説明

包装容器用ストリップ及び紙包装容器

【課題】容器端面から吹き出す蒸気によってストリップが膨らむことがなく、また、広範囲な温度条件でシールすることができ、防水性及びバリア性を兼ね備え、減量化及び低コスト化されたるストリップ及び包装容器を提供する。
【解決手段】ストリップは、基材層と、基材層面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有するストリップであって、接着剤層が、エポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンとアクリル酸メチルとの反応生成物オリゴマーとから形成される硬化物であって、基材層がポリエステルからなり、ヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合されるポリオレフィンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器用ストリップ及び紙包装容器に関し、より詳細には、液体食品などの包装容器での包装材料の重ね合わせ部を強固に貼り合わせると共にその容器器壁端面を液体浸透から保護するストリップ、ストリップを用いた紙包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ジュース、ミネラルウォーターなどの飲料、流動食品などの紙包装容器は、例えば、繊維質基材(例えば、紙など)/ポリエチレン等の熱可塑性材料層の積層体の包装材料から得られる。包装容器の外観には、色彩、写真や模様、説明や商品名の文字などのデザインが印刷されている。
【0003】
液体食品などを充填した幾つかの紙製容器においては、例えば、バリア性プラスチック紙積層体のウェブ状包装材料の一端にストリップ(シーリングテープ)の一端をヒートシールし、長手方向の縦線ヒートシールによりチューブ状に成形し、チューブ状包装材料内に牛乳、ジュース又はその他の飲料の被充填物を充填し、チューブ状包装材料を横断方向に横線ヒートシールし、枕状の一次形状に成形し、一定間隔に個々に切断し、折目線に沿って折畳んでレンガ形状などの最終形状包装容器に成形される。
【0004】
屋根型紙製包装容器では、紙製包装材料を所定の形状に裁断し、容器縦方向にヒートシールしたブランクスを得、充填機内でブランクスの底をシールした後に上部開口から牛乳、ジュース又はその他の飲料の被充填物を充填し、上部をヒートシールして得られる。これらの包装材料には、その表面に包装容器製品の外観デザインが印刷される。
【0005】
包装材料の縁端が重ね合わされて容器が形成される場合、重ね合わせ部を強固に貼り合わせるために、また、形成された容器器壁の端面が内部液体に直接接触する場合、その端面から包装材料内部に内容物が浸透したり、外部に漏れたりしないように、容器の内部において重ね合わせ部の器壁端面をストリップが覆ってヒートシールされる。
【0006】
図1に紙包装容器例を示すように、レンガ形状紙包装容器1は、頂部2と底部に横シールのフィンが折目線に沿って折り畳まれ、頂部2から側壁を経て底部まで、縦シール3の重ね合わせ部が形成される。この縦シール3の重ね合わせ部には、器壁4の端面5を液体浸透から保護するストリップ6が、容器内面にシールされている。
【0007】
ストリップは、基材(中心)層とポリオレフィンヒートシール層とからなる。これらを積層する際、アンカーコート剤や接着剤が用いられている。
特定のエチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステルランダム共重合体を成分とする接着剤層により積層したストリップが提案されている。(特許文献1参照)
【0008】
【特許文献1】特開2001−354916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のように形成される包装容器において、シール不良が発生する場合がある。上記縦シール及び横シール工程の包装充填において、シール用ヒーターから吹き出す熱風、あるいは、誘導加熱、超音波シールシステムによる高温な熱や発熱によって、ストリップが保護する容器器壁の端面から、蒸気が吹き出しストリップが風船のように膨らむ等の不都合がある。
【0010】
お茶及びジュースなどの液体食品を包装容器に充填する場合、包装充填工程での液体食品の内容物の温度及び充填雰囲気温度に影響を受けて、被シール箇所の温度などのヒートシール条件が比較的高温から低温まで大幅に変動する。過熱された場合、ストリップ(テープ)にピンホールなどの欠損が生じ、逆に十分に加熱されない場合、テープが包装材料表面に融着せずシールされない。外因温度要素に影響されず、広範囲な温度条件でシールできる必要がある。
【0011】
また、ストリップは、包装材料の縁端の重ね合わせ部を強固に貼り合わせ、容器器壁の端面に内部液体が直接接触し端面から包装材料内部に浸透しないようにする防水性のほか、端面が包装材料のバリア性の不連続面であるために、バリア性を有する必要がある。
更に、基材とヒートシール層とを接着する接着剤を積層するために、全体的に増量され、材料コストが高くなり、減量化及び低コスト化が要求される。
【0012】
本発明は、ヒートシール熱によって容器端面から吹き出す蒸気によってストリップが風船のように膨らむことがなく、また、外因温度要素に影響されず広範囲な温度条件でシールすることができ、防水性及びバリア性を兼ね備え、しかも減量化及び低コスト化された包装容器用ストリップ及び紙包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決する本発明の包装容器用ストリップは、基材層と、この基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有するストリップであって、
この接着剤層が、エポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成され、この接着剤層の厚みが0.1μm以上10μm未満であり、
この基材層が、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、
このヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレン若しくは、ヒートシール性変性ポリエステルであることを特徴とする。
【0014】
この発明の好ましい態様において、この接着剤層の厚みが0.2μm以上3μm未満であり、より好ましくは、0.2μm以上1.5μm未満である。
【0015】
この発明の好ましい態様において、この多官能性化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は、それらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物である。
【0016】
この発明の好ましい態様において、このエポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂である、
【0017】
この発明の好ましい態様において、このヒートシール層が、メルトフローレート0.5〜20g/10分(190℃)、より好ましくは、メルトフローレート1〜10g/10分(190℃)のメタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレンからなる。
【0018】
この発明の好ましい態様において、このヒートシール層が、メルトフローレート1〜30g/10分(230℃)、より好ましくは、メルトフローレート2〜10g/10分(230℃)のメタロセン触媒を用いて重合されるポリプロピレンからなる。
【0019】
この本発明の紙包装容器は、包装材料の重ね合わせ部を貼り合わせて得られ、この重ね合わせ部の容器器壁端面が液体浸透からストリップによって保護される紙包装容器であって、このストリップが、基材層と、この基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有し、この接着剤層が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成され、このこの接着剤層の厚みが0.2μm以上1.5μm未満であり、
この基材層が、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、
ヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロペレン若しくは、ヒートシール性変性ポリエステルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明によれば、以下の有利な効果が得られる。
本発明の包装容器用ストリップでは、基材層に接着剤層を介してヒートシール層が積層され、その接着剤層が、エポキシ樹脂と、キシリレンジアミンとアシル多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとから形成された硬化物である。エポキシ樹脂とオリゴマーとの硬化物はエポキシ接着剤の特性を示して接着性を発現すると共に、酸素バリア性を示す。すなわち、エポキシ樹脂[C(0)C−C−R−C−C(0)C]のエポキシ基[−C(0)C]が、硬化によって、ポリアミンのオリゴマー[HN−R’−NH]のアミン基[−NH]と反応して、硬化物中の結合[−R−C−C(0H)C−NH−R’−]が生成する。この結合基は、酸素を捕捉する性質を持つと考えられる。
接着剤層自体が、酸素バリア性を有するので、高価な酸素バリア材料を使用する必要がなく、低コスト化に寄与することができる。
また、接着剤層自体が、酸素バリア性を有するので、酸素バリア層を不要になり、若しくは、各層の厚みを薄くして、減量化に寄与することができる。
【0021】
本発明の包装容器用ストリップ及び包装容器では、接着剤層の厚みが0.1μm以上10μm未満、好ましくは、0.2μm以上3μm未満、より好ましくは、0.2μm以上1.5μm未満、であるので、層厚が非常に薄く、基材層がポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、特にポリエステルではストリップ全体の機械的強度を適切なレベルに維持でき、硬化接着剤薄層と基材層との組合わせにより、シール工程における熱風、発熱による器壁端面からの蒸気の吹き出しがあってもストリップが風船のように膨らむことを防止することができる。
【0022】
本発明の包装容器用ストリップ及び包装容器では、ヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンであるので、包装充填工程での液体食品の内容物の温度及び充填雰囲気温度に影響を受けて、被シール箇所の温度などのヒートシール条件が比較的高温から低温まで大幅に変動しても、その外因温度要素に影響されず、広範囲な温度条件でシールできる。
【0023】
本発明の包装容器用ストリップ及び包装容器では、ヒートシール層が、ヒートシール性変性ポリエステル、例えば、テレフタル酸又はジメチレンテレフタレートと、エチレングリコール及びスピログリコールとの重合によるPETポリマーからなり、該ポリマーがエチレングリコールとスピログリコールとのモル比90〜50/10〜50を有し、ヒートシール性を有するヒートシール性変性ポリエステルであるので、PETの熱的機械的特性を有すると共に、通常の条件でシールできる。
【0024】
また、本発明の包装容器用ストリップ及び包装容器では、硬化した接着剤層がバリア性を示し、包装材料のバリア性の不連続点である端面を保護するバリア性を有する。
【0025】
本発明の包装容器用ストリップ及び包装容器では、包装材料の縁端の重ね合わせ部を強固に貼り合わせ、容器器壁の端面に内部液体が直接接触し端面から包装材料内部に浸透しないようにする防水性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の実施の形態の包装容器用ストリップは、基材層と、この基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有するストリップである。
【0027】
この発明において使用される基材層には、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシリレンアジパミド(N−MXD6)などのポリアミド系フィルム、ポリアクリロニトリル系フィルム、ポリ(メタ)アクリル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどがある。用途に応じて、適宜選択変更することができる。
この発明において、基材層が、好ましくは、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなる。
【0028】
この発明において、ヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて製造した線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はメタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンである。
上記のヒートシール層が一方側である時、この発明において使用される他方のヒートシール層には、例えば、ヒートシール性を有する各種可撓性ポリマーが使用できる。そのようなポリマーとして、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を用いて製造した線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)等)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等)、メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチル−ペンテン−1等が挙げられる。
【0029】
メタロセン触媒を用いて製造した線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)は、メタロセン触媒の存在下、エチレン及びコモノマーの炭素数が4〜8個のα−オレフィン、好ましくは1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数が6個以上のα−オレフィンを共重合することによって製造される。メタロセン触媒とは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属をπ電子系のシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基等を含有する不飽和環状化合物で挟んだ構造の化合物であるメタロセンと、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウム、アルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハライド等のアルミニウム化合物等の助触媒とを組合わせたものである。
【0030】
メタロセン触媒を用いて製造したポリプロピレンは、ヒートシール性の良好なポリマーであって、狭い分子量分布を有するポリプロピレン、若しくは、前記ポリプロピレンを少なくとも含有するブレンドポリマーがある。このメタロセン触媒としては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒である。
【0031】
この発明において使用される接着剤層は、エポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成された硬化物からなる。
【0032】
この発明において使用されるエポキシ樹脂は、例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
【0034】
この発明において使用される反応生成物オリゴマーは、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物である。
この多官能性化合物には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などがある。この発明において、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は、それらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が好ましい。
この多官能性化合物は、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン若しくはその誘導体との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成することができる。
【0035】
この発明の包装容器用ストリップの製造法の例においては、(1)ポリエステル若しくはポリオレフィンからなる基材層フィルムの少なくとも片面に、エポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーと、を主成分としてなる接着剤液を、1〜3グラム/m2の割合で、塗布し、(2)塗布されたこの接着剤液から、溶剤がある場合溶剤を除去し、乾燥して接着剤層を形成し、(3)この接着剤層の面に、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレンからなるヒートシール層を積層して積層体フィルムを形成し、(4)この積層体フィルムの接着剤層をエージング・硬化してストリップを得る。
【0036】
この発明において、塗布、乾燥、積層、硬化・エージング後の接着剤層の厚みが0.1μm以上10μm未満、好ましくは、0.2μm以上3μm未満、より好ましくは、0.2μm以上1.5μm未満、である。上記の下限未満では十分なガスバリア性、接着性、機械的強度がなく、逆に、上限を超えるとストリップが厚くなり過ぎ、コストが高くなるからである。
【0037】
この発明のストリップを製造する方法例での接着剤液の調製は、接着剤の性状により、溶媒を用いない場合、適切な有機溶媒および/または水を用いて接着剤を希釈する場合も可能である。
有機溶媒を用いる場合、適切な有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの非水溶性系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノールのいずれかと酢酸エチルとの混合液など比較的低沸点の溶媒である。
【0038】
接着剤液を基材層に塗布する際の塗装形式としては、ロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗りなどの一般的に使用される塗装形式がある。ロール塗布またはスプレー塗布が好ましい。ロールコートあるいはスプレー技術が適用できる。
この発明の好ましい態様において、この除去・乾燥の工程において、溶剤の沸点若しくは沸点より20度高い温度の雰囲気で行う。
【0039】
この発明のストリップを製造する方法例での積層は、接着剤層の面にヒートシール層フィルムを積層する場合、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート等公知の積層法を用いることができる。
ドライラミネート法の場合には、基材フィルムに接着剤液を、グラビアロールなどのロールにより塗布後、溶媒を乾燥させ直ちにその表面に新たなヒートシール層フィルムをニップロールにより貼り合わせることにより積層フィルムを得る。
ドライラミネート法の場合、積層後に必要に応じて室温〜60℃で一定時間のエージングを行い、硬化反応を完了する。すなわち、このエージング・硬化の工程において、室温〜60℃下、10時間〜3日の間、エージング・硬化する。一定時間のエージングが、十分な硬化物が形成され、高いガスバリア性を得る。
【0040】
ノンソルベントラミネート法の場合、基材フィルムを予め40〜100℃程度に加熱しておいた接着剤液を40〜120℃に加熱したグラビアロールなどのロールにより塗布後、直ちにその表面にヒートシール層フィルムを貼り合わせることにより積層フィルムを得ることができる。積層後に必要に応じて一定時間のエージングを行なうことが望ましい。
【0041】
押出しラミネート法の場合、基材フィルム材に接着剤(アンカーコート剤として)を塗布し、室温〜140℃で溶媒の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたヒートシール層を積層することにより積層フィルムを得ることができる。
【0042】
本発明のストリップは、例えば、厚さ40〜120ミクロン程度のフィルム状で用いられ、通常その幅が4〜30mm幅である。本発明のストリップは、外層が少なくとも1層のヒートシール層からなるが、2層以上のヒートシール層からなってもよい。ヒートシール層を2層以上とする場合、それら2層以上のヒートシール層は互いに同じ、若しくは、異なっている。又、ヒートシール層の厚さは互いに同じでも、異なっている。
【0043】
この発明の紙包装容器は、包装材料の重ね合わせ部を貼り合わせて得られ、この重ね合わせ部の容器器壁端面が液体浸透からストリップによって保護される紙包装容器であって、このストリップが、基材層と、この基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有し、この接着剤層が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物(好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は、それらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物)との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成され、好ましくは、この接着剤層の厚みが0.2μm以上1.5μm未満であり、この基材層が、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、このヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレン若しくは、ヒートシール性変性ポリエステルである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
[実施例1]
メタキシリレンジアミン1モルとアクリル酸メチル0.93モルと割合でそれらの反応生成物オリゴマーを得る。
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂50重量部と、及び上記反応生成物オリゴマー115重量部とを、メタノール/酢酸エチル=1/1の溶媒で、接着剤液を調製する。
接着剤液を層厚20μmのポリエステルフィルムの両面に塗布装置で塗布する。85℃で10秒乾燥させ、両面に層厚30μmのメタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをニップロールにより貼り合わせ、35℃で1日間エージングする。
【0045】
接着剤層の厚みが0.8μmであり全体の厚さ90ミクロンの積層フィルムを、幅が30mm幅にスリットし、ストリップを得る。得られたストリップを用いて、アルミ箔をバリア層とするプラスチック紙積層体のウェブ状包装材料の一端にヒートシールし、長手方向の縦線ヒートシールによりチューブ状に成形し、チューブ状包装材料内に水道水の被充填物を充填し、チューブ状包装材料を横断方向に横線ヒートシールし、枕状の一次形状に成形し、一定間隔に個々に切断し、折目線に沿って折畳んでレンガ形状包装容器を得る。
【0046】
[ストリップの評価]
ストリップが用いられた包装容器をチェックして、評価する。
縦シール及び横シール温度を段階ごとに設定し、水道水を充填して容器を成形し下記の要領でシールを確認する。
【0047】
成形された容器を切開し中身液体を出し、包材縦シール部の継ぎ目の段差を鋏で切断する。これによりストリップは縦方向に2分割され、一方が縦線シール(以下LSシールと称す)、残りの一方がストリップアプリケーターシール(以下SAシールと称す)である。各部位に小亀裂を入れた後、ストリップと包装材料の内面樹脂との接着を確認する。また、ストリップが風船のように膨張しているかも確認する。シールが十分であれば、はがれたストリップに包材の内面樹脂あるいは、板紙が剥がれたストリップに付着したまま剥がれる。接着不良であればシールテープのみがはがれる。
【0048】
シール温度SA(℃)を220〜260に、また、LS(℃)240〜380に、変動させてもシール状態は良好である。また、ストリップが風船のように膨張している形跡もない。
【0049】
[容器内の異臭確認]
容器内の水を利用して官能検査を実施した。なお、パネラーは5人とし、実施例1の容器の水と水道水とを試験サンプルとする。結果は優位差を見出すには至らない。
【0050】
[酸素透過率 (cc/m・day・atm)]
酸素透過率測定装置を使用して、アルミ箔バリア層を有する包装容器の酸素透過率を測定した。
高い酸素バリアー性を有するEVOHを使用した従来のストリップを用いた包装容器についての酸素透過率と比較する。EVOHを使用した従来のストリップを用いた包装容器の酸素透過率を1とすると、実施例1のストリップを用いた包装容器の酸素透過率は、1.37であり、機能上問題のないレベルであった。容器全体が良好なバリア性を示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1の接着剤を使用して、層厚1.2μmの接着剤層を形成したこと以外、実施例1と同様に、包装容器を成形し、評価する。結果は実施例1と同様に良好である。
酸素透過率では、EVOHを使用した従来のストリップを用いた包装容器の酸素透過率を1とすると、実施例2のストリップを用いた包装容器の酸素透過率は、1.33であり、機能上問題のないレベルであり、容器全体が良好なバリア性を示した。
【0052】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明の包装容器用ストリップ及び紙包装容器は、ジュースや牛乳などの液体食品などを充填した包装に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、この発明に用いられる包装容器例の斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・包装容器
2 ・・容器頂部
3 ・・重ね合わせ部
4 ・・容器器壁
5 ・・ストリップ
6 ・・端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有するストリップであって、
該接着剤層が、エポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成され、該接着剤層の厚みが0.1μm以上10μm未満であり、
該基材層が、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、
該ヒートシール層が、メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレン若しくは、ヒートシール性変性ポリエステルである、
包装容器用ストリップ。
【請求項2】
該接着剤層の厚みが0.2μm以上3μm未満である、
請求項1記載のストリップ。
【請求項3】
該接着剤層の厚みが0.2μm以上1.5μm未満である、
請求項1記載のストリップ。
【請求項4】
該多官能性化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は、それらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物である、
請求項1記載のストリップ。
【請求項5】
該エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂である、
請求項1記載のストリップ。
【請求項6】
該ヒートシール層が、メルトフローレート0.5〜20g/10分(190℃)のメタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレンからなる、
請求項1記載のストリップ。
【請求項7】
該ヒートシール層が、メルトフローレート1〜10g/10分(190℃)のメタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレンからなる、
請求項1記載のストリップ。
【請求項8】
該ヒートシール層が、メルトフローレート1〜30g/10分(230℃)のメタロセン触媒を用いて重合されるポリプロピレンからなる、
請求項1記載のストリップ。
【請求項9】
該ヒートシール層が、メルトフローレート2〜10g/10分(230℃)のメタロセン触媒を用いて重合されるポリプロピレンからなる、
請求項1記載のストリップ。
【請求項10】
包装材料の重ね合わせ部を張り合わせて得られ、該重ね合わせ部の容器器壁端面が液体浸透からストリップによって保護される紙包装容器であって、
該ストリップが、基材層と、該基材層の少なくとも片面に接着剤層を介して積層したヒートシール層とを有し、
該接着剤層が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂と、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物オリゴマーとを主成分として形成され、該接着剤層の厚みが0.2μm以上1.5μm未満であり、
該基材層が、ポリエステル若しくはポリオレフィンからなり、
メタロセン触媒を用いて重合される直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレン若しくは、ヒーシル性変性ポリエステルである、
紙包装容器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−18283(P2010−18283A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177861(P2008−177861)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】