【課題】 入射する光線がビームスプリッタ等によって偏光していたとしても、射出される際には、どれも光エネルギー量が均一となるような複数本の光線に分離することができる光学式ローパスフィルタおよび該光学式ローパスフィルタを備えた撮像光学系を提供すること。
【解決手段】 光学式ローパスフィルタは、画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられる光学式ローパスフィルタであって、該LPFに入射する光の、画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とした場合に、該光学式LPFは、光が入射する順に、入射光を、水平方向を基準として、所定の角度θ方向に、分離幅δ
v×sinθで常光線と異常光線とに分離する第一の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として(θ−90°)方向に、分離幅δ
v×cosθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として0°方向に分離幅δ
hで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を有する構成とした。
[代表図面]
【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】公開特許公報(A)
【公開番号】
特開2001−290106(P2001−290106A)
【公開日】平成13年10月19日(2001.10.19)
【発明の名称】光学式ローパスフィルタおよび撮像光学系
【国際特許分類第7版】
G02B 27/46
5/30
H04N 5/225
5/335
// H04N101:00
【FI】
G02B 27/46
5/30
H04N 5/225 D
B
5/335 V
101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【全頁数】10
【出願番号】特願2001−20074(P2001−20074)
【出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【優先権主張番号】特願2000−21039(P2000−21039)
【優先日】平成12年1月31日(2000.1.31)
【優先権主張国】日本(JP)
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社
【発明者】

【代理人】弁理士(100078880)
【請求項1】
画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられる光学式ローパスフィルタであって、前記光学式ローパスフィルタに入射する光の、前記画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、前記画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とすると、入射光を、前記水平方向を基準として所定の角度θ、但し0°<θ<90°とする、方向に、分離幅δ
v×sinθで常光線と異常光線とに分離する第一の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として(θ−90°)方向に、分離幅δ
v×cosθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として0°方向に分離幅δ
hで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置したことを特徴とする光学式ローパスフィルタ。
【請求項2】
画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられる光学式ローパスフィルタであって、前記光学式ローパスフィルタに入射する光の、前記画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、前記画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とした場合、入射光を、前記水平方向を基準として所定の角度θ、但し−90°<θ<0°とする、方向に、分離幅|δ
v×sinθ|で常光線と異常光線とに分離する第一の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として(θ+90°)方向に、分離幅δ
v×cosθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として0°方向に分離幅δ
hで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置したことを特徴とする光学式ローパスフィルタ。
【請求項3】
画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられる光学式ローパスフィルタであって、前記光学式ローパスフィルタに入射する光の、前記画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、前記画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とした場合、入射光を、前記水平方向を基準として所定の角度θ、但し0°<θ<90°とする、方向に分離幅δ
h×cosθで分離する第一の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として(θ+90°)方向に、分離幅δ
h×sinθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として90°方向に分離幅δ
vで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置したことを特徴とする光学式ローパスフィルタ。
【請求項4】
画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられる光学式ローパスフィルタであって、前記光学式ローパスフィルタに入射する光の、前記画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、前記画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とした場合、入射光を、前記水平方向を基準として所定の角度θ、但し90°<θ<180°とする、方向に分離幅|δ
h×cosθ|で分離する第一の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として(θ−90°)方向に、分離幅δ
h×sinθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、前記水平方向を基準として90°方向に分離幅δ
vで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置したことを特徴とする光学式ローパスフィルタ。
【請求項5】
前記所定の角度θは、略45°であることを特徴とする、請求項1または請求項3に記載の光学式ローパスフィルタ。
【請求項6】
前記所定の角度θは、略−45°であることを特徴とする、請求項2に記載の光学式ローパスフィルタ。
【請求項7】
前記所定の角度θは、略135°であることを特徴とする、請求項4に記載の光学式ローパスフィルタ。
【請求項8】
前記入射光は、前記水平方向と前記垂直方向とでエネルギーレベルが異なることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の光学式ローパスフィルタ。
【請求項9】
前記第一の複屈折板または前記第三の複屈折板の、空気と接する面に赤外光をカットするコーティングが施してあることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の光学式ローパスフィルタ。
【請求項10】
撮像装置に用いられる撮像光学系であって、水平方向の画素ピッチPh、垂直方向の画素ピッチPvで規則正しく配列された画素を有する固体撮像素子と、前記固体撮像素子に、像を形成させる撮影レンズと、請求項1から請求項9のいずれかに記載の光学式ローパスフィルタと、を有することを特徴とする撮像光学系。
【請求項11】
前記撮像装置は、被写体からの光を前記固体撮像素子に導かれる光と所定の光学系に導かれる光とに分岐する分岐手段をさらに有するもので、前記光学式ローパスフィルタは、前記分岐手段と前記固体撮像素子との間の光路上に配置されることを特徴とする請求項10に記載の撮像光学系。
【請求項12】
前記所定の光学系は、ファインダ光学系であることを特徴とする請求項11に記載の撮像光学系。
【請求項13】
前記水平方向への分離幅δ
hと前記垂直方向への分離幅δ
vと前記水平方向の画素ピッチPhと前記垂直方向の画素ピッチPvとは互いに等しいことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の撮像光学系。
【請求項14】
前記光学式ローパスフィルタは、前記水平方向への分離幅δ
hおよび前記垂直方向への分離幅δ
vが変化しても常に全体の厚みが一定の厚みを有するように、所定の厚みを有するダミーガラスをさらに有することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれかに記載の撮像光学系。
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、デジタルカメラ、特に一眼レフタイプのデジタルカメラに使用される光学式ローパスフィルタおよび、該光学式ローパスフィルタを備えた撮像光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、銀塩フィルムに変わり、CCD等の固体撮像素子で撮影した画像を電気信号に変換し、メモリやフロッピー(登録商標)ディスク等に記録するデジタルカメラが普及している。デジタルカメラのように、縦横とも規則的に画素が配列されたCCD等を撮像面として使用する場合、隣り合う画素の中心間の距離(以下、画素ピッチという)よりも細かい画像の成分(高周波数成分)が撮像面に入射するとモアレ現象や偽色現象等の不都合が生じてしまう。
【0003】
上記諸現象を防ぐため、従来から撮影レンズとCCD等の撮像面との間に光学式ローパスフィルタ(以下、LPF(Low Pass Filter)という)を設けて、上記高周波数成分を除去し、CCD等の撮像面には低周波数成分のみが入射するようにして画質低下を防いでいる。
【0004】
図9に、従来のデジタルカメラで使用されているLPF10’の一例を表す。LPF10’は、撮影レンズ側から水平方向分離複屈折板1、偏光解消板2、垂直方向分離複屈折板3の順で構成されている。図9では、説明の便宜上、水平方向分離複屈折板1、偏光解消板2、垂直方向分離複屈折板3がそれぞれ独立した状態で描かれているが、実際のLPF10’は、それぞれ向かい合う面同士が接合され一体化している。なお本明細書において、説明の便宜上、長方形撮像素子の長辺方向(一眼レフデジタルカメラの通常使用状態におけるカメラボディーの幅方向)のことを水平方向といい、長方形撮像素子の短辺方向(一眼レフデジタルカメラの通常使用状態におけるカメラボディーの高さ方向)のことを垂直方向という。図9では水平方向をX方向と表し、垂直方向をY方向とする。また本明細書では、被写体からの光束のうち、特定の光線について説明を行う。
【0005】
一般に複屈折板は、1本の入射光線を、振動方向が互いに垂直な振動方向を有する常光線(Ordinary ray)と異常光線(Extraordinary ray)との2本の直線偏光に分離させるという特徴を有する。そして、常光線と異常光線との間隔、すなわち分離幅は、複屈折板の厚みに比例することが知られている。具体的には、複屈折板の材料に人工水晶を用いると、分離幅をd、複屈折板の厚みをtとすると、
で求めることができる。ここで、n
oは常光線の屈折率を、n
eは異常光線の屈折率をそれぞれ表す。
【0006】
従来のLPF10’は、入射光線をまず水平方向分離複屈折板1によって、水平方向に所定の分離幅で分離する。そして、水平方向分離複屈折板1から射出された2本の光線の偏光状態を、偏光解消板2によって解消する。偏光解消板2を透過した2本の光線は、自然光と同様の振動を有する。
【0007】
偏光解消板2から射出された2本の光線は、続いて垂直方向分離複屈折板3に入射する。そして各光線は、垂直方向分離複屈折板3によって垂直方向に分離される。分離された光線は水平方向に偏光された光線と、垂直方向に偏光された光線とに各々分離される。このように、入射光線を複数の光線(図9では4本)に分離して、CCD20に入射させることで、一つの像を複数にぼかすことができ、撮像される像の空間周波数成分中、余分な高周波数成分を除去する。
【0008】
上記従来のLPF10’を用いた場合、LPF10’に入射する光線が、自然光のように、特定の方向に偏光していない光線であれば、各画素に入射する分離された各点光線の光エネルギー量を均等に配分することができ(光エネルギー量の比1:1:1:1)、余分な高周波数成分を画像の水平方向、垂直方向で差を生じることなく均一に除去することができる。
【0009】
ところで近年デジタルカメラにおいても、一眼レフタイプが存在する。一眼レフデジタルカメラは、被写体からの光線を、所定の割合の光量で分割し、ファインダとCCD等の固体撮像素子とに導く。そのため、光路上、撮影レンズとLPFとの間にビームスプリッタを配置している。
【0010】
一般にビームスプリッタは、光分割コーティングが施されている。該コーティングにより分割された光は偏光特性を持つ。そのためビームスプリッタ射出後の分割された光は、全ての振動方向の光エネルギー量が所定の割合で分割されるのではなく、各振動方向によって異なる割合で分割される。このことは、ビームスプリッタから射出され固体撮像素子に導かれる光線は、垂直方向に振動する光エネルギー量と水平方向に振動する光エネルギー量とが異なった偏光状態にあることを意味する。なお、分割された2本の光線がそれぞれ有する振動方向における光エネルギー量の合計の比が、ビームスプリッタにおける上記所定の割合になる。
【0011】
上記のような偏光状態にある光線が、従来のLPF10’に入射すると、LPF射出後の分離された光線の光エネルギー量が等しくならない状態や、分離された光線のうち特定の光線の光エネルギー量が0の状態になるおそれがある。
【0012】
各光線の光エネルギー量が均等になるように光束を分離できない状態、あるいは特定の光線の光エネルギー量が0の状態になると、CCD20の隣り合う画素に入射する光線のエネルギー比が均等でなくなってしまう。すると、画像の水平方向と垂直方向とで画像をぼかす効果に差が生じてしまう。すなわち、高画質な画像の形成に不要な高周波数成分を、画像の方向によっては十分に除去することができず、偽色現象等が発生する。よって、従来のLPFはビームスプリッタを使用する一眼レフデジタルカメラには不適であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は上記の事情に鑑み、LPFに入射する光線がビームスプリッタ等によって偏光していたとしても、LPF射出後の各分離光線のどれも光エネルギー量が均一となるような複数本の光線に分離して高周波数成分を除去することができるLPFおよび該LPFを備えた撮像光学系を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載のLPFは、画素が規則的に配列された固体撮像素子に用いられるLPFであって、該LPFに入射する光の、画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とする。この場合該光学式LPFは、光が入射する順に、入射光を、水平方向を基準として所定の角度θ方向に、分離幅δ
v×sinθで常光線と異常光線とに分離する第一の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として(θ−90°)方向に、分離幅δ
v×cosθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として0°方向に分離幅δ
hで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を有することを特徴とする。但し、0°<θ<90°である。
【0015】
請求項1に記載のLPFによれば、入射前の光線が偏光状態にあってもLPFにより複数の光線に分離された状態で射出されるときはどの光線の光エネルギー量が均一の状態になる。
【0016】
本発明にかかるLPFは、上記請求項1に記載した配置構成のみならず、以下に記載する配置構成によっても、同様の効果を得ることができる。なお以下の配置構成においても、請求項1と同様に、LPFに入射する光の、画素が配列されている水平方向への分離幅をδ
h、画素が配列されている垂直方向への分離幅をδ
v、とする。
【0017】
請求項2に記載のLPFは、入射光を、水平方向を基準として、所定の角度θ方向に、分離幅|δ
v×sinθ|で常光線と異常光線とに分離する第一の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として(θ+90°)方向に、分離幅δ
v×cosθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として0°方向に分離幅δ
hで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置する構成にしている。但し、−90°<θ<0°である。
【0018】
請求項3に記載のLPFは、入射光を、水平方向を基準として、所定の角度θ方向に分離幅δ
h×cosθで分離する第一の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として(θ+90°)方向に、分離幅δ
h×sinθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として90°方向に分離幅δ
vで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置する構成にしている。但し、0°<θ<90°である。
【0019】
請求項4に記載のLPFは、入射光を、水平方向を基準として、所定の角度θ方向に分離幅|δ
h×cosθ|で分離する第一の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として(θ−90°)方向に、分離幅δ
h×sinθで常光線と異常光線とに分離する第二の複屈折板と、入射光を、水平方向を基準として90°方向に分離幅δ
vで常光線と異常光線とに分離する第三の複屈折板と、を光が入射する順に配置する構成にした。但し、90°<θ<180°である。
【0020】
ここで、LPFに入射する光線は、水平方向と垂直方向とでエネルギーレベルが異なっていても、必ず分離された光線における各光エネルギー量は全て均一にすることができる(請求項8)。
【0021】
また、請求項9に記載のLPFは、第一の複屈折板または第三の複屈折板における、空気と接する面に赤外光をカットするコーティングを施すことを特徴とする。これにより、撮像光学系における被写体からの光の光路上に赤外光を除去するための部材を別途設ける必要がなくなり、撮像光学系の構成を簡素化することができる。
【0022】
請求項10に記載の撮像光学系は、撮像装置に用いられる撮像光学系であって、水平方向の画素ピッチPh、垂直方向の画素ピッチPvで規則正しく配列された画素を有する固体撮像素子と、該固体撮像素子に、像を形成させる撮影レンズ群と、請求項1から請求項9のいずれかに記載のLPFと、を有することを特徴としている。
【0023】
ここで上記撮像装置は、被写体からの光を固体撮像素子に導かれる光と所定の光学系に導かれる光とに分岐する分岐手段をさらに有するものでもよく、その場合、上記LPFは、光路上分岐手段と固体撮像素子との間に配置されることが望ましい(請求項11)。上記所定の光学系は、例えばファインダ光学系である(請求項12)。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一眼レフデジタルカメラにおける撮像光学系100の概略構成を表す図である。撮像光学系100は、被写体からの光線が入射する順に、撮影レンズ群30、ビームスプリッタ40、LPF10、赤外光カットフィルタ50、CCD20を有する。CCD20は、画素が水平方向および垂直方向に規則的に配列されている。
【0025】
なお以下の説明で参照する図面においても、図9同様、X方向が水平方向を表し、Y方向が垂直方向を表す(図1、図2、図4〜図7)。また、本明細書に記載される角度は、通常使用状態の一眼レフデジタルカメラを正面からみた場合に、水平方向を基準(0°)にして、反時計回りに計った角度を正、時計回りに計った角度を負として説明する。
【0026】
まず本発明にかかるLPF10について詳しく説明する。図1に示すように、LPF10は、ビームスプリッタ40を透過した光線が入射する順に第一の複屈折板4、第二の複屈折板5、第三の複屈折板6が配置され接合されている。
【0027】
図2は、LPF10に入射した光線の分離状態を第一から第三の複屈折板4〜6を透過する毎に表した図である。図2において、太線で囲まれた四角形はそれぞれCCD20の画素の大きさを表している。なお本実施形態において使用するCCD20の画素ピッチは、水平方向においてPh、垂直方向においてPvとする(図2A参照)。また、分離された各光線がCCD20の各画素に受光されるために必要とされる水平方向の分離幅をδ
hとし、垂直方向の分離幅をδ
vとする(図2B、C参照)。
【0028】
また図2では、第一の複屈折板4には、水平方向(0°)から+45°方向に分離幅d
1だけ分離させる複屈折板を、第二の複屈折板5には、水平方向から−45°方向に分離幅d
2だけ分離させる複屈折板を、第三の複屈折板6には水平方向に分離幅δ
hだけ分離させる複屈折板を接合したLPF10を使用した分離状態を表している。
【0029】
水平方向に振動する光エネルギー量と垂直方向に振動する光エネルギー量との比が1:1ではなく偏光状態にある光線がLPF10に入射すると、図2Aに示すように、まず第一の複屈折板(45°板)4によって2本の光線に分離される。具体的には、入射光線は、分離方向(+45°)と垂直な振動方向(−45°)を有し第一の複屈折板4内を直進する常光線L1と、分離方向と同一の振動方向を有し分離方向に所定の分離幅d
1だけずれてから直進する異常光線L2とに分離される。
【0030】
第一の複屈折板4は、入射光線を、水平方向と垂直方向とのちょうど中間に当たる−45°方向に振動する光線L1と+45°方向に振動する光線L2とに分離するため、水平方向に振動する光エネルギー量と垂直方向に振動する光エネルギー量との比が1:1にない状態の光線が入射した場合であっても、分離後の各光線L1、L2の光エネルギー量の比は1:1になる。光エネルギー量の比が均等な状態の光線L1および光線L2は、次に第二の複屈折板5に入射する。
【0031】
図4Bに示すように、光線L2は+45°方向にのみ振動する直線偏光であるため、分離方向(−45°)と垂直な振動方向(+45°)を有し第二の複屈折板5内を直進する常光線L3のみが現れる。すなわち、分離方向と同一の振動方向における光エネルギー量が0であるため、異常光線は発生しない。一方、光線L1は、−45°方向にのみ振動する直線偏光であるため、分離方向と垂直な振動方向における光エネルギー量は0となり、常光線は発生しない。よって、分離方向と同一の振動方向を有する異常光線L4のみが、分離方向に所定の分離幅d
2だけずれてから直進する状態で現れる。
【0032】
第一の複屈折板4および第二の複屈折板5によって発生する光線L1〜L4までの関係について、図3を参照しつつさらに詳述する。
【0033】
図3に示すように、第一の複屈折板4によって、入射光線は常光線L1と異常光線L2とに分割される。光線L1と光線L2間の線分(線分L1L2)の長さを分離幅d
1とする。また線分L1L2が水平方向に対して成す角度を分離方向θ
1とする。同様に光線L1と光線L4間の線分(線分L1L4)の長さを分離幅d
2とし、線分L1L4が水平方向に対して成す角度を分離方向θ2とする。角度θ
2は、(θ
1−90°)で表すことができる。
【0034】
ここで図3中、光線L1からの異常光線L4および光線L2からの常光線L3が第二の複屈折板5によって分割されたものである。線分L1L2と線分L1L4とが成す角度は直角である。さらに光線L3と光線L4間の線分(線分L3L4)は垂直方向と平行な状態にあり、その長さは垂直方向の分離幅δ
Vに等しい。以上より、垂直方向の分離幅δ
Vと分離幅d
1とは以下の式(2)の関係を有する。
但し、0°<θ
1<90°である。同様に、垂直方向の分離幅δ
Vと分離幅d
1とは以下の式(3)の関係を有する。
【0035】
図2に示す実施形態では、θ1が+45°(従って、θ2=(θ1−90°)=−45°)であるため、第一の複屈折板4における所定の分離幅d
1および第二の複屈折板5における分離幅d
2は、以下の式によって求められる。
【0036】
第一の複屈折板4の厚みは、上記の式より求められたd
1を(1)式に代入することにより求められる。同様に第二の複屈折板5の厚みは、上記の式より求められたd
2を(1)式に代入することで求められる。
【0037】
上述のように、第二の複屈折板5では、入射する光線L1および光線L2を再度分離しているが、どちらの光線も、第二の複屈折板5により分離された一方の光線の光エネルギー量が0であるため、第二の複屈折板5を透過する光線L3および光線L4の光エネルギー量は、光線L1や光線L2の光エネルギー量から変化することはない。よって、光線L3と光線L4との光エネルギー量の比は1:1である。しかも、第一の複屈折板4および第二の複屈折板5の作用により、2本の光線L3、L4は、垂直方向に分離幅d
3だけ分離された状態にある。ここでd
3は、
となり、δ
vだけ分離した状態が得られる。2本の光線L3、L4は、続いて第三の複屈折板6に入射する。
【0038】
図2Cに示すように、+45°方向にのみ振動する直線偏光である光線L3は、第三の複屈折板6によって、分離方向(0°)と垂直な振動方向(+90°)を有し第三の複屈折板6内を直進する常光線L5と、分離方向と同一の振動方向を有し分離方向に所定の分離幅δ
hだけずれてから直進する異常光線L6とに分離される。同様に、−45°方向にのみ振動する直線偏光である光線L4も、分離方向と垂直な振動方向を有し第三の複屈折板6内を直進する常光線L7と、分離方向と同一の振動方向を有し分離方向に所定の分離幅δ
hだけずれてから直進する異常光線L8とに分離される。
【0039】
なお、第三の複屈折板6の厚みは、δ
hが得られるように厚みを決める。これは(4)式で求められたd
3を(1)式に代入することで求められる。
【0040】
第三の複屈折板6は、入射する各光線L3、L4を、+45°方向と−45°方向とのちょうど中間に当たる垂直方向に振動する各光線L5、L7と、同じく中間に当たる水平方向に振動する各光線L6、L8とに分離することができる。そのため、分離後の各光線L5、L6、L7、L8の光エネルギー量の比は1:1:1:1になる。すなわちLPF10は、被写体からの光線が有する余分な高周波数成分を画像の水平方向、垂直方向で差を生じることなく均一に除去することができる。
【0041】
以上を式で表す。L3の光エネルギーをE1、L4の光エネルギーをE2、L5、L6、L7、L8の光エネルギーをそれぞれEa、Eb、Ec、Edとし、LPF10への入射光が水平方向にα、垂直方向にβの強度をもつ偏光した光である場合、
となり、分離された4つの光線L5〜L8のそれぞれの光エネルギーEa、Eb、Ec、Edは等しくなる。
【0042】
次に、上記LPF10を備えた撮像光学系100において、被写体からの光線がCCD20に受光されるまでを、図1を参照しつつ概説する。
【0043】
被写体からの光線は、撮影レンズ群30を介してビームスプリッタ40に入射する。ビームスプリッタ40は、ハーフミラー面41において、例えば入射光線の光量の約70〜80%を透過してCCD20へ導くと同時に、約20〜30%を反射して図示しないファインダ光学系に導くことができる。ここで、CCD20よりもファインダ光学系に導かれる光線の光量を少なくするのは、ファインダ光学系に導かれる光線の光量は、ファインダ光学系のアイピースによって被写体の構図を決定するために必要な量であれば十分足りるからである。逆にCCD20は、受光面で受光した光量に対応する信号を図示しない画像処理部に送信することから、ビームスプリッタ40は、ファインダ側で問題がない限り、可能な限り多くの光量をCCD5に与えるように入射光線を分岐することが望ましい。
【0044】
ここでビームスプリッタ40を透過した光線は、既に述べた通り、水平方向の光エネルギー量と垂直方向の光エネルギー量とが同一でない、いわゆる偏光状態にある。
【0045】
偏光状態にある光線は、ビームスプリッタ40から射出された後、LPF10に入射する。LPF10は、上述したように偏光状態にある光線を光エネルギー量が等しい4本の光線L5、L6、L7、L8に分離する。該4本の光線L5、L6、L7、L8は、LPF10から射出され赤外カットフィルタ50を介してCCD20の互いに隣り合う画素に入射する。
【0046】
なお赤外カットフィルタ50は、入射する光線に含まれる、画質を低下させる一因になる赤外成分を除去して、赤外光にも感度があるCCD20であっても画質を低下させずに高画質の像を撮影できるようにしている。
【0047】
CCD20の画素は、LPF10から射出された光エネルギー量が均等な各光線L5、L6、L7、L8を受光する。ここでCCD20は、入射する光線の光エネルギー量にのみ対応して電気信号を発生させるものであって、入射する光線の振動方向による影響は受けない。CCD20は、高周波数成分による色モアレ現象等を生じることなく像を撮影することができる。
【0048】
以上が本発明の実施形態である。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。以下、いくつかの変形例を挙げる。
【0049】
上述した実施形態では、LPF10は、+45°方向に分離幅d
1だけ分離させる複屈折板(第一の複屈折板4)と、−45°方向に分離幅d
2だけ分離させる複屈折板(第二の複屈折板5)と、水平方向(0°)に分離幅δ
hだけ分離させる複屈折板(第三の複屈折板6)とから構成されたものを使用している。しかし、LPF10の構成はこれらに限定されるものではない。
【0050】
以下、LPF10の変形例を図4から図6を参照しつつ三つ説明する。図4から図6は、配置構成を変形したLPFを用いた場合における分離状態を表した図である。
【0051】
図4に示す第一の変形例では、第一の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれθ
1、d
4とする。第二の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ(θ
1+90°)、d
5とする。但し、−90°<θ
1<0°である。さらに、第三の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ0°、δ
hとする。ここで、分離幅d
4、d
5は、以下の式(5)、(6)によって求めることができる。
但し、−90°<θ
1<0°である。
【0052】
図4では、第一の変形例においてθ
1を−45°に設定したLPFにおける入射光線の分離状態を図示する。該分離状態の説明については、上述した図2での説明とほぼ同一であるので省略する。なお図4において、画素ピッチ(Ph、Pv)、分離幅(δ
v、δ
h)等は全て図2と同じ値である。以下に説明する図5、図6も同様である。
【0053】
図5に示す第二の変形例では、第一の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれθ
1、d
6とする。第二の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ(θ
1+90°)、d
7とする。但し、0°<θ
1<90°である。さらに、第三の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ+90°、δ
vとする。ここで、分離幅d
6、d
7は、以下の式(7)、(8)によって求めることができる。
但し、0°<θ
1<90°である。
【0054】
図5では、第一の変形例においてθ
1を+45°に設定したLPFにおける入射光線の分離状態を図示する。該分離状態の説明については、上述した図2での説明とほぼ同一であるので省略する。
【0055】
図6に示す第二の変形例では、第一の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれθ
1、d
8とする。第二の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ(θ
1−90°)、d
9とする。但し、90°<θ
1<180°である。さらに、第三の複屈折板における分離方向および分離幅をそれぞれ+90°、δ
vとする。ここで、分離幅d
8、d
9は、以下の式(9)、(10)によって求めることができる。
但し、90°<θ
1<180°である。
【0056】
図6では、第一の変形例においてθ
1を+135°に設定したLPFにおける入射光線の分離状態を図示する。該分離状態の説明については、上述した図2での説明とほぼ同一であるので省略する。
【0057】
図5と図6でそれぞれ使用しているLPFの場合、入射光線を第一の複屈折板および第二の複屈折板で、まず水平方向へδ
hだけ分離した後(図5A、図5B、図6A、図6B)、第三の複屈折板で垂直方向へδ
vだけ分離して計4本のエネルギー比が均等な光線を作り出している(図5C、図6C)。この点、先に垂直方向への分離を行うことを特徴とする、図2および図4におけるLPFと異なる。
【0058】
また上述した様々な分離角度に関しては全て、LPF10の余分な高周波数成分を除去するという機能を最大限に発揮できる状態での値を記している。従って、例えばLPF10の製造工程において生じてしまう誤差等は、許容範囲内として考える。
【0059】
上記実施形態では、光路上LPF10の後方に赤外カットフィルタ50を設けて、赤外光がCCD20に入射しないようにしている。しかし赤外カットフィルタ50を設けずに、LPF10に赤外光をカットする機能を持たせることも可能である。図7では、第一の複屈折板6の空気に接する面に赤外光をカットするコーティング50’を施した状態にあるLPF10を備えた撮像光学系100を表している。なお赤外光をカットするためのコーティングは、LPF10において、第一の複屈折板4または第三の複屈折板6のいずれか一方もしくは両方の空気に接する面に施すことが可能である。
【0060】
ところでCCD20の画素数が増加すればするほど、必要とされる分離幅は小さくなるため、第一から第三の複屈折板4〜6の厚みは薄くなる。そのため、上記実施形態におけるLPF10は、第一から第三の複屈折板4〜6のみで構成されているが、図8に示すように、LPF10全体の厚みを一定にするために所定の厚みを有するダミーガラス60を挿入することも可能である。ダミーガラス60を挿入することにより、LPF10の厚みが一定になり種々の分離幅を持つLPF10に対して撮像レンズおよび構造の共通化を図ることができる。すなわち、様々な画素数のCCDに対応することができる。
【0061】
【発明の効果】
上述の通り本発明のLPFは、入射光線をそれぞれ所定の方向に所定の分離幅を与えつつ分離することができる3枚の複屈折板を所定の順序で接合することにより、入射する光線が偏光状態にあっても、どれも光エネルギー量が均一となるような複数本の光線に分離することができる。
【図1】本発明のデジタルカメラの撮像光学系の概略図である。
【図2】本発明のLPFを用いた場合の光線の分離状態を表した図である。
【図3】本発明のLPFを用いた場合の光線の分離に関する説明図である。
【図4】本発明のLPFを用いた場合の光線の分離状態を表した図である。
【図5】本発明のLPFを用いた場合の光線の分離状態を表した図である。
【図6】本発明のLPFを用いた場合の光線の分離状態を表した図である。
【図7】赤外カット用のコーティングを施したLPFを備えたデジタルカメラの撮像光学系の概略図である。
【図8】ダミーガラスを接合したLPFを表した図である。
【図9】従来のLPFを表した図である。
【符号の説明】
10 LPF
4 第一の複屈折板
5 第二の複屈折板
6 第三の複屈折板
20 CCD
30 撮影レンズ群
40 ビームスプリッタ
50 赤外カットフィルタ
100 撮像光学系
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】