説明

保釈保証金立替システム

【課題】
保釈保証金の立替に関し、裁判所の保釈許可決定を受けられるべき条件を満たす被告人かどうかという観点から保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明は、保釈保証金の立替を実行するか否かを判断するための保釈保証金立替システムであって、被告人情報取得部と、被告人情報に基づいて立替の実行をするか判断するための判断部と、判断部での判断結果が立替の実行をするとの判断結果である場合にはその判断結果を被告人情報と関連付けて蓄積する蓄積部と、被告人の保釈後逃亡に関する情報を前記蓄積部に蓄積された被告人の情報として追加する逃亡有無情報追加部とを有し、判断部は、立替の実行をするに際して前記蓄積部に過去に他の被告人に関して蓄積されてきた情報を利用して判断可能であるシステムを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保釈が許可されるために納付する保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムに係る。
【背景技術】
【0002】
保釈制度は、保証金の納付等を条件として、裁判所が、刑事事件で勾留されている被告人に対する勾留の執行を停止し、被告人の身柄拘束を解く制度である(刑事訴訟法88条1項、93条1項等)。全ての刑事被告人は裁判によって有罪を宣告されるまでは無罪の推定を受ける(世界人権宣言など)。従って、被告人といえども、人間の尊厳に不可欠な身体の自由は、止むを得ない場合を除きこれを確保する必要がある。保釈制度は、このような観点から認められた制度であると言われている。そして、このような制度趣旨から、保釈の請求がなされた場合には、一定の事由に該当する場合を除き、裁判所は必ずこれを許可しなければならないこととされている(刑事訴訟法89条)。
【0003】
もっとも、保釈が許可されるためには、原則として保釈保証金の納付が必要である。これは、被告人の逃亡等を抑止し、被告人の出頭を確保するためであるとされている。即ち、保釈を許可した場合、被告人が逃亡したり、罪証を隠滅したりといったおそれがある。そこで、これらの事由に該当する場合には保釈を取り消すだけでなく、納付された保釈保証金を没収することとし、被告人に経済的・精神的負担を与えることによって、被告人の出頭を確保するという趣旨である。
【0004】
保釈保証金は、被告人やその親族など保釈を請求することができる者(保釈請求権者)のほか、これ以外の者であっても裁判所の許可があれば納付することができ、また、その際これらの者の手許に資金がなければ、第三者に立替えてもらってこれを納付することも制度上は可能であるが、現在のところ、かかる保釈保証金の立替を実行するためのシステムは知られていない。このため、保釈を受けようとする場合、自己の手許資金がないときは、金融機関等から融資を受けて保釈保証金に充てるほかはないというのが現状である。
【0005】
なお、本発明と異なる技術分野においては、立替を実行するためのシステムとして、例えば、「債務弁済支援システムおよび債務弁済支援装置」に係る発明が知られている(特許文献1参照)。これは、債務者が債権者に対して速やかに債務の弁済を行うことが可能となるよう支援する債務弁済支援システム等を提供することを目的とするものであって、(1)第2の金融機関からの代理支払い保証情報に基づいて、第1の金融機関に対する立替払い依頼情報を生成し第1のコンピュータに送信する立替払い依頼情報送信手段は、(2)第1の金融機関からの立替払い決定情報に基づいて、立替払いの金額、払込先および実行時期を含む立替払いスケジュール情報を生成する立替払いスケジュール生成・更新手段、(3)立替払いスケジュール情報に基づいて立替払い実行要求情報を生成し第1のコンピュータに送信する立替払い実行要求情報送信手段、(4)立替払い実行要求情報に基づいて、第1の金融機関が債権者に対して立替払いを実行するといった手段及びプロセスを通じて、債権者が第2の金融機関による代理支払いを待つことなく速やかに債務の弁済を受けることを可能にすることを特徴とする発明である。
【特許文献1】特開2004−163988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
勾留されている被告人が保釈される率(保釈率)は、1970年代以降長期的な低下傾向にあり、近年では極めて低い水準(11〜13%程度)にあると言われている。その一因として、保釈保証金を用意できない被告が増えたことがあるのではないかとの指摘があり、経済格差の拡大を反映して、この傾向は今後さらに強まるといった見方も示されている(例えば2003年11月30日付朝日新聞記事)。また、実際にも、被告人の保釈が許可されないような一定事由、例えば逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれ等の事由が何らないにもかかわらず、保釈請求者等が納付すべき保釈保証金を用意できないというだけの理由で保釈が許可されないケースが多いことも指摘されている。この場合、上述のように自己の手許資金がなければ第三者に立替えてもらってこれを納付することも制度上は可能であるので、金融機関等から融資を受けて保釈保証金に充てることも考えられるが、破産宣告を受けていたり、多重債務を抱えていたりといった理由で金融機関等からの融資を受けることができずに、結局保釈が許可されずに終わるというケースが多いということも指摘されている。
【0007】
しかし、このような理由で保釈が許可されないとすれば、本来逃亡や罪証隠滅のおそれがなく、身体の自由が認められるてしかるべき被告人が、不当に身柄拘束を受け続けることとなる。これは人権尊重の見地から妥当でない。また、このことは法が保釈保証金の納付適格を広く認めている(刑事訴訟法94条2項)趣旨にも反すると考えられる。
【0008】
なお、上述の特許文献1に示した発明から容易に想到されるようなシステムを用いて保釈保証金の立替を実行することができないかも一応問題となる。しかし、当該発明はあくまで債権債務関係の存在を前提とする弁済の支援を目的とした立替を実行するためのシステムであり、金融機関による立替、即ちその実質は金銭消費貸借契約に基づく融資を実行するものである。従って、上述のように、破産宣告を受けていたり、多重債務を抱えていたりといった理由で金融機関等からの融資を受けることができない者に対する保釈保証金の立替とは、そもそも目的を異にしている。また、かかる目的の違いを反映して発明の構成も、本質的に異なると考えられる。即ち、当該発明は、そもそも立替を実行するべきか否かについての実体的な判断を行うための構成要素が欠落している。従って、特許文献1に示した発明を含む従来発明から容易に想到されるようなシステムでは、破産宣告等の理由で金融機関等からの融資を受けることができない者も含め、保釈保証金を用意できない者に対する保釈保証金の立替の支援を行うことは困難であると考えられる。
【0009】
そこで、金融機関等からの融資を受けることができない者も含め、保釈保証金を用意できない者に対する保釈保証金の立替の支援を行うため、保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムであって、当該判断を、立替を受けようとする者の返済能力といった観点からではなく、保釈対象である被告人が人権尊重の見地から本来身体の自由が認められるべき者かどうか、換言すれば裁判所の保釈許可決定を受けられるべき条件を満たす被告人かどうかという観点から行うためのシステムの構築が不可欠の課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明は、刑事事件にて勾留されている被告人の保釈が許可されるために納付する保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムであって、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報を取得する被告人情報取得部と、前記被告人情報に基づいて立替の実行をするか判断するための判断部と、前記判断部での判断結果が立替の実行をするとの判断結果である場合には、その判断結果を被告人に関する情報と関連付けて蓄積する蓄積部と、前記被告人の保釈後逃亡に関する情報を、前記蓄積部に蓄積された被告人の情報として追加する逃亡有無情報追加部とを有し、前記判断部は、立替の実行をするに際して、前記蓄積部に過去に前記被告人と異なる他の被告人に関して蓄積されてきた情報を利用して判断可能である保釈保証金立替システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金を用意できない者に対する保釈保証金の立替を実行するか実行しないかの判断を、立替を受けようとする者の返済能力といった観点からではなく、保釈対象である被告人が人権尊重の見地から本来身体の自由が認められるべき者かどうか、換言すれば裁判所の保釈許可決定を受けられるべき条件を満たす被告人かどうかという観点から行うためのシステムの構築が可能となる。また、この結果、本来逃亡や罪証隠滅のおそれがなく、身体の自由が認められるべきであるにもかかわらず、金融機関等からの融資を受けることができない等により保釈保証金を用意できないとの理由でこれまで保釈許可が得られなかったような被告人についても、当該システムが行う判断の結果に基づいて立替が実行されることにより保釈が許可される可能性が高まり、人権尊重に資することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を実施例を用いて説明する。実施例、実施形態及び特許請求の範囲の請求項の相互の関係は以下のとおりである。
【0013】
実施例1:主に請求項1などに係る実施形態に関する。
【0014】
実施例2:主に請求項2などに係る実施形態に関する。
【0015】
実施例3:主に請求項3などに係る実施形態に関する。
【0016】
実施例4:主に請求項4などに係る実施形態に関する。
【0017】
実施例5:主に請求項5などに係る実施形態に関する。
【0018】
なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0019】
<概要>
【0020】
図1は、本実施形態の概念を説明する前提として、本発明に係る保釈保証金立替システムを利用した保釈保証金の立替、納付等の流れの一例を説明する図である。以下、同図に基づいて説明する。
【0021】
(1) 未決勾留中の被告人又はその関係者であって、当該被告人の保釈を許可されるために納付が必要な保釈保証金の立替を申し込む者(以下「申込者」という。)0101は、本発明に係る保釈保証金立替システムを運用する会社であるX社0102に申込を行う。なお、被告人の関係者とは、典型的には刑事訴訟法88条により保釈請求適格を有する被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹であるが、これらに限られず、被告人の関係者であれば誰でもよい。例えば、被告人の上司・同僚・部下、被告人の友人等であってもよい。
【0022】
(2) 申込を受けたX社においては、当該保釈保証金立替システムを利用して立替を実行するか否かの判断が行われる。当該判断は、被告人に関する情報に基づいて行われる。
【0023】
(3) 当該判断結果が、立替を実行するというものである場合、X社は申込者に対しその旨の通知及び立替を行う者としてY社0103を紹介する旨の通知を行う。これらの通知は、例えば一つの書面にて「貴方様の申込に係る立替を実行することに決しましたので、立替者としてY社を紹介します。ついては、同社にご連絡のうえ立替申込手続をしてください。」といった形で行われる。なお、当該判断結果が立替を実行しないというものである場合は、X社は申込者に対しその旨の通知を行う。
【0024】
(4) 立替を実行するとの判断がなされた場合、X社は(3)の通知と並行して、立替を実行する会社であるY社に対しても当該判断結果の通知及び当該申込者を紹介する旨の通知を行う。
【0025】
(5) 申込者は、Y社に対し立替の申込を行い、Y社が当該申込を承諾することにより立替に係る契約が締結される。契約中では、立替金の金額、立替金の送金先、立替金の返還期限等が定められる。
【0026】
(6) Y社は、当該契約に基づき、立替金を送金する。本例では、立替金の送金先は被告人の担当弁護人0104である。
【0027】
(7) 担当弁護人は、当該立替金を用いて、裁判所0105に対し保釈保証金を納付する。この結果、裁判所の保釈許可決定の執行が可能となり(刑事訴訟法94条1項)、被告人の身柄が釈放される。
【0028】
(8) 被告人が逃亡すること等がなく、保釈期間を無事経過すれば、裁判所から保釈保証金の納付者である担当弁護人に保釈保証金が返還される。なお、保釈期間中に被告人が逃亡する等一定の事由に該当するときは、当該保釈が取り消される場合がある(刑事訴訟法96条1項参照)。かかる場合、保釈保証金は没収される。
【0029】
(9) 裁判所から担当弁護人に保釈保証金が返還された場合、当該担当弁護人は、返還された当該保釈保証金を用いて、Y社に対し立替金を返還する。
【0030】
なお、上の例では立替を実行するか否かの判断を行う者と立替を実行する者が別の主体である場合で説明したが、両者は同一の主体であってもよい。
【0031】
図2は、本実施形態の概念の一例を示すものである。以下、同図に基づいて説明する。
【0032】
(1) X社0101は本実施形態の保釈保証金立替システム0102を運用する会社である。また、A0103は未決勾留中の被告人の関係者であって、保釈保証金の立替の申込者である。この場合、Aは、例えば、X社所定の「保釈支援申込書」0104に申込者Aの氏名・住所や当該被告人に関する情報等所定の事項を記入してX社に提出することにより、X社に対する保釈保証金の立替の申込を行う。
【0033】
(2) 上述の申込がなされた場合、X社が運用する保釈保証金立替システムは、立替対象となるべき被告人に関する情報0105を取得する。当該情報は、当該システムが立替を実行するか否かの判断をするための判断材料として必要になるものである。当該情報には、例えば、被告人の氏名・住所、職業の有無、同居の親族の有無、罪名、初犯・再犯の別、容疑を認めているか否か、身元引受人の有無(有る場合はその氏名等)、担当弁護人の氏名・連絡先等が含まれる。当該情報は、典型的には上述の「保釈支援申込書」に記載された内容である被告人に関する情報に基づき取得されるが、その他の情報源(例えば担当弁護人)から取得されるものであってもよい。なお、「保釈支援申込書」に記載された内容に基づき取得される場合には、当該情報の信憑性を担保するため、当該申込書の記載内容を担当弁護人が承諾していることが明示されていることが望ましい。
【0034】
(3) 次に、当該保釈保証金立替システムは、自身が取得した被告人に関する情報に基づいて、立替の実行をするか否かを判断する。例えば、当該情報が被告人が再犯であることを示すものである場合には、立替の実行をしないとの判断を行うとか、当該情報が被告人が容疑を認めていないことを示すものである場合には、立替の実行をしないとの判断を行うとかいったごときである。このため、当該保釈保証金立替システムは、立替の実行をするか否かを判断するための判断基準0106を保持する手段を予め有していることが望ましい。この場合、当該判断基準は、例えば、被告人に関する情報と立替の実行を行うか否かの判断を関連付けたテーブルとして保持される。かかるテーブルの具体例については後述する(表1参照)。あるいは、かかる判断基準は当該保釈保証金立替システムの外に保持されており、当該保釈保証金立替システムが判断を行う都度当該判断基準を取得するものであってもよい。
【0035】
(4) 次に、上述の判断の結果が立替の実行をするというものである場合には、当該保釈保証金立替システムは、その判断結果0107を被告人に関する情報と関連付けて蓄積する。この判断結果を被告人に関する情報と関連付けた情報は、例えば、被告人に関する情報と当該被告人に関して立替の実行をするとの判断結果とを関連付けたテーブルとして蓄積される。かかるテーブルの具体例についても後述する(表2参照)。
【0036】
(5) 次に、当該保釈保証金立替システムは、被告人の保釈後逃亡に関する情報0108を、自身に蓄積された被告人の情報として追加して蓄積する。これは、上述のように、保釈期間中に被告人が逃亡する等一定の事由に該当するときは、当該保釈が取り消される場合があるので、当該情報を追加して蓄積することにより、将来、同一被告人に係る保釈保証金の立替の実行を行うか否かの判断に際して当該情報を勘案したり、手数料の料率決定に際して当該情報を利用したりすることを可能にするためである。当該情報は、例えば、前述の被告人に関する情報と当該被告人に関して立替の実行をするとの判断結果とを関連付けたテーブルに「逃亡有無情報」欄を設け、当該欄に被告人の保釈後逃亡に関する情報を追加したテーブルとして蓄積される。かかるテーブルの具体例についても後述する(表3参照)。
【0037】
また、当該保釈保証金立替システムには、過去に当該被告人と異なる他の被告人に関する情報0109も蓄積されている。そこで、当該保釈保証金立替システムは、立替の実行をするに際して、自身に蓄積されてきた当該情報を利用して立替を実行するか実行しないかの判断をすることが可能となる。
【0038】
なお、上述の判断結果が立替の実行をするというものである場合には、以後、上述の図1に基づく説明における(3)から(9)までにおいて説明した流れに沿って保釈保証金の立替、納付等が行われることとなる。そこで、当該保釈保証金立替システムは、これらの保釈保証金の立替、納付等の処理を自ら実行するための手段として、当該判断結果等を申込者に通知する手段、申込者からの立替申込を受け付ける手段、申込者に対し当該申込を承諾する旨を通知する手段、立替金の送金先に対する送金等により立替を実行する手段または当該送金先から立替金の返還を受ける手段のうち少なくとも一を有していてもよい。
【0039】
表1は、上述した判断基準を表すテーブルの一例である。本表では、被告人に関する情報として、初犯・再犯の別、容疑を認めているか否か、手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に係る情報が列挙されている。そして、これら情報と関連付けた立替の実行を行うか否かの判断基準として、初犯・再犯の別と容疑を認めているか否かの2項目について、再犯の場合又は容疑を否認している場合は他項目の状況に関わらず立替を実行せず、また、残りの5項目中中3項目が「無」である場合は、上述の2項目の状況に関わらず立替を実行せず、さらに、上のいずれにも該当しない場合は、立替を実行するとの基準が示されている。
【表1】

【0040】
表2は、上述した被告人に関する情報と当該被告人に関して立替の実行をするとの判断結果とを関連付けたテーブルの一例である。本表では、表1で列挙された被告人に関する情報のうち、初犯・再犯の別と容疑を認めているか否かの2項目について、初犯かつ容疑を認めているので立替を実行するための基準を満たしており、残りの5項目についても3項目で基準を満たしていることから、結論として立替の実行をするとの判断結果であることが示されている。
【表2】

【0041】
表3は、上述した被告人に関する情報と当該被告人に関して立替の実行をするとの判断結果とを関連付けたテーブルに「逃亡有無情報」欄を設け、当該欄に被告人の保釈後逃亡に関する情報を追加したテーブルの一例である。本表では、表2に「逃亡有無情報」欄を加え、かつ保釈期間中に被告人は逃亡等をすることがなかったので、同欄にその旨の情報を追加した例が示されている。
【表3】

【0042】
<構成>
【0043】
図3は、本実施形態の機能ブロックの一例を示す図である。
【0044】
本件発明の構成要素である各部は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの両者、のいずれかによって構成される。たとえば、これらを実現する一例として、コンピュータを利用する場合には、CPU、メモリ、バス、インターフェイス、周辺機器などから構成されるハードウェアと、これらのハードウェア上にて実行可能なソフトウェアを挙げることができる。
【0045】
具体的には、メモリ上に展開されたプログラムを順次実行することで、メモリ上のデータや、インターフェイスを介して入力されるデータの加工、蓄積、出力などにより各部の機能が実現される。
【0046】
本実施形態の保釈保証金立替システム0300は、刑事事件にて勾留されている被告人の保釈が許可されるために納付する保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムであって、被告人情報取得部0301と、判断部0302と、蓄積部0303と、逃亡有無情報追加部0304とを有する。
【0047】
被告人情報取得部は、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報を取得するように構成されている。
【0048】
「被告人に関する情報」とは、保釈の対象である被告人の属性に関する情報をいい、「被告人情報」もこれと同義である。かかる被告人情報には、例えば被告人の氏名・住所、性別、年齢等の情報が含まれるが、特に重要な被告人情報は、被告人が保釈を許可されるかどうかの判断に関連する情報である。これは、後述のように、立替の実行をするか否かの判断は当該被告人情報に基づいて行われるが、当該判断は保釈を許可するかどうかについての裁判所の判断とできるだけ齟齬がないようにすることが重要であるためである。かかる観点から、被告人情報に該当するもので重要なものとしては、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報等が該当する。
【0049】
判断部は、前記被告人情報に基づいて立替の実行をするか判断するためのものである。
【0050】
ここで、判断部が被告人情報に基づいて立替の実行をするか判断する場合の具体的な構成の一例について説明する。本例では、被告人情報は、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無及び同居の親族の有無に関する情報である。
【0051】
また、判断部は、立替の実行をするか否かを判断するための判断基準を予め有している。当該判断基準は、本例では、上述の表1に示したものと同じテーブルとして保持されている。
【0052】
判断部は、上述の判断基準に従い、被告人に関する情報が初犯か再犯かを判断し、再犯であれば立替を実行しないとの判断を行うように構成される。同様に、被告人が容疑を認めていない場合又は残りの5項目中中3項目が「無」である場合も、立替を実行しないとの判断を行うように構成される。そして、これらのいずれにも該当しない場合には、立替を実行するとの判断を行うように構成されている。
【0053】
蓄積部は、前記判断部での判断結果が立替の実行をするとの判断結果である場合には、その判断結果を被告人に関する情報と関連付けて蓄積するように構成されている。
【0054】
逃亡有無情報追加部は、前記被告人の保釈後逃亡に関する情報を、前記蓄積部に蓄積された被告人の情報として追加するように構成されている。
【0055】
また、判断部は、立替の実行をするに際して、前記蓄積部に過去に前記被告人と異なる他の被告人に関して蓄積されてきた情報を利用して判断可能であるように構成されている。
【0056】
<処理の流れ>
【0057】
図4は、本実施形態における処理の流れの一例を示したものである。本実施形態における処理の流れは、以下のステップからなる。
【0058】
まず、被告人情報の取得ステップS0401において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)を取得する。
【0059】
次に、当該被告人情報に基づいて立替の実行をするか否かを判断するための判断ステップS0402において、本実施形態の保釈保証金立替システムが立替の実行をすると判断した場合、判断結果の蓄積ステップS0403において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、その判断結果を被告人に関する情報と関連付けて蓄積する。
【0060】
また、判断ステップにおける判断は、立替の実行をするに際して、他の被告人に関する情報の蓄積ステップにおける処理によって過去に前記被告人と異なる他の被告人に関して蓄積されてきた情報を利用してなされることも可能である。
【0061】
さらに、逃亡有無情報の追加ステップS0404において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、当該被告人の保釈後逃亡に関する情報を被告人の情報として追加する。
【0062】
<効果>
【0063】
本実施形態に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金を用意できない者に対する保釈保証金の立替を実行するか実行しないかの判断を、立替を受けようとする者の返済能力といった観点からではなく、保釈対象である被告人が人権尊重の見地から本来身体の自由が認められるべき者かどうか、換言すれば裁判所の保釈許可決定を受けられるべき条件を満たす被告人かどうかという観点から行うためのシステムの構築が可能となる。また、この結果、本来逃亡や罪証隠滅のおそれがなく、身体の自由が認められるべきであるにもかかわらず、金融機関等からの融資を受けることができない等により保釈保証金を用意できないとの理由でこれまで保釈許可が得られなかったような被告人についても、当該システムが行う判断の結果に基づいて立替が実行されることにより保釈が許可される可能性が高まり、人権尊重に資することが期待される。
【実施例2】
【0064】
<概要>
【0065】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、実施形態1を基本とし、前記判断部は、保釈の逃亡に関し、保釈保証金の立替なしに行った保釈に応じた情報である非立替保釈者逃亡情報を保持する非立替保釈者逃亡情報保持手段を有し、前記判断に際して、前記非立替保釈者逃亡情報保持手段に保持された非保釈者逃亡情報を利用して前記判断を行う。
【0066】
<構成>
【0067】
図5は、本実施形態の機能ブロックの一例を示す図である。
【0068】
本実施形態の保釈保証金立替システム0500は、被告人情報取得部0501と、判断部0502と、蓄積部0503と、逃亡有無情報追加部0504とを有する。
【0069】
判断部は、非立替保釈者逃亡情報保持手段0505を有する。非立替保釈者逃亡情報保持手段は、保釈の逃亡に関し、保釈保証金の立替なしに行った保釈に応じた情報である非立替保釈者逃亡情報を保持するように構成されている。なお、ここで「保釈の逃亡」とは、保釈期間中における被告人の行為であって、被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき等をいう。「等」に該当する場合には、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき、被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき及び被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したときがある。
【0070】
「非立替保釈者」とは、保釈保証金の立替なしに行った保釈にかかる者をいう。換言すれば、保釈を受けた者(保釈者)のうち、本実施形態の保釈保証金立替システムが立替を実行すると判断した場合に当該判断結果に基づいて実行される立替を利用して保釈を受けた者(立替保釈者)以外の者をいう。
【0071】
かかる非立替保釈者には、当該保釈保証金立替システムが立替を実行するか否か判断した結果、立替を実行しないとの判断結果が得られたが、それにもかかわらず、結果的に保釈された者が含まれる。しかし、典型的には、保釈保証金立替システムを全く利用せずに保釈された者、即ち、当該保釈保証金立替システムが立替を実行するか否か判断することなしに保釈された者がこれに該当する。
【0072】
従って、当該保釈保証金立替システムは、少なくとも当該システムを全く利用せずに保釈された者にかかる逃亡情報を当該システム外から入手する必要がある。そこで、本実施形態の保釈保証金立替システムの判断部は、自身が行う判断に利用する非立替保釈者逃亡情報にかかる外部情報(例えば関係当局の統計情報など)を取得する手段を有していることが望ましい。
【0073】
「逃亡」には、文字通り当該被告人が逃亡したときが含まれる。このほか、被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき、被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき及び被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したときも含まれる。これらに該当する場合、裁判所は保釈を取り消すことができる(刑事訴訟法96条1項)。
【0074】
そして、「逃亡情報」とは、裁判所が被告人の保釈を許可する決定を執行した後に、当該被告人が上述の逃亡の事実に該当することにより、裁判所が当該保釈を取り消した件数又は当該件数が保釈許可件数全体中に占める比率(保釈取消率)を表す情報をいい、「非立替保釈者逃亡情報」とは、被告人が非立替保釈者である場合の逃亡情報をいう。
【0075】
そして、判断部は、当該判断に際して、非立替保釈者逃亡情報保持手段に保持された非立替保釈者逃亡情報を利用して判断を行うように構成されている。具体的には、例えば、上述の保釈取消率が一定の比率以上である場合には、判断基準を厳しく設定し、かかる厳しい判断基準に基づいて判断を行うといったごときである。
【0076】
その余の構成は、実施形態1の保釈保証金立替システムの構成と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
<処理の流れ>
【0078】
図6は、本実施形態における処理の流れの一例を示したものである。本実施形態における当該部分の処理の流れは、同図に示すステップからなる。
【0079】
非立替保釈者逃亡情報の取得ステップS0602において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、非立替保釈者逃亡情報を取得する。
【0080】
次に、当該被告人情報に基づいて立替の実行をするか否かを判断するための判断ステップS0603において本実施形態の保釈保証金立替システムが判断を行うに際しては、上述の非立替保釈者逃亡情報の取得ステップにおいて取得した非立替保釈者逃亡情報を利用して判断を行う。
【0081】
その余の処理の流れは実施形態1における処理の流れと同じであるので、説明を省略する。
【0082】
<効果>
【0083】
本実施形態に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金の立替を実行するか実行しないかの判断を、非保釈者逃亡情報を利用して行うことが可能となるので、当該情報に応じたより適切な判断が可能となる。
【実施例3】
【0084】
<概要>
【0085】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、実施形態1又は2を基本とし、前記判断部での判断は、被告人に関する情報として、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報、を少なくとも一以上含む情報を利用して判断をする。
【0086】
<構成>
【0087】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、被告人情報取得部と、判断部と、蓄積部と、逃亡有無情報追加部とを有する。また、判断部は、非立替保釈者逃亡情報保持手段を有していてもよい。
【0088】
判断部は、被告人に関する情報として、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報、を少なくとも一以上含む情報を利用して立替の実行をするかどうかの判断をするように構成されている。
【0089】
かかる構成は、立替を実行するかどうかの判断と、実際に保釈を許可するかどうかについての裁判所の判断の齟齬をできるだけ回避することを目的とするものである。従って、判断部が立替の実行をするかどうか判断するに当たって利用する情報は、実際に裁判所が保釈を許可するかどうか判断するに当たって斟酌する要素とできるだけ一致していることが望ましい。上述の具体的に列挙された各情報は、いずれも裁判所が保釈を許可するかどうか判断するに当たって斟酌する要素と考えられるものである。例えば、一般に、保釈対象となる被告人の犯罪が初犯であれば保釈が認められやすく、再犯であれば保釈が認められにくいとされており、また、被告人が自らの容疑を認めている場合は保釈が認められやすく、容疑を認めていない場合は保釈が認められにくいとされている。また、保釈保証金として支払うべき手持ち資金、身元引受人、住居、職業、同居の親族についても、それぞれこれらを有する場合は保釈が認められやすく、有しない場合は保釈が認められにくいとされている。さらに、刑の執行が猶予される可能性が高い場合には保釈が認められやすいとされている。
【0090】
ここで、刑の執行が猶予される可能性が高いか否かは、例えば、被告人が前に禁錮以上の刑に処せられたことがないかどうか、被告人を今後監督する者がいるかどうか、被告人が既に十分な社会的制裁を受けているかどうか等の諸事情により左右される。そこで、本実施形態の保釈保証金立替システムの判断部は、このような判断要素を利用して刑の執行が猶予される可能性が高いか否かを判断する手段を有していてもよい。
【0091】
従って、実際に裁判所が保釈を許可するかどうか判断するに当たって斟酌する要素と考えられるものであれば、判断部が立替の実行をするかどうか判断するに当たって利用する情報には上に列挙したもの以外のものが含まれていてもよい。かかる情報としては、例えば、被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるか否か、被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮にあたる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるか否か、被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯したものであるか否か、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるか否か、被告人が被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるか否か、被告人の氏名又は住居が判らないか否かといったものが該当し得る。これらは、当該事由が存在する場合を除き、保釈の請求があつたときは裁判所はこれを許さなければならない(刑事訴訟法89条)とされている事項である。
【0092】
判断部がこれらの被告人に関する情報を利用して行う立替の実行をするかどうかの判断は、これらの情報のうち一つでも該当する、あるいは該当しない場合には他の情報にかかわらず立替を実行しないと判断されるように構成されていてもよいし、全体の中で一定数あるいは一定比率の情報が該当する、あるいは該当しない場合には立替を実行しないと判断されるように構成されていてもよい。あるいは、これらを組み合わせてもよい。
【0093】
以下に、判断部がこれらの被告人に関する情報を利用して立替の実行をするかどうかの判断を行う場合の構成の一例を示す。
【0094】
判断部は、まず、初犯か再犯かの情報を利用して立替の実行をするかどうかの判断をするように構成されている。この場合、被告人が再犯であれば立替の実行をしないとの判断がなされるように構成される。
【0095】
次に、被告人が初犯である場合には、判断部は、容疑を認めているかいないかの情報を利用して立替の実行をするかどうかの判断をする。この場合、被告人が容疑を認めていない場合には立替の実行をしないとの判断がなされるように構成される。
【0096】
さらに、被告人が初犯でありかつ容疑を認めている場合には、判断部は、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無又は刑の執行が猶予される可能性についての情報を利用して、立替の実行をするかどうかの判断を行う。その際、これら6項目のうち、3項目以上について該当なしの場合(例えば、被告人は、保釈保証金として支払うべき手持ち資金と身元引受人と住居は有しているものの、職業、同居の親族のいずれも有しておらず、かつ刑の執行が猶予される可能性がない場合)には、立替の実行をしないとの判断がなされるように構成されている。
【0097】
以上のような構成により、立替を実行するかどうかの判断と、実際に保釈を許可するかどうかについての裁判所の判断との齟齬をできるだけ回避することが可能となる。
【0098】
被告人情報取得部、蓄積部、逃亡有無情報追加部及び非立替保釈者逃亡情報保持手段の構成は、実施形態1又は2における構成と同じであるので、説明を省略する。
【0099】
<処理の流れ>
【0100】
図7は、本実施形態における処理の流れのうち、被告人情報の取得ステップ及び当該ステップにて取得した被告人情報に基づいて立替の実行をするか否かを判断するための判断ステップにおける処理の詳細な流れの一例を示したものである。本図においては、本実施形態の構成の一例として上に説明したものと同じ例を用いて説明する。なお、本実施形態におけるその余の処理の流れは、実施形態1又は2における処理の流れと同じであるので、説明を省略する。
【0101】
被告人情報(初犯か再犯か)の取得ステップS0701において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として初犯か再犯かに関する情報を取得する。
【0102】
被告人情報(容疑を認めているかいないか)の取得ステップS0702において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として容疑を認めているかいないかに関する情報を取得する。
【0103】
被告人情報(保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無)の取得ステップS0703において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無に関する情報を取得する。
【0104】
被告人情報(身元引受人の有無)の取得ステップS0704において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として身元引受人の有無に関する情報を取得する。
【0105】
被告人情報(住居の有無)の取得ステップS0705において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として住居の有無に関する情報を取得する。
【0106】
被告人情報(職業の有無)の取得ステップS0706において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として職業の有無に関する情報を取得する。
【0107】
被告人情報(同居の親族の有無)の取得ステップS0707において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として同居の親族の有無に関する情報を取得する。
【0108】
被告人情報(刑の執行が猶予される可能性)の取得ステップS0708において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報(被告人情報)として刑の執行が猶予される可能性に関する情報を取得する。
【0109】
以上のS0701からS0708までのステップは、これらすべてを備える必要はなく、少なくともこれらのうち一のステップを備えていればよい。また、以上のうち複数のステップを備える場合の処理の順序は、これを問わない。
【0110】
次に、被告人は初犯か再犯かの判断ステップS0709において、本実施形態の保釈保証金立替システムが再犯であると判断した場合、立替を実行しないとの判断結果の生成ステップS0713において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、立替を実行しないとの判断結果を生成する。
【0111】
一方、初犯であると判断された場合には、被告人は容疑を認めているかいないかの判断ステップS0710に進み、当該ステップにおいて被告人は容疑を認めていると判断した場合、立替を実行しないとの判断結果の生成ステップにおいて、本実施形態の保釈保証金立替システムは、立替を実行しないとの判断結果を生成する。
【0112】
一方、容疑を認めていると判断された場合には、保釈保証金として支払うべき手持ち資金、身元引受人、住居、職業、同居の親族又は刑の執行が猶予される可能性のうち3項目以上が「有り」に該当するか否かの判断ステップS0711に進み、当該ステップにおいて3項目以上が「有り」に該当すると判断した場合、立替を実行するとの判断結果の生成ステップS0712において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、立替を実行するとの判断結果を生成する。他方、3項目以上が「有り」に該当しない(「有り」に該当する項目が3項目未満である)と判断された場合は、立替を実行しないとの判断結果の生成ステップにおいて、本実施形態の保釈保証金立替システムは、立替を実行しないとの判断結果を生成する。
【0113】
以上のS0709からS0711までのステップは、これらすべてを備える必要はなく、少なくともこれらのうち一のステップを備えていればよい。また、以上のうち複数のステップを備える場合の処理の順序は、これを問わない。ただし、上述の例と異なる順序で処理がなされる場合は、最後に処理がなされるステップにおける判断結果が初犯又は容疑を認めているというものである場合には、立替を実行するとの判断結果が生成され、最後以外で処理がなされるステップにおける判断結果が初犯、容疑を認めている又は3項目以上が「有り」に該当するというものである場合には、他の判断ステップに進む。
【0114】
なお、これら各ステップに対応する被告人情報の取得の各ステップがない場合は、当該ステップもないことになる。例えば、被告人情報(初犯か再犯か)の取得ステップがない場合は、被告人情報(初犯か再犯か)に基づいて立替の実行をするか否かを判断するための判断ステップもないといったごときである。
<効果>
【0115】
本実施形態に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金の立替を実行するかしないかの判断を、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか等の被告人情報に基づいて行うことが可能となり、立替を実行するかどうかの判断と、実際に保釈を許可するかどうかについての裁判所の判断との齟齬をできるだけ回避することが可能となる。
【実施例4】
【0116】
<概要>
【0117】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、実施形態1から3のいずれか一を基本とし、判断部での判断結果が立替を実行すべきとの判断結果である場合に立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を定める料率決定部を有し、当該料率決定部は、蓄積部に蓄積された情報を利用して料率を定める。
【0118】
<構成>
【0119】
図8は、本実施形態の機能ブロックの一例を示す図である。
【0120】
本実施形態の保釈保証金立替システム0800は、被告人情報取得部0801と、判断部0802と、料率決定部0803と、蓄積部0804と、逃亡有無情報追加部0805とを有する。
【0121】
また、本図には示されていないが、判断部は、非立替保釈者逃亡情報保持手段を有していてもよい。
【0122】
さらに、判断部での判断は、被告人に関する情報として、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報、を少なくとも一以上含む情報を利用して判断をするように構成されていてもよい。
【0123】
料率決定部は、判断部での判断結果が立替を実行すべきとの判断結果である場合に立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を定めるように構成されている。また、当該料率決定部は、蓄積部に蓄積された情報を利用して料率を定めるように構成されている。
【0124】
「立替手数料」とは、立替に対して徴収すべき手数料をいう。これは、当該保釈保証金立替システムを利用した立替を実効あらしめるために徴収することを目的とするものであって、資金の貸付に対する利息とは性格が異なる。従って、当該立替手数料の料率は、例えば逃亡等を防ぐことを担保するに足る金額であること等を念頭に置いて定められる。具体的には、例えば、非立替保釈者逃亡情報等に基づいて定められた、立替金額の一定比率等が該当する。なお、立替手数料には、実費が含まれていてもよい。
【0125】
その余の構成は実施形態1から3のいずれか一における構成と同じであるので、説明を省略する。
【0126】
<処理の流れ>
【0127】
図9は、本実施形態における処理の流れの一例を示したものである。本実施形態における当該部分の処理の流れは、同図に示すステップからなる。
【0128】
料率決定ステップS0903において、本実施形態の保釈保証金立替システムは、立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を定める。
【0129】
その余の処理の流れは実施形態1から3のいずれか一における処理の流れと同じであるので、説明を省略する。
<効果>
【0130】
本実施形態に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金の立替を実行する場合に立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を適切に定めることが可能となり、立替を実効あらしめることが可能となる。
【実施例5】
【0131】
<概要>
【0132】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、実施形態4を基本とし、料率決定部が利用する蓄積部に蓄積された情報は、過去に蓄積された逃亡率統計情報である。
【0133】
<構成>
【0134】
本実施形態の保釈保証金立替システムは、被告人情報取得部と、判断部と、料率決定部と、蓄積部と、逃亡有無情報追加部とを有する。また、判断部は、非立替保釈者逃亡情報保持手段を有していてもよい。さらに、判断部での判断は、被告人に関する情報として、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報、を少なくとも一以上含む情報を利用して判断をするように構成されていてもよい。以上の構成は、実施形態4の保釈保証金立替システムの構成と同じである。
【0135】
料率決定部が利用する蓄積部に蓄積された情報は、過去に蓄積された逃亡率統計情報である。
【0136】
「逃亡率」とは、保釈が許可された件数のうち、保釈期間中に被告人が逃亡を行ったために保釈が取り消された件数が占める比率をいう。ここで「逃亡」とは、実施形態2にいう「保釈の逃亡」と同義である。即ち、保釈期間中における被告人の行為であって、被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときが含まれる。このほか、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき、被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき及び被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したときが含まれる。
【0137】
このように、料率の決定に当たり、過去に蓄積された逃亡率統計情報を利用するのは、当該保釈保証金立替システムを利用した立替を実効あらしめるために徴収することを目的とする立替手数料の性格(その料率は、例えば、逃亡等を防ぐことを担保するに足る金額であること等を念頭に置いて定められる)に鑑み、その料率の決定に当たって、過去に蓄積された逃亡率統計情報を利用することが、当該保釈保証金立替システムを利用した立替を実効あらしめることに資すると考えられるからである。
【0138】
なお、逃亡率は、保釈が許可されたり、あるいは、保釈期間中に被告人が逃亡を行ったために保釈が取り消されたりすることにより変化していく性格のものであるから、これに応じて逃亡率統計情報も更新され得るものである。このため、蓄積部は過去に蓄積された逃亡率統計情報を更新する手段を有していてもよいし、また、料率決定部は、かかる更新の都度、当該更新された逃亡率統計情報を利用して料率を決定するように構成されていてもよい。
【0139】
その余の構成は実施形態4における構成と同じであるので、説明を省略する。
<効果>
【0140】
本実施形態に係る保釈保証金立替システムにより、保釈保証金の立替を実行する場合に立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を過去に蓄積された逃亡率統計情報を利用して適切に定めることが可能となり、立替を実効あらしめることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施形態1を説明するための概念図
【図2】実施形態1を説明するための概念図
【図3】実施形態1を説明するための機能ブロック図
【図4】実施形態1の処理の流れを説明する図
【図5】実施形態2を説明するための機能ブロック図
【図6】実施形態2の処理の流れを説明する図
【図7】実施形態3の処理の流れを説明する図
【図8】実施形態4を説明するための機能ブロック図
【図9】実施形態4の処理の流れを説明する図
【符号の説明】
【0142】
0201 X社
0202 保釈保証金立替システム
0203 A(申込者)
0204 保釈支援申込書
0205 被告人に関する情報
0206 判断基準
0207 判断結果(立替実行の場合)
0208 被告人の保釈後逃亡に関する情報
0209 他の被告人に関する情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保釈保証金の立替を実行するか実行しないかを判断するための保釈保証金立替システムであって、
保釈保証金の立替の対象となるべき被告人に関する情報を取得する被告人情報取得部と、
前記被告人情報に基づいて立替の実行をするか判断するための判断部と、
前記判断部での判断結果が立替の実行をするとの判断結果である場合には、その判断結果を被告人に関する情報と関連付けて蓄積する蓄積部と、
前記被告人の保釈後逃亡に関する情報を、前記蓄積部に蓄積された被告人の情報として追加する逃亡有無情報追加部と、
を有し、
前記判断部は、立替の実行をするに際して、前記蓄積部に過去に前記被告人と異なる他の被告人に関して蓄積されてきた情報を利用して判断可能である保釈保証金立替システム。
【請求項2】
前記判断部は、保釈の逃亡に関し、保釈保証金の立替なしに行った保釈に応じた情報である非立替保釈者逃亡情報を保持する非立替保釈者逃亡情報保持手段を有し、
前記判断に際して、前記非立替保釈者逃亡情報保持手段に保持された非保釈者逃亡情報を利用して前記判断を行う請求項1に記載の保釈保証金立替システム。
【請求項3】
前記判断部での判断は、被告人に関する情報として、初犯か再犯か、容疑を認めているかいないか、保釈保証金として支払うべき手持ち資金の有無、身元引受人の有無、住居の有無、職業の有無、同居の親族の有無に関する情報、刑の執行が猶予される可能性に関する情報、を少なくとも一以上含む情報を利用して判断をする請求項1又は2に記載の保釈保証金立替システム。
【請求項4】
前記判断部での判断結果が立替を実行すべきとの判断結果である場合に立替に対して徴収すべき立替手数料の料率を定める料率決定部を有し、
前記料率決定部は、前記蓄積部に蓄積された情報を利用して料率を定める請求項1から3のいずれか一に記載の保釈保証金立替システム。
【請求項5】
前記料率決定部が利用する前記蓄積部に蓄積された情報は、過去に蓄積された逃亡率統計情報である請求項4に記載の保釈保証金立替システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−48233(P2006−48233A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225786(P2004−225786)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(504088533)
【出願人】(504294813)