チメロサール除去装置

医薬品から重金属及び重金属複合体、例えばチメロサールを除去するための装置を提供する、この場合、該装置は、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質をそれに付随させた投与手段若しくは固体サポートを含む。さらに、医薬品からチメロサールを除去するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
〔0001〕本出願は、米国仮特許出願No.60/759,671(Jan.17, 2006,出願)への35U.S.C.第119(e)条下での恩恵を主張し、米国特許出願No.11/255,427(Oct.19, 2005, 出願)の一部継続である、該米国特許出願No.11/255,427は米国仮特許出願No.60/620,528(Oct.19, 2004出願)に対する優先権を主張し、米国特許出願No.10/797,748( Mar.9, 2004, 出願)、現在の米国特許出願No.7,135,605(これは米国特許出願No.09/948,495(Sept.6,2001,出願)、現在の米国特許No.6,750,056の分割出願である)の一部継続であり、これらの全内容はそれらの全体で本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
〔0002〕本発明は、生物学的物質から重金属及び重金属錯体を除去するための構成物及び方法に関する。さらに具体的には、本発明は、患者に投与される予定の生体活性物質から、投与の時点で投与手段に付随したメタロチオネインタンパク質を用いて、チメロサールを除去することに関する。
【0003】
発明の背景
〔0003〕約50重量%水銀であるチメロサールは、ワクチンに最も広範囲に用いられている保存剤の1つである。これは代謝されて又は分解されて、エチル水銀とチオサリチル酸になる。エチル水銀は、メチル水銀(今までにかなり集中して研究されていた関連物質)とは区別されるべき有機水銀である。
【0004】
〔0004〕ワクチン中に見出される濃度では、チメロサールは米国薬局方に記載されている保存剤の必要条件を満たす:即ち、これは指定された問題生物を殺し、問題菌類の増殖を防止することができる(米国薬局方2004)。0.001%(10万分の1部)〜0.01%(1万分の1部)の濃度でのチメロサールは、広範囲の病原菌の除去に効果的であることが判明している。保存剤として0.01%のチメロサールを含有するワクチンは、投与量0.5mlにつきチメロサール50μg又は投与量0.5mlにつき水銀約25μgを含有する。
【0005】
〔0005〕チメロサールは水銀含有有機化合物(有機水銀)である。1930年代以来、チメロサールは、有害な微生物による生命にかかわる可能性がある汚染の防止を助けるために、多くのワクチンを含めた、多数の生物学的製品及び薬物製品に保存剤として広く用いられている。過去数年間にわたって、低レベルの有機水銀でさえも神経毒性があるという理論的可能性についての意識の向上のために、ワクチン及びその他の製品におけるチメロサールの使用についての懸念が高まっている。実際に、これらの懸念のために、合衆国食品医薬品局(FDA)は、ワクチン製造業者と共に、ワクチンからチメロサールを減ずる又は除去するために努力しており、この努力を続けている。
【0006】
〔0006〕チメロサールは、不活性化インフルエンザワクチンを例外として、6歳以下の小児に対してルーチンに勧められている、あらゆるワクチンから除去されているか又は痕跡量までに減じられている。年長の小児(7歳以上)と成人に適応される、例えばTd(破傷風及びジフテリアワクチン)のような、幾つかのワクチンは、チメロサールを含まないか又はごく微量を含有するにすぎない製剤として現在入手可能である。微量のチメロサールを含むワクチンは、投与量あたり1μg以下の水銀を含有する。
【0007】
〔0007〕種々な水銀ガイドラインは、メチル水銀の疫学的及び実験室研究に基づいているが、チメロサールはエチル水銀の誘導体である。これらは異なる化学的実体−エチル水銀に対してメチル水銀−であるので、異なる毒性学的プロフィルが予想される。それ故、メチル水銀に基づくガイドラインをチメロサールに適用するのには不安が生じる。エチル水銀対メチル水銀の比較毒性学に関する決定的なデータが無いために、FDAはエチル水銀及びメチル水銀をその危険性評価において同等と見なしている。
【0008】
〔0008〕チメロサールに対するアレルギー反応は、臨床文献に記載されており、これらの反応は主として、注射部位における発赤及び腫張を含めた遅延型局所過敏反応として発現される(Cox NH, Forsyth A. Thimerosal allergy and vaccination reaction. Contact Dermatitis 18: 229-233, 1988)。このような反応は通常軽度であり、2,3日間持続するにすぎない。
【0009】
〔0009〕2001年に、医薬品協会(IOM)は、免疫化安全性に関連した特定の問題点を検討するために委員会(免疫化安全性検討委員会)を召集した。このような検討の1つは、ワクチンにおけるチメロサール使用と神経発達障害との可能な関係に集中した(Institute of Medicine, Thimerosal-containing vaccines and neurodevelopmental disorders, Washington DC: National Academy Press, 2001)。IOMの免疫化安全性検討委員会は、そのレポートで、小児期ワクチンからのチメロサール暴露と、自閉症、注意欠乏活動亢進障害(ADHD)及び言語の遅れの神経発達障害との間の因果関係を承認する又は拒絶するのいずれのためにも証拠が不十分であると結論した。因果関係を確立する又は拒絶するには、さらなる研究が必要であった。該委員会は、チメロサール含有ワクチンへの暴露を神経発達障害に関連付けることができるという仮説が生物学的に一応信頼できそうに思われると結論した。
【0010】
〔0010〕それ故、使用の時点で注射物質からチメロサールを容易に除去するための方法及びシステムの必要性が存在する。
【0011】
〔0011〕メタロチオネイン(MTs)は、動物界全体に偏在的に分布している、小さい金属結合性物質である。これらは、高い金属結合アフィニティを有しており、遊離金属イオンの細胞内レベルの調節に重要であると信じられている。MTsの構造的特徴として、高度なシステイン組成と、芳香族アミノ酸を有さないことが挙げられる。システイン残基が、砒素、亜鉛、銅、カドミウム、水銀、コバルト、鉛、ニッケル、クロム、ウラン、白金、金、銀、及びこれらの錯体を含めた重金属に金属結合する、該タンパク質の高いアフィニティの原因である。一般に、異なる種(divergent species)からのMTsは、高度なアミノ酸配列類似性を有する。実際に、金属結合の原因となるアミノ酸配列は、種の間で本質的に変わらない。
【発明の開示】
【0012】
〔0012〕したがって、本発明の目的は、医薬品及び生体活性物質から、投与の時点で、メタロチオネインに基づくシステムを用いてチメロサールを除去する方法及び装置(device)を提供することである。
【0013】
発明の概要
〔0013〕医薬品及び生体活性物質から例えば水銀含有チメロサールのような金属を、メタロチオネインタンパク質を用いて除去するための方法及び装置を提供する。
【0014】
〔0014〕本発明の1実施態様では、対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するための装置であって、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインをそれに付随させた投与手段を含み、前記少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質が前記医薬品から前記チメロサールに結合して、実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じる装置を提供する。
【0015】
〔0015〕別の実施態様では、該投与手段は、注射器、経口投与用注射器、経口投与用カップ、吸入器、針、針なし注射器具、及び眼科用投与器具から成る群から選択される。別の実施態様では、該投与手段は、無菌性環境を備える。
【0016】
〔0016〕他の実施態様では、投与は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注入、経口的、吸入、及び眼内から成る群から選択される投与経路を含む。他の実施態様では、該医薬品は、ワクチン、免疫原性組成物、液体薬剤組成物、コロイド状薬剤組成物、懸濁液薬剤組成物、エアロゾル、及び乾燥粉末から成る群から選択される。
【0017】
〔0017〕本発明の他の実施態様では、該投与手段は、投与に時間的に近接して、該医薬品からチメロサールを除去する。他の実施態様では、該投与手段の少なくとも1つの内面が、その上にコーティングされた少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質を有する。他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が該内面に共有結合する。他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が、ポリマー・コーティング中で内面にコーティングされる。
【0018】
〔0018〕本発明の他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が固体サポートに結合しており、該固体サポートが該投与手段に付随している。他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が固体サポートに結合しており、前記固体サポートが該投与手段内に配置されている。
【0019】
〔0019〕本発明の1実施態様では、固体サポートは、フィルター、膜、ナノ粒子、ビーズ、固体サポート粒子、及びポリマー・コーティングから成る群から選択される。他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が複数のビーズ又はナノ粒子に付随しており、前記複数のビーズ又はナノ粒子が前記投与手段内に配置されている。他の実施態様では、該固体サポートが生体適合性ポリマーを含む。別の実施態様では、該生体適合性ポリマーが、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ビニルポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ナイロン及びこれらの混合物から成る群から選択される。別の実施態様では、該固体サポートはフィルターである。
【0020】
〔0020〕本発明の他の実施態様では、該少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネイン(MT)タンパク質又はその部分が、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類、植物、酵母、及び菌類から成る群から選択される有機体からのものである。他の実施態様では、該哺乳動物がヒトである。別の実施態様では、該哺乳動物はウサギである。別の実施態様では、該甲殻類はブライン・シュリンプ(アルテミア:Artemia)である。
【0021】
〔0021〕本発明の他の実施態様では、該MTタンパク質は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:21及び配列番号:23から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
〔0022〕本発明の他の実施態様では、対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去する方法であって、チメロサール含有医薬品を、投与手段に付随する、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質と接触させることと、結果として生じた、実質的にチメロサールを含まない医薬品を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0023】
〔0023〕本発明の1実施態様では、対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するためのシステムであって、少なくとも1種類のメタロチオネインタンパク質をそれに付随させた仕組み(device)を含み、該仕組みを通しての医薬品の通過が前記メタロチオネインタンパク質への前記チメロサールの結合と、実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じるシステムを提供する。
【0024】
〔0024〕本発明の1実施態様では、対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するための器具(device)であって、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質を自らに付随させた固体サポートを含み、該少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質が該医薬品からのチメロサールに結合して、結果として実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じる器具を提供する。
【0025】
発明の詳細な説明
〔0042〕メタロチオネインタンパク質を用いて、医薬品から、例えば水銀含有チメロサールのような金属を除去するためのシステム(system)、装置あるいは器具(device)及び方法(method)を提供する。一実施態様では、投与処置の一部として医薬品から実質的に全てのチメロサールを除去する投与手段を提供する。他の実施態様では、投与処置の前に該チメロサールを除去する。
【0026】
〔0043〕本発明の投与装置(dosing device)、システム及び方法は、医薬品からチメロサールの実質的に全てを除去する。一つの実施態様では、チメロサールの約90%より多くが除去される。もう一つの実施態様では、チメロサールの約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%よりも多くが除去される。他の実施態様では、本発明は、医薬品の投与量につき約1μg未満のチメロサールを有する医薬品を生じる。他の実施態様では、医薬品の各投与量は、約0.7μg未満のチメロサールを含有する。別の実施態様では、医薬品の各投与量は、約0.5μg未満のチメロサールを含有する。さらに別の実施態様では、医薬品の各投与量は、約0.1μg未満のチメロサールを含有する。
【0027】
〔0044〕本明細書で用いる限り、“医薬品(medications)”なる用語は、対象に投与すべき任意の製薬的製剤であって、非限定的にチメロサールを含めた、重金属若しくは重金属含有化合物を含有する製薬的製剤を意味する。医薬品なる用語は、例えば、非限定的に、ワクチン、免疫原性組成物、遺伝子療法剤及び任意の種類の注射可能な作用剤のような、注射可能な医薬品、液体薬剤組成物、コロイド状薬剤組成物、懸濁液薬剤組成物、エアゾール並びに乾燥粉末を、これらに限定する訳ではなく、包含する。本開示のために、医薬品と生体活性物質とは互変的に用いられる。
【0028】
〔0045〕例えばヒト、マウス、細菌種、甲殻類(crabs)、魚類、酵母及び鶏のような、多様な種から単離されている、例えばメタロチオネイン(MTs)のような金属結合タンパク質は、例えば、類似したサイズ(約6.0〜6.8kDa)、高度なアミノ酸配列保存、及びタンパク質の総アミノ酸組成における高い割合のシステイン残基(図6)のような、非常に類似した構造的特徴を有することが知られている。非限定的に、砒素、亜鉛、銅、カドミウム、水銀、コバルト、鉛、ニッケル、クロム、ウラン、白金、銀、及び金を含めた重金属に対する該タンパク質の結合アフィニティの原因であるのは、これらのMTsのシステイン組成である。特に述べない限り、タンパク質なる用語は、タンパク質類、ポリペプチド及びペプチドを意味し、金属結合ドメインを含む。本発明のMTタンパク質は、重金属がタンパク質又は他の分子に付随している重金属錯体にも結合する。
【0029】
〔0046〕例えば、本明細書に開示した、MTタンパク質と、それらを含む装置(手段)は、例えば重金属又は重金属錯体(例えば、チメロサール)のような、ある濃度の少なくとも1種類の金属を有する、任意の物質の処置に関連して有用である。特に、本発明のMTタンパク質と装置は、注射物質から重金属含有錯体(例えば、水銀含有チメロサール)の除去に有用である。さらに、MTタンパク質は、特に、ある一定の重金属に結合するが、他の金属、例えば生物学的に必要な金属(例えば、非限定的に、カルシウム及びマグネシウム)には結合しない(図2と図4)。
【0030】
〔0047〕本明細書で用いる限り、医薬品とは、任意の経路を通して哺乳動物に投与されるために適した、任意の物質と定義される。医薬品の非限定的な例は、ワクチンと、例えば免疫グロブリン及び抗毒素又は抗蛇毒素のような血漿由来産物と、化学薬品又は生物製剤(非限定的に、タンパク質、ペプチド、ホルモン、多糖類等を包含する)を含めた薬物を包含する。医薬品はさらに、免疫原性組成物、液体薬剤組成物、コロイド状薬剤組成物、懸濁液薬剤組成物、エアゾール、及び乾燥粉末を意味することもありうる。医薬品と生体活性物質とは互変的に用いることができ、本開示のために同等な用語と見なされる。本発明の装置又は方法が対応する投与経路は、非限定的に、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射;静脈内注入;経口;吸入;眼内及びその他の、医学的専門家によって知られた投与経路を包含する。
【0031】
〔0048〕概略において、ある基質であってそこから1種類以上の重金属又は重金属錯体(例えば、非限定的にチメロサール)が除去されるべきである基質を、固体サポートに結合したMTタンパク質と接触させ、ここで、当該MTタンパク質は前記重金属に対してアフィニティを有する。該固体サポートは、MTタンパク質が不可逆的に結合したマトリクスを形成する(図3)。
【0032】
〔0049〕該固体サポートは、膜、ビーズ若しくは固体サポート粒子、ナノ粒子、医療機器若しくは投与手段上のコーティングの形態で、又は生物学的若しくは生化学的分離に一般に用いられる任意の他の形態であることができる。固体サポートとして膜を用いる場合には、該MT−固体サポート構成物を、MTタンパク質を含有するハウジング(例えば、カートリッジ)を含む接触手段に、重金属含有溶液を入口ポートを通して該カートリッジ中へ流入させることで出口ポートから流出する前に該MTタンパク質と接触させることによって、組み入れることができる。1実施態様では、入口ポートと出口ポートが同じポートであることができる。カートリッジの代わりに、例えば、非限定的に、カセット、注射器、ユニット(unit)、キャニスター、カラム又はフィルターホルダーのような、種々なハウジングを用いることができる。投与手段は、非限定的に、注射器、経口投与用注射器若しくはカップ、吸入器、針及び眼科用投与器具を包含する。
【0033】
〔0050〕具体的な1実施態様では、固体サポートは膜の形態である。該膜は好ましくは生体適合性ポリマーであり、さらに好ましくは、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ビニルポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ナイロン及びこれらの混合物から成る群から選択されるメンバーである。1実施態様では、膜の形態はプリーツのある膜であるが、例えばフラットシート、メッシュ、プリーツシート、積み重ねディスク、積み重ねシート及び中空ファイバーのような、他の膜の形態も、当業者に知られた、他の形態と同様に使用可能である。固体サポート、MTタンパク質を固体サポートに結合させる方法、及びそれらの使用についての詳細な考察は、同時係属米国特許出願No.11/255,427に開示されており、該特許出願は、それが含有する、MTタンパク質と固体サポートに関する全てに関して本明細書に援用される。
【0034】
〔0051〕本発明の1実施態様では、投与手段は、該投与手段を通過するチメロサール含有溶液からチメロサールを除去するために、それに付随したMTを有する。図7に示した、1つの具体的な投与手段は注射器である。MTは幾つかの方法で投与手段に付随させることができる。図7は、一般に、プランジャー102、バレル104及び、針108に取り付けるためのルアーチップ106を有する注射器100を示す。針108は、典型的に、ルアーチップ106に取り付けるための補足的ルアーハブ124を有する。注射器は、多様な仕様に合わせて製造することができ、図7に示したよりも多い又は少ない要素を有することができる。プランジャー102とバレル104との間にシールを備えるために、任意にガスケット120が存在する。図7Aでは、MTがビーズ122の形態の固体サポートに結合しており、少なくとも1種類のMTタンパク質をそれらに結合させた複数のビーズが注射器100のバレル104内及び/又は針108のルアーハブ124内に、チメロサール含有溶液が注射器100に入る前に配置される。注射器100中に汲み上げられた注射物質がMT被覆ビーズ122に接触して、注射物質中のチメロサールがMTタンパク質に結合する。該ビーズは、それらの用途に適合した、任意のサイズ及び形状であることができる。針108のルアーハブ124内に用いられるビーズは、レザバー又は注射器バレル104内に用いられるビーズとは異なるサイズであることができる。さらに、注射器100のバレル104内又は針108のルアーハブ124内のビーズは、注射物質の通過後に、バレル104又はルアーハブ124内に保持されて、対象又は患者の体内に入ることはない。ビーズは、バレル104若しくはルアーハブ124内の、ビーズよりも小さい孔度(pore sizes)を有する膜若しくはメッシュの存在、又はビーズが注射物質と一緒にバレル104若しくはルアーハブ124から出ないように、バレル104若しくはルアーハブ124のいずれの出口ポートのサイズよりも大きいビーズのサイズを非限定的に包含する手段によって、保持される。
【0035】
〔0052〕MTタンパク質をコーティングするために適したビーズは、非限定的に、例えば、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ビニルポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ナイロン及びこれらの混合物のような生体適合性ポリマーを包含する。
【0036】
〔0053〕投与手段のさらに他の実施態様では、MTをフィルターの形態の固体サポート上にコーティングする。注射物質を通過させうるために充分に大きい分子量カットオフを有するフィルターが、本発明に用いるために適する。図7Bは、注射器100のルアーチップ106と針108のルアーハブ124との間にフィルターハウジング130を配置している注射器100を示す。フィルターハウジング130内に含まれる生体適合性フィルター136に、少なくとも1種類の実質的に純粋なMTタンパク質が共有結合する。典型的なフィルターハウジングは、入口ポート132と出口ポート134を有し、フィルターハウジング130内に配置された、MTタンパク質をその上に結合させたフィルター136を有する生体適合性プラスチックを含む。入口ポート132と出口ポート134は、注射器100及び針108へのフィルターハウジング130の取り付けを可能にするルアーロック構造を有する。フィルターハウジング130とフィルター136とが滅菌に対して安定であることが好ましい。
【0037】
〔0054〕さらに他の実施態様では、固体サポートは、投与手段の内面上のコーティングの形態である。図7Cには、注射器投与手段のさらなる実施態様を示す。非限定的な実施態様では、注射器100のバレル104の内面は、ポリマーコーティング140で被覆されており、このポリマーコーティング140に少なくとも1種類のMTタンパク質が結合している。別の実施態様では、針108のルアーハブ124の内面部分が、ポリマーコーティング140で被覆されており、このポリマーコーティング140に少なくとも1種類のMTタンパク質が結合するか又は組み込まれている。さらに他の実施態様では、ゴムガスケット120の表面がポリマーコーティング142で被覆されており、このポリマーコーティング142に少なくとも1種類のMTタンパク質が結合している。別の実施態様では、針108のルアーハブ124の内面がポリマーコーティング144で被覆されており、このポリマーコーティング144に少なくとも1種類のMTタンパク質が結合している。チメロサールを含有する注射物質は、注射器100のバレル104とルアーチップ106及び針108のルアーハブ124を通過して、該注射物質中のチメロサールが該MTタンパク質に結合するので、患者の体内に入る前の該注射物質からチメロサールの実質的な量が除去される。
【0038】
〔0055〕図8は、吸入によって患者に投与すべき医薬品が含有されるボディ802と出口804を含む吸入投与用の手段を図解によって示す。適当な吸入器で、鼻又は口からの吸入によって肺システムに医薬品をデリバリーすることができる。該医薬品は、エアロゾルとして、乾燥粉末として、又は患者の肺システムへの投与に適した、任意の形で投与することができる。典型的に、ボディ802からの医薬品は、通路806を通って出口804に噴射されて、そこから該医薬品は患者の鼻又は口に入る。図8Aに示した、本発明の1実施態様では、通路806及び/又は出口804の内面は、少なくとも1種類のMTタンパク質が結合しているポリマーコーティング808で被覆されている。チメロサールを含有する吸入用薬剤は、通路806と出口804を通過して、該吸入剤中のチメロサールはポリマーコーティング808上のMTタンパク質に結合するので、患者の体内に入る前の該吸入剤からチメロサールの実質的な量が除去される。図8Bに示した、別の実施態様では、少なくとも1種類のMTタンパク質をそれに結合させたフィルター810が、通路806内に配置されているので、チメロサールを含有する吸入剤はフィルター810を通過し、チメロサールは、吸入剤が患者の体内に入る前に、吸入剤から除去される。吸入投与用の器具は当該技術分野において周知であり、典型的な装置は、米国特許No. 7,047,967, 7,143,764, 7,077,130, 7,032,594, 7,007,689, 6,955,169, 6,745,761, 6,557,550, 6,345,617, 6,131,566, 5,860,416, 5,571,246, 5,263,475, 及び 4,083,368号に開示されており、これらの全ては、それらが吸入投与器具に関して開示している全てを参照することによって、本明細書に援用される。
【0039】
〔0056〕図9は、別の典型的な投与手段、針なし注射器具を示す。例示される針なし注射器具900は、ディスペンシング通路904を通してオリフィス906に連結するレザバー・チャンバ902を含み、該オリフィスから医薬品が患者に注射される。典型的には、チャンバ902の医薬品内容物は、該医薬品が患者の皮膚を透過するような、充分な力でディスペンシング通路904とオリフィス906を通って噴射される。図9Aに示した、本発明の1実施態様では、ディスペンシング通路904及び/又はオリフィス906の内面は、少なくとも1種類のMTタンパク質が結合しているポリマーコーティング908で被覆されている。チメロサールを含有する注射用薬剤は、ディスペンシング通路904とオリフィス906を通過して、注射剤中のチメロサールはポリマーコーティング908上のMTタンパク質と結合するので、該注射剤中に存在するチメロサールの実質的な量は、該注射剤が患者の体内に入る前に、該注射剤から除去される。図9Bに示した別の実施態様では、レザバー902は、少なくとも1種類のMTタンパク質が結合しているビーズ922を含有する。チメロサールを含有する注射剤は、レザバー902中のビーズ922に接触するので、該注射剤中に存在するチメロサールの実質的な量は、該注射剤がレザバー902を出て、患者の体内に入る前に、ビーズ922に結合する。図9Cに示した別の実施態様では、少なくとも1種類のMTタンパク質をそれに結合させているフィルター910が、ディスペンシング通路904に配置されているので、チメロサールを含有する注射剤がフィルター910を通過すると、チメロサールは、該注射剤が患者の体内に入る前に、該注射剤から除去される。針なし注射器具は当該技術分野において周知であり、典型的な装置は、米国特許No. 7,156,822, 7,150,409, 7,056,300, 7,029,457, 6,939,323, 6,471,669, 5,993,412, 5,520,639, 4,342,310, 及び3,948,266号に開示されており、これらの全ては、それらが針なし注射器具に関して開示している全てを参照することによって、本明細書に援用される。
【0040】
〔0057〕本発明の別の実施態様では、医薬品又は生体活性物質を、少なくとも1種類のMTタンパク質をそれに結合させている複数個のビーズ又はナノ粒子と混合すると、重金属MT−ビーズ複合体が該医薬品から除去される。医薬品から重金属結合ビーズを除去するための例示的で、非限定的な手段は、フィルター、膜、メッシュ、アフィニティ・カラム、及び当業者に知られた他の手段を包含する。
【0041】
〔0058〕本発明のさらに他の実施態様では、図7Bに示すような、フィルター・ユニットが、チメロサール含有液体からチメロサールを除去するために備えられる。フィルター・ハウジング130は、入口ポート132と出口ポート134を有するハウジングによって囲まれた固体サポート136に結合した少なくとも1種類のMTタンパク質を含有する。該フィルター・ユニットは、チメロサール含有液体からチメロサールを除去するために、商業的に入手可能な注射器又は他の装置に取り付けることができる。チメロサールは該フィルター・ユニット内に保持され、該フィルター・ユニットを通っての医薬品の通過から、実質的にチメロサールを含まない医薬品が生じる。
【0042】
〔0059〕投与手段の内面を被覆するために適したポリマーコーティングは、該投与手段の表面から解離可能であるべきではなく、メタロチオネインを不可逆的に結合可能であるべきであり、かつ滅菌可能であるべきである。
【0043】
〔0060〕MTタンパク質は例えばポリマー膜又はビーズのようなサポートに、該サポートへの該MTタンパク質の共有結合によって又は該ポリマーマトリックス中へのMTタンパク質の組み込みによって付随する。
【0044】
〔0061〕特にタンパク質結合のために設計された、多くの誘導体化固体サポートが商業的に入手可能であり、熟練した実行者に周知である。これらの物質のうちの或るものは、第1級アミンによってタンパク質を結合するために表面アルデヒド基を有する。他の場合には、該サポートは、第1級アミン又はカルボキシル基のいずれかによって誘導体化されている(図14)。例えば、限定として意図する訳ではなく、メタロチオネインは(i)物質に直接結合することができる、又は(ii)適当なリンカーを用いて、MTを膜の表面から離れるように配向させることができ、活性部位をブロックしてリガンドがMTに結合するのを妨害するような、いずれの可能なタンパク質/膜立体相互作用をも排除することができる。MTの場合には、リンカーの使用が、チメロサール結合の効率を高める可能性がある。
【0045】
〔0062〕MTのC−末端アミノ酸はヒスチジンである。この残基は(i)金属結合活性の原因となる構造ドメインの一部ではなく、(ii)該タンパク質の表面から離れて位置するので、これは固体サポートにMTを結合させるための最適の部位として存在する。本発明の1実施態様では、MTは、最初に固体サポートをN−スクシンイミジル・ヨードアセテート(式1)と反応させることによって、固体サポートに結合する。
【0046】
【化1】

〔0063〕該分子のN−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)部分が、該物質の表面上の第1級アミンと反応して、該表面官能基をヨードアセテートに転化させる(図15)。pH5〜6において、該ヨードアセテート官能基はMTヒスチジンと反応して、該タンパク質を該膜に共有結合させる(図16)。
【0047】
〔0064〕さらに、膜上にMT分子数が増加すると、該膜の総チメロサール結合能力は向上することができる。該膜の有する表面積の範囲は限定され、タンパク質を結合させるために利用可能な官能基(ヨードアセテート)の数は有限なので、該膜上のMT分子数を高めるためには別の方法が必要であろう。このことは、標準クローニングベクター内のアルテミア MT遺伝子の複数コピーをクローニングして、ポリマーMT遺伝子配列を形成することによって、達成することができる。本発明の1実施態様では、最終的に発現されるMT“タンパク質”は、例えば、非限定的に、ノナペプチド(SSGSDI、配列番号:24)リンカーのようなリンカーによって分離された、MTの複数コピーから構成されると考えられる(図17)。
【0048】
〔0065〕該リンカー配列は、(i)該MT配列をそれらのネイティブ立体配座中に混ぜることを可能にして、それらのチメロサール結合活性を保持するように、そして(ii)個々のMTタンパク質ドメインが凝集するのを防止する剛性度を与えるように設計される。図16に示した、典型的なMT配列を用いると、チメロサール結合能力は4倍に増加すると考えられる。
【0049】
〔0066〕ポリマーMT遺伝子配列は、重複PCRプライマー標準組み換えDNAテクノロジーを用いて構築されると考えられる。次に、該構築体を、(i)該構築体中に存在しない、及び(ii)適当な発現ベクターの多重クローニング部位と適合した、特有の制限部位を含有するプライマーによって、PCR増幅することができる。得られたPCR産物をその後、例えば、非限定的にpET発現ベクターのような発現ベクターにクローニングする。次に、該組み換えプラスミドを用いて、例えば、非限定的に、BL2(D3)細胞のような、適当な発現細胞を形質転換する。発現ベクターが誘導プロモーターを含有する場合には、例えば、非限定的に、IPTGのような分子の添加によって、タンパク質発現が誘導される。得られたタンパク質を次に、モノマーMTに関して以下に記載するように精製する。
【0050】
〔0067〕該発現MTタンパク質を、標準手法を用いて精製する。クローン化タンパク質を精製するための手法は、当該技術分野において周知であり、ここでさらに詳述する必要はない。特に適した、1つの精製方法は、金属結合タンパク質に対して固定化抗体を用いるアフィニティ・クロマトグラフィーである。他のタンパク質精製方法には、特に、イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動及びゲル濾過が包含される。或いは、本発明のMTタンパク質は、遺伝子組み換え生物(modified organisms)からの発現後に、試薬による沈殿(例えば、硫酸アンモニウム、アセトン又は硫酸プロタミン並びに当該技術分野で知られた、他の方法)のような方法によって精製することができる。
【0051】
〔0068〕本発明のMTタンパク質は、天然ソースから容易にかつ効果的に単離するか、又は合成によって製造することができる。本発明の1実施態様では、MTタンパク質をブライン・シュリンプ(アルテミア)から単離する。アルテミアMTは、“アイソマー”と呼ばれる金属結合タンパク質のファミリーを含む。これらのタンパク質の特有のアミノ酸組成の分析は、各々のアイソフォームが本質的に同等であることを示した。少なくとも5種類の個別アルテミアMTアイソフォームが同定されている。高度な配列相同性又は類似性を共有する、他の生物からのMTsとは異なって、アルテミア金属結合タンパク質は、意外にも、異なる構造特性を有するが、相互に高度な配列相同性を有する。
【0052】
〔0069〕アミノ酸配列分析は、アルテミア金属結合タンパク質の最初の6個のシステイン残基の金属結合モチーフが、ヒト及びウサギMTsに比べたときに、保存されていることを実証した、このことは、タンパク質の金属結合機能におけるこれらのアミノ酸残基の重要性を示している((Hamer DH, Metallothionein. Ann. Rev. Biochem. 55:813-51, 1986)。システイン富化金属結合モチーフの保存が、広範囲の異なる種にわたって見られる(図6)。
【0053】
〔0070〕図1は、本発明の典型的なMTタンパク質を用いた、典型的な溶出プロフィルを詳しく示す。このプロフィルは、下記の典型的なプロトコルを用いて得たものである。大腸菌(ER 2566株)を、pTMZに配列番号:1のMT遺伝子配列を含有するプラスミド発現ベクターによって形質転換した。細菌を、1%グルコース含有LBブロス中で37℃において0.6のA600まで増殖させた。細菌細胞を回収して、0.1%グルコース含有LBブロス中に再懸濁させ、同温度において45分間インキュベートした。イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.1mMまで加えた。細菌細胞を約16時間インキュベートした。対照として、非形質転換細胞を用いた。細胞を遠心分離によって回収して、10mM Tris,pH8.0,5mMジチオスレイトール(DTT)と0.5mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)中で音波処理した。該ホモジェネートを4℃において1時間150,000xgで遠心分離した。上清を回収して、2μCiの109Cdと共に室温においてインキュベートした。次に、この放射能標識した上清を次に、G−50分子排除カラムに供給して、50mM Tris,pH8.0で溶離した。5ml画分を回収して、放射能(CPM)と亜鉛(Zn)に関して分析した、亜鉛は、形質転換細菌によって発現された外因性金属結合タンパク質に結合する内因性金属である。該カラムから溶出した各画分をZnに関してICPMS(高周波誘導結合プラズマ質量分析)によって分析した。非限定的に、配列番号:3を含めた、官能性金属結合タンパク質をコードする、他のヌクレオチド配列も、本発明の教示によって提供される又は開示されるとおりに用いることができる。
【0054】
〔0071〕本発明の教示による、実質的に精製されたMTタンパク質は、
配列番号:2
MET ASP CYS CYS LYS ASN GLY CYS THR CYS ALA PRO ASN CYS LYS 15
CYS ALA LYS ASP CYS LYS CYS CYS LYS GLY CYS GLU CYS LYS SER 30
ASN PRO GLU CYS LYS CYS GLU LYS ASN CYS SER CYS ASN SER CYS 45
GLY CYS HIS 48
と相似のアミノ酸配列を有する。
【0055】
〔0072〕該タンパク質の金属結合アフィニティを保護する上記配列番号:2の配列の変形である、実質的に精製されたMTタンパク質も本発明の範囲内である。特に、本発明の範囲内の保存アミノ酸置換は下記:(1)ロイシン若しくはバリンに代わるイソロイシン、イソロイシンに代わるロイシン、及びロイシン若しくはのイソロイシンに代わるバリンのいずれかの置換;(2)グルタミン酸に代わるアスパラギン酸及びアスパラギン酸に代わるグルタミン酸のいずれかの置換;(3)アスパラギンに代わるグルタミン及びグルタミンに代わるアスパラギンのいずれかの置換;並びに(4)スレオニンに代わるセリン及びセリンに代わるスレオニンのいずれかの置換;のいずれかを包含することができる。
【0056】
〔0073〕本明細書で用いる限り“保存アミノ酸置換”は、同様な構造的又は化学的性質を有するアミノ酸を代わりに用いることによるアミノ酸配列の変化を意味する。当業者は、いずれのアミノ酸残基を、本発明のタンパク質の金属結合性質なしに、置換する、挿入する又は変化することが可能であるかを決定することができる。
【0057】
〔0074〕他の置換も、特定のアミノ酸の環境に依存して、保存的と見なすことができる。例えば、グリシンとアラニンは、アラニンとバリンが可能であると同様に、相互交換可能である。比較的疎水性であるメチオニンは、しばしばロイシン及びイソロイシンと交換することができ、時には、バリンと交換することができる。リシンとアルギニンは、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷と、これらの2つのアミノ酸残基の異なるpKsであり、これら残基のサイズの相違が重要でない位置では、相互交換可能である。当該技術分野で知られているように、なお他の変化も特定の環境においては保存的と見なすことができる。
【0058】
〔0075〕例えば、タンパク質の表面上のアミノ酸が、例えば該アミノ酸が結合している他のアミノ酸サブユニット若しくはリガンドのような、他の分子との水素結合若しくは塩架橋相互作用に関与しない場合には、例えばグルタミン酸若しくはアスパラギン酸のような、負に荷電したアミノ酸を、例えばリシン若しくはアルギニンのような、正に荷電したアミノ酸と置き換えることができ、この逆も可能である。アルギニン若しくはリシンよりも弱い塩基性であり、中性pHでは部分的に荷電しているヒスチジンを、時には、これらのより大きく塩基性のアミノ酸の代わりに同様に用いることができる。さらに、アミドのグルタミンとアスパラギンを時には、それらのカルボン酸相同体、グルタミン酸とアスパラギン酸の代わりに用いることができる。
【0059】
〔0076〕例えば、これらのMTタンパク質は、ある範囲の温度条件下で、例えば、約4℃〜約100℃の温度範囲において、重金属を結合することができる、それ故、多くの用途にとって特に理想的である。MTタンパク質を用いる予定である、特定の用途又は操作に依存して、実用的若しくは経済的理由から特定の温度範囲が好まれうることを、当業者は理解するであろう。
【0060】
〔0077〕次に、本発明の新規な金属結合タンパク質の遺伝子操作についての例示的な議論に移るならば、ブライン・シュリンプ(アルテミア)からのMTタンパク質のアイソフォームの1つのヌクレオチド配列を上述したように同定した。一般に、単離方法は、(1)ブライン・シュリンプ(アルテミア)からの核酸を含有する1つ以上のサンプル(単数又は複数)の調製;(2)アルテミアからの総RNAの単離;(3)該総RNAからのcDNAの作製;(4)金属結合タンパク質遺伝子配列の増幅;及び(5)アルテミアからのMTタンパク質遺伝子としての単離核酸配列のクローニング、配列決定及び立証を含む。
【0061】
〔0078〕上記方法で、アルテミアMTの全コーディング配列を生成した。この配列は次のとおりである:
配列番号:1
5’-ATG GAC TGC TGC AAG AAC GGT TGC ACC TGT GCC CCA AAT TGC AAA 45
TGT GCC AAA GAC TGC AAA TGC TGC AAA GGT TGT GAG TGC AAA AGC 90
AAC CCA GAA TGC AAA TGT GAG AAG AAC TGT TCA TGC AAC TCA TGT 135
GGT TGT CAC TGA-3’ 147
〔0079〕ヒトと小麦ほどに異なる種が、重金属に対して同じような結合アフィニティを有するメタロチオネインを発現する。これらのMTタンパク質は、12〜22個のシステイン残基を含有し、これらは異なる種の全般にわたって保存されている。これらのシステイン残基は、該タンパク質の金属結合機能を担う金属結合モチーフを形成する(Hamer DH, Metallothionein. Ann. Rev. Biochem. 55:813-51, 1986)。それ故、本発明の1実施態様は、例えば、膜のような固体サポート上に固定されたMTタンパク質を提供する、この場合、該MTは、非限定的に、哺乳動物、植物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類、細菌、藻類、酵母及び真菌類を包含する生物から単離される。これらの生物の非限定的な例は、ブライン・シュリンプ(アルテミア)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)、 サバンナモンキー(Cercopithecus aethiops)、ヒト (Homo sapiens)、チャンネル・キャットフィッシュ(Ictalurus punctatus)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、ムラサキガイ(Mytilus edulis)、ムラサキウニ(painted sea urchin) (Lytechinus pictus)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、回虫(Caenorhabditis elegans)、米(Oryza sativa)、小麦 (Triticum aestivum) 及び酵母(Candida glabrata)を包含する。
【0062】
〔0080〕本発明の1実施態様は、非限定的に、メタロチオネインタンパク質を有する、アルテミア、哺乳動物及び海洋種、又は他の種を包含する生物から、アルテミア MTに比べたときに、システイン残基において、例えば金属結合モチーフにおいて保存アミノ酸配列相同性を有する少なくとも1つのメタロチオネインタンパク質に類似したアミノ酸配列を有する、実質的に精製されたMTタンパク質をコードする、1つ以上の核酸配列を提供する(図6)。
【0063】
〔0081〕本発明の他の実施態様は、非限定的に、メタロチオネインタンパク質を有する、アルテミア、哺乳動物及び海洋種又は他の種を包含する生物から、アルテミア MTに比べたときに、システイン残基において、例えば金属結合モチーフにおいて保存アミノ酸配列相同性を有する少なくとも1つのメタロチオネインタンパク質に類似したアミノ酸配列を有する、実質的に精製されたMTタンパク質をコードする、1つ以上のアミノ酸配列を提供する(図6)。典型的なアミノ酸配列は、配列番号:2と配列番号:11〜23の配列を包含する(図6)。
【0064】
〔0082〕或いは、単離された核酸は、官能性MTタンパク質の翻訳を可能にするために充分な最小DNA配列を含むことができる。官能性MTタンパク質は、ネイティブMTタンパク質全体である必要はなく、重金属に結合することができるタンパク質又は合成化学複合体をコードする部分又は領域、非限定的な例では、配列番号:3の配列だけであることができる。それ故、本発明はさらに、配列番号:1のヌクレオチド残基1〜66の配列を有するDNA分子に対して少なくとも80%の配列同一性を有するDNAを含めた、単離核酸も包含する。
【0065】
〔0083〕さらに、MTタンパク質のいずれか1つをコードする核酸配列も本発明の範囲内である。このようなMTタンパク質は、約5000ダルトンの分子量を有することができ、例えば、砒素、亜鉛、銅、カドミウム、水銀、コバルト、鉛、ニッケル、白金、金、銀及びこれらの錯体のような重金属イオンに、高いアフィニティで結合することができる。MTタンパク質は、配列番号:2、配列番号:11〜23と、それらの1つ以上の保存アミノ酸置換を組み込む配列から成る群から選択されたアミノ酸配列をその中に含む、この場合、該保存アミノ酸置換は下記:(1)これらのアミノ酸のいずれかの他のアミノ酸に代わるイソロイシン、ロイシン及びバリンのいずれか;(2)グルタミン酸に代わるアスパラギン酸とこの逆;(3)アスパラギンに代わるグルタミンとこの逆;及び(4)スレオニンに代わるセリンとこの逆のいずれかである。代替核酸配列は、標準遺伝コードを用いて決定することができ;代替コドンは、この配列中の各アミノ酸に対して容易に決定可能である。さらに、本明細書に開示したMTタンパク質のアミノ酸若しくは核酸配列に対して、結果として生じるMTタンパク質の金属結合能力に影響を与えないような、付加的な突然変異、欠失又は添加を行うことは、本発明の範囲内である。
【0066】
〔0084〕これらの金属結合方法に用いるMTタンパク質は、その天然ソースから精製された生成物として提供することができる、又はバイオエンジニアリング手法によって産出することができる。例えば、MTタンパク質は、トランスジェニック又は遺伝子組み換え生物によって産出することができる。遺伝子組み換え生物は、非限定的に、トランスジェニック動物、細菌、植物、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞及び藻類を包含する。
【0067】
〔0085〕基質中の重金属濃度を減ずる方法は、重金属を有する基質にMTタンパク質を接触させることを包含する。非限定的例では、ブライン・シュリンプ(アルテミア)からの少なくとも1つの金属結合タンパク質配列に類似したアミノ酸配列を有するMTタンパク質を、ある濃度の少なくとも1種類の重金属を有する物質と接触させて、該MTタンパク質に該重金属を結合させることができる。その後に、結合した重金属を該基質から分離して、本来の基質中の重金属濃度を減ずることができる。
【0068】
〔0086〕基質中の重金属濃度を減ずる方法は、遺伝子組み換え生物において金属結合タンパク質を産生させることを包含する。遺伝子組み換え生物は、例えば、トランスジェニック生物又はトランスジェニック宿主を包含する。例えば、シュリンプ、植物、細菌、酵母又は藻類のような宿主又は生物を、当該技術分野で周知の分子工学的及び遺伝子工学的手法を用いて、改変することができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 2001); Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (Wiley Interscience Publishers, 1995);US Dept Commerce/NOAA/NMFS/NWFSC Molecular Biology Protocols (URL:http://research.nwfsc.noaa.gov/protocols.html);又はProtocols Online (URL:www.protocol-online.net/molbio/index.htm)に記載されている、これらの手法を用いると、MTタンパク質の発現を生じるようにゲノムが改変された生物が提供される。
【0069】
〔0087〕MTタンパク質を産生する遺伝子組み換え生物は、ブライン・シュリンプ(アルテミア)からの金属結合タンパク質に実質的に類似したアミノ酸配列を有するMTタンパク質を少なくとも1つ産生する遺伝子組み換え生物を包含する。遺伝子組み換え生物はさらに、配列番号:2又はその保存アミノ酸置換に実質的に類似したアミノ酸配列を有するMTタンパク質を産生する生物を包含する。
【0070】
〔0088〕或いは、遺伝子組み換え生物からのMTタンパク質の産生又は発現は、金属結合タンパク質のゲノム発現に限定される訳ではなく、該遺伝子組み換え生物からの後生的発現をも包含する。遺伝子組み換え生物からの後生的発現を得るための方法及び手法は、当該技術分野で知られている、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、プラスミド及び一時的な発現手法を包含する。
【0071】
〔0089〕本発明のMTタンパク質を生成する方法も、本明細書に開示する。例えば、ブライン・シュリンプ(アルテミア)からの少なくとも1つのMTタンパク質に類似したアミノ酸配列を有するMTタンパク質を生成する方法は、発現システムの作製、該発現システムを用いるMTタンパク質の産出、及び該MTタンパク質の精製又は単離を包含する。
【0072】
〔0090〕発現システムは、例えば、伝統的な生産植物のようなシステムであることができる。例えば、ブライン・シュリンプのような生物を成長させて、該ブライン・シュリンプの組織からMTタンパク質を精製又は抽出することができる。或いは、MTタンパク質を産生することができる遺伝子操作された生物(本明細書に記載するとおりに作製)を用いるバイオ製造システムを用いることができる。例えば、MTタンパク質発現ベクターを含有する細菌を、大きい又は小さい規模(特定の必要性に依存して)で培養することができる。次に、該MTタンパク質を細菌ブロスから精製して、多様な基質から重金属を除去するために用いることができる。
【0073】
〔0091〕それ故、MTタンパク質は、遺伝子組み換え生物若しくは宿主の細胞におけるMTタンパク質をコードする核酸配列の発現によって産生されることができる。このような核酸配列は、例えば、配列番号:1のようなMT遺伝子、又はMT遺伝子の断片若しくは官能性金属結合ドメインをコードする配列を包含する。
【0074】
〔0092〕以下の非限定的実施例の考察から、本発明のさらなる理解が当業者に与えられるであろう。これらの実施例が本発明の原理及び教示の例示であり、本発明の範囲を制限しようと意図するものでないことが強調される。
【実施例1】
【0075】
アルテミアからのMTの単離
〔0093〕本発明の教示によると、下記の典型的なプロトコルは、MTタンパク質の生成、精製及び分析に有用な方法を説明する。
【0076】
サンプル調製
〔0094〕金属結合タンパク質の単離における準備工程として、アルテミア属 ブライン・シュリンプを人工海水(AS)(422.7 mM NaCl、 7.24 mM KCL、 22.58 mM MgCl2・6H2O、 25.52 mM MgSO4・7H2O、 1.33 mM CaCl2・2H2O 及び 0.476 mM NaHCO3)中で成長させた。アルテミア嚢胞(2.5g)を抗生物質を添加したAS(250ml)中で30℃及び125rpmの回転において48時間インキュベートした。24時間後に、向光性のアルテミアを回収して、さらに24時間培養してから、布濾過によって回収した。シュリンプを計量して、直ちに使用しない場合には、−80℃において貯蔵した。
【0077】
〔0095〕次に、このアルテミアを均質化バッファー(HB)(10 mM Tris-HCl (pH 8.0)、 0.1 mM DTT、 0.5 mM PMSF 及び 10 μg/ml ダイズトリプシンインヒビター)中で均質化して、シュリンプ湿重量g当たり4mlのHB中に再懸濁させた。このホモジェネートをYamato LH-21ホモジナイザーに800rpmの設定で3回通過させ、Miracloth(カルビオケム社製)に通して濾過し、濾液をSorvall社 SA-600ローター中で、14,300rpm、4℃において30分間遠心分離した。上清の頂部の脂質層を真空吸引によって除去して、下部上清層を回収して、ベックマン社 50.2TI ローター中で、40K rpm、4℃において90分間遠心分離した。再び、上部脂質層を除去して、下部上清を150,000xgで再遠心分離した(150K上清)。次に、150K上清を直ちに用いた、又は−80℃において貯蔵した。直ちに用いる場合には、次に、この生成物に対してゲル濾過を次のように行った。該ゲル濾過試験は、該金属結合タンパク質が重金属に結合しうることを実証した。
【0078】
ゲル濾過試験
〔0096〕150K上清をHPLC公認0.45ミクロンLC13アクロディスクフィルター(Gelman Sciences社製)に通して濾過した。濾過した150K上清の20mlアリコートを、2μlの109Cd(0.066μCi)と共に、4℃においてインキュベートして、金属結合タンパク質を放射能標識した。次に、サンプルを、Nで飽和させた、50mM Tris−HCl(pH8.0)と予め平衡させたSephadex G-50分子量排除カラム(2.6cmx94cm)に供給した。低分子量金属結合タンパク質を含有する画分に還元性条件を維持するために、サンプル負荷の前に画分60〜100に1モルのDTT(2μl)を加えた。該カラムを50mM Tris(pH8.0)によって、溶出液を280nmでモニターしながら、20ml/時の流速で溶出した。溶出期間中、バッファー・レザバーをNによって連続的にパージした。アミノ酸分析に用いるサンプルは放射能標識しなかった。
【0079】
〔0097〕カラム画分の109Cd含量(CPM)をAuto-Logicガンマカウンター(ABBOTT Laboratories社製)によって測定した。亜鉛含量は、フレーム又はファーネス法の原子吸光分光法によって測定して、PPB亜鉛/画分として表現した。以前の研究では、2クラスの金属結合タンパク質が存在し、1クラスは高分子量画分であることを示した。しかし、109Cdの大部分は、亜鉛含有金属結合タンパク質の低分子量クラスと共に溶出した。図1に示すように、放射性金属結合タンパク質は、亜鉛の溶出ピークに対応する溶出ピーク(大体、画分#50)を有し、このことは、内在的に結合した亜鉛の存在を示唆した。Sephadex G-50画分の該タンパク質濃度を、BCA総タンパク質アッセイキット(Pierce社製)によって、製造者のプロトコルに従って測定した。次に、本発明の金属結合タンパク質の明確な構造特徴を下記研究において同定した。
【0080】
金属結合タンパク質の特徴付け研究
〔0098〕該金属結合タンパク質の構造特徴を確認するために、クロマトグラフィーと分子量の研究を行った。用いたプロトコルの全ては、既にB. Harpham, "Isolation of Metal Binding Proteins From Artemia"(1998年カルフォルニア州立大学修士論文, ロングビーチ図書館)に記載されたとおりであった。当該技術分野で周知であり、例えば、B. Harpham "Isolation of Metal Binding Proteins From Artemia"(同上)に記載される、アニオン交換及び逆相クロマトグラフィー技術を用いて、アルテミアからの金属結合タンパク質を精製したところ、これが、他の既知の金属結合タンパク質よりも予想外に低い分子量及びアミノ酸配列長さを有することが判明した。SDS−PAGE条件下で、他の哺乳動物種からの金属結合タンパク質の6〜7kDaに比べ、アルテミア金属結合タンパク質は約5.8kDaの分子量を有する。アルテミア金属結合タンパク質のタンパク質分析は、48アミノ酸の配列長さを示す。長さにおいて60〜66アミノ酸残基の範囲である他の既知の金属結合タンパク質よりも、アルテミアのMTアミノ酸配列は長さにおいて予想外に著しく短かった。
【実施例2】
【0081】
アルテミア金属結合タンパク質をコードする遺伝子のクローニングと配列決定
〔0099〕総RNAを48時間ノープリウス(アルテミアの幼生期)から、RNAzol方法を用いて単離した。実施例1において上述したとおりに、48時間ノープリウス・サンプルを調製した。次に、PolyTract Procedure (Promega社、WI)を用いて、該総RNAサンプルからmRNAを単離した。このmRNAから、SuperScriptと3’RACEキット方法(カタログ番号18373, Gibco/BRL社、WI)を用いて、cDNAを作製して、下記合成反応を行った。
【0082】
【化2】

〔0100〕上記混合物を70℃において10分間インキュベートしてから、氷上に1〜2分間放置した。気化した液体を10,000rpmでの10秒間の遠心分離によって回収した。次に、上記RNAカクテルに下記を加えて、cDNA溶液を製造した。
【0083】
【化3】

〔0101〕次に、上記で得られたcDNA溶液を混合して、42℃において5分間インキュベートした。Superscript II RT(5μl)を加えて、cDNA合成のために、混合物を42℃において50分間インキュベートした。該溶液を70℃において15分間インキュベートすることによって、逆転写反応を停止させ;次に、RNアーゼ(5μl)を加えて、該溶液を37℃において20分間インキュベートした。その後、アルテミアcDNAを含有する最終溶液を、以下で述べるPCR増幅に用いるまで、−20℃において貯蔵した。
【0084】
〔0102〕用いた初期PCRプライマー配列は下記のとおりであった:5’プライマー(N−末端側)は、“MT−Not 1”(配列番号:5)と呼ばれ、3’プライマー(C−末端側)は“dT−Spe 1”(配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8又は配列番号:9)と呼ばれた。
【0085】
【化4】

〔0103〕上記5’及び3’プライマーを、次に、下記増幅カクテルに用いた。
【0086】
【化5】

〔0104〕上記PCR反応カクテルに対して、Gem50ワックスビーズを管に加えて、該管を80℃において2〜3分間インキュベートした。該ワックスが室温において10〜15分間硬化した時点で、硬化したワックスの頂部に下記を積層した。
【0087】
【化6】

〔0105〕この最終混合物に対して、次に、下記PCR増幅プログラムを行った。
PCRプログラム
95℃における3分間の初期変性の後、以下:
94℃、1分間
49℃、1分間
72℃、1分間
を29サイクル、次に、
72℃、10分間
を1サイクル、その後、
混合物を4℃に保持。
【0088】
〔0106〕いったん増幅したならば、PCR生成物は1.2%アガロースゲル上で上首尾な増幅を立証された。次に、PCR生成物をその後のクローニングのためにQiagen QIAquick Gel Extraction (Qiagen社、CA)を用いて精製した。配列中に改変された制限部位が組み込まれた下記プライマーを用いて、ブライン・シュリンプアルテミア金属結合タンパク質遺伝子配列を含有する該精製PCR生成物を増幅して、サブクローンした。
MT Nco I(Nde I部位を含有する5’プライマー):
配列番号:9 5’-GCT ACA CAT ATG TCC ATG GAC TGC TGC AAG AAC-3’
MT Sal I(Sal I部位を含有する3’プライマー):
配列番号:10 5’-ACG AAC GTC GAC GCC TTT TTT TTT TTT TTT A-3’
〔0107〕MT Nco I及びMT Sal Iプライマーを72℃のアニーリング温度で1分間用いて、アルテミアMTヌクレオチド配列を増幅して、その後、TAクローニングを用いて、TOPO CR2.1にクローン化し、次に、pGEM3ベクターのEco R1部位にサブクローン化した。いったんクローン化したならば、該クローン化金属結合タンパク質遺伝子は、金属結合タンパク質をコードする単離核酸配列の使用を必要とする発現、産生又はその他の方法に用いるために、改変又はさらなる加工を容易に施すことができる。
【0089】
〔0108〕次に、Applied Biosystems社製DNAシーケンサーを用いて、MT遺伝子の全コーディング配列を決定した。アルテミアからのMT遺伝子の配列比較研究は、他の既知金属結合タンパク質遺伝子と比べて、該MT遺伝子が予想外に異なる配列を有することを実証する。アルテミアMT遺伝子配列をウマ及びヒトのMTの遺伝子配列とアラインしたときに、金属結合システイン残基の位置において相同性が観察された。次に、本発明の典型的な金属結合タンパク質が重金属を結合しうることが、下記研究で確認された。
【実施例3】
【0090】
水から有害な金属を除去するためのポリマー膜
〔0109〕アルテミア幼虫から、メタロチオネインを上述したように抽出した。タンパク質抽出物(80ml)を沸騰水浴中に15分間入れた。この溶液を30,000xg(SA600ローターにおいて16,000rpm)で、4℃において30分間遠心分離した。メタロチオネインを含有する上清を、109Cd(Amersham Biosciences社)60μlを含有する清潔な管に移した。該溶液を充分に混合して、室温において5分間静置した。これは、メタロチオネイン上への放射性カドミウムの置換を可能にして、該タンパク質をその精製中に検出する方法を本発明者らに与える。次に、該溶液を100x4.8cm G−50分子排除カラムに供給して、窒素飽和50mM Tris(pH8.0)で溶出した。1M DTT(25μl)を含有する管中に、15ml画分を回収した。ピークの金属結合活性を有する画分をプールして、4℃において貯蔵した。この溶液をMTと呼ぶことにする(図1参照)。
【0091】
中性pHにおける金属結合
〔0110〕Pall Biodyne膜(Biodyne AとBiodyne B、0.45μm、それぞれ、ロット番号002245と035241)を、これらの実験のための固体サポートとして用いた。膜の1cm片を、10mlのMillipore社製ガラスフリット濾過ユニットに入れた。MT10mlを真空下で約100ml/分の流速において該膜に通して通過させた(図3)。貫通分をタンパク質分析のために回収した。次に、カドミウム溶液(水50ml中CdCl 0.1μg/mlと109Cd 10μl)10mlを真空下で該膜に通過させた(図4)。次に、該膜を2回、それぞれ、PBS 10mlで洗浄した。プールした溶出液5mlを放射能に関して分析した。該膜を濾過ユニットから取り出し、12x75mm遠心分離管に入れ、LKBガンマカウンター中で放射能に関して分析した。対照として、MTで処理されていない第2膜によって、該手順を繰り返した。この膜を“ブランク”と呼ぶことにする。結果は、表1に示す。
【0092】
【化7】

〔0111〕この結果は、膜に結合したMTが、該膜を通過するカドミウムの溶液からカドミウム(109Cdとして)を除去しうることを実証する。MTを有さない膜は、該溶液から金属を(あったとしても)殆ど除去しない。
【0093】
変化するpHにおける金属結合
〔0112〕次の実験シリーズは、膜上の該タンパク質の金属結合活性に対するpHの両極端の効果を測定することであった。これらの研究のために、MTの新鮮なサンプルを調製した。これらの実験に用いたカドミウム溶液は次のように調製した:109Cd(2μl)をCdCl(1ppm)の水溶液(1ml)に加えた。次に、この放射性カドミウム溶液(100μl)を下記溶液:PBS、10mMグリシン、150mM NaCl(pH3.0)、及び10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)の各々の10mlに加えた。この研究のために、Biodyne A膜のみを用いた。MTで処理せず、放射性カドミウムを含有するPBSで洗浄した膜を、対照として用いた。膜をMillipore濾過ユニットに入れて、次のように処理した:
〔0113〕膜#1(ブランク)は、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。該膜を次に、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0094】
〔0114〕膜#2は、最初に、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0095】
〔0115〕膜#3は、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有する10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性の10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)(10ml)で2回洗浄した。
【0096】
〔0116〕膜#4は、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有する10mMグリシン、150mM NaCl(pH2.0)(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性の10mMグリシン、150mM NaCl(pH2.0)(10ml)で2回洗浄した。
【0097】
〔0117〕各膜を上述したように放射能に関して分析した。結果は、以下の表2に示す。
【0098】
【化8】

〔0118〕この実験は、膜に結合したMTが7.5〜10.1の範囲のpHでは金属に結合することができるが、pH2では金属に結合することができないことを実証する。いったん金属がMTに結合したならば、該膜を酸(pH=2)に暴露することによって、該MTを再生することができる。これらの実験は、全ての溶液を直接、膜に加えることによって行った。MTを加える前に該膜をバッファーと予備平衡させることの効果、即ち、影響された金属結合効率を評価するために、膜(Biodyne B)を次のように処理した:
〔0119〕膜#1(ブランク)は、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0099】
〔0120〕膜#2は、最初に、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0100】
〔0121〕膜#3は、金属を含まない10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)(10ml)で予備洗浄し、次に、MT溶液(10ml)で洗浄し、その後に、放射性カドミウムを含有する10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)(5ml)で洗浄した。最後に、該膜を、金属を含まない、非放射性の10mM HCO/HCO、150mM NaCl(pH10.1)(10ml)で2回洗浄した。
【0101】
〔0122〕結果は、以下の表3に示す。
【0102】
【化9】

〔0123〕pH10.1での膜の平衡化は、該膜への金属結合のより良好な効率を生じる。
【0103】
MT金属結合の特異性
〔0124〕幾つかのシステイン残基を含有して、重金属を結合することが知られているタンパク質であるウシ血清アルブミンに比べて、結合アフィニティ/特異性を評価した。この実験には、Biodyne A膜を用いた。MT溶液の濃度は、約7μg/mlであると判明した。貫流の濃度は、出発物質に等しく、このことは、膜に結合した量がng(ナノグラム)で表されることを示唆し、したがって、該タンパク質の金属結合能力が重要であることを示唆する。それ故、Pierce Chemical, Inc.社の2mg/mlBSA基準溶液を用いて、D−PBS中にBSAの7μg/ml溶液と100μg/ml溶液を作製した。カドミウム結合溶液は次のように調製した:1ppm CdCl水溶液(1.5ml)を109Cd(3μl)と混合した。この溶液を4℃において貯蔵した。アッセイは次のように実施した:
〔0125〕膜#1(ブランク)は、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0104】
〔0126〕膜#2は、MT溶液(5ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0105】
〔0127〕膜#3は、BSA溶液(7μg/ml)(5ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0106】
〔0128〕膜#4は、BSA溶液(100μg/ml)(10ml)で洗浄し、次に、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0107】
〔0129〕これらの実験の結果は、以下の表4に示す。
【0108】
【化10】

〔0130〕これらの実験条件下で、膜の製造にMTよりも10倍高い濃度のBSAを用いた場合にも、BSAは水溶液から金属を除去しなかった。この実験は、水又は他の水性基質からの金属の汚染除去のための膜結合MTの有用性を実証する(図5)。
【0109】
金属結合活性に対する温度の効果
〔0131〕これらの結合実験は、Biodyne A膜で行った。
【0110】
〔0132〕膜#1(ブランク)は、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、この膜を、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0111】
〔0133〕膜#2は、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、60℃に予備加温した放射性カドミウム含有PBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、60℃に予備加温した、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0112】
〔0134〕膜#3は、MT溶液(10ml)で洗浄し、次に、4℃に冷却した、放射性カドミウムを含有するPBS(5ml)で洗浄した。次に、該膜を、4℃に冷却した、金属を含まない非放射性PBS(10ml)で2回洗浄した。
【0113】
〔0135〕これらの実験の結果は、以下の表5に示す。
【0114】
【化11】

【実施例4】
【0115】
ウサギMTとアルテミアMTの比較
〔0136〕本発明のMTタンパク質による金属汚染除去は、多様なソースからのメタロチオネインタンパク質を用いて達成することができる。ウサギ肝臓MTを凍結乾燥タンパク質(Sigma社製)として入手して、50mM Tris、pH8.0、0.001M DTT(400μl)中に最終濃度2.5mg/mlに可溶化した(ウサギMTストック溶液)。アルテミア MTを実施例1に上述したように精製した。
【0116】
〔0137〕実施例1に上述したように、MT含有溶液を膜に通すことによって、結合したアルテミア MT又はウサギ肝臓MTを有する膜を作製した。次に、3つの膜、ブランク、アルテミア MTを結合させた膜、及びウサギ肝臓MTを結合させた膜を、13mmフリットガラス濾過ユニットに入れて、金属結合溶液(溶液25μl当たり9000cpmの109Cdのストック溶液を、金属結合溶液を形成するために75μl/PBS10mlに希釈する)を真空下で膜に通過させた。次に、膜をPBS中で3回洗浄し、膜に結合した放射能をPackardガンマカウンターで測定した。第2実験では、さらに多量のアルテミア MTを膜に結合させた。これらの2つの実験結果は、表6と7に示す。
【0117】
【化12】

【0118】
【化13】

〔0138〕膜に結合したメタロチオネインは、ソースに関係なく、水溶液からの金属の除去を生じる。さらに、金属結合活性は、膜に供給したタンパク質の量の関数であり、該膜上のMTタンパク質の量を増加させると、該膜による金属結合活性の増強が生じる。
【実施例5】
【0119】
メタロチオネインへのチメロサールの結合
〔0139〕メタロチオネインをチメロサールと共にインキュベートし(図10)、次に、分子排除クロマトグラフィーによって非結合チメロサールからチメロサール/メタロチオネイン複合体を分画することによって、MTへのチメロサール(又はチメロサール由来のエチル水銀)の結合を実証した。
【0120】
〔0140〕ウサギ肝臓MT(Sigma社製)を、10mM Tris(pH8.0)中で1mg/mlの濃度に可溶化した。組み換えアルテミア MTを細菌中で産生させ、10mM Tris、pH8.0、0.1mM DTT及び0.5mM PMSF中での音波処理によって抽出した。該細菌抽出物を沸騰水中に10分間入れた。生じた沈殿を遠心分離によって回収した。アルテミア MTを含有する上清を109Cdと共にインキュベートして、G−50分子排除カラム上で50mM Tris(pH8.0)によって分画した。ピーク金属結合画分を回収し、プールし、0.1mM DTTを含むダルベッコのリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.5)を溶離バッファー(D−PBS)として用いる、Superdexカラム上でのFPLCによって分画した。精製したアルテミア MTの濃度は206μg/mlであった。チメロサール(Sigma社)をD−PBS中で10mg/mlの最終濃度に可溶化した。5mlポリアクリルアミド脱塩カラムを用いて、MT結合チメロサールを非結合チメロサールから分画した。メタロチオネインと、それに結合した分子は、カラムの空隙容量(V)中で、より小さい非結合チメロサールよりかなり前に溶離する。カラムを較正するために、即ち、Vを決定するために、精製したアルテミア MT(又はウサギMT)を109Cdで放射能標識した。カラムを最初にPBS(10.5ml)で洗浄し、続いて、PBS/5mM EDTA(1.0ml)で、次に、D−PBS(14ml)で洗浄した。標識したアルテミア MT(400μl)を脱塩カラムの表面に供給し、重力によってゲルに侵入させた。該タンパク質をカラムからD−PBSによって溶出させた。該カラムから1/2ml画分を回収して、Packard社ガンマカウンター上で放射能に関して分析した。MTはカラム(V)から画分4と5で溶出した。この手順をチメロサールによって繰り返して、何処で非結合チメロサールがカラムから溶離するかを決定した。D−PBS(400μl)にチメロサール(2μg)を加えた。サンプル全体を脱塩カラム上でまさに上述したとおりに分画した。水銀に関して分析することによって、チメロサールを測定した。チメロサールはカラムから、画分8〜10で溶出した。結果は、図11に示す。
【0121】
〔0141〕次に、ウサギ肝臓MTを、10mM Tris(pH8.0)によって、200μg/mlに希釈した。チメロサール(1μg)をウサギ肝臓MT又は組み換えアルテミア MTのいずれか(400μl)と共にプレインキュベートした。次に、この混合物をポリアクリルアミド脱塩カラム上で上述したように分画して、画分を水銀に関して分析した。このクロマトグラフィーの結果は、図12に示す。それ故、MTは、ワクチンの製造/貯蔵に用いる溶媒及び条件において、即ち、PBS、pH7.5においてチメロサールに結合することができる。
【0122】
〔0142〕MTの供給源に関係なく、測定可能なチメロサールのほぼ50%がMTに結合した。MTの溶液中に検出可能な水銀は存在しなかった、即ち、唯一の水銀ソースはチメロサールからであった。チメロサールに対するMTの特異性と、両者の間の高い結合アフィニティを示すために、MTの代わりにウシ血清アルブミン(BSA)を用いた以外は、まさに上述したとおりに、実験を繰り返した。ウシ血清アルブミンは、既知の金属結合タンパク質である。カラムからのBSAの溶離は、220nmにおける各画分の吸光度を測定することによってモニターした。この実験の結果は、図13に示す。これらの条件下で、チメロサールは、感知できる量でBSAに結合しなかった。
【実施例6】
【0123】
膜結合メタロチオネインへのチメロサール結合
〔0143〕予め形成されたMT/チメロサール複合体を、膜フィルターに通しての濾過によって溶液から除去することができること、及び膜フィルターに結合したMTを用いて、溶液からチメロサールを除去することができることを実証するために、実験を行った。
【0124】
〔0144〕これらの実験には、ウサギ肝臓MTを用いた。該タンパク質を10mM Tris(pH8.0)中で最終濃度1mg/mlに可溶化した。Millipore Immobilon - Psq PVDF輸送膜をこれらの実験のための固体サポート(0.2μm)として用いた。該膜を1cm片にカットして、個々の膜方形を使用直前に、100%メタノール中に3秒間入れ、次に、これらを水中に2分間浸漬し、最後に、これらを10mM Tris(pH8.0)中で3分間平衡させることによって、これらの方形を濡らした。3種類の異なる膜サンプルを用いた。
【0125】
〔0145〕膜I − 膜の1cm片を10ml Milliporeガラスフリット濾過ユニットに入れた。チメロサール(200ppb)溶液(5ml)を真空下で該膜に通過させた。貫流を回収して、水銀に関して分析した。このアッセイを、以下に列挙するアッセイにおいて溶液からのチメロサール除去効率をモニターするための対照として用いた。
【0126】
〔0146〕膜II − 膜の1cm片を10ml Milliporeガラスフリット濾過ユニットに入れた。ウサギ肝臓MT溶液(0.04mg/ml、10mM Tris,pH8.0中総タンパク質200μg)(5ml)を真空下で該膜に通過させた。これに続いて、10mM Tris,pH8.0中の200PPBチメロサールの溶液(5ml)を真空下で該膜に通過させた。貫流を回収して、水銀に関して分析した。このアッセイは、透過膜上に固定したMTが膜を通過する溶液からチメロサールを除去することができることを示すように、設計した。
【0127】
〔0147〕膜III − 膜の1cm片を10ml Milliporeガラスフリット濾過ユニットに入れた。チメロサール(10mM Tris,pH8.0中1μg/μl)1マイクロリットル(1μl)をMT(200μg)(1mg/mlストック溶液200μl)と混合した。この溶液を10mM Tris,pH8.0によって、最終量5mlになるように希釈して、200PPBの最終チメロサール濃度を得た。次に、MT/チメロサール混合物を該膜に通過させた。貫流を回収して、水銀に関して分析した。このアッセイは、最初に、チメロサール含有溶液をMTと反応させて、MT/チメロサール複合体を生成し、次に、該溶液をタンパク質に対して高い結合アフィニティを有する透過膜に通過させることによって該溶液から該複合体を除去することによって、溶液からチメロサールを除去することができることを示すように、設計した。この実験の結果は、以下の表8に示す。
【0128】
【化14】

〔0148〕この実験結果は、透過膜に結合したMTが該膜を通過する溶液からチメロサールを除去することができることを実証する。さらに、最初にMTをチメロサール含有溶液に加えて、MT/チメロサール複合体を形成して、次に、該MT/チメロサール複合体を捕捉するために透過膜又は何らかの他の装置形に該溶液を通過させることによって該複合体を回収することによって、チメロサールを溶液から除去することができる。
【0129】
〔0149〕最後に、本明細書に開示した本発明の実施態様が本発明の原理の例示であることを理解すべきである。本発明の範囲内である、他の実施態様を用いることが可能である、したがって、本発明は、正確に、本明細書に示し、述べたとおりのことに限定されるものではない。
【0130】
〔0150〕他に指定しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる、例えば、分子量、反応条件等のような、成分量、性質を表現する数の全ては、“約”なる用語によってあらゆる場合に修飾されるものと理解すべきである。したがって、そうでない場合を指示しない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる望ましい性質に依存して変化する可能性がある近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数値を考慮して、そして通常の丸めの手法を適用することによって解釈すべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は、できるかぎり正確に報告されている。しかし、如何なる数値も、固有に、それらの各々の試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因する、ある一定の誤差を含有する。
【0131】
〔0151〕本発明の説明に関連して(特に、特許請求の範囲に関連して)用いられる不定冠詞(“a”、“an”)、定冠詞(“the”)及び同様な指示物(referents)は、本明細書に特に指示しない限り又は前後関係によって明確に反論されない限り、単数と複数の両方を網羅するものと解釈すべきである。本明細書における数値範囲の記載は、範囲内に入る各個別の値を個々に記載することの省略表現方法として役立つことを単に意図するに過ぎない。本明細書で特に指定しない限り、各個々の値は、それがあたかも本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法の全ては、本明細書に特に指示しない限り又は前後関係によって明確に反論されない限り、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書で提供した、ありとあらゆる例又は典型的な言語(例えば、“〜のような(such as)”)の使用は、本発明をより良好に説明することを単に意図するに過ぎず、さもなければ特許請求される本発明の範囲に制限を及ぼすものではない。明細書中の如何なる言語も、本発明の実施に重要な、特許請求されない要素を指定するものと解釈すべきではない。
【0132】
〔0152〕本明細書に開示した本発明の代替的要素又は実施態様のグループ分けを、限定と解釈すべきではない。各グループのメンバーは、個別に又は該グループの他のメンバー若しくは本明細書中に見出される他の要素との任意の組み合わせで、記載され、特許請求されることができる。グループの1つ以上のメンバーが、便利さ及び/又は特許可能性の理由から、1つのグループに包含されるか、又は1つのグループから削除される可能性があることが予想される。任意のこのような包含又は削除が生じる場合には、明細書は該グループを、修飾されて、特許請求の範囲に用いられた全てのMarkushグループの書かれた明細を満たすものとして含有すると見なされる。
【0133】
〔0153〕本発明のある一定の実施態様は、本発明の実施のために本発明者らに知られた最良のモードを含めて、本明細書に記載する。もちろん、こような実施態様に対する変化は、本明細書を読むならば、当業者に明らかになると思われる。本発明者は、熟練した技術者が必要に応じて、このような変化を用いると期待し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載された以外のやり方で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用可能な法律によって認可される、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された発明特定事項のあらゆる変更及び同等物を包含する。さらに、それらのあらゆる可能な変化における上記要素の任意の組み合わせも、本明細書に特に指示しない限り又はさもなくば前後関係によって明確に反論されない限り、本発明によって包含される。
【0134】
〔0154〕さらに、本明細書を通して特許及び印刷された刊行物に非常に多くの参照がなされている。上記参考文献及び印刷された刊行物の各々は、個別に、それらの全体で本明細書に援用される。
【0135】
〔0155〕最後に、本明細書に開示された、本発明の実施態様は、本発明の原理を例示するものであることを理解すべきである。用いることができる他の変更も本発明の範囲内である。したがって、一例として、但し、限定としてではなく、本発明の代替形態も本明細書の教示に従って用いることができる。したがって、本発明は、正確に、示され、記載されたものに限定される訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】〔0025〕図1は、本発明の典型的な金属結合タンパク質の溶出プロフィルであり、金属結合タンパク質と重金属亜鉛との同時溶出を説明する。
【図2】〔0026〕図2は、本発明の教示に従って、溶液中の重金属と選択的に結合するメタロチオネイン(MT)タンパク質を説明する。
【図3】〔0027〕図3は、本発明の教示に従って、固体サポートに結合したMTタンパク質を説明する。
【図4】〔0028〕図4は、本発明の教示に従って、水からの重金属の除去を説明する。
【図5】〔0029〕図5は、重金属結合のための本発明の選択性とアフィニティを説明する。
【図6】〔0030〕図6は、異なる種から単離したメタロチオネインタンパク質の間のシステイン金属結合モチーフにおける配列相同性を示す。
【図7】〔0031〕図7A〜Cは、注射器投与手段の形態の、本発明のチメロサール除去装置の3実施態様を説明する。
【図8】〔0032〕図8AとBは、吸入器の形態の、本発明のチメロサール除去装置の実施態様を説明する。
【図9】〔0033〕図9A〜Cは、エアガン注射器具の形態の、本発明のチメロサール除去装置の実施態様を説明する。
【図10】〔0034〕図10は、本発明の教示による、メタロチオネイン/チメロサール複合体の形成を説明する。
【図11】〔0035〕図11は、本発明の教示による、クロマトグラフィーカラムからのメタロチオネインとチメロサールの溶出プロフィルを示す。
【図12】〔0036〕図12は、本発明の教示による、クロマトグラフィーカラムからのメタロチオネインとチメロサールとの混合物の溶出プロフィルを示す。
【図13】〔0037〕図13は、本発明の教示による、クロマトグラフィーカラムからのウシ血清アルブミンとチメロサールの溶出プロフィルを示す。
【図14】〔0038〕図14は、本発明の教示による、メタロチオネインの固定化のための固体サポート上に誘導体化した化学基を示す。
【図15】〔0039〕図15は、本発明の教示による、メタロチオネインの固定化のための固体サポート上での表面第1級アミンからヨードアセテート官能基への転化を示す。
【図16】〔0040〕図16は、本発明の教示による、表面ヨードアセテート官能基による固体サポートへのメタロチオネインの共有架橋を示す。
【図17】〔0041〕図17は、本発明の教示による、ノナペプチドを介して結合したメタロチオネインの多重コピーを含む金属結合分子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するための装置であって、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質を自らに付随させた投与手段を含み、前記少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質が前記医薬品からの前記チメロサールに結合して、実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じる、前記装置。
【請求項2】
前記投与手段が注射器、経口投与用注射器、経口投与用カップ、吸入器、針、針なし注射器具、及び眼科用投与器具から成る群から選択される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記医薬品が、ワクチン、免疫原性組成物、液体薬剤組成物、コロイド状薬剤組成物、懸濁液薬剤組成物、エアロゾル、及び乾燥粉末から成る群から選択される、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記投与が、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注入、経口的、吸入、及び眼内から成る群から選択される投与経路を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記投与手段が無菌性環境を備える、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記投与手段が、前記投与に時間的に近接して、前記医薬品からチメロサールを除去する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記投与手段の少なくとも1つの内面が、その上に少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質をコーティングさせている、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が前記内面に共有結合する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が、ポリマー・コーティング中で前記内面にコーティングされている、請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が固体サポートに結合しており、前記固体サポートが前記投与手段に付随している、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が固体サポートに結合しており、前記固体サポートが前記投与手段内に配置されている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記固体サポートが、フィルター、膜、ナノ粒子、ビーズ、固体サポート粒子、及びポリマー・コーティングから成る群から選択される、請求項7記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1種類の実質的に純粋なメタロチオネインタンパク質が複数のビーズ又はナノ粒子に付随しており、前記複数のビーズ又はナノ粒子が前記投与手段内に配置されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記固体サポートが生体適合性ポリマーを含む、請求項12記載の装置。
【請求項15】
前記生体適合性ポリマーが、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ビニルポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ナイロン及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記固体サポートがフィルターである、請求項12記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネイン(MT)タンパク質又はその一部分が、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類、植物、酵母、及び菌類から成る群から選択される生物体由来のものである、請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記哺乳動物がウサギである、請求項17記載の装置。
【請求項20】
前記甲殻類がブライン・シュリンプ(アルテミア)である、請求項17記載の装置。
【請求項21】
前記MTタンパク質が、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:21及び配列番号:23から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1記載の装置。
【請求項22】
対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去する方法であって、
チメロサール含有医薬品を、投与手段に付随する、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質と接触させること;及び
結果として生じた、実質的にチメロサールを含まない医薬品を前記対象に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項23】
対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するためのシステムであって、
少なくとも1種類のメタロチオネインタンパク質をそれに付随させた装置を含み、
前記装置を通しての医薬品の通過が、前記メタロチオネインタンパク質への前記チメロサールの結合と、実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じる、前記システム。
【請求項24】
対象に投与すべき医薬品からチメロサールを除去するための器具であって、
少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質を付随させた固体サポートを含み、前記少なくとも1種類の実質的に精製されたメタロチオネインタンパク質が前記医薬品由来の前記チメロサールに結合して、結果として実質的にチメロサールを含まない医薬品を生じる、前記器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2009−523825(P2009−523825A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551512(P2008−551512)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/060635
【国際公開番号】WO2007/084916
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507129949)エムジーピー・バイオテクノロジーズ・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】