説明

2,5−フランジカルボン酸を調製する方法及び2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法

本願は2,5−フランジカルボン酸を調製する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、5−ヒドロキシメチル−フルフラールのエステル、5−メチルフルフラール、5−(クロロメチル)フルフラール、5−メチルフロ酸、5−(クロロメチル)フロ酸、2,5−ジメチルフラン及びこれらの化合物の2つ以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む供給物を、酸化触媒の存在下で140℃よりも高い温度で酸化剤と接触させる工程を含む、2,5−フランジカルボン酸を調製する方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)及び/又はその誘導体から2,5−フランジカルボン酸(FDCA)を調製する方法に関する。FDCAは、特に、例えば5−アセトキシメチルフルフラール(AMF)のようなHMFのエステル、又はこれらの化合物の1つ又は複数とHMFとの混合物から(例えばAMF及びHMFの混合物から)生成することができる。本発明はさらに、2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5−フランジカルボン酸(デヒドロムチン酸としても知られる)は、フラン誘導体である。この有機化合物は、1876年にFittig及びHeinzelmannによって最初に得られた。Henry Hillによって最初の総括が1901年に公開された(非特許文献1)。FDCAは、125年以上経ってから、未来の「環境に優しい」(“green”)化学産業を確立するための12個の優先化学物質の1つとして、米国エネルギー省によって同定された。しかしながら、今日でも、その生産に関する商業的プロセスは存在しない。研究室規模では、FDCAは多くの場合、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)から合成され、HMFは順次、グルコース、フルクトース、スクロース及びデンプンのような炭水化物含有供給源から得ることができる。HMFは、フルクトース及びグルコースから3モルの水の酸性下での排除によって得られる。
【0003】
HMFの誘導体は、潜在的で万能な燃料成分及びプラスチックの生産のための前駆物質として同定される。FDCAジメチルジエステル及びエチレングリコールからのポリエステルが、1946年に最初に報告された(特許文献1)。
【0004】
特許文献2は、HMFのFDCAへの酸化について記載している。報告される最大FDCA収率は59%であり、105℃で得られる。Pt属由来の触媒を使用した水媒体中での酸素によるHMFの酸化が特許文献3に記載されている。Taarning他は、金ベースの触媒上でのHMFの酸化について説明している(非特許文献2)。
【0005】
Partenheimer他(非特許文献3)は、50℃〜125℃の範囲の温度にて酢酸中で金属/臭化物触媒(例えば、Co/Mn/Br)を用いた5−ヒドロキシメチルフルフラールの触媒的空気酸化による2,5−フランジカルボン酸の合成について説明している。Co/Mn/Br触媒を用いる場合、得られる最大のFDCA収率は35.2%である(表3、実験4)。同論文の103頁には、「形成される生成物(products formed)」の見出しにおいて、「副反応は、より酸化的に安定な酢酸エステルを形成するためのアルコールのエステル反応である・・・」と記述されている。見掛け的には5−ヒドロキシメチルフルフラールが酢酸と反応するため、出発材料の損失が起きる。さらに、103頁の図1に付与される反応スキームでは、5−(アセトキシメチル)フルフラールが終点であることが示される。示されるこの化合物のFDCAへの更なる反応は存在しない(中間体生成物5−(アセトキシメチル)フラン−2−カルボン酸のエステルとは対照的である)。換言すると、HMFと酢酸溶媒との反応により形成される5−(アセトキシメチル)フルフラール(AMF)は、FDCAへ酸化されず、したがってその形成は収率損失を招く。
【0006】
この結果は特許文献4で確認された。特許文献4によるプロセスの目的はFDCAを得ることであったが、単離されて、誤ってFDCAであると特性化された生成物は、実際には出発材料アセトキシメチルフルフラール(AMF)であった。展開した低温条件(100℃)下では、Partenheimerによりすでに報告されたように、AMFは非常に安定である(上記を参照)。
【0007】
特許文献4では、H NMRスペクトルが図8に示されており、それが、FDCAとして同定された生成物のスペクトルであると示唆される。しかしながら、これは事実と異なる。図8に示される生成物のH NMRスペクトルは、図6に示されるスペクトルと同じであり、出発材料AMFを表す。FDCAの1H NMRスペクトルは、約7.26ppmのシフトでシングレットを示す。さらに、生成物は、黄褐色固体と記載されている。本発明者等の実験では、AMFが黄褐色固体であり、FDCAは白色固体である。FDCAは、特許文献4による実験では得られなかったと思われる。
【0008】
特許文献4の条件下で実行される実験を繰り返した。これらの比較実験により、特許文献4に付与される条件下でのAMFの低反応性が確認される。したがって、特許文献4で報告される条件を使用して、すなわち100分〜150分の時間枠内で85℃〜110℃にて酢酸中でCo/Mn/Br触媒を使用しても、FDCAをAMFから興味深い収率で得ることができないと当業者は結論付けるであろう。特許文献4の実施例7では、50%をわずかに上回る出発材料が、反応から単離される唯一の生成物であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第621,971号明細書
【特許文献2】国際公開第01/72732号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4977283号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0156841号公報
【特許文献5】国際公開第2007/104515号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2009/030512号パンフレット
【特許文献7】米国特許第2673860号明細書
【特許文献8】米国特許第2628249号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Am. Chem. Journ. 25, 439
【非特許文献2】ChemSusChem, 2008, 1, 1-4
【非特許文献3】Adv. Synth. Catal. 2001, 343, pp 102-11
【非特許文献4】W. Partenheimer, Catalysis Today 23 (2), 69-158 (1995).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は今回、驚くべきことに、140℃よりも高い温度で酸化触媒(例えば、コバルト及びマンガンの両方に基づき、かつ臭化物を含有する触媒)を使用する場合、HMFの誘導体、特に任意にHMFと組み合わせたHMFのエステル(例えば、5−(アセトキシメチル)フルフラール(AMF)等)を高収率でFDCAへ酸化することができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって第1の態様において、本発明は、2,5−フランジカルボン酸を調製する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、5−ヒドロキシメチルフルフラールのエステル、5−メチルフルフラール、5−(クロロメチル)フルフラール、5−メチルフロ酸、5−(クロロメチル)フロ酸、2,5−ジメチルフラン及びこれらの化合物の2つ以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む供給物(feed)を、酸化触媒の存在下で140℃よりも高い温度で酸化剤と接触させる工程を含む、2,5−フランジカルボン酸を調製する方法を提供する。供給物は任意に、更なる化合物として5−ヒドロキシメチルフルフラールを含んでいてもよい。
【0013】
以下で記載される本発明は、供給物において上述する化合物をいずれも使用することができる。HMFの好ましいエステルは、アルキルカルボン酸(ここでアルキル基は、最大6個の炭素原子、好ましくは1個〜5個の炭素原子を含有する(すなわちメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、ネオペンチル及び3−ペンチル))のエステル部分を含有する。1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基が特に好ましい。(5−アセトキシメチル)フルフラールを付与するメチルが優先される。したがって、5−アセトキシメチルフルフラールは、単独で又はHMFと組み合わせて、好ましい原材料である。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明者等は、本発明によるプロセス条件下で、他のフランベースの基質の酸化も研究した。本発明者等は、5−(クロロメチル)フルフラール、5−(クロロメチル)フロ酸、5−メチルフルフラール、5−メチルフロ酸及び2,5−ジメチルフランをすべて、非常に興味深い収率でFDCAへ変換することが可能であった。
【0015】
特許文献5及び特許文献6では、バイオマス供給源からの5−アセトキシメチルフルフラール(AMF)のようなHMFのエステルの合成について記載されている。HMFよりもHMFエステルの安定性が高い、したがって生成経路が改善されたことを考慮すると、また酢酸中での酸化の際に、酢酸から得られたアセトキシ官能基がここで酢酸として遊離されるという事実を考慮すると、またこれらのエステルの環境に優しい性質を考慮すると、HMFエステルは、例えばPET又はFDCAベースのポリアミド(ナイロン)の代替物として、フランジカルボン酸ベースのポリエステルの生産に使用することができるフランベースのモノマーの調製における興味深い出発点であると本発明者等はみなした。PETを生産するための最も重要な従来のオイルベースのポリエステルモノマーは、精製テレフタル酸(PTA)及びそのジアルキルエステルであるテレフタル酸ジメチル(DMT)である。
【0016】
AMFは、特許文献5及び特許文献6に記載されるようにバイオマス供給源から得ることができる。プロセス条件に応じて、この参照文献のプロセスに従って得られる生成物は、HMFも含有し得る。
【0017】
反応の生成物であるFDCAは、FDCA又はそのジアルキルエステルと、適切なジオールとの反応によるポリエステルの調製で使用することができる。かかるポリエステル調製は好ましくは、エステル交換反応によって実施され、それにより、FDCAのジメチルエステル又はジエチルエステルが使用され、ここでメチル基又はエチル基は、ジオールとのエステル交換反応中に揮発性アルコールの形態で交換される。
【0018】
酸化触媒は、様々な酸化触媒から選択することができるが、好ましくは、コバルト及びマンガンの両方に基づき、かつ適切には臭素の供給源、好ましくは臭化物を含有する触媒である。
【0019】
臭素供給源は、反応混合物中で臭化物イオンを生成する任意の化合物であり得る。これらの化合物としては、臭化水素、臭化ナトリウム、臭素元素、臭化ベンジル及びテトラブロモエタンが挙げられる。同様に、臭化アルカリ金属若しくは臭化アルカリ土類金属、又はZnBrのような別の臭化金属のような他の臭素塩を使用することもできる。臭化水素酸又は臭化ナトリウムが優先される。本明細書で言及される臭素の量は、コバルトに対してBrとして測定される量に関する。
【0020】
本発明のプロセスすべてにおいて用いられる適切な臭化金属触媒は、コバルト化合物及びマンガン化合物及び臭素含有化合物を含む。好ましくは、これらの化合物は、反応混合物に可溶性である。
【0021】
好ましくは、触媒は、Co及びMnの両方を含む。金属及び臭化物触媒は、臭化物のほかにCo及びMnを含み、任意に1つ又は複数の更なる金属、特にZr及び/又はCeを含有し得る。代替的かつ適切な触媒は、非特許文献4の特に89頁〜99頁(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0022】
金属成分はそれぞれ、それらの既知のイオン形態のいずれかで提供され得る。好ましくは、金属(単数又は複数)は、反応溶媒中で可溶性である形態で存在する。コバルト及びマンガンに関する適切な対イオンの例としては、炭酸イオン、酢酸イオン、酢酸四水和物(acetate tetrahydrate)イオン及びハロゲン化物イオンが挙げられるが、これらに限定されず、臭化物イオンが好ましいハロゲン化物イオンである。
【0023】
Partenheimer(同上)、86頁〜88頁で記載されるように、上述される本発明のプロセスにおける使用に適した溶媒は、好ましくはモノカルボン酸官能基を含有する少なくとも1つの成分を有する。溶媒はまた、試薬の1つとしても機能し得る。プロセスは、酸性基を含有しない溶媒又は溶媒混合物中で実行することができる。その場合、好ましくは試薬の1つが、モノカルボン酸官能基を含有する。適切な溶媒はまた、安息香酸及びその誘導体のような芳香族酸であり得る。好ましい溶媒は、脂肪族C〜Cモノカルボン酸であり、例えば酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、トリメチル酢酸及びカプロン酸並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記混合物は、ベンゼン、アセトニトリル、ヘプタン、酢酸無水物、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及び水も含み得る。最も好ましい溶媒は酢酸(AcOH)である。
【0024】
本発明のプロセスにおける酸化剤は好ましくは、酸素含有ガス又はガス混合物であり、例えば空気及び酸素に富んだ空気が挙げられるが、これらに限定されない。酸素自体もまた、好ましい酸化剤である。
【0025】
上述の本発明のプロセスは、バッチ方式、半連続方式又は連続方式で実行することができる。特にFDCAの製造に関しては、特定の時間で温度を増加させること、特定の時間で圧力を増加させること、反応の開始時の触媒濃度の変動及び反応中の触媒組成の変動を伴うバッチ方式での操作が望ましい。例えば、反応中の触媒組成の変動は、指定時間でのコバルト及び/又はマンガン及び/又はジルコニウム及び/又はセシウム及び/又は臭化物の添加により遂行され得る。
【0026】
商業的酸化プロセスにおける圧力は、広範に変動し得る。希釈剤が存在する場合、特に希釈剤として酢酸を用いる場合、かかるプロセスにおける温度及び圧力は独立していない。圧力は、或る特定の温度での溶媒(例えば、酢酸)の圧力によって決定される。反応混合物の圧力は好ましくは、溶媒が主に液相で存在するように選択される。実際に、このことは、5バール〜100バール(0.5〜10.0MPa)の圧力を使用することができ、10バール〜80バール(1.0MPa〜8.0MPa)の圧力が優先されることを意味する。酸化剤が酸素含有ガス(例えば、空気)である場合、ガスを連続的に反応器へ供給し、反応器から除去することができ、又はガスをすべて、反応の開始時に供給することができる。後者の場合では、系の圧力は、ヘッドスペースの容量及び出発材料を変換するのに要されるガスの量に依存する。後者の場合、系の圧力は、酸素含有ガスが連続的に供給及び除去される場合のプロセス中の圧力よりも相当高い場合がある。連続的に酸化剤ガスを反応器へ供給するとともに、反応器から除去する場合、酸素分圧は適切には、1バール〜30バール(0.1MPa〜3.0MPa)、又はより好ましくは1バール〜10バール(0.1MPa〜1.0MPa)である。
【0027】
反応混合物の温度は、少なくとも140℃、好ましくは140℃〜200℃、最も好ましくは160℃〜190℃である。180℃よりも高い温度は、脱炭酸化生成物及び他の分解生成物をもたらし得る。FDCAに対する良好な結果は、約180℃の温度で達成された。
【0028】
コバルト対マンガンのモル比(Co/Mn)は、通常1/1000〜100/1、好ましくは1/100〜10/1、より好ましくは1/10〜4/1である。
【0029】
臭素対金属のモル比(例えば、Br/(Co+Mn))は、通常0.001〜5.00、好ましくは0.01〜2.00、より好ましくは0.1〜0.9である。
【0030】
触媒濃度(Co+Mn)は通常、基質に対して0.1モル%〜10モル%であり、2モル%〜6モル%の濃度が優先される。良好な結果は、概しておよそ4モル%の触媒濃度を用いた場合に得られた。
【0031】
FDCAの生成のための出発材料は、上述するように炭水化物供給源に由来し得る。かかる開示の例は、特許文献5及び特許文献6である。したがって、本発明は、2,5−フランジカルボン酸を調製する方法であって、炭水化物供給源が、アルキルカルボン酸の存在下でHMFエステル及び任意に5−ヒドロキシメチルフルフラールを含む生成物に変換されて、そこからHMFのエステル及び任意に5−ヒドロキシメチルフルフラールを含む供給物が単離され、この方法が、適切な反応条件下で、特に140℃を超える温度で酸化触媒、特にコバルト及びマンガン、並びに臭化物含有触媒の存在下で上記供給物を酸化剤と接触させる次の工程を更に含む、2,5−フランジカルボン酸を調製する方法も提供する。
【0032】
別の態様では、本発明のプロセスにより得られるFDCAは、出発材料を適切な条件下で関連アルコールと接触させることによって、ジエステルへの一般的なエステル化反応を使用して変換することができる。したがって、一態様では、本発明はまた、FDCAと、C〜Cアルキルアルコール、好ましくはFDCAのジメチルエステルを調製するためのメタノールとの反応による2,5−ジカルボン酸のジアルキルエステルの調製における本発明のプロセスにより得られるFDCAの使用にも関する。
【0033】
したがって本発明は、2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、5−ヒドロキシメチル−フルフラールのエステル、5−メチルフルフラール、5−(クロロメチル)フルフラール、5−メチルフロ酸、5−(クロロメチル)フロ酸、2,5−ジメチルフラン及びこれらの化合物の2つ以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む供給物を、酸化触媒の存在下で140℃よりも高い温度で酸化剤と接触させ、このようにして得られる生成物をエステル化する工程を含む、2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法も提供する。好ましくは、生成物は、適切には1個〜5個の炭素原子を有するアルキルアルコールでエステル化される。
【0034】
2,5−フランジカルボン酸のエステル化は既知である。これらのエステルの製造に関する具体例として、特許文献7が参照され、ここでジエステルが、硫酸の存在下で別のジカルボン酸エステルのエステル交換反応によって得られる。ジカルボン酸のエステル化に関するより一般的な記述は、特許文献8に提示される。
【0035】
本発明の更なる態様では、ジメチルエステルは、ジオールとの反応によるポリエステルポリマーの調製で使用することができる。ジメチルエステルをジオールと反応させることにより、迅速に揮発するメタノールが形成される。1946年に、特許文献1において、エチレングリコールとのFDCAジメチルエステルの重合が、かかる重合の最初の例として説明された。
【0036】
実際に、ポリエステルは一般的に、ジオール(例えば、エチレングリコール(EG))のモノマー単位と、ジカルボン酸との間の複合エステル化/縮重合反応により作製される。触媒及び安定剤のような添加剤を、プロセスを促進し、かつ分解に対してポリエステルを安定化するために添加することができる。
【実施例】
【0037】
実験は、並列した8ml容の磁気攪拌ステンレス鋼バッチ反応器で実行した。反応器は、12個のバッチ反応器を含有するブロックに分類される。すべての反応器に関する標準的な手順は以下の通りであった:
【0038】
出発材料の酢酸ストック溶液(0.78mmol/ml)0.5mlを、テフロン(登録商標)インサート(insert)で裏打ちされた反応器へ添加した。続いて、反応器に触媒用の酢酸ストック溶液1mlを添加した。典型的な実験(1/x/yの相対比を有する触媒組成Co/Mn/Br)では、Co(OAc)4HOの濃度は多様なものであった。Mn供給源として、Mn(OAc)4HOを使用し、臭素供給源として、NaBrを使用した。反応器は、ゴム隔膜で封をして、その後、反応器を密封して、所望の空気圧(20バール〜60バール(2.0MPa〜6.0MPa)の範囲)に加圧した。加圧後、12個の反応器を有するブロックを、所望の温度(100℃〜220℃の範囲)で予熱した試験ユニットに配置させた。所望の反応時間(0.5時間〜24時間の範囲)後に、ブロックを氷浴中に20分間入れる。ブロックを冷却させてから、それを減圧させた。開封後、HPLCサンプルを調製した。まず、サッカリンのDMSO溶液(11.04mg/ml)5mlを各反応器へ添加して、混合物を5分間攪拌した。次に、この混合物10μlを、HPLCバイアル中で水を用いて1000μlへ希釈した。サンプルを、HPLCを使用して分析した。
【0039】
実施例1
実施例1は、触媒濃度(Co+Mn)が総計5.4モル%になるように、2.7モル%のCo触媒(基質に対して)及び1/1のCo/Mnモル比を用いた場合の、それぞれHMF、HMF/AMF 3/2混合物、HMF/AMF 2/3混合物及びAMFの酸化におけるFDCAの選択性を示す。Br/(Co+Mn)モル比は、酢酸中、0.26M基質濃度で180℃にて1時間、20バール(2.0MPa)の空気を用いた場合に1.0、0.7、0.4及び0.1であった。酸素の量は、基質1モル当たり酸素2.69モルであった。これらの条件下では、より高いBr量がより高い収率をもたらすが、Br/(Co+Mn)>1の場合、腐食が商業規模では問題となる。HMFは、1時間の反応時間では、AMFよりもわずかに高い収率をもたらす。これらの実験の結果は以下の表1に付与される。
【0040】
実施例2
実施例2は、特許文献4に記載される実験条件に基づく比較例とともに、実施例1のAMF酸化に関するFDCAに対する選択性を示す。これらの比較実験(2a及び2b)では、酢酸中の10wt/wt%のAMFを、1.75モル%及び2.65モル%のCo触媒を用いて、1.0の固定Br/(Co+Mn)モル比及び1.0のCo/Mnモル比で100℃及び30バール(3.0MPa)で2時間、酸化した。酸素の量は基質1モル当たり酸素2.88モルであった。これらの条件下では、FDCAの収率は、特許文献4で示唆される結果よりも低く、またより高温で得られる結果よりも低かった。これらの実験の結果は以下の表2に付与される。
【0041】
実施例3
実施例3は、触媒濃度(Co+Mn)が総計5.4モル%になるように、2.7モル%のCo触媒(基質に対して)及び1/1のCo/Mnモル比を用いた場合の180℃での5−メチルフルフラール(5MF)及び2,5−ジメチルフルフラール(DMF)の酸化におけるFDCAの収率を示す。Br/(Co+Mn)モル比は、1.0、0.7、0.4及び0.1であった。基質濃度は、酢酸中で0.26Mであった。反応温度は180℃であり、反応は、50バール(5.0MPa)の空気を用いて実行した。酸素の量は、基質1モル当たり酸素6.7モルであった。これらの条件下では、より高いBr量がより高い収率をもたらすが、Br/(Co+Mn)>1の場合、腐食が商業規模では問題となる。5−MFとの反応は、DMFとの反応よりも高い収率をもたらす。これらの実験の結果はまた以下の表3に付与される。
【0042】
【表1】


【0043】
【表2】

【0044】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−フランジカルボン酸を調製する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール(「HMF」)、5−ヒドロキシメチルフルフラールのエステル、5−メチルフルフラール、5−(クロロメチル)フルフラール、5−メチルフロ酸、5−(クロロメチル)フロ酸、2,5−ジメチルフラン及びこれらの化合物の2つ以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む供給物を、酸化触媒の存在下で140℃よりも高い温度で酸化剤と接触させる工程を含むことを特徴とする2,5−フランジカルボン酸を調製する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記供給物が、5−ヒドロキシメチルフルフラール(「HMF」)、HMFのエステル及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記酸化触媒が、Co及びMnからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記酸化触媒が、臭素の供給源を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記酸化触媒が、Co及びMnの両方を含有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記酸化触媒が、少なくとも1つの更なる金属を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記更なる金属が、Zr及び/又はCeであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、前記酸化剤が、酸素、空気又は他の酸素含有ガスから選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法において、前記温度が、140℃〜200℃、最も好ましくは160℃〜190℃であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法において、好ましくはモノカルボン酸官能基を含有する溶媒、より好ましくは酢酸若しくは酢酸及び水の混合物を含む溶媒又は溶媒混合物が存在することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法において、前記供給物が、アルキルカルボン酸(ここで、アルキル基は、最大6個の炭素原子、好ましくは1個〜5個の炭素原子を含有する)のエステル部分を含有するHMFのエステルを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、5−ヒドロキシメチル−フルフラールのエステル、5−メチルフルフラール、5−(クロロメチル)フルフラール、5−メチルフロ酸、5−(クロロメチル)フロ酸、2,5−ジメチルフラン及びこれらの化合物の2つ以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む供給物を、酸化触媒の存在下で140℃よりも高い温度で酸化剤と接触させ、このようにして得られる生成物をエステル化する工程を含むことを特徴とする2,5−フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記生成物が、C〜Cアルキルアルコールでエステル化されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記C〜Cアルキルアルコールがメタノールであり、前記ジアルキルエステルが2,5−フランジカルボン酸のジメチルエステルであることを特徴とする方法。
【請求項15】
2,5−フランジカルボン酸を調製する方法であって、炭水化物供給源が、アルキルカルボン酸の存在下で、HMFエステル及び任意に5−ヒドロキシメチルフルフラールを含む生成物へ変換されて、そこからHMFのエステル及び任意に5−ヒドロキシメチルフルフラールを含む供給物が単離され、該方法が、酸化触媒、好ましくはコバルト及びマンガン、並びに臭素含有触媒の存在下で適切な反応条件下で、該供給物を酸化剤と接触させる次の工程を更に含むことを特徴とする2,5−フランジカルボン酸を調製する方法。

【公表番号】特表2013−507359(P2013−507359A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533104(P2012−533104)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050654
【国際公開番号】WO2011/043661
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(508273728)フラニックス テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【Fターム(参考)】