測色装置と測色方式
【課題】 ブラウン管や液晶ディスプレイ等の測定対象の色の持つ属性を、定量的に高精度に測定する測色装置とその方式。
【解決手段】 カラーカメラ2の出力等からカラーカメラ2に入射する測定対象(ブラウン管等)1の発光分光特性を推定し、その推定した分布に対して基準となるRGB値を理論計算によって得る。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管や液晶ディスプレイ等の測定対象の色の持つ属性を、定量的に高精度に測定する測色装置とその方式に関する。
【0002】
【従来の技術】色は人間の目から入った光が網膜内の視細胞に刺激を与え、脳に伝えられる心理物理量である。色に対する感度については、CIE(国際照明委員会)が1931年に、標準観測者の感度をスペクトル三刺激値(X、Y、Z)として定義している。
【0003】また、CIEは色を物理量として客観的な量として表すことができるものとして、図3に示すCIE標準色度座標も作成した。それによると、全ての色はCIE標準色度座標の馬蹄形の内側に存在することになり、また、馬蹄形の周辺部に向かうほど彩度が高くなる。なお、色の明るさは、CIE標準色度座標のxy軸に垂直の方向の軸で表現する。
【0004】現在、CIE標準色度座標を用いて一般に行われている測色方式は、通常、主として以下の2つの方式の場合が多い。
【0005】第1の方式では、CIE色度座標系で定義された分光感度分布を持つRGBセンサで測定を行い色度座標値を求める。
【0006】この方式では、現実のセンサを理想的RGB分光感度分布に合致させることになるので、センサのレスポンスが理想的な状態になつている。従って、センサ出力を理論に従って処理すれば高精度な色度座標を得ることができる。
【0007】これらを用いてカラーTV用のブラウン管についても測色を行っている。NTSC(National Television System Committee)方式の基準白色および3原色の色度座標は図4のように定められているので、次式(l)、(2)から色度座標値x,yを得ることができる。括弧内の数値は、重み付けの値で係数である。
【0008】
【数1】
また、第2の方式では、CIE色度座標系で定義された分光感度分布に近い特性を持つRGBセンサで測定を行い、この測定値座標系を理想的なRGB分布を持つ色度座標系に座標変換する。それにより、ずれを補正して精度を高めた色度座標値を求める。
【0009】この方式では測定センサに一般的なRGBセンサを使うのでその特性は、図5に示すようなNTSC方式規格の理想受像三原色表色系の三刺激値に完全には合致しないため、何らかの補正が必要となる。従って、実際には式(1)を基本に、重み付けとバイアス成分の付加が必要となつてくる。
【0010】その変換式は式(3)のようになる。
【0011】
【数2】
式(3)のうち、α11…α33,rb,gb,bbはセンサおよび測定光学系に依存する定数パラメータである。これらは4色以上の測定値によつてキャリブレーションすることができる。
【0012】基準となるRGB特性に近いセンサを使用し、出力に対して補正を行うことは、使用するセンサ系に対して一度補正値を求めることで、その後の計測が行える利点があるため広く用いられている。
【0013】この方式では理論的には、補正は実際にはセンサ出力前の段階、すなわち入力情報が波長の関数である段階で行われる必要がある。この段階でRGBの各領域に対して積分操作を行い、これをセンサ出力とすれば正確な結果が期待できることになる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上述の第1の方式のように、センサのレスポンスを、NTSC規格の受像三原色表色系の三刺激値に正確に合致させることは実際問題としては非常に困難である。これに近似した分布に特性を合わせることは出来るが、正確に合わせることは殆ど不可能である。その理由は、NTSC規格では図5に示すように分光特性が負になる領域があり、これを通常のフィルタなどで実現することは不可能なためである。
【0015】第2の方式では、RGBセンサ出力値に対して補正を行つているため、完全な補正を期待することは出来ない。
【0016】また、センサ出力はRGB各領域の入力光に対して既に積分が行われているため、例えば、各センサの透過帯域が大幅にシフトしている等の場合には、大きな誤差になつて結果に現れることになる。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明による手段によれば、測定対象を撮像する撮像手段と、この撮像手段によって撮像された画像をデータ処理する画像処理部と、この画像処理部で処理された画像データとデータベースに予め格納されているデータとを演算して推定分光特性を算出する演算手段と、この演算手段が算出した推定分光特性にもとづいて実際の色度座標値を算出する色度座標値算出手段を有することを特徴とする測色装置にある。
【0018】請求項2の発明による手段によれば、前記色度座標値算出手段は前記演算手段が算出した推定分光特性と、基準となるRGB特性を有するセンサの推定分光特性の各チャンネルとから得られる測定値から算出することを特徴とする請求項1記載の測色装置にある。
【0019】請求項3の発明による手段によれば、前記データベースに予め格納されているデータは、少なくともカメラの分光感度特性とブラウン管の蛍光体の発光波長分布を有することを特徴とする請求項1記載の測色装置にある。
【0020】請求項4の発明による手段によれば、前記撮像手段は、CCDカメラであることを特徴とする請求項1記載の測色装置にある。
【0021】請求項5の発明による手段によれば、前記測定対象は、ブラウン管又は液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項1記載の測色装置にある。
【0022】請求項6の発明による手段によれば、測定対象を撮像する撮像工程と、この撮像工程で撮像した画像をデータ処理するデータ処理工程と、このデータ処理工程で処理されたデータとデータベースに予め格納されているデータとを演算して推定分光発光特性D(λ)を算出する推定分光発光特性算出工程と、この推定分光発光特性算出工程から算出された結果と別途算出された基準となるRGB特性を持つセンサの推定分光発光特性の各チャンネルから得られる測定値R1、G1、B1とから実際の色度座標値を算出する色度座標値算出工程とを有することを特徴とする測色方式にある。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明では、撮像手段として一般的に良く使われているカラーカメラを使用しても、カラーカメラの出力等からカラーカメラに入射する測定対象(ブラウン管等)の発光分光特性を推定し、その推定した分布に対して基準となるRGB値を理論計算によって得ることで、高精度な色度座標値の測定を可能にしたものである。
【0024】これによって、安価なカメラを使用しながら高精度な測定が実現できるだけではなく、カメラの2次元センサとしての特性を生かした画面内の複数領域の測色も行うことができる。
【0025】以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の構成を示す概略図で、図2は本発明の処理の概要を示すブロック図である。
【0026】測定対象であるブラウン管1を撮像する撮像手段はカラーCCDカメラ2である。カラーCCDカメラ2の出力は画像入力インターフェース3を介して画像処理部4に接続されている。また、画像処理部4は演算部5に接続され、演算部5は結果表示部6に接続されている。
【0027】これらの構成により、まず、測定対象であるブラウン管1の表示面に対向して、画像データの入力系であるカラーCCDカメラ2を配置する。カラーCCDカメラ2は、ブラウン管1の所定箇所を撮影し、その出力は画像入力インターフェース3を介して画像処理部4へ入力される。
【0028】画像処理部4では必要に応じて、取得画像の前処理として、シェーディング補正など測定領域画像の切り出し、切り出し画像の平均化といった一般的な処理が施されデータ処理される。
【0029】画像処理部4でデータ処理されたブラウン管1の入力画像データは演算部5に入力される。演算部5では、予め記憶部のデータベース7に格納されているカラーカメラの各成分分光感度特性r(λ)、g(λ)、b(λ)や、測定対象ブラウン管のRGB蛍光体の発光波長分布Dr(λ)、Dg(λ)、Db(λ)データを基に演算処理され、ブラウン管1の持つ推定分光発光特性D(λ)が求められる。
【0030】すなわち、カラーCCDカメラ2に入射する映像の波長分布の推定方法は以下のように行う。カラーCCDカメラ2から得られるRGB出力値は、測定対象のブラウン管1のRGB各蛍光体の発光波長分布をDr(λ)、Dg(λ)、Db(λ)、カラーCCDカメラ2のRGB各チャネルの分光感度特性を以下のように定義すると、カラーCCDカメラr成分分光感度特性:r(λ)
カラーCCDカメラg成分分光感度特性:g(λ)
カラーCCDカメラb成分分光感度特性:b(λ)
となる。
【0031】また、カラーCCDカメラ2からのRGB各成分の出力値は以下のように式(4)、式(5)、式(6)で表すことが出来る。
【0032】
【数3】
ここで、a、b、cはそれぞれ比例係数で、現段階では未知のものである。積分範囲を示すvは可視領域を表しており、−般的には400nm〜780nm程度である。
【0033】ここで上式の被積分関数をそれぞれ以下の式(7)、式(8)、式(9)ように再定義すると、Dr(λ)r(λ)=Mr(λ) (7)
Dg(λ)g(λ)=Mg(λ) (8)
Db(λ)b(λ)=Mb(λ) (9)
となる。
【0034】また、未知の定数であるa,b,cは以下のように式(10)、式(11)、式(12)から求めることが出来る。
【0035】
【数4】
ここでVはへヴィサイド(Heaviside)の演算子で、▽=d/dλ、分子のR,G,BはRGB各チャネルからの出力値を表す。
【0036】蛍光体の発光分布が輝度によらず中央部の山の高さが異なる曲線であるとの仮定の下に、比例係数a、b、cをブラウン管1のRGB蛍光体発光分光特性に乗ずることで実際の発光分布を推定することができる。
【0037】すなわち、可視領域のブラウン管1の推定分光発光特性D(λ)は以下の式で表すことが出来るようになる。
【0038】
D(λ)=aDr(λ)+bDg(λ)+cDb(λ) (l3)
また、演算部5では基準となるRGB特性r1(λ)、g1(λ)、b1(λ)を持つセンサ(CCD等)を使用した場合の推定分光発光特性D(λ)の各チャンネルから、本来あるべき測定値R1、G1、B1を式(14)、式(15)、式(16)から算出する。
【0039】
【数5】
この算出された本来あるべき測定値R1、G1、B1とブラウン管1の持つ推定分光発光特性D(λ)の値から、x、y、Y座標値を算出する。
【0040】なお、実際の色度座標値は式(1)、(2)に上式の結果を適用することで求めることが出来る。それにより、この方式でブラウン管の色座標値を求めた結果、色座標値の誤差が従来の方式に比べて1/5になったことが確認できた。
【0041】それらの算出結果について、結果表示部(6)では少なくともこの色度座標値の表示を行う。もちろん、必要に応じて途中結果の表示を行うようにすることも可能である。
【0042】なお、入カに使用する撮像手段はカラーCCDカメラ2でなくてもよく、他の方式のカラーカメラや、モノクロカメラにフィルタ等を装着して使用することも可能である。
【0043】
【発明の効果】以上のように、本発明はカラーカメラの出力等からカラーカメラに入射する測定対象(ブラウン管等)の発光分光特性を推定し、その推定した分布に対して理想的なRGB値を理論計算によって得るようにしたので、高精度な色度座標値の測定が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示す概略図。
【図2】本発明の処理の概要を示すブロック図。
【図3】CIE標準色度座標図。
【図4】NTSC方式の基準白色および3 原色の色度座標値。
【図5】NTSC規格の理想受像三原色表色系の特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ブラウン管、2…カラーCCDカメラ、3…画像入力インターフェイス、4…画像処理部、5…演算部、6…結果表示部、7…データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】 測定対象を撮像する撮像手段と、この撮像手段によって撮像された画像をデータ処理する画像処理部と、この画像処理部で処理された画像データとデータベースに予め格納されているデータとを演算して推定分光特性を算出する演算手段と、この演算手段が算出した推定分光特性にもとづいて実際の色度座標値を算出する色度座標値算出手段を有することを特徴とする測色装置。
【請求項2】 前記色度座標値算出手段は前記演算手段が算出した推定分光特性と、基準となるRGB特性を有するセンサの推定分光特性の各チャンネルから得られる測定値とから算出することを特徴とする請求項1記載の測色装置。
【請求項3】 前記データベースに予め格納されているデータは、少なくともカメラの分光感度特性とブラウン管の蛍光体の発光波長分布を有することを特徴とする請求項1記載の測色装置。
【請求項4】 前記撮像手段は、CCDカメラであることを特徴とする請求項1記載の測色装置。
【請求項5】 前記測定対象は、ブラウン管又は液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項1記載の測色装置。
【請求項6】 測定対象を撮像する撮像工程と、この撮像工程で撮像した画像をデータ処理するデータ処理工程と、このデータ処理工程で処理されたデータとデータベースに予め格納されているデータとを演算して推定分光発光特性D(λ)を算出する推定分光発光特性算出工程と、この推定分光発光特性算出工程から算出された結果と別途算出された基準となるRGB特性を持つセンサの推定分光発光特性の各チャンネルから得られる測定値R1、G1、B1とから実際の色度座標値を算出する色度座標値算出工程とを有することを特徴とする測色方式。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2000−9535(P2000−9535A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 赤外線,可視光線または紫外線の強度,速度,スペクトル,偏光,位相またはパルスの測定;色の測定;放射温度測定 | 色の測定;色測定装置,例.比色計
【出願番号】特願平10−178681
【出願日】平成10年6月25日(1998.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝
【Fターム(参考)】
各種分光測定と色の測定 | 測定領域 | 色
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 測定内容 | 色認識、比較
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 測定方法 | コンピュータカラーマッチング法(CCM)
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 測色計 | 光入出力系
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 測色計 | 光検知系 | カラーセンサ
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 測色計 | 信号処理系
各種分光測定と色の測定 | 色の測定 | 用途 | 立体物の測色 | 工業製品
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