説明

選挙投票用紙

【課題】折り回復力を改良し、開票時間の短縮化に大きく貢献することができる選挙投票用紙を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる不透明度90〜100%の二軸延伸フィルムを基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工層を有し、かつ表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなる選挙投票用紙において、二軸延伸フィルムが、面積延伸倍率が25〜70倍であり、かつ基紙の折り回復時間が1〜10秒である選挙投票用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国会議員や県会議員、市町村の議員および県知事、市町村長の選挙や、最高裁判所の判事の罷免選挙に用いられる選挙投票用紙に関するものである。
本発明の選挙投票用紙は、折れ回復力が良好であり、手作業や選挙専用計数機での集計作業が容易である。
【背景技術】
【0002】
選挙投票用紙としては、従来、パルプを素材とした紙に、候補者氏名の記入欄および投票に当っての注意事項および選挙管理委員会名を印刷した用紙が用いられてきた。
この用紙は、選挙民により候補者名が記入欄に書き込まれた後、2つ折りされ、投票箱内に投入される。
選挙投票終了後、投票箱より投票用紙は取り出され、選挙管理委員の立会のもとに折り曲げられた投票用紙を人々が開き、候補者名毎に投票用紙を振り分け、人手により各候補者毎の票数を数え挙げて集計してきた。
【0003】
近年、選挙投票用紙として、プラスチックを素材とした合成紙を投票用紙に使用し、さらに機械による投票用紙計数機を使用することで、集計時の省力化を目指すことが可能となり、更には開票時間の短縮に大きく貢献している。(特許文献1、2参照)
しかし、合成紙を素材とした選挙用紙の場合でも、既存のものは投票直後の折り回復力が不足しており、折り方によっては折り癖がつくことがあった。そのために、一部の投票用紙は手作業により折り曲がった選挙用紙を一々開いて元の状態に戻したり、さらにひどい場合、折り癖が戻らない選挙用紙は、投票用紙計数機での計数時に、計数機の機械つまりや計数ミスを生じたりすることがあった。この様なトラブルは開票時間を増大させるものであり、大きな問題である。
【0004】
【特許文献1】特公平07−051393号公報
【特許文献2】特許第2718753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、折り回復力を改良し、開票時間の短縮化に大きく貢献することができる選挙投票用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の合成紙としては、特許文献1、2に記載されるような、二軸延伸フィルムを基材層として、更に表裏層として基材層の両面に一軸延伸フィルムを積層した、一軸延伸フィルム/二軸延伸フィルム/一軸延伸フィルムの三層構造を有する合成紙であった。この合成紙は印刷、筆記性を良好とするための表裏層に一軸延伸フィルムを有しているが、この一軸延伸フィルムは、その延伸軸に直交する折り目をつけた場合には、既に延伸されているので更に伸ばされて非弾性変形することが少なく、即ち、曲げ弾性が高く、結果として優れた折り回復力を発揮できる。
しかしながら、一軸延伸フィルムの延伸軸に平行して折り目をつけた場合、同方向には延伸履歴がないため、力を入れれば伸ばされて可塑変形してしまい、即ち、折り癖の原因となっていた。
【0007】
そこで本発明者は、課題の解決に向けて鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂からなる不透明度90〜100%の二軸延伸フィルムを基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工層を有し、かつ表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなる選挙投票用紙において、折り回復時間が1〜10秒とした場合に、作業トラブルも無く、集計の作業性が大幅に改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明では塗工層が、(a)水性樹脂バインダー、(b)無機微細粉末、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーを含有していることが好ましく、さらに(d)着色剤を含有していることが好ましい。
また、本発明では二軸延伸フィルムが、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含み、かつフィラーを11〜56%含むことが好ましい。
【0008】
加えて本発明では、二軸延伸フィルムは、その面積延伸倍率が25〜70倍であり、下記式(1)で算出される空孔率が15〜60%であることが好ましい。
【数1】

また、本発明の二軸延伸フィルムは、表面層、ベース層および裏面層を少なくとも含有し、ベース層のフィラー含有量が15〜60%、表面層および裏面層のフィラー含有量が0〜15%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の選挙投票用紙は、二軸延伸フィルムを基紙に用いることで、折り方向の如何に問わず優れた折り回復力を発揮し、開票作業、集計作業におけるトラブルも少なく、開票時間の短縮化に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の選挙投票用紙の構成及び効果を詳細に説明する。なお、本発明において用いられる「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
二軸延伸フィルム
本発明における二軸延伸フィルムとは、本発明の選挙投票用紙の基紙となるものである。
特徴としては熱可塑性樹脂を含み、好ましくはフィラーを含み、異なる二軸方向に延伸された延伸フィルムであり、不透明度が90〜100%、好ましくは93〜98%の範囲であって、面積延伸倍率が25〜70倍であることが好ましく、空孔率が15〜60%であることが好ましく、後述する折り回復時間が1〜10秒の範囲となる折り回復力を有するものである。
【0011】
本発明の二軸延伸フィルムは、複層構造であっても二軸延伸フィルムのみを含むものである。全体が二軸方向に既に延伸されているため、例え投票者がどちらに折り目をつけても伸びにくく、両方向に曲げ弾性が高いために折り癖が付きにくいという特徴を有する。また、空孔含有率(空孔率)を従来品に比べて高めに設定することができ有利である。
更にこれら延伸倍率や空孔率から、後述する折り回復時間が1〜10秒の範囲となるように調整することで、本発明の目的とする折り回復力(折り回復時間)が得られたものである。
【0012】
1)熱可塑性樹脂
本発明の二軸延伸フィルムに用いられる熱可塑性樹脂は、二軸延伸フィルムのマトリクスを形成するものであり、その種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)、エチレン−環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィンコポリマー、等のオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルプラスチック、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチック等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の延伸成形が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
本発明では一般に曲げ弾性の高いポリメチルペンテン、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ABS、ポリカーボネート等を選択しても良いが、本発明では熱可塑性樹脂として、生産性、加工容易性、耐水性、耐薬品性、リサイクル性、コストの面からオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更にオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンを用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0013】
かかるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の立体規則性を示すポリプロピレンや、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が使用できる。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。またプロピレン系樹脂を用いる場合は、延伸性を良好とするためポリエチレン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を3〜25重量%配合するのがよい。このような熱可塑性樹脂は、二軸延伸フィルム中に、44〜89重量%で使用することがより好ましく、50〜86重量%で使用することがさらに好ましい。
二軸延伸フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量が44重量%未満であれば、基紙としての強度が不足し、また延伸成形時に破断しやすい傾向がある。逆に89重量%を超えては充分な空孔数が得られない傾向がある。
【0014】
2)フィラー
本発明の二軸延伸フィルムに熱可塑性樹脂とともに用いることができるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。無機フィラーまたは有機フィラーは、二軸延伸フィルム中に、11〜56重量%で使用することがより好ましく、14〜50重量%で使用することがさらに好ましい。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、紫外光吸収フィラー等が挙げられ、紫外光吸収フィラーとしては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
有機フィラーとしては、マトリクス樹脂がポリオレフィン樹脂の場合に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の用いるポリオレフィン樹脂の融点よりは高い融点(例えば、120〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば、120〜280℃)を有するものが使用できる。
二軸延伸フィルムには、上記の無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーとを混合して使用してもよい。
【0015】
本発明に所望の折り適性を持たせるためには、二軸延伸フィルム中に均一で真円に近い微細な空孔を多量に発生させることが好ましい。後述する延伸成形により発生させる空孔の形状の調整のため、二軸延伸フィルムに含み得る無機フィラーの形状または有機フィラーの分散形状は、アスペクト比(長径/短径)が1〜3程度の粒形を有していることが好ましい。また空孔サイズの調整のため、二軸延伸フィルムに含み得る無機フィラーの平均粒径または有機フィラーの平均分散粒径は、好ましくはそれぞれが0.1μm以上3.0μm未満の範囲、より好ましくはそれぞれが0.2〜2.0μmの範囲のものを使用する。平均粒径または平均分散粒径が3.0μm以上の場合には、空孔が不均一になる傾向がある。また、平均粒径または平均分散粒径が0.1μm未満の場合には、所定の空孔が得られにくい傾向がある。
これらフィラーの平均粒径または平均分散粒径は、電子顕微鏡により観察された一次粒子または分散粒子10点の粒径を求め、その平均値として求めることができる。
【0016】
3)添加剤
本発明の二軸延伸フィルムには、必要により、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤(光安定剤)、紫外線吸収剤、染料、顔料、分散剤、滑剤、帯電防止剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤などの各種公知の添加剤を配合してもよい。熱安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%、無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%、帯電防止剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0017】
4)積層方法
本発明で用いる二軸延伸フィルムは、単層構造でも良いし、2層以上に積層された複層構造でも良い。折り回復力の調整が容易になることから、複層構造であることが好ましい。
積層例として、例えばベース層の片面に表面層を積層した2層構造、ベース層の両面に表面層、裏面層をそれぞれ形成した3層構造を例示することができる。
さらには表面層とベース層の間に中間層を積層することで4層以上の多層構造とすることもできる。従って二軸延伸フィルムが、例えば3層構造の場合は、表面層/ベース層/裏面層、5層構造の場合は、表面層/中間層/ベース層/中間層/裏面層、の積層構造を例示できる。
【0018】
積層方法に関しては特に限定されず、公知の積層方法、例えば複数の押出機により溶融した樹脂を、フィードブロックまたはマルチマニホールドにより一台のダイに導きダイ内で積層する方法(共押出)、溶融押出ラミネートにより積層する方法(溶融ラミ)等が挙がられる。
二軸延伸フィルムが、表面層、ベース層、裏面層を含む積層フィルムである場合には、折り回復力を所望の範囲に調整しやすくするために、ベース層のフィラー含有量を15〜60%、表面層および裏面層のフィラー含有量を0〜15%の範囲に設定することが好ましい。
【0019】
5)延伸方法
本発明で用いる二軸延伸フィルムの延伸成形方法としては、一般的な二軸延伸方法が使用できる。具体例としてはスクリュー型押出機に接続されたTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出し成形した後、該シートを、ロール群の周速差を利用した縦延伸とテンターオーブンを利用した横延伸とを組み合わせた逐次二軸延伸にて延伸する方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸にて延伸する方法、該シートをカットしパンタグラフ型延伸装置を用いて同時二軸延伸する方法などが挙げられる。
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃が好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
【0020】
二軸延伸フィルム中に発生させる空孔の大きさを調整するために、面積延伸倍率(縦方向延伸倍率と横方向延伸倍率との積)は25〜70倍の範囲とするのが好ましく、28〜60倍の範囲とすることがより好ましい。使用する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合には、面積延伸倍率が25倍未満では、延伸ムラが発生し均一な二軸延伸フィルムが得られにくく、面積延伸倍率が70倍を上回る場合は、延伸時にフィルムが破断しやすいために好ましくない。
本発明の二軸延伸フィルムの各延伸軸における延伸倍率は、ほぼ等しいことが好ましい。例えば二軸延伸フィルムの縦方向延伸倍率を横方向延伸倍率で除した値が、0.2〜5の範囲であることが好ましく、0.4〜3の範囲であることがより好ましく、0.5〜2の範囲であることが特に好ましい。二軸延伸フィルムが縦方向、横方向ともほぼ等しい延伸履歴を有することで、用紙の目方向や折り方向に寄らず、優れた折り回復力を発揮できる。使用する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合、各軸における延伸倍率は、具体的にはそれぞれ2〜11倍の範囲が好ましく、4〜10倍の範囲がより好ましく、5〜9倍の範囲が特に好ましい。各軸における延伸倍率が2倍未満では、延伸ムラが発生し均一な延伸フィルムが得られにくく、各軸における延伸倍率が11倍を上回る場合は、延伸時にフィルムが破断しやすいために好ましくない。
【0021】
本発明の二軸延伸フィルムの面積延伸倍率は、設計上あるべき値として設けているが、下記の分析方法によって求めることも可能である。
例えば、二軸延伸フィルムのカットサンプルを、使用する熱可塑性樹脂の融点(例えば、DSC測定により求めた融点)より2〜5℃低い温度に設定したオイルバス(例えば、シリコーンオイルバス)中に浸漬、静置して、延伸による配向がすべて緩和する様に熱収縮させて延伸前の状態とし、縦・横各方向の熱収縮率より算出することができる。
また、二軸延伸フィルムがフィラーを含有し、延伸により内部に空孔を有するものである場合は、縦・横各方向の断面を電子顕微鏡で観察し、任意の空孔10点のアスペクト比(長径/短径)の平均値を求めて、縦・横各方向での平均値の積を面積延伸倍率としても良い。
フィルムが二軸延伸フィルムであるかどうか、またどの方向に延伸軸があるかを定性的に判断する方法としては、熱可塑性樹脂が結晶性ポリマーの場合、延伸により分子鎖の配向と同時に結晶化を伴うため、結晶部のX線回折を利用した解析方法を利用できる。例えばフィルムを小片に切り出し、X線の入射方向を変えながら数枚の回折パターン写真を撮影して、フィルム中の熱可塑性樹脂の結晶配向度を確認すれば良い。
本発明の二軸延伸フィルムは上記4)の積層方法と、5)の延伸方法を組み合わせた成形方法により製造することができる。
【0022】
6)物性
本発明の二軸延伸樹脂フィルムは、折り回復性を改良するために、後述する試験方法により求める折り回復時間が1〜10秒の間にあることが必要である。1〜8秒の間であることがより好ましい。10秒を上回る場合は、折り回復性が不十分であり好ましくなく、1秒未満の場合は、フィルム剛度が高すぎてしまい、投票時に折り曲げることが困難となるため好ましくない。
また本発明の二軸延伸樹脂フィルムは上記の折り回復性を発現する一要因として、該フィルム中に含まれる空孔の存在が挙げられる。二軸延伸フィルムの空孔率は好ましくは15〜60%、より好ましくは20〜55%の範囲とする。本明細書において「空孔率」とは、延伸前の樹脂組成物に延伸後どの程度の空孔が生じたかを示すものであり、次の式(1)にしたがって計算される値を意味する。
【数2】

式(1)のρ0は真密度を表し、ρは延伸フィルムの密度を表す。延伸前の材料が多量の空気を含有するものでない限り、真密度は延伸前のフィルム組成の密度にほぼ等しいものである。
【0023】
本発明の二軸延伸フィルムの厚さは、取り扱いやすさの観点から、好ましくは60〜130μm、より好ましくは70〜120μm、特に好ましくは80〜110μmの範囲である。
本発明の二軸延伸フィルムの不透明度は、記入された候補者氏名が透けて見えることを防止するため、90〜100%であり、好ましくは92〜98%の範囲である。
この二軸延伸フィルムの表裏の表面は、塗工層との接着性を良好とするためにコロナ放電処理されていてもよいし、更にプライマー処理されていてもよい。
【0024】
塗工層
二軸延伸フィルムの表裏面に塗工層を形成するために、塗工される塗工剤は、(a)水性樹脂バインダー、(b)無機微細粉末、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーを含有することが好ましく、さらに塗工剤は(d)着色剤を含有しても良い。
塗工剤は(a)水性樹脂バインダー中の樹脂固型分100重量部に対し、(b)無機微細粉末は300〜2,000重量部、好ましくは500〜700重量部の割合で、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーは0.1〜5重量部の割合で配合したものが好ましく用いられる。
【0025】
(a)水性樹脂バインダーは、有機バインダーとして(b)無機微細粉末や(c)水溶性ポリマーの固着、および塗工層の二軸延伸フィルムへの密着力を付与するものである。本発明に使用し得る(a)水性樹脂バインダーは、基紙である二軸延伸フィルムの素材の熱可塑性樹脂の種類及びその他の条件を考慮して任意に選択すればよいが、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリ塩化ビニリデン系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ラテックス、アクリル酸エステル−スチレン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン等を単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0026】
次に、(b)無機微細粉末は充填材や顔料として用いられ、印刷性の向上、鉛筆筆記性の向上、白度の向上、着色、不透明感付与、表面平滑性向上、及び(充填材として)コスト低減を目的としている。
(b)成分の無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、サチンホワイト、シリカ、酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、酸化鉄、クレイ及び硫酸アルミニウム等が挙げられるが、特に炭酸カルシウム等の充填材類及び酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄などの顔料類が好ましい。
また、この無機微細粉末の粒径は15μm以下が好ましく、特に0.1〜10μmが好ましい。用いる無機微細粉末の粒径が15μmを超えては、得られる選挙投票用紙の表面が粗面となり、その平滑性が悪くなるからである。
【0027】
更に、(c)成分の帯電防止機能を有する水溶性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、窒素原子含有水溶性カチオン性ポリマーもしくは両性ポリマー等が挙げられる。この窒素原子含有水溶性ポリマーは、窒素原子含有単量体を単独重合するか、これら単量体と他の共重合性単量体を共重合することにより得られる。
含窒素単量体の具体例としては、たとえば下記化学式で示される(イ)乃至(リ)で表される単量体のようなものが挙げられる。
【化1】

ここで、各式中、R1 は水素またはメチル基、R3 およびR4 はそれぞれ低級アルキル基(特に、炭素数1〜4、就中1〜2)、R5 は炭素数1〜22の飽和または不飽和アルキル基もしくはベンジル基、X- は四級化されたN+ の対アニオン(例えば、ハライド(特にクロライド))、Aは炭素数2〜6のアルキレン基、を表わす。
【0028】
この窒素原子含有水溶性ポリマーは、これら四級(両性化)窒素含有単量体(ロ)、(ニ)、(ニ)′、(ヘ)、(ヘ)′、(チ)、(チ)′、(リ)を単独重合して、またはこれら四級窒素含有単量体と他のビニル単量体とを共重合させることにより得られる。あるいは、三級窒素含有単量体(イ)、(ハ)、(ホ)、(ト)を単独重合、もしくは他の単量体と共重合させてからアルキルハライド、ジメチル硫酸、ベンジルハライドモノクロロ酢酸エステル等のカチオン化剤により四級化、又はモノクロル酢酸(塩)、プロパンサルトン、プロピオラクトン等の両性化剤により両性化することによって四級化ないし両性化して得ることができる。
この窒素原子含有水溶性ポリマーは水溶性であることが好ましいが、塗膜の耐水性の観点から過度に水溶性であることは望ましくない。従ってこの三級ないし四級窒素含有重合体は、疎水性の単量体との共重合体であることが望ましい。疎水性単量体としては、スチレンまたはその核ないし側鎖置換体(メチルスチレン等)、塩化ビニル、長鎖アルキル基等を有するアクリル酸エステルないしメタクリル酸エステル、ハロゲン化ビニル、その他が挙げられる。
【0029】
本発明で特に好ましい(c)成分の帯電防止機能を有する水溶性ポリマー(窒素原子含有水溶性ポリマー)は下記の(a)′〜(c)′成分を共重合させたアクリル系ポリマーである。
(a)′単量体(イ)〜(ヘ) 20〜40重量%
(b)′
【化2】

40〜80重量%
〔式中、R1はHまたはメチル基、R2は炭素数1〜18のアルキル基である〕
(c)′疎水性ビニル単量体 0〜20重量%
【0030】
然して、上記(b)′成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
本発明で最も好適なアクリル系ポリマーは、(a)′単量体が前記の単量体(ヘ)であり、X- がCl- であるものである。
これらアクリル系ポリマーは、三菱化学(株)よりサフトマーST1000、ST1100の商品名で販売されている。
これら(a)、(b)および(c)成分の他に、投票表紙を着色する必要がある場合は、塗工層中に(d)成分として着色剤を添加しても良い。着色剤としては、市販の染料及び/又は顔料を選択することが可能である。染料としてはその種類に制限はなく、例えば塩基性染料、酸性染料、直接染料、蛍光染料、分散染料、反応性染料等が用いられる。顔料もその種類に制限はなく、金属の酸化物あるいは硫化物を主成分とする無機顔料や、通常レーキと言われている溶解した染料に沈殿剤を加えて不溶性にした有機顔料等が広く使用できる。
【0031】
具体的な無機顔料としては、チタンホワイト(二酸化チタン)、亜鉛華(酸化亜鉛)、炭酸カルシウム、カオリン、黒鉛(カーボンブラック)、群青(ウルトラマリンブルー)、紺青(プルシアンブルー)、黄土(イエローオーカー)、黄鉛(クロムイエロー)、亜鉛黄(ジンクイエロー)、ニッケルチタンイエロー、ビスマスバナジウムイエロー、カドミウムイエロー、弁柄(酸化鉄)、鉛丹、辰砂(硫化水銀)、カドミウムレッド、沈降性硫酸バリウム、バライタ粉、マイカ、パールマイカ、アルミニウム粉等の金属粉、フレーク状の金属粉等が挙げられ、有機顔料としてはレーキ顔料の他に、多環式系、フタロシアニン系、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、ポリアゾ系、染付け系のもの等が挙げられる。
【0032】
さらに本発明の塗工層には、消泡剤、湿潤剤、凍結防止剤、防腐剤、粘度調整剤、反応促進・遅延剤、分散剤、可塑剤、有機着色剤等を添加してもよい。その他プラスチックピグメントと呼ばれる有機フィラー類も加えて良い。また塗工剤を塗工しやすくし、乾燥性を向上させる目的から、塗工剤に若干の有機溶剤等を用いることができる。
塗工剤は、従来公知の溶剤を用いて上記組成物を溶剤の相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工可能なものを用いる。溶剤としては水を主体とするものを用いることが好ましい。
二軸延伸フィルム上に塗工層を設ける方法としては、コンマ方式、ロール方式、ロッド方式、カーテン方式、グラビア方式、ブレード方式、エアーナイフ方式、サイズプレス方式、ワイヤーバー方式、スライドホッパー方式、リバースグラビア方式等の一般的な塗工方法が用いられる。またこれら一般的な塗工方法を適宜組み合わせて塗工する方法も用いられる。
【0033】
本発明の塗工層は、表面塗工層および裏面塗工層ともに、塗工剤の素材、組成により、表面固有抵抗が1×1012Ω未満、平滑度(JIS−P−8119のベック指数)が100〜5,000秒となるように調整することが好ましい。
表面固有抵抗が1×1012Ωを越えると用紙間でブロッキングを生じたり、ほこりが投票用紙に付着しやすい。平滑度は、より平滑である(ベック指数値が高い)程、手で投票用紙をめくる作業が容易となるが、平滑度が余り高くなりすぎるとブロッキングを生じるようになり開票に支障を来たす可能性がある。また鉛筆筆記性も悪化する。
塗工層の厚みは表面側、裏面側とも0.05〜10μm程度とする。選挙投票用紙の肉厚は60〜150μmであることが好ましく、70〜140μmであることがより好ましく、80〜130μmであることが特に好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例などを用いて本発明を更に詳細に説明する。ただし、以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例などにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中の配合の%および部は全て重量基準である。
<製造例1>
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)72重量%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)20重量%、二酸化チタン(石原産業(株)社製、商品名:CR−60)8重量%を混合した組成物(A1)を主押出機へ、さらにポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)98重量%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)2重量%を混合した組成物(A2)を副押出機1および副押出機2へそれぞれ導入し、270℃の温度に設定した副押出機1、主押出機、副押出機2により溶融混練された上記組成物(A1)、(A2)を各押出機が接続するTダイヘッドより三層共押出手法によりシート状に押し出し、冷却装置により冷却して、A2/A1/A2の構成を有する積層無延伸シートとして得た。
【0035】
なお、上記組成物(A1)、(A2)には、配合した熱可塑性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガノックス1010)0.05重量部、リン系安定剤(ジー・イー・プラスチック(株)社製、商品名:ウエストン618)0.05重量部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)社製、商品名:HA−70G)0.05重量部を配合した。
次いで、この積層無延伸シートを150℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向に5倍の延伸を行い、縦延伸後の同シートを再び155℃の温度にまで再加熱し、テンターを用いて横方向に9倍延伸して(面積延伸倍率:45倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットした上、コロナ放電処理を施し、3層構造の厚さ70μm(A2/A1/A2=10μm/50μm/10μm)の積層フィルムで、白色度98%、不透明度94%、空孔率32%、密度0.84g/cm3の二軸延伸フィルムを得た。
【0036】
<製造例2>
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)70重量%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)15重量%、二酸化チタン(石原産業(株)社製、商品名:CR−60)15重量%を混合した組成物(A1)を主押出機へ、ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)98%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)2重量%を混合した組成物(A2)を副押出機1および副押出機2へ、加えてポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)100重量%からなる組成物(A3)を副押出機3および副押出機4へそれぞれ導入し、270℃の温度に設定した副押出機1、副押出機3、主押出機、副押出機4、副押出機2により溶融混練された上記組成物(A1)、(A2)、(A3)を各押出機が接続するTダイヘッドにより5層共押出手法によりシート状に押し出し、冷却装置により冷却して、A2/A3/A1/A3/A2の構成を有する積層無延伸シートとして得た。
【0037】
なお、上記組成物(A1)、(A2)には、配合した熱可塑性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガノックス1010)0.05重量部、リン系安定剤(ジー・イー・プラスチック(株)社製、商品名:ウエストン618)0.05重量部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)社製、商品名:HA−70G)を0.05重量部配合した。
次いで、この積層無延伸シートを150℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向に5倍の延伸を行い、延伸後はアニーリングを行う。縦延伸後の同シートを再び155℃の温度にまで再加熱し、テンターを用いて横方向に9倍延伸して(面積延伸倍率:45倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットした上、コロナ放電処理を施し、5層構造の厚さ70μm(A2/A3/A1/A3/A2=5μm/5μm/50μm/5μm/5μm)の積層フィルムで、白色度98%、不透明度95%、空孔率24%、密度1.0g/cm3の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0038】
<製造例3>
二軸延伸フィルムの比較として、特許文献1:特公平07−051393号公報の合成紙の製造例を参照して、基紙を製造した。
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP、MA4)90部、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、商品名:ノバテックHD、HJ381P)10部、酸化チタン(石原産業(株)社製、商品名:CR−60)0.8部、平均粒径1.5μmのクレイ(エンゲルハード社製、商品名:サチントンスペシャル)15部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガノックス1076)0.3部、分散剤としてオレイン酸(花王(株)社製、商品名:ルナック)0.1部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)社製、商品名:サノールLS−770)0.06重量部よりなる組成物(A1)を、押出機を用いて熔融、混練したのち、ダイより200℃の温度でシート状に押出し、50℃まで該シートを冷却した。次いでこの無延伸シートを135℃に加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に4倍延伸して縦延伸シートを得た。
【0039】
別にポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)100部、平均粒径1.5μのクレイ(エンゲルハード社製、商品名:サチントンスペシャル)80部、酸化チタン(石原産業(株)社製、商品名:CR−60)10部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)社製、商品名:サノールLS−770)0.4部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤((株)エーピーアイ コーポレーション社製、商品名:ヨシノックスBHT)0.1部、ヒンダードアミン系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:チヌビン329)0.1部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガノックス1076)0.1部、分散剤としてオレイン酸(花王(株)社製、商品名:ルナック)0.1部の割合で配合した組成物(A2)を、別の2台の押出機を用いて溶融混練し、ダイスより200℃の温度でシート状に押し出し、前記縦延伸シートの両面にラミネートした。
得られた積層フィルムは、一旦室温より20℃高い温度(45℃)まで冷却後、155℃に再加熱し、テンターを用いて横方向に8倍延伸し、次いで160℃のオーブン中を通過させて熱セット(アニーリング処理)し、耳部をスリットした上、更にコロナ放電処理を施し、3層構造の厚さ90μm(A2/A1/A2=10μm/70μm/10μm、一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の延伸積層フィルムで、白色度97%、不透明度95%、空孔率36%、密度0.73g/cm3の基紙を得た。
【0040】
[実施例1]
前記製造例1で得た厚さ70μmの二軸延伸フィルムの表裏面に、下記の表に示す組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μ、裏面塗工層の厚さが6μの白色の塗工紙を得た。
【表1】

この塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、本発明の選挙投票用紙を作成した。
この選挙投票用紙の物性を表−1に示す。
【0041】
[実施例2]
前記製造例2で得た厚さ70μmの二軸延伸フィルムの表裏面に、下記の表に示す組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μ、裏面塗工層の厚さが6μの水色(アサギ色)の塗工紙を得た。
【表2】

この塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、本発明の選挙投票用紙を作成した。
この選挙投票用紙の物性を表−1に示す。
【0042】
[比較例1]
実施例1で使用した二軸延伸フィルムを前記製造例3の基紙に変更する以外は、すべて実施例1と同様な手法で選挙投票用紙を作成した。
この選挙投票用紙の物性を表−1に示す。
<評価例>
厚さ
JIS−P−8118:1998に記載の方法に基づき、測定した。なお、各層の厚さは二軸延伸フィルム乃至塗工紙の断面を電子顕微鏡で観察し、その比率から算出した。
密度
JIS−P−8124:1998に記載の方法に基づき、算出した。
【0043】
白色度
JIS−L−1015:1999に記載の方法に基づき、測定した。
不透明度
JIS−P−8149:2000に記載の方法に準拠し、標準黒色板を裏当てして測定した視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を不透明度とし、百分率で算出した。
空孔率
請求項7および明細書内に記載の計算式(式(1))に基づき、算出した。
【0044】
平滑度(ベック平滑度)
得られた選挙投票用紙の平滑度を、JIS−P−8119:1998に記載の方法に基づき、測定した。
結果を表−1に示す。
表面固有抵抗
得られた選挙投票用紙の表面固有抵抗を、JIS−K−6911:1995に記載の方法に基づき、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、絶縁計(東亜電波工業(株)製、商品名:DSM−8103)を用いて測定した。
結果を表−1に示す。
鉛筆筆記性
評価担当者を10名選択し、各自にHBの鉛筆にて、得られた選挙投票用紙の表面側に本人氏名を記入した。
筆記性が、市販コピー用紙並で良好と判断した人数が10名であれば筆記性良好、9名以下なら筆記性を不良とした。
結果を表−1に示す。
【0045】
折り回復時間
得られた選挙投票用紙の折り回復時間を、以下の手順で測定した。
評価機として石川島産業機械社製印刷適性試験機;RI−1型印刷機を使用した。
まず、選挙投票用紙を10cm×10cmのサイズに切断した上、折り目がつかないように曲げながら、その一辺とその対向する一辺とを合わせてループ形状(横から見て涙形状)にし、両辺を合わせた部分を紙咥え部に差し込む。
次いで、印刷速度20rpm、ニップクリアランス1mm設定した評価機器にて、空印刷を行う。印刷直後に180°折り曲がった(折り角0°)サンプルを分度器があらかじめセットした実験台の上に速やかに置き、形端を押さえつつ、折り角が120°に戻った時間を測定した。
また折り方向を縦目および横目でそれぞれ行い、平均値を折り回復時間とした。
結果を表−1に示す。
【0046】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、折り回復力を改良し、開票時間の短縮化に大きく貢献することができる選挙投票用紙に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる不透明度90〜100%の二軸延伸フィルムを基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工層を有し、かつ表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなる選挙投票用紙において、折り回復時間が1〜10秒であることを特徴とする選挙投票用紙。
【請求項2】
塗工層が、
(a)水性樹脂バインダー
(b)無機微細粉末
(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマー
を含有していることを特徴とする請求項1記載の投票用紙。
【請求項3】
塗工層が、(d)着色剤を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の選挙投票用紙。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の選挙投票用紙。
【請求項5】
二軸延伸フィルムが、フィラーを11〜56重量%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の選挙投票用紙。
【請求項6】
二軸延伸フィルムの面積延伸倍率が、25〜70倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の選挙投票用紙。
【請求項7】
二軸延伸フィルムの下記式(1)で算出された空孔率が、15〜60%である請求項1〜6のいずれかに記載の選挙投票用紙。
【数1】

【請求項8】
二軸延伸フィルムが、表面層、ベース層および裏面層を含有し、ベース層のフィラー含有量が15〜60%、表面層および裏面層のフィラー含有量が0〜15%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の選挙投票用紙。