説明

自脱型の脱穀機

【課題】本発明は、刈り取った穀稈の株元を脱穀フィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀する自脱型の脱穀機でありながら、穀粒が脱粒しやすいインディカ種の稲の脱穀に好適な脱穀機を提供することを目的とする。
【解決手段】扱胴軸15の軸心方向両端部に設けた第1支持部材16と第2支持部材17とに亘って扱胴回転周方向に間隔を隔てて3本又は4本の扱胴フレーム18を架設し、扱胴フレーム18に外方に向けて突出する姿勢で、且つ、扱胴軸15の軸心方向に沿って間隔を隔てて、複数の棒状の扱歯19を扱胴フレーム18に片持ち状に取り付けて、扱胴4を構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を脱穀フィードチェーンで挟持搬送しながら扱胴と受網との間で脱穀する自脱型の脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自脱型の脱穀機の扱胴としては、棒状体を略V字状に屈曲させて扱歯を形成し、V字状の扱歯の両端を円筒状のドラムの周囲に多数本取り付けたものが知られている(特許文献1の図4参照)。
【0003】
日本で生産されているジャポニカ米は比較的脱粒し難いので、これに適した脱穀が行えるように、特許文献1に記載のように扱歯が扱胴の軸心方向並びに周方向に多数植設されている。
【0004】
インドやタイ、中国の中南部や東南アジアで生産されているインディカ米は、一般に穀稈の長さがジャポニカの1.5〜2.0倍ほどあり、稈長が非常に長い。そして、脱穀に際しては非常に脱粒し易い。
インディカ米を特許文献1に示されているような従来の自脱型の脱穀機で脱穀することは可能であるが、インディカ米の場合、自脱型の脱穀機の扱室で脱穀され始めると、直ぐに全稈が脱粒されてしまい、扱室後半ではフィードチェーンで挟持されている穀稈が引き千切られてワラ屑の量が多くなる。特に、穀稈が湿っているときには、長い穀稈が扱胴のドラムに巻きついて、穀稈が引き千切られたり、株元から引き抜かれやすくなる。特許文献1の自脱型の脱穀機の場合は、扱胴のドラムと受網ないし天板との間の狭い空間しかないので、大量のワラ屑が発生するとワラ屑が排出しきれずに詰まりの原因ともなる。
又、上記特許文献1の自脱型の脱穀機では、扱胴の製作に比較的工数が掛かり、生産性に改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−193910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、刈り取った穀稈の株元を脱穀フィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀する自脱型の脱穀機でありながら、穀粒が脱粒しやすいインディカ種の稲の脱穀に好適な自脱型の脱穀機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、以下のように構成することを特徴とする。
穀稈を脱穀フィードチェーンで挟持搬送しながら扱胴と受網との間で脱穀する自脱型の脱穀機において、扱胴軸の軸心方向両端部に設けた第1支持部材と第2支持部材とに亘って、扱胴回転周方向に間隔を隔てて3本又は4本の扱胴フレームを架設し、前記扱胴フレームから外方に向けて突出する姿勢で、且つ、前記扱胴軸の軸心方向に沿って間隔を隔てて、複数の棒状の扱歯を前記扱胴フレームに片持ち状に取り付けて、前記扱胴を構成してあることを特徴とする。
【0008】
〔第1発明の作用〕
第1発明の構成によれば、扱胴は扱胴回転周方向に間隔を隔てて3本又は4本の扱胴フレームを架設したもので、扱歯を備えた扱胴フレームを周方向に略90度以上間隔を隔てて配設したフレーム式の扱胴であり、脱穀処理中の穀稈は、扱胴(この場合、扱胴フレームの回転軌跡を指す)と受網ないし天板の間の隙間だけでなく、隣接する扱胴フレーム間に広い間隔を有する扱胴の内部(隣接する扱胴フレーム間における扱胴フレームの回転軌跡の内側)にまで穀稈が移動することができるので、インディカ米のように、長い穀稈であっても、ドラムに扱歯を取り付けたドラム式の扱胴(特許文献1参照)のように穂先が扱歯に係止されて穀稈が扱胴に巻きつくというようなことがない。従って、穀稈が扱胴に巻きついて、穀稈が引き千切られたり、引き抜かれることにより、扱室内にワラ屑が増大させる等の不都合もない。
【0009】
第1発明の構成のように、扱胴は、扱歯を扱胴フレームに取り付け、周囲に3本又は4本の扱胴フレームしか備えていないフレーム式のものであるから、穀稈は、隣接する扱胴フレーム間から扱胴内部にまで移動することができ、穀稈の移動空間が大きくなり、扱室内の茎稈の密度が低くなるので、穀稈がドラム式の扱胴の場合のように、必要以上に押さえつけられることがなく、ソフトな(穀稈の移動が比較的自由で穀稈への扱き作用が軽減される)脱粒作業が行われ、ワラ屑の発生をドラム式の扱胴の場合よりも大幅に減少させることができる。
【0010】
特に、扱胴フレームを周方向に3本又は4本と少ない数にすると、一つの刈り株におけるある穀稈が複数の扱歯で扱き作用を同時に受けて、穀稈が引き千切られるという現象がなくなる又は少なくなり、脱粒も初期に集中的に行われることも緩和されることも相まって、脱穀負荷も軽減され、エネルギーロスが低減できる上に、ワラ屑の発生が効果的に少なくなる。
又、ドラム式の扱胴に比べて、脱穀穀稈の存在場所としての扱室内の空間が広くなり、ソフトな脱粒が行えるので、インディカ米だけでなく、脱粒性の良い作物や傷の付き易い作物、詰まり易い作物(濡れた作物や長い作物)でも好適に脱穀することができる。
【0011】
尚、ドラム式の扱胴でも、扱胴軸心方向並びに周方向における扱歯の数を減らせば、脱穀をソフトに行うことができるが、インディカ米のように穀稈の長いものでは、扱胴の巻きつきによる摩擦力で、茎稈が引き千切られて、脱穀排ワラ量や穂付き穀稈(未脱穀穀稈)を脱粒できずに処理される不都合も生じやすい。
【0012】
又、ドラム式の扱胴で、扱歯の数を少なくする場合、扱歯の数の割りに扱胴を製作するための使用材料、製作手間(製作工数)が削減できず、生産性が悪いのに比べて、第1発明の構成によれば、扱胴フレームの数を変更するだけで扱歯の数を変更できると共に、扱胴フレームの数の変更も容易で、且つ、扱歯の数を変更する場合、ドラム式の場合のように扱歯の数を変更するのではなく、扱歯の数に対応して扱胴フレームの数を増減できるものであるから生産性もよい。
【0013】
〔第1発明の効果〕
第1発明の構成によれば、扱胴フレームの数を3本又は4本という少ない数にすることにより、穀稈が扱室に投入された際に、急激に脱粒されることがなく、所定の脱穀処理状態に達するまでに必要な脱穀フィードチェーンの搬送距離が、扱胴フレームの数が例えば6本や8本設けた場合よりも長くなるから、扱胴の単位長さ当たりの脱穀処理量が軽減され、扱胴始端部での集中的な脱粒が緩和される。又、穀稈が扱歯に扱き処理される回数も軽減されるから余分な排ワラの発生も軽減され、全体としての脱穀処理並びに選別処理の処理効率を向上させることができるに至った。
【0014】
第1発明は、特に、インディカ米等の穀稈長の長い穀稈の脱穀作業に有効で、ワラ屑を大量に発生させないので、詰まりも無く良好に脱穀できながら、穀粒の回収効率を向上させることができるようになった。
【0015】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に沿った外方に向けて突設してある。
【0016】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、扱歯が扱胴フレームに扱胴の半径方向に沿った外方に向けて突設されているので、脱穀フィードチェーンで挟持されている穀稈が、扱室内で扱歯に接当して扱き作用を受けるとき、扱歯に対して穀稈が強く引っ掛かりすぎず、又、引っ掛かりが外れやすくなりすぎもせず、良好な扱き作用を発揮することができる。これによって、ワラ屑を多く発生させずに脱粒でき、標準的な脱穀を行うことができる。
【0017】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向上手側に所定の後退角を有する状態で外方に向けて突設してある。
【0018】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、扱胴フレームに扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向上手側に所定の後退角を有する状態で、扱歯を外方に向けて突設してあるので、扱歯で穀粒を脱粒させながらも、脱穀フィードチェーンで挟持され扱室内で扱歯に接当している穀稈が、扱歯に沿って外方に逃げやすくなるので、穀稈が扱歯に引っ掛かって引き千切られる量が少なくなる。これによって、余分な排ワラ処理物が少なくなるから選別効率も向上し、より一層穀粒の回収効率が向上させることができた。
【0019】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向下手側に所定の前進角を有する状態で外方に向けて突設してある。
【0020】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、扱胴フレームに扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向上手側に所定の前進角を有する状態で、扱歯を外方に向けて突設してあるので、脱穀フィードチェーンで挟持されている穀稈が、扱室内で扱歯に接当して扱き作用を受けるとき、扱歯に強く引っ掛かるように扱かれるので、穀稈についている穀粒が扱歯で扱き落されやすくなる。これによって、穀粒の回収効率を高めることができた。
【0021】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向外方に向かう姿勢に対して、扱胴回転方向上手側に所定の後退角を有する姿勢と扱胴回転方向下手側に所定の前進角を有する姿勢との間の任意の姿勢に位置変更可能に取り付けてある。
【0022】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によれば、刈取った穀稈の性状が、脱粒しやすく、又ワラ屑が発生しやすいものであるときには、扱歯に後退角を有する姿勢に取り付け、刈取った穀稈の性状が、穀稈が短く比較的脱粒し難いものであるときには、扱歯に前進角を有する姿勢に取り付けるといったように、穀稈の性状によって、扱胴に対する扱歯の取り付け角度を調節して、後退角を有する姿勢乃至前進角を有する姿勢に姿勢変更することで、穀稈の性状に適した脱穀作業を行うことができる。
【0023】
〔第6発明の構成〕
第6発明は、第1発明〜第5発明のうちのいずれか一つの構成において次のように構成する。
前記扱胴を収容する扱室に、処理物を切断するワラ切り刃を付設してある。
【0024】
〔第6発明の作用効果〕
穀稈の扱き処理中に扱歯にワラ屑が引っ掛かったまま持ちまわされるとワラ屑が引っ掛かった扱歯による扱き機能が低下するが、第6発明によれば、扱室に処理物を切断するワラ切り刃を付設してあり、扱歯に引っ掛かったワラ屑はワラ切り刃で切断されるので、扱き作用の低下を抑制して、良好な脱穀を行うことができる。
【0025】
〔第7発明の構成〕
第7発明は、第6発明の構成において次のように構成する。
前記扱室には、複数の前記ワラ切り刃を前記扱胴の長手方向中間部より穀稈搬送方向下手側に向けて並設してある。
【0026】
〔第7発明の作用効果〕
第7発明によれば、扱室に複数のワラ切り刃を並設してあるので、扱室内の後半部でワラ屑が次第に増大するようになっても扱歯にワラ屑が引っ掛かった状態で持ち回されることがなく、又、扱室内でワラ詰まりを生じることもなく良好な脱穀作業を継続することができる。
【0027】
〔第8発明の構成〕
第8発明は、第1発明〜第7発明のいずれか一つの構成において次のように構成する。
前記扱胴において、穀稈搬送方向上手側に設けた前記第1支持部材側に、搬送方向上手側に向けて先窄まり状の截頭円錐状体を形成してある。
【0028】
〔第8発明の作用効果〕
第8発明によれば、扱室に供給された穀稈が、扱胴への搬送始端部(穀稈搬送上手側端部)で滞留することなく、搬送方向上手側に向けて先窄まり状の截頭円錐状体により扱胴と受網との間の扱胴回転外周に向けてスムーズに搬送されるようになり、これにより良好な脱穀作業を行うことができる。
【0029】
〔第9発明の構成〕
第9発明は、第1発明〜第8発明のいずれか一つの構成において次のように構成する。
前記受網を、前記扱胴側の内面が滑らかで多数の網目孔を形成した板状体で構成してある。
【0030】
〔第9発明の作用効果〕
第9発明によれば、穀稈が受網の内面に引っ掛かったり、弓金が受網の内面に突設した場合のように、穀稈が弓金で扱胴に強制的に近づけられることもないので、インディカ米のように丈が長く千切れやすい穀稈であっても多量にワラ屑を発生させることがなく、良好な脱穀作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバインにおける脱穀機の縦断左側面図である。
【図2】扱胴の一部縦断(展開)側面図である。
【図3】扱歯を示す扱胴の一部縦断正面図である。
【図4】脱穀機の一部縦断正面図である。
【図5】受網の展開図である。
【図6】別実施の形態の扱胴の一部縦断(展開)側面図である。
【図7】別実施の形態の扱歯を示す扱胴の一部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインにおける脱穀機の縦断左側面図、図2は扱胴の一部縦断側面図である。これらの図に示すように、本実施形態で例示するコンバインの脱穀機1は、脱穀フィードチェーン2に挾持されて扱室3内に搬送されてくる刈取搬送穀稈に対して扱ぎ処理を加える扱胴4、扱胴4で処理された処理物を下方に漏下する受網5、受網5の下方に選別部6を備えて構成されている。すなわち、刈取搬送穀稈は脱穀フィードチェーン2で挟持搬送されながら扱胴4と受網5との間で脱穀される。選別部6は、受網5から漏下される穀粒を含む処理物を受けて後方に送りながら比重選別を行うグレンパン7と、このグレンパン7から送られる処理物と扱室3の後半部より受網5を通して漏下する処理物を受けて穀粒を落下させるチャフシーブ8と、チャフシーブ8の下方に穀粒を主として選別して下方に漏下させるグレンシーブ9とを備えた揺動選別部10と、揺動選別部10のチャフシーブ8やグレンシーブ9へ落下する処理物に対して選別風を作用させる唐箕11とを設けて、揺動選別作用に加えて風選別作用を加えるべく構成されている。
【0033】
図2、図3に示すように、前記扱胴4は、扱室3の前壁12と後壁13にベアリング14を介して回転自在に設けられた扱胴軸15に支持されている。扱胴4には、扱胴軸15の前端部に連結されたプレートからなる第1支持部材である前部支持部材16と、扱胴軸15の後端部に連結されたプレートからなる第2支持部材である後部支持部材17を備えている。前部支持部材16と後部支持部材17とに亘って、扱胴4の回転周方向に120度の一定間隔を隔てて丸パイプ鋼材などからなる複数本(3本)の扱胴フレーム18が架設されている。各扱胴フレーム18には、扱胴4の半径方向外方に向けて突出する姿勢で、且つ、扱胴軸15の軸心Pの方向に沿って所定間隔を隔てて、複数の棒状の扱歯19が扱胴フレーム18に片持ち状に取り付けられている。扱胴4は、エンジン動力が扱胴軸15の前端の入力プーリ20に伝動されて駆動される。
【0034】
前記前部支持部材16には、穀稈の搬送方向上手側(前向き)の端筒状の折り曲げ辺16aを備え、これに前方に向けて先窄まり状の截頭円錐状体46を取り付け、その周面46aの先端部にV字状の扱歯47を取り付け、その後方の周面46aに板扱歯48を取り付けてある。V字状の扱歯47と板扱歯48は、主に扱室3の穀稈供給口49から供給された穀稈の穂先部を扱胴4の下方、すなわち、受網5側に押し広げるとともに、搬送下手側に送り込むように作用する。
【0035】
図2、図4に示すように、扱室3の天井21の内側には、扱胴4の回転によって扱室3内を回転する処理物の送り角を調節する送塵弁24と処理物中のワラ屑を切断するためのワラ切り刃22が付設されている。ワラ切り刃22は複数(6本)のコの字状部材の両片22a,22aに刃を形成してあり、6本のワラ切り刃22を各刃が略等間隔で並ぶように、扱胴4の長手方向中間部より穀稈搬送方向下手側に向けて並設して、図示しないボルトで固定してある。
ワラ切り刃22を設けることによって、脱穀に伴い引き千切られた穀稈はワラ切り刃22によって切断されるので、処理物が短く分断され風選別が行われやすくなる。
【0036】
図2、図3に示すように、扱胴フレーム18の前端と後端には、断面L字状部材23の端板23aが溶接されており、前部支持部材16及び後部支持部材17に対する取付片23bには、一対の長孔25が形成されている。長孔25は扱歯19の長手方向に沿う方向に長く形成されている。
【0037】
前部支持部材16及び後部支持部材17には、前記一対の長孔25に対応する距離を隔てて、各扱胴フレーム18を取付けるためのそれぞれ一対の円形のボルト孔44が形成されており、各一対の円形ボルト孔44と取付片23bに形成された長孔25とにボルト26を挿通して固定することで、扱歯19を取り付けた扱胴フレーム18が前部支持部材16及び後部支持部材17に取り付けられている。
【0038】
この実施の形態では、刈取穀稈の長さ、倒伏状態、乾燥状態、穂付き状態等の性状によって、前部支持部材16及び後部支持部材17への扱胴フレーム18の取付位置を長孔25の範囲で変更することにより、扱歯19の先端位置を扱胴4の半径方向に変更したり、扱歯19に後退角θをもたせるように、扱歯19の取付け状態を変えたり、扱胴フレーム18の取り付け本数を変更することで扱歯19の本数を変えることができるようにしてある。
【0039】
前部支持部材16及び後部支持部材17に扱胴フレーム18を固定しているボルト26を緩めて、図3の二点鎖線で示すように、扱胴フレーム18を扱胴4の半径方向に位置調節して扱胴フレーム18を再度固定することで扱歯19の先端位置が扱胴4の半径方向に変更され、受網5の内面と扱歯19の先端位置との隙間が変更される。これにより扱歯19の数が少なくても穀稈の穀粒が脱粒させやすくなる。
【0040】
又、穀粒が脱粒しやすい場合は、図3の二点鎖線で示すように、扱歯19を扱胴フレーム18に対して扱胴4の半径方向に対して扱胴回転方向上手側(図3において扱胴4の回転方向(矢印方向)とは逆の半時計周り)に任意の後退角θを有する状態で取り付けてもよい。図3の二点鎖線に示すように正の後退角θを設けると、後退角θによって形成される扱歯19の後退角θによって、穀稈が扱歯19に当たったときに、穀稈が扱歯19の先端側に滑るように移動するので扱歯19による穀稈に対する叩きつけ力(衝撃力)が緩和され、脱粒量が減少する。反対に、後退角θ=0(扱胴フレーム18に対して扱歯19を扱胴4の半径方向外方に向けて突設した状態)としたり、或いは扱歯19を、扱胴フレーム18に扱胴4の半径方向に対して扱胴回転方向下手側(図3において扱胴4の回転方向(矢印方向)と同じ時計周り)に所定の前進角(−θ)を有する状態で外方に向けて突設することで、扱歯19による穀稈に対する叩きつけ力が大きく、又、穀稈が扱歯19から離脱し難くなり、挟持穀稈から分離した処理物が持ち回られやすくなり、受網5やワラ切り刃22等との接当によって脱粒されやすくなる。
【0041】
前記扱歯19は、扱胴フレーム18に扱胴4の半径方向外方に向かう姿勢に対して、扱胴回転方向上手側(図3において半時計周り)に所定の後退角θを有する姿勢と扱胴回転方向下手側(図3において時計周り)に所定の前進角(−θ)を有する姿勢との間の任意の姿勢に位置変更可能に取り付けてある。扱歯19の扱胴4の半径方向外方に向かう姿勢に対して、扱歯19の姿勢を前記後退角θ又は前進角(−θ)を有する姿勢に変更するには、長孔25に挿通したボルト26を緩めて扱胴フレーム18の取付け角度を変更することによって行う。
【0042】
前記前部支持部材16及び後部支持部材17には、図3に示すように、図示の扱胴フレーム18とは別の位置で扱胴フレーム18を取り付けるためのそれぞれ2個一対の円形のボルト孔44a,44b,44cを形成してある。図3には3本の扱胴フレーム18を設けた形態が示されているが、図示の上部の扱胴フレーム18を残して下2本の扱胴フレーム18を取り外し、図示の真下の一対のボルト孔44aと扱胴軸15の真横に示されている左右2対のボルト孔44bの各ボルト孔44a,44bを利用して扱胴フレーム18を取付けることで4本の扱胴フレーム18を設けた扱胴4に変更できる。この場合、扱歯19は後退角θ(前進角(−θ))=0となる。又、図3に示されている3本の扱胴フレーム18に加えて、ボルト26を挿通しているボルト孔と軸心Pに対して点対称の位置に形成してある3対のボルト孔44a,44cを利用して3本の扱胴フレーム18を追加することで、計6本の扱胴フレーム18を備えた扱胴4に変更することができる。
【0043】
図1に示すように、前記選別部6には、グレンシーブ9より漏下する穀粒を回収する一番回収部27と、一番回収部27の機体後方側で選別風によって送られる穂切粒と枝梗付粒とを混在した二番物を回収する二番回収部28と、機体後端にワラ屑等を機外に排出する排塵ファン29とが配置構成されている。
【0044】
前記一番回収部27には、左右横方向に沿って配設された一番横送りスクリュー30を備えている。一番回収部27の右側には、一番横送りスクリュー30で横送りされた一番物を受取り、グレンタンク(図示せず)の上部に向けて揚送する一番揚送装置31が接続されている。二番回収部28には、左右横方向に沿って配設された二番横送りスクリュー32を備えている。
【0045】
図4に示すように、前記二番回収部28の右側(図中左側)には、二番横送りスクリュー32で横送りされた二番物を受取り、揺動選別部10の前寄り部分に還元させる二番還元揚送装置33が接続されている。二番還元揚送装置33は、二番揚送ケース34と、二番揚送ケース34に内蔵した二番揚送スクリュー35及びその上端部に設けた回転羽根36と、回転羽根36を覆う二番揚送ケース34の上端部の出口ケース37に形成された吐出口38とで構成されている。
【0046】
前記二番横送りスクリュー32の接続部位に臨む部分には、大径の羽根39が装着されており、この羽根39で二番揚送スクリュー35に処理物を効率よく送り込めるようになっている。これと同様の構成が、一番揚送装置31と一番回収部27との接続部位の一番横送りスクリュー30にも備えられている。
【0047】
図4に示すように、扱室3は、脱穀機1の左右方向左側(図中右側)に偏倚して配設されており、扱室3の右側の仕切り壁40乃至側部の受網5と、右側の脱穀側壁41との間には、選別部6に通じる上方処理空間42が形成されている。上方処理空間42の下方は、選別部6に連通していて、唐箕11から選別部6に供給された選別風が流入し得るようになっている。
【0048】
前記受網5は、扱胴4側の内面が滑らかで多数の網目孔5a,5bを形成した硬質の合成樹脂で成形してある。図5に示すように、網目孔5a,5bは3区分されており、扱室3の前端部では網目孔5aが大きく、中間部及び後端部では網目孔5bの大きさが前端部の網目孔5aよりも小さく形成されている。又、3区分された前後方向の網目孔5a,5bの中間部には、受網5より周方向に渡って上方(扱胴4側)に突出する弓金は備えていない。
【0049】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施の形態では、扱胴4に扱胴フレーム18を3本設けたが、扱胴フレーム18の数としては、4本或いは6本に変更してもよい。扱胴フレーム18をこれより多くすると、隣接する扱胴フレーム18間の間隔が狭くなり、隣接する扱胴フレーム18間の内部(扱胴フレーム18の回転軌跡の内側)への穀稈の出入り行われ難くなるので、穀稈が捌かれ難くなる。
扱胴フレーム18を6本設けた場合、そのうち3本の扱胴フレーム18を、図3に示すように、扱歯19を径方向外方に突出させた状態で取り付け、他の3本の扱胴フレーム18を扱歯19を内向き(軸心P側)にして取り付け、扱歯19を倍に増やしたいときに、扱歯19を内向きに取り付けた扱胴フレーム18を180度反転して、扱歯18を外向きに突出させて取り付けるようにしてもよい。
【0050】
(2)扱胴フレーム18を4本備える場合、2本の扱胴フレーム18が扱歯19に後退角θを有し、残りの扱胴フレーム18の扱歯19には後退角θをなしとしてもよい。その他、向かい合う2本の扱胴フレーム18において、扱歯19に後退角θを設定したり、後退角θ及び前進角(−θ)を設定しなかったり、前進角(−θ)を設定したりしてもよい。4本の扱胴フレーム18において、全ての扱歯19に後退角θを設定したり、後退角θ及び前進角(−θ)を設定しなかったり、前進角(−θ)を設定したりしてもよい。これにより、多様な扱き作用状態を得ることができる。
向かい合う扱胴フレーム18の扱歯19を同角度の姿勢に設定すれば脱穀負荷も扱胴軸心Pに対して対称に作用するから、扱胴負荷に芯ぶれを生じさせないで脱穀することができるので、振動を抑制することができる。
【0051】
(3)上記実施の形態の図3に示すように、長孔25の長さを長くすれば、後退角θを大きく確保することができながら、受網5の内面と扱歯19先端との隙間の変更量も大きく確保することができるが、図7に示すように、長孔25の長さを短くしてもよい。この場合、扱歯19を所定の後退角θに傾斜させた状態で、一方のボルト26が長孔25の長手方向一端側に接当し、他方のボルト26が長孔25の長手方向他端側に接当した状態となり、扱歯19の姿勢が決まってしまうので、扱歯19の先端と受網5との隙間は調節できない。扱歯19に前進角(−θ)を設定した場合も同様である。
【0052】
(4)上記実施の形態では、ワラ切り刃22を設けたが、ワラ切り刃22は設けなくてもよい。
【0053】
(5)上記実施の形態では、一本の扱胴フレーム18に対して扱歯19を6個設けているが、扱胴4の長さを変えないで、図6に示すように、一本の扱胴フレーム18に対して扱歯19を7個設けてもよい。この場合、コの字状の各ワラ切り刃22を、図示のように、各ワラ切り刃22の両片22aの間を扱歯19が通過するように配設してもよい。
【0054】
(6)前記受網5は、金属製の板材に孔を打ち抜くことにより網目孔5a,5bが形成されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、定置型の脱穀機や刈取装置を備えていない移動式のハーベスタにも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
2 脱穀フィードチェーン
4 扱胴
5 受網
5a 網目孔
5b 網目孔
15 扱胴軸
16 第1支持部材
17 第2支持部材
18 扱胴フレーム
19 扱歯
21 天井
22 ワラ切り刃
46 截頭円錐状体
θ 後退角
−θ 前進角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を脱穀フィードチェーンで挟持搬送しながら扱胴と受網との間で脱穀する自脱型の脱穀機において、扱胴軸の軸心方向両端部に設けた第1支持部材と第2支持部材とに亘って、扱胴回転周方向に間隔を隔てて3本又は4本の扱胴フレームを架設し、前記扱胴フレームから外方に向けて突出する姿勢で、且つ、前記扱胴軸の軸心方向に沿って間隔を隔てて、複数の棒状の扱歯を前記扱胴フレームに片持ち状に取り付けて、前記扱胴を構成してあることを特徴とする自脱型の脱穀機。
【請求項2】
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に沿った外方に向けて突設してある請求項1記載の自脱型の脱穀機。
【請求項3】
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向上手側に所定の後退角を有する状態で外方に向けて突設してある請求項1記載の自脱型の脱穀機。
【請求項4】
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向に対して扱胴回転方向下手側に所定の前進角を有する状態で外方に向けて突設してある請求項1記載の自脱型の脱穀機。
【請求項5】
前記扱歯を、前記扱胴フレームに前記扱胴の半径方向外方に向かう姿勢に対して、扱胴回転方向上手側に所定の後退角を有する姿勢と扱胴回転方向下手側に所定の前進角を有する姿勢との間の任意の姿勢に位置変更可能に取り付けてある請求項1記載の自脱型の脱穀機。
【請求項6】
前記扱胴を収容する扱室に、処理物を切断するワラ切り刃を付設してある請求項1〜5のいずれか一項に記載の自脱型の脱穀機。
【請求項7】
前記扱室には、複数の前記ワラ切り刃を前記扱胴の長手方向中間部より穀稈搬送方向下手側に向けて並設してある請求項6記載の自脱型の脱穀機。
【請求項8】
前記扱胴において、穀稈搬送方向上手側に設けた前記第1支持部材側に、搬送方向上手側に向けて先窄まり状の截頭円錐状体を形成してある請求項1〜7のいずれか一項に記載の自脱型の脱穀機。
【請求項9】
前記受網を、前記扱胴側の内面が滑らかで多数の網目孔を形成した板状体で構成してある請求項1〜8のいずれか一項に記載の自脱型の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−50326(P2011−50326A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202849(P2009−202849)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】