特開2000-1633 「粉体塗料組成物」 (武田薬品工業)
要約
【課題】各種粉体塗料に対して優れた分散性を示し、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料本来の特性を保持したまま、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良することができる粉体塗膜組成物を提供すること。
【解決手段】内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層であり、最外層がTg60℃以上のポリマー層であって、該Tg20℃以下のポリマー層を形成する単量体が分子内に不飽和二重結合を有するものであり、且つその単量体成分中架橋性単量体が該ポリマーに対し0.3〜5重量部およびグラフト性単量体が1〜10重量%の範囲でそれぞれ使用されている多層ポリマー粒子を、それ以外の組成の合計量100重量部に対し1〜30重量部分散させた粉体塗料用組成物が上記課題を解決した。
書誌事項
【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】公開特許公報(A)
【公開番号】特開2000−1633(P2000−1633A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発明の名称】粉体塗料組成物
【国際特許分類第7版】
 C09D 5/03
 B05D 7/24 302
 C08F291/00
 C09D133/00
 163/00
 167/00
 //(C09D133/00
 151:00 )
 (C09D163/00
 151:00 )
 (C09D167/00
 151:00 )
【FI】
 C09D 5/03
 B05D 7/24 302 V
 C08F291/00
 C09D133/00
 163/00
 167/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】
【全頁数】14
【出願番号】特願平11−82383
【出願日】平成11年3月25日(1999.3.25)
【優先権主張番号】特願平10−100455
【優先日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【優先権主張国】日本(JP)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社
【発明者】
【発明者】
【発明者】
【代理人】弁理士(100071973)
特許請求の範囲
【請求項1】
 内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層であり、最外層がTg60℃以上のポリマー層であって、該Tg20℃以下のポリマー層を形成する単量体成分が分子内に不飽和二重結合を有するものであり、且つその単量体成分中、架橋性単量体が該ポリマー層に対して0.3〜5重量%およびグラフト性単量体が1〜10重量%の範囲でそれぞれ使用されている多層ポリマー粒子を、それ以外の組成の合計100重量部に対し1〜30重量部分散させてなることを特徴とする粉体塗料組成物。
【請求項2】
 多層ポリマー粒子の最外層の0.5〜35重量%が分子中に少なくとも1つ以上のカルボキシル基又はヒドロキシル基を含む単量体で変性されたものである請求項1記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
 粉体塗料がポリエステル系粉体塗料である請求項1又は2記載の粉体塗料組成物。
【請求項4】
 ポリエステル系粉体塗料がエポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料である請求項3記載の粉体塗料組成物。
【請求項5】
 多層ポリマー粒子の重量平均粒子径が0.05μm〜5μmである請求項1〜4のいずれかに記載の粉体塗料組成物。
【請求項6】
 多層ポリマー粒子におけるTgが20℃以下のポリマー層の比率が多層ポリマー粒子全体に対して30〜98重量%である請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料組成物。
【請求項7】
 被塗物に粉体塗装を行うことにより第一塗膜を形成した後、第一塗膜上に粉体塗装を行うことにより第二塗膜を形成することにより得られる複層塗膜において、第一塗膜及び/又は第二塗膜が請求項1記載の粉体塗料組成物から得られるものであることを特徴とする複層塗膜。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
 本発明は加工性や耐衝撃性に優れる熱硬化性粉体塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
 近年、オゾン層破壊や温暖化、酸性雨等の地球的規模の環境破壊から、国際的に地球環境汚染対策が叫ばれており、これに伴い、各国政府により、環境保護の観点から各種規制が行われるようになってきた。その中で、有機溶剤の大気中への放出は大きな問題になっており、各業界においても脱溶剤化への流れが活発になっている。塗料業界においても従来の溶剤型塗料に代わり得るものとして粉体塗料への期待が高まっている。しかしながら、粉体塗料の塗膜性能は溶剤型塗料と比較して、必ずしも満足のいくものとはなっていない。粉体塗料は溶剤型塗料と比較して、無溶剤であること以外に、1コートにより30〜500μの厚膜塗装ができるという特徴を有しているが、その反面、塗膜が厚くなることにより、塗膜の加工性が低下するという問題点がある。また、従来から、道路資材や建築資材等、耐候性が必要とされる分野においてはポリエステル系粉体塗料が使用されているが、近年、メンテナンスフリーの観点から、更に高度の耐候性を示すポリエステル系粉体塗料が検討されている。ところが、この様な高耐候性ポリエステル系粉体塗料においても塗膜の加工性が低下するという問題点を有している。また、塗装後、後加工を行うプレコートメタル用塗料としてエポキシ系やポリエステル系粉体塗料が種々検討されており、塗装後の厳しい加工条件に耐えうる粉体塗料の開発要求も高まっている。いずれの粉体塗料系においても塗膜物性が溶剤系塗料に近づいてきたとはいえ、塗膜の加工性や耐衝撃性の様な塗膜の靱性と、塗膜の外観や耐候性、耐ブロッキング性等の粉体特性との間において十分にバランスの取れたものになっているとは言い難いのが現状である。
【0003】
 一方、コアがゴム状ポリマーからなり、シェルがガラス状ポリマーからなるコアシェルポリマーに代表される多層ポリマー粒子は従来から知られている。この様なコアシェルポリマー粒子を粉体塗料に応用した例が特公昭62−25709号特開平9−12926号に示されている。特公昭62−25709号では、トルエン不溶分50%以上のゴム粒子をエポキシアクリレート、モノエチレン性グリシジルエステル、及びエチレン性単量体でグラフト重合したゴムを3〜35重量部含有する、耐衝撃性に優れた粉体塗料用エポキシ樹脂組成物に関する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、モノエチレン性グリシジルエステル由来のグリシジル基間の反応性が高いため、粒子の製造中、もしくは貯蔵中にエポキシ基の開環、架橋反応を起こしやすく、その結果、粉体塗料への分散性や塗膜外観が悪化するという問題点がある。特開平9−12926号では、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系共重合体と多価カルボン酸系化合物と、ガラス転移温度(Tg)20℃以下のコア及びTg40℃以上のグリシジル基を含まないシェルからなるゴム粒子を含む、耐衝撃性、耐チッピング性に優れた熱硬化性粉体塗料組成物に関する技術が開示されている。この技術においては、粒子製造時に架橋性単量体やグラフト性単量体を使用していないコアシェル粒子や市販の耐衝撃改良剤が使用されており、耐衝撃性や耐チッピング性については改良効果が認められるものの、塗膜の加工性の改良については、満足な効果が得られず、また、粉体塗料の耐ブロッキング性が低下する事があるため、その適応範囲が限定されるという問題点を有している。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点に鑑み、各種粉体塗料に対して優れた分散性を示し、また、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料本来の特性を保持したまま、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良することができる粉体塗料組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
 本発明者らは上記の問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層であって、最外層がTg60℃以上のポリマー層であり、該Tg20℃以下のポリマー層を形成する単量体成分が分子内に不飽和二重結合を有するものであり、且つその単量体成分中、架橋性単量体が該ポリマー層に対して0.3〜5重量%およびグラフト性単量体が1〜10重量%の範囲でそれぞれ使用されている多層ポリマー粒子を、それ以外の組成の合計100重量部に対して1〜30重量部分散させてなる粉体塗料組成物が、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料の特性を保持したまま、優れた塗膜の加工性や耐衝撃性などを備えていることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(1)内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層であり、最外層がTg60℃以上のポリマー層であって、該Tg20℃以下のポリマー層を形成する単量体成分が分子内に不飽和二重結合を有するものであり、且つその単量体成分中、架橋性単量体が該ポリマー層に対して0.3〜5重量%およびグラフト性単量体が1〜10重量%の範囲でそれぞれ使用されている多層ポリマー粒子を、それ以外の組成の合計100重量部に対し1〜30重量部分散させてなることを特徴とする粉体塗料組成物、(2)多層ポリマー粒子の最外層の0.5〜35重量%が分子中に少なくとも1つ以上のカルボキシル基又はヒドロキシル基を含む単量体で変性されたものである前記(1)記載の粉体塗料組成物、(3)粉体塗料がポリエステル系粉体塗料である前記(1)又は(2)記載の粉体塗料組成物、(4)ポリエステル系粉体塗料がエポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料である前記(3)記載の粉体塗料組成物、(5)多層ポリマー粒子の重量平均粒子径が0.05μm〜5μmである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の粉体塗料組成物、(6)多層ポリマー粒子におけるTgが20℃以下のポリマー層の比率が多層ポリマー粒子全体に対して30〜98重量%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の粉体塗料組成物、および(7)被塗物に粉体塗装を行うことにより第一塗膜を形成した後、第一塗膜上に粉体塗装を行うことにより第二塗膜を形成することにより得られる複層塗膜において、第一塗膜及び/又は第二塗膜が前記(1)記載の粉体塗料組成物から得られるものであることを特徴とする複層塗膜、である。
【0006】
【発明の実施の形態】
 本発明において用いられる多層ポリマー粒子は、先の段階の重合体の存在下、後の段階の単量体が順次、シード重合するような連続した多段階乳化重合法によって得ることができる。まず、乳化重合によってシードラテックスを調製し、次いで、第一層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより第一層を合成する。さらに、第二層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより、第二層を合成し、これらの操作を逐次繰り返し行った後、最外層を形成する単量体を添加し、最外層を合成することにより所望の多層ポリマー粒子を得ることができる。以下、多層ポリマー粒子の製造について詳細に述べる。まず、最初のシード粒子の重合は、要求特性に応じた単量体を一括添加することにより行われる。単量体成分としてはメチルメタクリレート、エチルアクリレートが好ましく用いられるが、むろんこれに限定されるものではない。本発明に用いられる多層ポリマー粒子は内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層からなり、このTg20℃以下のポリマー層を形成する単量体成分が分子内に不飽和二重結合を有するものであり、その単量体成分中、架橋性単量体が該ポリマーに対して0.3〜5重量%およびグラフト性単量体が1〜10重量%の範囲でそれぞれ使用されており、更に、最外層がTg60℃以上のポリマー層からなるものである。Tgが20℃以下のポリマー層は、シードラテックスあるいは前段階の(多層)ポリマー粒子の存在下、該ポリマーを形成する単量体をシード重合させることにより形成される。本発明の多層ポリマー粒子製造において用いられるガラス転移温度(Tg)は、多層重合体ポリマーの各層ごとに、各ポリマーを構成する各々の単量体の単独重合体のTgnより、式(1)、
【0007】
【化1】
イメージ ID=000002

 ( 式中Tgnは、各成分の単独重合体の絶対温度で表したTgであり、Wnは各成分の重量分率である。)から計算により求められる値を使用する。この式1において用いられる各成分の単独重合体のTgnとしては、例えばブチルアクリレートでは233K(−40℃)、メチルメタクリレートでは403K(130℃)である。Tgが20℃以下のポリマー層のシード重合において用いられる不飽和二重結合を有する単量体は分子中に不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物が挙げられる。そのなかでTgが20℃以下のポリマーを形成しうる単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類やエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートを挙げることができる。これらのうち、ブタジエンやブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。また、Tgが20℃を超えない範囲であれば、これらと共重合可能な単量体、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等を共重合させることもできる。これらの内、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートが好適に使用される。
【0008】
 本発明のTgが20℃以下のポリマー層の重合では、共重合性単量体として、上記のような単量体の他に、所定量の架橋性単量体及びグラフト性単量体が必須成分として使用される。架橋性単量体の使用量としては、Tgが20℃以下のポリマーを形成する単量体に対し、0.3〜5重量%、好ましくは0.35〜3重量%、グラフト性単量体の使用量としては、Tgが20℃以下のポリマー層を形成する単量体に対し、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。架橋性単量体及び/又はグラフト性単量体の使用量がこれらより少ない場合、塗膜の外観や、粉体塗料の粉砕性、耐ブロッキング性が低下し、また、十分な加工性が得られない。架橋性単量体及び/又はグラフト性単量体の使用量がこれらより多い場合、得られる塗膜の加工性や耐衝撃性などの改良効果が得られにくくなる。本発明において用いられる架橋性単量体は、分子中に少なくとも2つ以上の同種の重合性基を有するものであり、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等を挙げることができる。これらの内、特に、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。
【0009】
 本発明において用いられるグラフト性単量体は、分子中に少なくとも2つ以上の反応性の異なる重合性基を有するものであり、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジ アリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができる。これらの内、特に、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。本発明において用いられる多層ポリマー粒子におけるTgが20℃以下のポリマー層の比率は多層ポリマー粒子全体に対して30〜98重量%、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%の範囲である。このTgが20℃以下のポリマー層の比率がこれらの値より少ない場合は所望の加工性や耐衝撃性における改良効果が得られないことがあり、これらの値よりも多い場合には粉体塗料を構成する樹脂成分における分散性が低下し、所望の加工性や耐衝撃性における改良効果が得られないことがある。また、粉砕後、粉体塗料の耐ブロッキングが起こりやすくなり、粉体塗料の貯蔵安定性が低下することがある。
【0010】
 Tg60℃以上の最外層の重合は上述のように前段階までのラテックスを調製した後、その存在下、Tg60℃以上のポリマー層を形成する単量体をシード重合させることにより、Tgが60℃以上のポリマー層からなる最外層を形成させることができる。Tg60℃以上の最外層のシード重合において用いられる単量体としてはTg60℃以上のポリマーを形成する単量体であれば良く、例えば、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートの様なアルキルメタクリレート、スチレン等の芳香族ビニルを用いることができる。これらの内、メチルメタクリレートとスチレンが好ましく用いられる。また、Tgが60℃以上となるものであれば、これらと共重合可能な単量体、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、等を共重合させることができる。これらの内、特に、エチルアクリレートとアクリロニトリルが好ましく用いられる。
【0011】
 Tg60℃以上の最外層のシード重合において用いられる単量体として、Tg20℃以下のポリマーの重合と同様に架橋性単量体を用いても良い。この場合、架橋性単量体としてはTg20℃以下のポリマー層を構成する架橋性単量体と同様の架橋性単量体を用いることができる。また、粉体塗料の結着樹脂もしくは硬化剤と反応性を有する官能基、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基などを有する単量体で、Tg60℃以上のポリマーからなる最外層を変性することにより、加工性や耐衝撃性を更に向上させることができる。カルボキシル基を有する単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有する単量体としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、カルボキシル基を有する単量体としてはメタクリル酸が、ヒドロキシル基を有する単量体としては2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好適に用いられる。これら官能基を有する単量体の使用量は、Tg60℃以上のポリマーからなる最外層を形成する単量体に対して0.5〜35重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%である。これら官能基を有する単量体の使用量がこれより多い場合、多層ポリマー粒子製造の際の固液分離が困難になるばかりでなく、粉体塗料への分散性が大きく低下してしまうことがある。
【0012】
 この様にして重合された多層ポリマー粒子の重量平均粒子径は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmである。粒子径がこれよりも小さい場合、粉体塗料の溶融時の粘度が上昇し、良好な塗膜外観が得られなくなることがある。逆に、これより大きな場合には所望の加工性や耐衝撃性の改良効果が得られなくなることがある。本発明に於ける粒子径とは多層ポリマー粒子製造時のラテックス状態に於ける、多層ポリマー粒子1粒子あたりの重量平均粒子径を表しており、例えば、大塚電子(株)製動的光散乱測定装置(LPA−3000/LPA−3100)を用い、動的光散乱法により測定することができる。本発明の多層ポリマー粒子は上記のような重合方法により得られた多層ポリマーラテックスをスプレー・ドライヤーによる噴霧乾燥により微粉状の粉体として取り出すことができる。また、一旦凍結後、融解し、重合体粒子を分離した後、遠心脱水、乾燥を行い、粒状フレーク状又は粉体として取り出すこともできるが、本発明ではスプレー・ドライヤーによる噴霧乾燥により微粉状の粉体として取り出すことが好ましい。この場合、重量平均粒子径は、通常10〜60μm、好ましくは15〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。本発明の多層ポリマー粒子を重合する際、使用する重合開始剤としては、たとえば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル等のアゾ系開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤を挙げることができる。また、使用する界面活性剤としては、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート等のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0013】
 本発明の粉体塗料組成物は粉体塗料を構成する結着樹脂、硬化剤、多層ポリマー粒子、顔料、及び各種添加剤から成るものであり、多層ポリマー粒子の使用量は、それ以外の組成の合計量100重量部に対し通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部である。多層ポリマー粒子の使用量がこれらの値より少ない場合、加工性の改良効果が得られないことがあり、逆にこれらの値より多い場合、溶融粘度が上昇するため、平滑な塗膜が得られず、外観性が低下することがある。本発明において用いられる粉体塗料は、結着樹脂としてポリエステル樹脂を基本成分とするポリエステル系粉体塗料、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂からなるエポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、アクリル樹脂を基本成分とするアクリル系粉体塗料、エポキシ樹脂を基本成分とするエポキシ系粉体塗料、更に、フェノール樹脂やユリア樹脂、メラミン樹脂を結着樹脂とする粉体塗料等が挙げられる。これらの内、ポリエステル系粉体塗料、エポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、アクリル系粉体塗料、エポキシ系粉体塗料が好適に用いられ、ポリエステル系粉体塗料が特に好ましく用いられる。
【0014】
 本発明において用いられるポリエステル系粉体塗料は当業者間においてポリエステル系粉体塗料として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、一分子中に2つ以上の水酸基を有し、軟化点が60〜150℃でかつ、数平均分子量が1000〜20000の範囲にあるポリエステル樹脂が結着樹脂として好適に使用される。この際、硬化剤については、特に限定されるものではなく、一般的に使用される硬化剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等脂肪族、芳香族又は脂環族イソシアネート、あるいはこれらイソシアネートと活性水素基を有する化合物との付加物、更にはこれらの化合物中のイソシアネート基をメタノール、イソプロパノール、ε−カプロラクタム等のブロック化剤でブロックしたブロックイソシアネート等を使用することができる。活性水素基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの様な低分子量化合物やポリオール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミドの様な各種高分子量物が挙げられる。また、ウレトジオン結合を有するノン・ブロックイソシアネートを使用することもできる。また、本発明において用いられるポリエステル系粉体塗料には一分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)により硬化させる塗料や、グリシジル基含有アクリル樹脂により硬化させる塗料も包まれる。 本発明におけるエポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料についても上記ポリエステル系粉体塗料と同様に、当業者間においてポリエステル−エポキシ系粉体塗料と称して用いられている粉体塗料であれば、特に限定されるものではない。例えば、一分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂と一分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を配合、硬化させるものが好適に使用される。この場合、ポリエステル樹脂が30重量%以上含まれた物が一般的に用いられる。
【0015】
 本発明において用いられるエポキシ系粉体塗料は、当業者間においてエポキシ系粉体塗料として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する数平均分子量700〜2800、エポキシ当量600〜2000かつ軟化点が60〜150℃の常温において固体状のエポキシ樹脂が結着樹脂として好適に使用される。この際、硬化剤については、特に限定されるものではなく、一般的に使用される硬化剤、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の無水酸類等が用いられる。また、一分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を上記硬化剤と併用することもできる。本発明において用いられるアクリル系粉体塗料は上記、ポリエステル系、エポキシ系粉体塗料と同様に、当業者間においてアクリル系粉体塗料と称して用いられている粉体塗料であれば、特に限定されるものではない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とグリシジル基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の共重合により合成された軟化点60℃〜150℃の(メタ)アクリル系共重合体が結着樹脂として好適に使用される。この際、硬化剤についても、特に限定されるものではなく、一般的に使用される硬化剤、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の無水酸類、ドデカンジカルボン酸等のジカルボン酸類、ジシアンジアミド等が使用できる。また、一分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を硬化剤として用いることもできる。
【0016】
 また、メタアクリル酸エステル系単量体と水酸基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の共重合により合成されたアクリル酸エステル系結着樹脂をブロックイソシアネート、ウレトジオンを含むノンブロックイソシアネートなどイソシアネート系硬化剤で硬化させる塗料も含まれる。本発明において使用される粉体塗料には、上記結着樹脂、硬化剤の他に、トリフェニルホスフィン等の硬化促進剤や酸化チタンなどの顔料、アクリルオリゴマーやシリコン等の流展剤、ベンゾイン等発泡防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加することがでる。本発明の粉体塗料組成物は、通常、当業者間において広く使用されている製造装置を用い、本発明の多層ポリマー粒子、上記結着樹脂、硬化剤、さらに必要に応じて各種添加剤を乾式混合し、結着樹脂の軟化点以上の温度、具体的には50〜130%℃、好ましくは60〜110℃で溶融混練後、必要に応じて粉砕、分級を行うことにより製造される。また、結着樹脂合成前のモノマーや、合成中のオリゴマーに多層ポリマー粒子を配合もしくは分散させ、その後、更に結着樹脂の合成を行ったり、あるいは合成終了後、多層ポリマー粒子と結着樹脂を溶融混練する事により、あらかじめ多層ポリマー粒子が分散した結着樹脂を調製し、この結着樹脂と硬化剤、及び各種添加剤を配合、溶融混練後、粉砕、分級を行うことにより製造することもできる。
【0017】
 本発明の粉体塗料組成物の乾式混合においては、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ハイスピードミキサー、ナウターミキサー等の各種ミキサーを用いることができる。溶融混練に用いられる装置としては加熱ロール機、加熱ニーダー機、エクストルーダー等が用いられる。粉砕機としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機が、分級機としては振動ふるい等が用いられる。得られた粉体塗料の重量平均粒子径は特に制限されないが、10〜100μm、好ましくは20〜80μmの範囲が好適である。上記製造法により得られた粉体塗料組成物は、例えば静電塗装法、流動浸漬法等、一般的な塗装方法により被着体に塗布した後、結着樹脂の融点以上、具体的には100〜280℃、好ましくは130〜240℃に加熱、硬化させることにより塗膜を形成させる。被着物としては、例えば鉄、亜鉛、錫、ステンレス、銅、アルミニウムなどの金属類、ガラス等の無機質類及びこれらの物に必要に応じてプラスト処理、燐酸鉄、リン酸亜鉛等の表面処理を施した物やプライマー、中塗り塗装を施した物などが使用できる。塗装膜厚は特に制限されないが、約15μm〜1mm、好ましくは約30〜300μmの範囲が好適である。
【0018】
 また被塗物に粉体塗装を行うことにより第一塗膜を形成した後、第一塗膜上に粉体塗装を行うことにより第二塗膜を形成することにより得られる複層塗膜において、第一塗膜及び/又は第二塗膜の形成に請求項1記載の粉体塗料組成物を用いることにより、耐衝撃性に優れた複層塗膜を得ることもできる。このような複層塗膜は例えば、自動車車体塗装に好適に用いることができる。このような複層塗膜を形成する際、第一塗膜を形成する粉体塗料としては、ポリエステル系、ポリエステル−エポキシハイブリッド系、アクリル系、エポキシ系粉体塗料として当業者間において用いられるものであれば、特に限定されるものではない。これらの内、ポリエステル系、ポリエステル−エポキシハイブリッド系が好ましく用いられる。第二塗膜を形成する粉体塗料も、上記のごときポリエステル系、ポリエステル−エポキシハイブリッド系、アクリル系もしくはエポキシ系粉体塗料として当業者間において用いられるものであれば、特に限定されるものではない。これらの内ポリエステル系もしくはアクリル系が好ましく、アクリル系粉体塗料がより好ましく使用される。また、第一塗膜及び第二塗膜を形成する粉体塗料として、少なくとも一層に本発明における粉体塗料組成物を含めばよい。
【0019】
 また、第一塗膜及び第二塗膜の密着性を改良するため、必要に応じてプライマー処理を行うこともできる。この際、用いられるプライマーとしては特に限定されるものではないが、粉体塗料が脱溶剤化塗料として使用される点を鑑み、有機溶剤を少量含むかもしくは全く含まない水系プライマーが好ましい。このような水系プライマーとしてはアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等、第一塗膜と第二塗膜の密着性に悪影響を与えないものであれば任意に使用できる。また、第一塗膜を形成後、所望によりカラーベース塗料を塗装することにより着色層を形成し、更に第二塗膜を形成する粉体塗料として、顔料等着色成分を含まないクリアーの粉体塗料を用いることにより、外観性、着色性に優れる複層塗膜を容易に得ることが出来る。この際用いられるカラーベース塗料としては、特に限定されるものではないが、上記プライマーと同様に水系のカラーベース塗料が好ましい。このような水系カラーベース塗料としては、アクリルエマルション及び/又はウレタンエマルション等と架橋剤を含有する水系塗料のうち、第一塗膜と第二塗膜の密着性に悪影響を与えないものであれば任意に使用できる。
【0020】
 上記の如く、着色層を形成させる場合、第二塗膜を形成する粉体塗料としては、透明性、外観等の点から、アクリル系クリアーの粉体塗料が好ましい。この複層塗膜を形成する際、第一塗膜を形成する粉体塗料を被塗物上に塗装した後、塗装された粉体塗料の融点まで加熱し、予め未硬化の粉体塗料により連続層を形成させる。その後、所望によりプライマー層や着色層を形成させ、さらに第二塗膜を形成する粉体塗料を塗装し、第一塗膜及び第二塗膜を形成する粉体塗料を同時に焼き付けることにより、複層塗膜を得ることもできる。また、第一塗膜を形成する粉体塗料を完全に硬化させた後、水系プライマーや水系カラーベース塗料を塗装し、更に第二塗膜を形成する粉体塗料の塗装を行い、ついで焼き付け硬化を行うことにより複層塗膜を得ることもできる。このような複層塗膜の形成方法は、例えば、自動車車体の粉体塗装方法として好適に利用できる。この際本発明における粉体塗料組成物を利用することにより、得られる塗膜の耐衝撃性や基材との密着性を向上させることが出来る。
【0021】
【実施例】
 以下、本発明について製造例、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の「部」は全て重量部を表す。また製造例、実施例、比較例中に用いる略語は下記の通りである。
 単量体n−ブチルアクリレート BAメチルメタクリレート MMAエチルアクリレート EAスチレン St1、4−ブチレングリコールジアクリレート BGAアリルメタクリレート AlMA2−ヒドロキシルエチルメタクリレート HEMAメタクリル酸 MAAイタコン酸 IAグリシジルメタクリレート GMA界面活性剤ネオコールP(第一工業製薬(株)製) NPその他脱イオン水 DIW炭酸水素ナトリウム SBC過硫酸ナトリウム SPS
【0022】
 また、式(1)により各層のTgを計算する際、各成分の単独重合体のTgとして、以下の値を用いている。
 BA −40℃MMA 130℃EA −24℃St 105℃BGA 100℃AlMA 100℃HEMA 55℃MAA 288℃IA 150℃GMA 46℃粒子径の測定方法:大塚電子(株)製 動的光散乱測定装置(LPA−3000/LPA−3100)を用い、動的光散乱法により測定した。
【0023】
 製造例1 多層ポリマー粒子Aの製造2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW506g、1%NP水溶液2.5g、1%SBC水溶液16.4gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。昇温後、EA8gを添加し、10分間攪拌後、2%SPS水溶液4.1gを添加し、更に1時間攪拌を行うことによりシードラテックスを得た。引き続き、70℃において、2%SPS水溶液51gを添加した後、BA631g、BGA13.4g、AlMA26.9g、1%NP水溶液408g、1%SBC水溶液68gからなる第一層を形成する単量体乳化液を240分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、更に70℃にて60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。次に、70℃に保ったまま、2%SPS水溶液を7.2g添加した後、MMA107g、EA12g、BGA1.2g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gからなる第二層を形成する単量体乳化液を150分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、80℃に昇温し、更に60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。熟成反応終了後、30℃まで冷却し、300メッシュのステンレス金網にて濾過し、重量平均粒子径0.53μmである多層ポリマー粒子Aのラテックスを得た。このラテックスを−30℃で一旦凍結させ、融解後、遠心脱水機で脱水洗浄を行い、更に60℃で一昼夜送風乾燥して多層ポリマー粒子Aを得た。この多層ポリマー粒子Aの(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が106℃である。
【0024】
 製造例2 多層ポリマー粒子Bの製造第二層を形成する単量体乳化液をMMA99g、EA 12g、BGA 1.2g、HEMA 8.0g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Bを得た。この多層ポリマー粒子Bの重量平均粒子径は0.49μmであった。この多層ポリマー粒子Bの(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が101℃である。
 製造例3 多層ポリマー粒子Cの製造第二層を形成する単量体乳化液をMMA 83g、EA 12g、BGA 1.2g、HEMA 24g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Cを得た。この多層ポリマー粒子Cの重量平均粒子径は0.48μmであった。この多層ポリマー粒子Cの(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が91℃である。
 製造例4 多層ポリマー粒子Dの製造第一層を形成する単量体乳化液をBA 544g、BGA 1.9g、AlMA5.5g、1%NP水溶液336g、1%SBC水溶液56gに、第二層を形成する単量体乳化液をMMA 214g、EA 24g、BGA 2.4g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液16gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Dを得た。この多層ポリマー粒子Dの重量平均粒子径は0.48μmであった。この多層ポリマー粒子Dの(1)式より求められるTgは第一層が−39℃、第二層が106℃である。
【0025】
 製造例5 多層ポリマー粒子Eの製造2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 456g、1%NP水溶液12.8g、1%SBC水溶液32gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。昇温後、EA 32gを添加し、10分間攪拌後、2%SPS水溶液64gを添加し、更に10分間攪拌を行うことによりシードラテックスを得た。引き続き、70℃において、BA 593g、BGA 3.0g、AlMA 12.2g、1%NP水溶液227g、1%SBC水溶液32gからなる第一層を形成する単量体乳化液を180分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、更に70℃にて60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。次に、70℃に保ったまま、2%SPS水溶液を16g添加した後、MMA 144g、EA 16g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液16gからなる第二層を形成する単量体乳化液を60分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、80℃に昇温し、更に60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。熟成反応終了後、30℃まで冷却し、300メッシュのステンレス金網にて濾過し、重量平均粒子径0.25μmである多層ポリマー粒子Eのラテックスを得た。以降、製造例1と同様の操作を行い、多層ポリマー粒子Eを得た。この多層ポリマー粒子Eの(1)式より求められるTgは第一層が−38℃、第二層が107℃である。
【0026】
 製造例6 多層ポリマー粒子Fの製造第二層を形成する単量体乳化液をMMA 99g、EA 12g、BGA 1.2g、MAA 8.0g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Fを得た。この多層ポリマー粒子Fの重量平均粒子径は0.49μmであった。この多層ポリマー粒子Fの(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が111℃である。
 製造例7 多層ポリマー粒子Gの製造第二層を形成する単量体乳化液をMMA 91g、EA 12g、BGA 1.2g、IA 16g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Gを得た。この多層ポリマー粒子Gの重量平均粒子径は0.51μmであった。この多層ポリマー粒子Gの(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が109℃である。
 製造例8 多層ポリマー粒子Hの製造第一層を形成する単量体乳化液をBA 67.2g、St 564g、BGA 13.4g、AlMA 26.9g、1%NP水溶液272g、1%SBC水溶液68gに変更し、更に第一層を形成する単量体乳化液を80℃において、360分かけてフィードした以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Hを得た。この多層ポリマー粒子Hの重量平均粒子径は0.48μm、(1)式より求められるTgは第一層が83℃、第二層が106℃である。
【0027】
 製造例9 多層ポリマー粒子Iの製造第二層を形成する単量体乳化液をEA 119g、BGA 1.2g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Iを得た。この多層ポリマー粒子Iの重量平均粒子径は0.49μm、(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が−23℃である。
 製造例10 多層ポリマー粒子Jの製造第一層を形成する単量体乳化液をBA 672g、1%NP水溶液227g、1%SBC水溶液32gに、第二層を形成する単量体乳化液をMMA 108g、EA 12g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液16gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Jを得た。この多層ポリマー粒子Jの重量平均粒子径は0.53μm、(1)式より求められるTgは第一層が−40℃、第二層が106℃である。
 製造例11 多層ポリマー粒子Kの製造第一層を形成する単量体乳化液をBA 604g、BGA 1.2g、AlMA3.2g、1%NP水溶液227g、1%SBC水溶液32gに変更した以外は製造例5と同様に行い、多層ポリマー粒子Kを得た。この多層ポリマー粒子Kの重量平均粒子径は0.25μmであった。この多層ポリマー粒子Kの(1)式より求められるTgは第一層が−39℃、第二層が107℃である。
【0028】
 製造例12 多層ポリマー粒子Lの製造第一層を形成する単量体乳化液をBA 658g、BGA 13.4g、1%NP水溶液408g、1%SBC水溶液68gに、第二層を形成する単量体乳化液をMMA 99g、EA 12g、BGA 1.2g、GMA8.0g、1%NP水溶液48g、1%SBC水溶液12gに変更した以外は製造例1と同様に行い、多層ポリマー粒子Lを得た。この多層ポリマー粒子Lの重量平均粒子径は0.49μm、(1)式より求められるTgは第一層が−35℃、第二層が98℃である。製造例1〜12により得られた多層ポリマー粒子A〜Lの重合組成比及び、各層のTg、粒子径を〔表1〕に示す。
【0029】
【表1】
イメージ ID=000003

【0030】
 本発明の実施例において使用される粉体塗料の構成成分は以下の通りである。
 結着樹脂エピクロン4055RP:大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂ファインディックM−8050:大日本インキ化学工業(株)製 ヒドロキシル基末端ポリエステル樹脂ファインディックA−224S:大日本インキ化学工業(株)製 グリシジル基含有アクリル樹脂ユピカコートGV−230:日本ユピカ(株)製 酸末端ポリエステル樹脂硬化剤アジピン酸ジヒドラジド(ADH):日本ヒドラジン工業(株)製ユピカコートGV−230:日本ユピカ(株)製 酸末端ポリエステル樹脂VESTAGON B−1530:ヒュルス社製 ブロックイソシアネートデカンジカルボン酸(DDA):宇部興産(株)製ARALDITE PT810:チバガイギー社製 トリグリシジルイソシアヌレート硬化触媒TPP:トリフェニルホスフィンARALDITE DT−312:チバガイギー社製 トリグリシジルイソシアヌレート用硬化触媒流展剤アクロナール4F:バスフ社製顔料タイペークCR−90:石原産業(株)製 酸化チタン
【0031】
 実施例1〔表2〕に示す配合割合にて樹脂、硬化剤、触媒、流展剤、顔料及び製造例1で得た多層ポリマー粒子A10部をハイスピードミキサーにてブレンド後、エクストルーダーにて120℃の条件下、溶融混練を行った。冷却後、粉砕機にて微粉砕し、150メッシュの篩を通過した区分を集め多層ポリマー粒子Aが分散したエポキシ系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼鈑に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、190℃20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。
 実施例2エクストルーダーによる溶融混練温度を110℃にした以外は実施例1と同様の方法により、多層ポリマー粒子Aが10部添加されたエポキシ−ポリエステルハイブリッド系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼鈑に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、170℃、20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。
【0032】
 実施例3エクストルーダーによる溶融混練温度を110℃として、多層ポリマー粒子Aの添加量を5部に変更した以外は実施例1と同様の方法により多層ポリマー粒子Aが分散したポリエステル系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼鈑に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、190℃20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。
 実施例4,5実施例4では多層ポリマー粒子Aを10部、実施例5では多層ポリマー粒子Aを20部添加した以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 実施例6エクストルーダーによる溶融混練温度を110℃にした以外は実施例1と同様の方法により多層ポリマー粒子Aが10部分散されたアクリル系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼鈑に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、170℃20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。
【0033】
 実施例7〜9多層ポリマー粒子Aの代わりに実施例7では多層ポリマー粒子Bを5部、実施例8では多層ポリマー粒子Bを10部、実施例9では多層ポリマー粒子Bを20部添加した以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 実施例10〜12多層ポリマー粒子Aの代わりに、実施例10では多層ポリマー粒子Cを、実施例11では多層ポリマー粒子Dを、実施例12では多層ポリマー粒子Eそれぞれ10部添加した以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 実施例13エクストルーダーによる溶融混練温度を110℃にした以外は実施例1と同様の方法により多層ポリマー粒子Fが10部分散したポリエステル系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼鈑に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、200℃、20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。
 実施例14多層ポリマー粒子Fの代わりに、多層ポリマー粒子Gを10部分散させた以外は実施例13と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
【0034】
 比較例1多層ポリマー粒子Aを添加しない以外は実施例1と同様の方法によりエポキシ系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例2多層ポリマー粒子Aを添加しない以外は実施例2と同様の方法によりエポキシ・ポリエステルハイブリッド系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例3多層ポリマー粒子Aを添加しない以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例4多層ポリマー粒子Aを添加しない以外は実施例6と同様の方法によりアクリル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例5多層ポリマー粒子Fを添加しない以外は実施例13と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
【0035】
 比較例6〜8多層ポリマー粒子Aの代わりに、多層ポリマー粒子H〜Jをそれぞれ10部添加した以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例9多層ポリマー粒子Aの代わりに、多層ポリマー粒子Jを10部添加した以外は実施例6と同様の方法によりアクリル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例10多層ポリマー粒子Aの代わりに、多層ポリマー粒子Kを10部添加した以外は実施例3と同様の方法によりポリエステル系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。
 比較例11多層ポリマー粒子Aの代わりに、多層ポリマー粒子Lを10部添加した以外は実施例1と同様の方法によりエポキシ系粉体塗料組成物及び塗装板を得た。実施例1〜14及び比較例1〜11で得られた粉体塗料組成物及び塗装板の性能評価結果を〔表2〕および〔表3〕に示す。
【0036】
 粉体塗料の粉体特性の試験方法外観:塗膜の外観を目視により確認し、判断した。
 耐ブロッキング性;粉体塗料を40℃で28日間貯蔵後、粉体塗料の凝集度合いを目視で確認し、判断した。
 ○ ;塊が無く、流動性良好。
 △ ;塊が生じているが、簡単にほぐれる。
 ×;ほぐれない塊がある。
 塗膜物性の試験方法エリクセン;JIS K 5400準拠。エリクセン試験機により塗膜に割れが生じるまでの押し込み距離を測定した。
 耐衝撃性;JIS K 5400準拠。デュポン式衝撃試験によりφ1/2インチ、1kgのおもりを塗膜に落下させた際に塗膜に割れやはがれが生じる高さを測定した。
 耐屈曲性(加工性);JIS K 5400準拠。屈曲試験機により塗装板を180°折り曲げ、屈曲部を20倍ルーペで観察し、塗膜に亀裂が発生しない最短の徑を数値(mm)で示した。
【0037】
【表2】
イメージ ID=000004

【0038】
【表3】
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【0039】
 〔表2〕および〔表3〕に示すように、多層ポリマー粒子A〜Gを添加した実施例1〜14は、多層ポリマー粒子を添加しない比較例1〜5と比べ、各粉体塗料系ともエリクセン、衝撃強度、加工性とも大きく向上しており、特に、加工性に対して優れた改良効果が認められる。また、最外層をHEMAで変性した多層ポリマー粒子BおよびCを使用した実施例7〜10は未変性の多層ポリマー粒子Aを使用したポリエステル系の実施例3〜5と比較し、加工性、衝撃強度とも向上しており、ヒドロキシル基を有する単量体による変性の効果が認められる。それに対し、Tg20℃以下のポリマー層を有しない多層ポリマー粒子Hを用いた比較例6では、塗膜物性の改良効果が認められない。また、Tg60℃以上の最外層を有しない多層ポリマー粒子I、Tg20℃以下のポリマー層に架橋性単量体、グラフト性単量体を共重合していない多層ポリマー粒子Jや少量の架橋性単量体、グラフト性単量体しか使用していない多層ポリマー粒子K、グラフト性単量体を含まない多層ポリマー粒子Lを用いた比較例7〜11では加工性の改良効果が小さく、また、塗膜の外観性や粉体塗料の耐ブロッキング性が低下している。
【0040】
 実施例15エステル化反応槽にイソフタル酸913g、テレフタル酸748g、ネオペンチルグリコール1,015g、エチレングリコール279g及び多層ポリマー粒子B450gを仕込み、圧力0.05〜0.25MPaの条件下、200〜260℃で4時間エステル化反応を行った。さらに三酸価アンチモン0.6gを添加した後、0.4hPaに減圧し、280℃で4時間さらに縮合反応を行った。引き続き、トリメチロールプロパン53.6gを添加し、270℃で1時間解重合反応を行い、多層ポリマー粒子Bが分散したポリエステル樹脂(1)を得た。エピクロン 4055RP3.0部、ポリエステル樹脂(1)56.0部(この中には多層ポリマー粒子B10部が含まれている。)、VESTAGON B−1530(ヒュルス社製)7.3部、アクロナール4F(バスフ社製)0.5部、ベンゾイン0.5部およびタイペーク CR−90(石原産業(株)製)40.0部をハイスピードミキサーにてブレンド後、エクストルーダーにて110℃の条件下、溶融混練を行った。冷却後、粉砕機にて微粉砕し150メッシュの篩を通過した区分を集め多層ポリマー粒子Bが分散したエステル系粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物を冷間圧延鋼板に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、190℃、20分の焼き付け条件にて硬化させて塗装板を作成した。前述の試験方法に準じて得られた粉体塗料組成物および塗装板の性能を評価し、その結果を次に揚げる。
 粉体塗料の耐ブロッキング性(40℃、1カ月):○ 外観 :良好 塗膜厚(μm) :50〜70 エクセリン(mm) :>8 衝撃強度(cm) :50 耐屈曲性(φmm) :0
【0041】
 実施例16実施例8と同様の方法により作成したポリエステル系粉体塗料組成物を、冷間圧延鋼板に乾燥塗膜が50〜70μmとなるように静電粉体塗装し、190℃20分の焼き付け条件で硬化させ塗装板を得た。更にこの塗装板上に、実施例6と同様の方法により作成したアクリル系粉体塗料を、乾燥塗膜が50〜70μmとなるように塗装し、第一層が多層ポリマー粒子Bを10部分散させたポリエステル系塗膜、第二層が多層構造ポリマー粒子Aを10部分散させたアクリル系塗膜からなる複層塗膜を得た。前述の試験方法に準じて得られた塗装板の性能を評価し、その結果を以下にに示す。
 外観 :良好エリクセン(mm) :8衝撃強度(cm) :50耐屈曲性(φmm) :2
【0042】
【発明の効果】
 本発明の粉体塗料組成物は、ポリエステル系、エポキシ−ポリエステルハイブリッド系、アクリル系、エポキシ系等、種々の粉体塗料に適応でき、更に、外観性や耐ブロッキング性等これら粉体塗料本来の特性を保持したまま、耐衝撃性のみならず、塗装後の加工性を大きく改良することができる。
上記の内容は特許電子図書館の出力データを加工したものです。by ipdldd 
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