説明

カテコール官能基を有する生体接着性ポリマー

改善された生体接着特性を有するポリマー、およびポリマーの生体接着性を改善するための方法が開発された。1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族基を含む化合物がポリマー上に接合されるか、または個々のモノマーと結合される。1つの実施形態において、ポリマーは生体分解性ポリマーである。別の実施形態において、モノマーは重合されて、任意の型のポリマー(生体分解性ポリマーおよび非生体分解性ポリマーを含む)を形成し得る。いくつかの実施形態において、ポリマーは疎水性ポリマーである。好ましい実施形態において、ポリマーは親水性ポリマーである。好ましい実施形態において、芳香族化合物はカテコールまたはその誘導体であり、そしてポリマーは反応性官能基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2003年12月9日に出願された、Marcus A SchestopolおよびJules S.Javobへの、「Bioadhesive Polymers with Catechol Functionality」という発明の名称の米国特許出願第60/528,042号に対する優先権を主張する。本願はまた、2004年8月27日に出願された、「Mucoadhesive Oral Formulations of High Permeability,Low Solubility Drugs」という発明の名称の米国特許出願第60/605,201号;2004年8月27日に出願された、「Mucoadhesive Oral Formulations of Low Permeability,Low Solubility Drugs」という表題の米国特許出願第60/605,199号;2004年8月27日に出願された、「Bioadhesive Rate Controlled Oral Dosage Formulation」という発明の名称の米国特許出願第60/604,990号;および2004年9月8日に出願された、「Mucoadhesive Oral Formulations of High Permeability,High Solubility Drugs」という発明の名称の米国特許出願第60/607,905号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、改善された生体接着性を有するポリマー、およびポリマーの生体接着性を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
種々の条件下で生物学的表面にうまく接着するポリマー(「生体接着剤」)は、医学のいくつかの部門において有用である。生体接着性ポリマーの1つの重要な用途は、薬物送達系、特に経口薬物送達においてである。このような生体接着性ポリマー(例えば、特定のポリ無水物)は、薬物含有物質の胃腸管の通過を遅らせるのに有用である。Mathiowitzらに対する特許文献1は、治療薬または診断薬を含むミクロカプセルを形成するためか、またはそのようなミクロカプセル上のコーティングとして、高濃度のカルボン酸基を有する生体接着性ポリマー(例えば、ポリ無水物)を使用することを記載する。
【0004】
ポリ無水物は、インビボで(例えば、胃腸(GI)管において)生体接着性であり、そして薬物含有粒子のGI管の通過を有意に遅延させ得、このようにしてより長時間の小腸による薬物吸収を可能にする。無水ポリマーまたは無水オリゴマーを生体接着性にさせるメカニズムは、ポリマーの疎水性骨格(カルボキシル基の存在と末端で結合される)の組合せに起因すると考えられる。荷電したカルボキシレート基と組織との相互作用は、他の生体接着剤で実証されている。特に、生体接着剤とみなされる製薬業界の物質は、代表的に、カルボン酸基を、そしてしばしばヒドロキシル基をも含む親水性ポリマーである。業界の標準は、しばしば、CARBOPOLTM(高分子量のポリ(アクリル酸))であるとみなされる。他のクラスの生体接着性ポリマーは、中程度の密度〜高密度のカルボキシル置換を有することによって特徴付けられる。相対的に疎水性の無水物ポリマーは、疎水性カルボキシレートポリマーと比較した場合、優れた生体接着特性を頻繁に示す。しかしながら、これらポリマー接着剤の全ては、湿っている場合、そして特に湿っている状態が長期化する場合、効力を失いがちである。インビボでの表面に対するこれらの低減された接着は、薬物送達を増強させる場合、これらの効力を消失しがちである。
【0005】
イガイ類、他の二枚貝および藻類の、岩および他の担体に対する水中での付着のための天然の接着剤は、公知である(例えば、Waiteに対する特許文献2、Benedictらに対する特許文献3、およびVreelandらに対する特許文献4を参照のこと)。これらの接着剤は、ポリ(ヒドロキシ置換)芳香族基を含むポリマーである。イガイ類および他の二枚貝において、このようなポリマーは、ジヒドロキシ置換された芳香族基を含み、例えば、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を含むタンパク質である。藻類においては、多様なポリヒドロキシ芳香族(例えば、フロログルシノールおよびタンニン)が使用される。水中の表面上に接着する場合、二枚貝は、担体に接着するために予め形成されたタンパク質を分泌し、これによって二枚貝は担体と繋がる。最初の接着工程の後、天然のポリマーは、代表的に、隣接するヒドロキシル基の酸化によって永続的に架橋される。
【0006】
生物体からのこれら物質の抽出は、商用規模の生産に実用的でない。代表的に、イガイ類の接着剤由来のアミノ酸モチーフを含む合成ポリペプチドもしくは遺伝子操作されたポリペプチド、または天然の海洋性物質を使用して、接着性を再現する試みがなされている。合成タンパク質物質は、非常に高額であるかまたはそれ以外にも不適切であるので、商用適用に耐えられないことが判明した。ポリマー上のヒドロキシル基について酵素媒介性の酸化状態を必要とすることが、使用に対するさらなる障壁である。
【0007】
接着性ポリマーに対する初期のアプローチ(例えば、Benedictらに対する特許文献5)は、ポリアミンに対してDOPAを接合することを必要とする。しかしながら、これらカチオン性水溶性化合物の接着性は、親のポリアミン(例えば、ポリ−L−リジン)の接着性よりもずっとよいわけではない。
【特許文献1】米国特許第6,197,346号明細書
【特許文献2】米国特許第5,574,134号明細書
【特許文献3】米国特許第5,015,677号明細書
【特許文献4】米国特許第5,520,727号明細書
【特許文献5】米国特許第4,908,404号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、特にポリマーおよび/または表面が湿っている場合、改善した生体接着特性を有するポリマーを提供することが、本発明の目的である。
【0009】
ポリマーの生体接着特性を改善するための方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0010】
対費用効果的な様式でGI管、鼻粘膜、肺粘膜および他の粘膜において滞留時間を増大させた薬物送達系を提供することが、本発明のなおさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の簡潔な要旨)
改善された生体接着特性を有するポリマーおよびポリマーの生体接着性を改善するための方法を開発した。1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族基を含む化合物が、ポリマー上に接合されるかまたは個々のモノマーに結合される。1実施形態において、ポリマーは生体分解性ポリマーである。別の実施形態において、モノマーが重合されて任意の型のポリマーを形成し得、このポリマーは生体分解性ポリマーおよび非生体分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーは疎水性ポリマーである。好ましい実施形態において、芳香族化合物はカテコールまたはその誘導体であり、そしてポリマーは反応性官能基を含む。最も好ましい実施形態において、ポリマーはポリ無水物であり、そして芳香族化合物はカテコール誘導体DOPAである。これらの物質は、治療適用および診断適用において使用される従来の生体接着剤に優る生体接着特性を示す。これらの生体接着性物質を使用して、組織表面における滞留時間を増大させた新規薬物送達系または新規診断系を作製し得、そして結果的に薬物または診断薬のバイオアベイラビリティーを増大させ得る。好ましい実施形態において、生体接着性物質は、制御放出の経口投薬処方物上のコーティングであり、そして/または経口投薬処方物においてマトリクスを形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(I.生体接着剤)
本明細書中で一般的に使用される場合、「生体接着剤」または「生体接着性物質」とは、改善された生体接着性を有するよう改変されたポリマーをいう。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「生体接着」とは、一般に、物質が長期の間、生物学的表面に接着する能力をいう。生体接着は、生体接着性物質と受容表面との間の接触を必要とし、この生体接着性物質は表面(例えば、組織および/または粘液)の間隙の中へと浸透し、そして化学結合が生じる。このようにして、生体接着力の量は、生体接着性物質(例えば、ポリマー)の性質および周囲の媒体の性質の両方により影響される。組織へのポリマーの接着は、以下によって達成され得る:(i)物理的結合または機械的結合、(ii)一次化学結合または共有化学結合、および/または(iii)二次化学結合(すなわち、イオン結合)。物理的結合または機械的結合は、粘液の間隙または粘膜の層において、この接着性物質の沈着または凝集から生じ得る。二次化学結合は、生体接着特性に寄与し得、これは分散的な相互作用(すなわち、ファンデルワールス相互作用)およびより強力な特異的相互作用(これには、水素結合が挙げられる)からなる。水素結合の形成を担う親水性官能基は、ヒドロキシル基(−OH)およびカルボキシル基(−COOH)である。接着力は、Mathiowitzらに対する米国特許第6,197,346号(これは、本明細書中で参考として援用される)に定義される方法によって、N/mの単位で測定される。接着力はまた、特に錠剤によって示される接着力は、組成分析器(Texture Analyzer)、例えばTA−TX2 Texture Analyzer(Stable Micro Systems,Haslemer,Surrey,UK)を使用して測定され得る。Michael J.Tobynら,Eur.J.Pharm.Biopharm.,41(4):235−241(1995)に記載されるように、粘液接着性錠剤が組成分析器上のプローブに付着され、そしてこのプローブがブタの胃組織に接触するまで下げられる。このブタの胃組織は、組織ホルダに取り付けられ、そして37℃で液体に曝されて胃媒体を刺激する。力は設定した期間の間適用され、次いでプローブが設定された速度で運ばれる。力/距離の曲線下面積の計算を使用して、接着の仕事(work)を決定する。(また、Michael J.Tobynら,Eur.J.Pharm.Biopharm.,42(1):56−61(1996)およびDavid S.Jonesら,International J.Pharmaceutics,151:223−233(1997)を参照のこと)。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「カテコール」とは、Cの分子式および以下の構造を有する化合物をいう:
【0015】
【化1】

生体接着性物質は、カテコール官能基を有するポリマーを含む。生体接着性物質の分子量および芳香族化合物でのポリマーのパーセント置換は、大きく変動し得る。置換の度合いは所望される接着強度に基づき変動し、この置換の度合いは、10%ほどの置換、20%ほどの置換、25%ほどの置換、50%置換ほどの置換、または100%までの置換であり得る。ポリマー骨格における、平均して少なくとも50%のモノマーが、少なくとも1つの芳香族基で置換される。好ましくは、骨格における75〜95%のモノマーが、少なくとも1つの芳香族基で置換されるかまたは芳香族を含む側鎖で置換される。好ましい実施形態において、ポリマー骨格における、平均して100%のモノマーが、少なくとも1つの芳香族基で置換されるかまたは芳香族を含む側鎖で置換される。得られた生体接着性物質は、約1〜2,000kDaの範囲の分子量を有するポリマーである。
【0016】
(a.ポリマー)
生体接着性物質の骨格を形成するポリマーは、任意の非生体分解性ポリマーまたは生体分解性ポリマーであり得る。好ましい実施形態において、ポリマーは疎水性ポリマーである。1実施形態において、ポリマーは生体分解性ポリマーであり、そして経口投薬処方物を形成するために使用される。
【0017】
好ましい生体分解性ポリマーの例としては、以下が挙げられる:合成ポリマー(例えば、ポリヒドロキシ酸、例えば、乳酸とグリコール酸とのポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)(poly(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン))、および天然ポリマー(例えば、アルギン酸および他の多糖類、コラーゲン、これらの化学的誘導体(化学基の置換体、付加体)(例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化物、酸化物、および当業者により慣用的に作製される他の修飾物)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインならびに他のプロラミンおよび他の疎水性タンパク質)、コポリマー、ならびにこれらの混合物)。一般的に、これらの物質は、酵素的加水分解によるかまたはインビボでの水への曝露によるかのいずれかによる、表面の浸食またはバルクの浸食により、分解する。前述の物質は、単独で、物理的な混合物(ブレンド)として、またはコポリマーとして使用され得る。
【0018】
1実施形態において、ポリマーは、最初に、モノマーに芳香族化合物を結合させ、次いで重合させることにより形成される。この実施形態において、モノマーは重合されて、任意のポリマー(生体分解性ポリマーおよび非生体分解性ポリマーを含む)を形成し得る。適切なポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ無水物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート))、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシ酸、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、修飾セルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸とメタクリル酸エステルとのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、トリ酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩、およびポリアクリラート(例えば、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、ポリ(オクタデシルアクリラート))。
【0019】
疎水性または親水性であるポリマーは、公知の生体接着性ポリマーであり得る。親水性ポリマーとしては、CARBOPOLTM(NOVEONTMにより製造される、高分子量の架橋化アクリル酸ベースのポリマー)、ポリカルボフィル(polycarbophil)、セルロースエステル、およびデキストランが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態において、非生体分解性ポリマー、特に疎水性ポリマーを使用し得る。好ましい非生体分解性ポリマーの例としては、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸と他の不飽和性の重合可能なモノマーとのコポリマー、ポリ(ブタジエン無水マレイン酸)、ポリアミド、コポリマーおよびこれらの混合物、ならびにデキストラン、セルロースおよびこれらの誘導体が、挙げられる。
【0021】
疎水性ポリマーとしては、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、およびポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン)が挙げられる。好ましい実施形態において、容易には水に溶解しないポリマーは十分疎水性であり、例えば、このポリマーは、室温または体温で、水に約1%(w/w)未満までの溶解性であるべきであり、好ましくは水に約0.1%(w/w)未満までの溶解性である。最も好ましい実施形態において、このポリマーはポリ無水物(例えば、ポリ(ブタジエン無水マレイン酸)および他の無水マレイン酸のコポリマー)である。
【0022】
ポリ無水物は、Dombらに対する米国特許第4,757,128号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるようなジカルボン酸から形成され得る。適切な二価酸としては、以下が挙げられる:脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸と芳香族脂肪族ジカルボン酸との組合せ、芳香族複素環式ジカルボン酸および脂肪族複素環式ジカルボン酸、ならびに脂肪族ジカルボン酸と組み合わせた芳香族複素環式ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸と組み合わせた脂肪族複素環式ジカルボン酸、芳香族脂肪族ジカルボン酸、ならびに1より多くのフェニル基の芳香族ジカルボン酸。適切なモノマーとしては、セバシン酸(SA)、フマル酸(FA)、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)、イソフタル酸(IPh)、およびドデカンジオン酸(dodecanedioic acid)(DD)が挙げられる。
【0023】
生体接着性物質の骨格を形成するポリマーに関して、広い範囲の分子量が適切である。この分子量は、(オリゴマーに関して)約200Daほど〜約2,000kDaまでであり得る。好ましくは、このポリマーは、少なくとも1,000Daの分子量を有し、より好ましくは少なくとも約2,000Daの分子量を有し、最も好ましくは20kDaまで、または200kDaまでの分子量を有する。このポリマーの分子量は、2,000kDaまでであり得る。
【0024】
ポリマー上の置換の範囲は大きく変動し、そして使用されるポリマーおよび所望される生体接着強度に依存する。例えば、DOPAで100%置換されたブタジエン無水マレイン酸コポリマーは、67%置換されたエチレン無水マレイン酸コポリマーと、鎖の長さ当たり同数のDOPA分子を有する。代表的に、ポリマーは、10%〜100%に及ぶパーセント置換を有し、好ましくは50%より大きく、50%〜100%に及ぶパーセント置換を有する。
【0025】
生体接着性物質の骨格を形成するポリマーおよびコポリマーは、反応性官能基を含み、この基は芳香族化合物上の官能基と相互作用する。
【0026】
(b.反応性官能基)
ポリマー骨格を形成するポリマーまたはモノマーが、芳香族化合物に含まれる官能基と容易に反応する、アクセス可能な官能基(例えば、アミンおよびチオール)を含むことが重要である。好ましい実施形態において、ポリマーはアミノ反応性部分(例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸誘導体、環式無水物、ハロゲン化アルキル、アシルアジド、イソシアナート、イソチオシアナートおよびスクシニミジルエステル)を含む。
【0027】
(c.1つ以上のヒドロキシル基を有する芳香族基を含む側鎖)
1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族基は、ポリマー骨格に結合される。この芳香族基は、ポリマー骨格に接合される化合物の一部であり得るか、またはこの芳香族基はポリマー骨格に接合されるより大きな側鎖の一部であり得る。好ましい実施形態において、1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族基は、カテコールまたはその誘導体である。必要に応じて、芳香族化合物は、ポリヒドロキシ芳香族化合物(例えば、トリヒドロキシ芳香族化合物(例えば、フロログルシノール)または複数のヒドロキシ芳香族化合物(例えば、タンニン))である。カテコール誘導体はまた、反応性官能基(例えば、アミノ基、チオール基またはハロゲン基)を含み得る。ポリマー骨格に接合され得る適切な側鎖としては、以下が挙げられる:分子量20kDa以下を有する、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、またはタンパク質(ここで、少なくとも10%のアミノ酸はカテコール残基を含む)。好ましくは、50%より多いアミノ酸、より好ましくは75%より多いアミノ酸、そして最も好ましくは100%のアミノ酸がカテコール残基を含む。カテコール類似残基を有する通常のアミノ酸は、フェニルアラニン(pheylanine)、チロシンおよびトリプトファンである。さらに、カテコール残基を有する合成アミノ酸が調製され得る。
【0028】
好ましいカテコール誘導体は、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)であり、これは一級アミンを含む。L−DOPAは薬学的に活性であることが公知であり、そしてパーキンソン病のための処置として使用される。チロシンもまた使用され得、これはDOPAの中間前駆体であり、芳香環に1つのヒドロキシル基も存在しないことのみが異なっている。チロシンは、(例えば、ヒドロキシル化によって)DOPA型へと変換し得る:
【0029】
【化2】

好ましい実施形態において、芳香族基はアミン含有芳香族化合物(例えば、アミン含有カテコール誘導体)である。
【0030】
(II.生体接着剤を形成する方法)
2つの一般的方法を使用して、生体接着性物質を形成する。1実施形態において、1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族基を含む化合物が、ポリマーに接合される。この実施形態において、ポリマー骨格は生体分解性ポリマーである。第2の実施形態において、芳香族化合物は個々のモノマーに結合され得、次いで重合される。
【0031】
1つ以上のヒドロキシル基を含む芳香族化合物に対するポリマーまたはモノマーの結合を可能にする、任意の化学反応が使用され得る。例えば、芳香族化合物がアミノ基を含み、かつモノマーまたはポリマーがアミノ反応基を含む場合、このポリマーまたはモノマーに対するこの修飾は、芳香族化合物におけるアミノ基とこのポリマーまたはモノマーとの間の求核付加反応または求核置換反応(Michael型付加反応を含む)を介して実施される。さらに、他の手順が結合反応において使用され得る。例えば、カルボジイミドおよび混合された無水物に基づく手順は、カルボン酸またはリン酸とアミノ基との間に安定なアミド結合を形成し、二官能性のアルデヒドは一級アミノ基と反応し、二官能性の活性なエステルは一級アミノ基と反応し、そしてジビニルスルホンはアミノ基、チオール基またはヒドロキシ基との反応を容易にする。
【0032】
(a.ポリマー接合)
芳香族化合物は、標準的手順を使用してポリマーに接合されて、生体接着性物質を形成する。接合手順の例は反応1に概略的に示される。この反応1は、芳香族化合物におけるアミノ基とポリマーとの間の求核置換反応を示す。L−DOPAは、L−DOPAにおける遊離アミンとコポリマーにおける無水マレイン酸結合とを反応させることによって、無水マレイン酸コポリマーに接合される。
【0033】
種々の異なるポリマーが生体接着性物質の骨格として使用され得る。代表的なポリマーは、無水マレイン酸とエチレン、酢酸ビニル、スチレンまたはブタジエンとの1:1のランダムなコポリマーを含む。骨格構造の可変部分は、反応1の下側に、R基として記される。さらに、ヒドロキシ置換基を有する芳香環を含む多くの他の化合物(例えば、チロシンまたはカテコールの誘導体)が、反応1において使用され得る。
【0034】
【化3】

(b.ポリマー構築)
別の実施形態において、ポリマーはアミノ反応基を含む1つ以上のモノマーへの、芳香族基およびアミン官能性を含む化合物の共役付加によって調製される。好ましい方法において、モノマーはアクリラートまたはポリマーアクリラートである。最も好ましい方法において、モノマーは、ジアクリラート(例えば、1,4−ブタンジオールジアクリラート;1,3−プロパンジオールジアクリラート;1,2−エタンジオールアクリラート;1,6−ヘキサンジオールアクリラート;2,5−ヘキサンジオールジアクリラート;または1,3−プロパンジオールジアクリラート)である。結合反応において、モノマーおよび芳香族環を含む化合物は、各々有機溶媒(例えば、THF、CHCl、MeOH、EtOH、CHCl、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、CCl、グライム(glyme)、ジエチルエーテルなど)中に溶解されて、2つの溶液を形成する。この得られた溶液を合わせ、そして反応混合物を加熱して所望のポリマーを得る。合成されたポリマーの分子量は、合成において使用される反応条件(例えば、温度、開始物質、濃度、溶媒など)によって決定され得る。
【0035】
例えば、モノマー(例えば、濃度1.6Mを有する1,4フェニレンジアクリラートまたは1,4ブタンジオールジアクリラート)およびDOPA、または別の一級アミンを有する芳香族分子を、各々非プロトン性溶媒(例えば、DMFまたはDMSO)に溶解して、2つの溶液を形成し、これら溶液をジアクリラートとアミン基との間での1:1のモル比で混合し、そして56℃に加熱して、生体接着性物質を形成する。
【0036】
(III.生体接着剤への適用)
本明細書中に記載した生体接着性物質は、広範な種々の薬物送達適用および診断適用に使用され得る。生体接着性物質は、ミクロ粒子(例えば、ミクロスフェアまたはミクロカプセル)へと形成され得るか、またはこのようなミクロ粒子上のコーティングであり得る。好ましい実施形態において、この物質は、固形の経口投薬処方物(例えば、錠剤またはゲルカプセル)または複数の粒子(multiparticulate)に対するコーティングとして適用される。コーティングは、直接的な圧縮によるかまたはこの物質を含む溶液を錠剤またはゲルカプセルに塗布することによって適用され得る。1実施形態において、生体接着性物質は、錠剤または他の薬物送達デバイスのマトリクス中に存在する。必要に応じて、この錠剤または薬物送達系はコーティング(例えば、生体接着性物質もしくは別の生体接着性ポリマーを含むコーティング、または別の生体接着性ポリマー)または腸溶性コーティング)を含む。
【0037】
1実施形態において、生体接着性物質は、薬物デポー系または薬物レザバ系(例えば、浸透圧性薬物送達系)において使用される。この実施形態において、生体接着性物質は、送達される薬物を取り囲むマトリクス中に、そして/またはこの薬物送達系の表面上のコーティングとして存在し得る。このデポー系またはレザバ系は、外的環境を系内部の薬物から分ける、微小孔性膜またはマクロ細孔性膜を含む。この浸透圧性送達系は浸透剤を含み、この浸透剤はこの系の中に水を運び、膨潤性物質(例えば、ポリマー性マトリクスまたは別々のポリマー層)を膨潤させる。系内の物質が膨潤する場合、この物質は半透膜に対して薬物を押し、そして系外へと押し出す。
【0038】
生体接着性コーティングは、胃腸管の水性環境にある粘膜に接着する。結果として、治療薬のバイオアベイラビリティーは、標的の吸収速度での、増加した滞留時間を通して増強される。好ましい実施形態において、固形の経口投薬形態は、速度制御剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および微結晶性セルロース(MCC))を含む。必要に応じて、薬物はミクロ粒子またはナノ粒子の形態であり得る。1実施形態において、錠剤は、速度制御剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および微結晶性セルロース(MCC))の中心マトリクス中にナノ粒子性薬物およびエンハンサーを含むコアを含む。このコアは、生体接着性ポリマー(好ましくは、DOPA−BMAポリマー)によりその周囲を囲まれる。必要に応じて、最終製品の錠剤は、この錠剤が小腸に移動するまで薬物の放出を防止するために、腸溶性コーティング(例えば、Eudragit L100−55)でコーティングされる。
【0039】
生体接着性物質は、プロテーゼ(例えば、歯科用プロテーゼ)上のコーティング中に、またはプロテーゼ上のコーティングとして使用され得る。この物質は、歯科用接着剤、または骨セメントおよび骨接着剤として使用され得る。この物質は、創傷治癒適用(例えば、合成皮膚、創傷包帯、ならびに皮膚プラスターおよび皮膚フィルム)における使用に適切である。
【0040】
(a.生体接着性物質に組み込まれ得る物質)
生体接着性物質内にカプセル化され得る物質についての特定の制限は存在しない。任意の種の治療薬、予防薬または診断薬(有機化合物、無機化合物、タンパク質、多糖類、核酸または他の物質を含む)が、標準的な技術を使用して組み込まれ得る。生体接着性物質に組み込まれ得る物質の中には、矯味矯臭剤(flavorant)、栄養剤(nutraceutical)、および栄養補助食品がある。好ましい実施形態において、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(「レボドパ」または「L−ドパ」)が、患者への送達のため、生体接着性物質に組み込まれる。この生体接着性物質は、カルビドパを含み得る。1実施形態において、レボドパおよびカルビドパは両方とも生体接着性物質に組み込まれる。好ましい実施形態において、生体接着性物質は、経口投薬処方物上のコーティングであり、これは別々の薬物層においてレボドパおよびカルビドパを含む。
【0041】
有用なタンパク質の例としては、ホルモン(例えば、インスリン)、増殖ホルモン(ソマトメジンを含む)、トランスフォーミング増殖因子および他の増殖因子、経口ワクチンのための抗原、酵素(例えば、ラクターゼまたはリパーゼ)、ならびに消化補助剤(例えば、パンクレアチン)が挙げられる。
【0042】
有用な薬物の例としては、以下が挙げられる:潰瘍処置剤(例えば、Carafate(Marion Pharmaceuticals製))、抗高血圧剤または塩排泄剤(例えば、Metolazone(Searle Pharmaceuticals製))、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター(例えば、Acetazolamide(Lederle Pharmaceuticals製))、インスリン様薬物(例えば、グリブリド)、スルホニル尿素のクラスの血中グルコース低下薬物、ホルモン(例えば、Android F(Brown Pharmaceuticals製)、およびTestred(メチルテストステロン)(ICN Pharmaceuticals製)、駆虫薬(例えば、メベンダゾール(VERMOXTM、Jannsen Pharmaceutical製))。膣の裏打ち物(lining)または粘膜性膜で裏打ちされる他の開放部(例えば、直腸)への適用のための他の薬物としては、殺精子薬(spermacide)、酵母処置剤またはトリコモナス処置剤、および抗痔核処置剤が挙げられる。
【0043】
薬物は、Biopharmaceutical Classification System(BCS)を使用して分類され得る。これは、経口投与のための医薬を、それらの溶解性および小腸細胞層を通るそれらの吸収性に依存して、4つのクラスに分ける。BCSに従って、薬物物質は以下のように分類される:
クラスI − 高透過性、高溶解性
クラスII − 高透過性、低溶解性
クラスIII− 低透過性、高溶解性
クラスIV − 低透過性、低溶解性。
【0044】
この分類系における重要性は、大部分が、初期の薬物開発におけるこの分類系の適用から、次いでその薬物のライフサイクルを通した生成物の変化の管理において、生じる。薬物開発の初期段階において、特定の薬物のクラスについての知識は、その開発を継続するか中止するかの決定に影響する重要な要因である。
【0045】
BCS系のクラスIの薬物は、胃腸(GI)管において、高溶解性および高透過性である。代表的なBCSクラスI薬物としては、カフェイン、カルバマゼピン、フルバスタチン、ケトプロフェン、メトプロロール、ナプロキセン、プロプラノロール、テオフィリン、ベラパミル、ジルチアゼム、ギャバペンチン、レボドパCRおよびジバルプロックスナトリウムが挙げられる。時折、BCSクラスI薬物は、溶解速度を増加させるため、2ミクロン未満のサイズに微細化され得る。ポリマーマトリクス中に薬物を微粒子化するかまたは分子的に分散させる他の手段としては、噴霧乾燥、薬物の階層化(layering)、熱融解押出、および超臨界流体微粒子化が挙げられる。
【0046】
クラスII薬物は、特に不溶性であるかまたは溶解するのが遅いが、胃および/または小腸の裏打ち物により溶液から容易に吸収される薬物である。従って、GI管の裏打ち物への長期にわたる曝露が、吸収の達成に必要とされる。このような薬物は、多くの治療薬クラスにおいて見出される。
【0047】
多くの公知のクラスII薬物は、疎水性であり、そして歴史的に投与するのが困難であった。さらに、その疎水性に起因して、薬物を摂取する時点で患者が食事を与えられるかまたは絶食されるかどうかに依存して、吸収における有意な変動が存在する傾向にあった。このことは次いで、血清中濃度のピークレベルに影響し得、投薬量の計算および投薬レジメンをより複雑にする。
【0048】
クラスII薬物としては、イトラコナゾールおよびその誘導体、フルコナゾール、テルコナゾール、ケトコナゾールおよびサペルコナゾール;クラスIIの抗感染薬(例えば、グリセオフルビン、およびグリセオベルジン(griseoverdin)のような関連化合物);いくつかの抗マラリア薬(例えば、アトバクオン);免疫系調節因子(例えば、シクロスポリン);および心血管薬物(例えば、ジゴキシンおよびスピロノラクトン);およびイブプロフェンが挙げられる。さらに、ダナゾール、カルバマゼピン、およびアシクロビルのような薬物もまた使用され得る。
【0049】
クラスIII薬物は、良好な水溶性および乏しいGI透過性を有する生物学的薬剤であり、以下を含む:タンパク質、ペプチド、多糖類、核酸、核酸オリゴマーおよびウイルス。使用され得るクラスIII薬物の例としては、ネオマイシンB、カプトプリル、アテノロールおよびカスポファンギン(caspofungin)が挙げられる。
【0050】
クラスIV薬物は、GI透過性に乏しい脂溶性薬物である。使用され得るクラスIV薬物の例としては、クロロチアジド、トブラマイシン、シクロスポリン、タクロリムス、およびパクリタキセルが挙げられる。クラスIII薬物およびクラスIV薬物の両方は、しばしば、徐放性または制御放出に対して問題があるかまたは不適切である。クラスIII薬物およびクラスIV薬物は、不溶性および乏しい生体膜透過性により特徴付けられ、そして共通して非経口的に送達される。溶解性の乏しい薬物の非経口性送達への従来のアプローチとしては、大容量の水性希釈剤を使用すること、溶解剤を使用すること、界面活性剤を使用すること、非水性溶媒を使用すること、または非生理学的pH溶媒を使用することが挙げられる。しかしながら、これらの処方物は、その薬物組成物の全身性の毒性を増加させ得るかまたは投与部位で体組織に損傷を与え得る。1実施形態において、クラスI薬物、クラスII薬物、クラスIII薬物またはクラスIV薬物の1つ以上が、固形の経口投薬処方物のコア中に含まれ、そしてこのコアは1つ以上の生体接着性ポリマーによって少なくともその周囲を囲まれる。
【0051】
画像化のための好ましい方法において、バリウムのような放射線不透過性物質が、生体接着性物質でコーティングされる。放射活性物質または磁性物質が放射線不透過性物質の代わりに使用され得るか、または放射線不透過性物質と共に使用され得る。
【0052】
(b.錠剤)
生体接着性ポリマーは、生体接着性薬物送達の錠剤処方物において、1つ以上の層として使用され得る。好ましい実施形態において、この処方物は、錠剤の形態の、速度制御された経口投薬処方物(本明細書中で「BIOROD」とも呼ばれる)である。この生体接着性薬物送達処方物は、コア、生体接着性コーティング、および必要に応じて腸溶性コーティングまたは非腸溶性コーティングを含む。コアは、1つ以上の薬物を、単独で含むかまたは速度制御性の膜系と共に含むかのいずれかである。コアは、その周囲を生体接着性コーティングにより包まれる。図3〜11は、生体接着性の速度制御された経口投薬処方物(11)を例示し、この処方物は少なくとも生体接着性ポリマー(12)およびコア(14)を含む。
【0053】
デバイスの全体的な形状は、嚥下作用と適合するよう設計されている。図3に示されるように、コア(14)は、長手軸方向に圧縮されて、カプセル型状の錠剤を形成し、この錠剤はその周囲を生体接着性ポリマー性シリンダ(12)で囲まれる。
【0054】
図4に示される1実施形態において、活性な薬剤は、ミクロ粒子(16)の形態であり、必要に応じてこのミクロ粒子は速度制御性ポリマー(18)でコーティングされる。図5に示される別の実施形態において、コア(14)は、生体接着性ポリマー性シリンダ(12)によりカプセル化され、ここで、このシリンダは、シリンダの頂部および底部に放出が制限された開放部(20)を備える。
【0055】
図6に示されるなお別の実施形態において、コアは複数の薬物層(22および24)を含む。必要に応じて、1つ以上の薬物層は制御放出層であるか、1つ以上の層は即時放出層であるか、または層のうちの1つが制御放出層であり、一方、他の層は即時放出層である。錠剤はまた、第3の薬物層(26)または分離層(26)を備える。必要に応じて、カプセルもまた放出が制限された開放部を備える(図に示されない)。
【0056】
別の実施形態において、カプセルは浸透圧性薬物送達系である。好ましい実施形態において、腸溶性デバイスは半透膜でコーティングされ、この膜は硬い半透膜である。
【0057】
図7に示されるように、浸透圧性BIOROD系は、コア(14)、半透過性コーティング(28)および生体接着性ポリマー性シリンダ(12)を備える。半透膜は、コアと生体接着性の層との間に位置する。コアは、1つ以上の薬物および半透膜を横切って水を吸い込む浸透圧剤を含む。必要に応じて、カプセルは、生体接着性シリンダの頂部および/または底部に、1つまたは2つの放出が制限された開放部(20)を備える。好ましい実施形態において、浸透圧性送達系は、「プッシュプル」系である。この系の例は、図8〜10に例示される。上側チャンバは、薬物を含み、そして小さな出口孔を介して外部環境と繋げられる。下側チャンバは、膨潤性ポリマーおよび浸透吸引剤を含み、そして出口孔を有さなくてもよい。適切な浸透性因子としては、糖およびグリコールが挙げられる。一旦錠剤が膨潤すると、水が上側チャンバと下側チャンバの両方に流れる。下側チャンバは出口孔を有さないので、錠剤は拡大し、薬物層を上側チャンバの中へと押す。このことは、必要に応じて薬物層とプッシュ層(push layer)との間に位置するプラグ層またはダイヤフラム層を押すことによる。従って上側チャンバ中の薬物は、出口孔から押し出される。図8に例示されるように、コアは、活性な薬剤を有する1層(30)、ならびに膨潤性ポリマーおよび浸透性因子を有する第2層(32)を含む。ポリマー層(32)は「プッシュ層」である。なぜなら、この層は制御された速度で膨潤する場合、薬物をデバイスから押し出すからである。図8に示されるように、この系は、少なくとも1つの開放部(20)を備え得る。必要に応じて、活性な薬剤(30)は、不溶性プラグ(34)によってプッシュ層(32)から分離される(図9を参照のこと)。図10に例示されるなお別の実施形態において、プッシュプル浸透圧性送達系は、薬物層中の活性な薬剤(30)、ならびにプッシュ層(32)中の膨潤性ポリマーおよび浸透吸引剤を含む。薬物層(30)は、生体接着性シリンダ(12)によってその周囲を囲まれる。プッシュ層(32)の下端は、不溶性プラグ(36)と隣接している。
【0058】
2パルス性BIOROD系は、カプセル中の制御放出層および即時放出層に同じ薬物を含むか、または同じカプセル中の制御放出層もしくは即時放出層のいずれかに2つの異なる薬物を含む。2パルスBIOROD系の1実施形態は図11に例示され、このBIOROD系は下側の薬物層(24)より下およびそれより上にプラグ(36)を含み、一方、上側の薬物層はこの上側薬物層(22)より上にはプラグを含まない。このことは、上側の層(22)中の薬物が下側の層(24)中の薬物の放出より先に放出されるのを可能にする。
【0059】
経口投薬処方物のなお別の実施形態において、錠剤は、生体接着性ポリマー(40)のマトリクス中に包埋された、活性な薬剤の予め圧縮された挿入物を(必要に応じて賦形剤(38)および透過増強剤と共に、必要に応じて賦形剤と共に)含む(図12を参照のこと)。薬物は、錠剤の端でのみ放出され、そして薬物放出動態は挿入物(38)のジオメトリによって制御される。零次および一次の放出プロフィールは、この錠剤設計を用いて達成可能であり、そして挿入物の構成を変更することによって、透過増強剤および薬物に対して異なる放出速度を与えることが可能である。
【0060】
(i.生体接着性の速度制御性経口投薬剤の作製方法)
押出された生体接着性ポリマーのシリンダは、1つ以上の生体接着性ポリマーから形成される。1つの生体接着性ポリマーは、生体分解性または非生体分解性のポリマー骨格であり、ここで、このポリマーを形成するモノマー部分は芳香族基で置換され、好ましくはDOPA側鎖がそのポリマー側鎖に接合される。他の生体接着性ポリマーとしては、ポリ(フマル酸−co−セバシン酸)(pFA:SA)(Mathiowitzらに対する米国特許第5,955,096号に記載されるもの(例えば、p(FA:SA)の20:80コポリマー))、オリゴマーおよび金属酸化物(Jacobらに対する米国特許第5,985,312号に記載されるもの)、ならびに他の市販の生体接着性ポリマー(例えば、Gantrez(ポリメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー)、CARBOPOL(登録商標)(Noveon)(ポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸の高分子量のホモポリマーおよびコポリマー)が挙げられる。必要に応じて、生体接着性層は1つ以上の可塑剤、小孔形成剤、および/または溶媒を含む。適切な可塑剤としては、セバシン酸ジブチルエステル、アジピン酸ジブチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、およびPLURONIC(登録商標)F68(BASF)が挙げられる。適切な小孔形成剤としては、糖および塩(例えば、ショ糖、ラクトース、デキストロース、マンニトール、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、およびクエン酸)が挙げられる。熱可塑性ポリマーは、生体接着性ポリマーのシリンダの成形性および機械的強度を改変するために、生体接着性層に加えられ得る。適切な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステル(例えば、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL));メチルメタクリラート(例えば、Eudragit RL100、Eudragit RS100、およびEudragit NE30D);および修飾セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース、およびエチルセルロース)が挙げられる。
【0061】
(1.中空の生体接着性シリンダの生成のための方法)
(生体接着性シリンダ)
好ましい実施形態において、押出されたポリマーシリンダは、熱融解押出プロセスを介して調製される。ここで、所望される生体接着性ポリマーは、ペレット、フレークまたは粉末として、必要に応じて1つ以上の可塑剤と一緒に、押出器の中に供給される。これら物質はブレンドされて、スクリューに沿って高温高圧領域を通って連続して推進されてポリマー押出物(extrudate)を形成する。この押出物は、所望の形状および寸法を与えるダイを通って押出器より押され、シリンダを形成する。押出後、このシリンダは冷却される。シリンダの寸法はコアを収容するよう変動され得る。シリンダの内径は、予め形成され予め圧縮されたコア(これは治療薬を含む)の所望される外周寸法に適合するよう作られ得る。シリンダの厚みは、部分的にポリマー/可塑剤の型および外部の流体に対する挙動によって、決定される。ポリマーシリンダの生体接着性質はまた、異なる型のポリマーおよび賦形剤を混合することによって制御され得る。無機金属酸化物は、接着性を向上させるために加えられ得る。小孔形成剤もまたその多孔度を制御するために加えられ得る。薬物はまた、可塑剤としてかまたは小孔形成剤としてかのいずれかでポリマーシリンダ中に加えられ得る。生体接着層に薬物を加えることは、小孔形成を増加させるために通常使用される(小孔形成剤)。いくつかの薬物は低分子であり、可塑剤として作用する。例えば、L−DOPAはL−DOPA−BMAに対する可塑剤として挙動し得る。
【0062】
中空シリンダの熱融解押出前に、生体接着性ポリマーは、必要に応じて、0.1〜50%(w/w)の範囲で、好ましくは20%(w/w)で可塑剤と一緒に、プラネタリミキサー中で混合される。押出は、任意の標準的な押出器(例えば、APV Bakerのうちの実験室規模の共回転式ツインスクリュー押出式MP19 TC25(Newcastle−under−Lyme,UK)、またはKillion押出器(Killian extruder Inc.,Cedar Grove,NJ))を使用して実施される。押出器は、代表的に、2つの混合セクションを有する標準的なスクリュープロフィール、シリンダの生成のための金属挿入物を有する環状(annual)ダイ、およびツインスクリューの粉体フィーダーを備える。代表的な押出条件は、以下である:スクリュー速度5rpm、粉体供給速度0.14kg/時間、および温度プロフィール125−115−105−80−65℃(粉体フィーダーからダイに向けて)。シリンダ(代表的に、内径7mmおよび壁厚1mmを有する)は、代表的に、1cmのシリンダ長に切断される。
【0063】
(2.内部コア系の生成のための方法)
治療薬そして必要に応じて他の成分を含む、長手軸方向に圧縮された内部コア錠剤は、深充填器具または標準的な器具を備えた単層錠剤製造機または多層錠剤製造機で圧縮される。例えば、治療薬は、単独でかまたは放出制御性ポリマーおよび必要に応じて他の賦形剤と組み合わされるかのいずれかで、撹拌、ボール粉砕、回転粉砕またはカレンダー加工により混合され、そして押出されたポリマーシリンダにより規定される内部区画に適合する寸法を有する固形物へとプレスされる。異なる治療薬を含む1以上の層が、多層錠剤として含まれ得る。コアは、「浸透圧系」を形成するため、そのコアの外側に半透過性層を有する予め製造された挿入物であり得る。この浸透圧系は、シリンダの開放端に沿って開口を揃えた生体接着性シリンダの中に挿入される。
【0064】
(3.生体接着性シリンダ中へのコアの挿入方法)
コア(これは、好ましくは長手軸方向に圧縮された錠剤の形態である)は、シリンダ中に挿入され、そしてこのコアおよびシリンダ(これは外部のコーティングを形成する)は一緒に融合されて固形の経口投薬形態を生成する。シリンダの内径よりわずかに小さい直径を有する、予め形成された内部コアは、手動でかまたは機械によるかのいずれかでシリンダ中に挿入され、そして加熱されて、2つの単位を融合する。あるいはまた、シリンダ中へのコアの挿入はまた、錠剤製造機上での上向き配置式のコア挿入機構によりなされ得る。最初に、押出されたシリンダを機械のダイに配置し、その後シリンダの内部区画の中に圧縮したコアを挿入し、そしてこれら2つの成分を圧縮して、最終的な投薬形態をとし得る。あるいは、生体接着性シリンダおよび伸長可能な内部組成物の同時押出を介して、このような操作の可能な押出器を使用して、投薬形態が調製される。
【0065】
(c.生体接着性物質の患者への投与)
生体接着性物質は、懸濁物中または軟膏中の乾燥粉剤として、粘膜に(鼻、口、直腸、または膣を介して)投与され得る。経口投与または局所投与のための薬学的に受容可能なキャリアは公知であり、そしてポリマー物質との適合性に基づき決定される。他のキャリアとしては、METAMUCILTMのような充填剤が挙げられる。生体接着性物質は、マトリクス中に存在し得るか、または薬物もしくは診断用組成物においてコーティングを形成し得る。これらは種々の方法(経皮投与、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、および硝子体内投与を含む)により患者に投与され得る。この物質は、吸入により投与され得、必要に応じて肺の深部に薬物処方物を送達する。
【0066】
生体接着性物質は、接着剤(例えば、歯科用接着剤、骨セメントもしくは骨接着剤、合成皮膚、または創傷包帯、皮膚プラスターもしくは皮膚フィルム)として使用され得る。これらの物質は、処置の必要な部位に直接適用され得る。
【0067】
1実施形態において、生体接着性物質は、経口投薬処方物(例えば、錠剤)における層であり、必要に応じて制御放出の経口投薬処方物における層である。患者は、この経口投薬処方物を嚥下する。
【0068】
これらの生体接着性物質は、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)の処置のために特に有用である。潰瘍性大腸炎において炎症は結腸に限定されるが、一方、クローン病において炎症性損傷は胃腸管全体(口から直腸まで)にわたって見出され得る。スルファサラジンは、上記疾患の処置のために使用される薬物の1つである。スルファサラジンは、大腸内で細菌によってスルファピリジン(抗生物質)および5−アミノサリチル酸(抗炎症剤)へと切断される。5−アミノサリチル酸は、活性な薬物であり、そして局所的に活性である。分解産物(5−アミノサリチル酸)の直接投与は、より有益であり得る。生体接着性薬物送達系は、腸管中に長期間この薬物を保持することにより、治療法を改善し得る。クローン病について、上部腸管における5−アミノサリチル酸の保持は大いに重要である;細菌は結腸においてスルファサラジンを切断するので、腸管の上部領域における炎症を処置するための唯一の方法は5−アミノサリチル酸の局所投与による。
【0069】
胃腸管画像化硫酸バリウム懸濁物は、所望されない特性(例えば、味のまずさ、および溶液から沈殿する傾向)を有するものの、上部胃腸管の診断のために使用される普遍的な造影媒体である(D.Sutton編,A Textbook of Radiology and Imaging,第2巻,Churchill Livingstone,London(1980)に記載されるとおりである)。いくつかの特性が重要である:(a)粒子サイズ:沈降速度は粒子サイズに比例する(すなわち、より細かい粒子がより安定な懸濁物である);(b)非イオン性媒体:硫酸バリウム粒子の電荷は粒子の凝集速度に影響する。凝集は胃内容物の存在下で増強される;(c)溶液pH:懸濁物の安定性は、pH5.3が最良である。しかしながら、懸濁物が胃を通過するとき、これは必然的に酸性化されそして沈殿しがちである。適切なサイズのミクロスフェア中への硫酸バリウムのカプセル化は、個々の造影要素についての良好な分離をもたらし、そしてこのポリマーが生体接着特性を有する場合、過剰な胃流体の存在下で優先的に胃粘膜をコーティングするのを助け得る。生体接着性が胃腸管のより遠位部分に標的化されて、これはまた、他では容易には得られない壁の種類の画像化をもたらし得る。
【0070】
二重造影技術(これは、ガスおよび硫酸バリウムの両方を利用して画像化プロセスを増強する)は、特に、粘膜性表面の適切なコーティングを必要とする。空気または二酸化炭素は、二重造影を達成するために導入されなければならない。このことは、代表的に、鼻腔チューブを介して達成されて、制御された程度の胃の膨張を生じる。研究により、多数の個々の接着性ミクロスフェア中の個々の気泡の放出により、比較可能な結果が得られ得ること、およびこの画像化プロセスが胃を越えて腸部分を画像化するのに使用され得ることが、示される。
【実施例】
【0071】
(実施例1:L−DOPAを有する無水マレイン酸コポリマーおよびL−DOPAを有さない無水マレイン酸コポリマーについての伸長特性の比較)
材料:ストックポリマー(無水物)を社内で調製するかまたは標準的な商業的な供給源より購入した。無水マレイン酸の連結を含むいくつかの異なるポリマー(CAS番号:25655−35−0、9006−26−2、25366−02−8、9011−13−6、24937−72−2)を、Polysciencesより入手した。反復性骨格基は、試験した4つのポリマーの各々で異なる構造を有する(反応1において示したとおり(上記))。4つの異なる骨格構造(無水マレイン酸とエチレンとの1:1のランダムコポリマー、無水マレイン酸と酢酸ビニルとの1:1のランダムコポリマー、無水マレイン酸とスチレンとの1:1のランダムコポリマー、および無水マレイン酸とブタジエンとの1:1のランダムコポリマー)を使用した。骨格構造の変動性部分を、反応1の下側に示すR基として設定する。
【0072】
方法:反応1に模式的に示される経路を使用して、これらポリマーとL−DOPAとを接合した。最初に、これらポリマーをDMSO中に溶解し、そしてL−DOPAをこの溶液に添加した。穏やかに2時間加熱(70℃)することにより、この反応を行った。反応の間、L−DOPAは徐々に溶液に移った。反応後、この反応混合物を室温に冷ましてゲル化させた。塩化メチレンで数回洗浄してこのゲルよりDMSOを抽出することにより、ポリマーを回収した。合成したポリマーを乾燥させそして保存した。DOPAで無水マレイン酸基のうちの約50%モル置換および約95%モル置換して、ポリマーを作製した。
【0073】
例えば、以下に示される組成(texture)テスターにおける試験のため、これらのポリマーをメタノール中に溶解した。
【0074】
試験:上記のポリマーをTexture Technologiesの組成分析器で試験した。これは、噴霧コーティングまたは溶解コーティングのいずれかとして堆積した物質を試験し得る。エイコーンナット上にポリマーを溶解成型する(melt cast)か、または溶媒中にポリマーを好ましくは3%(w/w)で溶解してナイロン製エイコーンナット上に噴霧するかのいずれかを行った。「エイコーンナット」は丸みを帯びたキャップのナットであり、ネジの末端を覆うための雌ネジ山を有する。
【0075】
重力供給方式のSpraying Systemsのノズル装備(SU1−SS)を介して溶液を噴霧した。ポリマー溶液レザバをノズルの上6”に設定して、29mL/分の吸入液体供給を生じた。噴霧化ガス(窒素)を10psiで供給した。噴霧が毎秒4”の範囲を覆うように、ノズルを水平に振動するよう設定した。ノズル噴霧の走査範囲内で回転軸(30rpm)に沿って直立して、10.8mmの頭部直径を有するナイロン製エイコーンナット(小さなパーツ、U−CNN−1420)を同時に6つ設置した。6つのエイコーンナットにつき3gのポリマーをこれらのエイコーンナットにバッチで噴霧した。あるいは、融解したポリマーまたは濃縮したポリマー溶液にこれらエイコーンナットを浸漬することにより、これらエイコーンナットをコーティングした。組成分析器でエイコーンナットを一つずつ試験した。そしてブタ空腸の平らにした部分の粘膜側と、0.5mm/秒の速度かつ5gの力をかけて接触させた。エイコーンナットをこの位置で420秒間保持し、次いで、0.5mm/秒の速度で引き離した。力を距離の関数として出力グラフ上にプロットした。破壊応力および引張り仕事(tensile work)を出力グラフより計算し、そして計画したエイコーンナットの表面積に対して補正した。
【0076】
水中の接着を試験するのに有用な変型(「湿潤方法」)において、サンプルを小水槽中で試験した。ここで、ブタ空腸組織を水槽の底に固定し、そしてコーティングしたエイコーンナットを組織に接触させた。双方をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH=7.3〜7.5)中に浸らせたままにした。
【0077】
結果:3つのポリマー調製物および混合物(コントロール)について破損特性を試験した。表1に示す。混合物(最上の線)は、ポリカプロラクトン(分子量1,000,000;Scientific Polymer Products製)とL−DOPAとの2:1(w/w)混合物であった(DOPAとポリカプロラクトンとの間には反応は予想されず、そして観察されなかったことを留意すべきである)。最初のポリマー(コントロール)は、DOPAを全く付加しない、1:1の比率のブタジエン−co−無水マレイン酸である。他の2つは同じ骨格ポリマーであり、そして無水マレイン酸がDOPAで名目上50%置換しているもの、および無水マレイン酸がDOPAで名目上100%置換しているものであった。実際の置換は、理論量の約95%であった。
【0078】
表1において、DOPAでの置換を増加させることは、破壊するための破壊応力および引張り仕事の両方を増加させたことが理解され得る。さらに、湿潤および乾燥で試験した場合、最大のDOPA置換を有するサンプルは、本質的に同じ値を有した(「湿潤」データは示さず)。
【0079】
【表1】

この観察をよりよく理解するため、表1において使用した3つのブタジエン−無水マレイン酸ポリマーを、EUDRAGITTMの1グレード(ポリアクリル酸ポリマー(タイプRL100、分子量150,000))と無水フマル酸(FA)のオリゴマー(分子量200〜400)との2:1混合の調製物(必要に応じて、接着増強剤として、処方物CaOの25重量%の酸化カルシウム(CaO)を含めた)と、比較した。
【0080】
図1は、これらの物質の破壊応力を湿潤および乾燥の両方で比較する。RL100/FAPPおよびRL100/FAPP/CaOと比較した場合、95%のDOPAを接合した無水物は乾燥時では最も強固なポリマーではなかったが、これは湿潤時では最も強固であったことが理解され得る。湿潤時では、これは、約20%のみの破壊応力を失い、一方で、RL100/FAPP調製物は引張り応力の75%以上を失い、そしてRL100/FAPP/CaOは湿潤時に50%を超える引張り応力を失った。
【0081】
図2は、組成物を破損するのに必要とされる引張り仕事の量を図示する。この試験において、高度にDOPA置換されたポリマーは、RL100/FAPP物質の値に匹敵する値を有したが、DOPAポリマーは湿潤時で改善し、一方RL100/FAPP調製物は劇的に低下した。RL100/FAPP/CaOは乾燥時により悪化したが、湿潤時には最も増加させた。
【0082】
ブタジエンは、接着剤のための骨格として好ましかった。このことは、ブタジエンが無水マレイン酸基の間に強固なスペーサーを提供するので、反応がより少ない立体障害で起こり得るという可能性がある。かさ高い基(例えば、スチレン)は、L−DOPA基の完全な置換を防止する立体障害を生じ得る。同様に、エチレン基は既に反応したL−DOPA基の近位からの立体障害に起因して反応が完了へと進行するのを妨げ得る。
【0083】
実施例2〜5は、経口投与のために設計された錠剤における接着性外層として処方される、L−DOPA−ブタジエン無水マレイン酸(BMA)ポリマーに使用する研究を記載する。このL−DOPA−BMAポリマーは、重量平均分子量約15kDaを有し、ここで約95%のモノマーがL−DOPAで置換されている(これは、Spheromer IIITM生体接着性ポリマー(Spherics,Inc.)としても公知である)。図3は、錠剤の1実施形態を例示する。
【0084】
(実施例2.生体接着性ポリマーの外層を有するバリウム浸透化3層(trilayer)錠剤の蛍光透視研究)
製造方法:333mgのL−DOPA−ブタジエン無水マレイン酸(重量平均分子量約15kDa:約95%のモノマーがL−DOPAで置換されている:これはLDOPA−BMAまたはSpheromer IIITM生体接着性ポリマー(Spherics,Inc.)としても公知である)を、0.3287×0.8937の「00カプセル」ダイ(Natoli Engineering)に連続的に充填して第一外層を形成し、続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:粘度4000cps)と100mgの硫酸バリウムとのブレンド233mgを充填して内部層を形成し、続いて333mgのLDOPA−BMAの外層を形成して、3層錠剤を調製した。Globepharma Manual Tablet Compaction Machine(MTCM−1)を使用して1秒間2000psiで直接圧縮することにより、3層錠剤を調製した。
【0085】
試験:これらの錠剤を、24時間絶食させた雌性ビーグル犬(絶食)に投与した。また、これらの錠剤を、絶食させたビーグル犬で投与の30分前に固形飼料を給餌したビーグル犬(給餌)に投与した。自由にした犬において、6時間の過程にわたって蛍光顕微鏡で錠剤を連続して画像化した。
【0086】
結果:生体接着層中にSpheromer IIIを有する3層錠剤は、3.5時間まで絶食した犬の胃に残留し、そして給餌した犬の胃の中に6時間を超えて存在した。錠剤は、飼料物と混ざらず、そして小腸の中へと通過するまで同じ位置で胃粘膜と接触したままであった。
【0087】
(実施例3.SPORANOX(登録商標)錠剤、SpherazoleTMIR錠剤およびSpherazoleTMCR錠剤の比較)
SpherazoleTMIRは、イトラコナゾールの即時放出処方物であり、これは、先行製品であるSPORANOX(登録商標)よりも低い変動性を有する。この薬物物質イトラコナゾールを、薬物粒子のサイズを軽減するためSpheromer I生体接着性ポリマーと共に噴霧乾燥させ、そしてクロスカルメロース(優れた崩壊剤)、タルク(流動化剤)微結晶性セルロース(結合剤/充填剤)およびステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)を含む賦形剤とブレンドした。このブレンドをスラグ化(slugging)により乾式造粒し、かさ密度を増加させ、そして続いて製粉し、篩過しそして圧縮した。最終産物は、Sporonoxの用量と同じ、100mgのイトラコナゾールを含む900mgの楕円形錠剤である。錠剤の組成は、11%のイトラコナゾール;14.8%のSpheromer I;11.1%のHPMC 5cps(E5)、2%のタルク、19.7%の架橋化カルボキシメチルセルロースナトリウム(AcDiSOL)、1%のステアリン酸マグネシウム、および40.3%の微結晶性セルロースであった。「給餌」されたビーグル犬モデルにおいて試験した場合、IR処方物は、20,000±2000ng/ml*時間−1の範囲のAUC、1200±ng/mlのCmax、2±1時間のtmax、を有する。給餌した犬モデルにおいて、この性能は、Sporonoxの性能と同等であり、そしてこの先行製品Sporonoxより小さな変動である。
【0088】
比較によって、制御放出錠剤としてSpherazole CRを処方する。イトラコナゾールをEudragit E100と共に溶媒中に溶解し、そして噴霧乾燥するかまたはMCCコアの上に薬物層化するかのいずれかを行い、そして異なる粘度(5cps、50cps、100cps、4000cps)のHPMCおよび他の賦形剤(トウモロコシデンプン、ラクトース、微結晶性セルロースまたはMCC)とブレンドして、薬物放出を制御した。次いで、Spheromer IまたはSpheromer IIIおよび必要に応じてEudragit RS POから構成される外側の接着層の間に、速度制御性の内部薬物層を挟み、生体接着層の機械的特性を改善する。Spherazole CRは、給餌されたビーグル犬モデルにおいて試験した場合、速度制御性コアの特定の組成に依存して、20,000±2000ng/ml*時間−1の範囲のAUC、600±ng/mlのCmax、8〜20時間のtmaxを有する。CR製品の性能は、AUCに関してSpherazole IRおよびSporanoxと同様である。しかしながら、Cmaxは50%低く、このことは、副作用および薬物毒性の軽減に関する重要な利益である。延長されたtmaxは、先行製品およびIR製品について指示される投薬と比較して、qd投薬を容易にする。
【0089】
(実施例4.100mgの噴霧乾燥イトラコナゾールを有する、生体接着性の制御放出3層錠剤)
以下に列挙される処方物を使用して、実施例1に記載されるとおりに3層錠剤を調製し、そして給餌したビーグル犬モデルにおいて、一度に試験した(n=6/試験)。これらの錠剤は、低粘度で噴霧乾燥されたイトラコナゾールを100%(w/w)含む内部コア(333mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC E5(粘度5cps)を含み、30%(w/w)イトラコナゾール噴霧乾燥化組成物を形成した。これらの錠剤は、外層(2つの333mgの組成物から形成される)を含んだ。外層(333mg×2)は、66%(w/w)Spheromer III、33%(w/w)Polyplasdone XL(Crospovidone)、および1%(w/w)ステアリン酸マグネシウムを含んだ。
【0090】
CR処方物のAUCは、給餌した同じビーグル犬モデルにおいて、即時放出イトラコナゾール錠剤およびSPORANOX(登録商標)(Johnson & Johnson)についてのAUC範囲と同様であった。即時放出イトラコナゾール錠剤は、イトラコナゾールの即時放出処方物であり、これは、ブランド名処方物SPORANOX(登録商標)より低い変動性を有した。図12に示されるように、制御放出のイトラコナゾール錠剤についてのAUCは、20.971ng/(mL*時間)であり、Cmaxは602ng/mLであり、そしてTmaxは29時間であった。
【0091】
(実施例5:ゾビラックス錠剤(400mg)に対する、3つの400mgアシクロビル含有制御放出錠剤(2つは生体接着性であり、1つは非接着性である)の比較)
(錠剤)
74%(w/w)アシクロビル(400mg)、12.4%(w/w)HPMC100cps、6.2%(w/w)HPMC5cps、3.1%(w/w)グルタミン酸(酸味料)、3.1%(w/w)トウモロコシデンプン1500、および0.7%(w/w)ステアリン酸マグネシウムを含むコア(539mg)、ならびに99%(w/w)Spheromer IIIおよび1%(w/w)ステアリン酸マグネシウムを含む外側生体接着性層(250mg×2)を有する、錠剤1(ロット404−093)を調製した。
【0092】
67.6%(w/w)アシクロビル(400mg)、16.9%(w/w)Ethocel 10 Standard FP、11.3%(w/w)グルタミン酸(酸味料)、2.7%(w/w)タルク、0.5%(w/w)Aerosil 200、および1.0%(w/w)ステアリン酸マグネシウムを含むコア(600mg)、ならびに99%(w/w)Spheromer IIIおよび1%(w/w)ステアリン酸マグネシウムを含む外層(300mg×2)を有する、錠剤2(ロット404−134)を調製した。
【0093】
錠剤3(ロット404−182)は、外側の2層中のSpheromer IIIが非接着性ポリエチレンに置き換えられることを除いて、錠剤1と同じである。
【0094】
(インビトロ分解データ)
USP2のパドル装置において、SGF(pH1.2)中で100rpmでの分解について、3つの制御放出錠剤を各々試験した。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

(錠剤の薬理動態学的プロフィール)
「給餌」状態の6匹のビーグル犬に単回の400mg用量の各々の錠剤を投与し、そして以下の薬理動態学的プロフィールを得た。これらのプロフィールをゾビラックス(登録商標)(Glaxo Wellcome Inc.)錠剤(400mg)(経口アシクロビル処方物のブランド名)と比較した。各々のゾビラックス(登録商標)400mg錠剤は、400mgのアシクロビルおよび不活性成分であるステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、ポビドン、およびグリコール酸ナトリウムデンプンを含む。
【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

表4および表5に列挙したデータ、ならびに図13に示したデータは、錠剤1のAUCがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤についてのAUCとほぼ同等(すなわち、ゾビラックス(登録商標)400mg錠剤についてのAUCの98%)であったことを示す。図12に示されるように、Cmaxはゾビラックス(登録商標)400mg錠剤の62%であり、そしてTmaxは、ゾビラックスについての1.6時間から、錠剤1について3.7時間にシフトした。
【0099】
【表6】

表4および表6に列挙されたデータ、ならびに図14に示されたデータは、錠剤2のAUCがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤より高かったこと、Cmaxがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤の58%であったこと、そしてTmaxがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤についての1.6時間から、錠剤2について5.1時間にシフトしたことを示す。
【0100】
【表7】

表4および表7に列挙されたデータは、非接着性錠剤3のAUCがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤より低かったこと、Cmaxがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤の67%であったこと、およびTmaxがゾビラックス(登録商標)400mg錠剤についてのTmaxと同様であったことを示す。
【0101】
(実施例6:DL−DOPA−BMAとL−DOPA−BMAとの比較)
2つの異なる化合物DOPAを含む化合物を合成した。L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)およびD,L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DL−DOPA)の(50:50)ラセミ混合物。L−DOPAおよびDl−DOPAを各々、ブタジエン無水マレイン酸骨格に接合させた。約95%のモノマーをL−DOPAまたはDL−DOPAで置換した。L−DOPAポリマーおよびDL−DOPAポリマーの両方の粘膜接着性を、Stable Micro Systems Texture Analyzerおよび当業者に公知の実験設定を使用して、試験した。各々のポリマーに対して6つのサンプルを試験した。DL−DOPA−BMAポリマーについての平均破壊応力は、0.0139Nであり、標準偏差は0.0090Nであった。L−DOPA−BMAポリマーについての平均破壊応力は0.0134Nであり、標準偏差は0.0042Nであった。DL−DOPA−BMAポリマーについての平均の総引張り仕事は0.0045nJであり、標準偏差は0.0023nJであった。L−DOPA−BMAポリマーについての平均引張り仕事は0.005nJであり、標準偏差は0.0018nJであった。各々のポリマーに関するピークの分離力の間にも総引張り仕事の間のいずれにも統計上の差異はなかった。
【0102】
(実施例7:L−DOPA−BMAポリマーフィルムに対する異なる可塑剤の添加の比較)
生体接着性ポリマーに可塑剤を添加して、その可撓性を改善し得る。L−DOPA−BMAポリマーに対する異なる可塑剤の影響を研究した。約95%のモノマーをL−DOPAで置換した。
【0103】
方法:20mLのメタノール中に320mgのL−DOPA−BMAポリマーおよび80mgの可塑剤を溶解することによって、ポリマーフィルムを調製した。次いで、これらの溶液を、環状のテフロン(登録商標)コーティングされたウェル中で一晩ゆっくりとエバポレートした。フィルム形成後、このフィルムを取り出し、そして24時間凍結乾燥させて、メタノール残渣を全て取り除いた。乾燥させたフィルムを置き、そしてそのガラス転移温度(T)を、示差走査熱分析(DSC)により測定した。
【0104】
試験:Perkin Elmerアルミニウムプレートにおいて、Perkin Elmer Pyris 6 DSCで全ての測定を実施した。以下の熱プログラムを使用した:
1.恒温:10℃で2分
2.加熱:1分当たり10℃で10℃から200℃
3.冷却:1分当たり10℃で200℃から10℃
4.恒温:10℃で2分
5.加熱:1分当たり10℃で10℃から200℃
2回目の加熱サイクルより全てのT測定を行った。
【0105】
結果:この研究の結果を表8に要約する。
【0106】
【表8】

低いガラス転移温度を有するポリマーフィルムは、薄いフィルムで物質をコーティングする工程を含有するプロセスに望ましい。高レベルの透明度を有するポリマーは、しばしば、Tを下げるためにこれらのフィルム中に可塑剤の存在を必要とする。表8に示されるように、L−DOPA/BMAポリマーは非常に透明性のポリマーであり、151℃の高いガラス転移温度を有する。表8のデータによって示されるように、DBF、DBSおよびDIAの全ては、L−DOPA/BMAに対して可塑化効果を有し、一貫してTを少なくとも37%下げる。これら可塑剤の全てはジエステルであり、これらは水に不溶性である。しかしながら、最も強力な影響を有する可塑剤はTEC、PEG、およびF−68であった。これらは水溶性の可塑剤である。F−68はTを67%下げて50℃にした。
【0107】
開示された本発明は、記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に制限されず、なぜならこれらは変動し得るからであることが、理解される。また、本明細書中で使用される用語法は特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、そして本発明の範囲を限定することを意図されず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。
【0108】
当業者は、慣用的に過ぎない実験を使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、認めるかまたは確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、コントロール(ポリ(ブタジエン無水マレイン酸コポリマー))と比較した、生体接着性物質(ポリ(ブタジエン無水マレイン酸コポリマー)−DOPA)で形成された結合の破壊応力(mN/cm)を示す棒グラフである。
【図2】図2は、コントロール(ポリ(ブタジエン無水マレイン酸コポリマー))と比較した、生体接着性物質(ポリ(ブタジエン無水マレイン酸コポリマー)−DOPA)で形成された結合を破壊するのに必要とされる引張り仕事(nJ)の棒グラフである。
【図3】図3は、生体接着性の速度制御型の経口投薬処方物(BIOROD)の断面図である。
【図4】図4は、複数の微粒子(multiparticulate)を含むBIORODの断面図である。
【図5】図5は、放出が制限された開放部を有するBIORODの断面図である。
【図6】図6は、複数の薬物層および放出が制限された開放部を有するBIORODの断面図である。
【図7】図7は、浸透圧性BIOROD系の断面図である。
【図8】図8は、プッシュプル式浸透圧性BIOROD系の断面図である。
【図9】図9は、薬物層とポリマー層との間に不溶性プラグを有するプッシュプル式浸透圧性BIOROD系の断面図である。
【図10】図10は、ポリマー層の下に不溶性プラグを有するプッシュプル式浸透圧性BIOROD系の断面図である。
【図11】図11は、2パルス式BIOROD系の断面図である。
【図12】図12は、予め圧縮された活性な薬剤の挿入物を含む錠剤の断面図である。
【図13】図13は、給餌されたビーグル犬(1試験あたりn=6)に投薬された、制御放出性イトラコナゾールの経口投薬処方物についての、血漿中のイトラコナゾールの薬物動態学的プロフィールを示すグラフである。
【図14】図14は、錠剤1(生体接着性の制御性放出処方物)およびゾビラックス(登録商標)400mg錠剤(即時放出処方物)のAUC値、Cmax値およびTmax値についての比較を示すグラフである。
【図15】図15は、錠剤2(生体接着性の制御性放出処方物)およびゾビラックス(登録商標)400mg錠剤(即時放出処方物)のAUC値、Cmax値およびTmax値についての比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー骨格、および1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基を含む側鎖または側鎖基を含む、生体接着性物質。
【請求項2】
前記芳香族基がカテコールである、請求項1に記載の物質。
【請求項3】
前記芳香族基がカテコールの誘導体である、請求項2に記載の物質。
【請求項4】
前記カテコールの誘導体が3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)である、請求項3に記載の物質。
【請求項5】
前記ポリマー骨格が疎水性ポリマーである、請求項1に記載の物質。
【請求項6】
前記疎水性ポリマーが、ポリ無水物、ポリアクリラート、ポリオルトエステル、ポリエステル、およびポリヒドロキシ酸からなる群より選択される、請求項5に記載の物質。
【請求項7】
前記疎水性骨格がポリ無水物である、請求項6に記載の物質。
【請求項8】
前記ポリマー骨格におけるモノマーの少なくとも10%が芳香族基を含む側鎖を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項9】
前記ポリマー骨格におけるモノマーの少なくとも50%が芳香族基を含む側鎖を含む、請求項8に記載の物質。
【請求項10】
治療薬、予防薬、または診断薬をさらに含む、請求項1に記載の物質。
【請求項11】
前記治療薬がL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(レボドパ)である、請求項9に記載の物質。
【請求項12】
生体接着性物質を形成するための方法であって、該方法は、ポリマーを、1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基を含む化合物とか、または1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基を含むポリ(アミノ酸)、ペプチドもしくはタンパク質と反応させる工程を包含し、ここで、該ポリ(アミノ酸)、ペプチドもしくはタンパク質が20kDa以下の分子量を有する、方法。
【請求項13】
前記ポリマーがアミノ反応基を含み、そして前記化合物がアミノ基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが疎水性ポリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性ポリマーが、ポリ無水物、ポリアクリラート、ポリオルトエステル、ポリエステル、およびポリヒドロキシ酸からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記疎水性ポリマーがポリ無水物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記芳香族基を含む化合物がカテコール誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記カテコール誘導体が3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生体接着性物質を形成するための方法であって、該方法は、モノマーを、1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基を含む化合物とか、または1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基を含むポリ(アミノ酸)、ペプチドもしくはタンパク質と反応させる工程、および該モノマーを重合する工程を包含し、ここで、該ポリ(アミノ酸)、ペプチドもしくはタンパク質が20kDa以下の分子量を有する、方法。
【請求項20】
前記モノマーがアミノ反応基を含み、そして前記化合物がアミノ基を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−517776(P2007−517776A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544093(P2006−544093)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041783
【国際公開番号】WO2005/056708
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(504230372)スフェリックス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】