説明

ラケットのストリング用塗布剤

【課題】経時劣化が少なく、耐久性の高い、またノッチングがなく、ストリングによれが生じず、弾力性、反発力等が低下しにくいラケット用ストリング塗布剤を提供すること。
【解決手段】フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むラケットのストリング用塗布剤及び、(A)フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種0.1〜50質量%、及び(B)フッ素系有機溶剤50〜99.9質量%を含有するラケットのストリング用塗布剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットのストリング用塗布剤に関し、詳しくは、ラケットのストリングの性能を向上させ、耐久性を向上させるラケットのストリング用塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テニス、バドミントン等のラケットのストリング又はガット(以下、単に「ストリング」という。)は、羊や牛等の腸や合成繊維製のものが用いられ、ラケットのフェイス面に格子状に張られている。ストリングは、通常、15〜50kgの力で引っ張られた状態で張られおり、このストリング面にボールやシャトルコックを当ててプレーする。
打球時などにはストリングに大きな応力がかかり、縦ストリングと横ストリングが互いに強く押圧される。またボール等との衝突によるストリングの伸長やボールがストリングから離れた後の収縮により、縦ストリングと横ストリングが強くこすれあう。従って、ストリングは、打球時等に発生する応力、ボール等とストリングの摩擦等により劣化損傷し、特に使用者がボール等を強く打つ場合や、ボールにスピンをかけて打つ場合には、短時間の使用でストリングが切れるという問題があった。
【0003】
また、ストリングの表面が損傷を受けると、縦ストリングと横ストリングの交差する部分が互いに食い込んだ状態になりノッチング(部分的な摩滅)が発生する。ノッチングが発生すると、ストリングによれが生じ、弾力性、反発力等が低下するとともに、打った瞬間に伝わる振動が増大する。
さらには、ストリングを長期間使用することにより、ストリングが硬化したり、砂ぼこりや水分が付着して、ストリングが劣化してしまうといった耐久性に欠けるという欠点があった。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、蒸気圧が40℃において10mmHg以下の、植物性油脂、動物性油脂及び合成油脂の少なくとも一種類を含有し、調合後の凝固点が20℃以下、粘度が40℃において20cp以上であるラケット用ガット塗布剤が提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。また、シリコーンオイルを含んだスポンジ状物の塗布面側に研磨剤を含ませ、シリコーンオイルをガットに塗りこむ技術が提案されている(特許文献2参照)。さらには、ラケットに張設したガットの両面に、フッ素樹脂、100%の高純度シリコン等のコーティング剤を塗布する技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−51873号公報
【特許文献2】特開2004−236743号公報
【特許文献3】特開2003−180882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来提案されてきたラケット用ストリングの塗布剤は、その性能が不十分であり、さらにラケットのストリングの性能を向上させ、耐久性を向上させるラケットのストリング用塗布剤が求められていた。
本発明の課題は、経年劣化が少なく、耐久性の高い、またノッチングがなく、ストリングによれが生じず、弾力性、反発力等が低下しにくいラケットのストリング用塗布剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、フッ素オイル、フッ素系ワックス、及びフッ素樹脂はラケットのストリング用塗布剤として有効であり、上記課題を解決し得ることを見出した。特にこれらをフッ素系有機溶剤に溶解させた塗布剤はラケットのストリングに塗りやすく、塗布後すぐに使用できる点で有利であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、(A)フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むラケットのストリング用塗布剤、さらには(A)フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種0.1〜50質量%、及び(B)フッ素系有機溶剤50〜99.9質量%を含有するラケットのストリング用塗布剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のストリング用塗布剤によれば、ラケットのストリングの経時劣化を抑制することができ、ストリングの耐久性を向上させることができる。また、ラケットのストリングのノッチングを抑制し、ストリングによれを生じさせず、さらには、縦ストリングと横ストリングの交叉部が適正部に戻りやすくなるため、弾力性、反発力等の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のストリング用塗布剤は、フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
フッ素オイルとは、一般に、炭化水素の水素をフッ素で置換した化学式で示され、常温で液状又はグリース状のものであって、通常、25℃における蒸気圧が135Pa未満のものである。なお、塩素等の他のハロゲン元素、酸素、リン、硫黄、窒素等を含んでいてもよい。また、40℃におけるフッ素オイルの動粘度は、通常2〜4600mm2/sの範囲、好ましくは5〜1000mm2/sの範囲、特に好ましくは15〜800mm2/sの範囲である。フッ素オイルの動粘度が15mm2/s以上であると特に蒸発損失が小さく、長時間にわたって本発明の効果を奏することができるとともに、極圧性が高く、油膜保持性が良好であり、ストリングの摩耗を低減する効果、すなわちノッチングの抑制効果が高い。一方、フッ素オイルの動粘度が800mm2/s以下であると粘性抵抗が低いために、ラケットのストリングへの塗布が容易であり、また油膜復元性が高いために、ストリングの摩耗を低減する効果があり、かつストリングのよじれを防止する効果がある。
【0010】
本発明において、フッ素オイルの具体例としては、パーフルオロポリエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルカン及びこれらの変性体などが挙げられ、これらのうち蒸発損失が小さい点、温度特性、及び極圧性の点から、パーフルオロポリエーテルが好ましい。なお、温度特性が良好であると、同一の粘度でも分子量が高くなり、ストリングに塗布した際の油膜保持性が高くなる。また、極圧性が高いと、ストリングの油膜保持性が高く、ストリングの摩耗を抑制することができる。
ここで変性体とはカルボキシル基、水酸基、リン酸エステル基等を側鎖又は末端に付加したものであって、変性することにより、ストリングに吸着又は化学反応させる機能を付与したものである。
また、これらのフッ素オイルは、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
次に、フッ素系ワックスとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素含有炭化水素化合物であって、常温でワックス状のものが挙げられ、一般的には、重量平均分子量が1000〜3000程度のものである。これらのフッ素系ワックスのうち、入手のしやすさ等を考慮するとポリクロロトリフルオロエチレンワックスが好ましい。
また、上記フッ素系ワックスは1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
次に、フッ素樹脂とは、一般に炭化水素の水素をフッ素で置換した化学式で示され、常温で固体の樹脂(一般に熱可塑性樹脂)である。例えば、エチレンの水素原子が1個以上フッ素原子と置き換えられた単量体の重合によって合成することができる。なお、塩素等の他のハロゲン元素、酸素等を含んでいてもよい。
フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE;ポリテトラフルオロエチレン)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、テトラフルオロエチレン(TFE)とトリフルオロトリフルオロメトキシジオキソール(TTD)との共重合体等が挙げられ、また、本発明におけるフッ素樹脂にはフッ化カーボン(CFx)をも含む。
これらのうち特に、ストリング上で油分を有効に保持し、ストリング間の摩擦係数を効果的に低下させるとの観点からポリテトラフルオロエチレン及びフッ化カーボン(CFx)が好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは粒子が微粉末であるために、凝集体の隙間に油分を保持しやすく、また、フッ化カーボンは層間に油分を保持しやすいためと考えられる。
【0013】
上記フッ素樹脂は、通常その重量平均分子量が1000〜500万の範囲であり、3000〜100万の範囲が好ましく、さらには1万〜50万の範囲が好ましい。この範囲であると、蒸発損失が小さく、本発明の効果の持続性が得られるとともに、潤滑性の点で有利である。
また、フッ素樹脂の平均粒子径は0.01μm〜1mmの範囲が好ましい。フッ素樹脂の平均粒子径が0.01μm以上であると摩擦特性の点で有利であり、1mm以下であるとストリングに対する付着性の点で有利である。以上の点から、フッ素樹脂の平均粒子径はさらに0.1〜100μmの範囲が好ましい。
【0014】
本発明のストリング用塗布剤は、上記フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂のいずれかを少なくとも含むものであり、いずれか1種でもよいし、複数の組み合わせであってもよい。複数の組み合わせである場合には、フッ素オイル:フッ素系ワックス及び/又はフッ素樹脂の質量比が30:70〜99:1の範囲であることが好ましい。この範囲であるとストリングに塗布した後の付着膜の状態がグリース状となり、高い膜の保持性が得られる。以上の観点からフッ素オイル:フッ素系ワックス及び/又はフッ素樹脂の質量比は、50:50〜90:10の範囲がより好ましい。
【0015】
本発明のストリング用塗布剤は、フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種(以下(A)成分とする)0.1〜50質量%、及びフッ素系有機溶剤(以下(B)成分とする)50〜99.9質量%を含有することが好ましい。(B)成分は(A)成分を溶解させ、ラケットのストリングに塗りやすくさせる効果がある。また、(B)成分は乾燥速度が速く、ストリングに塗布後すぐにラケットを使用することができる点で好ましい。
【0016】
(A)成分と(B)成分を含有する本発明のストリング用塗布剤における(A)成分の含有量は0.1〜50質量%の範囲が好ましい。(A)成分が0.1質量%以上であると、本発明の効果を得ることができ、また50質量%以下であると、十分な乾燥性が得られ、また、過剰な潤滑成分がストリングに付着することがないため、これらの潤滑成分がボールに転写され、ボールのスピンを低下させるという問題が生じない。以上の点から、(A)成分の含有量は0.5〜20質量%の範囲がさらに好ましく、特に5〜15質量%の範囲が好ましい。
【0017】
次に、(A)成分と(B)成分を含有する本発明のストリング用塗布剤は、(B)成分として、フッ素系有機溶剤を含有する。フッ素系有機溶剤としては、分子中にフッ素原子を含有するものであれば特に限定されず、例えば、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロサイクリックエーテル、パーフルオロシクロアルカン、ハイドロフルオロシクロアルカン、キシレンヘキサフルオライド、ハイドロフルオロクロロカーボン等が挙げられる。これらのうち、該フッ素系溶剤のストリングに対する影響を考慮すると、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロサイクリックエーテルが好ましい。
【0018】
(B)成分として用いるフッ素系有機溶剤は、通常その25℃における蒸気圧が135Pa〜100kPaの範囲であり、前述のフッ素オイルと区別される。
このフッ素系有機溶剤の沸点は、通常10〜230℃の範囲であり、30〜135℃の範囲が特に好ましい。フッ素系有機溶剤の沸点が30℃以上であると特に保存安定性に優れ、一方、該沸点が135℃以下であると乾燥性が高く、ストリングに塗布後すぐに使用することができるという利点がある。
なお、これらのフッ素系有機溶剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
(A)成分と(B)成分を含有する本発明のストリング用塗布剤における(B)成分の含有量は50〜99.9質量%の範囲である。50質量%以上であると十分な乾燥性が得られ、99.9質量%以下であれば、効果を示す(A)成分の含有量が確保できる。以上の点から、(B)成分の含有量は80〜99.5質量%の範囲がさらに好ましく、特に85〜95質量%の範囲が好ましい。
【0020】
本発明のストリング用塗布剤は、上記フッ素系有機溶剤に代えて、又はフッ素系有機溶剤に加えて、本発明の効果を奏する範囲で他の有機溶剤を用いることができる。ここで用い得る有機溶剤としては、アルコール、パラフィン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられ、乾燥性やストリングへの影響を考慮すると、パラフィン系溶剤が好ましい。
【0021】
また、本発明のストリング用塗布剤は、上記(A)成分及び(B)成分以外に、所望により添加剤を含有してもよい。添加剤としては、防錆剤、酸化防止剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤、減摩材、摩耗防止剤等が挙げられる。その他、固体潤滑材として知られる二硫化モリブデンを配合することもできる。
本発明のストリング用塗布剤における該添加剤の含有量は、通常0.01〜10質量%の範囲である。
【0022】
本発明のストリング用塗布剤は、通常、室温で液状、固体状又はワックス状をとる。特に(A)成分のみからなるストリング用塗布剤は固体状又はワックス状であり、(A)成分と(B)成分を含有するストリング用塗布剤は、通常、液状である。
固体状の場合はストリングに直接塗り込む方式がとられ、又はワックス状の場合は、スポンジ等に適量とり、ストリングに塗り込む方式がとられる。
一方、(A)成分と(B)成分を含有する本発明のストリング用塗布剤は、室温で液状であり、ストリングに塗布する際には、例えば、刷毛塗り、スプレーコーティングなどの方法が好適に用いられる。また、布等に本発明のストリング用塗布剤を染み込ませ、これをストリング上において塗布することもできる。
固体状又はワックス状の場合は、有効成分を直接ストリングに塗布するため、見かけの塗布量が少なくて済み、経済的であるという利点がある。一方、液状の場合は、乾燥性が高いために、常温で放置することにより容易に乾燥することができ、容易に皮膜を得ることができるというメリットがある。また、塗布後すぐに使用することができるという利点がある。以上のように、本発明のストリング用塗布剤は、用途、使用方法に応じて適宜その形態を選択することができる。
【0023】
本発明のストリング用塗布剤は、主成分である(A)成分がストリング上に塗膜を形成し、打球時にストリングを保護する。また、縦ストリングと横ストリングの交叉部分の摩擦抵抗を低減させることにより、(1)ストリング本来の弾力性を高いレベルで維持することができる、(2)ボール等のホールド性が増し、コントロール性が向上する、(3)打球感がマイルドになり、飛びが軽快になる、(4)縦ストリングのずれが戻りやすくなるため、スピン量が増加する、(5)振動が素早く減衰する等の効果が得られる。さらには、ノッチングを防止することができ、ストリングのよれを防止することができるとともにストリングの劣化を防止して切れるまでの期間を大幅に延長することができる。
【0024】
本発明のストリング用塗布剤は、テニス用ラケットのほか、バドミントン用ラケット、スカッシュ用ラケット等にも好適に使用することができる。
また、本発明のストリング用塗布剤はラケットに張られた状態のストリングに塗布することができるとともに、あらかじめストリングに本発明のストリング用塗布剤を塗布しておき、これをラケットのストリングとして張ることもできる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
評価方法
(1)ストリングの引張り試験
ラケットのストリングをクロスストリング(横糸)の中央部分を1本抜いた状態で張り上げ、該ラケットをストリングマシーンに固定した。クロスストリング(横糸)を抜いてある部分に、新たなストリングを通し、ストリングマシーンで引っ張った。ストリングの一方の端部には10kgGの負荷をかけて、引っ張り張力60ポンド(27kg)で、12.5cm引っ張り、張力を解放する工程を繰り返し、ストリングが切れるまでの回数で評価した。なお、使用したストリングマシーンは(株)ゴーセン製「GM3000S」を用いた。
【0026】
(2)摩擦試験(摩擦係数の測定)
図1に示す試験機(HEIDON社製表面性測定機「14FW−2」)を用い、摩擦係数を測定した。測定は、テストピース5に実施例1で調製されたストリング用塗布剤及び比較例1の市販品を塗布し、又は塗布剤を塗布しない状態で、ナイロン製ボール4に、重り2によって垂直荷重をかけ、テストピース5を左右に摺動させて行った。摩擦係数は初期値、摺動回数5000回(往復)、10000回(往復)、15000回(往復)、20000回(往復)、30000回(往復)時に測定し、摩擦係数が0.1を超えた場合にはその時点で摩擦係数の測定を終了した。試験条件は以下のとおりである。
(試験条件)
テストピース5;6−ナイロン製、長さ100mm、幅25mm、厚さ2mm
ナイロン製ボール4;6,6−ナイロン製、直径10mm
荷重;2000g
線速度;2000mm/分
摺動距離;20mm
【0027】
実施例1
(A)成分として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)2質量%及びパーフルオロポリエーテル(PFPE)8質量%を含有し、(B)成分として、パーフルオロサイクリックエーテル90質量%からなるストリング用塗布剤を調製した。このストリング用塗布剤を市販の4種類のストリングに塗布し、上記方法にて評価した。ストリングの引張り試験結果を第1表に、摩擦試験の結果を第2表に示す。
【0028】
比較例1
市販のテニスラケットのストリング用塗布剤「サンアイ・ミラフィットアクセル」((有)サンアイ製)を実施例1と同様にストリングに塗布し、実施例1と同様の方法で評価した。結果を第1表及び第2表に示す。
【0029】
参考例1
実施例1で調製したストリング用塗布剤を塗布せずに実施例1と同様の方法にて評価した。結果を第1表及び第2表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
1)ストリングA;バボラ社製「アトラクション125」、ストリング径1.25mm、フレームとしてはヘッド社製「LMラジカルMP」を使用し、張り上げ張力は45×45ポンドとした。
2)ストリングB;バボラ社製「エクセルプレミアム125」、ストリング径1.25mm、フレームとしてはヘッド社製「LMラジカルMP」を使用し、張り上げ張力は45×45ポンドとした。
3)ストリングC;テクニファイバー社製「X−ONEバイフェイズ」、ストリング径1.24mm、フレームとしてはウィルソン社製「ROK93」を使用し、張り上げ張力は45×42ポンドとした。
4)ストリングD;パシフィック社製「クラシック8.0」、ストリング径1.25mm、フレームとしてはウィルソン社製「ROK93」を使用し、張り上げ張力は45×42ポンドとした。
【0032】
【表2】

【0033】
本発明のストリング用塗布剤を塗布したストリングは、第1表から明らかなように、ストリングが切れるまでの時間を大幅に向上させることができ、市販品に対してもその効果は顕著である。
また、第2表から明らかなように、摩擦係数についても塗布剤を塗布しない参考例1に対して、初期値及び摺動試験を繰り返した後において、摩擦係数を大幅に低減(性能を向上)させることができる。さらに、市販品に対しても、初期値での摩擦係数で低い値を示す上に、2倍以上の回数の摺動後であっても低い値の摩擦係数(高い性能レベル)を維持することができ、摺動に対して極めて高い耐性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のストリング用塗布剤は、ストリングを保護して、その耐久性を向上させることができる。また、縦ストリングと横ストリングの交叉部分の摩擦抵抗を低減させ、ノッチングを防止することができる。本発明のストリング用塗布剤は、テニス用ラケットのほか、バドミントン用ラケット、スカッシュ用ラケット等にも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】摩擦試験機の概要図である。
【符号の説明】
【0036】
1:摩擦試験機
2:重り
3:センサー(摩擦係数測定用)
4:ナイロン製ボール
5:テストピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むラケットのストリング用塗布剤。
【請求項2】
(A)フッ素オイル、フッ素系ワックス及びフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種0.1〜50質量%、及び(B)フッ素系有機溶剤50〜99.9質量%を含有する請求項1に記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項3】
(A)前記フッ素オイルの25℃における蒸気圧が135Pa未満であり、(B)フッ素系有機溶剤の25℃における蒸気圧が135Pa〜100kPaの範囲である請求項2に記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項4】
前記フッ素オイルとフッ素系ワックス及び/又はフッ素樹脂の質量比が30:70〜99:1の範囲である請求項2又は3に記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項5】
40℃におけるフッ素オイルの動粘度が2〜4600mm2/sの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項6】
前記フッ素系有機溶剤の沸点が10〜230℃の範囲である請求項2〜5のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項7】
前記フッ素オイルがパーフルオロポリエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルカン及びこれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項8】
前記フッ素系ワックスが、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる請求項1〜7のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項9】
前記フッ素樹脂が、四フッ化エチレン樹脂(PTFE;ポリテトラフルオロエチレン)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、テトラフルオロエチレン(TFE)とトリフルオロトリフルオロメトキシジオキソール(TTD)との共重合体、フッ化カーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項10】
前記フッ素系有機溶剤が、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロサイクリックエーテル、パーフルオロシクロアルカン、ハイドロフルオロシクロアルカン、キシレンヘキサフルオライド、ハイドロフルオロクロロカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜9のいずれかに記載のラケットのストリング用塗布剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のストリング用塗布剤を塗布したラケット用ストリング。

【図1】
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【公開番号】特開2008−29711(P2008−29711A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208483(P2006−208483)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(505430296)株式会社 MSB (1)
【出願人】(596024921)株式会社ハーベス (4)