特開2000-712 「高強度を有する超硬合金製ミニチュアドリル」 (三菱マテリアル)
要約
【課題】 高強度を有する超硬合金製ミニチュアドリルを提供する。
【解決手段】 ミニチュアドリルを、電子顕微鏡による組織観察で、第一硬質分散相:65〜92.5面積%、第二硬質分散相:0.5〜5面積%、Coを主体とする結合相および不可避不純物:残り、からなる組織を示し、前記第一硬質分散相は、WCを(V,W,Cr)Cの薄層で全面被覆および/または部分被覆してなる被覆WCからなり、上記第二硬質分散相は、上記結合相中に微細に分散分布した(V,W,Cr)Cからなり、かついずれも0.7μm以下の平均粒径を有し、さらにCo、Cr、およびVの含有量が、それぞれCo:5〜13%、Cr:0.2〜2%、V:0.2〜1%、である超硬合金で構成する。
[代表図面]
イメージ ID=000005
書誌事項
【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】公開特許公報(A)
【公開番号】特開2000−712(P2000−712A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発明の名称】高強度を有する超硬合金製ミニチュアドリル
【国際特許分類第7版】
 B23B 51/00
 B23P 15/32
 C22C 29/08
【FI】
 B23B 51/00 M
 B23P 15/32
 C22C 29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】
【全頁数】6
【出願番号】特願平10−166455
【出願日】平成10年6月15日(1998.6.15)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社
【発明者】
【発明者】
【発明者】
【発明者】
【代理人】弁理士(100076679)(外1名)
【テーマコード(参考)】
 3C037
【Fターム(参考)】
 3C037 AA09 FF06
特許請求の範囲
【請求項1】
 電子顕微鏡による組織観察で、第一硬質分散相:65〜92.5面積%、第二硬質分散相:0.5〜5面積%、Coを主体とする結合相および不可避不純物:残り、からなる組織を示し、上記第一硬質分散相は、炭化タングステンをVとWとCrの析出複合炭化物の薄層で全面被覆および/または部分被覆してなる被覆炭化タングステンからなり、上記第二硬質分散相は、上記結合相中に微細に分散分布したVとWとCrの析出複合炭化物からなり、かついずれも0.7μm以下の平均粒径を有し、さらにCo、Cr、およびVの含有量が、重量%で、Co:5〜13%、Cr:0.2〜2%、V :0.2〜1%、である、炭化タングステン基超硬合金で構成したことを特徴とする高強度を有する超硬合金製ミニチュアドリル。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
 この発明は、耐摩耗性の低下なく、高強度を有し、これによって一段の細径化にもすぐれた耐折損性を示す超硬合金製ミニチュアドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
 従来、一般に、超硬合金製ミニチュアドリルが、図2に電子顕微鏡による組織観察結果を模式図で示す通り、第一硬質分散相:60〜92面積%、第二硬質分散相:1〜10面積%、Coを主体とする結合相および不可避不純物:残り、からなる組織を示し、上記第一硬質分散相は、炭化タングステン(以下、WCで示す)からなり、上記第二硬質分散相は、上記結合相中に微細に分散分布したVとWとCrの析出複合炭化物[以下、(V,W,Cr)Cで示す]からなり、かついずれもV成分の作用で0.7μm以下の平均粒径を有し、さらにCo、Cr、およびVの含有量が、重量%で(以下、単に%の表示は重量%を示す)、Co:5〜13%、Cr:0.2〜2%、V :0.2〜1%、である、WC基超硬合金(以下、超硬合金と云う)で構成され、かつ図3に概略正面図で例示されるように、切刃部とシャンク部からなり、前記切刃部に形成された外周刃によって穴あけ加工がなされることは良く知られるところである。また、これらの超硬合金製ミニチュアドリルが、主に半導体装置のプリント配線基板などの穴あけ加工に用いられていることも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
 一方、近年の半導体装置の高集積化は著しく、これに伴い、これらに設けられる穴径も小経化の傾向にあり、したがってこれの穴あけ加工に用いられるミニチュアドリルも一段と細径となるが、加工穴径が小径になればなるほど、ミニチュアドリルには折損防止の面からより一段の強度(靭性)が要求され、このためにはこれを構成する超硬合金のCo含有量を多くしなければならないが、Co含有量を多くすると反比例的に耐摩耗性が低下するようになり、使用寿命の短命化が避けられないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
 そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来超硬合金製ミニチュアドリルに着目し、これのもつ耐摩耗性を損なう事なく、強度向上を図るべく研究を行った結果、上記の従来超硬合金製ミニチュアドリルを構成する超硬合金(従来超硬合金と云う)においては、その製造に際して、その焼結を、「0.01〜0.1torrの真空雰囲気中、温度:1350〜1480℃に1〜2時間保持後、少なくとも1200℃まで炉冷(この場合の冷却速度は約10℃/min)」、の条件で行っているが、この焼結を、「0.01〜0.1torrの真空雰囲気中、温度:1350〜1480℃に1〜2時間保持後、雰囲気を50〜150kg/cm2 の加圧雰囲気に変え、この加圧雰囲気に15〜60分間保持後、少なくとも1200℃までを50〜100℃/minの冷却速度で急冷」、の条件とすると、上記従来超硬合金では、(V,W,Cr)Cのすべてが冷却時に結合相中に分散析出して独自に第二硬質分散相を形成していたものが、上記の通り真空雰囲気を加圧雰囲気に変え、この加圧雰囲気に所定時間保持した後急冷することにより、図1に電子顕微鏡による組織観察結果を模式図で示した通り、その一部がWCの表面に全面被覆薄層および/または部分被覆薄層として析出して被覆WCからなる第一硬質分散相を形成するようになり、この結果の(V,W,Cr)Cの析出割合にはほとんど変化がないが、前記(V,W,Cr)Cの一部が前記被覆WCを形成する超硬合金は、結合相中にだけ(V,W,Cr)Cが分散析出した上記従来超硬合金に比して一段と高い強度をもつようになり、したがってこの超硬合金でミニチュアドリルを構成すれば、これの一段の細径化にもすぐれた耐折損性を示し、かつ細径化によっても耐摩耗性の低下が抑制されるようになるという研究結果を得たのである。
【0005】
 この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、電子顕微鏡による組織観察で、第一硬質分散相:65〜92.5面積%、第二硬質分散相:0.5〜5面積%、Coを主体とする結合相および不可避不純物:残り、からなる組織を示し、上記第一硬質分散相は、WCを(V,W,Cr)Cの薄層で全面被覆および/または部分被覆してなる被覆WCからなり、上記第二硬質分散相は、上記結合相中に微細に分散分布した(V,W,Cr)Cからなり、かついずれも0.7μm以下の平均粒径を有し、さらにCo、Cr、およびVの含有量が、Co:5〜13%、Cr:0.2〜2%、V :0.2〜1%、である、超硬合金で構成してなる、耐折損性のすぐれた超硬合金製ミニチュアドリルに特徴を有するものである。
【0006】
 つぎに、この発明のミニチュアドリルにおいて、これを構成する超硬合金の組成および硬質分散相の平均粒径を上記の通りに限定した理由を説明する。
 (A) 組成(a) 第一硬質分散相(被覆WC)の割合第一硬質分散相における(V,W,Cr)Cの存在、すなわちWCの表面を(V,W,Cr)Cが被覆することによって超硬合金の強度が著しく向上するようになることは経験的に判明したものであり、またこの場合電子顕微鏡による組織観察で、WCの全粒界長さの50%以上が(V,W,Cr)Cで被覆されているのが望ましく、さらに第一硬質分散相には、WCと、これの表面を被覆する(V,W,Cr)Cとの共存によって耐摩耗性を一段と向上させる作用があるが、その割合が65面積%未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その割合が92.5面積%を越えると相対的に結合相の割合が少なくなりすぎて、強度が急激に低下するようになることから、その割合を65〜92.5面積%、望ましくは80〜89面積%と定めた。
【0007】
 (b) 第二硬質分散相((V,W,Cr)C)の割合第二硬質分散相には、超硬合金の硬さをさらに一段と高め、もって耐摩耗性を向上させる作用があるが、その割合が0.5面積%未満では、所望の硬さ向上効果が得られず、一方その割合が5面積%を越えると、強度が急激に低下するようになることから、その割合を0.5〜5面積%、望ましくは1〜3面積%と定めた。
【0008】
 (c) Coの含有量Co成分は焼結性を向上させ、かつ結合相を形成して強度を向上させ、もってドリルの折損を抑制する作用をもつが、その含有量が5%未満では細経化に対して十分な耐折損性を確保することができず、一方その含有量が13%を越えると耐摩耗性の急激な低下が避けられないことから、その含有量を5〜13%、望ましくは6〜10%と定めた。
【0009】
 (d) Crの含有量Cr成分には、上記の通りWCの表面に全面被覆薄層および/または部分被覆薄層として析出する(V,W,Cr)Cを形成して強度向上および耐摩耗性向上に寄与するほか、さらに第二硬質分散相を形成して、耐摩耗性の一段の向上に寄与し、かつ結合相中に固溶して、これの耐熱性を向上させる作用があるが、その含有量が0.2%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が2%を越えると、結合相中への固溶割合が高くなりすぎ、強度低下の原因となることから、その含有量を0.2〜2%、望ましくは0.3〜1.0%と定めた。
【0010】
 (e) Vの含有量V成分には、同じく(V,W,Cr)Cを形成して、強度および耐摩耗性を向上させるほか、結合相中に固溶して、焼結時における上記第一および第二硬質分散相の粒成長を抑制する作用があるが、その含有量が0.2%未満では、硬質の(V,W,Cr)Cの形成が困難であるばかりでなく、原料粉末であるWC粉末の平均粒径を0.7μm以下にしても焼結時に粒成長して上記第一硬質分散相が0.7μmを越えた平均粒径になってしまい、また結合相中に析出した第二硬質分散相の成長抑制効果も十分でなく、この結果所望の高強度を確保することができず、折損の発生を防止することができなくなり、一方その含有量が1%を越えると結合相自体の強度が低下し、折損が発生し易くなることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは0.2〜0.5%と定めた。
【0011】
 (f) 第一および第二硬質分散相の平均粒径これらの平均粒径は、上記の通り原料粉末としてのWC粉末の平均粒径およびV含有量によって調整するが、その平均粒径が0.7μmを越えると、硬質分散相粒粗大化に伴う強度低下が著しくなることから、その平均粒径を0.7μm以下と定めた。
【0012】
【発明の実施の形態】
 つぎに、この発明の超硬合金製ミニチュアドリルを実施例により具体的に説明する。原料粉末として、それぞれ平均粒径:0.8μmのWC粉末、同1.5μmのVC粉末、同2.3μmのCr3 2 粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、湿式ボールミルで72時間混合し、減圧乾燥し、さらにワックスと溶剤を加えて1時間混和した後、押出しプレスにて直径:4.4mmの長尺状成形体とし、これらの長尺状成形体を、脱ワックスした状態で、0.05torrの真空雰囲気中、1350〜1480℃の範囲内の所定の温度に1.5時間保持後、雰囲気を圧力:60kg/cm2 の加圧雰囲気に変え、この加圧雰囲気に25分間保持後、1200℃までを50〜100℃/minの範囲内の所定の冷却速度で急冷の条件で焼結することにより超硬合金からなる直径:3.5mmの長尺状焼結素材を製造し、この長尺状焼結素材について、定量分析法にてCo、Cr、およびV成分の含有量を測定し、さらにその任意断面を透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光装置を用いて観察し、第一硬質分散相が被覆WC、第二硬質分散相が(V,W,Cr)Cからなることを確認した上で、これらの平均粒径を測定し、かつ画像解析装置にてその割合を算出し、この結果表1に示される測定および算出結果を示し、ついで前記長尺状焼結素材からそれぞれ表1に示される寸法に切削加工することによりいずれも2枚刃形状の本発明ミニチュアドリル1〜8をそれぞれ製造した。また、比較の目的で、焼結条件を、0.05torrの真空雰囲気中、1350〜1480℃の範囲内の所定の温度に1.5時間保持後、炉冷(この場合の1200℃までの冷却速度は約10℃/min)とする以外は同一の条件で表2に示される通りの従来ミニチュアドリル1〜8をそれぞれ製造した。
【0013】
 この結果得られた本発明ミニチュアドリル1〜8および従来ミニチュアドリル1〜8について、ガラス層とエポキシ樹脂層と銅層の交互6層積層板からなる厚さ:1.6mmのプリント基板を2枚重ねにしたものに、表3に示される条件および試験本数:20本にて穴あけ加工試験を行い、ミニチュアドリルの外周刃外径寸法に5%の摩耗が生じる迄の穴あけ加工数および折損数を測定した。これらの測定結果を表3に示したが、穴あけ加工数は折損発生のないものの平均値で示した。
【0014】
【表1】
イメージ ID=000002

【0015】
【表2】
イメージ ID=000003

【0016】
【表3】
イメージ ID=000004

【0017】
【発明の効果】
 表3に示される結果から、本発明ミニチュアドリル1〜8は、いずれも(V,W,Cr)Cの一部をWCの全面被覆薄層および/または部分被覆薄層として析出させることによって、前記(V,W,Cr)Cが結合相中にのみ分散分布した従来ミニチュアドリル1〜8に比して同等の耐摩耗性で、一段とすくれた耐折損性を示すことが明らかである。上述のように、この発明のミニチュアドリルは、細経化に十分満足に対応できる高強度を有するので、例えば高集積化した半導体装置への適用に際しても折損の発生なく、長期に亘ってすぐれた性能を発揮するものである。
図面の簡単な説明
【図1】本発明ミニチュアドリルを構成する超硬合金の電子顕微鏡による組織観察結果を示す模式図である。
【図2】従来ミニチュアドリルを構成する超硬合金の電子顕微鏡による組織観察結果を示す模式図である。
【図3】ミニチュアドリルを示す概略正面図である。
図面
【図1】
イメージ ID=000005

【図2】
イメージ ID=000006

【図3】
イメージ ID=000007

上記の内容は特許電子図書館の出力データを加工したものです。by ipdldd 
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