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還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉


【課題】 炉床広くに略同一電位レベルが形成され、粉粒状原料を効率よくサブマージドアーク電気溶融する直流電気溶融炉を実現すること。
【解決手段】 炉壁および炉底に沿うL形電極25が、その水平部分25bを炉体1bに対して放射状となるように配置される。水平部分25bを覆うようにカーボンスタンプ28が形成され、カーボンスタンプ28および垂直部分25aを覆うように黒鉛ブロック29が設置される。炉蓋1aには、可動電極8から異なる半径方向位置に開口した原料装入孔22が設けられ、気密的に原料7が炉体に均一に装入される。焼却灰にコークスブリーズを配合した原料から、還元容易な金属分を溶融還元して溶融銑鉄2が生成されると共に、ガス含有量が極めて少ない人工骨材製造用の溶融スラグ4が生成される。


【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉に係り、詳しくは、生活ごみの焼却灰や産業廃棄物の焼却灰または下水汚泥乾燥粉等を溶融すると共に焼却灰等に含まれる重金属類や還元可能な酸化物を溶融還元して除去し、SiO2 等の鉱物質を主成分とする溶融スラグを生成する技術分野に属する。そして、特に溶融スラグから有害金属を可能な限り含まない天然岩石に極めて近い組成の人工岩石をコンクリート用人工骨材として製造するために使用される電気溶融炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家庭から出るごみや産業廃棄物は焼却され下水汚泥等は乾燥粉とされることによって減容化され、埋立地等に廃棄される。しかし、投棄地の容量にも限界があり、ごみ等のより一層の減容化や再資源化の努力が払われるようになってきている。最近では資源のリサイクル化の研究が進み、堆肥化や有価物の回収も行われるようになっている。このようなごみの再資源化には無害化処理が重要である。特に注目を浴びるようになっているごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉、産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)の溶融スラグから建築資材等を再生する場合も同様に、再資源化や無害化処理が欠かせない。
【0003】焼却灰を1,500℃以上の温度で溶融すると、焼却灰中の可燃物が燃焼することによってダイオキシンは完全に分解され、重金属類はガラス質のスラグ中に閉じ込められ、焼却灰は1/3以下に減容される。なぜなら、焼却灰を溶融すると焼却灰中の無機分は融液となり、特開平3−275133号公報に記載されているように、その融液を冷却すると固化スラグとなるからである。
【0004】焼却灰等の溶融スラグは路盤材や建築土木用骨材として使用されたり、成形することによってタイルや装飾品として使用される。建築資材や装飾品等には無害性や化学的安定性が要求される。溶融スラグを固化させて無害化・化学的安定化した人工骨材を製造する方法や装置が種々提案されている。溶融スラグの生成する装置の代表的なものとして、電気溶融炉,旋回溶融炉,コークス燃焼還元溶融炉,表面溶融炉等の炉を使用するものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】焼却灰は常温時に電気抵抗が大きいので、焼却灰から溶融スラグを生成するための電気炉の通電が困難となる難点がある。しかし、焼却灰は高温になると電気抵抗が減少し、焼却灰が溶融すると導電性は比較的高くなる特性を有している。焼却灰に電流を流すと焼却灰の電気抵抗によって発生するジュール熱が、焼却灰の溶融を助長する。ジュール熱によって焼却灰を溶融する電気炉として、後述するサブマージドアーク電気炉がある。
【0006】電気炉で焼却灰をアーク溶融させる場合、炉内に下ろされた人造黒鉛電極に適当な電圧をかけると、電極棒の先端から焼却灰や焼却灰の溶融スラグに向けて電気アークが飛ぶ。これによって、他の電極棒や予め形成しておいたベースメタルとの間に電気回路が形成される。焼却灰をアーク加熱することによって溶融スラグを生成する電気炉が、特開平4−354578号公報に記載されている。この種の電気炉において、一般的にアーク放電は3,000℃ないし5,000℃の非常に高温でかつ高速である。アークが周囲のガスを引き込みながら焼却灰やスラグと衝突することによって、焼却灰や焼却灰の溶融スラグの熱伝導性は高くなるので、焼却灰中の不燃物や金属類も短時間に溶融する。このような溶融法では焼却灰の組成にかかわらず塩基度調整や融点降下用の副資材が不要であり、焼却灰の高い減容化も実現される。
【0007】従来から使用されている電気炉の出滓口は常に開口しており、出滓口近傍の部分の損傷が甚だしく、数ケ月の運転後には一ケ月位の電気炉補修のための運転休止期間が必要となる。また、溶融スラグは連続的に排出されるので、スラグ中の酸化鉄含有量を4%ないし30%に調整したり、溶融スラグを大気に曝すことになり、溶融スラグが酸化性雰囲気に置かれる。このような運転法は通常の電気製鋼法の域をでないものとなっている。これに対して、前記したサブマージドアーク電気炉では、炉内の溶融スラグがいまだ溶融していない焼却灰によって覆われるので、電気アークと電気抵抗ジュール熱とによってスラグを溶融することができる。
【0008】電気溶融法以外の前述した旋回溶融炉等を用いた溶融法においては、燃焼ガス中で焼却灰を溶融するため、流出スラグ中に多量のガスが含まれる。一方、サブマージドアーク電気溶融法では溶融スラグ中へのガスの混入がほとんどなく、脱泡処理が必要ないという利点がある。そのサブマージドアーク炉から排出されたスラグから人工骨材を製造するとき、溶融スラグは水冷されたり空冷される。溶融スラグが急激に冷却されるので、天然岩石とは異質なスラグ塊が生成される。従って、このような固化スラグは建築資材としての良質なコンクリート用人工骨材とはなり難く、固化スラグは非晶質(ガラス質)のままで使用することが可能な路盤材や緑農地化の資材として利用できるにすぎない。
【0009】溶融スラグを天然岩石に近似したものとするためには、スラグを結晶化させてスラグ組織の強化を図らなければならない。特開平4−132642号公報には溶融スラグの冷却速度を幾つかの温度域ごとに変える制御方法が開示され、特開平3−275539号公報には溶融スラグの成分調整と冷却速度の制御によって結晶化スラグを生成させる方法が開示されている。これらの方法は鉱物学的に疑問がある。さらに、固化スラグ中に有害物質や金属成分を封じ込めることによってスラグの安全性を確保しようとしているので、固化スラグ中に含有される重金属類がいずれは溶出する可能性があり、スラグの無害化は十分でない。加えて、焼却灰中の金属資源の回収がなされず、焼却灰の完全な再資源化が阻まれる。
【0010】電気炉は単相や三相の交流電気炉や直流の電気炉がある。このような電気炉では、運転中に装入原料から発生する有害ガスを外気と遮断するための炉蓋が必要である。焼却灰等の原料を運転中順次追加装入してサブマージドアーク電気溶融法を実現するためには、炉蓋に装入孔を設けて気密式の粉粒状原料の装入を可能にしておくと共に、装入された粉粒体の均一な分散を図る必要がある。
【0011】三相交流電気炉においては三本の固定された電極が存在するので、電極下に形成される溶融ゾーンは電極ごとに異なったものとなりやすく、装入された焼却灰の溶融のバランスをとることが容易でない。比重の小さい電気伝導度の低い粉粒物を原料とした場合に要求される穏やかな還元溶融は実現されにくく、焼却灰を炉内で均一に溶融させることが容易でない。
【0012】単相交流電気炉では常に交流電力が往復するので、原料の加熱が局部的となる傾向にある。それゆえ、比重が小さく電気伝導度の低い粉粒物を静かに還元溶融することができなく、溶融に多大の時間を要したり原料を均一に溶融しにくい。直流電気炉の運転制御は交流電気炉の運転制御よりもシンプルであるという利点がある。しかし、炉体に固定した導電体に対してアークが発生するので、局部加熱となりやすいことは単相交流電気炉の場合と同じである。それゆえ、可能なかぎり炉床広く給電して大きい溶融ゾーンを形成させることにより、静かで均一な焼却灰の溶融を達成することができる構造の直流電気炉の出現が望まれる。
【0013】本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、粉粒状原料の装入を運転中も可能にして常時フォーミングスラグを生成させるサブマージドアーク電気溶融を実現すること、また、炉床での広範囲にわたる溶融を電気抵抗ジュール熱によって可能にするために、同一電位レベルを広く保っておくことができる還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、ごみの焼却灰や下水汚泥乾燥粉等にコークスブリーズが配合された原料から、還元容易なFe・Cr・P等の酸化物を溶融還元して溶融銑鉄を生成すると共に、ガス含有率が低くSiO2 等を主成分とした溶融スラグを生成することができるサブマージドアーク電気溶融炉に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、一本の可動電極8が炉蓋1aの中央を挿通して垂直に配置される一方、炉壁および炉底に沿い炉側方から見るとL字状をなし、直流電力を供給するため炉底に沿って炉体中心に向かう水平部分25bを有したL形電極25が複数本配置される。L形電極25は純鉄製であって、その垂直部分25aの内部には冷却水が流通する冷却水通路26a,26bが形成される。炉底には冷却水通路の形成されない水平部分25bを覆うようにカーボン粉27を配して突き固めたカーボンスタンプ28が施される。そして、そのカーボンスタンプ28上および垂直部分25aを覆う絶縁耐火物1nの内方に、黒鉛ブロック29が設置されていることである。
【0015】図3に示すように、炉蓋1aには、可動電極8から異なる半径方向位置に開口した複数の原料装入孔22が設けられると共に、その原料装入孔22から原料7を炉体1b内に供給する原料装入装置40が設置されている。
【0016】図2にあるように、L形電極25の水平部分25bは真直状となっていることである。
【0017】図7の(a)を参照して、L形電極25の水平部分25bは、炉体1bの鉄皮に沿うように延びる円弧形部25mと、その円弧形部25mの内方に広がる鉄板で形成されたウエブ25nとを備えるようにしておくとよい。
【0018】ウエブ25nの上面には鉄製の突起25pが多数立設されていることが好ましい。
【0019】ウエブ25nの炉体中心部位は、可動電極8の直径と略同等もしくはそれより大きい円弧状切欠き25rが形成されている。
【0020】図7の(b)に示すように、水平部分25bを平面矢視で略半円形としておくとよい。
【0021】図9の(a)を参照して、水平部分25bは、炉体1bが大きい場合に適用しやすくするため、炉床面を平面矢視で三分割以上とするような部分円弧形としておけばよい。
【0022】図1に示すように、原料装入装置40はスクリューフィーダ21としておけばよい。
【0023】図5に示すように、原料装入装置40を密閉型シュート41としておいてもよい。
【0024】密閉型シュート41の上下に延びる途中に原料レベル検出器42が設けられ、その原料検出器42が密閉型シュート41内での原料7の停滞を検出すると密閉型シュート41への原料7の送給を停止させる原料定量切出装置43が、その密閉型シュート41に連なる原料貯蔵ビン32に設けられていることである。
【0025】可動電極8を、自焼成電極としておくことが好ましい。
【0026】図1を参照して、炉体1bの上部位には、外気を炉蓋1a下で堆積する原料7の上方へ供給する空気導入管35が挿設される。
【0027】炉体1bの上部位には、原料7の予熱および炉体1b内で発生した悪臭物質や未燃ガスを、空気導入管35により導入された外気を用いて燃焼させるための補助バーナ36が、その先端を炉体1bの接線方向となるように配置される。そして、可動電極8の炉蓋1aから突出している部分を取り囲む排煙フード37が炉蓋1aに取り付けられていることである。
【0028】
【発明の効果】本発明の電気溶融炉によれば、炉床を広く略同一の電位レベルにしておくことができ、比重が小さく電気伝導度の低い焼却灰等の原料を効率よくしかも静かに還元溶融することができる。金属酸化物は溶融銑鉄化して回収され、再資源化も可能となる。溶融スラグはフォーミングスラグの形成による電気抵抗ジュール熱によって効率よく加熱され、ガス含有量の極めて少ない溶融スラグが得られる。その溶融スラグには不純物や還元容易な金属成分は除去されており、結晶化させることにより化学的に安定し無害化された緻密なコンクリート用人工骨材を製造するにふさわしいスラグを得ることができる。溶融炉は直流電気炉であり、炉床に広く形成された導電部分によって広範囲な加熱と安定したアークの発生が実現され、電気炉の運転制御も容易なものとなる。フォーミングスラグの生成は電力伝達効率の向上を促し、電気炉の電力原単位の低減もなされる。原料が炉運転中も炉内に可及的に分散して装入され、可動電極の周りに堆積する原料によりサブマージドアーク溶融を維持することができる。また、L形電極の採用により、水平部分への外気の侵入が可及的に抑制されてその酸化が防止でき、L形電極の寿命を長く保つことができる。さらに、水平部分を覆うカーボンスタンプが侵入空気によって焼損することもなく、炉の長期にわたる運転が実現される。
【0029】炉蓋に可動電極から異なる半径方向位置に開口した複数の原料装入孔が設けられていると、原料装入装置を介して原料が炉運転中も炉内に可及的に分散して装入され、可動電極の周りに堆積する原料によりサブマージドアーク溶融を維持することができる。
【0030】L形電極の水平部分が真直状であると電極の全体形状がシンプルとなり、炉体に配置しやすくなる。
【0031】L形電極の水平部分が炉体鉄皮に沿うように延びる円弧形部とその円弧形部の内方に広がる鉄板で形成されたウエブとを備えていると、炉床に広い導電域が形成され、炉内での均一な加熱が実現される。
【0032】ウエブの上面に鉄製の突起が多数立設されていると、L形電極の水平部分とその水平部分をカーボン粉で覆って突き固めたカーボンスタンプとの一体性が高められ、炉床の導電性が可及的に向上する。
【0033】ウエブの炉体中心部位は、前記可動電極の直径と略同等もしくはそれより大きい円弧状切欠きが形成されていると、L形電極から可動電極への電流のショートパスが抑制されて炉内でのより一層均一な加熱が可能となる。
【0034】L形電極の水平部分を平面矢視で略半円形としておくと、小さい炉体の場合には、L形電極の設置個数を少なくしておくことができる。
【0035】L形電極の水平部分を、炉床面を平面矢視で三分割以上とするような部分円弧形としておくならば、炉体が大きい場合にも炉床に均一な導電性を発現させやすくなる。
【0036】原料装入装置としてスクリューフィーダを用いると、運転中も粉粒体原料を気密的に装入して可動電極を常時原料で覆っておくことができ、サブマージドアーク溶融の状態を維持しておくことができる。
【0037】原料装入装置に密閉型シュートを採用する場合も、原料の気密的な装入が可能となってサブマージドアーク溶融の維持が実現される。このシュートの採用によれば、原料をホットチャージすることもでき、炉内での原料の分散がより一層容易となり、かつ、電力原単位の大幅な改善も可能となる。
【0038】密閉型シュートに原料レベル検出器を設置しておくと、密閉型シュートへの原料の送給を停止させることができる。シュート内での原料の過剰な堆積を回避して、シュートの荷重負担は軽減され、また、短期間のうちに損耗するのが解消される。
【0039】ゼーダベルグ電極は酸化物の少ない焼却灰等の溶融にも十分使用することができ、人造黒鉛電極よりも安価であって電極原単位の低減が図られる。
【0040】炉体の上部位に空気導入管を挿入しておけば、炉内に外気の導入がなされ、未燃ガスや悪臭物質が燃焼され、炉排ガスの無害化が促進される。
【0041】空気導入管に補助バーナを臨ませると、未燃ガス等の燃焼の促進と共に原料の予熱も実現され、電力原単位の低減が可能となる。その排ガスは排煙フードから排気され、炉外に漏出するのが防止される。
【0042】
【発明の実施の形態】図面を参照して、本発明である「還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉」を詳細に説明する。図6は、ごみの焼却灰や下水汚泥乾燥粉等を溶融させたスラグからコンクリート用人工骨材を製造する装置に電気溶融炉を適用した設備例である。この設備には、電気溶融炉1のほかにスラグブロック成形鋳型10と熱処理炉14とが備えられる。このような骨材製造設備で使用される電気溶融炉は、ごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉または産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)にコークスブリーズが配合された原料から、還元容易な金属分を溶融還元して溶融銑鉄2を生成すると共に、ガス含有量が極めて少ない溶融スラグ4を生成することができるようになっている。
【0043】この電気溶融炉1はサブマージドアーク電気溶融法による還元溶融機能を有する直流電気炉であり、その主たる構成は、図1に示すように、黒鉛ブロック29で形成された炉壁および炉底の内部に複数本のL形電極25を埋め込んだ炉体1bと、炉運転中も粉粒状原料7を気密的に装入できる原料装入装置40の接続された炉蓋1aとからなる。
【0044】炉蓋1aにはその中央で昇降する可動電極8が配置される。炉体1bには、図6に示すように、溶湯溜め部3の溶融銑鉄2を意図的に少し残して排出する出銑口3aが設けられる。溶融銑鉄2の上部に滞留した溶融スラグ4を排出する出滓口5aも炉体に設けられ、出滓栓5bを抜いて後続工程で必要な量を短時間のうちに流出させることができる。出滓栓5bにガス供給孔5cを設けるなら、溶融処理中に出滓口5aの近傍の溶融スラグ4を攪拌するためのガスを送ることができ、出滓時のスラグ閉塞を防止することができる。
【0045】図1を参照して、炉体1bの鉄皮内面に耐火物1mが積層され、炉底にはカーボン粉を配して突き固めたカーボンスタンプ28が形成され、そのカーボンスタンプ上および絶縁耐火物1nの内方に上記した黒鉛ブロック29が配置されている。一方、炉蓋1aは中央に可動電極8が昇降する孔を備え、その可動電極8から半径方向に異なる位置で開口する複数の原料装入孔22,22が設けられている。この原料装入孔22からスクリューフィーダ21によって供給された原料7が炉体内に装入されるようになっている。
【0046】炉体1bに設けられる電極として、0.02%Cの純鉄鍛造バーであって炉側方から見るとL字状をなすL形電極25が例えば図2の(b)に示すように4本使用される。この電極25は、図1に示すように炉壁に埋設される垂直部分25aと炉底に配置される水平部分25bからなる。垂直部分25aは図2の(a)に仮想線で示すように断面が略正方形であり、この垂直部分25aの中に冷却水を流通させる往路26aとその内方に設けられた復路26bとが形成される。
【0047】L形電極25の水平部分25bは仮想線で示すように断面の幅が狭い長方形であり、図2の(b)に示すように、炉底に沿い炉体中心に向かって真直状に延びて配置される。この水平部分25bは図1に示すようにカーボン粉27で覆われる。カーボン粉は、炉床を形成するブロックを配置するための平坦面を出しやすくすると共に導電性を高めるためにスタンピングされる。このように、L形電極の水平部分が真直状であると電極の全体形状がシンプルとなり、炉体に設置しやすくなる。
【0048】炉床に滞留する溶融銑鉄2と黒鉛ブロック29とカーボンスタンプ28によって、炉床に広く導電性のある部分が形成される。複数本のL形電極25から給電されて可動電極8との間に印加される電圧が炉床部全体で均一にかかりやすくなる。炉床面に略同一の電位レベルが形成されると、焼却灰に配合されたコークスブリーズによる導電作用および比重が小さい電気伝導度の低い粉粒状焼却灰の還元溶融に必要な静かな加熱溶融作用により、原料の迅速で一様な溶融が実現される。後述するフォーミングスラグの形成による電力伝達効率の向上に起因して電力消費も著しく低減される。
【0049】炉蓋1aには可動電極8が挿入されるが、投入される焼却灰にはFe系酸化物等の還元すべき酸化物の含有量が少ないのが一般的であり、電極の消耗量は少ない。そこで、人造黒鉛電極よりも操作が容易で安価な自焼成のあるゼーダベルグ電極を採用しておくことができる。これによって、電極消費に伴うコストを著しく低下させることができる。ゼーダベルグ電極はフェロアロイ等の生成に使用されるものであるが、薄い鉄製の筒体に詳細は省くがカーボンペーストを内装したものであり、通電するとそれ自体が発生する抵抗熱によって自焼し固化するものである。このようなゼーダベルグ電極は公知であるが、サブマージドアーク溶融のための直流電気炉においては現在まで使用された例がない。
【0050】電気溶融炉においては、炉床近くにカーボン物質が存在するので還元性雰囲気が保たれ、L形電極25の水平部分25bが高温状態に置かれても酸化するおそれはない。一方、垂直部分25aでは炉内温度が高くなると空気と接触して酸化するおそれがあるので、上記のように水冷されている。L形電極25はフレキシブル導線30を経て炉周に配置したコーベル銅板31と接続されるので、炉体の熱膨張の影響を受けることなく電気回路を維持しておくことができる。
【0051】図3のように炉蓋1aには装入用の長孔22が形成される。図4に示す貯蔵ビン32の下方のホッパ33に連なるスクリューフィーダ21の先端で揺動できるシュート21aが図3に示した長孔22に臨まされる。シュート21aおよび長孔22の近傍を覆うフード21b(図3では仮想線で示されている)により、コークスブリーズを配合した粉粒体の原料が外部へ飛散しないように装入される。各原料装入孔22を可動電極8から異なった半径方向位置に存在させるなら、シュート21aの首振り動作によって原料が炉体内で分散され、可動電極8の周囲が原料によって覆われやすくなる。図3に仮想線で表した二つのスクリューフィーダ21A,21Aを使用して120度間隔の三つのスクリューフィーダが配置される場合、長孔の半径方向位置が互いに異なっていると、原料が一層広くかつ均一に投入される。
【0052】通常の直流電気炉の運転制御は交流電気炉の運転制御よりもシンプルである。しかし、直流電気炉では単相交流電気炉の場合と同様にアークの及ぶ範囲が局部的となる。L形電極を採用した電気炉は、通常の直流電気炉における運転の制御性の良さおよびL形電極の採用による炉床からの広範囲な領域をカバーする給電性の向上により、炉内での均一な溶融処理が実現されるという機能的に優れた利点を備える。
【0053】原料が下水汚泥乾燥粉を含む場合、その乾燥粉中の蛋白質系物質の存在により炉内で加熱される際に悪臭が発生する。焼却灰の場合でも、堆積する原料の上方空間には、原料の溶融過程で発生したCOガスが存在する。その悪臭物質や未燃ガスを燃焼させるため、図1R>1に示した炉体上部には空気導入管35の複数本が放射状に設置される。炉内の温度上昇に伴う圧力ドラフトが生じると、吸入された外気によって臭気分やCOガスが自然発火して燃焼される。仮想線で示した補助バーナ36を配置しておけば、その燃焼はより一層促進される。
【0054】補助バーナ36の火炎が空気導入管35の導出口に臨み、かつ、円形の炉体に対して火炎が接線方向となるようにしておくと、炉内での旋回流の発生を促して燃焼効率が上がると共に、装入されている原料の予熱にも寄与する。補助バーナによりエネルギの供給量は増加するが、未燃ガスを燃焼させる程度であるので全体的には無視できる量である。それにもかかわらず、上記のように原料を予熱できることにより電力消費が節減され、電力原単位の低減も図られる。排ガスは可動電極8の周囲から排煙フード37を経て集塵機に送られる。
【0055】以下に本発明のサブマージドアーク直流電気炉1を適用したコンクリート用人工骨材の製造設備の稼働例を説明する。この設備によって焼却灰を還元溶融する工程と、共晶凝固による一次再結晶の工程と、非晶質部分の熱処理による二次再結晶の工程とにより、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な良質のコンクリート用人工骨材としての人工岩石が合成される。
【0056】焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料7が、図1に示したスクリューフィーダ21,21と電気溶融炉1の炉蓋1aの原料装入孔22を通して、炉体1bに降ろされた可動電極8を覆うように供給される。焼却灰を還元溶融精錬すると、SiO2 ,CaO,Al2 3 を主成分とする溶融スラグが生成される。溶融スラグがMgOを5重量%ないし20重量%(以下%と表示する)までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%を有して共晶凝固現象を発現しやすくなるように、フェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等が、焼却灰を溶融する間にその他の造滓材と共に焼却灰に添加される。
【0057】溶融スラグのMgOの目標含有%を5%ないし20%までの範囲に選定している理由は、次のとおりである。MgOを5%以下にするとMgOの成分調整域が極めて小さくなる。一方、MgOを20%より大きくするとスラグの溶融温度が高くなって溶解エネルギが増大する。MgOを焼却灰に添加すると共に必要に応じて若干量の石灰石等が加えられる。この石灰石等を加えることにより、CaO−SiO2 −Al2 3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可能な限り近似した点で共晶凝固する組成が得られるように、溶融スラグが成分調整される。
【0058】可動電極8に電流を流し、原料7をサブマージドアーク電気溶融によって2時間ないし3時間溶融還元する。約1,500℃の熱によって可燃物が燃焼しダイオキシンは分解され、有害なZn等の低沸点物質はガス化して排出される。焼却灰の粉粒体は比重が小さくかつ電気伝導度も低いにもかかわらず、原料中にコークスブリーズが配合されているので、そのカーボンにより原料7の導電性が向上され、焼却灰が溶融される。
【0059】電気溶融炉1では焼却灰中のFe系酸化物を還元して溶融銑鉄2が生成され、その溶融銑鉄が溶湯溜め部3に貯溜される。他の重金属類Cr,Ni,Co,Cu,Mn,Mo等および還元可能なP2 5 やAs酸化物等は元素P,As等に還元され、これらの元素は溶融銑鉄2に溶解される。重金属類等を可能な限り含まない溶融スラグ4が生成され、溶融スラグ4は軽いのでそれが溶融銑鉄2の上部に滞留する。溶融スラグの滞留時間を十分に確保すると脱泡が進行し、ガス含有率が極めて低い溶融スラグ4となる。還元反応によって発生するCOガスは、スラグのフォーミングを促進する。溶融スラグ4上にフォーミングスラグ18が形成され、フォーミングスラグと原料層との境界にカーボン浮遊層19が発生する。
【0060】炉体1bに降ろされた可動電極8の下部位は、カーボン浮遊層19で覆われたフォーミングスラグ18に臨む位置となるように制御される。電極の下端から発生したアークは常時原料7やフォーミングスラグ18に覆われたサブマージドアークとなる。カーボン浮遊層19で発生するアークにより原料7が加熱されるだけでなく、フォーミングスラグ18から溶融銑鉄2に至る間で発生する電気抵抗ジュール熱によって原料が効率よく溶融される。このフォーミングスラグ18の生成によりアークの発生は極めて少ない。電気抵抗ジュール熱による溶融製錬は飛躍的に高い電力伝達効率を示し、電力原単位が低減する。
【0061】焼却灰が還元溶融されると、サブマージドアーク状態を維持させるために、原料7がスクリューフィーダ21から炉蓋1aを経て可動電極8の周囲に逐次追加供給される。図6に示すように、炉床に溜まった溶融銑鉄2は意図的に少量を残して、出銑口3aから1日ないし2日ごとに溶湯受鍋23に出湯され、鉄源材として別途利用される。
【0062】溶融スラグ4は溶融銑鉄化した金属成分等を含まず、溶融スラグの主成分がSiO2 ,Al2 3 ,CaO,MgOとなる。サブマージドアーク溶融法の採用によって溶融スラグが溶融銑鉄2上に長時間滞留されるので、溶融スラグはガスをほとんど含まない状態となる。従って、爾後的に溶融スラグに脱泡処理を施す必要がなくなる。溶融スラグ4は出滓口5aから排出される。出滓栓5bを抜いて例えば2時間ごとに20分という短時間のうちに排出される。それゆえ、生成された溶融スラグを少しずつ連続的に排出する場合に比較して、出滓時の溶融スラグ4からの熱エネルギの放散量も可能な限り抑制される。
【0063】コンベア11により矢印20方向へ移動するスラグブロック成形鋳型10に、高い熱エネルギを保有した溶融スラグ4から熱放散を抑制するように、短時間のうちに溶融スラグがスラグ受け樋9を通して注入される。成形鋳型10は断熱性耐火物で構成されており、移動している間の溶融スラグの急激な冷却は防止される。CaO−SiO2 −Al2 3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可能な限り近似した点で共晶凝固した鋳造スラグ4Aが鋳造される。
【0064】例えば、溶融スラグに含まれるCaOが5%ないし36%、SiO2 が38%ないし55%、Al2 3 が10%ないし25%、MgOが5%ないし20%である場合、溶融スラグの共晶点は1,300℃以下である。1,500℃以上の溶融スラグはスラグブロック成形鋳型10内において1,300℃以下まで液状で降温する。溶融スラグが共晶点の温度になると一斉に全組成の析出が開始し、「相律」に基づいて全組成が再結晶するまで温度が保持される。スラグの温度が低下することのない再結晶中は鋳型10が移動しているコンベア11上にある。再結晶が完了しスラグが降温しはじめた時点で鋳型10が反転部に到達するようにコンベア11の移動速度および搬送距離が定められている。一次再結晶した鋳造スラグ4Aは、脱型された時点でも高温を保っている。
【0065】一次再結晶した鋳造スラグ4Aは凝固している。しかし、鋳造スラグは現実には95%ないし97%の再結晶であり、残余は非晶質であって細かいガラスが点在する。一次再結晶した鋳造スラグは比較的小さな力を掛けるだけで砕け、その破片は尖ったものとなりやすい。成形鋳型10から脱型した鋳造スラグ4Aは、シュート13を経て直ちに二点鎖線のように持ち上げられた熱処理炉14の回転炉体15Aに装入される。
【0066】回転炉体15Aの内部は加熱バーナ16Aによって予め加熱されている。回転炉体15Aに所定量の鋳造スラグ4Aが投入されるとシュート13は退避し、回転炉体15Aが実線の位置に降ろされ、前後のタイヤ15tによって支持された回転炉体15Aは、ギヤー15m,リングギヤー15nの駆動によって矢印17の方向へ1rpm程度の速度でゆっくりと回転する。加熱バーナ16Aから火炎16aを発生させ、耐火壁15aが加熱されると共に鋳造スラグ4Aの堆積表層が保温される。炉体15Aの回転によって堆積した鋳造スラグ4Aの下方へ回り込んだ裏張り耐火壁15aに触れたり火炎に直接触れた鋳造スラグ4Aは、例えば900℃の均一な温度雰囲気に2時間または1,200℃の温度雰囲気に1時間保持される。
【0067】鋳造スラグ4Aが回転炉体15Aに装入されるとき、その表層が800℃ないし900℃程度まで降温している。しかし、鋳造スラグの内部は1,100℃ないし1,200℃の高温である。加熱バーナ16Aによって得られた1,000℃の雰囲気中でスラグの内部熱が外表に向けて伝導し、残余の非晶質部分の再結晶化が表層部に至るまで達成される。この二次再結晶の際に鋳造時に生じたスラグの内部歪も除去され、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な再結晶した人工岩石が生成される。
【0068】所定の時間が経過すると加熱バーナ16Aを止める。回転炉体15Aを破線のように持ち上げて、回転炉体をトラニオン軸15bを中心に傾動する。装入口15cを下方に向けると、天然岩石に極めて近い固化スラグ24が排出される。非晶質部分を含まない固化スラグは極めて硬く、固化スラグを破砕しても角が余り立たず、破砕面に少しの凹凸を呈する程度の均質なものとなる。コンクリート用人工骨材として使用する場合には、固化スラグは適当なサイズに破砕される。
【0069】このようにして得られた人工岩石24は、電気溶融炉1において還元容易な金属分が除去されており、ガス含有量も極めて少なくなっている。電気溶融炉で溶融スラグに付与された熱エネルギは、「相律」による温度保持作用が貢献して途中での熱消失が少ない状態で熱処理工程まで迅速に持ち込まれ、再結晶のための熱エネルギ消費量も大幅に低減される。
【0070】以上の説明から分かるように、焼却灰等を還元溶融することによって溶融銑鉄と溶融スラグが生成される。溶融スラグにはFe系酸化物ならびにその他の重金属類や還元可能な酸化物類が可能な限り少なくなり、重金属類の溶出しない無害化された良質のコンクリート用人工骨材が製造される。還元溶融中に生成された溶融銑鉄は別途利用できるので、金属資源の回収が図られる。
【0071】CaO−SiO2 −Al2 3 の三元系の場合には、共晶点の範囲が限定される。MgOを添加して四元系に改質すると共晶点の範囲は拡大され、四元系相平衡状態で共晶凝固可能な溶融スラグが得られる。MgOを添加することによって溶融スラグの流動性も改善され、CaOを過剰に添加することなくスラグ融点を低下させることができる。したがって、溶融スラグから人工岩石を合成する工程における溶融スラグの取り扱いが容易となる。生成された合成岩石は消化性を伴うことなく、合成岩石の長期間の化学的安定性や機械的強度が確保される。共晶凝固した一次再結晶スラグを熱処理することによって、僅かな残余非晶質部分が二次再結晶されるので、天然岩石に極めて近似した人工岩石が合成される。
【0072】焼却灰にはコークスブリーズが配合されて原料の導電性が高くなり、原料の溶融化が促進されると共にカーボンによる原料の還元が実現される。焼却灰は還元性雰囲気で溶融されるので、溶融スラグが炉床部や出滓部近傍の耐火物を侵蝕させることもなく、炉の耐用期間は長くなる。加えて、コークスブリーズはフォーミングスラグの発生を促し、電力伝達効率の向上による電力原単位の低減に大きく寄与する。溶融スラグは溶融銑鉄上に長時間滞留されるので、滞留中の自然脱泡作用によってガス含有率が極めて低くなる。従って、溶融スラグの爾後的な脱泡操作が不要となる。
【0073】溶融スラグは所定時間ごとの短時間出滓と鋳型への迅速な鋳込みにより、その操作の間での溶融スラグの保有熱エネルギの消散が可能な限り抑制される。一次再結晶に消費したエネルギの大部分は二次再結晶に利用される。それゆえ、固化スラグを小粒化しなくても、エネルギ消費を低減して再結晶のための加熱エネルギ量が低減する。
【0074】上記の説明において、極めて細かい粉体である焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料を電気溶融炉に装入している。この操作に代えて、MgOが5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%の溶融スラグとなるように粉状のフェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等や他の副原料を混入させた後に、原料をペレタイザーを用いてペレットとする場合には、原料を炉体に装入するときの取扱が容易となる。このように原料を造粒する段階でCaO−SiO2 −Al2 3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可能な限り近似した点で共晶凝固させることができる組成を有した溶融スラグが得られように原料を予め成分調整しておいてもよい。
【0075】電気溶融炉に装入される原料が焼却灰をすでに溶融してスラグ化したものであるなら、そのスラグを電気溶融炉で還元溶融するに先だち、焼却灰の固化スラグと共にコークスブリーズやMgO添加材ならびに副原料を電気溶融炉に装入するようにしてもよい。また、予め焼却灰の固化スラグにコークスブリーズ,MgO添加材,副原料を配合しておいたうえで装入するか、それらをペレットにした後に装入するということもできる。
【0076】サブマージドアーク溶融炉1は直流電気炉であり、炉の構造が簡単でコントロールもしやすく、また、電気エネルギの供給も安定する。交流電気炉は一般に大容量に適しており、しかも、電極間でアークの発生する方向に偏りが生じたり不安定であり、また、炉内装入物の堆積表層のみを加熱する傾向にあり、均一な加熱状態が得られにくい。しかし、L形電極を採用した本電気炉においては、通常の直流電気炉における制御性の良さと、炉床からの広範囲な領域をカバーする給電性の向上とにより、炉内での均一な溶融処理を実現することができる。さらには、粉粒状原料を常時装入することができるスクリューフィーダにより、サブマージドアーク溶融法による電気炉運転が維持される。
【0077】図5は、スクリューフィーダに代えて密閉型シュート41を原料装入装置40のために採用した例である。2つの密閉型シュート41,41は可動電極8から異なった半径方向距離にあるそれぞれの原料装入孔22,22に接続され、炉蓋1aを介して気密的に装入することができる。したがって、各シュート41の先端のアウトレットパイプ41aを揺動させれば、焼却灰等が炉体内に分散して装入される。焼却灰等の原料が常温から80℃程度までなら、シュートとしてフレキシブルな布製の筒体を使用することができる。
【0078】上記した常温の原料の場合のみならずホットチャージにおいても、以下のような自動供給制御装置を設けておくことが好ましい。図5において、密閉型シュート41の下方部位に原料レベル検出器42が設けられると共に、貯蔵ビン32には原料定量切出装置43が設置される。原料がシュート41内に大量に堆積して炉体1bに流れ出なくなると、原料レベル検出器42が原料の停滞を検出する。その検出信号が原料定量切出装置43の制御装置に入力されると原料の切り出しが停止され、密閉型シュート41への原料の送給がなくなり、シュート内での原料の過剰な堆積が防止される。これによって長いシュート41の無用なふらつきや消耗が抑制される。原料レベル検出器は粉粒体が落下する空間に配置された短い水平な振動板であればよく、振動の有無で原料の停滞もしくは原料の流落を検出することができる。原料レベル検出器42がシュート内に原料の停滞していないことを検出すると、原料定量切出装置43が作動され、炉体に原料が装入される。
【0079】ところで、前述したL形電極25の垂直部分25aの下端に一体化した水平部分25bは直流電力を供給するためのものであるが、図7の(a)に示したように、水平部分25bが、炉体の鉄皮に沿うように延びる円弧形部25mと、その円弧形部25mの主として内方へ広がる鉄板で形成されたウエブ25nとを備えたものとしておいてもよい。円弧形部が平面矢視で略半円形であると、二つのウエブ25n,25nによって円い炉床に広く導電性部分を形成でき、炉内での均一な加熱が実現される。もちろん、L形電極の設置個数が少なくなることから小さい炉体に適したものとなる。
【0080】上記したウエブ25nの上面には断面が丸または角状の短い鉄製の突起25pが多数立設され、そのウエブ25nの炉体中心部位は図7の(b)中に仮想線で示す可動電極8の直径と略同等もしくはそれより大きい実線もしくは破線で表した円弧状切欠き25rが形成されている。溶接等によってウエブ25nに取り付けられた鉄棒25pはカーボンスタンプ28(図8を参照)との一体性を高め、炉床の導電性を可及的に向上させる。円弧状切欠き25rはL形電極25から可動電極8への電流のショートパスを抑制して、炉内でのより一層均一な加熱を実現する。
【0081】上記したL形電極25は図7の(b)のごとく、その垂直部分25aが水平部分25bの一端に設けられ、図8に示すように電気溶融炉1に設置したときには垂直部分25a,25aを近接して配置してそれぞれのフレキシブル導線30,30を炉壁のほぼ一箇所に集め、炉周での給電線を一まとめにしておくことができ、出銑や出滓操作,炉体の保守作業の妨げとなるのを回避できる。なお、図7の(b)中に仮想線で示したように垂直部分25aを円弧形部25mの中央に配置しておいてもよい。
【0082】炉体が大きい場合には、L形電極25の水平部分25bを平面矢視で略半円形とするよりも、図9の(a),(b)のように、平面矢視で炉床が三分割や四分割となるような部分円弧形としておけば、炉床に均一な導電域を発現させやすくなり、均等な電圧分布が炉床に与えられる。なお、図7の(a)に表しているように、ウエブ25nが円弧形部25mの外方に少し延出されていても差し支えない。
【0083】ちなみに、炉底に電極を配置しておけば十分であるにもかかわらずL形電極25を採用し、それを炉壁と炉底とに沿うようにしているのは以下の理由による。炉底に配置した電極をフレキシブル導線と接続するために図1に示す水平部分25bの先端を例えば真っ直ぐに延長し垂直部分25aを無くすと、耐火物に覆われる延長部分がL形電極25の垂直部分25aの長さに比べて著しく短くなる。したがって、延長部分と耐火物との僅かな隙間から極めて僅かといえども外気が侵入するおそれがある。一方、本L形電極を採用すると、水平部分25bへの外気の侵入が可及的に抑制される。
【0084】すなわち、外気が垂直部分25aの上部から侵入しようとしても炉体の保有する熱で侵入空気は上昇し、水平部分25bに至ることがなくなる。その結果、水平部分25bの酸化が防止され、電極25の寿命を長く保つことができる。さらに、水平部分25bを覆うカーボンスタンプ28が侵入空気によって焼損することもなく、炉の長期にわたる運転が実現される。このことから分かるように、L形電極25は完全なL字状である必要はないが、水平部分25bからは少なくとも垂直もしくは傾斜して上方に延びる部分を有した形状となっていて、水平部分25bの近傍を還元性雰囲気に保っておくことが好ましいからである。
【0085】ところで、L形電極25とフレキシブル導線30との接続を図10の(a)や(b)のようにしておくとよい。まず、垂直部分25aの上端部に鉄箱50を溶接しておき、溶融したはんだ51を鉄箱50に貯えた状態でフレキシブル導線30の接続された銅板片52の一部を没入させ、はんだを凝固させればはんだと垂直部分25aとの密着が完全となり、L形電極25への通電性を高めておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したサブマージドアーク直流電気溶融炉の断面図。
【図2】 (a)はL形電極の拡大断面図であり、(b)は図1中のII−II線矢視図。
【図3】 図1の平面矢視図。
【図4】 直流電気溶融炉の全体概略構成図。
【図5】 密閉型シュートを採用した電気溶融炉の全体図。
【図6】 焼却灰から溶融スラグを生成し、結晶化したコンクリート用人工骨材を製造する設備の一例の全体図。
【図7】 (a)はL形電極の他例の斜視図、(b)は炉底に配置される二つのL形電極の平面図。
【図8】 ウエブを備えた二つのL形電極を炉底に設置した電気溶融炉の断面図。
【図9】 (a)は炉床面を平面矢視で三分割とした部分円弧形の水平部分を有するL形電極を使用した場合の炉底への配置図、(b)は炉床面を平面矢視で四分割とした部分円弧形の水平部分を有するL形電極を使用した場合の炉底への配置図。
【図10】 (a)は垂直部分の上端にはんだ接続部を形成したL形電極の全体図、(b)は垂直部分の上端部拡大斜視図。
【符号の説明】
1…電気溶融炉(サブマージドアーク直流電気炉)、1a…炉蓋、1b…炉体、1n…絶縁耐火物、2…溶融銑鉄、4…溶融スラグ、7…原料、8…可動電極、21,21A…スクリューフィーダ、22…原料装入孔(長孔)、25…L形電極、25a…垂直部分、25b…水平部分、25m…円弧形部、25n…ウエブ、25p…突起(鉄棒)、25r…円弧状切欠き、26a…往路(冷却水通路)、26b…復路(冷却水通路)、27…カーボン粉、28…カーボンスタンプ、29…黒鉛ブロック、32…貯蔵ビン、35…空気導入管、36…補助バーナ、37…排煙フード、40…原料装入装置、41…密閉型シュート、42…原料レベル検出器、43…原料定量切出装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ごみの焼却灰や下水汚泥乾燥粉等にコークスブリーズが配合された原料から、還元容易なFe・Cr・P等の酸化物を溶融還元して溶融銑鉄を生成すると共に、ガス含有率が低くSiO2 等を主成分とした溶融スラグを生成することができるサブマージドアーク電気溶融炉であって、一本の可動電極が炉蓋の中央を挿通して垂直に配置される一方、炉壁および炉底に沿い炉側方から見るとL字状をなし、直流電力を供給するため炉底に沿って炉体中心に向かう水平部分を有したL形電極が複数本配置され、上記L形電極は純鉄製であって、その垂直部分の内部には冷却水が流通する冷却水通路が形成され、炉底には、冷却水通路の形成されない上記水平部分を覆うようにカーボン粉を配して突き固めたカーボンスタンプが施され、該カーボンスタンプ上および前記垂直部分を覆う絶縁耐火物の内方に、黒鉛ブロックが設置されていることを特徴とする還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項2】 前記炉蓋には、前記可動電極から異なる半径方向位置に開口した複数の原料装入孔が設けられると共に、該原料装入孔から前記原料を炉体内に供給する原料装入装置が設置されていることを特徴とする請求項1に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項3】 前記L形電極の水平部分は真直状となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項4】 前記L形電極の水平部分は、炉体の鉄皮に沿うように延びる円弧形部と、該円弧形部の内方に広がる鉄板で形成されたウエブとを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項5】 前記ウエブの上面には鉄製の突起が多数立設されていることを特徴とする請求項4に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項6】 前記ウエブの炉体中心部位は、前記可動電極の直径と略同等もしくはそれより大きい円弧状切欠きが形成されていることを特徴とする請求項4に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項7】 前記水平部分は平面矢視で略半円形であることを特徴とする請求項4に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項8】 前記水平部分は、炉体が大きい場合には炉床面を平面矢視で三分割以上とするような部分円弧形となっていることを特徴とする請求項4に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項9】 前記原料装入装置はスクリューフィーダであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項10】 前記原料装入装置は密閉型シュートであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項11】 前記密閉型シュートの上下に延びる途中部位には原料レベル検出器が設けられ、該原料レベル検出器が前記密閉型シュート内での原料の停滞を検出すると前記密閉型シュートへの原料の送給を停止させる原料定量切出装置が、該密閉型シュートに連なる原料貯蔵ビンに設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項12】 前記可動電極は自焼成電極であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項13】 前記炉体の上部位に、外気を前記炉蓋下で堆積する原料の上方へ供給する空気導入管が挿設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。
【請求項14】 前記炉体の上部位には、原料の予熱および炉体内で発生した悪臭物質や未燃ガスを、前記空気導入管により導入された外気を用いて燃焼させるための補助バーナが、その先端を炉体の接線方向となるように配置され、前記可動電極の炉蓋から突出している部分を取り囲む排煙フードが炉蓋に取り付けられていることを特徴とする請求項13に記載された還元溶融スラグ生成用の直流電気溶融炉。


【図8】


【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図6】


【図5】


【図7】


【図9】


【図10】


【公開番号】特開平9−196573
【公開日】平成9年(1997)7月31日
【国際特許分類】
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 炉,キルン,窯 | 2種以上の炉に見出される種類のものである限りにおける,炉,キルン,窯またはレトルトの細部または付属品 | 電極の配置
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 燃焼装置;燃焼方法 | 火葬炉;燃焼により廃棄物を焼却するもの | 廃棄物の焼却;焼却炉の構造;細部,付属具またはその制御
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 炉,キルン,窯 | 炉,キルン,窯またはレトルト一般;開放式焼結用または類似の装置 | 電気的に加熱されるもので,他の熱源をもつものまたはもたないもの,例.電気アーク炉
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 炉,キルン,窯 | 炉,キルン,窯またはレトルト一般;開放式焼結用または類似の装置 | 装入装置の配置
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 炉,キルン,窯 | 炉,キルン,窯またはレトルト一般;開放式焼結用または類似の装置 | 加熱装置の配置
電気 | 他に分類されない電気技術 | 電気加熱;他に分類されない電気照明 | 放電加熱 | アーク放電による加熱
【出願番号】特願平8−26153
【出願日】平成8年(1996)1月18日
【出願人】(591071805)ラサ商事株式会社