説明

プレート積層構造、プレート補強構造、プレート接続構造及びプレート積層方法

【課題】材質が異なるプレート同士を積層しスポット溶接によって接合する。
【解決手段】第1プレート材1の両面に、互いにスポット溶接可能な第2プレート材2と第3プレート材3とを重ねる。第1プレート材1は、第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されていて、位置決め孔4を有する。第2プレート材2及び第3プレート材3の少なくとも一方には、第1プレート材1の位置決め孔4に対応する位置決め突起5を形成する。位置決め突起5を第1プレート材1の位置決め孔4に嵌め、第2プレート材2と第3プレート材3とを、第1プレート材1の位置決め孔4に嵌められた位置決め突起5においてスポット溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接を利用したプレート積層構造、プレート補強構造、プレート接続構造及びプレート積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接は鋼材同士の溶接に多く利用されているが、近年は機械・器具の軽量化の観点からアルミニウム等の軽量材料を利用すべく、材質が異なる2枚のプレートをスポット溶接によって接合する試みがなされている。例えば特許文献1には、亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム板とをスポット溶接して、その接合界面の鋼板側にAlFe系化合物層を形成し、アルミニウム板側にAlFe系化合物層を形成することが記載されている。しかし、そのような金属間化合物は一般に脆いことが知られている。
【0003】
これに対して、2枚の鋼板の間にアルミニウム板を挟んで三層に重ね、この重ね部を一対の電極で挟持し、圧力を加えつつ両電極間に大電流を短時間流すことにより、このスポット溶接域のアルミニウム板の溶融部を排除して2枚の鋼板を直接的にスポット溶接する試みもなされている(特許文献2,3参照)。また、アルミニウム板に予め孔を形成しておき、この孔にリベット状の締結用チップを差し込んで鋼板に接触させ、その状態で締結用チップの頭部と鋼板とを一対の電極で挟持し通電することにより、締結用チップと鋼板とを溶接すること、そのことによって、アルミニウム板と鋼板とを締結することも知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260777号公報
【特許文献2】特開平09−85454号公報
【特許文献3】特開2003−236673号公報
【特許文献4】特開2003−145279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、2枚の鋼板間のアルミニウム板をスポット溶接によって部分的に溶融させて排除する方法では、その溶融したアルミニウム液が鋼板とアルミニウム板との隙間から周囲に飛び散るという問題がある。さらに、2枚の鋼板間にアルミニウムが一部残って接合強度の低下を招くという問題もある。また、このようなスポット溶接方法は、2枚の鋼板間にアルミニウムのような金属板を挟むことには適用することができても、非導電性のプラスチック板を挟む場合には適用することができない。
【0006】
また、締結用チップを鋼板に溶接してアルミニウム板と鋼板とを締結する方法では、大きな板材になると、その締結のために多数の締結用チップを必要とし、部品点数が多くなるとともに、個々の締結用チップをアルミニウム板の孔に嵌める作業も面倒になる。
【0007】
そこで、本発明は、金属製プレート同士の積層だけでなく、金属製プレートとプラスチックのような非導電性プレートとの積層をも、スポット溶接によって簡単に実施できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、スポット溶接可能な2枚のプレート材間に中間プレート材を挟み、上記2枚のプレート材のうちの少なくとも一方のプレート材に設けた位置決め突起を中間プレート材の位置決め孔に嵌めて、他方のプレート材に溶着させるようにした。
【0009】
すなわち、上記課題を解決する手段は、1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材の両面に、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とが積層されているプレート積層構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されていて、少なくとも一つの位置決め孔を有し、
上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方には、上記第1プレート材の位置決め孔に対応する位置決め突起が形成されており、
上記位置決め突起が上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められ、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【0010】
従って、第2プレート材と第3プレート材とが第1プレート材の位置決め孔を介して直接溶着し、その溶着部には異質の第1プレート材は一切介在しないから、その溶着強度が高いものになり、その結果、上記3枚のプレート材の接合が強固になる。しかも、第1プレート材の位置決め孔と第2プレート材又は第3プレート材の位置決め突起との嵌合により、それらプレート材同士の位置ずれが防止され、溶接前のプレート材同士の組立に有利になる。
【0011】
第1乃至第3プレート材の材質は、例えば、第1プレート材をアルミニウム材(アルミニウム合金を含む)とし、第2プレート材及び第3プレート材を鋼製とすることができる。しかし、第2プレート材と第3プレート材とを第1プレート材の位置決め孔を介して溶着させるようにしたから、第1プレート材自体は導電性を有する必要がなく、プラスチック等の非導電性のプレートを第1プレート材とすることもできる。
【0012】
当該手段のとりわけ特徴的な点は、プレート材同士を組み立てるための位置決め孔及び位置決め突起を利用して、第2プレート材と第3プレート材とを、中間に第1プレート材を挟んで直接溶着させるようにしたことである。そのため、上述の如く、スポット溶接の際のプレート材の位置決め保持に有利になるとともに、ビス等の締結部材を用いることなく、強固なプレート積層構造を得ることができ、しかも非導電性のプレート材をも積層することができるようになる。
【0013】
上記位置決め孔及び対応する位置決め突起は、少なくとも一組あればよい。位置決め孔及び位置決め突起を一組だけにする場合は、第1プレート材と第2プレート材又は第3プレート材との相対的な回転を防止するために、位置決め孔及び位置決め突起断面の形状を楕円形等の非真円形にすることが好ましい。複数組の位置決め孔及び位置決め突起を設ける場合は、上記形状を真円形にしても上記相対回転を防止することができる。なお、複数組の位置決め孔及び位置決め突起を設ける場合でも、少なくとも一つの位置決め突起において第2プレート材と第3プレート材とを溶着すればい。
【0014】
第1プレート材の1つの位置決め孔に対応する位置決め突起は、第2プレート材及び第3プレート材のいずれか一方のみに設けるようにしても、或いは第2プレート材及び第3プレート材の両方に設けるようにしてもよい。後者の場合は、第2プレート材の位置決め突起と第3プレート材の位置決め突起とは、第1プレート材の位置決め孔に互いに反対側から嵌り、該位置決め孔内で溶着させることになる。また、第1プレート材は、1枚のプレートによって構成してもよいが、複数枚のプレートを重ねて構成することもできる。
【0015】
上記解決手段の好ましい態様の一つは、1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材が、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とによって補強されているプレート補強構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されていて、複数の位置決め孔を有し、
上記第1プレート材の複数の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記第1プレート材の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【0016】
このプレート補強構造も、第1乃至第3のプレート材の関係は上記プレート積層構造の同関係と同じであり、該プレート積層構造と同様の作用効果が得られ、各プレート材の材質等も上記プレート積層構造と同様にすることができる。
【0017】
そうして、当該プレート補強構造によれば、第1プレート材とは異なる材質の補強用第2プレート材及び第3プレート材を結合するにも拘わらず、その結合がスポット溶接によって行なわれるから、ビス等の締結部材を用いる必要がない。しかも、第2プレート材と第3プレート材とをその間に第1プレート材を挟んだ状態で直接溶着させるから、第1プレート材に対する第2及び第3のプレート材の結合が強固なものになる。
【0018】
この場合、例えば第2プレート材及び第3プレート材をリブプレートとして第1プレート材の面強度を高めることができ、或いは第2プレート材及び第3プレート材によって第1プレート材の局部的な補強を図ることができる。
【0019】
上記解決手段の好ましい他の態様は、各々1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材2枚が、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とによって接続されているプレート接続構造であって、
上記2枚の第1プレート材各々は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料によって形成されていて、各々の端部に複数の位置決め孔を有し、
上記第2プレート材及び第3プレート材各々は、上記2枚の第1プレート材の両面から、この2枚の第1プレート材の両端部に跨るように重ねられ、
上記両第1プレート材各々の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記2枚の第1プレート材各々の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記2枚の第1プレート材各々の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【0020】
このプレート接続構造も、第1乃至第3のプレート材の関係は上記プレート積層構造の同関係と同じであり、該プレート積層構造と同様の作用効果が得られ、各プレート材の材質等も上記プレート積層構造と同様にすることができる。
【0021】
そうして、当該プレート接続構造によれば、2枚の第1プレート材の接続に、該第1プレート材とは異なる材質の第2プレート材及び第3プレート材を用いるにも拘わらず、ビス等の締結部材を用いることなく、スポット溶接によってその接続を実施するできる。しかも、第2プレート材と第3プレート材とをその間に第1プレート材を挟んだ状態での直接溶着によって強く結合することができるから、結果的に2枚の第1プレート材同士を強固に接続することができるようになる。
【0022】
上記解決手段の好ましいさらに別の態様は、1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材と第2プレート材とが、該第2プレート材とスポット溶接可能な第3プレート材によって接続されているプレート接続構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料によって形成されていて、その端部に複数の位置決め孔を有し、
上記第2プレート材は、その端部が上記第1プレート材の複数の位置決め孔を有する端部に重ねられ、
上記第3プレート材は、上記第1プレート材の位置決め孔を有する端部に対して、上記第2プレート材とは反対側から重ねられ、
上記第1プレート材の複数の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記第1プレート材の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【0023】
このプレート接続構造も、第1乃至第3のプレート材の関係は上記プレート積層構造の同関係と同じであり、該プレート積層構造と同様の作用効果が得られ、各プレート材の材質等も上記プレート積層構造と同様にすることができる。
【0024】
そうして、当該プレート接続構造によれば、第1プレート材と、該第1プレート材とは異なる材質の第2プレート材とを、ビス等の締結部材を用いることなく、スポット溶接によって接続することができる。しかも、第2プレート材と第3プレート材とをその間に第1プレート材を挟んだ状態での直接溶着によって強く結合することができるから、結果的に第1プレート材と第2プレート材との接続が強固なものになる。
【0025】
上記プレート積層構造、プレート補強構造及びプレート接続構造は、次のプレート積層方法を実行することによって得ることができる。
【0026】
すなわち、1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材の両面に、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とを積層するプレート積層方法であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されており、
上記第1プレート材には、少なくとも一つの位置決め孔を形成し、
上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方には、上記第1プレート材の位置決め孔に対応する位置決め突起を形成し、
上記第1プレート材乃至第3プレート材を、上記位置決め突起が上記位置決め孔に嵌まるように重ね、
上記第2プレート材と第3プレート材とを、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着させることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、プレート材同士を組み立てるための位置決め孔及び位置決め突起を利用して、第2プレート材と第3プレート材とを、その間に第1プレート材を挟んで、スポット溶接によって直接溶着させるようにしたから、スポット溶接の際のプレート材の位置決め保持に有利になるとともに、ビス等の締結部材を用いることなく、強固なプレート積層構造を得ることができ、しかも非導電性のプレート材をも積層することができ、プレート材の補強や、プレート材同士の接続に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1に係るプレート補強構造の斜視図である。
【図2】同形態のプレート積層構造の断面図である。
【図3】同形態の第1〜第3のプレート材とスポット溶接用電極との関係を示す断面図である。
【図4】同形態のスポット溶接が行われている状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係るプレート接続構造の一例を示す斜視図である。
【図6】同形態に係るプレート接続構造の他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態3に係るプレート接続構造の一例を示す斜視図である。
【図8】同形態に係るプレート接続構造の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態4の第1〜第3のプレート材とスポット溶接用電極との関係を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態5の第1〜第3のプレート材とスポット溶接用電極との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
<実施形態1>
この実施形態1はプレート補強構造に本発明を適用したものである。図1において、1は補強すべき第1プレート材、2は当該補強のための第2プレート材、3は同じく補強のための第3プレート材である。第2プレート材2及び第3プレート材3は、金属製(例えば鋼製)であり、互いにスポット溶接可能である。本例の場合、第2プレート材2及び第3プレート材3は、第1プレート材1にリブを形成してその補強を図るべく、細長いプレートによって形成されている。第1プレート材1は、第2プレート材2及び第3プレート材3とは異なり、例えばアルミニウム材等の軽量合金や、プラスチックによって形成することができる。
【0031】
細長い第2プレート材2及び第3プレート材3は、第1プレート材1の両面に互いに対応するように重ねられ、プレート長手方向に間隔をおいた複数箇所が、第1プレート材1の位置決め孔を介して、互いにスポット溶接されている。図1において、第2プレート材2に×印を付けた部位がスポット溶接箇所である。
【0032】
スポット溶接箇所におけるプレート積層構造は図2に示されている。すなわち、第1プレート材1には、該プレート材を貫通する位置決め孔4が、スポット溶接をすべき各位置に対応して複数の箇所に形成されている。第2プレート材2には、第1プレート材1の複数の位置決め孔に対応する位置決め突起5が複数の箇所に形成されている。位置決め孔4は、必要に応じて、第2プレート材2或いは第3プレート材3の長手方向に長い長孔とし、第1プレート材1と第2及び第3の両プレート材2,3との熱膨張差を吸収できるようにする。
【0033】
図3に示すように、第1プレート材1の位置決め孔4は、孔内面にテーパが付けられた皿状孔に形成されている。一方、第2プレート材2の位置決め突起5は、プレスによる張出し加工によって形成されていて、位置決め孔4の孔内面形状に対応するテーパを有する。この第2プレート材2の位置決め突起5が、第1プレート材1の位置決め孔4に嵌められ、突起先端面が第3プレート材3の位置決め突起が形成されていない面にスポット溶接によって溶着している。図2において、6はスポット溶接よるナゲットである。
【0034】
スポット溶接にあたっては、図3及び図4に示すように、第1乃至第3のプレート材1〜3を、第2プレート材2の位置決め突起5が第1プレート材1の位置決め孔4に嵌まって第3プレート材3に接触するように重ねる。位置決め突起5と位置決め孔4との嵌合により、第1プレート材1と第2プレート材2との間での位置ずれが防止され、スポット溶接の際のプレート材1〜3の位置決め保持に有利になる。
【0035】
そして、第2プレート材2の位置決め突起5の部分と第3プレート材3とを一対の電極7,8によって挟持し、両電極間に通電する。これにより、第2プレート材2の位置決め突起5と第3プレート材3とが第1プレート材1を介在させることなく直接溶着し、図1に示すプレート補強構造が得られる。
【0036】
例えば、第1プレート材1をアルミニウム製とし、第2及び第3の両プレート材2,3を鋼製とした場合、鋼材同士が溶着したナゲット6になる。このナゲット6にはアルミニウムは一切含まれない。つまり、ナゲット6には脆い金属間化合物が形成されることがない。よって、第2プレート材2と第3プレート材3との接合強度が高くなり、その結果、第1乃至第3のプレート材1〜3の積層構造も強固なものになる。
【0037】
また、第2プレート材2の位置決め突起5と第3プレート材3とを直接溶着させるようにしたから、第1プレート材1をプラスチック等の非導電性材料で形成することができ、その場合も、第2プレート材2と第3プレート材3とが高い強度で接合した状態になるから、第1乃至第3のプレート材1〜3の積層構造も強固なものになる。
【0038】
図3に示すように、第2プレート材2の位置決め突起5裏面側の相対的にへこんだ凹部5aの底面の直径Aと、該底面に当てる電極7の先端径Bとは、A>Bの大小関係にすることが好ましい。すなわち、電極7が上記凹部5aの側面に接触しないようにするものである。これによれば、第1プレート材1の損傷を避けつつ、第2プレート材2と第3プレート材3とを確実に溶接する上で有利になる。
【0039】
なお、位置決め突起5は、第2プレート材2及び第3プレート材3のいずれに設けてもよく、また、いくつかの位置決め突起5を第2プレート材2に設け、残りの位置決め突起5を第3プレート材3に設けるようにしてもよい。さらに、第2プレート材2及び第3プレート材3の双方に相対する位置決め突起を設けることもできる(この点は実施形態4,5でさらに説明する。)。
【0040】
また、スポット溶接は全ての位置決め突起5について行なうことは必ずしも要さず、例えば、一つおきにするなど、適宜選択したいくつかの位置決め突起5をスポット溶接するようにしてもよい。
【0041】
<実施形態2>
本実施形態は、プレート接続構造に本発明を適用したものであり、その一例は図5に示されている。すなわち、2枚の第1プレート材1,1は、互いの端面が突き合わされた状態で、細長い第2プレート材2と第3プレート材3とによって接続されている。実施形態1と同じく、第2プレート材2及び第3プレート材3は、金属製(例えば鋼製)であり、互いにスポット溶接可能である。第1プレート材1は、第2プレート材2及び第3プレート材3とは材質が異なり、例えばアルミニウム材等の軽量合金や、プラスチックによって形成することができる。
【0042】
第1プレート材1,1各々の端部には複数の位置決め孔4が間隔をおいて形成されている。第2プレート材2は、第1プレート材1,1の片側の面において該両第1プレート材1,1に跨るように重ねられ、第3プレート材3は、第1プレート材1,1の反対側の面において該両第1プレート材1,1に跨るように重ねられている。そして、第2プレート材2と第3プレート材3とが、第1プレート材1の各位置決め孔4を介して、スポット溶接により接合されている。図5において、第2プレート材2に×印を付けた部位がスポット溶接箇所である。
【0043】
スポット溶接箇所のプレート積層構造は実施形態1と同じであり、図2に示すように、第2プレート材2に形成された位置決め突起5が第1プレート材1の位置決め孔4に嵌められて、第3プレート材3にナゲット6によって溶着している。すなわち、第2プレート材2には、図2に示す位置決め突起5が複数、すなわち、両第1プレート材1,1各々の位置決め孔4に対応して2列になって形成されており、各位置決め突起5が対応する位置決め孔4を介して第3プレート材3に溶着している。
【0044】
スポット溶接箇所のプレート積層構造及びプレート積層方法(スポット溶接方法)は実施形態1と同じであり、その説明は省略する。
【0045】
本実施形態によれば、2枚の第1プレート材1,1の接続に材質が異なる第2プレート材2及び第3プレート材3を用いるにも拘わらず、ビス等の締結部材を用いることなく、スポット溶接によってその接続を実施することができる。しかも、第2プレート材2と第3プレート材3とがその間に2枚の第1プレート材1,1を挟んだ状態での直接溶着によって強く結合するから、第1プレート材1,1同士の接続が強固なものになる。
【0046】
なお、位置決め突起5は、第2プレート材2及び第3プレート材3のいずれに設けてもよく、また、いくつかの位置決め突起5を第2プレート材2に設け、残りの位置決め突起5を第3プレート材3に設けるようにしてもよい。
【0047】
また、スポット溶接は2列に並ぶ位置決め突起5全てについて行なうことは必ずしも要さず、各列において、例えば、一つおきにするなど、適宜選択したいくつかの位置決め突起5をスポット溶接するようにしてもよい。
【0048】
図6はプレート接続構造の他の例を示す。この例では、2枚の第1プレート材1,1が互いの端部で直交するように突き合わされ、断面L字状の第2プレート材2が、第1プレート材1,1の内角側において該両第1プレート材1,1に跨るように重ねられ、断面L字状の第3プレート材3が、第1プレート材1,1の反対側において該両第1プレート材1,1に跨るように重ねられている。そして、第2プレート材2及び第3プレート材3のいずれかに設けた位置決め突起(図示省略)が、第1プレート材1,1に設けた位置決め孔(図示省略)に嵌められ、各位置決め突起において、第2プレート材2と第3プレート材3とがスポット溶接によって接合されている。図6において、第2プレート材2に×印を付けた部位がスポット溶接箇所である。
【0049】
<実施形態3>
本実施形態は、実施形態2とは異なるプレート接続構造に本発明を適用したものであり、その一例は図7に示されている。すなわち、第1プレート材1と第2プレート材2とは互いの端部が重ねられ、細長い第3プレート材3が第2プレート材2とは反対側から第1プレート材1の端部に重ねられている。先の実施形態と同じく、第2プレート材2及び第3プレート材3は、金属製(例えば鋼製)であり、互いにスポット溶接可能である。第1プレート材1は、第2プレート材2及び第3プレート材3とは材質が異なり、例えばアルミニウム材等の軽量合金や、プラスチックによって形成することができる。
【0050】
第1プレート材1の端部には複数の位置決め孔4が間隔をおいて形成されている。そして、第2プレート材2と第3プレート材3とが、第1プレート材1の各位置決め孔4を介して、スポット溶接により接合されている。図7において、第3プレート材3に×印を付けた部位がスポット溶接箇所である。
【0051】
スポット溶接箇所のプレート積層構造は実施形態1と同じであり、図2に示すように、第2プレート材2に形成された位置決め突起5が第1プレート材1の位置決め孔4に嵌められて、第3プレート材3にナゲット6によって溶着している。すなわち、第2プレート材2には、図2に示す位置決め突起5が第1プレート材1の各位置決め孔4に対応して1列になって複数形成されており、各位置決め突起5が対応する位置決め孔4を介して第3プレート材3に溶着している。これにより、第1プレート材1と第2プレート材2とが接続されている。
【0052】
スポット溶接箇所のプレート積層構造及びプレート積層方法(スポット溶接方法)は実施形態1と同じであり、その説明は省略する。
【0053】
本実施形態によれば、第1プレート材1と、該第1プレート材1とは異なる材質の第2プレート材2とをビス等の締結部材を用いることなく、スポット溶接によって接合することができる。しかも、第2プレート材2と第3プレート材3とがその間に第1プレート材を挟んだ状態での直接溶着によって強く結合するから、第1プレート材と第2プレート材との接続も強固なものになる。
【0054】
なお、位置決め突起5は、第2プレート材2及び第3プレート材3のいずれに設けてもよく、また、いくつかの位置決め突起5を第2プレート材2に設け、残りの位置決め突起5を第3プレート材3に設けるようにしてもよい。
【0055】
また、スポット溶接は全ての位置決め突起5について行なうことは必ずしも要さず、例えば、一つおきにするなど、適宜選択したいくつかの位置決め突起5をスポット溶接するようにしてもよい。
【0056】
図8はプレート接続構造の他の例を示す。この例では、第2プレート材2の端部がL字状に曲げられてフランジ2aが形成され、このフランジ2aに第1プレート材1の端部が重ねられている。第3プレート材3はフランジ2aとは反対側から第1プレート材1の端部に重ねられている。そして、第2プレート材2のフランジ2a及び第3プレート材3のいずれかに設けた位置決め突起(図示省略)が、第1プレート材1の端部に設けた位置決め孔(図示省略)に嵌められ、各位置決め突起において、第2プレート材2のフランジ2aと第3プレート材3とがスポット溶接により接合されている。図8において、第3プレート材3に×印を付けた部位がスポット溶接箇所である。
【0057】
<実施形態4>
本実施形態は、図9に示されており、第2プレート材2及び第3プレート材3の各々に、第1プレート材1の位置決め孔4に対応する位置決め突起5a,5bが相対するように設けられている例である。すなわち、第2プレート材2及び第3プレート材3各々の位置決め突起5a,5bは、第1プレート材1の位置決め孔4に互いに反対側から嵌まっている。この両位置決め突起5a,5bを位置決め孔4の中間で接触させた状態で、一対の電極7,8によって挟持し、両電極間に通電する。これにより、第2プレート材2の位置決め突起5aと第3プレート材3の位置決め突起5bとが第1プレート材1を介在させることなく直接溶着したプレート積層構造が得られる。
【0058】
このプレート積層構造は、実施形態1〜3のプレート補強構造及びプレート接続構造に採用することができる。
【0059】
<実施形態5>
本実施形態は、図10に示されており、第1プレート材が2枚の互いに重ねられたプレート1a,1bによって構成されている例である。プレート1a,1b各々には、対応する位置決め孔4が形成されている。第2プレート材2にはプレート1aの位置決め孔4に対応する位置決め突起5aが形成され、第3プレート材3にはプレート1bの位置決め孔4に対応する位置決め突起5bが形成されている。
【0060】
第2プレート材2及び第3プレート材3各々の位置決め突起5a,5bは、第1プレート材を構成するプレート1a,1b各々の位置決め孔4に互いに反対側から嵌まっている。この両位置決め突起5a,5bを接触させた状態で、一対の電極7,8によって挟持し、両電極間に通電する。これにより、第2プレート材2の位置決め突起5aと第3プレート材3の位置決め突起5bとが第1プレート材を介在させることなく直接溶着したプレート積層構造が得られる。
【0061】
このプレート積層構造は、実施形態1〜3のプレート補強構造及びプレート接続構造に採用することができる。
【0062】
<その他>
上記各実施形態では位置決め孔4にテーパが形成されているが、テーパを設けることは必ずしも要しない。
【符号の説明】
【0063】
1 第1プレート材
2 第2プレート材
3 第3プレート材
4 位置決め孔
5 位置決め突起
6 ナゲット
7,8 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材の両面に、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とが積層されているプレート積層構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されていて、少なくとも一つの位置決め孔を有し、
上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方には、上記第1プレート材の位置決め孔に対応する位置決め突起が形成されており、
上記位置決め突起が上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められ、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【請求項2】
1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材が、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とによって補強されているプレート補強構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されていて、複数の位置決め孔を有し、
上記第1プレート材の複数の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記第1プレート材の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【請求項3】
各々1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材2枚が、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とによって接続されているプレート接続構造であって、
上記2枚の第1プレート材各々は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料によって形成されていて、各々の端部に複数の位置決め孔を有し、
上記第2プレート材及び第3プレート材各々は、上記2枚の第1プレート材の両面から、この2枚の第1プレート材の両端部に跨るように重ねられ、
上記両第1プレート材各々の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記2枚の第1プレート材各々の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記2枚の第1プレート材各々の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【請求項4】
1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材と第2プレート材とが、該第2プレート材とスポット溶接可能な第3プレート材によって接続されているプレート接続構造であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料によって形成されていて、その端部に複数の位置決め孔を有し、
上記第2プレート材は、その端部が上記第1プレート材の複数の位置決め孔を有する端部に重ねられ、
上記第3プレート材は、上記第1プレート材の位置決め孔を有する端部に対して、上記第2プレート材とは反対側から重ねられ、
上記第1プレート材の複数の位置決め孔に対応する複数の位置決め突起が、上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方に形成されており、
上記複数の位置決め突起が上記第1プレート材の対応する位置決め孔に嵌まり、
上記第2プレート材と第3プレート材とが、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着していることを特徴とする。
【請求項5】
1枚のプレート又は重ねられた複数枚のプレートよりなる第1プレート材の両面に、互いにスポット溶接可能な第2プレート材と第3プレート材とを積層するプレート積層方法であって、
上記第1プレート材は、上記第2プレート材及び第3プレート材とは異質の材料で形成されており、
上記第1プレート材には、少なくとも一つの位置決め孔を形成し、
上記第2プレート材及び第3プレート材の少なくとも一方には、上記第1プレート材の位置決め孔に対応する位置決め突起を形成し、
上記第1プレート材乃至第3プレート材を、上記位置決め突起が上記位置決め孔に嵌まるように重ね、
上記第2プレート材と第3プレート材とを、上記第1プレート材の位置決め孔に嵌められた少なくとも一つの位置決め突起において、スポット溶接によって溶着させることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−240678(P2010−240678A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90366(P2009−90366)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(593049017)セキ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】