圧力センサの製造方法
【課題】 金属ダイヤフラムの表面にシリコンチップをガラス層を介して接合してなる圧力センサにおいて、ガラス層に生じる気泡によってセンサ出力が影響を受けないようにする。
【解決手段】 金属製のセンシングボディ2におけるダイヤフラム2aの表面にシリコンチップ4をガラス層5を介して接合し、この接合後に、ガラス層5の気泡を検査する検査工程を設け、その検査結果が良好とされたセンシングボディ2についてハウジングへの組付けを行う。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧力を検出する圧力センサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】特公平7−11461号公報には、受圧用の金属ダイヤフラムの表面にガラス層を介してシリコンチップが接合されたセンシングボディを、ハウジング内に組付けた構造の圧力センサが開示されている。具体的には、図4(a)に示すように、金属製のセンシングボディ2のダイヤフラム2aの表面に、拡散ゲージ3を有するシリコンチップ4がガラス層5を介して接合されており、圧力によるダイヤフラム2aのたわみがガラス層5を介してシリコンチップ4に伝達され、拡散ゲージ3の抵抗値が変化する。拡散ゲージ3は、ブリッジ回路を構成するように結線されており、そのブリッジ回路から圧力に応じた電気信号が出力される。このように構成された圧力センサは、ダイヤフラムに金属を使っており、高圧条件下でも信頼性が高く燃料圧センサ等の高圧センサに用いることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記した圧力センサについて検討を行ったところ、ガラス層に気泡が発生していると、その気泡によってセンサ特性に影響が生じていることを見出した。すなわち、上記した圧力センサを製造する場合、ダイヤフラム2aの表面にガラスペーストを印刷し、その上にシリコンチップ4を載せて、その後焼成するようにしているが、例えばダイヤフラム2aの平坦度が悪かったりすると、図4(b)に示すように、ガラス層5に気泡6をかみこむことになる。ガラス層5の中に気泡6が発生していると、ガラス層5はダイヤフラム2aのたわみを正確にシリコンチップ4に伝達することができなかったり、気泡6が温度変化によって膨張、収縮するため、センサの温度特性を悪化させる要因となる。
【0004】本発明は上記問題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した気泡の影響について以下に示す検討を行った。図5に、シリコンチップ4を上面から見た図を示す。シリコンチップ4は、面方位が(110)のものであって、拡散ゲージ3は、圧力によって変位する変位領域(下側にダイヤフラム2aが存在する領域)の中央に配置されたセンターゲージ3a、3bと、周辺に配置されたサイドゲージ3c、3dから構成されている。そして、ガラス層5に発生した気泡6のうち、センターゲージの下の位置をA、その横の位置をB、サイドゲージの下の位置をC、さらにその横の位置をDとし、気泡径を500μmとしたときの気泡発生位置A〜Dにおけるセンサの感度、およびその温度特性について、気泡6が発生していないものと比較した結果を図6に示す。
【0006】この図6に示す結果から、感度およびその温度特性が気泡6の存在によって影響を受けていることがわかる。特に、センターゲージの下の気泡位置Aに気泡6がある場合には、気泡による影響が非常に大きい。また、サイドゲージの下の気泡位置Cに気泡がある場合にもそれによる影響を受けているが、気泡位置Aの場合のような大きな影響は受けていない。これは、サイドゲージの形成位置ではセンターゲージの形成位置より発生応力が小さいためである。
【0007】なお、上記したセンサの感度は、ダイヤフラム2aに20MPaの圧力を印加したときのセンサ出力電圧VsからVs/20で求め、感度の温度特性は、25℃のときの感度S25と120℃のときの感度S120 から(S120 −S25)/S25/(120−25)で求めている。また、気泡位置Aに気泡6がある場合において、その気泡サイズ( 気泡径)に対する感度およびその温度特性について検討を行った。図7、図8にその結果を示す。これらの図から、気泡サイズが200μm以下であれば、感度およびその感度に対する温度特性が、気泡の影響を実質的に受けていないことがわかる。
【0008】本発明は上記検討を基になされたもので、請求項1に記載の発明においては、センシングボディにおける金属ダイヤフラムの表面にシリコンチップをガラス層を介して接合し、この接合後に、ガラス層の気泡を検査する検査工程を設け、その検査結果が良好とされたセンシングボディについてハウジングへの組付けを行うことを特徴としている。
【0009】従って、ガラス層の気泡によってセンサ出力の影響を受けない圧力センサを製造することができる。請求項2に記載の発明では、検査工程において拡散ゲージの下のガラス層の気泡を検査することを特徴としている。拡散ゲージの下のガラス層に気泡が存在する場合には拡散ゲージに気泡による影響が直接でるため、その部分の検査を行うことによって気泡の検査を効率よく行うことができる。
【0010】特に、請求項3に記載の発明のように、拡散ゲージがセンターゲージとサイドゲージによって構成されている場合には、上記したようにセンターゲージの下のガラス層の気泡の影響が特に大きいため、その部分の検査を行うようにするのが好ましい。また、この場合、請求項4に記載の発明のように、気泡が200μm以下である場合に検査結果を良好とすれば、上記したように気泡による影響をほとんど受けないようにすることができる。
【0011】なお、上記した気泡の検査は、後述するように、赤外線顕微鏡を用いて、あるいは超音波探傷法により行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態を示す圧力センサの断面構造を示す。この圧力センサは、車両における燃料噴射装置の燃料圧やブレーキ装置のブレーキオイル圧等の高圧(例えば20MPa)の流体の圧力を測定するものである。
【0013】図において、ハウジング1は、耐食性が良好で溶接可能な金属(例えばSUS430)で構成されており、ねじ1aを有し、図示しない被検出体(例えば、燃料配管)にねじ締めで固定されるようになっている。センシングボディ2は、熱膨張率が小さい低熱膨張率金属(例えばコバール等の線熱膨張係数がシリコンに近い材質のもの)で構成され、内側に圧力導入孔2bを有し、その終端に肉薄のダイヤフラム2aが形成されている。このセンシングボディ2は、ハウジング1の内側空洞部に圧入されて、ハウジング1に組付けられる。
【0014】センシングボディ2におけるダイヤフラム2aの上面、すなわち圧力導入側と反対側の面には、シリコンチップ(センサチップ)4が低融点ガラスによるガラス層5を介して接合されている。また、センシングボディ2の先端部の周囲には、図1に示すように、シリコンチップ4からの電気信号を処理する信号処理回路基板7が配置されている。そして、シリコンチップ4と信号処理回路基板7の間はワイヤ8により電気的に接続されている。なお、信号処理回路基板7は、積層セラミック基板7a、回路チップ7b、およびポスト7cから構成されている。
【0015】信号処理回路基板7におけるポスト7cは、ターミナルアッセンブリ10のコネクタターミナル10aと電気溶接等で接続されており、ターミナルアッセンブリ10とコネクタケース11は、Oリング12を介しハウジング1のかしめ部1bによってハウジング1にかしめ固定されている。また、センシングボディ2および積層セラミック基板7の上面には、コーティング材(例えばシリコーンゲル)9によりコーティングが施されている。
【0016】図2に、センシングボディ2の先端部分の拡大断面斜視図を示す。図に示すように、センシングボディ2におけるダイヤフラム2aの上に、拡散ゲージ3が形成されたシリコンチップ4がガラス層5を介して接合されている。シリコンチップ4は、面方位が(110)のN型単結晶のシリコン基板を用いて構成されている。また、拡散ゲージ3は、図2中に明確に図示されていないが、図5に示すものと同様、センターゲージ3a、3bとサイドゲージ3c、3dによって構成されている。拡散ゲージ3a〜3dは、ブリッジ回路を構成するように図示しないアルミ配線によって結線されており、さらにワイヤ8によって信号処理回路基板7と電気接続され、ダイヤフラム2aの変位に応じた電気信号を信号処理回路基板7に出力する。
【0017】次に、上記した圧力センサの製造方法について説明する。図3にその製造工程を示す。まず、圧力導入孔2bおよびダイヤフラム2aが形成されたセンシングボディを用意し、その表面の酸洗浄と脱炭処理を行い、この後、酸化処理を行う。これらの処理は、特公平7−11461号公報に示されるものと同じである。
【0018】次に、ダイヤフラム2aの表面にガラスペーストを印刷し、これを約400℃で仮焼してガラス層5を形成する。そして、仮焼したガラス層5にシリコンチップ4を載せ、約500℃で本焼成して、シリコンチップ4の接合を行う。この後、ガラス層5の気泡検査を行う。赤外線はシリコンをある程度透過するため、赤外線顕微鏡でシリコンチップ4上から観察することにより、気泡を見ることができる。この実施形態においては、センターゲージ3a、3bの下のガラス層5に200μmより大きい気泡があるか否かを検査する。200μmより大きい気泡がある場合は、そのセンシングボディ2を後工程に流さないようにし、気泡があってもそれが200μm以下の場合はそのセンシングボディ2を後工程に流すようにする。
【0019】そして、検査工程で検査結果が良好とされたセンシングボディ2を用いてアッセンブリ組付工程を行う。すなわち、センシングボディ2をハウジング1に組付け、ワイヤボンディングなどを行って、図1に示す圧力センサを完成させる。なお、上記した実施形態においては、赤外線顕微鏡を用いて気泡検査を行うものを示したが、超音波探傷法を用いて気泡検査を行うようにしてもよい。この超音波探傷法は、サンプルを水中におき、超音波を加えてその反射波から内部構造を観察する方法である。
【0020】また、上記実施形態では、センターゲージ3a、3bの下のガラス層5において気泡検査を行うものを示したが、サイドゲージ3c、3dの下のガラス層5においても同様の気泡検査を行うようにしてもよい。また、シリコンチップ4として面方位が(100)のものを用いた場合には、センターゲージ、サイドゲージという配置関係ではなくなるため、この場合には各ゲージの下のガラス層の気泡検査を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧力センサの断面構造を示す図である。
【図2】図1中のセンシングボディ2の先端部分の拡大断面斜視図を示す図である。
【図3】図1に示す圧力センサの製造方法を示す工程図である。
【図4】金属ダイヤフラムを用いた圧力センサの動作を説明するための図である。
【図5】本発明者らが検討を行った気泡発生位置A〜Dを説明するための図である。
【図6】気泡発生位置A〜Dに気泡がある場合のセンサ感度、およびその温度特性を、気泡が発生していないものと比較した結果を示す図である。
【図7】気泡位置Aに気泡がある場合の気泡サイズに対するセンサ感度の関係を示す図である。
【図8】気泡位置Aに気泡がある場合の気泡サイズに対するセンサ感度の温度特性の関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ハウジング、2…センシングボディ、2a…ダイヤフラム、3…拡散ゲージ、4…シリコンチップ、5…ガラス層、6…気泡。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属ダイヤフラムを有するセンシングボディの前記金属ダイヤフラムの上に、拡散ゲージが形成されたシリコンチップをガラス層を介して接合し、この接合後に、前記センシングボディをハウジングに組付けてなる圧力センサの製造方法において、前記接合後に前記ガラス層の気泡を検査する検査工程を設け、その検査結果が良好とされたセンシングボディについて前記ハウジングへの組付けを行うことを特徴とする圧力センサの製造方法。
【請求項2】 前記検査工程は、前記拡散ゲージの下の前記ガラス層の気泡を検査するものであることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項3】 前記シリコンチップは面方位が(110)のものであって、前記拡散ゲージはセンターゲージとサイドゲージで構成されており、前記検査工程は、前記センターゲージの下の前記ガラス層の気泡を検査するものであることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項4】 前記検査工程は、前記気泡が200μm以下である場合に検査結果を良好とするものであることを特徴とする請求項3に記載の圧力センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2000−9569(P2000−9569A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 力,応力,トルク,仕事,機械的動力,機械的効率,または流体圧力の測定 | 抵抗ストレンゲージを使用するもの
電気 | 基本的電気素子 | 半導体装置,他に属さない電気的固体装置 | 整流,増幅,発振またはスイッチングに特に適用される半導体装置であり,少なくとも1つの電位障壁または表面障壁を有するもの;少なくとも1つの電位障壁または表面障壁,例.PN接合空乏層またはキャリア集中層,を有するコンデンサーまたは抵抗器;半導体本体または電極の細部 | 半導体装置の型 | 外からの機械的力,例.圧力,の変化によって制御可能なもの
【出願番号】特願平10−180754
【出願日】平成10年6月26日(1998.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー
【Fターム(参考)】
流体圧力測定 | 測定対象、使用分野 | 内燃機関 | エンジンシリンダ内圧
流体圧力測定 | 測定圧の種類 | 高圧
流体圧力測定 | 測定原理 | 感圧変位部材を用いるもの | ダイヤフラム
流体圧力測定 | 感圧部材の材料 | 半導体 | シリコン
流体圧力測定 | 感圧部材の変位歪等検出手段 | 歪ゲージ | 半導体型 | 拡散型
流体圧力測定 | 機能 | 温度特性向上
流体圧力測定 | 機能 | 感度精度向上 | 応力不均一是正
流体圧力測定 | 機能を奏するための手段、方法 | 製造方法に関するもの
流体圧力測定 | 機能を奏するための手段、方法 | 構造に関するもの | 部材結合 | 半導体ダイアフラムの接着構造
流体圧力測定 | 付属手段 | 圧力計の試験校正
圧力センサ | 素子の機能 | 流体圧力センサ
圧力センサ | 素子の種類 | 抵抗体に基づくもの
圧力センサ | 素子の構造 | ダイアフラム型素子 | ダイアフラムの構造、形状
圧力センサ | 素子の構造 | ダイアフラム型素子 | ダイアフラムの構造、形状 | 結晶配向、結晶軸
圧力センサ | 素子の構造 | ダイアフラム型素子 | 抵抗 | ゲージ抵抗 | 配置、形状
圧力センサ | 製造工程 | 素子本体の製造工程 | テスト、調整
圧力センサ | 製造工程 | 素子本体の製造工程 | 接着、接合、マウント
圧力センサ | 材料 | 素子本体の構成材料 | Si | Si単結晶
圧力センサ | 材料 | 素子本体の構成材料 | 金属、合金
圧力センサ | 材料 | 素子本体の構成材料 | ガラス
圧力センサ | 目的、効果 | 温度特性、耐熱性の向上
圧力センサ | その他の構成 | ハウジング
[ Back to top ]
