説明

アシルフェロセンの調製のための改良されたプロセス

本発明は、アシルフェロセンを調製するためのプロセスに関する。このプロセスは、フェロセンを、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物アシル化剤と、モンモリロナイトまたは金属イオン交換K10モンモリロナイト粘土触媒存在下、溶媒中で、約80〜165℃の範囲の温度において3〜8時間、反応させる工程、およびアシルフェロセンを従来の方法によって回収する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アシル化剤としてのC2〜C7酸無水物および触媒としてのモンモリロナイト粘土(clay)を使用する、フェロセンからアシルフェロセンを調製するための改良されたプロセスに関する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、アシル化剤として塩化アシルを、そしてフリーデル−クラフツ試薬として腐食性かつ毒性の塩化アルミニウム、ポリリン酸、三フッ化ホウ素およびフッ化水素を使用せず、アシル化剤として酸無水物および触媒としてモンモリロナイト粘土を使用するフェロセンからアシルフェロセンを調製するための環境にやさしいプロセスに特に関する。このプロセスは、中和プロセスの結果、形成される塩の処理を、全く排除する。
【0003】
アシルフェロセンは、機能性高分子、界面活性剤、電荷移動錯体、イオンセンサー、マスキング試薬、カップリング試薬、キラル触媒、推進剤の燃焼触媒などの種々の機能性物質の生成のための重要な中間体である。アシルフェロセンはまた、鉄欠乏症状および鉄欠乏性貧血(貧血は、繰り返しの放血によって引き起こされる)の処置のための医薬として使用される。
【0004】
フェロセンのハロゲン化アシルによるフリーデル−クラフツアシル化は、アシルフェロセンの形成を導く。フェロセンは、アシル化において、ベンゼンと比較して106倍より反応性が高い。それらは、フェロセンを無水酢酸/塩化アシルと、塩化アルミニウムまたはリン酸存在下で反応させることによって、一般に調製される。アシルフェロセンおよびジアシルフェロセンの両方が、フェロセンの比率、酸塩化物、および添加の様式を、変化させることによって満足な収率で調製され得る。モノアシルフェロセンは、酸塩化物、塩化アルミニウム錯体をフェロセン溶液に液滴添加することによって調製され、ここで、当モル量の酸塩化物、触媒およびフェロセンを使用する。ジアシルフェロセンは、フェロセン溶液を、酸塩化物および塩化アルミニウムの両方がフェロセンに対して、2:1より大きいモル比を使用して、その錯体に添加することによって調製される。
【0005】
RosenblumおよびWoodwardによる出版物(J.Am.Chem.Sco.、80、5443、1958)が、参照され得、ここで、アシルフェロセンは、化学量論量の塩化アルミニウムの存在下での、フェロセンと塩化アセチルの反応によって調製される。Vogelの教科書(Practical Oganic Chemistry、第5版、p1014、1989)が、参照され得、ここで、アシルフェロセンは、85%リン酸存在下での、フェロセンと無水酢酸との反応によって、調製される。
【0006】
英国特許BP特許第869504号、同第819108号を参照され得、ここで、フェロセンを、ルイス酸(例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、フッ化水素、またはポリリン酸)が存在するフリーデル−クラフツ条件下で、適切な酸塩化物または酸無水物と、溶媒(二硫化炭素、エーテル、ニトロメタンまたは塩化エチレン)中で反応させることで、アシルフェロセンが製造される。これらのプロセスの欠点は、塩化アルミニウムが使用される場合、ジアシル化合物が優先的に得られるのに対し、フッ化水素またはポリリン酸の存在下では、モノアシル化合物が生成される、ということである。他の欠点は、化学量論量の有害な塩化アルミニウム/ポリリン酸および単調なワークアップ(work−up)手順の使用である。
【0007】
従って、種々のアプローチが、アシルフェロセンを調製するために、明らかに使用されてきており、そして従来のルイス酸触媒は、腐食性試薬の使用、分離および再使用性の欠如といった本来の問題のために、最も好まれていないが、これが、種々のアプローチと関連している。
【0008】
先行技術のプロセスにおける、上記および他の欠点を事前に除去するために、本出願者らは、アシルフェロセン調製のための新規のプロセスを発展させた。
【0009】
(発明の目的)
本発明の主な目的は、フェロセン、アシル化剤としての酸無水物および触媒としてのモンモリロナイト粘土から、アシルフェロセンの調製のための改良されたプロセスを提供することである。
【0010】
別の目的は、安価でおよび豊富に利用可能なモンモリロナイト粘土触媒を、アシルフェロセンの調製のために使用することである。
【0011】
なお別の目的は、再利用可能な、容易に分離可能な固体酸触媒を、アシルフェロセンの調製において使用することである。
【0012】
さらなる別の目的は、K10モンモリロナイト/金属イオン交換K10モンモリロナイトを、触媒として使用することである。
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、アシルフェロセンの調製のためのプロセスに関し、このプロセスは、市販のモンモリロナイトおよび種々の金属イオン交換酸触媒を、アシル化を実施するために使用する。本発明は、市販のK10モンモリロナイトおよび種々の金属イオン交換K10モンモリロナイトを、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物をアシル化剤として用いる、フェロセンのアシル化を実施するための固体酸触媒として使用することに関する。本発明は、他を上回る収率、モノアシルフェロセンに向かうより高い選択性、そしてほぼ無視できる排出物を提供する。これらの利点は、有害な無水塩化アルミニウムを、大量の固体廃棄物を発生する試薬として利用する、現在実行されているプロセスと比較された場合に、全く強い印象を与える。従って、本発明に記載のプロセスは、技術的に実行でき、経済的に存立でき、そして環境にやさしい。
【0014】
(発明の詳細な説明)
それ故、本発明は、アシルフェロセンを調製するためのプロセスに関する。このプロセスは、フェロセンを、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物アシル化剤と、モンモリロナイトまたは金属イオン交換K10モンモリロナイト粘土触媒存在下、溶媒中で、約80〜165℃の範囲の温度において3〜8時間、反応させる工程、およびアシルフェロセンを従来の方法によって回収する工程を包含する。
【0015】
ある実施態様において、アシル化剤は、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物の群から選択される。
【0016】
別の実施態様において、アシル化剤は、無水酢酸から無水ヘプタン酸を含む、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物の群から選択される。
【0017】
別の実施態様において、置換炭化水素溶媒は、クロロベンゼンである。
【0018】
なお別の実施態様において、モンモリロナイト/金属イオン交換K10モンモリロナイト粘土触媒は、Co2+、Zn2+、Al3+、Ce3+、La3+、およびZr4+モンモリロナイトから選択される。
【0019】
さらなる別の実施態様において、使用される触媒の量は、装填された基質に関して、5〜50重量%である。
【0020】
別の実施態様において、溶媒は、置換炭化水素または自己溶媒(self solvent)として作用する無水物から選択される。
【0021】
ある実施態様において、反応が、120〜165℃の範囲の温度で、3〜8時間、実施される。
【0022】
本発明において、本出願者らは、市販のK10モンモリロナイトおよび種々の金属イオン交換K10モンモリロナイトを、C2〜C7酸無水物(無水酢酸から無水ヘプタン酸)をアシル化剤として用いる、フェロセンのアシル化のための固体酸触媒として、最初に使用した。
【0023】
酸処理モンモリロナイト、K10において、ブレンステッド酸性の部位の密度は、天然モンモリロナイトの積み重なった層の崩壊から生じる壊れた縁の数が増加したために、増加するが、ルイス酸性は、天然モンモリロナイトに本来存在する金属イオンの酸処理中の脱離が原因で、減少する。非常に高いブレンステッド酸性を有するK10モンモリロナイトは、従って、上に例示されたように、アシル化を引き起こす。遷移金属のモンモリロナイトK10内への交換プロセスによる導入は、この物質のルイス酸性を増加させ、同時にブレンステッド酸性を減少させる。種々の改変モンモリロナイトの効力は、フェロセンのアシル化において、以下の順序である:ゼオライト<Cu2+モンモリロナイト<Fe3+モンモリロナイト<Zn2+モンモリロナイト<FePILC−K10<K10モンモリロナイト。この結果は、より高い密度の酸性部位、すなわち、K10モンモリロナイトのブレンステッド部位またはFePILC−K10のルイス部位は、フェロセンのアシル化を引き起こすことを示す。
【0024】
全ての金属イオン交換K10モンモリロナイト触媒は、実施例1に記載されるように調製され、そして実施例に記載されるように、酸無水物をアシル化剤として用いる、フェロセンのアシル化において使用された。
【0025】
以下の実施例は、本発明の例証として与えられ、そして従って、発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0026】
(実施例1)
一連の触媒は、下に記載のように調製された。フェロセンの種々の触媒の無水酢酸によるアシル化が、表1に提供される。表2に、種々のアシル化剤を使用した転化が%で、詳述されている。
【0027】
A)K10モンモリロナイト(M/s.Fluka、a Sigma Aldrich Company、Switzerlandから得た)は、そのままで使用された。
【0028】
B)金属交換モンモリロナイト: Fe3+交換モンモリロナイト:80gのK10モンモリロナイト(M/s.Fluka、a Sigma Aldrich Company、Switzerlandから得た)を、FeCl3(1.0M)の1リットル(lt)水溶液に、攪拌しながら添加した。攪拌は、K10モンモリロナイトの交換容量を飽和するために、16〜30時間維持された。この粘土懸濁液を遠心分離し、そして上澄み溶液を捨てた。洗浄サイクルが、Cl-イオンが、捨てられた溶液から消失するまで、繰り返された。この粘土を、オーブンにおいて120℃で一晩乾燥し、そして、モルタル状に最終的に粉砕した。
【0029】
Cu2+、Co2+、Zn2+、Al3+、Ce3+、La3+、またはZr4+モンモリロナイト触媒のような、他の金属交換粘土を、同様手順で、対応する金属塩を溶解することによって調製した。
【0030】
C)K10モンモリロナイトからFePILC:(FePILC−K10=鉄支持(pillared)粘土)
Na−モンモリロナイトを、市販のK10モンモリロナイトを過剰の塩化ナトリウム水溶液中に懸濁し、かつ24時間攪拌することによって調製した。Na−モンモリロナイトを遠心分離によって分離し、そして塩化物イオンがなくなるまで、脱イオン水によって洗浄し、そして空気乾燥した。この空気乾燥粘土の陽イオン交換容量は、0.8当量である。三核の硝酸アセトヒドロキシ鉄(III):Fe3(OCOCH37OH.2H2ONO3.は、Na−モンモリロナイトとの交換のための陽イオン源として使用された。それを、80.8gのFe(NO33.5H2Oを50mlのエチルアルコールに溶解することによって調製した。これは、140mlの無水酢酸と、熱の放出を伴いながら反応した。次いで、この溶液を、氷浴中で冷却し、そして得られた沈澱を分離し、そしてさらに精製することなく、支持手順において使用した。
【0031】
陽イオン交換:水700ml中の三核の硝酸アセトヒドロキシ鉄(III)(19.48g)の0.04mole/l水溶液を、攪拌した1%Na−モンモリロナイト水性懸濁液(800mlの水に8gのNa−モンモリロナイト)に添加した。この混合物を、40℃で3時間、攪拌し、遠心分離で分離し、そして水で数回洗浄して、過剰の鉄イオンを取り除き、そして空気乾燥し、FePILC−K10を得た。
【0032】
(実施例2)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー(rotavapor)上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.193g)を得た。
【0033】
(実施例3)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、Fe3+交換モンモリロナイト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.134g)を得た。
【0034】
(実施例4)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、Zn2+モンモリロナイト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.134g)を得た。
【0035】
(実施例5)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、Cu2+モンモリロナイト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、純粋な生成物(0.114g)を得た。
【0036】
(実施例6)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、Fe支持(pillared)K10モンモリロナイト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.162g)を得た。
【0037】
(実施例7)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(1ml、10mmol)およびクロロベンゼン(10ml)を、R.Bフラスコ(50ml)中、ゼオライト触媒(0.200g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.112g)を得た。
【0038】
(実施例8)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酢酸(2mmol)およびクロロベンゼン(3ml)を、シュレンク(Schlenk)フラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.093g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.134g)を得た。
【0039】
(実施例9)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水プロピオン酸(2mmol)およびクロロベンゼン(3ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.093g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、純粋な生成物(0.194g)を得た。
【0040】
(実施例10)
フェロセン(1mmol、0.186g)、無水酪酸(2mmol)およびクロロベンゼン(3ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.093g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、純粋な生成物(0.204g)を得た。
【0041】
(実施例11)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水吉草酸(2mmol)およびクロロベンゼン(3ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.093g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.217g)を得た。
【0042】
(実施例12)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水ヘキサン酸(2mmol)およびクロロベンゼン(3ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.093g)の存在下で、還流温度において加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そしてロータベーパー上で濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.220g)を得た。
【0043】
(実施例13)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水酢酸(2.5ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.047g)の存在下で、還流温度まで加熱した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を、蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.207g)を得た。
【0044】
(実施例14)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水プロピオン酸(2.5ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.047g)の存在下で、165℃の油浴温度において攪拌した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.210g)を得た。
【0045】
(実施例15)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水酪酸(2.5ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.047g)の存在下で、165℃の油浴温度において攪拌した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.230g)を得た。
【0046】
(実施例16)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水吉草酸(2.5ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.047g)の存在下で、165℃の油浴温度において攪拌した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.240g)を得た。
【0047】
(実施例17)
フェロセン(1mmol、0.186g)および無水ヘキサン酸(2.5ml)を、シュレンクフラスコ(5ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.047g)の存在下で、165℃の油浴温度において攪拌した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(0.250g)を得た。
【0048】
(実施例18)
フェロセン(10mmol、1.86g)および無水酢酸(25ml)を、シュレンクフラスコ(50ml)中、K10モンモリロナイト触媒(0.470g)の存在下で、加熱還流した。反応の完了後(TLCで追跡した)、反応混合物をろ過し、そして、この過剰の無水物を蒸留によって回収し、粗生成物を得た。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにかけ、アシル化生成物(2.00g)を得た。
【0049】
種々の触媒による、フェロセンの無水酢酸によるアシル化が、表1に提供されている。表2は、フェロセンの種々のアシル化剤によるアシル化における、転化を%で提供する。
【0050】
【表1】


【0051】
【表2】


(発明の利点)
1.このプロセスは、アシルフェロセンの調製に対し、新しく、そして環境にやさしい。
【0052】
2.このプロセスは、腐食性の塩化アルミニウムの使用を排除する。
【0053】
3.粘土が、フェロセンのアシル化のための触媒として、腐食性の塩化アルミニウムおよびリン酸の代わりに、初めて使用される。
【0054】
4.粘土(触媒の支援としてまたは触媒として使用される)は、安価で、そして天然に豊富に利用可能である。
【0055】
5.反応および収率の選択性は、定量的である。
【0056】
6.本発明は、他を上回る収率、モノアシルフェロセンに向かうより高い選択性、およびほぼ無視できる排出物を提供する。これらの利点は、有害な無水塩化アルミニウムを、大量の固体廃棄物を発生する試薬として利用する、現在実施されているプロセスと比較された場合に、全く強い印象を与える。従って、本発明に記載のプロセスは、技術的に実行でき、経済的に存立でき、そして環境にやさしい。
【0057】
7.この反応は、単純でより短期間であり、そして単純であるワークアップ手順は、このプロセスを経済的にする。
【0058】
8.本発明のプロセスは、触媒が数回のサイクルに渡って使用され得るので、処分問題を考えない。この触媒は、4回のサイクルに曝され、一貫した活性を示した。
【0059】
9.本発明のプロセスは、処分問題がないので、環境的に安全である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アシルフェロセンを調製するためのプロセスであって、ここで、該プロセスが、フェロセンを、C2〜C7の炭素原子を有する酸無水物アシル化剤と、モンモリロナイトまたは金属イオン交換K10モンモリロナイト粘土触媒存在下、溶媒中で、約80〜165℃の範囲の温度において3〜8時間、反応させる工程、および該アシルフェロセンを従来の方法によって回収する工程を包含する、プロセス。
【請求項2】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記アシル化剤が、炭素原子C2〜C7を有する酸無水物の群から選択される、プロセス。
【請求項3】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記アシル化剤が、無水酢酸から無水ヘプタン酸までを含む酸無水物の群から選択される、プロセス。
【請求項4】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記モンモリロナイト/金属イオン交換K10モンモリロナイト粘土触媒が、Co2+、Zn2+、Al3+、Ce3+、La3+、またはZr4+−モンモリロナイトから選択される、プロセス。
【請求項5】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、使用される前記触媒の量が、充填された基質に対して、5〜50重量%である、プロセス。
【請求項6】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記溶媒が、置換炭化水素または自己溶媒として作用する無水物から選択される、プロセス。
【請求項7】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記置換炭化水素溶媒が、クロロベンゼンである、プロセス。
【請求項8】 請求項1に記載のプロセスであって、ここで、前記反応が、120〜165℃の範囲の温度で、3〜8時間の間、実施される、プロセス。

【公表番号】特表2003−513094(P2003−513094A)
【公表日】平成15年4月8日(2003.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−535352(P2001−535352)
【出願日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【国際出願番号】PCT/IN00/00041
【国際公開番号】WO01/074832
【国際公開日】平成13年10月11日(2001.10.11)
【出願人】
【氏名又は名称】カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ
【Fターム(参考)】