免疫増強製剤

【課題】 抗原に対する免疫反応を効果的に増強する免疫増強剤を提供する。
【解決手段】 生体親和性材料からなる担体に抗原または抗原を誘導する物質を担持させ、所望によりさらに免疫調節物質またはその他の添加物を含む組成物は、免疫増強製剤として有用である。
【解決手段】 生体親和性材料からなる担体に抗原または抗原を誘導する物質を担持させ、所望によりさらに免疫調節物質またはその他の添加物を含む組成物は、免疫増強製剤として有用である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗原に由来する免疫反応を効果的に増強する免疫増強製剤に関する。本発明における免疫増強製剤は、主としてヒトの医薬あるいは獣医薬分野におけるヒト及びヒト以外の哺乳動物、及び鳥類の疾患の予防あるいは治療を目的としたワクチン製剤として用いられる。さらに本発明は、免疫増強製剤を動物に投与して免疫し、産生される抗体を取得することにより抗体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、一般に用いられているワクチンを大別すると、弱毒生(生菌)ワクチンと不活化(死菌)ワクチンに分けられる。弱毒生ワクチンには、一般に良好な免疫反応が得られる長所がある反面、毒性復帰や副作用など安全性に不安がある短所がある。また、不活化ワクチンは弱毒生ワクチンに比べて安全である反面、単回の投与では十分な免疫効果が得られない短所がある。実際、不活化ワクチンを用いた予防接種では、十分な効果を得るために2〜3週間の間隔を開けて2〜3回投与することが行われている。
【0003】一方、最近では分子生物学的手法の進歩によって、疾患の予防あるいは治療に有効で、かつ疾患に特異的な抗原が同定され、同定された抗原を模倣し、化学的技術あるいは組み換えDNA技術によって合成した抗原(コンポーネントワクチン)の製造も可能となっている。このように合成された抗原は、純度、安定性、特異性、安全性の点で従来のワクチン抗原に比べて優れているが、一般に抗原性が低いことが実用上の最大の課題となっている。従って、抗原性の低い抗原に対して効果的に免疫反応を増強する方法が、ヒト医学及び獣医学上強く望まれている。
【0004】加えて、不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンでは、疾患の予防あるいは治療に有効な免疫反応を得るには、2〜3週間さらに好ましくは4週間以上の間隔を開けて2〜3回投与する必要がある。これに対しては、1回の投与で十分に効果が得られるワクチン(シングルショットワクチン)がヒト医学及び獣医学上強く望まれている。獣医学上の主な利点として1)時間の削減、2)コストの軽減、3)コンプライアンスの向上が挙げられる。ヒト医学上も、上記3つの利点が重要であるが、特に投与期間を遵守した複数回の投与が困難である発展途上国における伝染病の撲滅運動においてコンプライアンスの向上は重要である。
【0005】不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンにみられる弱い抗原性の問題は、実験レベルではアジュバントを用いることによって克服できるが、実用的には副作用等の様々な問題を抱えている。人工的な物質を用いるアジュバントには2つの方法がある。一つは抗原をオイルまたはリピッドの粒子の表面に分散させる方法であり、もう一つは沈殿物に吸着させる方法である。鉱物油はいくつかの獣医用ワクチンや軍用インフルエンザワクチンに用いられたが、重篤な出血性病変や遷延性肉芽種が発生し、ヒト用ワクチンに常用することは当局から認可されなくなっている。フロイントの完全アジュバント及び不完全アジュバントは、過去40年間もっとも広く動物実験に使われてきた。これらは十分に免疫反応を誘導するが、注入部位における肉芽腫形成、癒着及び発熱など他の毒性を助長するため、ヒトまたは獣医学上の使用はさけられている。アルム(水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)は、現在ヒトへの投与が唯一許可されているアジュバントであり、広く使用されている。しかし、接種部位に肉芽腫を形成する他、有効性にばらつきがある欠点を有している。例えば水酸化アルミニウムは、細菌のトキソイドに使えばいかなるアイソタイプの抗体であれ十分なアジュバント効果を発揮するが、B型肝炎ウイルスに対するワクチンあるいはインフルエンザウイルスなどでは良い結果は得られていない。
【0006】人工的な物質を用いる上記のアジュバントに対して、生体内に存在する免疫賦活効果を有するサイトカインをアジュバントとして利用する方法がある。実際、免疫賦活効果を有するサイトカイン(例えばIL-1、IL-2、IFN-γ、IFN-α、GM-CSF、IL-12等)を使用することによって、抗原に対する免疫反応が増強されることが報告あるいは開示されており、これらは例えばRong Linらによって総説にまとめられている(Clinical Infection Diseases, 21, 1439-1449, 1995年)。しかしながら、サイトカインを溶液状態でアジュバントとして利用する場合、先の人工的なアジュバントの場合に比べて副作用が少ない反面、十分な抗体産生効果を得るには複数回投与する必要がある。これは溶液状態で接種された抗原とサイトカインが接種後直ちに体内に拡散し、抗原に対する特異的な免疫機構を活性化しないためと考えられる。また、サイトカインで全身的に免疫賦活を行うには、大量なサイトカインの投与が必要であり、この場合には重篤な副作用が誘導される可能性がある。従って副作用を生じずに効果的なサイトカインのアジュバントとして使用する方法が望まれている。
【0007】不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンにみられる弱い抗原性の問題を克服するもう一つのアプローチとしては、担体からの抗原の遅延放出が挙げられる。抗原を遅延放出させる考え方は、アルムで得られるアジュバント効果がアルムに対する抗原の非特異的な吸着とアルムからの持続的な脱離に由来するとの考えに由来する。アルムと同様の効果を有する物質を求めてこれまで種々の担体を用いて試みられてきた(例えば、Hongkee Sahら、J. Pharm. Pharmacol., 48, 32-36, 1996))が、実用化に至った例は見られない。また、抗原を投与してから充分な免疫効果が得られるまでの期間もまた、疾患の予防あるいは治療の観点から極めて重要である。しかしながら、免疫が活性化されるまでの期間を短縮する試みは、これまで行われてこなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上の点に鑑み、本発明は以下のことを目的としてなされたものである。
(1)生体親和性材料からなる担体から、抗原、または抗原と免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質とを遅延放出する免疫増強製剤を提供する。
(2)生体親和性材料からなる担体から、抗原を誘導する物質、または抗原を誘導する物質と免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質とを遅延放出する免疫増強製剤を提供する。
(3)(1)と(2)によって提供された製剤によって、副作用を生じないで抗原に由来する免疫反応を増強する方法を提供する。
(4)(1)と(2)によって提供された製剤によって、抗原に由来する免疫反応が活性化されるまでの期間を短縮する方法を提供する。
(5)(1)と(2)によって提供された製剤によって、抗原に由来する免疫の維持期間を長くする方法を提供する。
(6)(1)と(2)によって提供された製剤によって、当該製剤周囲を免疫反応の場とした免疫増強方法を提供する。
(7)(1)と(2)によって提供された製剤を用いた、ヒト用またはヒト以外の哺乳動物もしくは鳥用ワクチンを提供する。
(8)(1)と(2)によって提供された製剤を用いた、ヒト用またはヒト以外の哺乳動物もしくは鳥用シングルショットワクチンを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、抗原を徐放させ得る製剤を種々検討した結果、抗原を生体親和性材料からなる担体に担持させて生体に投与すると、抗原に由来する免疫反応が増強されることを見いだした。さらに本発明者らは、免疫賦活、免疫刺激又は免疫調節のいずれかの作用を有する物質(以下、併せて「免疫調節物質」という)を抗原と同時に生体親和性材料からなる担体に担持させて生体に投与することにより、免疫反応が早期に、且つ一層増強されることを見いだして本発明を完成した。
【0010】以下に本発明の詳細を説明する。
i) 本発明の原理的説明液性免疫を例に説明する。典型的な免疫応答において2度目の抗原刺激後の抗体産生は、最初の抗原刺激後の抗体産生と比較すると、より早く起こり、より高い抗体価がより長く維持される。抗体産生までに要する時間の相違は、大まかに言って最初の抗原刺激では抗体産生までに、(1)抗原提示細胞による抗原のT細胞への提示とT細胞の活性化、(2)活性化されたT細胞によるB細胞の活性化、(3)樹状細胞による抗原のリンパ節への運搬、(4)リンパ節でのB細胞の増殖と抗体産生細胞への分化の一連の段階が必要であるのに対して、2度目の抗原刺激では抗体産生細胞がすでに十分に準備されていることに由来する。また、抗体価の高さ及び維持期間の長さの相違は、通常の溶液状態による免疫刺激では、最初の免疫刺激において投与された抗原は投与後直ちに全身に拡散し、分解、代謝、排泄され、抗体産生細胞が準備されてきた時には殆ど体内から消失しており、抗体産生細胞を再び刺激するに至らないことに由来する。すなわち、疾病の予防あるいは治療上重要である、抗体価をより高く、より長く維持するためには、最初の抗原刺激によって産生された抗体産生細胞が、再び抗原によって刺激を受ける必要がある。
【0011】一方、より早期の抗体産生もまた疾病の予防あるいは治療上重要であるが、最初の抗原刺激による抗体産生細胞の産生を効率的に行うことは、抗体のより早期の産生に重要である。抗体産生細胞の産生を効率的に行うには、(1)抗原と抗原提示細胞が接触する機会を高める(抗原の投与部位に抗原提示細胞を集積させる)、及び/または(2)リンパ節でのB細胞の活性化、抗体産生細胞への分化を増強する必要がある。
【0012】これらの点に着目し、本発明では抗原を生体親和性材料からなる担体に安定に保持させ、持続的に放出させて体内の抗原量を維持し、産生された抗体産生細胞を抗原により再度刺激することによってより高い抗体価をより長く維持することを実現した。特に、免疫増強製剤を投与した局所では抗原の濃度が高く維持されることが推定されるが、この局所的な抗原の高濃度状態は平衡反応である抗原と抗体産生細胞との反応を促進させると共に、免疫担当細胞を投与局所に集積させる。従って局所的な抗原の濃度を高く維持することが、本発明の最も重要な原理として挙げられる。
【0013】さらに本発明では生体親和性材料からなる担体に、抗原と免疫調節物質(例えば、サイトカイン)とを同時に担持させ、持続的に放出させて、(1)抗原投与部位への免疫担当細胞の集積とそれに伴うT細胞への抗原提示の活性化と(2)免疫増強製剤の投与部位を担当するリンパ節(樹状細胞が抗原を運搬し、抗原産生細胞が産生されるリンパ節)への選択的かつ持続的なサイトカインの流入により、リンパ節でのB細胞の活性化と抗体産生細胞への分化を増強し、より早期の、効果的な抗体産生を実現した。従って本発明における免疫増強製剤の特徴は、溶液状態で抗原、及び抗原とサイトカインを投与した場合に誘導される全身的な免疫賦活機構と異なり、抗原、及び抗原とサイトカインを徐放することによって製剤周囲に免疫賦活の場を形成することにある。
【0014】以上の点において本発明の原理上の特徴は以下のようにまとめることができる。
(1)抗原もしくは抗原を誘導する物質(以下、併せて「抗原物質」という)、または抗原物質と免疫調節物質とを持続的に放出する。
(2)投与局所の抗原物質、または抗原物質と免疫調節物質の濃度を高く保つ。
これらの原理上の特徴は、免疫増強製剤を構成する担体が担持する抗原物質、または抗原物質と免疫調節物質を生体内で安定に保持かつ徐放することによって満たされる。免疫増強製剤が生体内に投与されることから、担体は生体親和性に優れた生体親和性材料であることも当然の条件となる。従って上記の製剤的な特徴を満たす生体親和性材料を担体として用いる場合においては、いかなる生体親和性材料を用いた場合であっても、当該の免疫増強製剤によって免疫増強効果が得られることは、本発明の原理と全く矛盾しない。また、本発明では、免疫担当細胞を継続的に抗原で刺激をすることにより、またはT細胞およびB細胞に対して能動的に活性化を促すことによって、免疫を賦活化させることから、本発明は液性免疫に限らず、粘膜免疫および細胞性免疫をも活性化することができる。
【0015】ii)本発明の効果抗原にアビジンを、免疫調節物質であるサイトカインにIL−1βを用いた抗体産生増強効果を例に、以下に本発明による効果を説明する。
ア)抗原、及び抗原とサイトカインの持続的な放出図1に示したように、本発明の免疫増強製剤は抗原(アビジン)とサイトカイン( IL−1β)を7日以上にわたって持続的に放出した。
イ)抗体産生の増強本発明の免疫増強製剤による抗体産生の増強効果は、マウス及びヒツジに対する免疫刺激実験で明らかに示された。マウスに剤形を変えてアビジンを投与し、投与7、14、21、35、83日後の血中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した(図2)。マウスにアビジン100μgを従来の方法で投与、すなわちアビジンをリン酸緩衝液に溶解した溶液状態で投与した場合と、同量のアビジンを担持した免疫増強製剤(実施例7で調製)を投与した場合、同量のアビジンとIL−1βを同時に担持した免疫増強製剤(実施例8で調製)を投与した場合とを比較した。投与35日後では、アビジンを担持した免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、アビジン溶液を投与したマウスで得られた抗体価の約25倍に達した。この結果は、抗原を本発明の免疫増強製剤化することによって抗原に対する抗体産生が増強されたことを示している。さらにアビジンとIL-1βを担持した免疫増強製剤を投与したマウスの抗体価は、アビジン溶液を投与した場合に比べて実に約450倍に達した。この結果は、抗原を免疫賦活効果を有するサイトカインと同時に本発明の免疫増強製剤化することによって、抗原に対する抗体産生がさらに増強されることを示している。
【0016】抗原と免疫賦活サイトカインを同時に担持した免疫増強製剤による抗体産生効果はヒツジに対する免疫刺激実験でより顕著に見られた(図3)。ヒツジに剤形を変えてアビジンを投与し、投与7、14、21、35日後の血中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。アビジンをヒツジに従来の投与方法で溶液状態で100μg投与しても、抗アビジン抗体は産生されなかった。このマウスとヒツジでの抗体産生の差はマウスとヒツジの体重差に依存すると考えられる。このことは、アビジンは100μgの投与でヒツジで抗体が産生されるのに十分な抗原性を有していないことを示している。これに対してアビジンとIL−1βを同時に担持した免疫増強製剤(実施例8で調製)を投与した場合には、投与14日後に高い抗体産生が見られた。この結果は本発明の免疫増強製剤が、抗体を産生するには不十分な抗原性しか有しない抗原に対し、抗体産生を増強する効果を有することを顕著に示している。一方、アビジンとIL−1βを従来の方法で同時に溶液状態で投与しても、抗体産生は見られなかった。この結果は免疫増強製剤で得られた抗体産生増強効果が製剤からの抗原、及び抗原とサイトカインの持続的放出に依存することを示している。以上のことは、本発明の免疫増強製剤は、十分な抗体価を得るには複数回の投与が必要である従来の投与方法に比べて、一回の投与で十分な抗体価が得られることを示している。
【0017】ウ)抗体産生までの期間の短縮本発明の免疫増強製剤の重要な効果である抗体産生までの期間の短縮は、従来の方法で抗原溶液を投与しても抗体の産生が見られなかったヒツジを用いた免疫刺激実験でよりも、従来の方法で抗原溶液を投与した場合にもある程度の抗体産生が見られたマウスにおける免疫刺激実験で端的に確認できた。図2のグラフで明らかなように、従来の方法でアビジンを溶液状態で投与した場合、投与後14日目以降に抗アビジン抗体量が増加したのに比べて、免疫増強製剤(アビジンのみあるいはアビジンとIL−1βを担持)を投与した場合には、投与後7日目以降抗体量が急激に増加した。従って抗体産生までの期間が、約1週間短縮された。また、アビジンを溶液状態で投与したマウスで得られた抗体価が、アビジンのみを担持した免疫増強製剤の投与14日後に得られた抗体価に到達したのは投与83日後であった。また、アビジンとIL−1βを担持した免疫増強製剤の投与14日後に得られた抗体価には、投与83日後でも到達しなかった。このことから、免疫増強製剤は抗体産生期間を69日以上短縮したと言える。
【0018】エ)免疫増強製剤投与部位局所の免疫反応本発明の原理的説明の項で述べたように、本発明の免疫増強製剤で得られる効果には、製剤を投与した部位局所での免疫反応が重要な役割を果たしていると考えられる。このことは、免疫刺激実験で使用したヒツジの製剤投与部位の組織像から容易に推察された(図4、5)。組織像から、免疫増強製剤周囲に免疫担当細胞が浸潤していることがわかる。ここで言う免疫担当細胞とは、好中球、CD4陽性T細胞、γδTCR陽性T細胞、MHCII陽性細胞、マクロファージ等である。
【0019】これらの免疫担当細胞の集積は、アビジン(及びIL−1β)を溶液状態で投与した場合には見られなかった。これは溶液状態で接種されたアビジンとIL−1βが接種後直ちに体内に拡散し、免疫担当細胞を局所に誘導しないためであると考えられる。また、これらの免疫担当細胞の集積は、 IL−1βを担持した免疫増強製剤においてより顕著であった。これらの知見は免疫増強製剤からの持続的な放出により、製剤周囲に抗原、あるいは抗原とサイトカインの高濃度状態を形成し、これにより免疫担当細胞が製剤周囲に集積し抗体産生を増強するとの考えを支持している。一方、免疫担当細胞の集積はある種の炎症反応であるが、得られた免疫反応は浮腫などを伴わず、炎症反応は自己消失した。
【0020】iii)免疫増強製剤本発明においては、基本的には、生体親和性材料からなる担体に抗原、または抗原を誘導する物質を担持させた製剤であって、所望によりさらに免疫調節物質、あるいはその他の添加物を含んでなる製剤を免疫増強製剤と呼ぶ。本発明の免疫増強製剤によって増強される「免疫反応」とは、本製剤に含有された抗原または誘導される抗原に由来する免疫反応を指す。賦活化される免疫反応は、液性免疫、粘膜免疫、細胞性免疫のいずれか、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0021】「抗原」としては、抗原に由来する免疫反応を誘導し得るものであれば特に制限はないが、一般にこの抗原に由来する免疫反応がヒトあるいはヒト以外の哺乳動物、鳥類の疾病を予防および/または治療効果を有するものが選択される。例えば、ワクチンハンドブック(国立予防衛生研究所学友会編、丸善、1994年)及びRemington's Pharmaceutical Sciences 14th Edition(Mack Publishing Co.、1995年)の75章、Immunizing Agents、p1426-p1441あるいはPhysician's DeskReference, 46th Edition(米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)認可、1992年)の208-209頁に記載されているトキソイド、ワクチン及び生ワクチン自体あるいはこれから得られる物質が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0022】具体的には、(1)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などを例えば遺伝子組み換え(毒性あるいは病原性に関与する遺伝子を改変)、継続的な培養(自己改変による弱毒あるいは非病原性株の出現)、ホルマリン処理、β-プロピオラクトン処理、放射線照射、超音波照射、酵素処理、加熱などの方法を用いて弱毒化、無毒化あるいは非病原性化したもの、(2)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などから、例えば化学的あるいは酵素的な分解、物理的な破砕、カラム精製、抽出、ろ過するなどして得られる、例えば膜表面タンパク質、核内タンパク質などのタンパク質、プロテオグリカン、ポリペプチド、ペプチド、膜構成成分、(3)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、腫瘍細胞などからウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導する抗原の遺伝子を取り出し、同定し、当該遺伝子をプラスミドのような適当なベクターに組み込み、大腸菌、酵母、動物細胞で発現させることによって得られるペプチドやタンパク質で構成されるサブユニットワクチン、当該抗原と同じあるいはそれ以上に高い特異的な免疫原性を有するように配列された合成ペプチドなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。ここで腫瘍細胞に対する特異的な免疫を誘導する抗原とは、MAGE-1、MAGE-3、BAGEなどのいわゆる癌退縮抗原や、Tyrosinase、Mart-1、gp100、gp75などの組織特異抗原や、p15、Mucl、CEA、HPV E6,E7、HPR2/neuなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】より具体的な「抗原」として、以下のような疾患の予防あるいは治療に有効な免疫反応を誘導し得る抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない:コレラ、百日咳、ペスト、腸チフス、髄膜炎、肺炎、らい病、りん病、赤痢、ポリオ、グラム陰性敗血症、大腸菌敗血症、狂犬病、ジフテリア、ボツリヌス、破傷風、小児麻痺、インフルエンザ、日本脳炎、風疹、麻疹、黄熱病、耳舌腺炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、水痘/帯状疱疹、マラリア、結核、カンジタ、虫歯、後天性免疫不全症候群、癌(腫瘍)、オーエスキー病、乳房炎、炭疸病、ブルセラ病、マルタ熱、チーズ様リンパ節炎、腸毒血症、腸炎、伝染性壊死性肝炎、悪性浮腫、気腫症、レプトスピラ症、scabby mouse、ビブリオ病、丹毒、腺疫、ボルデテラ性気管支炎、ジステンパー、全白血球減少症、気管支炎、ヒツジハエうじ症、ウイルス性下痢症、ピメレア(Pimelea)中毒。さらに、以下のようなウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体の感染及び病態の発症の予防、及び発症した疾患の治療に有効な免疫反応を誘導し得る抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない:グループB髄膜炎菌、グループB連鎖状球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サルモネラ菌、クロストリディウム属に属する細菌、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ヒト免疫欠損ウイルスIおよびII、単純ヘルペスI及びII、CMV、EBV、トラコーマクラミジア、パルボウイルス、パラインフルエンザウイルス、カリシウイルス。本発明における「抗原」には、疾病の予防あるいは治療に用いられるだけでなく、動物産業で産業上の理由で用いられる抗原も含まれる。例えばこれらの抗原は、ワクチンズ・イン・アグリカルチャー、イミュノロジカル・アプリケーションズ・トゥー・アニマル・ヘルス・アンド・プロダクション(Vaccines in Agriculture, Immunological Applications to Animal Health and Production(P. R. Woodら編集、CSIRO、1994年))の71-160頁に記載の抗原を挙げることができるが、これに限定されるものではない。動物産業の産業上の理由で用いられる抗原としては、以下に挙げる抗原が含まれるが、これに限定されるものではない。1)家畜の繁殖に利用される抗原;インヒビン関連ペプチド、放出ホルモン(黄体形成ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン等)に対する免疫反応を誘導し得る抗原:2)家畜の成長及び代謝を調節するのに利用される抗原;成長ホルモン関連因子、インシュリン様成長因子-1、成長ホルモン、ステロイドホルモン、性ステロイドホルモン、含脂肪細胞の原形質膜抗原、肥満脂質、コルチゾール、腺副腎皮質刺激ホルモン、腺副腎皮質刺激ホルモン受容体、β−アドレナリン受容体、腺下垂体ホルモン(プロラクチン、ACTH、STH、TSH、LH、FSH等)に対する免疫反応を誘導し得る抗原:3)家畜の飼育環境を調節するのに利用される抗原;植物随伴毒素、低分子量天然毒物に対する免疫反応を誘導し得る抗原。また、本発明における「抗原」とは、抗原に対する特異的な免疫反応を誘導し得るものに限定されるものではなく、抗原に対して非特異的な免疫を誘導し得るものも含まれる。ここで抗原に対して非特異的な免疫を誘導し得る抗原とは、例えばブドウ球菌由来の腸管毒素SE(staphylococcal enterotoxins)やTSST−1(toxic shock syndrome toxin-1)、脱落皮毒素ET(exofoliative dermatitis toxin)、宮城県獣医師会会報、第50巻3号、133-137、1997に記載の溶レン菌菌体の細胞膜に由来するCAP(cell-membrane associated protein)、T−12やNY−5溶レン菌由来のSPM(Streptococcus pyogenes-mitogen)等の細菌由来抗原であるスーパー抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】「抗原を誘導する物質」とは、生体内で上記のような抗原の産生を誘導する物質であって、例えばウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該の抗原を産生するように組み込まれたプラスミドやウイルスを挙げることができる。組み込まれる核酸としては、上記のような抗原となり得る物質をコードする核酸を挙げることができ、例えば以下のようなタンパク質をコードする核酸を挙げることができる。インフルエンザウイルスのHAやNA、あるいはNPの各タンパク質、C型肝炎ウイルスのE2やNS1タンパク質、B型肝炎ウイルスのHBs抗原タンパク質、A型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質であるVP1やVP3、あるいはカプシド様タンパク質、デングウイルスのEgpタンパク質、RSウイルスのFあるいはGタンパク質、狂犬病ウイルスの構造タンパク質であるGやNタンパク質、ヘルペスウイルスのgDタンパク質、日本脳炎ウイルスのE1あるいはpre−Mタンパク質,ロタウイルスの外殻糖タンパク質VP7や外殻タンパク質VP4、ヒト免疫不全ウイルスのpg120やgp160タンパク質、Leishmania majorの主要表面抗原タンパク質、マラリアのスポロゾイドの主要表面抗原(circum sporozoite protein)タンパク質、トキソプラズマの54−kdやCSタンパク質、虫歯の原因となるStreptococcus mutansの菌体表面タンパク質PAc。また、MAGE-1、MAGE-3、またはBAGEなどの癌退縮抗原や、Tyrosinase、Mart-1、gp100、gp75などの組織特異抗原、p15、Muc1、CEA、HPV E6,E7、HER2/neuなどをコードする核酸および「Immunization with DNA」:Journal of Immunological Methods、176巻、1994年、145〜152頁に記載の核酸を挙げることができるが、これに限定されるものではない。このような核酸を組み込むプラスミドやウイルスは、病原性がないものである限り特に制限はないが、例えばウイルスとしては、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、HIVウイルス、ヘルペスウイルスなどの通常のベクターとして用いられるものが挙げられる。
【0025】抗原物質は、例えば化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術によって得ることができる。本発明においては、どのような方法によって得られたものを用いてもよいが、本発明製剤は前記のような効果を有するので、従来の投与方法(例えば溶液状態、懸濁液状態での注射的な投与)では一般に効率よく免疫反応が誘導されにくい組み換えDNA技術によって得られた抗原性が低い抗原に対して、特に適している。
【0026】特異的な免疫を誘導する抗原物質は、修飾・改変などを行うことなく、そのまま免疫増強製剤に含有させてもよいが、さらに抗原性を高めそして/または安定性を高める目的で、例えば、(1)抗原よりも分子量の大きなタンパク質(例えばβ-ガラクトシダーゼやコアタンパク質など)と共有結合であるいは非共有結合で結合させるか、(2)適当な糖鎖を付加するか、(3)リポソームに封じ込めるか、または(4)ウイルスとリポソームの膜融合型リポソームや(5)B30MDP(6-O-(2-tetradecylhexadecanoyl)-N-acetylmuramyl-L-alanyl-D-isoglutamine)を用いて得られる膜粒子(ビロゾーム)に含有させてもよい。
【0027】「免疫調節物質(免疫賦活、免疫刺激または免疫増強の作用を有する物質)」としては、特に制限はないが、例えばサイトカイン、ケモカイン、成長因子、免疫賦活ペプチド、免疫賦活DNA配列、アルム、フロイントの完全アジュバント、不完全アジュバント、イスコム、サポニン、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンの共重合体、CRL−1005(Vaxcel社)、QS−21(Cambridge Biotech社)、ヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、アブリジン、細胞壁骨格成分、コレラトキシン、リポ多糖体内毒素、ウォーターリードリポソームおよびサイトカインを含有したリポソーム等のリポソーム、1,25-ジヒドロキシビタミン-D3、およびカルボキシルビニールポリマーにアルギニンと塩化ナトリウムを加えてゲル化したものなどが挙げられる。サイトカインとしては、IFN−α、IFN−β、IFN-γ、 IL−1α、 IL−1β、IL−2、 IL−3、 IL−4、 IL−5、 IL−6、 IL−8、TNF−α、TNF−β、GM−CSFなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。特に免疫増強製剤の投与部位に免疫担当細胞を集積させ、抗体産生の増強を希望する場合においては、 IL−1β及びIL−2が望ましい。また、具体的な免疫調節物質としては、例えば以下に挙げる物質の一あるいはそれ以上の群から選択されるが、これに限定されるものではない: リン酸アルミニウムゲル(例えばAdju-Phos)、β-グルカン(例えばAlgal Glucan )、γ-イヌリン/アルム複合体(例えばAlgammulin )、水酸化アルミニウムゲル(例えばAlhydrogel)、スクアラン、Tween 80、プルロニックL121からなるエマルジョン(例えばAntigen Formulation )、アブリジン (N,N-ジオクタデシル-N',N'-ビス(2-ハイドロオキシエチル)プロパンジアミン、登録商標、VIDO, Canada)、BAY R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド ハイドロアセテート)、カルシトリオール(Calcitriol 、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)、リン酸カルシウムゲル、コレラホロトキシン(CT)、コレラトキシンBサブユニット (CTB)、CRL1005 (Vaxcel Corporation, USA)、臭化ジエチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド (DDA)、ジハイドロエピアンドロステロン(DHEA )、ジミリストイルホスファチジルコリン (DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、デオキシコール酸ナトリウム塩(DOC)/アルム複合体、γ-イヌリン、ゲルブアジュバント (N-アセチルグルコサミニル-(β1-4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミン(GMDP)と塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)と亜鉛/L-プロリン塩複合体の混合物、GMDP、1-(2-メチルプロピル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(Imiquimod )、ImmTher (登録商標、Immuno Therapeutica, Inc., USA)、ISCOM(s) (登録商標、ISCOTEC AB, Sweden)、Iscoprep 7.0.3 (登録商標、ISCOTEC AB, Sweden)、ロキソリビン (7-アリル-8-オキソグアノシン)、LT-OA (LT経口アジュバント、大腸菌の不安定な腸毒素プロトキシン)、MF59 (ポリソルベート80とスパン85及びスクアレンからなるエマルジョン)、MONTANIDE ISA 51 (登録商標、SEPPIC, France)、MONTANIDE ISA 720 (登録商標、SEPPIC, France)、MPL (登録商標、Ribi ImmunoChem Research, Inc., USA)、N-アセチル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシ-ホスホリルオキシ))エチルアミド一ナトリウム塩 (MTP-PE)、MTP-PEリポソーム (MTP-PE抗原提示リポソーム)、ムラメチド (NAc-Mur-L-Ala-D-Gln-OCH3)、ムラパルミチン (NAc-Mur-L-Thr-D-isoGln-sn-グリセロールジパルミトイル)、D-ムラパルミチン (NAc-Mur-D-Ala-D-isoGln-sn-ジグリセロールジパルミトイル)、NAGO (ニュウラミナーゼとガラクトースオキシダーゼの混合物)、非極性界面活性小胞 (コレステロールとモノパルミトイル-rac-グリセラル及びリン酸ジセチルの混合物)、プルラン (β-グルカン)、PLGA (乳酸とグリコール酸の共重合体)、PGA (ポリグリコール酸)、PLA (ポリ乳酸)、プルロニックL121、PMMA (ポリメチルメタクリレート)、PODDS (登録商標、アクリル化アミノ酸)、Poly rAとPoly rUの複合体、ポリホスファジン、ポリソルベート80、リン脂質タンパクとカルシウムの複合体(例えばProtein Cochleates )、QS-21 (Stimulon、登録商標、Cambridge Biotech Corporation, USA)、クィルA(Quil A 、Quillajaサポニン)、高タンパク吸着性水酸化アルミニウムゲル(例えばRehydragel HPA )、低粘度水酸化アルミニウムゲル(例えばRehydragel LV )、4-アミノ-α,α-ジメチル-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール (S-28463)、SAF-1 (スレオニルムラミルジペプチドとプルロニックL121とポリソルベート80及びスクアランの混合物)、IL-1βの163-171ペプチド (Sclavo Peptide)、センダイプロテオリポソーム、脂質センダイマトリックス、スパン85 (アラセル85、ソルビタントリオレート)、スペコール(Specol 、鉱物油とシクロパラフィン、スパン85及びTween 85の混合物)、スクアラン、スクアレン、ステアリルチロシン、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Ala-D-isoGlu-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(Theramide )、スレオニルムラミルジペプチド(Termurtide、登録商標、Syntex, USA)、ティーワイ・パーティクルズ(Ty particles)、ウォーターリードリポソーム(Water Reed Liposomes 、リピドAを吸着した水酸化アルミニウムを含有したリポソーム)。
【0028】本発明の免疫増強製剤に含有される抗原物質及び免疫調節物質の量は、製剤に含有される時の生体親和性材料及び添加剤との混合比や製剤の大きさによっていかようにも調節することができる。本発明製剤により投与する抗原物質の量は、従来の投与方法(例えば溶液状態、懸濁液状態での注射的な投与)で用いられる量と同程度であってもよいが、本発明製剤は前記のような優れた免疫増強効果を有するので、従来法による投与量以下の投与量で十分に免疫を誘導することができ、抗原物質の種類や本発明製剤の剤形あるいは抗原物質と同時に投与する免疫調節物質の種類や量により、適宜投与量を調節することができる。
【0029】本発明の免疫増強製剤の担体は、抗原物質を担体内に分散または包含して担持する。また、当該担体は抗原(および免疫調節物質)を持続的に放出する。本発明の免疫増強製剤の担体は、以下の適当な生体親和性材料から形成される。「生体親和性材料」としては、生体親和性に優れ、抗原物質及び免疫調節物質を生体内で安定に保持かつ徐放できるものが好ましい。生体親和性材料は、例えばコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロース、アラビアゴム;グリコール酸、乳酸、アミノ酸の重合体及びこれらの二種類以上の共重合体;ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンからなる群の中から任意に選ぶことができる。これらの生体親和性材料は単独で、または二以上の混合物として用いることができる。生体親和性材料は、免疫増強製剤の調製工程において抗原物質と免疫調節物質を変性及び/または失活させないことを条件に、さらに希望する効果により生体内分解性あるいは生体内非分解性の条件から選択される。
【0030】特に好ましい生体内分解性の生体親和性材料としてはコラーゲンが挙げられ、このコラーゲンに上記他の生体親和性材料を混合することもまた望ましい。コラーゲンとしては本発明の目的にかなう限りはいかなるものも使用できる。例えば、動植物から得られる酸可溶性コラーゲン、塩可溶性コラーゲン、アルカリ可溶性コラーゲンおよびこれらのコラーゲンから得られるアテロコラーゲン、側鎖を修飾したコラーゲン、架橋したコラーゲン、あるいは遺伝子工学的手法により製造されるコラーゲン類、特にはアテロコラーゲンおよびこれらのコラーゲンから得られる側鎖を修飾したコラーゲン、架橋したコラーゲン等を用いることができる。側鎖を修飾したコラーゲンとしては、例えばサクシニル化、メチル化あるいはミリスチル化したコラーゲン等を挙げることができる。架橋したコラーゲンとしては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアナートまたはポリエポキシ化合物等で処理したコラーゲン等を挙げることができる(フレグランス・ジャーナル、12巻、1989年、104-109頁、特公平 7-59522号公報)。
【0031】特に好ましい生体内非分解性の生体親和性材料としてはポリジメチルシロキサンが挙げられ、このポリジメチルシロキサンに上記他の生体親和性材料を混合することもまた望ましい。ポリジメチルシロキサンとしては特に制限はないが、成形性が容易などの点から例えばサイラスティック(登録商標)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750、ダウコーニング(登録商標)MDX-4-4210 メディカルグレード エラストマー等のシリコーンが特に好ましい。
【0032】また、抗原物質または免疫調節物質を安定化しそして/または放出を制御するためあるいは、免疫増強製剤を免疫担当細胞に貪食されやすくして免疫効果を高めるため、必要に応じて製剤的添加剤を添加することができる。製剤的添加剤としては、例えばアルブミン、グリシン、グリシン以外のアミノ酸、ポリアミノ酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、塩化ナトリウム、マンナン、グルコマンナン、タンニン酸、クエン酸ナトリウム、マンニトール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。コラーゲンに他の生体親和性材料または添加剤を混合する場合には、製剤中のコラーゲンの含量は10w/w%以上がよく、好ましくは30w/w%以上の範囲が挙げられ、特に好ましくは70w/w%以上の範囲が挙げられる。またシリコーンに他の生体親和性材料または添加剤を混合する場合には、製剤中のシリコーンの含量は10w/w%以上がよく、好ましくは50w/w%以上の範囲が挙げられ、特に好ましくは70w/w%以上の範囲が挙げられる。
【0033】本発明にかかる免疫増強製剤の形状は、特に制限はなく、溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状等が挙げられる。好ましい形状は、より効率良く免疫応答を誘導できるように選択される。好ましい形状として棒状が挙げられる。より好ましいものとして、公開特許公報平成7年第187994号に記載された製剤の形状、例えば(a)均一に分散した抗原、または抗原を誘導する物質を含有する非崩壊性の生体親和性材料の内層、および(b)該内層の周囲を包む、水を通さない、内層の膨潤を制御し得る生体親和性材料の外層からなり、内層の両端または片端が外部環境に直接接触するように開放している棒状の製剤が挙げられる。上記の内層に用いる生体親和性材料と外層に用いる生体親和性材料とは、同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書中、「非崩壊性]とは、水に接触しても直ちに溶解、分解などによって消失することがなく、初期の形状を所望の時間保ち得ることを意味する。生分解性のものとしてはポリ乳酸グリコール酸共重合体などのポリエステル、ポリアミノ酸、また非生分解性のものとしてはシリコーン、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。望ましくは、棒状の生体親和性の担体は、ポリジメチルシロキサン由来の材料で構成される。例えば、棒状の形状では抗原物質(及び免疫調節物質)が長期間にわたって持続的に放出され、微粒子状の形状ではマクロファージなどの免疫担当細胞に貪食される。微粒子の場合には微粒子の直径は望ましくは0.1μm〜100μm、さらには0.5μm〜50μmであることが望ましいがこれに限定されるものではない。本発明にかかる免疫増強製剤の投与方法は、特に制限はなく、注射的投与、経口投与、鼻腔と/あるいは肺内部への投与、圧縮空気を用いた射入、切開部位への留置などが挙げられる。好ましい投与方法は、より効率良く免疫応答を誘導することを目的に、免疫増強製剤の形状により選択され、例えば棒状の場合、注射的投与あるいは切開部位への留置が望ましく、微粒子の場合には切開部位に直接留置しても良いが、特公平3-72046に記載されているように注射用溶媒に懸濁して懸濁液状で注射的投与しても良く、さらにHelios Gene Gun System (BIO-RAD社)あるいはProc.Natl.Acad.Sci.USA、93、6291-6296(1996)に記載されている粉末射出装置などを用いて、圧縮空気を用いた射入により投与しても良いがこれに限定されるものではない。ここで注射用溶媒としては、微粒子を容易に均一に分散でき、投与するまでの間微粒子を崩壊させず、かつ抗原物質及び免疫調節物質を微粒子内に安定に保持すること、更に溶媒自身に毒性がなく、かつ微粒子を当該溶媒に分散することによって毒性が誘起されないことを条件に、担体、抗原物質及び免疫調節物質の性質に依存して選択される限りはいかなるものも使用できる。例えば以下のような溶媒が挙げられるが、これに限定されるものではない:蒸留水、生理的食塩水、リン酸緩衝液、大豆油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、オリーブ油、トウモロコシ油、ひまし油、シリコーンオイル、PEG(ポリエチレングリコール)、PG(プロピレングリコール)、スクワラン、スクワレンなどあるいはリポソームの調製に用いられている脂肪酸類、例えばDOTMA、DOPE、DOGS。
【0034】生体内分解性の溶液状、懸濁液状およびゲル状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、(1)必要に応じて添加剤を添加した溶液状またはゲル状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合する方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを添加し、混合する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを添加し、練合する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】生体内分解性の固体状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、藤岡らの方法(特公平7-59522号)があるがこれらに限定されるものではない。この他、(1)必要に応じて添加剤を添加した溶液状またはゲル状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、乾燥する方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し、乾燥する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを浸透させ、乾燥する方法、(4)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを浸透させ、そのまま乾燥するか、または必要に応じて水等を加えた後、練合し、乾燥する方法、(5)(1)〜(4)の方法で得られる固形物を粉砕し、圧縮成形する方法、(6)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体と抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末を混合し、圧縮成形する方法などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0036】生体内分解性の微粒子状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、(1)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を噴霧乾燥する方法、(2)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を凍結乾燥し、得られたスポンジを粉砕する方法、(3)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を担体が溶解しない溶液中に滴下、撹拌し得られた微粒子を乾燥する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、乾燥方法、乾燥時の温度および湿度、混合方法、混合時の温度および湿度、圧縮成形の方法、圧縮成形時の温度、湿度、圧縮圧力、担体溶液および抗原物質(および免疫調節物質)溶液の溶液粘度、担体と抗原物質(および免疫調節物質)との混合溶液の粘度、pHについては通常の方法と同様に行うことができる。
【0037】生体内非分解性の固体状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば(1)必要に応じて添加剤を添加した担体モノマーに抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し、硬化剤を加え、任意の型に充填もしくは押し出しにより成形し硬化させる方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し乾燥する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、任意の型に充填して圧縮成形もしくは押し出しにより成形する方法、(4)必要に応じてスポンジ状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し乾燥する方法、(5)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、任意の型に充填して圧縮成形もしくは押し出しにより成形する方法、(6)(1)、(3)及び(5)の方法で抗原物質(及び免疫調節物質)を含有する棒状の内層を作成し、次いでその側面を抗原物質(及び免疫調節物質)を含有しない外層素材で被覆する方法、(7)ノズルを用いて内層と外層を同時に押し出し、成形する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、乾燥方法、乾燥時の温度及び湿度、混合方法、混合時の温度及び湿度、圧縮成形の方法、圧縮成形時の温度、湿度、圧縮圧力、担体溶液及び抗原物質(及び免疫調節物質)溶液の溶液粘度、担体と抗原物質(及び免疫調節物質)の混合溶液の粘度、pHについては通常の方法と同様に行うことができる。
【0038】本発明に関わる免疫増強製剤の使用方法は、例えば(1)疾病の予防あるいは治療を目的としたヒト用あるいはヒト以外の哺乳動物及び鳥用ワクチン製剤、(2)抗体の製造を目的として動物に投与する免疫製剤として使用する方法を挙げることができるが、これに限定されるものではない。本製剤を用いた抗体の製造方法は、抗体を産生させる動物に抗原を投与するのに本製剤を用いる以外は、現在一般に行われている方法と何ら変わるところはない。
【0039】本発明に関わる免疫増強製剤は、使用の目的に応じて投与部位を選択することができる。例えば、一般的なワクチンとして使用する場合は皮下、筋肉内等に投与することができる。また、本発明の原理的説明で述べたように、本発明の免疫増強製剤は投与された部位を担当するリンパ節あるいは投与部位の免疫反応を特異的に活性化することができることから、目的に応じて標的臓器に直接投与することができる。例えば、腫瘍由来の抗原とサイトカインを担持した免疫増強製剤を腫瘍細胞局所あるいは腫瘍を手術的に除去した部位に直接投与し、腫瘍に対する免疫反応を活性化することができる。さらには、腫瘍部位局所への免疫増強製剤の直接投与は、腫瘍部位局所を担当するリンパ節を介する全身リンパ系への腫瘍細胞の転移を抑制する効果が期待される。
【0040】
【実施例】(1)免疫増強製剤の作成実施例1アビジン(ベーリンガーマンハイム社)5.0mg/mlを含む水溶液10mlと、グリシン(ナカライテスク株式会社)100mg/mlを含む水溶液3mlをアテロコラーゲン液(株式会社 高研:2%アテロコラーゲン含有)134gと混合することで、溶液状の免疫増強製剤を作成した。
【0041】実施例2ヒツジIL-1β(A.E.Andrewsら、Vaccine, 12, 14-22, 1994の方法に従って調製) 5.0mg/mlを含む水溶液1.7mlと、アビジン5.0mg/mlを含む水溶液8.6mlと、グリシン 100mg/mlを含む水溶液1.5mlをアテロコラーゲン液142gと混合することで、溶液状の免疫増強製剤を作成した。
【0042】実施例3実施例1で調製した溶液状の免疫増強製剤を凍結乾燥することにより、スポンジ状の免疫増強製剤を得た。
実施例4実施例2で調製した溶液状の免疫増強製剤を凍結乾燥することにより、スポンジ状の免疫増強製剤を得た。
【0043】実施例5実施例3で調製したスポンジ状の免疫増強製剤に7gの蒸留水を加え、一晩放置し練合することでゲル状の免疫増強製剤を得た。
【0044】実施例6実施例4で調製したスポンジ状の免疫増強製剤に7gの蒸留水を加え、一晩放置し練合することでゲル状の免疫増強製剤を得た。
【0045】実施例7実施例5で調製したゲル状の免疫増強製剤を棒状に押し出し、これを乾燥させることによって棒状の免疫増強製剤を得た。
【0046】実施例8実施例6で調製したゲル状の免疫増強製剤を棒状に押し出し、これを乾燥させることによって棒状の免疫増強製剤を得た。
【0047】実施例9アビジン1mg/ml水溶液11.1gとヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、サイラスティック(登録商標、ダウコーニング社)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分0.7gと同B成分0.7gを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0048】実施例10アビジン1mg/ml水溶液11.1gとIL-1β2mg/ml水溶液61μl、ヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分0.7gと同B成分0.7gを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0049】実施例11実施例9で硬化させたものをサイラスティック メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分とB成分の各10%トルエン分散液を1:1の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0050】実施例12実施例10で硬化させたものをサイラスティック メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分とB成分の各10%トルエン分散液を1:1の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0051】実施例13アビジン1mg/ml水溶液11.1gとヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、信越シリコーン(登録商標、信越化学株式会社)KE68(主剤)1.372gと信越シリコーン(登録商標、信越化学株式会社)Cat-RC(硬化剤)28mgを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0052】実施例14アビジン1mg/ml水溶液11.1gとIL-1β2mg/ml水溶液61μl、ヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、信越シリコーンKE68(主剤)1.372gと信越シリコーンCat-RC(硬化剤)28mgを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0053】実施例15実施例13で硬化させたものを信越シリコーン(登録商標)KE68(主剤)と信越シリコーンCat-RC(硬化剤)の各10%トルエン分散液を98:2の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0054】実施例16実施例14で硬化させたものを信越シリコーン(登録商標)KE68(主剤)と信越シリコーンCat-RC(硬化剤)の各10%トルエン分散液を98:2の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0055】実施例17アビジン5mg/ml水溶液0.578gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液13.0g、マンニトール100mg/ml水溶液13.0gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分1.05gと同B成分1.05gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.90gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0056】実施例18アビジン5mg/ml水溶液2.89gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液6.42g、マンニトール100mg/ml水溶液6.42gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分0.93gと同B成分0.93gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.80gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0057】実施例19実施例18と同様にして、アビジン、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0058】実施例20アビジン5mg/ml水溶液0.30gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液4.34g、マンニトール100mg/ml水溶液8.67gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分0.93gと同B成分0.93gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.80gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0059】実施例21実施例20と同様にして、アビジン、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0060】実施例22アビジン5mg/ml水溶液0.45gとIL-1β2mg/ml水溶液3.15g、クエン酸ナトリウム250mg/ml水溶液1.92g、マンニトール150mg/ml水溶液6.19gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分1.05gと同B成分1.05gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.90gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0061】実施例23実施例22と同様にして、アビジン、IL-1β、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0062】(2)放出試験試験例1実施例7で作成した免疫増強製剤10mgを、0.5%ウシ血清アルブミン、0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)5ml中に入れて静置し、放出されるアビジンをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図1に示した。免疫増強製剤は7日以上にわたってアビジンを持続的に放出した。
【0063】試験例2実施例8で作成した免疫増強製剤10mgを、0.5%ウシ血清アルブミン、0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)5ml中に入れて静置し、放出されるアビジン及びIL-1βをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図1に示した。免疫増強製剤は7日以上にわたってアビジン及びIL-1βを持続的に放出した。
【0064】(3)抗体産生実験試験例32グループのBalb/Cマウス(雌、各グループ5匹)にそれぞれ実施例7で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg含有)、実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)を皮下注射した。投与7、14、21、35、83日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの5匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図2に示した。実施例7で作成した免疫増強製剤を投与したマウスの投与35日後における血中抗体価は、比較例1で得られた抗体価の約25倍に達した。実施例8で作成した免疫増強製剤を投与したマウスの投与35日後における抗体価は、比較例1で得られた抗体価の約450倍に達した。
【0065】比較例15匹のBalb/Cマウスに100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35、83日後に血液サンプルを採取した。5匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図2に示した。
【0066】試験例45頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5頭のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3R>3に示した。図3から明らかなように、投与14日後に抗アビジン抗体の産生が見られた。
【0067】比較例25頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5頭のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3に示した。図3が示す通り、投与後35日間にわたって抗アビジン抗体の産生は見られなかった。
【0068】比較例35頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に100μgのアビジンと20μgのIL-1βを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5匹のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3に示した。図3から明らかなように、投与後35日間にわたって抗アビジン抗体の産生は見られなかった。
【0069】(4)組織学的解析実施例7で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg含有)、実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)をそれぞれヒツジの左わき腹の異なる場所3カ所に皮下注射した。投与72時間後、ヒツジを屠殺し皮膚生検サンプルを採取した。生検サンプルを固定後、凍結切片を作成し、浸潤細胞表面のCD45を染色した。組織像を図4及び図5に示した。得られた組織像は、免疫増強製剤によって免疫増強製剤の周囲に白血球の浸潤が誘導されたことを示している。
【0070】試験例5アビジン10μgを含有するように切断した実施例17と、アビジン100μgを含有するように切断した実施例18,19の免疫増強製剤を、それぞれ、0.3% Tween20及び0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)2ml中に入れて静置し、放出されるアビジンをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図6に示した。製剤の形を選択することでアビジンの放出挙動を制御することが出来た。すなわち、マトリックス型の製剤(実施例17、18)は一次的な放出挙動を示し、同心円形の製剤(実施例19)はゼロ次的な放出挙動を示した。これらの製剤は少なくとも30日にわたってアビジンを持続的に放出した。
【0071】試験例6アビジン5μgを含有するように切断した実施例20,21の免疫増強製剤と、アビジン5μgおよびIL-1β5μgを含有するように切断した実施例22,23の免疫増強製剤を、それぞれ、0.3% Tween20及び0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)2ml中に入れて静置し、放出されるアビジンおよびIL-1βをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図7に示した。試験例5と同様、製剤の形を選択することで、アビジンおよびIL-1βの放出挙動を制御することが出来た。これらの免疫増強製剤は少なくとも15日にわたってアビジンおよびIL-1βを持続的に放出した。
【0072】試験例73グループのBalb/Cマウス(雄、各グループ6匹)にそれぞれ実施例17で作製した免疫増強剤(アビジンを10μg含有)、実施例18で作製した免疫増強剤(アビジン100μg含有)及び実施例19で作製した免疫増強剤(アビジン100μg含有)を皮下投与した。投与14,28,42日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図8に示した。実施例17で作製した免疫増強剤を投与したマウスの投与14日後における血中抗体価は、製剤中のアビジン量が比較例4の10分の1であるにもかかわらず、比較例4で得られた抗体価の約180倍に達した。実施例18及び19で作製した免疫増強剤を投与したマウスの投与14日後における血中抗体価は、それぞれ比較例4で得られた抗体価の約250倍及び約190倍に達した。また、実施例17、18及び19で作製した免疫増強剤を投与したマウスの血中抗体価は、投与後6週間に亘って比較例4で得られた抗体価を上回った。
【0073】比較例4Balb/Cマウス(雄、6匹)に100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図8に示した。
【0074】試験例84グループのBalb/Cマウス(雄、各グループ6匹)にそれぞれ実施例20で作製した免疫増強剤(アビジン5μg含有)、実施例21で作製した免疫増強剤(アビジン5μg含有)、実施例22で作製した免疫増強剤(アビジン5μg,IL-1β5μg含有)、実施例23で作製した免疫増強剤(アビジン5μg,IL-1β5μg含有)を皮下投与した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。実施例20、21、22、23で作製した免疫増強剤を投与したマウスでは、投与14日後から血中に抗アビジン抗体が検出されたにも関わらず、免疫増強製剤と等量のアビジンを投与した比較例5では、試験期間中抗アビジン抗体価は検出感度以下であった。実施例20、22、23の免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、投与後28日間に亘って比較例6で得られた抗体価を上回り、実施例22及び23の免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、試験期間中を通して比較例5で得られた抗体価を大きく上回った。
【0075】比較例5Balb/Cマウス(雄、6匹)に5μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。
【0076】比較例6Balb/Cマウス(雄、6匹)に5μgのアビジンを溶解した0.26重量%のアルムを含むPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。
【0077】試験例9シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤を実施例20及び22と同様の手順で調製した。これらを以下マトリックス型免疫増強製剤と表す。マトリックス型免疫増強製剤の組成を表1に示した。また、別途シリコーンを担体として用いた被覆された免疫増強製剤を実施例21及び23と同様の手順で調製した。これらを以下同心円型免疫増強製剤と表す。各免疫増強製剤の組成を表1に示した。
【0078】
【表1】

【0079】ヒツジにシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤及び対照製剤(グループ10、11、12)を皮下投与し、28日後に100μgのアビジンを含有するPBS溶液を投与した。
シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤の免疫増強効果ヒツジは7頭づつ12のグループに分配した。表1に従って各製剤をヒツジに皮下投与した。初回免疫の28日後に100μgのアビジンを投与し、二次免疫を施した。結果を表2に示した。
【0080】
【表2】

【0081】各グループにおいて、7頭のヒツジから得られた血清を等量混合した血清を段階希釈し、血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。IL-1βを含有しない場合、マトリックス型免疫増強製剤では全ての投与グループにおいて、溶液投与グループに比べて高い免疫効果が得られたが、その免疫効果はアルムを含有した溶液投与グループの免疫効果に比べて低かった。マトリックス型免疫増強製剤及び溶液製剤において、アジュバントとしてIL-1βを添加することによって抗体応答は増強された。IL-1βを含有するマトリックス型免疫増強製剤のいくつかではアルムを含有した溶液投与グループの免疫効果に比べて高い免疫効果がみられた。また、マトリックス型免疫増強製剤においては、抗原投与量が低いほど高い抗体応答が得られる傾向が見られた。同心円型免疫増強製剤では、抗体価及び免疫応答の維持期間でマトリックス型免疫増強製剤よりも優れた結果が得られた。
シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤の生体親和性ヒツジは7頭づつ8つのグループに分配した。表3に従って、各免疫増強製剤をヒツジに皮下投与した。
【0082】
【表3】

【0083】各グループにつき、2頭のヒツジで白血球数と体温を測定した。組織学的解析のため、製剤投与部位の組織を採取した。
投与2日後(ヒツジ2頭)
投与4週間後(ヒツジ2頭)
投与8週間後(ヒツジ2頭)
投与2日後、すべての免疫増強製剤の投与部位で弱い浮腫が観察された。この反応は、 IL-1βを含有した免疫増強製剤でより顕著であった。投与4週間及び8週間後、免疫増強製剤周囲の組織は正常であった。免疫増強製剤は肉眼的な所見では、カプセル化されず、組織に癒着せず、容易に動かすことが可能であった。有害な組織反応は見られなかった。
【0084】全身反応体温と白血球数測定を実施した。得られた結果を、シリコーンのみの製剤については図10aとbに、 IL-1βのみを含有した免疫増強製剤については図11aとbに、アビジンと IL-1βを含有した免疫増強製剤については図12aとbに示した。IL-1βを含有しないすべての免疫増強製剤では、体温あるいは白血球数について有害な影響は誘起されなかった。IL-1βのみを含有した免疫増強製剤では、IL-1βを溶液で投与した場合に比べて軽度の一過性の体温上昇がヒツジで見られた。このヒツジでの体温上昇は1℃で、24時間で平常レベルに戻った。一方、白血球数は平常レベルの4倍まで上昇したが、24時間後には再び平常レベルに戻った。アビジンを免疫増強製剤に含有した場合、 免疫増強製剤から放出されたIL-1βに由来する白血球数及び体温の変化の過酷性と持続性の双方が減弱された。これらの結果は、シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤は体温及び白血球数に長期間の影響を与えず、一過性のこれらの値の変動は軽微であり、シリコーン自身に由来する反応ではなく、 IL-1βを含有したことによることを示している。
【0085】投与部位の免疫組織学的解析免疫組織学的解析の結果は、シリコーン免疫増強製剤のタイプによって変わらず、 IL-1βの含有の有無のみが異なった結果を与えた。
1. IL-1βを含有した免疫増強製剤2日後: IL-1βを含有した免疫増強製剤を投与したすべての動物では、投与部位からその周囲の組織にかけて広範囲に細胞(主として好中球)の集積が見られた。T及びB細胞マーカーに対する染色で染色された細胞は、主として表皮部分に存在し、僅かに表皮の低層部分に分散していた。
4週後:観察された免疫担当細胞は、主として好中球であった。2日後に比べて主要組織適合性複合体(MHC) Class I及びII陽性細胞の増加が確認された。免疫増強製剤を取り巻く層に僅かにCD4、CD8、γδ、CD1陽性細胞が存在し、組織間に分散していた。CD45R陽性細胞もまた、表皮にかけて分散していた。
8週後:免疫担当細胞は主として免疫増強製剤を取り巻く層に存在し、組織は4週後に比べてより通常に近い様相を呈した。LCA陽性細胞が免疫増強製剤を取り巻き、如何なるリンパ球マーカーにも陰性である免疫増強製剤を取り巻く細胞層が存在した。これらの細胞は線維芽細胞であると思われた。パラフィン切片をマッソントリクローム染色したところ、免疫増強製剤を取り巻く薄い層が濃く染色され、これらがコラーゲンであることが分かった。この結果は、免疫増強製剤のカプセル化が始まっていることを示している。免疫増強製剤周囲のLCA陽性の細胞層中にはMHC Class I及びII陽性細胞もまた見られたが、これらの細胞は4週後のように組織間に分散していなかった。 また、CD4、僅かなCD8、γδ、CD1とCD45R陽性細胞の分散が見られた。
2.IL-1βを含有しない免疫増強製剤2日後: IL-1βを含有しない免疫増強製剤を投与した動物から採取した組織標本は、正常な皮膚の様相を呈していた。細胞の集積、浮腫は見られなかった。表皮中の細胞に僅かにリンパ球表面マーカーで染色される細胞が存在した。
4週後:投与部位周囲に線維芽細胞が見られた。更に同心円型の免疫増強製剤では、製剤の開口部でLCA陽性細胞が見られた。これらの細胞は、主としてMHC Class I陽性の細胞であり、Class II及びCD4陽性の細胞は僅かであった。
8週後:免疫増強製剤周囲に線維芽細胞が見られた。また、リンパ球表面マーカーで染色される細胞は殆どなかった。これらの結果は、シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤がヒツジの皮下投与においてよく許容され、投与8週間後の時点で当該免疫製剤の使用を制限するような有害な反応は見られなかったことを示している。
【0086】試験例10コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤を実施例7と8と同様な方法で調製し、試験例9と同様の実験を行った。免疫増強製剤の組成を表4に示し、得られた結果を表5に示した。
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤に IL-1β を含有させることによって、 IL-1β を含有しない時に比べてアビジンに対する抗体応答を増強できた。実験で使用した最も高濃度の二段階のIL-1β濃度で最も高い免疫応答が得られたが、IL-1β の最適な投与量を統計学的に確立することはできなかった。コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤の免疫増強効果について、表6に従って溶液投与と比較した。
【0090】
【表6】

【0091】表中に特に示した場合以外は、すべての製剤を皮下投与し、100μgのアビジンを含有するPBS溶液により二次免疫を施した。二次免疫の28日後、羊毛が生えていない内腿部分に1μgのアビジンを含有するPBS溶液を皮内投与することによって、遅延型過敏症反応の誘導を測定した。投与24時間、48時間後のアビジンを投与した部位での浮腫及び紅斑の発症を調べた。結果を各々、表7と8に示した。
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤は、強い遅延型過敏症反応を誘起しなかった。一方、溶液製剤では、弱い遅延型過敏症反応が観察された。また、すべてのグループで、即時型過敏症反応は観察されなかった。
【0095】試験例11表9に示した免疫増強製剤を用いて、試験例9及び試験例10と同様にして単回投与による免疫効果を測定した。得られた結果を表10と表11および12に示した。
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】単回投与時、コラーゲンあるいはシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤は、強い遅延型過敏症反応を誘起しなかった。一方、溶液製剤では、弱い遅延型過敏症反応が観察された。また、すべてのグループで、即時型過敏症反応は観察されなかった。総体的に、同心円型免疫増強製剤が最も高い抗体価を誘導し、免疫応答を最も維持する点において、単回投与による免疫に最も有効な製剤であった。同心円型免疫増強製剤の免疫効果は、 IL-1β の含有の有無に依存した。また、同心円型免疫増強製剤は、遅延型過敏症反応を誘起しなかった。IL-1β を含有した免疫増強製剤を投与した動物では、効果的な免疫記憶反応が誘導された。このことは一次免疫で誘導された抗体の抗体価が低下した一次免疫の69日後に実施された二次免疫に対する良好な免疫反応で明らかである。また、これらの実験で得られた血清サンプルについて、抗体のタイプ分類を実施した。結果、すべての投与群でIgM抗体が投与14日後の時点のみで低いレベルで検出されたのに対して、実験期間中を通して高いレベルのIgG抗体が血清中に存在していた。このことはただ一度の抗原投与で、抗体のタイプ変換(isotypeswitching)が有効に起こったことを示している。
【0101】試験例12免疫増強製剤の免疫増強効果は、モデル抗原であるアビジンだけでなく、表13に示した実施に感染予防効果がある一連の抗原でも確認された。
【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】結果を表14に示した。破傷風及びノビー(novyi)のトキソイドを用いた両方の実験において、同心円型免疫増強製剤はアルムを含有した製剤及びアルムとIL-1βを含有した製剤の双方に比べて明らかに優れた免疫増強効果を示した。コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤は、アルムを含有した製剤と同等の免疫増強効果を示した。一方、ノビーのトキソイドを用いた実験においては、同心円型免疫増強製剤は一次免疫のみで、アルムを含有した製剤に比べて2倍以上の抗体価を誘導した。
【0105】試験例13シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤に於ける免疫増強効果の、抗原(アビジン)及びサイトカイン(IL-1β)の投与量依存性を調べた。実験に使用した製剤の組成及びシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤のタイプを表15に示した。抗体価を14日毎に測定した。得られた結果を表16に示した。
【0106】
【表15】

【0107】
【表16】

【0108】これらの結果は、同心円型免疫増強製剤によって抗体が高い抗体価でかつ持続的に誘導されたことを示している。 最も持続的な免疫反応は、IL-1βと抗原の投与量が最も高い免疫増強製剤で得られた。70日後の時点では、 IL-1βを含有した免疫増強製剤は、溶液状態でのアルムを含有した製剤に比べて明らかに高い抗体価を維持した。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤は、ワクチンの剤形として有用であった。抗原の免疫原性及びサイトカインの生物活性は、免疫増強製剤への製剤化によって損なわれなかった。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤は、固有のアジュバント活性を示した。適当な濃度で IL-1β を免疫増強製剤に含有させた場合、免疫増強製剤で得られた抗体応答は、アルムアジュバントを用いて誘導されるものよりも高かった。IL-1β をアジュバントとして含有した同心円型免疫増強製剤は、本実験で使用した他のいかなる免疫方法に比べても顕著に高い免疫応答を誘導した。更に、誘導された免疫応答を他の免疫方法に比べてより長期間維持した。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤の投与によって、全身及び投与局所での副作用症状は見られなかった。この結果は、これらの製剤は安全なワクチン剤形として使用できることを示している。ここに示した本発明の意図から離れることなしに、種々の応用および/または変更ができるが、それらはすべて本発明の技術的範囲内であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験例1及び試験例2における免疫増強製剤からのアビジンとIL-1βの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図2】 マウスにおける抗アビジン抗体価の推移を示すグラフである。
【図3】 ヒツジにおける抗アビジン抗体価の推移を示すグラフである。
【図4】 実施例7における免疫増強製剤をヒツジに投与した部位の組織像を示す顕微鏡写真である。
【図5】 実施例8における免疫増強製剤をヒツジに投与した部位の組織像を示す顕微鏡写真である。
【図6】 試験例5における免疫増強製剤からのアビジンの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図7】 試験例6における免疫増強製剤からのアビジンとIL-1βの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図8】 試験例7におけるマウスにおける抗アビジン抗体の推移を示すグラフである。
【図9】 試験例8におけるマウスにおける抗アビジン抗体の推移を示すグラフである。
【図10】 試験例9におけるヒツジにIL−1β、アビジンを含有しないシリコーンのみの製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【図11】 試験例9におけるヒツジにIL−1β 50μgを含有するマトリックス型免疫増強製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【図12】 試験例9におけるヒツジにIL−1β 50μgとアビジン500μgを含有するマトリックス型免疫増強製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗原に由来する免疫反応を効果的に増強する免疫増強製剤に関する。本発明における免疫増強製剤は、主としてヒトの医薬あるいは獣医薬分野におけるヒト及びヒト以外の哺乳動物、及び鳥類の疾患の予防あるいは治療を目的としたワクチン製剤として用いられる。さらに本発明は、免疫増強製剤を動物に投与して免疫し、産生される抗体を取得することにより抗体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、一般に用いられているワクチンを大別すると、弱毒生(生菌)ワクチンと不活化(死菌)ワクチンに分けられる。弱毒生ワクチンには、一般に良好な免疫反応が得られる長所がある反面、毒性復帰や副作用など安全性に不安がある短所がある。また、不活化ワクチンは弱毒生ワクチンに比べて安全である反面、単回の投与では十分な免疫効果が得られない短所がある。実際、不活化ワクチンを用いた予防接種では、十分な効果を得るために2〜3週間の間隔を開けて2〜3回投与することが行われている。
【0003】一方、最近では分子生物学的手法の進歩によって、疾患の予防あるいは治療に有効で、かつ疾患に特異的な抗原が同定され、同定された抗原を模倣し、化学的技術あるいは組み換えDNA技術によって合成した抗原(コンポーネントワクチン)の製造も可能となっている。このように合成された抗原は、純度、安定性、特異性、安全性の点で従来のワクチン抗原に比べて優れているが、一般に抗原性が低いことが実用上の最大の課題となっている。従って、抗原性の低い抗原に対して効果的に免疫反応を増強する方法が、ヒト医学及び獣医学上強く望まれている。
【0004】加えて、不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンでは、疾患の予防あるいは治療に有効な免疫反応を得るには、2〜3週間さらに好ましくは4週間以上の間隔を開けて2〜3回投与する必要がある。これに対しては、1回の投与で十分に効果が得られるワクチン(シングルショットワクチン)がヒト医学及び獣医学上強く望まれている。獣医学上の主な利点として1)時間の削減、2)コストの軽減、3)コンプライアンスの向上が挙げられる。ヒト医学上も、上記3つの利点が重要であるが、特に投与期間を遵守した複数回の投与が困難である発展途上国における伝染病の撲滅運動においてコンプライアンスの向上は重要である。
【0005】不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンにみられる弱い抗原性の問題は、実験レベルではアジュバントを用いることによって克服できるが、実用的には副作用等の様々な問題を抱えている。人工的な物質を用いるアジュバントには2つの方法がある。一つは抗原をオイルまたはリピッドの粒子の表面に分散させる方法であり、もう一つは沈殿物に吸着させる方法である。鉱物油はいくつかの獣医用ワクチンや軍用インフルエンザワクチンに用いられたが、重篤な出血性病変や遷延性肉芽種が発生し、ヒト用ワクチンに常用することは当局から認可されなくなっている。フロイントの完全アジュバント及び不完全アジュバントは、過去40年間もっとも広く動物実験に使われてきた。これらは十分に免疫反応を誘導するが、注入部位における肉芽腫形成、癒着及び発熱など他の毒性を助長するため、ヒトまたは獣医学上の使用はさけられている。アルム(水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)は、現在ヒトへの投与が唯一許可されているアジュバントであり、広く使用されている。しかし、接種部位に肉芽腫を形成する他、有効性にばらつきがある欠点を有している。例えば水酸化アルミニウムは、細菌のトキソイドに使えばいかなるアイソタイプの抗体であれ十分なアジュバント効果を発揮するが、B型肝炎ウイルスに対するワクチンあるいはインフルエンザウイルスなどでは良い結果は得られていない。
【0006】人工的な物質を用いる上記のアジュバントに対して、生体内に存在する免疫賦活効果を有するサイトカインをアジュバントとして利用する方法がある。実際、免疫賦活効果を有するサイトカイン(例えばIL-1、IL-2、IFN-γ、IFN-α、GM-CSF、IL-12等)を使用することによって、抗原に対する免疫反応が増強されることが報告あるいは開示されており、これらは例えばRong Linらによって総説にまとめられている(Clinical Infection Diseases, 21, 1439-1449, 1995年)。しかしながら、サイトカインを溶液状態でアジュバントとして利用する場合、先の人工的なアジュバントの場合に比べて副作用が少ない反面、十分な抗体産生効果を得るには複数回投与する必要がある。これは溶液状態で接種された抗原とサイトカインが接種後直ちに体内に拡散し、抗原に対する特異的な免疫機構を活性化しないためと考えられる。また、サイトカインで全身的に免疫賦活を行うには、大量なサイトカインの投与が必要であり、この場合には重篤な副作用が誘導される可能性がある。従って副作用を生じずに効果的なサイトカインのアジュバントとして使用する方法が望まれている。
【0007】不活化ワクチン及びコンポーネントワクチンにみられる弱い抗原性の問題を克服するもう一つのアプローチとしては、担体からの抗原の遅延放出が挙げられる。抗原を遅延放出させる考え方は、アルムで得られるアジュバント効果がアルムに対する抗原の非特異的な吸着とアルムからの持続的な脱離に由来するとの考えに由来する。アルムと同様の効果を有する物質を求めてこれまで種々の担体を用いて試みられてきた(例えば、Hongkee Sahら、J. Pharm. Pharmacol., 48, 32-36, 1996))が、実用化に至った例は見られない。また、抗原を投与してから充分な免疫効果が得られるまでの期間もまた、疾患の予防あるいは治療の観点から極めて重要である。しかしながら、免疫が活性化されるまでの期間を短縮する試みは、これまで行われてこなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上の点に鑑み、本発明は以下のことを目的としてなされたものである。
(1)生体親和性材料からなる担体から、抗原、または抗原と免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質とを遅延放出する免疫増強製剤を提供する。
(2)生体親和性材料からなる担体から、抗原を誘導する物質、または抗原を誘導する物質と免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質とを遅延放出する免疫増強製剤を提供する。
(3)(1)と(2)によって提供された製剤によって、副作用を生じないで抗原に由来する免疫反応を増強する方法を提供する。
(4)(1)と(2)によって提供された製剤によって、抗原に由来する免疫反応が活性化されるまでの期間を短縮する方法を提供する。
(5)(1)と(2)によって提供された製剤によって、抗原に由来する免疫の維持期間を長くする方法を提供する。
(6)(1)と(2)によって提供された製剤によって、当該製剤周囲を免疫反応の場とした免疫増強方法を提供する。
(7)(1)と(2)によって提供された製剤を用いた、ヒト用またはヒト以外の哺乳動物もしくは鳥用ワクチンを提供する。
(8)(1)と(2)によって提供された製剤を用いた、ヒト用またはヒト以外の哺乳動物もしくは鳥用シングルショットワクチンを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、抗原を徐放させ得る製剤を種々検討した結果、抗原を生体親和性材料からなる担体に担持させて生体に投与すると、抗原に由来する免疫反応が増強されることを見いだした。さらに本発明者らは、免疫賦活、免疫刺激又は免疫調節のいずれかの作用を有する物質(以下、併せて「免疫調節物質」という)を抗原と同時に生体親和性材料からなる担体に担持させて生体に投与することにより、免疫反応が早期に、且つ一層増強されることを見いだして本発明を完成した。
【0010】以下に本発明の詳細を説明する。
i) 本発明の原理的説明液性免疫を例に説明する。典型的な免疫応答において2度目の抗原刺激後の抗体産生は、最初の抗原刺激後の抗体産生と比較すると、より早く起こり、より高い抗体価がより長く維持される。抗体産生までに要する時間の相違は、大まかに言って最初の抗原刺激では抗体産生までに、(1)抗原提示細胞による抗原のT細胞への提示とT細胞の活性化、(2)活性化されたT細胞によるB細胞の活性化、(3)樹状細胞による抗原のリンパ節への運搬、(4)リンパ節でのB細胞の増殖と抗体産生細胞への分化の一連の段階が必要であるのに対して、2度目の抗原刺激では抗体産生細胞がすでに十分に準備されていることに由来する。また、抗体価の高さ及び維持期間の長さの相違は、通常の溶液状態による免疫刺激では、最初の免疫刺激において投与された抗原は投与後直ちに全身に拡散し、分解、代謝、排泄され、抗体産生細胞が準備されてきた時には殆ど体内から消失しており、抗体産生細胞を再び刺激するに至らないことに由来する。すなわち、疾病の予防あるいは治療上重要である、抗体価をより高く、より長く維持するためには、最初の抗原刺激によって産生された抗体産生細胞が、再び抗原によって刺激を受ける必要がある。
【0011】一方、より早期の抗体産生もまた疾病の予防あるいは治療上重要であるが、最初の抗原刺激による抗体産生細胞の産生を効率的に行うことは、抗体のより早期の産生に重要である。抗体産生細胞の産生を効率的に行うには、(1)抗原と抗原提示細胞が接触する機会を高める(抗原の投与部位に抗原提示細胞を集積させる)、及び/または(2)リンパ節でのB細胞の活性化、抗体産生細胞への分化を増強する必要がある。
【0012】これらの点に着目し、本発明では抗原を生体親和性材料からなる担体に安定に保持させ、持続的に放出させて体内の抗原量を維持し、産生された抗体産生細胞を抗原により再度刺激することによってより高い抗体価をより長く維持することを実現した。特に、免疫増強製剤を投与した局所では抗原の濃度が高く維持されることが推定されるが、この局所的な抗原の高濃度状態は平衡反応である抗原と抗体産生細胞との反応を促進させると共に、免疫担当細胞を投与局所に集積させる。従って局所的な抗原の濃度を高く維持することが、本発明の最も重要な原理として挙げられる。
【0013】さらに本発明では生体親和性材料からなる担体に、抗原と免疫調節物質(例えば、サイトカイン)とを同時に担持させ、持続的に放出させて、(1)抗原投与部位への免疫担当細胞の集積とそれに伴うT細胞への抗原提示の活性化と(2)免疫増強製剤の投与部位を担当するリンパ節(樹状細胞が抗原を運搬し、抗原産生細胞が産生されるリンパ節)への選択的かつ持続的なサイトカインの流入により、リンパ節でのB細胞の活性化と抗体産生細胞への分化を増強し、より早期の、効果的な抗体産生を実現した。従って本発明における免疫増強製剤の特徴は、溶液状態で抗原、及び抗原とサイトカインを投与した場合に誘導される全身的な免疫賦活機構と異なり、抗原、及び抗原とサイトカインを徐放することによって製剤周囲に免疫賦活の場を形成することにある。
【0014】以上の点において本発明の原理上の特徴は以下のようにまとめることができる。
(1)抗原もしくは抗原を誘導する物質(以下、併せて「抗原物質」という)、または抗原物質と免疫調節物質とを持続的に放出する。
(2)投与局所の抗原物質、または抗原物質と免疫調節物質の濃度を高く保つ。
これらの原理上の特徴は、免疫増強製剤を構成する担体が担持する抗原物質、または抗原物質と免疫調節物質を生体内で安定に保持かつ徐放することによって満たされる。免疫増強製剤が生体内に投与されることから、担体は生体親和性に優れた生体親和性材料であることも当然の条件となる。従って上記の製剤的な特徴を満たす生体親和性材料を担体として用いる場合においては、いかなる生体親和性材料を用いた場合であっても、当該の免疫増強製剤によって免疫増強効果が得られることは、本発明の原理と全く矛盾しない。また、本発明では、免疫担当細胞を継続的に抗原で刺激をすることにより、またはT細胞およびB細胞に対して能動的に活性化を促すことによって、免疫を賦活化させることから、本発明は液性免疫に限らず、粘膜免疫および細胞性免疫をも活性化することができる。
【0015】ii)本発明の効果抗原にアビジンを、免疫調節物質であるサイトカインにIL−1βを用いた抗体産生増強効果を例に、以下に本発明による効果を説明する。
ア)抗原、及び抗原とサイトカインの持続的な放出図1に示したように、本発明の免疫増強製剤は抗原(アビジン)とサイトカイン( IL−1β)を7日以上にわたって持続的に放出した。
イ)抗体産生の増強本発明の免疫増強製剤による抗体産生の増強効果は、マウス及びヒツジに対する免疫刺激実験で明らかに示された。マウスに剤形を変えてアビジンを投与し、投与7、14、21、35、83日後の血中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した(図2)。マウスにアビジン100μgを従来の方法で投与、すなわちアビジンをリン酸緩衝液に溶解した溶液状態で投与した場合と、同量のアビジンを担持した免疫増強製剤(実施例7で調製)を投与した場合、同量のアビジンとIL−1βを同時に担持した免疫増強製剤(実施例8で調製)を投与した場合とを比較した。投与35日後では、アビジンを担持した免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、アビジン溶液を投与したマウスで得られた抗体価の約25倍に達した。この結果は、抗原を本発明の免疫増強製剤化することによって抗原に対する抗体産生が増強されたことを示している。さらにアビジンとIL-1βを担持した免疫増強製剤を投与したマウスの抗体価は、アビジン溶液を投与した場合に比べて実に約450倍に達した。この結果は、抗原を免疫賦活効果を有するサイトカインと同時に本発明の免疫増強製剤化することによって、抗原に対する抗体産生がさらに増強されることを示している。
【0016】抗原と免疫賦活サイトカインを同時に担持した免疫増強製剤による抗体産生効果はヒツジに対する免疫刺激実験でより顕著に見られた(図3)。ヒツジに剤形を変えてアビジンを投与し、投与7、14、21、35日後の血中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。アビジンをヒツジに従来の投与方法で溶液状態で100μg投与しても、抗アビジン抗体は産生されなかった。このマウスとヒツジでの抗体産生の差はマウスとヒツジの体重差に依存すると考えられる。このことは、アビジンは100μgの投与でヒツジで抗体が産生されるのに十分な抗原性を有していないことを示している。これに対してアビジンとIL−1βを同時に担持した免疫増強製剤(実施例8で調製)を投与した場合には、投与14日後に高い抗体産生が見られた。この結果は本発明の免疫増強製剤が、抗体を産生するには不十分な抗原性しか有しない抗原に対し、抗体産生を増強する効果を有することを顕著に示している。一方、アビジンとIL−1βを従来の方法で同時に溶液状態で投与しても、抗体産生は見られなかった。この結果は免疫増強製剤で得られた抗体産生増強効果が製剤からの抗原、及び抗原とサイトカインの持続的放出に依存することを示している。以上のことは、本発明の免疫増強製剤は、十分な抗体価を得るには複数回の投与が必要である従来の投与方法に比べて、一回の投与で十分な抗体価が得られることを示している。
【0017】ウ)抗体産生までの期間の短縮本発明の免疫増強製剤の重要な効果である抗体産生までの期間の短縮は、従来の方法で抗原溶液を投与しても抗体の産生が見られなかったヒツジを用いた免疫刺激実験でよりも、従来の方法で抗原溶液を投与した場合にもある程度の抗体産生が見られたマウスにおける免疫刺激実験で端的に確認できた。図2のグラフで明らかなように、従来の方法でアビジンを溶液状態で投与した場合、投与後14日目以降に抗アビジン抗体量が増加したのに比べて、免疫増強製剤(アビジンのみあるいはアビジンとIL−1βを担持)を投与した場合には、投与後7日目以降抗体量が急激に増加した。従って抗体産生までの期間が、約1週間短縮された。また、アビジンを溶液状態で投与したマウスで得られた抗体価が、アビジンのみを担持した免疫増強製剤の投与14日後に得られた抗体価に到達したのは投与83日後であった。また、アビジンとIL−1βを担持した免疫増強製剤の投与14日後に得られた抗体価には、投与83日後でも到達しなかった。このことから、免疫増強製剤は抗体産生期間を69日以上短縮したと言える。
【0018】エ)免疫増強製剤投与部位局所の免疫反応本発明の原理的説明の項で述べたように、本発明の免疫増強製剤で得られる効果には、製剤を投与した部位局所での免疫反応が重要な役割を果たしていると考えられる。このことは、免疫刺激実験で使用したヒツジの製剤投与部位の組織像から容易に推察された(図4、5)。組織像から、免疫増強製剤周囲に免疫担当細胞が浸潤していることがわかる。ここで言う免疫担当細胞とは、好中球、CD4陽性T細胞、γδTCR陽性T細胞、MHCII陽性細胞、マクロファージ等である。
【0019】これらの免疫担当細胞の集積は、アビジン(及びIL−1β)を溶液状態で投与した場合には見られなかった。これは溶液状態で接種されたアビジンとIL−1βが接種後直ちに体内に拡散し、免疫担当細胞を局所に誘導しないためであると考えられる。また、これらの免疫担当細胞の集積は、 IL−1βを担持した免疫増強製剤においてより顕著であった。これらの知見は免疫増強製剤からの持続的な放出により、製剤周囲に抗原、あるいは抗原とサイトカインの高濃度状態を形成し、これにより免疫担当細胞が製剤周囲に集積し抗体産生を増強するとの考えを支持している。一方、免疫担当細胞の集積はある種の炎症反応であるが、得られた免疫反応は浮腫などを伴わず、炎症反応は自己消失した。
【0020】iii)免疫増強製剤本発明においては、基本的には、生体親和性材料からなる担体に抗原、または抗原を誘導する物質を担持させた製剤であって、所望によりさらに免疫調節物質、あるいはその他の添加物を含んでなる製剤を免疫増強製剤と呼ぶ。本発明の免疫増強製剤によって増強される「免疫反応」とは、本製剤に含有された抗原または誘導される抗原に由来する免疫反応を指す。賦活化される免疫反応は、液性免疫、粘膜免疫、細胞性免疫のいずれか、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0021】「抗原」としては、抗原に由来する免疫反応を誘導し得るものであれば特に制限はないが、一般にこの抗原に由来する免疫反応がヒトあるいはヒト以外の哺乳動物、鳥類の疾病を予防および/または治療効果を有するものが選択される。例えば、ワクチンハンドブック(国立予防衛生研究所学友会編、丸善、1994年)及びRemington's Pharmaceutical Sciences 14th Edition(Mack Publishing Co.、1995年)の75章、Immunizing Agents、p1426-p1441あるいはPhysician's DeskReference, 46th Edition(米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)認可、1992年)の208-209頁に記載されているトキソイド、ワクチン及び生ワクチン自体あるいはこれから得られる物質が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0022】具体的には、(1)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などを例えば遺伝子組み換え(毒性あるいは病原性に関与する遺伝子を改変)、継続的な培養(自己改変による弱毒あるいは非病原性株の出現)、ホルマリン処理、β-プロピオラクトン処理、放射線照射、超音波照射、酵素処理、加熱などの方法を用いて弱毒化、無毒化あるいは非病原性化したもの、(2)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などから、例えば化学的あるいは酵素的な分解、物理的な破砕、カラム精製、抽出、ろ過するなどして得られる、例えば膜表面タンパク質、核内タンパク質などのタンパク質、プロテオグリカン、ポリペプチド、ペプチド、膜構成成分、(3)ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、腫瘍細胞などからウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導する抗原の遺伝子を取り出し、同定し、当該遺伝子をプラスミドのような適当なベクターに組み込み、大腸菌、酵母、動物細胞で発現させることによって得られるペプチドやタンパク質で構成されるサブユニットワクチン、当該抗原と同じあるいはそれ以上に高い特異的な免疫原性を有するように配列された合成ペプチドなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。ここで腫瘍細胞に対する特異的な免疫を誘導する抗原とは、MAGE-1、MAGE-3、BAGEなどのいわゆる癌退縮抗原や、Tyrosinase、Mart-1、gp100、gp75などの組織特異抗原や、p15、Mucl、CEA、HPV E6,E7、HPR2/neuなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】より具体的な「抗原」として、以下のような疾患の予防あるいは治療に有効な免疫反応を誘導し得る抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない:コレラ、百日咳、ペスト、腸チフス、髄膜炎、肺炎、らい病、りん病、赤痢、ポリオ、グラム陰性敗血症、大腸菌敗血症、狂犬病、ジフテリア、ボツリヌス、破傷風、小児麻痺、インフルエンザ、日本脳炎、風疹、麻疹、黄熱病、耳舌腺炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、水痘/帯状疱疹、マラリア、結核、カンジタ、虫歯、後天性免疫不全症候群、癌(腫瘍)、オーエスキー病、乳房炎、炭疸病、ブルセラ病、マルタ熱、チーズ様リンパ節炎、腸毒血症、腸炎、伝染性壊死性肝炎、悪性浮腫、気腫症、レプトスピラ症、scabby mouse、ビブリオ病、丹毒、腺疫、ボルデテラ性気管支炎、ジステンパー、全白血球減少症、気管支炎、ヒツジハエうじ症、ウイルス性下痢症、ピメレア(Pimelea)中毒。さらに、以下のようなウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体の感染及び病態の発症の予防、及び発症した疾患の治療に有効な免疫反応を誘導し得る抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない:グループB髄膜炎菌、グループB連鎖状球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サルモネラ菌、クロストリディウム属に属する細菌、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ヒト免疫欠損ウイルスIおよびII、単純ヘルペスI及びII、CMV、EBV、トラコーマクラミジア、パルボウイルス、パラインフルエンザウイルス、カリシウイルス。本発明における「抗原」には、疾病の予防あるいは治療に用いられるだけでなく、動物産業で産業上の理由で用いられる抗原も含まれる。例えばこれらの抗原は、ワクチンズ・イン・アグリカルチャー、イミュノロジカル・アプリケーションズ・トゥー・アニマル・ヘルス・アンド・プロダクション(Vaccines in Agriculture, Immunological Applications to Animal Health and Production(P. R. Woodら編集、CSIRO、1994年))の71-160頁に記載の抗原を挙げることができるが、これに限定されるものではない。動物産業の産業上の理由で用いられる抗原としては、以下に挙げる抗原が含まれるが、これに限定されるものではない。1)家畜の繁殖に利用される抗原;インヒビン関連ペプチド、放出ホルモン(黄体形成ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン等)に対する免疫反応を誘導し得る抗原:2)家畜の成長及び代謝を調節するのに利用される抗原;成長ホルモン関連因子、インシュリン様成長因子-1、成長ホルモン、ステロイドホルモン、性ステロイドホルモン、含脂肪細胞の原形質膜抗原、肥満脂質、コルチゾール、腺副腎皮質刺激ホルモン、腺副腎皮質刺激ホルモン受容体、β−アドレナリン受容体、腺下垂体ホルモン(プロラクチン、ACTH、STH、TSH、LH、FSH等)に対する免疫反応を誘導し得る抗原:3)家畜の飼育環境を調節するのに利用される抗原;植物随伴毒素、低分子量天然毒物に対する免疫反応を誘導し得る抗原。また、本発明における「抗原」とは、抗原に対する特異的な免疫反応を誘導し得るものに限定されるものではなく、抗原に対して非特異的な免疫を誘導し得るものも含まれる。ここで抗原に対して非特異的な免疫を誘導し得る抗原とは、例えばブドウ球菌由来の腸管毒素SE(staphylococcal enterotoxins)やTSST−1(toxic shock syndrome toxin-1)、脱落皮毒素ET(exofoliative dermatitis toxin)、宮城県獣医師会会報、第50巻3号、133-137、1997に記載の溶レン菌菌体の細胞膜に由来するCAP(cell-membrane associated protein)、T−12やNY−5溶レン菌由来のSPM(Streptococcus pyogenes-mitogen)等の細菌由来抗原であるスーパー抗原が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】「抗原を誘導する物質」とは、生体内で上記のような抗原の産生を誘導する物質であって、例えばウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該の抗原を産生するように組み込まれたプラスミドやウイルスを挙げることができる。組み込まれる核酸としては、上記のような抗原となり得る物質をコードする核酸を挙げることができ、例えば以下のようなタンパク質をコードする核酸を挙げることができる。インフルエンザウイルスのHAやNA、あるいはNPの各タンパク質、C型肝炎ウイルスのE2やNS1タンパク質、B型肝炎ウイルスのHBs抗原タンパク質、A型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質であるVP1やVP3、あるいはカプシド様タンパク質、デングウイルスのEgpタンパク質、RSウイルスのFあるいはGタンパク質、狂犬病ウイルスの構造タンパク質であるGやNタンパク質、ヘルペスウイルスのgDタンパク質、日本脳炎ウイルスのE1あるいはpre−Mタンパク質,ロタウイルスの外殻糖タンパク質VP7や外殻タンパク質VP4、ヒト免疫不全ウイルスのpg120やgp160タンパク質、Leishmania majorの主要表面抗原タンパク質、マラリアのスポロゾイドの主要表面抗原(circum sporozoite protein)タンパク質、トキソプラズマの54−kdやCSタンパク質、虫歯の原因となるStreptococcus mutansの菌体表面タンパク質PAc。また、MAGE-1、MAGE-3、またはBAGEなどの癌退縮抗原や、Tyrosinase、Mart-1、gp100、gp75などの組織特異抗原、p15、Muc1、CEA、HPV E6,E7、HER2/neuなどをコードする核酸および「Immunization with DNA」:Journal of Immunological Methods、176巻、1994年、145〜152頁に記載の核酸を挙げることができるが、これに限定されるものではない。このような核酸を組み込むプラスミドやウイルスは、病原性がないものである限り特に制限はないが、例えばウイルスとしては、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、HIVウイルス、ヘルペスウイルスなどの通常のベクターとして用いられるものが挙げられる。
【0025】抗原物質は、例えば化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術によって得ることができる。本発明においては、どのような方法によって得られたものを用いてもよいが、本発明製剤は前記のような効果を有するので、従来の投与方法(例えば溶液状態、懸濁液状態での注射的な投与)では一般に効率よく免疫反応が誘導されにくい組み換えDNA技術によって得られた抗原性が低い抗原に対して、特に適している。
【0026】特異的な免疫を誘導する抗原物質は、修飾・改変などを行うことなく、そのまま免疫増強製剤に含有させてもよいが、さらに抗原性を高めそして/または安定性を高める目的で、例えば、(1)抗原よりも分子量の大きなタンパク質(例えばβ-ガラクトシダーゼやコアタンパク質など)と共有結合であるいは非共有結合で結合させるか、(2)適当な糖鎖を付加するか、(3)リポソームに封じ込めるか、または(4)ウイルスとリポソームの膜融合型リポソームや(5)B30MDP(6-O-(2-tetradecylhexadecanoyl)-N-acetylmuramyl-L-alanyl-D-isoglutamine)を用いて得られる膜粒子(ビロゾーム)に含有させてもよい。
【0027】「免疫調節物質(免疫賦活、免疫刺激または免疫増強の作用を有する物質)」としては、特に制限はないが、例えばサイトカイン、ケモカイン、成長因子、免疫賦活ペプチド、免疫賦活DNA配列、アルム、フロイントの完全アジュバント、不完全アジュバント、イスコム、サポニン、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンの共重合体、CRL−1005(Vaxcel社)、QS−21(Cambridge Biotech社)、ヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、アブリジン、細胞壁骨格成分、コレラトキシン、リポ多糖体内毒素、ウォーターリードリポソームおよびサイトカインを含有したリポソーム等のリポソーム、1,25-ジヒドロキシビタミン-D3、およびカルボキシルビニールポリマーにアルギニンと塩化ナトリウムを加えてゲル化したものなどが挙げられる。サイトカインとしては、IFN−α、IFN−β、IFN-γ、 IL−1α、 IL−1β、IL−2、 IL−3、 IL−4、 IL−5、 IL−6、 IL−8、TNF−α、TNF−β、GM−CSFなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。特に免疫増強製剤の投与部位に免疫担当細胞を集積させ、抗体産生の増強を希望する場合においては、 IL−1β及びIL−2が望ましい。また、具体的な免疫調節物質としては、例えば以下に挙げる物質の一あるいはそれ以上の群から選択されるが、これに限定されるものではない: リン酸アルミニウムゲル(例えばAdju-Phos)、β-グルカン(例えばAlgal Glucan )、γ-イヌリン/アルム複合体(例えばAlgammulin )、水酸化アルミニウムゲル(例えばAlhydrogel)、スクアラン、Tween 80、プルロニックL121からなるエマルジョン(例えばAntigen Formulation )、アブリジン (N,N-ジオクタデシル-N',N'-ビス(2-ハイドロオキシエチル)プロパンジアミン、登録商標、VIDO, Canada)、BAY R1005(N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド ハイドロアセテート)、カルシトリオール(Calcitriol 、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)、リン酸カルシウムゲル、コレラホロトキシン(CT)、コレラトキシンBサブユニット (CTB)、CRL1005 (Vaxcel Corporation, USA)、臭化ジエチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド (DDA)、ジハイドロエピアンドロステロン(DHEA )、ジミリストイルホスファチジルコリン (DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、デオキシコール酸ナトリウム塩(DOC)/アルム複合体、γ-イヌリン、ゲルブアジュバント (N-アセチルグルコサミニル-(β1-4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミン(GMDP)と塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)と亜鉛/L-プロリン塩複合体の混合物、GMDP、1-(2-メチルプロピル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(Imiquimod )、ImmTher (登録商標、Immuno Therapeutica, Inc., USA)、ISCOM(s) (登録商標、ISCOTEC AB, Sweden)、Iscoprep 7.0.3 (登録商標、ISCOTEC AB, Sweden)、ロキソリビン (7-アリル-8-オキソグアノシン)、LT-OA (LT経口アジュバント、大腸菌の不安定な腸毒素プロトキシン)、MF59 (ポリソルベート80とスパン85及びスクアレンからなるエマルジョン)、MONTANIDE ISA 51 (登録商標、SEPPIC, France)、MONTANIDE ISA 720 (登録商標、SEPPIC, France)、MPL (登録商標、Ribi ImmunoChem Research, Inc., USA)、N-アセチル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシ-ホスホリルオキシ))エチルアミド一ナトリウム塩 (MTP-PE)、MTP-PEリポソーム (MTP-PE抗原提示リポソーム)、ムラメチド (NAc-Mur-L-Ala-D-Gln-OCH3)、ムラパルミチン (NAc-Mur-L-Thr-D-isoGln-sn-グリセロールジパルミトイル)、D-ムラパルミチン (NAc-Mur-D-Ala-D-isoGln-sn-ジグリセロールジパルミトイル)、NAGO (ニュウラミナーゼとガラクトースオキシダーゼの混合物)、非極性界面活性小胞 (コレステロールとモノパルミトイル-rac-グリセラル及びリン酸ジセチルの混合物)、プルラン (β-グルカン)、PLGA (乳酸とグリコール酸の共重合体)、PGA (ポリグリコール酸)、PLA (ポリ乳酸)、プルロニックL121、PMMA (ポリメチルメタクリレート)、PODDS (登録商標、アクリル化アミノ酸)、Poly rAとPoly rUの複合体、ポリホスファジン、ポリソルベート80、リン脂質タンパクとカルシウムの複合体(例えばProtein Cochleates )、QS-21 (Stimulon、登録商標、Cambridge Biotech Corporation, USA)、クィルA(Quil A 、Quillajaサポニン)、高タンパク吸着性水酸化アルミニウムゲル(例えばRehydragel HPA )、低粘度水酸化アルミニウムゲル(例えばRehydragel LV )、4-アミノ-α,α-ジメチル-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール (S-28463)、SAF-1 (スレオニルムラミルジペプチドとプルロニックL121とポリソルベート80及びスクアランの混合物)、IL-1βの163-171ペプチド (Sclavo Peptide)、センダイプロテオリポソーム、脂質センダイマトリックス、スパン85 (アラセル85、ソルビタントリオレート)、スペコール(Specol 、鉱物油とシクロパラフィン、スパン85及びTween 85の混合物)、スクアラン、スクアレン、ステアリルチロシン、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Ala-D-isoGlu-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(Theramide )、スレオニルムラミルジペプチド(Termurtide、登録商標、Syntex, USA)、ティーワイ・パーティクルズ(Ty particles)、ウォーターリードリポソーム(Water Reed Liposomes 、リピドAを吸着した水酸化アルミニウムを含有したリポソーム)。
【0028】本発明の免疫増強製剤に含有される抗原物質及び免疫調節物質の量は、製剤に含有される時の生体親和性材料及び添加剤との混合比や製剤の大きさによっていかようにも調節することができる。本発明製剤により投与する抗原物質の量は、従来の投与方法(例えば溶液状態、懸濁液状態での注射的な投与)で用いられる量と同程度であってもよいが、本発明製剤は前記のような優れた免疫増強効果を有するので、従来法による投与量以下の投与量で十分に免疫を誘導することができ、抗原物質の種類や本発明製剤の剤形あるいは抗原物質と同時に投与する免疫調節物質の種類や量により、適宜投与量を調節することができる。
【0029】本発明の免疫増強製剤の担体は、抗原物質を担体内に分散または包含して担持する。また、当該担体は抗原(および免疫調節物質)を持続的に放出する。本発明の免疫増強製剤の担体は、以下の適当な生体親和性材料から形成される。「生体親和性材料」としては、生体親和性に優れ、抗原物質及び免疫調節物質を生体内で安定に保持かつ徐放できるものが好ましい。生体親和性材料は、例えばコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロース、アラビアゴム;グリコール酸、乳酸、アミノ酸の重合体及びこれらの二種類以上の共重合体;ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンからなる群の中から任意に選ぶことができる。これらの生体親和性材料は単独で、または二以上の混合物として用いることができる。生体親和性材料は、免疫増強製剤の調製工程において抗原物質と免疫調節物質を変性及び/または失活させないことを条件に、さらに希望する効果により生体内分解性あるいは生体内非分解性の条件から選択される。
【0030】特に好ましい生体内分解性の生体親和性材料としてはコラーゲンが挙げられ、このコラーゲンに上記他の生体親和性材料を混合することもまた望ましい。コラーゲンとしては本発明の目的にかなう限りはいかなるものも使用できる。例えば、動植物から得られる酸可溶性コラーゲン、塩可溶性コラーゲン、アルカリ可溶性コラーゲンおよびこれらのコラーゲンから得られるアテロコラーゲン、側鎖を修飾したコラーゲン、架橋したコラーゲン、あるいは遺伝子工学的手法により製造されるコラーゲン類、特にはアテロコラーゲンおよびこれらのコラーゲンから得られる側鎖を修飾したコラーゲン、架橋したコラーゲン等を用いることができる。側鎖を修飾したコラーゲンとしては、例えばサクシニル化、メチル化あるいはミリスチル化したコラーゲン等を挙げることができる。架橋したコラーゲンとしては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアナートまたはポリエポキシ化合物等で処理したコラーゲン等を挙げることができる(フレグランス・ジャーナル、12巻、1989年、104-109頁、特公平 7-59522号公報)。
【0031】特に好ましい生体内非分解性の生体親和性材料としてはポリジメチルシロキサンが挙げられ、このポリジメチルシロキサンに上記他の生体親和性材料を混合することもまた望ましい。ポリジメチルシロキサンとしては特に制限はないが、成形性が容易などの点から例えばサイラスティック(登録商標)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750、ダウコーニング(登録商標)MDX-4-4210 メディカルグレード エラストマー等のシリコーンが特に好ましい。
【0032】また、抗原物質または免疫調節物質を安定化しそして/または放出を制御するためあるいは、免疫増強製剤を免疫担当細胞に貪食されやすくして免疫効果を高めるため、必要に応じて製剤的添加剤を添加することができる。製剤的添加剤としては、例えばアルブミン、グリシン、グリシン以外のアミノ酸、ポリアミノ酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、塩化ナトリウム、マンナン、グルコマンナン、タンニン酸、クエン酸ナトリウム、マンニトール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。コラーゲンに他の生体親和性材料または添加剤を混合する場合には、製剤中のコラーゲンの含量は10w/w%以上がよく、好ましくは30w/w%以上の範囲が挙げられ、特に好ましくは70w/w%以上の範囲が挙げられる。またシリコーンに他の生体親和性材料または添加剤を混合する場合には、製剤中のシリコーンの含量は10w/w%以上がよく、好ましくは50w/w%以上の範囲が挙げられ、特に好ましくは70w/w%以上の範囲が挙げられる。
【0033】本発明にかかる免疫増強製剤の形状は、特に制限はなく、溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状等が挙げられる。好ましい形状は、より効率良く免疫応答を誘導できるように選択される。好ましい形状として棒状が挙げられる。より好ましいものとして、公開特許公報平成7年第187994号に記載された製剤の形状、例えば(a)均一に分散した抗原、または抗原を誘導する物質を含有する非崩壊性の生体親和性材料の内層、および(b)該内層の周囲を包む、水を通さない、内層の膨潤を制御し得る生体親和性材料の外層からなり、内層の両端または片端が外部環境に直接接触するように開放している棒状の製剤が挙げられる。上記の内層に用いる生体親和性材料と外層に用いる生体親和性材料とは、同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書中、「非崩壊性]とは、水に接触しても直ちに溶解、分解などによって消失することがなく、初期の形状を所望の時間保ち得ることを意味する。生分解性のものとしてはポリ乳酸グリコール酸共重合体などのポリエステル、ポリアミノ酸、また非生分解性のものとしてはシリコーン、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。望ましくは、棒状の生体親和性の担体は、ポリジメチルシロキサン由来の材料で構成される。例えば、棒状の形状では抗原物質(及び免疫調節物質)が長期間にわたって持続的に放出され、微粒子状の形状ではマクロファージなどの免疫担当細胞に貪食される。微粒子の場合には微粒子の直径は望ましくは0.1μm〜100μm、さらには0.5μm〜50μmであることが望ましいがこれに限定されるものではない。本発明にかかる免疫増強製剤の投与方法は、特に制限はなく、注射的投与、経口投与、鼻腔と/あるいは肺内部への投与、圧縮空気を用いた射入、切開部位への留置などが挙げられる。好ましい投与方法は、より効率良く免疫応答を誘導することを目的に、免疫増強製剤の形状により選択され、例えば棒状の場合、注射的投与あるいは切開部位への留置が望ましく、微粒子の場合には切開部位に直接留置しても良いが、特公平3-72046に記載されているように注射用溶媒に懸濁して懸濁液状で注射的投与しても良く、さらにHelios Gene Gun System (BIO-RAD社)あるいはProc.Natl.Acad.Sci.USA、93、6291-6296(1996)に記載されている粉末射出装置などを用いて、圧縮空気を用いた射入により投与しても良いがこれに限定されるものではない。ここで注射用溶媒としては、微粒子を容易に均一に分散でき、投与するまでの間微粒子を崩壊させず、かつ抗原物質及び免疫調節物質を微粒子内に安定に保持すること、更に溶媒自身に毒性がなく、かつ微粒子を当該溶媒に分散することによって毒性が誘起されないことを条件に、担体、抗原物質及び免疫調節物質の性質に依存して選択される限りはいかなるものも使用できる。例えば以下のような溶媒が挙げられるが、これに限定されるものではない:蒸留水、生理的食塩水、リン酸緩衝液、大豆油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、オリーブ油、トウモロコシ油、ひまし油、シリコーンオイル、PEG(ポリエチレングリコール)、PG(プロピレングリコール)、スクワラン、スクワレンなどあるいはリポソームの調製に用いられている脂肪酸類、例えばDOTMA、DOPE、DOGS。
【0034】生体内分解性の溶液状、懸濁液状およびゲル状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、(1)必要に応じて添加剤を添加した溶液状またはゲル状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合する方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを添加し、混合する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを添加し、練合する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】生体内分解性の固体状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、藤岡らの方法(特公平7-59522号)があるがこれらに限定されるものではない。この他、(1)必要に応じて添加剤を添加した溶液状またはゲル状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、乾燥する方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し、乾燥する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを浸透させ、乾燥する方法、(4)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に、抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを浸透させ、そのまま乾燥するか、または必要に応じて水等を加えた後、練合し、乾燥する方法、(5)(1)〜(4)の方法で得られる固形物を粉砕し、圧縮成形する方法、(6)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体と抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末を混合し、圧縮成形する方法などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0036】生体内分解性の微粒子状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば、(1)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を噴霧乾燥する方法、(2)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を凍結乾燥し、得られたスポンジを粉砕する方法、(3)抗原物質(および免疫調節物質)、担体、さらに必要に応じて添加剤を添加した溶液を担体が溶解しない溶液中に滴下、撹拌し得られた微粒子を乾燥する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、乾燥方法、乾燥時の温度および湿度、混合方法、混合時の温度および湿度、圧縮成形の方法、圧縮成形時の温度、湿度、圧縮圧力、担体溶液および抗原物質(および免疫調節物質)溶液の溶液粘度、担体と抗原物質(および免疫調節物質)との混合溶液の粘度、pHについては通常の方法と同様に行うことができる。
【0037】生体内非分解性の固体状の免疫増強製剤の製造方法としては、例えば(1)必要に応じて添加剤を添加した担体モノマーに抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し、硬化剤を加え、任意の型に充填もしくは押し出しにより成形し硬化させる方法、(2)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し乾燥する方法、(3)必要に応じて添加剤を添加した粉末状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、任意の型に充填して圧縮成形もしくは押し出しにより成形する方法、(4)必要に応じてスポンジ状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の溶液、懸濁液またはゲルを混合し乾燥する方法、(5)必要に応じて添加剤を添加したスポンジ状の担体に抗原物質(及び免疫調節物質)の粉末、溶液、懸濁液またはゲルを混合し、任意の型に充填して圧縮成形もしくは押し出しにより成形する方法、(6)(1)、(3)及び(5)の方法で抗原物質(及び免疫調節物質)を含有する棒状の内層を作成し、次いでその側面を抗原物質(及び免疫調節物質)を含有しない外層素材で被覆する方法、(7)ノズルを用いて内層と外層を同時に押し出し、成形する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、乾燥方法、乾燥時の温度及び湿度、混合方法、混合時の温度及び湿度、圧縮成形の方法、圧縮成形時の温度、湿度、圧縮圧力、担体溶液及び抗原物質(及び免疫調節物質)溶液の溶液粘度、担体と抗原物質(及び免疫調節物質)の混合溶液の粘度、pHについては通常の方法と同様に行うことができる。
【0038】本発明に関わる免疫増強製剤の使用方法は、例えば(1)疾病の予防あるいは治療を目的としたヒト用あるいはヒト以外の哺乳動物及び鳥用ワクチン製剤、(2)抗体の製造を目的として動物に投与する免疫製剤として使用する方法を挙げることができるが、これに限定されるものではない。本製剤を用いた抗体の製造方法は、抗体を産生させる動物に抗原を投与するのに本製剤を用いる以外は、現在一般に行われている方法と何ら変わるところはない。
【0039】本発明に関わる免疫増強製剤は、使用の目的に応じて投与部位を選択することができる。例えば、一般的なワクチンとして使用する場合は皮下、筋肉内等に投与することができる。また、本発明の原理的説明で述べたように、本発明の免疫増強製剤は投与された部位を担当するリンパ節あるいは投与部位の免疫反応を特異的に活性化することができることから、目的に応じて標的臓器に直接投与することができる。例えば、腫瘍由来の抗原とサイトカインを担持した免疫増強製剤を腫瘍細胞局所あるいは腫瘍を手術的に除去した部位に直接投与し、腫瘍に対する免疫反応を活性化することができる。さらには、腫瘍部位局所への免疫増強製剤の直接投与は、腫瘍部位局所を担当するリンパ節を介する全身リンパ系への腫瘍細胞の転移を抑制する効果が期待される。
【0040】
【実施例】(1)免疫増強製剤の作成実施例1アビジン(ベーリンガーマンハイム社)5.0mg/mlを含む水溶液10mlと、グリシン(ナカライテスク株式会社)100mg/mlを含む水溶液3mlをアテロコラーゲン液(株式会社 高研:2%アテロコラーゲン含有)134gと混合することで、溶液状の免疫増強製剤を作成した。
【0041】実施例2ヒツジIL-1β(A.E.Andrewsら、Vaccine, 12, 14-22, 1994の方法に従って調製) 5.0mg/mlを含む水溶液1.7mlと、アビジン5.0mg/mlを含む水溶液8.6mlと、グリシン 100mg/mlを含む水溶液1.5mlをアテロコラーゲン液142gと混合することで、溶液状の免疫増強製剤を作成した。
【0042】実施例3実施例1で調製した溶液状の免疫増強製剤を凍結乾燥することにより、スポンジ状の免疫増強製剤を得た。
実施例4実施例2で調製した溶液状の免疫増強製剤を凍結乾燥することにより、スポンジ状の免疫増強製剤を得た。
【0043】実施例5実施例3で調製したスポンジ状の免疫増強製剤に7gの蒸留水を加え、一晩放置し練合することでゲル状の免疫増強製剤を得た。
【0044】実施例6実施例4で調製したスポンジ状の免疫増強製剤に7gの蒸留水を加え、一晩放置し練合することでゲル状の免疫増強製剤を得た。
【0045】実施例7実施例5で調製したゲル状の免疫増強製剤を棒状に押し出し、これを乾燥させることによって棒状の免疫増強製剤を得た。
【0046】実施例8実施例6で調製したゲル状の免疫増強製剤を棒状に押し出し、これを乾燥させることによって棒状の免疫増強製剤を得た。
【0047】実施例9アビジン1mg/ml水溶液11.1gとヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、サイラスティック(登録商標、ダウコーニング社)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分0.7gと同B成分0.7gを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0048】実施例10アビジン1mg/ml水溶液11.1gとIL-1β2mg/ml水溶液61μl、ヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分0.7gと同B成分0.7gを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0049】実施例11実施例9で硬化させたものをサイラスティック メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分とB成分の各10%トルエン分散液を1:1の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0050】実施例12実施例10で硬化させたものをサイラスティック メディカルグレード ETR エラストマー Q7-4750A成分とB成分の各10%トルエン分散液を1:1の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0051】実施例13アビジン1mg/ml水溶液11.1gとヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、信越シリコーン(登録商標、信越化学株式会社)KE68(主剤)1.372gと信越シリコーン(登録商標、信越化学株式会社)Cat-RC(硬化剤)28mgを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0052】実施例14アビジン1mg/ml水溶液11.1gとIL-1β2mg/ml水溶液61μl、ヒト血清アルブミン(HSA)81mg/ml水溶液12.2gを混合し凍結乾燥する。凍結乾燥ケーキを粉砕、篩過して20μm以下の粉末を得る。一方、信越シリコーンKE68(主剤)1.372gと信越シリコーンCat-RC(硬化剤)28mgを混合する。混合後速やかに上記粉末0.6gを練合する。これを直径1.9mmの孔から圧力をかけて押し出し、室温で静置して硬化させる。これを切断して免疫増強製剤を得る。
【0053】実施例15実施例13で硬化させたものを信越シリコーン(登録商標)KE68(主剤)と信越シリコーンCat-RC(硬化剤)の各10%トルエン分散液を98:2の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0054】実施例16実施例14で硬化させたものを信越シリコーン(登録商標)KE68(主剤)と信越シリコーンCat-RC(硬化剤)の各10%トルエン分散液を98:2の比で混合したものに浸漬後、乾燥し、0.2mm厚の外層を施す。これを切断し、免疫増強製剤を得る。
【0055】実施例17アビジン5mg/ml水溶液0.578gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液13.0g、マンニトール100mg/ml水溶液13.0gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分1.05gと同B成分1.05gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.90gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0056】実施例18アビジン5mg/ml水溶液2.89gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液6.42g、マンニトール100mg/ml水溶液6.42gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分0.93gと同B成分0.93gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.80gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0057】実施例19実施例18と同様にして、アビジン、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0058】実施例20アビジン5mg/ml水溶液0.30gとクエン酸ナトリウム100mg/ml水溶液4.34g、マンニトール100mg/ml水溶液8.67gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分0.93gと同B成分0.93gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.80gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0059】実施例21実施例20と同様にして、アビジン、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0060】実施例22アビジン5mg/ml水溶液0.45gとIL-1β2mg/ml水溶液3.15g、クエン酸ナトリウム250mg/ml水溶液1.92g、マンニトール150mg/ml水溶液6.19gを混合し、凍結乾燥した。凍結乾燥ケーキを窒素雰囲気下で粉砕して粉末を得た。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分1.05gと同B成分1.05gを混合した。混合後、速やかに上記粉末0.90gを練合した。これをシリンジに充填し、直径1.6mmの孔から圧力をかけて押し出し、37℃で5日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0061】実施例23実施例22と同様にして、アビジン、IL-1β、クエン酸ナトリウム、マンニトール及びサイラスティックからなる練合物をシリンジに充填した。一方、サイラスティック(登録商標)メディカルグレードETRエラストマーQ7-4750A成分50gと同B成分50gを混合し、別のシリンジに充填した。各充填物を、薬物含有サイラスティックが内側、サイラスティックのみが外側になるように同心円状に配置された外側ノズルの内径1.9mm、内側ノズルの内径1.6mmのノズルより圧力をかけて押し出し、25℃で3日間静置して硬化させた。これを切断して免疫増強製剤を得た。
【0062】(2)放出試験試験例1実施例7で作成した免疫増強製剤10mgを、0.5%ウシ血清アルブミン、0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)5ml中に入れて静置し、放出されるアビジンをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図1に示した。免疫増強製剤は7日以上にわたってアビジンを持続的に放出した。
【0063】試験例2実施例8で作成した免疫増強製剤10mgを、0.5%ウシ血清アルブミン、0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)5ml中に入れて静置し、放出されるアビジン及びIL-1βをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図1に示した。免疫増強製剤は7日以上にわたってアビジン及びIL-1βを持続的に放出した。
【0064】(3)抗体産生実験試験例32グループのBalb/Cマウス(雌、各グループ5匹)にそれぞれ実施例7で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg含有)、実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)を皮下注射した。投与7、14、21、35、83日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの5匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図2に示した。実施例7で作成した免疫増強製剤を投与したマウスの投与35日後における血中抗体価は、比較例1で得られた抗体価の約25倍に達した。実施例8で作成した免疫増強製剤を投与したマウスの投与35日後における抗体価は、比較例1で得られた抗体価の約450倍に達した。
【0065】比較例15匹のBalb/Cマウスに100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35、83日後に血液サンプルを採取した。5匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図2に示した。
【0066】試験例45頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5頭のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3R>3に示した。図3から明らかなように、投与14日後に抗アビジン抗体の産生が見られた。
【0067】比較例25頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5頭のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3に示した。図3が示す通り、投与後35日間にわたって抗アビジン抗体の産生は見られなかった。
【0068】比較例35頭のヒツジ(メリノ種、雌雄混合)に100μgのアビジンと20μgのIL-1βを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与7、14、21、35日後に血液サンプルを採取した。5匹のヒツジから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図3に示した。図3から明らかなように、投与後35日間にわたって抗アビジン抗体の産生は見られなかった。
【0069】(4)組織学的解析実施例7で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg含有)、実施例8で作成した免疫増強製剤(アビジンを100μg、IL-1βを20μg含有)をそれぞれヒツジの左わき腹の異なる場所3カ所に皮下注射した。投与72時間後、ヒツジを屠殺し皮膚生検サンプルを採取した。生検サンプルを固定後、凍結切片を作成し、浸潤細胞表面のCD45を染色した。組織像を図4及び図5に示した。得られた組織像は、免疫増強製剤によって免疫増強製剤の周囲に白血球の浸潤が誘導されたことを示している。
【0070】試験例5アビジン10μgを含有するように切断した実施例17と、アビジン100μgを含有するように切断した実施例18,19の免疫増強製剤を、それぞれ、0.3% Tween20及び0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)2ml中に入れて静置し、放出されるアビジンをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図6に示した。製剤の形を選択することでアビジンの放出挙動を制御することが出来た。すなわち、マトリックス型の製剤(実施例17、18)は一次的な放出挙動を示し、同心円形の製剤(実施例19)はゼロ次的な放出挙動を示した。これらの製剤は少なくとも30日にわたってアビジンを持続的に放出した。
【0071】試験例6アビジン5μgを含有するように切断した実施例20,21の免疫増強製剤と、アビジン5μgおよびIL-1β5μgを含有するように切断した実施例22,23の免疫増強製剤を、それぞれ、0.3% Tween20及び0.01%アジ化ナトリウムを含有したリン酸緩衝液(pH 7.4)2ml中に入れて静置し、放出されるアビジンおよびIL-1βをELISAにより測定し、累積放出率を求めた。結果を図7に示した。試験例5と同様、製剤の形を選択することで、アビジンおよびIL-1βの放出挙動を制御することが出来た。これらの免疫増強製剤は少なくとも15日にわたってアビジンおよびIL-1βを持続的に放出した。
【0072】試験例73グループのBalb/Cマウス(雄、各グループ6匹)にそれぞれ実施例17で作製した免疫増強剤(アビジンを10μg含有)、実施例18で作製した免疫増強剤(アビジン100μg含有)及び実施例19で作製した免疫増強剤(アビジン100μg含有)を皮下投与した。投与14,28,42日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図8に示した。実施例17で作製した免疫増強剤を投与したマウスの投与14日後における血中抗体価は、製剤中のアビジン量が比較例4の10分の1であるにもかかわらず、比較例4で得られた抗体価の約180倍に達した。実施例18及び19で作製した免疫増強剤を投与したマウスの投与14日後における血中抗体価は、それぞれ比較例4で得られた抗体価の約250倍及び約190倍に達した。また、実施例17、18及び19で作製した免疫増強剤を投与したマウスの血中抗体価は、投与後6週間に亘って比較例4で得られた抗体価を上回った。
【0073】比較例4Balb/Cマウス(雄、6匹)に100μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図8に示した。
【0074】試験例84グループのBalb/Cマウス(雄、各グループ6匹)にそれぞれ実施例20で作製した免疫増強剤(アビジン5μg含有)、実施例21で作製した免疫増強剤(アビジン5μg含有)、実施例22で作製した免疫増強剤(アビジン5μg,IL-1β5μg含有)、実施例23で作製した免疫増強剤(アビジン5μg,IL-1β5μg含有)を皮下投与した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。それぞれのグループの6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。実施例20、21、22、23で作製した免疫増強剤を投与したマウスでは、投与14日後から血中に抗アビジン抗体が検出されたにも関わらず、免疫増強製剤と等量のアビジンを投与した比較例5では、試験期間中抗アビジン抗体価は検出感度以下であった。実施例20、22、23の免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、投与後28日間に亘って比較例6で得られた抗体価を上回り、実施例22及び23の免疫増強製剤を投与したマウスの血中抗体価は、試験期間中を通して比較例5で得られた抗体価を大きく上回った。
【0075】比較例5Balb/Cマウス(雄、6匹)に5μgのアビジンを溶解したPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。
【0076】比較例6Balb/Cマウス(雄、6匹)に5μgのアビジンを溶解した0.26重量%のアルムを含むPBS溶液を皮下注射した。投与14、28、42日後に血液サンプルを採取した。6匹のマウスから得られた等量の血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。抗体価を50%中点希釈倍率として表し、結果を図9に示した。
【0077】試験例9シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤を実施例20及び22と同様の手順で調製した。これらを以下マトリックス型免疫増強製剤と表す。マトリックス型免疫増強製剤の組成を表1に示した。また、別途シリコーンを担体として用いた被覆された免疫増強製剤を実施例21及び23と同様の手順で調製した。これらを以下同心円型免疫増強製剤と表す。各免疫増強製剤の組成を表1に示した。
【0078】
【表1】

【0079】ヒツジにシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤及び対照製剤(グループ10、11、12)を皮下投与し、28日後に100μgのアビジンを含有するPBS溶液を投与した。
シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤の免疫増強効果ヒツジは7頭づつ12のグループに分配した。表1に従って各製剤をヒツジに皮下投与した。初回免疫の28日後に100μgのアビジンを投与し、二次免疫を施した。結果を表2に示した。
【0080】
【表2】

【0081】各グループにおいて、7頭のヒツジから得られた血清を等量混合した血清を段階希釈し、血清中の抗アビジン抗体価をELISA法により測定した。IL-1βを含有しない場合、マトリックス型免疫増強製剤では全ての投与グループにおいて、溶液投与グループに比べて高い免疫効果が得られたが、その免疫効果はアルムを含有した溶液投与グループの免疫効果に比べて低かった。マトリックス型免疫増強製剤及び溶液製剤において、アジュバントとしてIL-1βを添加することによって抗体応答は増強された。IL-1βを含有するマトリックス型免疫増強製剤のいくつかではアルムを含有した溶液投与グループの免疫効果に比べて高い免疫効果がみられた。また、マトリックス型免疫増強製剤においては、抗原投与量が低いほど高い抗体応答が得られる傾向が見られた。同心円型免疫増強製剤では、抗体価及び免疫応答の維持期間でマトリックス型免疫増強製剤よりも優れた結果が得られた。
シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤の生体親和性ヒツジは7頭づつ8つのグループに分配した。表3に従って、各免疫増強製剤をヒツジに皮下投与した。
【0082】
【表3】

【0083】各グループにつき、2頭のヒツジで白血球数と体温を測定した。組織学的解析のため、製剤投与部位の組織を採取した。
投与2日後(ヒツジ2頭)
投与4週間後(ヒツジ2頭)
投与8週間後(ヒツジ2頭)
投与2日後、すべての免疫増強製剤の投与部位で弱い浮腫が観察された。この反応は、 IL-1βを含有した免疫増強製剤でより顕著であった。投与4週間及び8週間後、免疫増強製剤周囲の組織は正常であった。免疫増強製剤は肉眼的な所見では、カプセル化されず、組織に癒着せず、容易に動かすことが可能であった。有害な組織反応は見られなかった。
【0084】全身反応体温と白血球数測定を実施した。得られた結果を、シリコーンのみの製剤については図10aとbに、 IL-1βのみを含有した免疫増強製剤については図11aとbに、アビジンと IL-1βを含有した免疫増強製剤については図12aとbに示した。IL-1βを含有しないすべての免疫増強製剤では、体温あるいは白血球数について有害な影響は誘起されなかった。IL-1βのみを含有した免疫増強製剤では、IL-1βを溶液で投与した場合に比べて軽度の一過性の体温上昇がヒツジで見られた。このヒツジでの体温上昇は1℃で、24時間で平常レベルに戻った。一方、白血球数は平常レベルの4倍まで上昇したが、24時間後には再び平常レベルに戻った。アビジンを免疫増強製剤に含有した場合、 免疫増強製剤から放出されたIL-1βに由来する白血球数及び体温の変化の過酷性と持続性の双方が減弱された。これらの結果は、シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤は体温及び白血球数に長期間の影響を与えず、一過性のこれらの値の変動は軽微であり、シリコーン自身に由来する反応ではなく、 IL-1βを含有したことによることを示している。
【0085】投与部位の免疫組織学的解析免疫組織学的解析の結果は、シリコーン免疫増強製剤のタイプによって変わらず、 IL-1βの含有の有無のみが異なった結果を与えた。
1. IL-1βを含有した免疫増強製剤2日後: IL-1βを含有した免疫増強製剤を投与したすべての動物では、投与部位からその周囲の組織にかけて広範囲に細胞(主として好中球)の集積が見られた。T及びB細胞マーカーに対する染色で染色された細胞は、主として表皮部分に存在し、僅かに表皮の低層部分に分散していた。
4週後:観察された免疫担当細胞は、主として好中球であった。2日後に比べて主要組織適合性複合体(MHC) Class I及びII陽性細胞の増加が確認された。免疫増強製剤を取り巻く層に僅かにCD4、CD8、γδ、CD1陽性細胞が存在し、組織間に分散していた。CD45R陽性細胞もまた、表皮にかけて分散していた。
8週後:免疫担当細胞は主として免疫増強製剤を取り巻く層に存在し、組織は4週後に比べてより通常に近い様相を呈した。LCA陽性細胞が免疫増強製剤を取り巻き、如何なるリンパ球マーカーにも陰性である免疫増強製剤を取り巻く細胞層が存在した。これらの細胞は線維芽細胞であると思われた。パラフィン切片をマッソントリクローム染色したところ、免疫増強製剤を取り巻く薄い層が濃く染色され、これらがコラーゲンであることが分かった。この結果は、免疫増強製剤のカプセル化が始まっていることを示している。免疫増強製剤周囲のLCA陽性の細胞層中にはMHC Class I及びII陽性細胞もまた見られたが、これらの細胞は4週後のように組織間に分散していなかった。 また、CD4、僅かなCD8、γδ、CD1とCD45R陽性細胞の分散が見られた。
2.IL-1βを含有しない免疫増強製剤2日後: IL-1βを含有しない免疫増強製剤を投与した動物から採取した組織標本は、正常な皮膚の様相を呈していた。細胞の集積、浮腫は見られなかった。表皮中の細胞に僅かにリンパ球表面マーカーで染色される細胞が存在した。
4週後:投与部位周囲に線維芽細胞が見られた。更に同心円型の免疫増強製剤では、製剤の開口部でLCA陽性細胞が見られた。これらの細胞は、主としてMHC Class I陽性の細胞であり、Class II及びCD4陽性の細胞は僅かであった。
8週後:免疫増強製剤周囲に線維芽細胞が見られた。また、リンパ球表面マーカーで染色される細胞は殆どなかった。これらの結果は、シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤がヒツジの皮下投与においてよく許容され、投与8週間後の時点で当該免疫製剤の使用を制限するような有害な反応は見られなかったことを示している。
【0086】試験例10コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤を実施例7と8と同様な方法で調製し、試験例9と同様の実験を行った。免疫増強製剤の組成を表4に示し、得られた結果を表5に示した。
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤に IL-1β を含有させることによって、 IL-1β を含有しない時に比べてアビジンに対する抗体応答を増強できた。実験で使用した最も高濃度の二段階のIL-1β濃度で最も高い免疫応答が得られたが、IL-1β の最適な投与量を統計学的に確立することはできなかった。コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤の免疫増強効果について、表6に従って溶液投与と比較した。
【0090】
【表6】

【0091】表中に特に示した場合以外は、すべての製剤を皮下投与し、100μgのアビジンを含有するPBS溶液により二次免疫を施した。二次免疫の28日後、羊毛が生えていない内腿部分に1μgのアビジンを含有するPBS溶液を皮内投与することによって、遅延型過敏症反応の誘導を測定した。投与24時間、48時間後のアビジンを投与した部位での浮腫及び紅斑の発症を調べた。結果を各々、表7と8に示した。
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤は、強い遅延型過敏症反応を誘起しなかった。一方、溶液製剤では、弱い遅延型過敏症反応が観察された。また、すべてのグループで、即時型過敏症反応は観察されなかった。
【0095】試験例11表9に示した免疫増強製剤を用いて、試験例9及び試験例10と同様にして単回投与による免疫効果を測定した。得られた結果を表10と表11および12に示した。
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】単回投与時、コラーゲンあるいはシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤は、強い遅延型過敏症反応を誘起しなかった。一方、溶液製剤では、弱い遅延型過敏症反応が観察された。また、すべてのグループで、即時型過敏症反応は観察されなかった。総体的に、同心円型免疫増強製剤が最も高い抗体価を誘導し、免疫応答を最も維持する点において、単回投与による免疫に最も有効な製剤であった。同心円型免疫増強製剤の免疫効果は、 IL-1β の含有の有無に依存した。また、同心円型免疫増強製剤は、遅延型過敏症反応を誘起しなかった。IL-1β を含有した免疫増強製剤を投与した動物では、効果的な免疫記憶反応が誘導された。このことは一次免疫で誘導された抗体の抗体価が低下した一次免疫の69日後に実施された二次免疫に対する良好な免疫反応で明らかである。また、これらの実験で得られた血清サンプルについて、抗体のタイプ分類を実施した。結果、すべての投与群でIgM抗体が投与14日後の時点のみで低いレベルで検出されたのに対して、実験期間中を通して高いレベルのIgG抗体が血清中に存在していた。このことはただ一度の抗原投与で、抗体のタイプ変換(isotypeswitching)が有効に起こったことを示している。
【0101】試験例12免疫増強製剤の免疫増強効果は、モデル抗原であるアビジンだけでなく、表13に示した実施に感染予防効果がある一連の抗原でも確認された。
【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】結果を表14に示した。破傷風及びノビー(novyi)のトキソイドを用いた両方の実験において、同心円型免疫増強製剤はアルムを含有した製剤及びアルムとIL-1βを含有した製剤の双方に比べて明らかに優れた免疫増強効果を示した。コラーゲンを担体として用いた免疫増強製剤は、アルムを含有した製剤と同等の免疫増強効果を示した。一方、ノビーのトキソイドを用いた実験においては、同心円型免疫増強製剤は一次免疫のみで、アルムを含有した製剤に比べて2倍以上の抗体価を誘導した。
【0105】試験例13シリコーンを担体として用いた免疫増強製剤に於ける免疫増強効果の、抗原(アビジン)及びサイトカイン(IL-1β)の投与量依存性を調べた。実験に使用した製剤の組成及びシリコーンを担体として用いた免疫増強製剤のタイプを表15に示した。抗体価を14日毎に測定した。得られた結果を表16に示した。
【0106】
【表15】

【0107】
【表16】

【0108】これらの結果は、同心円型免疫増強製剤によって抗体が高い抗体価でかつ持続的に誘導されたことを示している。 最も持続的な免疫反応は、IL-1βと抗原の投与量が最も高い免疫増強製剤で得られた。70日後の時点では、 IL-1βを含有した免疫増強製剤は、溶液状態でのアルムを含有した製剤に比べて明らかに高い抗体価を維持した。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤は、ワクチンの剤形として有用であった。抗原の免疫原性及びサイトカインの生物活性は、免疫増強製剤への製剤化によって損なわれなかった。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤は、固有のアジュバント活性を示した。適当な濃度で IL-1β を免疫増強製剤に含有させた場合、免疫増強製剤で得られた抗体応答は、アルムアジュバントを用いて誘導されるものよりも高かった。IL-1β をアジュバントとして含有した同心円型免疫増強製剤は、本実験で使用した他のいかなる免疫方法に比べても顕著に高い免疫応答を誘導した。更に、誘導された免疫応答を他の免疫方法に比べてより長期間維持した。コラーゲンあるいはシリコーンを担体とした免疫増強製剤の投与によって、全身及び投与局所での副作用症状は見られなかった。この結果は、これらの製剤は安全なワクチン剤形として使用できることを示している。ここに示した本発明の意図から離れることなしに、種々の応用および/または変更ができるが、それらはすべて本発明の技術的範囲内であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験例1及び試験例2における免疫増強製剤からのアビジンとIL-1βの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図2】 マウスにおける抗アビジン抗体価の推移を示すグラフである。
【図3】 ヒツジにおける抗アビジン抗体価の推移を示すグラフである。
【図4】 実施例7における免疫増強製剤をヒツジに投与した部位の組織像を示す顕微鏡写真である。
【図5】 実施例8における免疫増強製剤をヒツジに投与した部位の組織像を示す顕微鏡写真である。
【図6】 試験例5における免疫増強製剤からのアビジンの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図7】 試験例6における免疫増強製剤からのアビジンとIL-1βの累積放出率の経時変化を示すグラフである。
【図8】 試験例7におけるマウスにおける抗アビジン抗体の推移を示すグラフである。
【図9】 試験例8におけるマウスにおける抗アビジン抗体の推移を示すグラフである。
【図10】 試験例9におけるヒツジにIL−1β、アビジンを含有しないシリコーンのみの製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【図11】 試験例9におけるヒツジにIL−1β 50μgを含有するマトリックス型免疫増強製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【図12】 試験例9におけるヒツジにIL−1β 50μgとアビジン500μgを含有するマトリックス型免疫増強製剤を投与した後の体温および白血球数の経時変化を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一以上の生体親和性材料からなる担体に、少なくとも一以上の抗原、または抗原を誘導する物質を含んでなる免疫増強製剤。
【請求項2】 生体親和性材料が、1)コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロースまたはアラビアゴム、2)グリコール酸、乳酸もしくはアミノ酸の重合体またはこれらの二以上の共重合体、並びに3)ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる生体親和性材料の一または二以上である請求項1記載の免疫増強製剤。
【請求項3】 さらに一以上の製剤的添加剤を含有する請求項1または2記載の免疫増強製剤。
【請求項4】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかに対する特異的な免疫反応を誘導し得る物質である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項5】 抗原、または抗原を誘導する物質が、化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術のいずれかの技術を用いた手法によって得られる物質である請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項6】 抗原が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかを弱毒化、無毒化または非病原性化したものである請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項7】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかから得られる物質である請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項8】 抗原を誘導する物質がウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項9】 溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項10】 少なくとも一以上の生体親和性材料からなる担体に、少なくとも一以上の抗原、または抗原を誘導する物質と、免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する少なくとも一以上の物質とを含んでなる免疫増強製剤。
【請求項11】 免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する物質がサイトカインである請求項10記載の免疫増強製剤。
【請求項12】 生体親和性材料が、1)コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロースまたはアラビアゴム、2)グリコール酸、乳酸もしくはアミノ酸の重合体またはこれらの二種類以上の共重合体、並びに3)ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる生体親和性材料の一または二以上である請求項10または11記載の免疫増強製剤。
【請求項13】 さらに一以上の製剤的添加剤を含有する請求項10〜12のいずれかに記載の免疫増強製剤。
【請求項14】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかに対する特異的な免疫を誘導し得る物質である請求項10〜13のいずれか一項に記載の免疫増強製剤。
【請求項15】 抗原、または抗原を誘導する物質が、化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術のいずれかの技術を用いた手法によって得られる物質である請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項16】 抗原が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかを弱毒化、無毒化または非病原性化したものである請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項17】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかから得られる物質である請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項18】 抗原を誘導する物質がウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該の抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項19】 溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状である請求項10〜13のいずれか一項に記載の免疫増強製剤。
【請求項20】 抗原が、スーパー抗原である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項21】抗原を誘導する物質がスーパー抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項22】 抗原が、スーパー抗原である請求項10〜13のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項23】 抗原を誘導する物質がスーパー抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項10〜13のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項24】 生体親和性材料が、コラーゲンまたはポリジメチルシロキサンである請求項2または12に記載の免疫増強製剤。
【請求項25】 棒状である請求項1または10に記載の免疫増強製剤。
【請求項26】 (a)均一に分散した抗原、または抗原を誘導する物質を含有する非崩壊性の生体親和性材料の内層、および(b)該内層の周囲を包む、水を通さない、内層の膨潤を制御し得る生体親和性材料の外層からなり、内層の両端または片端が外部環境に直接接触するように開放している請求項25に記載の免疫増強製剤。
【請求項27】 生体親和性材料が、ポリジメチルシロキサンである請求項26に記載の免疫増強製剤。
【請求項28】 抗原、抗原を誘導する物質または免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質の制御された放出挙動を示す請求項25に記載の免疫増強製剤。
【請求項29】 抗原、抗原を誘導する物質または免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質の持続的な放出挙動を示す請求項28に記載の免疫増強製剤。
【請求項30】 免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する物質が、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、アジュバント作用があるペプチド及びDNA塩基配列、アルム、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、イスコム、サポニン、ヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物、アブリジン、細胞壁骨格構成物、コレラトキシン、リポポリサッカライド、エンドトキシン、リポソームからなる群から選ばれるアジュバントである請求項10に記載の免疫増強製剤。
【請求項31】 溶媒の非存在下でサイトカインを含有する請求項11に記載の免疫増強製剤。
【請求項32】 ヒト以外の哺乳動物または鳥類に、請求項1〜31のいずれかに記載の免疫増強製剤を投与することにより当該動物の免疫反応を調節し、産生される抗体を取得することを特徴とする抗体の製造方法。
【請求項1】 少なくとも一以上の生体親和性材料からなる担体に、少なくとも一以上の抗原、または抗原を誘導する物質を含んでなる免疫増強製剤。
【請求項2】 生体親和性材料が、1)コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロースまたはアラビアゴム、2)グリコール酸、乳酸もしくはアミノ酸の重合体またはこれらの二以上の共重合体、並びに3)ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる生体親和性材料の一または二以上である請求項1記載の免疫増強製剤。
【請求項3】 さらに一以上の製剤的添加剤を含有する請求項1または2記載の免疫増強製剤。
【請求項4】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかに対する特異的な免疫反応を誘導し得る物質である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項5】 抗原、または抗原を誘導する物質が、化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術のいずれかの技術を用いた手法によって得られる物質である請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項6】 抗原が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかを弱毒化、無毒化または非病原性化したものである請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項7】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかから得られる物質である請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項8】 抗原を誘導する物質がウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項4記載の免疫増強製剤。
【請求項9】 溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項10】 少なくとも一以上の生体親和性材料からなる担体に、少なくとも一以上の抗原、または抗原を誘導する物質と、免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する少なくとも一以上の物質とを含んでなる免疫増強製剤。
【請求項11】 免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する物質がサイトカインである請求項10記載の免疫増強製剤。
【請求項12】 生体親和性材料が、1)コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロースまたはアラビアゴム、2)グリコール酸、乳酸もしくはアミノ酸の重合体またはこれらの二種類以上の共重合体、並びに3)ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる生体親和性材料の一または二以上である請求項10または11記載の免疫増強製剤。
【請求項13】 さらに一以上の製剤的添加剤を含有する請求項10〜12のいずれかに記載の免疫増強製剤。
【請求項14】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかに対する特異的な免疫を誘導し得る物質である請求項10〜13のいずれか一項に記載の免疫増強製剤。
【請求項15】 抗原、または抗原を誘導する物質が、化学的技術、組み換えDNA技術、細胞培養技術または発酵技術のいずれかの技術を用いた手法によって得られる物質である請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項16】 抗原が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかを弱毒化、無毒化または非病原性化したものである請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項17】 抗原、または抗原を誘導する物質が、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞のいずれかから得られる物質である請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項18】 抗原を誘導する物質がウイルス、マイコプラズマ、細菌、寄生体、毒素、腫瘍細胞などに対する特異的な免疫を誘導し得る抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該の抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項14記載の免疫増強製剤。
【請求項19】 溶液状、懸濁液状、ゲル状、フィルム状、スポンジ状、棒状または微粒子状である請求項10〜13のいずれか一項に記載の免疫増強製剤。
【請求項20】 抗原が、スーパー抗原である請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項21】抗原を誘導する物質がスーパー抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項22】 抗原が、スーパー抗原である請求項10〜13のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項23】 抗原を誘導する物質がスーパー抗原の遺伝子配列をコードする核酸が生体内で当該抗原を産生するように組み込まれたプラスミドまたはウイルスからなる請求項10〜13のいずれか一項記載の免疫増強製剤。
【請求項24】 生体親和性材料が、コラーゲンまたはポリジメチルシロキサンである請求項2または12に記載の免疫増強製剤。
【請求項25】 棒状である請求項1または10に記載の免疫増強製剤。
【請求項26】 (a)均一に分散した抗原、または抗原を誘導する物質を含有する非崩壊性の生体親和性材料の内層、および(b)該内層の周囲を包む、水を通さない、内層の膨潤を制御し得る生体親和性材料の外層からなり、内層の両端または片端が外部環境に直接接触するように開放している請求項25に記載の免疫増強製剤。
【請求項27】 生体親和性材料が、ポリジメチルシロキサンである請求項26に記載の免疫増強製剤。
【請求項28】 抗原、抗原を誘導する物質または免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質の制御された放出挙動を示す請求項25に記載の免疫増強製剤。
【請求項29】 抗原、抗原を誘導する物質または免疫賦活、免疫刺激もしくは免疫調節作用を有する物質の持続的な放出挙動を示す請求項28に記載の免疫増強製剤。
【請求項30】 免疫賦活、免疫刺激または免疫調節作用を有する物質が、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、アジュバント作用があるペプチド及びDNA塩基配列、アルム、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、イスコム、サポニン、ヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物、アブリジン、細胞壁骨格構成物、コレラトキシン、リポポリサッカライド、エンドトキシン、リポソームからなる群から選ばれるアジュバントである請求項10に記載の免疫増強製剤。
【請求項31】 溶媒の非存在下でサイトカインを含有する請求項11に記載の免疫増強製剤。
【請求項32】 ヒト以外の哺乳動物または鳥類に、請求項1〜31のいずれかに記載の免疫増強製剤を投与することにより当該動物の免疫反応を調節し、産生される抗体を取得することを特徴とする抗体の製造方法。
【図1】


【図7】


【図2】


【図3】


【図4】


【図8】


【図9】


【図5】


【図6】


【図10】


【図11】


【図12】




【図7】


【図2】


【図3】


【図4】


【図8】


【図9】


【図5】


【図6】


【図10】


【図11】


【図12】


【公開番号】特開平11−193246
【公開日】平成11年(1999)7月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−155343
【出願日】平成10年(1998)5月19日
【出願人】(000183370)住友製薬株式会社 (29)
【出願人】(591143869)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (9)
【出願人】(591071104)株式会社高研 (38)
【公開日】平成11年(1999)7月21日
【国際特許分類】
【出願日】平成10年(1998)5月19日
【出願人】(000183370)住友製薬株式会社 (29)
【出願人】(591143869)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (9)
【出願人】(591071104)株式会社高研 (38)
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