【課題】 価格および形状制約の問題が生じず、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高い耐食性セラミック材料を提供すること。
【解決手段】 周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物を主体とすることで、耐食性のセラミックス材料が得られる。
【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】公開特許公報(A)
【公開番号】
特開2000−1362(P2000−1362A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発明の名称】耐食性セラミックス材料
【国際特許分類第7版】
C04B 35/00
35/50
【FI】
C04B 35/00 H
35/50
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】FD
【全頁数】6
【出願番号】特願平10−178167
【出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社
【発明者】

【発明者】

【発明者】

【発明者】

【代理人】弁理士(100099944)

【テーマコード(参考)】
4G030
【Fターム(参考)】
4G030 AA07 AA11 AA12 AA13 AA15 AA16 AA17 AA37 BA01 BA33 GA19 GA29
【請求項1】
周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物を主体とすることを特徴とする耐食性セラミックス材料。
【請求項2】
前記酸化物は、少なくとも一部が、周期律表3A族に属する元素と周期律表4A族に属する元素の複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性セラミックス材料。
【請求項3】
周期律表4A族に属する元素の量が、酸化物換算で全体の0.03〜70wt%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐食性セラミックス材料。
【請求項4】
周期律表3A族に属する元素がY、La、Ybのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐食性セラミックス材料。
【請求項5】
周期律表4A族に属する元素がTi、Zrのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の耐食性セラミックス材料。
【請求項6】
周期律表3A族に属する元素がYであり、周期律表4A族に属する元素がTiであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐食性セラミックス材料。
【請求項7】
中心線平均粗さが1.0μm以下、かつ表面に存在するポアが100個/mm
2以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の耐食性セラミックス材料。
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腐食性の高いハロゲン系プラズマに曝される雰囲気下で使用される部材、例えばプラズマエッチング装置等の半導体製造装置の内壁材、ベルジャー、チャンバー、サセプター、クランプリング、フォーカスリング等に適用可能な耐食性セラミックス材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセスにおいては、耐食性の高い環境下で用いられる部材が多い。例えばベルジャー、チャンバー、サセプター、クランプリング、フォーカスリング等が、CVD、ドライエッチング、チャンバー内クリーニング等の各工程において腐食性の高いガス、例えばフッ素系ガス(例えばSF
6、CF
4、NF
3等)や塩素系ガス(例えばBCl
3、Cl
2、SiCl
4等)を含む雰囲気中で使用される。これらのガスの他には必要に応じてO
2ガスやArガス等が混合される。このような腐食性の高い環境下で用いられる部材としては、従来、石英ガラス、炭化珪素、アルミナ、AlN、サファイア等が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来の材料のうち石英ガラスは、高純度部材が得られること、構成元素中の金属元素がSiでありチャンバー内を汚染しないことから多用されているが、プラズマによる腐食が著しく、部材寿命が非常に短いという問題がある。
【0004】
また、炭化珪素は半導体製造装置に用いられる場合、反応焼結炭化珪素が多く、未反応のSiが残留しているためプラズマによる腐食を受けた場合Siが消失し、SiC粒子が脱落してパーティクルの原因となる。また、SiC自体のプラズマによる腐食も著しい。アルミナ、AlNでは、上記2つの材料に比較すればプラズマ耐性は高いが、高温下、高出力プラズマ下では耐性が不十分でありパーティクルの原因となる。
【0005】
プラズマ耐性の最も高い材料の一つとしてサファイアがあるが、それでも高温下、高出力プラズマ下での耐性は満足いくものではない上に、単結晶であるため、形状の制約が大きくかつ高価であり、限定された用途にしか用いることができない。
【0006】
一方、半導体製造においては、減圧下でのプロセスが多いため、部材の表面が平滑でない、あるいは気孔が多数存在する場合、減圧時に脱ガス量が多くなり好ましくない。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、価格および形状制約の問題が生じず、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高い耐食性セラミック材料を提供すること、および、さらに減圧時の脱ガス量が少ない耐食性セラミックス材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物がプラズマ耐性に優れていることを見出した。そして、このような酸化物は通常多結晶体であり、単結晶のサファイアのような価格の問題および形状制約の問題は生じない。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物を主体とすることを特徴とする耐食性セラミックス材料を提供するものである。
【0010】
ここで、このような酸化物は少なくとも一部が、周期律表3A族に属する元素と周期律表4A族に属する元素の複合酸化物であることが好ましい。また、周期律表4A族に属する元素の量は、酸化物換算で全体の0.03〜70wt%であることが好ましい。さらに、周期律表3A族に属する元素はY、La、Ybのうち少なくとも1種であることが好ましく、周期律表4A族に属する元素はTi、Zrのうち少なくとも1種であることが好ましい。中でも、周期律表3A族に属する元素がYであり、周期律表4A族に属する元素がTiであることが特に好ましい。
【0011】
さらに本発明は、上記組成において、中心線平均粗さが1.0μm以下、かつ表面に存在するポアが100個/mm
2以下であることを特徴とする耐食性セラミックス材料を提供するものである。上記組成のセラミックス材料において、このように表面粗さおよびポアの量を規定することにより、優れたプラズマ耐性に加え、減圧時の脱ガスを極めて少なくすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の耐食性セラミックス材料は、周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物を主体とする。
【0013】
ここで、周期律表3A族に属する元素としては、Sc、Y、La、Nd、Er、Sm、Eu、Yb等を挙げることができ、これらの酸化物としては、Sc
2O
3、Y
2O
3、Nd
2O
3、Er
2O
3、Sm
2O
3・Er
2O
3、Yb
2O
3等がある。また、周期律表4A族に属する元素としては、Ti、Zr、Hfを挙げることができ、これらの酸化物としては、TiO
2、ZrO
2、HfO
2等がある。本発明はこれらを含む酸化物を主体とするセラミックス材料を得るものであり、これにより高いプラズマ耐性を得ることができる。酸化物の形態としては単独の酸化物でも複合酸化物でもよいが、一層高いプラズマ耐性を得るためには、3A族元素と4A族元素の複合酸化物が形成されていることが好ましい。このような複合酸化物は一部でも形成されていれば効果があるが、その量は多いほうが好ましい。
【0014】
周期律表3A族に属する元素としてはY、La、Ybのうち少なくとも1種であることが好ましく、周期律表4A族に属する元素としてはTi、Zrのうち少なくとも1種であることが好ましい。これら元素の組合せにより、Y
2TiO
5、Y
2Ti
2O
7、La
2TiO
5、La
2Ti
2O
7、La
4Ti
9O
24、Yb
2TiO
5、Yb
2Ti
2O
7、Y
2Zr
2O
7、La
2Zr
2O
7、Yb
2Zr
2O
7等の耐食性の高い複合酸化物が合成されるため好ましい。中でもYとTiとの複合酸化物は最も耐食性が高いため、YとTiとの組合せがより好ましい。
【0015】
周期律表4A族に属する元素の量は、酸化物換算で全体の0.03〜70wt%であることが好ましい。その量が0.03wt%未満であると合成される複合酸化物の量が少なく耐食性を向上する効果が小さく、70wt%を超えると単独で存在する4A族元素の量が多くなり、やはり耐食性向上効果が小さくなる。4A族に属する元素のより好ましい範囲は、0.5〜65wt%であり、さらに好ましくは5〜60wt%である。
【0016】
以上のような組成のセラミックス材料において、減圧雰囲気下における脱ガス量をより少なくする観点からは、表面粗さは小さいほどよく、中心線平均粗さ(Ra)が1.0μm以下であることが好ましい。Raが1.0μmを超えると、表面の凹凸部において脱ガスが著しくなり、そこにプラズマが集中して耐食性が低下してしまう。より好ましくはRaが0.5μm以下である。なお、中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601「表面粗さ」に従って測定される。
【0017】
また、同様に、減圧雰囲気下における脱ガス量をより少なくする観点から、表面に存在するポアが100個/mm
2以下であることが好ましい。表面に存在するポアが100個/mm
2を超えると、ポアからの脱ガスが著しくなり、ポア周辺部へのプラズマの集中が著しくなり耐食性が低下してしまう。より好ましくは70個/mm
2以下である。
【0018】
次に、本発明に係る耐食性セラミックス材料の製造方法について説明する。本発明の耐食性セラミックス材料は、基本的には原料粉末を成形および焼成して製造される。原料粉末は98%以上の純度のものが好ましく、99%以上が一層好ましい。純度が98%未満であると、焼結体中に存在する不純物のため耐食性が低下し、かつチャンバー内が汚染されるため好ましくない。また、原料粉末の粒径は5μm以下が好ましく、3μm以下が一層好ましい。粒径が5μmより大きいと焼結の駆動力が低下し、緻密な焼結体を得ることが難しい。
【0019】
出発原料の調合は、常法に従って行うことができる。例えば、所定の配合の原料粉末にアルコール等の有機溶媒または水を加え、ボールミルで混合後、乾燥する方法、所定の配合の塩類、アルコキシド等の溶液から共沈物を分離する方法がある。
【0020】
これら原料の混合物には、より緻密化を容易にするため、SiO
2、MgOなどの焼結助剤を添加してもよい。焼結助剤の添加形態に関しては、酸化物粉末、塩類、アルコキシド等、どのような形態であってもよく、特に限定されない。
【0021】
このようにして得られた混合粉末を一軸プレスまたは冷間静水圧プレス(CIP)によって所定形状に成形する。次いで1100〜1900℃で焼成する。焼成雰囲気は、大気中、真空中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中のいずれでもよい。または、1100〜1900℃で焼成した後、酸素雰囲気中又は還元雰囲気中で、温度900〜1900℃、圧力1000kgf/cm
2以上の熱間静水圧プレス(HIP)処理を行う。これにより耐食性セラミックス焼結体が得られる。焼成またはHIP処理時間は特に限定しないが、2〜4時間程度でよい。焼成温度が1100℃未満であると、緻密化が不十分となり、脱ガス量が多くなり好ましくない。一方、1900℃を超えると分解するおそれがあり好ましくない。HIP処理温度が900℃未満、圧力が1000kgf/cm
2未満ではHIP処理の効果が小さく好ましくなく、1900℃を超えると分解するおそれがあり好ましくない。
【0022】
なお、周期律表4A族元素がTiの場合、還元雰囲気中で処理すると酸素空孔ができ、導電性が付与されるが、耐食性は未還元品と遜色なく、耐食性および導電性を必要とする部材として使用可能である。
【0023】
【実施例】
(実施例1〜34)表1、2に示すように、純度98%以上、平均粒径3μmの周期律表3A族元素の酸化物と、純度98%以上、平均粒径2μmの周期律表4A族元素の酸化物を合計で250g秤量し、ポリエチレンポット中にそれぞれの粉末と、イオン交換水300gと、φ10mmの鉄芯入りナイロンボール250gを入れ、必要に応じて焼結助剤としてSiO
2またはMgOを0.5wt%添加し、16時間混合した。得られたスラリーをロータリーエバポレーターで減圧乾燥した後、得られた粉末を#100のナイロンメッシュでメッシュパスした。この粉末をφ50mmの金型を用いて圧力10kgf/cm
2で厚さ6mmに一次成形した後、圧力1200kgf/cm
2で冷間静水圧プレス成形して成形体を得た。得られた成形体を表1、表2に示す温度で3時間焼成した。得られた焼結体の一部は、表1、表2の雰囲気および温度・圧力条件で2時間のHIP処理を行った。このようにして得られたセラミックス材料について、表面を加工し、中心線平均粗さ(Ra)およびポア数を測定した。中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601「表面粗さ」に従って測定した。ポア数は、表面の任意の箇所を走査型電子顕微鏡写真で撮影して測定した。その後、RIE(反応性イオンエッチング)装置を用いてNF
3プラズマまたはBCl
3プラズマに4時間暴露試験を行い、エッチングレートを測定した。エッチングレートは、試料表面の一部をポリイミドテープでマスキングして、マスクのある面と内面の段差を段差計で測定することにより求めた。
【0024】
表1、表2に示すように、本発明に係る耐食性セラミックス材料は、エッチングレートが低く、耐食性が高いことが確認された。特に、Raが1.0μm以下であり、かつ表面に存在するポアが100個/mm
2以下である実施例1〜8、11〜25および28〜34は脱ガス量が少ないため特にエッチングレートが低かった。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
(比較例35〜50)表3、表4に示すように、本発明の範囲外とした場合について、実施例と同様の手順により試料を作製し、中心線平均粗さ(Ra)、ポア数、エッチングレートを測定した。その結果、表3に示すようにエッチングレートが実施例よりも大きく、耐食性が低いことが確認された。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、価格および形状制約の問題が生じず、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高い耐食性セラミック材料、および、さらに減圧時の脱ガス量が少なく特にプラズマに対する耐性が高い耐食性セラミックス材料を得ることができる。したがって、本発明の耐食性セラミックス材料は、腐食性の高いハロゲン系プラズマに曝される雰囲気下で使用される部材、例えばプラズマエッチング装置等の半導体製造装置の内壁材、ベルジャー、チャンバー、サセプター、クランプリング、フォーカスリング等に好適に用いることができる。