説明

v−セレンテラジン化合物の製造方法

【課題】v-セレンテラジン化合物の簡便な製造方法が求められていた。
【解決手段】一般式(II)で表されるv-セレンテラジン化合物の製造方法であって、(1)一般式(VIII)で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)で表される化合物を得る工程と、(2)一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後、R4および存在する場合にはR5を脱保護し一般式(XIV)で表されるv-セレンテラミン化合物を得る工程と、(3)一般式(XIV)で表される化合物と一般式(XV)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表される化合物を得る工程を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、v-セレンテラジン化合物の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい薬剤の開発が今なお世界中で活発に行われているものの、開発に要する労力に比べて、効率的に新薬が開発できているとは言い難い。これは、生体分子機能への理解が未だに十分ではないことが一因と考えられ、実際、現行の医薬品でさえ、生体にどのように作用し、その薬効を示しているのか未解明な場合が多い。そのため、新規薬剤の開発には、多数の候補化合物の合成が必要とされている。従って、疾患に関与する生体分子機構の詳細を明らかにできれば、新薬開発が大幅に効率化され、画期的な分子標的薬剤の開発につながると期待される。また、最近、新薬の動物実験時に同一個体での追跡解析が要求されるようになったため、実験動物への倫理的観念もあり、非侵襲的な生体内イメージング技術の開発が強く求められている。
【0003】
近年、生体分子機能を解明する新手法として、緑色蛍光タンパク質(GFP)に代表されるように、生命現象に関わる分子を可視化するイメージング技術が医学・生物学分野で重要な役割を果たすようになってきた。一方、生きた動物においても望みの分子をイメージングできる手法(生体内分子イメージング)は未だ発展途上であり、なかでも、生体組織を透過できる近赤外領域(波長 700 nm以上)での蛍光や発光イメージングに利用可能な分子プローブ開発が精力的に行われている(非特許文献1: T. Nagano et al., Chem. Asian J. 2008, 3, 506)。
【0004】
本発明者らは、実用的な近赤外生物発光系を新たに開発できれば革新的な生体内イメージング法が提供できると考え、古くから研究されている代表的な生物発光基質であるセレンテラジン(CTZ、1)に改めて着目して研究を行ってきた。
【0005】
CTZは、オワンクラゲ由来の発光タンパク質であるイクオリンをはじめ、ウミシイタケ由来Renillaルシフェラーゼ、コペポーダ由来Gaussiaルシフェラーゼ、デカポーダ由来Oplophorusルシフェラーゼなど、多くの海洋生物に共通の発光基質として利用されている。従って、CTZの構造を改変することでいずれかのルシフェラーゼに適用できる近赤外発光性CTZ化合物(CTZおよびその類縁体)を開発できれば、ルシフェラーゼを指標として、対象タンパク質の生体内局在やその絶対量・代謝速度、対象遺伝子のプロモーター・エンハンサー活性、対象となる細胞の生体内局在による生命現象の高感度検出など、生きた動物にも適用可能な発光イメージング法を提供できると期待される。
【0006】
これまでに50種類程度のCTZ化合物が合成され、それらの一部についてはいくつかの生物発光系において基質特異性が調べられている。
【0007】
なかでも、下村・岸らによって最初に報告されたv-セレンテラジン(v-CTZ、2)は(非特許文献2: O. Shimomura, Y. Kishi, et al., Biochem. J. 1988, 251, 405)、後に井上・下村により、イクオリン、Renillaルシフェラーゼ、Oplophorusルシフェラーゼに対する発光特性が調べられ、その結果、Renillaルシフェラーゼの基質として用いた場合に、CTZを用いた際には最大発光波長が475 nm(青色発光)であったものが512 nm(緑色発光)へ40 nmほど長波長シフトすることが見いだされている(非特許文献3: S. Inouye & O. Shimomura, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1997, 233, 349)。しかも、この発光スペクトル分布の一部(〜5%)は近赤外領域(>700 nm)に達することも明らかにされた。
【0008】
【化1】

【0009】
さらに最近A.M. Loenigらは、Renillaルシフェラーゼのアミノ酸配列を変異させることでさらなる長波長シフトを達成している(非特許文献4: A.M. Loenig et al., Nature Methods 2007, 4, 641)。すなわち、改変したRenillaルシフェラーゼに対して、基質としてv-CTZを用いたときに最大発光波長が547 nm(緑色発光)にまでシフトすることを報告している。彼らはこの発光系を利用することで、実際に生きたマウスにおけるイメージングにも成功している。
【0010】
しかし、実用的な生体内イメージング系を確立させるには、より長波長領域での発光が望ましい上、v-CTZが著しく酸化されやすく安定性にも問題があることが指摘されているため(非特許文献5: E. S. Vysotski et al., Anal. Bioanal. Chem. 2010, 398, 1809)、CTZ近赤外生物発光系において実用的な新しい基質の創出が重要な課題である。
【0011】
さらに、v-CTZの詳細な製造方法はこれまでに報告されておらず、その確立が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T. Nagano et al., Chem. Asian J. 2008, 3, 506
【非特許文献2】O. Shimomura, Y. Kishi, et al., Biochem. J. 1988, 251, 405
【非特許文献3】S. Inouye & O. Shimomura, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1997, 233, 349
【非特許文献4】A.M. Loenig et al., Nature Methods 2007, 4, 641
【非特許文献5】E. S. Vysotski et al., Anal. Bioanal. Chem.2010, 398, 1809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記状況において、v-セレンテラジン化合物の簡便な製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、v-セレンテラジンの他、多様なv-セレンテラジン類縁体の製造にも適用可能な柔軟性が高く簡便な製造方法の開発に成功した。
【0015】
すなわち、本発明は、以下に示す、v-セレンテラジン化合物の製造方法などを提供する。
[1] 一般式(XIV)
【化2】


(式中、R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または置換もしくは非置換の複素環基である。)
で表されるv-セレンテラミン化合物の製造方法であって、
(1)一般式(VIII)
【化3】


(式中、R1は、前記の通りであり、R4は、保護基である。)
で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)
【化4】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得る工程と、
(2)一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)
【化5】


(式中、R1およびR4は前記の通りであり、R5は、保護基である。)
で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後、R4および存在する場合にはR5を脱保護する工程を含む、方法。
[2] 一般式(II)
【化6】


(式中、
R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または置換もしくは非置換の複素環基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、または置換もしくは非置換の炭化水素基である。)
で表されるv-セレンテラジン化合物の製造方法であって、
(1)一般式(VIII)
【化7】


(式中、R1は、前記の通りであり、R4は、保護基である。)
で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)
【化8】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得る工程と、
(2) 一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)
【化9】


(式中、R1およびR4は前記の通りであり、R5は保護基である。)
で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後、R4および存在する場合にはR5を脱保護し一般式(XIV)
【化10】


(式中、R1は前記の通りである。)で表されるv-セレンテラミン化合物を得る工程と、
(3)一般式(XIV)で表される化合物と一般式(XV)
【化11】


(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、炭化水素基、または保護基によって保護された水酸基である。)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表される化合物を得る工程を含む、方法。
[3] 前記工程(1)において、塩基として、n−ブチルリチウム、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびリチウムジイソプロピルアミドから選択される少なくとも1つの塩基を用いる、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記工程(1)において、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、およびトルエンから選択される少なくとも1つの溶媒を用いる、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記工程(1)の反応温度および反応時間を、0 ℃〜40 ℃で1時間〜4時間とする、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記工程(2)の閉環メタセシス反応の触媒として、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒を用いる、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記工程(2)の閉環メタセシス反応の溶媒として、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、およびジメトキシエタンから選択される少なくとも1つの溶媒を用いる、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記工程(2)の閉環メタセシス反応の反応温度および反応時間を、25 ℃〜110 ℃で1時間〜48時間とする、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記式中、R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリールアルケニル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルケニル、脂肪族環基、複素環基、または脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキニルである、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 前記式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、ハロゲン、脂肪族環基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル、トリフルオロメチル、またはアルコキシルである、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記式中、R4は、メチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、4-メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 前記式中、R5は、アセチル、ベンゾイル、p-トシル、tert-ブトキシカルボニル、またはベンジルオキシカルボニルである、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記式中、RおよびRの水酸基を保護する保護基は、それぞれ独立して、tert−ブチルジメチルシリル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、フェニルジメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである、上記[2]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記一般式(VIII)で表される化合物が、
(1) 2-アミノ-3,5-ジブロモ-6クロロピラジンと、R1MgX(式R1は、前記の通りであり、Xは、ハロゲンである。)およびZnCl2とを、パラジウム触媒の存在下で反応させることにより一般式(V)
【化12】


(式中、R1は前記の通りである。)
で表される化合物を得ることと、
(2) 一般式(V)で表される化合物と、式(VI)
【化13】


(式中、R4は前記の通りである。)
で表される化合物とをパラジウム触媒と塩基の存在下で反応させることにより一般式(VII)
【化14】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得ることと、
(3) 一般式(VII)で表される化合物と、トリブチル(ビニル)スズとをパラジウム触媒の存在下で反応させること、
により得られる、上記[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、v-セレンテラジン化合物を簡便に製造する方法が提供される。本発明の好ましい態様によれば、v-セレンテラジン化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
1. v-セレンテラジン化合物
本発明は、下記一般式(II)で表される化合物(本発明のv-セレンテラジン化合物)を提供する。
【0018】
【化15】


(式中、
R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または置換もしくは非置換の複素環基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、または置換もしくは非置換の炭化水素基である。)
【0019】
本発明の好ましい態様では、R1〜R3の置換もしくは非置換の炭化水素基および置換もしくは非置換の複素環基は、本発明のv-セレンテラジン化合物またはv-セレンテラミン化合物の製造方法における各反応を実質的に阻害しない。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様では、上記式中、
R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリールアルケニル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルケニル、脂肪族環基、複素環基、または脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキニルであり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、ハロゲン、脂肪族環基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル、トリフルオロメチル、またはアルコキシルである。
【0021】
R1の「ハロゲン」は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。本発明の好ましい態様によれば、「ハロゲン」は、フッ素である。
【0022】
R1の「置換もしくは非置換のアリール」は、例えば1〜5個の置換基を有するアリール、または非置換のアリールである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、炭素数1〜6個のジアルキルアミノなどからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。本発明のいくつかの態様では、置換基は水酸基である。「置換もしくは非置換のアリール」は、具体的には、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、p−アミノフェニル、p−ジメチルアミノフェニルなどであり、好ましくは、フェニル、p−ヒドロキシフェニルなどである。本発明のいくつかの態様では、「置換もしくは非置換のアリール」は、非置換のアリールであり、例えば、フェニルなどである。
【0023】
R1の「置換もしくは非置換のアリールアルキル」は、例えば1〜5個の置換基を有する炭素数7〜10個のアリールアルキル、または非置換の炭素数7〜10個のアリールアルキルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、炭素数1〜6個のジアルキルアミノなどが挙げられる。「置換もしくは非置換のアリールアルキル」は、例えば、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、p−ヒドロキシベンジル、p−ジメチルアミノベンジルなどであり、好ましくは、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、フェニルエチルなどである。本発明のいくつかの態様では、「置換もしくは非置換のアリールアルキル」は、ベンジルである。
【0024】
R1の「置換もしくは非置換のアリールアルケニル」は、例えば1〜5個の置換基を有する炭素数8〜10個のアリールアルケニル、または非置換の炭素数8〜10個のアリールアルケニルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、炭素数1〜6個のジアルキルアミノなどが挙げられる。「置換もしくは非置換のアリールアルケニル」は、例えば、フェニルビニル、p−ヒドロキシフェニルビニル、p−ジメチルアミノフェニルビニルなどである。本発明のいくつかの態様では、「置換もしくは非置換のアリールアルケニル」は、非置換のアリールアルケニルであり、例えば、フェニルビニルなどである。
【0025】
R1の「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、非置換の直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキル、または例えば1〜10個の脂肪族環基によって置換された直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキルである。脂肪族環基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチルなどである。「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルメチルなどであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。本発明のいくつかの態様では、「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、脂肪族環基によって置換されていてもよい直鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。
【0026】
R1の「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルケニル」は、非置換の直鎖もしくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニル、または例えば1〜10個の脂肪族環基によって置換された直鎖もしくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニルである。脂肪族環基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチルなどである。「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルケニル」は、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチルプロペニルなどであり、好ましくは、2−メチルプロペニルなどである。
【0027】
R1の「脂肪族環基」は、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシルなどである。
【0028】
R1の「複素環基」は、環を構成する原子として炭素以外にN、O、およびSからなる群から選択される1〜3個の原子を含む例えば5〜7員環であって炭素を介して結合する基、または2つ以上のそのような環が縮環したものであって炭素を介して結合する基、もしくはそのような環とベンゼン環が縮環したものであって炭素を介して結合する基である。「複素環基」は、例えば、チオフェン−2−イル、2-フラニル、4-ピリジルなどである。本発明のいくつかの態様では、「複素環基」は、硫黄を含む複素環基であり、例えば、チオフェン−2−イルである。
【0029】
R1の「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキニル」は、非置換の直鎖もしくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルキニル、または例えば1〜10個の脂肪族環基によって置換された直鎖もしくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルキニルである。脂肪族環基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチルなどである。「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキニル」は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、2−メチルプロピニルなどであり、好ましくは、2−メチルプロピニルなどである。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、R1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、またはチオフェン−2−イルである。本発明のさらに好ましい態様によれば、R1は、ベンジルである。
【0031】
R2の「ハロゲン」は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。本発明の好ましい態様によれば、「ハロゲン」は、フッ素である。
【0032】
R2の「脂肪族環基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル」は、例えば、非置換の直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキル、または例えば1〜10個の脂肪族環基によって置換された直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキルである。脂肪族環基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチルなどである。「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルメチルなどであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。本発明のいくつかの態様では、「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、脂肪族環基によって置換されていてもよい直鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。
【0033】
R2の「アルコキシル」は、例えば、炭素数1〜6個の直鎖または分枝鎖のアルコキシである。「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、iso−ペンチルオキシ、sec−ペンチルオキシ、1,1−ジメチルプロピルオキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ、n−ヘキソキシ、1−エチルプロポキシ、2−エチルプロポキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、iso−ヘキソキシ、1−メチル−2−エチルプロポキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1−プロピルプロポキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブチルオキシ、1,3−ジメチルブチルオキシ、2−エチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、ヘキシルオキシなどである。本発明のいくつかの態様では、「アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどであり、好ましくは、メトキシである。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、R2は、水素、水酸基、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、またはtert−ブトキシである。本発明のさらに好ましい態様によれば、R2は、水酸基、またはトリフルオロメチルである。
【0035】
R3の「ハロゲン」は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。本発明の好ましい態様によれば、「ハロゲン」は、フッ素である。
【0036】
R3の「脂肪族環基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル」は、例えば、非置換の直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキル、または例えば1〜10個の脂肪族環基によって置換された直鎖もしくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキルである。脂肪族環基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、シクロプロピルなどが挙げられる。好ましくは、脂肪族環基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチルなどである。「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロブチルメチル、またはシクロプロピルメチルなどであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。本発明のいくつかの態様では、「脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル」は、脂肪族環基によって置換されていてもよい直鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチルなどである。
【0037】
R3の「アルコキシル」は、例えば、炭素数1〜6個の直鎖または分枝鎖のアルコキシである「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、iso−ペンチルオキシ、sec−ペンチルオキシ、1,1−ジメチルプロピルオキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ、n−ヘキソキシ、1−エチルプロポキシ、2−エチルプロポキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、iso−ヘキソキシ、1−メチル−2−エチルプロポキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1−プロピルプロポキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブチルオキシ、1,3−ジメチルブチルオキシ、2−エチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、ヘキシルオキシなどである。本発明のいくつかの態様では、「アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどであり、好ましくは、メトキシである。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、R3は、水素、水酸基、フッ素、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、sec−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、またはtert−ブトキシである。本発明のさらに好ましい態様によれば、R3は、水素である。
【0039】
本発明のいくつかの態様によれば、一般式(II)において、
R1は、ベンジルであり、
R2は、水酸基、またはトリフルオロメチルであり、
R3は、水素である。
【0040】
本発明のある態様によれば、一般式(II)で表される化合物は、下記式で表される化合物(v-セレンテラジン)である。
【0041】
【化16】

【0042】
本発明の別の態様によれば、一般式(II)で表される化合物は、下記式で表される化合物(cf3-v-セレンテラジン)である。
【化17】

【0043】
さらに、本発明は、下記一般式(XIV)で表される化合物(本発明のv-セレンテラミン化合物)を提供する。
【0044】
【化18】


(式中、R1は、上記一般式(II)で説明した通りである。)
【0045】
本発明のある態様によれば、一般式(XIV)で表される化合物は、下記式で表される化合物(v-セレンテラミン)である
【0046】
【化19】

【0047】
2.本発明のv-セレンテラミン化合物またはv-セレンテラジン化合物の製造方法
一般式(XIV)で表される化合物の製造方法(本発明のv-セレンテラミン化合物の製造方法)、および一般式(II)で表される化合物の製造方法(本発明のv-セレンテラジン化合物の製造方法)について説明する。
【0048】
以下の製造方法の説明において、R1〜R3は、前記の通りである。
RおよびRは、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または保護された水酸基である。RおよびRの「保護基によって保護された水酸基」における保護基は、例えば、tert−ブチルジメチルシリル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルであり、好ましくは、tert−ブチルジメチルシリルである。
【0049】
RおよびRの「アルコキシル」、「ハロゲン」、および「置換もしくは非置換の炭化水素基」は、R2およびRでそれぞれ説明した通りである。
Rは、好ましくは、tert−ブチルジメチルシリルオキシである。Rは、好ましくは、水素である。
【0050】
R4は、保護基であり、例えば、メチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、4-メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルであり、好ましくは、メチルである。
【0051】
R5は、保護基であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、p-トシル、tert-ブトキシカルボニル、またはベンジルオキシカルボニルであり、好ましくは、R5は、アセチルである。
【0052】
Xはハロゲンであり、例えば、フッ素(F-)、塩素(Cl-)、臭素(Br-)、またはヨウ素(I-)である。Xは、好ましくは、臭素(Br-)である。
【0053】
2.1.一般式(XIV)で表される化合物の製造方法
一般式(XIV)で表される化合物は、一般式(VIII)で表される化合物から、次のようにして製造することができる。
【0054】
(1)最初の工程では、Wittig反応によって、一般式(VIII)で表される化合物のホルミルをメチレン化する。すなわち、一般式(VIII)で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩(Ph3P+CH3X-)とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)で表される化合物を得る。
【0055】
【化20】

【0056】
メチルトリフェニルホスホニウム塩は、好ましくは、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドである。
【0057】
Wittig反応で用いられる塩基の具体例としては、n−ブチルリチウム(n-BuLi)、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムジイソプロピルアミドなどが挙げられる。
【0058】
また、反応で用いられる溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエンなどが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0059】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜40 ℃で1時間〜4時間、好ましくは、10 ℃〜30 ℃で1時間〜3時間、特に好ましくは、10 ℃〜20 ℃で1時間〜2時間である。
【0060】
(2)次の工程では、一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後R4および存在する場合にはR5を脱保護する。これにより、一般式(XIV)で表される化合物を得る。
【0061】
(2-1)一般式(X)で表される化合物を次の閉環メタセシス反応に供する場合には、先ず、一般式(IX)で表される化合物中のアミノをR5で保護し、一般式(X)で表される化合物を得る。
【0062】
【化21】

【0063】
アミノのR5による保護は、具体的には、次のように行う。トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンなどの塩基存在下、一般式(IX)で表される化合物を、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ベンゾイル、二炭酸ジ-t-ブチル、クロロギ酸ベンジルなどと反応させることで行う。より具体的には、R5がアセチルである化合物(X)は、後述の合成例に記載の方法を用いて得ることができる。
【0064】
反応で用いられる溶媒の具体例としては、ピリジン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエンなどが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0065】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜100 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、20℃〜70 ℃で1時間〜12時間、特に好ましくは、50 ℃〜60 ℃で1時間〜2時間である。
【0066】
(2-2)次に、一般式(IX)で表される化合物、および一般式(X)で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つについて閉環メタセシス反応を行うことにより三環式芳香族化合物を得る。すなわち、一般式(IX)で表される化合物または一般式(X)で表される化合物の閉環メタセシス反応を、Grubbs触媒またはHoveyda-Grubbs触媒の存在下で行い、一般式(XI´)で表される化合物または一般式(XI)で表される化合物を得る。
【0067】
【化22】

【0068】
本発明の好ましい態様では、閉環メタセシスに供する化合物として、一般式(X)で表される化合物を用いる。一般式(X)で表される化合物を用いることで、より収率よく、一般式(XI)で表される化合物を得ることができる。
【0069】
閉環メタセシス反応で用いられるGrubbs触媒またはHoveyda-Grubbs触媒としては、第一世代Grubbs触媒、第二世代Grubbs触媒、第一世代Hoveyda-Grubbs触媒、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒などが挙げられ、好ましくは、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒が挙げられる。
【0070】
反応で用いられる溶媒の具体例としては、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0071】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、25 ℃〜110 ℃で1時間〜48時間、好ましくは、50 ℃〜110 ℃で1時間〜24時間、特に好ましくは、90 ℃〜100 ℃で12時間〜18時間である。
【0072】
(2-3)そして、上記(2-2)にて一般式(XI´)で表される化合物が得られた場合には、一般式(XI´)で表される化合物のR4を脱保護して一般式(XIV)で表される化合物を得る。
【0073】
【化23】

【0074】
R4の脱保護は、具体的には、次のように行う。ルイス酸もしくはブレンステッド酸を作用させることで行う。より具体的には、R4がメチルである場合の脱保護は、後述の合成例に記載の方法を用いて行うことができる。
【0075】
反応で用いられる溶媒の具体例としては、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水などが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよく、溶媒を用いなくてもよい。
【0076】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜300 ℃で0.1時間〜60時間、好ましくは、30 ℃〜250 ℃で0.5時間〜12時間、特に好ましくは、180 ℃〜220 ℃で0.5時間〜1時間である。
【0077】
(2-4)一方、上記(2-2)にて一般式(XI)で表される化合物が得られた場合には、一般式(XI)で表される化合物のR4を脱保護して一般式(XIII)で表される化合物を得る。
【0078】
【化24】

【0079】
R4の脱保護は、具体的には、次のように行う。ルイス酸もしくはブレンステッド酸を作用させることで行う。より具体的には、R4がメチルである場合の脱保護は、後述の合成例に記載の方法を用いて行うことができる。
【0080】
反応で用いられる溶媒の具体例としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、メタノールなどが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0081】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜50 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、0℃〜30℃で2時間〜6時間、特に好ましくは、0 ℃〜20 ℃で2時間〜4時間である。
【0082】
(2-5)さらに、一般式(XIII)で表される化合物のR6を脱保護して一般式(XIV)で表される化合物を得る。
【0083】
【化25】

【0084】
R5の脱保護は、具体的には、次のように行う。炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基存在下、溶媒中で加熱することで行う。より具体的には、R5がアセチルである場合の脱保護は、後述の合成例に記載の方法を用いて行うことができる。
【0085】
反応で用いられる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、水などが挙げられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0086】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、40 ℃〜100 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、50 ℃〜80 ℃で2時間〜24時間、特に好ましくは、60 ℃〜70 ℃で12時間〜16時間である。
【0087】
2.2.一般式(II)で表される化合物の製造方法
一般式(II)で表される化合物は、一般式(VIII)で表される化合物から、次のようにして製造することができる。
【0088】
(1)一般式(XIV)で表される化合物の製造方法は、前記の通りである。
【0089】
(2)そして、一般式(XIV)で表される化合物と一般式(XV)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表される化合物を得る。
【0090】
【化26】

【0091】
一般式(XV)で表される化合物は公知の方法で製造することができる。具体的には、Adamczyk, M. et al., Synth. Commun., 32, 3199-3205 (2002)、またはBaganz, H. & May, H.-J. Chem. Ber., 99, 3766-3770 (1966) およびBaganz, H. & May, H.-J. Angew. Chem., Int. Ed. Eng., 5, 420 (1966)に記載の方法、あるいは、それらに準ずる方法で製造することができる。より具体的には、置換ベンジルGrignard反応剤をジエトキシ酢酸エチルと低温(-78 ℃)で反応させるか、またはエタノール中でα-ジアゾ-α’-置換フェニルケトンに次亜塩素酸tert-ブチルを作用させることで、一般式(XV)で表わされる化合物を製造することができる。
【0092】
一般式(II)で表される化合物を得るための反応において使用される溶媒は、特に限定されず、種々のものを使用できる。例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エーテル、メタノール、エタノール、水などであり、これらは単独でまたは混合して使用することができる。
【0093】
また、反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0℃〜200℃で1時間〜96時間、室温〜150℃で3時間〜72時間、または60℃〜120℃で6時間〜24時間である。
【0094】
2.3.一般式(VIII)で表される化合物の製造方法
前記一般式(VIII)で表される化合物は、例えば、式(IV)で表される化合物から次のように製造することができる。
【0095】
(1)最初の工程では、式(IV)で表される化合物に対して、有機亜鉛化合物との根岸カップリングを行う。具体的には、式(IV)で表される化合物と、R1MgXおよびZnCl2とを、パラジウム触媒の存在下で反応させることにより一般式(V)で表される化合物を得る。
【0096】
【化27】

【0097】
式(IV)で表される化合物は、WO2003/059893号に記載されている化合物であり、例えば、後述の合成例に記載の方法により合成することができる。
【0098】
R1MgClは、公知の合成法により合成したものを用いてもよいし、市販のものを用いてもよい。
【0099】
根岸カップリングで用いられるパラジウム触媒の具体例は、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、ビス(トリt−ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)などである。
【0100】
さらに、この反応で用いられる溶媒の具体例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、t−ブチルメチルエ−テル、1,4−ジオキサンなどである。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0101】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜50 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、10 ℃〜40 ℃で2時間〜24時間、特に好ましくは、20 ℃〜30 ℃で6時間〜16時間である。
【0102】
(2)次の工程では、ボロン酸との鈴木-宮浦カップリングにより、5位選択的に一般式(V)で表される化合物をアリール化する。具体的には、一般式(V)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とをパラジウム触媒と塩基の存在下で反応させることにより一般式(VII)で表される化合物を得る。
【0103】
【化28】

【0104】
一般式(VI)で表される化合物は、市販のものを使用してもよいし、公知の合成法により合成したものを使用してもよい。
【0105】
鈴木-宮浦カップリングで用いられるパラジウム触媒の具体例は、アリルパラジウム(II)クロリド(二量体)、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)などである。
【0106】
反応を促進するため、場合によりこれらのパラジウム触媒にホスフィン化合物を加えてもよい。そのホスフィン化合物の具体例は、2−(ジt−ブチルホスフィノ)−1−フェニルインドール、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(N,N−ジブチルアミノメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(メトキシメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−メトキシ−2’−(ジt−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニルなどである。
【0107】
この反応で用いられる塩基の具体例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、酢酸ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウムなどである。
【0108】
さらに、この反応で用いられる溶媒の具体例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、t−ブチルメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、メタノ−ル、エタノール、イソプロピルアルコ−ル、水などである。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0109】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、0 ℃〜50 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、10 ℃〜40 ℃で2時間〜24時間、特に好ましくは、20 ℃〜30 ℃で6時間〜16時間である。
【0110】
(3)次の工程では、ビニル化合物とのStilleカップリングによって、一般式(VII)で表される化合物のピラジン環の6位をビニル化する。具体的には、一般式(VII)で表される化合物と、トリブチル(ビニル)スズとをパラジウム触媒の存在下で反応させることにより一般式(VIII)で表される化合物を得る。
【0111】
【化29】

【0112】
トリブチル(ビニル)スズは、市販のものを使用してもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。
【0113】
Stilleカップリングに用いられるパラジウム触媒の具体例は、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)などである。
【0114】
反応を促進するため、場合により、これらのパラジウム触媒に、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドなどを加えてもよく、また、副生成物の生成を抑制するため、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)などの重合禁止剤を加えてもよい。
【0115】
さらに、この反応で用いられる溶媒の具体例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、t−ブチルメチルエ−テル、1,4−ジオキサンなどである。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0116】
反応温度および反応時間は、特に限定されないが、例えば、60 ℃〜120 ℃で1時間〜24時間、好ましくは、80 ℃〜110 ℃で1時間〜12時間、特に好ましくは、100 ℃〜110 ℃で1時間〜2時間である。
【0117】
3. カルシウム結合型発光蛋白質の製造方法
本発明のカルシウム結合型発光蛋白質は、一般式(II)で表わされる化合物(本発明のv-セレンテラジン化合物)と、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを接触させて、カルシウム結合型発光蛋白質を得ることにより、製造または再生することができる。
【0118】
ここで、「接触」とは、v-セレンテラジン化合物とカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、v-セレンテラジン化合物を収容した容器にカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を添加すること、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を収容した容器にv-セレンテラジン化合物を添加すること、またはv-セレンテラジン化合物とカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを混合すること、などが含まれる。本発明の1つの態様によれば、接触は、還元剤(例えば、メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなど)および酸素の存在下、低温で行う。より具体的には、本発明の発光蛋白質は、例えば、Shimomura, O. et al., Biochem. J., 251, 405-410 (1988)、および Shimomura, O. et al., Biochem. J., 261, 913-920(1989)などに記載の方法によって製造または再生することができる。本発明のカルシウム結合型発光蛋白質は、酸素存在下において、v-セレンテラジン化合物と分子状酸素から生成するv-セレンテラジン化合物のペルオキシドと、アポ蛋白質とが複合体を形成した状態で存在する。前記複合体にカルシウムイオンが結合すると、瞬間的な発光を示し、v-セレンテラジン化合物の酸化物であるv-セレンテラミド化合物と二酸化炭素を生成する。前記複合体を「本発明の発光蛋白質」と称することがある。
【0119】
本発明の発光蛋白質を製造するのに用いるアポ蛋白質は、例えば、アポイクオリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、アポオベリン、アポマイトロコミン、アポミネオプシン、またはアポベルボインなどである。本発明のいくつかの態様では、アポ蛋白質は、アポイクオリン、アポオベリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、またはマイトロコミンなどであり、例えば、アポイクオリンである。アポ蛋白質は、天然から採取したものであっても、遺伝子工学的に製造したものであってよい。さらに、アポ蛋白質は、カルシウム結合型発光蛋白質を製造できるものであれば、そのアミノ酸配列を天然のものから遺伝子組換え技術によって変異させたものであってもよい。
【0120】
天然から採取した発光蛋白質のアポ蛋白質(天然型アポ蛋白質)の塩基配列およびアミノ酸配列は、次の通りである。すなわち、天然型アポイクオリンの塩基配列を配列番号:1に、アミノ酸配列を配列番号:2に示す。天然型アポクライティン−Iの塩基配列を配列番号:3に、アミノ酸配列を配列番号:4に示す。天然型アポクライティン−IIの塩基配列を配列番号:5に、アミノ酸配列を配列番号:6に示す。天然型アポマイトロコミンの塩基配列を配列番号:7に、アミノ酸配列を配列番号:8に示す。天然型アポオベリンの塩基配列を配列番号:9に、アミノ酸配列を配列番号:10に示す。天然型アポベルボインの塩基配列を配列番号:11に、アミノ酸配列を配列番号:12に示す。
【0121】
組換え技術によって変異させたアポ蛋白質は、例えば、以下の(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質である。
(a)天然型アポ蛋白質のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質活性もしくは機能を有する蛋白質、
(b)天然型アポ蛋白質のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質活性もしくは機能を有する蛋白質、および
(c)天然型アポ蛋白質の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質活性もしくは機能を有する蛋白質。
【0122】
上記「天然型アポ蛋白質」は、例えば、アポイクオリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、アポオベリン、アポマイトロコミン、アポミネオプシン、またはアポベルボインなどである。本発明のある態様では、アポ蛋白質は、アポオベリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、またはマイトロコミンなどであり、好ましくは、アポイクオリンである。これらの天然型アポ蛋白質のアミノ酸配列または塩基配列は、前記の通りである。
【0123】
上記「カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質活性もしくは機能」とは、例えば、アポ蛋白質がv-セレンテラジン化合物のペルオキシドと結合してカルシウム結合型発光蛋白質を形成する活性または機能を意味する。「蛋白質がv-セレンテラジン化合物のペルオキシドと結合してカルシウム結合型発光蛋白質を形成する」とは、具体的には、(1)蛋白質が、v-セレンテラジン化合物のペルオキシドと結合して発光蛋白質を形成すること、だけではなく(2)蛋白質が、酸素存在下に、v-セレンテラジン化合物と接触することにより、蛋白質とv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとを含有する発光蛋白質(複合体)を形成すること、をも意味する。ここで、「接触」とは、蛋白質とv-セレンテラジン化合物とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、v-セレンテラジン化合物を収容した容器に蛋白質を添加すること、蛋白質を収容した容器にv-セレンテラジン化合物を添加すること、または蛋白質とv-セレンテラジン化合物とを混合すること、などが含まれる。
【0124】
また、「v-セレンテラジン化合物」は、v-セレンテラジン、および、v-セレンテラジンと同様に、アポ蛋白質として、イクオリンなどのカルシウム結合型発光蛋白質を構成しうる化合物(v-セレンテラジン類縁体)を指す。具体的には、cf3-v-セレンテラジンなどである。
【0125】
上記「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、 “Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、または“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)” などに記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0126】
また、上記「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「90%以上」の範囲は、例えば、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)、など参照) などの解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0127】
また、上記「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、天然型アポ蛋白質の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは天然型アポ蛋白質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニー或いはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0128】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、またはGlover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995) などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0129】
ここで言う「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、および高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0130】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0131】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLASTなどの解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、アポ蛋白質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0132】
本発明で使用することができる組換えアポ蛋白質として、例えば、Shimomura, O. and Inouye, S. Protein Express. Purif. (1999) 16: 91-95に記載の組換えイクオリン、Inouye, S. and Sahara, Y. Protein Express. Purif. (2007) 53: 384-389に記載の組換えクライティン-I、またはInouye, S.J.Biochem. (2008) 143: 711-717に記載の組換えクライティン-IIなどを挙げることができる。
【0133】
このようにして得たカルシウム結合型発光蛋白質は、さらに精製に供してもよい。カルシウム結合型発光蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0134】
4.本発明のv-セレンテラジン化合物または本発明の発光蛋白質の利用
(1)発光基質としての利用
本発明のいくつかの態様のv-セレンテラジン化合物は、発光触媒酵素の作用により発光するので、発光基質として利用できる。そこで、本発明は、本発明のv-セレンテラジン化合物に、発光触媒酵素を接触させることを含む、発光方法を提供する。ここで、「接触」とは、本発明のv-セレンテラジン化合物と発光触媒酵素とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、v-セレンテラジン化合物を収容した容器に発光触媒酵素を添加すること、発光触媒酵素を収容した容器にv-セレンテラジン化合物を添加すること、またはv-セレンテラジン化合物と発光触媒酵素とを混合すること、などが含まれる。
【0135】
本発明の発光方法に用いる発光触媒酵素は、例えば、エビ(Oplophorus sp.)(例えばOplophorus gracilorostris)由来のルシフェラーゼ(エビルシフェラーゼ)、ガウシア(Gaussia sp.)(例えば、Gaussia princeps)由来のルシフェラーゼ(ガウシアルシフェラーゼ)、レニラ(Renilla sp.)(例えば、Renilla reniformis、もしくはRenilla muelleri )由来のルシフェラーゼ(レニラルシフェラーゼ)、Pleuromamma sp. 由来のルシフェラーゼ(プレウロマンマルシフェラーゼ)、またはMetridia longa由来のルシフェラーゼ(メトリデアルシフェラーゼ)である。
【0136】
また、本発明の発光方法に用いる発光触媒酵素は、これらのルシフェラーゼの変異体でもよい。変異体としては、例えば、、Loening et al. Protein Eng. Des. Sel. (2006) 19, 391-400記載のレニラルシフェラーゼの変異体, Loening et al. Nature methods (2007) 4, 641-643記載のレニラルシフェラーゼの変異体, Woo et al. Protein Sci.(2008)17, 725-735記載のレニラルシフェラーゼの変異体などが挙げられる。
【0137】
これらの発光触媒酵素は、例えば、Shimomura et al. (1988) Biochem.J. 251, 405-410、Shimomura et al. (1989) Biochem. J. 261, 913-920、またはShimomura et al. (1990) Biochem. J. 270,309-312に記載の方法またはそれに準ずる方法で製造することができる。或いは、チッソ株式会社、和光純薬社およびプロメガ社などから各種市販されているので、これらの市販のものを、本発明の発光方法に用いてもよい。
【0138】
ここで、レニラルシフェラーゼのうち、Renilla reniformis由来のルシフェラーゼの塩基配列を配列番号:13に、アミノ酸配列を配列番号:14に示す。また、エビルシフェラーゼのうち、Oplophorus gracilorostris由来のルシフェラーゼの塩基配列を配列番号:15に、アミノ酸配列を配列番号:16に示す。さらに、ガウシアルシフェラーゼのうち、Gaussia princeps由来のルシフェラーゼの塩基配列を配列番号:17に、アミノ酸配列を配列番号:18に示す。
【0139】
また、Inouye & Shimomura, Biochem. Biophys. Res. Commun., 233(1997) 349-353記載のレニラルシフェラーゼ変異体の塩基配列を配列番号:19に、アミノ酸配列を配列番号:20に示す。
【0140】
本発明の一つの態様では、発光触媒酵素として、Renilla reniformis由来のルシフェラーゼ、例えば、配列番号:14のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む蛋白質を用いる。
【0141】
本発明の別の態様では、発光触媒酵素として、レニラルシフェラーゼの変異体、例えば、配列番号:20のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む蛋白質を用いる。本発明のいくつかの態様では、発光触媒酵素としてレニラルシフェラーゼの変異体を用いることで、最大発光波長を、Renilla reniformis由来のルシフェラーゼに対して、長波長側にシフトさせることができる。
【0142】
これらの発光触媒酵素を本発明のいくつかの態様のv-セレンテラジン化合物に接触させることで、発光が生じる。通常発光時間は、0.01〜1時間であるが、条件の選択により、発光時間を更に長時間とすることも、または発光時間を更に短時間とすることも可能である。
【0143】
(2)カルシウムイオンの検出または定量
上記のようにして得た本発明の発光蛋白質は、アポ蛋白質と、v-セレンテラジン化合物および分子状酸素より生成するv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとが非共有的な結合を形成したものであり、且つカルシウムイオンの作用によって発光する発光蛋白質(ホロ蛋白質)である。よって、本発明の発光蛋白質は、カルシウムイオンの検出または定量に使用することができる。
【0144】
カルシウムイオンの検出または定量は、検体溶液を直接発光蛋白質溶液に添加し、発生する発光を測定することにより行うことができる。或いは、検体溶液に発光蛋白質溶液を添加し、発生する発光を測定することにより、カルシウムイオンを検出または定量することもできる。また、前記発光蛋白質は、カルシウムイオンの検出または定量を行う測定系に添加する前に、予めアポ蛋白質の水溶液と本発明のv-セレンテラジン化合物とを接触させて生成させたものを用いてもよい。また、測定系中で、アポ蛋白質とv-セレンテラジン化合物とを接触させることにより、アポ蛋白質とv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとからなる発光蛋白質を生成させてもよい。生成した発光蛋白質は、アポ蛋白質と本発明のv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとの複合体(発光蛋白質)であり、前記複合体(すなわち本発明の発光蛋白質)はカルシウムイオン濃度依存的に発光する。
【0145】
カルシウムイオンの検出または定量は、カルシウムイオンによる本発明の発光蛋白質の発光を、発光測定装置を用いて測定することにより行うことができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えば、Centro LB 960(ベルトールド社製)などを使用することができる。カルシウムイオン濃度の定量は、発光蛋白質を用いて、既知のカルシウムイオン濃度に対する発光標準曲線を作成することにより、測定可能である。
【0146】
本発明のv-セレンテラジン化合物は、アポ蛋白質とv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとからなる発光蛋白質を作製し、前記発光蛋白質をマイクロインジェクション法などの手法により細胞内に直接導入することによって、生理的条件下の細胞内カルシウムイオン濃度変化の検出に利用することもできる。
【0147】
本発明のv-セレンテラジン化合物は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、アポ蛋白質遺伝子(アポ蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を細胞内で発現させることによって、細胞内で生成させ、さらに、生成したアポ蛋白質に細胞外より本発明のv-セレンテラジン化合物を付与することにより、発光蛋白質を生成させるのに用いてもよい。
【0148】
このようにして細胞内に導入した、または細胞内で生成した本発明の発光蛋白質を用いて、外部刺激(たとえば、レセプターに関与する薬剤による刺激など)に対する細胞内のカルシウムイオン濃度の変化を測定することもできる。
【0149】
(3)発光によるレポーター蛋白質などとしての利用
本発明の発光蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。アポ蛋白質をコードするポリヌクレオチドを、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、さらに、これに、本発明のv-セレンテラジン化合物を接触させ、本発明の発光蛋白質に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。ここで、「接触」とは、宿主細胞とv-セレンテラジン化合物とを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、宿主細胞の培養容器にv-セレンテラジン化合物を添加すること、宿主細胞とv-セレンテラジン化合物とを混合すること、宿主細胞をv-セレンテラジン化合物の存在下で培養することなどが含まれる。
【0150】
本発明のv-セレンテラジン化合物は、プロモーターなどの転写活性の測定のために利用することができる。例えば、発光触媒酵素をコードするポリヌクレオチドを、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、さらに、これに、本発明のv-セレンテラジン化合物を接触させ、本発明のv-セレンテラジン化合物に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。ここで、「接触」とは、宿主細胞と本発明のv-セレンテラジン化合物とを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、宿主細胞の培養容器にv-セレンテラジン化合物を添加すること、宿主細胞とv-セレンテラジン化合物とを混合すること、宿主細胞をv-セレンテラジン化合物の存在下で培養することなどが含まれる。また、発光触媒酵素は、前述のものであり、例えば、レニラルシフェラーゼ、エビルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、およびこれらの変異体からなる群から選択される少なくとも1つのルシフェラーゼ、好ましくは、レニラルシフェラーゼ変異体である。
【0151】
さらに、本発明は、プロモーターなどの転写活性の測定に使用するためのキットを提供する。本発明のいくつかの態様のキットは、本発明のv-セレンテラジン化合物と、発光触媒酵素とを含む。本発明の別の態様のキットは、本発明の発光蛋白質と、セレンテラジン化合物とを含む。セレンテラジン化合物、或いは発光触媒酵素などの試薬は、適当な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノール、各種緩衝液などからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。本キットは、さらに必要に応じて、専用容器、その他必要なアクセサリー、および説明書などからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0152】
(4)発光による検出マーカなどとしての利用
本発明の発光蛋白質は、発光による検出マーカとして利用することができる。本発明の検出マーカは、例えば、イムノアッセイまたはハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。本発明の発光蛋白質を化学修飾法など通常用いられる方法により目的物質(蛋白質或いは核酸など)と結合させて使用することができる。このような検出マーカを用いた検出方法は、通常の方法によって行うことができる。また、本発明の検出マーカは、例えば、アポ蛋白質と目的物質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、さらに、これに、本発明のv-セレンテラジン化合物を接触させることによって、本発明の発光蛋白質を生成させて、前記目的物質の分布を測定するために利用することもできる。ここで、「接触」とは、細胞と本発明のv-セレンテラジン化合物などとを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、細胞の培養容器に本発明のv-セレンテラジン化合物などを添加すること、細胞と本発明のv-セレンテラジン化合物などとを混合すること、宿主細胞を本発明のv-セレンテラジン化合物などの存在下で培養することなどが含まれる。
【0153】
また、本発明は、v-セレンテラジン化合物と、発光触媒酵素とを用いることを含む、イムノアッセイまたはハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出方法を提供する。この場合、発光触媒酵素を化学修飾法など通常用いられる方法により目的物質(蛋白質或いは核酸など)と結合させて使用することができる。このような検出マーカを用いた検出方法は、通常の方法によって行うことができる。また、検出マーカは、例えば、発光触媒酵素と目的物質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、さらに、これに、本発明のv-セレンテラジン化合物を接触させることによって、前記目的物質の分布を測定するために利用することもできる。ここで、「接触」とは、細胞と本発明のv-セレンテラジン化合物とを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、細胞の培養容器に本発明のv-セレンテラジン化合物を添加すること、細胞と本発明のv-セレンテラジン化合物とを混合すること、宿主細胞を本発明のv-セレンテラジン化合物の存在下で培養することなどが含まれる。また、発光触媒酵素は、前述のものであり、例えば、レニラルシフェラーゼ、エビルシフェラーゼ、およびガウシアルシフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのルシフェラーゼである。
【0154】
このような目的物質などの分布の測定は、発光イメージングなどの検出法などを利用して行うこともできる。なお、アポ蛋白質は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0155】
さらに、本発明は、イムノアッセイまたはハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に使用するためのキットを提供する。本発明のいくつかの態様のキットは、本発明の発光蛋白質と、セレンテラジン化合物とを含む。本発明の別の態様のキットは、本発明のv-セレンテラジン化合物と、発光触媒酵素とを含む。セレンテラジン化合物、或いは発光触媒酵素などの試薬は、適当な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノール、各種緩衝液などからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。本キットは、さらに必要に応じて、専用容器、その他必要なアクセサリー、および説明書などからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0156】
(5)アミューズメント用品の材料
アポ蛋白質と本発明のv-セレンテラジン化合物のペルオキシドとからなる複合体(本発明の発光蛋白質)は、微量のカルシウムイオンと結合するだけで発光する。よって、本発明の発光蛋白質は、アミューズメント用品の材料の発光基材として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具などがあげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
【0157】
(6)生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明のいくつかの態様のv-セレンテラジン化合物は、前記のように、発光触媒酵素の作用により発光するので、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の解析(または測定) などの分析方法に利用することができる。また、本発明の発光蛋白質も、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の測定などの分析方法に利用することができる。
【0158】
例えば、本発明のいくつかの態様のv-セレンテラジン化合物と発光触媒酵素とをドナー蛋白質として使用し、有機化合物または蛍光蛋白質をアクセプター蛋白質として使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことにより蛋白質間の相互作用を検出することができる。ここで、発光触媒酵素は、前述のものであり、例えば、レニラルシフェラーゼ、エビルシフェラーゼ、およびガウシアルシフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのルシフェラーゼである。
【0159】
或いは本発明の発光蛋白質をドナー蛋白質として使用し、有機化合物または蛍光蛋白質をアクセプター蛋白質として使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことにより蛋白質間の相互作用を検出することができる。本発明のある態様では、アクセプター蛋白質として使用する有機化合物は、Hoechist3342、Indo-1またはDAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプター蛋白質として使用する蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質またはフィコビリンなどである。本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸化酵素などである。
【0160】
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J. 2005, 385, 625-637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541-556などに記載の方法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、例えば、Nat Methods 2006, 3:165-174、またはBiotechnol J. 2008, 3:311-324などに記載の方法に準じて行うことができる。
【0161】
さらに、本発明は、上記分析方法に使用するためのキットを提供する。キットは、本発明のv-セレンテラジン化合物と、発光触媒酵素と、有機化合物および/または蛍光蛋白質とを含む。v-セレンテラジン化合物、発光触媒酵素、並びに有機化合物および蛍光蛋白質などの試薬は、適当な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノール、各種緩衝液などからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。本キットは、さらに必要に応じて、専用容器、その他必要なアクセサリー、および説明書などからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0162】
なお、本明細書に記載した全ての文献および刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0163】
また、本発明の目的、特徴、利点、およびそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を実施できる。発明を実施するための最良の形態および具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示または説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0164】
以下、合成例および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの合成例および実施例に限定されるものではない。
【0165】
[合成例]
概要
本合成例に例示するv-セレンテラジン化合物の製造方法は、多様なv-セレンテラジン類縁体の製造に適用可能な柔軟性の高い高効率製造方法である。
【0166】
【化30】

【0167】
すなわち、本合成例では、まず、市販の2-クロロ-6-アミノピラジン3のジブロモ化により合成した既知化合物4(WO 2003/059893)に対して、ベンジル亜鉛試薬との根岸カップリングを行ったところ、化合物4にベンジル基を導入し、化合物5を得ることができた。次に、化合物5とボロン酸6との鈴木-宮浦カップリングにより5位選択的に化合物5をアリール化して化合物7を得た後、ビニルスズとのStilleカップリングによって化合物7の6位をビニル化することにより、化合物8を得ることに成功した。これら3種類のカップリング反応において、無保護のアミノ基の効果により高い位置選択性でそれぞれの置換基を導入できたと考えられる。
【0168】
さらに、得られた化合物8のホルミル基をWittig反応によってメチレン化し化合物9を得た。化合物9のアミノ基をアセチル基で保護した後、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒を用いる閉環メタセシス反応を行うことにより、三環式芳香族化合物11を収率よく得ることができた。この際、アミノ基を保護していない化合物9からも閉環メタセシス反応は低収率ながら進行し、対応する環化体12を得ることができたが、アシル基保護を導入した方が効率よく閉環反応が進行することが分かった。
【0169】
つづいて、化合物11のメチル基を三臭化ホウ素により除去して化合物13とし、これを少量の炭酸水素ナトリウム存在下、メタノール中で加熱することによりアセチル基を脱保護してv-セレンテラミン14を得た。尚、アミノ基がアセチル基で保護されていない化合物12のメチル基の除去には三臭化ホウ素を用いることができなかったが、ピリジン塩酸塩と加熱することで低収率ながらv-セレンテラミン14を得ることができた。
【0170】
最後に、v-セレンテラミン14とケトアセタール15との縮合環化反応を行うことで、v-CTZ(2)を合成することができた。
【0171】
本合成経路は、市販の化合物から8〜10段階と短工程であり、最後に用いるケトアセタールのベンゼン環上の置換基を変えることで安定性の向上が期待されるものをはじめ、多様なv-CTZ類縁体を簡便に合成することができる(例えば、下式参照)。
【0172】
【化31】

【0173】
今後、本合成法を利用して、近赤外発光イメージングをはじめとする多様な用途に適したv-CTZ化合物が創出されると期待される。
【0174】
材料および方法
(1)クロマトグラフィー
分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)は、あらかじめシリカゲルが塗布されたガラスプレート(MERCK 5715、silica gel 60 F254)を用いて行った。スポット検出は、紫外線ランプ(254 nmまたは365 nm)、ヨウ素吸着、アニスアルデヒド水溶液に浸した後、ホットプレートで焼くことで行った。
分取用フラッシュカラムクロマトグラフィーには、シリカゲル(関東化学37563-85、silica gel 60N (spherical, neutral)、粒径45-50 μmまたは関東化学 37565-85、silica gel 60 N (spherical, neutral)、粒径 63-210 μm)を用いた。ただし、CTZ類縁体の精製の際には、シリカゲル(関東化学37562-79, silica gel 60N (spherical), 粒径 40-50 μmまたは関東化学37558-79, silica gel 60N (spherical), 粒径 100-210 μm)を用いた。
【0175】
(2)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
1H核磁気共鳴(NMR)スペクトル(400 MHz)は、Bruker社製、AVANCE 400またはAVANCE 500核磁気共鳴装置を用いて測定した。化学シフト(δ)は、tetramethylsilane((CH3)4Si)(CDCl3中での測定; 0 ppm)または測定溶媒の非重水素化体由来のピーク(CD3ODでの測定:3.31 ppm;DMSO-d6での測定:2.49 ppm)を内部標準として相対的値として表した。シグナル分裂線様式の略語s、d、mはそれぞれ単重線、二重線、多重線を表す。
13C核磁気共鳴スペクトル(100 MHz)は、Bruker社製、AVANCE400核磁気共鳴装置を用いて測定した。化学シフト(δ)は、測定溶媒の炭素由来のピーク(CDCl3中での測定:77.0 ppm;CD3ODでの測定:49.0 ppm)を内部標準として相対的値として表した。
【0176】
(3)赤外線吸収(IR)スペクトル
IRスペクトルは、DRS-8000を装着した島津製作所社製、SHIMAZU IRPrestige-21 spectrophotometerを用い、拡散反射法により測定した。
【0177】
(4)質量分析
高分解能質量分析スペクトル(HRMS)は、Bruker社製Bruker micrOTOFを用い、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)により測定した。
【0178】
(5)化学薬品
すべての試薬は特に記さない限り、市販のものをそのまま使用した。反応、抽出、クロマトグラフィー用の溶媒には、アセトニトリル、酢酸エチル、n-ヘキサン、脱水テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、脱水ピリジン、1,2-ジクロロエタン、脱水ジクロロメタン、メタノール、エタノールの市販品をそのまま用いた。なお、断りが無い場合は、使用した混合溶媒における混合比率は「v/v」である。
【0179】
反応試薬は、以下に挙げる物を使用した。Matrix Scientific社からは2-amino-6-chloropyrazine(Cat. No. 1650)を、和光純薬工業株式会社からはN-bromosuccinimide(Cat. No. 025-07235)、2-formyl-4-methoxyphenylboronic acid(Cat. No. 328-99903)、フッ化カリウム(Cat. No. 169-03765)、tetra-n-butylammonium chloride(Cat. No. T0054)、methyltriphenylphosphonium bromide(Cat. No. 138-11961)、4-(dimethylamino)pyridine(Cat. No. 042-19212)、塩化アセチル(Cat. No. 011-0053)、濃塩酸 (Cat. No. 080-01066)、pyridinium hydrochloride(Cat. No. 163-11931)を、Aldrich社からは塩化亜鉛(1.0 M in diethyl ether)(Cat. No. 276839)、ベンジルマグネシウムクロリド(2.0 M in THF)(Cat. No. 225916)、dichlorobis(triphenylphosphine) palladium(II) (Cat. No. 412740)、2-(di-tert-butylphosphino)-1-phenylindole(Cat. No. 672343)、tributyl(vinyl)tin(Cat. No. 271438)、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒(Cat. No. 569755)、三臭化ホウ素(1.0 M in dichloromethane)(Cat. No. 211222)を、東京化成工業株式会社からはallylpalladium(II) chloride dimer(Cat. No. A1479)、関東化学株式会社からはn-butyllithium (1.65 M in n-hexane(Cat. No.04937-25)を購入し、そのまま反応に用いた。
【0180】
合成例1: 2-Amino-3,5-dibromo-6-chloropyrazine (4)
【化32】

【0181】
2-Amino-6-chloropyrazine (3)(8.00 g, 61.8 mmol)のアセトニトリル(80 mL)溶液に、0 °CにてN-bromosuccinimide(NBS)(27.5 g, 155 mmol)をゆっくりと加え、室温まで昇温後、一晩(18時間)撹拌した。これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1)にて精製し、2-amino-3,5-dibromo-6-chloropyrazine (4)(16.8 g, 58.5 mmol, 94.7%)を黄色固体として得た; TLC Rf = 0.31(n-ヘキサン/酢酸エチル= 4/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.14 (s, 2H); 13C NMR(126 MHz, CDCl3) δ120.7, 122.0, 146.1, 151.0.
【0182】
合成例2: 2-Amino-3-benzyl-5-bromo-6-chloropyrazine (5)
【化33】

【0183】
アルゴン雰囲気下、塩化亜鉛(1.0 M in diethyl ether)(23.7 mL, 23.7 mmol)を脱水THF(40 mL)に加え、これに室温にてベンジルマグネシウムクロリド(2.0 M in THF)(10.4 mL, 20.8 mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、dichlorobis(triphenylphosphine)palladium(II) (488 mg, 695 μmol)および、2-amino-3,5-dibromo-6-chloropyrazine (4)(4.00 g, 13.9 mmol)を室温にて順次加え、そのまま室温で一晩(15時間半)撹拌した。これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 5/1)にて精製し、2-amino-3-benzyl-5-bromo-6-chloropyrazine (5)(3.64 g, 12.2 mmol, 87.6%)を黄色固体として得た; TLC Rf = 0.25(n-ヘキサン/酢酸エチル= 4/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ4.08 (s, 2H), 4.50 (s, 2H), 7.19-7.24 (m, 2H), 7.27-7.37 (m, 3H); 13C NMR(126 MHz, CDCl3) δ 40.1, 123.8, 127.5, 128.4, 129.3, 135.3, 139.5, 144.9, 151.3.
【0184】
合成例3: 2-(5-Amino-6-benzyl-3-chloropyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (7)
【化34】

【0185】
アルゴン雰囲気下、allylpalladium(II) chloride dimer(160 mg, 437 μmol)を脱水THF(30 mL)に溶解し、これに室温にて2-(di-tert-butylphosphino)-1-phenylindole(295 mg, 874 μmol)を加え、そのまま室温で10分撹拌した後に、2-amino-3-benzyl-5-bromo-6-chloropyrazine (5)(2.60 g, 8.74 mmol)、2-formyl-4-methoxyphenylboronic acid (6)(3.14 g, 17.4 mmol)、フッ化カリウム(2.60 g, 44.8 mmol)、水(160 μL, 8.88 mmol)を室温にて順次加え、そのまま室温で一晩(14時間)撹拌した。これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1)にて精製し、2-(5-amino-6-benzyl-3-chloropyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (7)(2.37 g, 6.70 mmol, 76.9%)を赤茶色固体として得た; TLC Rf = 0.27(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.92 (s, 3H), 4.13 (s, 2H), 4.66 (s, 2H), 7.21-7.25 (m, 3H), 7.27-7.31 (m, 1H), 7.32-7.37 (m, 2H) , 7.51-7.55 (m, 2H) , 9.92 (s, 1H).; 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 40.4, 55.7, 111.2, 120.7, 127.4, 128.4(2C), 129.2(2C), 132.5, 132.7, 135.7, 135.8, 137.8, 139.1, 144.1, 151.5, 160.0, 191.0.
【0186】
合成例4: 2-(5-Amino-6-benzyl-3-vinylpyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (8)
【化35】

【0187】
アルゴン雰囲気下、2-(5-amino-6-benzyl-3-chloropyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (7)(2.28 g, 6.44 mmol)を脱気したトルエン(30 mL)に溶解し、これに室温にてdichlorobis(triphenylphosphine)palladium(II)(226 mg, 322 μmol)、tributyl(vinyl)tin(3.75 mL, 12.8 mmol)、tetra-n-butylammonium chloride(3.50 g, 12.6 mmol)を順次加え、1.5時間加熱還流(油浴温度110 °C)した。室温まで冷却後、これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10重量%のフッ化カリウムを混合したシリカゲル、n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1)にて精製し、2-(5-amino-6-benzyl-3-vinylpyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (8)(1.24 g, 3.59 mmol, 55.5%)を赤茶色油状物質として得た; TLC Rf = 0.27(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.92 (s, 3H), 4.15 (s, 2H), 4.50 (s, 2H), 5.39 (dd, 1H, J = 2.0, 11.0 Hz), 6.33 (dd, 1H, J = 2.0, 17.0 Hz), 6.57 (dd, 1H, J = 11.0, 17.0 Hz), 7.20-7.28 (m, 4H), 7.30-7.36 (m, 2H) , 7.41 (d, 1H, J= 8.5 Hz), 7.55 (d, 1H, J = 3.0 Hz), 9.88 (s, 1H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 41.0, 55.7, 110.6, 120.5, 121.0, 127.2, 128.5 (2C), 129.1 (2C), 132.3, 132.9, 134.4, 136.1, 136.5, 138.7, 140.2, 145.2, 151.5, 159.8, 191.5.
【0188】
合成例5: 2-Amino-3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazine (9)
【化36】

【0189】
アルゴン雰囲気下、methyltriphenylphosphonium bromide(1.29 g, 3.61 mmol)を脱水THF(5 mL)に懸濁し、これに0 °Cにてn-butyllithium(1.65 M in n-hexane)(1.70 mL, 2.81 mmol)をゆっくり滴下し、そのまま0 °Cにて15分撹拌した。これに0 °Cにて、2-(5-amino-6-benzyl-3-vinylpyrazin-2-yl)-5-methoxybenzaldehyde (8)(871 mg, 2.52 mmol)を加えた後、室温に昇温して1.5時間撹拌した。これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1)にて精製し、2-amino-3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazine (9)(570 mg, 1.66 mmol, 65.8%)を白色固体として得た; TLC Rf = 0.37(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.88 (s, 3H), 4.16 (s, 2H), 4.39 (s, 2H), 5.18 (dd, 1H, J = 1.0, 10.5 Hz), 5.30 (dd, 1H, J = 2.0, 10.5 Hz), 5.67 (dd, 1H, J = 1.0, 17.5 Hz), 6.25 (dd, 1H, J = 2.0, 17.5 Hz), 6.47 (dd, 1H, J = 10.5, 17.5 Hz), 6.50 (dd, 1H, J = 10.5, 17.5 Hz), 6.90 (dd, 1H, J = 2.5, 8.0 Hz), 7.20-7.26 (m, 5H), 7.29-7.35 (m, 2H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 41.2, 55.6, 110.5, 113.8, 115.4, 119.3, 127.2, 128.7 (2C), 129.2 (2C), 129.8, 132.1, 133.0, 135.1, 137.0, 138.3, 140.3, 141.9, 144.8, 151.4, 159.8.
【0190】
合成例6: N-(3-Benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazin-2-yl)acetamide (10)
【化37】

【0191】
アルゴン雰囲気下、2-amino-3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazine (9)(100 mg, 292 μmol)を脱水ピリジン(20 mL)に溶解し、これに室温にて、4-(dimethylamino)pyridine (DMAP)(3.0 mg, 25 μmol)および、塩化アセチル(65.0 μL, 911 μmol)を順次加えた後、60 °Cに加熱して1時間撹拌した。室温まで冷却後、これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1)にて精製し、N-(3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazin-2-yl)acetamide (10)(89.5 mg, 232 μmol, 79.7%)を黄色固体として得た; TLC Rf = 0.17(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.33 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 4.28 (s, 2H), 5.19 (dd, 1H, J = 1.0, 10.8 Hz), 5.39 (dd, 1H, J = 2.0, 10.8 Hz), 5.66 (dd, 1H, J = 1.0, 17.2 Hz), 6.30 (dd, 1H, J = 2.0, 17.2 Hz), 6.45 (dd, 1H, J = 10.8, 17.2 Hz), 6.52 (dd, 1H, J = 10.8, 17.2 Hz), 6.94 (dd, 1H, J = 2.6, 8.4 Hz), 7.19-7.24 (m, 5H), 7.27-7.32 (m, 2H).
【0192】
合成例7: N-(2-Benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide (11)
【化38】

【0193】
アルゴン雰囲気下、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒(61.3 mg, 97.8 μmol)を1,2-ジクロロエタン(150 mL)に溶解し、これに室温にてN-(3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazin-2-yl)acetamide (10)(348 mg, 903 μmol)を加えた後、90 °Cに加熱して一晩(17時間)撹拌した。室温まで冷却後、これを減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 4/3→1/1)にて精製し、N-(2-benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide (11)(277 mg, 775 μmol, 85.8%)を白色固体として得た; TLC Rf = 0.27(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.33 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 4.50 (s, 2H), 7.24-7.34 (m, 5H), 7.38 (dd, 1H, J = 2.6, 8.8 Hz), 7.42 (br, 1H), 7.90 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.93 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 9.01 (d, 1H, J = 8.8 Hz).
【0194】
合成例8: N-(2-Benzyl-8-hydroxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide (13)
【化39】

【0195】
アルゴン雰囲気下、N-(2-benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide(60.0 mg, 168 μmol)を脱水ジクロロメタン(2 mL)に懸濁し、これに0 °Cにて三臭化ホウ素(1.0 M in dichloromethane)(840 μL, 840 μmol)を加えた後、室温に昇温して3時間撹拌した。これに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、N-(2-benzyl-8-hydroxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide (13) を黄色固体の粗生成物として得た。これ以上の精製は行わず、そのまま次の反応に用いた; TLC Rf = 0.36(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/2); 1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 2.17 (s, 3H), 4.50 (s, 2H), 7.20-7.32 (m, 9H), 7.78 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.96 (d, 1H, J= 9.0 Hz), 9.44 (d, 1H, J = 7.5 Hz).
【0196】
合成例9: 3-Amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14, v-coelenteramine)
【化40】

【0197】
上記で得られたN-(2-benzyl-8-hydroxybenzo[f]quinoxalin-3-yl)acetamide (13) の粗生成物をメタノール(20 mL)に溶解し、65 °Cに加熱して一晩(14時間)撹拌した。室温まで冷却後、これを減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1→1/10)にて精製し、3-amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14, v-coelenteramine)(51.3 mg, 170 mmol, quant., two steps)を黄土色固体として得た; TLC Rf = 0.34(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1); 1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.33 (s, 2H), 7.16-7.20 (m, 2H), 7.21-7.26 (m, 1H), 7.30-7.38 (m, 5H), 7.50 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.76 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 8.77 (d, 1H, J = 9.0 Hz).
【0198】
合成例10: 3-Amino-2-benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxaline (12)
【化41】

【0199】
アルゴン雰囲気下、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒(84.5 mg, 135 μmol)を1,2-ジクロロエタン(100 mL)に溶解し、これに室温にて2-amino-3-benzyl-5-(4-methoxy-2-vinylphenyl)-6-vinylpyrazine (9) (585 mg, 1.70 mmol)を加えた後、90 °Cに加熱して一晩(17時間)撹拌した。室温まで冷却後、これを減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 3/1→2/1)にて精製し、3-amino-2-benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxaline (12) を白色固体として得た(136 mg, 431 μmol, 25.3%); TLC Rf = 0.64(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.98 (s, 3H), 4.39 (s, 2H), 4.63 (s, 2H), 7.21-7.38 (m, 7H), 7.63 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.85 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 9.00 (d, 1H, J = 9.0 Hz); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 41.8, 55.4, 107.5, 118.1, 124.9, 125.5, 125.8, 127.2, 128.7 (2C), 129.1 (2C), 130.1, 132.7, 134.6, 136.6, 138.9, 143.1, 151.2, 158.5.
【0200】
合成例11: 3-Amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14, v-coelenteramine)(12からの合成)
【化42】

【0201】
3-Amino-2-benzyl-8-methoxybenzo[f]quinoxaline (12)(125 mg, 396 μmol)およびpyridinium hydrochloride(2.50 g, 21.6 mmol)の混合物を、190 °C(油浴温度)で30分撹拌した後、さらに210 °C(油浴温度)で30分撹拌した。室温まで冷却後、これに水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1→1/10)にて精製し、3-amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14, v-coelenteramine)(55.5 mg, 184 μmol, 46.5%)を黄土色固体として得た。
【0202】
合成例12: v-Coelenterazine (2, v-CTZ)
【化43】

【0203】
アルゴン雰囲気下、3-(4-(tert-butyldimethylsilyloxy)phenyl)-1,1-diethoxypropan-2-one (15)(101 mg, 286 μmol)をエタノール(2 mL)および水(0.4 mL)に溶解し、これに3-amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14)(55.5 mg, 184 μmol)を加え、0 ℃に冷却した後、さらに濃塩酸(0.20 mL)を加え、80 °Cに加熱して一晩(18時間)攪拌した。室温まで放冷後、減圧濃縮し、残渣をアルゴン気流下でシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1→1/2→酢酸エチルのみ)で精製し、v-coelenterazine (2, v-CTZ)(10.9 mg, 24.4 μmol, 13.2%)を黄土色粉末として得た; TLC Rf = 0.50(n-ヘキサン/アセトン= 1/1); 1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.08 (s, 2H), 4.51 (s, 2H), 6.69-6.72 (AA’BB’, 2H), 7.17-7.24 (m, 5H), 7.29 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 7.43 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 7.63 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.40 (br, 1H), 9.26 (br, 1H).
【0204】
合成例13: cf3-v-coelenterazine (17, cf3-v-CTZ)
【化44】

【0205】
アルゴン雰囲気下、3-(4-(trifluoromethyl)phenyl)propan-1,1-diethoxy-2-one (16)(86.9 mg, 299 μmol)をエタノール(2 mL)および水(0.2 mL)に溶解し、これに3-amino-2-benzylbenzo[f]quinoxalin-8-ol (14)(60.2 mg, 200 μmol)を加え、0 ℃に冷却した後、さらに濃塩酸(0.10 mL)を加え、80 °Cに加熱して一晩(13時間)攪拌した。室温まで放冷後、減圧濃縮し、残渣をアルゴン気流下でシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/1→1/2→酢酸エチルのみ)で精製し、cf3-v-coelenterazine (17, cf3-v-CTZ)(28.6 mg, 57.3 μmol, 28.7%)を黄色粉末として得た; TLC Rf = 0.24(n-ヘキサン/酢酸エチル= 1/2); 1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.26 (s, 2H), 4.51 (s, 2H), 7.18-7.25 (m, 3H), 7.28-7.33 (m, 2H), 7.40-7.44 (AA’BB’, 2H), 7.54-7.66 (m, 5H), 8.29 (br, 1H), 9.17 (br, 1H).
【0206】
実施例1: 発現ベクターの構築
1) レニラルシフェラーゼ発現ベクター pCold-RLの構築
新規発現ベクター pCold-RLは、以下の手順で構築した。Inouyea& Shimomura, Biochem. Biophys. Res. Commun., 233(1997) 349-353記載のレニラルシフェラーゼを有するベクター pHis-RLを鋳型として2種のPCRプライマーRL-17N/SacI(5’ gcc GAG CTC ACT TCG AAA GTT TAT GAT CC 3’:配列番号:21)およびRL-18C/XhoI(5’ cgg CTC GAG TTA TTG TTC ATT TTT GAG AA 3’ :配列番号:22)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件:25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を行った。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、制限酵素SacI/XhoIで消化した後、ベクター pCold-II (タカラ社製、GenBank: AB186389)の制限酵素SacI/XhoI部位に挿入する事によってレニラルシフェラーゼ発現ベクター pCold-RLを作製した。なお、インサートDNAの塩基配列は、DNA シークエンサー(ABI社製)にて確認した。
【0207】
2) 長波長に発光をシフトする変異レニラルシフェラーゼ-547発現ベクター pCold-hRL-547の構築
変異レニラルシフェラーゼ-547遺伝子(hRL-547)を有する新規発現ベクター pCold-hRL-547は、以下の手順で構築した。化学合成法とPCR法により作製した変異レニラルシフェラーゼ-547遺伝子を有するベクター pCR2.1-hRL-547プラスミドを構築した。変異レニラルシフェラーゼ-547遺伝子は、Nature Methods, 4(2007)641-643記載のRLuc8.6-547を元に設計し、常法の化学合成法とPCR法の組合せにより合成し(オペロン社)、pCR2.1(Invitrogen社)のAsp718/EcoRI制限酵素サイトにクローン化することによりpCR2.1-hRL-547を構築した。次いで、pCold-hRL-547ベクターを構築するため、pCR2.1-hRL-547を制限酵素Asp718/EcoRIで消化した後、ベクター pCold-IIの制限酵素Asp718/EcoRI部位に挿入してレニラルシフェラーゼ-547発現ベクター pCold-hRL-547を作製した。なお、インサートDNAの塩基配列は、DNA シークエンサー(ABI社製)にて確認した。
hRL-547をコードするDNAの塩基配列を、配列番号:19に示す。また、hRL-547のアミノ酸配列を配列番号:20に示す。
【0208】
実施例2: 組換え蛋白質の精製法
1) 組換え蛋白質の大腸菌での発現
大腸菌において組換え蛋白質を発現させるために、レニラルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター pCold-RL、レニラルシフェラーゼ-547遺伝子発現ベクター pCold-hRL-547を用いた。常法により大腸菌BL21に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/mL)を含有する10 mLのLB液体培地(水1Lあたり、バクトトリプトン 10 g、イーストイクストラクト 5 g、塩化ナトリウム 5 g、pH7.2)に植菌し、37℃で16時間培養を行った。その培養物を新たなLB液体培地400 mL x 5本(総量2L)に添加して37℃で4.5時間培養を行い、1時間氷冷後、0.2 mMのIPTGを加えて15℃で17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000 rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0209】
2) 培養菌体からの組換え蛋白質の抽出およびニッケルキレートゲルカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を200 mLの50 mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4℃、20分間遠心した。得られた可溶画分を、ニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6.5 cm)に供し、組換え蛋白質を吸着させた。500 mLの50 mM Tris-HCl (pH7.6)で洗浄後、0.1 Mイミダゾール(和光純薬工業社製)を含む50 mM Tris-HCl (pH7.6)により目的の組換え蛋白質を溶出した。蛋白質濃度は、Bradford法のもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。精製過程における収率を表1へ示した。
【0210】
表1は、レニラルシフェラーゼおよびレニラルシフェラーゼ-547の精製収率を示す。
【表1】

【0211】
実施例3: 発光活性の測定法
レニラルシフェラーゼ(2.94 ng)またはレニラルシフェラーゼ-547(14.3 ng)を96穴マイクロプレート(ヌンク社製)のウェルに10μL分注した後、発光プレートリーダーCentro LB960(ベルトール社製)を用いて、基質セレンテラジンまたはv-セレンテラジン 0.05μgを含む30 mM Tris-HCl (pH 7.6)-10 mM EDTAを0.1 mL注入することにより発光反応を開始させ、発光量を測定した。発光強度は0.1秒間隔で60秒間、3回測定し、最大発光強度(Imax)および60秒間の積算値の平均値(rlu)を相対活性(%)で示した(表2)。
【0212】
表2は、レニラルシフェラーゼおよびレニラルシフェラーゼ-547の発光活性を示す。
【表2】

【0213】
実施例4: 発光スペクトルの測定法
発光反応は、エタノールに溶解した基質セレンテラジンまたはv-セレンテラジン5μg(1μg/μL)を含む1 mLの50 mM Tris-HCl(pH7.6)-10 mM EDTAに、各々ルシフェラーゼを加えることにより開始させた。使用したルシフェラーゼの蛋白量は、基質セレンテラジンではレニラルシフェラーゼ; 1.5μg、レニラルシフェラーゼ-547; 7.2μgである。一方、基質v-セレンテラジンではレニラルシフェラーゼ; 14.7μg、レニラルシフェラーゼ-547; 35.8μgである。発光スペクトルは、蛍光発光測定装置FP-6500(日本分光社製)にて、励起光源をオフにして、バンド幅; 20 nm、感度; Medium、スキャン速度; 2000 nm/分、22〜25℃の条件下、光路長10 mmの石英セルを用いて測定した。測定したスペクトルから、発光極大値(λmax, nm)と半値幅(nm)を求め、表3に示した。
【0214】
表3は、レニラルシフェラーゼおよびレニラルシフェラーゼ-547のスペクトル分析の結果を示す。
【表3】

【0215】
以上の実施例に示したように、v-セレンテラジンを発光基質として用いたものでは、セレンテラジンと比較して、最大発光波長が長波長側にシフトした。さらに、cf3-v-セレンテラジンを発光基質として用いたものでは、v-セレンテラジンと比較しても、最大発光波長が長波長側にシフトしていた。
【配列表フリーテキスト】
【0216】
[配列番号:1]天然型アポイクオリンの塩基配列である。
[配列番号:2]天然型アポイクオリンのアミノ酸配列である。
[配列番号:3]天然型アポクライティン−Iの塩基配列である。
[配列番号:4]天然型アポクライティン−Iのアミノ酸配列である。
[配列番号:5]天然型アポクライティン−IIの塩基配列である。
[配列番号:6]天然型アポクライティン−IIのアミノ酸配列である。
[配列番号:7]天然型アポマイトロコミンの塩基配列である。
[配列番号:8]天然型アポマイトロコミンのアミノ酸配列である。
[配列番号:9]天然型アポオベリンの塩基配列である。
[配列番号:10]天然型アポオベリンのアミノ酸配列である。
[配列番号:11]天然型アポベルボインの塩基配列である。
[配列番号:12]天然型アポベルボインのアミノ酸配列である。
[配列番号:13]レニラ(Renilla)ルシフェラーゼの塩基配列である。
[配列番号:14]レニラ(Renilla)ルシフェラーゼのアミノ酸配列である。
[配列番号:15]エビ(Oplophorus)ルシフェラーゼの塩基配列である。
[配列番号:16]エビ(Oplophorus)ルシフェラーゼのアミノ酸配列である。
[配列番号:17]ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼの塩基配列である。
[配列番号:18]ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼのアミノ酸配列である。
[配列番号:19]レニラルシフェラーゼ変異体の塩基配列である。
[配列番号:20]レニラルシフェラーゼ変異体のアミノ酸配列である。
[配列番号:21] PCRプライマーRL-17N/SacIの塩基配列である。
[配列番号:22] PCRプライマーRL-18C/XhoIの塩基配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(XIV)
【化45】


(式中、R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または置換もしくは非置換の複素環基である。)
で表されるv-セレンテラミン化合物の製造方法であって、
(1)一般式(VIII)
【化46】


(式中、R1は、前記の通りであり、R4は、保護基である。)
で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)
【化47】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得る工程と、
(2)一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)
【化48】


(式中、R1およびR4は前記の通りであり、R5は、保護基である。)
で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後、R4および存在する場合にはR5を脱保護する工程を含む、方法。
【請求項2】
一般式(II)
【化49】


(式中、
R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭化水素基、または置換もしくは非置換の複素環基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、または置換もしくは非置換の炭化水素基である。)
で表されるv-セレンテラジン化合物の製造方法であって、
(1)一般式(VIII)
【化50】


(式中、R1は、前記の通りであり、R4は、保護基である。)
で表される化合物とメチルトリフェニルホスホニウム塩とを塩基の存在下で反応させることにより一般式(IX)
【化51】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得る工程と、
(2) 一般式(IX)で表される化合物、および一般式(IX)で表される化合物のアミノをR5で保護した一般式(X)
【化52】


(式中、R1およびR4は前記の通りであり、R5は保護基である。)
で表される化合物からなる群から選択されるいずれか1つを閉環メタセシス反応に供し、その後、R4および存在する場合にはR5を脱保護し一般式(XIV)
【化53】


(式中、R1は前記の通りである。)で表されるv-セレンテラミン化合物を得る工程と、
(3)一般式(XIV)で表される化合物と一般式(XV)
【化54】


(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシル、ハロゲン、炭化水素基、または保護基によって保護された水酸基である。)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表される化合物を得る工程を含む、方法。
【請求項3】
前記工程(1)において、塩基として、n−ブチルリチウム、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびリチウムジイソプロピルアミドから選択される少なくとも1つの塩基を用いる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、およびトルエンから選択される少なくとも1つの溶媒を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(1)の反応温度および反応時間を、0 ℃〜40 ℃で1時間〜4時間とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(2)の閉環メタセシス反応の触媒として、第二世代Hoveyda-Grubbs触媒を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(2)の閉環メタセシス反応の溶媒として、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、およびジメトキシエタンから選択される少なくとも1つの溶媒を用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(2)の閉環メタセシス反応の反応温度および反応時間を、25 ℃〜110 ℃で1時間〜48時間とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式中、R1は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリールアルケニル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキル、脂肪族環基によって置換されていてもよいアルケニル、脂肪族環基、複素環基、または脂肪族環基によって置換されていてもよいアルキニルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、ハロゲン、脂肪族環基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル、トリフルオロメチル、またはアルコキシルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記式中、R4は、メチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、4-メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記式中、R5は、アセチル、ベンゾイル、p-トシル、tert-ブトキシカルボニル、またはベンジルオキシカルボニルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記式中、RおよびRの水酸基を保護する保護基は、それぞれ独立して、tert−ブチルジメチルシリル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、フェニルジメチルシリル、トリエチルシリル、フェニルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである、請求項2〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記一般式(VIII)で表される化合物が、
(1) 2-アミノ-3,5-ジブロモ-6クロロピラジンと、R1MgX(式R1は、前記の通りであり、Xは、ハロゲンである。)およびZnCl2とを、パラジウム触媒の存在下で反応させることにより一般式(V)
【化55】


(式中、R1は前記の通りである。)
で表される化合物を得ることと、
(2) 一般式(V)で表される化合物と、式(VI)
【化56】


(式中、R4は前記の通りである。)
で表される化合物とをパラジウム触媒と塩基の存在下で反応させることにより一般式(VII)
【化57】


(式中、R1およびR4は前記の通りである。)
で表される化合物を得ることと、
(3) 一般式(VII)で表される化合物と、トリブチル(ビニル)スズとをパラジウム触媒の存在下で反応させること、
により得られる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−188354(P2012−188354A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50487(P2011−50487)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】