrkBをRIBIアジュバントシステムおよびミョウバンと混合することによって抗原を調製した。首筋、足底、およびIPにおよそ3日毎に11日間のクールで注射することにより、合計8ugの抗原を与えた。13日目にマウスを安楽死させ、脾臓を取り出した。リンパ球を8653細胞と融合させ、ハイブリドーマクローンを作った。クローンを生育させ、次に、ヒトおよびラット両方のTrkB ELISAを用いたELISAスクリーニングにより、抗TrkB陽性クローンとして選択した。
【0213】
抗trkB抗体のELISAスクリーニング:クローンがヒトおよびラット両方のTrkBと結合する能力について、生育中のハイブリドーマクローンからの上清をスクリーニングした。アッセイは、0.5ug/mlのラットまたはヒトTrkB−Fc融合タンパク質100ulを一晩被覆した96ウェルプレートを用いて行った。各ステップの間に、0.05%Tween−20を含有するPBSを用いて、過剰の試薬をウェルから洗浄して除いた。次に、0.5%BSAを含有するリン酸緩衝溶液(PBS)でプレートをブロックした。上清をプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗マウスFcを添加して、TrkBに結合したマウス抗体に結合させた。次に、テトラメチルベンジジンをHRPについての基質として添加し、上清に存在するマウス抗体の量を検出した。反応を停止させ、450nmで吸光度を読み取ることにより抗体の相対量を定量した。50個の抗体がELISAアッセイで陽性と示された。これらの抗体のうち、5個をさらに試験し、それらがアゴニスト活性を有することが示された。下記表2を参照されたい。
【0214】
KIRAアッセイ:このアッセイは、ヒトTrkBに関する受容体型チロシンキナーゼ活性化を誘導する能力について、ELISAで陽性と見出された抗体をスクリーニングするために使用した。Sadickら(1997)Experimental Cell Research 234(2):354〜61。天然リガンドであるBDNFおよびNT−4/5を用いてみられる活性化に類似して、gDタグ付きヒトTrkBをトランスフェクトされた安定細胞系を利用して、ハイブリドーマクローンからの精製マウス抗体が細胞表面の受容体を活性化する能力について、それらの抗体を試験した。天然リガンドは、TrkB受容体のキナーゼドメインの自己リン酸化を誘導した。細胞を様々な濃度の抗体に曝露した後で、それらの細胞を溶解させ、ELISAを行ってTrkB受容体のリン酸化を検出した。各推定TrkBアゴニストについてEC50(下記表2および図10に示す)を決定し、天然リガンドNT−4/5のEC50と比較した。
【0215】
E15節状神経細胞生存アッセイ:E15の胚から得た下神経節神経細胞はBDNFにより支援されていたため、飽和濃度の神経栄養因子で、生存率は培養48時間まで100%に近かった。BDNFの不在下では、5%未満の神経細胞が48時間まで生存した。したがって、E15結節性神経細胞の生存率は、抗TrkB抗体のアゴニスト活性を評価するための高感度アッセイであり、すなわち、アゴニスト抗体は、E15結節性神経細胞の生存を促進するであろう。
【0216】
定時交配させた妊娠Swiss Webster雌性マウスをCO2吸入により安楽死させた。子宮角を取り出し、胚期E15の胚を抽出した。下神経節を解剖し、次にトリプシン処理し、機械的に解離させ、ポリ−L−オルニチンおよびラミニンで被覆した96ウェルプレートに入れた所定の無血清培地中で、ウェル1個あたり200〜300細胞の密度で平板培養した。抗TrkB抗体のアゴニスト活性は、3回の繰り返しでヒトBDNFに対して用量反応的に評価した。培養48時間後に、Biomek FX液体取扱いワークステーション(Beckman Coulter)で行った自動免疫細胞化学プロトコールに細胞を供した。プロトコールには、固定(4%ホルムアルデヒド、5%スクロース、PBS)、透過処理(PBS中の0.3%トリトンX−100)、非特異的結合部位のブロッキング(5%正常ヤギ血清、0.1%BSA、PBS)、ならびに神経細胞を検出するための一次および二次抗体を用いた連続インキュベーションが含まれた。タンパク質遺伝子産物9.5(PGP9.5、Chemicon)に対するウサギポリクローナル抗体は、樹立された神経細胞表現型マーカーであったが、その抗体を一次抗体として使用した。Alexa Fluor488ヤギ抗ウサギ(Molecular Probes)は、培養物に存在するすべての細胞の核を標識するために、核色素Hoechst33342(Molecular Probes)と一緒に二次試薬として使用した。画像取得および画像解析は、Discovery−1/GenII Imager(Universal Imaging Corporation)で行った。画像は、Alexa Fluor488およびHoechst33342に関する2波長で自動的に取得し、核染色がすべてのウェルに存在することから、画像装置の画像に基づくオートフォーカスシステムに関する基準点として核染色を使用した。適切な目標およびウェル毎に画像化する部位の数は、各ウェルの表面全体に及ぶように選択した。自動化画像解析は、抗PGP9.5抗体を用いた神経細胞の特異的染色に基づいて、培養48時間後に各ウェルに存在する神経細胞数を計数するために設定した。画像の慎重な閾値設定ならびに形態および蛍光強度に基づく選択性フィルターの適用は、ウェル毎に神経細胞の正確な計数を招いた。EC50(下記表2および図11に示す)は、各推定TrkBアゴニスト抗体について決定し、天然リガンドのEC50と比較した。
【0217】
下記表2に、同定された5つの抗trkB抗体ならびにマウス神経細胞の生存に及ぼすそれらの活性およびヒトtrkBに及ぼすリン酸化活性を示す。
【0218】
【表2】
【0219】
マウスへの抗trkBアゴニスト抗体の頭蓋内注射:雄性C57B6繁殖引退マウス(8〜12月齢)をCharles River Laboratories(Hollister施設)から得て、それを、12時間の明暗サイクルで、注射前の少なくとも5日間に食事および水を自由摂取させて、温度/湿度制御環境で順応させた。各マウスをイソフルランで麻酔し、頭蓋の上の部分の毛を刈り込んだ。マウスを脳底固定外科装置(Kopfモデル900)に固定し、麻酔し、媒質にセットした電気加温パッドで保温した。頭蓋の剪毛した部分にベタジンを塗布し、その領域を滅菌した。頭蓋骨の上の耳のちょうど後ろから開始して眼の方向に、約1cm長の小さな正中縦切開を行った。頭蓋を露出させ、頭蓋表面の直径約1cmの円形スペースを綿棒で清浄にし、任意の結合組織を除去した。表面は、30%過酸化水素に浸した綿棒で清浄にし、ブレグマを露出させた。頭蓋の深さを測定するプローブとしてドリルのチップを使用して、頭蓋骨を水平垂直方向に調整して、それがドリル処置前のレベルであったことを保証した。外側0.5mmに比べた内側0.5mmからの、および後側0.5mmに比べた前側0.5mmからの(ブレグマで0に合わせた)深さの偏差は、±0.05mmの差に入るように最小化した。マウス脳アトラス(Franklin、K.B.J.& Paxinos,G.、The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates、Academic Press、サンディエゴ、1997)によると、単回外側視床下部内注射の座標は以下の通りであった:ブレグマから1.30mm後側;正中から−0.5mm、(ブレグマでの)頭蓋表面から深さ5.70mm。脳と接触するのを避けながら頭蓋を通してドリルで小さな穴を開けた。ドリルを、Hamiltonシリンジ(モデル84851)に取り付けた斜端26ゲージ針に取り換え、同じ座標に戻った。外側視床下部に化合物2ulを2分間にわたり徐々に増やして注射した。注射後30秒間針をこの位置に保ち、次に1mm上げた。もう30秒間経った後で、針を1mm上げた。30秒後に、針を完全に取り出した。次に、切開を閉じ、2〜9mmの創傷クリップ(Autoclip、Braintree Scientific,Inc.、マサチューセッツ州ブレーントリー)を用いて閉じ合わせた。0日目に注射を行った。体重および摂食を毎日15日目までモニターした。
【0220】
図12Aおよび12Bに示すように、特定の用量での抗体18H6および36D1の頭蓋内注射は、マウスにおける体重および摂食を有意に低減した。特定の用量で与えた対照IgG抗体および23B8は、摂食にも体重にも有意には影響しなかった。統計解析には、二元配置ANOVAをBonferroni事後検定と共に用いた。これは、CNSに直接注射した場合に、抗trkBアゴニスト抗体が、体重および摂食に対して、天然trkBアゴニストであるNT−4/5に質的に類似した効果を有することを示している。
【0221】
(実施例7)
trkBアゴニスト抗体の末梢注射は、サルにおいて摂食および体重の増加を招いた
痩せた成雌性カニクイザル(ベースラインで体重3〜5kg)に、1週間に2回マウスモノクローナルアゴニスト抗体38B8の静脈内注射を受けさせ、別の動物3匹にビヒクルの注射を受けさせた。摂食を毎日モニターし、体重を毎週モニターした。PRISM(GraphPad Software Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて統計解析を行った。すべてのデータおよびグラフは、平均±平均の標準誤差(SEM)で表現した。データはDunnet後検定と共に二次元ANOVAにより解析した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【0222】
5mg/kgのtrkBアゴニスト抗体38B8の1週間に2回の注射で処置したサルは、2週間以内に累積摂食の40%増加(図13A)および体重の10%増加(図13B)を示し、これは、trkBチロシンキナーゼ受容体の特異的活性化が摂食の増加、カロリー摂取の増加、および体重増加を仲介することを示している。
【0223】
本明細書に記載する実施例および実施形態は、単に例示目的であり、それに照らして当業者に様々な修飾または変化が示唆されるものであり、本出願の精神および範囲内に含まれるものとすることは、理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における悪液質を治療する方法。
【請求項2】
前記霊長類がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における神経性食欲不振を治療する方法。
【請求項4】
前記霊長類がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療する方法。
【請求項6】
前記哺乳動物がヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における悪液質を治療する方法。
【請求項8】
前記霊長類がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における神経性食欲不振を治療する方法。
【請求項12】
前記霊長類がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療する方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
悪液質、神経性食欲不振、望まれない体重減少、またはオピオイド誘導性嘔吐症を治療するための末梢投与用医薬の製造への、NT−4/5またはその薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項20】
悪液質、神経性食欲不振、望まれない体重減少、またはオピオイド誘導性嘔吐症を治療するための末梢投与用医薬の製造への、trkBアゴニストまたはその薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項21】
前記trkBアゴニストがtrkB選択的である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法。
【請求項24】
前記霊長類がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記望まれない体重減少が、加齢に関連する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒトが、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項2、24、または25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法。
【請求項28】
前記霊長類がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項27から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトが、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項8から10または28から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記望まれない体重減少が、加齢に関連する、請求項27から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒトが、約18.5kg/m2、約17.5kg/m2、または約16.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項4または12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における悪液質を治療する方法。
【請求項2】
前記霊長類がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における神経性食欲不振を治療する方法。
【請求項4】
前記霊長類がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療する方法。
【請求項6】
前記哺乳動物がヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における悪液質を治療する方法。
【請求項8】
前記霊長類がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における神経性食欲不振を治療する方法。
【請求項12】
前記霊長類がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、哺乳動物におけるオピオイド誘導性嘔吐症を治療する方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
悪液質、神経性食欲不振、望まれない体重減少、またはオピオイド誘導性嘔吐症を治療するための末梢投与用医薬の製造への、NT−4/5またはその薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項20】
悪液質、神経性食欲不振、望まれない体重減少、またはオピオイド誘導性嘔吐症を治療するための末梢投与用医薬の製造への、trkBアゴニストまたはその薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項21】
前記trkBアゴニストがtrkB選択的である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
有効量のNT−4/5を末梢投与することを含む、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法。
【請求項24】
前記霊長類がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記望まれない体重減少が、加齢に関連する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒトが、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項2、24、または25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
有効量のtrkBアゴニストを末梢投与することを含む、霊長類における望まれない体重減少を治療する方法。
【請求項28】
前記霊長類がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記trkBアゴニストが抗trkBアゴニスト抗体である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記アゴニストがtrkB選択的である、請求項27から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトが、約25.0kg/m2、約24.0kg/m2、約23.0kg/m2、約22.0kg/m2、約21.0kg/m2、約20kg/m2、約19.0kg/m2、および約18.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項8から10または28から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記望まれない体重減少が、加齢に関連する、請求項27から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒトが、約18.5kg/m2、約17.5kg/m2、または約16.5kg/m2のいずれか未満のボディーマスインデックスを有する、請求項4または12から14のいずれか1項に記載の方法。
【図1】NT−4/5の毎日点滴が肥満雌性ヒヒの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群およびビヒクル群を比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったことを示した(F=50.71、P<0.0001)。Bonferroni事後検定解析は、NT−4/5処置群(黒三角)とビヒクル群(白四角)との間に対での有意な差を示した。グラフに示すように、*はP<0.05を示し、**はP<0.01を示し、***は、P<0.001を示す。
【図2】NT−4/5の毎日点滴が肥満雌性ヒヒの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、ヒヒが1日に食べたビスケットの数に対応する。NT−4/5処置群をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の摂食が、ビヒクル群と有意に異なったことを示した(F=262.5、P<0.0001)。Bonferroni事後検定は、NT−4/5処置群(黒三角)とビヒクル群(白四角)との間の対での有意な差を示した。グラフの黒棒線は、対応のある比較がP<0.05以下を招いた期間を示す。
【図3】NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満雌性ヒヒの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを使用した。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なることを示した(F=34.81、P<0.0001)。Bonferroni事後検定の解析は、NT−4/5処置群(黒三角)とビヒクル群(白四角)との間の対での有意な差を示した。*はP<0.05を示し、**はP<0.01を示す。
【図4】NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満雌性ヒヒの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、ヒヒが1日に食べたビスケットの数に対応する。
【図5】NT−4/5の毎日の点滴およびPEG化NT−4/5の毎週の点滴が、痩せたカニクイザルの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったが、PEG化NT−4/5処置群では有意に異ならなかったことを示した(F=54.98、P<0.0001)。Bonferroni事後検定解析は、NT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間に対での有意な差を示したが、PEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間では示さなかった。グラフに示す***は、P<0.001を示す。
【図6】NT−4/5の毎日の点滴およびPEG化NT−4/5の毎週の点滴が、痩せたカニクイザルの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、サルが1日に食べたビスケットの数に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったが、PEG化NT−4/5処置群では有意に異ならなかったことを示した(F=33.82、P<0.0001)。Bonferroni事後検定は、15、16、17、19、22、23、25、および30日目にNT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間に対での有意な差を示した(P<0.05以下)が、PEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間に対での有意な差は示さなかった。
【図7】NT−4/5の毎日の皮下注射およびPEG化NT−4/5の毎日の皮下注射が、痩せたカニクイザルの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったことを示した(F=19.10、P<0.0001)。Bonferroni事後検定の解析は、NT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間で、およびPEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間で対での有意な差を示した。***はP<0.001を示し、**は、P<0.01を示す。
【図8】NT−4/5の単回注射がフェレットのモルヒネ誘導性嘔吐症に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、注射した薬物の種類に対応し、Y軸は注射後60分間にわたる吐き気および嘔吐の回数に対応する。Dunnettの後検定と共に一元配置ANOVAを統計解析に用いた。P値をグラフに示す。
【図9】フェレット後脳におけるNT−4/5によるc−Fos誘導を示す図である。図9Aは、最後野で抗c−Fos抗体により染色された核の数を示す。図9Bは、迷走神経後核で抗c−Fos抗体に染色された核の数を示す。
【図10】様々な抗trkB抗体(36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6)によるKIRAアッセイにおけるtrkBチロシンリン酸化レベルをヒトNT−4/5と比較して示す図である。
【図11】いくつかのtrkBアゴニスト抗体により支持される節状神経細胞の生存のグラフである。X軸は、Swiss Websterマウスから得られた胚齢15日(E15)培養節状神経細胞に添加した、異なる濃度の抗trkB抗体を表す。Y軸は、平板培養の48時間後の生存神経細胞数を表す。各点は4回の測定の平均であり、誤差の棒線は、平均からの1標準偏差の分散を示す。データは、試験したtrkB抗体の一部が、節状神経細胞の生存を支持できること、およびこれらの抗体の50%有効濃度(EC50)が、この培養条件で0.1pM未満から10pM超までの範囲であることを示す(表1参照)。
【図12】抗trkBアゴニスト抗体の頭蓋内注射が、マウスの体重(図12A)および摂食(図12B)に及ぼす効果を示すグラフである。抗体およびNT−4/5を0日目に注射した。体重および摂食は、15日目まで毎日測定した。***は、マウスIgG対照に比べてP<0.001を示し、**は、マウスIgG対照に比べてP<0.01を示し、*は、マウスIgG対照に比べてP<0.05を示す。
【図13】抗trkBアゴニスト抗体の末梢静脈内注射が、カニクイザルの体重(図13A)および摂食(図13B)に及ぼす効果を示すグラフである。抗体を1日目に注射した。体重を毎週モニターし、摂食を毎日モニターした。***は、対照ビヒクルに比べてP>0.001を示し、**は、対照ビヒクルに比べてP>0.01を示し、*は、対照ビヒクルに比べてP>0.05を示す。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】NT−4/5の毎日点滴が肥満雌性ヒヒの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、ヒヒが1日に食べたビスケットの数に対応する。NT−4/5処置群をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の摂食が、ビヒクル群と有意に異なったことを示した(F=262.5、P<0.0001)。Bonferroni事後検定は、NT−4/5処置群(黒三角)とビヒクル群(白四角)との間の対での有意な差を示した。グラフの黒棒線は、対応のある比較がP<0.05以下を招いた期間を示す。
【図3】NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満雌性ヒヒの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを使用した。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なることを示した(F=34.81、P<0.0001)。Bonferroni事後検定の解析は、NT−4/5処置群(黒三角)とビヒクル群(白四角)との間の対での有意な差を示した。*はP<0.05を示し、**はP<0.01を示す。
【図4】NT−4/5の1週間に2回の点滴が肥満雌性ヒヒの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、ヒヒが1日に食べたビスケットの数に対応する。
【図5】NT−4/5の毎日の点滴およびPEG化NT−4/5の毎週の点滴が、痩せたカニクイザルの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったが、PEG化NT−4/5処置群では有意に異ならなかったことを示した(F=54.98、P<0.0001)。Bonferroni事後検定解析は、NT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間に対での有意な差を示したが、PEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間では示さなかった。グラフに示す***は、P<0.001を示す。
【図6】NT−4/5の毎日の点滴およびPEG化NT−4/5の毎週の点滴が、痩せたカニクイザルの摂食に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、摂食を測定した日に対応し、Y軸は、サルが1日に食べたビスケットの数に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったが、PEG化NT−4/5処置群では有意に異ならなかったことを示した(F=33.82、P<0.0001)。Bonferroni事後検定は、15、16、17、19、22、23、25、および30日目にNT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間に対での有意な差を示した(P<0.05以下)が、PEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間に対での有意な差は示さなかった。
【図7】NT−4/5の毎日の皮下注射およびPEG化NT−4/5の毎日の皮下注射が、痩せたカニクイザルの体重に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、体重を測定した日に対応し、Y軸は、ベースライン(任意の処置前の体重)に対する率として測定した体重に対応する。NT−4/5処置群またはPEG化NT−4/5(PEG−NT−4/5)をビヒクル群と比較するために二元配置ANOVAを用いた。データは、NT−4/5処置群の体重が、ビヒクル群と有意に異なったことを示した(F=19.10、P<0.0001)。Bonferroni事後検定の解析は、NT−4/5処置群(三角)とビヒクル群(四角)との間で、およびPEG化NT−4/5群(逆三角)とビヒクル群との間で対での有意な差を示した。***はP<0.001を示し、**は、P<0.01を示す。
【図8】NT−4/5の単回注射がフェレットのモルヒネ誘導性嘔吐症に及ぼす効果を示すグラフである。X軸は、注射した薬物の種類に対応し、Y軸は注射後60分間にわたる吐き気および嘔吐の回数に対応する。Dunnettの後検定と共に一元配置ANOVAを統計解析に用いた。P値をグラフに示す。
【図9】フェレット後脳におけるNT−4/5によるc−Fos誘導を示す図である。図9Aは、最後野で抗c−Fos抗体により染色された核の数を示す。図9Bは、迷走神経後核で抗c−Fos抗体に染色された核の数を示す。
【図10】様々な抗trkB抗体(36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6)によるKIRAアッセイにおけるtrkBチロシンリン酸化レベルをヒトNT−4/5と比較して示す図である。
【図11】いくつかのtrkBアゴニスト抗体により支持される節状神経細胞の生存のグラフである。X軸は、Swiss Websterマウスから得られた胚齢15日(E15)培養節状神経細胞に添加した、異なる濃度の抗trkB抗体を表す。Y軸は、平板培養の48時間後の生存神経細胞数を表す。各点は4回の測定の平均であり、誤差の棒線は、平均からの1標準偏差の分散を示す。データは、試験したtrkB抗体の一部が、節状神経細胞の生存を支持できること、およびこれらの抗体の50%有効濃度(EC50)が、この培養条件で0.1pM未満から10pM超までの範囲であることを示す(表1参照)。
【図12】抗trkBアゴニスト抗体の頭蓋内注射が、マウスの体重(図12A)および摂食(図12B)に及ぼす効果を示すグラフである。抗体およびNT−4/5を0日目に注射した。体重および摂食は、15日目まで毎日測定した。***は、マウスIgG対照に比べてP<0.001を示し、**は、マウスIgG対照に比べてP<0.01を示し、*は、マウスIgG対照に比べてP<0.05を示す。
【図13】抗trkBアゴニスト抗体の末梢静脈内注射が、カニクイザルの体重(図13A)および摂食(図13B)に及ぼす効果を示すグラフである。抗体を1日目に注射した。体重を毎週モニターし、摂食を毎日モニターした。***は、対照ビヒクルに比べてP>0.001を示し、**は、対照ビヒクルに比べてP>0.01を示し、*は、対照ビヒクルに比べてP>0.05を示す。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−528985(P2009−528985A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552918(P2008−552918)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000254
【国際公開番号】WO2007/088476
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000254
【国際公開番号】WO2007/088476
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]