説明

カカオ豆を洗浄して、豆から得られるカカオ製品の品質を改善する方法

カカオ豆から不純物を除去する方法、カカオ豆のカカオ脂における遊離脂肪酸を低減する方法、又はその組合せの方法が提供される。本方法はカカオ豆と接触させた予洗液の使用によって実現される。このような方法、及びカカオ豆でこのような方法を行うためのシステムによって生成されたカカオ製品が更に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、カカオ豆ならびにカカオ豆から生成される製品の品質を改善する方法に関する。本発明は更に、限定しないが、カカオ豆ならびにカカオ豆から生成される製品において、毒素、金属、又は遊離脂肪酸を含む不純物のレベルを低減する方法に関する。本開示は更に、カカオ豆を含む組成物ならびにそこから生成される製品に関する。本開示は更に、カカオ豆ならびにカカオ豆から生成される製品の品質を改善するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カカオ製品に対する、特にチョコレート及びチョコレート製品での使用に対する世界の需要がここ10年で増加している。カカオ豆及び/又はその一部は限定しないが、カカオニブ、カカオリカー、カカオ脂、カカオのプレスケーキ、及び/又はカカオ粉末を含む多様なカカオ製品を生成するのに用いることができる。これらのカカオ製品の各々は更に、精製及び/又は他の成分と混合され、他のカカオ製品を生成できる。
【0003】
カカオ製品の品質はカカオ製品を生成するのに用いられるカカオ豆の品質に部分的に部分的に依存する。カカオ豆の品質は、収穫中の多様な条件、発酵処理、発酵した豆の乾燥処理、ならびにカカオ豆の輸送及び保存状態に依存する。カカオ豆の品質は更に、豆が得られるカカオの木の変種、ならびにどこでその変種が成長するかに依存しうる。総ての国で同じ変種又は種類のカカオの木が成長するわけではなく、これらの変種及び種類はその異なる匂いの形態の特徴によって区別できる。同一の変種のカカオの木から得られるカカオ豆でも、異なる環境で成長した場合、又は気候の変化によって特徴が異なる。低品質のカカオ豆は匂い(異臭)、発酵の度合、遊離脂肪酸のレベルといった異なるパラメータ、あるいはカカオ豆にある様々な不純物の存在で変化する。
【0004】
様々な不純物はカカオ製品に存在しうる。保存中に、カビがカカオ豆で成長し、アフラトキシン及びオクラトキシンといったカビ毒を形成しうる。カカオ製品におけるアフラトキシンの形成はカフェイン及びテオブロミンの存在によって阻害できるが、これらの汚染した豆から生成されるカカオ製品における高濃度のこれらのカビ毒は有害となりうる。鉛、鉄、アルミニウム、及びケイ素といった特定の金属不純物は更に、カカオ豆に存在しうる。
【発明の概要】
【0005】
米国特許第5,676,993号においては、Wattersonらが低級又は低品質のカカオ豆から得られるカカオの匂いを増加させる方法を記載している。この方法は、低級カカオ豆から得られるカカオ脂、カカオリカー、又はカカオニブとアミノ酸又は還元糖との組合せを焙焼するステップを具える。
【0006】
米国特許第4,871,562号においては、Terauchiらがカカオ豆又はカカオニブをアルカリで処理して、カカオマスの水溶部分を抽出することを記載している。総ての実施例は、脱殻及び/又は破壊したカカオ豆(又はカカオニブ)あるいはカカオマスのアルカリ処理を提供している。この明細書にはアルカリの添加は約1重量パーセント(重量%)ないし約2重量パーセントの量であり、1重量パーセント未満の量では水溶部分の量が低くなり、2重量パーセントを超える量によって、カカオマス中に水溶部分に移動しうる未反応のアルカリが生じると記載している。
【0007】
米国特許第4,704,292号においては、Kattenbergは16以下の色座標Lと、少なくとも約0.25重量パーセントの単一のポリヒドロキシフェノール成分を用いてカカオを調製する方法を記載している。この方法は高温の濃アルカリ処理液で脱殻したカカオ豆又は粗いカカオニブ部分を湿潤するステップを具え、処理溶液の濃度は、少なくとも約20重量パーセントのKCOと等価である。
【0008】
米国特許出願第2002/0034579号においては、Biehlらは未発酵のカカオ豆から2のステップで匂いの少ないカカオを生成する方法を記載している。第1のステップにおいては、カカオ豆は温度の上昇、及び/又は酸の存在下で水媒体で処理し、細胞内構造を破壊し、芳香性の前駆物質を生成する酵素を阻害する。第2のステップにおいては、カカオ豆は酸化環境で処理され、ポリヒドロキシフェノールを酸化する。これらの処理後に、カカオ豆は乾燥、脱殻し、次いでカカオ製品に従来通り加工される。
【0009】
国際公開第97/33484号においては、Arnoldらが発酵したカカオ豆の活性を低減する方法を記載している。この方法は、発酵したカカオ豆を部分的に脱殻するステップと、豆を乾燥させるステップとを具える。カカオ豆は部分的に脱殻され、殻は部分的に除去、開口、又は破壊される。脱殻はアルカリ剥皮といった化学的処理、あるいは手動除去、又は自動的な掻爬、摩擦、破壊、粉砕、及び/若しくは風選といった機械的処理によって行われうる。乾燥処理は15℃ないし35℃の周囲温度である。この方法は、脱殻前に豆を洗浄して、発酵した豆から過剰な粘液を除去する任意のステップを具える。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の商業上の需要が、カカオ製品業者が高品質のカカオ製品を生成することを要求している。従って、カカオ豆の品質を改善する方法に対するニーズは未だに残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態においては、カカオ豆から不純物を除去する方法、カカオ豆のカカオ脂における遊離脂肪酸を低減する方法、又はその組合せの方法は:カカオ豆を予洗液と接触させるステップと;予洗液からカカオ豆を除去するステップと;予洗したカカオ豆をカカオリカーに加工するステップと;を具え、予洗したカカオから生成したカカオリカーは、予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーと比べて、金属の量、カビ毒の量、遊離脂肪酸の量、又はその任意の組合せが低減する。本方法は更に、以下のステップのうちの1以上を具えてもよい:予洗したカカオ豆を焙焼するステップ;予洗したカカオ豆から殻を除去し、ひいてはカカオニブを生成するステップ;カカオニブを粉砕してカカオリカーにするステップ;カカオ豆からダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を除去するステップ;予洗したカカオ豆をすすぐステップ;及び予洗したカカオ豆を乾燥させるステップ;又はその任意の組合せ。
【0012】
別の実施形態においては、カカオ含有組成物を生成するためのシステムは:カカオ豆と;予洗液と;カカオ豆を予洗液と接触させる手段と;洗浄したカカオ豆;とを含む。本システムは更に以下のもののうちの1以上を含んでもよい:洗浄したカカオ豆から殻を除去するための装置;カカオニブを粉砕するための粉砕部;カカオリカーであって、洗浄したカカオ豆のカカオリカーから得たカカオ脂の遊離脂肪酸の量は、予洗液と接触させないカカオ豆から得たカカオ脂よりも少なく、カカオリカー中のFe、Al、及び/又はSiの量は予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーよりも少ないカカオリカー;15℃ないし90℃の温度で予洗液を維持するための発熱体;カカオ豆からダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を除去するためのデバイス;あるいは、その組合せ。
【0013】
本明細書中に提供されるのは、未加工のカカオ豆を洗浄して、これらの豆から得られるカカオ製品の品質を改善する方法である。一実施形態においては、本方法はアルカリで、一般的には温度は75℃未満で、かつpHは9ないし12で、未処理のカカオ豆を洗浄するステップを具え、驚くべきことに、豆の品質にかなりの改善が生じた。
【0014】
別の実施形態においては、カカオ製品の遊離脂肪酸の量を低減する方法が開示される。1の方法は本明細書中に記載のようなカカオ豆を洗浄するステップを具える。別の方法は、ダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を除去するためにカカオ豆を色彩選別するステップを具える。ブラックカカオ豆又はダークカカオ豆は高割合の遊離脂肪酸を含むため、これらのダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を、豆の残りから分離又は選別することによって、遊離脂肪酸の低い製品が生成される。別の実施形態は、細粒の遊離脂肪酸の量はカカオ豆よりも高いため、カカオ豆をふるいにかけて細粒を除去するステップを具える。ふるいの方法は、カカオ豆の洗浄、及び/又はカカオ豆の色彩選別と組合わせて行ってもよい。更なる実施形態においては、カカオ豆の品質を改善する方法は、カカオ豆の色彩選別と組合わせた、本明細書中に記載のようなカカオ豆を洗浄するステップを具える。
【0015】
カカオ豆の品質を改善する方法が提供される。本方法は:カカオ豆を予洗液と接触させるステップと;予洗したカカオ豆をカカオリカーに加工するステップと;を具える。限定しない一実施形態によると、予洗液は0重量パーセントないし20重量パーセント、又は1重量パーセントないし10重量パーセントのアルカリを含む。特定の実施形態によると、予洗液のpHは8ないし12.5であり、かつ/あるいは予洗液は15℃ないし90℃である。更に別の実施形態においては、予洗液の温度は15℃ないし90℃、20℃ないし90℃、30℃ないし90℃、又は50℃ないし70℃である。限定しない別の実施形態によると、カカオ豆は予洗液と30分未満、あるいは10分未満接触する。限定しない別の実施形態においては、カカオ豆を予洗液と接触させるステップは、予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーと比べて、金属の量、カビ毒の量、遊離脂肪酸の量、又はその任意の組合せが低減したカカオリカーを生成する。別の実施形態においては生成したカカオリカーのpHは6未満であり、別の実施形態においては生成したカカオリカーのpHは4ないし6である。更なる実施形態においては、予洗したカカオ豆はすすがれる。別のものにおいては、予洗したカカオ豆は例えば、12%未満又は8%未満の水の含水量に乾燥させる。限定しない一実施形態においては、予洗液は水であり、50℃ないし75℃である。
【0016】
特定の限定しない実施形態においては、予洗したカカオ豆をカカオリカーに加工するステップは:カカオ豆から殻を除去し、ひいてはカカオニブを生成するステップと;カカオニブを粉砕してカカオリカーにするステップと;を具える。カカオリカーは更にカカオ脂及び/又はカカオ粉末に加工してもよい。特定の限定しない実施形態によると、カカオニブの水の含水量は8%未満である。更なる実施形態においては、カカオリカーから分離されるカカオ脂の遊離脂肪酸の量は1.75%未満である。
【0017】
更に提供されるのは:未処理のカカオ豆を含む容器と;予洗液と;未処理のカカオ豆を予洗液と接触させる手段と;を具えるカカオ含有組成物を生成するためのシステムである。一実施形態によると、未処理のカカオ豆を予洗液と接触させる手段は予洗液を含む貯蔵部を具える。予洗液は0重量パーセントないし20重量パーセントのアルカリ、又は1重量パーセントないし10重量パーセントのアルカリを含んでもよく、pHは8ないし12.5であってもよい。特定の限定しない実施形態においては、アルカリはKCO、KHCO、カリ、又はその任意の組合せを含む。
【0018】
別の実施形態においては、本システムは更に、明るい色彩又は褐色のカカオ豆からブラックカカオ豆又はダークカカオ豆を選別するための装置を具える。本発明のシステムは更に、細粒をカカオ豆から除去できるように、カカオ豆をふるいにかけるための装置を具える。
【0019】
システムは更に:未処理のカカオ豆から殻を除去するための装置と;カカオニブを粉砕するための粉砕部と;カカオ脂とカカオ粉末とを分離するためのプレス部;及び/又はカカオリカーと;を含み、カカオリカーから分離したカカオ脂の遊離脂肪酸の量が1.75%未満となるか、カカオリカー中のFe、Al、及び/又はSiの量が予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーより少ないか、あるいはその組合せとなる。システムは更に、予洗液の温度を15℃ないし90℃、20℃ないし90℃、30℃ないし90℃、又は50℃ないし70℃に維持するための発熱体を具えてもよい。
【0020】
更なる限定しない別の実施形態においては食品が提供され、本明細書中に記載のように:未処理のカカオ豆を予洗液と接触させるステップと;予洗したカカオ豆をカカオリカーに加工するステップと;を具えるカカオ豆の品質を改善する方法によって調整されるカカオ製品を具える。食品の限定しない例は限定しないが、チョコレート、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、セミスイートチョコレート、料理用チョコレート、トリュフ、キャンディーバー、フレーバーシロップ、製菓用コーティング、飲料、ミルク、アイスクリーム、豆乳、ケーキ、クッキー、パイ、ダイエットバー、食事代用型の固形食及び飲料、エネルギーバー、チョコレートチップス、ヨーグルト、プディング、ムース、ならびにモレを含む。
【0021】
限定しない別の実施形態においては、カカオ脂が提供され、1.75%未満の遊離脂肪酸を含む。カカオリカーは更に提供され、鉄の量が50mg/kg以下であるか;アルミニウムの量が20mg/kg以下であるか;ケイ素の量が0.02重量パーセント以下であるか;あるいはその任意の組合せ;である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の特徴及び利点は添付の図面によって更に良好に理解されうる。
【0023】
【図1】図1は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって定量される、カカオ粉末におけるプロシアニジンB2の存在を示すグラフであり、カカオ豆は0重量パーセントないし10重量パーセントのKCOで処理された。
【図2】図2は、HPLCによって定量される、カカオ粉末におけるプロシアニジンB5の存在を示すグラフであり、カカオ豆は0重量パーセントないし10重量パーセントのKCOで処理された。
【図3】図3は、HPLCによって定量される、カカオ粉末におけるプロシアニジンC1の存在を示すグラフであり、カカオ豆は0重量パーセントないし10重量パーセントのKCOで処理された
【図4】図4は、HPLCによって定量される、カカオ粉末におけるプロシアニジンD1の存在を示すグラフであり、カカオ豆は0重量パーセントないし10重量パーセントのKCOで処理された。
【図5A】図5Aは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、0重量パーセントのKCOで処理されたカカオ豆のデータを示す。
【図5B】図5Bは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、1重量パーセントのKCOで処理されたカカオ豆のデータを示す。
【図5C】図5Cは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、5重量パーセントのKCOで処理されたカカオ豆のデータを示す。
【図5D】図5Dは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、10重量パーセントのKCOで処理されたカカオ豆のデータを示す。
【図5E】図5Eは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、基準のN−liquor CS−1でのデータを示す。
【図5F】図5Fは、カカオリカーにおける芳香族化合物の相対レベルを示すグラフであり、IC−1(10重量パーセントのHO)でのデータを示す。
【図6A】図6Aは、カカオリカーにおける芳香族化合物のスケールアップ実験での相対レベルを示すグラフであり、実験1でのデータを示す。
【図6B】図6Bは、カカオリカーにおける芳香族化合物のスケールアップ実験での相対レベルを示すグラフであり、実験2でのデータを示す。
【図6C】図6Cは、カカオリカーにおける芳香族化合物のスケールアップ実験での相対レベルを示すグラフであり、実験3でのデータを示す。
【図7】図7Aは、本明細書中に提供される限定しない一実施形態によるカカオ豆を処理するための主要なシステムの概略的なフローチャートであり、図7Bは、本明細書中に記載のカカオ豆を処理するためのシステムの限定しない別の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願においては、特許請求の範囲を含めて、動作の実施例にある、又は別途指示のある場合以外の、数量あるいは特徴を表す総ての数は、総ての例において、用語「約(about)」で修飾されると理解すべきである。従って、そうではないことを示さない限り、以下の記載で説明される任意の数値パラメータは、本開示による組成物及び方法で得ようとする所望の特性に依存して変化しうる。最低限でも、かつ、等価な見解を特許請求の範囲に適用するのを限定しないように、本記載に述べている各々の数値パラメータは少なくとも、報告済みの有効数字の数に照らして、かつ通常の四捨五入の技術を適用することによって、解釈すべきである。
【0025】
本明細書で用いるように、かつそうではないことを示さない限り、「ある(a,an)」は1以上のことである。
【0026】
全体及び一部において、本明細書中に引用によって組み込まれると言える任意の特許、刊行物又は他の開示資料は、組み込まれた資料が本明細書中で説明される現存する定義、記載、又は他の開示資料と矛盾しない範囲のみについて、本明細書中に組み込まれる。このように、かつ必要な範囲で、本明細書中で説明されるような開示は、引用によって本明細書中に組み込まれる任意の矛盾する資料を廃棄する。本明細書中に引用によって組み込まれると言えるが、本明細書中で説明される現存する定義、記載、又は他の開示資料と矛盾する任意の資料又はその一部分は、その組み込まれた資料と現存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲に対してのみ組み込まれる。
【0027】
本明細書で用いるように、「カカオ(cocoa)」は限定しないがニブ(天然、未加工、乾燥、焙焼、未発酵、及び/又はアルカリ化)、殻、殻のない豆、未処理の豆、胚芽、子葉、カカオ粉末、カカオ脂、カカオ粒子、及び/又はその他のカカオ豆加工製品といった、カカオ豆、その一部、あるいは、カカオ豆から生成される製品を含む。カカオは更に産生するために加工でき、限定しないがカカオリカー、カカオ脂、カカオ粉末、及び/又はチョコレートを含む。本明細書で用いるように、「カカオ豆(cocoa bean)」は焙焼、又は非焙焼の、カカオ豆全体、未処理のカカオ豆、ニブ(天然、未加工、乾燥、焙焼、未発酵、及び/又はアルカリ化)、殻、胚芽、子葉又はその組合せを含む。時として、用語「豆(bean)」が「カカオ豆」を称するのに用いられうる。「未処理のカカオ豆(intact cocoa bean)」は脱殻する方法によって部分的にあるいは完全に脱殻されていないカカオ豆を含む。本明細書で用いるように、「未加工のカカオ豆(raw cocoa bean)」は収穫及び発酵させているが、未焙焼のカカオ豆を含む。
【0028】
本明細書で用いるように、「カカオリカー(cocoa liquor)」はカカオマスを含み、カカオ豆又はその一部を粉砕して得られるカカオ粉末とカカオ脂との混合物を含む。
【0029】
本明細書で用いるように、「カカオ製品(cocoa product)」及び関連用語は限定しないが、粉砕したカカオ豆、カカオリカー、カカオ脂、カカオ粉末、化合物、化合物のコーティング、及び/又はカカオ豆の加工製品を含むその他の製品のうちの1以上を含む組成物を含む。
【0030】
本明細書で用いるように、「低級カカオ豆(inferior cocoa bean)」及び「低品質(inferior quality)」は商業上及び/又は消費者の立場から所望の品質より低いと見なされるカカオ豆を含む。カカオ豆は多くの場合その品質面で説明され、一般的な基準は限定しないが、発酵の度合、欠陥の数量、破壊した豆の数量、豆の数(100gあたりの数量)、匂い、色彩、脂肪の量、脂肪の品質、殻の量、含水量、均一性、金属の量、毒素の存在、ならびに虫及び/又はげっ歯類の寄生を含む。カカオ脂の遊離脂肪酸は低くあるべきであり、特異的な融解及び凝固特性を示すべきである。
【0031】
低級カカオ豆の限定しない例は、高い遊離脂肪酸ならびに非特異的な融解及び凝固特性を有するカカオ脂が得られるカカオ豆である。例えば、かつ限定しないが、カカオ脂の遊離脂肪酸(FFA)の量は1.75%未満にすべきである。従って、低級カカオ豆は一例においては、豆から調製されるカカオ脂において少なくとも1.75%の高いFFAの量を有すると規定できる。商慣行においては、「低級カカオ豆」は更に、当該技術分野で理解されている方法を通して、主観的に同定される。
【0032】
例えば、かつ限定しないが、匂いの基準は多くの場合、通常の商慣行においては委託品を類別し、異臭を同定しようとする専門委員会で評価される。この評価は多元的であり、豆及びその取扱いならびに異臭の種類に依存し、限定しないが、カビ由来のカビ臭い異臭、乾燥時に生じる煙の汚れ、発酵又は不適切な乾燥中に生じる過剰な酸による酸性の異臭、あるいは保存及び輸送中に別の強い匂いの製品の近くにあることによって更に生じうる異臭を含む。
【0033】
別の限定しない例においては、殻の量の基準は豆の種類に依存し、アジアの豆の殻の量は一般的にアフリカの豆よりも多い。従って、「低級カカオ豆」は専門家の評価によって決定でき、多くの場合においては、これらの低級カカオ豆の負の品質は本明細書中に記載の方法によって矯正できる。
【0034】
カカオの匂いの形態におけるいくつかの重要な因子は、カカオ豆の変種、発酵及び乾燥、アルカリ化、焙焼、ならびにその任意の組合せである。カカオ豆の変種については、変種が異なると、匂いの形態の特性が異なりうる。例えば、フォラステオ(Forastero)の変種の病気及び害虫に対する耐性は大きいが、フォラステオの匂いはチョコレート製造者によってあまり評価されない。クリオロ(Criollo)は明るい色であり、穏やかな風味豊かな特徴を有する。フォラステオのカカオは暗褐色で匂いは強く、わずかに苦く、脂肪の量は高い。クリオロの変種の匂いとフォラステオの強壮性を組み合わせるために、トリニタリオ(Trinitario)の変種を含む新規の雑種が栽培された。気候、日照及び降雨の量及び時間、土壌の状態、熟成、収穫の時間、ならびに豆の収穫と発酵との間の時間のような成長条件は総て、匂いの形態の一因となる。条件が異なると、匂いの特性が有意に異なりうる。好適な例がガーナ共和国及びサバ州で生育した豆から生成されるカカオの間の匂いの特性の差異である。サバ州で栽培された変種は元はガーナ共和国から輸入されていたが、その匂いは完全に異なっている。
【0035】
発酵及び乾燥については、カカオ豆の処理が豆の品質に影響を与える。発酵中は、酵素反応はカカオの匂いの前駆物質の形成に重要な役割を与える。発酵を含む化学的処理は複雑であり完全には理解されていない。乾燥処理は同様に匂いに影響を与える。例えば、高温の空気乾燥炉は一般的に発酵した豆を乾燥させるのにアジアで用いられ、カカオ製品を得ることができるが、残留物の酸性度のレベルが高くなり、かつ/あるいは、匂いに負の影響を与える遊離脂肪酸の量が高くなる。
【0036】
本明細書で用いるように、「低品質」又は「低級カカオ豆」に関連する「高レベル(high level)」は例えば、かつ限定しないが、任意の該当の食品産業の規制のガイドライン又は食品品質のガイドラインに説明されるような、かつ/あるいは、許容可能な商業上の規格、優先度、慣例、又は商習慣に照らして、規格内にないカカオ製品が得られる低品質のレベルのことである。例えば、かつ限定しないが、特定のガイドラインによると、カカオ脂は遊離脂肪酸の量が1.75%未満の場合に、規格内にあると見なされる。従って、低級カカオ豆は遊離脂肪酸の量が1.75%より多いカカオ脂を生成するカカオ豆となろう。低級カカオ豆における高レベルの遊離脂肪酸の量の平均値の限定しない例は、それらの豆から生成されるカカオ脂の4.2%である。別の限定しない例においては、カカオ粉末は、A型のオクラトキシンのレベルが2.0μg/kg(又は2.0ppb)未満である場合に、欧州連合によって公布された規格内にあると見なされる(離乳食のみについて)。従って、低級カカオ豆における高レベルのA型のオクラトキシンは、A型のオクラトキシンのレベルが2.0μg/kgより大きいカカオ製品を生成するものとなるであろう。別の限定しない例においては、食品は製品のアフラトキシンのレベルが20ppb未満の場合に、米国食品医薬品によって公布されるような規格内(又は、限界水準未満)にあると見なされる。従って、低級カカオ豆における高レベルのアフラトキシンは、アフラトキシンのレベルが4ppbより大きいカカオ製品を生成するものとなるであろう。(EU)
【0037】
本明細書で用いるように、カカオ製品の「遊離脂肪酸の量(free fatty acid content)」又は「FFA」は商業上許容可能な慣例に従って、カカオ製品内のオレイン酸の量を基準として生成される。一般的には、FFAはオレイン酸の割合(%)として表され、オレイン酸を中和するのに必要な塩基の量を測定することによって定量される。FFAは多くの異なる方法で測定できる。例えば、かつ限定しないが、滴定法はpH指示薬の化合物を基準として、オレイン酸を含むカカオ製品を滴定するのに必要な塩基の量を定量するステップを具える。別の限定しない例においては、NIR法は、化合物の近赤外線吸収スペクトルを測定するステップと、顕著なオレイン酸の吸収スペクトルが存在するかどうかを定量するステップとを具える。本明細書で用いるように、「脂肪の量(fat content)」又は「脂肪の割合(%fat)」は脂肪とカカオ製品から石油エーテルで抽出可能な他の成分とに対する質量パーセントの量である。
【0038】
低級カカオ豆の他の限定しない例は、許容不可能な高レベルの不純物を有するカカオ豆を含む。不純物はカカオ豆中に存在しうる様々な化学物質及び粒子を含む。ヒトの健康に有害となりうる不純物の量もあれば、味又は色彩のようなカカオ製品の特徴に対し所望されない影響がある不純物の量もある。例えば、かつ限定しないが、不純物は金属、農薬、砂、カビ毒、及びその任意の組合せを含む。
【0039】
様々な金属がカカオ製品中に存在しうる。イオンの鉄の存在はカカオに固有であり、成長、収穫後、及び製造の状態で与えられる。例えば、かつ限定しないが、金属の鉄の微粒子レベルは良好な製造の実施、カカオ製品から鉄の粒子を除去するための強力磁石の使用、及び/又は加工前のカカオ豆の予洗で制御可能である。ほとんどの農業作物で当てはまるように、土壌において多くの場合に見出される微量の重金属のレベルは、カカオに見出されうる。原産国からのカカオ豆は通常は土壌と接触するため、規制規格で特定されるレベルへの殻の除去は、これらの天然金属のレベルを限定するのを補助することは周知である。限定しない一例においては、低級カカオ豆のケイ素(砂)、鉛、及び/又はアルミニウムは高レベルになりうる。
【0040】
カカオの木及び素の果実は微生物及び虫による攻撃を受ける傾向にある。これらの害虫の対策のために、殺真菌剤、殺虫剤、及び農薬は豆自体にではなく、多くの場合はカカオの莢に塗布されうる。しかしながら、カカオ豆に対する限界水準は(例えば)米国食品医薬品局によって公布されている。例えば、殺虫剤リンデンの限界水準は未加工のカカオ豆全体に対し0.5ppmであり、殺虫剤DDT、DDE及びTDE(単体又は組合せ)の限界水準は1.0ppmである。2008年9月1日から、EUは(400成分を超える)農薬、燻蒸剤、及び除草剤を制限している。限定しない一例においては、低級カカオ豆はカカオ豆上、又は内部にある高レベルの農薬及び殺虫剤を低減するために予選される。
【0041】
カカオ豆でのカビの成長が時として生じる。これらのカビの一部はカビ毒を生成しうる。これは成長、収穫、熟成、発酵及び乾燥時も農場で生じうる。従って、アフラトキシン及びオクラトキシンAのようなカビ毒がカカオ豆に存在する可能性がある。製造中にカカオ粉末から各々の不純物を除去することは不可能である。行政当局はこれを認識している。例えば、かつ限定しないが、カカオ豆におけるカビ毒のレベルは、カカオ豆の注意深い選択、未加工材料の取扱い、良好な製造の実施、及び/又はカカオ豆の予洗を通して制御できる。様々な他の実施形態においては、本開示の組成物は磁性流体用途に用いてもよい。一実施形態においては、本開示の組成物は溶剤系における磁性粒子を安定化させるのに用いてもよく、限定しないが基油とエステル化合物との混合物を含む。本開示の組成物の潤滑剤及び分散剤の特性の改善によって、流体の粘度に悪影響を引き起こすことなく、磁性流体における懸濁粒子の凝集が低減する。
【0042】
本明細書中に記載されているのは、カカオ製品の品質を改善するための処理、及びそれらの処理で得られる製品である。例えば、かつ限定しないが、この処理は低級カカオ豆から得られるカカオ製品の品質を改善する。別の限定しない例においては、この処理はカカオ製品の低品質を改善する。
【0043】
本明細書で用いるように、「アルカリ(alkali)」及び関連用語はアルカリ性の化学物質を含む。アルカリの限定しない例は、限定しないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はマグネシウムの水酸化物、炭酸塩及びその任意の組合せを含む。例えば、かつ限定しないが、アルカリはカリ若しくはKCO、KHCO、又はその混合物である。「アルカリ性(alkaline)」は7より大きなpHのことである。本明細書で用いるように、「アルカリ溶液(alkali solution)」はアルカリ及び溶剤を含む。溶剤の限定しない例は、限定しないが脱塩水又は水道水といった水を含む。本明細書で用いるように、アルカリ溶液は様々な濃度にできる。例えば、かつ限定しないが、アルカリ溶液は0.5重量パーセントないし20重量パーセントのアルカリを含み、その間の任意の増分、例えば1重量パーセント、2重量パーセント、5重量パーセント、10重量パーセント、及び15重量パーセントを含む。別の実施形態においては、アルカリ溶液は1ないし5重量パーセントの範囲を含む。本明細書中の目的においては、アルカリ処理は、アルカリ剥皮の場合のように未処理のカカオ豆の脱殻を引き起こすのに十分なアルカリでの処理を含まない。従って、本明細書に記載のアルカリ処理は「剥皮しないアルカリ処理(non−peeling alkali treatment)」ならびに同様の用語及び語句で特徴づけることができ、そのように処理されたカカオ豆の剥皮(脱殻)を引き起こすのに十分なpH、期間及び温度のアルカリ処理を除外する。従って、洗浄方法に対するpHの範囲は限定しないが、9ないし12.5、10ないし11.5、例えば、かつ限定しないが、pH=9、9.5、10、10.5、11、11.5、及び12、ならびにその間の増分を含む。剥皮しないアルカリ処理に対する温度の範囲は、限定しないが15℃ないし90℃、例えば25℃(室温)ないし75℃を含み、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、及び90℃、ならびにその間の増分を含む。
【0044】
本明細書で用いるように、「予洗(pre−wash)」及び同様の用語は、未加工の、かつ/あるいは発酵した、未処理のカカオ豆を溶液と接触させるステップを具える。用語「予洗液(pre−washing solution)」は、カカオ豆の予洗処理中に用いられる溶液を含む。用語「予洗したカカオ豆(pre−washed cocoa bean)」は豆の破壊及び風選処理を開始する前に予洗し、かつ乾燥させている、あるいは既に予洗し、かつ乾燥させたカカオ豆を含む。
【0045】
予洗は反応条件の範囲を超えて行うことができる。予洗ステップは様々な予洗液を含む。例えば、かつ限定しないが、予洗液は水性(水含有性)の溶液である。水溶液の限定しない例は限定しないが、脱塩水若しくは水道水といった水、又は1重量パーセントのKCO若しくは10重量パーセントのKCOといったアルカリ溶液を含む。予洗は様々な温度で行うことができる。予洗用の温度の限定しない範囲は15℃ないし75℃であり、その間の任意の増分、例えば20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、及び70℃を含む。予洗は様々な時間の長さで行うことができる。限定しない一実施形態においては、予洗は1時間未満、又は30分未満で行われる。更に限定しない別の実施形態においては、予洗は5分未満で行われる。
【0046】
本明細書で用いるように、用語「すすぎ(rinse)」及び同様の用語は、予洗したカカオ豆を溶液と接触させるステップを具える。用語「すすぎ液(rinsing solution)」は、すすぎ処理中に用いられる溶液を含む。すすぎ液の限定しない例は限定しないが、脱塩水又は水道水といった水を含む。すすぎは様々な条件で行うことができる。すすぎ用の温度の限定しない範囲は15℃ないし75℃であり、その間の任意の増分、例えば20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、及び70℃を含む。すすぎは様々な時間の長さで行うことができる。限定しない一実施形態においては、すすぎは1時間未満、又は30分未満で行われる。更に限定しない別の実施形態においては、すすぎは5分未満で行われる。
【0047】
カカオ豆の処理時は、すすぎは任意である。例えば、かつ限定しないが、カカオ豆は1重量パーセントのKCOで1時間未満予洗され、水で1時間未満すすがれる。別の限定しない例においては、カカオ豆は水で1時間未満予洗され、すすがれない。更に別の限定しない例においては、カカオ豆は1重量パーセントのKCOで1時間未満予洗され、すすがれない。
【0048】
限定しない別の実施形態においては、予洗したカカオ豆は乾燥させる。例えば、かつ限定しないが、カカオ豆は水の含水量が10重量パーセント未満となるように乾燥させる。
【0049】
プロシアニジンは広範にはポリフェノールの分類に属し、限定しないが、重合体及び低重合体のポリフェノールを含む。プロシアニジンB2は二量体であり、エピカテキン−(4β→8)−エピカテキンの式で表される。プロシアニジンB5は二量体であり、エピカテキン−(4β→6)−エピカテキンの式で表される。プロシアニジンC1は三量体であり、エピカテキン−(4β→8)−エピカテキン−(4β→8)−エピカテキンの式で表される。プロシアニジンD1は四量体であり、エピカテキン−(4β→8)−エピカテキン−(4β→8)−エピカテキン−(4β→8)−エピカテキンの式で表される。
【0050】
本明細書で用いるように、システム(system)は特定の目的を達成するための装置又は装置の組合せを含む。システムの限定しない例は、所望の処理を行うのに必要な構成を具える加工又は製造ラインである。
【0051】
本明細書中に記載されているのはカカオ豆からカカオ製品を生成するためのシステムである。装置は加工ラインの一部であり、かつ加工ラインにおいて加工ライン又はシステムの他の部材の上流又は下流にある場合に、「システム内に構成」されている。システム内に構成された装置はシステム内の経路によって好適な方法で連結され、限定しないが、パイプ、チューブ、溝、コンベヤ、ベルト、かご、空気圧技術、あるいは製造者の組成物又は製品が加工ラインにおける装置から装置に移動するその他の手段及び/又は機構にできる。
【0052】
図7Aはカカオ製品を生成するためのシステム10の限定しない一実施形態の概略図である。システム10は、未処理のカカオ豆がアルカリ性の予洗液で処理される容器20を具える。カカオ豆の供給部25が示され、カカオ豆を容器20に供給するための任意の好適な導管を表し、パイプ、チューブ、コンベヤ、あるいは更に、カカオ豆を供給できる容器20内の開口部又は入口を具える。貯蔵部30は、任意にジャケットヒータにできる発熱体32とともに、かつ、予洗液34を含むように示される。供給部35は貯蔵部30と容器20との間にあるパイプ、チューブ、溝、排出路、又は開口部といった流体導管である。適用可能な場合には、供給部35は電磁弁といったインライン弁(図示せず)を含んで、予洗液34の容器30への流れを制御できる。インペラー、振盪機又はローラーといった混合手段(図示せず)は、豆と予洗液34とを混合するために容器20と連結して用いてもよい。出口供給部40が提供され、それによって豆は容器20から除去され、パイプ、チューブ、コンベヤ、あるいは更に、カカオ豆を除去できる容器20の開口部又は出口を具えうる。
【0053】
当該技術分野の当業者によって理解されうるように、大きさ、形状、及び図7Aに示したシステム10の要素間の物理的関係は設計選択事項として大きく変わりうる。図7Bに概略的に示した、図7Aに示したシステムの限定しない一実施形態においては、容器はカカオ豆を保持するための有孔型の箱120であり、有孔型の箱120の内部のカカオ豆を所望の期間、予洗液134に浸漬するために、予洗液134の表面の下の貯蔵部130に挿入される(符号A)。その後、有孔型の箱120はカカオ豆のすすぎ及び/又は乾燥のために貯蔵部130から除去される(符号B)。
【0054】
本明細書中に記載のシステム及び方法については、用語「供給(feed)」は物質、製品、組成物、化合物、粒子等を容器、管、箱タンク等に、あるいはそこから移動する措置を含み、任意の方法で達成でき、パイプ、チューブ、コンベヤ、ベルト、車両、排出路、溝又は手動によるものを含む。同様に、用語「供給」は物質、製品、組成物、化合物、粒子等を容器、管、箱タンク等のシステムの要素に、あるいはシステムの要素から移動できる物理的構成を含んでもよく、パイプ、チューブ、コンベヤ、ベルト、車両、排出路、溝、あるいはショベル、箱車等といった手動の製品を具えうる。
【0055】
システムは1以上の装置で構成して、予洗したカカオ豆を更に加工できる。1以上の装置は予洗液を含むシステムの下流に構成でき、1以上の装置はシステム内の経路によって好適な方法で連結され、限定しないが、パイプ、チューブ、溝、コンベヤ、ベルト、かご、空気圧技術、あるいは製造者の組成物又は製品が加工ラインにおける装置から装置に移動するその他の手段及び/又は機構にできる。例えば、かつ限定しないが、未処理のカカオ豆から殻を除去するための装置は、図7Aの出口供給部40の下流のシステムに構成される。更に別の限定しない例においては、カカオリカーを調製するための1以上の装置は、予洗液を含む装置の渦中に配置される。カカオリカーを調製するための装置の例は限定しないが、風選機、粉砕機、ミキサー、ローラー、練り加工機(conche)、プレス機、又は冷却機のうちの1以上を具える。
【0056】
システムは更に、明るい又は褐色のカカオ豆からダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を選別するためのデバイスを具えてもよい。システムは更に、カカオ豆から細粒を除去するためにカカオ豆をふるいにかけるためのデバイスを具えてもよい。
【0057】
カカオ製品は一般的には食品で用いられる。食品は1以上の他の構成を含むことができ、限定しないが、ミルク及び/又はミルク粉末、1以上の砂糖、栄養価のない甘味料、1以上の小麦粉、調味料、着色剤、液体改質剤、1以上の防腐剤、1以上のビタミン、1以上の栄養補助剤、1以上の栄養補助食品、1以上の薬草、1以上の食物、1以上の木の実、1以上の果実、1以上の添加剤、1以上の安定剤、1以上の乳化剤、1以上のタンパク質、1以上の炭水化物、1以上の油、ならびに任意の他の1以上の成分を含む。食品の例は限定しないが、チョコレート、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、セミスイートチョコレート、料理用チョコレート、トリュフ、キャンディーバー、フレーバーシロップ、製菓用コーティング、飲料、ミルク、アイスクリーム、ミックス飲料、スムージー、豆乳、ケーキ、クッキー、パイ、ダイエットバー、食事代用型の固形食及び飲料、エネルギーバー、チョコレートチップス、ヨーグルト、プディング、ムース、ならびにモレを含む。従って、提供されるのは限定しないが、上述の製品といった食品であり、本明細書中に開示のカカオ製品で調製される。
【0058】
[実施例]
以下の例示的な限定しない例は、本明細書中に提示される実施形態を更に説明するために提供される。当該技術分野の当業者はこれらの実施例の変形が発明の範囲内で可能であることを理解するであろう。
【0059】
本明細書中に記載されているのは、カカオ豆の様々な種類の不純物を低減し、かつ低級カカオ豆の品質を増加させるための実施例である。カカオの莢の、カカオ製品用の未加工材料としての発酵したカカオ豆への加工時に、カカオ豆は汚染され、品質は収穫、発酵及び輸送のプロセスで取扱われた方法に依存して悪化しうる。様々な種類の不純物がこの方法で低減でき、限定しないがアフラトキシン及びオクラトキシンを含むカビ毒と、鉄、アルミニウム、ケイ素、砂、及び鉛といった金属と、農薬とを含む。遊離脂肪酸の量といった、様々なカカオ製品の品質が改善できる。
【0060】
これらの方法は、水又は0ないし10重量パーセントの濃度範囲のアルカリのアルカリ性希釈溶液でこれらの豆を洗浄することによって、豆の品質を改善する方法を提供する。これらの有益な効果のために、広範な選択肢の未加工のカカオ豆を、最終生成物の品質を犠牲にすることなく用いることができる。例えば、低級カカオ豆は一般的には、カカオ粉末、カカオリカー、及び/又はカカオ脂といった低品質な低級カカオ製品を生成する。しかしながら、本明細書中に開示の処理は更なる低級カカオ豆を用いることを可能にし、高品質のカカオ製品を提供するとともに、市場で入手可能な総ての種類のカカオ豆の経済的な使用を促進する。
【実施例1】
【0061】
《未加工のカカオ豆の調製》
〈方法〉
未加工のカカオ豆はカリ溶液で予洗し、脱塩水で洗浄した。カリ溶液の濃度は0重量パーセントないし10重量パーセントで変化させた。温度は洗浄時に70℃であった。洗浄及びすすぎステップの後に、カカオ豆は焙焼し、脱殻し、ニブに破壊した。ニブは更に、カカオリカー、カカオ脂、及びカカオ粉末といった様々なカカオ製品に加工した。これらのカカオ製品は更に本明細書に記載のように分析した。
【0062】
〈機器〉
空気循環式の乾燥炉(Heraeus社、型番:T−5042)を用いて、予洗した豆を滅菌及び調製した。直接接触式の噴射焙焼炉(実験室規模の流動層乾燥炉/焙焼炉)を用いて、一定の空気圧及び温度での高温の乾燥空気によって密封したキャビンでカカオ豆を焙焼した。ほとんどの熱が加熱するキャビンに維持されるため、80℃ないし120℃の温度で製品を乾燥又は焙焼させることが可能であった。
【0063】
殻の試料は更に、0.5mm穴のふるいを用いてRetch社の切削粉砕機(型番:ZMI)で所望の細粒に粉砕した。家庭用のコーヒーミルを焙焼したニブの第1の粉砕用に用いた。実験室のとろこね機(Retch社、型番:RMO)をカカオリカーの第2の(細かい)粉砕用に用いた。
【0064】
〈未加工材料及び試薬〉
コートジボワール産の1型の豆を100%用い、遊離脂肪酸の量の平均は1.7%であった。豆は貨物船から引き上げられ、N−liquorの生成用に工場で用いられた。予洗液は脱塩水において70℃で以下の重量パーセントで調製した:0重量パーセント(アルカリを添加せず、脱塩水のみ);1重量パーセント;5重量パーセント;及び10重量パーセント。
【0065】
〈反応条件〉
反応サイクルは以下のステップを具えた。
【0066】
第1に、カカオ豆は2のステップで予洗した。第1のステップ(又は洗浄ステップ)においては、約300グラムのカカオ豆は600グラムの予洗液で5分間洗浄した。予洗液は以下の濃度で脱塩水において調製した:0重量パーセントのKCO;1重量パーセントのKCO;5重量パーセントのKCO;及び10重量パーセントのKCO。第2のステップ(又はすすぎステップ)においては、カカオ豆は600グラムの100%脱塩水で5分間すすいだ。これらのステップの間の平均温度は70℃であった。表1はこれらの2ステップ後の双方の溶液のpHを示す。
【0067】
[表1:カカオ豆を洗浄及びすすぎ後の双方の溶液のpH]

【0068】
第2に、カカオ豆は滅菌及び乾燥した。予洗ステップ後、豆はペトリ皿に保存され、80℃で30分間、高温の乾燥炉に置いた。
【0069】
第3に、カカオ豆は噴射焙焼炉において、90℃ないし120℃の温度で乾燥させた。乾燥時間及び温度は豆の産地及び含水量に依存した。例えば、洗浄後の含水量が35ないし55重量パーセントのコートジボワール産の1型のカカオ豆では、乾燥時間が30分であり、温度が120℃であった。
【0070】
第4に、豆を脱殻してカカオニブを生成した。豆の乾燥後、殻は乾燥した豆から容易に除去でき、脱殻した豆は小さな粒子(ニブ)に破壊した。
【0071】
第5に、カカオニブは噴射焙焼した。ニブは噴射焙焼炉において、120℃で15分間焙焼した。豆及びニブの焙焼中に、ほとんどの匂いの化合物は焙焼温度が低いために製品内部に維持される。
【0072】
第6に、焙焼したカカオニブはカカオリカーに粉砕した。焙焼したニブは最初は家庭用のコーヒーミルで粗く粉砕した。その時点で100グラムの投入量において、ニブは更にとろこね機で所望の細粒の細かいカカオリカーに粉砕した。
【0073】
第7に、細かく粉砕したカカオリカーの一部は油圧により圧縮した。圧縮ポットは約60グラムのリカー試料と共に90℃に加熱した。試料はポットに添加され、圧縮ポットは試料とともに実験室の油圧に圧縮した。圧縮は15分間続き、圧力は100バールから230バールに増加した。カカオ脂はプレス機から収集され、Whatman社の紙フィルタで濾過した。圧縮後、約35グラムの残りのカカオのプレスケーキは圧縮ポットから遊離した。このプレスケーキは小片に破壊され、切削粉砕機において所望の細粒に粉砕した。
【0074】
第8に、カカオリカーの一部を脱脂した。リカーにおける低重合体のポリフェノールの存在を決定するために、かつ更にリカーにおける脂肪の量の測定のために、10グラムの量のカカオリカーが低い空気圧下(1ないし2バール)の小さなシリンダにおいて、アイソパー溶液で脱脂された。
【0075】
〈分析〉
水中の懸濁液のpHは、標準的な産業上認容可能な方法によって測定した。豆、ニブ及び殻は含水量(又は、HOの割合)について分析したが、それは103℃で4時間乾燥時の質量の損失の割合であり、重量パーセント(重量%)として測定した。
【0076】
〈結論〉
豆の予洗後、殻の含水量は滅菌及び調製処理を開始する前であっても、ほぼ40重量パーセントないし55重量パーセントに増加した(表2参照)。調製後、殻の平均含水量は45重量パーセントであった。このように含水量が高いため、外部エネルギーが乾燥処理に要求され、殻の含水量は10%に低減する。噴射焙焼炉(流動層乾燥炉)を用いることによって、殻の含水量は120℃の焙焼温度で、30分で55重量パーセントから7.5重量パーセントに低減した。噴射焙焼炉の乾燥処理によって、低温かつ一定の空気圧でのマイラード反応のために、カカオリカーにおいて一般的な芳香族化合物を形成される可能性がある。乾燥処理後は、豆を脱殻することは、殻の含水量が少ない(12重量パーセント未満である)場合に容易になる。
【0077】
更なる因子が反応条件をさらに最適化すると見なしうる。例えば、1mm以下の微粒子の使用を回避すること、及び洗浄ステップ中にカカオ豆をブラッシングして砂を除去することである。
【0078】
[表2:固形部分の含水量(重量パーセント単位)]

IC−1は実験室規模で10%の水で処理されたコートジボワール産の1型の豆である。
【実施例2】
【0079】
《カカオリカー及びカカオの殻の予洗の効果》
〈分析〉
pH及び含水量(又は、重量パーセントで測定されるようなHOの割合)の分析は先の実施例に記載のように行われた(カカオリカーについては、Karl Fisher法が用いられた)。脂肪の量(脂肪の割合)は濃度測定法によって定量された。カカオリカーの湿性の篩残留物(75μ)は、開口部が75μm×75μmである篩を通過しない組成物の質量パーセントを測定することによって定量した。カカオリカーの湿性の篩残留物(125μ)は、開口部が125μm×125μmである篩を通過しない組成物の質量パーセントを測定することによって定量した。鉄、アルミニウム、及びケイ素のレベルはカカオリカーで定量した。
【0080】
カカオ豆は実施例1に記載のように調製した。アフラトキシン及びオクラトキシンのレベルはカカオリカー及びカカオの殻において定量した。
【0081】
〈結論〉
表3はN−liquor CS−1(洗浄せずにカカオ豆から加工したリカー)での基準値と比較した、異なる予洗条件でのカカオリカーの様々な特性を示す。基準と比較すると、金属の量は鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、及びケイ素(Si)については、標準加工のカカオよりも低かった。更に、有害な効果がpH、含水量、及び脂肪の量について見られなかった。
【0082】
[表3:総ての実験のカカオリカーの測定結果]

N−liquor CS1は工場で生成されたリカーであり、基準試料として用いた。
【0083】
水で希釈したカリ溶液で豆を予洗することによって、豆のカビを洗い流し、あるいは破壊し、殻上の、及びカカオリカーにおけるこれらの毒素を低減させる。表4に示すように、カリ溶液での処理によって、カカオの殻におけるオクラトキシンのレベルを低減させた。表3に示すように、毒素は洗浄した豆のカカオリカーで見出されなかった。
【0084】
[表4:カカオの殻における毒素に対する分析結果]

*未加工のカカオ豆由来であり、殻は処理なく豆から剥がれた。
【実施例3】
【0085】
《カカオ製品のポリフェノールの予洗の効果》
〈分析〉
低重合体のポリフェノールはHPLC法によって定量した。リカー由来の脂肪のない乾燥したカカオ粉末は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC、型番:Waters 6000)を用いて低重合体のポリフェノールの存在について分析した。HPLCは:a)5μ−C18型で、大きさ:250×4.60mmのHypersilカラム;b)オートサンプラー(型番:Waters 717 plus);c)フォトダイオードアレイ検出器(型番:Waters 996);及び、d)溶媒脱気装置(型番:Pio Lab SDU 2006);と連結した。
【0086】
〈結論〉
カカオ豆は実施例1に記載のように調製した。カリ溶液での予洗によって、カカオリカーのカカオ粉末から定量されるポリフェノールのレベルで明らかなように、カカオリカーにおけるポリフェノールは破壊されなかった。高レベルのポリフェノールが1重量パーセントないし5重量パーセントのカリ溶液で得られた(図1ないし4、及び表5参照)。カリ溶液は短時間では豆の殻と接触するのみであった。従って、溶液が殻を通り豆の核に浸透する可能性はほとんどない。ポリフェノールは豆の核に存在するが、殻にはないため、ポリフェノールがカリ溶液での予洗ステップ中に破壊される可能性はない。
【0087】
[表5:カカオ粉末のポリフェノールの分析]

【0088】
これらの結果は期待したものと異なっていた。1重量パーセントのKCO又は5重量パーセントのKCOで予洗した粉末は、0重量パーセント又は10重量パーセントのKCO溶液で予洗した粉末よりも多くの低重合体のプロシアニジンを含んだ。文献においては、ニブのアルカリ化は低重合体のプロシアニジンを破壊している。理論によって制限されるのを望まないが、KCO溶液と豆全体との間の短い接触時間は豆の核へのアルカリの浸透と、アルカリとその核内のポリフェノールとの反応とを阻害した可能性がある。
【実施例4】
【0089】
《カカオリカーの芳香族化合物の予洗の効果》
〈分析〉
様々な芳香族化合物がガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)によって定量された。
【0090】
〈結論〉
カカオ豆は実施例1に記載のように調製した。カカオリカー内の芳香族化合物はGC−MSで検出された。表6は様々な芳香族化合物のデータを提供する。予洗ステップはカカオリカーの芳香族化合物の一部に影響を及ぼした。図5Aないし5Fは、表6で「総ての試料の平均」と標識した列の数値と相対的なカカオリカーにおける芳香族化合物のレベルを示す。相対値は実際に定量した数値を取って、それを総ての試料の平均で除算することによって得た。
【0091】
[表6:カカオリカーにおける芳香族化合物(μg/kg)の分析の概要]

【実施例5】
【0092】
《カカオ粉末及びカカオリカーの色彩の予洗の効果》
〈分析〉
それ自体としての、あるいは水中のスラリーとしてのカカオ粉末の機器上の色彩評価は、色彩分光光度計で測定したL*値、C*値、及びh値で表わされる。L*値、a*値、及びb*値はCIE1976の式を用いてCIEのX値、Y値、及びZ値から算出される。C*値及びh値は以下の式によってa*値及びb*値から算出される:

L*値は明度/暗度の座標を示し、低い値は暗い色彩を示し、高い値は明るい色彩を示す。a*値は赤色/緑色の座標を示し、+a*は赤色を示し、−a*は緑色を示す。b*値は黄色/青色の座標を示し、+b*は黄色を示し、−b*は青色を示す。C*値は彩度の座標を示し、輝度を示し、高い数値は輝度の高い色彩を示す。h値は色相角を示し、数値が低くなると、赤色度の増加を示し、数値が高くなると黄色度の増加を示す。これらの実施例で用いられる分光光度計は、Datacolor Spectraflash500の色彩分光光度計であり、反射を除外したd/8の測定幾何学、D65光源、10度視野、水晶フローキュベット、チュービングポンプシステムを有する。
【0093】
以下のプロトコルは水中のカカオ粉末の固有の色彩を測定するのに用いた。カカオ豆は実施例1に記載のように調製した。約7.5±0.1gのカカオ粉末は、滑らかなスラリーを形成するために100mlの脱塩水と50℃で混合した。10分間の連続的な攪拌の後に、更に50mlの脱塩水を室温で添加した。1分間の連続的な攪拌の後に、懸濁液は水晶フローキュベットを通って汲み出され、L*値、C*値、及びh値は較正した色彩分光光度計で読み取って記録した。
【0094】
以下のプロトコルは乾燥カカオ粉末の固有の色彩を測定するのに用いた。水晶キュベットはカカオ粉末の試料で充填し、注意深く突き固めた。更なるカカオ粉末はキュベット全体を均一に充填するように添加した。キュベットは照射ウィンドウに対向して配置され、較正した色彩分光光度計はL*値、C*値、及びh値を読取り記録した。
【0095】
[表7:様々なカカオ製品の色彩測定の概要]

【0096】
〈結論〉
表7はN−liquor CS−1(洗浄せずにカカオ豆から加工したリカー)での基準値と比較した、異なる予洗条件でのカカオ粉末及びカカオリカーの様々な色彩測定を示す。異なる予洗条件はカカオ製品の色彩に有害な影響を与えなかった。
【実施例6】
【0097】
《カカオ脂の予洗の効果》
〈分析〉
遊離脂肪酸の量(FFA)はオレイン酸の割合で表わされ、オレイン酸を中和するのに必要な塩基の量を定量することによって決定された。カカオ脂のヨウ素価(IV)はWijs法によって定量され、IVは100gの脂肪に吸収され、かつヨウ素の重量として表わされるハロゲンのグラム数である。
【0098】
〈結論〉
カカオ豆は実施例1に記載のように調製した。この実施例はカカオ豆における高含量のFFA値が豆の予洗によって低減できることを実証した。驚くべきことに、アルカリ性溶液が豆の洗浄に用いられる場合に特に、予洗のFFAの効果が強くなる。表8はカカオ脂のFFAが低減したことを示し、脂の品質が更なる加工の前に豆をアルカリ又は水で洗浄することによって改善されたことを意味している。
【0099】
[表8:カカオ脂の分析結果]

【実施例7】
【0100】
《未加工のカカオ豆を調製及び予洗するためのスケールアップ実験》
〈方法〉
一般的には、大規模な予洗実験は遊離脂肪酸の量(FFA)が高い100kgないし200kgの投入量のコートジボワール産の豆を用いた。第1に、豆は、底部を穿孔処理した大きな木製の箱に保存した。第2に、豆は水道水又はカリ溶液で洗浄され、高温の水道水の槽ですすがれた。カリ溶液の濃度は5重量パーセントであった。温度は洗浄及びすすぎ時に20℃又は60℃であった。洗浄及びすすぎステップの後に、カカオ豆は空気で乾燥させた。乾燥した豆は更に、カカオリカー、カカオ脂、及びカカオ粉末といった様々なカカオ製品に加工された。これらのカカオ製品は更に以下に記載のように分析した。
【0101】
〈機器〉
カカオ豆の予洗及び乾燥をスケールアップするために、大きな木製の箱は100ないし1,000kgのカカオ豆で充填した。貯蔵部は、カカオ豆で充填した2の木製の箱が同時に内部配置できるように4,000リットルの水で充填した。洗浄及びすすぎステップの後に、容量が1時間に10,000mの送風機を用いて、カカオ豆の乾燥のために乾燥空気を供給した。
【0102】
予洗及び乾燥処理のスケールアップ後に、カカオ豆は更に実験室規模で加工した。破砕機、風選機、及びふるいを用いて、乾燥した豆からニブと殻とを生成した。空気循環式の乾燥炉を用いて、ニブを滅菌及び調製した。直接接触式の噴射焙焼炉(実験室規模の流動層乾燥炉/焙焼炉)を用いて、一定の空気圧及び温度での高温の乾燥空気によって密封したキャビンで豆を焙焼した。ほとんどの熱が加熱するキャビンに維持されるため、80℃ないし120℃の温度で製品を乾燥又は焙焼させることが可能であった。
【0103】
家庭用のコーヒーミルを焙焼したニブの第1の粉砕用に用いた。実験室のとろこね機(Retch社、型番:RMO)をカカオリカーの第2の(細かい)粉砕用に用いた。水圧式のプレス機を用いて、カカオリカーをカカオ脂とカカオのプレスケーキとに分離した。Retsch社の切削粉砕機を用いて、カカオのプレスケーキを微粉砕して、孔が0.5及び0.25mmのふるいを用いて粉末にした。
【0104】
〈未加工材料及び試薬〉
コートジボワール産の豆を100%用い、遊離脂肪酸の量の平均は4.2%であった。アルカリ溶液は60℃の水道水で5重量パーセントに調製した。
【0105】
〈反応条件〉
実験1については、FFAが高い200kgの投入量のコートジボワール産の豆を用いた。第1に、カカオ豆は底部を穿孔処理した大きな木製の箱に保存した。第2に、カカオ豆は15℃の低温の水道水の槽で5分間洗浄した。第3に、カカオ豆は22℃ないし25℃の空気で120分間乾燥させた。流入空気の温度は17℃であり、流入空気の相対湿度は80%であった。
【0106】
実験2については、FFAが高い100kgないし200kgの投入量のコートジボワール産の豆を用いた。第1に、カカオ豆は底部を穿孔処理した大きな木製の箱に保存した。第2に、カカオ豆は60℃の高温の水道水の槽で5分間洗浄した。第3に、木製の箱内のカカオ豆は22℃ないし25℃の空気で110分間乾燥させた。流入空気の温度は20℃であり、流入空気の相対湿度は70%であった。
【0107】
実験3については、FFAが高い100kgないし200kgの投入量のコートジボワール産の豆を用いた。第1に、カカオ豆は底部を穿孔処理した大きな木製の箱に保存した。第2に、カカオ豆は60℃の5重量パーセントのKCOの予洗液で5分間洗浄した。第3に、カカオ豆は60℃の高温の水道水の槽で5分間すすがれた。第4に、木製の箱内のカカオ豆は22℃ないし25℃の空気で120分間乾燥させた。流入空気の温度は20℃であり、流入空気の相対湿度は70%であった。
【0108】
基準については、FFAが高い100kgないし200kgの投入量のコートジボワール産の豆を用いた。これらのカカオ豆は予洗又はすすぎをしなかった。
【0109】
〈分析〉
豆、ニブ及び殻は含水量(又は、HOの割合)について分析したが、それは103℃で4時間乾燥時の質量の損失の割合であり、重量パーセント(重量%)として測定した。
【0110】
[表9:固形部分の含水量(重量%)及び乾燥した豆の破壊作用]

【0111】
〈結論〉
豆の予洗の1の予想される弱点は、殻の含水量が洗浄及び/又はすすぎステップ後にほぼ35重量パーセントないし55重量パーセントに増加しうることである。表9の実験2及び3に示されるように、豆の破壊作用は殻及びニブの高い含水量のために有効ではなかった。第1の破壊ステップ後には、ほぼ30%の豆が非常に軟らかく、非常に容易に湾曲するため、小片に破壊できなかった。豆はいくつかの破壊の試行後に最終的には破壊された。
【0112】
高い含水量を10重量パーセントないし12重量パーセントに低減するために、カカオ豆は高温の空気(100℃を超える)で乾燥させることができる。これは外部エネルギーと長い乾燥時間が必要である。しかしながら、豆を乾燥することによって、他のカカオ製品への豆の更なる加工が促進される。予洗したカカオ豆の良好な破壊及び風選動作を促進するために、カカオ豆は、カカオの殻の含水量が12%未満になるまで乾燥できる。更に、乾燥した豆の含水量は7%未満にすべきである。乾燥時間を短くするために、カカオ豆は低湿度の高温の空気で乾燥できる。
【実施例8】
【0113】
《スケールアップ実験におけるカカオリカー及びカカオの殻の予洗の効果》
〈分析〉
豆、ニブ及び殻は含水量(又は、HOの割合)について分析したが、それは103℃で4時間乾燥時の質量の損失の割合であり、重量パーセント(重量%)として測定した。カカオリカーのpHは、標準的な産業上認容可能な方法によって測定した。脂肪の量(脂肪の割合)はソックスレーの抽出法によって定量し、測定値は脂肪と石油エーテルで抽出可能な他の成分とに対する質量パーセントの量で与えられる。カカオの殻及びカカオリカーは鉄の総量(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、オクラトキシンA、及びカリウム(K)について分析した。
【0114】
〈結論〉
カカオ豆は実施例7に記載のように調製した。実験室の分析は予洗処理の有無で豆から生成されるリカーにおける重金属及び毒素の濃度について大きな差異を同定しなかった。結果は表10及び表11に示される。
【0115】
[表10:スケールアップ実験でのカカオの殻に対する分析結果]

【0116】
[表11:スケールアップ実験でのカカオリカーの分析結果]

【実施例9】
【0117】
《スケールアップ実験におけるカカオ豆及びカカオ脂の予洗の効果》
〈分析〉
遊離脂肪酸の量(FFA)はオレイン酸の割合で表わされ、オレイン酸を中和するのに必要な塩基の量を定量することによって決定された。FFAを定量するための滴定法においては、約5ないし10gの液体のカカオ脂が250mlの三角フラスコに注入された。約50mlのジエチルエーテルとエタノールとの混合物は回旋することによってカカオ脂を溶解するのに用いた。ジエチルエーテルとエタノールとの混合物は3部のジエチルエーテル(p.a.)と2部のエタノール(p.a.96%)との混合によって得られ、使用前に、フェノールフタレインに対して0.1NのKOH溶液で中和した。次いで、数滴の1%のフェノールフタレインのエタノール溶液を添加した。混合物は0.1NのKOH(Normality T)で終了点、すなわち、ピンク色が少なくとも10秒間持続するまで滴定した。滴定中に用いられるKOHの量はml単位で記録した。FFAはオレイン酸で表わされ、式ffa =28.2×T×V/mで算出する。Tは標準化したKOH溶液の規格度であり、Vは標準化したKOH溶液のミリリットル(ml)であり、mはカカオ脂試料の質量(g)である。
【0118】
豆及びニブのHOの割合については、5グラムの粉砕した材料を103℃で4時間乾燥させ、前後で秤量した。リカーはKarl Fisher滴定によって測定した。脂肪の量については、材料は溶剤で抽出したが、カカオ脂に対する密度が異なっている。密度を測定し、脂の量と相関させる。FT−NIR法(フーリエ変換近赤外分光法)は−COOH基、又は炭化水素の二重結合若しくは三重結合を測定するのに用いた。カカオ脂のヨウ素価(IV)は、100gの脂肪に吸収され、かつヨウ素の重量として表わされるハロゲンのグラム数である。
【0119】
〈結論〉
カカオ豆は実施例7に記載のように調製した。表12に示すように、カカオ豆における高い含量のFFAの値は豆の予洗によって低減できる。しかしながら、予洗はカカオ豆の脂肪の量(脂肪の割合)に影響を与えなかった。
【0120】
[表12:洗浄及び乾燥後の豆の分析結果]

【0121】
これらの実験においては、初期のFFA値はカカオ豆の予洗後に32%に低減した。最終的なカカオリカーでのカカオ脂のFFAは2.9%に低減し、初期のカカオ豆のFFAは4.1%であった(表13参照)。予洗ステップは更に、低品質の豆の高いFFA値を1.5%という所望の値に低減するように最適化できる。
【0122】
[表13:スケールアップ実験におけるカカオ脂の分析の比較]

【実施例10】
【0123】
《スケールアップ実験における色彩測定の予洗の効果》
〈分析〉
色彩測定は実施例5に記載のように定量した。
【0124】
〈結論〉
カカオ豆は実施例7に記載のように調製した。水及びカリでの予洗はリカー及び粉末の最終的な色彩に影響を及ぼさなかった。理論によって制限されるのを望まないが、予洗ステップはあまりに短く、カリ濃度があまりにも低いため、カカオ豆中の様々なポリフェノールに影響を与えなかった可能性がある。
【0125】
[表14:スケールアップ実験の総ての色彩測定の概要]

【実施例11】
【0126】
《スケールアップ実験におけるカカオリカーの芳香の予洗の効果》
〈分析〉
様々な芳香族化合物はガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)によって定量した。
【0127】
〈結論〉
カカオ豆は実施例7に記載のように調製した。予洗は同様にカカオリカーの匂いの特性に影響を与えなかった(表15参照)。図6Aないし6Cはスケールアップ実験のためのカカオリカーにおける芳香族化合物のレベルを示す。これらのレベルは表15で「基準」と標識された列の数値と相対的である。相対値は実際に定量した数値を取って、それを基準のカカオリカーについて定量した数値で除算することによって得た。
【0128】
[表15:カカオリカーの芳香分析(総ての濃度はμg/kg単位)]

基準試料は実験室規模で未処理の豆から生成したリカー試料であり、KA Massaは我々がこの分析用の標準として用いる特異的なリカーであり、LODは検出限界である。
【実施例12】
【0129】
《スケールアップ実験におけるカカオリカーの香り及び匂いの予洗の効果》
〈分析〉
カカオリカーの匂いは基準として標準試料を用いて評価したが、評価は記述的検査と差異の検査(組合せの比較検査)との組合せである。カカオリカーは様々な感覚的局面及び匂いの特徴について評価され、カカオ;苦み;薄いのとは対照的な十分な匂いの強度である濃さ;芳香性の特徴、花のような特徴、及び果物のような特徴といったカカオの特徴以上の総ての匂いのヨウ素をカバーする一般的用語である、芳香性;酸性;糖の歪みとして説明される渋味;及びこげた、かつ粗い芳香性の味である刺激性;を含む。任意の異臭に更に注意した。
【0130】
〈結論〉
カカオ豆は実施例7に記載のように調製した。表16は基準試料のカカオリカーの実験1で得られたカカオリカーとの比較を示す。実験1では、カカオ豆は17℃の冷水で5分間すすがれ、22℃ないし25℃の空気で乾燥した。基準試料は未処理の豆である。表16に示されるように、基準のカカオリカーと実験1で得られたカカオリカーとの間の香り及び味の差異は1.4である。しかしながら、この差異は3.0の製造規格内にある。基準試料はわずかに実験1と比較して、酸性度が高い(0.4)一方で、実験1の試料はわずかに苦み(0.6)、渋味(0.4)、酸性度(0.2)が高かった。実験1の試料の異臭は更に0.4であり、不明と述べられた。
【0131】
[表16:熱水における基準のカカオリカーと比較した香り及び匂いの試験]

【0132】
表17は基準試料のカカオリカーの実験2及び実験3で得られたカカオリカーとの比較を示す。
【0133】
[表17:熱水における基準のカカオリカーと比較した香り及び匂いの試験]

【0134】
実験2では、カカオ豆は60℃の熱水で5分間すすがれ、22℃ないし25℃の空気で乾燥した。表17に示されるように、基準のカカオリカーと実験2で得られたカカオリカーとの間の香り及び味の差異は2.0である。しかしながら、この差異は3.0の製造規格内にある。基準試料はわずかに実験1と比較して、カカオっぽさ(0.4)、酸性度(0.4)、芳香性(0.2)が高かった。実験1の試料はわずかに苦み(0.6)、渋味(0.2)が高かった。実験1の試料の異臭は更に1.4であり、不明、石けん風、酸敗臭、樟脳っぽい、及び粗雑と述べられた。
【0135】
実験3では、カカオ豆は60℃の熱水で5分間洗浄され、60℃の5重量パーセントのカリ溶液で5分間すすがれ、22℃ないし25℃の空気で乾燥した。表17に示されるように、基準のカカオリカーと実験3で得られたカカオリカーとの間の香り及び味の差異は2.2である。しかしながら、この差異は3.0の製造規格内にある。基準試料はわずかに実験3と比較して、カカオっぽさ(0.4)、酸性度(0.4)、苦み(0.2)、酸性度(0.2)、芳香性(0.2)が高かった。実験3の試料はわずかに渋味(0.2)が高かった。実験1の試料の異臭は更に1.8であり、不明、かび臭い、アンモニア臭、消毒薬っぽい、こげた匂いと述べられた。
【実施例13】
【0136】
《カカオ豆の色彩選別》
2キログラムのカカオ豆を手で選別した。選別前は、カカオ豆の遊離脂肪酸の量は約3.10%であった。豆は選別され、以下の量のカカオ豆を得た:約76.9%の褐色の豆(FFAの量2.11%)、約13.5%の褐色/黒色の豆の混合(FFAの量6.9%)、及び9.6%の黒色の豆(FFAの量9.91%)。
【0137】
自然発生(incoming)のFFAの量が4.5%の73メートルトン(mT)のカカオ豆は、英国ウィンチェスターのRadix Systems社から入手可能なRADIX AUTOSORTブランドの色彩選別機で色彩選別した。色彩選別機はカカオ豆を認識し、カカオ豆が黒色(波器)及び褐色(維持)であるのを選別するように仕込んだ。
【0138】
豆は4の初期分類に選別した:
1)FFAの量が2.85%の18.7mTの褐色の豆を維持した(92%が実際に褐色であり、8%が実際は黒色であった);
2)FFAの量が3.74%の13.9mTの豆は細粒の量が多く、破棄した;
3)FFAの量が1.79%の22mTの褐色の豆を維持した;
4)FFAの量が5.81%の18.4mTの黒色の豆を破棄した(76%が実際に黒色であり、24%が実際は褐色であった)
分類1)のカカオ豆はふるいにかけて、1.2mT(FFAの量6.4%)が細粒であるとして破棄し、分類1)の残余の17.5mT(FFAの量1.74%)は分類3)のカカオ豆と組合わせ、全部で39.5mTの許容されたカカオ豆となり、FFAの量は1.76%であった。
【0139】
39.5mTの許容されたカカオ豆はFFAの量が1.2%、凝固時間が54のカカオリカーに加工し、FFAの量が2.11%であり、凝固時間が120を超えるカカオ脂に圧縮され、カカオ脂は濾過してFFAの量が1.56%であり、凝固時間は120を超えるカカオ脂となり、濾過されたカカオ脂は脱臭され、FFAの量が1.49%であり、凝固時間が120を超えるカカオ脂となった。
【0140】
従って、この実施形態は、細粒を除去するためにカカオ豆をふるいにかけるのと選択的に組合わせた、黒色の又は濃い豆を除去するためのカカオ豆の色彩選別で遊離脂肪酸の量の低減したカカオ製品が得られることを示す。
【0141】
本発明は、特定の代表的及び例示的な実施形態、組成物及びその使用について説明してきた。しかしながら、例示的な実施形態の任意の様々な代替物、変形物又は組合せは、発明の範囲を逸脱することなくなされうることは当該技術分野の当業者に理解されよう。従って、本発明は代表的及び例示的な実施形態の説明ではなく、添付の特許請求の範囲に限定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ豆から不純物を除去する方法、前記カカオ豆のカカオ脂における遊離脂肪酸を低減する方法、又はその組合せの方法であって、当該方法が:
カカオ豆を予洗液と接触させるステップと;
前記予洗液から前記カカオ豆を除去するステップと;
予洗した前記カカオ豆をカカオリカーに加工するステップと;
を具え、予洗したカカオから生成した前記カカオリカーは、前記予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーと比べて、金属の量、カビ毒の量、遊離脂肪酸の量、又はその任意の組合せが低減することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記予洗液が0重量パーセントないし20重量パーセントのアルカリを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法において、前記予洗液のpHが8ないし12.5であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法において、前記予洗液の温度が15℃ないし90℃であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法において、前記カカオ豆が前記予洗液と接触するのが30分未満であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法において、前記カカオリカーのpHが6.0未満であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法が、前記予洗したカカオ豆をすすぐステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法が、前記予洗したカカオ豆を乾燥させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、乾燥させた前記カカオ豆の水の含水量が12%未満であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法において、前記カカオ豆が未加工であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法において、前記予洗したカカオ豆をカカオリカーに加工するステップが:
前記予洗したカカオ豆を焙焼するステップと;
前記予洗したカカオ豆から殻を除去し、ひいてはカカオニブを生成するステップと;
前記カカオニブを粉砕して前記カカオリカーにするステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記カカオニブの水の含水量が8%未満であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法において、前記カカオリカーから分離されるカカオ脂の遊離脂肪酸の量が、1.75%未満であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法において、前記カカオ豆が発酵していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1又は3ないし14のいずれか1項に記載の方法において、前記予洗液が水であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法において、前記予洗したカカオ豆から得た前記カカオリカーのポリフェノール量が、前記予洗液と接触させないカカオ豆から得たカカオリカーのポリフェノール量以上であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法が、前記カカオ豆からダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を除去するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法によって生成されるカカオリカー、カカオ脂、又はカカオ粉末。
【請求項19】
請求項18に記載のカカオリカー、カカオ脂、又はカカオ粉末を含む食品であって、当該食品がチョコレート、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、セミスイートチョコレート、料理用チョコレート、トリュフ、キャンディーバー、フレーバーシロップ、製菓用コーティング、飲料、ミルク、アイスクリーム、豆乳、ケーキ、クッキー、パイ、ダイエットバー、食事代用型の固形食及び飲料、エネルギーバー、チョコレートチップス、ヨーグルト、プディング、ムース、ならびにモレからなる群から選択されることを特徴とする食品。
【請求項20】
カカオ含有組成物を生成するためのシステムであって:
カカオ豆と;
予洗液と;
前記カカオ豆を前記予洗液と接触させる手段と;
洗浄したカカオ豆;
とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、未処理の前記カカオ豆を前記予洗液と接触させる手段が、前記予洗液を含む貯蔵部を具えることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項20又は請求項21に記載のシステムにおいて、前記予洗液が0重量パーセントないし20重量パーセントのアルカリを含むことを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項20ないし22のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記予洗液のpHが8ないし12.5であることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項22又は請求項23に記載のシステムにおいて、前記アルカリがKCO、KHCO、カリ、又はその任意の組合せを含むことを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項20ないし24のいずれか1項に記載のシステムが:
前記洗浄したカカオ豆から殻を除去するための装置と;
カカオニブを粉砕するための粉砕部と;
カカオリカーと;
を含み:
前記洗浄したカカオ豆のカカオリカーから得たカカオ脂の遊離脂肪酸の量が、前記予洗液と接触させないカカオ豆から得たカカオ脂よりも少ないか;
前記カカオリカー中のFe、Al、及び/又はSiの量が前記予洗液と接触させないカカオ豆から生成したカカオリカーよりも少ないか;あるいは
その組合せか;
であることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記洗浄したカカオ豆から得た前記カカオ脂の遊離脂肪酸の量が1.75%未満であることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項20ないし26のいずれか1項に記載のシステムが、15℃ないし90℃の温度で前記予洗液を維持するための発熱体を更に具えることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項20ないし27のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記カカオリカーの:
鉄の量が50mg/kg以下であるか;
アルミニウムの量が20mg/kg以下であるか;
ケイ素の量が0.02重量パーセント以下であるか;あるいは
その任意の組合せか;
であることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項20ないし28のいずれか1項に記載のシステムが、前記カカオ豆からダークカカオ豆又はブラックカカオ豆を除去するためのデバイスを更に具えることを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−510274(P2012−510274A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538708(P2011−538708)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066050
【国際公開番号】WO2010/063021
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(591079443)アーチャー ダニエルズ ミッドランド カンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】ARCHER DANIELS MIDLANDCOMPANY
【Fターム(参考)】